JP2020073453A - 光学ガラスおよびその利用 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、撮像光学系や投射光学系用の光学素子材料ではないが、屈折率が1.90〜2.10、アッベ数νdが22〜35の高屈折率低分散ガラスが開示されている。
一方、特許文献2には、屈折率が1.90以上、アッベ数が25以上の光学ガラスが開示されている。
一方、用途の面から、光学特性図における左上の範囲の屈折率ndおよびアッベ数νdを示す高屈折率低分散光学ガラスは、光学系の高機能化、コンパクト化に有効な光学素子のガラス材料となり得る。
しかし一般に、特許文献1、2に記載されている組成のような従来の高屈折率低分散ガラスでは、アッベ数νdの減少に伴い、より高い屈折率のガラスを得ることができる。一方、これら従来の高屈折率低分散ガラスでは、アッベ数νdを維持しつつ屈折率を高めると、ガラス安定性が低下し、ガラス化しなくなる傾向がある。
したがって、ガラス安定性を維持しつつ、光学特性図の左上の範囲の屈折率ndおよびアッベ数νdを示す光学ガラスを提供することは非常に意義深い。
Si4+、B3+、La3+、Ti4+、Nb5+、およびZr4+を必須成分とし、
カチオン%表示で、
Si4+およびB3+を合計で5〜55%、
La3+を10〜50%(但し、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+を合計で70%以下)、
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+を合計で22〜55%、
含み、但し、Ti4+含有量は22%以下であり、
Si4+およびB3+の合計含有量に対するSi4+の含有量のカチオン比[Si4/(Si4+B3+)]が0.40以下、
La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+、Zr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+、W6+およびBi3+の合計含有量が65%以上、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+の含有量のカチオン比[Y3+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.12以下、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するBa2+の含有量のカチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.40以下、
Zr4+の含有量に対するZr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量のカチオン比[(Zr4++Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/Zr4+]が2以上、
B3+の含有量に対するTi4+の含有量のカチオン比(Ti4+/B3+)が0.85以上、
であり、
アッベ数νdが23〜35の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(1)式を満たす酸化物ガラスである光学ガラス
に関する。
nd≧2.205−(0.0062×νd) ・・・ (1)
Si4+、B3+、La3+、Ti4+、Nb5+、およびZr4+を必須成分とし、
カチオン%表示で、
Si4+およびB3+を合計で5〜55%、
La3+を10〜50%(但し、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+を合計で70%以下)、
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+を合計で23〜70%(但し、Ti4+を22%超)、
含み、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+の含有量のカチオン比[Y3+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.14以下、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するBa2+の含有量のカチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.40以下、
Zr4+の含有量に対するZr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量のカチオン比[(Zr4++Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/Zr4+]が2以上、
B3+の含有量に対するTi4+の含有量のカチオン比(Ti4+/B3+)が0.85以上、
であり、
アッベ数νdが18以上35未満の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(2)式を満たす酸化物ガラスである光学ガラス
に関する。
nd≧2.540−(0.02×νd) ・・・ (2)
上記光学素子ならびに上記プレス成形用ガラスゴブや光学素子ブランクから作製される光学素子、例えばレンズによれば、高屈折率高分散ガラス製レンズと組合せることによりコンパクトな色収差補正用の光学系を提供することもできる。
本発明の光学ガラスの一態様(以下、「光学ガラスI」という。)は、Si4+、B3+、La3+、Ti4+、Nb5+、およびZr4+を必須成分とし、カチオン%表示で、Si4+およびB3+を合計で5〜55%、La3+を10〜50%(但し、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+を合計で70%以下)、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+を合計で22〜55%含み、但し、Ti4+含有量は22%以下であり、
Si4+およびB3+の合計含有量に対するSi4+の含有量のカチオン比[Si4/(Si4+B3+)]が0.40以下、
La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+、Zr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+、W6+およびBi3+の合計含有量が65%以上、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+の含有量のカチオン比[Y3+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.12以下、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するBa2+の含有量のカチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.40以下、Zr4+の含有量に対するZr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量のカチオン比[(Zr4++Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/Zr4+]が2以上、
B3+の含有量に対するTi4+の含有量のカチオン比(Ti4+/B3+)が0.85以上、
であり、アッベ数νdが23〜35の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(1)式を満たす酸化物ガラスである光学ガラスである。
nd≧2.205−(0.0062×νd) ・・・ (1)
本発明の光学ガラスの他の態様(光学ガラスII)については、後述する。
以下、光学ガラスIについて、更に詳細に説明する。
一方、より一層のガラス安定性の向上の観点からは、カチオン比[(Gd3++Y3++Yb3+)/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]の好ましい上限は0.80、より好ましい上限は0.50、さらに好ましい上限は0.40、一層好ましい上限は0.30、より一層好ましい上限は0.20である。
ガラス安定性を良好に維持しつつ、所望の光学特性を得る上から、カチオン比[(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]は1.50以下であることが好ましい。カチオン比[(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]のより好ましい上限は1.40、さらに好ましい上限は1.30、一層好ましい上限は1.20、より一層好ましい上限は1.00である。
ガラス安定性を維持しつつ、屈折率を高める上から、カチオン比(Ti4+/B3+)の下限は、より好ましくは0.90以上、更に好ましくは0.95以上、一層好ましくは1.00以上である。カチオン比(Ti4+/B3+)の上限は、上述の態様の光学ガラスの組成範囲から自ずと定まるが、例えば、10程度と考えればよい。
高屈折率低分散のガラスにおいて、上記アルカリ土類金属成分のうち、Ba2+をLa3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対して多量に含有させると、ガラス安定性を維持しつつ、さらに高屈折率低分散化することが困難になる。例えば、熔融ガラスの成形は通常、底面および側壁を有し、側面の一方が開口する鋳型に熔融ガラスを鋳込み、鋳型の開口する側面から成形したガラスを連続的に引き出す(Eバー成形法と呼ぶ)ことにより行われる。しかし、Ba2+をLa3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対して多量に含有させて高屈折率低分散化を図ると、この成形法ではガラスが失透しやすくなる。そのため、貫通孔を有する鋳型を用いて、貫通孔に熔融ガラスを鋳込み、熔融ガラスの単位体積あたりの鋳型との接触面積を増やし、ガラスの冷却速度を極めて速くすることで、失透を防止するという特殊な成形法を用いざるを得ない。貫通孔を有する鋳型を用いた成形法では、成形したガラスを下方に引き出すため、ガラスをそのままレア炉と呼ばれるトンネル型の連続アニール炉に通してアニールすることは困難である。
Ba2の含有量とLa3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量の比を調整し、適正化することにより、一般的なEバー成形法でも、失透を防止しつつ、均質な光学ガラスを成形することできる。そして、成形したガラスをそのままレア炉に通してアニールすることができるので、高い生産性の下にガラスを製造することができる。
このように、高屈折率低分散化によるガラス安定性の低下を防止するために、光学ガラスIでは、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するBa2+の含有量のカチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]を0.40以下とする。カチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.40を超えると、ガラスの失透傾向が増大し、E バー成形法によって高品質な光学ガラスを生産することが困難になる。カチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]の上限は上記の通り0.40、好ましい上限は0.30、より好ましい上限は0.25、さらに好ましい上限は0.20、一層好ましい上限は0.10、より一層好ましい上限は0.05である。カチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]は0でもよい。
ガラス安定性を良好に維持する上から、La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+、Zr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+、W6+およびBi3+の合計含有量の好ましい上限は90%、より好ましい上限は85%、さらに好ましい上限は80%、一層好ましい上限は75%、より一層好ましい上限は73%である。
また、環境影響に配慮し、As、Pb、U、Th、Te、Cdも導入しないことが好ましい。
さらに、ガラスの優れた光線透過性を活かす上から、Cu、Cr、V、Fe、Ni、Co、Nd、Tbなどの着色の要因となる物質を導入しないことが好ましい。
したがって、光学ガラスIは、上述のPb等を実質的に含まないことが好ましい。なおここで、「実質的に含まない」とは、ガラス成分として積極的に導入しないことを意味するものであり、不純物として意図せず混入することは許容されるものとする。
光学ガラスIのアッベ数νdは23〜35の範囲である。低分散性を活かして色収差補正に好適な光学素子材料を提供する場合、アッベ数νdが大きいほうが有利である。こうした観点から、アッベ数νdの下限は、好ましくは24.0、より好ましくは24.5、さらに好ましくは25.0、一層好ましくは25.5、より一層好ましくは26.0である。
一方、アッベ数νdの上限を緩和することはガラス安定性を維持、向上させる上で有利に働く。こうした観点からアッベ数νdの上限は、好ましくは32.00、より好ましくは31.00以下、さらに好ましくは30.00以下、一層好ましくは29.00以下、より一層好ましくは28.00以下である。
nd≧2.205−(0.0062×νd) ・・・(1)
屈折率ndの上限は、光学ガラスIの組成範囲から自ずと定まるため、特に限定されるものではない。ガラス安定性を維持する上からは、屈折率ndを2.20以下とすることが好ましく、2.15以下とすることがより好ましく、2.10以下とすることがさらに好ましく、2.09以下とすることが一層好ましい。
nd≧2.207−(0.0062×νd) ・・・ (1−1)
nd≧2.209−(0.0062×νd) ・・・ (1−2)
nd≧2.211−(0.0062×νd) ・・・ (1−3)
nd≧2.213−(0.0062×νd) ・・・ (1−4)
nd≧2.215−(0.0062×νd) ・・・ (1−5)
nd≦2.320−(0.0062×νd) ・・・ (1−6)
nd≦2.300−(0.0062×νd) ・・・ (1−7)
nd≦2.280−(0.0062×νd) ・・・ (1−8)
nd≦2.260−(0.0062×νd) ・・・ (1−9)
nd≦2.240−(0.0062×νd) ・・・ (1−10)
光学ガラスIにおいて、所望の光学特性とは、アッベ数νdが23〜35の範囲であって、かつ屈折率ndとアッベ数νdとが上記(1)式を満たす範囲の光学特性を指し、所望の光学特性の中で好ましい光学特性というときは、上記屈折率nd、アッベ数νdの好ましい範囲のうち、任意の範囲を指す。
高屈折率ガラスは、多量の高屈折率化成分(例えばLa3+(La2O3)、Gd3+(Gd2O3)、Y3+(Y2O3)、Yb3+(Yb2O3)、Ti4+(TiO2)、Nb5+(Nb2O5)、Ta5+(Ta2O5)、W6+(WO6)、Zr4+(ZrO2))を含有するが、これらの成分はいずれも単独での融点が極めて高い。そして、高屈折率化成分の総量が多いと、アルカリ金属成分、アルカリ土類金属成分などの熔融温度を低下させる働きのある成分の総量が相対的に減少し、熔融性、耐失透性が低下するため、均質なガラスを得るためには熔融温度を高めなければならない。
熔融温度が高くなるとガラス融液の侵蝕性が強まり、熔融容器が侵蝕され、容器を構成する材料、例えば白金、白金合金などがガラス融液に溶け込んでガラスを着色させたり、白金異物になったりする。また、熔融温度が高いとB3+などの揮発しやすい成分が揮発して、ガラス組成が経時的に変化し、光学特性が変動するという問題も起こる。
このような問題を解決するには、熔融温度の上昇を抑えればよい。熔融温度範囲は均質なガラス融液が得られる温度域と考えればよく、その温度域の下限は概ね液相温度の上昇・下降に連動して変化すると考えてよい。したがって、液相温度の上昇を抑えることができれば熔融温度の上昇も抑制することができる。
また液相温度の上昇を抑えることができれば、ガラス成形時の失透防止に有効であり、ガラスの粘性も成形に適した範囲に調整することができ、高品質のガラス成形体を作製しやすくなる。
光学ガラスIの好ましい態様は、所要の光学特性を維持しつつ液相温度の上昇を抑えるように各成分量がバランスよく定められているので、下記(3)式を満たすことができる。
LT/(nd−1)≦1250℃ ・・・ (3)
LT/(nd−1)≦1230℃ ・・・ (3―1)
LT/(nd−1)≦1220℃ ・・・ (3―2)
LT/(nd−1)≦1210℃ ・・・ (3―3)
LT/(nd−1)≦1205℃ ・・・ (3−4)
LT/(nd−1)≦1200℃ ・・・ (3―5)
LT/(nd−1)≦1190℃ ・・・ (3−6)
LT/(nd−1)≧1050℃ ・・・ (3−7)
LT/(nd−1)≧1070℃ ・・・ (3−8)
LT/(nd−1)≧1080℃ ・・・ (3−9)
LT/(nd−1)≧1090℃ ・・・ (3−10)
LT/(nd−1)≧1110℃ ・・・ (3−11)
LT/(nd−1)≧1120℃ ・・・ (3−12)
光学ガラスIは、アッベ数νdを固定したとき、部分分散比が小さいガラスであることが好ましい。そのような光学ガラスからなるレンズなどの光学素子は、高次の色収差補正に好適である。
ここで、部分分散比Pg,Fは、g線、F線、c線における各屈折率ng、nF、ncを用いて、(ng−nF)/(nF−nc)と表される。
高次の色収差補正に好適な光学ガラスを提供する上から、光学ガラスIとしては、部分分散比Pg,Fとアッベ数νdとが下記(4−1)式の関係を満たすものが好ましく、下記(4−2)式の関係を満たすものがより好ましく、下記(4−3)式の関係を満たすものがさらに好ましい。
Pg,F≦−0.005×νd+0.750 ・・・ (4−1)
Pg,F≦−0.005×νd+0.745 ・・・ (4−2)
Pg,F≦−0.005×νd+0.743 ・・・ (4−3)
Pg,F(0)=0.6483−(0.0018×νd)
ΔPg,Fは、上記ノーマルラインからの部分分散比Pg,Fの偏差であり、次式で表される。
ΔPg,F=Pg,F−Pg,F(0)
=Pg,F+(0.0018×νd)−0.6483
上述の態様の光学ガラスにおける好ましい態様は、偏差ΔPg,Fが0.030以下であり、高次の色収差補正用の光学素子材料として好適である。ΔPg,Fのより好ましい範囲は0.025以下、さらに好ましい範囲は0.020以下、一層好ましい範囲は0.015以下、より一層好ましい範囲は0.001以下である。偏差ΔPg,Fの下限は、より好ましくは0.0000以上、さらに好ましくは0.001以上、一層好ましくは0.003以上、より一層好ましくは0.005以上である。
上述の態様の光学ガラスは高屈折率ガラスであるが、一般にガラスは高屈折率化すると比重が増加傾向を示す。しかし比重の増加は光学素子の重量増加を招くため好ましくない。これに対し上述の態様の光学ガラスは、上記ガラス組成を有することにより、高屈折率ガラスでありながら比重を5.60以下にすることができる。比重の好ましい上限は5.50、さらに好ましい上限は5.40、一層好ましい上限は5.30である。ただし、比重を過剰に減少させるとガラスの安定性が低下し、液相温度が上昇する傾向を示すため、比重は4.50以上とすることが好ましい。比重のより好ましい下限は4.70、さらに好ましい下限は4.90、一層好ましい下限は5.00、より一層好ましい下限は5.10である。
次に、光学ガラスIの光線透過性について説明する。
光学ガラスIは、可視域の広い波長域にわたり高い光線透過率を示すことができる。光学ガラスIの好ましい態様では、λ70が680nm以下の着色度を示す。λ70のより好ましい範囲は660nm以下、さらに好ましい範囲は650nm以下、一層好ましい範囲は600nm以下、より一層好ましい範囲は560nm以下、さらに一層好ましい範囲は530nm以下である。λ70の下限は特に限定されるものではないが、380nmをλ70の下限の目安として考えればよい。
ここでλ70とは、波長280〜700nmの範囲において光線透過率が70%になる波長のことである。ここで、光線透過率とは、10.0±0.1mmの厚さに研磨された互いに平行な面を有するガラス試料を用い、前記研磨された面に対して垂直方向から光を入射して得られる分光透過率、すなわち、前記試料に入射する光の強度をIin、前記試料を透過した光の強度をIoutとしたときのIout/Iinのことである。分光透過率には、試料表面における光の反射損失も含まれる。また、上記研磨は測定波長域の波長に対し、表面粗さが十分小さい状態に平滑化されていることを意味する。光学ガラスIは、λ70よりも長波長側の可視域では、光線透過率が70%を超えることが好ましい。
光学ガラスIは、研磨により平滑な光学機能面を形成するために好適なガラスである。研磨などの冷間加工の適性、すなわち冷間加工性は間接的ながらガラス転移温度と関連がある。ガラス転移温度が低いガラスは冷間加工性よりも精密プレス成形に好適であるのに対し、ガラス転移温度が高いガラスは精密プレス成形よりも冷間加工に好適であって、冷間加工性に優れる。したがって、光学ガラスIにおいてもガラス転移温度を過剰に低くしないことが好ましく、650℃以上にすることが好ましく、680℃以上にすることがより好ましく、700℃以上にすることがさらに好ましく、710℃以上にすることが一層好ましく、730℃以上にすることがより一層好ましく、740℃以上にすることがさらに一層好ましい。
ただし、ガラス転移温度が高すぎるとガラスを再加熱、軟化して成形する際の加熱温度が高くなり、成形に使用する金型の劣化が著しくなったり、アニール温度も高温になり、アニール炉の劣化、消耗も著しくなる。したがって、ガラス転移温度は850℃以下とすることが好ましく、800℃以下にすることがより好ましく、780℃以下にすることがさらに好ましく、760℃以下であることが一層好ましい。
次に本発明の他の態様の光学ガラスである光学ガラスIIについて説明する。
光学ガラスIIは、Si4+、B3+、La3+、Ti4+、Nb5+、およびZr4+を必須成分とし、
カチオン%表示で、
Si4+およびB3+を合計で5〜55%、
La3+を10〜50%(但し、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+を合計で70%以下)、
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+を合計で23〜70%(但し、Ti4+を22%超)、
含み、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+の含有量のカチオン比[Y3+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.14以下、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するBa2+の含有量のカチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.40以下、
Zr4+の含有量に対するZr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量のカチオン比[(Zr4++Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/Zr4+]が2以上、
B3+の含有量に対するTi4+の含有量のカチオン比(Ti4+/B3+)が0.85以上、
であり、
アッベ数νdが18以上35未満の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(2)式を満たす酸化物ガラスである。
nd≧2.540−(0.02×νd) ・・・ (2)
一方、光学ガラスIIは、Ti4+の含有量を22%超とし、アッベ数νdが光学ガラスIよりも広い範囲において、高屈折率低分散特性を示す。
以下、光学ガラスIIの組成、特性について、光学ガラスIと異なるところについて説明する。したがって、以下に記載のない組成、特性についての説明は、光学ガラスIの組成、特性と同様である。
光学ガラスIIでは、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を上記範囲にした上で、Ti4+の含有量を22%より多くすることにより、耐失透性を改善することができる。また液相温度上昇を抑制する上からも効果的である。
Ti4+の含有量の好ましい下限は22.5%、より好ましい下限は23%、さらに好ましい下限は24%であり、Ti4+の含有量の好ましい上限は60%、より好ましい上限は50%、さらに好ましい上限は45%、一層好ましい上限は40%、より一層好ましい上限は35%、なお一層好ましい上限は30%である。
ガラスの比重を小さくするという観点から、カチオン比[Y3+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]を0.14以下としつつ、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+の含有量のカチオン比[Y3+/(Gd3++Y3++Yb3+)]を0.60超とすることが好ましい。上記理由により、 カチオン比[Y3+/(Gd3++Y3++Yb3+)]のより好ましい下限は0.61、さらに好ましい下限は0.62、一層好ましい下限は0.63、より一層好ましい下限は0.64である。
ガラス安定性を良好に維持しつつ高屈折率低分散化する上から、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量は1.0%以上とすることが好ましい。Gd3+、Y3+、Yb3+はいずれもLa3+と共存させることにより液相温度を低下させ、耐失透性を大幅に改善する働きをする。この働きを良好に得るためには、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量は1.5%以上にすることがより好ましく、2.0%以上にすることがさらに好ましく、2.5%以上にすることが一層好ましく、3.0%以上にすることがより一層好ましく、3.5%以上にすることがさらに一層好ましい。Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量の好ましい上限は35%、より好ましい上限は30%、さらに好ましい上限は25%、一層好ましい上限は20%、より一層好ましい上限は15%、さらに一層好ましい上限は10%、なお一層好ましい上限は7%である。
光学ガラスIIにおいて、アッベ数νdが35を超えるとガラス安定性を良好に維持することが困難になる。一方、光学ガラスIIはTi4+を比較的多く含むため、アッベ数νdの下限は、18である。
色収差補正に好適な光学素子材料を提供する上から、アッベ数νdの好ましい下限は19、より好ましい下限は20、さらに好ましい下限は21、一層好ましい下限は22、より一層好ましい下限は23である。一方、ガラス安定性を良好に維持する上から、アッベ数νdの好ましい上限は32、より好ましい上限は30、さらに好ましい上限は29、一層好ましい上限は28、より一層好ましい上限は27である。
比較的広い範囲でアッベ数νdを調整することができる光学ガラスIIでは、光学系のコンパクト化、高機能化に好適なガラス材料を提供する上から、屈折率nd、アッベ数νdは下記(2)式を満たす。(2)式を満たすガラスも、従来の高屈折率低分散ガラスと比べ、同じアッベ数νdにおいて屈折率が高いガラス、即ち、先に説明した光学特性図の左上の範囲のガラスであり、有用性の高いガラスである。
nd≧2.540−(0.02×νd) ・・・ (2)
さらに、上記の理由により、屈折率nd、アッベ数νdが下記(2−1)式を満たすことが好ましく、下記(2−2)式を満たすことがより好ましく、下記(2−3)式を満たすことがさらに好ましく、下記(2−4)式を満たすことが一層好ましい。
nd≧2.543−(0.02×νd) ・・・ (2−1)
nd≧2.546−(0.02×νd) ・・・ (2−2)
nd≧2.549−(0.02×νd) ・・・ (2−3)
nd≧2.550−(0.02×νd) ・・・ (2−4)
屈折率ndの上限は、光学ガラスIIの組成範囲から自ずと定まるため、特に限定されるものではない。ガラス安定性を維持する上からは、屈折率ndを2.40以下とすることが好ましく、2.30以下とすることがより好ましく、2.20以下とすることが好ましく、2.15以下とすることがより好ましく、2.10以下とすることがさらに好ましく、2.09以下とすることが一層好ましい。
光学ガラスIIにおける部分分散比Pg,Fの好ましい上限、下限、ΔPg,Fの好ましい上限は、光学ガラスIと同じである。一方、光学ガラスIIにおけるΔPg,Fの好ましい下限は−0.001、より好ましい下限は0.000、さらに好ましい下限は0.003、一層好ましい下限は0.003である。
光学素子の軽量化のため、光学ガラスIIの比重の好ましい範囲は5.50以下、より好ましい範囲は5.40以下、さらに好ましい範囲は5.30以下、一層好ましい範囲は5.20以下である。ただし、比重を過剰に減少させるとガラスの安定性が低下し、液相温度が上昇する傾向を示すため、比重は4.50以上とすることが好ましい。比重のより好ましい下限は4.60、さらに好ましい下限は4.70、一層好ましい下限は4.80、より一層好ましい下限は4.90である。
光学ガラスIIの光線透過性は、光学ガラスIの特性と同様であるが、λ5の好ましい範囲は450nm以下、より好ましい範囲は430nm以下、さらに好ましい範囲は410nm以下、一層好ましい範囲は400nm以下、より一層好ましい範囲は390nm以下、さらに一層好ましい範囲は380nm以下である。λ5の下限は特に限定されるものではないが、300nmをλ5の下限の目安として考えればよい。
光学ガラスIIのガラス転移温度も光学ガラスIのガラス転移温度と同様の理由により、好ましい下限、好ましい上限が存在する。光学ガラスIIのガラス転移温度の好ましい下限は650℃、より好ましい下限は670℃、さらに好ましい下限は680℃、一層好ましい下限は690℃、より一層好ましい下限は700℃、さらに一層好ましい下限は710℃、なお一層好ましい下限は720℃である。一方、ガラス転移温度の好ましい上限は850℃、より好ましい上限は800℃、さらに好ましい上限は780℃、一層好ましい上限は760℃、より一層好ましい上限は750℃、さらに一層好ましい上限は740℃である。
光学ガラスIIのその他の組成、特性については、光学ガラスIと同様である。
次に本発明の一態様にかかる光学ガラスの製造方法について説明する。
本発明の一態様にかかる光学ガラスの製造方法は、ガラス原料を加熱により熔融し、得られた熔融ガラスを成形することを含む光学ガラスの製造方法において、前記ガラス原料を前述の本発明の光学ガラスが得られるように調合すること、および、前記熔融を白金製または白金合金製のガラス熔融容器を用いて行うものである。
なお、光学ガラスの熔融温度は1200〜1500℃の範囲にすることが、均質、低着色かつ光学特性を含む諸特性の安定したガラスを得る上から望ましい。
本発明の一態様にかかるプレス成形用ガラスゴブは上述の態様の光学ガラスからなる。ゴブの形状は、目的とするプレス成形品の形状に応じてプレス成形しやすい形状にする。また、ゴブの質量もプレス成形品に合わせて設定する。本発明の一態様によれば、安定性に優れたガラスを使用することができるので、再加熱、軟化してプレス成形してもガラスが失透しにくく、高品質の成形品を安定して生産することができる。
第1の製造例においては、流出パイプの下方に水平に配置した鋳型にパイプから流出する熔融ガラスを連続的に鋳込み、一定の厚みを有する板状に成形する。成形されたガラスは鋳型側面に設けた開口部から水平方向へと連続して引き出される。板状ガラス成形体の引き出しはベルトコンベアによって行う。ベルトコンベアの引き出し速度を一定にしてガラス成形体の板厚が一定になるように引き出すことにより、所定の厚み、板幅のガラス成形体を得ることができる。ガラス成形体はベルトコンベアによりアニール炉内へと搬送され、徐冷される。徐冷したガラス成形体を板厚方向に切断あるいは割断し、研磨加工を施したり、バレル研磨を施してプレス成形用ガラスゴブにする。
成形型上でのガラスの成形は公知の方法を用いればよい。中でも成形型から上向きにガスを噴出してガラス塊に上向きの風圧を加え、ガラスを浮上させながら成形すると、ガラス成形体の表面にシワができたり、成形型との接触によってガラス成形体にカン割れが発生することを防止することができる。
次に本発明の一態様にかかる光学素子ブランクとその製造方法について説明する。
本発明の一態様にかかる光学素子ブランクは、上述の態様の光学ガラスからなる。本発明の一態様にかかる光学素子ブランクは、上述の態様の光学ガラスが供える諸性質を有する光学素子を作製するためのガラス母材として好適である。
なお、光学素子ブランクは、目的とする光学素子の形状に、研削および研磨により除去する加工しろを加えた光学素子の形状に近似する形状を有するガラス成形体である。
次にプレス成形用ガラスゴブを加熱により軟化してから予熱された下型に導入し、下型と対向する上型とでプレスし、光学素子ブランクに成形する。このとき、プレス成形時のガラスと成形型の融着を防ぐため、プレス成形用ガラスゴブの表面に予め窒化ホウ素などの粉末状離型剤を均一に塗布してもよい。
次に光学素子ブランクを離型してプレス成形型から取り出し、アニール処理する。このアニール処理によってガラス内部の歪を低減し、屈折率などの光学特性が所望の値になるようにする。
ガラスゴブの加熱条件、プレス成形条件、プレス成形型に使用する材料などは公知のものを適用すればよい。以上の工程は大気中で行うことができる。
下型成形面上に適宜、窒化ホウ素などの粉末状離型剤を均一に塗布し、前述の光学ガラスの製造方法にしたがい熔融した熔融ガラスを下型成形面上に流出し、下型上の熔融ガラス量が所望の量になったところで熔融ガラス流をシアと呼ばれる切断刃で切断する。こうして下型上に熔融ガラス塊を得た後、上方に上型が待機する位置に熔融ガラス塊ごと下型を移動し、上型と下型とでガラスをプレスし、光学素子ブランクに成形する。
次に光学素子ブランクを離型してプレス成形型から取り出し、アニール処理する。このアニール処理によってガラス内部の歪を低減し、屈折率などの光学特性が所望の値になるようにする。
ガラスゴブの加熱条件、プレス成形条件、プレス成形型に使用する材料などは公知のものを適用すればよい。以上の工程は大気中で行うことができる。
次に本発明の一態様にかかる光学素子について説明する。
本発明の一態様にかかる光学素子は、上述の態様の光学ガラスからなる。本発明の一態様にかかる光学素子は、上述の態様の光学ガラスが供える諸性質を有するため、光学系の高機能化、コンパクト化に有効である。本発明の光学素子としては、各種レンズ、プリズムなどを例示することができる。さらにレンズの例としては、レンズ面が球面または非球面である、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの各種レンズを示すことができる。
こうしたレンズは、低分散ガラス製のレンズと組み合わせることにより色収差を補正することができ、色収差補正用のレンズとして好適である。また、光学系のコンパクト化にも有効なレンズである。
また、プリズムについては、屈折率が高いので撮像光学系に組み込むことにより、光路を曲げて所望の方向に向けることによりコンパクトで広い画角の光学系を実現することもできる。
なお本発明の一態様にかかる光学素子の光学機能面には、反射防止膜などの光線透過率を制御する膜を設けることもできる。
本発明の一態様にかかる光学素子の製造方法は、上述の態様の方法で作製した光学素子ブランクを加工することを特徴とする。本発明の一態様では、光学素子ブランクを構成する光学ガラスとして加工性に優れたものを使用することができるので、加工方法としては、公知の方法を適用することができる。
まず、表1に示す組成(カチオン%表示)を有する酸化物ガラスNo.1〜15および表2に示す酸化物ガラスNo.16〜70が得られるように、原料として硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸などを用い、各原料粉末を秤量して十分混合し、調合原料とし、この調合原料を白金製坩堝または白金合金製坩堝に入れて1300〜1500℃で加熱、熔融し、清澄、撹拌して均質な熔融ガラスした。
この熔融ガラスを予熱した鋳型に流し込んで急冷し、ガラス転移温度近傍の温度で2時間保持した後、徐冷して酸化物ガラスNo.1〜70の各光学ガラスを得た。No.1〜70のガラスには、白金インクルージョンなどの異物の混入は認められなかった。
酸化物ガラスNo.1〜70のアニオン成分は全量、O2-である。
なお、酸化物ガラスNo.1〜15は光学ガラスIに相当し、酸化物ガラスNo.16〜70は光学ガラスIIに相当する。
各ガラスの特性は、以下に示す方法で測定した。測定結果を表1、2に示す。
(1)屈折率ndおよびアッベ数νd
1時間あたり30℃の降温速度で冷却した光学ガラスについて測定した。
(2)部分分散比Pg,F、部分分散比のノーマルラインからの差ΔPg,F
部分分散比Pg,Fは、1時間あたり30℃の降温速度で冷却した光学ガラスについて屈折率ng、nF、ncを測定し、これらの値から算出した。
部分分散比のノーマルラインからの差ΔPg,Fは、部分分散比Pg,Fおよびアッベ数νdから算出されるノーマルライン上の部分分散比Pg,F(0)から算出した。
(3)ガラス転移温度Tg
示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、昇温速度10℃/分の条件下で測定した。
(4)液相温度
ガラスを所定温度に加熱された炉内に入れて2時間保持し、冷却後、ガラス内部を100倍の光学顕微鏡で観察し、結晶の有無から液相温度を決定した。
(5)比重
アルキメデス法により測定した。
(6)λ70、λ5
10.0±0.1mmの厚さに研磨された互いに平行な面を有するガラス試料を用い、分光光度計により、前記研磨された面に対して垂直方向から強度Iinの光を入射し、試料を透過した光の強度Ioutを測定し、光線透過率Iout/Iinを算出し、光線透過率が70%になる波長をλ70、光線透過率が5%になる波長をλ5とした。
ガラスは、熔融ガラスを成形して得られる。ガラス安定性が低下すると、熔融ガラスを鋳型に流し込んで成形し、得られるガラス中に含まれる結晶粒の数が増加する。
したがって、ガラス安定性、特にガラス融液を成形するときの耐失透性は、一定の条件で熔融、成形したガラスに含まれる結晶の多少によって評価することができる。評価方法の一例を、以下に示す。
原料として硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸などを用い、各原料粉末を秤量して十分混合し、調合原料とし、この調合原料を容量が300mlの白金製坩堝に入れて1400℃で2時間、加熱、熔融し、均質な熔融ガラスを200g作製する。この間、熔融ガラスを数回攪拌、振とうする。
2時間経過後、1300〜1500℃の炉から熔融ガラスが入った坩堝を取り出し、15〜20秒間、攪拌、振とうした後、カーボン製の鋳型(60mm×40mm×10mm〜15mm)に熔融ガラスを流し込み、徐冷炉内に入れて歪を除く。
得られたガラス内部を、光学顕微鏡(倍率100倍)を用いて観察し、析出した結晶の数をカウントし、ガラス1kg当たりに含まれる結晶数を算出して、結晶の数密度(個/kg)とする。
上記方法により評価したNo.1〜59の各ガラスの結晶の数密度は、すべて、0個/kgであった。
比較のため、特許文献1の実施例No.3およびNo.5の組成、特許文献2の実施例No.16の組成について、再現実験を行った。カチオン%表示に換算した特許文献1の実施例No.3およびNo.5の組成を表2に、特許文献2の実施例No.16の組成を表1に示す。
さらに、カチオン比Ti4+/B3+を除き、光学ガラスIの要件を満たし、カチオン比Ti4+/B3+が0.804と光学ガラスIのカチオン比Ti4+/B3+よりも小さい組成について、原料を熔融してガラス化を試みた。この組成を組成Aと呼ぶ。組成Aを表1に示す。
さらに、カチオン比Ti4+/B3+を除き、光学ガラスIIの要件を満たし、カチオン比Ti4+/B3+が0.803と光学ガラスIIのカチオン比Ti4+/B3+よりも小さい組成について、原料を熔融してガラス化を試みた。この組成を組成Bと呼ぶ。組成Bを表2に示す。
特許文献1の実施例No.3およびNo.5の組成、特許文献2の実施例No.16の組成、組成Aについては、熔融物が白濁し、ガラス化しなかった。
組成Bは、ガラス化したものの、上記ガラス製造時に析出する結晶の数密度の測定法により、ガラス中に析出した結晶の数密度を測定したところ、998個/kgであった。
上述の評価方法により求められる結晶の数密度が1000個/kg未満であること、より好ましくは500個/kg未満であること、さらに好ましくは300個/kg未満であること、一層好ましくは200個/kg未満であること、より一層好ましくは100個/kg未満であること、さらに一層好ましくは50個/kg未満であること、なお一層好ましくは20個/kg未満であること、さらになお一層好ましくは0個/kgであること、を、より一層優れたガラス安定性を有する均質な光学ガラスであることの指標とすることができる。
次にNo.1〜70の各光学ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブを次のようにして作製した。
まず、上記各ガラスが得られるようにガラス原料を調合し、白金製坩堝または白金合金製坩堝に投入し、加熱、熔融し、清澄、撹拌して均質な熔融ガラスを得た。次に、熔融ガラスを流出パイプから一定流量で流出し、流出パイプの下方に水平に配置した鋳型に鋳込み、一定の厚みを有するガラス板を成形した。成形されたガラス板を鋳型側面に設けた開口部から水平方向へと連続して引き出し、ベルトコンベアにてアニール炉内へと搬送し、徐冷した。
徐冷したガラス板を切断または割断してガラス片を作製し、これらガラス片をバレル研磨してプレス成形用ガラスゴブにした。
なお、流出パイプの下方に円筒状の鋳型を配置し、この鋳型内に熔融ガラスを鋳込んで円柱状ガラスに成形し、鋳型底部の開口部から一定の速度で鉛直下方に引き出した後、徐冷し、切断もしくは割断してガラス片を作り、これらガラス片をバレル研磨してプレス成形用ガラスゴブを得ることもできる。
プレス成形用ガラスゴブの作製例1と同様に熔融ガラスを流出パイプから流出し、成形型で流出する熔融ガラス下端を受けた後、成形型を急降下し、表面張力によって熔融ガラス流を切断し、成形型上に所望の量の熔融ガラス塊を得た。そして、成形型からガスを噴出してガラスに上向きの風圧を加え、浮上させながらガラス塊に成形し、成形型から取り出してアニールした。それからガラス塊をバレル研磨してプレス成形用ガラスゴブとした。
プレス成形用ガラスゴブの作製例2で得た各プレス成形用ガラスゴブの全表面に窒化ホウ素粉末からなる離型剤を均一に塗布した後、上記ゴブを加熱により軟化してプレス成形し、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの各種レンズ、プリズムのブランクを作製した。
プレス成形用ガラスゴブの作製例1と同様にして熔融ガラスを作製し、熔融ガラスを窒化ホウ素粉末の離型剤を均一に塗布した下型成形面に供給し、下型上の熔融ガラス量が所望量になったところで熔融ガラス流を切断刃で切断した。
こうして下型上に得た熔融ガラス塊を上型と下型でプレスし、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの各種レンズ、プリズムのブランクを作製した。
光学素子ブランクの作製例1、2で作製した各ブランクをアニールした。アニールによってガラス内部の歪を低減するとともに、屈折率などの光学特性が所望の値になるようにした。
次に各ブランクを研削および研磨して凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの各種レンズ、プリズムを作製した。得られた光学素子の表面には反射防止膜をコートしてもよい。
プレス成形用ガラスゴブの作製例1と同様にしてガラス板および円柱状ガラスを作製し、得られたガラス成形体をアニールして内部の歪を低減するとともに、屈折率などの光学特性が所望の値になるようした。
次にこれらガラス成形体を切断、研削および研磨して凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなどの各種レンズ、プリズムのブランクを作製した。得られた光学素子の表面に反射防止膜をコートしてもよい。
Zr4+の含有量に対するZr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量のカチオン比[(Zr4++Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/Zr4+]が2以上、B3+の含有量に対するTi4+の含有量のカチオン比(Ti4+/B3+)が0.85以上、であり、アッベ数νdが23〜35の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(1)式:
nd≧2.205−(0.0062×νd) ・・・ (1)
を満たす酸化物ガラスである光学ガラス、が提供される。
nd≧2.540−(0.02×νd) ・・・ (2)
を満たす酸化物ガラスである光学ガラスが提供される。
例えば、上述の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを作製することができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。
Claims (9)
- Si4+、B3+、La3+、Ti4+、Nb5+、およびZr4+を必須成分とし、
カチオン%表示で、
Si4+およびB3+を合計で15〜30.40%、
La3+を15〜35%(但し、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+を合計で60%以下)、
Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+を合計で23〜45%(但し、Ti4+を22%超)、
含み、
Y3+の含有量は15%以下であり、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するBa2+の含有量のカチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.40以下、
La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するGd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量のカチオン比[(Gd3++Y3++Yb3+)/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.02以上、
Zr4+の含有量に対するZr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量のカチオン比[(Zr4++Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/Zr4+]が2以上、
B3+の含有量に対するTi4+の含有量のカチオン比(Ti4+/B3+)が0.85以上、
であり、
アッベ数νdが18以上35未満の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(2)式を満たす酸化物ガラスである光学ガラス。
nd≧2.540−(0.02×νd) ・・・ (2) - Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するNb5+およびTa5+の合計含有量のカチオン比[(Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)]が0.41以下である請求項1に記載の光学ガラス。
- Nb5+の含有量は20カチオン%以下である請求項1または2に記載の光学ガラス。
- Nb5+の含有量に対するNb5+およびTa5+の合計含有量のカチオン比[(Nb5++Ta5+)/Nb5+]が7以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+の合計含有量は0〜10%の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- W6+の含有量は0〜10カチオン%の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学ガラス。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブ。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子ブランク。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。
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