JP2020040311A - 素子基板、記録ヘッド、及び記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】記録動作に伴って記録ヘッドの素子基板に温度の不均衡が発生し、これが良好な画像記録を阻害する。【解決手段】素子基板は、予め定められた方向に配列された複数のヒータと、これらヒータをその配列方向に沿って予め定められた数ごとに複数のグループに分割し、各グループに含まれる複数のヒータを分割駆動する駆動回路を備える。その素子基板はさらに、複数のヒータの配列方向に沿って配置された複数のサブヒータとを備え、前記駆動回路は各グループごとに駆動タイミングを遅延させる。この素子基板において、分割駆動するヒータのグループの駆動順に従って前記複数のサブヒータの配置密度を変化させて配置する。【選択図】 図10
Description
本発明は素子基板、記録ヘッド、及び記録装置に関し、特に、例えば、複数の記録素子を備えた素子基板を組み込んだ記録ヘッドをインクジェット方式に従って記録を行うために適用した記録装置に関する。
従来より、記録紙等の記録媒体に対して画像記録を行うために、インクを吐出する液体吐出ヘッド(以下、記録ヘッド)を搭載したインクジェット方式の記録装置が提案されている。インクジェット方式はランニングコストが安く、動作音が抑えられる方式として注目され、幅広い分野で使用されている。インクジェット方式の中でもサーマル方式を採用した装置では記録ヘッドのヘッド基板に設けられたヒータを駆動して発熱させ、そのヘッド基板に形成されるノズルからインクを吐出し、記録媒体上の所望の位置にインクを着弾させることによって画像形成を行う。
このようなサーマル方式では、そのインクの吐出安定性や吐出量を一定に保つために、インク温度及びヘッド温度が非常に重要なパラメータとなる。なぜなら、インクの粘度や表面張力といった物性値は温度によって変化し、これにより吐出されるインク滴の量(吐出量)が変化するからである。特に、吐出量は温度に対してほぼ線形的に変化するため、低温環境では吐出量が小さくなり、記録濃度低下や濃度ムラが生じ、また、カラー記録では色味等が変化してしまう。そこで、低温環境ではインクを一定の温度まで加熱する必要があり、そのための構成として、記録ヘッドの外部や、内部にヒータ等を設けることが提案されている。
こうした吐出量変動や吐出不良を解消するために、従来のインクジェット記録装置では記録動作前あるいは記録動作中に、記録ヘッドの温度が所定の範囲内となるように加熱し制御している。
記録ヘッドのヘッド基板温度を高めるため、例えば、特許文献1では、インク吐出用のヒータとは別に同じヘッド基板内に保温用のサブヒータを設け、インクを直接的、或いは、ヘッド基板の蓄熱を介して間接的に加熱する方法を提案している。また、特許文献2はインク滴を吐出させるためのヒータを、吐出が生じない程度の短いパルスを印加して加熱する方法を提案している。いずれにしても、ヘッド基板内の温度を均一化することができれば記録画像の濃度ムラを低減することが可能となる。
しかしながら特許文献1や特許文献2などが提案する上記従来例では、以下のような場合には温度による記録画像の品位低下が生じる可能性がある。
ヘッド基板には通常、インクを吐出するために熱エネルギーを発生する複数のヒータが列状に配置されている。そして、複数のヒータを時分割駆動することで複数のヒータに対応した複数のノズルからインク吐出が行われる。このため、通常はヒータ列において時分割数に応じて複数のブロックに分割し、各ブロックに属する複数のヒータを同時駆動し電流を供給する。同時駆動されるヒータには駆動回路を介して各ブロックでタイミングがずらされたパルスが印加される。このようにタイミング制御することで、できる限り同時駆動時の電圧降下を抑制し、記録デューティの差異があっても、ヘッド基板内で各ヒータに印加される電圧差をなるべく一定にするようにしている。
しかし、ヘッド基板の回路構成によっては、例えば、ヒータ列内の中央部で駆動遅延順(吐出タイミング順)先頭と最後のヒータが隣り合う構成の場合、遅延順の先頭のヒータと最後のヒータとの間でヘッド基板内の温度分布に差が生じてしまう場合がある。この場合、遅延順の先頭のヒータと最後のヒータとの間で生じた温度差により、吐出インク量にも差が生じ、画像上で濃度ムラが生じるという問題がある。
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、素子基板の温度の不均衡を解消し高品位な画像記録を可能とする素子基板、その素子基板を用いた記録ヘッド、その記録ヘッドを用いた記録装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の素子基板は次のような構成からなる。
即ち、予め定められた方向に配列された複数のヒータと、該複数のヒータを前記配列された方向に沿って予め定められた数ごとに複数のグループに分割し、各グループに含まれる複数のヒータを分割駆動する駆動回路と、前記複数のヒータの配列された方向に沿って配置された複数のサブヒータとを備え、前記駆動回路は各グループごとに駆動タイミングを遅延させる素子基板であって、前記分割駆動するヒータのグループの駆動順に従って前記複数のサブヒータの配置密度を変化させて配置することを特徴とする。
また本発明を別の側面から見れば、上記構成の素子基板と、前記複数のヒータに対応してインクを吐出する複数のノズルとを有することを特徴とする記録ヘッドを備える。
さらに本発明を別の側面から見れば、上記構成の記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記記録ヘッドによる記録の前に、前記複数のサブヒータを駆動してプレヒートを行うよう制御する制御手段を有することを特徴とする記録装置を備える。
またさらに本発明を別の側面から見れば、上記構成の記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記記録ヘッドによる記録の前に、前記複数のヒータに対してインク吐出を生じさせない程度の短パルスを印加してプレヒートを行うよう制御する制御手段を有することを特徴とする記録装置を備える。
またさらに本発明を別の側面から見れば、予め定められた方向に配列された複数のヒータと、該複数のヒータを前記配列された方向に沿って予め定められた数ごとに複数のグループに分割し、各グループに含まれる複数のヒータを分割駆動する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は各グループごとに駆動タイミングを遅延させる素子基板と、前記複数のヒータに対応してインクを吐出する複数のノズルと、を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドによる記録の前に、前記複数のヒータに対してインク吐出を生じさせない程度の短パルスを印加してプレヒートを行うよう制御する制御手段と、を有する記録装置であって、前記制御手段は、前記プレヒートを行う際に、駆動順の早いグループに含まれるヒータの加熱量を駆動順の遅いグループに含まれるヒータの加熱量よりも大きくすることを特徴とする記録装置を備える。
本発明によれば、素子基板の温度の不均衡を解消できるという効果がある。これによりその素子基板を搭載した記録ヘッドを用いた記録で高品位な画像記録を実現することが可能になる。
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
またさらに、「記録素子」とは、特にことわらない限り吐出口(ノズル)ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換素子(ヒータ)とそのヒータに通電するスイッチング素子を総括して言うものとする。
以下に用いる記録ヘッド用の素子基板(ヘッド基板)とは、シリコン半導体からなる単なる基体を指し示すものではなく、各素子や配線等が設けられた構成を差し示すものである。
さらに、基板上とは、単に素子基板の上を指し示すだけでなく、素子基板の表面、表面近傍の素子基板内部側をも示すものである。また、本発明でいう「作り込み(built-in)」とは、別体の各素子を単に基体表面上に別体として配置することを指し示している言葉ではなく、各素子を半導体回路の製造工程等によって素子板上に一体的に形成、製造することを示すものである。
<インクジェット記録ヘッドを搭載した記録装置(図1〜図2)>
図1は本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を用いて記録を行なう記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
図1は本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を用いて記録を行なう記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
図1に示すようにインクジェット記録装置(以下、記録装置)1はインクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)3をキャリッジ2に搭載し、キャリッジ2を矢印A方向に往復移動させて記録を行う。記録紙などの記録媒体Pを給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行なう。
記録装置1のキャリッジ2には記録ヘッド3を搭載するのみならず、記録ヘッド3に供給するインクを貯留するインクタンク6を装着する。インクタンク6はキャリッジ2に対して着脱自在になっている。
図1に示した記録装置1はカラー記録が可能であり、そのためにキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジを搭載している。これら4つのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。
この実施例の記録ヘッド3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用している。このため、電気熱変換素子(ヒータ)を備えている。この電気熱変換素子は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換素子にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。なお、記録装置は、上述したシリアルタイプの記録装置に限定するものではなく、記録媒体の幅方向に吐出口を配列した記録ヘッド(ラインヘッド)を記録媒体の搬送方向に配置するいわゆるフルラインタイプの記録装置にも適用できる。
図2は図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図2に示すように、コントローラ600は、MPU601、ROM602、特殊用途集積回路(ASIC)603、RAM604、システムバス605、A/D変換器606などで構成される。ここで、ROM602は後述する制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納する。ASIC603は、キャリッジモータM1の制御、搬送モータM2の制御、及び、記録ヘッド3の制御のための制御信号を生成する。RAM604は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等として用いられる。システムバス605は、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行う。A/D変換器606は以下に説明するセンサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給する。
また、図2において、610は画像データの供給源となる図1に示したホストやMFPに対応するホスト装置である。ホスト装置610と記録装置1との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス等をパケット通信により送受信する。このパケット通信については後で説明する。なお、インタフェース611としてUSBインタフェースをネットワークインタフェースとは別にさらに備え、ホストからシリアル転送されるビットデータやラスタデータを受信できるようにしても良い。
さらに、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、プリントスイッチ622、回復スイッチ623などから構成される。
630は装置状態を検出するためのセンサ群であり、位置センサ631、温度センサ632等から構成される。
さらに、640はキャリッジ2を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータM1を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は記録媒体Pを搬送するための搬送モータM2を駆動させる搬送モータドライバである。
ASIC603は、記録ヘッド3による記録走査の際に、RAM604の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッドに対して発熱素子(インク吐出用のヒータ)を駆動するためのデータを転送する。加えて、この記録装置には、ユーザインタフェースとしてLCDやLEDで構成される表示部が備えられている。
図3は図1に示す記録装置に搭載される記録ヘッドを概観構成示す斜視図である。
図3に示すように、記録ヘッド3はインク等の液体を吐出するための機能を備えるヘッド基板(素子基板)5を有している。記録に用いられるインクは、インクタンク6より記録装置1の内部の供給経路を介してサブタンク7へ供給され、記録ヘッド3の内部のインク流路を通じてヘッド基板5へと供給される。インクを吐出するため記録装置1から供給される電圧や駆動信号は、コンタクト基板9からTAB8を介してヘッド基板5に供給される。
次に、以上のような構成の記録ヘッド3に実装されるヘッド基板の実施例について説明する。
図4はヘッド基板をインク吐出面より眺めた図である。また、図5はヘッド基板を図4とは反対側より眺めた図である。図5に示したレイアウトは従来の構成である。
TAB8より供給されるインク吐出のための電源電圧や駆動信号は外部接続端子としてのパッド15を介してヘッド基板5へ取り込まれる。ヘッド基板5にはインク吐出するノズル(吐出口)を複数備えたノズル列(吐出口列)22が形成されている。そして、1つのヘッド基板5には複数のノズル列22を備える。
図4〜図5に示されているように、パッド15は矩形形状の素子基板5の短辺に沿って複数個、設けられている。なお、素子基板の形状は、ここでは矩形としているが、他の形状、例えば、平行四辺形のような形状でも良い。その場合、パッドはその短辺に沿って設けられる。このように、パッドは一般的には素子基板の端部に設けられる。
ヘッド基板5は、電気熱変換素子(ヒータ)20を複数備える半導体基板16と、その上面に、ノズル(吐出口)10や発泡室(不図示)など液体を吐出するための部材を積層して形成するノズル部材(不図示)からなる。
実施例1では、ノズル部材は感光性有機樹脂材料を用い、半導体基板16の上に積層して、ステッパ等の露光装置で露光・現像することにより、高密度なノズル形成を行っている。半導体基板16には、ノズル部材が形成される側とは逆側の面からインク供給口18が形成され、発泡室へとインクが供給される。発泡室へ供給されたインクは、電気熱変換素子(ヒータ)20を駆動することにより、吐出口10から所望量のインク液滴を吐出して記録媒体に着弾させ、画像形成を行う。
素子基板5は1回のキャリッジ走査による記録幅を約1インチとするため、半導体基板16には吐出口10及び電気熱変換素子(ヒータ)20がインク供給口18の長手方向の両側に1200dpiの密度で1200程度配置される。さて、素子基板5の全ての電気熱変換素子(ヒータ)20を同時駆動すると、記録装置の電源に対し瞬間的な負荷がかかるため、電源電圧降下が生じ、所望の電圧が電気熱変換素子(ヒータ)20に印加できない場合がある。そこで、ノズル列22を複数のグループに分けて、ヒータ群(グループ)21に分割し、各グループのノズルを順に駆動する。具体的には、これら1200個の電気熱変換素子(ヒータ)20は複数のグループ21に分割されて分割駆動される。図4では点線で囲まれた各ヒータ列について4個ずつの電気熱変換素子(ヒータ)をグループ21として定義している。
ここで、吐出口とヒータ配置構成について説明する。
図4に示されるように、吐出口10は矩形形状のインク供給口18の両側それぞれに600dpiの解像度でインク供給口18の長手方向に設けられ、インク供給口18を挟んで一方の吐出口列と反対側の吐出口列は1/2ピッチずれて千鳥状に配置される。同様に図4に示されるように、電気熱変換素子(ヒータ)もインク供給口18の両側それぞれに600dpiの解像度でインク供給口18の長手方向に設けられる。そして、インク供給口18を挟んで一方のノズル列と反対側のノズル列は1/2ピッチずれて千鳥状に配置される。このようにインク供給口18を挟んで千鳥状に配置された吐出口とヒータにより、インク供給口18の長手方向に1200dpiの解像度を実現している。
図5に示すように、素子基板5の長手方向に複数のインク供給口18が設けられる構成の場合、記録動作時には電気熱変換素子(ヒータ)20を均一に使用した場合でもインク供給口18が断熱壁となってしまう。このため、素子基板5の内部温度はインク供給口18に囲まれた中央領域ほど温度が上がりやすく、放熱効率の良い素子基板5の端部ほど温度は上昇しにくい傾向がある。
このため、従来より素子基板5の補助的な温度調整のために、素子基板5には複数のサブヒータを設けていた。
図6は複数のサブヒータを備えた従来の素子基板を図5と同じ側から眺めた図である。なお、図6において、既に図4〜図5で説明したのと同じ構成要素には同じ参照番号を付して、その説明は省略する。
図6に示すように、上述の温度分布傾向に配慮して素子基板5に複数のサブヒータ30を設ける。この場合にはインク供給口18に囲まれた部分の長手方向には、ヘッド基板5の端部の方がその中央部よりもサブヒータ30をより高密度に配置している。このように配置することで、ヘッド基板の温度をなるべく一定とすることを可能としている。
しかし、ノズル列全域を使用して低パス均一デューティの画像を記録したところ、素子基板5の長手方向に対し、中央部を境に上下方向に濃淡ムラが生じた。
この濃淡ムラの要因を解析した結果、素子基板の複数のヒータ列を駆動する際、同時駆動されるヒータの遅延順との相関が支配的であった。
図7は分割駆動を説明する図である。
ここでは、1つのノズル列22が72個の電気熱変換素子(ヒータ)20を有する場合で説明する。図7に示すように、72個の電気熱変換素子(ヒータ)にNo.1〜72の番号を付し、各グループは4個の電気熱変換素子(ヒータ)を有するので、ノズル列22は素子基板5の一端から他端へと順にグループG0〜G17の18個のグループに分割されている。これにより瞬間的な電源負荷を1/4に分割できる。例えば、4の倍数(4、8、……、72)の番号のヒータはほぼ同時に最初に駆動される。
しかし、ノズル列が長尺化になるほど、4の倍数の番号の電気熱変換素子(ヒータ)20を同時駆動することで電源容量に対し瞬間的な負荷がかかる。このため、素子基板5に搭載された駆動回路では4の倍数の番号の電気熱変換素子(ヒータ)20をさらに遅延回路によってマイクロ秒(μs)単位以下の駆動順を付けて駆動することで対処している。しかし、グループの数も増加すると、駆動順の差による時間も大きくなり、記録ヘッドの高速駆動において弊害になりかねない。
従って、駆動順の差による時間を短縮し記録ヘッドの高速駆動に対応するために、グループG0〜17を駆動するために用いる遅延回路の系統を複数に分割している。
図8は遅延回路とグループとの関係を示すブロック図である。
図8に示すように、18個のグループG0〜G17を2系統に分けて制御する。この制御は、記録装置1のコントローラ600からのヒートパルスを入力し、9つの遅延回路を含み、これらによってヒートパルスを遅延させる機能を有する、素子基板に備えられた駆動回路40によってなされる。なお、ヒートパルスはパッド15の1つに記録装置1のコントローラ600から送信され、駆動回路40をパッド15を介してヒートパルスを受信する。
即ち、グループG8とG17は同時駆動され、遅延回路41〜49によって、グループG7とG16、次にグループG6とG15というように9つのグループに対し、マイクロ秒単位以下の駆動順をつけて順次駆動する。つまり、グループG8、G17の電気熱変換素子(ヒータ)20を最初に駆動し、グループG0、G9の電気熱変換素子(ヒータ)20を最後に駆動する。このような制御により、各電気熱変換素子(ヒータ)20には安定した波形の電流が供給されることを意図した。ここで、同時駆動されるブロックは素子基板上では離れた位置に配置されたブロックとなるようにしている。
しかしながら、図8に示すような構成の遅延回路を内蔵した素子基板を含む記録ヘッドを用いてノズル列全域を使用した低パス均一デューティの画像を印刷したところ素子基板の長手方向の中央部、即ち、グループG8とG9を境に上下方向に濃淡ムラが生じた。つまり、図7に示す太い破線の上側と下側をを境に上下方向に濃淡ムラが生じている。
発明者らがこの原因をさらに詳細に解析したところ、最初に駆動されるグループの電気熱変換素子(ヒータ)20と最後に駆動されるグループ21の電気熱変換素子(ヒータ)20の間には供給される電流の波形に差異があることが判明した。
図9は駆動タイミングがずれたグループの電気熱変換素子(ヒータ)に供給される電流の波形を示す図である。図9において、(a)が最初に駆動されるグループの電気熱変換素子(ヒータ)に供給される電流の波形を示し、(b)が最後に駆動される電気熱変換素子(ヒータ)に供給される電流の波形を示している。図9(a)と図9(b)とを比較すると分かるように、駆動タイミングの最初と最後とでは電流波形が異なっている。
これは、図9(a)に示す電流波形が供給されるべきところが、各ヒータへの電圧印加オン/オフ時に回路と配線のインダクタンス影響により電流変化が妨げられ、図9(b)に示すように後に駆動されるヒータ20の終端部には過剰電流が流れることによる。つまり、ほぼ安定した電圧が印加されているとすると、最初に駆動されるグループと最後に駆動されるグループでは、実質的な投入エネルギーは最後に駆動されるグループの方が大きくなってしまう。この結果、最後に駆動されるグループの方が最初に駆動されるグループよりも対応する電気熱変換素子(ヒータ)20を必要以上に昇温させることになる。
この現象は、素子基板5のノズル列22を長尺にするほど、図7に示すようなグループの分割数は増加する傾向となり、上述のような同時駆動されるヒータ間に遅延を設ける駆動回路を用いた構成では、昇温差はより大きくなる傾向がある。
以上のような検討と知見とに基づいて、この実施例では、サブヒータの配置構成を従来の構成とは異なるものとする。
図10はこの実施例に従う素子基板が備える複数のサブヒータの配置構成を示すレイアウト図である。
図10に示すように、この実施例の素子基板5では、最初に駆動されるグループG8、G17の近傍には、最後に駆動されるグループG0、G9の近傍より多くのサブヒータ30を設ける。このようなサブヒータの配置構成により、ヒータ駆動により発生する素子基板の温度ムラに対し、より温度の低い部分の素子基板の温度を補助的に上げることが可能になる。この結果、回路構成によって生じた素子基板の内部の温度差に伴うヒータ間の吐出インク量差を抑制し、画像ムラの発生を抑えることが可能となる。
この実施例では、サブヒータ30として発熱抵抗素子を用い、図10に示すように、ヒートパルス信号を入力する遅延回路によるパルス印加タイミングが早いグループにはパルス印加タイミングが遅いグループよりも発熱抵抗素子の配置密度を高める。これにより、素子基板の内部の温度差を小さくすることが可能になる。
このような構成の素子基板を搭載した記録ヘッドが、ノズル列の全域を使用するような記録データを用いて記録を行う場合、記録動作の開始前に発熱抵抗素子を駆動することで駆動遅延順の早い側と遅い側で、基板温度のベース温度に差が設けられる。その後に続く記録動作により電気熱変換素子(ヒータ)20による昇温が加わることで、駆動遅延順の早い側と遅い側のグループ間の温度差はほぼ均一となる。なお、このようなプレヒート動作は、コントローラ600のMPU601からの指示によりなされる。
また、このようなプレヒート動作は、温度センサ632によって検知された環境温度、又は、素子基板に設けられた温度センサ(不図示)によって検知された基板温度が所定の温度を超えた場合に実行するように制御すると良い。
従って以上説明した実施例に従えば、素子基板のヒータ列方向に分割駆動するヒータのグループの駆動順に従ってサブヒータの配置密度を変化させて配置する。そして、記録動作前にはサブヒータをプレヒートするよう制御することで、記録動作のヒータ駆動により発生する温度の不均一を補償し、素子基板の温度の均一化を図ることができる。これにより、濃淡ムラの発生しない高品位な記録が実現する。
ここでは、素子基板の温度調整のために各グループのヒータにインク吐出が生じない程度の短パルス印加する例(短パルス加熱)について説明する。
この実施例では、サブヒータ30を設けずに短パルス加熱制御でプレヒートを行い、駆動遅延順の早いグループのヒータを遅いグループのヒータよりも加熱量を大きくすることで、素子基板のベース温度に差を設ける。
この場合、実施例1で説明したようにサブヒータ30として発熱抵抗素子を特に設ける必要はないが、その発熱抵抗素子を設けた上でさらに各グループのヒータによる短パルス加熱を実行してもよい。この短パルス制御はMPU601からの指示により実行される。なお、MPU601の処理負荷を軽減するために、ASIC603や記録ヘッド3とコントローラ600との間に設けられるヘッドドライバ(不図示)により、短パルス制御を実行しても良い。
この時の短パルス加熱制御でも、実施例1で説明したように、駆動遅延順の早い側と遅い側で素子基板のベース温度に差を設けるために駆動する印加パルス時間を駆動遅延順の早い側のほうが遅い側よりも時間を延ばすことで制御する。この際、駆動遅延順の早い側と遅い側で、ヒータに印加する駆動パルス数に差を設けてもよい。
従って以上説明した実施例に従えば、発熱抵抗素子の数は最低限に抑えることで使用する電力量を抑えた上で、駆動遅延順の早い側と遅い側のグループ間の温度差をほぼ均一とすることができる。これにより、より少ない電力で、濃淡ムラの発生しない高品位な記録が実現する。
図11は実施例3に従う素子基板のレイアウト構成を示す部分拡大図である。
図11では、インク供給口18の片側に配置される複数のヒータ20それぞれとパッド15とを接続する配線101のパターンが示されている。
図11に示すように、同時駆動されうるヒータ20を、それぞれ異なる配線によりパッド15と接続する構成が広く採用されている。同時駆動されうるグループのヒータを同一配線によりパッド15と接続すると、同一配線により接続されたヒータの1つが単独駆動された場合と、複数のヒータが同時駆動された場合とで、配線におけるエネルギー損失が異なる。
このような構成を採用した素子基板5では、パッド15から離れるほど配線の配置密度が低くなる。図11に示す例では、パッド15に近い側では配線密度が高く、パッド15から遠い側では配線密度が低くなるように配線101のパターンが設けられている。一方、配線におけるエネルギー損失は主に熱エネルギーに変換されるので、パッド15から離れるほど配線から発生する熱エネルギーが低くなる。つまり、記録動作を実行して配線101に通電すると、パッド15に近い側では基板温度が高く、パッド15から遠い側では基板温度が低くなる。
従って、素子基板5が長尺化し、配置されるヒータ数が増えるほど配線からの発熱に起因した素子基板5の温度不均衡が発生する。
それ故に、この温度分布傾向を考慮して、サブヒータの配置密度もしくはサブヒータ駆動による投入エネルギーに差を設ける。具体的には、図11に示すように、パッド15に近い側において、サブヒータの配置数を少なく、つまり、配置密度を低く、パッド15から遠い側において、サブヒータの配置数を多く、つまり、配置密度を高くする。
従って以上説明した実施例に従えば、配線密度に従ってサブヒータの配置密度を変化させてサブヒータを配置することで素子基板の温度不均衡を抑えることができる。これにより、必要最低限なサブヒータの駆動、即ち、使用する電力量を抑えつつ、駆動遅延順の早い側と遅い側のグループ間の温度差をほぼ均一とし、濃淡ムラの発生しない高品位な記録が実現できる。
3 記録ヘッド、5 素子基板、7 サブタンク、8 TAB、9 コンタクト基板、
10 吐出口、15 パッド、16 半導体基板、18 インク供給口、
20 電気熱変換素子(ヒータ)、21 グループ、22 ヒータ列、
30 サブヒータ、40 駆動回路、41〜49 遅延回路、101 配線
10 吐出口、15 パッド、16 半導体基板、18 インク供給口、
20 電気熱変換素子(ヒータ)、21 グループ、22 ヒータ列、
30 サブヒータ、40 駆動回路、41〜49 遅延回路、101 配線
Claims (12)
- 予め定められた方向に配列された複数のヒータと、該複数のヒータを前記配列された方向に沿って予め定められた数ごとに複数のグループに分割し、各グループに含まれる複数のヒータを分割駆動する駆動回路と、前記複数のヒータの配列された方向に沿って配置された複数のサブヒータとを備え、前記駆動回路は各グループごとに駆動タイミングを遅延させる素子基板であって、
前記分割駆動するヒータのグループの駆動順に従って前記複数のサブヒータの配置密度を変化させて配置することを特徴とする素子基板。 - 前記駆動順の早いグループの近傍に配置されるサブヒータの密度は高く、
前記駆動順の遅いグループの近傍に配置されるサブヒータの密度は低いことを特徴とする請求項1に記載の素子基板。 - 前記駆動回路はさらに、少なくとも2つのグループが同時駆動されるように駆動タイミングの遅延を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の素子基板。
- 前記複数のヒータの配列された方向に沿って設けられるインク供給口をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の素子基板。
- 前記インク供給口を挟んだ両側に、前記インク供給口の長手方向に複数のヒータからなるヒータ列がそれぞれ設けられることを特徴とする請求項4に記載の素子基板。
- 外部からの信号を入力するパッドと、
前記パッドと前記複数のヒータそれぞれとを接続する配線とをさらに有し、
前記パッドに近い側では、前記配線の密度が高く、前記複数のサブヒータの配置密度が低く、
前記パッドから遠い側では、前記配線の密度が低く、前記複数のサブヒータの配置密度が高いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の素子基板。 - 基板温度を検知する温度センサをさらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の素子基板。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の素子基板と、
前記複数のヒータに対応してインクを吐出する複数のノズルとを有することを特徴とする記録ヘッド。 - 請求項8に記載の記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記記録ヘッドによる記録の前に、前記複数のサブヒータを駆動してプレヒートを行うよう制御する制御手段を有することを特徴とする記録装置。 - 請求項8に記載の記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記記録ヘッドによる記録の前に、前記複数のヒータに対してインク吐出を生じさせない程度の短パルスを印加してプレヒートを行うよう制御する制御手段を有することを特徴とする記録装置。 - 前記制御手段は、素子基板の温度、又は、記録装置の環境温度が予め定められた温度を超えた場合に、前記プレヒートを行うよう制御することを特徴とする請求項9又は10に記載の記録装置。
- 予め定められた方向に配列された複数のヒータと、該複数のヒータを前記配列された方向に沿って予め定められた数ごとに複数のグループに分割し、各グループに含まれる複数のヒータを分割駆動する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は各グループごとに駆動タイミングを遅延させる素子基板と、前記複数のヒータに対応してインクを吐出する複数のノズルと、を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドによる記録の前に、前記複数のヒータに対してインク吐出を生じさせない程度の短パルスを印加してプレヒートを行うよう制御する制御手段と、を有する記録装置であって、
前記制御手段は、前記プレヒートを行う際に、駆動順の早いグループに含まれるヒータの加熱量を駆動順の遅いグループに含まれるヒータの加熱量よりも大きくすることを特徴とする記録装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018169974A JP2020040311A (ja) | 2018-09-11 | 2018-09-11 | 素子基板、記録ヘッド、及び記録装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018169974A JP2020040311A (ja) | 2018-09-11 | 2018-09-11 | 素子基板、記録ヘッド、及び記録装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020040311A true JP2020040311A (ja) | 2020-03-19 |
Family
ID=69797340
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018169974A Pending JP2020040311A (ja) | 2018-09-11 | 2018-09-11 | 素子基板、記録ヘッド、及び記録装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2020040311A (ja) |
-
2018
- 2018-09-11 JP JP2018169974A patent/JP2020040311A/ja active Pending
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