JP2020033278A - 刺激緩和剤 - Google Patents

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美穂 小山
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洋子 仁木
祐貴 勝間田
Yuki Katsumata
祐貴 勝間田
真吾 清川
Shingo Kiyokawa
真吾 清川
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Abstract

【課題】本発明の課題は、化粧料や洗浄剤の皮膚又は粘膜への刺激を緩和することができる刺激緩和剤を提供することにある。【解決手段】ダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコールとリンゴ酸とのジエステル組成物を用いる。該ジエステル組成物は、化粧料や洗浄剤に配合される他の成分、特に界面活性剤の刺激緩和に有効であり、各種の洗浄剤、例えば、食器用、調理器具用、頭髪用、皮膚用などの洗浄剤に好ましく配合できる。【選択図】なし

Description

本発明は、ダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコールとリンゴ酸とのジエステル組成物を含有する刺激緩和剤に関する。
化粧料や洗浄剤において皮膚又は粘膜への刺激を低減することは非常に重要な課題であるが、一般に汎用される界面活性剤は、その多くが皮膚又は粘膜へ刺激を与えることが知られている。また、それ以外にも低級アルコール、色素、香料、紫外線吸収剤、ピーリング剤、防腐剤など、人によっては刺激を示す成分が必要に応じて配合される。従来からこのような刺激を緩和する試みがなされており、例えば、界面活性剤の刺激低減においては、アミノ酸系の低刺激性界面活性剤の開発や天然の界面活性剤であるレシチンの利用などが行われている。あるいは、刺激を有する成分とともに刺激を緩和する成分を併用する方法(例えば特許文献1〜3)が知られているが、必ずしも十分とは言えなかった。
化粧料に汎用されているエステル油の一つであるリンゴ酸ジイソステアリルは、安全性、安定性に優れた高粘性かつ高極性の油剤として古くから使用されている。このような従来から使用されているリンゴ酸ジイソステアリルは、極性油/非極性油のいずれにも相溶しやすく、また、光沢性、顔料との親和性、肌への密着性などに優れることから、メイクアップ化粧料の基油として汎用されている。また、スキンケアやヘアケアの分野においても、感触調整の目的で使用される。一方で、従来から使用されているリンゴ酸ジイソステアリルは、高粘性油としては比較的べたつきが少ない油剤として知られてはいるものの、使用感や保湿性は必ずしも満足いくものでなかった。
リンゴ酸ジイソステアリルは、リンゴ酸とイソステアリルアルコールとのエステル化反応により得られるジエステルであり、イソステアリルアルコールとは、分岐アルキル鎖を有する炭素数18の高級アルコールの総称である。一般的に流通しているイソステアリルアルコールには分岐構造によりいくつかの種類の化合物が存在するが、従来から化粧品に使用されているリンゴ酸ジイソステアリルとしては、イソステアリルアルコールとして5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−オクタン−1−オールを使用した化合物のみが流通している。このことは、かつて化粧品に配合可能な原料の規格を収載した化粧品種別配合成分規格(粧配規)や、現在医薬部外品の原料として配合可能な原料の規格を収載した医薬部外品原料規格2006(外原規)において、リンゴ酸ジイソステアリルが「リンゴ酸と5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−オクタン−1−オールとのジエステル」と定義されていることから明らかである。また実際、現在市販品として流通しているリンゴ酸ジイソステアリルとしては、NIKKOL DISM(日光ケミカルズ社製)、エステロールDISM(ナショナル美松社製)、コスモール222(日清オイリオ社製)、ハイマレートDIS(高級アルコール工業社製)があるが、これらはいずれも前述のイソステアリルアルコールを使用した化合物である。したがって、その他の分岐構造を有するイソステアリルアルコールを使用したリンゴ酸ジイソステアリルついてはこれまで知られていなかった。
しかしながら最近、前述した従来のリンゴ酸ジイソステアリルの使用感や保湿性を改善したものとして、ダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコールとリンゴ酸とのジエステル組成物が開発され、今後さらなる応用が期待されている(特許文献4)。しかし、従来のものを含めリンゴ酸ジイソステアリルの刺激緩和剤としての利用は全く知られていない。
特開平04−041600 特開2005−281181 特開2014−181208 特開2018−123129
本発明の課題は、化粧料や洗浄剤の皮膚又は粘膜への刺激を緩和することができる刺激緩和剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコールとリンゴ酸とのジエステル組成物が、化粧料や洗浄剤に配合される他の成分が引き起こす刺激を緩和する効果に優れることを見出し、本発明を完成した。
本発明のダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコールとリンゴ酸とのジエステル組成物は、化粧料や洗浄剤に配合される他の成分の刺激を緩和する効果に優れ、特に界面活性剤の刺激を緩和する作用に優れる。したがって、界面活性剤を配合した組成物に好ましく配合することができる。
本発明は、ダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコールとリンゴ酸とのジエステル組成物(以下、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルという)を含有する刺激緩和剤である。
本発明のリンゴ酸ジイソステアリルの製造に使用されるイソステアリルアルコールは、ダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコールであるが、以下にその詳細について述べる。まず、ダイマー酸とは、炭素数が12〜22の不飽和脂肪酸またはその低級アルコールエステルを粘土触媒等にて二量化して製造される炭素数36を主成分とする二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されている。このダイマー酸製造時において、副生成物としてモノマー酸が生成し、このモノマー酸には、二量化に関与しなかった不飽和脂肪酸の他、水素移動反応により生成した直鎖飽和脂肪酸、並びに、異性化により生成した分岐脂肪酸が含まれる。このモノマー酸をさらに水素添加して、融点の高い直鎖飽和脂肪酸と融点の低い分岐脂肪酸との混合物とし、溶剤分別法等により融点の高い直鎖飽和脂肪酸を除去すると、タイター10℃以下の分岐脂肪酸が得られる。このようにして得られる分岐脂肪酸は、ダイマー酸製造時に使用する不飽和脂肪酸の種類にもよるが、一般的に炭素数18の分岐脂肪酸を主成分とし、炭素数18以外に炭素数12〜22の分岐脂肪酸も含有する。分岐脂肪酸の構造についてはすべてが明らかになっているわけではないが、主鎖にメチル基が一つないし2つ結合したメチル分岐構造を有するものが主であり、主鎖への結合の位置は特定されていない。その他に、エチル分岐、プロピル分岐、環状構造のものや、溶剤分別で除去されなかった直鎖飽和脂肪酸なども含まれる。このようにダイマー酸製造時の副生成物であるモノマー酸から製造される分岐脂肪酸は種々の脂肪酸の混合物であるが、炭素数18の分岐脂肪酸を主成分としていることから、一般にイソステアリン酸の名称で工業的に流通している。そしてこのようなイソステアリン酸を触媒存在下で水素添加して、カルボン酸部分をアルコールとしたものが本発明で使用されるイソステアリルアルコールであり、前述のイソステアリン酸と同様に、炭素数18の分岐構造を主成分とする種々の高級アルコールの混合物である。このようなダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコールとしては、水酸基価が200〜215、粘度(25℃)が30〜70mPa.sのものを使用することができ、市販品としては、PRISORINE3515(クローダ社製)やRADIANOL1980(オレオン社製)が流通しており、本発明ではこのような市販品を使用することができる。
本発明のリンゴ酸ジイソステアリルの製造に使用されるリンゴ酸としては、具体的には、L−リンゴ酸、D−リンゴ酸、又は、DL−リンゴ酸が挙げられる。本発明ではこれらのいずれも使用することができる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうち経済性の観点から、DL−リンゴ酸を好ましく使用することができる。
本発明のリンゴ酸ジイソステアリルの製造方法は、必ずしも限定されないが、以下の方法で製造することができる。すなわち、原料のリンゴ酸とイソステアリルアルコールを、モル比で1:1.5〜1:2.5、より好ましくは1:1.8〜1:2.2の比率でエステル化することにより得られる。エステル化反応の条件は特に限定されず、通常用いられる方法で行われる。例えば触媒を使用する場合、パラトルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、塩酸、メタンスルホン酸、三フッ化硼素ジエチルエーテル錯体、チタンアルコラート、固体酸触媒等を用い、溶媒としてヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等を用いて、50〜260℃で行うことができる。あるいは、無溶媒、無触媒でも100〜260℃でエステル化を行うことができる。さらに得られたエステルは、必要に応じて通常の方法により精製して使用してもよい。例えば、残存する遊離のカルボン酸をアルカリ性水溶液で洗浄して除去してもよいし、臭い低減や安定性向上を目的に、蒸留、水蒸気脱臭、活性炭処理等の精製を行ってもよい。このようにして得られる本発明のリンゴ酸ジイソステアリルには、ジエステルの他、モノエステルや未反応のイソステアリルアルコール、あるいは、リンゴ酸の二量化体のエステル化物を含有するものであってもよい。すでに述べたように本発明で使用されるイソステアリルアルコールは種々のアルコールの混合物であるため、このようにして得られる本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは、各種アルコールとリンゴ酸から生成される各種ジエステルの混合物である。
本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは、25℃における粘度が100〜300mPa・sであり、従来のリンゴ酸ジイソステアリルの粘度が約3,000mPa・s付近であることに比較して、非常に低いことを特徴とする。このため、従来のリンゴ酸ジイソステアリルの欠点であった使用感が大きく改善されており、滑らかさ、べたつき感のなさ、肌へのなじみの良さなどの点で非常に有利である。また、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは、高い抱水性を有することも特徴の一つである。抱水性の指標となる含水価が、従来のリンゴ酸ジイソステアリルでは50%以下であるのに対して、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは200〜400%であり、保湿性の付与に非常に有用である。
本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは、化粧料や洗浄剤に配合される他の成分の刺激を緩和する効果に優れるため、刺激緩和剤として有用である。本発明のリンゴ酸ジイソステアリルが緩和する刺激成分としては、具体的には、界面活性剤、低級アルコール、色素、香料、紫外線吸収剤、ピーリング剤、防腐剤などが挙げられる。本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは、前述した刺激性成分のうち、特に界面活性剤の刺激を好ましく緩和することができる。したがって、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは、界面活性剤の配合量の多い洗浄剤に特に好ましく配合することができる。よって本発明のもう一つの形態としては、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルと界面活性剤とを含有する洗浄剤である。本発明のリンゴ酸ジイソステアリルの洗浄剤への配合量としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はなく、通常0.01〜20重量%、好ましくは、0.05〜10重量%である。
本発明のリンゴ酸ジイソステアリルと界面活性剤とを含有する洗浄剤の種類としては、毛髪用としては、オイルシャンプー、クリームシャンプー、コンディショニングシャンプー、ふけ用シャンプー、ヘアカラー用シャンプー、リンス一体型シャンプー等のシャンプー;リンス、トリートメント、ヘアパック、ヘアミスト等のコンディショナー;皮膚用としては、クレンジングフォーム、クレンジングクリーム、クレンジングミルク、クレンジングローション、クレンジングジェル、クレンジングオイル、クレンジングマスク、洗粉、洗顔パウダー等の洗顔料;化粧石鹸、透明石鹸、薬用石鹸、液状石鹸、ひげそり石鹸、合成化粧石鹸等の石鹸;ボディシャンプー等のボディ洗浄料が好ましいものとして挙げられる。
また、食器又は調理器具用の洗浄剤としても好ましく使用できる。食器又は調理器具用の洗浄剤に使用することで、界面活性剤の皮膚への刺激を低減するとともに、界面活性剤の洗浄力や泡立ちを阻害することなく保湿感を付与し、肌荒れ等の皮膚トラブルを低減することができる。また、食器又は調理器具用の洗浄剤は透明液状のものが多いが、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは可溶化されやすい特長を有する油剤であるため、透明性を保ったまま洗浄剤に配合することが可能である。
本発明のリンゴ酸ジイソステアリルと併用される界面活性剤としては、具体的には、陰イオン性界面活性剤として、アルキル硫酸エステル塩、POEアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αオレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、αスルホ脂肪酸アルキルエステル塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、POEアルキルエーテルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキルアミド塩等の硫酸又はスルホン酸型界面活性剤;アルキルリン酸エステル塩、POEアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸型界面活性剤;N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアスパラギン酸塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルアラニン塩、N−アシル−N−アルキル−β−アラニン塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルメチルタウリン塩、ジアシルグルタミン酸リシン塩等のアシルアミノ酸型界面活性剤;高級脂肪酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩、POE脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、アルケニルコハク酸塩等のカルボン酸型界面活性剤等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、モノアルキル4級アンモニウム塩、ジアルキル4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、脂肪酸アミドアミン塩、脂肪酸アミド4級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキル酢酸ベタイン、脂肪酸アミドアルキル酢酸ベタイン、アルキルスルホベタイン、脂肪酸アミドアルキルスルホベタイン、アルキルアミンオキシド、脂肪酸アミドアルキルアミンオキシド、イミダゾリン型ベタイン等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルエーテルアミン、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
本発明の洗浄剤には、必要に応じて水及び通常化粧料に配合される添加成分、例えば前述した界面活性剤以外の界面活性剤、油性基剤、アルコール類、保湿剤、高分子・増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、キレート剤、pH調整剤・酸・アルカリ、紫外線吸収剤、美白剤、溶剤、角質剥離・溶解剤、鎮痒剤、消炎剤、制汗剤、清涼剤、抗ヒスタミン剤、収れん剤、刺激剤、育毛用薬剤・血行促進剤、還元剤・酸化剤、高分子粉体、ヒドロキシ酸、ビタミン類及びその誘導体類、糖類及びその誘導体類、有機酸類、酵素類、核酸類、ホルモン類、無機粉体類、香料、色素等を本発明の効果を損なわない程度で含有していてもよい。
本発明の洗浄剤の剤型としては、水中油(O/W)型、油中水(W/O)型、W/O/W型、O/W/O型等の乳化状、固形状、液状、練状、スティック状、ジェル状、ペースト状、シート状、ミスト状、スプレー状等の剤型が好ましいものとして挙げられる。
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
合成例1 本発明のリンゴ酸ジイソステアリルの合成
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた3Lの反応器にDL−リンゴ酸220g(1.64モル)、ダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコール889g(3.28モル、RADIANOL1980 オレオン社製)、及び、溶剤としてヘプタン231gを仕込み、窒素吹き込みながら100℃〜120℃に加熱し、6時間還流反応させた。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液で未反応のカルボン酸を水洗除去し、有機層を濃縮した後、減圧水蒸気脱臭を行い、目的のリンゴ酸ジイソステアリル1023g(収率97%)をほぼ無色の液状油として得た。
比較合成例1 従来のリンゴ酸ジイソステアリルの合成
イソステアリルアルコールとして、5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−オクタン−1−オール(ファインオキソコール180、日産化学工業社製)を使用した以外は、合成例1と同様に合成を行い、目的のリンゴ酸ジイソステアリル1018g(収率97%)をほぼ無色の粘性液状油として得た。
<物性評価>
合成例1で得られた本発明のリンゴ酸ジイソステアリル、比較合成例1で得られた従来のリンゴ酸ジイソステアリル、及び、リンゴ酸ジイソステアリルの市販品A〜Dについて、酸価、けん化価、水酸基価、屈折率、粘度、含水価を測定した。結果は表1に記載した。なお、屈折率は、屈折計(Model3、ATAGO社製)を用いて20℃で測定した。粘度は、ブルックフィールド粘度計(TVB−10、東機産業社製)を用いて25℃で測定した。含水価は、英国薬局方(BP)のラノリンの含水価測定法に準じて測定した。
<使用感の評価>
合成例1で得られた本発明のリンゴ酸ジイソステアリル、比較合成例1で得られた従来のリンゴ酸ジイソステアリル、及び、リンゴ酸ジイソステアリルの市販品A〜Dについて、使用感を評価した。評価は7名のパネラーによる官能に基づき、皮膚に塗布した際の滑らかさ、べたつき感、肌へのなじみの3項目について、下記の評価基準にて評価した。結果は表1に記載した。

滑らかさ
◎:非常に滑らかである
○:滑らかである
△:やや滑らかではない
×:全く滑らかではない

べたつき感
◎:非常にべたつきが少ない
○:べたつきが少ない
△:ややべたつきがある
×:非常にべたつきがある

肌へのなじみ
◎:非常になじみが良い
○:なじみが良い
△:ややなじみが悪い
×:全くなじまない
Figure 2020033278
表1の結果より、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは、従来のリンゴ酸ジイソステアリルに比較して、低粘度であり、滑らかさ、べたつき感、肌なじみといった使用感が非常に優れていた。また、従来のリンゴ酸ジイソステアリルに比較して含水価が非常に高いため、保湿性の付与に非常に有用であることが分かった。さらに、従来のリンゴ酸ジイソステアリルに比較して屈折率が高いため、光沢性の付与に有用であることが分かった。
<刺激緩和作用評価>
本発明のリンゴ酸ジイソステアリルによる界面活性剤の刺激緩和作用を、以下の方法により評価した。まずコントロールとして、ラウレス硫酸ナトリウム(SLES)の濃度が0、62、72、84、96、108、120ppmになるように添加した培地にて、ウサギ角膜上皮由来細胞を72時間培養した。培養後、WST法による染色及び吸光度(450nm)測定により細胞生存率を算出した。得られた各濃度における細胞生存率からIC50値(50%の細胞生存率となる濃度)を求め、細胞毒性(刺激性)の指標とした。
次に、SLESに対して本発明のリンゴ酸ジイソステアリルを重量比で28:1、14:1、7:1の比率で培地に添加した際のSLESのIC50値を、上記と同様の方法で測定した。得られた結果は図1に示した。
また、SLESに対して本発明のリンゴ酸ジイソステアリル又は従来のリンゴ酸ジイソステアリルを重量比で14:1の比率で培地に添加した際のSLESのIC50値を同様に測定した。得られた結果は図2に示した。
図1の結果より、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルはSLESのIC50値を向上させており、SLESの細胞への毒性を低減させることが分かった。すなわち本発明のリンゴ酸ジイソステアリルはラウレス硫酸ナトリウムによる刺激性を緩和するものと考えられた。また図2の結果より、従来のリンゴ酸ジイソステアリルにはほとんど効果はなく、このような効果は本発明のリンゴ酸ジイソステアリル特有の効果であると考えられた。
<食器又は調理器具用洗浄剤への配合効果>
表1〜3に記載の組成にて、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルを配合した食器又は調理器具用洗浄剤を作製した。比較として従来のリンゴ酸ジイソステアリルを配合した洗浄剤を、コントロールとしてリンゴ酸ジイソステアリル無配合の洗浄剤を作製した。得られた洗浄剤について、以下の方法で外観、洗浄力、泡立ち、保湿性を評価した。結果は表1〜3に併記した。

(外観評価)
5℃/1週間保管後の外観を目視で観察し、下記の評価基準にて評価した。

○:コントロールと同等
△:コントロールよりやや透明性が悪い
×:コントロールより透明性が悪い

(洗浄力評価)
市販のハードスポンジを6×5×3cmのサイズに切り取り、このスポンジに10mLの水を含ませた後、各洗浄剤0.1gを滴下した。スポンジを4〜5回手で揉み、泡立たせた後、予め牛脂を均一に塗布した直径20cmの食器を洗浄し、洗浄後の食器の洗浄度合いを下記の評価基準にて評価した。

○:コントロールより良好
△:コントロールと同等
×:コントロールより悪い

(泡立ち評価)
前記の洗浄力評価におけるスポンジの泡立ち度合いを下記の評価基準にて評価した。

○:コントロールより良好
△:コントロールと同等
×:コントロールより悪い

(保湿性評価)
前記の洗浄力評価後に、手の保湿感を下記の評価基準にて評価した。

○:コントロールより良好
△:コントロールと同等
×:コントロールより悪い
Figure 2020033278
Figure 2020033278
Figure 2020033278
表1〜3の結果より、本発明のリンゴ酸ジイソステアリルは、界面活性剤により可溶化され易く、容易に透明処方に配合可能であり、洗浄力や泡立ちを阻害することなく保湿感の付与に優れることが分かった。
実施例4 食器用洗剤

成 分 配合量(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
本発明のリンゴ酸ジイソステアリル 1.0
ラウリル硫酸アンモニウム 5.0
ラウレス硫酸Na(25%) 20.0
アルキルグリセリルスルホネート 3.0
n−ドデシルジメチルアミンオキシド 3.0
ラウリルプロピルアミノ酢酸ベタイン 2.5
ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル 2.5
エチルアルコール 5.0
グリセリン 5.0
クエン酸ナトリウム 0.2
防腐剤 適量
香料 適量
精製水 合計で100となる量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(調製方法)
全成分を約80℃で加温して均一に攪拌混合した。
実施例5 洗顔フォーム

成 分 配合量(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A部
オレイン酸K 10.0
パルミチン酸K 10.0
ラウリン酸K 4.0
ラウロイルアスパラギン酸Na 3.5
ココイルグリシンK 3.5
ラウリル硫酸アンモニウム 2.0
ラウレス硫酸Na(25%) 5.0
本発明のリンゴ酸ジイソステアリル 0.5
イソステアリン酸 0.2
PEG1500 10.0
グリセリン 15.0
モノステアリン酸グリセリル 1.0
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス
(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル) 0.1
B部
ヒアルロン酸 0.03
ベタイン 1.0
イヌリン 0.5
ポリクオタニウム−7 0.5
ポリクオタニウム−39 0.5
メチルパラベン 0.15
精製水 合計で100となる量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(調製方法)
A部を秤りとり、約80℃に加温して溶解した。B部を秤りとり、約80℃に加温した。攪拌しながらAにBを徐々に加え、混合後40℃まで冷却した。
実施例6 ボディシャンプー

成 分 配合量(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
本発明のリンゴ酸ジイソステアリル 0.25
ココイルメチルタウリンNa 10.0
ラウリル硫酸アンモニウム 2.0
ラウレス硫酸Na(25%) 5.0
ラウロイル加水分解シルクNa 6.0
ラウロイルメチルアラニンNa 10.0
ココアンホ酢酸Na(30%) 4.0
コカミドプロピルベタイン(30%) 10.0
オレフィン(C14−16)スルホン酸Na 5.0
ジラウロイルグルタミン酸リシンNa 0.05
ポリクオタニウム−10 1.3
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド 0.8
シロキクラゲ多糖体 0.02
ヒアルロン酸Na 0.02
コカミドDEA 3.0
グリセリン 5.0
メチルパラベン 0.2
精製水 合計で100となる量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(調製方法)
全成分を約80℃で加温して均一に攪拌混合した。
実施例7 ハンドソープ

成 分 配合量(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A部
本発明のリンゴ酸ジイソステアリル 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.1
グリセリン 20.0
エタノール 5.0
B部
塩化ベンザルコニウム 0.05
ラウロイルサルコシン塩 12.0
アルキルグルコシド 2.0
ラウリル硫酸アンモニウム 2.0
ラウレス硫酸Na(25%) 5.0
オレイン酸ポリグリセリル−10 0.2
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 2.0
PEG−7ヤシ油脂肪酸グリセリル 2.0
POEステアリルエーテル 1.0
リシノレイン酸 0.1
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
ソルビトール 8.0
ベンジルアルコール 0.1
フェノキシエタノール 0.8
精製水 合計で100となる量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(調製方法)
A部を約80℃に加温し溶解させた。A部にB部を加え、約80℃に加温し均一溶解させた後冷却した。
実施例8 シャンプー

成 分 配合量(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A部
本発明のリンゴ酸ジイソステアリル 0.5
オレイン酸 0.2
セバシン酸ジエチルヘキシル 1.0
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)
0.3
B部
ラウリル硫酸アンモニウム 5.0
ラウレス硫酸Na(25%) 10.0
ココイルグルタミン酸TEA(30%) 8.0
オレイン酸ポリグリセリル−10 0.2
ジステアリン酸グリコール 0.5
トルエンスルホン酸 0.3
ステアロキシプロピルジメチルアミン 0.5
コカミドメチルMEA 1.0
ミリスチルアルコール 0.7
ラウレス−4 0.3
ラウレス−16 0.2
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.5
フェノキシエタノール 0.3
C部
メチルパラベン 0.2
アルギニン 0.5
安息香酸Na 0.3
精製水 合計で100となる量
D部
ポリクオタニウム−10 0.2
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド 0.1
精製水 6.7
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(調製方法)
あらかじめ混合、溶解しておいたA部と、B部を約80℃で均一に混合した(E部)。別にとっておいたC部を約60℃に加温、均一にした。E部にC部を攪拌しながら徐々に加え、均一に混合した後、約50℃まで冷却した。さらにD部を加え均一に混合した。
実施例9 泡クレンジング

成 分 配合量(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A部
本発明のリンゴ酸ジイソステアリル 1.0
DPG 10.0
BG 2.0
トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル 10.0
イソステアリン酸PEG-20グリセリル 8.0
ラウレス硫酸Na(25%) 3.0
ココイルグリシンK(30%) 10.0
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 2.0
B部
クエン酸 0.2
クエン酸Na 0.1
EDTA−2Na 0.1
メチルパラベン 0.1
シロキクラゲ多糖体 0.01
精製水 合計で100となる量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(調製方法)
A部とB部を約80℃に加温し、溶解させた。A部にB部を徐々に加え、均一に混合した。
実施例10 泡クレンジング

成 分 配合量(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A部
本発明のリンゴ酸ジイソステアリル 0.5
グリセリン 3.0
BG 10.0
ラウレス硫酸Na(25%) 2.0
ヤシ脂肪酸K 8.0
イソステアリン酸PEG−8グリセリル 10.0
ラウリン酸PEG−80ソルビタン 5.0
(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル−10
1.0
B部
ベタイン 2.5
ポリクオタニウム−7 1.0
ローヤルゼリーエキス 0.1
マルチトール 0.5
フェノキシエタノール 0.3
安息香酸Na 0.3
エデト酸Na 0.1
精製水 合計で100となる量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(調製方法)
A部とB部を約80℃に加温し、溶解させた。A部にB部を徐々に加え、均一に混合した。
本発明のリンゴ酸ジイソステアリルの刺激緩和効果を示す図 従来のリンゴ酸ジイソステアリルとの刺激緩和効果の比較を示す図

Claims (4)

  1. 25℃における粘度が100〜300mPa・sである、ダイマー酸製造時の副生成物から誘導されるイソステアリルアルコールとリンゴ酸とのジエステル組成物を含有する刺激緩和剤。
  2. 界面活性剤の刺激を緩和することを特徴とする請求項1に記載の刺激緩和剤。
  3. 請求項1又は2に記載の刺激緩和剤及び界面活性剤を含有する洗浄剤。
  4. 食器又は調理器具用であることを特徴とする請求項3に記載の洗浄剤。
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