JP2019111015A - 抗菌性硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キット - Google Patents

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Abstract

【課題】抗菌薬の溶出量に優れた硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キットを提供する。【解決手段】モノマー(A)、体積平均粒径40μm以上の重合体粉末(B)、重合開始剤(C)、及び、抗菌薬粒子(Y)を含む硬組織補修用組成物;並びに、この硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)、重合体粉末(B)、重合開始剤(C)及び抗菌薬粒子(Y)の各成分が、任意の組合せで3つ以上に分割されて収容された部材を有する硬組織補修用キット。【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌薬の溶出量に優れた硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キットに関する。
従来、骨、軟骨等の硬組織と人工関節との固定用の骨セメント、骨粗しょう症治療用等に用いる骨充填剤、人工骨材料等として、様々な硬組織補修用組成物が検討されてきている。例えば、メチルメタクリレート及び(メタ)アクリレート系重合体を主成分として含む組成物は、その組成物が元来有する生体組織への適合性及び硬化後の機械的強度の点から、人工関節置換術(整形分野)において硬組織補修用の充填剤(いわゆる骨セメント)として用いられている。
このような硬組織補修用組成物には、充填後の感染症の予防を目的として予め抗菌薬が配合されているものがある。例えば、特許文献1には、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリレート重合体を主成分として含む硬組織補修用組成物が開示されており、この組成物は抗菌剤を含有しても良いことが記載されている。特許文献2には、モノマー及び有機ポリマーを主成分として含み、さらにダプトマイシンを抗菌薬として含む骨セメントが開示されている。
国際公開第2011/062227号 特開2017−127629号公報
抗菌薬の効果を十分に発揮するためには、充填した硬組織補修用組成物の周囲に抗菌薬が十分に溶出する必要がある。本発明者らは、この抗菌薬の溶出性について従来の硬組織補修用組成物には改善の余地があると考えた。すなわち本発明の目的は、抗菌薬の溶出量に優れた硬組織補修用組成物及び硬組織補修用キットを提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、平均粒径が特定範囲内にある重合体粒子を用いることが非常に有効であることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、以下の事項により特定される。
[1]モノマー(A)、体積平均粒径40μm以上の重合体粉末(B)、重合開始剤(C)、及び、抗菌薬粒子(Y)を含む硬組織補修用組成物。
[2]抗菌薬粒子(Y)の体積平均粒径が15μm未満である[1]に記載の硬組織補修用組成物。
[3]抗菌薬が、抗生物質である[1]又は[2]に記載の硬組織補修用組成物。
[4]抗生物質が、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ジベカシン、バンコマイシン、ダプトマイシン、及びこれらの薬理学的に許容できる塩からなる群から選択される1種以上の抗生物質を含む[3]に記載の硬組織補修用組成物。
[5]モノマー(A)が、(メタ)アクリレート系単量体である[1]〜[4]の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
[6]重合体粉末(B)が、(メタ)アクリレート系重合体である[1]〜[5]の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
[7]造影剤(X)をさらに含む[1]〜[6]の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
[8]モノマー(A)10〜45質量部、重合体粉末(B)54.9〜80質量部、重合開始剤(C)0.1〜10質量部(成分(A)〜(C)の合計を100質量部とする)、造影剤(X)0〜70質量部及び抗菌薬粒子(Y)1.0〜30質量部を含む[1]〜[7]の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
[9][1]に記載の硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)、重合体粉末(B)、重合開始剤(C)及び抗菌薬粒子(Y)の各成分が、任意の組合せで3つ以上に分割されて収容された部材を有する硬組織補修用キット。
本発明の硬組織補修用組成物は、比較的大きな体積平均粒径の重合体粉末(B)を用いるので、抗菌薬の溶出量に優れている。その理由は、重合体粉末(B)が比較的大きいので、硬組織補修用組成物を充填、硬化した後の硬化物に隙間や空隙が生じ易く、隙間や空隙の内表面にも凹凸が生じ易いからと考えられる。
[モノマー(A)]
本発明に用いるモノマー(A)は特に制限されず、後述する重合開始剤(C)により重合可能なモノマーであれば良い。モノマー(A)は、使用目的に応じて単官能モノマー、多官能モノマーの何れも使用できる。
モノマー(A)としては、例えば、(メタ)アクリレート系単量体及びその他のビニル化合物を使用できる。中でも、人体への刺激が比較的低い点から(メタ)アクリレート系単量体が好ましい。本発明において「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。また一般に、酸性基を有するモノマーは、硬組織への接着性が優れており、さらに後述する脱錯化剤として作用し、重合開始剤(C)としてアルキルボラン・アミン錯体を用いる場合に酸性基を有するモノマーを用いることで重合反応の開始を可能にすることもできる。したがって、例えば、酸性基を持たない(メタ)アクリレート系単量体に対して、酸性基を有するモノマーを適量併用して接着性を向上させることもできる。
酸性基を持たない単官能(メタ)アクリレート系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シラン等の(メタ)アクリロキシアルキル基を有するシラン化合物;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
酸性基を持たない多官能(メタ)アクリレート系単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、へキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトールテトラ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;下記一般式(1)で表される脂環系又は芳香族ジ(メタ)アクリレート
Figure 2019111015
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、m及びnは各々独立して0〜10の数であり、Rは、
Figure 2019111015
のいずれかである);
下記一般式(2)で表される脂環系又は芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート
Figure 2019111015
(式(2)中、R、n及びRは、前記式(1)中のR、n及びRと同じである);
下記式(3)で表される分子中にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート
Figure 2019111015
(式(3)中、Rは前記式(1)中のRと同じであり、Rは、
Figure 2019111015
のいずれかである。);が挙げられる。
以上の例示化合物のうち、単官能(メタ)アクリレート系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
以上の例示化合物のうち、多官能(メタ)アクリレート系単量体としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の分子内にエチレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレート;下記式(1)−aで表される化合物
Figure 2019111015
(式(1)−a中、R、m及びnは、前記式(1)中のR、m及びnと同じである);
下記式(2)−aで表される化合物
Figure 2019111015
(式(2)−a中、Rは、前記式(1)中のRと同じである);
下記式(3)−aで表される化合物
Figure 2019111015
(式(3)−a中、Rは、前記式(1)中のRと同じである);
が好ましい。
これら(メタ)アクリレート系単量体は2種以上を併用しても良い。
酸性基を有するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸及びその無水物、1,4−ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロキシエチルナフタレン1,2,6−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−m−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸及びその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸等のカルボン酸基又はその無水物基を有するモノマー;(2−(メタ)アクリロキシエチル)ホスホリック酸、(2−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)ホスホリック酸、10−(メタ)アクリロキシデシルホスホリック酸等の燐酸基を有するモノマー;p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマーが挙げられる。中でも、4−メタアクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物が好ましい。
これら酸性基を有するモノマーは2種以上を併用しても良い。また、酸性基を有するモノマーはカルシウム塩としても使用できる。
モノマー(A)の配合量は、好ましくは10〜45質量部、より好ましくは20〜45質量部、特に好ましくは25〜36質量部(成分(A)〜(C)の合計を100質量部とする)である。上記各範囲の下限値は、塗布の容易性や操作性、骨組織内への侵入性等の点で意義がある。上限値は、接着強度、機械物性等の点で意義がある。モノマー(A)が酸性基を有するモノマーを含む場合、酸性基を有するモノマーの量は、モノマー(A)合計100質量%に対して好ましくは0.01〜20質量%である。
[重合体粉末(B)]
本発明に用いる重合体粉末(B)の種類は特に限定されないが、重合体粉末(B)を構成する単量体単位の一部又は全部が、先に説明したモノマー(A)中の一部のモノマー又は全部のモノマーと同じ種類のモノマーに起因する単量体単位であることが好ましい。本発明において「重合体」は、単独重合体及び共重合体の総称である。重合体粉末(B)としては、例えば、(メタ)アクリレート系重合体及びその他のビニル系重合体を使用できる。中でも、(メタ)アクリレート系重合体が好ましい。
(メタ)アクリレート系重合体の具体例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合体等の非架橋重合体;メチル(メタ)アクリレート・エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとブタジエン系モノマーとの共重合体等の架橋重合体及び部分的にカルシウム塩を形成している重合体が挙げられる。また、金属酸化物又は金属塩が非架橋重合体又は架橋重合体で被覆された有機・無機複合体であっても良い。
重合体粉末(B)は1種の重合体粉末を単独で用いても良いし、複数種の重合体粉末の混合物を用いても良い。中でも、比表面積及び/又は体積平均粒径が異なる2種以上の重合体粉末の混合物を用いることが好ましい。
重合体粉末(B)の各粒子の形態は、球形、不定形の何れでも良いが、球形の重合体粉末と不定形の重合体粉末の混合物を用いることが好ましい。球形の粒子は比表面積が比較的小さく、不定形の粒子は比表面積が比較的大きいので、両者は比表面積の違いにより区別できる。本発明においては、球形の重合体粉末として、比表面積が0.05〜0.5m/gの重合体粉末(b1)を用いることが好ましく、不定形の重合体粉末として、比表面積が1.5〜4.5m/gの重合体粉末(b3)を用いることが好ましい。さらに、球形の重合体粉末(b1)と不定形の重合体粉末(b3)の中間の形態を有する比表面積0.51〜1.2m/gの重合体粒子(b2)を併せて用いることも好ましい。比表面積の測定方法は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
重合体粉末(b1)の比表面積は0.05〜0.5m/gであり、好ましくは0.1〜0.4m/gである。重合体粉末(b2)の比表面積は0.51〜1.2m/gであり、好ましくは0.7〜1.1m/gである。重合体粉末(b3)の比表面積は1.5〜4.5m/gであり、好ましくは2.5〜3.5m/gである。
重合体粉末(b1)の重量平均分子量は、好ましくは1万〜500万、より好ましくは5万〜154万、特に好ましくは10万〜50万である。重合体粉末(b2)の重量平均分子量は、好ましくは1万〜500万、より好ましくは5万〜166万、特に好ましくは10万〜50万である。重合体粉末(b3)の重量平均分子量は、好ましくは15万〜500万、より好ましくは20万〜115万、特に好ましくは24万〜67万である。重量平均分子量の測定方法は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
重合体粉末(b1)〜(b3)は、後述のとおり、重合体粉末(B)全体の体積平均粒径が40μm以上となるような体積平均粒径のものをそれぞれ組み合わせて使用することが好ましく、いずれか1つについて体積平均粒径が大きいものを使用した場合、別のものについては体積平均粒径が比較的小さいものが含まれていてもよい。例えば、重合体粉末(b1)の体積平均粒径は、好ましくは12.7〜188μm、より好ましくは15〜160μm、特に好ましくは17.5〜121μmである。重合体粉末(b2)の体積平均粒径は、好ましくは1〜15μm、より好ましくは3.5〜10μmである。重合体粉末(b3)の体積平均粒径は、好ましくは0.3〜60μm、より好ましくは7.5〜50μm、特に好ましくは15.7〜40μmである。体積平均粒径の測定方法は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
重合体(B)の重量平均分子量(すなわち一種の重合体を単独で用いた場合はその重合体の重量平均分子量、また2種以上の重合体の混合物を用いた場合は混合物全体の重量平均分子量)は、好ましくは5万〜500万、より好ましくは7.5万〜200万、特に好ましくは7.5万〜88万、最も好ましくは10万〜40万である。
重合体粉末(B)の体積平均粒径(すなわち一種の重合体粉末を単独で用いた場合はその重合体粉末の体積平均粒径、また2種以上の重合体粉末の混合物を用いた場合は混合物全体の体積平均粒径)は、40μm以上、好ましくは45〜158μm、より好ましくは、45〜138μm、特に好ましくは50〜118μm、最も好ましくは55〜94である。本発明においては、このように比較的大きな体積平均粒径の重合体粉末(B)を用いるので、抗菌薬の溶出量が向上する。その理由は、硬組織補修用組成物を充填、硬化した後の硬化物に隙間や空隙が生じ易く、隙間や空隙の内表面にも凹凸が生じ易いからと考えられる。
重合体粉末(B)の配合量は、好ましくは54.9〜80質量部、より好ましくは56.7〜73.7質量部、(成分(A)〜(C)の合計を100質量部とする)である。重合体粉末(B)100質量%中の重合体粉末(b1)の量は、好ましくは50.5〜95質量%、より好ましくは53〜85質量%である。重合体粉末(b2)の量は、好ましくは0〜33.5質量%、より好ましくは0〜25質量%である。重合体粉末(b3)の量は、好ましくは5〜49.5質量%、より好ましくは15〜47質量%である。
[重合開始剤(C)]
本発明に用いる重合開始剤(C)としては特に限定されず、公知の各種化合物を使用できる。中でも、有機過酸化物、有機ホウ素化合物が好ましい。
有機過酸化物として、例えば、ジアセチルパーオキサイド、ジイソブチルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルネオデカネート、クメンパーオキシネオデカネート等のパーオキシエステル類;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド等の過酸化スルホネート類が挙げられる。
有機過酸化物は、第3級アミン、又は、スルフィン酸もしくはそのアルカリ金属塩類及び第3級アミンと組み合わせてレドックス開始剤として使用しても良い。中でも、ベンゾイルパーオキサイドとN,N−ジメチル−p−トルイジン、ベンゾイルパーオキサイドとN,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジンが好適に使用される。
有機ホウ素化合物としては、例えば、トリアルキルホウ素、アルコキシアルキルホウ素、ジアルキルボラン、部分酸化トリアルキルホウ素、アルキルボラン・アミン錯体を使用できる。
トリアルキルホウ素の具体例としては、トリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリヘプチルホウ素、トリオクチルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素等の炭素数が2〜8のアルキル基を有するトリアルキルホウ素が挙げられる。アルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基のいずれであってもよく、トリアルキルホウ素に含まれる3つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
アルコキシアルキルホウ素の具体例としては、ブトキシジブチルホウ素等のモノアルコキシジアルキルホウ素、ジアルコキシモノアルキルホウ素が挙げられる。アルコキシアルキルホウ素が有するアルキル基と、そのアルコキシ基のアルキル部とは同一であっても異なっていてもよい。
ジアルキルボランの具体例としては、ジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボランが挙げられる。ジアルキルボランが有する2つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。また、ジアルキルボランに含まれる2つのアルキル基は結合して単環構造あるいはビシクロ構造を形成していてもよい。このような化合物としては、例えば9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンがある。
部分酸化トリアルキルホウ素とは、トリアルキルホウ素の部分酸化物である。中でも、部分酸化トリブチルホウ素が好ましい。トリアルキルホウ素1モルに対して付加する酸素の量は、好ましくは0.3〜0.9モル、より好ましくは0.4〜0.6モルである。
アルキルボラン・アミン錯体の具体例としては、トリエチルボラン・ジアミノプロパン(TEB−DAP)、トリエチルボラン・ジエチレントリアミン(TEB−DETA)、トリ−n−ブチルボラン・3−メトキシプロピルアミン(TnBB−MOPA)、トリ−n−ブチルボラン・ジアミノプロパン(TnBB−DAP)、トリ−sec−ブチルボラン・ジアミノプロパン(TsBB−DAP)、メチルアミノエトキシジエチルボラン(MAEDEB)、メチルアミノエトキシジシクロヘキシルボラン(MAEDCB)及びこれらから誘導された誘導体が挙げられる。これらアルキルボラン・アミン錯体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
アルキルボラン・アミン錯体が重合開始剤(C)として使用される場合、さらにモノマー(A)とともに脱錯化剤を使用することが好ましい。明細書中で用いられる用語の「脱錯化剤」とは、アルキルボラン・アミン錯体からアルキルボランを遊離できる化合物を称し、そのアルキルボランの遊離によって重合反応の開始を可能にする。
適切な脱錯化剤としては、例えば、任意の酸、又は酸性基を有するモノマー(前述のモノマー(A)として使用される酸性基を有するモノマー)を使用できる。好適な酸としては、ルイス酸(例えば、SnCl、TiCl等)、ブレンステッド酸(例えば、カルボン酸類、HCl、HSO、HPO、ホスホン酸、ホスフィン酸、ケイ酸等)等が挙げられる。好適なカルボン酸類としては、一般式R−COOHで示されるものが挙げられ、この式中、Rは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)、炭素数2〜8のアルケニル基(好ましくは炭素数2〜4のアルケニル基)、炭素数2〜8のアルキニル基(好ましくは炭素数2〜4のアルキニル基)、又は炭素数6〜10のアリール基(好ましくは炭素数6〜8のアリール基)を示す。Rにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、直鎖状であってもよく、又は分枝状であってもよい。Rにおける脂肪族基は飽和であってもよく、又は不飽和であってもよい。Rにおけるアリール基は、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子などの置換基で置換されていてもよく、無置換であってもよい。上記一般式で表されるカルボン酸の例示となる酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸、安息香酸及びp−メトキシ安息香酸が挙げられる。酸性基を有するモノマーの具体例としては、前述のモノマーAの項で述べたとおりであるが、中でも、4−メタアクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物が好ましい。
これら有機ホウ素化合物の中でも、トリブチルホウ素あるいは部分酸化トリブチルホウ素が好ましく、部分酸化トリブチルホウ素がより好ましい。トリブチルホウ素、部分酸化トリブチルホウ素を有機ホウ素化合物として用いた場合には、操作性が良くなるだけでなく、水分を有する生体に対して適切な反応性を有する傾向にある。また、トリブチルホウ素、部分酸化トリブチルホウ素を有機ホウ素化合物として用いた場合には、生体の様に水分が多い場所でも反応が開始し、反応が進むために、接着剤と生体との界面においてモノマーが残存しにくく、そのため生体への為害性が極めて少ない。これら有機ホウ素化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
有機ホウ素化合物は、さらに非プロトン性溶媒を含んでもよい。非プロトン性溶媒により、有機ホウ素化合物が希釈されると、発火性を有する有機ホウ素化合物の発熱性がより穏やかになり、発火性を抑制し、搬送時、保存時、混合時の取扱いが容易になる。また、急激な発熱を抑制できるので、極めて多量の硬組織補修用組成物を使用する場合でも、硬組織補修用組成物と接する組織へのダメージが少なくなる傾向にある。非プロトン性溶媒の1気圧における沸点は、通常30℃〜150℃であり、好ましくは50℃〜120℃である。沸点が上記範囲未満である場合には、搬送時あるいは保存中に重合開始剤から非プロトン性溶媒が揮発、飛散等してしまい、有機ホウ素化合物の発火抑制効果が低下してしまう傾向にある。また、沸点が上記範囲を超える場合には、本発明の硬組織補修用組成物から形成される硬化物への非プロトン性溶媒の残存が多くなり、硬化物の患部に対する接着強さ及び曲げ弾性率、引張り強さ、圧縮強度、曲げ強さ等の物性が乏しくなる傾向にある。
非プロトン性溶媒としては、有機ホウ素化合物と反応するヒドロキシ基、メルカプト基等の活性水素を含有する基を有さず、有機ホウ素化合物と均一な溶液を形成しうる溶媒が好ましい。
非プロトン性溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素;フルオロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、いわゆるフロン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステルが挙げられる。これらの中でもペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素、エーテル、及びエステルが好ましく、ヘキサン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチルがより好ましい。これら非プロトン性溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
非プロトン性溶媒の含有量は、有機ホウ素化合物100質量部に対し、好ましくは30〜80質量部である。非プロトン性溶媒の含有量が上記範囲未満の場合には、十分な希釈効果が得られず、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、非プロトン性溶媒の含有量が上記範囲を超えてしまう場合には、重合開始剤(C)の重合開始能を低下させる傾向にある。
有機ホウ素化合物は、非プロトン性溶媒に加えて、又は非プロトン性溶媒に替えてアルコールを含んでもよい。有機ホウ素化合物にアルコールが添加されたことにより、有機ホウ素化合物による反応が重合活性を低下させることなくさらに穏やかになり、空気中で紙等に触れても焦げや発火を抑制しやすくなる傾向にある。
アルコールの1気圧における沸点は、通常60℃〜180℃であり、好ましくは60℃〜120℃である。沸点が上記範囲未満である場合には、搬送あるいは保存中に重合開始剤組成物から非プロトン性溶媒が揮発、飛散等してしまい、有機ホウ素化合物の発火抑制効果が低下してしまう傾向にある。また、沸点が上記範囲を超える場合には、本発明の硬組織補修用組成物の硬化時間が長くなる傾向にあり、硬化物の患部に対する接着強さ及び曲げ弾性率、引張り強さ、圧縮強度、曲げ強さ等の物性が乏しくなる傾向にある。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びその異性体、n−ブタノール及びその異性体、n−ペンタノール及びその異性体、n−ヘキサノール及びその異性体、n−ヘプタノール及びその異性体等が挙げられる。中でも、炭素数4以下のアルコール、すなわちメタノール、エタノール、n−プロパノール及びその異性体、並びにn−ブタノール及びその異性体が好ましく、エタノール及びn−プロパノールがより好ましい。これらアルコールは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
アルコールの含有量は、有機ホウ素化合物100質量部に対し、通常0.01〜40質量部、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部である。アルコールの含有量が、上記範囲未満の場合には、十分な希釈効果が得られず、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、アルコールの含有量が、上記範囲を越える場合には、重合開始剤の重合開始能を必要以上に低下させる傾向がある。
アルコールと非プロトン性溶媒とを併用する場合には、非プロトン性溶媒の含有量は、有機ホウ素化合物100質量部に対し、好ましくは5〜40質量部であり、より好ましくは10〜30質量部、さらに好ましくは10〜25質量部である。非プロトン性溶媒の含有量が、上記範囲未満の場合には、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、非プロトン性溶媒の含有量が、上記範囲を越える場合には、重合開始剤(C)の重合開始能を低下させる傾向がある。
重合開始剤(C)の配合量は、モノマー(A)、重合体粉末(B)、及び重合開始剤(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1.0〜7.0質量部、特に好ましくは2.1〜4.3質量部である。重合開始剤(C)の配合量が上記範囲未満である場合には、重合が進行しにくくなり、硬化時間が遅くなる傾向にある。重合開始剤(C)の配合量が上記範囲を超える場合には、希釈により粘度を低下させてしまう可能性、安全性に悪影響を及ぼす可能性があり、また急激な重合が進行し速やかに重合硬化物が形成されることも想定される。
[造影剤(X)]
本発明の硬組織補修用組成物は、造影剤(X)を含んでも良い。造影剤(X)の体積平均粒径は、好ましくは0.15〜25.1μm、より好ましくは0.45〜18.0μmである。
造影剤(X)の種類は特に限定されないが、硫酸バリウム、酸化ジルコニア、炭酸ビスマス、タングステン酸カルシウム、イットリビウム、ヨウ素化合物が挙げられる。中でも、硬組織用途、特に骨セメントとしての使用実績がある点から、硫酸バリウム、酸化ジルコニアが好ましい。
造影剤(X)の配合量は、モノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0〜70質量部、より好ましくは0〜45質量部、特に好ましくは2.5〜33.8質量部、最も好ましくは4.5〜22.5質量部である。
[抗菌薬粒子(Y)]
本発明の硬組織補修用組成物は、抗菌薬粒子(Y)を含む。抗菌薬の具体例としては、抗生物質、元素ヨウ素、固体ポリビニルピロリドンヨウ素、ポリビニルピロリドンヨウ素;トリブロモフェノール、トリクロロフェノール、テトラクロロフェノール、ニトロフェノール、3−メチル−4−クロロ−フェノール、3,5−ジメチル−4−クロロフェノール、フェノキシエタノール、ジクロロフェン、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、2,4−ジクロロ−3,5−ジメチルフェノール、4−クロロチモール、クロルフェン、トリクロサン、フェンチクロール、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−n−アミルフェノール、4−tert−アミルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−n−ヘプチルフェノール、モノアルキルハロフェノール、ポリアルキルハロフェノール、芳香族ハロフェノール、並びにそれらのアンモニウム塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等のフェノール化合物;硝酸銀、ヘキサクロロフェン、メルブロミンが挙げられる。中でも、抗生物質が好ましい。
抗生物質とは、微生物が産生する物質又は化学的に合成した物質のうち他の微生物の発育を阻害する物質である。さらに、この抗生物質の定義には、微生物の産生物質又は化学的に合成した物質を化学的に変換したものも含まれる。
抗生物質の具体例としては、ゲンタマイシン、ゲンタマイシン硫酸塩、トブラマイシン、トブラマイシン硫酸塩、アミカシン、アミカシン硫酸塩、ジベカシン、ジベカシン硫酸塩、バンコマイシン、バンコマイシン塩酸塩、ダプトマイシン、アルベカシン、アルベカシン硫酸塩、ホスホマイシン、セファゾリン、セファゾリンナトリウム塩、ミノサイクリン、クリンダマイシン、コリスチン、リネゾリド、テトラサイクリン塩酸塩、テトラサイクリン水和物、オキシテトラサイクリン及びエリスロマイシンが挙げられる。中でも、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ジベカシン、バンコマイシン、ダプトマイシン、及びこれらの薬理学的に許容できる塩からなる群から選択される1種以上の抗生物質を含むことが好ましい。
ダプトマイシン及びダプトマイシンの薬理学的に許容できる塩が抗菌薬(Y)として使用される場合、さらに、後述の無機充填剤のうち、特にカルシウム徐放性を有するフィラーとともに使用することが望ましい。カルシウム元素又はイオンと結合したダプトマイシン誘導体が、細菌の細胞膜に侵入・結合することにより、細胞膜での脱分極が進行し、膜電位を喪失させることにより細菌を死に至らしめることから、抗菌性が向上する傾向がある。これらカルシウム徐放性フィラーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
抗菌薬粒子(Y)の体積平均粒径は、好ましくは15μm未満であり、より好ましくは1.0μm以上15μm未満、特に好ましくは2.5μm以上15μm未満である。抗菌薬粒子(Y)の平均粒径があまり大き過ぎないことは、硬組織補修用組成物の硬化物について機械的強度の低下を抑制できる点で有利である。
抗菌薬粒子(Y)の配合量はその種類に応じて適宜決定すれば良いが、モノマー(A)、重合体粉末(B)及び重合開始剤(C)の合計100質量部に対して、好ましくは1.0〜30質量部、より好ましくは1.2〜25質量部、特に好ましくは1.4〜20質量部である。
[その他成分]
本発明の硬組織補修用組成物は、必要に応じて、重合禁止剤を含んでも良い。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン等のハイドロキノン化合物類や、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール類、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びt−ブチルヒドロキノンが挙げられる。中でも、ハイドロキノンモノメチルエーテルと2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの混合物が好ましい。また、それ自体の安定性の点から、ハイドロキノンモノメチルエーテルが好ましい場合もある。重合禁止剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
重合禁止剤の添加量は、硬組織補修用組成物全量に対して、好ましくは1〜1500ppm、より好ましくは5〜1000ppm、特に好ましくは5〜500ppmである。また、重合禁止剤の添加量は、モノマー(A)に対して、10〜5000ppm、より好ましくは25〜1000ppm、特に好ましくは25〜500ppmである。
本発明の硬組織補修用組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤を含んでも良い。紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−sec−ブチル−5’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−ドデシル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾールと2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾール−2−イルフェノール]との混合物、2−[3’−tert−ブチル−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)−2’−ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコール300とのエステル交換反応生成物、[[R−CH2CH2−COOCH232−(式中、R=3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシ−5’−2H−ベンゾトリアゾール−2−イルフェニル)等のベンゾトリアゾール化合物;
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−デシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン及び2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;
サリチル酸4−tert−ブチルフェニル、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチルフェニル、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−tert−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、及び安息香酸2−メチル−4,6−ジ−tert−ブチルフェニル、及び安息香酸3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート;
セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、コハク酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)n−ブチル−3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロネート、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−第三−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−s−トリアジンとの縮合生成物、トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラオエート、1,1’−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−n−ブチル−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三−ブチルベンジル)マロネート、3−n−オクチル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、セバシン酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、コハク酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−モルホリノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合生成物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンとの縮合生成物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンとの縮合生成物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアゾスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、及び3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、及び3−ドデシル−1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン等のヒンダードアミン化合物;
4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’−ジエトキシオキサニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサルアミド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキサニリドと2−エトキシ−2’−エチル−5,4’−ジ−tert−ブチルオキサニリドとのその混合物、o−及びp−メトキシ−、並びにo−及びp−エトキシ−二置換オキサニリドの混合物等のオキサルアミド化合物;
2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ブチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、及び2−[4−ドデシル/トリデシルオキシ−(2−ヒドロキシプロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物;
例えば、トリフェニルホスフィット、ジフェニルアルキルホスフィット、フェニルジアルキルホスフィット、トリス(ノニルフェニルホスフィット)、トリラウリルホスフィット、トリオクタデシルホスフィット、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフィット、トリス−(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ホスフィット、ジイソデシルペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−イソデシルオキシペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス(2,4,6−トリ−第三−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、トリステアリルソルビチルトリホスフィット、テトラキス(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、6−イソオクチルオキシ−2,4,8,10−テトラ−第三ブチル−12H−ジベンゾ[d、g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、6−フルオロ−2,4,8,10−テトラ−第三−ブチル−12−メチルジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスフィット及びビス(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスフィット等のホスフィット化合物又はホスホナイト化合物等が挙げられる。中でも、ベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、モノマー(A)に対して、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは800ppm以下、特に好ましくは500ppm以下である。このように紫外線吸収剤を添加することにより、モノマーを含む液の着色が抑制され、モノマー自体の保存安定性が向上する傾向にある。
その他成分の例としては、さらに軟質剤、可塑剤が挙げられる。
軟質剤としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム等のゴム、熱可塑性エラストマー等のエラストマーが挙げられる。このような軟質剤により硬組織補修用組成物の柔軟性を高めることができる。合成ゴムとしては、例えば、EPT(エチレン・プロピレン・ターポリマー)等が挙げられる。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びウレタン系エラストマーが挙げられる。エラストマーの分子量は、通常1000〜100万、好ましくは2000〜50万である。また上記エラストマーのガラス転移点(Tg)は、通常20℃以下、好ましくは0℃以下である。
可塑剤としては、クエン酸エステル、イソクエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、グリセリン酸エステル及びグリコール酸エステル等のヒドロキシカルボン酸エステル;トリメリト酸トリメチル、ジ安息香酸ジエチレングリコール、マロン酸ジエチル、o−アセチルクエン酸トリエチル、フタル酸ベンジルブチル、ジ安息香酸ジプロピレングリコール、アジピン酸ジエチル、o−アセチルクエン酸トリブチル、セバシン酸ジメチル、並びにアルキレングリコールジエステル、等が挙げられる。
軟質剤及び可塑剤の添加量は、材料の種類によって適宜選択されるが、通常、硬組織補修用組成物全体の中で、通常0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%含有するように用いられる。
その他成分の例としては、さらに保存剤が挙げられる。保存剤の具体例としては、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、ブチルパラベン;クレゾール、クロロクレゾール;レゾルシノール、4−n−ヘキシルレゾルシノール、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−2−((トリクロロメチル)チオ)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン;塩化ベンズザルコニウム、塩化ベンザルコニウムナトリウム、塩化ベンゼトニウム;安息香酸、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、o−フェニルフェノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモール、ホウ酸フェニル水銀や硝酸フェニル水銀や酢酸フェニル水銀等のフェニル水銀化合物、ホルムアルデヒドが挙げられる。
その他成分の一例としては、さらに鎮痛薬、鎮痛薬の配合物、食欲抑制薬、抗蠕虫薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗鬱薬、抗利尿薬、下痢止め薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗偏頭痛薬剤、制嘔吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経興奮剤、心臓血管用薬剤、抗不整脈薬、抗高血圧薬、利尿薬、血管拡張剤、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、覚醒薬、鎮静剤、精神安定剤、コリン作用薬、化学療法薬、放射性医薬品、骨誘導性薬、膀胱静止性のヘパリン中和剤、凝血原、止血剤、キサンシン誘導体、ホルモン、天然由来又は遺伝子工学によって合成されたタンパク質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗原、バソプレシン、バソプレシン類似体、エピネフリン、セレクチン、凝血促進性の毒物、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、血小板活性剤、骨形成因子、骨成長因子、止血作用を有する合成ペプチド、及びその他の薬学的又は治療的成分が挙げられる。なお、これら成分を含むことにより、本発明の硬組織補修用組成物は、ドラッグ・デリバリー・システムや再生医療用途にも用いることができる。
多糖類としては、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、アカルボース、スタキオース、デンプン、グリコーゲン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、グルカン、キシログルカン、フルクタン、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、ヒアルロン酸、ペクチン、グルコマンナン、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、プルラン並びにこれらから誘導された誘導体及び/又は薬理学的に許容できる塩が挙げられる。これら多糖類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用でき、特に、後述のカルシウム徐放性を有するフィラーとともに使用される場合、生体への為害性を低減する傾向にある。
硬組織補修用組成物には、さらに組織修復の促進等を目的として骨形成因子、骨成長因子、及びその他の薬学的又は治療的成分等を含ませてもよい。
その他成分の一例としては、さらに、レンジ油、グレープフルーツ油、レモン油、ライム油、丁子油、ウインターグリーン油、ペパーミント油、ペパーミントスピリット、バナナ留出物、キュウリ留出物、蜂蜜留出物、ローズウオータ、メントール、アネトール、サリチル酸アルキル、ベンズアルデヒド、グルタミン酸一ナトリウム、エチルバニリン、チモール、及びバニリン等の香料が挙げられる。
その他成分の一例としては、さらに、周辺の骨組織等との視覚的な区別の明瞭化、密着性の向上、圧縮強度等物性の強化、活性ラジカル種の補足による周辺の骨組織等への為害性の低減のために無機充填剤(ただし、前述のX線造影剤を除く)、有機充填剤、有機複合フィラー、着色剤等が含まれていてもよい。
無機充填剤としては、例えば、ビスマス酸化物、チタン酸化物、酸化亜鉛、酸化アルミニウム粒子等の金属酸化物粉末;リン酸ジルコニウム等の金属塩粉末;シリカガラス、アルミニウム含有ガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ジルコニウムシリケートガラス等のガラスフィラー;銀徐放性を有するフィラー、カルシウム徐放性を有するフィラー:及びフッ素徐放性を有するフィラーが挙げられる。硬化後の無機充填剤とモノマー(A)との間で強固な結合を形成する観点からは、シラン処理、ポリマーコート等の表面処理を施した無機充填剤を使用することが好ましい。これら無機充填剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
カルシウム徐放性を有するフィラーとしては、例えば、りん酸二水素カルシウム、りん酸二水素カルシウム一水和物、りん酸水素カルシウム、りん酸水素カルシウム二水和物、りん酸三カルシウム、りん酸八カルシウム、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、塩素アパタイト、炭酸含有水酸アパタイト、グルコン酸カルシウム、グルクロン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水塩、α−りん酸三カルシウム、β−りん酸三カルシウムが挙げられる。これらカルシウム徐放性を有するフィラーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用でき、前述のダプトマイシン及びダプトマイシンの薬理学的に許容できる塩が抗菌薬(Y)として使用され、これらカルシウム徐放性を有するフィラーととともに使用される場合抗菌性が向上する傾向がある。さらに、前述の多糖類とともに使用される場合、生体への為害性を低減する傾向にある。
着色剤としては、例えば、赤色2号及びそのアルミニウムレーキ、赤色3号及びそのアルミニウムレーキ、赤色102号及びそのアルミニウムレーキ、赤色104号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、またはバリウムレーキ、赤色105号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、赤色106号及びそのアルミニウムレーキ、黄色4号及びそのアルミニウムレーキ、またはバリウムレーキ、またはジルコニウムレーキ、黄色5号及びそのアルミニウムレーキ、またはバリウムレーキ、またはジルコニウムレーキ、緑色3号及びそのアルミニウムレーキ、青色1号及びそのアルミニウムレーキ、またはバリウムレーキ、またはジルコニウムレーキ、青色2号及びそのアルミニウムレーキ、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号及びそのアルミニウムレーキ、赤色228号、赤色230号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、赤色230号の(2)及びそのアルミニウムレーキ、赤色231号及びそのアルミニウムレーキ、赤色232号及びそのアルミニウムレーキ、だいだい色201号、だいだい色203号、だいだい色204号、だいだい色205号及びそのアルミニウムレーキ、またはバリウムレーキ、またはジルコニウムレーキ、だいだい色206号、だいだい色207号及びそのアルミニウムレーキ、黄色201号、黄色202号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、黄色202号の(2)及びそのアルミニウムレーキ、黄色203号及びそのアルミニウムレーキ、またはバリウムレーキ、またはジルコニウムレーキ、黄色204号、黄色205号、緑色201号及びそのアルミニウムレーキ、緑色202号、緑色204号及びそのアルミニウムレーキ、緑色205号及びそのアルミニウムレーキ、またはジルコニウムレーキ、青色201号、青色202号及びそのバリウムレーキ、青色203号、青色204号、青色205号及びそのアルミニウムレーキ、褐色201号及びそのアルミニウムレーキ、紫色201号、赤色401号及びそのアルミニウムレーキ、赤色404号、赤色405号、赤色501号、赤色502号及びそのアルミニウムレーキ、赤色503号及びそのアルミニウムレーキ、赤色504号及びそのアルミニウムレーキ、赤色505号、赤色506号及びそのアルミニウムレーキ、だいだい色401号、だいだい色402号及びそのアルミニウムレーキ、またはバリウムレーキ、だいだい色403号、黄色401号、黄色402号及びそのアルミニウムレーキ、黄色403号の(1)及びそのアルミニウムレーキ、黄色404号、黄色405号、黄色406号及びそのアルミニウムレーキ、黄色407号及びそのアルミニウムレーキ、緑色401号、緑色402号及びそのアルミニウムレーキ、またはバリウムレーキ、青色403号、青色404号、紫色401号及びそのアルミニウムレーキ、黒色401号及びそのアルミニウムレーキ、クロロフィル、クロロフィリン、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、コバルトフタロシアニン、カロテン、ビタミンB12及びこれらから誘導された誘導体が挙げられる。これら着色剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
着色剤の添加量はその種類に応じて適宜決定すれば良いが、重合体粉末(B)、重合開始剤(C)、造影剤(X)及び抗菌薬粒子(Y)の合計100質量部に対して、通常0〜5質量部、好ましくは0〜2質量部、より好ましくは0〜1質量部である。
[硬組織補修用組成物]
本発明の硬組織補修用組成物は、モノマー(A)、重合体粉末(B)、重合開始剤(C)、造影剤(X)、抗菌薬粒子(Y)及びその他必要に応じて含まれる成分を混合して調製される。その組成物は患部に適用することにより使用できる。なお、本発明において「硬組織補修用組成物」とは、硬組織同士の接着、硬組織内への充填、硬組織とチタン、セラミックス、ステンレス等の人工物との接着、硬組織と軟組織等の他の組織との接着に用いられるものであって、歯と充填物との接着(即ち、歯科用途)は含まない。
これら各成分を混合する際には、混合される順序は限定されないが、得られる硬組織補修用組成物の安定性がより優れるという点では、まずモノマー(A)及び重合開始剤(C)を混合し、続いて造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)を混合することが好ましく、モノマー(A)、重合開始剤(C)、及び、造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)を同時に混合することがより好ましい。
本発明の硬組織補修用組成物が重合禁止剤を含む場合は、得られる組成物の安定性がより優れるという点から、まずモノマー(A)と重合禁止剤の混合物、及び重合開始剤(C)を混合し、続いて造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)を混合することが好ましく、モノマー(A)と重合禁止剤の混合物、重合開始剤(C)、及び造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)を同時に混合することがより好ましい。
本発明の硬組織補修用組成物を硬化する前、ドライ・ヒート、スチーム、エチレンオキサイド(EO)、過酸化水素等のガス、濾過、液体等による処理により、滅菌してもよい。また、硬組織補修用組成物を患部に充填する前に、あらかじめ患部表面をアルコール等の消毒液で消毒してもよい。さらに、硬組織補修用組成物を患部に充填する前に、患部との密着性を改善すること等を目的として、前処理を行ってもよい。前処理用の液としては、例えば、生理食塩水等が挙げられる。
[硬組織補修用キット]
本発明の硬組織補修用組成物が長期にわたり形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう恐れがある場合には、モノマー(A)、重合体粉末(B)、重合開始剤(C)、造影剤(X)、抗菌薬粒子(Y)及びその他必要に応じて含まれる成分からなる硬組織補修に用いる全成分を、単独であるいは任意の組合せで分割して3つ以上の部材に収納した硬組織補修用キットとして保存し、使用前に混合して硬組織補修用組成物とすることができる。収納用の部材としては、モノマー(A)や重合開始剤(C)の揮散、飛散を防ぐために、例えば、ガスバリヤー性がある密閉可能な樹脂容器、あるいはガラスアンプル等がある。重合体粉末(B)の収納用の部材としては、吸湿を防ぐための密閉の良好な樹脂及びガラス製容器、又はエチレンオキサイド(EO)、過酸化水素等のガスによる滅菌を行うための樹脂製不織布や滅菌紙が挙げられる。
上記成分を保存する方法としては、例えば、モノマー(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合開始剤(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の3つに分割して保存する方法が好ましい。それ以外にも、例えば、モノマー(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、造影剤(X)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、抗菌薬粒子(Y)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合開始剤(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の5つに分割して保存する方法、モノマー(A)、造影剤(X)、抗菌薬粒子(Y)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、重合開始剤(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の3つに分割して保存する方法も可能である。
これら分割された成分は別々の部材、例えばアンプル等の容器等に入れられ、硬組織補修用キットに収容されて製品として提供できる。
硬組織補修用キットは、保管により形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう恐れがない限りその構成に特に制限はないが、モノマー(A)、造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、及び重合開始剤(C)がそれぞれ別個に収納されており、まずモノマー(A)と重合開始剤(C)とが混合され、続いて造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物が混合される構成を有することが好ましく、モノマー(A)と造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、並びに、重合開始剤(C)が同時に混合される構成を有することがより好ましい。このような構成とすることで、より安定した性能を有する硬組織補修用組成物が得られ易い。
硬組織補修用キットとしては、例えば、モノマー(A)、造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)、及び重合開始剤(C)がそれぞれ別個に収納された部材(例えば、樹脂製容器、ガラス製アンプル等)と、これらを収納された部材から取り出し混合するための部材(例えば、セメントガン、混合容器、混合皿、セメント注入器、シリンダー等)とを有するキットが挙げられる。
キットとしては、例えば、モノマー(A)、造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)、及び重合開始剤(C)が、一つの混合容器内の隔壁又はスペーサーにより3以上に分離されたチャンバー内にそれぞれ別個に収納され、隔壁の破壊、移動、又はスペーサーの除去により混合容器にあらかじめ設計されたバイパスをモノマー(A)及び重合開始剤(C)が通過し、造影剤(X)と抗菌薬粒子(Y)が配合された重合体粉末(B)と接触し、あらかじめ設置された撹拌翼を操作することで混合が可能な撹拌ユニットを有するキットが挙げられる。
3以上に分離されたチャンバー内に各成分が収納された一つの混合容器からなるキットは、本発明の組成物を二つ以上の部材、典型的には各容器に分割して使用直前に混合して使用する方法と比較して煩雑さが低減し、さらに、混合容器から直接組成物を注入できるセメントガン等の治具により患部に直接充填することができ、手技的かつ経済的に有用である。
また、重合開始剤(C)成分の一部又は全部を、あらかじめ、硬組織補修用組成物を骨、軟骨等の硬組織等の患部や軟組織、その他チタン、セラミックス、ステンレス等の人工物に塗布する際に使用する治具に含有させ、使用直前にモノマー(A)又はモノマー(A)と重合禁止剤とを含む混合物、重合体粉末(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分と治具とを接触させて、本発明の硬組織補修用組成物をその場で調製し、そのまま患部に充填することもできる。
患部に充填する治具としては、例えば、セメントガン等が挙げられる。
なお、上述の硬組織補修用キット等には、上述したアルコール等の消毒液、密着性を改善すること等を目的とした前処理用のための溶液等が含まれていてもよい。
さらに上述のキット等で保存する場合には、好ましくは各成分が変質しない(例えば、モノマーが硬化しない)条件で、可視光等の電磁波等により滅菌処理してもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する、ただし、本発明はこれら実施例に限定されない。
(1)比表面積
重合体の比表面積は、前処理として室温での真空脱気を行い、装置BELSORP−mini(マイクロトラックベル社製)を用いて、液体窒素温度下における窒素ガス吸着法にて測定した。
(2)重量平均分子量(Mw)
重合体の重量平均分子量(Mw)は、重合体を試薬特級テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製)に溶解させ、この溶液を疎水性0.45μmポリテトラフルオロエチレン製フィルターで濾過したものを、島津製作所製高速液体クロマトグラフィーLC−10AD、分離カラムPLgel(10μm)MIXED−B×2、検出器Shodex社製RI−101を用いて測定した(標準ポリスチレン換算)。
(2)体積平均粒径D50
重合体、造影剤及び抗菌薬粒子(Y)の体積平均粒径は、分散溶媒として試薬特級メタノール(溶媒屈折率1.33)(和光純薬工業社製)又は、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液(溶媒屈折率1.33)(和光純薬工業社製)を使用し、装置内臓超音波ホモジナイザーで5分間(出力25W)にて分散させ、装置Loading Index適量範囲内の濃度条件において、循環速度50%(100%時、65mL/sec)で、Microtrac MT3300EXII(Microtrac社製 粒度分布計)を用いて測定した。
(3)累積溶出量
硬組織補修用組成物の硬化物を、直径6.0mm、長さ3.0mmの円柱状に成型し、0.01mol/Lりん酸緩衝生理食塩水(和光純薬工業社製)10mLに浸漬させ、37℃にて溶出させた抗菌薬の溶出量を、島津製作所製高速液体クロマトグラフィーLC−2030(検出器UV)、分離カラムVP−ODS(島津製作所製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定した。UVラベル化反応及び測定条件の詳細は「Journal of Chromatography B, 753 (2001) 151-156, C. Arcelloni, B. Comuzzi, R. Vaiani, R. Paroni」に準拠した。
[実施例1〜3並びに比較例1及び2]
実施例1〜3並びに比較例1及び2においては、モノマー(A)としてメタクリル酸メチル、重合開始剤(C)として、85質量%の部分酸化トリブチルホウ素と15質量%のエタノール混合物(三井化学社製、品番BC−S1i)(重合開始剤(C)の合計を100質量%とする)又は過酸化ベンゾイル(BPO)(Aldrich社製、商品名Luperox(登録商標)A75)、造影剤(X)として硫酸バリウム(堺化学工業社製)、抗菌薬粒子(Y)として硫酸ゲンタマイシン(和光純薬工業社製、力価=654μg/mg、体積平均粒径D50=10.7μm)を用いた。
重合体(b1)としては、ポリメチルメタクリレート(比表面積=0.32m/g、Mw=14.8万、体積平均粒径D50=76.3μm)、ポリメチルメタクリレート(比表面積=0.11m/g、Mw=14.8万、体積平均粒径D50=108.1μm)、ポリメチルメタクリレート(比表面積=0.17m/g、Mw=14.8万、体積平均粒径D50=42.0μm)を用いた。
重合体(b2)としては、ポリメチルメタクリレート(比表面積=0.92m/g、Mw=13.2万、体積平均粒径D50=8.0μm)を用いた。
重合体(b3)としては、ポリメチルメタクリレート(比表面積=2.9m/g、Mw=43.9万、体積平均粒径D50=22.2μm)を用いた。
そして、表1及び2に示す配合比であらかじめ重合体粉末(B)、造影剤(X)及び抗菌薬粒子(Y)を均一に分散させた混合物と、50mLガラス製サンプル管内で、表1及び2に示す配合比であらかじめ混合させておいたモノマー(A)と重合開始剤(C)とを、ポリプロピレン製容器(松風社製、商品名トレーレジン混和器)及びシリコンゴム製のヘラを用いて、23℃で60秒間混合し、適切な静置時間の経過後、糸引きがなくなり軟塊状となった硬組織補修用組成物を得た。その組成物を用いて抗菌薬の累積溶出量の測定を行った。結果を表1及び2に示す。
なお、表中の各成分の括弧書きで示す配合比は、成分(A)〜(C)の合計100質量部を基準とする比率(質量部)である。また、成分(b1)、(b2)及び(b3)の配合比は、重合体粉末(B)100質量%を基準とする比率(質量%)である。また、成分(C)の「BC−S1i」は上述の85質量%の部分酸化トリブチルホウ素と15質量%のエタノール混合物、「BPO」は上述の過酸化ベンゾイルを意味する。
Figure 2019111015
Figure 2019111015
表1及び2に示すとおり、体積平均粒径40μm以上の重合体粉末(B)を使用した実施例1〜3の硬組織補修用組成物は、抗菌薬の溶出量に優れていた。この硬組織補修用組成物は、患者の治療に使用した場合に感染症予防の十分な効果が期待できる。
本発明の硬組織補修用組成物は、硬組織同士の接着、硬組織内への充填、硬組織とチタン、セラミックス、ステンレス等の人工物との接着、硬組織と軟組織等の他の組織との接着、骨、軟骨等の硬組織と人工関節との固定用等に用いる骨セメント、骨の欠損部への充填材、骨補填材、人工骨等に有用である。
さらに、本発明の硬組織補修用組成物は抗菌薬粒子(Y)を含むので、医療用のセメントスペーサーやセメントビーズの成形材料としても有用である。例えば、人工関節手術後に患部の感染が生じてしまった場合、挿入した人工関節を抜去することがある。この抜去により生じた隙間を埋めるためには、通常、抗生薬入りのセメントスペーサーが用いられる。また、人工関節を抜去せずに、デブリードマン(壊死組織の除去及び洗浄)のみを行い、抗菌薬入りセメントビーズを埋め込む場合もある。さらに、屈曲可能なスぺーサーを用いた報告もある。例えば、本発明の硬組織補修用組成物を成形型内で硬化することにより、所望の形状のセメントスペーサーやセメントビーズが得られる。

Claims (9)

  1. モノマー(A)、体積平均粒径40μm以上の重合体粉末(B)、重合開始剤(C)、及び、抗菌薬粒子(Y)を含む硬組織補修用組成物。
  2. 抗菌薬粒子(Y)の体積平均粒径が15μm未満である請求項1に記載の硬組織補修用組成物。
  3. 抗菌薬が、抗生物質である請求項1又は2に記載の硬組織補修用組成物。
  4. 抗生物質が、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ジベカシン、バンコマイシン、ダプトマイシン、及びこれらの薬理学的に許容できる塩からなる群から選択される1種以上の抗生物質を含む請求項3に記載の硬組織補修用組成物。
  5. モノマー(A)が、(メタ)アクリレート系単量体である請求項1〜4の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
  6. 重合体粉末(B)が、(メタ)アクリレート系重合体である請求項1〜5の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
  7. 造影剤(X)をさらに含む請求項1〜6の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
  8. モノマー(A)10〜45質量部、重合体粉末(B)54.9〜80質量部、重合開始剤(C)0.1〜10質量部(成分(A)〜(C)の合計を100質量部とする)、造影剤(X)0〜70質量部及び抗菌薬粒子(Y)1.0〜30質量部を含む請求項1〜7の何れかに記載の硬組織補修用組成物。
  9. 請求項1に記載の硬組織補修用組成物に含まれるモノマー(A)、重合体粉末(B)、重合開始剤(C)及び抗菌薬粒子(Y)の各成分が、任意の組合せで3つ以上に分割されて収容された部材を有する硬組織補修用キット。
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