JP2020022664A - 生地化の早い硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キット - Google Patents

生地化の早い硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キット Download PDF

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伸也 青木
賢吾 後藤
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賢吾 後藤
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晶晶 楊
亜弥 中川
Aya Nakagawa
亜弥 中川
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Abstract

【課題】調製後早期に軟塊(生地)状態となる、すなわち生地化時間が短い硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キットを提供する。調製後早期に軟塊(生地)状態となる硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キットを提供する。【解決手段】モノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)を含む硬組織補修用組成物であって、重合体粉末(B)が、アスペクト比が1.10以上の重合体粉末(B−x)を含み、硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率が69累積%以下である硬組織補修用組成物;並びに、この硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)の各成分が、任意の組合せで3つ以上に分割されて収容された部材を有する硬組織補修用キット。【選択図】なし

Description

本発明は、調製後早期に軟塊(生地)状態となる硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キットに関する。
従来、骨、軟骨等の硬組織と人工関節との固定用の骨セメント、骨粗しょう症治療用等に用いる骨充填剤、人工骨材料等として、様々な硬組織補修用組成物が検討されてきている。例えば、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート、及び過酸化ベンゾイル(重合開始剤)を含む組成物、(メタ)アクリレート、リン酸カルシウム等の無機フィラー、及び有機過酸化物を含む組成物等が検討されてきている(例えば特許文献1)。しかし、このような組成物は硬化時の発熱が大きく、患部組織に損傷を与える危険性が大きい。
この点を改良した硬組織補修用組成物として、例えば特許文献2には、(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリレート重合体(B)及び特定の重合開始剤(C)を含む硬組織補修用組成物が開示されている。この組成物は硬化時の発熱が小さく、しかも作業性に優れている。
特開平8−224294号公報 国際公開第2011/062227号
硬組織補修用組成物を例えば人工関節と骨との固定に使用する場合、硬化前の軟塊(生地)状態の硬組織補修用組成物を髄腔内に埋植し、加圧及び変形させ、その後完全に硬化(重合)させる。
硬組織補修用組成物は、通常、使用の現場(例えば施術の現場)において、使用直前に複数の成分を混合することにより調製される。この混合直後の硬組織補修用組成物はスラリー状であり、使用者(例えば施術者)のラテックス製手袋に糸引き状に付着する。そして調製後しばらく経つと、硬組織補修用組成物は軟塊(生地)状態になる。この軟塊(生地)状態になる時点は、具体的には、使用者のラテックス製手袋に糸引き状に付着しなくなった時点として定性的に識別されている。この軟塊(生地)状態になった硬組織補修用組成物は、適度な粘度と流動性を有するので取扱い易く、埋植後も良好な固定力を発現する。
硬組織補修用組成物は、以上説明した軟塊(生地)状態になった段階で使用されるのが一般的である。硬組織補修用組成物が軟塊(生地)状態になることは、通常、「生地化」と言われ、軟塊(生地)状態になるまでの時間は、通常、「生地化時間(dough time)」と言われている。
生地化時間が長い硬組織補修用組成物は、作業効率の点で劣る。また、生地化していない状態の硬組織補修用組成物は、取扱いにくい。しかも、生地化していない状態の硬組織補修用組成物を例えば髄腔内に埋植した場合は、組成物が人工関節と骨との固定に好適な形状を保持できず、組成物と人工関節及び/又は骨組織との界面に隙間が生じ、その結果、人工関節の固定が不十分となる恐れがある。この不十分な固定によって人工関節の緩みや摩耗が生じ易くなり、患者の痛みや感染の要因になると考えられる。また、人工関節の再置換術が必要となる場合は、患者の身体的負担は大きい。したがって、生地化時間が長いことは、患者の安全確保や負担低減の点から好ましくない。
本発明の目的は、調製後早期に軟塊(生地)状態となる、すなわち生地化時間(dough time)が短い硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キットを提供することにある。
本発明者らは、硬組織補修用組成物の粒子全体のアスペクト比の累積比率を好適化することで、調製後早期に糸引きが無くなり、早期に軟塊(生地)状態となることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、以下の事項により特定される。
[1]モノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)を含む硬組織補修用組成物であって、
重合体粉末(B)が、アスペクト比が1.10以上の重合体粉末(B−x)を含み、
硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率が69累積%以下である硬組織補修用組成物。
[2]造影剤(X)をさらに含む[1]に記載の硬組織補修用組成物。
[3]硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率が2.5〜60累積%である[1]又は[2]に記載の硬組織補修用組成物。
[4]硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率が3.0〜60累積%である[1]又は[2]の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
[5]重合体粉末(B)が、アスペクト比1.10以上1.90以下の重合体粉末(B−x)を含み、重合体粉末(B)全体のアスペクト比が1.11以上1.80以下である[1]〜[4]の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
[6]モノマー(A)が、(メタ)アクリレート系単量体である[1]〜[5]の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
[7]重合体粉末(B)が、(メタ)アクリレート系重合体粉末である[1]〜[6]の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
[8]モノマー(A)10〜45質量部、重合体粉末(B)54.9〜80質量部、重合開始剤(C)0.1〜10質量部(成分(A)〜(C)の合計を100質量部とする)及び造影剤(X)0〜70質量部を含む[1]〜[7]の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
[9][1]に記載の硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)の各成分が、任意の組合せで3つ以上に分割されて収容された部材を有する硬組織補修用キット。
本発明によれば、調製後早期に軟塊(生地)状態となる、すなわち生地化時間(dough time)が短い硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キットを提供できる。
[モノマー(A)]
本発明に用いるモノマー(A)は特に制限されず、後述する重合開始剤(C)により重合可能なモノマーであれば良い。モノマー(A)は、使用目的に応じて単官能モノマー、多官能モノマーの何れも使用できる。
モノマー(A)としては、例えば、(メタ)アクリレート系単量体及びその他のビニル化合物を使用できる。中でも、人体への刺激が比較的低い点から(メタ)アクリレート系単量体が好ましい。本発明において「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。また一般に、酸性基を有するモノマーは、硬組織への接着性が優れており、さらに後述する脱錯化剤として作用し、重合開始剤(C)としてアルキルボラン・アミン錯体を用いる場合に酸性基を有するモノマーを用いることで重合反応の開始を可能にすることもできる。したがって、例えば、酸性基を持たない(メタ)アクリレート系単量体に対して、酸性基を有するモノマーを適量併用して接着性を向上させることもできる。
酸性基を持たない単官能(メタ)アクリレート系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シラン等の(メタ)アクリロキシアルキル基を有するシラン化合物;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
酸性基を持たない多官能(メタ)アクリレート系単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、へキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトールテトラ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;下記一般式(1)で表される脂環系又は芳香族ジ(メタ)アクリレート
Figure 2020022664
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、m及びnは各々独立して0〜10の数であり、Rは、
Figure 2020022664
のいずれかである);
下記一般式(2)で表される脂環系又は芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート
Figure 2020022664
(式(2)中、R、n及びRは、前記式(1)中のR、n及びRと同じである);
下記式(3)で表される分子中にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート
Figure 2020022664
(式(3)中、Rは前記式(1)中のRと同じであり、Rは、
Figure 2020022664
のいずれかである。);が挙げられる。
以上の例示化合物のうち、単官能(メタ)アクリレート系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
以上の例示化合物のうち、多官能(メタ)アクリレート系単量体としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の分子内にエチレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレート;下記式(1)−aで表される化合物
Figure 2020022664
(式(1)−a中、R、m及びnは、前記式(1)中のR、m及びnと同じである);
下記式(2)−aで表される化合物
Figure 2020022664
(式(2)−a中、Rは、前記式(1)中のRと同じである);
下記式(3)−aで表される化合物
Figure 2020022664
(式(3)−a中、Rは、前記式(1)中のRと同じである);
が好ましい。
これら(メタ)アクリレート系単量体は2種以上を併用しても良い。
酸性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸及びその無水物、1,4−ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロキシエチルナフタレン1,2,6−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−m−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸及びその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸等のカルボン酸基又はその無水物基を有するモノマー;(2−(メタ)アクリロキシエチル)ホスホリック酸、(2−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)ホスホリック酸、10−(メタ)アクリロキシデシルホスホリック酸等の燐酸基を有するモノマー;p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマーが挙げられる。中でも、4−メタアクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物が好ましい。
これら酸性基を有するモノマーは2種以上を併用しても良い。また、酸性基を有するモノマーはカルシウム塩としても使用できる。
モノマー(A)の配合量は、好ましくは10〜45質量部、より好ましくは20〜45質量部、特に好ましくは25〜36質量部(成分(A)〜(C)の合計を100質量部とする)である。上記各範囲の下限値は、塗布の容易性や操作性、骨組織内への侵入性等の物性発現の観点で意義がある。上限値は、接着強度、機械物性、靭性等の物性発現の観点、及び/又は、残留モノマー量及び/又は溶出モノマー量を低減できる観点で意義がある。モノマー(A)が酸性基を有するモノマーを含む場合、酸性基を有するモノマーの量は、モノマー(A)合計100質量%に対して好ましくは0.005〜30質量%、より好ましくは0.01〜25質量%である。ただし、この酸性基を有するモノマーの使用は任意であり、本発明の硬組織補修用組成物は酸性基を有するモノマーを含んでいても良いし、含んでいなくても良い。
[重合体粉末(B)]
本発明に用いる重合体粉末(B)の種類は特に限定されないが、重合体粉末(B)を構成する単量体単位の一部又は全部が、先に説明したモノマー(A)中の一部のモノマー又は全部のモノマーと同じ種類のモノマーに起因する単量体単位であることが好ましい。本発明において「重合体」は、単独重合体及び共重合体の総称である。重合体粉末(B)としては、例えば、(メタ)アクリレート系重合体及びその他のビニル系重合体を使用できる。中でも、(メタ)アクリレート系重合体が好ましい。
(メタ)アクリレート系重合体の具体例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合体等の非架橋重合体;メチル(メタ)アクリレート・エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとブタジエン系モノマーとの共重合体等の架橋重合体及び部分的にカルシウム塩を形成している重合体が挙げられる。また、金属酸化物又は金属塩が非架橋重合体又は架橋重合体で被覆された有機・無機複合体であっても良い。
重合体粉末(B)は1種の重合体粉末を単独で用いても良いし、複数種の重合体粉末の混合物を用いても良い。
本発明においては、重合体粉末(B)が、アスペクト比が1.10以上の重合体粉末(B−x)を含み、硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率が69累積%以下である。本発明における生地化時間(dough time)の短縮効果は、主として、これらに起因して発現する。以下、この点について説明する。
一般に、重合体粉末(B)の分子構造は、モノマー(A)の分子構造と類似しているので、重合体粉末(B)がモノマー(A)に一部溶解する。したがって、その混合液は、重合反応に伴う増粘のみの場合と比較して速く増粘する。また、一般に混合液の粘性が高くなると成長ラジカル種同士の停止反応が起こりにくくなり、重合速度が速くなることが知られている。これは、かご効果(Trommsdorff効果)と呼ばれている。
そして、本発明において用いるアスペクト比が大きい(アスペクト比が1.10以上の)重合体粉末(B−x)は、アスペクト比が小さい(アスペクト比が1.00以上1.10未満の)重合体粉末(B−y)に比べてモノマー(A)に溶解し易いので、組成物が速く増粘するとともに、かご効果による重合速度の加速効果によって生地化時間が短くなる傾向にある。
さらに本発明においては、粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率(%)が適度に低い。すなわち、アスペクト比が大きい粉末粒子(アスペクト比1.10以上の粉末粒子)の割合が適度に高い。アスペクト比が大きい粉末粒子のうち、特にアスペクト比が大きい重合体粉末(B−x)は、先に述べた通り、生地化時間を短くする効果を発現する。さらにアスペクト比が大きい粉末粒子は、モノマー(A)にたとえ溶解しない材質のものであってもその形状に起因して、アスペクト比が小さい粉末粒子と比べて組成物の粘度を高める傾向にある。したがって、このアスペクト比が大きい粉末粒子の割合が高いと生地化時間が短くなる傾向にある。
重合体粉末(B)は、例えば、アスペクト比が1.10以上の重合体粉末(B−x)のみを含むものであっても良いが、特に、アスペクト比が1.10以上の重合体粉末(B−x)、及び、アスペクト比が1.00以上1.10未満の重合体粉末(B−y)を含んでなることが好ましい。重合体粉末(B−x)と重合体粉末(B−y)を混合して重合体粉末(B)100質量%を調製する場合、重合体粉末(B−x)の配合量は、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは4.0〜70質量%、特に好ましくは5.0〜60質量%である。重合体粉末(B−x)の量が少な過ぎると生地化時間が長くなる恐れがある。重合体粉末(B−y)の配合量は、好ましくは97.0質量%以下、より好ましくは30〜96.0質量%、特に好ましくは40〜95.0質量%である。
重合体粉末(B)全体(100累積%)におけるアスペクト比が1.00以上1.10未満の重合体粉末粒子(B−y)の累積比率(%)は、好ましくは86累積%以下、より好ましくは15〜80累積%である。アスペクト比が1.00以上1.10未満の重合体粉末粒子(B−y)の累積比率(%)が大き過ぎると、生地化時間が長くなる恐れがある。またこの累積比率(%)が小さ過ぎると、著しい増粘によって生地化時間が極端に短くなり、均質な硬組織補修用組成物の調製が困難となる恐れがある。
本発明の硬組織補修用組成物は、重合体粉末(B)以外の粉末粒子を含む場合がある。その場合は、硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち、粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率(%)についても考慮することが好ましい。重合体粉末(B)以外の粉末粒子としては、例えば、後述する造影剤(X)、抗菌薬粒子(Y)、重合開始剤(C)がある。なお後述のとおり、重合開始剤(C)は液体状であっても良いし、固体状(例えば粉末状)であっても良い。粉末状の重合開始剤は、重合体粉末(B)へ混合され、あるいは重合体粉末(B)に担持される。したがって、粉末状の重合開始剤は、重合体粉末(B)以外の粉末粒子に該当する。すなわち、硬組織補修用組成物に含まれる「粉末粒子全体」とは、重合体粉末(B)及び以上例示したような重合体粉末(B)以外の粉末粒子の全てを含むことを意味する。
硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち粉末粒子全体(重合体粉末(B)及びそれ以外の粉末粒子の合計100累積%)におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率(%)は、望ましくは69累積%以下、好ましくは65累積%以下、より好ましくは2.5〜60累積%、特に好ましくは3.0〜60累積%である。アスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率(%)が大き過ぎると、生地化時間が長くなる恐れがある。またこの累積比率(%)が小さ過ぎると、著しい増粘によって生地化時間が極端に短くなり、均質な硬組織補修用組成物の調製が困難となる恐れがある。
重合体粉末(B−x)のアスペクト比は1.10以上であり、好ましくは1.10以上1.90以下、より好ましくは1.15以上1.80以下である。
重合体粉末(B−y)のアスペクト比は1以上1.10未満であり、好ましくは1以上1.05以下である。
重合体粉末(B)が重合体粉末(B−x)及び重合体粉末(B−y)を含む場合、重合体粉末(B)全体のアスペクト比は好ましくは1.11以上1.80以下、より好ましくは1.15以上1.75以下である。
以上説明したアスペクト比及び累積比率(%)の測定方法は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
重合体粉末(B)の重量平均分子量(すなわち一種の重合体を単独で用いた場合はその重合体の重量平均分子量、また2種以上の重合体の混合物を用いた場合は混合物全体の重量平均分子量)は、望ましくは4万〜600万、好ましくは5万〜500万、より好ましくは7.5万〜200万、特に好ましくは7.5万〜88万、最も好ましくは10万〜40万である。
重合体粉末(B)の体積平均粒径(すなわち一種の重合体粉末を単独で用いた場合はその重合体粉末の体積平均粒径、また2種以上の重合体粉末の混合物を用いた場合は混合物全体の体積平均粒径)は、望ましくは7〜120μm、好ましくは10〜118μm、より好ましくは15〜77μmである。
重合体粉末(B)の配合量は、好ましくは54.9〜80質量部、より好ましくは56.7〜73.7質量部、特に好ましくは59.7〜70.7質量部(成分(A)〜(C)の合計を100質量部とする)である。
[重合開始剤(C)]
本発明に用いる重合開始剤(C)としては特に限定されず、公知の各種化合物を使用できる。中でも、有機過酸化物、有機ホウ素化合物が好ましく、有機ホウ素化合物が特に好ましい。有機ホウ素化合物は、他の重合開始剤と比べて生地化時間を短くする傾向がある。その理由は、重合反応が、硬組織補修用組成物が直接接触する周辺の空気との界面から進行し、早期に糸引きがなくなって軟塊(生地)状態になるからと考えられる。さらに、硬組織補修用組成物組成物が水分を含んでいても水中の溶存酸素によって重合活性能が増加又は維持されるからとも考えられる。
有機過酸化物として、例えば、ジアセチルパーオキサイド、ジイソブチルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル(BPO)、スクシン酸パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルネオデカネート、クメンパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル類;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド等の過酸化スルホネート類が挙げられる。
有機過酸化物は、第3級アミン、又は、スルフィン酸もしくはそのアルカリ金属塩類及び第3級アミンと組み合わせてレドックス開始剤として使用しても良い。中でも、過酸化ベンゾイル(BPO)とN,N−ジメチル−p−トルイジン、過酸化ベンゾイル(BPO)とN,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジンが好適に使用される。
N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン等の第3級アミンは、モノマー(A)にあらかじめ添加して使用することが好ましい。その添加量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは0.1〜3.0質量部、特に好ましくは0.25〜2.6質量部である(モノマー(A)と第3級アミンとの合計を100質量部とする)。第3級アミンを使用すると室温下においても電子移動によってラジカル種が発生するので、加熱しなくても重合反応を容易に開始できる。
有機ホウ素化合物としては、例えば、トリアルキルホウ素、アルコキシアルキルホウ素、ジアルキルボラン、部分酸化トリアルキルホウ素、アルキルボラン・アミン錯体を使用できる。
トリアルキルホウ素の具体例としては、トリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリヘプチルホウ素、トリオクチルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素等の炭素数が2〜8のアルキル基を有するトリアルキルホウ素が挙げられる。アルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基のいずれであっても良く、トリアルキルホウ素に含まれる3つのアルキル基は同一であっても異なっていても良い。
アルコキシアルキルホウ素の具体例としては、ブトキシジブチルホウ素等のモノアルコキシジアルキルホウ素、ジアルコキシモノアルキルホウ素が挙げられる。アルコキシアルキルホウ素が有するアルキル基と、そのアルコキシ基のアルキル部とは同一であっても異なっていても良い。
ジアルキルボランの具体例としては、ジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボランが挙げられる。ジアルキルボランが有する2つのアルキル基は同一であっても異なっていても良い。また、ジアルキルボランに含まれる2つのアルキル基は結合して単環構造あるいはビシクロ構造を形成していても良い。このような化合物としては、例えば9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンがある。
部分酸化トリアルキルホウ素とは、トリアルキルホウ素の部分酸化物である。中でも、部分酸化トリブチルホウ素が好ましい。トリアルキルホウ素1モルに対して付加する酸素の量は、好ましくは0.3〜0.9モル、より好ましくは0.4〜0.6モルである。
アルキルボラン・アミン錯体の具体例としては、トリエチルボラン・ジアミノプロパン(TEB−DAP)、トリエチルボラン・ジエチレントリアミン(TEB−DETA)、トリ−n−ブチルボラン・3−メトキシプロピルアミン(TnBB−MOPA)、トリ−n−ブチルボラン・ジアミノプロパン(TnBB−DAP)、トリ−sec−ブチルボラン・ジアミノプロパン(TsBB−DAP)、メチルアミノエトキシジエチルボラン(MAEDEB)、メチルアミノエトキシジシクロヘキシルボラン(MAEDCB)及びこれらから誘導された誘導体が挙げられる。これらアルキルボラン・アミン錯体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
アルキルボラン・アミン錯体が重合開始剤(C)として使用される場合、さらにモノマー(A)と共に脱錯化剤を使用することが好ましい。明細書中で用いられる用語の「脱錯化剤」とは、アルキルボラン・アミン錯体からアルキルボランを遊離できる化合物を称し、そのアルキルボランの遊離によって重合反応の開始を可能にする。
適切な脱錯化剤としては、例えば、任意の酸、又は酸性基を有するモノマー(前述のモノマー(A)として使用される酸性基を有するモノマー)を使用できる。好適な酸としては、ルイス酸(例えば、SnCl、TiCl等)、ブレンステッド酸(例えば、カルボン酸類、HCl、HSO、HPO、ホスホン酸、ホスフィン酸、ケイ酸等)等が挙げられる。好適なカルボン酸類としては、一般式R−COOHで示されるものが挙げられ、この式中、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数2〜8のアルケニル基(好ましくは炭素数2〜4のアルケニル基)、炭素数2〜8のアルキニル基(好ましくは炭素数2〜4のアルキニル基)、又は炭素数6〜10のアリール基(好ましくは炭素数6〜8のアリール基)を示す。Rにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、直鎖状であっても良く、又は分枝状であっても良い。Rにおける脂肪族基は飽和であっても良く、又は不飽和であっても良い。Rにおけるアリール基は、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子等の置換基で置換されていても良く、無置換であっても良い。上記一般式で表されるカルボン酸の例示となる酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸、安息香酸及びp−メトキシ安息香酸が挙げられる。酸性基を有するモノマーの具体例としては、前述のモノマー(A)の項で述べたとおりであるが、中でも、4−メタアクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物が好ましい。
これら有機ホウ素化合物の中でも、トリブチルホウ素あるいは部分酸化トリブチルホウ素が好ましく、部分酸化トリブチルホウ素がより好ましい。トリブチルホウ素、部分酸化トリブチルホウ素を有機ホウ素化合物として用いた場合には、操作性が良くなるだけでなく、水分を有する生体に対して適切な反応性を有する傾向にある。また、トリブチルホウ素、部分酸化トリブチルホウ素を有機ホウ素化合物として用いた場合には、生体の様に水分が多い場所でも反応が開始し、反応が進むために、組成物と生体との界面においてモノマーが残存しにくく、そのため生体への為害性が極めて少ない。これら有機ホウ素化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
有機ホウ素化合物は、さらに非プロトン性溶媒を含んでも良い。非プロトン性溶媒により、有機ホウ素化合物が希釈されると、発火性を有する有機ホウ素化合物の発熱性がより穏やかになり、発火性を抑制し、搬送時、保存時、混合時の取扱いが容易になる。また、急激な発熱を抑制できるので、極めて多量の硬組織補修用組成物を使用する場合でも、硬組織補修用組成物と接する組織へのダメージが少なくなる傾向にある。非プロトン性溶媒の1気圧における沸点は、通常30℃〜150℃であり、好ましくは50℃〜120℃である。沸点が上記範囲未満である場合には、搬送時あるいは保存中に重合開始剤から非プロトン性溶媒が揮発、飛散等してしまい、有機ホウ素化合物の発火抑制効果が低下してしまう傾向にある。また、沸点が上記範囲を超える場合には、本発明の硬組織補修用組成物から形成される硬化物への非プロトン性溶媒の残存が多くなり、硬化物の患部に対する接着強さ及び曲げ弾性率、引張り強さ、圧縮強度、曲げ強さ等の物性が乏しくなる傾向にある。
非プロトン性溶媒としては、有機ホウ素化合物と反応するヒドロキシ基、メルカプト基等の活性水素を含有する基を有さず、有機ホウ素化合物と均一な溶液を形成しうる溶媒が好ましい。
非プロトン性溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素;フルオロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、いわゆるフロン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステルが挙げられる。これらの中でもペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、エーテル、及びエステルが好ましく、ヘキサン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチルがより好ましい。これら非プロトン性溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
非プロトン性溶媒の含有量は、有機ホウ素化合物100質量部に対し、好ましくは30〜80質量部である。非プロトン性溶媒の含有量が上記範囲未満の場合には、十分な希釈効果が得られず、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、非プロトン性溶媒の含有量が上記範囲を超えてしまう場合には、重合開始剤(C)の重合開始能を低下させる傾向にある。
有機ホウ素化合物は、非プロトン性溶媒に加えて、又は非プロトン性溶媒に替えてアルコールを含んでも良い。有機ホウ素化合物にアルコールが添加されたことにより、有機ホウ素化合物による反応が重合活性を低下させることなくさらに穏やかになり、空気中で紙等に触れても焦げや発火を抑制しやすくなる傾向にある。
アルコールの1気圧における沸点は、通常60℃〜180℃であり、好ましくは60℃〜120℃である。沸点が上記範囲未満である場合には、搬送あるいは保存中に重合開始剤組成物から非プロトン性溶媒が揮発、飛散等してしまい、有機ホウ素化合物の発火抑制効果が低下してしまう傾向にある。また、沸点が上記範囲を超える場合には、本発明の硬組織補修用組成物の硬化時間が長くなる傾向にあり、硬化物の患部に対する接着強さ及び曲げ弾性率、引張り強さ、圧縮強度、曲げ強さ等の物性が乏しくなる傾向にある。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びその異性体、n−ブタノール及びその異性体、n−ペンタノール及びその異性体、n−ヘキサノール及びその異性体、n−ヘプタノール及びその異性体等が挙げられる。中でも、炭素数4以下のアルコール、すなわちメタノール、エタノール、n−プロパノール及びその異性体、並びにn−ブタノール及びその異性体が好ましく、エタノール及びn−プロパノールがより好ましい。これらアルコールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
アルコールの含有量は、有機ホウ素化合物100質量部に対し、通常0.01〜40質量部、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部である。アルコールの含有量が、上記範囲未満の場合には、十分な希釈効果が得られず、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、アルコールの含有量が、上記範囲を越える場合には、重合開始剤の重合開始能を必要以上に低下させる傾向がある。
アルコールと非プロトン性溶媒とを併用する場合には、非プロトン性溶媒の含有量は、有機ホウ素化合物100質量部に対し、望ましくは5〜40質量部であり、好ましくは10〜30質量部、より好ましくは10〜25質量部である。非プロトン性溶媒の含有量が、上記範囲未満の場合には、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、非プロトン性溶媒の含有量が、上記範囲を越える場合には、重合開始剤(C)の重合開始能を低下させる傾向がある。
重合開始剤(C)の配合量は、モノマー(A)、重合体粉末(B)、及び重合開始剤(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1.0〜7.0質量部、特に好ましくは2.1〜4.3質量部である。重合開始剤(C)の配合量が上記範囲未満である場合には、重合が進行しにくくなり、硬化時間が遅くなる傾向にある。重合開始剤(C)の配合量が上記範囲を超える場合には、希釈により粘度を低下させてしまう可能性、安全性に悪影響を及ぼす可能性があり、また急激な重合が進行し速やかに重合硬化物が形成されることも想定される。
[造影剤(X)]
本発明の硬組織補修用組成物は、造影剤(X)を含んでも良い。造影剤(X)の体積平均粒径は、好ましくは0.15〜25.1μm、より好ましくは0.45〜18.0μmである。
造影剤(X)の種類は特に限定されないが、硫酸バリウム、酸化ジルコニア、炭酸ビスマス、タングステン酸カルシウム、イットリビウム、ヨウ素化合物が挙げられる。中でも、硬組織用途、特に骨セメントとしての使用実績がある点から、硫酸バリウム、酸化ジルコニアが好ましい。
造影剤(X)の配合量は、モノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0〜70質量部、より好ましくは0〜45質量部、特に好ましくは2.5〜33.8質量部、最も好ましくは4.5〜22.5質量部である。
[抗菌薬粒子(Y)]
本発明の硬組織補修用組成物は、抗菌薬粒子(Y)を含んでも良い。抗菌薬の具体例としては、抗生物質、元素ヨウ素、固体ポリビニルピロリドンヨウ素、ポリビニルピロリドンヨウ素;トリブロモフェノール、トリクロロフェノール、テトラクロロフェノール、ニトロフェノール、3−メチル−4−クロロ−フェノール、3,5−ジメチル−4−クロロフェノール、フェノキシエタノール、ジクロロフェン、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、2,4−ジクロロ−3,5−ジメチルフェノール、4−クロロチモール、クロルフェン、トリクロサン、フェンチクロール、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−n−アミルフェノール、4−tert−アミルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−n−ヘプチルフェノール、モノアルキルハロフェノール、ポリアルキルハロフェノール、芳香族ハロフェノール、並びにそれらのアンモニウム塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等のフェノール化合物;硝酸銀、ヘキサクロロフェン、メルブロミンが挙げられる。中でも、抗生物質が好ましい。
抗生物質とは、微生物が産生する物質又は化学的に合成した物質のうち他の微生物の発育を阻害する物質である。さらに、この抗生物質の定義には、微生物の産生物質又は化学的に合成した物質を化学的に変換したものも含まれる。
抗生物質の具体例としては、ゲンタマイシン、ゲンタマイシン硫酸塩、トブラマイシン、トブラマイシン硫酸塩、アミカシン、アミカシン硫酸塩、ジベカシン、ジベカシン硫酸塩、バンコマイシン、バンコマイシン塩酸塩、ダプトマイシン、アルベカシン、アルベカシン硫酸塩、ホスホマイシン、セファゾリン、セファゾリンナトリウム塩、ミノサイクリン、クリンダマイシン、コリスチン、リネゾリド、テトラサイクリン塩酸塩、テトラサイクリン水和物、オキシテトラサイクリン及びエリスロマイシンが挙げられる。中でも、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ジベカシン、バンコマイシン、ダプトマイシン、及びこれらの薬理学的に許容できる塩からなる群から選択される1種以上の抗生物質を含むことが好ましい。
ダプトマイシン及びダプトマイシンの薬理学的に許容できる塩が抗菌薬粒子(Y)として使用される場合、さらに、後述の無機充填剤のうち、特にカルシウム徐放性を有するフィラーと共に使用することが望ましい。カルシウム元素又はイオンと結合したダプトマイシン誘導体が、細菌の細胞膜に侵入・結合することにより、細胞膜での脱分極が進行し、膜電位を喪失させることにより細菌を死に至らしめることから、抗菌性が向上する傾向がある。これらカルシウム徐放性フィラーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
抗菌薬粒子(Y)の体積平均粒径は、好ましくは250μm未満、より好ましくは1.0〜200μm、特に好ましくは2.5〜150μmである。
抗菌薬粒子(Y)の配合量はその種類に応じて適宜決定すれば良いが、モノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)の合計100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは1.0〜30質量部、特に好ましくは1.2〜25質量部、最も好ましくは1.4〜20質量部である。
[多糖類(Z)]
本発明の硬組織補修用組成物は、多糖類(Z)を含んでも良い。多糖類(Z)の具体例としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、アカルボース、スタキオース、デンプン、グリコーゲン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、グルカン、キシログルカン、フルクタン、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、ヒアルロン酸、ペクチン、グルコマンナン、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、プルラン及びこれらから誘導された誘導体及び/又は薬理学的に許容できる塩が挙げられる。これら多糖類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。特に、前述の抗菌薬粒子(Y)及び/又は後述のカルシウム徐放性を有するフィラーと共に使用される場合、抗菌性が向上する傾向及び/又は生体への為害性を低減する傾向にある。
多糖類(Z)の配合量はその種類に応じて適宜決定すれば良いが、モノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)の合計100質量部に対して、好ましくは40質量部以下、より好ましくは0.1〜30質量部以下である。
[その他成分]
本発明の硬組織補修用組成物は、必要に応じて、重合禁止剤を含んでも良い。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン等のハイドロキノン化合物類や、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール類、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びt−ブチルヒドロキノンが挙げられる。中でも、ハイドロキノンモノメチルエーテルと2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの混合物が好ましい。また、それ自体の安定性の点から、ハイドロキノンモノメチルエーテルが好ましい場合もある。重合禁止剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
重合禁止剤の添加量は、硬組織補修用組成物全量に対して、好ましくは1〜1500ppm、より好ましくは5〜1000ppm、特に好ましくは5〜500ppmである。また、重合禁止剤の添加量は、モノマー(A)に対して、10〜5000ppm、より好ましくは25〜1000ppm、特に好ましくは25〜500ppmである。
本発明の硬組織補修用組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤を含んでも良い。紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3',5'−ジ−tert−ブチル−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3',5'−ジ−tert−ブチル−2'−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−sec−ブチル−5'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3',5'−ジ−tert−アミル−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−5'−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2'−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−5'−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−ドデシル−2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾールと2,2'−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾール−2−イルフェノール]との混合物、2−[3'−tert−ブチル−5'−(2−メトキシカルボニルエチル)−2'−ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコール300とのエステル交換反応生成物、[[R−CH2CH2−COOCH232−(式中、R=3'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシ−5'−2H−ベンゾトリアゾール−2−イルフェニル)等のベンゾトリアゾール化合物;
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−デシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン及び2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;
サリチル酸4−tert−ブチルフェニル、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチルフェニル、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−tert−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、及び安息香酸2−メチル−4,6−ジ−tert−ブチルフェニル、及び安息香酸3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート;
セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、コハク酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)n−ブチル−3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロネート、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−第三−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−s−トリアジンとの縮合生成物、トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラオエート、1,1'−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−n−ブチル−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三−ブチルベンジル)マロネート、3−n−オクチル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、セバシン酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、コハク酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−モルホリノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合生成物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンとの縮合生成物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンとの縮合生成物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアゾスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、及び3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、及び3−ドデシル−1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン等のヒンダードアミン化合物;
4,4'−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2'−ジエトキシオキサニリド、2,2'−ジオクチルオキシ−5,5'−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2,2'−ジドデシルオキシ−5,5'−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2−エトキシ−2'−エチルオキサニリド、N,N'−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサルアミド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2'−エチルオキサニリドと2−エトキシ−2'−エチル−5,4'−ジ−tert−ブチルオキサニリドとのその混合物、o−及びp−メトキシ−、並びにo−及びp−エトキシ−二置換オキサニリドの混合物等のオキサルアミド化合物;
2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ブチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、及び2−[4−ドデシル/トリデシルオキシ−(2−ヒドロキシプロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物;
例えば、トリフェニルホスフィット、ジフェニルアルキルホスフィット、フェニルジアルキルホスフィット、トリス(ノニルフェニルホスフィット)、トリラウリルホスフィット、トリオクタデシルホスフィット、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフィット、トリス−(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ホスフィット、ジイソデシルペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−イソデシルオキシペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス(2,4,6−トリ−第三−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、トリステアリルソルビチルトリホスフィット、テトラキス(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、6−イソオクチルオキシ−2,4,8,10−テトラ−第三ブチル−12H−ジベンゾ[d、g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、6−フルオロ−2,4,8,10−テトラ−第三−ブチル−12−メチルジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスフィット及びビス(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスフィット等のホスフィット化合物又はホスホナイト化合物等が挙げられる。中でも、ベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、モノマー(A)に対して、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは800ppm以下、特に好ましくは500ppm以下である。このように紫外線吸収剤を添加することにより、モノマーを含む液の着色が抑制され、モノマー自体の保存安定性が向上する傾向にある。
その他成分の例としては、さらに軟質剤、可塑剤が挙げられる。
軟質剤としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム等のゴム、熱可塑性エラストマー等のエラストマーが挙げられる。このような軟質剤により硬組織補修用組成物の柔軟性を高めることができる。合成ゴムとしては、例えば、EPT(エチレン・プロピレン・ターポリマー)等が挙げられる。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びウレタン系エラストマーが挙げられる。エラストマーの分子量は、通常1000〜100万、好ましくは2000〜50万である。また上記エラストマーのガラス転移点(Tg)は、通常20℃以下、好ましくは0℃以下である。
可塑剤としては、例えば、クエン酸エステル、イソクエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、グリセリン酸エステル及びグリコール酸エステル等のヒドロキシカルボン酸エステル;トリメリト酸トリメチル、ジ安息香酸ジエチレングリコール、マロン酸ジエチル、o−アセチルクエン酸トリエチル、フタル酸ベンジルブチル、ジ安息香酸ジプロピレングリコール、アジピン酸ジエチル、o−アセチルクエン酸トリブチル、セバシン酸ジメチル、アルキレングリコールジエステルが挙げられる。
軟質剤及び可塑剤の添加量は、材料の種類によって適宜選択されるが、通常、硬組織補修用組成物全体の中で、通常0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%である。
その他成分の例としては、さらに保存剤が挙げられる。保存剤の具体例としては、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、ブチルパラベン;クレゾール、クロロクレゾール;レゾルシノール、4−n−ヘキシルレゾルシノール、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−2−((トリクロロメチル)チオ)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン;塩化ベンズザルコニウム、塩化ベンザルコニウムナトリウム、塩化ベンゼトニウム;安息香酸、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、o−フェニルフェノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモール、ホウ酸フェニル水銀や硝酸フェニル水銀や酢酸フェニル水銀等のフェニル水銀化合物、ホルムアルデヒドが挙げられる。
その他成分の例としては、さらに鎮痛薬、鎮痛薬の配合物、食欲抑制薬、抗蠕虫薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗鬱薬、抗利尿薬、下痢止め薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗偏頭痛薬剤、制嘔吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経興奮剤、心臓血管用薬剤、抗不整脈薬、抗高血圧薬、利尿薬、血管拡張剤、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、覚醒薬、鎮静剤、精神安定剤、コリン作用薬、化学療法薬、放射性医薬品、骨誘導性薬、膀胱静止性のヘパリン中和剤、凝血原、止血剤、キサンシン誘導体、ホルモン、天然由来又は遺伝子工学によって合成されたタンパク質、糖蛋白質、リポ蛋白質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗原、バソプレシン、バソプレシン類似体、エピネフリン、セレクチン、凝血促進性の毒物、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、血小板活性剤、骨形成因子、骨成長因子、止血作用を有する合成ペプチド、及びその他の薬学的又は治療的成分が挙げられる。なお、これら成分を含むことにより、本発明の硬組織補修用組成物は、ドラッグ・デリバリー・システムや再生医療用途にも用いることができる。
硬組織補修用組成物には、さらに組織修復の促進等を目的として骨形成因子、骨成長因子、及びその他の薬学的又は治療的成分等を含ませても良い。
その他成分の例としては、さらに、レンジ油、グレープフルーツ油、レモン油、ライム油、丁子油、ウインターグリーン油、ペパーミント油、ペパーミントスピリット、バナナ留出物、キュウリ留出物、蜂蜜留出物、ローズウオータ、メントール、アネトール、サリチル酸アルキル、ベンズアルデヒド、グルタミン酸一ナトリウム、エチルバニリン、チモール、及びバニリン等の香料が挙げられる。
その他成分の例としては、さらに、周辺の骨組織等との視覚的な区別の明瞭化、密着性の向上、圧縮強度等物性の強化、活性ラジカル種の補足による周辺の骨組織等への為害性の低減のために無機充填剤(ただし、前述のX線造影剤を除く)、有機充填剤、有機複合フィラー、着色剤等が含まれていても良い。
無機充填剤としては、例えば、ビスマス酸化物、チタン酸化物、酸化亜鉛、酸化アルミニウム粒子等の金属酸化物粉末;リン酸ジルコニウム等の金属塩粉末;シリカガラス、アルミニウム含有ガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ジルコニウムシリケートガラス等のガラスフィラー;銀徐放性を有するフィラー、カルシウム徐放性を有するフィラー:及びフッ素徐放性を有するフィラーが挙げられる。硬化後の無機充填剤とモノマー(A)との間で強固な結合を形成する観点からは、シラン処理、ポリマーコート等の表面処理を施した無機充填剤を使用することが好ましい。これら無機充填剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
カルシウム徐放性を有するフィラーとしては、例えば、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム一水和物、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、炭酸含有水酸アパタイト、グルコン酸カルシウム、グルクロン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水塩、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウムが挙げられる。これらカルシウム徐放性を有するフィラーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用でき、前述のダプトマイシン及びダプトマイシンの薬理学的に許容できる塩が抗菌薬粒子(Y)として使用され、これらカルシウム徐放性を有するフィラーと共に使用される場合、抗菌性が向上する傾向がある。さらに、前述の抗菌薬粒子(Y)及び/又は前述の多糖類(Z)と共に使用される場合、抗菌性が向上する傾向及び/又は生体への為害性を低減する傾向にある。
着色剤としては、例えば、赤色2号及びそのアルミニウムレーキ、赤色3号及びそのアルミニウムレーキ、赤色102号及びそのアルミニウムレーキ、赤色104号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、又はバリウムレーキ、赤色105号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、赤色106号及びそのアルミニウムレーキ、黄色4号及びそのアルミニウムレーキ、又はバリウムレーキ、又はジルコニウムレーキ、黄色5号及びそのアルミニウムレーキ、又はバリウムレーキ、又はジルコニウムレーキ、緑色3号及びそのアルミニウムレーキ、青色1号及びそのアルミニウムレーキ、又はバリウムレーキ、又はジルコニウムレーキ、青色2号及びそのアルミニウムレーキ、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号及びそのアルミニウムレーキ、赤色228号、赤色230号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、赤色230号の(2)及びそのアルミニウムレーキ、赤色231号及びそのアルミニウムレーキ、赤色232号及びそのアルミニウムレーキ、だいだい色201号、だいだい色203号、だいだい色204号、だいだい色205号及びそのアルミニウムレーキ、又はバリウムレーキ、又はジルコニウムレーキ、だいだい色206号、だいだい色207号及びそのアルミニウムレーキ、黄色201号、黄色202号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、黄色202号の(2)及びそのアルミニウムレーキ、黄色203号及びそのアルミニウムレーキ、又はバリウムレーキ、又はジルコニウムレーキ、黄色204号、黄色205号、緑色201号及びそのアルミニウムレーキ、緑色202号、緑色204号及びそのアルミニウムレーキ、緑色205号及びそのアルミニウムレーキ、又はジルコニウムレーキ、青色201号、青色202号及びそのバリウムレーキ、青色203号、青色204号、青色205号及びそのアルミニウムレーキ、褐色201号及びそのアルミニウムレーキ、紫色201号、赤色401号及びそのアルミニウムレーキ、赤色404号、赤色405号、赤色501号、赤色502号及びそのアルミニウムレーキ、赤色503号及びそのアルミニウムレーキ、赤色504号及びそのアルミニウムレーキ、赤色505号、赤色506号及びそのアルミニウムレーキ、だいだい色401号、だいだい色402号及びそのアルミニウムレーキ、又はバリウムレーキ、だいだい色403号、黄色401号、黄色402号及びそのアルミニウムレーキ、黄色403号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、黄色404号、黄色405号、黄色406号及びそのアルミニウムレーキ、黄色407号及びそのアルミニウムレーキ、緑色401号、緑色402号及びそのアルミニウムレーキ、又はバリウムレーキ、青色403号、青色404号、紫色401号及びそのアルミニウムレーキ、黒色401号及びそのアルミニウムレーキ、クロロフィル、クロロフィリン、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、コバルトフタロシアニン、カロテン、ビタミンB12及びこれらから誘導された誘導体が挙げられる。これら着色剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
着色剤の添加量はその種類によって適宜選択されるが、通常、重合体粉末(B)、重合開始剤(C)、及び造影剤(X)の合計100質量部に対して、通常0〜5質量%、好ましくは0〜2質量%、より好ましくは0〜1質量%である。
[硬組織補修用組成物]
本発明の硬組織補修用組成物は、モノマー(A)、重合体粉末(B)、重合開始剤(C)、造影剤(X)及びその他必要に応じて含まれる成分を混合して調製される。その組成物は患部に適用することにより使用できる。なお、本発明において「硬組織補修用組成物」とは、硬組織同士の接着、硬組織内への充填、硬組織とチタン、セラミックス、ステンレス等の人工物との接着、硬組織と軟組織等の他の組織との接着に用いられるものであって、歯と充填物との接着(即ち、歯科用途)は含まない。
これら各成分を混合する際には、混合される順序は限定されないが、得られる硬組織補修用組成物の安定性がより優れるという点では、まずモノマー(A)及び重合開始剤(C)を混合し、続いて造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)を混合することが好ましく、モノマー(A)及び重合開始剤(C)、及び、造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)が同時に混合することがより好ましい。
本発明の硬組織補修用組成物が重合禁止剤を含む場合は、得られる組成物の安定性がより優れるという点から、まずモノマー(A)と重合禁止剤の混合物、及び重合開始剤(C)をまず混合し、続いて造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)を混合することが好ましく、モノマー(A)と重合禁止剤の混合物、重合開始剤(C)、及び造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)を同時に混合することがより好ましい。
本発明の硬組織補修用組成物を硬化する前、ドライ・ヒート、スチーム、エチレンオキサイド(EO)、過酸化水素等のガス、濾過、液体等による処理により、滅菌しても良い。また、硬組織補修用組成物を患部に充填する前に、あらかじめ患部表面をアルコール等の消毒液で消毒しても良い。さらに、硬組織補修用組成物を患部に充填する前に、患部との密着性を改善すること等を目的として、前処理を行っても良い。前処理用の液としては、例えば、生理食塩水が挙げられる。
[硬組織補修用キット]
本発明の硬組織補修用組成物が長期にわたり形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう恐れがある場合には、モノマー(A)、重合体粉末(B)、重合開始剤(C)及びその他必要に応じて含まれる成分からなる硬組織補修に用いる全成分を、単独であるいは任意の組合せで分割して3つ以上の部材に収納した硬組織補修用キットとして保存し、使用前に混合して硬組織補修用組成物とすることができる。収納用の部材としては、モノマー(A)や重合開始剤(C)の揮散、飛散を防ぐために、例えば、ガスバリヤー性がある密閉可能な樹脂容器、あるいはガラスアンプル等がある。重合体粉末(B)の収納用の部材としては、吸湿を防ぐための密閉の良好な樹脂及びガラス製容器、又はエチレンオキサイド(EO)、過酸化水素等のガスによる滅菌を行うための樹脂製不織布や滅菌紙が挙げられる。
上記成分を保存する方法としては、例えば、モノマー(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合開始剤(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の3つに分割して保存する方法が好ましい。それ以外にも、例えば、モノマー(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、造影剤(X)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合開始剤(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の4つに分割して保存する方法、モノマー(A)、造影剤(X)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合開始剤(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の3つに分割して保存する方法も可能である。
これら分割された成分は別々の部材、例えばアンプル等の容器等に入れられ、硬組織補修用キットに収容されて製品として提供できる。
硬組織補修用キットは、保管により形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう恐れがない限りその構成に特に制限はないが、モノマー(A)、造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、及び重合開始剤(C)がそれぞれ別個に収納されており、モノマー(A)と重合開始剤(C)とがまず混合され、続いて造影剤(X)が混合された重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物が混合される構成を有することが好ましく、モノマー(A)と造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、並びに、重合開始剤(C)が同時に混合される構成を有することがさらに好ましい。このような構成とすることで、より安定した性能を有する硬組織補修用組成物が得られ易い。
硬組織補修用キットとしては、例えば、モノマー(A)、造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)、及び重合開始剤(C)がそれぞれ別個に収納された部材(例えば、樹脂製容器、ガラス製アンプル等)と、これらを収納された部材から取り出し混合するための部材(例えば、整形外科用セメント混合器、整形外科用セメント注入器、整形外科用セメントディスペンサ、セメントガン、混合容器、混合皿、シリンダー)とを有するキット等が挙げられる。
硬組織補修用キットとしては、例えば、モノマー(A)、造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)、及び重合開始剤(C)が、一つの混合容器内の隔壁又はスペーサーにより3以上に分離されたチャンバー内にそれぞれ別個に収納され、隔壁の破壊、移動、又はスペーサーの除去により混合容器にあらかじめ設計されたバイパスをモノマー(A)及び重合開始剤(C)が通過し、造影剤(X)が配合された重合体粉末(B)と接触し、あらかじめ設置された撹拌翼を操作することで混合が可能な撹拌ユニットを有するキットが挙げられる。
3以上に分離されたチャンバー内に各成分が収納された一つの混合容器からなるキットは、本発明の組成物を二つ以上の部材、典型的には各容器に分割して使用直前に混合して使用する方法と比較して煩雑さが低減し、さらに、混合容器から直接組成物を注入できるセメントガン等の治具により患部に直接充填することができ、手技的かつ経済的に有用である。
また、重合開始剤(C)成分の一部又は全部を、あらかじめ、硬組織補修用組成物を骨、軟骨等の硬組織等の患部や軟組織、その他チタン、セラミックス、ステンレス等の人工物に塗布する際に使用する治具に含有させ、使用直前にモノマー(A)又はモノマー(A)と重合禁止剤とを含む混合物、重合体粉末(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分と治具とを接触させて、本発明の硬組織補修用組成物をその場で調製し、そのまま患部に充填することもできる。
患部に充填する治具としては、例えば、整形外科用セメント混合器、整形外科用セメント注入器、整形外科用セメントディスペンサ、セメントガンが挙げられる。
なお、上述の硬組織補修用キット等には、上述したアルコール等の消毒液、密着性を改善すること等を目的とした前処理用のための溶液等が含まれていても良い。
さらに上述のキット等で保存する場合には、好ましくは各成分が変質しない(例えば、モノマーが硬化しない)条件で、可視光等の電磁波等により滅菌処理しても良い。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する、ただし、本発明はこれら実施例に限定されない。
(1)アスペクト比の値(Ap値)及び累積比率(%)
Ap値及び累積比率(%)は、分散溶媒として2−プロパノール(大伸化学社製)を使用し、出力500Wの超音波バスで30秒間又は60秒間分散させ、サンプル液流量0.42μL/秒、キャリア液流量416.67μL/秒、観察倍率(レンズ倍率)10倍の条件において、PITA−3(セイシン企業社製、粒度・形状分布測定器)を用いて、動的画像解析法(湿式)の手法で測定した。観測粒子数は1測定当たり概ね1万個とした。なおAp値は、この動的画像解析法(湿式)により得た投影画像に基づいて、以下の式で算出した。
Ap値 = L/W
L:長径(最大長)(μm)
W:短径(最大長垂直長)(μm)
(2)体積平均粒径D50
重合体粉末の体積平均粒径D50は、分散溶媒として試薬特級メタノール(溶媒屈折率1.33)(和光純薬工業社製)又は、0.2質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(溶媒屈折率1.33)(和光純薬工業社製)を使用し、装置内蔵超音波ホモジナイザーで5分間(出力25W)にて分散させ、装置Loading Index適量範囲内の濃度条件において、循環速度50%(100%時、65mL/秒)で、Microtrac MT3300EXII(Microtrac社製 粒度分布計)を用いて測定した。
実施例及び比較例に使用した重合体粉末(B)の体積平均粒径D50の値は重合体粉末(B)全体における体積平均粒径の累積50%の値であり、重合体粉末(B−x)の体積平均粒径D50の値は重合体粉末(B−x)全体における体積平均粒径の累積50%の値であり、重合体粉末(B−y)の体積平均粒径D50の値は重合体粉末(B−y)全体における体積平均粒径の累積50%の値である。
(3)生地化時間(分’秒”)
骨セメントに関する国際規格ISO5833:2002(外科用インプラント−アクリル樹脂セメント)に規定の条件で測定した。
[実施例1〜2及び比較例1〜2]
実施例1及び比較例1において、モノマー(A)としてメタクリル酸メチル、重合開始剤(C)として、85質量%の部分酸化トリブチルホウ素と15質量%のエタノール混合物(三井化学社製、品番BC−S1i)(重合開始剤(C)の合計を100質量%とする)、造影剤(X)として硫酸バリウム(堺化学工業社製)を用いた。
実施例2及び比較例2において、モノマー(A)として、99.5質量%のメタクリル酸メチルと0.5質量%の試薬一級N,N−ジメチル−p−トルイジン(和光純薬工業社製)の混合物(モノマー(A)の合計を100質量%とする)、重合開始剤(C)として過酸化ベンゾイル(BPO)(Aldrich社製、商品名Luperox(登録商標)A75)、造影剤(X)として硫酸バリウム(堺化学工業社製)を用いた。
実施例1〜2において、重合体粉末(B−x)として、ポリメチルメタクリレート(アスペクト比=1.30、重量平均分子量Mw=452000、体積平均粒径D50=18.7μm)を用いた。
実施例1a〜1b、実施例2a及び比較例1〜2において、重合体粉末(B−y)として、(1)ポリメチルメタクリレート(アスペクト比=1.04、重量平均分子量Mw=117000、体積平均粒径D50=8.2μm)、(2)ポリメチルメタクリレート(アスペクト比=1.04、重量平均分子量Mw=147000、体積平均粒径D50=40.5μm)を併用した(質量比(1):(2)=38.9:61.1)。
実施例1c〜1d及び実施例2b〜2cにおいて、重合体粉末(B−y)として、ポリメチルメタクリレート(アスペクト比=1.03、重量平均分子量Mw=139000、体積平均粒径D50=70.5μm)を用いた。
そして、表1〜4に示す配合比であらかじめ重合体粉末(B)及び造影剤(X)を均一に分散させた混合物と、50mLガラス製サンプル管内で、表1〜4に示す配合比であらかじめ混合しておいたモノマー(A)と重合開始剤(C)とを、ポリプロピレン製容器(松風社製、商品名トレーレジン混和器)及びシリコンゴム製のヘラを用いて混合し、先に説明した方法により生地化時間を測定した。なお、混合時間は60秒である。結果を表1〜4に示す。
なお、表中の各成分の括弧書きで示す配合比は、成分(A)〜(C)の合計100質量部を基準とする比率(質量部)である。また、成分(B―x)及び(B−y)の配合比は、重合体粉末(B)100質量%を基準とする比率(質量%)である。
表中の重合体粉末(B)のAp値は重合体粉末(B)全体におけるアスペクト比の累積50%の値であり、重合体粉末(B−x)のApの値は重合体粉末(B−x)全体におけるアスペクト比の累積50%の値であり、重合体粉末(B−y)のAp値は重合体粉末(B−y)全体におけるアスペクト比の累積50%の値である。
表中の「Ap値1.10未満の粉体粒子の累積比率(%)」の欄において、重合体粉末(B)の累積比率(%)は重合体粉末(B)全体におけるAp値1.10未満の粉体粒子の累積比率(%)の値であり、粉末粒子全体の累積比率(%)は重合体粉末(B)と造影剤(X)の混合物全体(つまり、組成物に含まれる粒子全体)におけるAp値1.10未満の粉体粒子の累積比率(%)の値である。
Figure 2020022664
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表1及び2に示すとおり、実施例1及び2の硬組織補修用組成物は、硬化後の生地化時間)が短かった。一方、表3及び4に示すとおり、比較例1及び2の硬組織補修用組成物は、アスペクト比が1.10以上の重合体粉末(B−x)を含んでおらず、且つ、粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率が高いので、硬化後の生地化時間が長かった。
本発明の硬組織補修用組成物は、硬組織同士の接着、硬組織内への充填、硬組織とチタン、セラミックス、ステンレス等の人工物との接着及び/又は密着、硬組織と軟組織等の他の組織との接着及び/又は密着、骨、軟骨等の硬組織と人工関節との固定用等に用いる骨セメント、骨の欠損部への充填材、骨補填材、人工骨等に有用である。

Claims (9)

  1. モノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)を含む硬組織補修用組成物であって、
    重合体粉末(B)が、アスペクト比が1.10以上の重合体粉末(B−x)を含み、
    硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率が69累積%以下である硬組織補修用組成物。
  2. 造影剤(X)をさらに含む請求項1に記載の硬組織補修用組成物。
  3. 硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率が2.5〜60累積%である請求項1又は2に記載の硬組織補修用組成物。
  4. 硬組織補修用組成物に含まれる各成分のうち粉末粒子全体におけるアスペクト比1.00以上1.10未満の粉末粒子の累積比率が3.0〜60累積%である請求項1又は2の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
  5. 重合体粉末(B)が、アスペクト比1.10以上1.90以下の重合体粉末(B−x)を含み、重合体粉末(B)全体のアスペクト比が1.11以上1.80以下である請求項1〜4の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
  6. モノマー(A)が、(メタ)アクリレート系単量体である請求項1〜5の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
  7. 重合体粉末(B)が、(メタ)アクリレート系重合体粉末である請求項1〜6の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
  8. モノマー(A)10〜45質量部、重合体粉末(B)54.9〜80質量部、重合開始剤(C)0.1〜10質量部(成分(A)〜(C)の合計を100質量部とする)及び造影剤(X)0〜70質量部を含む請求項1〜7の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
  9. 請求項1に記載の硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)の各成分が、任意の組合せで3つ以上に分割されて収容された部材を有する硬組織補修用キット。
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