以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その構成について、既に説明している内容については、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し(例えば、可視化画像Im2)、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す(例えば、可視化画像Im2−1)。
図1Aは、実施形態に係るガス検知システム1の構成を示すブロック図である。ガス検知システム1は、赤外線カメラ2と、本体部3と、非画像式のガス検知装置21(ガス検知装置21と記載することもある)と、を備える。
赤外線カメラ2と本体部3とにより、画像式のガス検知装置が構成される。ガス検知システム1は、非画像式のガス検知装置21を1又は複数備えている。ガス検知装置21は、ガス漏れの監視領域に設置されている。ガス検知装置21は、画像式のガス検知装置以外の方式のガス検知装置である(例えば、接触燃焼式、半導体式、電気化学式)。ガス検知装置21は、ガス漏洩を検知したとき、ガス検知信号GSを出力する。
赤外線カメラ2は、ガス漏れの監視領域について、赤外画像の動画を撮影し、動画を示す動画データMDを生成する。なお、この赤外画像のデータは、時系列に撮像された複数の赤外画像であればよく、動画に限定されない。監視領域には、ガス漏れの監視対象がある(例えば、ガス輸送管どうしが接続されている箇所)。赤外線カメラ2は、光学系4と、フィルター5と、二次元イメージセンサー6と、信号処理部7と、入出力ポート8と、を備える。
光学系4は、被写体の赤外画像を二次元イメージセンサー6上で結像させる。フィルター5は、光学系4と二次元イメージセンサー6との間に配置され、光学系4を通過した光のうち、特定波長の赤外線のみを通過させる。赤外の波長帯のうち、フィルター5を通過させる波長帯は、検知するガスの種類に依存する。例えばメタンの場合、3.2〜3.4μmの波長帯を通過させるフィルター5が用いられる。二次元イメージセンサー6は、例えば、冷却型インジウムアンチモン(InSb)イメージセンサーであり、フィルター5を通過した赤外線を受光する。信号処理部7は、二次元イメージセンサー6から出力されたアナログ信号を、デジタル信号に変換し、公知の画像処理をする。このデジタル信号が、動画データMDとなる。入出力ポート8は、本体部3との通信に用いられるインターフェイス回路であり、動画データMDを本体部3へ送信する。
本体部3は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等であり、機能ブロックとして、制御処理部11と、入出力ポート12と、画像処理部13と、感度設定部14と、ガス漏洩判定部15と、表示制御部16と、ディスプレイ17と、入力部18と、を備えるコンピュータ装置である。本体部3と赤外線カメラ2とは、一体でもよいし(本体部3と赤外線カメラ2とが同じ筐体に収容されている)、本体部3と赤外線カメラ2とが別々であり、これらが無線又は有線で通信可能にされていてもよい。
制御処理部11は、本体部3の各部(入出力ポート12、画像処理部13、感度設定部14、ガス漏洩判定部15、表示制御部16、ディスプレイ17、入力部18)を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するための装置である。
入出力ポート12は、赤外線カメラ2との通信、及び、非画像式のガス検知装置21との通信に用いられるインターフェイス回路である。入出力ポート12は、入出力ポート8から送信されてきた動画データMD、ガス検知装置21から送信されてきたガス検知信号GSを受信する。
画像処理部13は、動画データMDに所定の処理をする。所定の処理とは、例えば、動画データMDから時系列画素データを生成する処理である。
時系列画素データを具体的に説明する。図2は、時系列画素データD1を説明する説明図である。動画データMDで示される動画は、フレームが時系列に複数並べられた構造を有する。複数のフレーム(複数の赤外画像)において、同じ位置にある画素の画素データを時系列に並べたデータを、時系列画素データD1とする。赤外画像の動画のフレーム数をKとする。一つのフレームがM個の画素、すなわち、1番目の画素、2番目の画素、・・・、M−1番目の画素、M番目の画素で構成されている。画素データ(画素値)を基にして、輝度、温度等の物理量が定められる。
複数(K個)のフレームの同じ位置にある画素とは、同じ順番の画素を意味する。例えば、1番目の画素で説明すると、1番目のフレームに含まれる1番目の画素の画素データ、2番目のフレームに含まれる1番目の画素の画素データ、・・・、K−1番目のフレームに含まれる1番目の画素の画素データ、K番目のフレームに含まれる1番目の画素の画素データを、時系列に並べたデータが、1番目の画素の時系列画素データD1となる。また、M番目の画素で説明すると、1番目のフレームに含まれるM番目の画素の画素データ、2番目のフレームに含まれるM番目の画素の画素データ、・・・、K−1番目のフレームに含まれるM番目の画素の画素データ、K番目のフレームに含まれるM番目の画素の画素データを、時系列に並べたデータが、M番目の画素の時系列画素データD1となる。時系列画素データD1の数は、一つのフレームを構成する画素の数と同じである。
図1Aを参照して、画像処理部13は、時系列画素データD1を基にして、監視画像を生成し、監視画像を基にして、可視化画像を生成する。これらについては、後で説明する。
感度設定部14及びガス漏洩判定部15についても後で説明する。
表示制御部16は、動画データMDで示される動画、及び、画像処理部13で所定の処理がされた動画を、ディスプレイ17に表示させる。
入力部18は、本体部3を操作したり、本体部3にデータを入力したりする装置である。実施形態に係る本体部3は、表示制御部16、ディスプレイ17及び入力部18を備えるが、これらを備えない本体部3でもよい。
図1Bは、図1Aに示す本体部3のハードウェア構成を示すブロック図である。本体部3は、CPU(Central Processing Unit)3a、RAM(Random Access Memory)3b、ROM(Read Only Memory)3c、HDD(Hard Disk Drive)3d、液晶ディスプレイ3e、入出力インターフェイス3f、キーボード等3g、及び、これらを接続するバス3hを備える。液晶ディスプレイ3eは、ディスプレイ17を実現するハードウェアである。液晶ディスプレイ3eの替わりに、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display)、プラズマディスプレイ等でもよい。入出力インターフェイス3fは、入出力ポート12を実現するハードウェアである。キーボード等3gは、入力部18を実現するハードウェアである。キーボードの替わりに、タッチパネルでもよい。
HDD3dには、制御処理部11、画像処理部13、感度設定部14、ガス漏洩判定部15及び表示制御部16について、これらの機能ブロックをそれぞれ実現するためのプログラム、及び、各種データ(例えば、動画データMD)が格納されている。例えば、画像処理部13を実現するプログラムは、動画データMDを取得し、動画データMDに上記所定の処理をする処理プログラムである。表示制御部16を実現するプログラムは、例えば、動画データMDで示される動画をディスプレイ17に表示させたり、画像処理部13によって上記所定の処理がされた動画をディスプレイ17に表示させたりする表示制御プログラムである。これらのプログラムは、HDD3dに予め記憶されているが、これに限定されない。例えば、これらのプログラムを記録している記録媒体(例えば、磁気ディスク、光学ディスクのような外部記録媒体)が用意されており、この記録媒体に記憶されているプログラムがHDD3dに記憶されてもよい。また、これらのプログラムは、本体部3とネットワーク接続されたサーバに格納されており、ネットワークを介して、これらのプログラムがHDD3dに送られ、HDD3dに記憶されてもよい。これらのプログラムは、HDD3dの替わりにROM3cに記憶してもよい。本体部3は、HDD3dの替わりに、フラッシュメモリを備え、これらのプログラムはフラッシュメモリに記憶してもよい。
CPU3aは、ハードウェアプロセッサの一例であり、これらのプログラムを、HDD3dから読み出してRAM3bに展開させ、展開されたプログラムを実行することによって、制御処理部11、画像処理部13、感度設定部14、ガス漏洩判定部15及び表示制御部16が実現される。但し、これらの機能について、各機能の一部又は全部は、CPU3aによる処理に替えて、又は、これと共に、DSP(Digital Signal Processor)による処理によって実現されてもよい。又、同様に、各機能の一部又は全部は、ソフトウェアによる処理に替えて、又は、これと共に、専用のハードウェア回路による処理によって実現されてもよい。以上説明したことは、図17及び図24を用いて後で説明する機構制御部41、撮影範囲判定部43についても同様のことが言える。
図1Aに示すように、本体部3は、複数の要素によって構成される。本体部3は、要素として、制御処理部11、画像処理部13、感度設定部14、ガス漏洩判定部15及び表示制御部16を含む。HDD3dには、これらの要素を実現するためのプログラムが格納されている。これらのプログラムは、制御処理プログラム、画像処理プログラム、感度設定プログラム、ガス漏洩判定プログラム、表示制御プログラムと表現される。
これらのプログラムは、要素の定義を用いて表現される。画像処理部13及び画像処理プログラムを例にして説明する。画像処理部13は、赤外線カメラ2が撮影した、監視領域の画像に対してガスを可視化する画像処理をすることにより、可視化画像を生成する。画像処理プログラムは、赤外線カメラ2が撮影した、監視領域の画像に対してガスを可視化する画像処理をするプログラムである。
CPU3aによって実行されるこれらのプログラムのフローチャートが、後で説明する図5、図16、図21、図26、図27である。
本発明者は、赤外画像を利用したガス検知において、ガス漏れと背景の温度変化とが並行して発生し、背景の温度変化が、漏れたガスによる温度変化よりも大きい場合、背景の温度変化を考慮しなければ、ガスが漏れている様子を画像で表示できないことを見出した。これについて詳しく説明する。
図3は、ガス漏れと背景の温度変化とが並行して発生している状態で、屋外の試験場所を撮影した赤外画像を時系列で示す画像図である。これらは、赤外線カメラで動画を撮影して得られた赤外画像である。試験場所には、ガスを噴出させることができる地点SP1がある。地点SP1と比較するために、ガスが噴出しない地点SP2を示している。
画像I1は、太陽光が雲で遮られる直前の時刻T1に撮影された試験場所の赤外画像である。画像I2は、時刻T1から5秒後の時刻T2に撮影された試験場所の赤外画像である。時刻T2は、太陽光が雲で遮られているので、時刻T1と比べて背景の温度が下がっている。
画像I3は、時刻T1から10秒後の時刻T3に撮影された試験場所の赤外画像である。時刻T2から時刻T3まで、太陽光が雲で遮られた状態が継続されているので、時刻T3は、時刻T2と比べて背景の温度が下がっている。
画像I4は、時刻T1から15秒後の時刻T4に撮影された試験場所の赤外画像である。時刻T3から時刻T4まで、太陽光が雲で遮られた状態が継続されているので、時刻T4は、時刻T3と比べて背景の温度が下がっている。
時刻T1から時刻T4までの15秒間で、背景の温度が約4℃下がっている。このため、画像I4は、画像I1と比べて全体的に暗くなっており、背景の温度が低下していることが分かる。
時刻T1後かつ時刻T2前の時刻に、地点SP1において、ガスの噴出を開始させている。噴出されたガスによる温度変化は、わずかである(約0.5℃)。このため、時刻T2、時刻T3、時刻T4では、地点SP1でガスが噴出しているが、噴出されたガスによる温度変化よりも、背景の温度変化の方がはるかに大きいので、画像I2、画像I3、画像I4を見ても地点SP1からガスが出ている様子が分からない。
図4Aは、試験場所の地点SP1の温度変化を示すグラフであり、図4Bは、試験場所の地点SP2の温度変化を示すグラフである。これらのグラフの縦軸は、温度を示している。これらのグラフの横軸は、フレームの順番を示している。例えば、45とは、45番目のフレームを意味する。フレームレートは、30fpsである。よって、1番目のフレームから450番目のフレームまでの時間は、15秒となる。
地点SP1の温度変化を示すグラフと地点SP2の温度変化を示すグラフとは異なる。地点SP2ではガスが噴出していないので、地点SP2の温度変化は、背景の温度変化を示している。これに対して、地点SP1では、ガスが噴出しているので、地点SP1には、ガスが漂っている。このため、地点SP1の温度変化は、背景の温度変化と漏れたガスによる温度変化とを加算した温度変化を示している。
図4Aに示すグラフからは、地点SP1でガスが噴出していることが分かる(すなわち、地点SP1でガス漏れが発生していることが分かる)。しかし、上述したように、図3に示す画像I2、画像I3、画像I4からは、地点SP1でガスが噴出していることが分からない(すなわち、地点SP1でガス漏れが発生していることが分からない)。
このように、噴出されたガス(漏れたガス)による温度変化よりも、背景の温度変化の方がはるかに大きい場合、図3に示す画像I2、画像I3、画像I4を見ても地点SP1からガスが出ている様子が分からない。
この原因は、動画データMD(図1A)には、漏れたガスによる温度変化を示す周波数成分データに加えて、この周波数成分データよりも周波数が低く、背景温度の変化を示す低周波成分データD2が含まれるからである。低周波成分データD2で示される像(背景の明暗の変化)により、前記周波数成分データで示される像が見えなくなるのである。図4A及び図4Bを参照して、地点SP1の温度変化を示すグラフに含まれる細かい変化が、前記周波数成分データに対応する。地点SP2の温度変化を示すグラフが低周波成分データD2に対応する。
そこで、画像処理部13(図1A)は、画素の位置がそれぞれ異なる複数の時系列画素データD1(すなわち、動画データMDを構成する複数の時系列画素データD1)を、動画データMDから生成し、複数の時系列画素データD1のそれぞれに対して、低周波成分データD2を除く処理をする。画素の位置がそれぞれ異なる複数の時系列画素データとは、図2を参照して、1番目画素の時系列画素データD1、2番目画素の時系列画素データD1、・・・、M−1番目画素の時系列画素データD1、M番目画素の時系列画素データD1を意味する。
漏れたガスによる温度変化を示す周波数成分データの周波数よりも周波数が高く、高周波ノイズを示す周波数成分データを、高周波成分データD3とする。画像処理部13は、動画データMDを構成する複数の時系列画素データD1のそれぞれに対して、低周波成分データD2を除く処理に加えて、高周波成分データD3を除く処理をする。
このように、画像処理部13は、フレームの単位で低周波成分データD2及び高周波成分データD3を除く処理をするのではなく、時系列画素データD1の単位で低周波成分データD2及び高周波成分データD3を除く処理をする。
画像処理部13は、赤外画像を利用して、監視画像を生成する。ガス漏れが発生している場合、監視画像には、ガス漏れによりガスが出現している領域を示す像が含まれる。画像処理部13は、監視画像を基にしてガス漏れを検知する。監視画像の生成方法として、様々な方法があるが、ここでは、監視画像の生成方法の一例を説明する。監視画像は、監視対象及び背景の赤外画像を利用して生成される。図5は、監視画像の生成処理を説明するフローチャートである。
図1A、図2及び図5を参照して、画像処理部13は、動画データMDからM個の時系列画素データD1を生成する(ステップS1)。
画像処理部13は、時系列画素データD1に対して、K個のフレームより少ない第1の所定数のフレームを単位とする単純移動平均を算出することにより時系列画素データD1から抽出されたデータを、低周波成分データD2とし、M個の時系列画素データD1のそれぞれに対応するM個の低周波成分データD2を抽出する(ステップS2)。
第1の所定数のフレームは、例えば、21フレームである。内訳は、ターゲットとなるフレーム、これより前の連続する10フレーム、これより後の連続する10フレームである。第1の所定数は、時系列画素データD1から低周波成分データD2を抽出できる数であればよく、21に限らず、21より多くてもよいし、21より少なくてもよい。
画像処理部13は、時系列画素データD1に対して、第1の所定数(例えば、21)より少ない第3の所定数(例えば、3)のフレームを単位とする単純移動平均を算出することにより時系列画素データD1から抽出されたデータを、高周波成分データD3とし、M個の時系列画素データD1のそれぞれに対応するM個の高周波成分データD3を抽出する(ステップS3)。
図6は、地点SP1(図4A)に対応する画素の時系列画素データD1、時系列画素データD1から抽出された低周波成分データD2、時系列画素データD1から抽出された高周波成分データD3を示すグラフである。グラフの縦軸及び横軸は、図4Aのグラフの縦軸及び横軸と同じである。時系列画素データD1で示される温度は、比較的急に変化し(変化の周期が比較的短く)、低周波成分データD2で示される温度は、比較的緩やかに変化している(変化の周期が比較的長い)。高周波成分データD3は、時系列画素データD1とほぼ重なって見える。
第3の所定数のフレームは、例えば、3フレームである。内訳は、ターゲットとなるフレーム、この直前の1フレーム、この直後の1フレームである。第3の所定数は、時系列画素データから第3の周波数成分を抽出できる数であればよく、3に限定されず、3より多くてもよい。
図1A、図2及び図5を参照して、画像処理部13は、時系列画素データD1とこの時系列画素データD1から抽出された低周波成分データD2との差分を算出して得られるデータを、差分データD4とし、M個の時系列画素データD1のそれぞれに対応するM個の差分データD4を算出する(ステップS4)。
画像処理部13は、時系列画素データD1とこの時系列画素データD1から抽出された高周波成分データD3との差分を算出して得られるデータを、差分データD5とし、M個の時系列画素データD1のそれぞれに対応するM個の差分データD5を算出する(ステップS5)。
図7Aは、差分データD4を示すグラフであり、図7Bは、差分データD5を示すグラフである。これらのグラフの縦軸及び横軸は、図4Aのグラフの縦軸及び横軸と同じである。差分データD4は、図6に示す時系列画素データD1と低周波成分データD2との差分を算出して得られたデータである。図4Aに示す地点SP1でガスの噴出を開始する前において(90番目くらいまでのフレーム)、差分データD4で示される微小な振幅の繰り返しは、主に、二次元イメージセンサー6のセンサーノイズを示している。地点SP1でガスの噴出を開始した後において(90番目以降のフレーム)、差分データD4の振幅及び波形のばらつきが大きくなっている。
差分データD5は、図6に示す時系列画素データD1と高周波成分データD3との差分を算出して得られたデータである。
差分データD4は、漏れたガスによる温度変化を示す周波数成分データ及び高周波成分データD3(高周波ノイズを示すデータ)を含む。差分データD5は、漏れたガスによる温度変化を示す周波数成分データを含まず、高周波成分データD3を含む。
差分データD4は、漏れたガスによる温度変化を示す周波数成分データを含むので、地点SP1でガスの噴出を開始した後において(90番目以降のフレーム)、差分データD4の振幅及び波形のばらつきが大きくなっている。これに対して、差分データD5は、漏れたガスによる温度変化を示す周波数成分データを含まないので、そのようなことはない。差分データD5は、微小な振幅を繰り返している。これが高周波ノイズである。
差分データD4と差分データD5とは、相関しているが、完全に相関していない。すなわち、あるフレームにおいて、差分データD4の値がプラス、差分データD5の値がマイナスとなり、又は、その逆となる場合がある。このため、差分データD4と差分データD5との差分を算出しても、高周波成分データD3を除去できない。高周波成分データD3を除去するには、差分データD4及び差分データD5を引き算できる絶対値のような値に変換する必要がある。
そこで、画像処理部13は、差分データD4に対して、K個のフレームより少ない第2の所定数のフレームを単位とする移動標準偏差を算出して得られるデータを、標準偏差データD6とし、M個の時系列画素データD1のそれぞれに対応するM個の標準偏差データD6を算出する(ステップS6)。なお、移動標準偏差の替わりに、移動分散を算出してもよい。
また、画像処理部13は、差分データD5に対して、K個のフレームより少ない第4の所定数(例えば、21)のフレームを単位とする移動標準偏差を算出して得られるデータを、標準偏差データD7とし、M個の時系列画素データD1のそれぞれに対応するM個の標準偏差データD7を算出する(ステップS7)。移動標準偏差の替わりに、移動分散を用いてもよい。
図8は、標準偏差データD6及び標準偏差データD7を示すグラフである。グラフの横軸は、図4Aのグラフの横軸と同じである。グラフの縦軸は、標準偏差を示している。標準偏差データD6は、図7Aに示す差分データD4の移動標準偏差を示すデータである。標準偏差データD7は、図7Bに示す差分データD5の移動標準偏差を示すデータである。移動標準偏差の算出に用いるフレーム数は、標準偏差データD6及び標準偏差データD7のいずれの場合も、21であるが、統計的に意義がある標準偏差が求められる数であればよく、21に限定されない。
標準偏差データD6及び標準偏差データD7は、標準偏差なので、マイナスの値を含まない。このため、標準偏差データD6及び標準偏差データD7は、差分データD4及差分データD5を引き算できるように変換したデータと見なすことができる。
画像処理部13は、同じ時系列画素データD1から得られた標準偏差データD6と標準偏差データD7との差分を算出して得られるデータを、差分データD8とし、M個の時系列画素データD1のそれぞれに対応するM個の差分データD8を算出する(ステップS8)。
図9は、差分データD8を示すグラフである。グラフの横軸は、図4Aのグラフの横軸と同じである。グラフの縦軸は、標準偏差の差分である。差分データD8は、図8に示す標準偏差データD6と標準偏差データD7との差分を示すデータである。差分データD8は、低周波成分データD2及び高周波成分データD3を除く処理がされたデータである。
画像処理部13は、監視画像を生成する(ステップS9)。すなわち、画像処理部13は、ステップS8で得られたM個の差分データD8で構成される動画を生成する。この動画を構成する各フレームが監視画像である。監視画像は、標準偏差の差分を可視化した画像である。画像処理部13は、ステップS9で得られた動画を表示制御部15に出力する。表示制御部15は、この動画をディスプレイ16に表示させる。この動画に含まれる監視画像として、例えば、図10に示す画像I12及び図11に示す画像I15がある。
図10は、時刻T1のフレームを基にして生成された、画像I10、画像I11及び画像I12を示す画像図である。画像I10は、図5のステップS6で得られたM個の標準偏差データD6で示される動画において、時刻T1のフレームの画像である。画像I11は、図5のステップS7で得られたM個の標準偏差データD7で示される動画において、時刻T1のフレームの画像である。画像I10と画像I11との差分が、画像I12(監視画像)となる。
図11は、時刻T2のフレームを基にして生成された、画像I13、画像I14及び画像I15を示す画像図である。画像I13は、ステップS6で得られたM個の標準偏差データD6で示される動画において、時刻T2のフレームの画像である。画像I14は、ステップS7で得られたM個の標準偏差データD7で示される動画において、時刻T2のフレームの画像である。画像I13と画像I14との差分が、画像I15(監視画像)となる。図10及び図11に示す画像I10〜画像I15のいずれも、いずれも標準偏差を5000倍にした画像である。
図10に示す画像I12は、図4Aに示す地点SP1からガスが噴出される前に撮影された画像なので、画像I12には、地点SP1からガスが出ている様子が現れていない。これに対して、図11に示す画像I15は、地点SP1からガスが噴出されている時刻で撮影された画像なので、画像I15には、地点SP1からガスが出ている様子が現れている。
以上説明したように、実施形態によれば、画像処理部13(図1A)が、赤外画像の動画データMDに含まれる低周波成分データD2を除く処理をして、動画データを生成し、表示制御部16が、この動画データで示される動画(監視画像の動画)をディスプレイ17に表示させる。従って、実施形態によれば、ガス漏れと背景の温度変化とが並行して発生し、背景の温度変化が、漏れたガスによる温度変化よりも大きい場合でも、ガスが漏れている様子を監視画像の動画で表示できる。
センサーノイズは、温度が高くになるに従って小さくなるので、温度に応じて異なる。二次元イメージセンサー6(図1A)において、画素が感知している温度に応じたノイズが、各画素で発生する。すなわち、全ての画素のノイズが同じではない。実施形態によれば、動画から高周波ノイズを除くことができるので、僅かなガス漏れでもディスプレイ17に表示させることができる。
このように、画像処理部13(図1A)は、二次元イメージセンサー6が撮影した赤外画像を基にして、監視画像(例えば、図10、図11に監視画像)を生成する。監視画像は第1画像の例であり、赤外画像に対して、漏洩しているガスを示す像が見やすくなる画像処理がされた画像である。ガス漏洩が発生している場合、監視画像は、ガス候補像を含む。ガス候補像は、漏洩したガスを示す像(ガス像)であったり、外乱ノイズを示す像であったりする。外乱ノイズは、例えば、風により芝生が揺れた状態で、芝生で反射された太陽光や、監視領域にある配管から発する蒸気により発生する。
監視画像(第1画像)を生成する方法は、上述した方法に限定されない。本発明者が発明した技術ではないが、例えば、次の公知技術により監視画像を生成することができる。特開2012−58093号公報は、検査対象領域におけるガス漏れを検出するガス漏れ検出装置において、検査対象領域を撮影する赤外線カメラと、赤外線カメラにより撮影された赤外線画像を処理する画像処理部と、を有し、画像処理部は、時系列に並べられた複数の赤外線画像からガス漏れによる動的なゆらぎを抽出するゆらぎ抽出部を有する、ことを特徴とするガス漏れ検出装置を開示している。
図1Aを参照して、本体部3は、ガス可視化用画像処理装置として機能する。詳しく説明する。画像処理部13は、監視画像を基にして、ガスを可視化した可視化画像を生成する。すなわち、画像処理部13は、赤外線カメラ2(撮影装置)が撮影した、監視領域の赤外画像(監視領域の画像)に対して、ガスを可視化する画像処理をすることにより、可視化画像を生成する。この画像処理は、上記監視画像に含まれるガス候補像のうち、外乱ノイズを消す処理である。これにより、可視化画像には、漏洩したガスを示す像(ガス像)が写され、ガスが可視化される。
感度設定部14は、ガス検知の感度を設定することができ、ガス検知の感度を高くする設定をしたとき、上記画像処理においてガスが可視化されやすくなり、ガス検知の感度を低くする設定をしたとき、上記画像処理においてガスが可視化されにくくなる。感度設定部14は、非画像式のガス検知装置21がガスを検知したとき、この検知前よりもガス検知の感度を高く設定する。
表示制御部16及びディスプレイ17は、画像出力部として機能する。画像出力部は、上記可視化画像(可視化画像の動画)を出力する。可視化画像が静止画の場合、プリンタを画像出力部にしてもよい。また、本体部3(ガス可視化用画像処理装置)が表示制御部16及びディスプレイ17を備えておらず、これらを備える外部装置が入出力ポート12に接続される場合、入出力ポート12が画像出力部となる。
画像処理部13及び感度設定部14について詳しく説明する。図12は、ガス漏れの監視領域の赤外画像Im0の一例を示す模式図である。図12では、赤外画像Im0の全体でなく、赤外画像Im0のうち、配管101を含む矩形の部分だけが示されている。赤外画像Im0には、並行に延びる3つの配管101−1,101−2,101−3と、非画像式の3つのガス検知装置21とが写されている。
監視領域には、ガス検知装置21が所定の間隔で設置(固定)されている。図12では、3つの配管101−1,101−2,101−3のうち、中央の配管101−2に、所定の間隔で、ガス検知装置21が設置されている。
図13は、赤外画像Im0を基にして生成された監視画像Im1−1と、この監視画像Im1−1を基にして生成された可視化画像Im2−1とを示す模式図である。図14は、赤外画像Im0を基にして生成された監視画像Im1−2と、この監視画像Im1−2を基にして生成された可視化画像Im2−2とを示す模式図である。図15は、赤外画像Im0を基にして生成された監視画像Im1−2と、この監視画像Im1−2を基にして生成された可視化画像Im2−3とを示す模式図である。
図13に示す監視画像Im1−1は、多量のガス漏洩が発生しているときに撮影された赤外画像Im0を基にして生成された画像である。図14及び図15に示す監視画像Im1−2は、少量のガス漏洩が発生しているときに撮影された赤外画像Im0を基にして生成された画像である。
図14に示す可視化画像Im2−2は、しきい値を下げる設定(ガス検知の感度を高くする設定)がされないで生成された画像である。図15に示す可視化画像Im2−3は、しきい値を下げる設定がされて生成された画像である。
図13を参照して、監視画像Im1−1には、4つのガス候補像111−1〜111−4が写されている。ガス候補像111−1は、漏洩したガスを示す像(ガス像)である。ガス候補像111−2〜111−4は、外乱ノイズを示す像である。ガス候補像111−1は、領域131と領域132と領域133とを含む。領域131は、画素の値が「大(例えば、60)」を示す領域である。領域132は、画素の値が「中(例えば、40)」を示し、領域131の周囲に位置する領域である。領域133は、画素の値が「小(例えば、20)」を示し、領域132の周囲に位置する領域である。ガス候補像111−2〜111−4は、画素の値が「小(例えば、20)」を示す領域によって構成される。
図14及び図15を参照して、監視画像Im1−2には、4つのガス候補像111−5〜111−8が写されている。ガス候補像111−5は、漏洩したガスを示す像(ガス像)である。ガス候補像111−6〜111−8は、外乱ノイズを示す像である。ガス候補像111−5は、領域134と領域135とを含む。領域134は、画素の値が「小(例えば、20)」を示す領域である。領域135は、画素の値が「さらに小(例えば、10)」を示し、領域134の周囲に位置する領域である。ガス候補像111−6〜111−8は、画素の値が「小(例えば、20)」を示す領域によって構成される。
図1A、図13及び図14を参照して、感度設定部14は、監視画像Im1に対して、しきい値(ガス検知の感度)を設定する。画像処理部13は、監視画像Im1を構成する画素のうち、しきい値を超える画素をガス像121を構成する画素とみなし、しきい値以下の画素をガス像121を構成しない画素と見なして、可視化画像Im2を生成する。例えば、255階調において、外乱ノイズを構成する画素の値(信号)が20程度とする。この場合、しきい値が、例えば35に設定される。これによれば、外乱ノイズが示す像の画素がガス像121を構成しない画素と見なされるので、可視化画像Im2に外乱ノイズが可視化されない(可視化画像Im2に外乱ノイズを示す像が写らない)。
可視化画像Im2−1,Im2−2は、しきい値が35の下で、生成された画像である。可視化画像Im2−1には、1つのガス像121−1が写されている。ガス像121−1は、ガス候補像111−1と対応しており、漏洩したガスを示す像である。ガス像121−1は、領域131と領域132とを含む。可視化画像Im2−2には、ガス像121が写されていない。このように、可視化画像Im2において、外乱ノイズが可視化されていない。
ガス漏洩量が多い場合、可視化画像Im2(例えば、可視化画像Im2−1)において、外乱ノイズが可視化されなくなり、漏洩したガスが可視化される(ガス像121−1)。ガス漏洩量が少ない場合、可視化画像Im2(例えば、可視化画像Im2−2)において、外乱ノイズが可視化されないが、漏洩したガスも可視化されない。
従って、可視化画像Im2において、外乱ノイズが可視化されないように、しきい値(ガス検知の感度)が設定されると、ガス漏洩量が少ないとき、漏洩したガスも可視化されなくなる。
そこで、非画像式のガス検知装置21がガスを検知したとき、感度設定部14は、検知前よりも、しきい値を下げる設定をする(ガス検知の感度を高く設定する)。例えば、しきい値が35から15にされる。この値は、外乱ノイズを可視化できる所定値の例である。画像処理部13は、しきい値が下げられた設定の下で(ガス検知の感度が高く設定された下で)、可視化画像Im2を生成する。これにより、ガスの漏洩量が少なくても、可視化画像Im2において、漏洩したガスが可視化される。例えば、図15に示す可視化画像Im2−3には、漏洩したガスを示す像(ガス像121−2)が写されている。
しきい値が下がることにより、可視化画像Im2において、外乱ノイズも可視化される。例えば、図15に示す可視化画像Im2−3には、外乱ノイズを示す像(ガス像121−3〜121−5)も写されている。このため、ガス漏洩判定部15が、可視化画像Im2を基にしてガス漏洩か否かを判定すれば、ガス漏洩でないにも関わらず、ガス漏洩と判定するおそれがある(誤検知)。そこで、非画像式のガス検知装置21がガスを検知したとき、表示制御部16は、可視化画像Im2をディスプレイ17に表示させ、ユーザが可視化画像Im2を見てガス漏洩か否かを判定できるようにする。
感度設定部14は、しきい値として、第1しきい値(例えば、35)と、第1しきい値より小さい第2しきい値(例えば、15)と、を予め記憶している。第1しきい値によれば、可視化画像Im2において、外乱ノイズが可視化されない(可視化画像Im2には外乱ノイズを示す像が写らない)。第2しきい値によれば、可視化画像Im2において、外乱ノイズが可視化される(可視化画像Im2には外乱ノイズを示す像が写る)。第2しきい値は、監視画像Im1を構成する画素(信号)の値の分布を基にして決めてもよい。例えば、監視画像Im1を構成する画素の値(信号)の平均値、中央値を第2の値にしてもよい。
実施形態の動作について説明する。図16は、この動作を説明するフローチャートである。図1A及び図16を参照して、赤外線カメラ2は、監視領域を撮影し、赤外画像Im0の動画データMDを本体部3(ガス可視化用画像処理装置)に送る。画像処理部13は、動画データMDを基にして、監視画像Im1の動画を生成し、監視画像Im1の動画を基にして、可視化画像Im2の動画を生成する(ステップS11)。感度設定部14は、しきい値を第1しきい値に設定している。
ガス漏洩判定部15は、可視化画像Im2(図13、図14)の動画を基にして、ガス漏洩か否かを判定する(ステップS12)。ガス漏洩判定部15は、可視化画像Im2の動画において、ガスが可視化されていれば、ガス漏洩と判定し、可視化画像Im2の動画において、ガスが可視化されていなければ、ガス漏洩でないと判定する。
ガス漏洩判定部15がガス漏洩と判定したとき(ステップS12でYes)、本体部3は発報する(ステップS13)。例えば、表示制御部16は、ディスプレイ17に発報を示す画像を表示させる。発報はこれに限らず、例えば、制御処理部11が、本体部3に備えられるスピーカ(不図示)を用いて警告音を鳴らしてもよい。
ガス漏洩判定部15がガス漏洩と判定していないとき(ステップS12でNo)、感度設定部14は、非画像式のガス検知装置21がガスを検知したか否かを判定する(ステップS14)。複数のガス検知装置21のいずれかがガスを検知し、これによるガス検知信号GSが入出力ポート12に入力したとき、感度設定部14は、ガス検知装置21がガスを検知したと判定する。
感度設定部14は、ガス検知装置21がガスを検知していないと判定したとき(ステップS14でNo)、画像処理部13は、可視化画像Im2の動画を生成する(ステップS11)。
感度設定部14は、ガス検知装置21がガスを検知したと判定したとき(ステップS14でYes)、しきい値を下げる設定をする(ステップS15)。これにより、しきい値が、第1しきい値から第2しきい値に変更される。
画像処理部13は、動画データMDを基にして、監視画像Im1の動画を生成し、監視画像Im1の動画を基にして、可視化画像Im2の動画を生成する(ステップS16)。ここでは、画像処理部13は、第2しきい値の下で(ガス検知の感度が高く設定された下で)、可視化画像Im2(図15に示す可視化画像Im2−3)の動画を生成する。表示制御部16は、ステップS16で生成された可視化画像Im2の動画をディスプレイ17に表示させる(ステップS17)。
実施形態の主な効果を説明する。図1A及び図16を参照して、非画像式のガス検知装置21がガスを検知する前(ステップS12でNo)、ガス検知の感度が比較的低く設定されるので(第1しきい値)、画像処理部13は、可視化画像Im2(図13、図14)を生成する際に、外乱ノイズの可視化を抑制することができる。従って、ガス漏洩判定部15が、可視化画像Im2を基にしてガス漏洩か否かを判定したとき、この判定の誤り(誤検知)を防止することができる。
非画像式のガス検知装置21がガスを検知したとき(ステップS14でYes)、ガス漏洩の可能性があるので、ガス検知の感度が比較的高く設定される(ステップS15)。これにより、画像処理部13は、可視化画像Im2(図15)を生成する際に、少量のガス漏洩であってもガスを可視化することができるが、外乱ノイズも可視化する可能性がある。このため、ガス漏洩判定部15が、可視化画像Im2を基にしてガス漏洩か否かを判定すれば、ガス漏洩でないにもかかわらず、ガス漏洩と判定するおそれがある(誤検知)。そこで、画像出力部(表示制御部16、ディスプレイ17)が可視化画像Im2の動画を出力し(ステップS17)、ユーザが可視化画像Im2の動画を見てガス漏洩か否かを判定できるようにする。
実施形態の第1変形例を説明する。実施形態と第1変形例とで相違する内容について説明し、共通する内容については説明を省略する。図17は、第1変形例に係るガス検知システム1aの構成を示すブロック図である。ガス検知システム1aは、電動雲台31をさらに備える。赤外線カメラ2は、電動雲台31に搭載されている。電動雲台31は、赤外線カメラ2の角度をパン方向及びチルト方向に変えることができる。これにより、赤外線カメラ2の撮影範囲の位置を変更することができる。電動雲台31は、撮影範囲の位置を変更できる位置変更機構の例である。
本体部3は、機構制御部41と、位置情報記憶部42と、撮影範囲判定部43と、をさらに備える。
機構制御部41は、電動雲台31のパン角度、チルト角度をそれぞれ制御する。これに従って、電動雲台31は、赤外線カメラ2の撮影範囲の位置を変更する。機構制御部41は、設定情報411を予め記憶している。非画像式のガス検知装置21のそれぞれについて、ガス検知装置21が入る撮影範囲が設定されている。設定情報411は、ガス検知装置21のそれぞれについて設定された撮影範囲の位置を示す情報である。図18は、設定情報411の一例を説明する説明図である。設定情報411の一例は、欄4111と欄4112とを備えるテーブルである。欄4111は、識別情報を示す。この欄には、複数のガス検知装置21のそれぞれの識別情報が書き込まれている。
欄4112は、設定された撮影範囲の位置を示す。撮影範囲の位置は、パン角度とチルト角度とで特定される。識別情報「001」のガス検知装置21に設定された撮影範囲は、例えば、パン角度が63度、チルト角度が44度で定まる撮影範囲である。識別情報「002」のガス検知装置21に設定された撮影範囲は、例えば、パン角度が55度、チルト角度が48度で定まる撮影範囲である。
図19は、3つのガス検知装置21のそれぞれに設定された撮影範囲103の例を示す模式図である。並行に延びる3つの配管101−1,101−2,101−3がある。3つのガス検知装置21−1,21−2,21−3が所定の間隔を設けて、中央の配管101−2に設置されている。撮影範囲103−1は、ガス検知装置21−1に設定された撮影範囲である。撮影範囲103−2は、ガス検知装置21−2に設定された撮影範囲である。撮影範囲103−3は、ガス検知装置21−3に設定された撮影範囲である。撮影範囲103の中心付近にガス検知装置21が位置しているが、これに限定されない。例えば、ガス漏れが発生しやすい箇所(配管101の接続箇所)とガス検知装置21とが入る撮影範囲103にしてもよい。
図17を参照して、位置情報記憶部42は、位置情報421を記憶する。位置情報421は、ガス検知装置21が入る、赤外線カメラ2の撮影範囲の位置を示す情報である。図20は、位置情報421の一例を説明する説明図である。位置情報421の一例は、欄4211と欄4212とを備えるテーブルである。欄4211は、識別情報を示す。この欄には、複数のガス検知装置21のそれぞれの識別情報が書き込まれている。
欄4212は、ガス検知装置21が入る撮影範囲の位置を示す。複数のガス検知装置21のそれぞれについて、ガス検知装置21が撮影範囲に入るパン角度範囲とチルト角度範囲とが予め求められており、これらの範囲が識別情報と対応付けて、欄4212に書き込まれている。識別情報「001」のガス検知装置21が入る撮影範囲は、例えば、パン角度範囲が60〜65度、チルト角度範囲が40〜50度で定まる撮影範囲である。識別情報「002」のガス検知装置21が入る撮影範囲は、例えば、パン角度範囲が51〜57度、チルト角度範囲が45〜52度で定まる撮影範囲である。
図17を参照して、撮影範囲判定部43は、複数のガス検知装置21のいずれかがガスを検知したとき、位置情報421を基にして、ガスを検知したガス検知装置21が撮影範囲に入っているか否かを判定する。
第1変形例の動作について説明する。図21は、この動作を説明するフローチャートである。第1変形例は、図16に示すステップS14でYesとステップS15との間に、ステップS21〜ステップS23を備える。ガス検知装置21−2(図19)がガスを検知したとする。図17及び図21を参照して、ガス検知装置21−2はガスを検知したとき、ガス検知信号GSを送信する。ガス検知装置21−2から送信されてきたガス検知信号GSは、入出力ポート12に入力する。これにより、感度設定部14は、ガス検知装置21−2がガスを検知したと判定する(ステップS14でYes)。
撮影範囲判定部43は、電動雲台31の現在のパン角度とチルト角度とを機構制御部41から取得する(ステップS21)。撮影範囲判定部43は、ガス検知装置21−2が撮影範囲103に入っているか否かを判定する(ステップS22)。詳しく説明する。撮影範囲判定部43は、位置情報421(図20)を参照して、ガス検知装置21−2の識別情報と対応付けられたパン角度範囲、チルト角度範囲を特定し、パン角度範囲、チルト角度範囲に、ステップS21で取得したパン角度、チルト角度が入っているか否かを判定する。
撮影範囲判定部43は、取得したパン角度がパン角度範囲内にあり、かつ、取得したチルト角度がチルト角度範囲内にあるとき、ガス検知装置21−2は、撮影範囲103に入っていると判定し(ステップS22でYes)、それ以外のとき、ガス検知装置21−2は、撮影範囲103に入っていないと判定する(ステップS22でNo)。図22は、ガス検知装置21−2が撮影範囲103−4に入っている例を示す模式図である。図23は、ガス検知装置21−2が撮影範囲103−5に入っていない例を示す模式図である。
撮影範囲判定部43が、ガス検知装置21−2が撮影範囲103に入っていると判定したとき(ステップS22でYes)、感度設定部14は、しきい値を下げる設定をする(ステップS15)。
撮影範囲判定部43が、ガス検知装置21−2が撮影範囲103に入っていないと判定したとき(ステップS22でNo)、機構制御部41は、設定情報411(図18)を参照して、ガス検知装置21−2に設定された撮影範囲103に変更する命令を電動雲台31に送信する。電動雲台31は、この命令に従って、パン角度とチルト角度とを調整し、撮影範囲103の位置を変更する(ステップS23)。これにより、ガス検知装置21−2に設定された撮影範囲103−2(図19)に変更される。そして、感度設定部14は、しきい値を下げる設定をする(ステップS15)。
第1変形例の主な効果を説明する。非画像式のガス検知装置21のいずれかかガスを検知したとき、ガスを検知したガス検知装置21の付近でガス漏洩が発生している可能性がある。このとき、ガスを検知したガス検知装置21が撮影範囲103に入っていないことがある。第1変形例によれば、ガスを検知したガス検知装置21が撮影範囲103に入るように、撮影範囲103の位置を変更することができる。
実施形態の第2変形例を説明する。第1変形例と第2変形例とで相違する内容について説明し、共通する内容については説明を省略する。図24は、第2変形例に係るガス検知システム1bの構成を示すブロック図である。機構制御部41は、位置が異なる複数の撮影範囲103の撮影スケジュール412に従って、電動雲台31(位置変更機構)を制御し、撮影範囲103の位置を移動させる。
図25は、撮影スケジュール412に含まれる撮影範囲103の例を示す模式図である。撮影範囲103は撮影範囲103−6と撮影範囲103−7とがある。撮影範囲103−6に対する図16に示すステップS11〜S17の処理を第1ジョブとし、撮影範囲103−7に対する図16に示すステップS11〜S17の処理を第2ジョブとする。撮影スケジュール412は、第1ジョブと第2ジョブとを所定時間間隔(例えば、10分間隔)で順番に実行することを繰り返す。
図26は、第2変形例の動作を説明するフローチャートである。第2変形例の動作について、図24、図25及び図26を参照して説明する。撮影範囲103−6の位置を第1位置とし、撮影範囲103−7の位置を第2位置とする。機構制御部41は、電動雲台31を制御し、撮影範囲103の位置を第1位置にする。本体部3は、図16に示すステップS11〜S17の処理をする(ステップS31)。撮影範囲103−6でこの処理がされるので、第1ジョブが実行される。
機構制御部41は、所定時間が経過(例えば、10分経過)したか否かを判定する(ステップS32)。機構制御部41は、所定時間が経過していないと判定したとき(ステップS32でNo)、本体部3は、ステップS31の処理を継続する。
機構制御部41は、所定時間が経過したと判定したとき(ステップS32でYes)、電動雲台31を制御し、撮影範囲103の位置を変更する。ここでは、第1位置から第2位置に変更される。本体部3は、図16に示すステップS11〜S17の処理をする(ステップS31)。撮影範囲103−7でこの処理がされるので、第2ジョブが実行される。このように、第1ジョブと第2ジョブとが所定時間の間隔で交互に繰り返される。
ガス検知装置21がガス検知をしたとき、感度設定部14は、複数の撮影範囲103(撮影範囲103−6,103−7)の可視化画像Im2の動画の生成において、検知前よりもしきい値を下げる設定(図16のステップS15:ガス検知の感度を高く設定)をするのではない。感度設定部14は、複数の撮影範囲103のうち、ガスを検知したガス検知装置21を含む撮影範囲103の可視化画像Im2の動画の生成において、検知前よりもしきい値を下げる設定をする。
第2変形例は、所定の条件下、新たな撮影スケジュール412を作成する。これについて、図24、図25及び図27を参照して説明する。図27は、新たな撮影スケジュール412の作成について説明するフローチャートである。ガス検知装置21−2がガスを検知したとする。ガス検知装置21−2から送信されてきたガス検知信号GSは、入出力ポート12に入力し、感度設定部14は、ガス検知装置21−2がガスを検知したと判定する(ステップS14でYes)。
撮影範囲判定部43は、位置情報421(図20)を基にして、2つの撮影範囲103−6,103−7のいずれかに、ガス検知装置21−2が入っているか否かを判定する(ステップS41)。詳しく説明する。撮影範囲判定部43は、撮影範囲103−6を規定するパン角度、チルト角度、及び、撮影範囲103−7を規定するパン角度、チルト角度を、機構制御部41から取得する。撮影範囲判定部43は、ガス検知装置21−2の識別情報に対応するパン角度範囲、チルト角度範囲に、撮影範囲103−6を規定するパン角度、チルト角度が含まれている場合、ガス検知装置21−2が撮影範囲106−6に入っていると判定する。撮影範囲判定部43は、ガス検知装置21−2の識別情報に対応するパン角度範囲、チルト角度範囲に、撮影範囲103−7を規定するパン角度、チルト角度が含まれている場合、ガス検知装置21−2が撮影範囲106−7に入っていると判定する。
撮影範囲判定部43が、2つの撮影範囲103−6,103−7のいずれかに、ガス検知装置21−2が入っていると判定したとき(ステップS41でYes)、機構制御部41は、現在の撮影スケジュール412に従って、電動雲台31を制御し、撮影範囲103の位置を変更する(ステップS42)。すなわち、撮影範囲103の位置は、撮影範囲103−6の位置(第1位置)と撮影範囲103−7の位置(第2位置)とに交互に変更される。
撮影範囲判定部43が、2つの撮影範囲103−6,103−7のいずれにも、ガス検知装置21−2が入っていないと判定したとき(ステップS41でNo)、機構制御部41は、ガス検知装置21−2が入る撮影範囲103を新たに設定し、この撮影範囲103を含む新たな撮影スケジュール412を作成する(ステップS43)。詳しく説明する。機構制御部41は、設定情報411(図18)を参照して、ガス検知装置21−2に設定された撮影範囲103−2(図19)をサーチし、撮影範囲103−2を新たな撮影範囲103に設定する。これにより、撮影範囲103の数が1つ増え、3つとなる(撮影範囲103−2,103−6,103−7)。なお、機構制御部41は、撮影範囲103の数の上限値を予め記憶し、撮影範囲103の数が上限値を超えるとき、ガス漏洩の判定がされておらず、かつ、ガス検知がされてない条件(図16のステップS12でNo、ステップS14でNo)を満たす撮影範囲103を除外する。これにより、撮影範囲103の数が上限値を超えないようにする。
図28は、新たな撮影スケジュール412に含まれる撮影範囲103の例を示す模式図である。撮影範囲103−2が追加されている。撮影範囲103−2に対する図16に示すステップS11〜S17の処理を第3ジョブとする。新たな撮影スケジュール412は、第1ジョブと第2ジョブと第3ジョブとを所定時間間隔(例えば、10分間隔)で順番に実行することを繰り返す。
機構制御部41は、新たな撮影スケジュール412に従って、電動雲台31を制御し、撮影範囲103の位置を変更する(ステップS44)。すなわち、撮影範囲103の位置は、撮影範囲103−6の位置(第1位置)、撮影範囲103−7の位置(第2位置)、及び、撮影範囲103−2の位置との間で順番に変更される。
第2変形例の主な効果を説明する。複数のガス検知装置21のいずれかがガスを検知したとき、複数の撮影範囲103(撮影範囲103−6,103−7)のいずれにも、ガスを検知したガス検知装置21(ガス検知装置21−2)が入っていないことがある。この場合、機構制御部41は、ガスを検知したガス検知装置21が入る撮影範囲103(撮影範囲103−2)を新たに設定し、新たに設定された撮影範囲103を含む新たな撮影スケジュール412に従って、撮影範囲103の位置を移動させる制御をする。従って、ガスを検知したガス検知装置21を含む撮影範囲103を、複数の撮影範囲103に含めることができる。
第3変形例を説明する。図13〜図15で説明したように、実施形態において、所定のしきい値より大きい値の画素を、ガス像121を構成する画素と見なし、しきい値以下の値の画素を、ガス像121を構成しない画素と見なして、可視化画像Im2の動画を生成する(第1変形例、第2変形例も同様)。第3変形例は、別の方法で可視化画像Im2の動画を生成する。
第3変形例に係るガス検知システムのブロック図は、図1Aに示すガス検知システム1のブロック図と同じなので、図1Aを参照して、第3変形例を説明する。
監視画像Im1(図13〜図15)は、上述したように、監視領域の赤外画像Im0に対して、漏洩しているガスを示す像が見やすくなる画像処理(所定の処理)がされた画像(第1画像)である。画像処理部13は、監視画像Im1の動画を所定期間単位(例えば10秒単位)で分割する。分割された単位を分割動画とする。画像処理部13は、分割動画に写されたガス候補像111のうち、分割動画に写されている期間が所定値(例えば、6秒)を超えるガス候補像111が存在するか否かを判定する。画像処理部13は、分割動画に写された期間が所定値を超えるガス候補像111を、ガス像121と見なし、分割動画に写された期間が所定値以下のガス候補像111をガス像121でないと見なし、ガス像121が写された分割動画を生成する。画像処理部13は、以上の処理を各分割動画について実行することにより、可視化画像Im2の動画を生成する。
感度設定部14は、ガス検知装置21がガスを検知したとき、検知前よりも、上記所定値を小さくする設定をすることにより(例えば、4秒)、検知前よりも、ガス検知の感度を高く設定する。
第3変形例の動作について、図16に示すフローチャートと異なる点を説明する。画像処理部13は、ステップS11において、所定値を設定し(例えば、6秒)、可視化画像Im2の動画を生成する。ガス検知がされたとき(ステップS14でYes)、ステップS15の替わりに、ガス検知前よりも、所定値を小さく設定する(例えば、4秒)。これにより、ガス検知の感度が高く設定される。画像処理部13は、ステップS16において、所定値が小さく設定された下で、可視化画像Im2の動画を生成する。