JP2020046252A - 混合ガス濃度の測定方法、ガスセンサ、潤滑剤劣化状態評価方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1において、カルボニル化合物を検出するガスセンサとしては、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により作製されるマイクロガスセンサアレイが例示されている。また、各センサとして水晶振動子を使用する場合は、n−ヘキサナールおよびn−ヘプタナールを選択的に検出するチャンネルでは、振動子表面に例えばポリエチレングリコール2000からなる膜を形成することが記載されている。
この発明の課題は、ガスセンサで混合ガスから特定のガス状物質を選択的に検出することにより潤滑剤の劣化状態を評価する方法に適用した場合に、潤滑剤劣化状態評価の正確さを改善できる混合ガス濃度の測定方法およびガスセンサを提供することである。
この発明の第三態様は、潤滑剤で潤滑されている転がり軸受内の気体を第二態様のガスセンサに導入し、潤滑剤の化学的な劣化により転がり軸受内の気体中に生じるガス状のカルボニル化合物の量を、第二態様のガスセンサで検出することにより、潤滑剤の劣化状態を評価する潤滑剤劣化状態評価方法を提供する。
第二態様のガスセンサによれば、ガスセンサで混合ガスから特定のガス状物質を選択的に検出することにより潤滑剤の劣化状態を評価する方法に適用した場合に、潤滑剤劣化状態評価の正確さの改善が期待できる。
第三態様の潤滑剤劣化状態評価方法によれば、第二態様のガスセンサを用いることで潤滑剤劣化状態評価の正確さの改善が期待できる。
この発明の第一態様は、上述のように、感応部を有するガスセンサを用いた混合ガス濃度の測定方法であって、測定対象の複数のガスの数と同じ数(n)だけ、測定対象の複数のガスに対する感度が異なる複数の感応部を、ガスセンサに設け、混合ガスを複数の感応部に接触させて得られる複数の感応検出値(F1〜Fn)と、複数の感応部の測定対象の各ガスに対する感応定数(K11〜Knn)と、から、混合ガスにおける測定対象のガスの濃度を算出する方法である。
この方法によれば、原理的に、混合ガス中の選択的に感知したいガス成分由来の応答に感知したくないガス成分由来の応答が干渉するという問題が存在しないため、濃度測定の正確性が改善される。また、測定対象の複数のガス毎に単一成分の標準ガスを用意しなくても、混合ガスの定量を行うことが可能となる。
(a)複数の測定対象のガスを異なる既知の濃度で含む複数(測定対象のガスの数と同じ数)の標準混合ガスを用意し、複数の標準混合ガスを複数の感応部に接触させて、複数の標準混合ガス毎に感応検出値を得、既知の濃度と複数の標準混合ガスの感応検出値とから、複数の感応部の測定対象のガスに対する感応定数を算出する。
(b)複数の感応部は、表面に異なる分子感応膜が形成された水晶振動子であり、感応検出値は水晶振動子の振動数変化量であり、感応定数は、吸着等温式の吸着定数である。これは、ガスセンサがQCM(Quartz Crystal Microblance)センサの場合である。この場合は、後述のn個の式(5)に基づいて、n個のガス濃度が導出できる。
(c)測定対象のガスは酢酸および水であり、酢酸および水に対する感度が異なる二個の感応部をガスセンサに設け、二個の感応検出値(F1,F2)と、二個の感応部の酢酸に対する感応定数(K1a,K2a)および水に対する感応定数(K1w,K2w)と、から、混合ガスにおける酢酸および水の濃度を算出する。
第一態様の方法における濃度の算出式について、ガスセンサとしてQCMセンサを使用した場合を例にとって説明する。
QCMセンサの水晶振動子の表面には分子感応膜が形成され、この分子感応膜に付着したガス(分子)の重さで水晶振動子の振動数が変化する。例えば、9.0MHzの固有振動数を有する水晶振動子を用いる場合は、Sauerbreyの式から1Hzの振動数変化は1.07ngの質量吸着として検出される。つまり、(1)式が成立する。
F=m/1.07 …(1)
F:分子感応膜の振動数変化量
m:分子感応膜に吸着するガスの質量(ng)
m=k*c …(2)
k:吸着定数(分子感応膜の固有値)
c:或るガス濃度
式(1)のmに式(2)の右辺を代入すると、式(3)となる。
F=k*c/1.07=(k/1.07)*c …(3)
式(3)のkは分子感応膜の固有値であり、1.07は固有振動数が9.0MHzの水晶振動子の固有値である。そこで、「k/1.07」を感応定数Kと定義すると、式(4)が得られる。
F=K*c …(4)
Fn=Kn1*c1+Kn2*c2・・+Knn*cn …(5)
Fn:感応部nの分子感応膜の振動数変化量(測定値)[Hz]
Kn1:感応部nの第一ガスに対する感応定数(感応部nの分子感応膜の固有値)
Kn2:感応部nの第二ガスに対する感応定数(感応部nの分子感応膜の固有値)
Knn:感応部nの第nガスに対する感応定数(感応部nの分子感応膜の固有値)
c1:測定対象混合ガスに含まれる第一ガスの濃度[ppm]
c2:測定対象混合ガスに含まれる第二ガスの濃度[ppm]
cn:測定対象混合ガスに含まれる第nガスの濃度[ppm]
ガスセンサは感度の異なるn個の感応部を有するため、n個の感応検出値(F1〜Fn)が得られる。つまり、(5)式がn個存在するため、n個の式から測定対象混合ガスに含まれるn個のガスの濃度c1〜cnが導出できる。
次に、二種類のガスで構成された混合ガスの各ガスの濃度を測定する方法を例にとって、第一態様の方法における濃度の算出式を得る方法を、より具体的に説明する。
サンプルガスとして水と酢酸の混合ガスを想定し、水の濃度をcw[ppm]、酢酸の濃度をca[ppm]とする。測定対象のガスの数が二個であるため、ガスセンサに感度の異なる二個の感応部を設ける。ここでは、第一の分子感応膜を備えた第一の感応部と、第二の分子感応膜(第一の分子感応膜とは異なる膜)を備えた第二の感応部を設ける。
F1=K1w*cw+K1a*ca …(51)
F1:第一の感応部の分子感応膜の振動数変化量(測定値)[Hz]
K1w:第一の感応部の水に対する感応定数(第一の分子感応膜の固有値)
K1a:第一の感応部の酢酸に対する感応定数(第一の分子感応膜の固有値)
cw:サンプルガスの水濃度[ppm]
ca:サンプルガスの酢酸濃度[ppm]
F2=K2w*cw+K2a*ca …(52)
F2:第二の感応部の分子感応膜の振動数変化量(測定値)[Hz]
K2w:第二の感応部の水に対する感応定数(第二の分子感応膜の固有値)
K2a:第二の感応部の酢酸に対する感応定数(第二の分子感応膜の固有値)
cw:サンプルガスの水濃度[ppm]
ca:サンプルガスの酢酸濃度[ppm]
cw=(F1*K2a−F2*K1a)/(K1w*K2a−K1a*K2w) …(61)
ca=(F2*K1w−F1*K2w)/(K1w*K2a−K1a*K2w) …(62)
感応定数K1w、K1a、K2w、K2aが分かっているセンサを用いれば、その値を使用すればよいが、分からない場合でも、感応定数K1w、K1a、K2w、K2aを以下の方法で求めることができる。
F11=K1w*A1+K1a*B1 …(53)
第二の標準混合ガスによる第一の感応部の振動数変化量(標準混合ガスの感応検出値)F12も、水による振動数変化量と酢酸による振動数変化量の合算であるため、式(4)より式(54)として表せる。
F12=K1w*A2+K1a*B2 …(54)
F21=K2w*A1+K2a*B1 …(55)
第二の標準混合ガスによる第二の感応部の振動数変化量(標準混合ガスの感応検出値)F22も、水による振動数変化量と酢酸による振動数変化量の合算であるため、式(4)より式(56)として表せる。
F22=K2w*A2+K2a*B2 …(56)
K1w=(F11*B2−F12*B1)/(A1*B2−A2*B1) …(71)
K1a=(F12*A1−F11*A2)/(A1*B2−A2*B1) …(72)
式(55)と式(56)から、第二の感応部の水に対する感応定数K2wおよび酢酸に対する感応定数K2aが、下記の式(73)および(74)として導出できる。
K2w=(F21*B2−F22*B1)/(A1*B2−A2*B1) …(73)
K2a=(F22*A1−F22*A2)/(A1*B2−A2*B1) …(74)
以下、この発明の実施形態について説明するが、この発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、この発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定はこの発明の必須要件ではない。
この実施形態では、図1に示す装置を用い、図2に示す手順で混合ガス濃度を測定する方法について説明する。
図1の装置は、フローセル型のQCMセンサ1と、QCMセンサ1に気体を導入する給気管2と、QCMセンサ1を通った気体を排出する排気管3と、給気管2の上流端に接続された窒素ガスバッグ4と、排気管3の途中に接続されたポンプ5を有する。給気管2には、分岐部品21a〜23aを介して、ガス導入管21〜23が接続されている。
また、ガス導入管21の上流端に、第一の標準混合ガスが入ったガスバック6を接続し、ガス導入管22の上流端に、第二の標準混合ガスが入ったガスバック7を接続する。また、ガス導入管23の上流端に、サンプルガス(測定対象の混合ガス)が入ったガスバック8を接続する。
これに伴い、QCMセンサ1は、第一の標準混合ガスが接触する直前の第一の感応部11および第二の感応部12の発振周波数(つまり、窒素ガスの接触による水晶振動子の発振周波数)を振動数変化の基準値として検出する。また、第一の標準混合ガスの接触による第一の感応部11および第二の感応部12の発振周波数を検出し、この検出値の基準値からの変化量を、第一の標準混合ガスによる第一の感応部11の振動数変化量F11および第二の感応部12の振動数変化量F12として算出する。つまり、QCMセンサ1により振動数変化量F11,F12を測定する(図2のステップS2)。
これに伴い、QCMセンサ1は、第二の標準混合ガスが接触する直前の第一の感応部11および第二の感応部12の発振周波数を振動数変化の基準値として検出する。また、第二の標準混合ガスの接触による第一の感応部11および第二の感応部12の発振周波数を検出し、この検出値の基準値からの変化量を、第二の標準混合ガスによる第一の感応部11の振動数変化量F21および第二の感応部12の振動数変化量F22として算出する。つまり、QCMセンサ1により振動数変化量F21,F22を測定する(図2のステップS2)。
これに伴い、QCMセンサ1は、サンプルガスが接触する直前の第一の感応部11および第二の感応部12の発振周波数を振動数変化の基準値として検出する。また、サンプルガスの接触による第一の感応部11および第二の感応部12の発振周波数を検出し、この検出値の基準値からの変化量を、サンプルガスによる第一の感応部11の振動数変化量F1および第二の感応部12の振動数変化量F2として算出する。つまり、QCMセンサ1により振動数変化量F1,F2を測定する(図2のステップS4)。
また、感応定数K1w、K1a、K2w、K2aの算出も行っているが、その算出の際にも、測定対象の複数のガス毎に単一成分の標準ガスを用意しなくて済む。単一成分の標準ガスを使用した場合には、他成分のガスの混入を避けるためにハンドリングに手間がかかるが、標準混合ガスを使用することで、このような問題が解決できる。また、標準混合ガスを使用することで、単一成分の標準ガスを使用するよりも精度良く感応定数を算出できる。
また、第一態様の方法は、例えば、水分、酸素、二酸化炭素等が含まれる呼気中から、疾病マーカーである脂肪族アルデヒド類を定量検知する方法などにも応用可能である。
サンプルガスとして、水の濃度が2510ppmであり、酢酸の濃度が150ppmであるものを用意した。
第一の標準混合ガスとしては、酢酸の濃度B1が100ppmで、水の濃度A1が4660ppmであるものを用意した。第二の標準混合ガスとしては、酢酸の濃度B2が200ppmで、水の濃度A2が2350ppmであるものを用意した。
算出されたサンプルガスの水の濃度cwは2690ppmであり、酢酸の濃度caは136ppmであった。これらの値は、それぞれ、サンプルガスの実際の水の濃度2510ppm、酢酸の濃度150ppmに近い値であった。
11 第一の感応部
12 第二の感応部
2 給気管
21 ガス導入管
22 ガス導入管
23 ガス導入管
21a 分岐部品
22a 分岐部品
23a 分岐部品
3 排気管
4 窒素ガスバック
5 ポンプ
6 第一の標準混合ガスが入ったガスバッグ
7 第二の標準混合ガスが入ったガスバッグ
8 サンプルガス(測定対象の混合ガス)が入ったガスバッグ
Claims (6)
- 感応部を有するガスセンサを用いた混合ガス濃度の測定方法であって、
測定対象の複数のガスの数(n)と同じ数だけ、前記複数のガスに対する感度が異なる複数の感応部を、前記ガスセンサに設け、
混合ガスを前記複数の感応部に接触させて得られる複数の感応検出値(F1〜Fn)と、前記複数の感応部の前記測定対象の各ガスに対する感応定数(K11〜Knn)と、から、前記混合ガスにおける前記測定対象のガスの濃度を算出する混合ガス濃度の測定方法。 - 前記複数の測定対象のガスを異なる既知の濃度で含む複数の標準混合ガスを用意し、前記複数の標準混合ガスを前記複数の感応部に接触させて、前記複数の標準混合ガス毎に感応検出値を得、
前記既知の濃度と前記複数の標準混合ガスの感応検出値とから、前記複数の感応部の前記測定対象のガスに対する感応定数を算出する請求項1記載の混合ガス濃度の測定方法。 - 前記複数の感応部は、表面に異なる分子感応膜が形成された水晶振動子であり、
前記感応検出値は、前記水晶振動子の振動数変化量であり、
前記感応定数は、吸着等温式の吸着定数である請求項1または2記載の混合ガス濃度の測定方法。 - 測定対象のガスは酢酸および水であり、酢酸および水に対する感度が異なる二個の感応部を前記ガスセンサに設け、
二個の感応検出値(F1,F2)と、前記二個の感応部の酢酸に対する感応定数(K1a,K2a)および水に対する感応定数(K1w,K2w)と、から、前記混合ガスにおける酢酸および水の濃度を算出する請求項1〜3のいずれか一項に記載の混合ガス濃度の測定方法。 - 混合ガスに含まれる複数のガスの濃度を検出するセンサであって、
測定対象の複数のガスに対する感度が異なる複数の感応部と、
混合ガスを前記複数の感応部に接触させて得られる複数の感応検出値(F1〜Fn)と、前記複数の感応部の前記測定対象の各ガスに対する感応定数(K11〜Knn)と、から、前記混合ガスにおける前記測定対象のガスの濃度を算出する演算部と、
を有するガスセンサ。 - 潤滑剤で潤滑されている転がり軸受内の気体を請求項5記載のガスセンサに導入し、前記潤滑剤の化学的な劣化により前記気体中に生じるガス状のカルボニル化合物の量を、前記ガスセンサで検出することにより、前記潤滑剤の劣化状態を評価する潤滑剤劣化状態評価方法。
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