以下に、本発明に係る制御装置について、図面を用いて説明する。なお、以下では、二輪のモータサイクルに用いられる制御装置について説明しているが、本発明に係る制御装置は、二輪のモータサイクル以外の鞍乗り型車両(例えば、三輪のモータサイクル、バギー車、自転車等)に用いられるものであってもよい。なお、鞍乗り型車両は、ドライバが跨って乗車する車両を意味する。また、以下では、モータサイクルの車輪を駆動するための動力を出力可能な駆動源としてエンジンが搭載されている場合を説明しているが、モータサイクルの駆動源としてエンジン以外の他の駆動源(例えば、モータ)が搭載されていてもよく、複数の駆動源が搭載されていてもよい。
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
<モータサイクルの構成>
図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置60が搭載されるモータサイクル100の構成について説明する。
図1は、制御装置60が搭載されるモータサイクル100の概略構成を示す模式図である。図2は、ブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。図3は、制御装置60の機能構成の一例を示すブロック図である。
モータサイクル100は、図1に示されるように、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、エンジン5と、ブレーキシステム10とを備える。本実施形態では、制御装置(ECU)60は、後述されるブレーキシステム10の液圧制御ユニット50に設けられている。さらに、モータサイクル100は、図1及び図2に示されるように、車間距離センサ41と、入力装置42と、前輪回転速度センサ43と、後輪回転速度センサ44と、マスタシリンダ圧センサ48と、ホイールシリンダ圧センサ49とを備える。
エンジン5は、モータサイクル100の駆動源の一例に相当し、車輪(具体的には、後輪4)を駆動するための動力を出力可能である。例えば、エンジン5には、内部に燃焼室が形成される1又は複数の気筒と、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、点火プラグとが設けられている。燃料噴射弁から燃料が噴射されることにより燃焼室内に空気及び燃料を含む混合気が形成され、当該混合気が点火プラグにより点火されて燃焼する。それにより、気筒内に設けられたピストンが往復運動し、クランクシャフトが回転するようになっている。また、エンジン5の吸気管には、スロットル弁が設けられており、スロットル弁の開度であるスロットル開度に応じて燃焼室への吸気量が変化するようになっている。
ブレーキシステム10は、図1及び図2に示されるように、第1ブレーキ操作部11と、少なくとも第1ブレーキ操作部11に連動して前輪3を制動する前輪制動機構12と、第2ブレーキ操作部13と、少なくとも第2ブレーキ操作部13に連動して後輪4を制動する後輪制動機構14とを備える。また、ブレーキシステム10は、液圧制御ユニット50を備え、前輪制動機構12の一部及び後輪制動機構14の一部は、当該液圧制御ユニット50に含まれる。液圧制御ユニット50は、前輪制動機構12によって前輪3に生じる制動力及び後輪制動機構14によって後輪4に生じる制動力を制御する機能を担うユニットである。
第1ブレーキ操作部11は、ハンドル2に設けられており、ドライバの手によって操作される。第1ブレーキ操作部11は、例えば、ブレーキレバーである。第2ブレーキ操作部13は、胴体1の下部に設けられており、ドライバの足によって操作される。第2ブレーキ操作部13は、例えば、ブレーキペダルである。
前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23に設けられているホイールシリンダ24と、マスタシリンダ21のブレーキ液をホイールシリンダ24に流通させる主流路25と、ホイールシリンダ24のブレーキ液を逃がす副流路26と、マスタシリンダ21のブレーキ液を副流路26に供給する供給流路27とを備える。
主流路25には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路26は、主流路25のうちの、込め弁31に対するホイールシリンダ24側とマスタシリンダ21側との間をバイパスする。副流路26には、上流側から順に、弛め弁(AV)32と、アキュムレータ33と、ポンプ34とが設けられている。主流路25のうちの、マスタシリンダ21側の端部と、副流路26の下流側端部が接続される箇所との間には、第1弁(USV)35が設けられている。供給流路27は、マスタシリンダ21と、副流路26のうちのポンプ34の吸込側との間を連通させる。供給流路27には、第2弁(HSV)36が設けられている。
込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。第1弁35は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。第2弁36は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
液圧制御ユニット50は、込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ34、第1弁35及び第2弁36を含むブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントと、それらのコンポーネントが設けられ、主流路25、副流路26及び供給流路27を構成するための流路が内部に形成されている基体51と、制御装置60とを含む。
なお、基体51は、1つの部材によって形成されていてもよく、複数の部材によって形成されていてもよい。また、基体51が複数の部材によって形成されている場合、各コンポーネントは、異なる部材に分かれて設けられていてもよい。
液圧制御ユニット50の上記のコンポーネントの動作は、制御装置60によって制御される。それにより、前輪制動機構12によって前輪3に生じる制動力及び後輪制動機構14によって後輪4に生じる制動力が制御される。
例えば、通常時(つまり、後述されるアダプティブクルーズコントロール及びアンチロックブレーキ制御のいずれも実行されていない時)には、制御装置60によって、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖される。その状態で、第1ブレーキ操作部11が操作されると、前輪制動機構12において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられて、前輪3に制動力が生じる。また、第2ブレーキ操作部13が操作されると、後輪制動機構14において、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が後輪4のロータ4aに押し付けられて、後輪4に制動力が生じる。
車間距離センサ41は、モータサイクル100から前走車までの距離を検出する。車間距離センサ41が、モータサイクル100から前走車までの距離に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。ここで、前走車は、モータサイクル100より前方に位置する車両を意味し、モータサイクル100の走行車線と同一の車線上でモータサイクル100から最も近い車両のみならず、モータサイクル100から複数台前の車両又はモータサイクル100の走行車線に隣接する車線上を走行する車両等を含んでもよい。例えば、モータサイクル100より前方に複数の車両が存在する場合、車間距離センサ41は、モータサイクル100の走行軌跡として推定される軌跡及び当該複数の車両の挙動に基づいて、モータサイクル100からの距離の検出の対象となる前走車を選択する。この場合、モータサイクル100からこのように選択された前走車までの距離の検出結果を用いて、後述されるアダプティブクルーズコントロールが実行される。
車間距離センサ41としては、例えば、モータサイクル100の前方を撮像するカメラ及びモータサイクル100から前方の対象物までの距離を検出可能なレーダーが用いられる。その場合、例えば、カメラにより撮像される画像を用いて前走車を認識し、前走車の認識結果及びレーダーの検出結果を利用することによって、モータサイクル100から前走車までの距離を検出することができる。車間距離センサ41は、例えば、胴体1の前部に設けられている。なお、車間距離センサ41の構成は上記の例に限定されず、例えば、車間距離センサ41としてステレオカメラが用いられてもよい。
入力装置42は、ドライバによる走行モードの選択操作を受け付け、ドライバにより選択されている走行モードを示す情報を出力する。ここで、モータサイクル100では、後述されるように、制御装置60によってアダプティブクルーズコントロールを実行可能となっている。アダプティブクルーズコントロールは、モータサイクル100を当該モータサイクル100から前走車までの距離、当該モータサイクル100の動き及びドライバの指示に応じて走行させる制御である。ドライバは、入力装置42を用いて、走行モードとして、アダプティブクルーズコントロールが実行される走行モードを選択することができる。入力装置42としては、例えば、レバー、ボタン又はタッチパネル等が用いられる。入力装置42は、例えば、ハンドル2に設けられている。
前輪回転速度センサ43は、前輪3の回転速度を検出し、検出結果を出力する。前輪回転速度センサ43が、前輪3の回転速度に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。前輪回転速度センサ43は、前輪3に設けられている。
後輪回転速度センサ44は、後輪4の回転速度を検出し、検出結果を出力する。後輪回転速度センサ44が、後輪4の回転速度に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。後輪回転速度センサ44は、後輪4に設けられている。
マスタシリンダ圧センサ48は、マスタシリンダ21のブレーキ液の液圧を検出し、検出結果を出力する。マスタシリンダ圧センサ48が、マスタシリンダ21のブレーキ液の液圧に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。マスタシリンダ圧センサ48は、前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれに設けられている。
ホイールシリンダ圧センサ49は、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を検出し、検出結果を出力する。ホイールシリンダ圧センサ49が、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。ホイールシリンダ圧センサ49は、前輪制動機構12及び後輪制動機構14のそれぞれに設けられている。
制御装置60は、モータサイクル100の走行を制御する。
例えば、制御装置60の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置60の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置60は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
制御装置60は、図3に示されるように、例えば、取得部61と、制御部62とを備える。
取得部61は、モータサイクル100に搭載されている各装置から出力される情報を取得し、制御部62へ出力する。例えば、取得部61は、車間距離センサ41、入力装置42、前輪回転速度センサ43、後輪回転速度センサ44、マスタシリンダ圧センサ48及びホイールシリンダ圧センサ49から出力される情報を取得する。
制御部62は、モータサイクル100に搭載されている各装置の動作を制御することによって、モータサイクル100に付与される駆動力及び制動力を制御する。
ここで、制御部62は、モータサイクル100に搭載されている各装置の動作を制御することによって、モータサイクル100を当該モータサイクル100から前走車までの距離、当該モータサイクル100の動き及びドライバの指示に応じて走行させるアダプティブクルーズコントロールを実行可能である。具体的には、制御部62は、アダプティブクルーズコントロールが実行される走行モードがドライバによって選択されている場合に、アダプティブクルーズコントロールを実行する。なお、制御部62は、アダプティブクルーズコントロールの実行中に、ドライバによりアクセル操作又はブレーキ操作が行われた場合、アダプティブクルーズコントロールを解除する。
アダプティブクルーズコントロールでは、モータサイクル100から前走車までの距離が基準距離に近づくように制御される。基準距離は、モータサイクル100から前走車までの距離としてドライバの安全性を確保し得る値に設定される。なお、前走車が認識されない場合には、モータサイクル100の速度が予め設定された設定速度になるように制御される。また、アダプティブクルーズコントロールでは、モータサイクル100の加速度及び減速度が、ドライバの快適性を損なわない程度の上限値以下に制限される。
具体的には、アダプティブクルーズコントロールの実行中に、制御部62は、モータサイクル100から前走車までの距離と基準距離との比較結果及びモータサイクル100と前走車との相対速度に基づいて加速度の目標値(以下、目標加速度と呼ぶ)又は減速度の目標値(以下、目標減速度と呼ぶ)を算出し、算出結果に基づいてモータサイクル100に付与される駆動力及び制動力を制御する。
例えば、モータサイクル100から前走車までの距離が基準距離より長い場合、制御部62は、モータサイクル100から前走車までの距離と基準距離との差に応じた目標加速度を算出する。一方、モータサイクル100から前走車までの距離が基準距離より短い場合、制御部62は、モータサイクル100から前走車までの距離と基準距離との差に応じた目標減速度を算出する。
制御部62は、例えば、駆動制御部62aと、制動制御部62bとを含む。
駆動制御部62aは、アダプティブクルーズコントロールの実行中に、モータサイクル100の車輪に伝達される駆動力を制御する。具体的には、駆動制御部62aは、アダプティブクルーズコントロールの実行中に、エンジン5の各装置(スロットル弁、燃料噴射弁及び点火プラグ等)の動作を制御するための信号を出力するエンジン制御装置(図示省略)に指令を出力することによって、エンジン5の動作を制御する。それにより、アダプティブクルーズコントロールの実行中に車輪に伝達される駆動力が制御される。
通常時には、エンジン5の動作は、エンジン制御装置によって、ドライバのアクセル操作に応じて車輪に駆動力が伝達されるように制御される。
一方、アダプティブクルーズコントロールの実行中には、駆動制御部62aは、ドライバのアクセル操作によらずに車輪に駆動力が伝達されるように、エンジン5の動作を制御する。具体的には、駆動制御部62aは、アダプティブクルーズコントロールの実行中に、モータサイクル100の加速度がモータサイクル100から前走車までの距離及びモータサイクル100と前走車との相対速度に基づいて算出される目標加速度となるように、エンジン5の動作を制御し、車輪に伝達される駆動力を制御する。
制動制御部62bは、ブレーキシステム10の液圧制御ユニット50の各コンポーネントの動作を制御することによって、モータサイクル100の車輪に生じる制動力を制御する。
通常時には、制動制御部62bは、上述したように、ドライバのブレーキ操作に応じて車輪に制動力が生じるように、液圧制御ユニット50の各コンポーネントの動作を制御する。
一方、アダプティブクルーズコントロールの実行中には、制動制御部62bは、ドライバのブレーキ操作によらずに車輪に制動力が生じるように、各コンポーネントの動作が制御される。具体的には、制動制御部62bは、アダプティブクルーズコントロールの実行中に、モータサイクル100の減速度がモータサイクル100から前走車までの距離及びモータサイクル100と前走車との相対速度に基づいて算出される目標減速度となるように、液圧制御ユニット50の各コンポーネントの動作を制御し、車輪に生じる制動力を制御する。
例えば、アダプティブクルーズコントロールの実行中には、制動制御部62bは、込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1弁35が閉鎖され、第2弁36が開放された状態にし、その状態で、ポンプ34を駆動することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増加させて車輪に制動力を生じさせる。また、制動制御部62bは、例えば、第1弁35の開度を制御することによりホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を調整することによって、車輪に生じる制動力を制御することができる。
ここで、制動制御部62bは、アダプティブクルーズコントロールの実行中に、前輪制動機構12及び後輪制動機構14の各々の動作を個別に制御することによって、前輪制動機構12及び後輪制動機構14のホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を個別に制御し、前後輪の制動力配分(つまり、前輪3に生じる制動力と後輪4に生じる制動力の配分)を制御することができる。具体的には、制動制御部62bは、各車輪に生じる制動力の目標値の合計値が目標減速度に応じた要求制動力(つまり、アダプティブクルーズコントロールの実行中における制動時に要求される制動力)になるように、前後輪の制動力配分を制御する。要求制動力は、具体的には、モータサイクル100の減速度をモータサイクル100から前走車までの距離及びモータサイクル100と前走車との相対速度に基づいて算出される目標減速度にするために必要な制動力である。
なお、制動制御部62bは、車輪にロック又はロックの可能性が生じた場合に、アンチロックブレーキ制御を行ってもよい。アンチロックブレーキ制御は、ロック又はロックの可能性が生じた車輪の制動力を、ロックを回避し得るような制動力に調整する制御である。
例えば、アンチロックブレーキ制御の実行中には、制動制御部62bは、込め弁31が閉鎖され、弛め弁32が開放され、第1弁35が開放され、第2弁36が閉鎖された状態にし、その状態で、ポンプ34を駆動することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を減少させて車輪に生じる制動力を減少させる。また、制動制御部62bは、例えば、上記の状態から込め弁31及び弛め弁32の双方を閉鎖することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を保持し車輪に生じる制動力を保持することができる。また、制動制御部62bは、例えば、上記の状態から込め弁31を開放し、弛め弁32を閉鎖することにより、ホイールシリンダ24のブレーキ液の液圧を増大させて車輪に生じる制動力を増大させることができる。
上記のように、制御装置60では、制御部62は、アダプティブクルーズコントロールを実行可能である。ここで、制御部62は、アダプティブクルーズコントロールの実行中に、モータサイクル100の車輪に制動力を生じさせているときに、前後輪の制動力配分を配分比が前輪3に偏重した配分と配分比が後輪4に偏重した配分との間で切り替えることによって、モータサイクル100の走行に関する走行情報を報知する。それにより、モータサイクル100のアダプティブクルーズコントロールの実行中にドライバへの報知を適切に行うことが実現される。このような制御装置60が行うアダプティブクルーズコントロールの実行中における制動時のドライバへの報知に関する処理については、後述にて詳細に説明する。
なお、上記では、駆動制御部62aがエンジン制御装置を介してエンジン5の動作を制御する例を説明したが、駆動制御部62aがエンジン5の各装置の動作を制御するための信号を出力し、エンジン5の各装置の動作を直接的に制御してもよい。その場合、通常時におけるエンジン5の動作についても、アダプティブクルーズコントロールの実行中におけるエンジン5の動作と同様に、駆動制御部62aによって制御される。
<制御装置の動作>
図4を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置60の動作について説明する。
図4は、制御装置60が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。具体的には、図4に示される制御フローは、制御装置60の制御部62により行われるアダプティブクルーズコントロールの実行中における制動時のドライバへの報知に関する処理の流れに相当し、アダプティブクルーズコントロールの実行中に繰り返し行われる。また、図4におけるステップS510及びステップS590は、図4に示される制御フローの開始及び終了にそれぞれ対応する。
なお、以下では、図4に示される制御フローを参照して、走行情報として、アダプティブクルーズコントロールが解除される旨を示す情報が制御部62により報知される例を説明するが、後述するように、制御部62により報知される走行情報は、このような例に特に限定されない。走行情報は、例えば、アダプティブクルーズコントロールに関するアダプティブクルーズコントロール情報を含む。アダプティブクルーズコントロールが解除される旨を示す上記の情報は、当該アダプティブクルーズコントロール情報に含まれる。
図4に示される制御フローが開始されると、ステップS511において、制御部62は、モータサイクル100の車輪の制動が行われているか否かを判定する。モータサイクル100の車輪の制動が行われていると判定された場合(ステップS511/YES)、ステップS513に進む。一方、モータサイクル100の車輪の制動が行われていないと判定された場合(ステップS511/NO)、ステップS511の判定処理が繰り返される。
ステップS511でYESと判定された場合、ステップS513において、制御部62は、モータサイクル100の車速が基準車速を下回ったか否かを判定する。モータサイクル100の車速が基準車速を下回ったと判定された場合(ステップS513/YES)、ステップS515に進む。一方、モータサイクル100の車速が基準車速を下回っていないと判定された場合(ステップS513/NO)、ステップS590に進み、図4に示される制御フローは終了する。
ここで、アダプティブクルーズコントロールが実行される車速の範囲には下限速度が設定されており、アダプティブクルーズコントロールの実行中に車速が下限速度を下回ると、アダプティブクルーズコントロールが解除されるように設定されている。基準車速は、例えば、当該下限速度より数km/h程度高い速度に設定される。なお、制御部62は、例えば、前輪3及び後輪4の回転速度に基づいてモータサイクル100の車速を算出することができる。
ステップS513でYESと判定された場合、ステップS515において、制御部62は、要求制動力が基準制動力より大きいか否かを判定する。要求制動力が基準制動力以下であると判定された場合(ステップS515/NO)、ステップS517に進む。一方、要求制動力が基準制動力より大きいと判定された場合(ステップS515/YES)、ステップS590に進み、図4に示される制御フローは終了する。
基準制動力は、前後輪の制動力配分を配分比が一方の車輪に偏重した配分に制御しようとした場合に、当該一方の車輪の制動力の目標値が当該一方の車輪で発生可能な制動力の上限値を超えることに起因して、各車輪に生じる制動力の合計値が要求制動力を下回ってしまうか否かを適切に判定し得る値に設定される。
ステップS515でNOと判定された場合、ステップS517において、制御部62は、ドライバの搭乗姿勢が減速時の姿勢として不適切であるか否かを判定する。ドライバの搭乗姿勢が減速時の姿勢として適切であると判定された場合(ステップS517/NO)、ステップS519に進む。一方、ドライバの搭乗姿勢が減速時の姿勢として不適切であると判定された場合(ステップS517/YES)、ステップS590に進み、図4に示される制御フローは終了する。
減速時の姿勢として不適切な搭乗姿勢は、具体的には、ドライバがモータサイクル100の減速時の挙動に対して身構えておらず、モータサイクル100から落下しやすくなっている姿勢を意味する。
例えば、制御部62は、ドライバがハンドル2を握っていないと判定される場合に、ドライバの搭乗姿勢が減速時の姿勢として不適切であると判定する。ドライバがハンドル2を握っているか否かについての判定は、例えば、ハンドル2に設けられる近接センサを利用することによって、実現され得る。
また、例えば、制御部62は、ドライバが両足で胴体1を把持していないと判定される場合に、ドライバの搭乗姿勢が減速時の姿勢として不適切であると判定する。ドライバが両足で胴体1を把持しているか否かについての判定は、例えば、胴体1に設けられる近接センサを利用することによって、実現され得る。
また、例えば、制御部62は、ドライバの視線が前方を向いていないと判定される場合に、ドライバの搭乗姿勢が減速時の姿勢として不適切であると判定する。ドライバの視線が前方を向いているか否かについての判定は、例えば、ドライバの顔を撮像し、得られる画像に画像処理を施すことによりドライバの視線を検出する装置を利用することによって、実現され得る。
ステップS517でNOと判定された場合、ステップS519において、制動制御部62bは、前後輪の制動力配分を切り替えることによって、アダプティブクルーズコントロールが解除される旨を示す情報を走行情報として報知する。
ここで、制動制御部62bは、前後輪の制動力配分を配分比が前輪3に偏重した配分と配分比が後輪4に偏重した配分との間で切り替える。配分比が前輪3に偏重した配分は、前輪3の配分比率が後輪4の配分比率よりも大きい配分を意味し、配分比が後輪4に偏重した配分は、後輪4の配分比率が前輪3の配分比率よりも大きい配分を意味する。
なお、前後輪の制動力配分の切り換えにおいて、前後輪の制動力配分は、上述したように、各車輪に生じる制動力の目標値の合計値が要求制動力になるように制御される。ゆえに、例えば、前後輪の制動力配分の切り換えが行われている期間において、モータサイクル100の減速度が一定(つまり、要求制動力が一定)である場合、各車輪に生じる制動力の合計値は一定に維持される。
車輪の制動時には、モータサイクル100には当該モータサイクル100の進行方向である前方向に慣性力が作用している。ゆえに、制動力配分を配分比が前輪3に偏重した配分にすることによって、モータサイクル100の後部を上昇させ、モータサイクル100をピッチ方向(つまり、車幅方向に沿った回転軸回りの図1に示される回転方向P)に傾かせることができる。さらに、モータサイクル100の後部が上昇した状態で、制動力配分を配分比が後輪4に偏重した配分にすることによって、モータサイクル100の姿勢を当該モータサイクル100の後部が下降するように変化させることができる。よって、前後輪の制動力配分を配分比が前輪3に偏重した配分と配分比が後輪4に偏重した配分との間で切り替えることによって、モータサイクル100がピッチ方向に揺れ動く挙動を生じさせ、当該挙動をドライバに感知させることができる。
上記のように、図4に示される制御フローでは、モータサイクル100の車速が基準車速を下回った場合に、配分比が前輪3に偏重した配分と配分比が後輪4に偏重した配分との間での前後輪の制動力配分の切り替えが行われる。ここで、アダプティブクルーズコントロールの実行中においてモータサイクル100の車速が基準車速を下回った場合は、車速が下限速度を下回ることに伴いアダプティブクルーズコントロールが解除される可能性が高まっている場合に相当する。ゆえに、モータサイクル100がピッチ方向に揺れ動く挙動が、アダプティブクルーズコントロールが解除される旨を示す情報の報知を意味することをドライバに予め知らせておくことで、当該挙動をドライバに感知させることによって、当該情報の報知が行われていることをドライバに適切に気付かせることができる。
なお、モータサイクル100がピッチ方向に揺れ動く挙動を効果的に生じさせる観点では、制動制御部62bは、前後輪の制動力配分を配分比が前輪3に偏重した配分と配分比が後輪4に偏重した配分との間で複数回に亘って切り替えることが好ましい。また、制動時において上述したドライバへの報知が行われていない際の制動力配分における各車輪の配分比は、例えばモータサイクル100の姿勢を安定化させる観点等に基づいて、適宜設定され得る。
次に、図4に示される制御フローは、終了する。
上記のように、図4に示される制御フローでは、制御部62は、要求制動力が基準制動力より大きい場合、制動力配分の切り換えによる走行情報の報知を禁止する。
また、上記のように、図4に示される制御フローでは、制御部62は、ドライバの搭乗姿勢が減速時の姿勢として不適切と判定される場合、制動力配分の切り換えによる走行情報の報知を禁止する。
また、上記では、図4に示される制御フローを参照して、モータサイクル100の車速が基準車速を下回った場合、前後輪の制動力配分の切り替えによって、アダプティブクルーズコントロールが解除される旨を示す情報が走行情報として報知される例を説明したが、制御部62により報知される走行情報の内容及び報知が行われるトリガは、このような例に特に限定されない。
例えば、走行情報は、上述したように、アダプティブクルーズコントロールに関するアダプティブクルーズコントロール情報を含む。当該アダプティブクルーズコントロール情報は、アダプティブクルーズコントロールが解除される旨を示す情報の他に、例えば、アダプティブクルーズコントロールを実行する制御装置60による制御に通信不良等のエラーが発生している旨を示す情報を含んでもよい。制御部62は、例えば、制御装置60による制御にエラーが発生していると判定した場合に、制動力配分の切り換えを行うことによって、制御装置60による制御にエラーが発生している旨を示す情報を走行情報として報知してもよい。
また、走行情報は、アダプティブクルーズコントロール情報の他に、例えば、モータサイクル100の前方に障害物が存在する旨を示す情報を含んでもよい。制御部62は、例えば、車間距離センサ41のカメラによる認識結果等を用いてモータサイクル100の前方に障害物が存在すると判定した場合に、制動力配分の切り換えを行うことによって、モータサイクル100の前方に障害物が存在する旨を示す情報を走行情報として報知してもよい。
なお、制御部62は、互いに異なる複数の走行情報を制動力配分の切り換えによって報知してもよい。例えば、配分比が前輪3に偏重した配分と配分比が後輪4に偏重した配分との間での制動力配分の切り換えの回数又は切り換え間の時間間隔等を各走行情報の間で異ならせることによって、ドライバはいずれの走行情報の報知が行われているかを識別することができる。
<制御装置の効果>
本発明の実施形態に係る制御装置60の効果について説明する。
制御装置60では、制御部62は、アダプティブクルーズコントロールの実行中に、モータサイクル100の車輪に制動力を生じさせているときに、前後輪の制動力配分を配分比が前輪3に偏重した配分と配分比が後輪4に偏重した配分との間で切り替えることによって、モータサイクル100の走行に関する走行情報を報知する。それにより、モータサイクル100がピッチ方向に揺れ動く挙動をドライバに感知させることによって、走行情報の報知が行われていることをドライバに適切に気付かせることができる。よって、モータサイクル100のアダプティブクルーズコントロールの実行中にドライバへの報知を適切に行うことができる。
好ましくは、制御装置60により報知される走行情報は、アダプティブクルーズコントロールに関するアダプティブクルーズコントロール情報を含む。それにより、モータサイクル100のアダプティブクルーズコントロールの実行中に、アダプティブクルーズコントロールに関する情報をドライバに適切に報知することができる。
好ましくは、制御装置60により報知されるアダプティブクルーズコントロール情報は、アダプティブクルーズコントロールが解除される旨を示す情報を含む。それにより、モータサイクル100のアダプティブクルーズコントロールの実行中に、アダプティブクルーズコントロールが解除される旨を示す情報をドライバに適切に報知することができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、要求制動力が基準制動力より大きい場合、制動力配分の切り換えによる走行情報の報知を禁止する。それにより、前後輪の制動力配分を配分比が一方の車輪に偏重した配分に制御しようとすることに起因して、各車輪に生じる制動力の合計値が要求制動力を下回ることを抑制することができる。ゆえに、モータサイクル100の減速度が目標減速度になるように、車輪の制動を適切に行うことができる。
好ましくは、制御装置60では、制御部62は、ドライバの搭乗姿勢が減速時の姿勢として不適切と判定される場合、制動力配分の切り換えによる走行情報の報知を禁止する。それにより、ドライバがモータサイクル100の減速時の挙動に対して身構えていない場合に制動力配分の切り換えが行われ、モータサイクル100がピッチ方向に揺れ動く挙動が生じることを抑制することができる。ゆえに、ドライバの安全性をより適切に確保することができる。
本発明は各実施の形態の説明に限定されない。例えば、各実施の形態の全て又は一部が組み合わされてもよく、また、各実施の形態の一部のみが実施されてもよい。