JP2020040156A - センシング装置及び歯車加工機の評価方法 - Google Patents
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Description
加工対象物(ワーク)の振動、AE量(アコースティックエミッション量)、表面温度の変化量などは、加工の良し悪しに関係する物理量であるといわれている。これらの物理量は加工により発生するものであるため、加工点近くで計測することができればノイズや減衰が少ない高品質な情報を取り出すことができる。
以下、第1の実施形態に係るセンシング装置、及び、歯車加工機の評価方法について、図1〜図5を参照しながら詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る歯車加工機の構成を示す図である。
まず、第1の実施形態に係るセンシング装置2を用いた評価の対象とする歯車加工機の一例として、歯車加工機1について説明する。
スライダ14は、工具ユニット14Aを支持する。また、スライダ14は、工具ユニット14Aが具備する工具である砥石Thを主軸線Am回りに回転可能に支持する。工具ユニット14Aは、砥石Thを主軸線Am回りに回転駆動させるモータ等を備えている。
カウンタコラム17は、回転テーブル15を基準にして、±X方向においてコラム11の反対側に配置され、ベッド10に固定されている。テールストック18は、±Z方向に移動可能にカウンタコラム17に取り付けられている。センターサポート19は、テールストック18に取り付けられている。このセンターサポート19は、ワークを、テーブル軸線Atを中心として回転可能に支持する支持端19Aを有する。この支持端19Aは、テーブル軸線Atの延長線上に位置する。
図2は、第1の実施形態に係るセンシング装置の構成を示す図である。
図3は、第1の実施形態に係るセンシング装置の断面構造、及び、センシングユニットの機能構成を示す図である。
以下、図2、図3を参照しながら、第1の実施形態に係るセンシング装置の構造及び機能について詳しく説明する。
センシング用ワーク20は、歯車加工機1によって製品を製造する際に加工が施される製品用のワーク(以下、「製品用ワーク」とも記載する。)と同様の外形を有している。
なお、外層部201は、このような表面処理を簡便に行うことができる材料が選択されるのが望ましい。また、外層部201は、ワーク本体部200と同一の材料で積層されるのが好ましいが、表面処理(積層)のしやすさの観点から、ワーク本体部200とは異なる材料が選択されてもよい。更に、表面処理の例としては、上述した金属メッキ、塗装等の他、例えば、3Dプリンタを利用した付加加工、溶射等による積層であってもよい。
センシング用ワーク20のワーク本体部200は、製品用ワークと比較したときに、少なくとも、上側取り付け部200T及び下側取り付け部200B(歯車加工機1との接続部)の形状、上側取り付け部200Tから加工対象部200Mまでの距離d1、下側取り付け部200Bから加工対象部200Mまでの距離d2、加工対象部200Mの歯幅d3、および、加工対象部200Mの仕様が同一とされている。加工対象部200Mの仕様とは、その構造的特徴を規定する情報であって、本実施形態では、例えば、歯先円直径、歯底円直径、ねじれ角、圧力角、歯幅、歯数、材質、モジュールなどである。
図3に示すように、センシングユニット21は、センシング用ワーク20に内包されている。センシングユニット21は、センシング用ワーク20が歯車加工機1によって加工されている最中に、当該センシング用ワーク20に発生した加工に関する情報(以下、加工情報とも記載する。)を取得して記録する。
コンピュータ210は、センシングユニット21全体の動作を司るプロセッサである。コンピュータ210は、予め用意されたプログラムに従って動作する。コンピュータ210の具体的な動作例については後述する。
記録装置211は、いわゆる大容量記憶装置であって、例えばSSD(Solid State Drive)などである。
評価用センサ212は、歯車加工機1によるセンシング用ワーク20加工時の加工情報を取得可能なセンサである。本実施形態に係るセンシングユニット21は、評価用センサ212として、振動センサ、力センサ、AEセンサ(アコースティックエミッションセンサ)及び温度センサを具備する。振動センサ、力センサ、AEセンサ及び温度センサは、それぞれ、加工情報として、振動、力、AE量及び表面温度に応じた計測信号を出力する。評価用センサ212が出力する計測信号は、図示しない増幅器等を通じてコンピュータ210に読み取られる。なお、他の実施形態に係るセンシングユニット21は、振動センサ、力センサ、AEセンサ及び温度センサのうちのいずれか一つ又は複数を具備する態様であってもよい。また、他の実施形態に係るセンシングユニット21は、評価用センサ212として、上記以外のセンサを具備する態様であってもよい。
無線通信装置213は、外部の端末装置と無線通信を行うための無線通信インタフェースである。無線通信装置213は、記録装置211に記録された情報を無線で外部の端末装置に送信する。無線通信装置213は、例えば、よく知られているWi-Fi(登録商標)やBlueTooth(登録商標)などの無線通信モジュールであってよい。
二次電池214は、センシングユニット21内部の各構成(上述のコンピュータ210、記録装置211、評価用センサ212、無線通信装置213)に電力を供給する電力源である。
無線給電部215は、例えばコイルなどを含んで構成され、外部から無線で受電した電力を二次電池214に供給可能とする。
着座センサ216は、センシング装置2が歯車加工機1に装着されたことを検知するためのセンサである。例えば、着座センサ216は、下側取り付け部200Bの嵌合用の穴の底部に設けられ、ワーク支持器16の支持端16A(図1)と接触した際に、着座検知信号をコンピュータ210に出力する。
図4は、第1の実施形態に係るコンピュータの処理フローを示す図である。
次に、図4を参照しながら、図3に示すコンピュータ210の具体的な処理について説明する。
この処理フローの初期段階において、コンピュータ210は停止状態(低消費電力の状態)にある。停止状態にあるコンピュータ210は、起動信号(即ち、着座センサ216からの着座検知信号)のみを待ち受けている(ステップS01:NOの繰り返し)。
着座センサ216から着座検知信号がコンピュータ210に出力されると(ステップS01:YES)、コンピュータ210が起動処理を行う(ステップS02)。
コンピュータ210は、起動処理を完了すると、評価用センサ212から出力される各種計測信号を取得する(ステップS03)。続いて、コンピュータ210は、取得した計測信号を処理して物理量(振動、力、AE量、表面温度)に変換し、記録装置211に記録する(ステップS04)。
コンピュータ210は、着座センサ216から着座検知信号を受け付けている間(ステップS05:NO)、上述のステップS03、04の処理を繰り返し実行し、一定のサンプリングレートで各種物理量の計測、記録を繰り返す。
着座センサ216から着座検知信号の出力が停止すると(ステップS05:YES)、コンピュータ210は、ステップS03、04の処理を終了し、停止状態に移行する(ステップS06)。
図5は、第1の実施形態に係る歯車加工機の評価方法の処理フローを示す図である。
次に、図5を参照しながら、第1の実施形態に係るセンシング装置2を用いた歯車加工機1の評価方法について詳しく説明する。
第1加工ステップS11が終了すると、作業者は、歯車加工機1からセンシング装置2を取り外して、この作業日に予定されている通常の量産工程(製品用ワークの加工)を進める。
第2加工ステップS13においては、第1加工ステップS11と同様に、コンピュータ210による図4の処理フローを経て、第2の加工に係る加工情報が記録装置211に記録される。なお、第2の加工に適用される加工条件は、第1加工ステップS11における第1の加工に適用された加工条件と同一のものとされるのが好ましい。
第2加工ステップS13が終了すると、作業者は、センシング装置2を取り外して、この作業日に予定されている通常の量産工程を進める。
作業者は、このように取得された2つの加工情報を対比することで、歯車加工機1に異常が生じていないかどうかを評価する。
なお、図5に示す処理フローにおいては、1回目の加工(ステップS11)に係る加工情報と、2回目の加工(ステップS13)に係る加工情報とを対比するものとして説明したが、他の実施形態においてはこれに限定されない。他の実施形態においては、例えば、センシング用ワーク20に施す1回目の加工に係る加工情報と、センシング用ワーク20に施す3回目以降の加工に係る加工情報とを対比することで歯車加工機1を評価してもよい。この場合、1回目の加工が第1の加工ステップに対応し、3回目以降のいずれかの加工が第2の加工ステップに対応する。また、センシング用ワーク20に施した1回目からN回目(N=2、3、・・)までの各々で得られた加工情報の一部又は全部を用いて、歯車加工機1の状態を示す数値の時系列を評価してもよい。この場合、センシング用ワーク20に施した1回目からN回目までのいずれか2つの加工が、第1の加工ステップ及び第2の加工ステップにそれぞれ対応する。
以上の通り、第1の実施形態に係るセンシング装置2は、センシング用ワーク20とセンシングユニット21とを一体化してなる。このセンシングユニット21は、内部にコンピュータ210、記録装置211、評価用センサ212、二次電池214等を備え、センシング用ワーク20の加工時における加工情報を自動的に内部の記録装置211に記録する。このようなセンシング装置2によれば、歯車加工機1の外部からケーブルを引き回すことなく、加工点に極めて近い位置でセンシングできる。
このようにすることで、センシングユニット21が、直接、加工油や工具などに晒されることを防ぐことができるので、センシング装置2の信頼性を高めることができる。
このようにすることで、積層ステップS12(図5)における表面処理により外層部201を積層し、センシング装置2として再利用することができる。これにより、歯車加工機1の評価に要するコストを低減できる。
このようにすることで、歯車加工機1を扱う作業者は、センシング装置2から製品用ワークに付け替える際に、歯車加工機1に対する特段の作業(例えば、ワーク支持器16、センターサポート19の付け替え作業など)を行わずに済む。これにより、例えば、ある作業日の最初にセンシング装置2のセンシング用ワーク20に対して加工を行った後、その作業日に予定されている量産工程を開始する際に、センシング用ワーク20から製品用ワークへの付け替えをスムーズに行うことができる。
このようにすることで、センシング装置2の記録装置211に記録された加工情報を、無線通信を介して取得することができる。また、センシング装置2に、通信用の接続インタフェースを設ける必要がないため、センシング装置2全体の構成を簡素化することができる。
このようにすることで、二次電池214への充電が可能となり、センシング装置2を繰り返し使用することができる。また、センシング装置2に、充電用の接続インタフェースを設ける必要がないため、センシング装置2全体の構成を簡素化することができる。
このようにすることで、同じ歯車加工機1を用いて行った少なくとも2回の加工に係る加工情報の対比に基づいて、歯車加工機1の変化(異常)を把握することができる。
このようにすることで、加工情報の毎回の取得条件(即ち、センシング用ワーク20の外形及びその加工条件)を統一することができる。これにより、各作業日に取得される加工情報同士の対比を行いやすくなる。また、このようにすることで、加工情報を通じて、長い時間をかけて起こる歯車加工機1の変化(経年劣化)の兆候を見つけやすくなる。
このようにすることで、同じセンシング装置2を繰り返して使用することができるので、歯車加工機1の評価に係るコストの低減を図ることができる。
以下、第2の実施形態に係るセンシング装置について、図6〜図7を参照しながら詳しく説明する。
図6は、第2の実施形態に係るセンシング装置の構成を示す図である。
図6に示すように、第2の実施形態に係るセンシング装置2は、センシング用ワーク20に対してセンシングユニット21が取り外し可能に設けられている。
なお、新たなセンシング用ワーク20にセンシングユニット21を取り付ける場合は、作業者は、ワーク本体部200の空孔Vにセンシングユニット21を挿入し、更に、上側取り付け部200Tを空孔Vに嵌め込む。
図7は、第2の実施形態に係る歯車加工機の評価方法の処理フローを示す図である。
第2の実施形態に示す評価方法の処理フローのうち、第1の実施形態に示す評価方法の処理フロー(図5)と同一の処理ステップについては、同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、第2の実施形態に係る歯車加工機1の評価方法は、積層ステップS12の代わりに付け替えステップS12aを有する点で、第1の実施形態と異なる。
このように、作業者が、センシングユニット21を加工済みのセンシング用ワーク20から未加工のセンシング用ワーク20に付け替えることで、第1加工ステップS11を行う前の状態に等しい、新たなセンシング装置2を作製することができる。
なお、本実施形態に係るセンシング装置2は、センシング用ワーク20そのものを取り換えることで再利用できるようにしているので、本実施形態で用いられるセンシング用ワーク20には外層部201が設けられている必要はない。
以上の通り、第2の実施形態に係るセンシング装置2において、センシングユニット21は、センシング用ワーク20に対して取り外し可能に設けられている。
このようにすることで、加工済みのセンシング用ワークを未加工のセンシング用ワークに付け替えるだけで、センシング装置2として再利用できる状態となる。したがって、再利用の際に、表面処理(図5の積層ステップS12)のような手間をかけなくともよくなる。
以上、第1、第2の実施形態に係るセンシング装置2、及び、これを用いた歯車加工機1の評価方法について詳細に説明したが、センシング装置2、及び、歯車加工機1の評価方法の具体的な態様は上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
例えば、センシングユニット21は、加工中の工具やその他のパーツに干渉しない限りにおいて、センシング用ワーク20の表面に取り付けられている態様であってもよい。このような態様としても、ケーブルを引き回すことなく、加工点付近でセンシングすることができ、第1、第2の実施形態と同等の効果を奏する。
他の実施形態に係るセンシング装置2は、有線で接続可能な通信用の接続インタフェースを有する態様であってもよい。
他の実施形態に係るセンシング装置2は、有線で接続可能な充電用の接続インタフェースを有する態様であってもよい。
また、他の実施形態に係るセンシング装置2は、初期の充電容量を使い切った時点で使用しない(新しいセンシングユニット21に取り換える)使い切りタイプのものであってもよい。この場合、センシングユニット21は、無線給電部215、その他の充電手段を具備しなくともよい。
例えば、第1の加工に係る加工情報及び第2の加工に係る加工情報は、同日に取得されるものであってもよいし、二日以上離れた日に取得されるものであってもよい。
他の実施形態に係るセンシング装置2は、歯車加工機1が加工対象とする製品用ワークそのものを具備する態様であってもよい。なお、製品用ワークは、ワークの一態様である。
この場合、作業者は、歯車加工機1が加工対象とする製品用ワークそのものにセンシングユニット21を取り付けた状態で加工を行う。このようにすることで、製品用ワークの加工中における加工情報を記録することができる。
また、第1、第2の実施形態に係るセンシング装置2及びこれを用いた評価方法は、例えば、他の形状を有する歯車(例えば、うち歯歯車、傘歯車など)や歯車以外の部材を製造する歯車加工機に対しても適用可能である。なお、この場合において、各歯車加工機の評価用に用いられるセンシング装置2のセンシング用ワーク20は、当該歯車加工機が製造対象とする製品の外形と対応する外形とされているのが好ましい。
10 ベッド
11 コラム
12 サドル
13 ヘッド
14 スライダ
14A 工具ユニット
15 回転テーブル
16 ワーク支持器
16A 支持端
17 カウンタコラム
18 テールストック
19 センターサポート
19A 支持端
Th 砥石
2 センシング装置
20 センシング用ワーク
200 ワーク本体部
200T 上側取り付け部
200B 下側取り付け部
201 外層部
21 センシングユニット
210 コンピュータ
211 記録装置
212 評価用センサ
213 無線通信装置
214 二次電池(電力源)
215 無線給電部
216 着座センサ
Claims (12)
- センシング用ワークと、
前記センシング用ワークに設けられたセンシングユニットと、
を備え、
前記センシングユニットは、
歯車加工機による前記センシング用ワークに対しての加工時の、当該センシング用ワークに発生した加工に関する情報を取得する評価用センサと、
前記評価用センサから前記加工に関する情報を記録する記録装置と、
前記評価用センサ及び前記記録装置に電力を供給する電力源と、
を有するセンシング装置。 - 前記加工に関する情報は、振動、力、アコースティックエミッション量及び温度の少なくともいずれか一つである
請求項1に記載のセンシング装置。 - 前記センシングユニットは、前記センシング用ワークに内包されている
請求項1又は請求項2に記載のセンシング装置。 - 前記センシング用ワークは、
ワーク本体部と、
前記ワーク本体部に積層された外層部と、
を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセンシング装置。 - 前記外層部は、前記ワーク本体部と同一の材料とされている
請求項4に記載のセンシング装置。 - 前記センシングユニットは、前記センシング用ワークに対して取り外し可能に設けられている
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のセンシング装置。 - 前記センシングユニットは、更に、
前記記録装置に記録された情報を無線で外部に送信する無線通信装置を備える
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のセンシング装置。 - 前記センシングユニットは、更に、
外部から無線で受電した電力を前記電力源に供給可能な無線給電部を備える
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のセンシング装置。 - 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のセンシング装置を用いた歯車加工機。
- 前記センシング用ワークは、前記歯車加工機によって製品を製造する際に加工が施される製品用ワークと比較したときに、少なくとも、センシング用ワークを把持する際の接続部の形状、前記接続部から加工対象部までの距離、および、前記加工対象部の仕様が同一とされている
請求項9に記載の歯車加工機。 - 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のセンシング装置を用いた歯車加工機の評価方法であって、
前記センシング用ワークに対して前記歯車加工機による第1の加工を施す第1加工ステップと、
前記第1加工ステップの後に、前記第1の加工によって加工が施された前記センシング装置の前記センシング用ワークに外層部を積層して、当該外層部の形状を、前記第1加工ステップ前の形状に戻す積層ステップと、
前記積層ステップの後に、前記センシング用ワークに対して前記歯車加工機による第2の加工を施す第2加工ステップと、
少なくとも、前記第1加工ステップで記録された前記加工に関する情報と、前記第2加工ステップで記録された前記加工に関する情報と、を含む複数の前記加工に関する情報に基づいて前記歯車加工機を評価する評価ステップと、
を含む歯車加工機の評価方法。 - 前記センシング用ワークは、前記歯車加工機によって製品を製造する際に加工が施される製品用ワークと比較したときに、少なくとも、センシング用ワークを把持する際の接続部の形状、前記接続部から加工対象部までの距離、および、前記加工対象部の仕様が同一とされている
請求項11に記載の歯車加工機の評価方法。
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