JP2020046317A - 電圧推定装置及び電圧推定方法 - Google Patents

電圧推定装置及び電圧推定方法 Download PDF

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俊雄 小田切
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慎司 広瀬
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Abstract

【課題】電圧センサが故障していて電池の電圧を検出することができない状態において、その電池の閉回路電圧により電池が過充電状態または過放電状態でないと誤判断されることを低減する。【解決手段】電池B1〜B3の充電時、故障していない各電圧センサSv2、Sv3に対応する電池B2、B3の充電率のうちの最大の充電率を用いて、故障している電圧センサSv1に対応する電池B1の開回路電圧及び内部抵抗を推定し、電池B1〜B3の放電時、電池B2、B3の充電率のうちの最小の充電率を用いて、電池B1の開回路電圧及び内部抵抗を推定し、推定された電池B1の開回路電圧と、電池B1〜B3に流れる電流と推定された電池B1の内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、電池B1の閉回路電圧として推定する。【選択図】図1

Description

本発明は、電池の電圧を推定する技術に関する。
電圧推定装置として、互いに直列接続される三つ以上の電池と、各電池にそれぞれ並列接続される電圧センサとを備え、各電池に電流が流れているときに電圧センサにより検出される電圧を、その電圧センサに対応する電池の閉回路電圧として測定するものがある。
しかしながら、上記電圧推定装置では、電圧センサが故障していて電池の電圧を検出することができない状態であると、電池の閉回路電圧を測定することができない。
そのため、上記電圧推定装置により測定される閉回路電圧により電池が過充電状態または過放電状態であるか否かを判断する場合では、電圧センサが故障していて電池の閉回路電圧を測定することができない状態であると、電池が実際には過充電状態または過放電状態であるにもかかわらず、電池が過充電状態または過放電状態でないと誤判断されるおそれがある。
関連する技術として、特許文献1〜4がある。
特開2000−357541号公報 特開2014−131452号公報 特開2015−231763号公報 特開2008−043188号公報
本発明の一側面に係る目的は、互いに直列接続される三つ以上の電池のうちのある電池に対応する電圧センサが故障していて電池の電圧を検出することができない状態において、その電池の閉回路電圧により電池が過充電状態または過放電状態でないと誤判断されることを低減することである。
本発明に係る一つの形態である電圧推定装置は、互いに直列接続される三つ以上の電池に流れる電流を検出する電流センサと、電池の電圧を検出する三つ以上の電圧センサと、電流の積算値を用いて、電池の充電率を推定する充電率推定部と、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定する開回路電圧推定部と、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定する内部抵抗推定部と、推定された開回路電圧と、電池に流れる電流と推定された内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧として推定する閉回路電圧推定部とを備える。
これにより、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率以外の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定する場合に比べて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を大きく見積もることができる。そのため、その大きく見積もった開回路電圧を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を推定することにより、その推定した閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率以外の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定する場合に比べて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を小さく見積もることができる。また、一般的に、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率以外の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定する場合に比べて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を大きく見積もることができる。そのため、その比較的小さく見積もった開回路電圧と比較的大きく見積もった内部抵抗とを用いて、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を推定することにより、その推定した閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと判断されることを低減することができる。
また、電圧推定装置は、電池の開回路電圧を用いて、電池の充電率を補正する補正部を備え、開回路電圧推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、故障している電圧センサに対応する電池の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、内部抵抗推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、故障している電圧センサに対応する電池の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定するように構成してもよい。
これにより、電池の充電率が補正される前の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的高い場合において、その推定精度が比較的高い充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を精度よく推定することができるため、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態または過放電状態であるにもかかわらず、過充電状態及び過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の充電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の放電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるとともに、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を比較的大きく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧と比較的大きく見積もった内部抵抗を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電圧推定装置は、充電率と開回路電圧との対応関係を示す充電用SOC−OCV曲線、及び、充電用SOC−OCV曲線と異なる、充電率と開回路電圧との対応関係を示す放電用SOC−OCV曲線を記憶する記憶部を備え、開回路電圧推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、電池の充電時、充電用SOC−OCV曲線を参照して、故障している電圧センサに対応する電池の充電率に対応する開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、電池の放電時、放電用SOC−OCV曲線を参照して、故障している電圧センサに対応する電池の充電率に対応する開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定するように構成してもよい。
これにより、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線上または放電用SOC−OCV曲線上に存在し、かつ、電池の充電率が補正される前の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的高い場合において、充電用SOC−OCV曲線または放電用SOC−OCV曲線を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の充電率を精度よく推定することができるため、その充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を精度よく推定することができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態または過放電状態であるにもかかわらず、過充電状態及び過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電圧推定装置は、充電用SOC−OCV曲線、放電用SOC−OCV曲線、及び、充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の線分を所定の内分点で内分するときの内分比と、充電前後または放電前後の電池の容量差との対応関係を示す内分比情報を記憶する記憶部を備え、開回路電圧推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、内分比情報を参照して、故障している電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた内分比と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障している電圧センサに対応する電池の充電率とを用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定するように構成してもよい。
これにより、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池の充電率が補正される前の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的高い場合において、充電用SOC−OCV曲線または放電用SOC−OCV曲線と内分比情報とを用いて、故障している電圧センサに対応する電池の充電率を精度よく推定することができるため、その充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を精度よく推定することができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態または過放電状態であるにもかかわらず、過充電状態及び過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、開回路電圧推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、電池の充電時、充電用SOC−OCV曲線を参照して、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率に対応する開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、電池の放電時、放電用SOC−OCV曲線を参照して、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率に対応する開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定するように構成してもよい。
これにより、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線上に存在し、かつ、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の充電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が放電用SOC−OCV曲線上に存在し、かつ、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の放電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、開回路電圧推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、電池の充電時、内分比情報を参照して、故障している電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた内分比と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率とを用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、電池の放電時、内分比情報を参照して、故障している電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた内分比と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率とを用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定するように構成してもよい。
これにより、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の充電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の放電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、開回路電圧推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、電池の充電時、内分比情報を参照して、故障していない各電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた各内分比のうちの最大の内分比と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率とを用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、電池の放電時、内分比情報を参照して、故障していない各電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた各内分比のうちの最小の内分比と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率とを用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定するように構成してもよい。
これにより、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の充電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の放電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、本発明に係る一つの形態である電圧推定装置は、互いに直列接続される三つ以上の電池のそれぞれの電圧を検出する三つ以上の電圧センサと、電池に流れる電流を検出する電流センサと、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定する開回路電圧推定部と、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧に対応する充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧に対応する充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定する内部抵抗推定部と、推定された開回路電圧と、電池に流れる電流と推定された内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧として推定する閉回路電圧推定部とを備える。
これにより、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧以外の開回路電圧を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定する場合に比べて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を大きく見積もることができる。そのため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を推定することにより、その推定した閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧以外の開回路電圧を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定する場合に比べて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を小さく見積もることができる。また、一般的に、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧以外の開回路電圧を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定する場合に比べて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を大きく見積もることができる。そのため、その比較的小さく見積もった開回路電圧と比較的大きく見積もった内部抵抗とを用いて、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を推定することにより、その推定した閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと判断されることを低減することができる。
また、開回路電圧推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、故障している電圧センサに対応する電池の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、内部抵抗推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、故障している電圧センサに対応する電池の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧に対応する充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、電池の放電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧に対応する充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定するように構成してもよい。
これにより、電池の充電率が補正される前の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的高い場合において、その推定精度が比較的高い充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を精度よく推定することができるため、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態または過放電状態であるにもかかわらず、過充電状態及び過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の充電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の放電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるとともに、故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を比較的大きく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、開回路電圧推定部は、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、電池の充電時、内分比情報を参照して、故障していない各電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた各内分比と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率とを用いて、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧を求め、その求めた各開回路電圧のうちの最大の開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、電池の放電時、内分比情報を参照して、故障していない各電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた各内分比と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率とを用いて、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧を求め、その求めた各開回路電圧のうちの最小の開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定するように構成してもよい。
これにより、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の充電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、電池の分極が比較的大きく、かつ、電池の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池の充電率が補正された後の、故障している電圧センサに対応する電池の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池の放電時、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧を用いて推定される、故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
本発明によれば、互いに直列接続される三つ以上の電池のうちのある電池に対応する電圧センサが故障していて電池の電圧を検出することができない状態において、その電池の閉回路電圧により電池が過充電状態または過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
実施形態の電圧推定装置を示す図である。 SOC−OCV曲線、充電用SOC−OCV曲線、及び放電用SOC−OCV曲線の一例を示す図である。 内分比情報及び内部抵抗情報の一例を示す図である。 実施例1における演算部の動作の一例を示すフローチャートである。 実施例2における演算部の動作の一例を示すフローチャートである。 ステップS84の変形例(その1)の具体的動作を説明するための図である。 ステップS84の変形例(その2)の具体的動作を説明するための図である。 実施例3における演算部の動作の一例を示すフローチャートである。 実施例4における演算部の動作の一例を示すフローチャートである。 ステップS113の変形例の具体的動作を説明するための図である。
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
図1は、実施形態の電圧推定装置を示す図である。
図1に示す電圧推定装置1は、互いに直列接続される電池B1〜B3のそれぞれの閉回路電圧を推定するものであって、電圧センサSv1〜Sv3と、電流センサSiと、温度センサStと、記憶部2と、演算部3とを備える。なお、電池や電圧センサの数は、三つに限定されず、四つ以上でもよい。また、電池B1〜B3を区別しない場合、単に、電池Bとする。また、電圧センサSv1〜Sv3を区別しない場合、単に、電圧センサSvとする。
<電池Bについて>
電池B1〜B3は、それぞれ、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池により構成される。負荷Loまたは充電器Chから電池B1〜B3に電力が供給されているとき、すなわち、電池B1〜B3に充電電流が流れているとき、電池B1〜B3が充電され、電池B1〜B3の電圧と充電率が高くなるものとする。また、電池B1〜B3から負荷Loに電力が供給されているとき、すなわち、電池B1〜B3に放電電流が流れているとき、電池B1〜B3が放電され、電池B1〜B3の電圧と充電率が低くなるものとする。なお、充電電流と放電電流とを区別しない場合、単に、電流という。また、充電率は、電池Bの満充電容量に対する現在の容量の割合[%]とする。また、電池Bの充電率が低くなると、電池Bの内部抵抗が高くなり、電池Bの温度が高くなると、電池Bの内部抵抗が低くなり、電池Bの劣化度合が高くなると、電池Bの内部抵抗が高くなるものとする。
<電圧センサSvについて>
電圧センサSv1〜Sv3は、それぞれ、IC(Integrated Circuit)などにより構成される。また、電圧センサSv1〜Sv3は、それぞれ、対応する電池Bに並列接続され、その対応する電池Bの電圧に応じた電圧を出力する。すなわち、電圧センサSv1は電池B1に並列接続され、電池B1の電圧に応じた電圧を出力する。また、電圧センサSv2は電池B2に並列接続され、電池B2の電圧に応じた電圧を出力する。また、電圧センサSv3は電池B3に並列接続され、電池B3の電圧に応じた電圧を出力する。なお、電圧センサSv1〜Sv3から出力される電圧は演算部3に入力される。
<電流センサSiについて>
電流センサSiは、シャント抵抗またはホール素子などにより構成される。また、電流センサSiは、電池B1〜B3に直列接続され、電池B1〜B3に流れる充電電流または放電電流に応じた電圧を出力する。なお、電流センサSiから出力される電圧は演算部3に入力される。
<温度センサStについて>
温度センサStは、サーミスタなどにより構成される。また、温度センサStは、電池B1〜B3の温度に応じた電圧を出力する。なお、温度センサStから出力される電圧は演算部3に入力される。
<記憶部2について>
記憶部2は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。また、記憶部2は、SOC−OCV曲線、及び、内部抵抗情報などを記憶している。または、記憶部2は、充電用SOC−OCV曲線、放電用SOC−OCV曲線、内分比情報、及び、内部抵抗情報などを記憶している。
図2(a)は、SOC−OCV曲線の一例を示す図である。なお、図2に示す直交座標の横軸は電池Bの充電率[%]を示し、縦軸は電池Bの開回路電圧[V]を示している。
図2に示すSOC−OCV曲線は、電池Bの充電率と開回路電圧との対応関係を示す情報であり、SOC−OCV曲線を参照することで、充電率に対応する開回路電圧を、または、開回路電圧に対応する充電率を、一意に求めることができるものとする。図2(a)に示すSOC−OCV曲線では、100[%]の充電率に対応する開回路電圧が0[%]の充電率に対応する開回路電圧よりも大きく、充電率が大きくなるほど、開回路電圧が大きくなるものとする。
ところで、電池B1〜B3が、シリコン負極を有する電池など、分極が比較的大きい電池である場合、充電終了後の分極解消時に得られる充電率と開回路電圧との対応関係を示す充電用SOC−OCV曲線と、放電終了後の分極解消時に得られる充電率と開回路電圧との対応関係を示す放電用SOC−OCV曲線とが互いに異なる。
そのため、分極が比較的大きい電池Bの閉回路電圧を推定する場合では、SOC−OCV曲線の代わりに、充電用SOC−OCV曲線または放電用SOC−OCV曲線を用いて電池Bの収束後の開回路電圧を推定し、その推定した開回路電圧を用いて閉回路電圧を推定することが望ましい。
図2(b)は、充電用SOC−OCV曲線及び放電用SOC−OCV曲線の一例を示す図である。なお、図2(b)に示す直交座標の横軸は電池Bの充電率[%]を示し、縦軸は電池Bの開回路電圧[V]を示している。
図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線は、充電が終了してから所定時間経過後に取得される電池Bの充電率と開回路電圧との対応関係を示す情報であり、充電用SOC−OCV曲線を参照することで、充電率に対応する開回路電圧を、または、開回路電圧に対応する充電率を、一意に求めることができる。図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線では、100[%]の充電率に対応する開回路電圧が0[%]の充電率に対応する開回路電圧よりも大きく、充電率が大きくなるほど、開回路電圧が大きくなるものとする。また、開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線上に存在しているときに電池Bが微小な容量分放電されても、開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線上に継続して存在するものとする。
図2(b)に示す放電用SOC−OCV曲線は、放電が終了してから所定時間経過後に取得される電池Bの充電率と開回路電圧との対応関係を示す情報であり、放電用SOC−OCV曲線を参照することで、充電率に対応する開回路電圧を、または、開回路電圧に対応する充電率を、一意に求めることができる。図2(b)に示す放電用SOC−OCV曲線では、100[%]の充電率に対応する開回路電圧が0[%]の充電率に対応する開回路電圧よりも大きく、充電率が大きくなるほど、開回路電圧が大きくなるものとする。また、開回路電圧と充電率との交点が放電用SOC−OCV曲線上に存在しているときに電池Bが微小な容量分充電されても、開回路電圧と充電率との交点が放電用SOC−OCV曲線上に継続して存在するものとする。また、充電率0〜100[%]において、充電率が同じである場合に、放電用SOC−OCV曲線の開回路電圧は、充電用SOC−OCV曲線の開回路電圧より小さくなるものとする。
図3(a)は、内分比情報の一例を示す図である。なお、図3(a)に示す直交座標の横軸は充電前後または放電前後の電池Bの容量差[Ah]を示し、縦軸は内分比を示している。充電前後とは、充電開始から充電終了までを示す。従って、充電前後の電池Bの容量差とは、充電終了時の電池Bの容量と充電開始時の電池Bの容量との容量差を示す。また、放電前後とは、放電開始から放電終了までを示す。従って、放電前後の電池Bの容量差とは、放電開始時の電池Bの容量と放電終了時の電池Bの容量との容量差を示す。また、内分比とは、充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の開回路電圧軸方向の線分または充電率軸方向の線分を、開回路電圧と充電率との交点で内分するときの充電用SOC−OCV曲線から交点までの長さと放電用SOC−OCV曲線から交点までの長さの比p:1−pのpとする。または、内分比とは、充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の開回路電圧軸方向の線分または充電率軸方向の線分を、開回路電圧と充電率との交点で内分するときの放電用SOC−OCV曲線から交点までの長さと充電用SOC−OCV曲線から交点までの長さの比p:1−pのpとする。
図3(a)に示す内分比情報は、充電前後または放電前後の電池Bの容量差と内分比との対応関係を示す情報であり、内分比情報を参照することで、充電前後または放電前後の電池Bの容量差に対応する内分比を一意に求めることができる。
また、図3(a)に示す内分比情報では、1の内分比に対する容量差をCth[Ah]とする。Cth>0。
このように、Cth[Ah]の容量差に対応する内分比が1である場合、開回路電圧と充電率との交点が放電用SOC−OCV曲線上に存在している状態からCth[Ah]以上の容量が充電された場合、開回路電圧と充電率との交点は、充電用SOC−OCV曲線上に存在する。また、開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線上に存在している状態からCth[Ah]以上の容量が放電された場合、開回路電圧と充電率との交点は、放電用SOC−OCV曲線上に存在する。
図3(b)及び図3(c)は、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、内分比との関係を示す図である。なお、図3(b)及び図3(c)に示す充電用SOC−OCV曲線及び放電用SOC−OCV曲線は、図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線及び放電用SOC−OCV曲線の一部を拡大した図である。
図3(b)に示すように、開回路電圧と充電率との交点d1が放電用SOC−OCV曲線上に存在している状態からCth[Ah]未満の容量が充電された場合、開回路電圧と充電率との交点d2は、充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に移動する。つまり、内分比が0や1でない場合、内分比が0に近いほど、開回路電圧と充電率との交点d2が放電用SOC−OCV曲線に近くなり、内分比が1に近いほど、開回路電圧と充電率との交点d2が充電用SOC−OCV曲線に近くなる。
また、図3(c)に示すように、開回路電圧と充電率との交点c1が充電用SOC−OCV曲線上に存在している状態からCth[Ah]未満の容量が放電された場合、開回路電圧と充電率との交点c2は、充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に移動する。つまり、内分比が0や1でない場合、内分比が0に近いほど、開回路電圧と充電率との交点c2が充電用SOC−OCV曲線に近くなり、内分比が1に近いほど、開回路電圧と充電率との交点c2が放電用SOC−OCV曲線に近くなる。
すなわち、開回路電圧と充電率との交点d1が放電用SOC−OCV曲線上に存在している状態から充電したときの充電前後の容量差がCth[Ah]以上である場合、充電用SOC−OCV曲線を用いて、開回路電圧から充電率を、または、充電率から開回路電圧を求めることができる。
また、開回路電圧と充電率との交点c1が充電用SOC−OCV曲線上に存在している状態から放電したときの放電前後の容量差がCth[Ah]以上である場合、放電用SOC−OCV曲線を用いて、開回路電圧から充電率を、または、充電率から開回路電圧を求めることができる。
また、開回路電圧と充電率との交点d1が放電用SOC−OCV曲線上に存在している状態から充電したときの充電前後の容量差がCth[Ah]未満である場合、充電前後の容量差から内分比を求め、その求めた内分比から充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在する開回路電圧と充電率との交点を求め、その求めた交点と開回路電圧から充電率を、または、その求めた交点と充電率から開回路電圧を求めることができる。
また、開回路電圧と充電率との交点c1が充電用SOC−OCV曲線上に存在している状態から放電したときの放電前後の容量差がCth[Ah]未満である場合、放電前後の容量差から内分比を求め、その求めた内分比から充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在する開回路電圧と充電率との交点を求め、その求めた交点と開回路電圧から充電率を、または、その求めた交点と充電率から開回路電圧を求めることができる。
ここで、図3(a)に示す内分比情報の求め方の一例について説明する。なお、充電率が100[%]であるときの電池Bの容量を100[Ah]とし、電池Bの充電率が1[%]増加すると、充電前後の電池Bの容量差aが1[Ah]増加するものとする。
図3(b)に示す放電用SOC−OCV曲線上の交点d1に対応する充電前の電池Bの充電率が50.0[%]であり、図3(b)に示す交点d2に対応する充電後の電池Bの充電率が52.5[%]であり、図3(b)に示すp:(1−p)が0.6:0.4である場合を想定する。
このような場合、交点d1に対応する充電前の電池Bの容量は50.0[Ah]であり、交点d2に対応する充電後の電池Bの容量は52.5[Ah]であり、交点d1から交点d2に変化するときの充電前後の電池Bの容量差aは2.5[Ah]=52.5[Ah]−50.0[Ah]であるため、放電用SOC−OCV曲線上の交点d1に対応する充電率が50[%]であるときに用いられる内分比情報として、2.5[Ah]の容量差aと0.6の内分比pとが対応付けられていることを示す内分比情報を求めることができる。
また、図3(b)に示す放電用SOC−OCV曲線上の交点d1に対応する充電前の電池Bの充電率が50.0[%]であり、図3(b)に示す交点d2に対応する充電後の電池Bの充電率が55.0[%]であり、図3(b)に示すp:(1−p)が0.9:0.1である場合を想定する。
このような場合、交点d1に対応する充電前の電池Bの容量は50.0[Ah]であり、交点d2に対応する充電後の電池Bの容量は55.0[Ah]であり、交点d1から交点d2に変化するときの充電前後の電池Bの容量差aは5.0[Ah]=55.0[Ah]−50.0[Ah]であるため、放電用SOC−OCV曲線上の交点d1に対応する充電率が50[%]であるときに用いられる内分比情報として、5.0[Ah]の容量差aと0.9の内分比pとが対応付けられていることを示す内分比情報を求めることができる。
このように、開回路電圧と充電率との交点が放電用SOC−OCV曲線上に存在している状態から充電したときの充電前後の容量差aを変えながら、それぞれの容量差aに対応する内分比pを取得し、複数の容量差aと内分比pの点をプロットして図3(a)に示す内分比情報を求める。
なお、交点d1に対応する充電率が50[%]でないときの内分比情報は、交点d1に対応する充電率が50[%]であるときに求められた内分比情報を用いても良い。また、内分比情報の求め方は、交点d1に対応する充電率が50[%]であるときに限らず、他の充電率であっても構わない。また、内分比情報の求め方は、図3(b)に示す放電用SOC−OCV曲線上に交点d1がある状態から、所定量の充電をして求める方法に限らず、図3(c)に示す充電用SOC−OCV曲線上に交点c1がある状態から、所定量の放電をして求める方法でも良い。
図3(d)は、内部抵抗情報の一例を示す図である。なお、図3(d)に示す直交座標の横軸は電池Bの充電率[%]を示し、右方向に行くほど値が大きくなるものとする。また、図3(d)に示す直交座標の縦軸は電池Bの内部抵抗[Ω]を示し、上方向に行くほど値が大きくなるものとする。
図3(d)に示す内部抵抗情報は、電池Bの充電率と、電池Bの内部抵抗との対応関係を示す情報であり、図3(d)に示す内部抵抗情報を参照することで、電池Bの充電率に対応する内部抵抗を一意に求めることができる。また、一般的に、電池Bの充電率と、電池Bの内部抵抗との対応関係は、図3(d)に示す内部抵抗情報のように、充電率が小さい場合に、内部抵抗が大きいものとする。
<演算部3について>
図1に示す演算部3は、CPU(Central Processing Unit)またはプログラマブルなディバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device))などにより構成され、電流検出部31と、電圧検出部32と、温度検出部33と、故障判断部34と、充電率推定部35と、劣化度合推定部36と、補正部37と、開回路電圧推定部38と、内部抵抗推定部39と、閉回路電圧推定部40とを備える。なお、CPUまたはプログラマブルなディバイスが記憶部2などに記憶されるプログラムを実行することにより、電流検出部31、電圧検出部32、温度検出部33、故障判断部34、充電率推定部35、劣化度合推定部36、補正部37、開回路電圧推定部38、内部抵抗推定部39、及び閉回路電圧推定部40が実現されるものとする。
<電流検出部31について>
電流検出部31は、電流センサSiから出力される電圧を用いて電池B1〜B3に流れる電流を検出する。
一例として、電流検出部31は、記憶部2に記憶されている、電流センサSiの出力電圧と電池B1〜B3に流れる電流との対応関係を示す電流情報を参照して、電流センサSiから出力される電圧に対応するプラス符号の電流を、電池B1〜B3に流れる充電電流として検出し、電流センサSiから出力される電圧に対応するマイナス符号の電流を、電池B1〜B3に流れる放電電流として検出する。
<電圧検出部32について>
電圧検出部32は、電流検出部31により検出される充電電流または放電電流がゼロでないとき、電圧センサSv1から出力される電圧を電池B1の閉回路電圧として検出し、電圧センサSv2から出力される電圧を電池B2の閉回路電圧として検出し、電圧センサSv3から出力される電圧を電池B3の閉回路電圧として検出する。
また、電圧検出部32は、電流検出部31により検出される充電電流または放電電流がゼロであるときで、かつ、電池B1〜B3の分極が解消されているとき、電圧センサSv1から出力される電圧を、電池B1の開回路電圧として検出し、電圧センサSv2から出力される電圧を、電池B2の開回路電圧として検出し、電圧センサSv3から出力される電圧を、電池B3の開回路電圧として検出する。
<温度検出部33について>
温度検出部33は、温度センサStから出力される電圧を用いて、電池B1〜B3の温度を検出する。
一例として、温度検出部33は、記憶部2に記憶されている、温度センサStの出力電圧と電池B1〜B3の温度との対応関係を示す温度情報を参照して、温度センサStから出力される電圧に対応する温度を、電池B1〜B3の温度として検出する。
<故障判断部34について>
故障判断部34は、電圧センサSvが故障しているか否かを判断する。一例として、故障判断部34は、電圧センサSvから出力される電圧が所定電圧範囲に入っている場合、その電圧センサSvが故障していないと判断し、電圧センサSvから出力される電圧が所定電圧範囲に入っていない場合、その電圧センサSvが故障していると判断する。なお、所定電圧範囲とは、電圧センサSv及び電圧検出部32が正常であるときに、電圧検出部32が検出することが可能な電圧の範囲またはその範囲の一部とする。また、電圧センサSvの故障の一例としては、電圧センサSvを構成するIC内の部品の破損などが考えられる。他の例として、故障判断部34は、電圧センサSvを構成するICによる自己故障判断の結果により電圧センサSvが故障しているか否かを判断する。
<充電率推定部35について>
充電率推定部35は、電池B1〜B3の充電時、電流検出部31により検出される充電電流の積算値を用いて、電池B1〜B3の充電率を推定し、電池B1〜B3の放電時、電流検出部31により検出する放電電流の積算値を用いて、電池B1〜B3の充電率を推定する。
<劣化度合推定部36について>
劣化度合推定部36は、電池B1〜B3の劣化度合を推定する。
一例として、劣化度合推定部36は、電池Bの満充電容量の初期値に対する現在の満充電容量の割合[%]を、電池Bの劣化度合として推定する。
<補正部37について>
補正部37は、電池B1〜B3の開回路電圧を用いて、電池B1〜B3の充電率を補正する。
一例として、補正部37は、電池B1〜B3の充電開始前または放電開始前(電池B1〜B3に充電電流及び放電電流が流れていないとき)、図2(a)に示すSOC−OCV曲線、図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線、または、図2(b)に示す放電用SOC−OCV曲線を参照して、電圧検出部32により検出される電池Bの開回路電圧に対応する充電率を求め、電池Bの現在の充電率を、その求めた充電率に置き換えることで、電池Bの充電率を補正する。すなわち、「電池Bの充電率を補正する」とは、充放電時に電流の積算値を用いて推定される電池Bの充電率を、SOC−OCV曲線を参照し充放電が流れていないときの電池Bの電圧を用いて求められる充電率に置き換えることを示す。
<開回路電圧推定部38について>
開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電時または放電時、電池B1〜B3の充電率を用いて、電池B1〜B3の開回路電圧を推定する。
<内部抵抗推定部39について>
内部抵抗推定部39は、充電率推定部35により推定される充電率を用いて、電池Bの内部抵抗を推定する。
<閉回路電圧推定部40について>
閉回路電圧推定部40は、電圧検出部32により検出される閉回路電圧を、電池Bの閉回路電圧として推定する。または、閉回路電圧推定部40は、開回路電圧推定部38により推定される開回路電圧、電流検出部31により検出される電流、及び内部抵抗推定部39により推定される内部抵抗を用いて、電池Bの閉回路電圧を推定する。
<実施例1>
図4は、実施例1における演算部3の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS81において、故障判断部34は、電圧センサSv1〜Sv3が故障しているか否かを判断する。
次に、電圧センサSv1〜Sv3が故障していないと判断されると(ステップS81:No)、ステップS82において、閉回路電圧推定部40は、電圧検出部32の検出結果により電池B1〜B3の閉回路電圧を測定する。
一方、電圧センサSv1が故障していると判断されると(ステップS81:Yes)、ステップS83において、充電率推定部35は、故障していない電圧センサSv2、Sv3に対応する電池B2、B3の充電率を推定する。
(図4に示すステップS83の具体的動作)
充電率推定部35は、「電池B2の現在の充電率+(電流検出部31により検出される充電電流または放電電流の積算値/電池B2の満充電容量)×100」の計算結果を、電池B2の充電率として推定し、「電池B3の現在の充電率+(電流検出部31により検出される充電電流または放電電流の積算値/電池B3の満充電容量)×100」の計算結果を、電池B3の充電率として推定する。
次に、ステップS84において、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電時、ステップS83で充電率推定部35により推定された電池B2、B3の充電率のうちの最大の充電率SOCmaxを用いて、電池B1の開回路電圧を推定し、電池B1〜B3の放電時、ステップS83で充電率推定部35により推定された電池B2、B3の充電率のうちの最小の充電率SOCminを用いて、電池B1の開回路電圧を推定する。これにより、電池B1〜B3の充電時、最大の充電率SOCmax以外の充電率を用いて、電池B1の開回路電圧を推定する場合に比べて、電池B1の開回路電圧を大きく見積もることができる。また、電池B1〜B3の放電時、最小の充電率SOCmin以外の充電率を用いて、電池B1の開回路電圧を推定する場合に比べて、電池B1の開回路電圧を小さく見積もることができる。
(図4に示すステップS84の具体的動作(その1))
一例として、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電時、図2(a)に示すSOC−OCV曲線を参照して、電池B2、B3の充電率のうちの最大の充電率SOCmaxに対応する開回路電圧OCVmaxを、電池B1の開回路電圧として推定し、電池B1〜B3の放電時、図2(a)に示すSOC−OCV曲線を参照して、電池B2、B3の充電率のうちの最小の充電率SOCminに対応する開回路電圧OCVminを、電池B1の開回路電圧として推定する。
(図4に示すステップS84の具体的動作(その2))
他の例として、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電時、図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線を参照して、電池B2、B3の充電率のうちの最大の充電率SOCmaxに対応する開回路電圧OCVcmaxを、電池B1の開回路電圧として推定し、電池B1〜B3の放電時、図3(b)に示す放電用SOC−OCV曲線を参照して、電池B2、B3の充電率のうちの最小の充電率SOCminに対応する開回路電圧OCVdminを、電池B1の開回路電圧として推定する。
次に、ステップS85において、内部抵抗推定部39は、電池B1〜B3の充電時、ステップS83で充電率推定部35により推定された電池B2、B3の充電率のうちの最大の充電率SOCmaxを用いて、電池B1の内部抵抗Rcを推定し、電池B1〜B3の放電時、ステップS83で充電率推定部35により推定された電池B2、B3の充電率のうちの最小の充電率SOCminを用いて、電池B1の内部抵抗Rdを推定する。これにより、電池B1〜B3の放電時、最小の充電率SOCmin以外の充電率を用いて、電池B1の内部抵抗を推定する場合に比べて、電池B1の内部抵抗を大きく見積もることができる。
なお、ステップS84とステップS85を入れ替えてもよい。
(図4に示すステップS85の具体的動作)
内部抵抗推定部39は、電池B1〜B3の充電時、図3(d)に示す内部抵抗情報を参照して、最大の充電率SOCmax[%]に対応するRc[Ω]を、電池B1の内部抵抗として推定し、電池B1〜B3の放電時、最小の充電率SOCmin[%]に対応するRd[Ω]を、電池B1の内部抵抗として推定する。
そして、ステップS86において、閉回路電圧推定部40は、ステップS84で開回路電圧推定部38により推定された電池B1の開回路電圧と、電流検出部31により検出される電流とステップS85で内部抵抗推定部39により推定された電池B1の内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、電池B1の閉回路電圧として推定し、電圧検出部32の検出結果により電池B2、B3の閉回路電圧を測定する。
(図4に示すステップS86の具体的動作(その1))
閉回路電圧推定部40は、電池B1〜B3の充電時、図2(a)に示すように、開回路電圧推定部38により最大の充電率SOCmaxを用いて推定された電池B1の開回路電圧OCVmaxと、電流検出部31により検出される充電電流+Iと内部抵抗推定部39により最大の充電率SOCmaxを用いて推定された電池B1の内部抵抗Rcとの乗算値+I×Rcとを加算した結果(OCVmax+(+I×Rc))を、電池B1の閉回路電圧CCVcとして推定する。
これにより、電池B1の開回路電圧が比較的大きく見積もられているため、その開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧CCVcを、過充電状態であるか否かを判断するための閾値CCVcthに近づけることができる。
また、閉回路電圧推定部40は、電池B1〜B3の放電時、図2(a)に示すように、開回路電圧推定部38により最小の充電率SOCminを用いて推定された電池B1の開回路電圧OCVminと、電流検出部31により検出される放電電流−Iと内部抵抗推定部39により最小の充電率SOCminを用いて推定された電池B1の内部抵抗Rdとの乗算値−I×Rdとを加算した結果(OCVmin+(−I×Rd))を、電池B1の閉回路電圧CCVdとして推定する。
これにより、電池B1の開回路電圧が比較的小さく見積もられているとともに、電池B1の内部抵抗が比較的大きく見積もられているため、その開回路電圧及び内部抵抗を用いて推定される電池B1の閉回路電圧CCVdを、過放電状態であるか否かを判断するための閾値CCVdthに近づけることができる。
実施例1の電圧推定装置1によれば、電池B1の閉回路電圧CCVcを、過充電状態であるか否かを判断するための閾値CCVcthに近づけることができるため、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、実施例1の電圧推定装置1によれば、電池B1の閉回路電圧CCVdを、過放電状態であるか否かを判断するための閾値CCVdthに近づけることができるため、電池B1が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
(図4に示すステップS86の具体的動作(その2))
閉回路電圧推定部40は、電池B1〜B3の充電時、図2(a)に示すように、開回路電圧推定部38により推定された電池B1の開回路電圧OCVmaxと、乗算値+I×Rcに定数αを乗算した値とを加算した結果(OCVmax+(+I×Rc)×α)を、電池B1の閉回路電圧CCVc´として推定する。
このように、乗算値+I×Rcに定数αを乗算することにより、推定される電池B1の閉回路電圧CCVc´を閾値CCVcthにさらに近づけることができ、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることをさらに低減することができる。
閉回路電圧推定部40は、電池B1〜B3の放電時、図2(a)に示すように、開回路電圧推定部38により推定された電池B1の開回路電圧OCVminと、乗算値−I×Rdに定数αを乗算した値とを加算した結果(OCVmin+(−I×Rd)×α)を、電池B1の閉回路電圧CCVd´として推定する。
このように、乗算値−I×Rdに定数αを乗算することにより、推定される電池B1の閉回路電圧CCVd´を閾値CCVdthにさらに近づけることができ、電池B1が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることをさらに低減することができる。
(図4に示すステップS86の具体的動作(その3))
閉回路電圧推定部40は、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線上に存在している場合、電池B1〜B3の充電時、図2(b)に示すように、開回路電圧推定部38により充電用SOC−OCV曲線及び最大の充電率SOCmaxを用いて推定された電池B1の開回路電圧OCVcmaxと、電流検出部31により検出される充電電流+Iと内部抵抗推定部39により最大の充電率SOCmaxを用いて推定された電池B1の内部抵抗Rとの乗算値+I×Rcとを加算した結果(OCVcmax+(+I×Rc))を、電池B1の閉回路電圧CCVccとして推定する。
これにより、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線上に存在する場合において、電池B1〜B3の充電時、電池B1の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧CCVccを、過充電状態であるか否かを判断するための閾値CCVcthに近づけることができ、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
閉回路電圧推定部40は、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が放電用SOC−OCV曲線上に存在している場合、電池B1〜B3の放電時、図2(b)に示すように、開回路電圧推定部38により放電用SOC−OCV曲線及び最小の充電率SOCminを用いて推定された電池B1の開回路電圧OCVdminと、電流検出部31により検出される放電電流−Iと内部抵抗推定部39により最小の充電率SOCminを用いて推定された内部抵抗Rdとの乗算値−I×Rdとを加算した結果(OCVdmin+(−I×Rd))を、電池B1の閉回路電圧CCVddとして推定する。
これにより、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が放電用SOC−OCV曲線上に存在する場合において、電池B1〜B3の放電時、電池B1の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるため、その開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧CCVddを、過放電状態であるか否かを判断するための閾値CCVdthに近づけることができ、電池B1が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
(図4に示すステップS86の具体的動作(その4))
閉回路電圧推定部40は、電池B1〜B3の分極が比較的大きい場合で、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線上に存在している場合、電池B1〜B3の充電時、図2(b)に示すように、開回路電圧推定部38により推定された電池B1の開回路電圧OCVcmaxと、乗算値+I×Rcに定数αを乗算した値とを加算した結果(OCVcmax+(+I×Rc)×α)を、電池B1の閉回路電圧CCVcc´として推定する。
このように、乗算値+I×Rcに定数αを乗算することにより、推定される電池B1の閉回路電圧CCVcc´を閾値CCVcthにさらに近づけることができ、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることをさらに低減することができる。
閉回路電圧推定部40は、電池B1〜B3の分極が比較的大きい場合で、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が放電用SOC−OCV曲線上に存在している場合、電池B1〜B3の放電時、図2(b)に示すように、開回路電圧推定部38により推定された開回路電圧OCVdminと、乗算値−I×Rdに定数αを乗算した値とを加算した結果(OCVdmin+(−I×Rd)×α)を、電池Bの閉回路電圧CCVdd´として推定する。
このように、乗算値−I×Rdに定数αを乗算することにより、電池B1の閉回路電圧CCVdd´を閾値CCVdthにさらに近づけることができ、電池B1が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることをさらに低減することができる。
<実施例2>
図5は、実施例2における演算部3の動作の一例を示すフローチャートである。なお、補正部37により電池B1〜B3の充電率が定期的に補正されているものとする。
まず、ステップS81において、故障判断部34は、電圧センサSv1〜Sv3が故障しているか否かを判断する。
次に、電圧センサSv1〜Sv3が故障していないと判断されると(ステップS81:No)、ステップS82において、閉回路電圧推定部40は、電圧検出部32の検出結果により電池B1〜B3の閉回路電圧を測定する。
一方、電圧センサSv1が故障していると判断されると(ステップS81:Yes)、ステップS81´において、充電率推定部35は、補正部37により、故障していない電圧センサSv2、Sv3に対応する電池B2、B3の充電率が補正された後であるか否かを判断する。
電池B2、B3の充電率が補正された後であると判断されると(ステップS81´:Yes)、ステップS83〜ステップS86が実行されることにより電池B1の閉回路電圧が推定されるとともに電池B2、B3の閉回路電圧が測定される。なお、図5に示すステップS83〜ステップS86は、図4に示すステップS83〜S86と同様であるため、その説明を省略する。
一方、電池B2、B3の充電率が補正される前であると判断されると(ステップS81´:No)、ステップS87において、充電率推定部35は、故障している電圧センサSv1に対応する電池B1の充電率を推定する。
(図5に示すステップS87の具体的動作)
充電率推定部35は、「電池B1の現在の充電率+(電流検出部31により検出される充電電流または放電電流の積算値/電池B1の満充電容量)×100」の計算結果を、電池B1の充電率として推定する。
次に、ステップS88において、開回路電圧推定部38は、ステップS87で充電率推定部35により推定された電池B1の充電率を用いて、電池B1の開回路電圧を推定する。
(図5に示すステップS88の具体的動作(その1))
開回路電圧推定部38は、図2(a)に示すSOC−OCV曲線を参照して、電池B1の充電率に対応する開回路電圧を、電池B1の開回路電圧として推定する。
(図5に示すステップS88の具体的動作(その2))
開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B1の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線上に存在している場合、電池B1〜B3の充電時、図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線を参照して、電池B1の充電率に対応する開回路電圧を、電池B1の開回路電圧として推定する。また、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B1の開回路電圧と充電率との交点が放電用SOC−OCV曲線上に存在している場合、電池B1〜B3の放電時、図2(b)に示す放電用SOC−OCV曲線を参照して、電池B1の充電率に対応する開回路電圧を、電池B1の開回路電圧として推定する。
次に、ステップS89において、内部抵抗推定部39は、ステップS87で充電率推定部35により推定された電池B1の充電率を用いて、電池B1の内部抵抗を推定する。
(ステップS89の具体的動作)
内部抵抗推定部39は、図3(d)に示す内部抵抗情報を参照して、ステップS87で充電率推定部35により推定された電池B1の充電率に対応する内部抵抗を、電池B1の内部抵抗として推定する。
なお、ステップS88とステップS89を入れ替えてもよい。
そして、ステップS90において、閉回路電圧推定部40は、ステップS88で開回路電圧推定部38により推定された電池B1の開回路電圧と、電流検出部31により検出された電流とステップS89で内部抵抗推定部39により推定された電池B1の内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、電池B1の閉回路電圧として推定し、電圧検出部32の検出結果により電池B2、B3の閉回路電圧を測定する(ステップS90)。
なお、ステップS90の具体的動作は、ステップS86の具体的動作と同様とする。
なお、ステップS81´において、電池B2、B3の充電率が補正された後であるか否かを判断する理由は、電池B2、B3の充電率が補正された後は、故障している電圧センサSv1(電池B1の電圧)を用いて電池B1の充電率も補正されるため、電池B1の電圧を用いて求められる電池B1の充電率は補正される前の充電率よりも推定精度が低いと判断できる。逆に、電池B2、B3の充電率が補正される前は、故障している電圧センサSv1を使って電池B1の充電率も補正されないため、電流の積算値を用いて推定される電池B1の充電率は電池B1の電圧を用いて求められる充電率よりも推定精度が高いと判断できる。従って、実施例2では、電池B1の充電率の推定精度が高い場合と、低い場合とで、電池B1の充電率の推定方法を変える。
実施例2の電圧推定装置1によれば、電池B2、B3の充電率が補正される前の電池B1の充電率の推定精度が比較的高い場合において、推定精度が比較的高い電池B1の充電率を用いて、電池B1の閉回路電圧を精度よく推定することができるため、電池B1が実際には過充電状態または過放電状態であるにもかかわらず、過充電状態及び過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、実施例2の電圧推定装置1によれば、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の充電時、電池B1の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、実施例2の電圧推定装置1によれば、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の放電時、電池B1の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるとともに、電池B1の内部抵抗を比較的大きく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧と比較的大きく見積もった内部抵抗とを用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値に近づけることができ、電池B1が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
(図5に示すステップS84の変形例(その1)
開回路電圧推定部38は、故障していない電圧センサSv2、Sv3に対応する電池B2、B3の充電率が補正された後、電池B1〜B3の充電時、内分比情報を参照して、故障している電圧センサSv1に対応する電池B1の容量差a1に対応する内分比p1を求め、その求めた内分比p1と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障していない電圧センサSv2、Sv3に対応する電池B2、B3の充電率のうちの最大の充電率SOCmaxとを用いて、電池B1の開回路電圧を推定するように構成してもよい。
(図5に示すステップS84の変形例(その1)の具体的動作(電池B1〜B3の充電時))
まず、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電時、図3(a)に示す内分比情報を参照して、充電前後の電池B1の容量差a1に対応する内分比p1を求める。
次に、開回路電圧推定部38は、図6(a)に示すように、放電用SOC−OCV曲線と最大の充電率SOCmaxとの交点P1から充電用SOC−OCV曲線と最大の充電率SOCmaxとの交点P2までの線分L1を、交点P1を基準として、p1:1−p1に内分するときの内分点P3を求め、その内分点P3に対応する開回路電圧OCVcを、電池B1の開回路電圧として推定する。または、開回路電圧推定部38は、図6(b)に示すように、最大の充電率SOCmaxに対応する内分点P4から放電用SOC−OCV曲線までの距離と、その内分点P4から充電用SOC−OCV曲線までの距離との比がp1:1−p1となるときの充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の充電率軸方向の線分L2に対応する開回路電圧OCVcを、電池B1の開回路電圧として推定する。
これにより、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の充電時、電池B1の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値CCVcthに近づけることができ、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、開回路電圧推定部38は、電池B2、B3の充電率が補正された後、電池B1〜B3の放電時、内分比情報を参照して、電池B1の容量差a1に対応する内分比p1を求め、その求めた内分比p1と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、電池B2、B3の充電率のうちの最小の充電率SOCminとを用いて、電池B1の開回路電圧を推定するように構成してもよい。
(図5に示すステップS84の変形例(その1)の具体的動作(電池B1〜B3の放電時))
まず、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電時、図3(a)に示す内分比情報を参照して、放電前後の電池B1の容量差a1に対応する内分比p1を求める。
次に、開回路電圧推定部38は、図6(c)に示すように、充電用SOC−OCV曲線と最小の充電率SOCminとの交点P5から放電用SOC−OCV曲線と最小の充電率SOCminとの交点P6までの線分L3を、交点P5を基準として、p1:1−p1に内分するときの内分点P7を求め、その内分点P7に対応する開回路電圧OCVdを、電池B1の開回路電圧として推定する。または、開回路電圧推定部38は、図6(d)に示すように、最小の充電率SOCminに対応する内分点P8から充電用SOC−OCV曲線までの距離と、その内分点P8から放電用SOC−OCV曲線までの距離との比がp1:1−p1となるときの充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の充電率軸方向の線分L4に対応する開回路電圧OCVdを、電池B1の開回路電圧として推定する。
これにより、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の放電時、電池B1の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値CCVdthに近づけることができ、電池B1が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
(図5に示すステップS84の変形例(その2))
開回路電圧推定部38は、故障していない電圧センサSv2、Sv3に対応する電池B2、B3の充電率が補正された後、電池B1〜B3の充電時、内分比情報を参照して、電池B2の容量差a2に対応する内分比p2を求めるとともに電池B3の容量差a3に対応する内分比p3を求め、その求めた各内分比p2、p3のうちの最大の内分比と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、電池B2、B3の充電率のうちの最大の充電率SOCmaxとを用いて、電池B1の開回路電圧を推定するように構成してもよい。
(図5に示すステップS84の変形例(その2)の具体的動作(電池B1〜B3の充電時))
まず、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電時、図3(a)に示す内分比情報を参照して、充電前後の電池B2の容量差a2に対応する内分比p2を求めるとともに充電前後の電池Bの容量差a3に対応する内分比p3を求め、その求めた各内分比p2、p3のうちの最大の内分比p2を求める。
次に、開回路電圧推定部38は、図7(a)に示すように、放電用SOC−OCV曲線と最大の充電率SOCmaxとの交点P9から充電用SOC−OCV曲線と最大の充電率SOCmaxとの交点P10までの線分L5を、交点P9を基準として、p2:1−p2に内分するときの内分点P11を求め、その内分点P11に対応する開回路電圧OCVc´を、電池B1の開回路電圧として推定する。または、開回路電圧推定部38は、図7(b)に示すように、最大の充電率SOCmaxに対応する内分点P12から放電用SOC−OCV曲線までの距離と、その内分点P12から充電用SOC−OCV曲線までの距離との比がp2:1−p2となるときの充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の充電率軸方向の線分L6に対応する開回路電圧OCVc´を、電池B1の開回路電圧として推定する。
これにより、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の充電時、電池B1の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値CCVcthに近づけることができ、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、開回路電圧推定部38は、故障していない電圧センサSv2、Sv3に対応する電池B2、B3の充電率が補正された後、電池B1〜B3の放電時、内分比情報を参照して、電池B2の容量差a2に対応する内分比p2を求めるとともに電池B3の容量差a3に対応する内分比p3を求め、その求めた各内分比p2、p3のうちの最小の内分比と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、電池B2、B3の充電率のうちの最小の充電率SOCminとを用いて、電池B1の開回路電圧を推定するように構成してもよい。
(図5に示すステップS84の変形例(その2)の具体的動作(電池B1〜B3の放電時))
まず、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電時、図3(a)に示す内分比情報を参照して、放電前後の電池B2の容量差a2に対応する内分比p2を求めるとともに放電前後の電池Bの容量差a3に対応する内分比p3を求め、その求めた各内分比p2、p3のうちの最小の内分比p3を求める。
次に、開回路電圧推定部38は、図7(c)に示すように、充電用SOC−OCV曲線と最小の充電率SOCminとの交点P13から放電用SOC−OCV曲線と最小の充電率SOCminとの交点P14までの線分L7を、交点P13を基準として、p3:1−p3に内分するときの内分点P15を求め、その内分点P15に対応する開回路電圧OCVd´を、電池B1の開回路電圧として推定する。または、開回路電圧推定部38は、図7(d)に示すように、最小の充電率SOCminに対応する内分点P16から充電用SOC−OCV曲線までの距離と、その内分点P16から放電用SOC−OCV曲線までの距離との比がp3:1−p3となるときの充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の充電率軸方向の線分L8に対応する開回路電圧OCVd´を、電池B1の開回路電圧として推定する。
これにより、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の放電時、電池B1の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値CCVdthに近づけることができ、電池B1が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
<実施例3>
図8は、実施例3における演算部3の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS111において、演算部3の故障判断部34は、電圧センサSv1〜Sv3が故障しているか否かを判断する。
次に、故障判断部34により電圧センサSv1〜Sv3が故障していないと判断されると(ステップS111:No)、ステップS112において、閉回路電圧推定部40は、電圧検出部32の検出結果により電池B1〜B3の閉回路電圧を測定する。
一方、故障判断部34により電圧センサSv1が故障していると判断されると(ステップS111:Yes)、ステップS113において、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電時、故障していない電圧センサSv2、Vs3に対応する電池B2、B3の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧を、故障している電圧センサSv1に対応する電池B1の開回路電圧として推定し、電池B1〜B3の放電時、電池B2、B3の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧を、電池B1の開回路電圧として推定する。これにより、電池B1〜B3の充電時、最大の開回路電圧以外の開回路電圧を用いて、電池B1の開回路電圧を推定する場合に比べて、電池B1の開回路電圧を大きく見積もることができる。また、電池B1〜B3の放電時、最小の開回路電圧以外の開回路電圧を用いて、電池B1の開回路電圧を推定する場合に比べて、電池B1の開回路電圧を小さく見積もることができる。
次に、ステップS114において、内部抵抗推定部39は、電池B1〜B3の充電時、電池B2、B3の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧に対応する充電率を用いて、電池B1の内部抵抗を推定し、電池B1〜B3の放電時、電池B2、B3の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧に対応する充電率を用いて、電池B1の内部抵抗を推定する。これにより、電池B1〜B3の放電時、最小の開回路電圧以外の開回路電圧に対応する充電率を用いて、電池B1の内部抵抗を推定する場合に比べて、電池B1の内部抵抗を大きく見積もることができる。
なお、ステップS113とステップS114を入れ替えてもよい。
そして、ステップS115において、閉回路電圧推定部40は、ステップS113で開回路電圧推定部38により推定された電池B1の開回路電圧と、電流検出部31により検出される電流とステップS114で内部抵抗推定部39により推定された電池B1の内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、電池B1の閉回路電圧として推定し、電圧検出部32の検出結果により電池B2、B3の閉回路電圧を測定する。図8に示すステップS115の具体的動作は、図4または図5のステップS86の具体的動作と同様とする。
(図8に示すステップS113及びステップS114の具体的動作(その1))
(電池B1〜B3の充電時)
まず、開回路電圧推定部38は、充電前の電池B1〜B3に電流が流れていないときに、故障していない電圧センサSv2、Vs3に対応する電池B2、B3の開回路電圧を予め取得しておく。
次に、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電開始時、図2(a)に示すSOC−OCV曲線または図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線を参照して、予め取得しておいた電池B2、B3の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧に対応する充電率を、電池B1の初期充電率とする。
そして、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電中、「電池B1の初期充電率+(電流検出部31により検出される充電電流の積算値/電池B1の満充電容量)×100」の計算結果を、電池B1の充電率として求め、図2(a)に示すSOC−OCV曲線または図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線を参照して、その求めた電池B1の充電率に対応する開回路電圧を、電池B1の開回路電圧として推定する。
また、内部抵抗推定部39は、電池B1〜B3の充電中、図3(d)に示す内部抵抗情報を参照して、開回路電圧推定部38により求められた電池B1の充電率に対応する内部抵抗を、電池B1の内部抵抗として推定する。
(電池B1〜B3の放電時)
まず、開回路電圧推定部38は、放電前の電池B1〜B3に電流が流れていないときに、故障していない電圧センサSv2、Vs3に対応する電池B2、B3の開回路電圧を予め取得しておく。
次に、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電開始時、図2(a)に示すSOC−OCV曲線または図2(b)に示す放電用SOC−OCV曲線を参照して、予め取得しておいた電池B2、B3の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧に対応する充電率を、電池B1の初期充電率とする。
次に、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電中、「電池B1の初期充電率+(電流検出部31により検出される放電電流の積算値/電池B1の満充電容量)×100」の計算結果を、電池B1の充電率として求め、図2(a)に示すSOC−OCV曲線または図2(b)に示す放電用SOC−OCV曲線を参照して、その求めた電池B1の充電率に対応する開回路電圧を、電池B1の開回路電圧として推定する。
また、内部抵抗推定部39は、電池B1〜B3の放電中、図3(d)に示す内部抵抗情報を参照して、開回路電圧推定部38により求められた電池B1の充電率に対応する内部抵抗を、電池B1の内部抵抗として推定する。
(図8に示すステップS113及びステップS114の具体的動作(その2))
(電池B1〜B3の充電時)
まず、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電中、故障していない電圧センサSv2、Vs3に対応する電池B2、B3の閉回路電圧を取得する。
次に、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電中、「充電開始時の電池B2の初期充電率+(電流検出部31により検出される充電電流の積算値/電池B2の満充電容量)×100」の計算結果を、電池B2の充電率として求めるとともに、「充電開始時の電池B3の初期充電率+(電流検出部31により検出される充電電流の積算値/電池B3の満充電容量)×100」の計算結果を、電池B3の充電率として求める。
次に、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電中、図3(d)に示す内部抵抗情報を参照して、求めた電池B2の充電率に対応する内部抵抗を、電池B2の内部抵抗とするとともに、求めた電池B3の充電率に対応する内部抵抗を、電池B3の内部抵抗とする。
次に、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電中、「電池B2の閉回路電圧−電流検出部31により検出される充電電流×電池B2の内部抵抗」の計算結果を、電池B2の開回路電圧とするとともに、「電池B3の閉回路電圧−電流検出部3により検出される充電電流×電池B2の内部抵抗」の計算結果を、電池B3の開回路電圧とする。
そして、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電中、電池B2、B3の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧を、電池B1の開回路電圧として推定する。
また、内部抵抗推定部39は、電池B1〜B3の充電中、図2(a)に示すSOC−OCV曲線または図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線を参照して、開回路電圧推定部38により推定された電池B1の開回路電圧に対応する充電率を求め、図3(d)に示す内部抵抗情報を参照して、その求めた充電率に対応する内部抵抗を、電池B1の内部抵抗として推定する。
(電池B1〜B3の放電時)
まず、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電中、故障していない電圧センサSv2、Vs3に対応する電池B2、B3の閉回路電圧を取得する。
次に、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電中、「放電開始時の電池B2の初期充電率+(電流検出部31により検出される放電電流の積算値/電池B2の満充電容量)×100」の計算結果を、電池B2の充電率として求めるとともに、「放電開始時の電池B3の初期充電率+(電流検出部31により検出される放電電流の積算値/電池B3の満充電容量)×100」の計算結果を、電池B3の充電率として求める。
次に、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電中、図3(d)に示す内部抵抗情報を参照して、求めた電池B2の充電率に対応する内部抵抗を、電池B2の内部抵抗とするとともに、求めた電池B3の充電率に対応する内部抵抗を、電池B3の内部抵抗とする。
次に、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電中、「電池B2の閉回路電圧−電流検出部31により検出される放電電流×電池B2の内部抵抗」の計算結果を、電池B2の開回路電圧とするとともに、「電池B3の閉回路電圧−電流検出部3により検出される放電電流×電池B2の内部抵抗」の計算結果を、電池B3の開回路電圧とする。
そして、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電中、電池B2、B3の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧を、電池B1の開回路電圧として推定する。
また、内部抵抗推定部39は、電池B1〜B3の放電中、図2(a)に示すSOC−OCV曲線または図2(b)に示す充電用SOC−OCV曲線を参照して、開回路電圧推定部38により推定された電池B1の開回路電圧に対応する充電率を求め、図3(d)に示す内部抵抗情報を参照して、その求めた充電率に対応する内部抵抗を、電池B1の内部抵抗として推定する。
実施例3の電圧推定装置1によれば、電池B1〜B3の充電時、電池B2、B3の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧以外の開回路電圧を用いて、電池B1の開回路電圧を推定する場合に比べて、電池B1の開回路電圧を大きく見積もることができる。そのため、その大きく見積もった開回路電圧を用いて、電池B1の閉回路電圧を推定することにより、その推定した閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値CCVcthに近づけることができ、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、実施例3の電圧推定装置1によれば、電池B1〜B3の放電時、電池B2、B3の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧以外の開回路電圧を用いて、電池B1の開回路電圧を推定する場合に比べて、電池B1の開回路電圧を小さく見積もることができる。また、一般的に、電池B1〜B3の放電時、電池B2、B3の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧以外の開回路電圧を用いて、電池B1の内部抵抗を推定する場合に比べて、電池B1の内部抵抗を大きく見積もることができる。そのため、その小さく見積もった開回路電圧と大きく見積もった内部抵抗とを用いて、電池B1の閉回路電圧を推定することにより、その推定した閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値CCVdthに近づけることができ、故障している電圧センサに対応する電池が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと判断されることを低減することができる。
<実施例4>
図9は、実施例4における演算部3の動作の一例を示すフローチャートである。なお、補正部37により電池B1〜B3の充電率が定期的に補正されているものとする。
まず、ステップS111において、故障判断部34は、電圧センサSv1〜Sv3が故障しているか否かを判断する。
次に、電圧センサSv1〜Sv3が故障していないと判断されると(ステップS111:No)、ステップS112において、閉回路電圧推定部40は、電圧検出部32の検出結果により電池B1〜B3の閉回路電圧を測定する。
一方、電圧センサSv1が故障していると判断されると(ステップS111:Yes)、ステップS111´において、充電率推定部35は、補正部37により電池B1〜B3の充電率が補正された後であるか否かを判断する。
電池B1〜B3の充電率が補正された後であると判断されると(ステップS111´:Yes)、ステップS113〜ステップS115が実行されることにより電池B1の閉回路電圧が推定されるとともに電池B2、B3の閉回路電圧が測定される。
なお、図9に示すステップS113〜ステップS115は、図8に示すステップS113〜S115と同様であるため、その説明を省略する。
一方、電池B1〜B3の充電率が補正される前と判断されると(ステップS111´:No)、ステップS116〜ステップS119が実行されることにより、電池B1の閉回路電圧が推定されるとともに電池B2、B3の閉回路電圧が測定される。図9に示すステップS116〜ステップS119は、図5に示すステップS87〜S90と同様であるため、その説明を省略する。
実施例4の電圧推定装置1によれば、電池B2、B3の充電率が補正される前の電池B1の充電率の推定精度が比較的高い場合において、推定精度が比較的高い電池B1の充電率を用いて、電池B1の閉回路電圧を精度よく推定することができるため、電池B1が実際には過充電状態または過放電状態であるにもかかわらず、過充電状態及び過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、実施例4の電圧推定装置1によれば、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の充電時、電池B1の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値CCVcthに近づけることができ、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、実施例4の電圧推定装置1によれば、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の放電時、電池B1の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるとともに、電池B1の内部抵抗を比較的大きく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧と比較的大きく見積もった内部抵抗とを用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値CCVdthに近づけることができ、電池B1が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
(図9に示すステップS113の変形例)
開回路電圧推定部38は、故障していない電圧センサSv2、Sv3に対応する電池B2、B3の充電率が補正された後、電池B1〜B3の充電時、内分比情報を参照して、故障していない電圧センサSv2に対応する電池B2の容量差a2に対応する内分比p2を求めるとともに故障していない電圧センサSv3に対応する電池B3の容量差a3に対応する内分比p3を求め、その求めた内分比p2、p3と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障していない電圧センサSv2に対応する電池B2の充電率SOC2と、故障していない電圧センサSv3に対応する電池B3の充電率SOC3とを用いて、電池B2、B3の開回路電圧を求め、その求めた各開回路電圧のうちの最大の開回路電圧を、故障している電圧センサSv1に対応する電池B1の開回路電圧として推定するように構成してもよい。
(図9に示すステップS113の変形例の具体的動作(電池B1〜B3の充電時))
まず、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の充電時、図3(a)に示す内分比情報を参照して、充電前後の電池B2の容量差a2に対応する内分比p2を求めるとともに充電前後の電池B3の容量差a3に対応する内分比p3を求める。
次に、開回路電圧推定部38は、図10(a)に示すように、放電用SOC−OCV曲線と充電率SOC2との交点P17から充電用SOC−OCV曲線と充電率SOC2との交点P18までの線分L9を、交点P17を基準として、p2:1−p2に内分するときの内分点P19を求め、その内分点P19に対応する開回路電圧OCV2cを、電池B2の開回路電圧として推定する。また、開回路電圧推定部38は、図10(a)に示すように、放電用SOC−OCV曲線と充電率SOC3との交点P20から充電用SOC−OCV曲線と充電率SOC3との交点P21までの線分L10を、交点P20を基準として、p3:1−p3に内分するときの内分点P22を求め、その内分点P22に対応する開回路電圧OCV3cを、電池B3の開回路電圧として推定する。
または、開回路電圧推定部38は、図10(b)に示すように、充電率SOC2に対応する内分点P23から放電用SOC−OCV曲線までの距離と、その内分点P23から充電用SOC−OCV曲線までの距離との比がp2:1−p2となるときの充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の充電率軸方向の線分L11に対応する開回路電圧OCV2cを、電池B2の開回路電圧として推定する。また、開回路電圧推定部38は、図10(b)に示すように、充電率SOC3に対応する内分点P24から放電用SOC−OCV曲線までの距離と、その内分点P24から充電用SOC−OCV曲線までの距離との比がp3:1−p3となるときの充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の充電率軸方向の線分L12に対応する開回路電圧OCV3cを、電池B3の開回路電圧として推定する。
そして、開回路電圧推定部38は、推定した電池B2の開回路電圧OCV2c及び電池B3の開回路電圧OCV3cのうちの最大の開回路電圧OCV2cを、故障している電圧センサSv1に対応する電池B1の開回路電圧として推定する。
なお、この動作により求められた最大の開回路電圧OCV2cを用いて、ステップS114で電池B1の内部抵抗を推定する。
これにより、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の充電時、電池B1の開回路電圧を比較的大きく見積もることができるため、その比較的大きく見積もった開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過充電状態であるか否かを判断するための閾値CCVcthに近づけることができ、電池B1が実際には過充電状態であるにもかかわらず、過充電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
また、開回路電圧推定部38は、故障していない電圧センサSv2、Sv3に対応する電池B2、B3の充電率が補正された後、電池B1〜B3の放電時、内分比情報を参照して、故障していない電圧センサSv2に対応する電池B2の容量差a2に対応する内分比p2を求めるとともに故障していない電圧センサSv3に対応する電池B3の容量差a3に対応する内分比p3を求め、その求めた内分比p2、p3と、充電用SOC−OCV曲線と、放電用SOC−OCV曲線と、故障していない電圧センサSv2に対応する電池B2の充電率SOC2と、故障していない電圧センサSv3に対応する電池B3の充電率SOC3とを用いて、電池B2、B3の開回路電圧を求め、その求めた各開回路電圧のうちの最小の開回路電圧を、故障している電圧センサSv1に対応する電池B1の開回路電圧として推定するように構成してもよい。
(図9に示すステップS113の変形例の具体的動作(電池B1〜B3の放電時))
まず、開回路電圧推定部38は、電池B1〜B3の放電時、図3(a)に示す内分比情報を参照して、充電前後の電池B2の容量差a2に対応する内分比p2を求めるとともに充電前後の電池B3の容量差a3に対応する内分比p3を求める。
次に、開回路電圧推定部38は、図10(c)に示すように、充電用SOC−OCV曲線と充電率SOC2との交点P25から放電用SOC−OCV曲線と充電率SOC2との交点P26までの線分L13を、交点P25を基準として、p2:1−p2に内分するときの内分点P27を求め、その内分点P27に対応する開回路電圧OCV2c´を、電池B2の開回路電圧として推定する。また、開回路電圧推定部38は、図10(c)に示すように、充電用SOC−OCV曲線と充電率SOC3との交点P28から放電用SOC−OCV曲線と充電率SOC3との交点P29までの線分L14を、交点P28を基準として、p3:1−p3に内分するときの内分点P30を求め、その内分点P30に対応する開回路電圧OCV3c´を、電池B3の開回路電圧として推定する。
または、開回路電圧推定部38は、図10(d)に示すように、充電率SOC2に対応する内分点P31から充電用SOC−OCV曲線までの距離と、その内分点P31から放電用SOC−OCV曲線までの距離との比がp2:1−p2となるときの充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の充電率軸方向の線分L15に対応する開回路電圧OCV2c´を、電池B2の開回路電圧として推定する。また、開回路電圧推定部38は、図10(d)に示すように、充電率SOC3に対応する内分点P32から充電用SOC−OCV曲線までの距離と、その内分点P32から放電用SOC−OCV曲線までの距離との比がp3:1−p3となるときの充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間の充電率軸方向の線分L16に対応する開回路電圧OCV3c´を、電池B3の開回路電圧として推定する。
そして、開回路電圧推定部38は、推定した電池B2の開回路電圧OCV2c´及び電池B3の開回路電圧OCV3c´のうちの最小の開回路電圧OCV3c´を、故障している電圧センサSv1に対応する電池B1の開回路電圧として推定する。
なお、この動作により求められた最小の開回路電圧OCV3c´を用いて、ステップS114で電池B1の内部抵抗を推定する。
これにより、電池B1〜B3の分極が比較的大きく、かつ、電池B2、B3の開回路電圧と充電率との交点が充電用SOC−OCV曲線と放電用SOC−OCV曲線との間に存在し、かつ、電池B2、B3の充電率が補正された後の電池B1の充電率の推定精度が比較的低い場合において、電池B1〜B3の放電時、電池B1の開回路電圧を比較的小さく見積もることができるため、その比較的小さく見積もった開回路電圧を用いて推定される電池B1の閉回路電圧を、過放電状態であるか否かを判断するための閾値CCVdthに近づけることができ、電池B1が実際には過放電状態であるにもかかわらず、過放電状態でないと誤判断されることを低減することができる。
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
1 電圧推定装置
2 記憶部
3 演算部
31 電流検出部
32 電圧検出部
33 温度検出部
34 故障判断部
35 充電率推定部
36 劣化度合推定部
37 補正部
38 開回路電圧推定部
39 内部抵抗推定部
40 閉回路電圧推定部

Claims (12)

  1. 互いに直列接続される三つ以上の電池に流れる電流を検出する電流センサと、
    前記電池の電圧を検出する三つ以上の電圧センサと、
    前記電流の積算値を用いて、前記電池の充電率を推定する充電率推定部と、
    前記電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、前記電池の放電時、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定する開回路電圧推定部と、
    前記電池の充電時、前記最大の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、前記電池の放電時、前記最小の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定する内部抵抗推定部と、
    推定された前記開回路電圧と、前記電流と推定された前記内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、前記故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧として推定する閉回路電圧推定部と、
    を備える電圧推定装置。
  2. 請求項1に記載の電圧推定装置であって、
    前記電池の開回路電圧を用いて、前記電池の充電率を補正する補正部を備え、
    前記開回路電圧推定部は、
    前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、前記故障している電圧センサに対応する電池の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、
    前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、前記電池の充電時、前記最大の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、前記電池の放電時、前記最小の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、
    前記内部抵抗推定部は、
    前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、前記故障している電圧センサに対応する電池の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、
    前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、前記電池の充電時、前記最大の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、前記電池の放電時、前記最小の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定する
    ことを特徴とする電圧推定装置。
  3. 請求項2に記載の電圧推定装置であって、
    前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す充電用SOC−OCV曲線、及び、前記充電用SOC−OCV曲線と異なる、前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す放電用SOC−OCV曲線を記憶する記憶部を備え、
    前記開回路電圧推定部は、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、
    前記電池の充電時、前記充電用SOC−OCV曲線を参照して、前記故障している電圧センサに対応する電池の充電率に対応する開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、
    前記電池の放電時、前記放電用SOC−OCV曲線を参照して、前記故障している電圧センサに対応する電池の充電率に対応する開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定する
    ことを特徴とする電圧推定装置。
  4. 請求項2に記載の電圧推定装置であって、
    前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す充電用SOC−OCV曲線、前記充電用SOC−OCV曲線と異なる、前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す放電用SOC−OCV曲線、及び、前記充電用SOC−OCV曲線と前記放電用SOC−OCV曲線との間の線分を所定の内分点で内分するときの内分比と、充電前後または放電前後の前記電池の容量差との対応関係を示す内分比情報を記憶する記憶部を備え、
    前記開回路電圧推定部は、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、前記内分比情報を参照して、前記故障している電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた内分比と、前記充電用SOC−OCV曲線と、前記放電用SOC−OCV曲線と、前記故障している電圧センサに対応する電池の充電率とを用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定する
    ことを特徴とする電圧推定装置。
  5. 請求項2に記載の電圧推定装置であって、
    前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す充電用SOC−OCV曲線、及び、前記充電用SOC−OCV曲線と異なる、前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す放電用SOC−OCV曲線を記憶する記憶部を備え、
    前記開回路電圧推定部は、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、
    前記電池の充電時、前記充電用SOC−OCV曲線を参照して、前記最大の充電率に対応する開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、
    前記電池の放電時、前記放電用SOC−OCV曲線を参照して、前記最小の充電率に対応する開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定する
    ことを特徴とする電圧推定装置。
  6. 請求項2に記載の電圧推定装置であって、
    前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す充電用SOC−OCV曲線、前記充電用SOC−OCV曲線と異なる、前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す放電用SOC−OCV曲線、及び、前記充電用SOC−OCV曲線と前記放電用SOC−OCV曲線との間の線分を所定の内分点で内分するときの内分比と、充電前後または放電前後の前記電池の容量差との対応関係を示す内分比情報を記憶する記憶部を備え、
    前記開回路電圧推定部は、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、
    前記電池の充電時、前記内分比情報を参照して、前記故障している電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた内分比と、前記充電用SOC−OCV曲線と、前記放電用SOC−OCV曲線と、前記最大の充電率とを用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、
    前記電池の放電時、前記内分比情報を参照して、前記故障している電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた内分比と、前記充電用SOC−OCV曲線と、前記放電用SOC−OCV曲線と、前記最小の充電率とを用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定する
    ことを特徴とする電圧推定装置。
  7. 請求項2に記載の電圧推定装置であって、
    前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す充電用SOC−OCV曲線、前記充電用SOC−OCV曲線と異なる、前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す放電用SOC−OCV曲線、及び、前記充電用SOC−OCV曲線と前記放電用SOC−OCV曲線との間の線分を所定の内分点で内分するときの内分比と、充電前後または放電前後の前記電池の容量差との対応関係を示す内分比情報を記憶する記憶部を備え、
    前記開回路電圧推定部は、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、
    前記電池の充電時、前記内分比情報を参照して、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた各内分比のうちの最大の内分比と、前記充電用SOC−OCV曲線と、前記放電用SOC−OCV曲線と、前記最大の充電率とを用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、
    前記電池の放電時、前記内分比情報を参照して、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた各内分比のうちの最小の内分比と、前記充電用SOC−OCV曲線と、前記放電用SOC−OCV曲線と、前記最小の充電率とを用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定する
    ことを特徴とする電圧推定装置。
  8. 互いに直列接続される三つ以上の電池のそれぞれの電圧を検出する三つ以上の電圧センサと、
    前記電池に流れる電流を検出する電流センサと、
    前記電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、前記電池の放電時、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定する開回路電圧推定部と、
    前記電池の充電時、前記最大の開回路電圧に対応する充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、前記電池の放電時、前記最小の開回路電圧に対応する充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定する内部抵抗推定部と、
    推定された前記開回路電圧と、前記電流と推定された前記内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、前記故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧として推定する閉回路電圧推定部と、
    を備える電圧推定装置。
  9. 請求項8に記載の電圧推定装置であって、
    前記電流の積算値を用いて、前記電池の充電率を推定する充電率推定部と、
    前記電池の開回路電圧を用いて、前記電池の充電率を補正する補正部と、
    を備え、
    前記開回路電圧推定部は、
    前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、前記故障している電圧センサに対応する電池の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、
    前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、前記電池の充電時、前記最大の開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、前記電池の放電時、前記最小の開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、
    前記内部抵抗推定部は、
    前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正される前、前記故障している電圧センサに対応する電池の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、
    前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、前記電池の充電時、前記最大の開回路電圧に対応する充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、前記電池の放電時、前記最小の開回路電圧に対応する充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定する
    ことを特徴とする電圧推定装置。
  10. 請求項9に記載の電圧推定装置であって、
    前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す充電用SOC−OCV曲線、前記充電用SOC−OCV曲線と異なる、前記充電率と前記開回路電圧との対応関係を示す放電用SOC−OCV曲線、及び、前記充電用SOC−OCV曲線と前記放電用SOC−OCV曲線との間の線分を所定の内分点で内分するときの内分比と、充電前後または放電前後の前記電池の容量差との対応関係を示す内分比情報を記憶する記憶部を備え、
    前記開回路電圧推定部は、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率が補正された後、
    前記電池の充電時、前記内分比情報を参照して、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた各内分比と、前記充電用SOC−OCV曲線と、前記放電用SOC−OCV曲線と、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率とを用いて、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧を求め、その求めた各開回路電圧のうちの最大の開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、
    前記電池の放電時、前記内分比情報を参照して、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の容量差に対応する内分比を求め、その求めた各内分比と、前記充電用SOC−OCV曲線と、前記放電用SOC−OCV曲線と、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率とを用いて、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧を求め、その求めた各開回路電圧のうちの最小の開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定する
    ことを特徴とする電圧推定装置。
  11. 互いに直列接続される三つ以上の電池に流れる電流を検出する電流センサと、前記電池の電圧を検出する三つ以上の電圧センサとを備える電圧推定装置における電圧推定方法であって、
    前記電圧推定装置は、
    前記電流の積算値を用いて、前記電池の充電率を推定し、
    前記電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最大の充電率を用いて、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、
    前記電池の放電時、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の充電率のうちの最小の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧を推定し、
    前記電池の充電時、前記最大の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、
    前記電池の放電時、前記最小の充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、
    推定された前記開回路電圧と、前記電流と推定された前記内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、前記故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧として推定する
    ことを特徴とする電圧推定方法。
  12. 互いに直列接続される三つ以上の電池のそれぞれの電圧を検出する三つ以上の電圧センサと、前記電池に流れる電流を検出する電流センサとを備える電圧推定装置における電圧推定方法であって、
    前記電圧推定装置は、
    前記電池の充電時、故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最大の開回路電圧を、故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、
    前記電池の放電時、前記故障していない各電圧センサに対応する電池の開回路電圧のうちの最小の開回路電圧を、前記故障している電圧センサに対応する電池の開回路電圧として推定し、
    前記電池の充電時、前記最大の開回路電圧に対応する充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、
    前記電池の放電時、前記最小の開回路電圧に対応する充電率を用いて、前記故障している電圧センサに対応する電池の内部抵抗を推定し、
    推定された前記開回路電圧と、前記電流と推定された前記内部抵抗との乗算値とを加算した結果を、前記故障している電圧センサに対応する電池の閉回路電圧として推定する
    ことを特徴とする電圧推定方法。
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