JP2020035852A - 圧電素子、液体吐出ヘッド、およびプリンター - Google Patents
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Abstract
【課題】クラックが発生することを抑制できる圧電素子を提供する。【解決手段】酸化物層を有する基体の上方に設けられる第1電極と、前記酸化物層に接し、前記第1電極を覆って設けられ、カリウム、ナトリウム、およびニオブを含むペロブスカイト型構造の複合酸化物を有する圧電体層と、前記圧電体層の上方に設けられる第2電極と、を含み、前記圧電体層の膜厚は、500nm以上であり、前記圧電体層のX線回折パターンにおいて、(100)面のピーク強度と(110)面のピーク強度との和に対する、(100)面のピーク強度の比は、0.50以上である、圧電素子。【選択図】図6
Description
本発明は、圧電素子、液体吐出ヘッド、およびプリンターに関する。
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術の発達により薄膜を利用した素子が増えてきており、液体吐出ヘッドなどで使用される圧電素子においても薄膜化が行われている。しかし、薄膜は、クラックが生じやすいといった課題がある。
例えば特許文献1では、ニオブ酸カリウムナトリウム((K1−x,Nax)NbO3:KNN)系の圧電体層において、所定量のシリコーンオイルを含ませることにより、クラックの発生を抑制できることが記載されている。
特許文献1では、圧電体層表面の結晶面方位について考慮しておらず、圧電体層は、膜厚が大きくなると、特許文献1の観察倍率(500倍)では確認できなかった微細なクラックが発生する可能性がある。このようなクラックが発生した圧電体層は、電圧の印加に伴う変形により亀裂進展する虞れがある。
本発明に係る圧電素子の一態様は、
酸化物層を有する基体の上方に設けられる第1電極と、
前記酸化物層に接し、前記第1電極を覆って設けられ、カリウム、ナトリウム、およびニオブを含むペロブスカイト型構造の複合酸化物を有する圧電体層と、
前記圧電体層の上方に設けられる第2電極と、
を含み、
前記圧電体層の膜厚は、500nm以上であり、
前記圧電体層のX線回折パターンにおいて、(100)面のピーク強度と(110)面のピーク強度との和に対する、(100)面のピーク強度の比は、0.50以上である。
酸化物層を有する基体の上方に設けられる第1電極と、
前記酸化物層に接し、前記第1電極を覆って設けられ、カリウム、ナトリウム、およびニオブを含むペロブスカイト型構造の複合酸化物を有する圧電体層と、
前記圧電体層の上方に設けられる第2電極と、
を含み、
前記圧電体層の膜厚は、500nm以上であり、
前記圧電体層のX線回折パターンにおいて、(100)面のピーク強度と(110)面のピーク強度との和に対する、(100)面のピーク強度の比は、0.50以上である。
前記圧電素子の一態様において、
前記酸化物層は、酸化ジルコニウム層であってもよい。
前記酸化物層は、酸化ジルコニウム層であってもよい。
前記圧電素子の一態様において、
前記圧電体層の膜厚は、1μm以上であってもよい。
前記圧電体層の膜厚は、1μm以上であってもよい。
前記圧電素子の一態様において、
前記比は、0.60以上であってもよい。
前記比は、0.60以上であってもよい。
前記圧電素子の一態様において、
前記圧電体層は、マンガンを含んでもよい。
前記圧電体層は、マンガンを含んでもよい。
本発明に係る液体吐出ヘッドの一態様は、
前記圧電素子の一態様と、
液体を吐出するノズル孔が設けられるノズルプレートと、
を含み、
前記基体は、前記圧電素子により容積が変化する圧力発生室と、前記圧力発生室に連通し、前記圧力発生室に前記液体を供給する供給流路と、が設けられる流路形成基板を有し、
前記ノズル孔は、前記圧力発生室に連通する。
前記圧電素子の一態様と、
液体を吐出するノズル孔が設けられるノズルプレートと、
を含み、
前記基体は、前記圧電素子により容積が変化する圧力発生室と、前記圧力発生室に連通し、前記圧力発生室に前記液体を供給する供給流路と、が設けられる流路形成基板を有し、
前記ノズル孔は、前記圧力発生室に連通する。
本発明に係るプリンターの一態様は、
前記液体吐出ヘッドの一態様と、
前記液体吐出ヘッドに対して被記録媒体を相対移動させる搬送機構と、
前記液体吐出ヘッドおよび前記搬送機構を制御する制御部と、
を含む。
前記液体吐出ヘッドの一態様と、
前記液体吐出ヘッドに対して被記録媒体を相対移動させる搬送機構と、
前記液体吐出ヘッドおよび前記搬送機構を制御する制御部と、
を含む。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 圧電素子
まず、本実施形態に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る圧電素子100を模式的に示す断面図である。
まず、本実施形態に係る圧電素子について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る圧電素子100を模式的に示す断面図である。
圧電素子100は、図1に示すように、第1電極10と、圧電体層20と、第2電極30と、を含む。圧電素子100は、基体2の上方に設けられている。図示の例では、圧電素子100は、基体2上に設けられている。
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
基体2は、例えば、半導体、絶縁体などで形成された平板である。基体2は、単層であっても、複数の層が積層された積層体であってもよい。基体2は、上面が平面的な形状であれば内部の構造は限定されず、内部に空間などが形成された構造であってもよい。
基体2は、例えば、圧電体層20の動作によって変形することのできる振動板230を有している。図示の例では、振動板230は、酸化シリコン層232と、酸化シリコン層232上に設けられた酸化物層234と、を有している。酸化シリコン層232は、シリコンと酸素とを含む層であり、例えば、シリカ(SiO2)層である。酸化物層234は、例えば、酸化ジルコニウム層である。酸化ジルコニウム層である酸化物層234は、ジルコニウムと酸素とを含む層であり、例えば、ジルコニア(ZrO2)層である。ジルコニア層の結晶構造は、単斜晶、正方晶、立方晶、またはこれらの混晶である。図示の例では、基体2は、シリコン基板201を有し、振動板230は、シリコン基板201上に設けられている。
なお、酸化物層234は、酸化ジルコニウム層に限らず、TiO2層やSiO2層、Al2O3層、Ta2O5層などでも構わない。また、振動板230は、酸化シリコン層232を有していなくてもよい。
第1電極10は、基体2の上方に設けられている。図示の例では、第1電極10は、基体2上に設けられている。第1電極10の形状は、例えば、層状である。第1電極10の膜厚は、例えば、3nm以上200nm以下である。第1電極10は、例えば、白金層、イリジウム層などの金属層、それらの導電性酸化物層、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3:SRO)層などである。第1電極10は、上記に例示した層を複数積層した構造を有していてもよい。
第1電極10は、圧電体層20に電圧を印加するための一方の電極である。第1電極10は、圧電体層20の下方に設けられた下部電極である。
なお、図示はしないが、第1電極10と基体2との間には、第1電極10と基体2との密着性を向上させる密着層が設けられていてもよい。密着層は、例えば、チタン層、酸化チタン層などである。
圧電体層20は、酸化物層234に接し、第1電極10を覆って設けられている。圧電体層20は、酸化物層234上および第1電極10上に設けられている。圧電体層20は、例えば、第1電極10と第2電極30とに挟まれている。圧電体層20は、第1電極10と第2電極30との間に電圧が印加されることにより、変形することができる。
圧電体層20の膜厚Tは、500nm以上である。圧電体層20の膜厚Tは、例えば、1μm以下である。圧電体層20の膜厚Tは、圧電体層20の最大の膜厚である。図示の例では、膜厚Tは、圧電体層20の酸化物層234上に設けられた部分20aの膜厚であり、酸化物層234と第2電極30との間の距離である。圧電体層20の膜厚Tは、例えば、断面SEM(Scanning Electron Microscope)によって測定することができる。
圧電体層20は、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、およびニオブ(Nb)を含むペロブスカイト型構造の複合酸化物を有する層である。圧電体層20は、さらに、マンガン(Mn)を含んでいてもよい。圧電体層20は、マンガンが添加されたKNN層であってもよい。
圧電体層20のX線回折(X‐ray diffraction:XRD)パターンにおいて、(100)面のピーク強度と(110)面のピーク強度との和に対する、(100)面のピーク強度の比Rは、0.50以上である。比Rは、好ましくは0.55以上であり、より好ましくは0.60以上である。
第2電極30は、圧電体層20の上方に設けられている。図示の例では、第2電極30は、圧電体層20上に設けられている。なお、図示はしないが、第2電極30は、さらに、圧電体層20の側面および基体2上に設けられていてもよい。
第2電極30の形状は、例えば、層状である。第2電極30の膜厚は、例えば、15n
m以上300nm以下である。第2電極30は、例えば、イリジウム層や白金層などの金属層、それらの導電性酸化物層、ルテニウム酸ストロンチウム層などである。第2電極30は、上記に例示した層を複数積層した構造を有していてもよい。
m以上300nm以下である。第2電極30は、例えば、イリジウム層や白金層などの金属層、それらの導電性酸化物層、ルテニウム酸ストロンチウム層などである。第2電極30は、上記に例示した層を複数積層した構造を有していてもよい。
第2電極30は、圧電体層20に電圧を印加するための他方の電極である。第2電極30は、圧電体層20の上方に設けられた上部電極である。
圧電素子100は、例えば、以下の特徴を有する。
圧電素子100では、圧電体層20の膜厚Tは、500μm以上であり、圧電体層20のX線回折パターンにおいて比Rは、0.50以上である。そのため、圧電素子100では、後述する「5. 実施例および比較例」に示すように、圧電体層20の膜厚Tが500μm以上であっても、圧電体層20の酸化物層234上に設けられた部分20aに、クラックが発生することを抑制できる。
圧電素子100では、圧電体層20の膜厚Tは、1μm以下である。そのため、圧電素子100では、圧電体層20の部分20aにクラックが発生することを、より確実に抑制できる。圧電体層20は、厚ければ厚いほど、クラックが発生しやすい。
圧電素子100では、比Rは、0.60以上である。圧電素子100では、後述する「5. 実施例および比較例」に示すように、圧電体層20の部分20aにクラックが発生することを、より確実に抑制できる。
圧電素子100では、圧電体層20は、マンガンを含む。そのため、圧電素子100では、圧電体層20がマンガンを含まない場合に比べて、リーク電流を低減することができる。
2. 圧電素子の製造方法
次に、本実施形態に係る圧電素子100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
次に、本実施形態に係る圧電素子100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、基体2を準備する。具体的には、シリコン基板201を熱酸化することによって酸化シリコン層232を形成する。次に、酸化シリコン層232上にスパッタ法などによってジルコニウム層を形成し、該ジルコニウム層を熱酸化することによって酸化ジルコニウム層である酸化物層234を形成する。以上の工程により、基体2を準備することができる。
次に、基体2上に、第1電極10を形成する。第1電極10は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法などによって形成される。次に、第1電極10を、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってパターニングする。
次に、基体2上および第1電極10上に、圧電体層20を形成する。圧電体層20は、例えば、ゾルゲル法やMOD(Metal Organic Deposition)などの化学溶液堆積(Chemical Solution Deposition:CSD)法によって形成される。以下、圧電体層20の形成方法について説明する。
まず、例えば、カリウムを含む金属錯体、ナトリウムを含む金属錯体、ニオブを含む金属錯体、およびマンガンを含む金属錯体を、有機溶媒に溶解または分散させて前駆体溶液を調整する。
カリウムを含む金属錯体としては、例えば、2−エチルヘキサン酸カリウム、酢酸カリウムなどが挙げられる。ナトリウムを含む金属錯体としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。ニオブを含む金属錯体としては、例えば、2−エチルヘキサン酸ニオブ、ペンタエトキシニオブなどが挙げられる。マンガンを含む金属錯体としては、例えば、2−エチルヘキサン酸マンガンなどが挙げられる。カルシウムを含む金属錯体としては、例えば、2−エチルヘキサン酸カルシウムなどが挙げられる。なお、2種以上の金属錯体を併用してもよい。例えば、カリウムを含む金属錯体として、2−エチルへキサン酸カリウムと酢酸カリウムとを併用してもよい。
溶媒としては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、オクタン、デカン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸、オクチル酸、2−nブトキシエタノール、n−オクタン、またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。
次に、調整された前駆体溶液を、第1電極10上に、スピンコート法などを用いて塗布して前駆体層を形成する(塗布工程)。次に、前駆体層を、例えば130℃以上250℃以下で加熱して一定時間乾燥させ(乾燥工程)、さらに、乾燥した前駆体層を、例えば300℃以上450℃以下で加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。次に、脱脂した前駆体層を、例えば600℃以上750℃以下で加熱し、この温度で一定時間保持することによって結晶化させる(焼成工程)。以上の工程により、結晶層を形成することができる。
次に、塗布工程から焼成工程までの一連の工程を複数回繰り返す。これにより、複数の結晶層が積層された圧電体層20を形成することができる。
乾燥工程および脱脂工程で用いられる加熱装置としては、例えば、ホットプレートが挙げられる。焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置が挙げられる。焼成工程の昇温時間は、例えば、15℃/s以上350℃/s以下である。
次に、圧電体層20上に第2電極30を形成する。第2電極30は、例えば、スパッタ法や真空蒸着法などによって形成される。次に、第2電極30および圧電体層20を、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってパターニングする。なお、第2電極30および圧電体層20は、別々の工程でパターニングされてもよい。
以上の工程により、圧電素子100を製造することができる。
3. 液体吐出ヘッド
次に、本実施形態に係る液体吐出ヘッドについて、図面を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド200を模式的に示す分解斜視図である。図3は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド200を模式的に示す平面図である。図4は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド200を模式的に示す図3のIV−IV線断面図である。なお、図2〜図4では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
次に、本実施形態に係る液体吐出ヘッドについて、図面を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド200を模式的に示す分解斜視図である。図3は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド200を模式的に示す平面図である。図4は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド200を模式的に示す図3のIV−IV線断面図である。なお、図2〜図4では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
液体吐出ヘッド200は、図2〜図4に示すように、例えば、基体2と、圧電素子100と、ノズルプレート220と、保護基板240と、回路基板250と、コンプライアンス基板260と、を含む。基体2は、流路形成基板210と、振動板230と、を有している。なお、便宜上、図3では、回路基板250の図示を省略している。
流路形成基板210は、例えば、シリコン基板である。流路形成基板210には、圧力
発生室211が設けられている。圧力発生室211は、複数の隔壁212によって区画されている。圧力発生室211は、圧電素子100により容積が変化する。
発生室211が設けられている。圧力発生室211は、複数の隔壁212によって区画されている。圧力発生室211は、圧電素子100により容積が変化する。
流路形成基板210のうち、圧力発生室211の+X軸方向の端部には、供給路213および連通路214が設けられている。供給路213は、圧力発生室211の+X軸方向の端部をY軸方向から絞ることで、その開口面積が小さくなるように構成されている。連通路214のY軸方向の大きさは、圧力発生室211のY軸方向の大きさと、例えば同じである。連通路214の+X軸方向には、連通部215が設けられている。連通部215は、マニホールド216の一部を構成する。マニホールド216は、各圧力発生室211の共通の液室となる。このように、流路形成基板210には、供給路213、連通路214、および連通部215からなる供給流路217と、圧力発生室211とが形成されている。供給流路217は、圧力発生室211に連通し、圧力発生室211に液体を供給する。
ノズルプレート220は、流路形成基板210の一方側の面に設けられている。ノズルプレート220の材質は、例えば、SUS(Steel Use Stainless)である。ノズルプレート220は、例えば接着剤や熱溶着フィルムなどによって、流路形成基板210に接合されている。ノズルプレート220には、Y軸に沿ってノズル孔222が並設されている。ノズル孔222は、圧力発生室211に連通している。
振動板230は、流路形成基板210の他方側の面に設けられている。振動板230は、例えば、流路形成基板210上に設けられた酸化シリコン層232と、酸化シリコン層232上に設けられた酸化物層234と、により構成されている。
圧電素子100は、例えば、振動板230上に設けられている。圧電素子100は、複数設けられている。圧電素子100の数は、特に限定されない。
液体吐出ヘッド200では、電気機械変換特性を有する圧電体層20の変形によって、振動板230および第1電極10が変位する。すなわち、液体吐出ヘッド200では、振動板230および第1電極10が、実質的に振動板としての機能を有している。なお、振動板230を省略して、第1電極10のみが振動板として機能するようにしてもよい。流路形成基板210上に第1電極10を直接設ける場合には、第1電極10に液体が接触しないように、第1電極10を絶縁性の保護膜などで保護することが好ましい。
第1電極10は、圧力発生室211ごとに独立する個別電極として構成されている。第1電極10のY軸方向の大きさは、圧力発生室211のY軸方向の大きさよりも小さい。第1電極10のX軸方向の大きさは、圧力発生室211のX軸方向の大きさよりも大きい。X軸方向において、第1電極10の両端部は、圧力発生室211の両端部より外側に位置している。第1電極10の−X軸方向の端部には、リード電極202が接続されている。
圧電体層20のY軸方向の大きさは、例えば、第1電極10のY軸方向の大きさよりも大きい。圧電体層20のX軸方向の大きさは、例えば、圧力発生室211のX軸方向の大きさよりも大きい。圧電体層20の+X軸方向の端部は、例えば、第1電極10の+X軸方向の端部よりも外側に位置している。第1電極10の+X軸方向の端部は、圧電体層20によって覆われている。一方、圧電体層20の−X軸方向の端部は、例えば、第1電極10の−X軸方向側の端部よりも内側に位置している。第1電極10の−X軸方向側の端部は、圧電体層20によって覆われていない。
第2電極30は、例えば、圧電体層20および振動板230上に連続して設けられてい
る。第2電極30は、複数の圧電素子100に共通する共通の電極として構成されている。
る。第2電極30は、複数の圧電素子100に共通する共通の電極として構成されている。
保護基板240は、接着剤203によって流路形成基板210に接合されている。保護基板240には、貫通孔242が設けられている。図示の例では、貫通孔242は、保護基板240をZ軸方向に貫通しており、連通部215と連通している。貫通孔242および連通部215は、各圧力発生室211の共通の液室となるマニホールド216を構成している。さらに、保護基板240には、保護基板240をZ軸方向に貫通する貫通孔244が設けられている。貫通孔244には、リード電極202の端部が位置している。
保護基板240には、開口部246が設けられている。開口部246は、圧電素子100の駆動を阻害しないための空間である。開口部246は、密封されていてもよいし、密封されていなくてもよい。
回路基板250は、保護基板240上に設けられている。回路基板250には、圧電素子100を駆動させるための半導体集積回路(Integrated Circuit:IC)を含む。回路基板250とリード電極202は、接続配線204を介して電気的に接続されている。
コンプライアンス基板260は、保護基板240上に設けられている。コンプライアンス基板260は、保護基板240上に設けられた封止層262と、封止層262上に設けられた固定板264と、を有している。封止層262は、マニホールド216を封止するための層である。封止層262は、例えば、可撓性を有する。固定板264には、貫通孔266が設けられている。貫通孔266は、固定板264をZ軸方向に貫通している。貫通孔266は、Z軸方向からみて、マニホールド216と重なる位置に設けられている。
4. プリンター
次に、本実施形態に係るプリンターについて、図面を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係るプリンター300を模式的に示す斜視図である。
次に、本実施形態に係るプリンターについて、図面を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係るプリンター300を模式的に示す斜視図である。
プリンター300は、インクジェット式のプリンターである。プリンター300は、図5に示すように、ヘッドユニット310を含む。ヘッドユニット310は、例えば、液体吐出ヘッド200を有している。液体吐出ヘッド200の数は、特に限定されない。ヘッドユニット310は、供給手段を構成するカートリッジ312,314が着脱可能に設けられている。ヘッドユニット310を搭載したキャリッジ316は、装置本体320に取り付けられたキャリッジ軸322に軸方向移動自在に設けられており、液体供給手段から供給された液体を吐出する。
ここで言う液体とは、物質が液相であるときの状態の材料であればよく、ゾル、ゲル等のような液状態の材料も液体に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども液体に含まれる。液体の代表的な例としては、インクや液晶乳化剤等が挙げられる。インクとは、一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
プリンター300では、駆動モーター330の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト332を介してキャリッジ316に伝達されることで、ヘッドユニット310を搭載したキャリッジ316は、キャリッジ軸322に沿って移動される。一方、装置本体320には、液体吐出ヘッドに対して、紙などの被記録媒体であるシートSを相対移動させる搬送機構としての搬送ローラー340が設けられている。シートSを搬送する搬送機構は、搬送ローラーに限られず、ベルトやドラムなどであってもよい。
プリンター300は、液体吐出ヘッド200および搬送ローラーを制御する制御部としてのプリンターコントローラー350を含む。プリンターコントローラー350は、液体吐出ヘッド200の回路基板250と電気的に接続されている。プリンターコントローラー350は、例えば、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、制御プログラムなどを記憶したROM(Read Only Memory)、CPU(Central Processing Unit)、および液体吐出ヘッド200へ供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生回路などを備えている。
なお、圧電素子100は、液体吐出ヘッドおよびプリンターに限らず、広範囲な用途に用いることができる。圧電素子100は、例えば、ジャイロセンサー、加速度センサーなどの各種センサー、音叉型振動子などのタイミングデバイス、超音波モーターなどの超音波デバイスに好適に用いることができる。
5. 実施例および比較例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例および比較例によって何ら限定されるものではない。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例および比較例によって何ら限定されるものではない。
5.1. 試料の作製
5.1.1. 実施例1
6インチのシリコン基板を熱酸化することで、SiO2層を形成した。次に、SiO2層上にスパッタ法によってジルコニウム層を形成し、熱酸化させることでZrO2層を形成した。
5.1.1. 実施例1
6インチのシリコン基板を熱酸化することで、SiO2層を形成した。次に、SiO2層上にスパッタ法によってジルコニウム層を形成し、熱酸化させることでZrO2層を形成した。
2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ニオブ溶液、および2−エチルヘキサン酸マンガンからなる溶液を用いて、(K0.5Na0.5)1.04(Nb0.995Mn0.005)O3となるように前駆体溶液を調合した。次に、前駆体溶液をスピンコート法によりZrO2層上に塗布し、前駆体層を形成した。次に、前駆体層を、180 ℃で加熱して乾燥させ、さらに380℃で加熱して脱脂させた後に、RTA装置を使用して、300℃/sで昇温させ、700℃で3分間、加熱処理を行った。この塗布〜RTA装置による加熱処理を、圧電体層にクラックが発生するまで繰り返し行った。
クラックの確認は、各前駆体層のRTA装置による加熱処理後に、ニコン社製の位相差顕微鏡「OPTIPHOT200」を用い、接眼レンズを10倍とし、対物レンズを100倍として行った。
5.1.2. 実施例2
実施例2では、RTA装置の昇温速度を60℃/sとしたこと以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
実施例2では、RTA装置の昇温速度を60℃/sとしたこと以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
5.1.3. 実施例3
実施例3では、脱脂の加熱温度を340℃とし、RTA装置の昇温速度を20℃/sとしたこと以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
実施例3では、脱脂の加熱温度を340℃とし、RTA装置の昇温速度を20℃/sとしたこと以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
5.1.4. 比較例1
比較例1では、RTA装置の昇温速度を20℃/sとしたこと以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
比較例1では、RTA装置の昇温速度を20℃/sとしたこと以外は、実施例1と同じ条件で作製した。
5.2. XRD測定
上記のように作製した試料に対して、XRD測定を行った。XRDは、Bruker社製D8 DISCOVER with GADDSを用いて、管電圧を50kV、管電流を100mA、検出器距離を15cm、コリメーター径を0.1mm、測定時間を120secとして測定した。そして、得られた2次元データを、付属のソフトで2θ範囲を20°〜50°、χ範囲を−95°〜−85°、ステップ幅を0.02°、強度規格化法をBin normalizedとして、X線回折強度曲線に変換した。
上記のように作製した試料に対して、XRD測定を行った。XRDは、Bruker社製D8 DISCOVER with GADDSを用いて、管電圧を50kV、管電流を100mA、検出器距離を15cm、コリメーター径を0.1mm、測定時間を120secとして測定した。そして、得られた2次元データを、付属のソフトで2θ範囲を20°〜50°、χ範囲を−95°〜−85°、ステップ幅を0.02°、強度規格化法をBin normalizedとして、X線回折強度曲線に変換した。
図6は、クラックが発生したときの圧電体層の膜厚と、比Rと、の関係を示す表である。比Rは、上述のように、圧電体層のX線回折パターンにおいて、(100)面のピーク強度と(110)面のピーク強度との和に対する、(100)面のピーク強度の比である。
図6に示すように、比Rが0.50以上である試料は、比Rが0.50よりも小さい試料に比べて、クラックが発生したときの圧電体層の膜厚、すなわちクラック発生膜厚が大きいことがわかった。さらに、比Rを0.60以上とすることにより、クラック発生膜厚を、より大きくできることがわかった。クラック発生膜厚が大きいほど、クラックが発生し難い圧電体層であるといえる。
なお、図6に示すクラック発生膜厚は、実施例1〜3および比較例1の各々を複数回、作製した結果を示している。また、実施例1〜3および比較例1では、圧電体層の(100)面および(110)面のピークがXRD測定により確認され、(111)面方向の結晶も存在すると考えられる。しかしながら、KNNの(111)面のピーク強度は、(100)面および(110)面のピーク強度に比べて、十分に小さく、Ptの(111)面のピークに近い位置にKNNの(111)面のピークが存在するため、(100)面や(110)面と同様の測定では分離が困難であることから、比Rから除外した。
(100)面のピーク強度が大きい試料ではクラックに対する耐性が強い理由としては、線膨張係数の異方性が考えられる。実施例1〜3は、ランダム配向ではあるが、(100)面を向いた結晶粒が多いことでクラックに対する耐性が強くなったと予想される。
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
2…基体、10…第1電極、20…圧電体層、20a…部分、30…第2電極、100…圧電素子、200…液体吐出ヘッド、201…シリコン基板、202…リード電極、203…接着剤、204…接続配線、210…流路形成基板、211…圧力発生室、212…隔壁、213…供給路、214…連通路、215…連通部、216…マニホールド、217…供給流路、220…ノズルプレート、222…ノズル孔、230…振動板、232…酸化シリコン層、234…酸化物層、240…保護基板、242,244…貫通孔、246…開口部、250…回路基板、260…コンプライアンス基板、262…封止層、264…固定板、266…貫通孔、300…プリンター、310…ヘッドユニット、312,314…カートリッジ、316…キャリッジ、320…装置本体、322…キャリッジ軸、330…駆動モーター、332…タイミングベルト、340…搬送ローラー、350…プリンターコントローラー
Claims (7)
- 酸化物層を有する基体の上方に設けられる第1電極と、
前記酸化物層に接し、前記第1電極を覆って設けられ、カリウム、ナトリウム、およびニオブを含むペロブスカイト型構造の複合酸化物を有する圧電体層と、
前記圧電体層の上方に設けられる第2電極と、
を含み、
前記圧電体層の膜厚は、500nm以上であり、
前記圧電体層のX線回折パターンにおいて、(100)面のピーク強度と(110)面のピーク強度との和に対する、(100)面のピーク強度の比は、0.50以上である、圧電素子。 - 請求項1において、
前記酸化物層は、酸化ジルコニウム層である、圧電素子。 - 請求項1または2において、
前記圧電体層の膜厚は、1μm以上である、圧電素子。 - 請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記比は、0.60以上である、圧電素子。 - 請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記圧電体層は、マンガンを含む、圧電素子。 - 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の圧電素子と、
液体を吐出するノズル孔が設けられるノズルプレートと、
を含み、
前記基体は、前記圧電素子により容積が変化する圧力発生室と、前記圧力発生室に連通し、前記圧力発生室に前記液体を供給する供給流路と、が設けられる流路形成基板を有し、
前記ノズル孔は、前記圧力発生室に連通する、液体吐出ヘッド。 - 請求項6に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに対して被記録媒体を相対移動させる搬送機構と、
前記液体吐出ヘッドおよび前記搬送機構を制御する制御部と、
を含む、プリンター。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018160264A JP2020035852A (ja) | 2018-08-29 | 2018-08-29 | 圧電素子、液体吐出ヘッド、およびプリンター |
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JP2018160264A Pending JP2020035852A (ja) | 2018-08-29 | 2018-08-29 | 圧電素子、液体吐出ヘッド、およびプリンター |
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Country | Link |
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-
2018
- 2018-08-29 JP JP2018160264A patent/JP2020035852A/ja active Pending
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