JP2020084763A - 吸気冷却方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水の噴霧によってガスタービンの燃焼器に導入される吸気空気をより冷却することができるとともに、吸気ダクト内において噴霧した水がドレンとして排出される量を減らすことができる吸気冷却方法を提供する。【解決手段】ガスタービンの吸気側に設置された吸気ダクト1内を流通する空気を冷却する吸気冷却方法であって、前記ダクト1内にはサイレンサ4が設置されているとともに、前記サイレンサ4よりも上流側に第1のノズル5が設置され、前記サイレンサ4よりも下流側に第2のノズル6が設置されており、前記第1のノズル5から水を噴霧する工程と、前記第2のノズル6から水を噴霧する工程とを有し、下記条件A、Bを満たすように、前記第1のノズル5と前記第2のノズル6から水を噴霧する。A:第1のノズル5からの水の噴霧量Q1(g/m3)≦ρ(T2)−m1、B:第2のノズル6からの水の噴霧量Q2(g/m3)>ρ(T2)−m2【選択図】図1

Description

本発明は、ガスタービンの吸気側に設置された吸気ダクト内を流通する空気を冷却する吸気冷却方法に関するものである。
ガスタービンでは、大気中から燃焼用空気を取り込んで圧縮機で圧縮し、燃焼器で燃焼させることにより、タービンを回転させて発電させる。この際、燃焼器に供給される空気の温度が高くなると、空気の密度が低下して、タービンの出力が低下する。特に大気温度が高い夏季には、このようなタービンの出力低下が起こりやすくなる。そこで、ガスタービンに供給される空気を冷却する方法として、ガスタービンの吸気空気に水を噴霧して冷却する方法が知られている。例えば、特許文献1には、ガスタービンの吸気側に設置される吸気ダクトの吸気口にノズルを設置して水を噴霧する方法が開示され、特許文献2には、ガスタービンの吸気ダクト内に吸気旋回手段を設け、その下流側にノズルを設置して水を噴霧する方法が開示され、特許文献3には、ガスタービンの吸気ダクト内に設置したサイレンサの上流側にノズルを設置して水を噴霧する方法が開示され、これらの方法によればノズルから水を噴霧することによって吸気ダクト内を流れる空気を冷却することができる。また、特許文献4には、ガスタービンの吸気ダクト内であって圧縮機の上流側にノズルを設置して水を噴霧する方法が開示されており、この方法によれば、ノズルから噴霧した水を圧縮機内で蒸発させることにより、燃焼器に供給される空気を冷却することができる。
特開2014−227945号公報 特開2012−26397号公報 特開2002−322916号公報 特開平09−236024号公報
ガスタービンの吸気空気に水を噴霧して冷却する場合、ガスタービンの出力を高める点からは、できるだけ多くの水を噴霧することが望ましい。一方、吸気ダクト内で噴霧した水は、できるだけ多くの割合が吸気空気の冷却に寄与することが望ましく、吸気ダクト内で凝縮してドレンとして排出される量を少なくすることが好ましい。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水の噴霧によってガスタービンの燃焼器に導入される吸気空気をより冷却することができるとともに、吸気ダクト内において噴霧した水がドレンとして排出される量を減らすことができる吸気冷却方法を提供することにある。
本発明は、以下の発明を含む。
[1]ガスタービンの吸気側に設置された吸気ダクト内を流通する空気を冷却する吸気冷却方法であって、前記ダクト内にはサイレンサが設置されているとともに、前記サイレンサよりも上流側に第1のノズルが設置され、前記サイレンサよりも下流側に第2のノズルが設置されており、前記第1のノズルから水を噴霧する工程と、前記第2のノズルから水を噴霧する工程とを有し、下記条件A、Bを満たすように、前記第1のノズルと前記第2のノズルから水を噴霧することを特徴とする吸気冷却方法。
A:第1のノズルからの水の噴霧量Q1(g/m3)≦ρ(T2)−m1
B:第2のノズルからの水の噴霧量Q2(g/m3)>ρ(T2)−m2
ただし、T2、ρ(T2)、m1、m2は下記の意味を表す。
2:第2のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気の温度(℃)
ρ(T2):温度T2における飽和水蒸気量(g/m3
1:第1のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気中水蒸気量(g/m3
2:第2のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気中水蒸気量(g/m3
[2]前記条件Aは、下記のように設定される[1]に記載の吸気冷却方法。
0.80ρ(T2)−m1≦第1のノズルからの水の噴霧量Q1(g/m3)≦ρ(T2)−m1
[3]前記ダクト内の前記第1のノズルの設置位置における流速が5m/s以上である[1]または[2]に記載の吸気冷却方法。
[4]前記第2のノズルから噴霧される水滴の最大粒子径が100μm以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の吸気冷却方法。
[5]前記第2のノズルは一流体ノズルである[1]〜[4]のいずれかに記載の吸気冷却方法。
[6]前記ダクトには、前記第1のノズルよりも上流側にフィルタが設置されている[1]〜[5]のいずれかに記載の吸気冷却方法。
[7]前記第2のノズルは、前記ダクトの延在方向に対する垂直断面において複数設けられ、前記垂直断面において、流速の速い箇所に設置された第2のノズルからの水の噴霧量が、流速の遅い箇所に設置された第2のノズルからの水の噴霧量よりも多い[1]〜[6]のいずれかに記載の吸気冷却方法。
本発明の吸気冷却方法によれば、第1のノズルから水を噴霧することによって、吸気ダクト内を流れる吸気空気の温度を下げることができるとともに、第2のノズルから水を噴霧することによって、噴霧された水がミストとしてガスタービンの圧縮機に導入され、圧縮機内で蒸発することによって、燃焼器に導入される空気の温度をさらに下げることができる。この際、第1のノズルから飽和水蒸気量を超えない量の水を噴霧し、第2のノズルから飽和水蒸気量を超える量の水を噴霧することによって、第1のノズルから一度に飽和水蒸気量を超える量の水を噴霧する場合と比べて、吸気ダクトで噴霧した水がドレンとして排出される量を減らすことができる。また、第2のノズルから飽和水蒸気量を超える量の水を噴霧しても、第2のノズル近傍でのミスト濃度を低くすることができるため、ガスタービン入口に至るまでの間で粗大な水滴に成長する量が抑えられ、トータルとしてのドレン量を減らすことができる。
本発明の吸気冷却装置の構成例を表す。 図1に示した吸気冷却装置のガスタービン周りの構成例を表す。
本発明は、ガスタービンの燃焼用空気の吸気側に設置された吸気ダクト内を流通する空気を冷却する吸気冷却方法に関するものであり、詳細には、ガスタービンの吸気ダクト内を流通する空気に水を噴霧し、ガスタービンの吸気空気を冷却するものである。吸気ダクト内を流通する空気に水を噴霧することによって、水の蒸発潜熱により吸気空気が冷却され、空気密度が高められる。このように冷却された空気をガスタービンに供給し、燃焼器内で燃焼することにより、ガスタービンの出力を向上させることができる。
吸気ダクト内で水を噴霧して吸気空気を冷却する場合、水の噴霧量を増やすことでガスタービンの燃焼器へ供給する空気をより冷却することができるが、一方で、吸気ダクト内で噴霧した水が凝縮してドレンとして排出される量をできるだけ減らすことが望ましい。そのために、吸気ダクト内で水を噴霧する場合は、ノズルの設置位置や噴霧量を適切に制御することが望ましい。本発明は、このように吸気ダクト内で水を噴霧する際に、より効率的にガスタービンの燃焼器へ供給する空気を冷却することを実現するものである。
図1には、本発明の吸気冷却方法で用いられるガスタービンおよび吸気ダクトの構成例を示した。吸気ダクト1は、内部を通過する空気の流れ方向に対して上流側と下流側が定められ、上流側にダクト内に空気を取り込む吸気口2が設けられ、下流側はガスタービン7の入口に接続している。吸気ダクト1を通過した空気がガスタービン7の圧縮機8に導入される。圧縮機8で圧縮された空気は燃焼器9で燃焼されて燃焼ガスを発生し、この燃焼ガスによってタービン10を回転させ、タービン10と同軸上に連結された発電機11にタービン10の回転エネルギーを伝えて発電する。
吸気口2にはフィルタ3が設置されていることが好ましい。フィルタ3を設置することにより、吸気口2から取り込まれた空気から細かい異物が取り除かれ、ガスタービン7の損傷を防ぐことができる。吸気口2は、1つのみ設けられてもよく、2つ以上設けられてもよい。吸気口2が複数設けられる場合、各吸気口にフィルタが設けられることが好ましい。吸気口2は、多方向から空気を取り込むように設けられてもよい。なお、吸気ダクト1において、吸気口2は、フィルタ3を含んでそれより上流側の部分に相当する。
吸気ダクト1には、サイレンサ4が設置されている。サイレンサ4は、フィルタ3よりも下流側に設けられる。サイレンサ4によって、ガスタービン7から発生し吸気ダクト1を通って外部に洩れる音が低減される。サイレンサ4は、例えば、吸音板、または吸音材を貼った仕切板で吸気ダクト1の内部を区切ることにより形成することができ、吸気ダクト1の延在方向に対する垂直断面で見て、吸気ダクト1を所定の一方向に分割したスプリッター型サイレンサや、吸気ダクト1を縦横に分割したセル型サイレンサなどを用いることができる。図1では、吸気ダクト1は、フィルタ3の下流側かつサイレンサ4の上流側で略水平方向に延び、サイレンサ4の下流側かつガスタービン7の入口の上流側で略鉛直下方に延びるように形成されている。
吸気ダクト1内には、第1のノズル5と第2のノズル6が設置される。第1のノズル5はサイレンサ4よりも上流側に設置され、第2のノズル6はサイレンサ4よりも下流側に設置される。第1のノズル5と第2のノズル6から水を噴霧することによって、吸気ダクト1を通る空気が冷却される。
本発明の吸気冷却方法は、第1のノズルから水を噴霧する工程と、第2のノズルから水を噴霧する工程を有し、第1のノズルと第2のノズルから下記の条件A、Bを満たすように水を噴霧する。
A:第1のノズルからの水の噴霧量Q1(g/m3)≦ρ(T2)−m1
B:第2のノズルからの水の噴霧量Q2(g/m3)>ρ(T2)−m2
上記条件A、Bにおいて、T2は第2のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気の温度(℃)を表し、ρ(T2)は温度T2における飽和水蒸気量(g/m3)を表し、m1は第1のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気中水蒸気量(g/m3)を表し、m2は第2のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気中水蒸気量(g/m3)を表す。なお、第1(または第2)のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点とは、第1(または第2)のノズルの先端の噴射口から上流側50cm以内のいずれか地点を意味し、第1(または第2)のノズルの先端からできるだけ近い位置での温度または水蒸気量を測定することが好ましい。また、第1および第2のノズルからの水の噴霧量Q1、Q2は、吸気ダクト内を流れる吸気空気1m3当たりに噴霧する水の量を表す。
吸気ダクト内を流れる空気に対して第1のノズルから水を噴霧する場合、第1のノズルからの水の噴霧量が多いと、吸気ダクトの内部(例えば、吸気ダクトの内壁やサイレンサ)で水が凝縮しやすくなる。しかし、上記条件Aのように第1のノズルからの水の噴霧量Q1の上限値を定めることにより、第2のノズルに至るまでの間で吸気ダクト内を流れる空気中の相対湿度を100%に近付けつつ、噴霧した水がドレンとして排出される量を減らすことができる。上記条件Aによれば、第2のノズルに至るまでの間で、水のドレン量を0に近付けることも可能となる。
第1のノズルからの噴霧量Q1の下限値は、次のように定めることが好ましい。すなわち、第1のノズルからの水の噴霧量Q1は0.80ρ(T2)−m1以上が好ましく、0.85ρ(T2)−m1以上がより好ましく、0.90ρ(T2)−m1以上がさらに好ましい。また、第1のノズルから水を噴霧することによって、第2のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気の相対湿度が80%以上となることが好ましく、85%以上となることがより好ましく、90%以上となることがさらに好ましい。
第2のノズルからは、吸気ダクト内を流れる空気に対して飽和水蒸気量を超える量の水を噴霧する。このように第2のノズルから水を噴霧することにより、ガスタービンに導入される空気中の水蒸気量が過飽和状態となり、圧縮器に導入される空気にミストが存在することとなる。そのため、圧縮機内での断熱圧縮時にミストが順次蒸発し、圧縮機内での圧縮熱による昇温を抑制することができる。
本発明では、上記のように第1のノズルから飽和水蒸気量を超えない量の水を噴霧し、第2のノズルから飽和水蒸気量を超える量の水を噴霧することにより、第1のノズルから一度に飽和水蒸気量を超える量の水を噴霧する場合と比べて、吸気ダクトで噴霧した水がドレンとして排出される量を減らすことができる。例えば、第1のノズルから一度に飽和水蒸気量を超える量の水を噴霧した場合、第1のノズル近傍でのミスト濃度が増えてミストの一部が合一化することにより、粗大な水滴の発生量が増えたり、サイレンサやダクト内壁での水の凝縮が起こりやすくなる。これに対して、第1のノズルから飽和水蒸気量を超えない量の水を噴霧し、第2のノズルから飽和水蒸気量を超える量の水を噴霧すれば、第1のノズル近傍でのミスト濃度が低く抑えられ、サイレンサでの水の凝縮も起こりにくくなるため、ドレン発生量を減らすことができる。また、第2のノズルから飽和水蒸気量を超える量の水を噴霧しても、第2のノズル近傍でのミスト濃度を低くすることができるため、ガスタービン入口に至るまでの間で粗大な水滴に成長する量が抑えられ、トータルとしてのドレン量を減らすことができる。さらに、ガスタービンに導入される粗大な水滴の量が減ることにより、タービン翼の損傷を抑える効果も得られる。
第2のノズルからの噴霧量Q2は、好ましくは1.03ρ(T2)−m2以上であり、より好ましくは1.05ρ(T2)−m2以上であり、さらに好ましくは1.10ρ(T2)−m2以上である。第2のノズルからの噴霧量Q2の上限値は、ドレン発生量を抑える観点から、1.30ρ(T2)−m2以下が好ましく、1.25ρ(T2)−m2以下がより好ましく、1.20ρ(T2)−m2以下がさらに好ましい。
第1のノズルから噴霧した水は、第2のノズルに到達するまでの間、特にサイレンサに到達するまでの間に、できるだけ多くが蒸発することが好ましい。このような観点から、第1のノズルは、サイレンサよりも上流側に3m以上離れた位置に設置されていることが好ましく、6m以上がより好ましく、8m以上がさらに好ましい。このような位置に第1のノズルを設置することにより、サイレンサに至るまでの間に一定以上の粒子径の水滴を減らすことができ、第1のノズルから噴霧した水がサイレンサに至るまでの間に十分に蒸発しやすくなる。一方、吸気ダクトの長さが過剰に長くならずに設備をコンパクトにする観点から、第1のノズルは、サイレンサよりも上流側に25m以内の位置に設置されていることが好ましく、20m以内がより好ましく、15m以内がさらに好ましい。
吸気ダクトの吸気口にフィルタが設置される場合は、第1のノズルよりも上流側にフィルタが設置されることが好ましい。すなわち、第1のノズルはフィルタよりも下流側に設置されることが好ましい。これにより、第1のノズルから噴霧された水が全て吸気ダクト内を流れる空気に供給され、第2のノズル近傍での相対湿度を100%に近付けたり、また第2のノズル近傍での相対湿度を制御することが容易になる。なお、この場合において、サイレンサの上流側かつフィルタの下流側に第1のノズルを設置するとともに、フィルタの上流側にさらに別のノズルを設置してもよい。
吸気ダクトの吸気口にフィルタが設置される場合、第1のノズルは、サイレンサよりもフィルタの近くに設置されていることが好ましい。具体的には、第1のノズルは、フィルタからの距離が、フィルタとサイレンサの間の距離の1/2以下の位置に設置されていることが好ましく、1/3以下の位置に設置されることがより好ましく、1/4以下となる位置に設置されることがさらに好ましい。このように第1のノズルを設置することにより、第1のノズルから噴霧した水をできるだけ蒸発させるようにしつつ、吸気ダクトの長さを全体的にコンパクトに形成することができる。
第1のノズルは、噴霧される水滴の粒子径分布の個数基準累積90%径が40μm以下であることが好ましく、35μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。これにより、第1のノズルから噴霧した水のより多くが、第2のノズルに到達するまでの間で蒸発しやすくなる。なお、ここで説明した水滴の粒子径分布は、吸気ダクト内で空気が実質的に流れていない状態でノズルから噴霧された水に対して、位相ドップラー粒子分析計を用いてノズルの先端から30cm先の地点で測定したときの水滴の粒子径分布を意味する。また測定の際の雰囲気条件は、温度20〜25℃、湿度35〜60%RHとする。一方、第1のノズルから噴霧される水滴の粒子径分布の個数基準累積90%径の下限値は特に限定されないが、例えば1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。
第1のノズルは、噴霧される水滴の最大粒子径が100μm以下であることが好ましく、70μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。当該最大粒子径は、上記の方法に従って測定した水滴の粒子径分布から求める。第1のノズルから噴霧される水滴の最大粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。
第1のノズルから噴霧された水がより微粒化されるようにする点から、第1のノズルは、吸気ダクト内の流速が5m/s以上となる位置に設置されていることが好ましい。このような流速となる位置で水を噴霧することによって、噴霧した水の微粒化が効果的に促進される。第1のノズルを設置する位置の流速は、より好ましくは8m/s以上であり、さらに好ましくは10m/s以上であり、さらにより好ましくは12m/s以上である。当該流速の上限は特に限定されず、例えば50m/s以下であってもよく、30m/s以下であってもよく、20m/s以下であってもよい。
なお、吸気ダクト内の第1のノズルの設置位置における流速を高める点から、第1のノズルの設置位置における吸気ダクトの断面積は、吸気ダクトの吸気口の断面積よりも小さくなることが好ましい。吸気口にフィルタが設置される場合は、第1のノズルの設置位置における吸気ダクトの断面積は、フィルタが設置された箇所での吸気ダクトの断面積よりも小さくなることが好ましい。後者の場合は、フィルタにおける圧力損失を減らすことができ、吸気ダクトへの取り込み空気量を増やすことが容易になる点からも好ましい。第1のノズルの設置位置における吸気ダクトの断面積は、例えば、吸気ダクトの吸気口の断面積またはフィルタが設置された箇所での吸気ダクトの断面積の80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましく、また25%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、35%以上がさらに好ましい。
第1のノズルから噴霧された水が、吸気ダクトの内壁に付着してドレンとして排出される量を減らす観点から、吸気ダクトは、第1のノズルの設置位置からサイレンサに至る直前の位置まで直線状に延びるように形成されていることが好ましい。このように吸気ダクトが形成されていれば、第1のノズルから噴霧した水がサイレンサに至るまでの間で凝縮しにくくなる。
第1のノズルは、吸気ダクト内の下流側に向かって水が噴射されるように設置されていることが好ましい。この場合、ノズルの噴射口が吸気ダクトの延在方向と略平行に向くように設置されてもよく、吸気ダクトの延在方向に対して斜め方向に向くように設置されてもよいが、好ましくは前者の態様でノズルが設けられる。すなわち、ダクト内の空気の流れに沿うように第1のノズルから水が噴射されることが好ましい。なお、ノズルからは、ある程度の噴射角度で水が噴霧されることが好ましく、例えばノズルの先端を頂点とした円錐状に噴霧されることが好ましい。噴射角度(円錐の頂点の角度)は、例えば15°以上が好ましく、20°以上がより好ましく、また60°以下が好ましく、45°以下がより好ましい。
第1のノズルは、吸気ダクト内において複数設けられることが好ましく、より好ましくは吸気ダクトの延在方向に対する垂直断面において複数の第1のノズルが設けられる。吸気ダクト内に第1のノズルを複数設けることにより、吸気ダクトの断面でより均一に水を噴霧することが可能となる。第1のノズルは、例えばダクト断面積1m2当たり4個〜100個設置することが好ましく、8個〜50個がより好ましい。
第1のノズルを複数設置する場合の各ノズルからの水の供給量は同一であっても異なっていてもよいが、基本的には、吸気ダクトの延在方向に対する垂直断面において、吸気ダクト内を流れる空気ができるだけ均一に冷却されるように、各ノズルからの水の供給量を調整することが好ましい。
第1のノズルを複数設置する場合、第1のノズルからの噴霧量Q1は、複数の第1のノズルからの水の供給量の合計となる。この場合、複数の第1のノズルのそれぞれの水の供給量を調整することにより、第1のノズルからの噴霧量Q1を調整してもよく、複数の第1のノズルの内の一部からの水の供給を止めることにより、第1のノズルからの噴霧量Q1を調整してもよい。
第2のノズルからの水の噴霧は、吸気ダクト内でドレンとして排出される量を減らす観点から、噴霧される水滴の粒子径分布の個数基準累積90%径が40μm以下であることが好ましく、35μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。第2のノズルから噴霧される水滴の粒子径分布の個数基準累積90%径の下限値は特に限定されないが、例えば1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。第2のノズルから噴霧される水滴の粒子径分布の測定方法は、上記の第1のノズルにおける当該説明が参照される。
第2のノズルから噴霧される水には、極端に大きな水滴が含まれないことが好ましい。これにより大きな水滴がガスタービンに取り込まれて、タービン翼が損傷することを抑えることができる。このような観点から、第2のノズルは、噴霧される水滴の最大粒子径が100μm以下であることが好ましく、70μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。当該最大粒子径の測定方法は、上記の第1のノズルにおける同説明が参照される。なお、第2のノズルから噴霧される水滴の最大粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。
第2のノズルから噴霧された水は、できるだけ多くがミストとしてガスタービンの圧縮機に導入されることが好ましく、このような観点から、第2のノズルの設置位置における吸気ダクト内の流速が、第1のノズルの設置位置における吸気ダクト内の流速よりも速いことが好ましい。従って、第2のノズルの設置位置における吸気ダクトの断面積が、第1のノズルの設置位置における吸気ダクトの断面積よりも小さくなることが好ましい。第2のノズルの設置位置における吸気ダクトの断面積は、例えば、第1のノズルの設置位置における吸気ダクトの断面積の80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、65%以下がさらに好ましく、また25%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、45%以上がさらに好ましい。
第2のノズルは、ガスタービン(圧縮機)の入口よりもサイレンサの近くに設置されていることが好ましい。具体的には、第2のノズルは、サイレンサからの距離が、ガスタービンの入口とサイレンサの間の距離の1/2以下の位置に設置されていることが好ましく、1/3以下の位置に設置されることがより好ましく、1/4以下となる位置に設置されることがさらに好ましい。このように第2のノズルを設置することにより、第2のノズルから噴霧された水がガスタービンの入口に至るまでの間で微粒化されやすくなる。
第2のノズルは、吸気ダクト内の下流側に向かって水が噴射されるように設置されていることが好ましい。また、吸気ダクト内には複数の第2のノズルが設けられることが好ましい。第2のノズルの具体的な設置態様(例えば、噴射角度、設置密度等)や噴霧量Q2の調整方法は、上記の第1のノズルの説明が参照される。
第2のノズルが吸気ダクトの延在方向に対する垂直断面において複数設けられる場合、当該垂直断面において、流速の速い箇所に設置された第2のノズルからの水の噴霧量が、流速の遅い箇所に設置された第2のノズルからの水の噴霧量よりも多くなることが好ましい。吸気ダクトでは延在方向の垂直断面で流速の速い箇所と遅い箇所が存在する場合があるが、この場合、複数のノズルのそれぞれから同じ量の水を噴霧すると、流速の速い箇所では流速の遅い箇所よりも吸気空気中の単位体積当たりの水の噴霧量が低下する。特に圧縮機の入口に近い第2のノズルが設置された箇所でこのような状況になると、吸気空気の流れ方向の垂直断面においてミストの存在量にムラが生じ、その結果、その状態で吸気空気がガスタービンの圧縮機内に導入されてミストが圧縮機内で蒸発すると、圧縮機内で温度ムラが生じ、圧縮機が異常振動したり、タービン翼が摩耗しやすくなる。そこで、圧縮機内での温度ムラを抑えるために、流速の速い箇所に設置された第2のノズルからの水の噴霧量を、流速の遅い箇所に設置された第2のノズルよりも多くすることが好ましい。例えば、図1に示した吸気ダクトでは、サイレンサ4が設置された吸気ダクト1の屈曲部の内側で流速が遅く、外側で流速が速くなるため、吸気ダクト1の屈曲部の外側(またはその近傍)に設置された第2のノズル6(図1では左側に位置する第2のノズル6)からの水の噴霧量を、吸気ダクト1の屈曲部の内側(またはその近傍)に設置された第2のノズル6(図1では右側に位置する第2のノズル6)からの水の噴霧量よりも多くすることが好ましい。
第2ノズルからの噴霧量Q2は、圧縮機の圧力に基づいて制御することが好ましい。第2のノズルから噴霧された水が圧縮機内に導入されると、圧縮機内で水が蒸発して圧縮熱による昇温を抑制することができるが、圧縮空気の圧力は低下する傾向となる。この際、圧縮空気の圧力が下がりすぎると、所望のタービン出力を確保できなくなるおそれがある。そのため、圧縮機の圧力を検知して、圧縮空気の圧力が確保されるように、第2のノズルからの噴霧量Q2を制御することが好ましい。
このように第2ノズルからの噴霧量Q2を制御するために、例えば図2に示すように、圧縮機8とタービン10とを繋ぐ抽気配管12に圧力センサー13を設け、圧力センサー13からの圧力値に関する信号が入力され、当該圧力値に基づき第2のノズル6から噴霧量Q2を制御する制御装置14を設けることが好ましい。そして、圧力センサー13の圧力値が所定値以下になったとき、あるいは圧力値が所定値以下となる状態が一定時間以上継続したときに、第2のノズル6からの噴霧量Q2を減らすことが好ましい。また、この状態から圧力センサー13の圧力値が所定値を超えたときに、第2のノズル6からの噴霧量Q2を増やすことが好ましい。
第1のノズルと第2のノズルに用いられるノズルとしては、水のみ(高圧水)を噴射する一流体ノズルや、水と空気を噴射する二流体ノズルを用いることができる。なお、二流体ノズルを用いて小さい粒子径の水滴を噴霧する場合は圧縮空気を用いることが一般的であるところ、圧縮空気を利用するためにはコンプレッサーが必要となり、大規模な追加設備が必要となる。また、二流体ノズルは、ノズルサイズが大きく、配管も二重化して、吸気ダクト内の圧力損失増加の原因ともなり得る。そのため、第1のノズルおよび/または第2のノズルとしては、一流体ノズルを用いることが好ましい。特に第2のノズルには、ガスタービンに導入される空気の相対湿度を100%超とすることを容易に実現できる点から、水とともに空気が供給されない一流体ノズルを用いることが好ましい。好ましく使用できる一流体ノズルとしては、衝突型ノズルおよび旋回型ノズルが挙げられる。
衝突型ノズルは、ノズル本体の先端部から出た直進棒流を、ノズル本体の先端部の延長線上に設けられた衝突ピンに衝突させて、微粒化するノズルである。衝突型ノズルとしては、例えば、特開平9−94487号公報や米国特許第7320443号明細書等に開示されるノズルを用いることができる。
旋回型ノズルは、筒状のノズル本体の先端側に噴射孔を有するノズルチップを備え、当該ノズルチップのノズル本体内面側に噴射孔から放射状に延びる複数の溝が形成されたノズルである。ノズルチップに形成された溝は、貫通溝ではなく底を有するものであり、噴射孔から直線状に延びていてもよく、弧状に延びていてもよい。ノズル本体の噴射孔から出る流体は、ノズル本体の先端側でノズルチップの溝を通り旋回流に形成され、噴射孔から霧状に噴射される。旋回型ノズルとしては、例えば、特開2008−104929号公報や特開2009−36316号公報に開示されるノズルを用いることができる。
一流体ノズルとしては、衝突型ノズルを用いることが特に好ましい。衝突型ノズルを用いれば、ノズル1個当たりの噴霧量を多くすることが容易となり、噴射孔を大きくしたり、噴霧量を多くしても、微細な粒子径の霧を発生させることが可能となる。
1: 吸気ダクト
2: 吸気口
3: フィルタ
4: サイレンサ
5: 第1のノズル
6: 第2のノズル
7: ガスタービン
8: 圧縮機
9: 燃焼器
10: タービン
11: 発電機
12: 抽気配管
13: 圧力センサー
14: 制御装置

Claims (7)

  1. ガスタービンの吸気側に設置された吸気ダクト内を流通する空気を冷却する吸気冷却方法であって、
    前記ダクト内にはサイレンサが設置されているとともに、前記サイレンサよりも上流側に第1のノズルが設置され、前記サイレンサよりも下流側に第2のノズルが設置されており、
    前記第1のノズルから水を噴霧する工程と、前記第2のノズルから水を噴霧する工程とを有し、
    下記条件A、Bを満たすように、前記第1のノズルと前記第2のノズルから水を噴霧することを特徴とする吸気冷却方法。
    A:第1のノズルからの水の噴霧量Q1(g/m3)≦ρ(T2)−m1
    B:第2のノズルからの水の噴霧量Q2(g/m3)>ρ(T2)−m2
    ただし、T2、ρ(T2)、m1、m2は下記の意味を表す。
    2:第2のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気の温度(℃)
    ρ(T2):温度T2における飽和水蒸気量(g/m3
    1:第1のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気中水蒸気量(g/m3
    2:第2のノズルの上流側50cm以内のいずれかの地点の空気中水蒸気量(g/m3
  2. 前記条件Aは、下記のように設定される請求項1に記載の吸気冷却方法。
    0.80ρ(T2)−m1≦第1のノズルからの水の噴霧量Q1(g/m3)≦ρ(T2)−m1
  3. 前記ダクト内の前記第1のノズルの設置位置における流速が5m/s以上である請求項1または2に記載の吸気冷却方法。
  4. 前記第2のノズルから噴霧される水滴の最大粒子径が100μm以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸気冷却方法。
  5. 前記第2のノズルは一流体ノズルである請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸気冷却方法。
  6. 前記ダクトには、前記第1のノズルよりも上流側にフィルタが設置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸気冷却方法。
  7. 前記第2のノズルは、前記ダクトの延在方向に対する垂直断面において複数設けられ、
    前記垂直断面において、流速の速い箇所に設置された第2のノズルからの水の噴霧量が、流速の遅い箇所に設置された第2のノズルからの水の噴霧量よりも多い請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸気冷却方法。
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