JP2020067076A - スクロール - Google Patents

スクロール Download PDF

Info

Publication number
JP2020067076A
JP2020067076A JP2018202054A JP2018202054A JP2020067076A JP 2020067076 A JP2020067076 A JP 2020067076A JP 2018202054 A JP2018202054 A JP 2018202054A JP 2018202054 A JP2018202054 A JP 2018202054A JP 2020067076 A JP2020067076 A JP 2020067076A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
base plate
involute
scroll
plate portion
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018202054A
Other languages
English (en)
Inventor
匠 丸山
Takumi Maruyama
匠 丸山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Resonac Holdings Corp
Original Assignee
Showa Denko KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Showa Denko KK filed Critical Showa Denko KK
Priority to JP2018202054A priority Critical patent/JP2020067076A/ja
Publication of JP2020067076A publication Critical patent/JP2020067076A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Rotary Pumps (AREA)
  • Forging (AREA)

Abstract

【課題】 高い疲労強度を確保することで、小型化、軽量化に対応し、且つ低コストで製造できるスクロールを提供する。【解決手段】 Si:10〜11質量%、Cu:2〜3質量%、Mg:0.2〜0.6質量%、残部がAl及び不可避不純物のアルミニウム合金鍛造品からなり、ベースプレート部2には、該ベースプレート部2の各面に直交する方向から見て、隣り合うインボリュート部31,32に挟まれた領域に、一方のインボリュート部31に向かう第1塑性流動部51と他方のインボリュート部32に向かう第2塑性流動部52とにメタルフローが分岐するメタルフロー分岐部5が形成される。該メタルフロー分岐部5は、ベースプレート部2の厚さをHとしたとき、該ベースプレート部2の厚み方向においてインボリュート部31,32が形成される一方の面から1/2H以内に位置させる。【選択図】図7

Description

本発明は、自動車エアコン用コンプレッサーに用いられるスクロールに関する。
近年の自動車業界における燃費向上の要求から、自動車に使用されるカーエアコン用のコンプレッサーには軽量化、高機能化が求められている。
コンプレッサーは、車両のエンジンの電気化に伴い、エンジン出力で稼働するものから、エンジン出力を必要としない電動化が進んでおり、コンプレッサーの各種部品はさらに小型化・軽量化が求められている。
カーエアコン用コンプレッサーには種々の形式が存在するが、小型コンプレッサーとしてスクロール型が普及している。
コンプレッサーに用いられるスクロール等の部材は、鉄鋼材料や鋳鉄材料に代えて、重量に対する強度の比である比強度が高いアルミニウム合金を使用することが指向され、高温雰囲気下の過酷な環境でも使用し得る高温高強度を有し、かつ摺動時の耐摩耗性に優れるAl−Si系合金などのアルミニウム合金からなる鍛造品が注目されるようになっている。
この種のアルミニウム合金鍛造材は、例えば特許文献1に記載されているように、所定の成分組成のアルミニウム合金を金型鋳造にて成形し、所定の熱処理を施すことで製造することが知られている。
特開平6−114489号公報
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の鍛造方法によるアルミニウム合金鍛造品では、十分な疲労強度を確保するために、小型化、軽量化することが難しかった。
また、スクロールの小型化に伴いアルミニウム合金の高強度化が要求されるが、高強度なアルミニウム合金鍛造品を製造する場合、切削性の悪さや金型寿命の低下によるコスト増大が課題となることがある。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたもので、高い疲労強度を確保することで、小型化、軽量化に対応し、且つ低コストで製造しうるスクロールを提供することを課題としている。
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を備えるものである。
[1]Si:10〜11質量%、Cu:2〜3質量%、Mg:0.2〜0.6質量%、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、
ベースプレート部と、前記ベースプレート部の一方の面から突出するインボリュート部と、前記ベースプレート部の他方の面から突出するボス部と、を備え鍛造により成形されたコンプレッサー用のスクロールであって、
前記ベースプレート部には、該ベースプレート部の各面に直交する方向から見て、隣り合うインボリュート部に挟まれた領域に、一方のインボリュート部に向かう第1塑性流動部と他方のインボリュート部に向かう第2塑性流動部とにメタルフローが分岐するメタルフロー分岐部が形成され、
該メタルフロー分岐部は、前記ベースプレート部の厚さをHとしたとき、該ベースプレート部の厚み方向において前記インボリュート部が形成される一方の面から1/2H以内の位置にあることを特徴とするスクロール。
[2]前記ベースプレート部と前記インボリュート部の結合部にアール部またはテーパ部が形成されていることを特徴とする前項1に記載のスクロール。
[3]前記ベースプレート部と前記ボス部の結合部にアール部またはテーパ部が形成されていることを特徴とする前項1または2に記載のスクロール。
[4]さらにMn:0.01〜0.5質量%を含有するアルミニウム合金からなることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載のスクロール。
[5]Si:10〜11質量%、Cu:2〜3質量%、Mg:0.2〜0.6質量%、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、
ベースプレート部と、前記ベースプレート部の一方の面から突出するインボリュート部と、前記ベースプレート部の他方の面から突出するボス部と、を備え鍛造により成形されたコンプレッサー用のスクロールの製造方法であって、
前記ベースプレート部には、該ベースプレート部の各面に直交する方向から見て、隣り合うインボリュート部に挟まれた領域に、一方のインボリュート部に向かう第1塑性流動部と他方のインボリュート部に向かう第2塑性流動部とにメタルフローが分岐するメタルフロー分岐部が形成され、
該メタルフロー分岐部は、前記ベースプレート部の厚さをHとしたとき、該ベースプレート部の厚み方向において前記インボリュート部が形成される一方の面から1/2H以内の位置にあることを特徴とするスクロールの製造方法。
[6]前記ベースプレート部と前記インボリュート部の結合部にアール部またはテーパ部が形成されていることを特徴とする前項5に記載のスクロールの製造方法。
[7]前記ベースプレート部と前記ボス部の結合部にアール部またはテーパ部が形成されていることを特徴とする前項5または6に記載のスクロールの製造方法。
[8]さらにMn:0.01〜0.5質量%を含有するアルミニウム合金からなることを特徴とする前項5〜7のいずれかに記載のスクロールの製造方法。
本発明者らは、前記した課題を解決するため鋭意研究の結果、特定のメタルフローとすることで高い疲労強度を確保することができるコンプレッサー用のスクロールを得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、スクロールにおいては、その使用時に、インボリュート部に荷重が作用することで、インボリュート部の根元の部位にあたるインボリュート部とベースプレート部の結合部近傍に最大主応力が作用し、その方向はベースプレート部の面方向に近い斜め方向であることに着目した。
上記[1]、[5]の発明によると、メタルフロー分岐部がインボリュート部が形成される一方の面から1/2H以内の位置にあるため、インボリュート部の根元の部位にあたるインボリュート部とベースプレート部の結合部近傍では、メタルフロー分岐部近傍から一方のインボリュート部に向かう第1塑性流動部と他方のインボリュート部に向かう第2塑性流動部のメタルフローが、ベースプレート部の面方向に近い斜め方向になって最大主応力方向に概ね一致させて、最大主応力をおよそメタルフローの方向で受けることができ、これにより高い疲労強度を確保して、スクロールの小型化、軽量化に対応することができる。
また、各元素の含有量を上記所定範囲としたことにより、切削性に優れ、金型寿命の長期化を図ることができ、これにより低コストで製造することができる。
上記[2]、[6]の発明によると、ベースプレート部とインボリュート部の結合部の応力集中を軽減してより高い疲労強度を有するスクロールを得ることができる。
上記[3]、[7]の発明によると、ベースプレート部とボス部の結合部の応力集中を軽減してより高い疲労強度を有するスクロールを得ることができる。
上記[4]、[8]の発明によると、所定量のMnを含有することで、Mn系晶出物が晶出し、再結晶する際ピンニング効果を発揮し微細再結晶させ強度を向上させる。また一部鋳造時に固溶しその後人工時効処理を施すことでMn系化合物が析出し、強度を向上することができる。
本発明の一実施形態にかかるスクロールの断面図である。 同スクロールを斜め下方から見た斜視図である。 スクロールの製造工程を表す工程図の一例である。 スクロールの鍛造工程を表す工程図の一例である。 スクロールの鍛造時の断面図である。 スクロールのメタルフローを表す断面図である。 スクロールのメタルフロー分岐部の位置を示す説明図である。 スクロールのメタルフロー分岐部の位置を示す説明図である。 スクロールのメタルフローと最大主応力の説明図である。
図1は本発明の一実施形態にかかるスクロールの断面図、図2は同スクロールを斜め下方から見た斜視図である。
このスクロール1は、自動車エアコン用コンプレッサーに用いられる部品であり、エンジンの出力を必要としない電動化されたコンプレッサー用の電動スクロールとして好適に使用される。
このスクロール1は、ベースプレート部2と、前記ベースプレート部2の一方の面21から突出するインボリュート部3と、前記ベースプレート部2の他方の面22から突出するボス部4と、を備える。
ベースプレート部2とインボリュート部3の結合部には応力集中を軽減するためテーパ部33が形成されている。
ベースプレート部3とボス部4の結合部にも応力集中を軽減するためテーパ部41が形成されている。
これらテーパ部33,41は凹曲面のアール部としてもよい。
このスクロール1は、Si、Cu、Mgを所定量含有し、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなる。
また任意添加元素として、Mnを所定量含有することが好ましい。
Siはアルミニウム母相と共晶組織を形成し、共晶Siとして微細且つ均一に分布することで引張強さ等の強度を向上させる。しかしながら、過剰に添加をするとアルミニウム合金自体の強度が上昇し、鍛造金型の寿命を縮めることとなる。Si量が10質量%未満の場合、切削性が悪化し、11質量%を超えると、鍛造金型寿命が低下し、高コストにつながる。よってSiの添加量は10〜11質量%とする。より好ましくは10.3〜10.7質量%が望ましい。
Cuは鋳造時にアルミニウム母相中に固溶し、均質化処理、鍛造工程を通じて析出・粗大化するが、溶体化処理において再固溶し、過飽和固溶体を形成する。その後人工時効処理を施すことでCuAl2化合物として析出し、アルミニウム合金の高強度化をもたらす。Cuが2質量%未満の場合、切削性が悪化し、3質量%を超えると過剰強度となり、鍛造金型寿命を低下させ、高コストにつながる。よってCuの添加量は2〜3質量%とする。より好ましくは2.2〜2.8質量%が望ましい。
MgはCuと同様に溶体化処理において再固溶し、過飽和固溶体を形成する。その後人工時効処理を施すことでAl−Cu−Mg系やMg−Si系の化合物として析出し、アルミニウム合金の高強度化をもたらす。Mgが0.2質量%未満の場合、切削性が悪化し、0.6質量%を超えると過剰強度となり鍛造金型寿命を低下させ、高コストにつながる。よってMgの添加量は0.2〜0.6質量%とする。より好ましくは0.3〜0.5質量%が望ましい。
MnはAl−Mn−Si系化合物として鋳造時に晶出すると同時に、アルミニウム母相中に一部固溶する。Al−Mn−Si系化合物は熱間鍛造時にピンニング効果を発揮し再結晶粗大化を防止する。また人工時効処理時にはAl−Mn系化合物として析出し、高強度化をもたらす。Mnが0.01質量%未満の場合は再結晶抑制効果や時効硬化能力が得られず強度が不十分となる。0.5質量%を超えると鋳造時に粗大晶出物として化合物を形成し、アルミニウム合金の靭性を低下させる。よってMnは0.01〜0.5質量%とする。より好ましくは0.1〜0.4質量%が望ましい。
その他不純物として不可避的に入る元素は何でも良いが、Fe、Ni、Cr、Zn、Ti、Zr、Pb、Sn、Sb、Srは最大0.5質量%まで許容される。0.5質量%を超えると、粗大晶出物として晶出され、アルミニウム合金の靭性を低下や鍛造金型寿命の低下をもたらす。
このような組成のアルミニウム合金は、鉄鋼材料や鋳鉄材料に比べて重量に対する強度の比である比強度が高く、高温雰囲気下の過酷な環境でも使用し得る高温高強度を有し、且つ摺動時の耐摩耗性に優れる。
また、切削性に優れ、金型寿命の長期化を図ることができ、これにより低コストで製造することができる。
以下、このスクロールの製造工程について説明する。
図3はスクロールの製造工程を表す工程図の一例である。
連続鋳造工程では、成分調整された例えばアルミニウム合金溶湯を連続鋳造する。本実施形態では電動スクロールを想定し、例えば直径60〜90mm程度の寸法で鋳造される。
得られた鋳造材は、鋳造時に生じる晶出物の偏析等を均質にするため均質化処理を施す。均質化処理は加熱温度を450〜520℃、処理時間を0.5〜6時間とするのがよい。
均質化処理された鋳造材は、鋳造肌を除去するため、ピーリングを施す。このピーリングは省略してもよい。
連続鋳造材は所定の長さ又は所定の重量に切断し、鍛造用素材とする。
なお鍛造用素材としては、連続鋳造材に押出工程を施して得られる押出材を採用してもよい。
この場合、連続鋳造工程では押出用ビレットを得る。押出用ビレットは、例えば直径150〜310mm程度の寸法がよい。
押出用ビレットには均質化処理を施す。均質化処理は加熱温度を450〜520℃、処理時間を0.5〜6時間とするのがよい。
均質化処理を施した押出用ビレットは所定の長さ又は所定の重量に切断する。切断長さは押出機のコンテナ長さに依存するが、例えば1000〜1600mm程度とするのがよい。
押出用ビレットは、必要に応じて所定の直径となるよう面削を行う。間接押出機の場合、鋳造肌の巻き込みを抑制する必要があるため、面削を行う必要がある。直接押出機では鋳造破断の巻き込みは起こらないため通常必要ないが、押出用素材の直径が大きすぎる場合や曲がりが大きい場合等、必要に応じて面削を行う。面削を行う場合、鋳造時の直径に対し1〜10mm程度の面削とするのが良い。
押出用ビレットは熱間押出工程を施し押出材を得る。押出工程は、押出用ビレットは300〜450℃とし、押出機コンテナ温度は300〜400℃、押比は5〜20、押出製品速度は0.5〜6m/minとするのがよい。
得られた押出材は、押出後の曲がり矯正のためストレッチ処理を施す。ストレッチの荷重は特に指定しないが、1〜30ton程度とするのが良い。
このようにして得られた押出材を所定の長さ又は所定の重量に切断し、鍛造用素材とできる。
連続鋳造材または押出材を切断して得られた鍛造用素材は、鍛造工程を施し鍛造材を得る。この鍛造工程については後に詳述する。
鍛造材は均質化処理時または鍛造時に固溶していた元素が析出・粒成長するため、再固溶させ過飽和固溶体を得るために溶体化処理を施す。溶体化処理の加熱温度は460〜525℃とし、溶体化処理時間は0.5〜8時間とするのがよい。
加熱した鍛造材は過飽和固溶状態を保持するために焼き入れ処理を施す。焼き入れ処理は、10〜80℃の水で急冷するのがよい。
さらに鍛造材は強度を向上させるため人工時効処理を施す。人工時効処理の加熱処理温度は150℃〜220℃とし、処理時間は1〜18時間とするのが良い。
人工時効処理された鍛造材は、所定の形状に機械加工にて切削され、半製品形状となる。
半製品形状となった鍛造材には所定の表面加工を施すが、本実施形態では例えばショットピーニングを施す。ショットピーニング工程によれば、鍛造材の表面近傍に塑性加工を加え疲労強度を向上させる。砥粒サイズは1mm以下程度がよく、砥粒種はSUS304、アルミナ等、ピーニング圧力は1MPa以下とするのがよい。
次に鍛造工程について説明する。
図4は本発明におけるスクロールの鍛造工程を表す工程図の一例である。
鍛造用素材は一定温度に加熱し鍛造前加熱を施す。素材温度は300℃〜500℃とするのがよい。
鍛造時の焼き付き防止や鍛造荷重の低減を目的とし、鍛造金型へ潤滑剤の塗布を行う。潤滑剤の種類は特に問わないが、ラード等の動物性油脂やなたね油等の植物性油等が挙げられる。潤滑剤塗布量は特に問わないが、2〜30g程度とするのがよい。
鍛造金型への潤滑剤の塗布が完了次第、加熱済み鍛造素材を鍛造金型内に投入し鍛造プレスを実施する。鍛造金型温度は100〜300℃とするのがよい。
鍛造プレス完了後、ノックにより鍛造品の取り出しを行い、鍛造品を得る。
なおこの鍛造工程は、複数回の成形を行ってもよい。
二段階の成形を行う場合、一次成形では所定の形状に予備成形を行い、二次成形で最終形状に鍛造する。
一次成形の素材温度は300〜500℃、鍛造金型温度は100〜300℃とするのがよい。
得られた一次成形品を再度鍛造金型へ装填し、鍛造プレスを実施して二次成形を行う。二次成形の鍛造金型温度は100〜300℃とするのがよい。素材加熱は一次鍛造のままでも、再度加熱を施してもよい。再度加熱を施す場合、加熱温度は300〜500℃とするのがよい。
図5は本発明におけるスクロールの鍛造時の断面図である。
この鍛造工法において、下型61のワーク設置孔62に鍛造素材を装填して、上型63を打ち込むことにより、鍛造素材を加圧して、メタルを羽根部成形凹部64および背面側凸部65にそれぞれ流し込んでインボリュート部3およびボス部4を成形して鍛造品のスクロール1を得る。
鍛造方法においては、羽根部成形凹部64の下方より背圧を加えながら上型63を打ち込む背圧鍛造を用いることもある。
また鍛造方法においては、上述したように2段階の成形を行ってもよく、一次成形では所定の形状に予備成形を行い、二次成形で最終形状に鍛造してもよい。
図6は、スクロールを鍛造した際のメタルフローを概念的に表したスクロール全体の断面図である。
この図において、矢印は断面各部のメタルフローの向きを表現している。
この図に示すように、本発明におけるスクロール1の鍛造では、各インボリュート部3‥の先端およびボス部4‥の先端にメタルが動かず滞留しているデッドゾーンD‥が形成されている。
また、ベースプレート部2の隣り合うインボリュート部3,3の間の各領域にも、横断面視で三角形状のデッドゾーンDが形成されている。
この三角形状のデッドゾーンDの上側の頂点近傍では、そこより左側のインボリュート部3に向かうメタルフローと右側のインボリュート部3に向かうメタルフローとにメタルフローが分岐している。
図7は、メタルフローが分岐するメタルフロー分岐部の位置を示す説明図である。なおこのメタルフローは最終成形時(鍛造が完了した時点)を表している。
この図に示すように、ベースプレート部2には、該ベースプレート部2の上面22または下面21に直交する上下方向から見て、隣り合うインボリュート部3,3に挟まれた領域に、一方のインボリュート部31に向かう第1塑性流動部51と他方のインボリュート部32に向かう第2塑性流動部52とにメタルフローが分岐するメタルフロー分岐部5が形成されている。
なお隣り合うインボリュート部3,3に挟まれた領域では、一方のインボリュート部31に向かう第1塑性流動部51および他方のインボリュート部32に向かう第2塑性流動部52は、ベースプレート部2の厚み方向に広がりを有するが、メタルフロー分岐部5とは、これらのメタルフローの最も下側の部位であり、さらに下側に位置するデッドゾーンとの境界となる部位である。
図8は、スクロールの平面視においてメタルフロー分岐部の位置を示す説明図である。
メタルフロー分岐部5はスクロール1の平面視において隣り合うインボリュート部3,3に挟まれた領域に渦巻き状に連続的に形成されている。
本発明においては、図7に示すように、メタルフロー分岐部5は、ベースプレート部2の厚さをHとしたとき、該ベースプレート部2の厚み方向においてインボリュート部3が形成される下面からの距離Pが、1/2H以内の位置に形成されるように制御される。
このメタルフロー分岐位置5の制御は、例えば素材温度、金型温度、鍛造速度等の鍛造条件、ベースプレートの肉厚、インボリュートの体積等の鍛造品設計条件を適宜設定するとによって行うことができる。
図9は、スクロールのメタルフローと最大主応力の説明図である。
スクロール1においては、その使用時に、インボリュート部3に荷重が作用することで、インボリュート部3の根元の部位にあたるインボリュート部3とベースプレート部2の結合部近傍に最大主応力Fが作用し、その方向はベースプレート部2の面方向に近い斜め方向である。
本実施形態のスクロール1では、メタルフロー分岐部5がインボリュート部3が形成される一方の面21から1/2H以内の位置、すなわち一方の面21に近い位置にあるため、メタルフロー分岐部5近傍から一方のインボリュート部31に向かう第1塑性流動部51と他方のインボリュート部32に向かう第2塑性流動部52のメタルフローが、ベースプレート部2の面方向に近い斜め方向になって、最大主応力Fの方向に概ね一致することになる。
仮にメタルフロー分岐部5がインボリュート部3が形成される一方の面21からより離れた位置にあると、メタルフロー分岐部5近傍から一方のインボリュート部31に向かう第1塑性流動部のメタルフロー54は、ベースプレート部2の厚み方向に近い角度となって、最大主応力Fの方向とは異なる方向になる。
鍛造品においては、メタルフローの方向では結晶がファイバー状に形成され、へき開破壊を防止するとともに、粒内破壊により伸びが向上し、高い疲労強度が得られる。
本実施形態のスクロール1では、インボリュート部3の根元の部位にあたるインボリュート部3とベースプレート部2の結合部近傍において、最大主応力Fをおよそメタルフローの方向で受けることができ、これにより高い疲労強度を確保して、スクロールの小型化、軽量化に対応することができる。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
Figure 2020067076
表1に示す組成に調整したアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造にてφ82の直径で鋳造し鋳造材を得た。鋳造時の冷却速度は15℃/secで実施した。得られた鋳造材を470℃×7hrにて均質化処理を施し、空冷した。
上記鋳造材を長さ30mmに切断後、素材温度420℃、金型温度180℃で電動スクロール形状に鍛造した。
上記鍛造材を、495℃×3hrで加熱し、加熱後30℃の水にて水焼き入れを行い、180℃×8hrにて人工時効処理を施し、鍛造T6品を得た。
得られた鍛造T6品を切削加工し、半製品の電動スクロールを得た。
以上の製造工程の過程で、切削性(バイトの交換頻度)及び金型寿命を調査した結果を表1に示す。
なお切削性の評価基準は、バイトチップの交換頻度が10万回以上を「〇」、10万回未満を「×」とした。
また金型寿命の評価基準は、破損までの鍛造回数が5万回以上を「〇」、5万回未満を「×」とした。
実施例1、2に示すように、本件発明の組成範囲内では、切削性及び金型寿命とも優れ、これにより低コストで製造できることが分かる。
比較例1、3、5及び7に示すように、Si、Cu、Mg及びMnの各含有量が過多だと金型寿命が短くなることが分かる。
一方、比較例2、4及び6に示すように、Si、Cu及びMgの各含有量が過少だと切削性が低下することが分かる。
本発明によれば、自動車エアコン用コンプレッサー、特に電動化されたコンプレッサーのスクロールとして使用される。
1:スクロール
2:ベースプレート部
3:インボリュート部
33:テーパ部
4:ボス部
41:テーパ部
5:メタルフロー分岐部
51:第1塑性流動部
52:第2塑性流動部
D:デッドゾーン
H:ベースプレート部の厚さ
P:メタルフロー分岐部のベースプレート部の一方の面からの距離
F:最大主応力

Claims (8)

  1. Si:10〜11質量%、Cu:2〜3質量%、Mg:0.2〜0.6質量%、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、
    ベースプレート部と、前記ベースプレート部の一方の面から突出するインボリュート部と、前記ベースプレート部の他方の面から突出するボス部と、を備え鍛造により成形されたコンプレッサー用のスクロールであって、
    前記ベースプレート部には、該ベースプレート部の各面に直交する方向から見て、隣り合うインボリュート部に挟まれた領域に、一方のインボリュート部に向かう第1塑性流動部と他方のインボリュート部に向かう第2塑性流動部とにメタルフローが分岐するメタルフロー分岐部が形成され、
    該メタルフロー分岐部は、前記ベースプレート部の厚さをHとしたとき、該ベースプレート部の厚み方向において前記インボリュート部が形成される一方の面から1/2H以内の位置にあることを特徴とするスクロール。
  2. 前記ベースプレート部と前記インボリュート部の結合部にアール部またはテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール。
  3. 前記ベースプレート部と前記ボス部の結合部にアール部またはテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール。
  4. さらにMn:0.01〜0.5質量%を含有するアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスクロール。
  5. Si:10〜11質量%、Cu:2〜3質量%、Mg:0.2〜0.6質量%、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、
    ベースプレート部と、前記ベースプレート部の一方の面から突出するインボリュート部と、前記ベースプレート部の他方の面から突出するボス部と、を備え鍛造により成形されたコンプレッサー用のスクロールの製造方法であって、
    前記ベースプレート部には、該ベースプレート部の各面に直交する方向から見て、隣り合うインボリュート部に挟まれた領域に、一方のインボリュート部に向かう第1塑性流動部と他方のインボリュート部に向かう第2塑性流動部とにメタルフローが分岐するメタルフロー分岐部が形成され、
    該メタルフロー分岐部は、前記ベースプレート部の厚さをHとしたとき、該ベースプレート部の厚み方向において前記インボリュート部が形成される一方の面から1/2H以内の位置にあることを特徴とするスクロールの製造方法。
  6. 前記ベースプレート部と前記インボリュート部の結合部にアール部またはテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のスクロールの製造方法。
  7. 前記ベースプレート部と前記ボス部の結合部にアール部またはテーパ部が形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載のスクロールの製造方法。
  8. さらにMn:0.01〜0.5質量%を含有するアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のスクロールの製造方法。
JP2018202054A 2018-10-26 2018-10-26 スクロール Pending JP2020067076A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018202054A JP2020067076A (ja) 2018-10-26 2018-10-26 スクロール

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018202054A JP2020067076A (ja) 2018-10-26 2018-10-26 スクロール

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020067076A true JP2020067076A (ja) 2020-04-30

Family

ID=70389910

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018202054A Pending JP2020067076A (ja) 2018-10-26 2018-10-26 スクロール

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020067076A (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0857573A (ja) * 1994-08-19 1996-03-05 Yamada Seisakusho Kk スクロール部材の成形方法
JPH10272536A (ja) * 1997-03-28 1998-10-13 Kobe Steel Ltd 鍛造スクロール部品の製造方法
JP2005153017A (ja) * 2003-10-30 2005-06-16 Showa Denko Kk 鍛造用金型、鍛造製品の製造方法、および鍛造生産システム
JP2006043770A (ja) * 2004-07-08 2006-02-16 Showa Denko Kk 成形品製造方法、鍛造用金型、成形品、および鍛造生産システム

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0857573A (ja) * 1994-08-19 1996-03-05 Yamada Seisakusho Kk スクロール部材の成形方法
JPH10272536A (ja) * 1997-03-28 1998-10-13 Kobe Steel Ltd 鍛造スクロール部品の製造方法
JP2005153017A (ja) * 2003-10-30 2005-06-16 Showa Denko Kk 鍛造用金型、鍛造製品の製造方法、および鍛造生産システム
JP2006043770A (ja) * 2004-07-08 2006-02-16 Showa Denko Kk 成形品製造方法、鍛造用金型、成形品、および鍛造生産システム

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5678099B2 (ja) 構造部材製造用アルミニウム合金製品およびその製造方法
RU2406773C2 (ru) Деформированный алюминиевый сплав системы алюминий-цинк-магний-скандий и способ его получения
CN108893659B (zh) 一种汽车结构件用铝合金及其型材的加工方法
CN107743526A (zh) 用于获得由6xxx铝合金制成的用于牵引孔眼的高强度固体挤出产品的制造方法
JP6057855B2 (ja) 切削用アルミニウム合金押出材
EP2563944A1 (en) Damage tolerant aluminium material having a layered microstructure
CN113293273A (zh) 一种紧固件用2xxx系铝合金棒材、线材的加工方法
EP2072628A1 (en) High strength crash resistant aluminium alloy
US20090028743A1 (en) Forming magnesium alloys with improved ductility
JPH09249951A (ja) 微細組織を有するアルミ鍛造製品の製造方法
WO2018161311A1 (en) Aluminum alloys
CN111424200A (zh) 一种高强高耐热低钪银添加的Al-Cu-Mg系合金及其热处理工艺
CN112853169A (zh) 一种高强度的铝合金螺栓及其制造方法
WO2017185173A1 (en) Corrosion resistant alloy for extruded and brazed products
CN115698356A (zh) 在高温下具有良好性能的铝铜镁合金产品的应用
JP2001020047A (ja) アルミニウム合金鍛造用素材およびその製造方法
CN100371485C (zh) 切削性、填缝性和耐磨损性良好的铝合金挤压材
JP7358759B2 (ja) スクロール部材およびスクロール鍛造品の製造方法
JP7318284B2 (ja) コンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金およびコンプレッサー摺動部品鍛造品
CN114892051B (zh) 一种铝合金汽车传动轴管及其制造方法
JP2020067076A (ja) スクロール
JP2020067077A (ja) スクロール
JP2020067078A (ja) スクロール
JPH09209069A (ja) 展伸用耐磨耗性Al合金及び展伸用耐磨耗性Al合金よりなるスクロール、並びにそれらの製造方法
JP2020067075A (ja) スクロール

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210720

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220512

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220531

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20221206

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20230131

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20230201

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20230307