JP2020045554A - 3dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法及び当該表面改質方法により処理された3dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】 3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形した金属製品である処理対象物の機械的強度や疲労強度を改善することができる表面改質方法、及び当該表面改質方法により機械的強度や疲労強度などの特性が改善された3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形された金属製品を提供する。【解決手段】 本発明は、3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品を処理対象物として、当該処理対象物に対して微粒子ピーニング処理を施すことを特徴とする。【選択図】図7
Description
本発明は、3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により製造(造形)した金属製品に対する表面改質技術に関する。
近年、3Dプリンタ(スリーディープリンタ、3D printer、立体印刷機)「3DCADや3DCG等の三次元形状データを元に立体(三次元のオブジェクト:製品)を造形する機器」を用いて製品を生産することが行われている。
3Dプリンタは、通常のプリンタのように紙に平面(二次元)的に印刷する形式や、鋳型を作って造形材を充填・固形化する形式と異なる造形方法であり、通常は積層造形法(additive manufacturing)によるものが多い。
すなわち、3Dプリンタは、対象物、手法、機種によって多少の違いはあるが、コンピュータ上で作った3Dデータ(三次元形状データ)を設計図として、その断面形状を付加加工で積層していくことで立体物を形成する方式が基本となっている。例えば、樹脂を材料とする場合には、液状の樹脂に紫外線などを照射し少しずつ硬化させていく光造形方式、熱で融解した樹脂を少しずつ積み重ねていくFDM方式(Fused Deposition Modeling、 熱溶解積層法)、粉末の樹脂に接着剤を吹きつけていく粉末固着方式などの方法がある。
一方、金属を材料とする場合には、粉末焼結積層造形法などが知られている。
粉末焼結積層造形法のうち粉末焼結式積層法は、素材粉末を層状に焼結して三次元形状に造形する方法で、一層毎に高出力のレーザービームや(導電性の素材では)放電などで直接焼結しては素材粉末を層状に重ねていくこと(積層していくこと)を繰り返しながら三次元形状(製品形状)に造形するといった手法である。
粉末焼結積層造形法のうち粉末焼結式積層法は、素材粉末を層状に焼結して三次元形状に造形する方法で、一層毎に高出力のレーザービームや(導電性の素材では)放電などで直接焼結しては素材粉末を層状に重ねていくこと(積層していくこと)を繰り返しながら三次元形状(製品形状)に造形するといった手法である。
また、粉末焼結積層造形法の別の手法として、インクジェット方式でバインダを添加して固めたりするなどして造形を行う手法(粉末固着式積層法)も知られている。
ここで、粉末焼結積層造形法については、例えば特許文献1等に記載されている。
ここで、粉末焼結積層造形法については、例えば特許文献1等に記載されている。
ここで、粉末焼結積層造形法により造形された金属製品(金属部材)は、鍛造や鋳造で製造された金属製品とは異なる特性を有している。
すなわち、粉末金属を焼結して製造されるため、金属製品の組織は、微細結晶で構成される。また、溶融と凝固のプロセスを経るので、相当な残留応力を有している。
すなわち、粉末金属を焼結して製造されるため、金属製品の組織は、微細結晶で構成される。また、溶融と凝固のプロセスを経るので、相当な残留応力を有している。
このため、良好なクリープ特性と低サイクル疲労特性を実現するための一つの手法として熱処理が考えられ、従来より、鍛造や鋳造で成形された金属部材においても、良好なクリープ特性と低サイクル疲労特性の確保のために、様々な熱処理が試みられている(特許文献1参照)。
この一方で、本発明者等は、粉末焼結積層造形法により造形された金属製品(金属部材)にあっては、焼き戻しなどの熱処理を行った場合でも十分な機械的強度が得られないことがあることを確認し、それが、レーザにて粉末金属を溶融し冷却して焼結する際に生じるスケールの存在に起因していることを解明した。
より詳細には、粉末焼結積層造形法の場合、素材である粉末金属を層状に積み重ねて造形していく方法で、最上層をレーザ等にて溶融し冷却して焼結することで焼結された粉末焼結金属を一層毎に上に重ねていく(積層していく)処理を繰り返しながら三次元形状(製品形状)に造形する手法であるため、粉末金属が粉末の状態の層(最上層)を溶融し冷却して凝固させる際に、その層の表面にスケールが生成され、このスケールが粉末焼結積層造形法により造形された金属製品の機械的強度に悪影響を与えていることが解った。
なお、スケールとは、金属を空気中または他の酸化雰囲気中で加熱したとき金属表面に生じる酸化物の被膜である。
なお、スケールとは、金属を空気中または他の酸化雰囲気中で加熱したとき金属表面に生じる酸化物の被膜である。
そして、本発明者等は、種々の実験・研究を通して、このようなスケールによる悪影響を抑制することができる新たな知見を得るに至った。
具体的には、粉末焼結積層造形法により成形(造形)した製品である処理対象物(被処理物)に対して、微粒子ピーニング処理(WPC処理)により、平均粒径が数十μm程度の微粒子メディアを、処理対象物(被処理物)に衝突させることにより、表面及びその付近のスケール(最外表面及び、最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った層の表面に存在するスケール)を細かく粉砕することができ、これにより、隣接する金属層間の密着強度を格段に向上させることができ、以って金属製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることができるという知見を得た。
具体的には、粉末焼結積層造形法により成形(造形)した製品である処理対象物(被処理物)に対して、微粒子ピーニング処理(WPC処理)により、平均粒径が数十μm程度の微粒子メディアを、処理対象物(被処理物)に衝突させることにより、表面及びその付近のスケール(最外表面及び、最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った層の表面に存在するスケール)を細かく粉砕することができ、これにより、隣接する金属層間の密着強度を格段に向上させることができ、以って金属製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることができるという知見を得た。
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、3Dプリンタを用いて粉末焼結積層造形法により成形(造形)した金属製品(金属部材)である処理対象物の機械的強度や疲労強度を改善することができる処理対象物の表面改質方法、及び当該表面改質方法により機械的強度や疲労強度などの特性が改善された3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形(生産)された金属製品を提供することを目的とする。
このため、本発明に係る3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法は、
3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品を処理対象物として、
当該処理対象物に対して微粒子ピーニング処理を施すことを特徴とする。
3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品を処理対象物として、
当該処理対象物に対して微粒子ピーニング処理を施すことを特徴とする。
本発明において、前記処理対象物に対して微粒子ピーニング処理を施した後、研磨加工を施すことを特徴とすることができる。
本発明において、前記処理対象物に対して微粒子ピーニング処理を施した後、処理対象物に対してコーティング処理を施すことを特徴とすることができる。
本発明において、前記コーティング処理が、スパッタリングによりコーティング材を成膜する処理であることを特徴とすることができる。
本発明において、前記コーティング処理が、DLCコーティング処理であることを特徴とすることができる。
本発明に係る3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品は、上述した本発明に係る3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法により処理されたことを特徴とする。
本発明によれば、3Dプリンタを用いて粉末焼結積層造形法により成形(造形)した金属製品(金属部材)である処理対象物の機械的強度や疲労強度を改善することができる処理対象物の表面改質方法、及び当該表面改質方法により機械的強度や疲労強度などの特性が改善された3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形(生産)された金属製品を提供することができる。
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
上述したように、本発明者等は、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により三次元形状(製品形状)に造形(製造)する場合、素材である粉末金属を一層毎に溶融し冷却して焼結することで焼結された粉末焼結金属を一層毎に上に重ねていく(積層していく)処理を繰り返しながら三次元形状(製品形状)に造形する手法であるため、粉末金属が粉末の状態の層(最上層)を溶融し冷却して凝固させる際に、その層の表面にスケールが生成され、このスケールが粉末焼結積層造形法により造形された金属製品の機械的強度に悪影響を与えていることを解明した。
そして、本発明者等は、このようなスケールによる悪影響を抑制することができる新たな知見として、粉末焼結積層造形法により造形(成形)した製品である処理対象物(被処理物)に対して、微粒子ピーニング処理(WPC処理)により、平均粒径が数十μm程度(φ14μm(♯800)〜57μm(♯240)(或いは70μm)程度)の微粒子メディアを、処理対象物(被処理物)に衝突させることにより、表面及びその付近のスケール(最外表面及び、最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った層の表面に存在するスケール)を細かく粉砕することで、隣接する金属層間の密着強度を格段に向上させることができ、以って金属製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることができるという知見を得るに至った。
ここで、本実施の形態に係る3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した製品の一例として、内燃機関等のピストン(処理対象物)1について説明する。
積層マシンとしては、例えば、SLM280(SLMシリーズ 愛知産業株式会社:http://aichi-sangyo.co.jp/products/slm/SLM_280.html)を用いて、鋼製のピストンを造形(製造)した。
粉末金属(素材)は、マルエージング鋼(インコ社製)を材料として用いているLPWテクノロジー社製の「LPW M300」(鉄系の粉末金属)とし、平均粒径φ15−45μmのものを用いた。
積層ピッチは30−50μmとし、積層厚み(なわち、粉末焼結金属層の一層の厚み)は約30μm(25−75μmの範囲)とした。
その他の仕様、粉末金属を溶融して焼結するためのレーザ(yb(イッテルビウム)ナノ秒レーザ:IPG Photonics社製)の仕様等の詳細については、図9に記しておく。
その他の仕様、粉末金属を溶融して焼結するためのレーザ(yb(イッテルビウム)ナノ秒レーザ:IPG Photonics社製)の仕様等の詳細については、図9に記しておく。
図1に、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した後焼き戻しした製品(3Dプリンタ焼結金属製品;微粒子ピーニング未処理品)の外周をレーザ顕微鏡にて撮影(積層方向と略直交する方向から撮影)した画像を示す。
図1(A)及び(B)から、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した後焼き戻ししたままの状態の製品(微粒子ピーニング未処理品)の場合、各焼結金属層(・・・、10a、10b、10c、10d、・・・)の間にスケール層20が存在することが確認できる。
そして、かかる微粒子ピーニング未処理品について残留応力を計測すると、X線応力測定装置によるX線応力測定結果である図2、図3に示すように、σx=−314MPaであり、他の実験結果から微粒子ピーニング未処理の製品の残留応力は、−250〜−350MPa程度であった。また、表面硬度に関連する半価幅は、5.08degであった。
ここで、本実施の形態では、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した後焼き戻しした製品(3Dプリンタ焼結金属製品)に対して、微粒子ピーニング処理(WPC処理)を行う。なお、微粒子ピーニング処理(WPC処理)は、表面改質処理(表面改質方法)の一つである。
図4に、当該製品に対して、微粒子ピーニング処理(WPC処理)を行った後(処理済、処理後)の外周をレーザ顕微鏡にて撮影(積層方向と略直交する方向から撮影)した画像を示す。
そして、当該製品に対して微粒子ピーニング処理(WPC処理)を行った場合には、残留応力が、X線応力測定装置によるX線応力測定結果である図5、図6に示すように、σx=−1047MPaと大幅に向上できることが確認できた。他の実験結果から微粒子ピーニング処理済の製品の残留応力は、−1020〜−1050MPa程度であった。残留応力の増大は、金属製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることができる。
また、微粒子ピーニング処理(WPC処理)を行った場合の半価幅は、5.46degであり、未処理の場合と比較してそれほど大きく変化していない。
これにより、本実施の形態で行った微粒子ピーニング処理(WPC処理)によれば、表面層を未処理の場合に比べて大きく硬化させることがないため、硬化した表面層が内側部材から剥離や脱落するといった問題の発生などを抑制しながら、残留応力を効果的に高めることができることを確認できた。
すなわち、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した製品に対して微粒子ピーニング処理(WPC処理)を行うことで、該製品の最外表面の剥離などを招くことなく、該製品の最外表面及び該最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った部分の残留応力を高めることができ、以って製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることができる。
ここで、本実施の形態に係る微粒子ピーニング処理(WPC処理)について説明する。
WPC(Wide Peening and Cleaning)処理とは、「微粒子ピーニング」処理、「精密ショットピーニング」処理、「FPB(Fine Particle Bombarding)」処理などと称される表面処理で、金属製品の表面に、微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させる表面改質処理である。
WPC(Wide Peening and Cleaning)処理とは、「微粒子ピーニング」処理、「精密ショットピーニング」処理、「FPB(Fine Particle Bombarding)」処理などと称される表面処理で、金属製品の表面に、微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させる表面改質処理である。
なお、WPC処理としては、例えば、特許第5341971号に記載されている金属製品の熱処理方法(WPC処理)を適用することができる。
具体的には、下記のような噴射装置からメディア(ショット、微小粒径サイズの小さい粒子)を噴射してWPC処理対象物に衝突させることにより行う。
具体的には、下記のような噴射装置からメディア(ショット、微小粒径サイズの小さい粒子)を噴射してWPC処理対象物に衝突させることにより行う。
そして、当該微粒子ピーニング処理(WPC処理)により、処理対象物1の表面には、図10に示すように、微小ディンプル(微小凹部)100が多数形成されることになる。微小ディンプル(微小凹部)100のサイズとしては、入口径φ5〜φ100μm程度(好ましくは、φ10〜30μm程度)、深さで0.5〜3μm(好ましくは、1〜2μm程度)程度とすることができる。
〔噴射装置〕
本発明に係るWPC処理は、既知のブラスト装置によりメディア(ショット)を噴射して金属製品の表面に衝突させる。
本発明に係るWPC処理は、既知のブラスト装置によりメディア(ショット)を噴射して金属製品の表面に衝突させる。
例えば、空気式のブラスト装置としては各種の型式のものを使用することができるが,例えばショットの投入されたタンク内に圧縮空気を供給し,該圧縮空気により搬送されたショットを別途与えられた圧縮空気の空気流に乗せてブラストガンより噴射する直圧式のブラスト装置、タンクから落下したショットを圧縮空気に乗せて噴射する重力式のブラスト装置、圧縮空気の噴射により生じた負圧によりショットを吸引して圧縮空気と共に噴射するサクション式のブラスト装置等の各種のブラスト装置を使用することができる。
〔メディア(ショット)〕
本発明において使用されるメディア(ショット)は、平均粒径が、例えば、数十μm程度(φ14μm(♯800)〜57μm(♯240)(或いは70μm)程度)の範囲で目的に応じて調整されたメディア(噴射装置から噴射され処理対象物に衝突される粒状物質)を使用することができる。本実施の形態に係るメディアの一例としては、例えば、アルミナシリカビーズ、ハイスビーズなどがあるが、他の材質であっても要求に応じて適宜に採用可能である。
なお、ここでの平均粒径は、JIS R6001 微粉(2017年)規格の精密研磨用微粉の粒度分布(電気抵抗試験法)に基づいた平均粒径(累積高さ50%点の粒子径)を意味する。言い換えると、JIS R6001 微粉(2017年)規格の精密研磨用微粉の粒度分布(電気抵抗試験法)に従ったメッシュにより分級された場合の平均粒径を意味する。
本発明において使用されるメディア(ショット)は、平均粒径が、例えば、数十μm程度(φ14μm(♯800)〜57μm(♯240)(或いは70μm)程度)の範囲で目的に応じて調整されたメディア(噴射装置から噴射され処理対象物に衝突される粒状物質)を使用することができる。本実施の形態に係るメディアの一例としては、例えば、アルミナシリカビーズ、ハイスビーズなどがあるが、他の材質であっても要求に応じて適宜に採用可能である。
なお、ここでの平均粒径は、JIS R6001 微粉(2017年)規格の精密研磨用微粉の粒度分布(電気抵抗試験法)に基づいた平均粒径(累積高さ50%点の粒子径)を意味する。言い換えると、JIS R6001 微粉(2017年)規格の精密研磨用微粉の粒度分布(電気抵抗試験法)に従ったメッシュにより分級された場合の平均粒径を意味する。
そして、上述したような噴射装置により、メディア(ショット)群を圧縮空気と混合し、噴射圧力0.3〜0.6MPa、噴射速度100〜200m/秒、噴射距離100mm〜250mmで、0.1〜1秒の間欠噴射をする。すなわち、0、1〜1秒の噴射を、好ましくは、0.5秒〜5秒の間隔をおいて反復噴射して、WPC処理の処理対象物(3Dプリンタ焼結金属製品)の表面に衝突させる。
かかる処理により、本実施の形態では、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した製品(3Dプリンタ焼結金属製品)の表面及びその付近のスケール(最外表面及び、最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った層の表面に存在するスケール)を細かく粉砕し、隣接する金属層間の密着強度を格段に向上させることで、当該製品の最外表面及び該最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った部分の残留応力を高めることができ、以って製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることができる。
なお、当該製品において、最外表面及び該最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った部分は、粉末焼結層の積層方向と略直交する方向における最外表面及び該最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った部分とすることができると共に、粉末焼結層が積み重ねられる積層方向に沿った方向(各層の平面に略直交する方向)における製品の最外表面及び該最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った部分とすることができる。更には、粉末焼結層が積み重ねられる積層方向と交差する方向(斜めの方向)における製品の最外表面及び該最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った部分とすることも可能である。
図7に、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した製品に対して、微粒子ピーニング処理(WPC処理)を行った処理済部分と、未処理部分と、を比較して示したレーザ顕微鏡撮影画像を示す。図7も、積層方向と略直交する方向から撮影している。
図4、図7から、粉末焼結積層造形法により造形(成形)した製品である処理対象物(被処理物)に対して、微粒子ピーニング処理(WPC処理)を施すことにより、表面及びその付近のスケールが細かく粉砕され、隣接する金属層間の密着強度を格段に向上させることができることが解る。
そして、これにより、図5、図6で示したように、製品の最外表面及び最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った部分の残留応力を高めることができるため、残留応力を効果的に高めることができることを確認できた。従って、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した製品に対して微粒子ピーニング処理(WPC処理)を行うことで、製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることができる。
そして、これにより、図5、図6で示したように、製品の最外表面及び最外表面より所定深さだけ製品の内側に入った部分の残留応力を高めることができるため、残留応力を効果的に高めることができることを確認できた。従って、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した製品に対して微粒子ピーニング処理(WPC処理)を行うことで、製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることができる。
なお、本実施の形態によれば、既述したように、製品の表面層を未処理の場合に比べて大きく硬化させることがないため、硬化した表面層が内側部材から剥離や脱落するといった問題の発生などを抑制しながら、残留応力を効果的に高めることができる点で有益である。
また、当該製品に対し微粒子ピーニング処理(WPC処理)を施すと、図1や図7に示したような各層(焼結金属層)の間に存在していたスケール層20が粉砕されて、図4や図7に示すように製品の表面全体が金属により覆われるようになる。
このため、本実施の形態によれば、WPC処理済の製品に対して、ブラスト処理や三次元研磨(3Dラッピング)加工などの仕上加工(研磨加工)を行うこともできる。従来、表面にスケール層が露出していたため仕上加工を行うと、焼結金属層とスケール層とは硬度や材質が異なるため、2つの層の段差が却って増大してしまい仕上加工を施しても効果的ではなかったが、本実施の形態によれば、図4や図7に示すように製品の表面全体が金属により覆われるため良好な仕上加工が可能となる。
本実施の形態において図8は、図4と同様の部分のレーザ顕微鏡撮影画像である。このように、本実施の形態によれば、表面粗さの細かい綺麗な表面を形成することが可能となる。従って、仕上加工を行うことで、製品外観の美観を向上させることや大きな切り欠きをなくす(切り欠き係数を低下させる)ことができるため、以って製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることに貢献可能である。
なお、三次元研磨(3Dラッピング)加工は、ピストン裏面やシリンダヘッドのポート間など、機械強度や疲労強度が必要となるが形状が三次元的に複雑に変化するため通常の研磨加工を行い難い部位であっても、簡単かつ良好に研磨加工(仕上加工)を行うことができるため、本実施の形態のようなピストンの裏面に対して仕上を行う場合には特に適している。機械強度や疲労強度が必要となる部位を精密研磨することで切り欠きをなくす(切り欠き係数を低下させる)ことができるため、以って製品の機械的強度及び疲労強度を効果的に向上させることが可能である。
ここで、仕上加工(研磨加工)の一つである三次元研磨(3Dラッピング)処理について説明する。
(1)研磨砥粒:微小粒径(例えば粒径5μm以下)のダイヤモンドその他の研磨剤(炭化ケイ素、コランダム:アルミナなど)を単独もしくは樹脂等に担持させて研磨に用いる。
(2)複雑形状部材の研磨のために、上記の研磨砥粒を、部材に投射 (投射処理) 或いはバレル容器内で部材と共に運動させる(バレル処理)
(3)投射処理
以下の2通りが想定される。
(a)研磨砥粒を空気あるいは各種気体と混合し、ノズルから圧送し、被加工部材に投射する。
(b)研磨砥粒を回転羽根等により機械的に速度を付加し,被加工部材に投射する。
(4)バレル処理
通常のバレル処理と同様(研磨砥粒を、バレル容器内で部材と共に運動させる)
(1)研磨砥粒:微小粒径(例えば粒径5μm以下)のダイヤモンドその他の研磨剤(炭化ケイ素、コランダム:アルミナなど)を単独もしくは樹脂等に担持させて研磨に用いる。
(2)複雑形状部材の研磨のために、上記の研磨砥粒を、部材に投射 (投射処理) 或いはバレル容器内で部材と共に運動させる(バレル処理)
(3)投射処理
以下の2通りが想定される。
(a)研磨砥粒を空気あるいは各種気体と混合し、ノズルから圧送し、被加工部材に投射する。
(b)研磨砥粒を回転羽根等により機械的に速度を付加し,被加工部材に投射する。
(4)バレル処理
通常のバレル処理と同様(研磨砥粒を、バレル容器内で部材と共に運動させる)
なお、3Dラッピングの具体的な例として、不二製作所のシリウス加工(URL:http://www.fujimfg.co.jp/ApplicationSirius.htm)、噴射式ラップマシン「SMAP」東洋研磨材工業株式会社製(URL:http://www.toyo−kenmazai−kogyo.jp/smap.html)などを利用することができる。
ここで、三次元研磨(平面研磨(二次元)にプラスして深さ方向の研磨も行うことができる点で三次元研磨と称されております)において、微小粒径(粒径5μ以下)のダイヤモンド等の研磨剤を樹脂(弾性変形する担体)に担持させた研磨砥粒を投射等により処理対象(加工材)に衝突させることで、小さな研磨剤(樹脂担体はφ1mm〜2mm程度の大きさで、ダイヤモンド研磨材はφ0.25μmから1μm程度の粒径)を使用しているので、複雑な三次元形状の凹部などまで入り込んで研磨することができるといった特徴を備えている。
すなわち、樹脂(担体)に担持させた研磨砥粒が処理対象(加工材)と衝突する際に、その衝突により担体が弾性変形するため、加工対象の形状に沿って変形することができるため、加工材を必要以上に荒らすことなく加工対象の微細形状に合わせて精密に研磨することができる、といった効果があるため、ピストン裏面やシリンダヘッドのポート間など、機械強度や疲労強度が必要となるが形状が三次元的に複雑に変化する部位の精密仕上に適している。
更に、本実施の形態によれば、図4や図7に示したように3Dプリンタ焼結金属製品の表面が金属により覆われるようになるため、従来、表面にスケール層が露出していたため密着度が低くコーティング処理などには不向きであった3Dプリンタ焼結金属製品であっても、密着度高くコーティング処理などを行うことが可能となり、表面改質処理を施すことが可能となる。その結果、3Dプリンタ焼結金属製品であっても、使用態様や使用環境に適合するような所望の特性を持つように表面を改質することが可能となる。
すなわち、本実施の形態によれば、コーティング処理などの表面改質処理のための下地を良好なものとすることができ、以って3Dプリンタ焼結金属製品であっても、例えば、下地の状態が密着性に影響し易いチタン系スパッタリング、クロム系スパッタリングなどのコーティング処理(スパッタリングにより表面にコーティング材を成膜する処理)により表面改質処理を良好に施すことが可能となる。
更に、表面改質処理の一つであるDLCコーティング処理を施すことも可能であり、表面硬度の向上や耐摩耗、潤滑特性などの改善に貢献可能である。
DLCコーティング処理とは、DLC(Diamond−Like Carbon)皮膜を形成(成膜)する処理(DLC処理)であり、例えば、DLCコートXPC(aC:H:Si)を1μm程度成膜することができる。
DLCコーティング処理とは、DLC(Diamond−Like Carbon)皮膜を形成(成膜)する処理(DLC処理)であり、例えば、DLCコートXPC(aC:H:Si)を1μm程度成膜することができる。
ここで、DLC皮膜は、イオンを利用した気相合成法により合成されるダイヤモンドに類似した高硬度・電気絶縁性・赤外線透過性などを持つ炭化物系皮膜で、主として炭化水素、あるいは、炭素の同素体から成る非晶質(アモルファス)の硬質膜である。DLC皮膜は、薄膜にもかかわらず、非常に固い膜を作ることができ、一般的に、窒化処理の3〜7倍、TiNに対しても2〜4倍以上の硬度を有する(但し、硬度は、DLCの成膜法によって変化する)。
なお、本実施の形態では、焼結金属として、鉄系のものを例示したが、これに限らず、アルミ、チタンなどの他、切削加工などの機械加工がし難いとされる難削材料などの焼結金属とすることができる。
また、本実施の形態において、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形(製造)した製品に対して施す微粒子ピーニング処理(WPC処理)は、製品全体に施す場合に限定されるものではなく、強度が必要な局所的な部位などに限定的に施すことができるものである。微粒子ピーニング処理(WPC処理)の上に施されるコーティング処理なども同様に、局所的な部位に限定することが可能である。
以上のように、本実施の形態によれば、3Dプリンタを用いて粉末焼結積層造形法により成形(造形)した金属製品(金属部材)である処理対象物の機械的強度や疲労強度を改善することができる処理対象物の表面改質方法、及び当該表面改質方法により機械的強度や疲労強度などの特性が改善された3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形(生産)された金属製品を提供することができる。
ところで、本実施の形態では、粉末焼結積層造形法のうち、素材粉末(金属粉末)を層状に焼結して三次元形状に造形する方法で、一層毎に高出力のレーザービームや(導電性の素材では)放電などで直接焼結しては素材粉末を層状に重ねていくこと(積層していくこと)を繰り返しながら三次元形状(製品形状)に造形するといった粉末焼結式積層法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、粉末焼結積層造形法の別の手法である、インクジェット方式でバインダを添加して固めたりするなどして造形を行う手法(粉末固着式積層法)においてもスケールが発生することが想定されるため、本発明を適用することで、効果的に機械的強度や疲労強度を改善することに貢献可能である。
なお、本実施の形態では、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により成形(造形)した金属製品の一例として、内燃機関用の焼結スチールピストンを例示したが、これに限らず、シリンダヘッド、シリンダブロックなどの構造物などにも適用可能である。
特に、ピストン裏面やシリンダヘッドのポートや弁間など、機械強度や疲労強度が必要となるが形状が三次元的に複雑に変化するため機械加工が行い難い部位であっても、簡単に、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により成形(造形)した金属製品に対して処理することができるので、手間の掛かる追加工などを行うことないため、3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により成形(造形)した金属製品のメリット(追加工なしで複雑な三次元形状の製品を造形することができるというメリット)を最大限に活かしながら、効果的に機械的強度や疲労強度を改善することができる。
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
1 3Dプリンタ(粉末焼結積層造形法)により造形した後焼き戻しした製品(処理対象物)
10a、10b、10c、10d 焼結金属層
20 スケール(スケール層)
10a、10b、10c、10d 焼結金属層
20 スケール(スケール層)
Claims (7)
- 3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品を処理対象物として、
当該処理対象物に対して微粒子ピーニング処理を施すことを特徴とする3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法。 - 前記処理対象物に対して微粒子ピーニング処理を施した後、研磨加工を施すことを特徴とする請求項1に記載の3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法。
- 前記研磨加工が、三次元研磨加工であることを特徴とする請求項2に記載の3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法。
- 前記処理対象物に対して微粒子ピーニング処理を施した後、処理対象物に対してコーティング処理を施すことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法。
- 前記コーティング処理が、スパッタリングによりコーティング材を成膜する処理であることを特徴とする請求項4に記載の3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法。
- 前記コーティング処理が、DLCコーティング処理であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法。
- 請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品の表面改質方法により処理されたことを特徴とする3Dプリンタの粉末焼結積層造形法により造形した金属製品。
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2018
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