JP2020015815A - ゴム組成物、空気入りタイヤ及び加硫ブラダー - Google Patents

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Abstract

【課題】離型性に優れたゴム組成物、並びに、該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ及び加硫ブラダーを提供する。【解決手段】ジエン系ゴムを含むゴム成分と、見かけ比重が0.4g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径が10μm未満の酸化マグネシウムとを含有し、上記ゴム成分100質量%中、上記ジエン系ゴムの含有量が70質量%以上であるゴム組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物、空気入りタイヤ及び加硫ブラダーに関する。
タイヤ等のゴム製品は、通常、材料を混練機で混練してから、押出機で各部材毎に成形した後、加硫金型で加硫する工程を経て製造されるが、混練機、押出機や加硫金型への過密着が発生すると、製品不良や金型汚染が発生頻度が高くなる。
これまで、過密着の発生を抑制するために種々の離型剤の検討が進められており、例えば、特許文献1では、ω−9脂肪酸アミドとステアリン酸カルシウムとの溶融混合物が開示されている。
特開2017−206583号公報
しかしながら、本発明者らが検討したところ、ステアリン酸カルシウムは、単体では高温でも粒状で球状や板状といった形状を維持するが、オイルや樹脂を含むゴム組成物中で混練すると融点降下し、粘性体となり、物理的離型性を十分に向上できない場合があった。
本発明は、前記課題を解決し、離型性に優れたゴム組成物、並びに、該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ及び加硫ブラダーを提供することを目的とする。
第一の本発明は、ジエン系ゴムを含むゴム成分と、見かけ比重が0.4g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径が10μm未満の酸化マグネシウムとを含有し、上記ゴム成分100質量%中、上記ジエン系ゴムの含有量が70質量%以上であるゴム組成物に関する。
上記ゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対する上記酸化マグネシウムの含有量が1質量部以下であることが好ましい。
上記ゴム組成物は、水酸化アルミニウムを含むフィラーを含有し、上記ゴム成分100質量部に対する上記水酸化アルミニウムの含有量が8質量部以下であることが好ましい。
上記ゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対する上記フィラーの含有量が100質量部以上である場合、より効果的である。
上記ゴム組成物は、パラフィンワックスを含有し、上記ゴム成分100質量部に対する上記パラフィンワックスの含有量が2.4質量部以下であることが好ましい。
上記ゴム組成物は、タイヤ外層用ゴム組成物であることが好ましい。
第一の本発明はまた、上記タイヤ外層用ゴム組成物を用いて作製したタイヤ外層部材を有する空気入りタイヤに関する。
第二の本発明は、ブチル系ゴムを含むゴム成分と、見かけ比重が0.3g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径が3μm未満の酸化マグネシウムとを含有し、上記ゴム成分100質量%中、上記ブチル系ゴムの含有量が70質量%以上であるゴム組成物に関する。
上記ゴム組成物は、芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素との共重合体を含有することが好ましい。
上記ゴム組成物は、加硫ブラダー用ゴム組成物又はインナーライナー用ゴム組成物であることが好ましい。
第二の本発明はまた、上記加硫ブラダー用ゴム組成物を用いて作製した加硫ブラダーに関する。
第二の本発明はまた、上記インナーライナー用ゴム組成物を用いて作製したインナーライナーを有する空気入りタイヤに関する。
第一の本発明によれば、所定量のジエン系ゴムと、見かけ比重が0.4g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径が10μm未満の酸化マグネシウムとを含有するゴム組成物であるので、良好な離型性が得られる。
第二の本発明によれば、所定量のブチル系ゴムと、見かけ比重が0.3g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径が3μm未満の酸化マグネシウムとを含有するゴム組成物であるので、良好な離型性が得られる。
第一の本発明は、所定量のジエン系ゴムと、見かけ比重が0.4g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径が10μm未満の酸化マグネシウムとを含有するゴム組成物であり、第二の本発明は、所定量のブチル系ゴムと、見かけ比重が0.3g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径が3μm未満の酸化マグネシウムとを含有するゴム組成物である。
酸化マグネシウムは、下剤、整腸剤等の医薬品としても使用されているが、ゴムの分野においては、加硫遅延剤として、スコーチ抑制のために使用されている。この効果は、酸化マグネシウムの吸水性によってゴム組成物中の水分率が一定に保たれることで、加硫促進剤の分解速度も一定に保たれることで発揮されると考えられる。
加硫遅延剤を配合すると、初期加硫速度(t10)が遅くなることで、混練物の易流動状態の時間が長くなったり、混練物の内部からの液状成分の流出が増加する。これにより、金属のミクロ凹凸への濡れ性や接触面積が増加するため、通常、設備への過密着が発生しやすくなり、離型性が悪化すると予想される。
しかしながら、第一及び第二の本発明のゴム組成物では、見かけ比重及び質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径(d50)が特定の範囲内である酸化マグネシウムを使用することで、設備金属面とゴム表面とに物理的隔離を生じせしめ、従来の離型剤よりも優れた離型性が得られる。これは、上記酸化マグネシウムは、耐水性、耐有機溶剤性があるため、オイルや樹脂を含むゴム組成物中で混練しても、溶融せず、形状が保持されるためであると推測される。
<第一の本発明>
以下、第一の本発明に係るゴム組成物及び空気入りタイヤについて説明する。
上記ゴム組成物は、ジエン系ゴムを含む。ゴム成分100質量%中のジエン系ゴムの含有量は、70質量%以上であればよいが、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
ジエン系ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレン系ゴム(天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、SBR、BR、NR、IRが好ましく、SBR、BRがより好ましい。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。市販品としては、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
変性SBRとして、特に下記式で表される化合物(変性剤)により変性されたSBRが好適である。
Figure 2020015815
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
上記式で表される化合物(変性剤)により変性された変性SBRとしては、なかでも、溶液重合のスチレンブタジエンゴム(S−SBR)の重合末端(活性末端)を上記式で表される化合物により変性されたSBR(特開2010−111753号公報に記載の変性SBR等)が好適に用いられる。
、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3である。また、R及びRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4〜8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
上記変性剤の具体例としては、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
変性SBRとしては、以下の化合物(変性剤)により変性された変性SBRも好適に使用できる。変性剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4−ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
ビス−(1−メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4−モルホリンカルボニルクロリド、1−ピロリジンカルボニルクロリド、N,N−ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N−ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3−ビス−(グリシジルオキシプロピル)−テトラメチルジシロキサン、(3−グリシジルオキシプロピル)−ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
(トリメチルシリル)[3−(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3−(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN−置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジ−t−ブチルアミノベンゾフェノン、4−N,N−ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−ビス−(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4−N,N−ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−メチル−5−メチル−2−ピロリドン等のN−置換ピロリドンN−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−フェニル−2−ピペリドン等のN−置換ピペリドン;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−フェニル−ε−カプロラクタム、N−メチル−ω−ラウリロラクタム、N−ビニル−ω−ラウリロラクタム、N−メチル−β−プロピオラクタム、N−フェニル−β−プロピオラクタム等のN−置換ラクタム類;の他、
N,N−ビス−(2,3−エポキシプロポキシ)−アニリン、4,4−メチレン−ビス−(N,N−グリシジルアニリン)、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン類、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルマレイミド、N,N−ジエチル尿素、1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジビニルエチレン尿素、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、4−N,N−ジメチルアミノアセトフェン、4−N,N−ジエチルアミノアセトフェノン、1,3−ビス(ジフェニルアミノ)−2−プロパノン、1,7−ビス(メチルエチルアミノ)−4−ヘプタノン等を挙げることができる。
なお、上記化合物(変性剤)による変性は公知の方法で実施可能である。
SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、SBRのスチレン量は、H−NMR測定によって測定できる。
SBRのビニル量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、SBRのビニル量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
SBRのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−100℃以上、より好ましくは−80℃以上であり、また、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−40℃以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、Tgは、JIS−K7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した値である。
SBRの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40万以上、より好ましくは60万以上、更に好ましくは75万以上であり、また、好ましくは150万以下、より好ましくは120万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
SBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。上限は特に限定されず、高性能タイヤ(競技用タイヤ)に使用される場合、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含量のBR(ハイシスBR)、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(希土類系BR)、スズ化合物により変性されたスズ変性ブタジエンゴム(スズ変性BR)等、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。スズ変性BRは、通常、低シス含量のBR(ローシスBR)である。また、BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよく、変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。変性BRは、ローシスBR、ハイシスBRのいずれであってもよい。市販品としては、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。耐摩耗性の観点からは、希土類系BRが好ましい。
希土類系BRとしては、従来公知のものを使用でき、例えば、希土類元素系触媒(ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒)などを用いて合成したものが挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたネオジム系触媒を用いて合成されたブタジエンゴム(Nd系BR)が好ましい。
BRのシス含量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上であり、上限は特に限定されない。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
BRのビニル量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、下限は特に限定されない。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのビニル量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
BRのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−160℃以上、より好ましくは−130℃以上であり、また、好ましくは−60℃以下、より好ましくは−90℃以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、見かけ比重が0.4g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径(d50)が10μm未満の酸化マグネシウムを含有する。
上記酸化マグネシウムの市販品としては、共和化学工業(株)、富士フイルム和光純薬(株)、キシダ化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記酸化マグネシウムの見かけ比重は、0.4g/ml未満であればよいが、好ましくは、0.3g/ml以下、より好ましくは0.25g/ml以下であり、また、好ましくは0.05g/ml以上、より好ましくは0.15g/ml以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記酸化マグネシウムの見かけ比重は、50mlメスシリンダーに見かけ容積で30ml量り取り、その質量から算出して求めた値である。
上記酸化マグネシウムのd50は、10μm未満であればよいが、好ましくは4.5μm以下、より好ましくは1.5μm以下、更に好ましくは0.75μm未満であり、また、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.45μm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記酸化マグネシウムのd50は、レーザー回折散乱法によって得られた質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径である。
上記酸化マグネシウムの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは115m/g以上であり、また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは225m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記酸化マグネシウムのNSAは、JIS Z8830:2013に準拠してBET法で測定される値である。
上記酸化マグネシウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、特に好ましくは0.3質量部以上であり、また、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、フィラーを含有することが好ましい。これにより、効果がより良好に得られる傾向がある。
フィラーとしては、水酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、カーボンブラック、シリカ、タルク、アルミナ、クレー、マイカ等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、水酸化アルミニウム、硫酸マグネシウム、カーボンブラック、シリカが好ましく、水酸化アルミニウム、カーボンブラック、シリカがより好ましい。
なお、本明細書において、酸化マグネシウムは、フィラーには含まれない。
フィラーの含有量(例えば、フィラーとして水酸化アルミニウム、カーボンブラック、シリカの3種を使用する場合、これらの合計量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは80質量部以上、より好ましくは85質量部以上、更に好ましくは90質量部以上、特に好ましくは100質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、更に好ましくは140質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物が水酸化アルミニウムを含有することで、ウェットグリップ性能を向上できる。また、水酸化アルミニウムを用いた場合、その扁平性や配向性の影響により、生ゴム生地(未加硫ゴム組成物)の平滑性が高くなり、金属表面への濡れ性が向上するため、離型性が低下する傾向があるが、上記酸化マグネシウムと併用することで、良好な離型性を確保することができる。
なお、本明細書において、水酸化アルミニウムとは、Al(OH)又はAl・3HOを意味する。市販品としては、住友化学(株)、昭和電工(株)、Nabaltec社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
水酸化アルミニウムの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは5m/g以上、より好ましくは7m/g以上であり、また、好ましくは50m/g以下、より好ましくは30m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、水酸化アルミニウムのNSAは、JIS Z8830:2013に準拠してBET法で測定される値である。
水酸化アルミニウムを含有する場合、ゴム成分100質量部に対する水酸化アルミニウムの含有量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、離型性とともに、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性がバランスよく得られる。
上記ゴム組成物がカーボンブラックを含有することで、効果がより良好に得られる傾向がある。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは110m/g以上であり、また、好ましくは200m/g以下、より好ましくは150m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217−2:2001に準拠して測定される値である。
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
上記ゴム組成物がシリカを含有することで、効果がより良好に得られる傾向がある。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、エボニックデグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは110m/g以上、より好ましくは150m/g以上、更に好ましくは170m/g以上であり、また、好ましくは300m/g以下、より好ましくは280m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上、更に好ましくは90質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、さらに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。これにより、効果がより良好に得られる傾向がある。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT−Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、粘着性樹脂を含有することが好ましい。これにより、効果がより良好に得られる傾向がある。
粘着性樹脂としては、タイヤ工業において慣用されるフェノール系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)等の芳香族炭化水素系樹脂、C5系樹脂、C8系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂等の脂肪族炭化水素系樹脂や、これらの水素添加物等が挙げられる。市販品としては、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、日本ゼオン(株)、ハリマ化成(株)、東亞合成(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体(スチレン系化合物)を構成モノマーとして含むポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体との共重合体や、これらの水素添加物等を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル類、テルペン、クロロプレン、ブタジエンイソプレン等の共役ジエン類、1−ブテン、1−ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
効果がより良好に得られる傾向があるという理由から、スチレン系樹脂は、α−メチルスチレン系樹脂(α−メチルスチレン単独重合体、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましく、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。
スチレン系樹脂の軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上であり、また、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本発明において、軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
テルペン系樹脂は、テルペン系化合物(テルペン系単量体)を構成モノマーとして含むポリマーであり、テルペン系化合物を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、テルペン系化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン系化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂や、これらの水素添加物等を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
テルペン系化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
芳香族変性テルペン樹脂に使用される芳香族化合物としては、フェノール系化合物、スチレン系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
効果がより良好に得られる傾向があるという理由から、テルペン系樹脂は、ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂(特に、テルペン系化合物とスチレン系化合物との共重合体)が好ましい。
テルペン系樹脂の軟化点は、好ましくは90℃以上、より好ましくは120℃以上であり、また、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
スチレン系樹脂及び/又はテルペン系樹脂を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、ワックスを含有することが好ましい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴム組成物の耐オゾン性の観点では、パラフィンワックスが好ましい。パラフィンワックスを使用すると、物理的皮膜を形成するため、耐オゾン性が向上する一方で、離型性やウェットグリップ性能が低下する傾向があるが、上記ゴム組成物では、上記酸化マグネシウムや、必要に応じて水酸化アルミニウムを配合することで、パラフィンワックスを使用しても、良好な離型性及びウェットグリップ性能を確保することができる。
また、マイクロクリスタリンワックスは、耐オゾン性の向上効果は少ないものの、離型性の向上効果に優れるという点で、好ましい。
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは2.6質量部以下、より好ましくは2.4質量部以下、更に好ましくは1.2質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、脂肪酸、特にステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.6質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物等を更に配合してもよい。添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜200質量部が好ましい。
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100〜180℃、好ましくは120〜170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85〜110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140〜200℃、好ましくは150〜195℃である。加硫時間は、通常5〜15分である。
上記ゴム組成物は、トレッド、サイドウォール、クリンチ、ウイング等のタイヤ外層部材に好適に使用可能であり、トレッド(キャップトレッド)に特に好適である。
第一の本発明に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等に使用可能であり、特に、乗用車用タイヤ、高性能タイヤ(競技用タイヤ)に好適である。
<第二の本発明>
以下、第二の本発明に係るゴム組成物、加硫ブラダー及び空気入りタイヤについて説明する。
上記ゴム組成物は、ブチル系ゴムを含む。ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量は、70質量%以上であればよいが、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
ブチル系ゴムとしては、臭素化ブチルゴム(BR−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンとp−アルキルスチレンとの共重合体、該共重合体のハロゲン化物等が挙げられる。市販品としては、エクソンモービル社、JSR(株)、日本ブチル(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、インナーライナー用においては、ハロゲン化ブチルゴムが好ましく、臭素化ブチルゴムがより好ましい。加硫ブラダー用ゴム組成物においては、ブチルゴムとジエン系ゴムであるクロロプレンゴムとの併用、又は、イソブチレンとp−アルキルスチレンとの共重合体が好ましい。
上記ゴム組成物は、見かけ比重が0.3g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径(d50)が3μm未満の酸化マグネシウムを含有する。
上記酸化マグネシウムの市販品としては、共和化学工業(株)、富士フイルム和光純薬(株)、キシダ化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記酸化マグネシウムの見かけ比重は、0.3g/ml未満であればよいが、好ましくは0.25g/ml未満であり、また、好ましくは0.05g/ml以上、より好ましくは0.15g/ml以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記酸化マグネシウムの見かけ比重は、50mlメスシリンダーに見かけ容積で30ml量り取り、その質量から算出して求めた値である。
上記酸化マグネシウムのd50は、3μm未満であればよいが、好ましくは1.5μm未満、より好ましくは0.75μm未満であり、また、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.45μm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記酸化マグネシウムのd50は、レーザー回折散乱法によって得られた質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径である。
上記酸化マグネシウムの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは115m/g以上であり、また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは225m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記酸化マグネシウムのNSAは、JIS Z8830:2013に準拠してBET法で測定される値である。
上記酸化マグネシウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上であり、また、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素との共重合体を含有することが好ましい。これにより、良好な空気遮断性(空気圧保持性)が得られる。
上記共重合体は、スチレン等の芳香族炭化水素と、エチレン、プロピレン等の脂肪族炭化水素とを構成モノマーとして含むポリマー(樹脂)であり、市販品としては、ストラクトール社、performance additive社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、エチレン、プロピレン及びスチレンを構成モノマーとして含む樹脂(エチレンプロピレンスチレン共重合体)が好ましい。
上記共重合体の軟化点は、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは100℃以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記共重合体がエチレンプロピレンスチレン共重合体である場合、エチレンプロピレンスチレン共重合体100質量%中のエチレンプロピレンの含有量(EP含有量)は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記共重合体を含有する場合、エチレンプロピレンスチレン共重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有してもよい。
カーボンブラックとしては、第一の本発明と同様のものを使用可能である。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは15m/g以上、より好ましくは30m/g以上であり、また、好ましくは100m/g以下、より好ましくは50m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
上記ゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、第一の本発明と同様のものを使用可能である。
オイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、第一の本発明と同様のものを使用可能であるが、キノリン系老化防止剤が好ましい。
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、脂肪酸、特にステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、第一の本発明と同様のものを使用可能である。
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、第一の本発明と同様のものを使用可能である。
酸化亜鉛を含有する場合、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、第一の本発明と同様のものを使用可能である。
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、第一の本発明と同様のものを使用可能であるが、チアゾール系加硫促進剤が好ましい。
加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物、シリカ、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、硫酸マグネシウム等を更に配合してもよい。添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜200質量部が好ましい。フィラーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して30〜100質量部が好ましい。
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100〜180℃、好ましくは120〜170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85〜110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140〜200℃、好ましくは150〜195℃である。加硫時間は、通常5〜15分である。
上記ゴム組成物は、加硫ブラダー又はインナーライナーに好適に使用できる。
第二の本発明に係る加硫ブラダーは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階で棒状に成形した後、加硫機中で、両端をジョイントして輪状にし、加熱加圧することにより加硫ブラダーを得る。
第二の本発明に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でインナーライナー用のシート状に加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等に使用可能であり、特に、乗用車用タイヤに好適である。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、第一の本発明に係る実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
<SBR1>
日本ゼオン(株)製のN9548(E−SBR、油展(ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)、スチレン量:35質量%、ビニル量:18質量%、Tg:−40℃、Mw:109万)
<SBR2>
日本ゼオン(株)製のNS612(S−SBR、非油展、スチレン量:15質量%、ビニル量:30質量%、Tg:−65℃、Mw:78万)
<BR>
ランクセス(株)製のCB25(Nd系触媒を用いて合成したBR(Nd系BR)、シス含量:97質量%、ビニル量:0.7質量%、Tg:−110℃)
<カーボンブラックN220>
キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(NSA:114m/g)
<シリカ1>
エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
<シリカ2>
ローディア社製のZ115Gr(NSA:115m/g)
<水酸化アルミニウム>
Nabaltec社製のApyral200SM(NSA:15m/g)
<シランカップリング剤>
エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
<α−メチルスチレン系樹脂>
アリゾナケミカル社製のSylvatraxx4401(α−メチルスチレン及びスチレンの共重合体、軟化点:85℃)
<芳香族変性テルペン樹脂>
ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(スチレン及びテルペン化合物の共重合体、軟化点:125℃)
<オイル1>
出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24(アロマ系プロセスオイル)
<MgO離型剤1>
協和化学工業(株)製のキョーワマグ150(酸化マグネシウム、見かけ比重0.36g/ml、d50:4.46μm、NSA:145m/g)
<MgO離型剤2>
協和化学工業(株)製のキョーワマグ150MF(酸化マグネシウム、見かけ比重0.23g/ml、d50:0.72μm、NSA:119m/g)
<MgO離型剤3>
協和化学工業(株)製の試作品(酸化マグネシウム、見かけ比重0.33g/ml、d50:10μm)
<MgO離型剤4>
協和化学工業(株)製の試作品(酸化マグネシウム、見かけ比重2.4g/ml、d50:4μm)
<比較離型剤1>
日油(株)製の試作品(ステアリン酸カルシウム)
<比較離型剤2>
日油(株)製の試作品(ステアリン酸亜鉛)
<比較離型剤3>
ストラクトール社製のEF44(脂肪酸亜鉛)
<比較離型剤4>
ストラクトール社製のWB16(脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミド及び脂肪酸アミドエステルの混合物)
<ステアリン酸>
日油(株)製のステアリン酸「椿」
<老化防止剤6PPD>
住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
<老化防止剤TMQ>
大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
<パラフィンワックス>
日本精蝋(株)製のOzoace0355
<酸化亜鉛>
三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
<硫黄>
細井化学(株)製のHK−200−5(5%オイル含有粉末硫黄)
<加硫促進剤TBBS>
大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
<加硫促進剤DPG>
大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
<実施例及び比較例>
表1に示す配合処方に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤及び離型剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤及び離型剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をロールで2mm厚みのシートに圧延し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で10分間加硫して試験用タイヤ(サイズ:205/65R15)を得た。
得られた加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを下記により評価した。結果を表1に示す。
<軽不良率>
加硫ゴム組成物を目視により外観検査し、ゴム欠け、ブリスター(発泡)、ベアー(ケロイド)、ゲージの不均一、極端な凹みが発生したものを軽不良、これらが発生していないものを良品とし、軽不良の発生率(軽不良率)を算出した。結果は、下記評価基準にしたがって指数表示した。指数が大きいほど、金型との過密着による軽不良率の発生が抑制されており、離型性に優れることを示す。指数が105以上の場合に良好であると判断した。
[評価基準(指数)]
120:軽不良率0.5%
100:軽不良率1.0%
80:軽不良率2.0%
<耐摩耗性>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。1000km毎にコントロールタイヤ及び試験用タイヤの車両装着位置を交換し、摩耗への車両走行要因を平均化した。30000km走行後の試験用タイヤにおけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時8.0mm)、比較例1−1を100として指数表示した。指数が大きいほど、摩耗ゴム量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。指数が100以上の場合に良好であると判断した。
<ウェットグリップ性能>
試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが官能評価し、比較例1−1を100として指数表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
Figure 2020015815
表1より、所定量のジエン系ゴムと、見かけ比重が0.4g/ml未満、d50が10μm未満の酸化マグネシウム(MgO離型剤1、2)とを含有する実施例は、従来の離型剤(比較離型剤1〜4)を用いた比較例1−1、1−4、1−5、1−6と比較して離型性が向上し、耐摩耗性及びウェットグリップ性能も良好であった。
d50が10μmの酸化マグネシウム(MgO離型剤3)を用いた比較例1−2や、見かけ比重が2.4g/mlの酸化マグネシウム(MgO離型剤4)を用いた比較例1−3は、離型性指数が目標値未満であった。
以下、第二の本発明に係る実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
<臭素化ブチルゴム>
エクソンモービル社製のブロモブチル2255
<カーボンブラックN660>
キャボットジャパン(株)製のショウブラックN660(NSA:35m/g)
<老化防止剤TMQ>
大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
<ステアリン酸>
日油(株)製のステアリン酸「椿」
<オイル2>
出光興産(株)製のダイアナプロセスPA32(パラフィン系プロセスオイル)
<エチレンプロピレンスチレン共重合体>
ストラクトール社製のストラクトール40MS(軟化点78℃、EP含有量:82質量%)
<硫黄>
細井化学(株)製のHK−200−5(5%オイル含有粉末硫黄)
<加硫促進剤MBTS>
大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)
<酸化亜鉛>
三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
<比較離型剤4>
ストラクトール社製のWB16(脂肪酸金属塩(脂肪酸カルシウム、構成脂肪酸:炭素数14〜20の飽和脂肪酸)と脂肪酸アミドとの混合物)
<MgO離型剤1>
協和化学工業(株)製のキョーワマグ150(酸化マグネシウム、見かけ比重0.36g/ml、d50:4.46μm、NSA:145m/g)
<MgO離型剤2>
協和化学工業(株)製のキョーワマグ150MF(酸化マグネシウム、見かけ比重0.23g/ml、d50:0.72μm、NSA:119m/g)
<実施例及び比較例>
表2に示す配合処方に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄、加硫促進剤、酸化亜鉛及び離型剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤、酸化亜鉛及び離型剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をロールで2mm厚みのシートに圧延し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して加硫ゴム組成物を得た。
得られた加硫ゴム組成物を下記により評価した。結果を表2に示す。
<軽不良率>
加硫ゴム組成物を目視により外観検査し、ゴム欠け、ブリスター(発泡)、ベアー(ケロイド)、ゲージの不均一、極端な凹みが発生したものを軽不良、これらが発生していないものを良品とし、軽不良の発生率(軽不良率)を算出した。結果は、下記評価基準にしたがって指数表示した。指数が大きいほど、金型との過密着による軽不良率の発生が抑制されており、離型性に優れることを示す。指数が110以上の場合に良好であると判断した。
[評価基準(指数)]
120:軽不良率0.5%
100:軽不良率1.0%
80:軽不良率2.0%
<空気遮断性>
ASTM D−1434−75M法に従い、加硫ゴム組成物の空気透過量を測定し、下記計算式により、比較例2−1を100として指数表示した。指数が大きいほど、空気透過量が小さく、空気遮断性(空気圧保持性)に優れることを示す。指数が103以上の場合に良好であると判断した。
(空気遮断性指数)=(比較例2−1の空気透過量)/(各配合の空気透過量)×100
Figure 2020015815
表2より、所定量のブチル系ゴムと、見かけ比重が0.3g/ml未満、d50が3μm未満の酸化マグネシウム(MgO離型剤2)とを含有する実施例は、従来の離型剤(比較離型剤4)を用いた比較例2−1や、見かけ比重が0.36g/ml、d50が4.46μmの酸化マグネシウム(MgO離型剤1)を用いた比較例2−2、2−3と比較して離型性が向上し、空気遮断性も良好であった。

Claims (12)

  1. ジエン系ゴムを含むゴム成分と、見かけ比重が0.4g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径が10μm未満の酸化マグネシウムとを含有し、
    前記ゴム成分100質量%中、前記ジエン系ゴムの含有量が70質量%以上であるゴム組成物。
  2. 前記ゴム成分100質量部に対する前記酸化マグネシウムの含有量が1質量部以下である請求項1記載のゴム組成物。
  3. 水酸化アルミニウムを含むフィラーを含有し、
    前記ゴム成分100質量部に対する前記水酸化アルミニウムの含有量が8質量部以下である請求項1又は2記載のゴム組成物。
  4. 前記ゴム成分100質量部に対する前記フィラーの含有量が100質量部以上である請求項3記載のゴム組成物。
  5. パラフィンワックスを含有し、
    前記ゴム成分100質量部に対する前記パラフィンワックスの含有量が2.4質量部以下である請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. タイヤ外層用ゴム組成物である請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
  7. 請求項6記載のタイヤ外層用ゴム組成物を用いて作製したタイヤ外層部材を有する空気入りタイヤ。
  8. ブチル系ゴムを含むゴム成分と、見かけ比重が0.3g/ml未満、質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径が3μm未満の酸化マグネシウムとを含有し、
    前記ゴム成分100質量%中、前記ブチル系ゴムの含有量が70質量%以上であるゴム組成物。
  9. 芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素との共重合体を含有する請求項8記載のゴム組成物。
  10. 加硫ブラダー用ゴム組成物又はインナーライナー用ゴム組成物である請求項8又は9記載のゴム組成物。
  11. 請求項10記載の加硫ブラダー用ゴム組成物を用いて作製した加硫ブラダー。
  12. 請求項10記載のインナーライナー用ゴム組成物を用いて作製したインナーライナーを有する空気入りタイヤ。
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