JP2020020588A - 試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】破損が抑制された試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法を提供する。【解決手段】試料支持体1Aは、試料Sのイオン化用の試料支持体である。試料支持体1Aは、複数の第1貫通孔2cが形成された第1基板2と、第1基板2の第1表面2aにおいて第1貫通孔2cを塞がないように設けられた導電層3と、第1基板2の導電層3とは反対側に設けられ、複数の第2貫通孔4cが形成された第2基板4と、を備えている。第1貫通孔2c及び第2貫通孔4cは、第1基板2及び第2基板4の厚み方向に延びている。各第2貫通孔4cは、複数の第1貫通孔2cのうち一以上の第1貫通孔2cと連通している。第1貫通孔2cの幅は、第2貫通孔4cの幅よりも小さく、第1貫通孔2cの開口率は、第2貫通孔4cの開口率よりも小さい。【選択図】図2
Description
本発明は、試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法に関する。
従来、生体試料等の試料の質量分析において、試料をイオン化するための試料支持体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような試料支持体は、第1表面、及び、第1表面とは反対側の第2表面に開口する複数の貫通孔が形成された基板を備えている。第2表面が試料に対向するように試料上に試料支持体を配置した場合に、毛細管現象を利用して、基板の第2表面側から貫通孔を介して第1表面側に向けて試料を上昇させることができる。そして、第1表面側に例えばレーザ光などのエネルギー線を照射すると、第1表面側に移動した試料がイオン化される。
上述したような質量分析を薄膜状ではない試料に対して行う場合、試料支持体を試料に接触させた後に試料から剥離し、当該試料支持体をステージ等に配置した後にエネルギー線を照射することが求められることがある。しかしながら、試料支持体の基板は非常に薄いため、試料支持体を試料から剥離する際に、基板が試料に付着して破損してしまうおそれがある。
そこで、本発明の一側面は、破損が抑制された試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る試料支持体は、試料のイオン化用の試料支持体であって、複数の第1貫通孔が形成された第1層と、第1層の表面において第1貫通孔を塞がないように設けられた導電層と、第1層の導電層とは反対側に設けられ、複数の第2貫通孔が形成された第2層と、を備え、複数の第1貫通孔及び複数の第2貫通孔は、第1層及び第2層の厚み方向に延びており、複数の第2貫通孔のそれぞれは、複数の第1貫通孔のうち一以上の第1貫通孔と連通しており、第1貫通孔の幅は、第2貫通孔の幅よりも小さく、第1貫通孔の開口率は、第2貫通孔の開口率よりも小さい。
上記試料支持体は、第1層と、第1層の表面に設けられた導電層と、第1層の導電層とは反対側に設けられた第2層と、を備えている。そして、第1層には、試料支持体の厚み方向に延びる複数の第1貫通孔が形成されており、第2層には、それぞれ厚み方向に延びて一以上の第1貫通孔と連通する複数の第2貫通孔が形成されている。このため、例えば生体試料等の試料上に、第2層の第1層とは反対側の表面が試料に対向するように試料支持体を配置した場合に、第2層の当該表面側から第2貫通孔を介して第1層側に向けて試料(試料の成分)を移動させることができる。そして、毛細管現象を利用して、第1層の第2層側から第1貫通孔を介して第1層の表面側に向けて試料の成分を移動させることができる。さらに、例えばレーザ光等のエネルギー線を第1層の表面に対して照射した場合に、第1層の表面側に移動した試料の成分に導電層を介してエネルギーが伝達されることにより、試料の成分をイオン化することができる。しかも、上述したように、第1層の導電層とは反対側には、第2層が設けられている。これにより、第1層が第2層によって補強されるため、試料支持体が試料から剥離される際における第1層の破損が抑制される。従って、この試料支持体によれば、試料支持体の破損を抑制することができる。
試料支持体は、第1層の第2層とは反対側に設けられ、第1層の周縁部に固定された枠体を更に備えてもよい。この場合、枠体によって試料支持体のハンドリング性を向上させることができる。
第1貫通孔の幅は、1nm〜700nmであり、第1層の厚さは、1μm〜50μmであってもよい。この場合、上述した毛細管現象による試料の成分の移動を適切に実現することができる。
第2貫通孔の幅は、1μm〜1000μmであり、第2層の厚さは、1μm〜3000μmであってもよい。この場合、上述したように、第2層の第1層とは反対側の表面側から第2貫通孔を介して第1層側に向けての試料(試料の成分)の移動、及び第2層による第1層の補強を適切に両立させることができる。
第1層と第2層とは、互いに別体として形成されていてもよい。この場合、第1層と第2層とを互いに別体に設けることで、第1層と第2層との組み合わせの自由度を向上させることができる。
試料支持体は、第1層及び第2層の外縁部に設けられ、第1層及び第2層を挟持する固定部材を更に備えてもよい。この場合、固定部材によって第1層と第2層とを着脱自在に固定することができる。また、例えば、試料支持体を試料から剥離した後、さらに第1層を第2層から剥離して、第1層の表面に対してレーザ光等のエネルギー線を照射することができる。つまり、試料支持体の使用の自由度が向上する。
試料支持体は、第1層及び第2層の間に設けられ、第1層と第2層とを接合する接着層を更に備えてもよい。この場合、第1層と第2層とをより確実に固定することができる。
第1層と第2層とは、同一の材料により一体的に形成されていてもよい。この場合、試料支持体の構造が簡素化される。
上記材料は、陽極酸化されたバルブ金属又は陽極酸化されたシリコンであってもよい。この場合、第1層と第2層とが一体的に形成された構造を陽極酸化のプロセスによって容易に得ることができる。
第1層及び第2層は、可撓性を有していてもよい。試料が非平坦状の表面を有しており、且つ、レーザ光等のエネルギー線を非平坦状の表面に対して照射することが難しい場合においても、適切に試料の成分をイオン化することができる。具体的には、第1層及び第2層が試料の表面に沿うように、試料上に試料支持体を配置することによって、試料の成分を第1層の表面側に移動させることができる。そして、試料支持体を平板状にした後、レーザ光等のエネルギー線を第1層の表面に対して照射することによって、試料の成分をイオン化することができる。
試料支持体は、湾曲形状を呈していてもよい。この場合、試料が非平坦状の表面を有していても、試料の成分を第1層の表面側に移動させることができる。
本発明の他の側面に係る試料支持体は、試料のイオン化用の試料支持体であって、導電性を有し、複数の第1貫通孔が形成された第1層と、第1層の一方側に設けられ、複数の第2貫通孔が形成された第2層と、を備え、複数の第1貫通孔及び複数の第2貫通孔は、第1層及び第2層の厚み方向に延びており、複数の第2貫通孔のそれぞれは、複数の第1貫通孔のうち一以上の第1貫通孔と連通しており、第1貫通孔の幅は、第2貫通孔の幅よりも小さく、第1貫通孔の開口率は、第2貫通孔の開口率よりも小さい。
この試料支持体によれば、導電層を省略することができると共に、上述した導電層を備える試料支持体と同様の効果を得ることができる。
試料支持体は、第1層の第2層とは反対側に設けられた第3層を更に備え、第1層及び第2層は、可撓性を有しており、第3層は、形状記憶材料により形成されていてもよい。試料が非平坦状の表面を有しており、試料を構成する分子の三次元表面分布の画像化が求められる場合がある。一方、レーザ光等のエネルギー線を非平坦状の表面に対して照射することが難しい場合がある。このような場合、第2層の第1層とは反対側の表面が試料に対向し、且つ、試料支持体が試料の表面に沿うように、試料上に試料支持体を配置することによって、試料の成分を第1層の第2層とは反対側に移動させつつ、第3層によって試料の表面形状を記憶することができる。そして、第3層を第1層から剥離し、第3層によって記憶された試料の表面形状を認識することができる。また、第1層及び第2層を平板状にした後、レーザ光等のエネルギー線を第1層の第2層とは反対側の表面に対して照射することにより、試料の成分をイオン化すると共に、イオン化された成分の二次元分布を取得することができる。そして、試料の表面形状とイオン化された成分の二次元分布とを合成することにより、イオン化された成分の三次元表面分布を取得することができる。
本発明の他の側面に係る試料支持体は、試料のイオン化用の試料支持体であって、複数の第1貫通孔が形成された第1層と、第1層の表面において第1貫通孔を塞がないように設けられた導電層と、導電層上に設けられ、複数の第2貫通孔が形成された第2層と、を備え、複数の第1貫通孔及び複数の第2貫通孔は、第1層及び第2層の厚み方向に延びており、複数の第2貫通孔のそれぞれは、複数の第1貫通孔のうち一以上の第1貫通孔と連通しており、第1貫通孔の幅は、第2貫通孔の幅よりも小さく、第1貫通孔の開口率は、第2貫通孔の開口率よりも小さい。
この試料支持体は、第1層と、第1層の表面に設けられた導電層と、導電層上に設けられた第2層と、を備えている。そして、第1層には、試料支持体の厚み方向に延びる複数の第1貫通孔が形成されており、第2層には、それぞれ厚み方向に延びて一以上の第1貫通孔と連通する複数の第2貫通孔が形成されている。このため、例えば生体試料等の試料上に、第1層の第2層とは反対側の表面が試料に対向するように試料支持体を配置した場合に、毛細管現象を利用して、第1層の第2層とは反対側の表面側から第1貫通孔を介して第2層側に向けて試料(試料の成分)を移動させることができる。さらに、例えばレーザ光等のエネルギー線を第1層の第2層側の表面に対して照射した場合に、第1層の第2層側の表面側に移動した試料の成分に導電層を介してエネルギーが伝達されることにより、試料の成分をイオン化することができる。しかも、上述したように、導電層上には、第2層が設けられている。これにより、第1層が第2層によって補強されるため、試料支持体が試料から剥離される際における第1層の破損が抑制される。従って、この試料支持体によれば、試料支持体の破損を抑制することができる。
本発明の一側面に係る試料のイオン化方法は、試料、及び、上記導電層を備える試料支持体を用意する第1工程と、第2層の第1層とは反対側の表面が試料に対向するように、試料上に試料支持体を配置する第2工程と、試料支持体を試料から剥離する第3工程と、導電層に電圧を印加しつつ第1層の表面に対してエネルギー線を照射することにより、試料の成分をイオン化する第4工程と、を含む。
上記試料のイオン化方法では、試料支持体は、第1層と、第1層の表面に設けられた導電層と、第1層の導電層とは反対側に設けられた第2層と、を備えている。そして、第1層には、試料支持体の厚み方向に延びる複数の第1貫通孔が形成されており、第2層には、それぞれ厚み方向に延びて一以上の第1貫通孔と連通する複数の第2貫通孔が形成されている。試料上に、第2層の第1層とは反対側の表面が試料に対向するように試料支持体が配置されると、第2層の当該表面側から第2貫通孔を介して第1層側に向けて試料(試料の成分)が移動する。そして、試料の成分が、第1層の第2層側から第1貫通孔を介して第1層の表面側に向けて移動する。さらに、試料支持体が試料から剥離された後、導電層に電圧が印加されつつ第1層の表面に対してエネルギー線が照射されると、第1層の表面側に移動した試料の成分にエネルギーが伝達される。これにより、試料の成分がイオン化される。このレーザ脱離イオン化方法では、上述したように、第1層の導電層とは反対側には、第2層が設けられている。これにより、第1層が第2層によって補強されるため、試料支持体が試料から剥離される際における第1層の破損が抑制される。従って、この試料のイオン化方法によれば、試料支持体の破損を抑制することができる。
第1層と第2層とは、互いに別体として形成されており、第4工程においては、第1層と第2層とが互いに固定された状態で、導電層に電圧を印加しつつ第1層の表面に対してエネルギー線を照射することにより、試料の成分がイオン化されてもよい。この場合、第4工程においても、第1層が第2層によって適切に補強される。
第1層と第2層とは、互いに別体として形成されており、第3工程においては、試料支持体が試料から剥離された後、第1層が第2層から剥離されてもよい。この場合、第4工程において、第2層に起因する測定ノイズの発生を防止できる。
第1層と第2層とは、同一の材料により一体的に形成されていてもよい。この場合、試料支持体の構造が簡素化される。
上記材料は、陽極酸化されたバルブ金属又は陽極酸化されたシリコンであってもよい。この場合、第1層と第2層とが一体的に形成された構造を陽極酸化のプロセスによって容易に得ることができる。
第2貫通孔の幅は、エネルギー線のスポット径よりも大きくてもよい。この場合、第2貫通孔の幅がエネルギー線のスポット径よりも小さい場合と比較して、試料支持体の厚み方向から見た場合におけるエネルギー線の照射領域と第2層の第2貫通孔間の隔壁部とが重なる部分を低減できる。つまり、エネルギー線の照射領域と第1層における試料の成分が第1表面側に移動しない部分とが重なる部分を低減できる。これにより、試料の成分をより効率的にイオン化することができる。
第3工程においては、試料支持体は、第1層に付着した成分が乾燥する前に試料から剥離されてもよい。この場合、試料支持体と試料とが固着してしまう前に、試料支持体をよりスムーズに試料から剥離することができる。
本発明の他の側面に係る試料のイオン化方法は、試料、及び、導電性を有する上記第1層を備える試料支持体を用意する第1工程と、第2層の第1層とは反対側の表面が試料に対向するように、試料上に試料支持体を配置する第2工程と、試料支持体を試料から剥離する第3工程と、第1層に電圧を印加しつつ第1層の第2層とは反対側の表面に対してエネルギー線を照射することにより、試料の成分をイオン化する第4工程と、を含む。
この試料のイオン化方法によれば、試料支持体において導電層を省略することができると共に、上述したように導電層を備える試料支持体を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
本発明の他の側面に係る試料のイオン化方法は、試料、及び、導電層上に第2層が設けられた上記試料支持体を用意する第1工程と、第1層の第2層とは反対側の表面が試料に対向するように、試料上に試料支持体を配置する第2工程と、試料支持体を試料から剥離する第3工程と、導電層に電圧を印加しつつ第1層の第2層側の表面に対してエネルギー線を照射することにより、試料の成分をイオン化する第4工程と、を含む。
上記試料のイオン化方法では、試料支持体は、第1層と、第1層の表面に設けられた導電層と、導電層上に設けられた第2層と、を備えている。そして、第1層には、試料支持体の厚み方向に延びる複数の第1貫通孔が形成されており、第2層には、それぞれ厚み方向に延びて一以上の第1貫通孔と連通する複数の第2貫通孔が形成されている。試料上に、第1層の第2層とは反対側の表面が試料に対向するように試料支持体が配置されると、第1層の第2層とは反対側の表面側から第1貫通孔を介して第2層側に向けて試料(試料の成分)が移動する。さらに、試料支持体が試料から剥離された後、導電層に電圧が印加されつつ第1層の第2層側の表面に対してエネルギー線が照射されると、第1層の第2層側の表面側に移動した試料の成分にエネルギーが伝達される。これにより、試料の成分がイオン化される。このレーザ脱離イオン化方法では、上述したように、導電層上には、第2層が設けられている。これにより、第1層が第2層によって補強されるため、試料支持体が試料から剥離される際における第1層の破損が抑制される。従って、この試料のイオン化方法によれば、試料支持体の破損を抑制することができる。
本発明の一側面に係る質量分析方法は、上記試料のイオン化方法の各工程と、第4工程においてイオン化された成分を検出する第5工程と、を含む。
上記質量分析方法によれば、試料支持体の破損を抑制しつつ質量分析を行うことができる。
本発明の他の側面に係る質量分析方法は、非平坦状の表面を有する試料、及び、上記第3層を備える試料支持体を用意する第1工程と、第2層の第1層とは反対側の表面が試料に対向し、且つ、試料支持体が試料の非平坦状の表面に沿うように、試料上に試料支持体を配置する第2工程と、第3層によって試料の表面形状を記憶する第3工程と、試料支持体を試料から剥離する第4工程と、第3層によって記憶された試料の表面形状を認識する第5工程と、第1層及び第2層を平板状にした後、第1層の第2層とは反対側に対して、電圧を印加しつつエネルギー線を照射することにより、試料の成分をイオン化する第6工程と、イオン化された成分を検出し、イオン化された成分の二次元分布を取得する第7工程と、試料の表面形状とイオン化された成分の二次元分布とを合成することにより、イオン化された成分の三次元表面分布を取得する第8工程と、を含む。
上記質量分析方法では、試料は、非平坦状の表面を有している。また、試料支持体は、第1層の第2層とは反対側に設けられた第3層を更に備えている。試料上に、第2層の第1層とは反対側の表面が試料に対向し、且つ、試料支持体が試料の表面に沿うように、試料上に試料支持体が配置されると、試料の成分が第1層の表面側に移動する。また、試料支持体が試料の表面に沿うように、試料上に試料支持体が配置された状態で、第3層によって試料の表面形状が記憶される。そして、第3層によって記憶された試料の表面形状が認識される。一方、第1層及び第2層を平板状にした後、第1層の第2層とは反対側に対して、電圧が印加されつつエネルギー線が照射されると、第1層の表面側に移動した試料の成分にエネルギーが伝達される。これにより、試料の成分がイオン化される。そして、イオン化された試料の成分が検出され、イオン化された成分の二次元分布が取得される。さらに、試料の表面形状とイオン化された成分の二次元分布とが合成されることにより、イオン化された成分の三次元表面分布が取得される。以上のように、この質量分析方法によれば、試料支持体の破損を抑制しつつ、非平坦状の表面を有する試料の成分についての三次元表面分布を取得することができる。
本発明の一側面によれば、破損が抑制された試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面に示される各部材(又は部位)の寸法又は寸法の比率は、説明をわかり易くするために、実際の寸法又は寸法の比率とは異なることがある。
[第1実施形態]
[試料支持体の構成]
図1の(a)は、第1実施形態の試料支持体1Aの平面図を示しており、図1の(b)は、試料支持体1Aの底面図を示している。図1及び図2に示されるように、試料支持体1Aは、第1基板(第1層)2と、導電層3と、第2基板(第2層)4と、接着層5と、を備えている。試料支持体1Aは、試料のイオン化用の試料支持体である。試料支持体1Aは、例えば質量分析を行う際に、測定対象の試料の成分をイオン化するために用いられる。
[試料支持体の構成]
図1の(a)は、第1実施形態の試料支持体1Aの平面図を示しており、図1の(b)は、試料支持体1Aの底面図を示している。図1及び図2に示されるように、試料支持体1Aは、第1基板(第1層)2と、導電層3と、第2基板(第2層)4と、接着層5と、を備えている。試料支持体1Aは、試料のイオン化用の試料支持体である。試料支持体1Aは、例えば質量分析を行う際に、測定対象の試料の成分をイオン化するために用いられる。
第1基板2は、第1表面2a、及び第1表面2aとは反対側の第2表面2bを有している。第1基板2には、複数の第1貫通孔2cが一様に(均一な分布で)形成されている。各第1貫通孔2cは、試料支持体1A(すなわち、第1基板2及び第2基板4のそれぞれ)の厚み方向(以下、単に「厚み方向」という。)に延びており、第1表面2a及び第2表面2bに開口している。厚み方向は、第1表面2a及び第2表面2b、並びに後述する第3表面4a及び第4表面4bに垂直な方向である。第1基板2は、例えば、絶縁性材料によって長方形板状に形成されている。厚み方向から見た場合における第1基板2の一辺の長さは、例えば数cm程度であり、第1基板2の厚さは、例えば1μm〜50μm程度である。本実施形態では、第1基板2の厚さは、5μm程度である。
導電層3は、第1基板2の第1表面2aに設けられている。導電層3は、第1表面2aにおける第1貫通孔2cの周縁部に設けられている。すなわち、導電層3は、第1基板2の第1表面2aのうち第1貫通孔2cが形成されていない部分を覆っている。つまり、導電層3は、第1貫通孔2cを塞がないように設けられている。
導電層3は、導電性材料によって形成されている。ただし、導電層3の材料としては、以下に述べる理由により、試料との親和性(反応性)が低く且つ導電性が高い金属が用いられることが好ましい。
例えば、タンパク質等の試料と親和性が高いCu(銅)等の金属によって導電層3が形成されていると、後述する試料のイオン化の過程において、試料分子にCu原子が付着した状態で試料がイオン化され、Cu原子が付着した分だけ、後述する質量分析法において検出結果がずれるおそれがある。したがって、導電層3の材料としては、試料との親和性が低い金属が用いられることが好ましい。
一方、導電性の高い金属ほど一定の電圧を容易に且つ安定して印加し易くなる。そのため、導電性が高い金属によって導電層3が形成されていると、第1基板2の第1表面2aに均一に電圧を印加することが可能となる。また、導電性の高い金属ほど熱伝導性も高い傾向にある。そのため、導電性が高い金属によって導電層3が形成されていると、第1基板2に照射されたレーザ光等のエネルギー線のエネルギーを、導電層3を介して試料に効率的に伝えることが可能となる。したがって、導電層3の材料としては、導電性の高い金属が用いられることが好ましい。
以上の観点から、導電層3の材料としては、例えば、Au(金)、Pt(白金)等が用いられることが好ましい。導電層3は、例えば、メッキ法、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、蒸着法、スパッタ法等によって、厚さ1nm〜350nm程度に形成される。本実施形態では、導電層3の厚さは、10nm程度である。なお、導電層3の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)等が用いられてもよい。
第1基板2と第2基板4とは、互いに別体として形成されている。第2基板4は、第1基板2の導電層3とは反対側に設けられている。つまり、第2基板4は、第1基板2の第2表面2bに設けられている。第2基板4は、第3表面4a、及び第3表面4aとは反対側の第4表面4bを有している。第2基板4は、第3表面4aが第1基板2の第2表面2bに対向するように設けられている。第2基板4は、接着層5によって第1基板2の第2表面2bに固定されている。
第2基板4は、枠部41と、メッシュ部42と、を有している。枠部41は、例えば長方形枠状を呈している。メッシュ部42は、枠部41の内側に設けられている。メッシュ部42には、複数の第2貫通孔4cが一様に(均一な分布で)形成されている。各第2貫通孔4cは、厚み方向に延びており、第3表面4a及び第4表面4bに開口している。複数の第2貫通孔4cのそれぞれは、一以上の第1貫通孔2cと連通している。本実施形態では、各第2貫通孔4cは、複数の第1貫通孔2cと連通している。第2基板4は、厚み方向から見た場合に、第1基板2と略同一の外形を有している。第2基板4の厚さは、例えば1μm〜3000μm程度である。本実施形態では、第2基板4の厚さは、100μm程度である。
図3は、厚み方向から見た場合における第1基板2の拡大像を示す図である。図3において、黒色の部分は第1貫通孔2cであり、白色の部分は第1貫通孔2c間の隔壁部である。図3に示されるように、第1基板2には、略一定の幅を有する複数の第1貫通孔2cが一様に形成されている。厚み方向から見た場合における第1貫通孔2cの形状は、例えば略円形である。第1貫通孔2cの幅は、例えば1nm〜700nm程度である。本実施形態では、第1貫通孔2cの幅は、200nm程度である。第1貫通孔2cの幅とは、厚み方向から見た場合における第1貫通孔2cの形状が略円形である場合には、第1貫通孔2cの直径を意味し、当該形状が略円形以外である場合には、第1貫通孔2cに収まる仮想的な最大円柱の直径(有効径)を意味する。各第1貫通孔2c間のピッチは、例えば1nm〜1000nm程度である。各第1貫通孔2c間のピッチとは、厚み方向から見た場合における第1貫通孔2cの形状が略円形である場合には、当該各円の中心間距離を意味し、当該形状が略円形以外である場合には、第1貫通孔2cに収まる仮想的な最大円柱の中心軸間距離を意味する。第1基板2の第1貫通孔2c間の隔壁部の幅は、例えば300nm程度である。
第1貫通孔2cの開口率(厚み方向から見た場合に第1表面2aに対して全ての第1貫通孔2cが占める割合)は、実用上は10〜80%であり、特に50〜60%であることが好ましい。複数の第1貫通孔2cの大きさは互いに不揃いであってもよいし、部分的に複数の第1貫通孔2c同士が互いに連結していてもよい。
第1基板2は、例えば、Al(アルミニウム)を陽極酸化することにより形成されたアルミナポーラス皮膜である。具体的には、Al基板に対して陽極酸化処理を施し、酸化された表面部分をAl基板から剥離することにより、第1基板2を得ることができる。なお、第1基板2は、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Zn(亜鉛)、W(タングステン)、Bi(ビスマス)、Sb(アンチモン)等のAl以外のバルブ金属を陽極酸化することにより形成されてもよいし、Si(シリコン)を陽極酸化することにより形成されてもよい。
図4は、厚み方向から見た場合における第2基板4のメッシュ部42の構造例を示す図である。図4に示されるように、第2基板4には、略一定の幅を有する複数の第2貫通孔4cが一様に形成されている。厚み方向から見た場合における第2貫通孔4cの形状は、例えば略六角形である。第2貫通孔4cの幅w1は、例えば1μm〜1000μm程度である。本実施形態では、第2貫通孔4cの幅w1は、440μm〜470μm程度である。このように、第1貫通孔2cの幅は、第2貫通孔4cの幅w1よりも小さい。第2貫通孔4cの幅w1とは、第2貫通孔4cに収まる仮想的な最大円柱の直径(有効径)を意味する。すなわち、図4の例のように厚み方向から見た場合における第2貫通孔4cの形状が略六角形である場合には、第2貫通孔4cの幅w1は、当該六角形の互いに対向する二つの辺部の間の距離を意味する。各第2貫通孔4c間のピッチpは、例えば1μm〜1100μm程度である。本実施形態では、第2貫通孔4c間のピッチpは、455μm〜530μm程度である。このように、各第1貫通孔2c間のピッチは、各第2貫通孔4c間のピッチpよりも小さい。すなわち、各第1貫通孔2c間のピッチと各第2貫通孔4c間のピッチpとは、互いに異なる。各第2貫通孔4c間のピッチpとは、第2貫通孔4cに収まる仮想的な最大円柱の中心軸間距離を意味する。メッシュ部42の第2貫通孔4c間の隔壁部の幅w2は、例えば30μm〜60μm程度である。
第2貫通孔4cの開口率(厚み方向から見た場合に第3表面4aに対して全ての第2貫通孔4cが占める割合)は、80%以上である。このように、第1貫通孔2cの開口率は、第2貫通孔4cの開口率よりも小さい。複数の第2貫通孔4cの大きさは互いに不揃いであってもよいし、部分的に複数の第2貫通孔4c同士が互いに連結していてもよい。第2基板4の材料は、例えばSUS(ステンレス鋼)等である。第2基板4は、例えばSUS基板をエッチングすることによって形成され得る。
接着層5は、第1基板2の第2表面2b及び第2基板4の第3表面4aの間に設けられている。接着層5は、第1貫通孔2cと第2貫通孔4cとの連通を妨げないように設けられている。具体的には、接着層5は、第2基板4の第3表面4aにおける第2貫通孔4cの周縁部に設けられている。すなわち、接着層5は、第2基板4の第3表面4aのうち第2貫通孔4cが形成されていない部分を覆っている。つまり、接着層5は、第2貫通孔4cを塞がないように設けられている。接着層5は、第1基板2と第2基板4とを接合して固定する。接着層5の材料としては、放出ガスの少ない接着材料(例えば、低融点ガラス、真空用接着剤等)が用いられることが好ましい。
以上説明したように、試料支持体1Aは、第1基板2と、第1基板2の第1表面2aに設けられた導電層3と、第1基板2の導電層3とは反対側に設けられた第2基板4と、を備えている。そして、第1基板2には、試料支持体1Aの厚み方向に延びる複数の第1貫通孔2cが形成されており、第2基板4には、それぞれ厚み方向に延びて一以上の第1貫通孔2cと連通する複数の第2貫通孔4cが形成されている。このため、試料S上に、第2基板4の第1基板2とは反対側の第4表面4bが試料Sに対向するように試料支持体1Aを配置した場合に、第2基板4の当該第4表面4b側から第2貫通孔4cを介して第1基板2側に向けて試料Sの成分S1を移動させることができる。そして、毛細管現象を利用して、第1基板2の第2基板4側から第1貫通孔2cを介して第1基板2の第1表面2a側に向けて試料Sの成分S1を移動させることができる。さらに、レーザ光Lを第1基板2の第1表面2aに対して照射した場合に、第1基板2の第1表面2a側に移動した試料Sの成分S1に導電層3を介してエネルギーが伝達されることにより、試料Sの成分S1をイオン化することができる。しかも、上述したように、第1基板2の導電層3とは反対側には、第2基板4が設けられている。これにより、第1基板2が第2基板4によって補強されるため、試料支持体1Aが試料Sから剥離される際における第1基板2の破損が抑制される。従って、試料支持体1Aによれば、試料支持体1Aの破損を抑制することができる。
第1貫通孔2cの幅は、1nm〜700nmであり、第1基板2の厚さは、1μm〜50μmである。これにより、上述した毛細管現象による試料Sの成分S1の移動を適切に実現することができる。
第2貫通孔4cの幅は、1μm〜1000μmであり、第2基板4の厚さは、1μm〜3000μmである。これにより、上述したように、第2基板4の第1基板2とは反対側の第4表面4b側から第2貫通孔4cを介して第1基板2側に向けての試料Sの成分S1の移動、及び第2基板4による第1基板2の補強を適切に両立させることができる。
第1基板2と第2基板4とは、互いに別体として形成されている。これにより、第1基板2と第2基板4との組み合わせの自由度を向上させることができる。
試料支持体1Aは、第1基板2及び第2基板4の間に設けられ、第1基板2と第2基板4とを接合する接着層5を備えている。これにより、第1基板2と第2基板4とをより確実に固定することができる。
[試料のイオン化方法]
次に、図5〜図7を参照して、試料支持体1Aを用いた試料のイオン化方法について説明する。ここでは一例として、レーザ光(エネルギー線)を用いたレーザ脱離イオン化方法(質量分析装置10による質量分析方法の一部)について説明する。図6においては、試料支持体1における第1貫通孔2c、第2貫通孔4c、導電層3及び接着層5の図示が省略されている。
次に、図5〜図7を参照して、試料支持体1Aを用いた試料のイオン化方法について説明する。ここでは一例として、レーザ光(エネルギー線)を用いたレーザ脱離イオン化方法(質量分析装置10による質量分析方法の一部)について説明する。図6においては、試料支持体1における第1貫通孔2c、第2貫通孔4c、導電層3及び接着層5の図示が省略されている。
まず、図5の(a)に示されるように、試料S、及び、上述した試料支持体1Aが用意される(第1工程)。試料Sは、切断されており、その断面Saが露出している。ここで、試料Sは、例えば生体試料(含水試料)である。試料Sは、例えばイチゴ等の果物である。試料Sの成分S1(図5の(b)参照)の移動をスムーズにするために、成分S1の粘性を低くするための溶液(例えばアセトニトリル混合液、アセトン等)が、試料Sに添加されてもよい。試料支持体1Aは、イオン化法及び質量分析方法を実施する者によって製造されることで用意されてもよいし、試料支持体1Aの製造者又は販売者等から取得されることで用意されてもよい。
続いて、図5の(b)に示されるように、第2基板4の第1基板2とは反対側の表面(第4表面4b)が試料Sの断面Saに対向するように,試料S上に試料支持体1Aが配置される(第2工程)。第1基板2と第2基板4とは、互いに接合された状態で試料S上に配置される。試料支持体1Aは、第2基板4の第4表面4bが断面Saに接触するように、試料S上に配置される。試料Sの成分S1は、毛細管現象によって、第2基板4の第4表面4b側から第2貫通孔4cを介して第1基板2側に向けて移動して、第1基板2の第2表面2bに到達する。そして、試料Sの成分S1は、毛細管現象によって、第1基板2の第2表面2b側から第1貫通孔2cを介して第1基板2の第1表面2a側に向けて移動する。第1基板2の第1表面2a側に移動した成分S1は、表面張力によって第1表面2a側に留まる。
続いて、試料支持体1Aが試料Sから剥離される(第3工程)。第1基板2と第2基板4とは、互いに接合された状態で試料Sから剥離される。試料支持体1Aは、第1基板2に付着した成分S1が乾燥する前に試料Sから剥離される。
続いて、図6に示されるように、試料支持体1Aが、第2基板4の第4表面4bが載置面6aに対向するように、スライドガラス(載置部)6の載置面6aに載置される。スライドガラス6は、ITO(Indium Tin Oxide)膜等の透明導電膜が形成されたガラス基板であり、透明導電膜の表面が載置面6aとなっている。なお、スライドガラス6に限定されず、導電性を確保し得る部材(例えば、ステンレス等の金属材料等からなる基板等)を載置部として用いることができる。
続いて、スライドガラス6に対して試料支持体1Aが固定される。試料支持体1Aは、導電性を有するテープ7(例えば、カーボンテープ等)によって、スライドガラス6に対して固定される。具体的には、テープ7は、第1基板2の第1表面2a上の導電層3に接触し、且つ、スライドガラス6の載置面6aに接触することにより、試料支持体1Aをスライドガラス6に対して固定する。テープ7は、試料支持体1Aの一部であってもよいし、試料支持体1Aとは別に用意されてもよい。テープ7が試料支持体1Aの一部である場合(すなわち、試料支持体1Aがテープ7を備える場合)には、例えば、テープ7は、予め、第1基板2の周縁部において第1表面2a側に固定されていてもよい。より具体的には、テープ7は、第1基板2の周縁部において導電層3上に固定されていてもよい。
続いて、スライドガラス6と試料支持体1Aとが互いに固定された状態で、スライドガラス6及び試料支持体1Aが、質量分析装置10の支持部12(例えば、ステージ)上に載置される。続いて、試料支持体1Aに付着した試料Sの成分S1が乾燥した状態において、質量分析装置10の電圧印加部14によって、スライドガラス6の載置面6a及びテープ7を介して試料支持体1Aの導電層3(図2参照)に電圧が印加される(第4工程)。続いて、質量分析装置10のレーザ光照射部13によって、第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射される(第4工程)。ここでは、レーザ光照射部13は、第1表面2aに対してレーザ光Lを走査する。第1表面2aに対するレーザ光Lの走査は、支持部12及びレーザ光照射部13の少なくとも1つが動作させられることにより、実施可能である。また、第2貫通孔4cの幅は、レーザ光Lのスポット径よりも大きい。
このように、導電層3に電圧が印加されつつ第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されることにより、第1基板2の第1表面2a側に移動した成分S1がイオン化され、試料イオンS2(イオン化された成分S1)が放出される。具体的には、レーザ光Lのエネルギーを吸収した導電層3から、第1基板2の第1表面2a側に移動した成分S1にエネルギーが伝達され、エネルギーを獲得した成分S1が気化すると共に電荷を獲得して、試料イオンS2となる。以上の各工程が、試料支持体1Aを用いた試料Sのイオン化方法(ここでは一例として、質量分析方法の一部としてのレーザ脱離イオン化法)に相当する。
放出された試料イオンS2は、試料支持体1Aとイオン検出部15との間に設けられたグランド電極(図示省略)に向かって加速しながら移動する。つまり、試料イオンS2は、電圧が印加された導電層3とグランド電極との間に生じた電位差によって、グランド電極に向かって加速しながら移動する。そして、質量分析装置10のイオン検出部15によって試料イオンS2が検出される(第5工程)。ここでは、イオン検出部15は、レーザ光Lの走査位置に対応するように、試料イオンS2を検出する。これにより、試料Sを構成する分子の二次元分布を画像化することができる。なお、ここでの質量分析装置10は、飛行時間型質量分析法(TOF−MS:Time-of-Flight Mass Spectrometry)を利用する質量分析装置である。以上の各工程が、試料支持体1Aを用いた質量分析方法に相当する。
以上説明したように、試料Sのイオン化方法では、試料支持体1Aは、第1基板2と、第1基板2の第1表面2aに設けられた導電層3と、第1基板2の導電層3とは反対側に設けられた第2基板4と、を備えている。そして、第1基板2には、試料支持体1Aの厚み方向に延びる複数の第1貫通孔2cが形成されており、第2基板4には、それぞれ厚み方向に延びて一以上の第1貫通孔2cと連通する複数の第2貫通孔4cが形成されている。試料S上に、第2基板4の第1基板2とは反対側の第4表面4bが試料Sに対向するように試料支持体1Aが配置されると、第2基板4の当該第4表面4b側から第2貫通孔4cを介して第1基板2側に向けて試料Sの成分S1が移動する。そして、試料Sの成分S1が、第1基板2の第2基板4側から第1貫通孔2cを介して第1基板2の第1表面2a側に向けて移動する。さらに、試料支持体1Aが試料Sから剥離された後、導電層3に電圧が印加されつつ第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されると、第1基板2の第1表面2a側に移動した試料Sの成分S1にエネルギーが伝達される。これにより、試料Sの成分S1がイオン化される。このレーザ脱離イオン化方法では、上述したように、第1基板2の導電層3とは反対側には、第2基板4が設けられている。これにより、第1基板2が第2基板4によって補強されるため、試料支持体1Aが試料Sから剥離される際における第1基板2の破損が抑制される。従って、この試料のイオン化方法によれば、試料支持体1Aの破損を抑制することができる。
第4工程においては、第1基板2と第2基板4とが互いに固定された状態で、導電層3に電圧を印加しつつ第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lを照射することにより、試料Sの成分S1がイオン化される。これにより、第4工程においても、第1基板2が第2基板4によって適切に補強される。
第2貫通孔4cの幅は、レーザ光Lのスポット径よりも大きい。このため、第2貫通孔4cの幅がレーザ光Lのスポット径よりも小さい場合と比較して、厚み方向から見た場合におけるレーザ光Lの照射領域と第2基板4の第2貫通孔4c間の隔壁部とが重なる部分を低減できる。つまり、レーザ光Lの照射領域と第1基板2における試料Sの成分S1が第1表面2a側に移動しない部分とが重なる部分を低減できる。これにより、試料Sの成分S1をより効率的にイオン化することができる。
第3工程においては、試料支持体1Aは、第1基板2に付着した成分S1が乾燥する前に試料Sから剥離される。これにより、試料支持体1Aと試料Sとが固着してしまう前に、試料支持体1Aをよりスムーズに試料Sから剥離することができる。
以上説明したように、上述した質量分析方法によれば、試料支持体1Aの破損を抑制しつつ質量分析を行うことができる。
図7は、実施例の質量分析方法による結果を示す図である。図7は、試料(イチゴ)Sの断面Saにおける219m/zについての質量分析結果を示している。図7の(a)は、縦半分に切られた試料Sを更に横方向に切断することにより外部に露出した断面Saの光学画像を示している。図7の(b)は、試料Sの断面Saにおける分子の二次元分布の画像を示している。図7の(c)に示されるように、試料Sを構成する分子の二次元分布の画像と試料Sの光学画像とを合成することによって、試料Sのイメージング質量分析を行うことができる。図7においては、パーセントの数値は、質量分析における信号強度を示す。すなわち、パーセントの数値が高い(図における色が薄い)ほど、試料イオンS2が多く検出されたことを意味する。
[第2実施形態]
[試料支持体の構成]
図8及び図9を参照して、第2実施形態の試料支持体1Bについて説明する。図8及び図9に示されるように、試料支持体1Bは、フレーム(枠体)8及び固定部材9を更に備え、且つ、接着層5(図2参照)を備えていない点で、第1実施形態の試料支持体1Aと主に相違している。第2実施形態の試料支持体1Bのその他の構成については、第1実施形態の試料支持体1Aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
[試料支持体の構成]
図8及び図9を参照して、第2実施形態の試料支持体1Bについて説明する。図8及び図9に示されるように、試料支持体1Bは、フレーム(枠体)8及び固定部材9を更に備え、且つ、接着層5(図2参照)を備えていない点で、第1実施形態の試料支持体1Aと主に相違している。第2実施形態の試料支持体1Bのその他の構成については、第1実施形態の試料支持体1Aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
フレーム8は、第1基板2の第1表面2aに設けられている。つまり、フレーム8は、第1基板2の第2基板4とは反対側に設けられている。具体的には、フレーム8は、第1基板2の周縁部に固定されている。フレーム8は、接着層16によって第1基板2の第1表面2aに固定されている。接着層16の材料としては、放出ガスの少ない接着材料(例えば、低融点ガラス、真空用接着剤等)が用いられることが好ましい。フレーム8は、厚み方向から見た場合に第1基板2と略同一の外形を有している。フレーム8には、開口8aが形成されている。第1基板2のうち開口8aに対応する部分は、試料Sの成分S1を第1表面2a側に移動させるための実効領域Rとして機能する。
フレーム8は、例えば、絶縁性材料によって長方形板状に形成されている。厚み方向から見た場合におけるフレーム8の一辺の長さは、例えば数cm程度であり、フレーム8の厚さは、例えば1mm以下である。厚み方向から見た場合における開口8aの形状は、例えば円形であり、その場合における開口8aの直径は、例えば数mm〜数十mm程度である。
導電層3は、第1基板2の第1表面2aのうちフレーム8の開口8aに対応する領域(すなわち、実効領域Rに対応する領域)、開口8aの内面、及びフレーム8における第1基板2とは反対側の表面8bに一続きに(一体的に)形成されている。導電層3は、実効領域Rにおいて、第1表面2aにおける第1貫通孔2cの周縁部に設けられている。すなわち、導電層3は、実効領域Rにおいて、第1基板2の第1表面2aのうち第1貫通孔2cが形成されていない部分を覆っている。つまり、導電層3は、第1貫通孔2cを塞がないように設けられている。実効領域Rにおいては、各第1貫通孔2cが開口8aに露出している。第1基板2、フレーム8、接着層16、及び導電層3は、基板20を構成する。
試料支持体1Bは、接着層5を備えていない。第2基板4は、直接第1基板2の第2表面2bに配置されている。つまり、第1基板2の第2表面2bと第2基板4の第3表面4aとは、互いに接している。
固定部材9は、基板20及び第2基板4の外縁部に設けられている。固定部材9は、厚み方向から見た場合に、長方形枠状を呈している。固定部材9は、筒状を呈する本体部91と、本体部91の厚み方向における両端に形成された一対の挟み部92,93と、を有している。挟み部92,93は、本体部91よりも内側に突出している。挟み部92の内面92aは、フレーム8の外縁とフレーム8の開口8aの内面との間に位置している。挟み部93の内面93aの位置は、挟み部92の内面92aと略一致している。
挟み部92及び挟み部93は、互いに対向する挟み面92b及び93bをそれぞれ含んでいる。挟み面92bと挟み面93bとの間の距離は、基板20の厚さ及び第2基板4の厚さの合計と略同一である。固定部材9は、挟み面92b及び挟み面93bによって、厚み方向において基板20及び第2基板4を挟み込んでいる。このように、固定部材9は、第1基板2及び第2基板4を挟持することによって、第1基板2と第2基板4とを固定している。固定部材9は、例えば弾性を有しており、基板20及び第2基板4に対して着脱自在な部材である。
以上説明したように、試料支持体1Bは、第1基板2の第2基板4とは反対側に設けられ、第1基板2の周縁部に固定されたフレーム8を更に備えている。これにより、試料支持体1Bのハンドリング性を向上させることができる。また、温度変化等に起因する第1基板2の変形が抑制される。
試料支持体1Bは、第1基板2及び第2基板4の外縁部に設けられ、第1基板2及び第2基板4を挟持する固定部材9を更に備えている。これにより、第1基板2と第2基板4とを着脱自在に固定することができる。また、例えば、試料支持体1Bを試料Sから剥離した後、さらに第1基板2を第2基板4から剥離して、第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lを照射することができる。つまり、試料支持体1Bの使用の自由度が向上する。
[試料のイオン化方法]
次に、図10及び図11を参照して、試料支持体1Bを用いた試料のイオン化方法について説明する。試料支持体1Bを用いた試料のイオン化方法は、上述した第3工程において、試料支持体1Bが試料Sから剥離された後、第1基板2が更に第2基板4から剥離される点で、試料支持体1Aを用いた試料のイオン化方法と主に相違している。試料支持体1Bを用いた試料のイオン化方法のその他の手順については、試料支持体1Aを用いた試料のイオン化方法と同様であるため、詳細な説明を省略する。図11においては、試料支持体1Bにおける第1貫通孔2c、導電層3及び接着層16の図示が省略されている。
次に、図10及び図11を参照して、試料支持体1Bを用いた試料のイオン化方法について説明する。試料支持体1Bを用いた試料のイオン化方法は、上述した第3工程において、試料支持体1Bが試料Sから剥離された後、第1基板2が更に第2基板4から剥離される点で、試料支持体1Aを用いた試料のイオン化方法と主に相違している。試料支持体1Bを用いた試料のイオン化方法のその他の手順については、試料支持体1Aを用いた試料のイオン化方法と同様であるため、詳細な説明を省略する。図11においては、試料支持体1Bにおける第1貫通孔2c、導電層3及び接着層16の図示が省略されている。
図10に示されるように、まず、試料S、及び上記試料支持体1Bが用意された(第1工程)後、第2基板4の第1基板2とは反対側の表面(第4表面4b)が試料Sの断面Saに対向するように,試料S上に試料支持体1Bが配置される(第2工程)。試料支持体1Aは、第2基板4の第4表面4bが断面Saに接触するように、試料S上に配置される。そして、第1基板2の第1表面2a側に移動した成分S1は、表面張力によって第1表面2a側に留まる。
続いて、試料支持体1Bが試料Sから剥離される(第3工程)。つまり、第1基板2と第2基板4とは、固定部材9によって互いに固定された状態で試料Sから剥離される。続いて、基板20が第2基板4から剥離される。具体的には、固定部材9が基板20及び第2基板4から取り外されることにより、基板20が第2基板4から剥離される。
続いて、図11に示されるように、基板20が、スライドガラス(載置部)6の載置面6aに載置される。続いて、基板20が、テープ7によって、スライドガラス6に対して固定される。具体的には、テープ7は、フレーム8の表面8bに形成された導電層3の表面に接触し、且つ、スライドガラス6の載置面6aに接触するように、基板20をスライドガラス6に対して固定する。テープ7は、試料支持体1Bの一部であってもよいし、試料支持体1Bとは別に用意されてもよい。テープ7が試料支持体1Bの一部である場合(すなわち、試料支持体1Bがテープ7を備える場合)には、例えば、テープ7は、予め、フレーム8の周縁部において表面8b側に固定されていてもよい。より具体的には、テープ7は、フレーム8の周縁部において導電層3上に固定されていてもよい。
続いて、スライドガラス6と基板20とが互いに固定された状態で、スライドガラス6及び基板20が、質量分析装置10の支持部12(例えば、ステージ)上に載置される。続いて、試料支持体1Bに付着した試料Sの成分S1が乾燥した状態において、質量分析装置10の電圧印加部14によって、スライドガラス6の載置面6a及びテープ7を介して基板20の導電層3(図9参照)に電圧が印加される(第4工程)。続いて、質量分析装置10のレーザ光照射部13によって、第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射される(第4工程)。
このように、導電層3に電圧が印加されつつ第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されることにより、第1基板2の第1表面2a側に移動した成分S1がイオン化され、試料イオンS2(イオン化された成分S1)が放出される。以上の各工程が、試料支持体1Bを用いた試料Sのイオン化方法(ここでは一例として、質量分析方法の一部としてのレーザ脱離イオン化法)に相当する。
放出された試料イオンS2は、試料支持体1Bとイオン検出部15との間に設けられたグランド電極(図示省略)に向かって加速しながら移動する。そして、質量分析装置10のイオン検出部15によって試料イオンS2が検出される(第5工程)。以上の各工程が、試料支持体1Bを用いた質量分析方法に相当する。
以上説明したように、第1基板2と第2基板4とは、互いに別体として形成されており、第3工程においては、試料支持体1Bが試料Sから剥離された後、第1基板2が第2基板4から剥離される。この場合、第4工程において、第2基板4に起因する測定ノイズの発生を防止できる。例えば、第1基板2と第2基板4とが互いに固定された状態で第4工程を実施した場合、第5工程において、第2基板4のメッシュ部42の第2貫通孔4c間の隔壁部と重なる部分について、メッシュ部42を形成するメッシュ材料の質量が測定ノイズとして検出されてしまうおそれがある。さらに、第1実施形態のように接着層5が設けられた場合には、接着層5の質量も測定ノイズとして検出されてしまうおそれがある。一方、上述した試料支持体1Bを用いた試料のイオン化方法によれば、このような問題の発生を防止できる。また、例えば、試料支持体1Bでは、レーザ光Lに対して耐性を有さない第2基板4が用いられる場合がある。このような場合、第1基板2が第2基板4から剥離されずにレーザ光Lが照射されると、第2基板4が損傷するおそれがある。上述した試料支持体1Bを用いた試料のイオン化方法によれば、このような問題の発生も防止できる。
また、第3工程においては、基板20は、第2基板4から剥離されてから、スライドガラス6の載置面6aに載置される。そして、質量分析装置10の支持部12上に載置される。このため、レーザ光Lが照射される第1表面2aの支持部12からの高さが、試料支持体1Bが第2基板4を備えていない場合と同じである。これにより、試料支持体1Bが試料Sから剥離されるときには、第2基板4により第1基板2を補強しつつ、レーザ光Lが照射されるときに、試料支持体1Bが第2基板4を備えていない場合と同じ条件でレーザ光Lを照射することができる。すなわち、レーザ光Lの集光位置の高さを再調整しなくてもよい。よって、試料Sのイオン化をより簡単に行うことができる。
[第1実施形態及び第2実施形態の変形例]
図12〜図14は、第1実施形態及び第2実施形態に適用可能な変形例に係る試料支持体を示す図である。図12の(a)に示されるように、第1基板2及び第2基板4は、湾曲形状を呈していてもよい。具体的には、第2基板4の第4表面4bは、平面ではなく、非平坦状の(立体的な)形状を呈している。第2基板4の第4表面4bは、例えば、球面状を呈している。ここでは、試料支持体1Aの全体が湾曲形状を呈している。つまり、第1基板2、導電層3、及び接着層5も第2基板4に沿った形状を呈している。
図12〜図14は、第1実施形態及び第2実施形態に適用可能な変形例に係る試料支持体を示す図である。図12の(a)に示されるように、第1基板2及び第2基板4は、湾曲形状を呈していてもよい。具体的には、第2基板4の第4表面4bは、平面ではなく、非平坦状の(立体的な)形状を呈している。第2基板4の第4表面4bは、例えば、球面状を呈している。ここでは、試料支持体1Aの全体が湾曲形状を呈している。つまり、第1基板2、導電層3、及び接着層5も第2基板4に沿った形状を呈している。
このような湾曲形状を呈している試料支持体1Aによれば、非平坦状(例えば略球面状)の表面を有する試料Sの質量分析において、三次元表面マッピングを行うことができる。具体的には、第2基板4の第4表面4bが試料Sの非平坦状の表面に沿うように、試料支持体1Aが試料S上に配置される。そして、試料Sの成分S1が第1基板2の第1表面2a側に移動する。そして、試料支持体1Aが試料Sから剥離された後、例えばレーザ光を用いた3D構造スキャニングを実施することによって、試料支持体1Aの三次元形状(すなわち、試料Sの表面形状に対応する形状)が認識される。そして、試料支持体1Aの三次元形状のうちの高さ方向(Z方向)の値によって、レーザ光Lの断面、又は試料イオンS2のグランド電極に向かっての移動距離が補正される。これにより、質量分析における三次元表面マッピングが行われる。なお、試料支持体1Aの三次元形状は、例えば質量分析が行われる前に、予め認識されていてもよい。
また、試料支持体1Bにおいても、第1基板2及び第2基板4が湾曲形状を呈していてもよい。その場合、試料支持体1Bの全体が湾曲形状を呈している。つまり、フレーム8、接着層16、及び固定部材9も第2基板4に沿った形状を呈している。ただし、実効領域Rにおける第1基板2及び第2基板4が湾曲形状を呈していればよく、その他の部分(例えば、フレーム8、接着層16、及び固定部材9の一部又は全部)は、湾曲形状を呈していなくてもよい。この場合においても、湾曲形状を呈している試料支持体1Aと同様に、非平坦状の表面を有する試料Sの質量分析において、三次元表面マッピングを行うことができる。
図12の(b)に示されるように、第1基板2及び第2基板4は、可撓性を有していてもよい。ここでは、試料支持体1Aの全体が可撓性を有している。つまり、導電層3及び接着層5も可撓性を有している。なお、可撓性とは、変形させること(例えば、折り曲げたり、撓ませたりすること)が可能な性質である。また、第1基板2及び第2基板4の可撓性は、第2基板4の厚さを変更することによって制御することができる。試料Sが非平坦状の表面(図12の(a)参照)を有しており、且つ、レーザ光Lを非平坦状の表面に対して照射することが難しい場合がある。可撓性を有する試料支持体1Aによれば、このような場合においても、非平坦状の表面を有する試料Sの質量分析において、三次元表面マッピングを行うことができる。
具体的には、第1基板2及び第2基板4が試料Sの非平坦状の表面に沿うように、試料支持体1Aが試料S上に配置される。そして、試料Sの成分S1が第1基板2の第1表面2a側に移動する。このとき、上述したように、例えばレーザ光を用いた3D構造スキャニングを実施することによって、試料支持体1Aの三次元形状(すなわち、試料Sの表面形状に対応する形状)が認識される。一方、レーザ光Lを試料支持体1Aに照射する際には、平板状とされた試料支持体1A(すなわち、第1基板2及び第2基板4)に対してレーザ光Lを照射することができる。そして、試料支持体1Aの三次元形状のうちの高さ方向(Z方向)の値によって、レーザ光Lの断面、又は試料イオンS2のグランド電極に向かっての移動距離が補正される。これにより、質量分析における三次元表面マッピングが行われる。また、第1基板2及び第2基板4は、可撓性を有する場合には、試料支持体1Aの形状を任意の試料Sの表面に沿うように変形させることができるため、任意の非平坦状の表面形状を有する試料Sについて質量分析(三次元表面マッピング)を行うことができる。
また、試料支持体1Bにおいても、第1基板2及び第2基板4が可撓性を有していてもよい。その場合、試料支持体1Bの全体が可撓性を有している。つまり、フレーム8、接着層16、及び固定部材9も可撓性を有している。ただし、実効領域Rにおける第1基板2及び第2基板4が可撓性を有していればよく、その他の部分(例えば、フレーム8、接着層16、及び固定部材9の一部又は全部)は、可撓性を有していなくてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、厚み方向から見た場合における第2貫通孔4cの形状が、略六角形である例を示したが、第2貫通孔4cは、様々な形状を呈していてもよい。例えば、図13の(a)に示されるように、厚み方向から見た場合における第2貫通孔4cの形状は、略四角形であってもよい。すなわち、メッシュ部42は、格子状に設けられた壁部によって形成されてもよい。また、図13の(b)に示されるように、厚み方向から見た場合における第2貫通孔4cの形状は、一方向に延びる略長方形であってもよい。すなわち、メッシュ部42は、略等間隔に配置された互いに平行に延びる複数の壁部によって形成されてもよい。また、厚み方向から見た場合における第2貫通孔4cの形状は、上記以外の形状であってもよく、例えば略円形、又は略三角形等であってもよい。
また、第2基板4は、枠部41を有していなくてもよい。なお、第2貫通孔4cの形状が、上述したように、一方向に延びる略長方形(図13の(b)参照)である場合には、第2基板4は、枠部41を有している。
また、第1実施形態及び第2実施形態では、第2貫通孔4cの幅が1μm〜1000μm程度であり、各第2貫通孔4c間のピッチが1μm〜1100μm程度である例を示したが、第2貫通孔4cの幅、及び各第2貫通孔4c間のピッチは、数mm〜数cm程度であってもよい。具体的には、メッシュ部42は、一つ又は複数の細長い梁部によって構成されていてもよい。すなわち、図14の(a)に示されるように、メッシュ部42は、例えば、枠部41の対角線に沿って延びる一つの梁部によって構成されていてもよい。この場合、第2基板4には、2つの第2貫通孔4cが形成されている。また、図14の(b)に示されるように、メッシュ部42は、例えば、枠部41の2つの対角線に沿って延びる2つの梁部によって構成されていてもよい。この場合、第2基板4には、4つの第2貫通孔4cが形成されている。また、図14の(c)に示されるように、メッシュ部42は、枠部41の1つの対角線に沿って延びる1つの梁部、及び枠部41の1つの辺部に沿って延びる複数(ここでは、3つ)の梁部によって構成されていてもよい。この場合、第2基板4には、8つの第2貫通孔4cが形成されている。また、図14の(d)に示されるように、メッシュ部42は、枠部41の1つの辺部に沿って延びる複数(ここでは、3つ)の梁部、及び枠部41の上記1つの辺部に交差する他の辺部に沿って延びる1つの梁部によって構成されていてもよい。この場合、第2基板4には、8つの第2貫通孔4cが形成されている。このような場合には、第1基板2が大型化されたときに、第2基板4によって第1基板2の撓みを抑制することができる。
また、第2実施形態のように互いに接着固定されていない第1基板2及び第2基板4を用いる場合であっても、第1実施形態のように、第4工程において、第1基板2と第2基板4とが互いに固定された状態で、導電層3に電圧を印加しつつ第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lを照射することにより、試料Sの成分S1がイオン化されてもよい。
また、試料支持体1Aは、それぞれ1つの第2貫通孔4cを含む複数の測定領域を含んでいてもよい。同様に、試料支持体1Bも、それぞれ1つの第2貫通孔4cを含む複数の測定領域を含んでいてもよい。つまり、測定対象となる単一の試料Sを測定するための1つの測定領域は、第1基板2(第1層)の複数の第1貫通孔2cと第2基板4(第2層)の1つの第2貫通孔4cとを含むように構成されていてもよい。試料のイオン化方法では、第2基板4の第4表面4bがそれぞれの試料Sに対向するように、それぞれの試料S上に試料支持体1A又は試料支持体1Bが配置される。そして、試料支持体1A又は試料支持体1Bがそれぞれの試料Sから剥離される。これにより、各測定領域において、それぞれ異なる試料Sの成分S1の移動を実現し、イオン化することができる。
また、試料支持体1Aは、それぞれ複数の第2貫通孔4cを含む複数の測定領域を含んでいてもよい。同様に、試料支持体1Bも、それぞれ複数の第2貫通孔4cを含む複数の測定領域を含んでいてもよい。つまり、測定対象となる単一の試料Sを測定するための1つの測定領域は、第1基板2(第1層)の複数の第1貫通孔2cと第2基板4(第2層)の複数の第2貫通孔4cとを含むように構成されていてもよい。試料のイオン化方法では、第2基板4の第4表面4bがそれぞれの試料Sに対向するように、それぞれの試料S上に試料支持体1A又は試料支持体1Bが配置される。そして、試料支持体1A又は試料支持体1Bがそれぞれの試料Sから剥離される。これにより、各測定領域において、それぞれ異なる試料Sの成分S1の移動を実現し、イオン化することができる。
[第3実施形態]
[試料支持体の構成]
図15に示されるように、第3実施形態の試料支持体1Cは、第2基板4が第1基板2の第1表面2aに設けられている点で、第1実施形態の試料支持体1Aと主に相違している。第3実施形態の試料支持体1Cのその他の構成については、第1実施形態の試料支持体1Aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
[試料支持体の構成]
図15に示されるように、第3実施形態の試料支持体1Cは、第2基板4が第1基板2の第1表面2aに設けられている点で、第1実施形態の試料支持体1Aと主に相違している。第3実施形態の試料支持体1Cのその他の構成については、第1実施形態の試料支持体1Aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
図15に示されるように、試料支持体1Cでは、第2基板4は、第1基板2の導電層3側に設けられている。つまり、第2基板4は、第1基板2の第1表面2aに設けられている。第2基板4は、第3表面4aが第1基板2の第1表面2aに対向するように設けられている。第2基板4は、接着層5によって第1基板2の第1表面2aに固定されている。
導電層3は、第1基板2の第1表面2aのうち第2基板4の第2貫通孔4cに対応する領域、第2貫通孔4cの内面、及び第2基板4の第4表面4bに一続きに(一体的に)形成されている。導電層3は、第2貫通孔4cに対応する領域において、第1表面2aにおける第1貫通孔2cの周縁部に設けられている。すなわち、導電層3は、第2貫通孔4cに対応する領域において、第1基板2の第1表面2aのうち第1貫通孔2cが形成されていない部分を覆っている。つまり、導電層3は、第1貫通孔2cを塞がないように設けられている。第2貫通孔4cに対応する領域においては、各第1貫通孔2cが第2貫通孔4cに露出している。
[試料のイオン化方法]
次に、図16を参照して、試料支持体1Cを用いた試料のイオン化方法について説明する。試料支持体1Cを用いた試料のイオン化方法は、上述した第2工程において、第1基板2の第2基板4とは反対側の第2表面2bが試料Sに対向するように、試料S上に試料支持体1Cが配置される点、及び、上述した第4工程において、第2基板4の第2貫通孔4c内における第1基板2の第2基板4側の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射される点で、試料支持体1Aを用いた試料のイオン化方法と主に相違している。図16の(b)においては、試料支持体1Cにおける第1貫通孔2c、導電層3及び接着層16の図示が省略されている。
次に、図16を参照して、試料支持体1Cを用いた試料のイオン化方法について説明する。試料支持体1Cを用いた試料のイオン化方法は、上述した第2工程において、第1基板2の第2基板4とは反対側の第2表面2bが試料Sに対向するように、試料S上に試料支持体1Cが配置される点、及び、上述した第4工程において、第2基板4の第2貫通孔4c内における第1基板2の第2基板4側の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射される点で、試料支持体1Aを用いた試料のイオン化方法と主に相違している。図16の(b)においては、試料支持体1Cにおける第1貫通孔2c、導電層3及び接着層16の図示が省略されている。
図16の(a)に示されるように、まず、試料S、及び上記試料支持体1Cが用意された(第1工程)後、第1基板2の第2表面2bが試料Sの断面Saに対向するように、試料S上に試料支持体1Cが配置される(第2工程)。試料支持体1Cは、第1基板2の第2表面2bが断面Saに接触するように、試料S上に配置される。そして、試料Sの成分S1は、毛細管現象によって、第1基板2の第2表面2b側から第1貫通孔2cを介して第1基板2の第1表面2a側に向けて移動する。第1基板2の第1表面2a側に移動した成分S1は、表面張力によって第2貫通孔4c内における第1表面2a側に留まる。
続いて、試料支持体1Cが試料Sから剥離される(第3工程)。続いて、図16の(b)に示されるように、試料支持体1Cが、第1基板2の第2表面2bが載置面6aに対向するように、スライドガラス(載置部)6の載置面6aに載置される。続いて、試料支持体1Cが、テープ7によって、スライドガラス6に対して固定される。具体的には、テープ7は、第2基板4の第4表面4b上の導電層3に接触し、且つ、スライドガラス6の載置面6aに接触することにより、試料支持体1Cをスライドガラス6に対して固定する。テープ7は、試料支持体1Cの一部であってもよいし、試料支持体1Cとは別に用意されてもよい。テープ7が試料支持体1Cの一部である場合(すなわち、試料支持体1Cがテープ7を備える場合)には、例えば、テープ7は、予め、第2基板4の周縁部において第4表面4b側に固定されていてもよい。より具体的には、テープ7は、第2基板4の周縁部において導電層3上に固定されていてもよい。
続いて、スライドガラス6と試料支持体1Cとが互いに固定された状態で、スライドガラス6及び試料支持体1Cが、質量分析装置10の支持部12(例えば、ステージ)上に載置される。続いて、試料支持体1Cに付着した試料Sの成分S1が乾燥した状態において、質量分析装置10の電圧印加部14によって、試料支持体1Cの導電層3(図15参照)に電圧が印加される(第4工程)。続いて、質量分析装置10のレーザ光照射部13によって、第2基板4の第2貫通孔4c内における第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射される(第4工程)。
このように、導電層3に電圧が印加されつつ第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されることにより、第1基板2の第1表面2a側に移動した成分S1がイオン化され、試料イオンS2(イオン化された成分S1)が放出される。以上の各工程が、試料支持体1Cを用いた試料Sのイオン化方法(ここでは一例として、質量分析方法の一部としてのレーザ脱離イオン化法)に相当する。
放出された試料イオンS2は、試料支持体1Cとイオン検出部15との間に設けられたグランド電極(図示省略)に向かって加速しながら移動する。そして、質量分析装置10のイオン検出部15によって試料イオンS2が検出される(第5工程)。以上の各工程が、試料支持体1Cを用いた質量分析方法に相当する。
以上説明したように、試料支持体1Cは、第1基板2と、第1基板2の第1表面2aに設けられた導電層3と、導電層3上に設けられた第2基板4と、を備えている。そして、第1基板2には、厚み方向に延びる複数の第1貫通孔2cが形成されており、第2基板4には、それぞれ厚み方向に延びて一以上の第1貫通孔2cと連通する複数の第2貫通孔4cが形成されている。このため、試料S上に、第1基板2の第2基板4とは反対側の第2表面2bが試料Sに対向するように試料支持体1Cを配置した場合に、毛細管現象を利用して、第2表面2b側から第1貫通孔2cを介して第2基板4側に向けて試料Sの成分S1を移動させることができる。さらに、レーザ光Lを第2基板4側から、第2基板4の第2貫通孔4c内における第1表面2aに対して照射した場合に、第1表面2a側に移動した試料Sの成分S1に導電層3を介してエネルギーが伝達されることにより、試料Sの成分S1をイオン化することができる。しかも、上述したように、導電層3上には、第2基板4が設けられている。これにより、第1基板2が第2基板4によって補強されるため、試料支持体1Cが試料Sから剥離される際における第1基板2の破損が抑制される。従って、この試料支持体1Cによれば、試料支持体1Cの破損を抑制することができる。
また、試料支持体1Cを用いた試料のイオン化方法では、試料S上に、第1基板2の第2基板4とは反対側の第2表面2bが試料Sに対向するように試料支持体1Cが配置されると、第2表面2b側から第1貫通孔2cを介して第2基板4側に向けて試料Sの成分S1が移動する。さらに、試料支持体1Cが試料Sから剥離された後、導電層3に電圧が印加されつつ第2基板4の第2貫通孔4c内における第1基板2の第2基板4側の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されると、第1基板2の第1表面2a側に移動した試料Sの成分S1にエネルギーが伝達される。これにより、試料Sの成分S1がイオン化される。ここで、導電層3上には、第2基板4が設けられている。これにより、第1基板2が第2基板4によって補強されるため、試料支持体1Cが試料Sから剥離される際における第1基板2の破損が抑制される。従って、この試料のイオン化方法によれば、試料支持体1Cの破損を抑制することができる。
また、この試料のイオン化方法では、上述した試料支持体1Bを用いた試料のイオン化方法と同様に、レーザ光Lが照射される第1表面2aの支持部12からの高さが、試料支持体1Cが第2基板4を備えていない場合と同じである。これにより、第2基板4により第1基板2を補強しつつ、試料支持体1Cが第2基板4を備えていない場合と同じ条件でレーザ光Lを照射することができる。すなわち、レーザ光Lの集光位置の高さを再調整しなくてもよい。よって、試料Sのイオン化をより簡単に行うことができる。
また、試料支持体1Cは、試料支持体1Bと同様に、フレーム8(図9参照)及び固定部材9を更に備え、且つ、接着層5(図15参照)を備えていなくてもよい。すなわち、試料支持体1Cでは、試料支持体1Bと同様に、第1基板2と第2基板4とが分離可能とされていてもよい。
[第4実施形態]
[試料支持体の構成]
図17に示されるように、第4実施形態の試料支持体1Dは、一つの基板30、及び導電層3によって構成されている点で、第1実施形態の試料支持体1Aと主に相違している。第4実施形態の試料支持体1Dのその他の構成については、第1実施形態の試料支持体1Aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
[試料支持体の構成]
図17に示されるように、第4実施形態の試料支持体1Dは、一つの基板30、及び導電層3によって構成されている点で、第1実施形態の試料支持体1Aと主に相違している。第4実施形態の試料支持体1Dのその他の構成については、第1実施形態の試料支持体1Aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
試料支持体1Dは、基板30と、導電層3と、を備えている。基板30は、第1層31と、第2層32と、を有している。第1層31は、第2層32とは反対側の表面30aを含んでいる。第2層32は、第1層31とは反対側の表面30bを含んでいる。試料支持体1Dにおいては、第1層31と第2層32とが、同一の材料により一体的に形成されている。第1層31及び第2層32は、例えば、同一のAl基板に対して陽極酸化処理を施し、酸化された表面部分をAl基板から剥離することにより形成されたアルミナポーラス皮膜である。なお、第1層31及び第2層32は、試料支持体1Aの第1基板2と同様に、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Zn(亜鉛)、W(タングステン)、Bi(ビスマス)、Sb(アンチモン)等のAl以外のバルブ金属を陽極酸化することにより形成されてもよいし、Si(シリコン)を陽極酸化することにより形成されてもよい。
第1層31の厚さは、例えば1〜50μm程度である。厚み方向から見た場合における第1貫通孔30cの形状は、略円形である。第1貫通孔30cの幅は、例えば1nm〜700nm程度である。各第1貫通孔30c間のピッチは、例えば100nm程度である。第2層32の厚さは、例えば1〜1000μm程度である。厚み方向から見た場合における第2貫通孔30dの形状は、略円形である。第2貫通孔30dの幅は、例えば1nm〜1000nm程度である。各第2貫通孔30d間のピッチは、例えば300nm程度である。ここでは、1つの第2貫通孔30dが、1つの第1貫通孔30cと連通している。各第2貫通孔30d間のピッチは、各第1貫通孔30c間のピッチよりも大きいため、複数の第1貫通孔30cのうち各第2貫通孔30d間のピッチで配置された一部の第1貫通孔30cのみが第2貫通孔30dと連通している。その他の第1貫通孔30cは、第2基板4によって塞がれている。
以上説明したように、第1層31と第2層32とは、同一の材料により一体的に形成されている。この場合、試料支持体1Dの構造が簡素化される。また、本実施形態では一例として、上記同一の材料は、陽極酸化されたバルブ金属又は陽極酸化されたシリコンである。この場合、第1層31と第2層32とが一体的に形成された構造を陽極酸化のプロセスによって容易に得ることができる。
[試料支持体の製造方法]
次に、図18を参照して、試料支持体1Dの製造方法について、説明する。まず、図18の(a)に示されるように、ベース基板200を陽極酸化することにより、ベース基板200の表面200aに複数の第1凹部(第1貫通孔30cになる予定の凹部)211が設けられた第1陽極酸化皮膜(アルミナポーラス皮膜)210が形成される。具体的には、まず、ベース基板200が電解液に浸される。続いて、ベース基板200に所定の大きさの第1電圧(例えば、40V程度)が印加される。印加電圧の大きさは、使用される電解液に応じて決定される。ベース基板200は、電解液に浸された状態で上記第1電圧が印加されると、表面200aに、第1陽極酸化皮膜210が形成される。ベース基板200の材料は、例えば、純度が99.9%(3N)以上のAl(アルミニウム)である。
次に、図18を参照して、試料支持体1Dの製造方法について、説明する。まず、図18の(a)に示されるように、ベース基板200を陽極酸化することにより、ベース基板200の表面200aに複数の第1凹部(第1貫通孔30cになる予定の凹部)211が設けられた第1陽極酸化皮膜(アルミナポーラス皮膜)210が形成される。具体的には、まず、ベース基板200が電解液に浸される。続いて、ベース基板200に所定の大きさの第1電圧(例えば、40V程度)が印加される。印加電圧の大きさは、使用される電解液に応じて決定される。ベース基板200は、電解液に浸された状態で上記第1電圧が印加されると、表面200aに、第1陽極酸化皮膜210が形成される。ベース基板200の材料は、例えば、純度が99.9%(3N)以上のAl(アルミニウム)である。
続いて、図18の(b)に示されるように、第1陽極酸化皮膜210が形成されたベース基板200を陽極酸化することにより、それぞれ1つの上記第1凹部211に連通する複数の第2凹部(第2貫通孔30dになる予定の凹部)221が設けられた第2陽極酸化皮膜(アルミナポーラス皮膜)220が形成される。具体的には、第1陽極酸化皮膜210が形成されたベース基板200に所定の大きさの第2電圧(例えば、120V程度)が印加される。ベース基板200は、電解液に浸された状態で上記第2電圧が印加されると、第1陽極酸化皮膜210に連続する第2陽極酸化皮膜220が形成される。なお、1つの第2凹部221は、複数の第1凹部211に連通していてもよい。
続いて、第1陽極酸化皮膜210及び第2陽極酸化皮膜220をベース基板200から剥離することにより、第1層31及び第2層32が得られる(図17参照)。続いて、第1層31の表面30aにおける第1貫通孔30cの周縁部に、導電層3が設けられる。導電層3は、第1貫通孔30cを塞がない程度に形成される。以上により、試料支持体1Dが製造される。
[試料のイオン化方法]
試料支持体1Dを用いた試料Sのイオン化方法は、試料支持体1Aを用いた試料Sのイオン化方法と同じである。
試料支持体1Dを用いた試料Sのイオン化方法は、試料支持体1Aを用いた試料Sのイオン化方法と同じである。
[第5実施形態]
[試料支持体の構成]
図19に示されるように、第5実施形態の試料支持体1Eは、第1基板2及び第2基板4が可撓性を有しており、且つ、第3基板17(第3層)を更に備える点で、第1実施形態の試料支持体1Aと主に相違している。第5実施形態の試料支持体1Eのその他の構成については、第1実施形態の試料支持体1Aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
[試料支持体の構成]
図19に示されるように、第5実施形態の試料支持体1Eは、第1基板2及び第2基板4が可撓性を有しており、且つ、第3基板17(第3層)を更に備える点で、第1実施形態の試料支持体1Aと主に相違している。第5実施形態の試料支持体1Eのその他の構成については、第1実施形態の試料支持体1Aと同様であるため、詳細な説明を省略する。
試料支持体1Eは、上述した試料支持体1Aに加えて、第3基板17を備えている。ここでは、試料支持体1Aは、可撓性を有している(図12の(b)参照)。第3基板17は、第1基板2の第2基板4とは反対側に設けられている。つまり、第3基板17は、導電層3の表面に設けられている。第3基板17は、厚み方向から見た場合に、第1基板2及び第2基板4と略同一の外形を有している。第3基板17の厚さは、例えば0.5μm〜10mm程度である。
第3基板17は、形状記憶材料により形成されている。第3基板17は、例えば形状記憶ポリマーである。具体的には、第3基板17は、例えばスマートポリマー(NIMS)である。第3基板17の材料は、例えば温度に応答性を有する材料である。例えば60℃の温度条件において、第3基板17に所定の形状を記憶させると、第3基板17を変形させた後、第3基板17を60℃の環境に曝した場合、第3基板17は再び上記所定の形状に戻る。なお、第3基板17は、熱、ph、光、イオン、及び磁場等に応答性を有していてもよい。
以上説明したように、試料支持体1Eは、第1基板2の第2基板4とは反対側に設けられた第3基板17を更に備え、第1基板2及び第2基板4は、可撓性を有しており、第3基板17は、形状記憶材料により形成されている。試料Sが非平坦状の表面を有しており、試料Sを構成する分子の三次元表面分布の画像化が求められる場合がある。一方、レーザ光Lを非平坦状の表面に対して照射することが難しい場合がある。このような場合、第2基板4の第1基板2とは反対側の第4表面4bが試料Sに対向し、且つ、試料支持体1Eが試料Sの表面に沿うように、試料S上に試料支持体1Eを配置することによって、試料Sの成分S1を第1基板2の第1表面2a側に移動させつつ、第3基板17によって試料Sの表面形状を記憶することができる。そして、第3基板17を第1基板2から剥離し、第3基板17によって記憶された試料Sの表面形状を認識することができる。また、第1基板2及び第2基板4を平板状に戻した後、レーザ光Lを第1基板2の第1表面2aに対して照射することにより、試料Sの成分S1をイオン化すると共に、イオン化された成分S1(試料イオンS2)の二次元分布を取得することができる。そして、試料Sの表面形状と試料イオンS2の二次元分布とを合成することにより、試料イオンS2の三次元表面分布を取得することができる。
[試料のイオン化方法]
次に、試料支持体1Eを用いた試料のイオン化方法について説明する。図20に示されるように、まず、非平坦状の表面を有する試料S、及び、試料支持体1Eが用意される(第1工程)。続いて、第2基板4の第1基板2とは反対側の第4表面4b(図19参照)が試料Sに対向し、且つ、試料支持体1Eが試料Sの表面に沿うように、試料S上に試料支持体1Eが配置される(第2工程)。試料支持体1Eは、第2基板4の第4表面4bが試料Sに接触し、且つ試料Sの表面に沿うように、試料S上に配置される。
次に、試料支持体1Eを用いた試料のイオン化方法について説明する。図20に示されるように、まず、非平坦状の表面を有する試料S、及び、試料支持体1Eが用意される(第1工程)。続いて、第2基板4の第1基板2とは反対側の第4表面4b(図19参照)が試料Sに対向し、且つ、試料支持体1Eが試料Sの表面に沿うように、試料S上に試料支持体1Eが配置される(第2工程)。試料支持体1Eは、第2基板4の第4表面4bが試料Sに接触し、且つ試料Sの表面に沿うように、試料S上に配置される。
続いて、第3基板17によって試料Sの表面形状が記憶される(第3工程)。具体的には、図20の(a)に示されるように、試料Sの表面に沿うように、試料S上に試料支持体1Eが配置された状態において、第3基板17が試料Sの表面形状を記憶するように、第3基板17の温度が所定の温度にされる。続いて、試料支持体1Eが試料Sから剥離される(第4工程)。具体的には、まず、図20の(b)に示されるように、第3基板17が第1基板2から剥離される。このとき、第1基板2の第1表面2a側に移動した成分S1は、表面張力によって第1表面2a側に留まる。この後、第1基板2及び第2基板4が試料Sから剥離される。第3基板17が第1基板2から剥離されると、第3基板17によって記憶された試料Sの表面形状が認識される(第5工程)。例えば、図20の(c)に示されるように、例えばレーザ光L1を用いた3D構造スキャニングを実施することによって、第3基板17の三次元形状が認識される。一方、図20の(d)に示されるように、第1基板2及び第2基板4(すなわち、試料支持体1Eから第3基板17が剥離されることにより形成された試料支持体1A)は、試料Sから剥離されると、平板状に戻される(第6工程)。そして、図20の(e)に示されるように、試料支持体1Aに付着した試料Sの成分S1が乾燥した状態において、導電層3に電圧が印加されつつ第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射される。これにより、第1基板2の第1表面2a側に移動した成分S1がイオン化され、試料イオンS2(イオン化された成分S1)が放出される。以上の各工程が、試料支持体1Eを用いた試料Sのイオン化方法(ここでは一例として、質量分析方法の一部としてのレーザ脱離イオン化法)に相当する。
放出された試料イオンS2は、質量分析装置のイオン検出部によって検出され、試料イオンS2の二次元分布が取得される(第7工程)。続いて、3D構造スキャニングによって検出された第3基板17の三次元形状(すなわち、試料Sの表面形状)と上記質量分析(ここでは、TOF−MS)により得られた試料イオンS2の二次元分布とを合成することにより、試料イオンS2の三次元表面分布が取得される(第8工程)。以上の各工程が、試料支持体1Eを用いた質量分析方法に相当する。
以上説明したように、試料支持体1Eを用いた質量分析方法では、試料Sは、非平坦状の表面を有している。また、試料支持体1Eは、第1基板2の第2基板4とは反対側に設けられた第3基板17を更に備えている。試料S上に、第2基板4の第1基板2とは反対側の第4表面4bが試料Sに対向し、且つ、試料支持体1Eが試料Sの非平坦状の表面に沿うように、試料S上に試料支持体1Eが配置されると、試料Sの成分S1が第1基板2の第1表面2a側に移動する。また、試料支持体1Eが試料Sの表面に沿うように、試料S上に試料支持体1Eが配置された状態で、第3基板17によって試料Sの表面形状が記憶される。そして、第3基板17によって記憶された試料Sの表面形状が認識される。一方、第1基板2及び第2基板4を平板状にした後、導電層3に電圧が印加されつつ第1基板2の第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されると、第1基板2の第1表面2a側に移動した試料Sの成分S1にエネルギーが伝達される。これにより、試料Sの成分S1がイオン化される。そして、イオン化された試料Sの成分S1(試料イオンS2)が検出され、試料イオンS2の二次元分布が取得される。さらに、試料Sの表面形状と試料イオンS2の二次元分布とが合成されることにより、試料イオンS2の三次元表面分布が取得される。以上のように、試料支持体1Eを用いた質量分析方法によれば、試料支持体1Eの破損を抑制しつつ、非平坦状の表面を有する試料の成分についての三次元表面分布を取得することができる。また、試料支持体1Eを用いた質量分析方法によれば、試料Sの表面形状の認識(第5工程)と、試料Sの成分S1のイオン化(第6工程)及び試料イオンS2の二次元分布の取得(第7工程)と、を同時に行うことができる。これにより、質量分析の作業効率を向上させることができる。
このような三次元表面分布を取得可能な質量分析方法は、例えば以下のような分野に有効である。例えば、医学分野において、皮膚炎又は癌等の進行状況を把握、又は部位を特定するために、臓器の表面又は傷口の表面における三次元表面分布を取得可能である。また、例えば、生物学分野において、生きたままの生物の体表における三次元表面分布を取得可能である。また、美術分野において、古美術品の表面の染料又は繊維を特定するために、古美術品の表面における三次元表面分布を取得可能である。また、農業分野において、農産物の表面における残留農薬濃度のマッピングを行うことにより、洗浄方法の改善に寄与することができる。また、水産業分野において、養殖の間引き判定又は住環境の改善のために、稚魚の体表における三次元表面分布を取得可能である。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
導電層3は、上記実施形態で示したように第1貫通孔2cの内面に設けられていなくてもよいし、第1貫通孔2cの内面に設けられていてもよい。
第1基板2又は基板30は、導電性を有していてもよく、質量分析方法において第1基板2の第2基板4とは反対側(第1表面2a)、又は、基板30の表面30aに対して電圧が印加されつつレーザ光Lが照射されてもよい。第1基板2又は基板30が導電性を有する場合には、試料支持体1A,1B,1C,1D,1Eにおいて、導電層3を省略することができると共に、上述した導電層3を備える試料支持体1A,1B,1C,1D,1Eを用いる場合と同様の効果を得ることができる。なお、電圧を第1基板2の第1表面2a、又は、基板30の表面30aに対して印加するとは、試料支持体1A,1B,1C,1D,1Eが導電層3を備えている場合には、導電層3に電圧を印加することをいい、第1基板2又は基板30が導電性を有している場合には、第1基板2の第1表面2a、又は、基板30の表面30aに電圧を印加することをいう。同様に、レーザ光Lを第1基板2の第1表面2a、又は、基板30の表面30aに対して照射するとは、試料支持体1A,1B,1C,1D,1Eが導電層3を備えている場合には、導電層3にレーザ光Lを照射することをいい、第1基板2又は基板30が導電性を有している場合には、第1基板2の第1表面2a、又は、基板30の表面30aにレーザ光Lを照射することをいう。
第2基板4の材料がSUSである例を示したが、第2基板4の材料は、加工性の高い金属、又はエッチングを施すことができる様々な金属であってもよい。また、第1基板2が第2基板4から剥離されないまま、レーザ光Lが照射される場合には、第2基板4の材料としては、レーザ光Lに対して耐性を有する材料であることが好ましい。例えば、第2基板4の材料は、セラミックス、石英、又は樹脂等であってもよい。
試料Sの成分S1は、毛細管現象によって、第2基板4の第4表面4b側から第2貫通孔4cを介して第1基板2側に向けて移動する例を示したが、試料Sの成分S1は、毛細管現象によらずに、第2基板4の第4表面4b側から第2貫通孔4cを介して第1基板2側に向けて移動してもよい。例えば、試料Sに向かって試料支持体1A全体を適度に加圧すること等により、第2基板4の第4表面4b側から第2貫通孔4cを介して第1基板2側に向けて、試料Sの成分S1を移動させてもよい。
第2基板4においては、試料Sの成分S1の表面張力、液体密度、温度(または蒸気圧)、第2基板4の第2貫通孔4cの幅W1、及び第2基板4の厚さ(すなわち、第2貫通孔4cの長さ)等の組合せによって、毛細管現象が起こらない場合がある。このような場合、例えば試料Sに向かって試料支持体1A全体を適度に加圧すること等により、試料Sの成分S1を第2基板4の第4表面4b側から第2貫通孔4cを介して第3表面4a側に移動させることができる。そして、試料Sの成分S1を第1基板2の第2表面2bに接触させることにより、毛細管現象によって、試料Sの成分S1を第1基板2の第2表面2b側から第1貫通孔2cを介して第1表面2a側に向けて移動させることができる。このように、第2貫通孔4cにおいて毛細管現象が起こらない場合においても、試料Sの成分S1を第1基板2の第1表面2a側に到達させることができる。なお、一例として、第2基板4の厚さが100μm程度であり、試料Sの成分S1が純水であり、試料Sの成分S1と第2基板4との接触角が20°であり、且つ、第2貫通孔4cの幅W1が280μm未満である場合には、試料Sの成分S1は、毛細管現象によって、第2基板4の第4表面4b側から第2貫通孔4cを介して第3表面4a側に移動する。
試料支持体1Bにおいて、第1基板2と第2基板4とを固定することができれば、その態様は限定されない。例えば、固定部材9は、厚み方向から見た場合に、長方形枠状を呈していなくてもよい。固定部材9は、例えば、第1基板2及び第2基板4の縁部の任意の位置において、第1基板2及び第2基板4を挟み込むように構成されていてもよい。また、試料支持体1Bは、固定部材9を備えていなくてもよい。例えば、測定者の指等によって、第1基板2と第2基板4とを挟持してもよい。また、試料支持体1Bを用いた試料Sの質量分析方法においては、第2基板4を介して試料Sの成分S1を第1基板2の第1表面2a側に移動させた後、第2基板4が試料S上に配置されたまま、第1基板2を第2基板4から剥離してもよい。
試料支持体1A,1C,1D,1Eは、フレーム8を備えていてもよい。試料支持体1Bは、フレーム8を備えていなくてもよい。
質量分析装置10において、レーザ光照射部13が、第1基板2の第1表面2a(又は、実効領域Rに対応する領域)に対してレーザ光Lを一括で照射し、イオン検出部15が、当該領域の二次元情報を維持しながら、試料イオンS2を検出してもよい。つまり、質量分析装置10は、投影型質量分析装置であってもよい。
厚み方向から見た場合におけるフレーム8の開口8aの形状が円形である例を示したが、開口8aは様々な形状を呈していてもよい。フレーム8の開口8aの形状は、例えば矩形であってもよい。
試料支持体1A,1B,1C,1D,1Eがスライドガラス6に載置される例を示したが、試料支持体1A,1B,1C,1D,1Eは、直接質量分析装置10の支持部12に載置されてもよい。
また、試料支持体1A,1B,1C,1D,1Eの用途は、レーザ光Lの照射による試料Sのイオン化に限定されない。試料支持体1A,1B,1C,1D,1Eは、レーザ光L以外のエネルギー線(例えば、イオンビーム、電子線等)の照射による試料Sのイオン化に用いられてもよい。
試料支持体1A,1B,1C,1D,1Eは、テープ7以外の手段(例えば、接着剤、固定具等を用いる手段)で、スライドガラス6に対して固定されてもよい。また、スライドガラス6の載置面6a及びテープ7を介さずに導電層3に電圧が印加されてもよい。その場合、スライドガラス6及びテープ7は、導電性を有していなくてもよい。
上述した試料のイオン化方法は、試料Sを構成する分子の質量分析だけでなく、イオンモビリティ測定等の他の測定・実験にも利用することができる。
試料Sは、乾燥試料であってもよい。この場合、試料Sの成分S1を毛細管現象によって第1基板2の第1表面2a側に移動させるために、試料Sには例えば溶媒(例えばアセトニトリル混合液、アセトン等)が添加されてもよい。
1A,1B,1C,1D,1E…試料支持体、2…第1基板(第1層)、2a…第1表面(表面)、2c,30c…第1貫通孔、3…導電層、4…第2基板(第2層)、4b…第4表面(表面)、4c,30d…第2貫通孔、5…接着層、8…フレーム(枠体)、9…固定部材、17…第3基板(第3層)、30a…表面、30b…表面、31…第1層、32…第2層、L…レーザ光(エネルギー線)、S…試料、S1…成分、S2…試料イオン。
Claims (25)
- 試料のイオン化用の試料支持体であって、
複数の第1貫通孔が形成された第1層と、
前記第1層の表面において前記第1貫通孔を塞がないように設けられた導電層と、
前記第1層の前記導電層とは反対側に設けられ、複数の第2貫通孔が形成された第2層と、を備え、
前記複数の第1貫通孔及び前記複数の第2貫通孔は、前記第1層及び前記第2層の厚み方向に延びており、
前記複数の第2貫通孔のそれぞれは、前記複数の第1貫通孔のうち一以上の前記第1貫通孔と連通しており、
前記第1貫通孔の幅は、前記第2貫通孔の幅よりも小さく、
前記第1貫通孔の開口率は、前記第2貫通孔の開口率よりも小さい、試料支持体。 - 前記第1層の前記第2層とは反対側に設けられ、前記第1層の周縁部に固定された枠体を更に備える、請求項1に記載の試料支持体。
- 前記第1貫通孔の幅は、1nm〜700nmであり、
前記第1層の厚さは、1μm〜50μmである、請求項1又は2に記載の試料支持体。 - 前記第2貫通孔の幅は、1μm〜1000μmであり、
前記第2層の厚さは、1μm〜3000μmである、請求項1〜3の何れか一項に記載の試料支持体。 - 前記第1層と前記第2層とは、互いに別体として形成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の試料支持体。
- 前記第1層及び前記第2層の外縁部に設けられ、前記第1層及び前記第2層を挟持する固定部材を更に備える、請求項5に記載の試料支持体。
- 前記第1層及び前記第2層の間に設けられ、前記第1層と前記第2層とを接合する接着層を更に備える、請求項5に記載の試料支持体。
- 前記第1層と前記第2層とは、同一の材料により一体的に形成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の試料支持体。
- 前記材料は、陽極酸化されたバルブ金属又は陽極酸化されたシリコンである、請求項8に記載の試料支持体。
- 前記第1層及び前記第2層は、可撓性を有する、請求項1〜9の何れか一項に記載の試料支持体。
- 前記第1層及び前記第2層は、湾曲形状を呈している、請求項1〜10の何れか一項に記載の試料支持体。
- 試料のイオン化用の試料支持体であって、
導電性を有し、複数の第1貫通孔が形成された第1層と、
前記第1層の一方側に設けられ、複数の第2貫通孔が形成された第2層と、を備え、
前記複数の第1貫通孔及び前記複数の第2貫通孔は、前記第1層及び前記第2層の厚み方向に延びており、
前記複数の第2貫通孔のそれぞれは、前記複数の第1貫通孔のうち一以上の前記第1貫通孔と連通しており、
前記第1貫通孔の幅は、前記第2貫通孔の幅よりも小さく、
前記第1貫通孔の開口率は、前記第2貫通孔の開口率よりも小さい、試料支持体。 - 前記第1層の前記第2層とは反対側に設けられた第3層を更に備え、
前記第1層及び前記第2層は、可撓性を有しており、
前記第3層は、形状記憶材料により形成されている、請求項1〜12の何れか一項に記載の試料支持体。 - 試料のイオン化用の試料支持体であって、
複数の第1貫通孔が形成された第1層と、
前記第1層の表面において前記第1貫通孔を塞がないように設けられた導電層と、
前記導電層上に設けられ、複数の第2貫通孔が形成された第2層と、を備え、
前記複数の第1貫通孔及び前記複数の第2貫通孔は、前記第1層及び前記第2層の厚み方向に延びており、
前記複数の第2貫通孔のそれぞれは、前記複数の第1貫通孔のうち一以上の前記第1貫通孔と連通しており、
前記第1貫通孔の幅は、前記第2貫通孔の幅よりも小さく、
前記第1貫通孔の開口率は、前記第2貫通孔の開口率よりも小さい、試料支持体。 - 試料、及び、請求項1〜11の何れか一項に記載の試料支持体を用意する第1工程と、
前記第2層の前記第1層とは反対側の表面が前記試料に対向するように、前記試料上に前記試料支持体を配置する第2工程と、
前記試料支持体を前記試料から剥離する第3工程と、
前記導電層に電圧を印加しつつ前記第1層の前記表面に対してエネルギー線を照射することにより、前記試料の成分をイオン化する第4工程と、を含む試料のイオン化方法。 - 前記第1層と前記第2層とは、互いに別体として形成されており、
前記第4工程においては、前記第1層と前記第2層とが互いに固定された状態で、前記導電層に電圧を印加しつつ前記第1層の前記表面に対してエネルギー線を照射することにより、前記試料の成分がイオン化される、請求項15に記載の試料のイオン化方法。 - 前記第1層と前記第2層とは、互いに別体として形成されており、
前記第3工程においては、前記試料支持体が前記試料から剥離された後、前記第1層が前記第2層から剥離される、請求項15に記載の試料のイオン化方法。 - 前記第1層と前記第2層とは、同一の材料により一体的に形成されている、請求項15に記載の試料のイオン化方法。
- 前記材料は、陽極酸化されたバルブ金属又は陽極酸化されたシリコンである、請求項18に記載の試料のイオン化方法。
- 前記第2貫通孔の幅は、前記エネルギー線のスポット径よりも大きい、請求項15〜19の何れか一項に記載の試料のイオン化方法。
- 前記第3工程においては、前記試料支持体は、前記第1層に付着した前記成分が乾燥する前に前記試料から剥離される、請求項15〜20の何れか一項に記載の試料のイオン化方法。
- 試料、及び、請求項12に記載の試料支持体を用意する第1工程と、
前記第2層の前記第1層とは反対側の表面が前記試料に対向するように、前記試料上に前記試料支持体を配置する第2工程と、
前記試料支持体を前記試料から剥離する第3工程と、
前記第1層に電圧を印加しつつ前記第1層の前記第2層とは反対側の表面に対してエネルギー線を照射することにより、前記試料の成分をイオン化する第4工程と、を含む試料のイオン化方法。 - 試料、及び、請求項14に記載の試料支持体を用意する第1工程と、
前記第1層の前記第2層とは反対側の表面が前記試料に対向するように、前記試料上に前記試料支持体を配置する第2工程と、
前記試料支持体を前記試料から剥離する第3工程と、
前記導電層に電圧を印加しつつ前記第1層の前記第2層側の表面に対してエネルギー線を照射することにより、前記試料の成分をイオン化する第4工程と、を含む試料のイオン化方法。 - 請求項15〜23の何れか一項に記載の試料のイオン化方法の各工程と、
前記第4工程においてイオン化された前記成分を検出する第5工程と、を含む、質量分析方法。 - 非平坦状の表面を有する試料、及び、請求項13に記載の試料支持体を用意する第1工程と、
前記第2層の前記第1層とは反対側の表面が前記試料に対向し、且つ、前記試料支持体が前記試料の前記非平坦状の表面に沿うように、前記試料上に前記試料支持体を配置する第2工程と、
前記第3層によって前記試料の表面形状を記憶する第3工程と、
前記試料支持体を前記試料から剥離する第4工程と、
前記第3層によって記憶された前記試料の前記表面形状を認識する第5工程と、
前記第1層及び前記第2層を平板状にした後、前記第1層の前記第2層とは反対側に対して、電圧を印加しつつエネルギー線を照射することにより、前記試料の成分をイオン化する第6工程と、
イオン化された前記成分を検出し、イオン化された前記成分の二次元分布を取得する第7工程と、
前記試料の前記表面形状とイオン化された前記成分の前記二次元分布とを合成することにより、イオン化された前記成分の三次元表面分布を取得する第8工程と、を含む質量分析方法。
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JP7507123B2 (ja) | 2021-05-21 | 2024-06-27 | 浜松ホトニクス株式会社 | イオン化方法及び質量分析方法 |
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2018
- 2018-07-30 JP JP2018142333A patent/JP2020020588A/ja active Pending
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