JP2020022960A - 石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法、および、石膏含有廃棄物処理設備、ならびに、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制に用いられるための水溶液 - Google Patents

石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法、および、石膏含有廃棄物処理設備、ならびに、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制に用いられるための水溶液 Download PDF

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Abstract

【課題】 石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制する方法を提供する。また、硫化水素の発生を抑制可能な石膏含有廃棄物処理設備を提供する。【解決手段】 石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液11とを接触させる接触工程を有する、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法。また、石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液11とを接触させるための処理部である埋立地2と、埋立地2において石膏含有廃棄物10aに可溶性塩水溶液11を供給する塩水供給手段3Bと、を有する石膏含有廃棄物処理設備。また、可溶性塩水溶液11の代わりにチオ尿素様物質を含有する水溶液を用いて同様に硫化水素の発生を抑制することができる。【選択図】 図6

Description

本発明は、石膏ボード等の石膏製品から回収される石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制する方法、および、石膏含有廃棄物処理設備に関する。また、本発明は、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制に用いられるための水溶液に関する。
使用済みの石膏ボード等の廃石膏材の排出量は、年々増加傾向にあるが、廃石膏材のリサイクルは遅々として進んでおらず、多くの廃石膏材が廃棄物として埋立処分されている。このような廃石膏材を含む石膏含有廃棄物の埋立処分では、硫化水素の発生がしばしば問題となる。
旧厚生省水道環境部が平成12年9月にまとめた「廃棄物最終処分場における硫化水素対策検討会報告書」において、以下の5つの硫化水素発生の条件を満足することが、硫化水素が発生する要因とされている。
条件1:硫酸イオン(SO4 2-)が高濃度で存在すること
条件2:有機物(硫酸還元菌の炭素源)が存在すること
条件3:嫌気性の環境であること(酸素が存在しないこと)
条件4:埋立層内に水がたまっていたり、たまりやすい状況があること
条件5:硫酸還元菌が存在していること
「硫酸還元菌(SRB)」は、嫌気的(酸素がほとんどない)環境で有機物を分解し、そこで生じた電子を用いて硫酸塩を還元する微生物の総称である。上記5つの条件を満足すると、硫酸還元菌の働きにより、下記反応式(1)に示すように、硫酸塩は硫化物イオンにまで還元され、硫化水素が発生する。
従来、石膏ボード等を処分する際には、硫化水素の発生要因の上記条件3や条件4の条件を満足しないように、水分量を少なくする対策や、ガス抜きをする対策が行われている。
また、発生した硫化水素の大気中への放出を抑制するため、薬剤や資材を投入する対策も試みられている。
例えば、特許文献1には、有機性排出物の発酵・分解化により得られた発酵生産物と、揮発性有機成分を含むガスとを接触させて、ガス中に含まれる揮発性有機成分を低減又は除去する方法が開示されている。また、実施例では、ハザカプラントより生産された発酵性生産物と接触させることで、廃棄物埋立処分場より排出される硫化水素を除去できることが記載されている。
硫化水素を硫化物とすることで大気中への放出を抑制する方法として、例えば、特許文献2には、硫化水素を含有する廃棄物の処理場において、特定のpHおよび特定の鉄濃度の水酸化第二鉄コロイドの水分散液を適用する方法が開示されている。
また、火山灰土壌は硫化水素を吸着できることが知られている(例えば、非特許文献1)。この火山灰土壌を利用した方法として、特許文献3には、火山灰土壌の焼成物と、硫化水素と反応し得る脱硫成分とを混合してなる脱硫剤が開示されている。
また、非特許文献1、2には、阿蘇黒ボクや阿蘇黄土などの火山灰土壌が効率的に硫化物イオンを捕捉でき、自然土壌を覆土として施工することにより廃棄物処理場内に硫化水素を固定することができることが記載されている。
特開2016−172250号公報 特開2012−135738号公報 特開2011−45827号公報
末永知子、他2名、「「阿蘇黄土」及び「阿蘇火山灰土」のガス吸着特性」、熊本県工業技術センター研究報告、平成16年度、第43号 小野雄策、高橋清文、「廃石膏ボードの埋立における環境影響」、埼玉県環境科学国際センター報、埼玉県、平成13年度、第3号、p81
上記のように、石膏含有廃棄物の埋立処分では硫化水素の発生を抑制するために様々な対策が試みられている。しかしながら、水分量を少なくしたり、ガス抜きをする方法は、効果が十分でなかったり、大規模な土木工事を必要としたりし、さらなる改良が求められていた。
また、特許文献1〜3や非特許文献1、2に記載の方法のように、薬剤や資材を投入する方法においても、コストが嵩むことや埋立容量を逼迫させるなどの課題を抱えている。
かかる状況下、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制できる新たな方法の開発が切望されていた。
一方、焼却残渣やばいじん等の無機物主体の廃棄物を受け入れる最終処分場(埋立処分場)では、CaCl2、KCl、NaClなどの可溶性塩類が大量に持ち込まれて蓄積し、埋立廃棄物の安定化の阻害要因となっている。埋立処分場では、廃棄物の安定化は可溶性塩類の洗い出しにより促進されると考えられており、塩類の蓄積は廃棄物の安定化の阻害要因とされている。廃棄物の安定化促進のため、雨水や散水による可溶性塩類の洗い出しが行われると高塩濃度の浸出水が発生し、排水処理施設の高塩障害や処理水放流による塩害が生じ、生態系や周辺環境への影響が問題となる。脱塩装置を導入する排水処理施設もあるが、副生する濃縮塩水の用途は殆どなく、産業廃棄物として処理されている。このような廃棄物として排出される可溶性塩類を有効活用することが望まれている。
本発明は、このような事情を鑑みなされたものであって、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制できる方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明の目的は、硫化水素の発生を抑制可能な石膏含有廃棄物処理設備を提供することである。
さらに、本発明の目的は、廃棄物として排出される可溶性塩類の新たな用途を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 石膏含有廃棄物と、可溶性塩水溶液とを接触させる接触工程を有する、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法。
<2> 前記可溶性塩水溶液が、廃棄物由来の可溶性塩類が水に溶解したものである<1>に記載の方法。
<3> 前記可溶性塩水溶液が、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化カルシウムからなる群から選択される1種以上を含む<1>または<2>に記載の方法。
<4> 前記可溶性塩水溶液中の塩濃度が、4質量%以上である<3>に記載の方法。
<5> 石膏含有廃棄物と、チオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させる接触工程を有する、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法。
<6> 前記チオ尿素様物質が、下記式(A)および/または下記式(B)で表される化合物を含む、<5>に記載の方法。
(式(A)中、R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、Mはアルカリ金属を表す。)
(式(B)中、Mはアルカリ金属を表す。)
<7> 前記接触工程が、埋立処分場にて行われる<1>から<6>のいずれかに記載の方法。
<8> 前記埋立処分場は、クローズドシステム処分場または海面埋立処分場である<7>に記載の方法。
<9> 石膏含有廃棄物と可溶性塩水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記可溶性塩水溶液を供給する塩水供給手段と、を有する石膏含有廃棄物処理設備。
<10> 前記処理部において前記石膏含有廃棄物を搬送する搬送手段を有し、前記塩水供給手段は、前記搬送手段により搬送中の前記石膏含有廃棄物に可溶性塩水溶液を供給する手段である<9>に記載の石膏含有廃棄物処理設備。
<11> 石膏含有廃棄物とチオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記チオ尿素様物質を含有する水溶液を供給する水溶液供給手段と、を有する石膏含有廃棄物処理設備。
<12> 前記処理部において前記石膏含有廃棄物を搬送する搬送手段を有し、前記水溶液供給手段は、前記搬送手段により搬送中の前記石膏含有廃棄物に前記チオ尿素様物質を含有する水溶液を供給する手段である<11>に記載の石膏含有廃棄物処理設備。
<13> 廃棄物由来の可溶性塩類が水に溶解した水溶液であり、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制に用いられるための水溶液。
<A1> 石膏含有廃棄物と、可溶性塩水溶液および/またはチオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させる接触工程を有する、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法。
<A2> 石膏含有廃棄物と水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記水溶液を供給する水溶液供給手段と、を有し、前記水溶液が、可溶性塩水溶液および/またはチオ尿素様物質を含有する水溶液である石膏含有廃棄物処理設備。
<A3> 前記処理部において前記石膏含有廃棄物を搬送する搬送手段を有し、前記水溶液供給手段は、前記搬送手段により搬送中の前記石膏含有廃棄物に前記水溶液を供給する手段である<A2>に記載の石膏含有廃棄物処理設備。
本発明によれば、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制することができる。また、硫化水素の発生を抑制可能な石膏含有廃棄物処理設備が提供される。さらに、廃棄物として排出される可溶性塩類の新たな用途が提供される。
本発明の硫化水素の発生抑制方法の一実施形態を説明するためのフロー図である。 本発明の硫化水素の発生抑制方法の他の実施形態を説明するためのフロー図である。 本発明の石膏含有廃棄物処理設備の一例を示す図である。 図3の処理設備を用いた本発明の硫化水素の発生抑制方法の一実施形態を示す図である。 図3の処理設備を用いた本発明の硫化水素の発生抑制方法の他の実施形態を示す図である。 本発明の石膏含有廃棄物処理設備の他の例を示す図である。 本発明の石膏含有廃棄物処理設備の他の例を示す図である。 本発明の石膏含有廃棄物処理設備の他の例を示す図である。 実験例1〜実験例4の実験開始からの経過日数(実験期間[日])と硫化水素濃度[ppm]との関係を示す図である。 実験例1〜実験例4の各塩濃度と硫化水素濃度の最大値を整理した図である。 実験例1、2の実験終了時(127日後)の各塩濃度と培養瓶内部のCO2濃度との関係を示す図である。 実験例1、2の実験終了後(127日後)の模擬サンプルをろ過した後のろ液のTOCの測定結果を示す図である。 実験例1における、6質量%のカルシウム水溶液を用いた模擬サンプルの実験開始から127日後の外観写真である。 実験例1、2の実験終了後(127日後)の模擬サンプルをろ過した後のろ液のpHの測定結果を示す図である。 実験例5の実験終了後(2か月後)における培養瓶内部のCO2濃度を示す図である。 実験例5の実験終了後(2か月後)における培養液のORPを示す図である。 実験例5の実験終了後(2か月後)における、模擬サンプルをろ過した後のろ液のTOCを示す図である。 実験例5の実験終了後(2か月後)における培養液のSRBのAC率を示す図である。 実験例6における、塩水溶液の入替回数と、培養液のORP、ろ液のTOC、ろ液のpHとの関係を示す図である。 実験例7における、塩水溶液の入替回数と硫化水素発生濃度との関係を示す図である。 実験例8の実験終了後(4週間後)における硫化水素濃度を示す図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
1.本発明の硫化水素の発生抑制方法
本発明の硫化水素の発生抑制方法は、本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法および/または本発明の第2の硫化水素の発生抑制方法である。以下、本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法、本発明の第2の硫化水素の発生抑制方法について説明する。
(1)本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法
本発明は、石膏含有廃棄物と、可溶性塩水溶液とを接触させる接触工程を有する、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制する方法(以下、「本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法」または、単に「本発明の第1の方法」と記載する場合がある。)に関する。
本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法は、石膏含有廃棄物と、可溶性塩水溶液とを接触させることによって、石膏含有廃棄物に含まれる廃石膏材の周辺環境中の塩濃度を高め、硫化水素の発生に係る硫酸還元菌の代謝活性を抑制するものである。さらに、嫌気性微生物全体の代謝活性を抑制し、硫酸還元菌の栄養素として供給される低分子有機物(酢酸等の代謝生産物)の生成も抑制するものである。すなわち、旧厚生省水道環境部から発表された「廃棄物最終処分場における硫化水素対策検討会報告書」に記載された硫化水素発生の要因となる5つの条件のうち、条件5(硫酸還元菌が存在していること)を満足しないようにする対策であるといえる。なお、硫化水素発生条件に硫酸塩の記載はあるが、CaCl2、KCl、NaCl等の塩類の記載はない。
また、石膏含有廃棄物を、可溶性塩水溶液と接触させて湿らせることで、廃石膏材の発塵も抑制される。
また、可溶性塩水溶液に含まれる可溶性塩類は無機塩であり、微生物によって有機基質のように分解されたり消費されたりすることもほとんどない。このため、可溶性塩水溶液により、石膏含有廃棄物に含まれる廃石膏材の周辺環境中の塩濃度を高濃度に維持できる限り硫化水素の発生抑制効果の持続が期待できる。
また、可溶性塩水溶液を石膏含有廃棄物の硫化水素の発生抑制に利用することで、石膏含有廃棄物に可溶性塩類が長時間保持されることになる。特に、本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法を埋立処分場にて行う場合、可溶性塩水溶液の使用量は限られているため、浸出水の発生量も少なくなる。そのため、石膏含有廃棄物から可溶性塩類は緩慢に放出されるようになり、結果として埋立処分場から発生する浸出水の塩類濃度の急激な上昇や降下等の変動を平滑化する効果が得られる。この効果は、一定水質の浸出水を受入れる設計の浸出水処理施設では、希釈などの水質調整操作を簡略化したり省略できるため通常運転で対応でき、運転管理上有益となる。
[石膏含有廃棄物]
石膏含有廃棄物は、廃石膏材を含む廃棄物である。廃石膏材は、廃棄される石膏ボード等の石膏製品や石膏ボード製造時にでる端材に含まれる石膏材のことであり、硫酸カルシウムを主成分とするものである。
石膏含有廃棄物としては、例えば、廃石膏ボードが挙げられる。石膏ボードは、板状の石膏の両面が板紙で被覆されたものである。一般的に、廃棄される石膏ボード(廃石膏ボード)は板紙が付着した状態で廃棄されるため、板紙に使用されているデンプンが炭素源となり、硫化水素が発生しやすくなる。そのため、廃石膏ボードは管理型処分場へ埋立処分することが義務づけられている。
また、廃石膏ボードの一部は、石膏材(廃石膏材)を板紙と分別した後、リサイクルされているものもあるが、分別された板紙はそのまま廃棄されるものも多い。板紙と石膏材を完全に分別することは難しいため、廃棄される板紙には石膏材が付着していることが多く、埋立処分された場合、高濃度の硫化水素を発生させる部位となる。このような石膏ボードから分別された板紙も石膏含有廃棄物となる。
また、入れ歯やインレー作製時に使用される歯形(石膏模型)片、脱硫処理時に排出される石膏等も石膏含有廃棄物として挙げられる。
このような石膏含有廃棄物は、廃石膏材に加えて、廃石膏ボードに使用される板紙や歯形片に含まれる添加剤等の廃石膏材以外の成分を含むことが一般的である。
また、廃石膏材の形状や大きさは特に限定されない。例えば、石膏含有廃棄物は、廃棄時には破砕処理や粉砕処理されることが一般的であり、この石膏破砕物や石膏粉等を石膏含有廃棄物とすることができる。
[可溶性塩水溶液]
可溶性塩水溶液とは、可溶性塩類が水に溶解した水溶液である。可溶性塩類は、有害物質を実質的に含まない中性塩を用いることができる。具体的な可溶性塩類としては、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩やカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
中でも、可溶性塩類としては、ナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。さらには、実施例にて後述するように、カルシウム塩の方がカリウム塩やナトリウム塩に比べて低濃度から硫化水素発生の抑制効果が高く、廃棄物の生物学的安定化に寄与するカビの増殖を促進する効果もあるため、カルシウム塩を含むことがより好ましい。カルシウム塩としては、塩化カルシウム等が挙げられる。塩化カルシウムは、無水物であっても、水和物であってもよい。
可溶性塩類は、水に溶解させることによって、金属イオン(リチウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、マグネシウムイオンやカルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン等)を生成するものであればよい。無機塩としては、塩化物等のハロゲン化物等が挙げられる。
具体的には、可溶性塩水溶液としては、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)および塩化カルシウム(CaCl2)からなる群から選択される1種以上を含む水溶液であることが好ましく、塩化カルシウムを含む水溶液であることがより好ましい。
硫酸還元菌が増殖しにくいほど硫化水素の発生は抑制され、塩濃度が高い環境ほど硫酸還元菌は増殖しにくくなる。一般的に、接触工程後の石膏含有廃棄物は、石膏含有廃棄物の発熱や通気による水分の蒸発や乾燥が進むことにより、可溶性塩水溶液の塩濃度以上の塩濃度となるため、可溶性塩水溶液の塩濃度を調整することで、可溶性塩水溶液と接触後の石膏含有廃棄物の塩濃度を制御できる。可溶性塩水溶液と接触後の石膏含有廃棄物の塩濃度を高くするためには、可溶性塩水溶液の塩濃度は高濃度であることが好ましい。硫酸還元菌の増殖に対する可溶性塩水溶液の効果は、可溶性塩類の種類等によっても異なるが、可溶性塩水溶液の塩濃度は4質量%以上であれば、硫化水素の発生を大幅に抑制することができる。そのため、可溶性塩水溶液の塩濃度は、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上がさらに好ましい。一方で、可溶性塩水溶液の塩濃度が高すぎると、その環境下であらゆる微生物が増殖できず、廃棄物の安定化が滞る場合があるため、可溶性塩水溶液の塩濃度は、10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
また、硫化水素の発生をより抑制するためには、可溶性塩水溶液が塩化ナトリウム水溶液であるとき、その濃度は、4質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。塩化カリウム水溶液であるとき、その濃度は、4質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましい。塩化カルシウム水溶液であるとき、その濃度は、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上がさらに好ましい。
このような塩濃度とすることで、硫化水素の発生を大幅に抑制し、かつ、廃棄物の安定化の進行が阻害されにくいものとすることができる。
可溶性塩水溶液は、可溶性塩を水に溶解させることで調製してもよいし、可溶性塩を含有する組成物を水に溶解させることで調製してもよい。
また、本発明の第1の方法で用いられる可溶性塩水溶液は、可溶性塩水溶液中の塩濃度が高濃度であればよく、可溶性塩類の純度が低くても利用できるため、廃棄物由来の可溶性塩類が水に溶解したものであっても使用できる。そのため、可溶性塩水溶液は、焼却残渣に含まれるこれらの可溶性塩類(副生塩)を回収し、水に溶解させたものであってもよい。このような焼却残渣から回収した可溶性塩類(副生塩)は、その用途がほとんどなく、廃棄されている現状がある。焼却残渣等から回収した可溶性塩類(副生塩)を硫化水素の発生抑制のために利用することは、未利用の塩類の新たな活用用途となり有用である。
なお、廃棄物由来の可溶性塩類とは、廃棄物から回収された可溶性塩類のことである。可溶性塩類を回収するための廃棄物としては特に限定されないが、例えば、一般廃棄物を焼却処分した後の焼却残渣や、焼却残渣を埋め立てた焼却灰埋立処分場から排出される浸出水等が挙げられる。上記のように、これらの廃棄物にはNaClやKCl、CaCl2等の可溶性塩類が多く含まれている。
また、廃棄物処理において、重金属処理剤は過剰量に添加される。重金属処理剤は、通常3%程度の濃度で使用されているが、飛灰に加え近年では主灰にも添加されるようになり、その使用量が増加している。そのため、焼却残渣や浸出水等には、未反応の重金属処理剤も存在する。
廃棄物由来の可溶性塩類としては、具体的には、浸出水脱塩処理や焼却施設湿式洗煙設備、焼却施設乾式ナトリウム排ガス処理設備等より排出される副生塩が挙げられる。
例えば、焼却灰埋立処分場から排出される浸出水は、浸出水脱塩処理施設にて脱塩処理された後、環境に放出されており、脱塩処理時にNaClやKCl、CaCl2等を高濃度で含む濃縮水や乾燥塩が副生されている。この濃縮水をそのまま、または、適宜濃度を調整し、可溶性塩水溶液として利用することもできる。また、乾燥塩を任意の濃度となるように水に溶解して可溶性塩水溶液とすることができる。
また、埋立処分場から排出される浸出水を任意の塩濃度に調整し、可溶性塩水溶液として用いてもよい。埋立処分場から排出される浸出水は、強アルカリ性であるため、浸出水の塩濃度を調整することで、アルカリ性の可溶性塩水溶液とすることができる。このようなアルカリ性の可溶性塩水溶液を用いることで、硫化水素が発生した場合でも、硫化水素を吸収できる副次的な効果が期待できる。
上記の通り、焼却残渣や浸出水等の廃棄物には、NaClやKCl、CaCl2等の可溶性塩類塩だけでなく、重金属処理剤も含まれる。そのため、これらの廃棄物の脱塩処理等により副生される濃縮水や乾燥塩には、無機塩(NaClやKCl、CaCl2等)だけでなく、重金属処理剤も若干残存している。後述するように、チオ尿素様物質として重金属処理剤を用いることができ、硫化水素を抑制する効果を有するため、脱塩処理等により副生される濃縮水や乾燥塩等を用いることで、可溶性塩類とチオ尿素様物質の両方の働きにより、硫化水素の発生を抑制することができる。
廃棄物由来の可溶性塩類の組成は特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
硫化水素の発生抑制効果をより向上させるために好適なものの一つは、塩化カルシウムを多く含む廃棄物由来の可溶性塩である。
塩化カルシウムを多く含む廃棄物由来の可溶性塩が水に溶解したものとしては、例えば、隔膜電解法による廃棄物由来の可溶性塩類(副生塩)からの次亜塩素酸等の製造において前処理で除去されるカルシウム塩や、配管のカルシウムスケールを塩酸洗浄した廃液などを利用することができる。
廃棄物由来の可溶性塩類に含まれる不純物が硫化水素の発生抑制に与える影響は少ないが、不純物によっては、生物安定化が阻害される場合もある。硫化水素の発生を抑え、生物安定化を進行させるために、廃棄物由来の可溶性塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩を合計で、85質量%以上や、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上含むものを用いることができる。
また、廃棄物由来の可溶性塩が水に溶解した水溶液の塩濃度は、廃棄物由来の可溶性塩の組成により適宜調整すればよい。塩濃度の下限は、好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上である。また、塩濃度の上限は、10質量%以下や9質量%以下、8質量%以下とすることができる。
上記のように、廃棄物由来の可溶性塩類を硫化水素の発生抑制のために利用することは、未利用の塩類の新たな活用用途となる。したがって、本発明は、廃棄物由来の可溶性塩類が水に溶解した水溶液であり、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制に用いられるための水溶液に関するものとすることもできる。
[接触工程]
埋立処分場に埋め立てられた石膏含有廃棄物に含まれる廃石膏材周辺の環境を、塩濃度が高い状態とすることができれば、石膏含有廃棄物を埋め立てる前に接触工程を行っても、石膏含有廃棄物を埋め立てた後に接触工程を行ってもよい。
石膏含有廃棄物を埋め立てる前に接触工程を行う場合、石膏含有廃棄物を埋立処分場に搬入する前に前処理として接触工程を行うことができる。接触工程後の石膏含有廃棄物は、可溶性塩水溶液を含む状態で、埋立処分場に搬入され、埋立処分される。また、石膏含有廃棄物を埋め立てる前の接触工程として、埋立処分場に搬入された石膏含有廃棄物を敷き均す前に接触工程を行うことができる。
石膏含有廃棄物を埋め立てた後に接触工程を行う場合、埋立処分場に搬入された石膏含有廃棄物を敷き均した後、敷き均された石膏含有廃棄物の層と可溶性塩水溶液とを接触させればよい。
本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法は、接触工程後の可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物を埋め立てたり、石膏含有廃棄物を埋め立てた後に可溶性塩水溶液と接触させる。これにより、埋立処分場の埋立地の内部に、石膏含有廃棄物と可溶性塩水溶液とを含む層が形成される。埋立処分されたときの廃石膏材周辺の塩濃度を制御しやすいことから、接触工程は、埋立処分場にて行うことが好ましい。
また、上記のように、接触工程は、埋立処分場に搬入された石膏含有廃棄物を敷き均す前に行っても、敷き均した後に行ってもよい。すなわち、本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法は、埋立処分場で行う場合、接触工程の後に、埋立処分場の埋立地の内部に、可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物を埋め立て、可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層を形成させる埋立工程を有する方法とすることができる。また、接触工程の前に、埋立処分場の埋立地の内部に、石膏含有廃棄物を埋め立て、石膏含有廃棄物の層を形成させる埋立工程を有し、接触工程において、石膏含有廃棄物の層と、可溶性塩水溶液とを接触させる方法とすることができる。
また、接触工程と埋立工程とを繰り返し、埋立処分場の埋立地の内部に、可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層を積層させる工程を有する方法とすることができる。可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層が積層される場合、全ての層で硫化水素の発生が抑制されるため、埋立処分場の埋立地からの硫化水素の発生をより抑制できる。
可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層を積層させる場合、可溶性塩水溶液の使用量を調整し、可溶性塩水溶液を、埋立地の表層から底部に向かい順次移動させてもよい。可溶性塩水溶液が埋立地の底部に向かい移動する場合でも、各層における可溶性塩水溶液の塩濃度を硫化水素の発生を抑制する塩濃度に維持することで、硫化水素の発生を抑制しつつ石膏含有廃棄物を生物学的に安定化させることができる。
なお、埋立地の底部に移動した可溶性塩水溶液は最終的に埋立地の底部に設けられた集水管により浸出水として回収できる。この浸出水は、他の浸出水と混合希釈されることで通常の浸出水処理施設において排水処理できる。
例えば、第1の層(最表層の可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層)に過剰量の可溶性塩水溶液を散布し、第1の層から第2の層(表層から2番目の可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層)へ可溶性水溶液を浸透させることができる。さらに、可溶性水溶液の浸透により、第2の層中の可溶性塩水溶液が、第3の層(表層から3番目の可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層)へ浸透する。さらに、第3の層中の可溶性塩水溶液がその下の層へ浸透する。このように、可溶性塩水溶液が、埋立地の表層から底部に向かい順次移動し、集水管により浸出水として回収される。
また、このとき、第2の層や第3の層などの下の層において、生物学的安定化が進行し、分解生成物(例えば、酢酸やアルコール等の低分子の有機物)が生じている場合、その分解生成物も可溶性塩水溶液と共に移動し、集水管により浸出水として回収される。
各層における可溶性塩水溶液の塩濃度が、硫化水素の発生を抑制する塩濃度を維持するようにし、可溶性塩水溶液を移動させることで、硫化水素の発生を抑制しつつ石膏含有廃棄物を生物学的に安定化させることができ、さらに分解生成物も回収することができる。
本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法は、石膏含有廃棄物を可溶性塩水溶液と接触させ、石膏含有廃棄物に含まれる廃石膏材周辺の環境を、硫酸還元菌が増殖できない高濃度で塩が存在する状態に保つことで、硫化水素の発生を抑制するものである。また、長期的に硫化水素の発生を抑制するためには、埋立処分後も石膏含有廃棄物に含まれる廃石膏材周辺の塩濃度を高濃度に維持しておく必要がある。そのため、塩濃度の高い処分場であるクローズドシステム(閉鎖型)処分場または海面埋立場にて行うことがより好ましい。クローズドシステム(閉鎖型)処分場では、雨水等の流入による石膏含有廃棄物に含まれる廃石膏材周辺の塩の洗い流しも抑制されるため、塩濃度が低下しにくく、塩濃度を高濃度に維持しやすい。
なお、本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法は、雨水や散水が浸透する構造の一般的な(開放型)処分場では、雨水や浸透水などにより埋立てられた石膏含有廃棄物に含まれる廃石膏材周辺の塩濃度が低下しないように遮水や覆土等の埋立方法を工夫することにより硫化水素の発生を抑制することができる。
石膏含有廃棄物と可溶性塩水溶液との接触方法は、廃石膏材周辺の塩濃度を高めることができれば特に限定されず、石膏含有廃棄物を可溶性塩水溶液に接触させてもよく、可溶性塩水溶液を石膏含有廃棄物に接触させてもよい。
可溶性塩水溶液に石膏含有廃棄物を接触させる接触方法としては、例えば、可溶性塩水溶液に石膏含有廃棄物を浸漬する方法が挙げられる。また、浸漬時に、重機等の機械を用いて撹拌することで、石膏含有廃棄物の全体に、可溶性塩水溶液と効率的に接触させることができる。硫化水素の発生をより抑制するためには、石膏含有廃棄物が可溶性塩水溶液に完全に浸漬するようにすることが好ましい。
また、石膏含有廃棄物に可溶性塩水溶液を接触させる接触方法としては、例えば、石膏含有廃棄物に可溶性塩水溶液を供給して浸漬させる方法や、石膏含有廃棄物に可溶性塩水溶液を散布により供給する方法等が挙げられる。また、可溶性塩水溶液の供給や散布は、一括で行ってもよく、分割して逐次行ってもよい。
使用される可溶性塩水溶液の量は、可溶性塩水溶液によって石膏含有廃棄物を湿潤状態とすることができれば特に限定されない。例えば、可溶性塩水溶液の使用量は、石膏含有廃棄物100質量部に対して、40質量部以上であっても、100質量部以上であっても、150質量部以上であってもよい。また、可溶性塩水溶液の使用量は、500質量部以下であっても、400質量部以下であっても、300質量部以下であってもよい。
以下、図1、図2を用いて、本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法について、より具体的に説明する。図1、図2は、接触工程を埋立処分場の埋立地の区画Aで行った例である。通常、埋立処分場内の埋立地は、複数の区画に分割され、区画ごとに順次埋立処分が実施されている。
図1は、本発明の第1の硫化水素の抑制方法の一実施形態を説明するためフロー図である。
図1(a)に示すように、石膏含有廃棄物10aは、処分場内の埋立地の区画Aに搬入される。埋立地の区画Aには、廃棄物が既に埋立てられ、廃棄物の層Xが形成されている。石膏含有廃棄物10aは、車両の荷台から層Xの上に直接投入される。
次いで、図1(b)に示すように、埋立地の区画Aに投入された石膏含有廃棄物10aに、可溶性塩水溶液11が散布される。可溶性塩水溶液11の散布は、塩水供給手段3より石膏含有廃棄物10aの上方や側面方向から、石膏含有廃棄物10aに向かって可溶性塩水溶液11を噴きつけることで行われる。塩水供給手段3は、例えば、タンク等の貯蔵容器に収容された可溶性塩水溶液11を、送水ポンプ等によりホース等に送液することで、ホース等の先端部より可溶性塩水溶液11を散布する手段とすることができる。このように、埋立地の区画Aに投入された石膏含有廃棄物10aに可溶性塩水溶液11を散布することで、石膏含有廃棄物と可溶性塩水溶液とを接触させることができるだけでなく、防塵にも寄与する。
石膏含有廃棄物10bは、石膏含有廃棄物10aに可溶性塩水溶液11が散布された廃棄物である。図1(c)、(d)に示すように、石膏含有廃棄物10bを、所定の厚さとなるように敷き均し、転圧することで、層Xの上に、石膏含有廃棄物10bを含む層Yが形成される。層Yは、塩濃度が高く、硫酸還元菌が増殖できない状態となるため、硫化水素の発生が抑制される。
また、図1の(a)〜(d)の操作を繰り返すことにより、層Yの上に新たな層Yを形成させることができる。これにより、区画Aに、複数の層Yが積層された廃棄物層を形成できる。
図2は、本発明の第1の硫化水素の抑制方法の他の実施形態を説明するためフロー図である。
図2(a)に示すように、石膏含有廃棄物10aは、埋立地の区画Aに搬入される。埋立地の区画Aには、廃棄物が既に埋立てられ、廃棄物の層Xが形成されている。石膏含有廃棄物10aは、車両の荷台から層Xの上に直接投入される。
次いで、図2(b)に示すように、埋立地の区画Aに投入された石膏含有廃棄物10aを、所定の厚さとなるように敷き均し、転圧する。これにより、図2(c)に示すように、層Xの上に、石膏含有廃棄物10aの層Zが形成される。
さらに、図2(d)に示すように、塩水供給手段3により層Zの上方から、層Zに向かって可溶性塩水溶液11が散布される。図1と同様に、塩水供給手段3は、例えば、タンク等の貯蔵容器に収容された可溶性塩水溶液11を、送水ポンプ等によりホース等に送液することで、ホース等の先端部より可溶性塩水溶液11を散布する手段とすることができる。また、層Zの全体が可溶性塩水溶液11により湿潤するように、可溶性塩水溶液11は散布される。
可溶性塩水溶液11を層Zに散布することで、図2(e)に示すように、層Xの上に、石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液11とを含む層Yが形成される。
また、図2の(a)〜(e)の操作を繰り返すことにより、層Yの上に新たな層Yを形成させることができる。これにより、区画Aに、複数の層Yが積層された廃棄物層を形成できる。
また、生物学的安定化が終了した石膏含有廃棄物は、「廃棄物最終処分場における硫化水素対策検討会報告書」に記載された硫化水素発生の要因の条件2(有機物(硫酸還元菌の炭素源)が存在すること)を満足しない廃棄物へと変化している。そのため、生物学的安定化が終了した後は、埋立地の内部に形成された可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層は除塩することができる。例えば、可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層の可溶性塩水溶液を、塩濃度の低い可溶性塩水溶液で徐々に置換し、最終的には可溶性塩類を含まない水で置換する。これにより、可溶性塩水溶液を含む石膏含有廃棄物の層の塩濃度を低減することができ、最終的には除塩することができる。
(2)本発明の第2の硫化水素の発生抑制方法
本発明は、石膏含有廃棄物と、チオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させる接触工程を有する、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制する方法(以下、「本発明の第2の硫化水素の発生抑制方法」または、単に「本発明の第2の方法」と記載する場合がある。)に関する。
本発明の第2の硫化水素の発生抑制方法は、石膏含有廃棄物と、チオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させることによって、石膏含有廃棄物に含まれる廃石膏材の周辺環境中のチオ尿素様物質の濃度を高め、硫化水素の発生に係る硫酸還元菌の代謝活性を抑制するものである。さらに、嫌気性微生物全体の代謝活性を抑制し、硫酸還元菌の栄養素として供給される低分子有機物(酢酸等の代謝生産物)の生成も抑制するものである。すなわち、旧厚生省水道環境部から発表された「廃棄物最終処分場における硫化水素対策検討会報告書」に記載された硫化水素発生の要因となる5つの条件のうち、条件5(硫酸還元菌が存在していること)を満足しないようにする対策であるといえる。
[チオ尿素様物質を含有する水溶液]
チオ尿素様物質を含有する水溶液とは、チオ尿素様物質が水に溶解した水溶液である。チオ尿素様物質は、その構造内に、「N−C(=S)」を有する物質である。このようなチオ尿素様物質としては、モノアルキルジチオカルバミン酸、ジアルキルジチオカルバミン酸、ピペラジンジチオカルバミン酸等のジチオカルバミン酸やその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等)、チオ尿素やアリルチオ尿素(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等)等のチオ尿素やその塩等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
チオ尿素様物質は、硫化水素抑制効果が安定かつ持続しやすいため、難分解性であることが好ましい。
なお、チオ尿素様物質を含む水溶液と接触させることで、石膏含有廃棄物から硫化水素の発生を抑制できる理由は明らかではないが、チオ尿素様物質の「N−C(=S)」の構造部分により、硫酸還元菌の増殖が阻害され、硫化水素の発生が抑制されていると推察される。
より低濃度で硫化水素の発生を抑制できるという観点から、好適なチオ尿素様物質の一つは、ジチオカルバミン酸塩である。ジチオカルバミン酸塩は、その構造内に「N−C(=S)−S-」を有するものである。ジチオカルバミン酸塩は、「N−C(=S)−S-」を、その構造内に1個有する化合物であっても、複数個(例えば、2個や3個、4個など)を有する化合物であってもよい。
その構造内に「N−C(=S)−S-」を1個有するジチオカルバミン酸塩としては、具体的には、下記式(A)で表される化合物が挙げられる。
(式(A)中、R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、Mはアルカリ金属を表す。)
式(A)中のR1、R2において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等の炭素数1〜5の直鎖、分岐又は環状アルキル基等が挙げられる。また、式(A)中のMにおいて、アルカリ金属としては、ナトリウムやカリウム等が挙げられる。
その構造内に「N−C(=S)−S-」を2個有するジチオカルバミン酸塩としては、具体的には、下記式(B)で表される化合物が挙げられる。
(式(B)中、Mはアルカリ金属を表す。)
式(B)中のMにおいて、アルカリ金属としては、ナトリウムやカリウム等が挙げられる。
具体的には、カリウム−ジメチルアミン−N−カルボジチオアート、ナトリウム−ジメチルアミン−N−カルボジチオアート、カリウム−ジエチルアミン−N−カルボジチオアート、ナトリウム−ジエチルアミン−N−カルボジチオアート、カリウム−ジプロピルアミン−N−カルボジチオアート、ナトリウム−ジプロピルアミン−N−カルボジチオアート、ジカリウム−ピペラジン−1,4−ジカルボジチオアート、ジナトリウム−ピペラジン−1,4−ジカルボジチオアート等が挙げられる。
硫化水素抑制効果が安定かつ持続しやすいため、チオ尿素様物質を含有する水溶液は、上記式(A)および/または上記式(B)で表される化合物を含むことが好ましい。
これらの式(A)および式(B)で表されるジチオカルバミン酸塩には、重金属処理剤(有機キレート剤)として用いられるものがある。重金属処理剤(有機キレート剤)は、廃棄物焼却施設から発生する飛灰や主灰などに含まれる鉛、カドミウム、水銀などと反応し、水に不溶性の重金属キレート化合物を形成することにより、埋立廃棄物から重金属の溶出を抑制する薬剤である。式(A)で表される化合物は、ジチオカルバミン酸系の重金属処理剤として、また、式(B)で表される化合物はピペラジン系の重金属処理剤として、廃棄物処理において重金属を不溶化のために用いられている。本発明の第2の方法に用いられるチオ尿素様物質を含有する水溶液中のチオ尿素様物質として、重金属処理剤として使用されている薬剤を用いることもできる。
なお、廃棄物の焼却施設から排出される飛灰は特別管理一般廃棄物であり、そのままでは管理型処分場に埋立処分することはできない。そこで、重金属処理剤を飛灰に添加して重金属の不溶化処理が行われている。重金属を不溶化処理し、飛灰を改質した後は一般廃棄物扱いとなり、管理型処分場に投棄可能となる。重金属処理剤は、一般的に濃度3質量%(30,000ppm)程度の濃度で使用されており、最終処分場にはこの薬剤で処理された焼却残渣が搬入されている。本発明の第2の硫化水素の発生抑制方法では、後述するように、3質量%よりも低い濃度のジチオカルバミン酸塩水溶液を用いて、硫化水素の発生を抑制することができる。そのため、重金属処理剤をチオ尿素様物質として用いた場合も、低濃度での使用となり、最終処分場で使用しても特に支障はないと考えられる。さらに、廃石膏ボードにはカドミウムが含まれているものがあるため、チオ尿素様物質として重金属不溶化剤を用いることにより、カドミウムを不溶化することも可能である。
硫酸還元菌が増殖しにくいほど硫化水素の発生は抑制され、チオ尿素様物質を含有する水溶液中のチオ尿素様物質の濃度が高い環境ほど硫酸還元菌は増殖しにくくなる。一般的に、接触工程後の石膏含有廃棄物は、石膏含有廃棄物の発熱や通気による水分の蒸発や乾燥が進むことにより、水溶液中のチオ尿素様物質の濃度以上の濃度となる。水溶液のチオ尿素様物質の濃度を調整することで、石膏含有廃棄物と接触するチオ尿素様物質の量を制御できる。石膏含有廃棄物と接触させるチオ尿素様物質を多くするためには、水溶液中のチオ尿素様物質の濃度は高濃度であることが好ましい。硫酸還元菌の増殖に対する効果は、チオ尿素様物質の種類等に応じて適宜調整される。硫化水素の発生抑制の効果を高めるためには、0.01質量%(100ppm)以上がより好ましく、0.1質量%(1,000ppm)以上がさらに好ましい。また、廃棄物安定化の進行等を考慮すると、水溶液中のチオ尿素様物質の濃度は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。また、0.5質量%以下や0.3質量%以下などにしてもよい。
チオ尿素様物質を含有する水溶液は、チオ尿素様物質を水に溶解させることで調製してもよいし、チオ尿素様物質を含有する組成物を水に溶解させることで調製してもよい。
チオ尿素様物質を含有する水溶液として、廃棄物由来の可溶性塩類が水に溶解した水溶液を用いることができる。廃棄物由来の可溶性塩類は、上記の通りである。廃棄物由来の可溶性塩類には、重金属処理剤も若干残存しており、廃棄物由来の可溶性塩類やチオ尿素用物質を含有する組成物ともいえる。そのため、廃棄物由来の可溶性塩類が水に溶解した水溶液を、チオ尿素様物質を含有する水溶液として用いることで、可溶性塩類とチオ尿素様物質の両方の働きにより、硫化水素の発生を抑制することができる。
廃棄物由来の可溶性塩類を用いる場合、上記の通り、廃棄物由来の可溶性塩類の塩濃度を調整する(4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上や、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下などにする)ことで、チオ尿素様物質による硫化水素抑制の効果も期待できる。
本発明の第2の方法に用いられる石膏含有廃棄物は、本発明の第1の方法と同様のものを用いることができる。
また、接触工程は、本発明の第1の方法の可溶性塩水溶液を上記のチオ尿素様物質を含有する水溶液に変更する以外は同様にすることができ、好適な態様も同様である。
2.本発明の石膏含有廃棄物処理設備
本発明の石膏含有廃棄物処理設備は、本発明の第1の石膏含有廃棄物処理設備および/または本発明の第2の石膏含有廃棄物処理設備である。以下、本発明の第1の石膏含有廃棄物処理設備、本発明の第2の石膏含有廃棄物処理設備について説明する。
(1)本発明の第1の石膏含有廃棄物処理設備
また、本発明は、石膏含有廃棄物と可溶性塩水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記可溶性塩水溶液を供給する塩水供給手段と、を有する石膏含有廃棄物処理設備(以下、「本発明の第1の処理設備」と記載する場合がある。)に関する。本発明の処理設備は、本発明の第1の硫化水素の発生抑制方法の実施に用いることができる。
本発明の第1の処理設備は、埋立処分の前処理設備とすることができる。前処理設備にて、石膏含有廃棄物と可溶性塩水溶液を接触させた後、処理後の石膏含有廃棄物は可溶性塩水溶液を含む状態で、処分場の埋立地に搬入され、埋立処分される。
また、埋立処分場に可溶性塩水溶液を供給するための塩水供給手段を設けることで、埋立処分場を本発明の第1の処理設備とすることができる。
本発明の第1の処理設備の処理部は、石膏含有廃棄物を保持するものである。本発明の第1の処理設備において、処理部は、石膏含有廃棄物を収容できる処理槽とすることができる。すなわち、本発明の第1の処理設備は、石膏含有廃棄物と可溶性塩水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記可溶性塩水溶液を供給する塩水供給手段と、を有し、前記処理部が処理槽である設備とすることができる。処理槽としては、前処理設備の貯留槽や埋立地等が挙げられる。
また、本発明の第1の処理設備において、処理部は、石膏含有廃棄物を搬送できるベルトコンベアや回転ドラム等であってもよい。すなわち、本発明の第1の処理設備は、石膏含有廃棄物と可溶性塩水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記可溶性塩水溶液を供給する塩水供給手段と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物を搬送する搬送手段と、を有し、前記塩水供給手段は、前記搬送手段により搬送中の前記石膏含有廃棄物に可溶性塩水溶液を供給する手段である設備とすることができる。
以下、図3〜図8を用いて、本発明の第1の処理設備について、より具体的に説明する。なお、図面の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図3は、本発明の第1の処理設備の一例を示す図である。図3に示す処理設備100は、処理槽1と、塩水供給手段3Aとを備えた構成となっている。
処理槽1は、石膏含有廃棄物10aを収容でき、処理槽1の内部にて石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液と接触させるための処理部である。処理槽1は、上端が開口した方形または円筒形の容器であり、コンクリート製または高分子製である。
塩水供給手段3Aは、可溶性塩水溶液収容タンク3aと、送水ポンプ3bと、塩水供給用配管3cとからなり、処理槽1に可溶性塩水溶液11を供給するための手段である。可溶性塩水溶液収容タンク3aの内部に収容された可溶性塩水溶液11は、送水ポンプ3bにより、可溶性塩水溶液収容タンク3aから塩水供給用配管3cに送液され、その先端部から処理槽1に供給される。塩水供給用配管3cは、可溶性塩水溶液11を処理槽1の底部から供給できるように設置されている。
図4は、処理設備100を用いて、石膏含有廃棄物10aを可溶性塩水溶液11に接触させた例である。図4に示すように、処理槽1は、可溶性塩水溶液11により満たされている。可溶性塩水溶液11は、塩水供給手段3Aにより供給されたものである。この可溶性塩水溶液11で満たされた処理槽1に、石膏含有廃棄物10aを投入することで、石膏含有廃棄物10aを可溶性塩水溶液11に浸漬させることができる。
図5は、処理設備100を用いて、可溶性塩水溶液11を石膏含有廃棄物10aに接触させた例である。図5に示すように、処理槽1には、石膏含有廃棄物10aが収容されている。石膏含有廃棄物10aが収容された処理槽1に、塩水供給手段3Aにより可溶性塩水溶液11を供給することで、石膏含有廃棄物10aに可溶性塩水溶液11を接触させることができる。
処理槽1の底部より可溶性塩水溶液11を供給することで、石膏含有廃棄物10aの空間に溜まった空気を排除しつつ、可溶性塩水溶液11と接触させることができる。
また、収容された石膏含有廃棄物10aの高さL1よりも可溶性塩水溶液の液面L2が高い位置となるように可溶性塩水溶液11を供給することで、石膏含有廃棄物10aの全体に確実に可溶性塩水溶液11を接触させることができる。
処理設備100は、埋立処分の前処理設備とすることができる。処理設備100で処理された後の石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液11とを含む廃棄物は、処分場の埋立地に搬入し、埋立処分することができる。
また、処分場の埋立地に搬入される前に、石膏含有廃棄物10aを、処理設備100を用いて複数回処理してもよい。つまり、所定の期間、石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液11を接触させた後、可溶性塩水溶液11を処理槽1より排出する。次いで、再度、塩水供給手段3Aにより可溶性塩水溶液11を処理槽1に供給し、石膏含有廃棄物10aを可溶性塩水溶液11に浸漬させる。このようにして、可溶性塩水溶液11の入れ替えを行うことで、処分場の埋立地に搬入後に、より硫化水素が発生しにくいものとすることができる。
図6は、本発明の第1の処理設備の他の一例を示す図であり、処理設備101は、埋立処分場(最終処分場)において、可溶性塩水溶液11を供給するための塩水供給手段3Bを設け、埋立地2を処理部としたものである。また、図6には図示していないが、既存の埋立処分場における処理設備同様に、処理設備101は浸出水を集水する集水管や集水タンク等を備える。
埋立地2は、石膏含有廃棄物10aを収容するものである。埋立地2の底部および側面にはポリエチレンシート等の遮水シートが敷設され、埋立地2は、底部および側面に漏出防止層2aを有する構成となっている。図6では、埋立地2の内部は、仕切壁4によって複数の区画Bに区分けされており、区画Bの一つに石膏含有廃棄物10aが収容されている。
塩水供給手段3Bは、石膏含有廃棄物10aに、可溶性塩水溶液11を供給するための手段である。塩水供給手段3Bは、可溶性塩水溶液収容タンク3aと、送水ポンプ3bと、塩水供給用配管3cと、塩水供給用ノズル3dとからなる。また、塩水供給用ノズル3dには複数の孔が設けられている。
また、処理設備101では、塩水供給手段3Bの塩水供給用ノズル3dは、区画Bに収容されている石膏含有廃棄物10aの上方からに石膏含有廃棄物10aに向かって可溶性塩水溶液11を散布できるように設置されている。なお、可溶性塩水溶液収容タンク3aの内部に収容された可溶性塩水溶液11は、送水ポンプ3bにより、可溶性塩水溶液収容タンク3aから塩水供給用配管3cを介して塩水供給用ノズル3dに送液され、塩水供給用ノズル3dの孔から石膏含有廃棄物10aに向かって散布される。
なお、図6の処理設備101は、クローズドシステム(閉鎖型)処分場であるが、海面埋立場や一般的な(開放型)処分場であってもよい。塩水供給手段3Bは、可溶性塩水溶液11を石膏含有廃棄物10aの側面方向から散布するものであってもよい。また、上記のように、石膏含有廃棄物10aは、敷き均される前のものであっても、敷き均され後のもの(石膏含有廃棄物10aの層)であってもよい。
処理設備101を用いることで、図1や図2に記載した本発明の第1の硫化水素の抑制方法を実施することができる。
図7は、本発明の第1の処理設備の他の一例を示す図である。図7に示す処理設備102は、ベルトコンベア7と、塩水供給手段3Bとを備える。ベルトコンベア7は、投入部5aと、ベルトコンベア7と、取出部6aとを有する構成となっている。
ベルトコンベア7は、投入部5aから投入された石膏含有廃棄物10aを取出部6aまで搬送する手段であり、搬送中に石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液11と接触させるための処理部である。
処理設備102では、塩水供給手段3Bの塩水供給用ノズル3dは、ベルトコンベア7上の石膏含有廃棄物10aの上方から石膏含有廃棄物10aに向かって可溶性塩水溶液11を散布できるように設置されている。ベルトコンベア7により搬送される石膏含有廃棄物10aは、ベルトコンベア7にて取出部6aに搬送される間に、塩水供給手段3Bにより可溶性塩水溶液11が散布される。
また、処理設備102は、埋立処分の前処理設備とすることができる。処理設備102で処理された後の石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液11とを含む廃棄物は、処分場の埋立地に搬入し、埋立処分することができる。
また、処分場の埋立地に搬入される前に、石膏含有廃棄物10aを、処理設備102を用いて複数回処理してもよい。
図8は、本発明の第1の処理設備の他の例を示す図である。図8に示す処理設備103は、回転ドラム8と、塩水供給手段3Bとを備える。さらに、回転ドラム8は、投入部5bと、取出部6bとを有する構成となっている。
回転ドラム8は、投入部5bから投入された石膏含有廃棄物10aを取出部6bまで搬送する手段でもあり、搬送中に石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液11と接触させるための処理部である。
処理設備103では、塩水供給手段3Bの塩水供給用ノズル3dは、回転ドラム8の内部の石膏含有廃棄物10aに可溶性塩水溶液11を散布できるように設置されている。回転ドラム8により搬送される石膏含有廃棄物10aは、回転ドラム8にて取出部6bに搬送される間に、塩水供給手段3Bにより可溶性塩水溶液11が散布される。
また、処理設備103は、埋立処分の前処理設備とすることができる。処理設備103で処理された後の石膏含有廃棄物10aと可溶性塩水溶液11とを含む廃棄物は、処分場の埋立地に搬入し、埋立処分することができる。
また、処分場の埋立地に搬入される前に、石膏含有廃棄物10aを、処理設備103を用いて複数回処理してもよい。
(2)本発明の第2の石膏含有廃棄物処理設備
また、本発明は、石膏含有廃棄物とチオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記チオ尿素様物質を含有する水溶液を供給する水溶液供給手段と、を有する石膏含有廃棄物処理設備(以下、「本発明の第2の処理設備」と記載する場合がある。)に関する。本発明の第2の処理設備は、本発明の第2の硫化水素の発生抑制方法の実施に用いることができる。
本発明の第2の処理設備は、石膏含有廃棄物とチオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記チオ尿素様物質を含有する水溶液を供給する水溶液水供給手段と、を有し、前記処理部が処理槽である設備とすることができる。
本発明の第2の処理設備は、石膏含有廃棄物とチオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記チオ尿素様物質を含有する水溶液を供給する水溶液供給手段と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物を搬送する搬送手段と、を有し、前記水溶液供給手段は、前記搬送手段により搬送中の前記石膏含有廃棄物に前記チオ尿素様物質を含有する水溶液を供給する手段である設備とすることができる。
本発明の第2の処理設備は、本発明の第1の処理設備と同様の構成とすることができ、好適な態様も同様である。本発明の第2の処理設備では、本発明の第1の処理設備の処理部を、石膏含有廃棄物とチオ尿素様物質を含有する水溶液を接触させるために用い、本発明の第1の処理設備の塩水供給手段を、チオ尿素様物質を含有する水溶液を供給する水溶液供給手段とすればよい。例えば、図3で示す処理設備100の可溶性塩水溶液収容タンク3aに、チオ尿素様物質を含有する水溶液を収容して使用することで、処理設備100を本発明の第2の処理設備とすることができる。図6〜図7で示す処理設備についても同様である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
石膏紛として、廃石膏ボードから板紙を除去して2mm以下に粒度調製した石膏粉(二水石膏)を用いた。
可溶性塩水溶液として、塩化カルシウム水溶液を用いた。
[実験例1]:可溶性塩水溶液として塩化カルシウム水溶液を用いた例
(1)サンプルの調製
廃石膏ボードから板紙を除去して2mm以下に粒度調製した石膏粉(二水石膏)50g、濃度調製した塩化カルシウム水溶液200mL、硫酸還元菌のシード培養液1.0mLを500mLの培養瓶にいれ、培養液を調製した。次いで、培養瓶の内部のガスを窒素置換して密栓し、35℃の恒温庫に静置した。これを模擬サンプルとした。
塩化カルシウム水溶液は、試薬(特級)の塩化カルシウム(無水)を純水に溶解させて調製した。また、模擬サンプルは、塩濃度が1,2,3,4,5,6,7,8,9,10質量%となるようにそれぞれ調製した塩化カルシウム水溶液を用いて、10サンプル調製した。
また、塩化カルシウム水溶液の代わりに純水(塩濃度0質量%)を用いて調製したサンプルを、比較サンプルとした。
なお、一般的に、廃石膏ボードの石膏材と板紙とを完全に分別することは難しい。本実験例では、石膏含有廃棄物として、廃石膏ボードから紙を除去した石膏材を2mm以下に粒度調製した石膏粉を用いているが、この石膏粉にも微細化された板紙が含まれる。
[実験例2]
塩化カルシウムの代わりに、塩化ナトリウム(試薬、特級)を用いた以外は、実験例1と同様に実験例2を行った。
[実験例3]
塩化カルシウムの代わりに、塩化カリウム(試薬、特級)を用いた以外は、実験例1と同様に実験例3を行った。
[実験例4]
塩化カルシウムの代わりに、廃棄物から回収した副生塩を用いた以外は、実験例1と同様に実験例4を行った。
なお、副生塩は、120℃で2日間乾燥させた粉末試料を用いた。また、副生塩の組成を蛍光X線分析装置により分析したところ、塩化ナトリウム(NaCl)および塩化カリウム(KCl)を主成分とし、塩化カルシウム(CaCl2)を微量に含む混合塩であった。
表1に、実験例4で使用した副生塩の蛍光X線分析の結果を示す。また、この副生塩を用いて濃度1質量%の水溶液を調製し、そのTOCとpHを測定したところ、それぞれ1.24mg/LとpH6.3であることを確認した。
[評価]
(硫化水素濃度)
実験例1〜実験例4の各サンプルについて、実験開始時より定期的に培養瓶内部のガスを採取して、ガスクロマトグラフ装置(柳本製作所製G6800 FPD(炎光光度検出器)付き)を用いて、ガスクロマトグラフ法により、JIS K 2301(2011)の7.2.4に従って硫化水素濃度を測定した。図9に、実験例1〜実験例4の各水溶液の各塩濃度における、経過時間(実験期間[日])と硫化水素濃度[ppm]との関係を示す。
実験例1〜実験例4のいずれについても、可溶性塩水溶液を添加することで、硫化水素の発生量が減少した。また、塩濃度が増加するにつれて硫化水素濃度は減少する傾向であった。
また、図9に示した、経過時間(実験期間[日])と硫化水素濃度[ppm]の実験結果に基づき、各塩濃度と硫化水素の濃度の最大値を整理したものを図10に示した。
図10に示すように、塩濃度が増加するにつれて、硫化水素濃度の最大値は減少する傾向を示した。また、可溶性塩の種類によらず、塩濃度が2質量%以上であれば、比較サンプル(可溶性塩水溶液の代わりに純水を用いたサンプル)に比べて、硫化水素の発生を2分の1以下まで抑制できている。さらに、塩濃度が4質量%以上であれば、比較サンプルに比べて4分の1以下まで硫化水素の発生を抑制できており、いずれの可溶性塩でも著しい効果が見られた。
実験例1〜実験例4のそれぞれについてみると、CaCl2では、カルシウム濃度が4質量%以上で、硫化水素の発生を検出限界以下までに抑制できた。NaClでは、ナトリウム濃度が7質量%以上で、硫化水素の発生を検出限界以下までに抑制できた。KClでは、カリウム濃度が6質量%以上で、硫化水素の発生を検出限界以下までに抑制できた。副生塩では、副生塩濃度が5質量%以上で、硫化水素の発生を検出限界以下までに抑制できた。
実験例1〜4の結果から、副生塩は混合塩であるが、KClやNaClを単体で用いる場合よりも低い濃度から高い硫化水素の発生に対して抑制効果を示した。
[廃石膏ボードの安定化の進行に対する考察]
(CO2濃度)
実験例1および実験例2について、実験終了後(実験開始から127日後)に、培養瓶内部のCO2濃度を、ガスクロマトグラフ装置(柳本製作所製G2700 TCD(熱伝導度検出器)付き)を用いてガスクロマトグラフ法により測定した。図11に、実験終了時(実験開始から127日後)の各塩濃度と培養瓶内部のCO2濃度との関係をプロットした結果を示す。図11に示すように、すべてにおいてCO2の発生が確認された。培養瓶の内部は、実験開始時に窒素置換しているので、発生したCO2は微生物の物質代謝により発生したと考えられる。硫化水素の発生が検出限界以下までに抑制された模擬サンプルについてもCO2の発生が確認されたことから、硫化水素が発生しない状態でも、微生物による有機物分解が進行していると考えられる。すなわち、廃棄物の生物学的安定化が進行していると考えられる。
(模擬サンプルの培養液のろ液のTOC濃度)
実験例1および実験例2について、実験終了後(実験開始から127日後)の培養瓶の培養液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、ろ液の有機体炭素(TOC)濃度を、全有機体炭素計(島津製作所製TOC−V、CPN)を用いて、JIS K 0102(2013)の22.2に従って測定した。図12に結果を示す。CaCl2(実験例1)、NaCl(実験例2)のどちらについても塩濃度が高くなるにつれて模擬サンプルのTOCも高くなる傾向が見られた。模擬サンプルと同じ固液比(石膏粉50g:純水200mL)の溶出液のTOCが122mg/Lであったことから、硫化水素が発生しない状態でも有機物の分解と消費が進行したと考えられる。特に、CaCl2では6質量%以上、NaClでは9質量%以上の塩濃度において急激にTOCが増加した。この塩濃度域においては、微生物による有機物分解は進行するが消費が行われないため低分子化された有機物が模擬サンプルの培養液中に蓄積されたと考えられる。
(模擬サンプルの外観、および、模擬サンプルの培養液のろ液のpH)
図13は、実験例1の6質量%の塩化カルシウム水溶液を用いた模擬サンプルの実験開始から127日後の実験終了時の外観写真である。また、実験終了後の培養瓶の培養液を孔径0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、ろ液のpHを、pHメーター(東亜DKK製、HM−25R)を用いて、ガラス電極法によりJIS K 0102(2013)の12.1に従って測定した。図14に結果を示す。
図13に示すように模擬サンプルの培養液の表面にカビの発生が確認された。また、実験例1では、塩濃度が6質量%以上の塩化カルシウム水溶液を用いた模擬サンプルの全てで培養液の表面にカビの発生が確認された。カビは好気性菌であるが、わずかに残存する酸素を利用して増殖したと考えられる。カビにはセルロース分解能を有する菌種もあるため、石膏粉に含まれる板紙を分解している可能性も考えられる。
また、図14に示すように実験例1の6質量%の塩化カルシウム水溶液を用いた模擬サンプルは、培養液のろ液のpHが6.6と弱酸性を示し、また図12に示したように、TOCが増加していたことなどから、カビの増殖が顕著となり、有機物分解の進行により有機酸が生成し、蓄積したのではないかと考えられる。
これらの結果から、塩化カルシウム水溶液を用いた模擬サンプルでは、硫化水素の発生を抑制しつつ廃石膏ボードの生物学的安定化を進行している可能性がある。
[実験例5]
石膏紛と可溶性塩水溶液を、表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で模擬サンプル(培養液)を調製し、培養試験を2か月間行った。
なお、解体系廃石膏ボードから回収された芯材を粉砕し、4mm以下に粒度調製した石膏紛を、石膏紛(2)とした。また、可溶性塩水溶液の調製に用いた塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、副生塩は実験例1〜4と同じものを使用した。
[評価]
(硫化水素濃度)
実験例1と同様に、培養瓶内部の硫化水素濃度を定期的に測定した。結果、可溶性塩水溶液添加サンプル(実験例5−1〜実験例5−4)では硫化水素の発生は検出限界以下であったが、純水を添加した比較サンプル(比較例5−1)では培養34日目に最大10,500ppmの硫化水素が発生した。
(CO2濃度)
実験例1と同様の方法で、培養試験終了時(実験開始から2か月後)の培養瓶内部のCO2(炭酸ガス)濃度を測定した。結果を図15に示す。実験例1と同様に、硫化水素が発生しない塩濃度の模擬サンプルにおいてもCO2の発生が確認されたことから、硫化水素が発生しない塩濃度においても微生物による有機物分解は進行していることが確認された。
(模擬サンプルの培養液のORP)
CO2測定後に、培養瓶を開栓し、培養液のOPRを測定した。測定は、ORP電極(TOA−DKK製,PST−5721C)を培養液に差し込み、ORPメーター(TOA−DKK製,HM−25)に表示される値を基にさらに換算して算出した。結果を図16に示す。
ORP(酸化還元電位)は、嫌気性微生物の培養を行う時の培養液の嫌気度を表す指標で、−80〜−100mV以下の嫌気度に達すると硫酸還元菌(SRB)が活動しはじめ硫化水素を生産するようになることが知られている。実験終了時の培養液のORPは、実験開始(培養開始)時より全ての試料で減少した。しかし、硫化水素が発生した純水添加サンプル(比較例5−1)のようにORPが−100mV以下となることはなく、ORPが比較的高く維持されたことがSRBの増殖抑制にも寄与したと考えられる。
(模擬サンプルの培養液のろ液のTOC濃度)
実験例1と同様の方法で、培養終了後(実験開始から2か月後)の模擬サンプルの培養液のろ液のTOC濃度を測定した。結果を図17に示す。
培養終了時の培養液のTOCは、全ての模擬サンプルで実験開始時より増加した。培養試料と同じ固液比(石膏粉50g:純水200mL)の溶出液のTOCが112mg/L(培養開始時の値)であったことから、H2Sが発生しない塩濃度においても微生物による有機物の低分子化と可溶化が進行したと考えられる結果が得られた。可溶化された低分子の有機物は、SRBによって消費されずに培養液中に蓄積したためTOCが増加したと考えられる。
(模擬サンプルの培養液の細菌叢解析)
各サンプル(各培養液試料)について、細菌叢解析を実施し、硫化水素の抑制と硫酸還元菌(SRB)増殖の関係を調査した。各模擬サンプルの培養液の上澄み液からゲノムDNAを抽出し、16SrRNA遺伝子領域の共通プライマーでPCR増幅した部分を、次世代シーケンサーによるメタバーコーティング解析を実施して各模擬サンプルの細菌叢について調べた。SRBについて得られた細菌数の目安となる数値の平均カバレッジ(Averaged Coverage,AC)率を各培養試料間で比較した結果を図18に示す。CaCl2や副生塩を添加したサンプルでは、SRBは極めて少ない(ACの上位1000には検出されていない)と考えられる。また、NaCl、KClおよび純水の培養開始時の各サンプルでは、僅かにSRBが存在していたが、比較例5−1の純水添加サンプルでは明らかにSRBが増加しており、他のサンプルと比較して数十倍以上のAC率を示した。
[実験例6]
1か月毎に可溶性塩水溶液を入れ替える培養試験を実施し、硫化水素ガスの発生状況等を確認した。
まず、石膏粉として石膏紛(2)を用い、可溶性塩水溶液として4質量%の塩化カルシウム水溶液を用い、実験例1と同様の方法で、培養液(1回目)を調製した。次いで、培養瓶の内部のガスを窒素置換して密栓し、35℃の恒温庫に静置し、嫌気培養を1か月間行った。
培養1か月後に可溶性塩水溶液の入れ替えを行うために、培養液(1回目)をろ過し、ろ液(入替回数1)とろ過残渣(入替回数1)に分けた。回収されたろ過残渣(入替回数1)を再度4質量%の塩化カルシウム水溶液に浸漬することで培養液(2回目)を調製し、培養液(1回目)と同様にして嫌気培養を1か月行った。
さらに、可溶性塩水溶液の入れ替えを行うために、培養液(2回目)をろ過し、ろ液(入替回数2)とろ過残渣(入替回数2)に分けた。回収されたろ過残渣(入替回数2)を再度4質量%の塩化カルシウム水溶液に浸漬することで培養液(3回目)を調製し、培養液(1回目)と同様にして嫌気培養を1か月行った。
培養液(3回目)をろ過し、ろ液(入替回数3)とろ過残渣(入替回数3)に分けた。
[評価]
石膏粉が可溶性塩水溶液に浸漬されている間、硫化水素の発生は検出限界以下であった。
可溶性塩水溶液入れ替え時に培養液のOPRと、ろ液のTOCおよびpHを測定した。結果を図19に示す。塩水の入替回数が増える毎に培養液(ろ液)のORPとpHは上昇し、逆にTOCは減少した。これは、微生物の作用により石膏粉から生じる有機酸量が、可溶性塩水溶液の入替回数が増す毎に減少していることを示しており、硫化水素を発生させにくい石膏粉に変化しているものと考えられる。
[実験例7]
実験例6と同様の方法で、培養液(1回目)、培養液(2回目)、培養液(3回目)をそれぞれ調製した。それぞれの培養液を1か月間嫌気培養した後、ろ過して、ろ過残渣(入替回数1)、ろ過残渣(入替回数2)、ろ過残渣(入替回数3)をそれぞれ回収した。
得られたろ過残渣(入替回数1)、ろ過残渣(入替回数2)、ろ過残渣(入替回数3)をそれぞれ培養瓶に入れて、純水200mLで再懸濁して、約2か月間嫌気培養を行った。
入替回数0の比較サンプル(比較例7−1)として、実験例5の比較例5−1と同様にして、純水添加サンプルを調製し、約2か月間嫌気培養を行った。
[評価]
定期的に培養瓶内部の硫化水素濃度を測定し、発生する硫化水素濃度の経時変化を観察した。
発生した硫化水素濃度の最大値を図20に示す。入替回数0回の比較例7−1サンプルでは10,500ppmの硫化水素が発生した。これに対し、ろ過残渣(入替回数1)を純水に再懸濁した可溶性塩水溶液1回入替サンプルでは198ppm、ろ過残渣(入替回数2)を純水に再懸濁した2回入替サンプルでは65ppmと硫化水素の発生濃度は大きく減少した。さらに、ろ過残渣(入替回数3)を純水に再懸濁した3回入替サンプルでは硫化水素は発生しなかった。このように、4質量%の塩化カルシウム水溶液を一月毎3回入替て嫌気培養した石膏粉は、その後、硫化水素発生条件としても硫化水素を発生させなかった。
[実験例8]
可溶性塩水溶液を、表3に示すチオ尿素様物質を含有する水溶液に変更した以外は、実験例5と同様の方法で模擬サンプル(培養液)を調製し、培養試験を行った。
なお、ジチオカルバミン酸系薬剤としてカリウム−ジエチルアミン−N−カルボジチオアートを、ピペラジン系薬剤としてジカリウム−ピペラジン−1,4−ジカルボジチオアートを用いた。
[評価]
(硫化水素濃度)
4週間培養した時点における培養瓶内部の硫化水素濃度を図21に示す。
硫化水素の発生は、ジチオカルバミン酸系薬剤(実験例8−1)の場合、100ppmで97%抑制され、1000ppmでは100%抑制された。一方、ピペラジン系薬剤(実験例8−2)の場合、100ppmで35%抑制され、1000ppmでは96%抑制された。ピペラジン系薬剤の場合、さらに濃度を高めて用いることで100%抑制も可能と考えられる。
(考察)
アリルチオ尿素は、好気性微生物の呼吸は阻害しないが、硝化細菌に作用し硝化阻害を引き起こすことが知られている。市販の重金属処理剤も同じ構造を有する化学物質であり、排水処理施設において硝化阻害を引き起こし問題となっている。重金属処理剤による硫酸還元菌の増殖阻害は報告されていないが、重金属処理剤を含まない対照実験と比較しても明らかに硫化水素の発生が抑制されている。
本発明によれば、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生を抑制でき、年々増加傾向にある廃石膏材をより安全に埋立処分することができる。さらに、廃石膏材を資源化処理して得られる再生石膏をより安全に環境利用することができる。また、従来、廃棄されていた、廃棄物から回収される可溶性塩類の新たな用途を提供する。
1 処理槽
2 埋立地
2a 漏出防止層
3、3A、3B 塩水供給手段
3a 可溶性塩水溶液収容タンク
3b 送水ポンプ
3c 塩水供給用配管
3d 塩水供給用ノズル
4 仕切壁
5a、5b 投入部
6a、6b 取出部
7 ベルトコンベア
8 回転ドラム
10a 石膏含有廃棄物
10b 石膏含有廃棄物に可溶性塩水溶液が散布された廃棄物
11 可溶性塩水溶液
100、101、102、103 処理設備

Claims (13)

  1. 石膏含有廃棄物と、可溶性塩水溶液とを接触させる接触工程を有する、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法。
  2. 前記可溶性塩水溶液が、廃棄物由来の可溶性塩類が水に溶解したものである請求項1に記載の方法。
  3. 前記可溶性塩水溶液が、塩化ナトリウム、塩化カリウムおよび塩化カルシウムからなる群から選択される1種以上を含む請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記可溶性塩水溶液の塩濃度が、4質量%以上である請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 石膏含有廃棄物と、チオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させる接触工程を有する、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制方法。
  6. 前記チオ尿素様物質が、下記式(A)および/または下記式(B)で表される化合物を含む、請求項5に記載の方法。
    (式(A)中、R、Rはそれぞれ独立に、アルキル基を表し、Mはアルカリ金属を表す。)
    (式(B)中、Mはアルカリ金属を表す。)
  7. 前記接触工程が、埋立処分場にて行われる請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記埋立処分場は、クローズドシステム処分場または海面埋立処分場である請求項7に記載の方法。
  9. 石膏含有廃棄物と可溶性塩水溶液とを接触させるための処理部と、
    前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記可溶性塩水溶液を供給する塩水供給手段と、を有する石膏含有廃棄物処理設備。
  10. 前記処理部において前記石膏含有廃棄物を搬送する搬送手段を有し、
    前記塩水供給手段は、前記搬送手段により搬送中の前記石膏含有廃棄物に可溶性塩水溶液を供給する手段である請求項9に記載の石膏含有廃棄物処理設備。
  11. 石膏含有廃棄物とチオ尿素様物質を含有する水溶液とを接触させるための処理部と、前記処理部において前記石膏含有廃棄物に前記チオ尿素様物質を含有する水溶液を供給する水溶液供給手段と、を有する石膏含有廃棄物処理設備。
  12. 前記処理部において前記石膏含有廃棄物を搬送する搬送手段を有し、前記水溶液供給手段は、前記搬送手段により搬送中の前記石膏含有廃棄物に前記チオ尿素様物質を含有する水溶液を供給する手段である請求項11に記載の石膏含有廃棄物処理設備。
  13. 廃棄物由来の可溶性塩類が水に溶解した水溶液であり、石膏含有廃棄物からの硫化水素の発生抑制に用いられるための水溶液。
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