ところで、近年、鉄鉱石に含まれる鉄分の低下、脈石成分の増加が進行しており、その対策として、選鉱処理によって鉄分を高めた微粉鉱石の使用量を増加させていくことが有効と考えられている。この場合、粉鉱石を核粒子として使用し、粉鉱石に微粉鉱石を付着させることで造粒物を作製する。しかし微粉鉱石は造粒性に劣るため、微粉鉱石の使用量を増加させると、造粒物の粒度が小さくなる。この結果、上述した原料充填層の通気性が低下し、ひいては、焼結鉱の生産性が低下するという問題があった。
このため、非特許文献1には、微粉鉱石の造粒性を改善する技術として、粒度10μm未満の鉄鉱石微粒子をバインダとして使用する技術が開示されている。
本発明者は上記知見についてさらに検討を重ね、鉄鉱石微粒子の作製方法として、鉄鉱石を湿式破砕する方法を見出した(特許文献1、2)。この方法では、鉄鉱石を例えばタワーミルで湿式破砕することで粒度10μm未満の破砕鉱石を含むスラリーを作製する。そして、このスラリーを焼結用原料と混練することで、原料混練物を作製する。ついで、原料混練物を造粒することで、造粒物を作製する。さらに、本発明者は、焼結用原料に添加する破砕鉱石の好ましい質量比が焼結用原料及び破砕鉱石の総質量、すなわち造粒物の総質量に対して3質量%以上7質量%未満であることを見出した(特許文献3)。
ところで、本発明者は、特許文献1〜3に開示された技術についてさらに検討を重ねたところ、スラリーを焼結用原料に添加する技術には、以下の問題点があることがわかった。焼結用原料である鉄鉱石は、製鉄所へ入荷後ヤードに一時保管される。その後、鉄鉱石は、適宜焼結工場へと払い出されて造粒ラインに持ち込まれることとなる。ここに、造粒ラインに持ち込まれた鉄鉱石は、ヤード保管中の降雨や、発塵防止の観点から実施される散水等によって、ある程度の水分を保持している。したがって、造粒ラインには、鉄鉱石に含まれる水分が持ち込まれることとなる。以下、造粒ラインに鉄鉱石とともに持ち込まれる水分を「鉱石持込み水分」とも称する。
さらに、特許文献1〜3に開示された方法では、焼結用原料にスラリーが添加される。スラリーは、破砕鉱石及び水分を含む。したがって、造粒ラインには、鉱石持込み水分の他、スラリー中の水分が持ち込まれる。以下、スラリーによって造粒ラインに持ち込まれる水分を「スラリー持込み水分」とも称する。なお、スラリーによって焼結用原料に添加される破砕鉱石の質量は、スラリー濃度及びスラリーの添加量によって自動的に決定される。ここに、スラリー濃度は、スラリーの固体濃度である。すなわち、スラリー濃度は、スラリーの総質量に対する破砕鉱石の質量%となる。このように、造粒ラインには、鉱石持込み水分及びスラリー持込み水分が持ち込まれる。
ところで、焼結用原料に添加する水分量が多いほど、造粒物の粒度(厳密には、粒度分布等から求まる平均粒度(平均粒度は例えば粒度の算術平均値(JIS−M8706(2008)付属書J))となる。)が大きくなる傾向がある。そして、造粒物の粒度が大きいほど、原料充填層の空隙率及び気孔が大きくなる。しかし、水分量が所定値以上となる場合、造粒物の粒度が過剰となり、例えば直径20mmを超える様な粒子が生成され始める。この様な粗大擬似粒子は、焼結機に充填され焼成工程を経ても粒子中心部まで十分に加熱されず、溶融不足ひいては強度不足の焼成体となり成品歩留を低下させる要因となってしまう。したがって、造粒物の含水量の質量比には適正値が存在する。以下、このような適正値を適正水分割合とも称する。微粉鉱石を配合した造粒物の適正水分割合は、造粒物の総質量に対して9〜12質量%程度であることがわかっている。ここに、適正水分割合は所謂外数で示した。以下の説明における各水分割合は、いずれも外数である。
上述したように、特許文献1〜3に開示された方法では、造粒ラインに鉱石持込み水分及びスラリー持込み水分が持ち込まれる。したがって、鉱石持込み水分割合及びスラリー持込み水分割合の合計が適正割合に対して不足している場合には、不足分の水分を造粒ラインに持ち込めば(すなわち、焼結用原料に添加すれば)良い。鉱石持込み水分割合は、造粒物の総質量に対する鉱石持込み水分の質量%である。スラリー持込み水分割合は、造粒物の総質量に対するスラリー持込み水分の質量%である。以下、鉱石持込み水分及びスラリー持込み水分とは別に造粒ラインに持ち込まれる水分を造粒添加水分とも称する。
ここに、微粉鉱石は保水能力が高く、鉄鉱石ヤードから造粒ラインに持ち込まれる時点で他の粉鉱石と比較して水分を多く含んでおり、特に含水割合の多い銘柄では、含水割合は微粉鉱石の総質量に対して10質量%程度に達している。
本発明者は、特許文献3において、焼結用原料に破砕鉱石を3質量%以上7質量%未満の質量比で添加することが好ましいことを提示した。しかし、適正水分割合及び鉱石持込み水分割合の制約から、焼結用原料に破砕鉱石を好ましい質量比で添加できない場合があった。以下、鉱石持込み水分が6.0質量%となる鉄鉱石及びスラリー濃度が40質量%であるスラリーを用いて含水割合が10.5質量%となる造粒物を作製する場合を例としてこの問題を説明する。
なお、この例では、焼結用原料は粉鉱石及び微粉鉱石とする。微粉鉱石に含まれる水分は、微粉鉱石の総質量に対して10質量%程度に達することが多いが、粉鉱石に含まれる水分は微粉鉱石に比べると少ない。したがって、鉱石持込み水分は10質量%よりも低く、この例では6質量%となる。
また、この例では、造粒ラインに4.5質量%の水分を持ち込む必要がある。そして、4.5質量%の水分の全てをスラリー持込み水分で賄う場合、焼結用原料に添加される破砕鉱石の質量%は造粒物の総質量に対して概ね3.0質量%程度となる。したがって、破砕鉱石の質量%は、上述した好ましい範囲の下限値となる。しかし、造粒物の含水割合を適正水分割合の範囲内でさらに減らす場合、あるいは、鉱石持込み水分割合が6.0質量%よりも多い場合には、破砕鉱石の添加量は3.0質量%よりも小さくなってしまう。
つまり、適正水分割合及び鉱石持込み水分割合によって、スラリー持込み水分割合の上限値が決まる。したがって、スラリー持込み水分割合が上限値を超えない範囲で、破砕鉱石の添加量を造粒物の総質量に対して3質量%以上7質量%未満とする必要がある。しかし、スラリー濃度が低い場合、このような処理を行うことができない場合があった。
この問題を解決する方法として、スラリー濃度を高めるという方法が挙げられる。上記の例において、造粒物の含水割合をさらに減らす必要がある場合、あるいは、鉱石持込み水分が6.0質量%よりも多い場合には、スラリー濃度を40質量%よりも大きくすれば良い。
ただし、スラリー濃度を高めた場合、スラリーの流動性が低下する。したがって、スラリー濃度が高い場合、造粒前に焼結用原料及びスラリーを十分に混練する必要がある。混練が不充分であると、スラリー中の破砕鉱石が緻密な凝集体を形成してしまう。この場合、破砕鉱石は、微粉鉱石粒子間に分散して入り込むことで造粒物強度を向上させるというバインダとしての効果発現が抑制あるいは消滅することが懸念される。この結果、造粒物の粒度が小さくなる可能性がある。逆にいえば、焼結用原料及びスラリーを十分に混練することで、粒度の大きな造粒物を作製できると想定される。
そこで、本発明者は、混練に用いるミキサーとして高速撹拌ミキサーに着目し、高速撹拌ミキサーによる撹拌時間を長くすることを試みた。撹拌時間を長くすることで、スラリー及び焼結用原料が十分に混練されるので、造粒物の粒度が大きくすることができると想定されたからである。しかしながら、単に撹拌時間を長くしただけでは、造粒物の粒度がかえって小さくなる場合があった。
なお、スラリーの流動性を高めることで、造粒物の粒度を大きくする方法も考えられる。スラリーの流動性を高める方法としては、特許文献4、5、非特許文献2に開示されているように、スラリー温度の上昇、スラリーのpHの適正化、スラリーへの分散剤の添加等によってスラリー中の固体粒子間の相互作用力を低下させる方法が知られている。しかし、これらの方法では、スラリーの製造コストを高め、ひいては、造粒物の製造コストを高めてしまう。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、微粉鉱石を含む造粒物の粒度を低コストで大きくすることが可能な、新規かつ改良された焼結用原料の造粒方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、全焼結用原料のうち、粉鉱石及び微粉鉱石を含む副焼結用原料を造粒する副造粒工程と、全焼結用原料のうち、副焼結用原料以外の主焼結用原料を造粒する主造粒工程と、を含み、副造粒工程は、副焼結用原料と、粒度10μm未満のバインダ用鉄鉱石を含むスラリーとを高速撹拌ミキサーで混練することで、原料混練物を作製する工程と、原料混練物を造粒する工程と、を含み、スラリーの固体濃度が40質量%以上70質量%未満の場合は、高速撹拌ミキサーによる撹拌時間を30秒以上120秒未満とし、スラリーの固体濃度が70質量%以上80質量%未満の場合は、高速撹拌ミキサーによる撹拌時間を60秒以上120秒未満とすることを特徴とする、焼結用原料の造粒方法が提供される。
ここに、原料混練物に含まれるバインダ用鉄鉱石は、副焼結用原料及びバインダ用鉄鉱石の総質量に対して3質量%以上7質量%未満であってもよい。
また、副焼結用原料は、微粉鉱石を副焼結用原料の総質量に対して50〜85質量%含んでいてもよい。
以上説明したように本発明によれば、微粉鉱石を含む副焼結用原料にスラリーを添加することで、微粉鉱石の造粒性を高める。さらに、高速撹拌ミキサーによる撹拌時間をスラリー濃度に応じて調整する。これにより、造粒物、具体的には副造粒物の平均粒度をより大きくすることができる。さらに、スラリーの流動性を高めるための処理が不要となるので、低コストで造粒物の粒度を大きくすることができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.本発明者による検討>
本発明者は、スラリー濃度と撹拌時間について鋭意検討した結果、本実施形態に係る焼結用原料の造粒方法に想到した。そこで、まず、本発明者が行った検討について説明する。
粉鉱石及び微粉鉱石を焼結用原料として用いて造粒物を作製する場合、粉鉱石は、造粒物の核粒子として機能する。すなわち、粉鉱石のうち、粒度が1mm以上の粒子が核粒子となり、この核粒子の表面に微粉鉱石が付着する。これにより、造粒物が作製される。ここに、微粉鉱石は造粒性が劣っているので、粒度10μm未満の破砕鉱石をバインダとして使用する。具体的には、破砕鉱石が分散したバインダを粉鉱石及び微粉鉱石に添加する。
ここに、適正水分割合及び鉱石持込み水分割合によって、スラリー持込み水分割合の上限値が決まる。したがって、スラリー持込み水分割合が上限値を超えない範囲で、破砕鉱石の添加量を造粒物の総質量に対して3質量%以上7質量%未満とする必要がある。しかし、スラリー濃度が低い場合、このような処理を行うことができない場合があった。
この問題を解決する方法として、スラリー濃度を高めることが挙げられる。ただし、スラリー濃度を高めた場合、スラリーの流動性が低下する。したがって、スラリー濃度が高い場合、造粒前に焼結用原料及びスラリーを十分に混練する必要がある。焼結用原料及びスラリーの混練が不十分となる場合、造粒物の平均粒度が小さくなる可能性があるからである。
そこで、本発明者は、混練に用いるミキサーとして高速撹拌ミキサーに着目し、高速撹拌ミキサーによる撹拌時間を長くすることを試みた。撹拌時間を長くすることで、スラリー及び焼結用原料が十分に混練されるので、造粒物の粒度が大きくすることができると想定されたからである。しかしながら、単に撹拌時間を長くしただけでは、造粒物の平均粒度がかえって小さくなる場合があった。
本発明者は、この理由について検討した。造粒物の平均粒度は、核粒子である粉鉱石の平均粒度にも依存する。このため、本発明者は、撹拌によって粉鉱石が破砕され、粉鉱石の平均粒度が小さくなったために、造粒物の平均粒度が小さくなったと考えた。
そこで、本発明者は、スラリー濃度と撹拌時間との相関について詳細に検討した。この結果、スラリー濃度が40質量%以上70質量%未満となる場合には、撹拌時間が短いほど、造粒物の平均粒度が大きくなることがわかった。撹拌時間が長いと、核粒子である粉鉱石が破砕され、粉鉱石の平均粒度が小さくなると考えられる。この結果、造粒物の平均粒度が小さくなると考えられる。一方で、スラリー濃度が70質量%以上80質量%未満となる場合、撹拌時間をある程度長くしないと、造粒物の平均粒度は大きくならなかった。撹拌時間が短いと、スラリー中の破砕鉱石が緻密な凝集体を形成してしまうと考えられる。この結果、造粒物の平均粒度が小さくなると考えられる。
上記の検討の結果、スラリー濃度が40質量%以上70質量%未満の場合は、撹拌時間を30秒以上とし、スラリー濃度が70質量%以上80質量%未満の場合は、撹拌時間を60秒以上とすることで、平均粒度を大きくすることができることがわかった。一方、撹拌時間の上限値はスラリー濃度に関わらず120秒未満となる。撹拌時間が長過ぎると、スラリー濃度に関わらず、核粒子である粉鉱石が破砕され、粉鉱石の平均粒度が小さくなると考えられるからである。
なお、スラリー濃度は、上述したように、適正水分割合及び鉱石持込み水分割合の制約があるために、高い値に設定される。言い換えれば、スラリー濃度は、適正水分割合及び鉱石持込み水分割合によって予め決まった値となる。そこで、予め決まったスラリー濃度に応じて、撹拌時間を調整することなる。本発明者は、以上の知見に基づいて、本実施形態に係る焼結用原料の造粒方法に想到した。以下、本実施形態について詳細に説明する。
<2.焼結鉱製造システムの構成>
まず、図1に基づいて、本実施形態に係る焼結鉱製造システム1の構成について説明する。焼結鉱製造システム1は、主造粒ライン10、副造粒ライン20、及び焼結機30を備える。なお、図1では副造粒ライン20は1本であるが、副造粒ライン20は複数用意されても良い。
主造粒ライン10は、全焼結用原料のうち、主焼結用原料を造粒することで、主造粒物を作製するラインである。ここに、焼結用原料は、主原料である鉄含有原料、焼結反応及び成分調整のために必要な副原料、熱源である炭材(固体燃料)、及び返鉱等で構成される。鉄含有原料は、例えば粉鉱石、微粉鉱石等の鉄鉱石、および製鉄ダスト(製鉄ダスト、製鋼ダスト、スケール等)等である。副原料は、石灰石、ドロマイト、転炉スラグ、珪石および橄欖岩等である。炭材は、例えばコークス粉および無煙炭等である。
粉鉱石は、例えば粒度が10mm未満となる鉄鉱石である。粉鉱石の平均粒度は2〜3mm程度であってもよい。平均粒度は、例えば粒度の算術平均値である。もちろん、本実施形態に適用可能な粉鉱石はこの例に限られず、焼結鉱の分野において粉鉱石と称される鉄鉱石は全て本実施形態に適用可能である。なお、本実施形態における粒度は、篩によって測定される。粒度は、目開きの異なる篩によって測定される。例えば、焼結用原料を目開きがXmmの篩に掛けた場合に、篩に残った粒子の粒度はXmm以上となり、篩から落ちた粒子の粒度はXmm未満となる。
微粉鉱石は、例えば粒度が10μm以上100μm未満程度となる鉄鉱石である。上述したように、微粉鉱石は造粒性に劣っている。このため、本実施形態では、バインダ用鉄鉱石(詳細は後述するが、例えば破砕鉱石)によって微粉鉱石を強固に粉鉱石に付着させる。
主焼結用原料は、全焼結用原料のうち、後述する副焼結用原料以外の焼結用原料を意味する。詳細は後述するが、副焼結用原料は、例えば粉鉱石及び微粉鉱石を含む。さらに、副焼結用原料は、微粉鉱石を、副焼結用原料の総質量に対して50〜85質量%含む。したがって、これら以外の焼結用原料が主焼結用原料となる。主焼結用原料の質量%は、全焼結用原料の総質量に対して50質量%よりも大きくなることが好ましい。
主造粒ライン10は、ドラムミキサー11、12を備える。ここに、主造粒ライン10にドラムミキサー11、12を配置したのは、ドラムミキサー11、12は単位時間当りの処理量が大きいからである。主造粒ライン10を用いた主焼結用原料の造粒方法は従来の造粒方法と同様であれば良い。すなわち、ドラムミキサー11には、主焼結用原料が投入される。主焼結用原料には、主焼結用原料の造粒性を改善するためのバインダとして生石灰を添加しても良い。これにより、主造粒物の粒度が大きくなり、ひいては、原料充填層の通気性が向上する。また、主焼結用原料には、原料充填層の通気性を悪化させない程度に微粉鉱石を添加しても良い。主焼結用原料に対する微粉鉱石の添加量は、主焼結用原料の総質量に対して概ね10質量%未満程度としてもよい。
ドラムミキサー11は、主焼結用原料及び添加物を水分とともに混練する。ドラムミキサー12は、ドラムミキサー11から排出された主焼結用原料の混練物を造粒することで、主造粒物を作製する。以上の工程により、主焼結用原料を造粒する。このように、ドラムミキサー11(1次ミキサー)は主焼結用原料を混練する機能を担い、ドラムミキサー12(2次ミキサー)は主焼結用原料を造粒する機能を担う。
ここに、ドラムミキサー11、12は、焼結用原料の造粒に使用されるものであればどのようなものであってもよい。また、本実施形態では、ドラムミキサー11、12によって主焼結用原料を造粒することとしたが、主焼結用原料を造粒することができる装置であればどのような装置を用いても良い。
副造粒ライン20は、全焼結用原料のうち、副焼結用原料を造粒することで、副造粒物を作製するラインである。ここに、副焼結用原料は、例えば粉鉱石及び微粉鉱石を含む。副焼結用原料は、微粉鉱石を、副焼結用原料の総質量に対して50〜85質量%含むことが好ましい。つまり、微粉鉱石が副焼結用原料の過半を占めることが好ましい。このように、比較的造粒し難い鉄鉱石を主造粒ライン10から分離して造粒することで、造粒を効率的に行うことができる。つまり、造粒しにくい微粉鉱石を副造粒ライン20に集中させることで、スラリーの添加を副造粒ライン20のみで行えばよいことになる。
副焼結用原料には、バインダ用鉄鉱石を含むスラリーが添加される。ここに、バインダ用鉄鉱石は、粒度が10μm未満の鉄鉱石であり、例えば上述した破砕鉱石である。破砕鉱石を含むスラリーは、例えば特許文献1、2に開示された製造方法によって作製可能である。
副焼結用原料は、微粉鉱石を含むので、造粒性が劣る。そこで、バインダ用鉄鉱石を含むスラリーを副焼結用原料に添加することで、副焼結用原料の造粒性を高める。つまり、バインダ用鉄鉱石は、核粒子である粉鉱石の表面に付着し、さらに、粉鉱石と微粉鉱石、あるいは微粉鉱石同士を結着させる。
ここに、スラリー濃度は40質量%以上80質量%未満であることが好ましい。上述したように、副焼結用原料は微粉鉱石を含むので、副焼結用原料の鉱石持込み水分割合は多い。このため、スラリー濃度は比較的高い値、すなわち40質量%以上とされることが好ましい。これにより、バインダ用鉄鉱石の添加量を3質量%以上7質量%未満とすることができる。ここに、副焼結用原料の鉱石持込み水分割合は、副造粒物の総質量に対する鉱石持込み水分の質量%である。本実施形態において、各水分割合は所謂外数となる。バインダ用鉄鉱石の添加量の質量%は、副造粒物の総質量に対する質量%となる。スラリー濃度が40質量%未満となる場合、スラリー中に占めるバインダ用鉄鉱石の割合が少なく、バインダ用鉄鉱石の添加量を3質量%以上7質量%未満とすることが困難となる。また、スラリー濃度が80質量%以上となる場合、スラリーは、スラリーとしての流動性をほぼ失い固体に近い状態となる、流動性がいわゆる流動限界値に達すると判断される為である。なお、本発明者は、鉄鉱石を湿式破砕することでスラリーを作製し、スラリー濃度を検証した。この結果、本発明者は、幾つかの鉄鉱石種において概ね同等の80質量%程度の濃度で流動性が失われたことを確認した。
ここに、スラリー濃度及びスラリー添加量は以下の工程で決定される。すなわち、副造粒物の含水割合(副造粒物の総質量に対する水分の質量%)を決定する。例えば、副造粒物100kgに対して含水量が10kgとなる場合、含水割合は10質量%となる。副造粒物の含水割合は、副造粒物の総質量に対して9〜12質量%程度とされることが好ましい。
ついで、鉱石持込み水分割合を特定する。ついで、副造粒物の含水割合と鉱石持込み水分割合の差分をスラリー持込み水分割合の上限値とする。鉱石持込み水分割合は、副造粒物の総質量に対する鉱石持込み水分の質量%である。スラリー持込み水分割合は、副造粒物の総質量に対するスラリー持込み水分の質量%である。ついで、スラリー持込み水分割合が上限値を超えず、かつ、バインダ用鉄鉱石の添加量が副造粒物の総質量に対して3.0質量%以上7.0質量%未満となるように、スラリー濃度及びスラリー添加量を決定する。スラリー持込み水分では副造粒物の水分が不足する場合、別途水分を副焼結用原料に添加しても良い。また、バインダとして生石灰をさらに副焼結用原料に添加しても良い。また、副焼結用原料及び生石灰だけでは焼結反応時に融液源となるCa分や熱源となるC分に乏しい場合、融液源及び熱源を補填するために、副原料やダストやスラグ類を副焼結用原料に添加しても良い。
副造粒ライン20は、高速撹拌ミキサー21及びパンペレタイザ22を備える。高速撹拌ミキサー21は、副焼結用原料及び副焼結用原料の添加物(上述したスラリー等)を混練することで、原料混練物を作製する。
ここに、高速撹拌ミキサー21は、内部に撹拌羽根(アジテータ)やそれに類する機構を有しており、試料に大きな混合、撹拌、せん断力を作用させるミキサーである。通常、攪拌羽根(アジテータ)の周速は、3〜30m/秒に調整される(遊佐郁生:『粉体技術の基礎と応用』、化学装置9月号別冊、工業通信社、2005年)。高速撹拌ミキサー21としては、例えば、ミキサー容器と内部の撹拌羽根(アジテータ)が、それぞれ逆方向に回転することで大きな混合撹拌力を発生させる竪型の高速撹拌ミキサー(日本アイリッヒ社製)等が挙げられる。また、高速撹拌ミキサー21の他の例として、レディゲミキサー/プロシェアミキサー(太平洋機工社製)、ダウミキサー等が挙げられる。もちろん、高速撹拌ミキサー21はこれらの例に限られず、焼結鉱の分野において高速撹拌ミキサーと称されるものであれば本実施形態に適用可能である。副焼結用原料は、微粉鉱石を多量に含むため、比表面積が大きく、造粒されにくい。このため、ドラムミキサーでは副焼結用原料を十分混練することができない場合がある。そこで、本実施形態では、副焼結用原料を混練する装置として、高速撹拌ミキサー21を使用する。
高速撹拌ミキサー21の駆動方式は、バッチ式であっても、連続式であっても良い。高速撹拌ミキサー21がバッチ式となる場合、以下の処理が行われる。すなわち、ミキサー投入口に原料(ここでは、副焼結用原料及び添加物)を投入し、蓋をする。ついで、高速撹拌ミキサー21内で原料が混合される。そして、混合後の原料が同じミキサー投入口から排出される。
高速撹拌ミキサー21が連続式となる場合、以下の処理が行われる。すなわち、混練前の原料(すなわち、副焼結用原料及び添加物)が高速撹拌ミキサー21の一端、例えば上部から投入され、もう一端、例えば底部から排出される。
高速撹拌ミキサー21による撹拌時間(言い換えれば、高速撹拌ミキサー21内の滞留時間)は、スラリー濃度に応じて異なる。すなわち、スラリー濃度が40質量%以上70質量%未満の場合は、撹拌時間を30秒以上120秒未満とする。一方、スラリー濃度が70質量%以上80質量%未満の場合は、撹拌時間を60秒以上120秒未満とする。
スラリー濃度が40質量%以上70質量%未満の場合、スラリー濃度は比較的低い。この場合、撹拌時間が長過ぎると、核粒子である粉鉱石が破砕され、粉鉱石の平均粒度が小さくなると考えられる。このため、撹拌時間が長過ぎると、造粒物の平均粒度が小さくなる。そこで、スラリー濃度が40質量%以上70質量%未満の場合、撹拌時間を30秒以上120秒未満とする。なお、この場合であっても、ある程度の撹拌時間は必要である。そこで、撹拌時間の下限値を30秒以上とした。撹拌時間が30秒未満となる場合、スラリー中の破砕鉱石が緻密な凝集体を形成してしまうと考えられる。この結果、副造粒物の平均粒度が小さくなると考えられる。
一方、スラリー濃度が70質量%以上80質量%未満の場合、スラリー濃度は比較的高い。この場合、十分な撹拌が必要になる。撹拌時間が短いと、スラリー中の破砕鉱石が緻密な凝集体を形成してしまうと考えられる。このため、撹拌時間が短いと、造粒物の平均粒度が小さくなる。そこで、スラリー濃度が70質量%以上80質量%未満の場合は、撹拌時間を60秒以上とする。なお、この場合であっても、撹拌時間が長過ぎると多くの粉鉱石が破砕され、粉鉱石の平均粒度が低下する。したがって、撹拌時間の上限値は120秒未満とする。
ここに、撹拌時間は、高速撹拌ミキサー21の駆動方式に応じて異なる。高速撹拌ミキサー21がバッチ式の場合、撹拌時間は、高速撹拌ミキサー21を運転した時間となる。すなわち、撹拌時間には、投入および排出作業にかかる時間は含まれない。したがって、高速撹拌ミキサー21の運転時間を調整することで、撹拌時間を調整可能である。
一方、高速撹拌ミキサー21が連続式となる場合、原料が高速撹拌ミキサー21に投入されてから排出されるまで、すなわち原料が高速撹拌ミキサー21内に存在していた時間が撹拌時間となる。すなわち、連続式の高速撹拌ミキサー21は、いわゆる定常状態で運転される。定常状態では、原料供給量と排出量がほぼ一定となる。供給量が排出量を上回ると高速撹拌ミキサー21から原料が溢れ、逆だと高速撹拌ミキサー21内が空になる為、高速撹拌ミキサー21が機能しない。高速撹拌ミキサー21を定常状態で運転するには、原料供給量、ミキサー装置条件、及び運転条件等を適宜調整すれば良い。
高速撹拌ミキサー21が定常状態で運転されている場合、高速撹拌ミキサー21内では、概ね一定量の原料が滞留して混合されている。
したがって、原料供給量及びミキサー内の原料滞留量から撹拌時間が計算される。例えば、原料供給量および排出量が1t/minで滞留量が2tの場合、2minで原料が入れ替わる計算となる。このため為、撹拌時間は2minとなる。なお、実際には一部の原料はより長時間ミキサー内に留まり、また一部は素通りしてしまう等のばらつきは存在する。このため、撹拌時間は平均値とされることが好ましい。例えば、ある期間内で複数回撹拌時間を測定し、これらの算術平均値を撹拌時間とする。撹拌時間は、例えば、原料投入速度及び原料排出速度を調整する、ミキサー容量を調整すること等によって調整可能である。
パンペレタイザ22は、高速撹拌ミキサー21から排出された原料混練物を造粒することで、副造粒物を作製する。なお、原料混練物を造粒できる装置はパンペレタイザ22に限られない。すなわち、原料混練物を造立できる装置であれば、どのような装置であっても良い。
副造粒物が作製された後、副造粒ライン20は、主造粒ライン10と合流する。これにより、主造粒物に副造粒物が混合される。その後、主造粒物及び副造粒物は焼結機30に装入される。焼結機30は、主造粒物及び副造粒物を焼成することで、焼結鉱を作製する。
<3.焼結用原料の造粒方法>
つぎに、上述した焼結鉱製造システム1を用いた焼結用原料の造粒方法について説明する。焼結用原料の造粒方法は、主焼結用原料を造粒する主造粒工程と、副焼結用原料を造粒する副造粒工程とを含む。主造粒工程は主造粒ライン10で行われ、副造粒工程は副造粒ライン20で行われる。主造粒工程は、従来と同様であればよい。
副造粒工程は、副焼結用原料及びスラリーを高速撹拌ミキサー21で混練することで、原料混練物を作製する工程と、パンペレタイザ22で原料混練物を造粒する工程とを含む。ここに、スラリーは、上述したバインダ用鉄鉱石を含む。
ここに、スラリー濃度及びスラリー添加量は以下の工程で決定される。すなわち、副造粒物の含水割合を決定する。副造粒物の含水割合は、副造粒物の総質量に対して9〜12質量%程度とされることが好ましい。
ついで、鉱石持込み水分割合を特定する。ついで、副造粒物の含水割合と鉱石持込み水分割合の差分をスラリー持込み水分割合の上限値とする。ついで、スラリー持込み水分割合が上限値を超えず、かつ、バインダ用鉄鉱石の添加量が副造粒物の総質量に対して3.0質量%以上7.0質量%未満となるように、スラリー濃度及びスラリー添加量を決定する。スラリー持込み水分では副造粒物の水分が不足する場合、別途水分を副焼結用原料に添加しても良い。
また、原料混練物を作製する工程では、スラリー濃度に応じて高速撹拌ミキサーによる撹拌時間が調整される。すなわち、スラリー濃度が40質量%以上70質量%未満の場合は、撹拌時間を30秒以上120秒未満とする。一方、スラリー濃度が70質量%以上80質量%未満の場合は、撹拌時間を60秒以上120秒未満とする。
このように、本実施形態では、微粉鉱石を含む副焼結用原料にスラリーを添加することで、微粉鉱石の造粒性を高める。さらに、高速撹拌ミキサー21による撹拌時間をスラリー濃度に応じて調整する。具体的には、スラリー濃度が40質量%以上70質量%未満の場合は、高速撹拌ミキサー21による撹拌時間を30秒以上120秒未満とし、スラリー濃度が70質量%以上80質量%未満の場合は、高速撹拌ミキサー21による撹拌時間を60秒以上120秒未満とする。これにより、副造粒物の平均粒度をより大きくすることができる。さらに、スラリーの流動性を高めるための処理が不要となるので、低コストで副造粒物の粒度を大きくすることができる。
本実施例では、副造粒ライン20を模擬した実験を行った。具体的には、まず、破砕鉱石を含むスラリーを準備した。スラリーは、特許文献1、2に開示された方法に準拠して作製した。ここに、スラリー濃度を40質量%から80質量%まで10質量%刻みで変化させた。ついで、高速撹拌ミキサー21(日本アイリッヒ社製、アイリッヒミキサー、型番R02))に副焼結用原料及びスラリーを投入した。ここに、副焼結用原料及び破砕鉱石の内訳及び質量比は、粉鉱石24質量%、微粉鉱石71質量%、破砕鉱石5質量%とした。つまり、破砕鉱石の質量比を一定とし、スラリー濃度を変更した。また、副造粒物の含水割合は9.0質量%とした。スラリーの添加だけでは水分が不足する場合、不足分の水を所謂造粒添加水分として高速撹拌ミキサー21に投入した。
ついで、副焼結用原料及びスラリーを高速撹拌ミキサー21で混練した。ここに、高速撹拌ミキサー21のアジテータの周速は10m/秒とし、混練時間を、30秒、60秒、120秒の何れかとした。これにより作製された原料混練物をパンペレタイザ22に装入し、原料混練物をパンペレタイザ22で300秒間造粒した。造粒された造粒物について、平均粒度を測定し、平均粒度を評価指標とした。ここで、平均粒度は以下の工程で測定した。(1)造粒物約500gを採取し、105℃に保持された乾燥機に5−10分間保持した。これは、後に篩分けする際に、造粒物が網に付着して篩分けを困難にするのを抑制する為に造粒物表面の水分を低下させる操作である。(2)乾燥機から取り出した造粒物を幾つかの目開きの篩にかけて篩分けした。(9.5,8.0,4.75,2.8,2.0,1.0mmのJIS規格準拠200mmφ丸篩使用)(3)各粒度区分の質量比率から算術平均径を求めた。このように、本実施例では、スラリー濃度及び撹拌時間を変更して副造粒物を作製し、副造粒物の平均粒度を測定した。結果を図2に示す。
図2から明らかな通り、スラリー濃度が40〜60質量%となる場合、撹拌時間が短いほど副造粒物の平均粒度が大きくなった。撹拌時間が長いほど多くの粉鉱石が破砕され、粉鉱石の平均粒度が小さくなると考えられる。この結果、造粒物の平均粒度が小さくなると考えられる。いずれの撹拌時間においても、実用上問題ない平均粒度の副造粒物が得られたので、撹拌時間は30秒以上120秒未満が好ましいことがわかった。
一方、スラリー濃度が70〜80質量%となる場合、撹拌時間が30秒となる場合に副造粒物の平均粒度が最も小さくなり、撹拌時間が60秒となる場合に副造粒物の平均粒度が最も大きくなった。したがって、撹拌時間が30秒となる場合、スラリーの撹拌が不十分となり、スラリー中の破砕鉱石が緻密な凝集体を形成してしまうと考えられる。この結果、副造粒物として少数の粗大な粒子と多数の小粒子が生成され、副造粒物の平均粒度が小さくなると考えられる。なお、撹拌時間が60秒となる場合の平均粒度は、撹拌時間が120秒となる場合の平均粒度よりも大きくなった。したがって、スラリー濃度が60秒以上となる場合、撹拌時間が長いほど多くの粉鉱石が破砕されると考えられる。いずれの撹拌時間においても、実用上問題ない平均粒度の副造粒物が得られたが、撹拌時間は60秒以上が好ましいことがわかった。また、上限値は120秒未満であることが好ましいこともわかった。
図2によれば、撹拌時間と平均粒度との相関が変化する境界値は、スラリー濃度が60〜70質量%となる範囲に存在すると考えられるが、本発明者は、当該境界値を当該相関が実際に変化した70質量%とした。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。