JP2020007384A - インクジェット用インクセット、それを用いたインクジェットプリント物の製造方法およびインクジェットプリント物 - Google Patents

インクジェット用インクセット、それを用いたインクジェットプリント物の製造方法およびインクジェットプリント物 Download PDF

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Abstract

【課題】無機顔料を色材とするインクジェット用インクセットであり、色再現性および鮮明性に優れたインクジェット用インクセット、それを用いたインクジェットプリント物の製造方法およびインクジェットプリント物を提供する。【解決手段】 本発明は、無機顔料を色材とするインクからなるインクジェット用インクセットであって、該インクセットの赤色成分がカラーインデックスピグメントレッド109からなる第一のマゼンタインクおよびカラーインデックスピグメントレッド233からなる第二のマゼンタインクの少なくとも2色のインクを含むことを特徴とするインクジェット用インクセット。【選択図】 なし

Description

本発明は、無機顔料を色材とするインクからなるインクジェット用インクセット、それを用いたインクジェットプリント物の製造方法およびインクジェットプリント物に関する。更に詳しくは、色再現性および鮮明性に優れたインクジェット用インクセット、それを用いたインクジェットプリント物の製造方法およびインクジェットプリント物に関する。
従来、セラミックス、金属等の無機質基材を着色する場合、耐熱性、安定性および耐光性が重視され、これらの観点から色材として主に無機顔料が使用されている。無機顔料は、焼成によって固着される方法が採用されている。
近年、係る分野においては、デザイン傾向の高度化により、無機顔料の色バリエーションについても様々な研究がなされている。一例として、色域の幅広い発色性の良好な粒子径からなる無機顔料が提案されている。しかしながら、充分な成果は得られていない。
これらの研究では、原則として色同士の混ぜ合わせではなく、無機顔料自体の色が、提案されている。その理由は、無機顔料同士を組み合わせることは、焼成温度等の条件によっては変色や消色が生じるおそれがあるからである。変色や消色が生じる原因は、一度に複数の無機顔料を焼成すると、無機顔料が相互作用を引き起こし、結晶構造が変化する等の事態が生じるためと考えられている。従って、焼成温度の異なる色材を使用する場合、複数回の焼成の工程を行う必要がある。そのため、色の再現性が劣りやすい。
上記の問題を解決する方法として、特許文献1および特許文献2に記載の技術が提案されている。特許文献1には、インクジェットにおいて、広い色範囲を表現するために、マゼンタ成分としてゴールドパープルが選択され、レッド成分としてカドミウムレッドが選択されることが提案されている。特許文献2には、焼成後においても変色、消色することなく中間色を表現するために、黄色成分としてアンチモン系顔料、バナジウム系顔料、プラセオジウム系顔料からなる群から選択され、赤色成分としてスズ−クロム系顔料が選択され、青色成分としてコバルト系顔料が選択され、黒色成分として鉄系顔料が選択されることが提案されている。
特開2004−263176号公報 国際公開第2015/046020号
上記従来の技術によれば、無機顔料のインクジェットプリント物への有効利用がされていない。すなわち、特許文献1に記載の方法では、レッド成分としてカドミウムレッドが選択されている。そのため、インク製造時やインクジェットプリント時に、カドミウムによる人体への悪影響が懸念され、実用は困難である。特許文献2に記載の方法では、赤色成分に選択された顔料が構造変化しやすく、焼成温度にばらつきが生じた際に色再現性に劣るものであった。
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、無機顔料を色材とするインクジェット用インクセットであり、色再現性および鮮明性に優れたインクジェット用インクセット、それを用いたインクジェットプリント物の製造方法およびインクジェットプリント物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意努力した結果、赤色成分として特定の無機顔料を選択し、インクとして使用することにより、色再現性および鮮明性に優れたインクセットが得られることを突き止め、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、無機顔料を色材とするインクからなるインクジェット用インクセットであって、該インクセットの赤色成分がカラーインデックスピグメントレッド109からなる第一のマゼンタインクおよびカラーインデックスピグメントレッド233からなる第二のマゼンタインクの少なくとも2色のインクを含むことを特徴とするインクジェット用インクセットである。
本発明によれば、色再現性および鮮明性に優れたインクジェット用インクセット、それを用いたインクジェットプリント物の製造方法およびインクジェットプリント物を提供することができる。
[インクジェット用インクセット]
以下、本発明の一実施形態のインクジェット用インクセット(以下、単にインクセットともいう)について、詳細に説明する。
<無機顔料>
本発明で使用する色材は無機顔料であり、具体的には、金属、金属酸化物または金属塩からなる。これは熱や光に対して安定である反面、その構造から色表現に乏しく、酸化・還元により分解しやすい性質がある。
従って、無機顔料のインクジェットプリントにおいては、一般に色域が狭く、特に赤色成分が弱い。本発明では、第一のマゼンタインクと第二のマゼンタインクを装備することで、赤色の色域を広げるとともに、色再現性を特異的に向上させている。
すなわち、本実施形態のインクセットは、赤色成分が少なくともカラーインデックスピグメントレッド109からなる第一のマゼンタインク、カラーインデックスピグメントレッド233からなる第二のマゼンタインクの少なくとも2色のインクを含むことを要する。
無機顔料であるカラーインデックスピグメントレッド109は、鮮やかな赤色表現が可能であるとともに、高温雰囲気下で極めて安定であり、色再現性に優れている。その一方で、カラーインデックスピグメントレッド109は金系顔料のためコストが高く、生産には不向きとされがちである。しかしながら、本発明にて提案するように、カラーインデックスピグメント109をカラーインデックス233とともに用いることによって、カラーインデックスピグメントレッド109の有する鮮やかな赤色再現性を保持しつつ、その使用量を抑えることができ、コストを抑制することができる。また、カラーインデックスピグメントレッド109とカラーインデックスピグメントレッド233は、焼成時に相互作用を起こしにくいことが判明した。したがって、上記2つの無機顔料を使用することで、焼成時の色再現性はもちろんのこと、焼成後も変色や消色が生じにくい。
さらに、本実施形態のインクセットは、第一のマゼンタインクと第二のマゼンタインクを有することにより、本実施形態のインクセットによって表現可能な赤色の色域を広げることができ、より多彩な色表現が可能となる。
本実施形態のインクセットは、第一のマゼンタインクおよび第二のマゼンタインクのほかに、イエローインク、およびシアンインクを含むことが好ましい。これは、一般にフルカラーで画像形成するインクジェット方式に適した色域を表現するためである。これら4色を含ませることにより、あらゆる中間色を表現することができるようになる。
具体的には、イエローインクとして採用できる無機顔料は、カラーインデックスピグメントイエロー53、119、157、158、159、160、184、216、カラーインデックスピグメントブラウン24などが挙げられる。なかでも、カラーインデックスピグメントイエロー159が好ましい。カラーインデックスピグメントイエロー159は鮮やかな黄色の色相を持ち、色再現性も良好で、さらに焼成時に第一のマゼンタインクおよび第二のマゼンタインクと相互作用を起こしにくいため、焼成後の変色や消色が生じにくい。
また、シアンインクとして採用できる無機顔料は、カラーインデックスピグメントブルー28、31、32、33、35、36、36:1、72、73、74などが挙げられる。なかでも、カラーインデックスピグメントブルー36:1が好ましい。カラーインデックスピグメントブルー36:1は鮮やかな青色の色相を持ち、色再現性も良好で、さらに焼成時に第一のマゼンタインクおよび第二のマゼンタインクと相互作用を起こしにくいため、焼成後の変色や消色が生じにくい。
本実施形態のインクセットは、第一のマゼンタインク、第二のマゼンタインク、イエローインク、シアンインクのほかに、ブラックインクを含むインクセットであることが更に好ましい。一般にブラックはイエロー、マゼンタ、シアンの混合によって得られるが、微小の配分の差で色相が変わってしまうため、ブラックインクを単色として含ませると、係る問題が解決し、安定したインクジェットプリント物を得ることができる。
ブラックインクとして採用できる無機顔料は、カラーインデックスピグメントブラック11、26、27、28などが挙げられる。なかでも、カラーインデックスピグメントブラック27が好ましい。カラーインデックスピグメントブラック27は鮮やかな黒色の色相を持ち、色再現性も良好で、さらに焼成時に第一のマゼンタインクおよび第二のマゼンタインクと相互作用を起こしにくいため、焼成後の変色や消色が生じにくい。
上記第一のマゼンタインク、第二のマゼンタインク、イエローインク、シアンインク、ブラックインクは、各々が混色された場合であっても、相互作用を起こしにくく、焼成後の変色や消色が生じにくい。よって、本実施形態のインクセットは、優れた色再現性を有する。
無機顔料の濃度は、インクに対して10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、無機顔料の濃度は、インクに対して50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。無機顔料の濃度が10質量%未満の場合、インクの色濃度が不足する傾向にあり、十分な濃度を得るためにはインクの打ち込み量を増やして濃度を増やす必要がある。一方、無機顔料の濃度が50質量%を超える場合、インク中で無機顔料の沈降が起こりやすくなり、インクの安定性が低下する傾向がある。
無機顔料は、粒子径(D50:メディアン径)が100nm以上であることが好ましい。無機顔料の粒子径が100nm未満である場合、インクを付与した際に、基材上で無機顔料が流動しやすい傾向があり、滲みが生じやすくなる。その結果、印刷品位が低下し、充分な鮮明性が得られない場合がある。なお、粒子径(D50:メディアン径)は、例えば、粒子径測定装置(Malvern Instruments Ltd製、Zetasizer Nano−S)を用いて、動的光散乱法により測定することができる。また、粒子径の上限は、特に限定されない。インクジェット方式により付与する場合、インクの吐出性等を考慮し、500nm以下であることが好ましい。
<溶媒>
本実施形態のインクセットに用いるインクは、無機顔料を溶媒に分散させることにより得られる。溶媒としては、無機顔料を均一に分散することのできるものであれば特に限定されない。なかでも、インクが乾燥しにくく、インクの吐出性が優れる点から、有機溶剤が好ましい。また、有機溶剤を含むインクは、表面張力が低く、基材への浸透性が優れる。なお、溶媒が水である場合、高濃度の顔料インクを調整しにくい。また、溶媒が水である場合、記録ヘッドの乾燥によって吐出不良が起こりやすい。
有機溶剤としては、グリコールエーテル類や脂肪酸エステル類、環境を配慮した第4類第3石油類、第4類第4石油類等が好ましい。グリコールエーテル類としては、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が好ましい。脂肪酸エステル類としては、オレイン酸メチルエステル、カプリル酸メチルエステル、カプリン酸メチルエステル、ラウリン酸メチルエステル、ミリスチン酸メチルエステル、牛脂脂肪酸メチルエステル、米糠脂肪酸メチルエステル、菜種脂肪酸メチルエステル、大豆脂肪酸メチルエステル、パルミチン酸n−ブチルエステル、ステアリン酸n−ブチルエステル、菜種脂肪酸n−ブチルエステル、大豆脂肪酸n−ブチルエステル、米糠脂肪酸i−ブチルエステル、菜種脂肪酸i−ブチルエステル、パルミチン酸オクチルエステル、オレイン酸オクチルエステル、菜種脂肪酸オクチルエステル、植物脂肪酸オクチルエステル等が好ましい。
本実施形態のインクセットに用いるインクは、無機顔料を安定して分散させておく観点から、インク中に分散剤として様々な界面活性剤が、単独または混合された状態で含まれることが好ましい。界面活性剤は、インクに対して0.1質量%以上含まれることが好ましく、1質量%以上含まれることがより好ましい。また、界面活性剤は、インクに対して15質量%以下含まれることが好ましく、10質量%以下含まれることがより好ましい。界面活性剤の含有量が0.1質量%未満である場合、無機顔料の分散効果が低く、無機顔料の凝集や沈降が起こりやすくなり、インク安定性が低下する傾向がある。一方、界面活性剤の含有量が15質量%を超える場合、インクの粘度が高くなり、記録ヘッドからの吐出性が悪化したり、焼成後に灰分が残りやすい傾向がある。
界面活性剤は、溶媒、特に有機溶剤に可溶であり、焼成後に灰分が残り難いことが好ましい。このような界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が例示される。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸せっけん、アルキルコハク酸ナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルリン酸ナトリウム、スチレン無水マレイン酸共重合物、オレフィン無水マレイン酸共重合物、ポリアクリルアミド部分加水分解物、アクリルアミドアクリル酸塩共重合物、アルギン酸ソーダ等が例示される。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が例示される。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ソルダビン脂肪酸エステル等が例示される。両性界面活性剤としては、アルキルベンダイン、アミドベンダイン等が例示される。アニオン性界面活性剤は、ナトリウム塩だけでなく任意の金属塩やアンモニウム塩等が使用されても良い。
本実施形態のインクセットに用いるインクの表面張力は、20mN/m以上であることが好ましく、22mN/m以上であることがより好ましい。また、インクの表面張力は、30mN/m以下であることが好ましく、27mN/m以下であることがより好ましい。インクの表面張力が20mN/m未満である場合、インクは記録ヘッド表面から溢れやすくなり、連続吐出性が劣る可能性がある。また、インクが基材に対して浸透しすぎてしまい、焼成後の発色性が劣ったり、滲みが強くなり鮮明性が劣る場合がある。一方、インクの表面張力が30mN/mを超える場合、インクが基材へ浸透し難くなり、付与可能なインク量が少なくなるため、鮮明な表現が困難となる場合がある。
本実施形態のインクセットに用いるインクは、必要に応じて、表面張力調整剤、粘度調整剤、比抵抗調整剤、熱安定剤、酸化防止剤、還元防止剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤等の添加剤を加えても良い。
無機顔料を含むインクは、上記材料を混合し、さらにその混合物をロールミル、ボールミル、コロイドミル、ジェットミル、ビーズミル、サンドミル等の分散機を使って分散させ、その後濾過を行うことで得ることができる。
[インクジェットプリント物の製造方法]
次に、本発明の一実施形態のインクジェットプリント物の製造方法について、詳細に説明する。本実施形態のインクジェットプリント物の製造方法は、上記したインクセットのインクを用いて基材上にインクをインクジェットプリントした後、焼成する方法である。本実施形態のインクジェットプリント物の製造方法によれば、色再現性および鮮明性の良好なインクジェットプリント物を製造することができる。
インクジェット記録方式は、特に限定されない。一例を挙げると、インクジェット記録方式は、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式等の連続方式、ピエゾ方式、パルスジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電吸引方式等のオン・デマンド方式等がある。また、インクジェット記録方式は、記録ヘッドを固定して記録媒体に噴射させるタイプのライン型、記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に動かすタイプのシリアル型のどちらに採用されても良い。
本実施形態のインクジェットプリント方法において、インクは、基材に対して0.01g/m以上となるよう付与することが好ましく、0.1g/m以上となるよう付与することがより好ましい。また、インクは、50g/m以下となるよう付与することが好ましく、40g/m以下となるよう付与することがより好ましい。インクは、付与量が0.01g/m未満である場合、発色が弱くなり画像が表現されにくい傾向がある。一方、インクは、付与量が50g/mを超える場合、基材のインク受容能力によってはインクが基材表面上に溢れ、滲みが発生して画像の繊細表現が困難となる場合がある。
本実施形態のインクジェットプリント方法において、マゼンタインクの付与を行う場合、第一のマゼンタインクと第二のマゼンタインクは、第一のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量と第二のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量とが質量比で1:0〜10となる割合で、付与されることが好ましく、1:0〜5となる割合で付与されることがより好ましく、1:0〜2となる割合で付与されることがさらに好ましい。第一のマゼンタインクおよび第二のマゼンタインクの付与量が上記関係を満たすことで、焼成後の色再現性が良好となる。また、第一のマゼンタインクと第二のマゼンタインクを上述した比率範囲の付与量で適宜用いることにより、良好な色再現性を保ちながら、より広い色域での赤色表現が可能となる。一方、第二のマゼンタインクの付与量が上記範囲より大きくなると、赤色について第二のマゼンタインクによる色支配性が強くなり、焼成後の色ばらつきが発生しやすくなる傾向がある。
本実施形態に用いられる基材は、無機質基材が好ましい。一例を挙げると、無機質基材は、ガラス、陶磁器、琺瑯、タイル等のセラミック材料や金属等の無機材料である。
また、必要であれば、基材上に、吸液性のある材料が、インク受容層として設けられても良い。吸液性のある材料を設けることにより、吐出されたインクは、基材上に着弾したした後に、滲みが抑えられやすい。
吸液性のある材料としては、ガラスフリットが好ましい。ガラスフリットからなるインク受容層が基材上に設けられることにより、プリント後および焼成後の画像は、滲みが起こりにくい。また、未焼成ガラスフリットからなるインク受容層が基材上に設けられることにより、無機顔料とインク受容層中のガラスフリットとが溶融混和され、接着性に優れたガラス被膜が形成され得る。
ガラスフリットは、二酸化珪素を主成分とし、使用目的に応じて補助剤を添加して使用される。補助剤としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化鉛、酸化ビスマス、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ホウ酸、酸化ジルコニウム、酸化チタン、天然物の長石、珪石、硼砂、カオリン等が例示される。これらの補助剤は、単独で用いられても良く、混合された状態で使用されても良い。
ガラスフリットの乾燥付与量は、50〜500g/mであることが好ましい。ガラスフリットの乾燥付与量が50g/m未満である場合、インクの滲みが充分に抑えられない傾向がある。一方、ガラスフリットの乾燥付与量が500g/mを超える場合、焼成後に形成されるガラスフリット層が膜厚になり過ぎて、クラックが生じやすくなる。
本実施形態のガラスフリットからなるインク受容層は、必要に応じて接着剤が添加されても良い。接着剤が添加されることにより、インク受容層を付与する際の作業性を高める効果がある。接着剤としては、澱粉、天然ガム、植物性蛋白、海藻、カゼイン、ゼラチン等の天然高分子、エーテル型セルロース、エステル型セルロース、エーテル型澱粉、エステル型澱粉、加工天然ガム等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラート樹脂、ポリビニルアクリレート樹脂、ポリビニルメチル樹脂、架橋型ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、メタクリル酸ソーダ、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ乳酸等の合成高分子が例示される。
また、本実施形態のガラスフリットからなるインク受容層は、必要に応じて分散剤、酸化防止剤、還元防止剤、pH調整剤等の添加剤が添加されても良い。
インクジェットプリント方法の説明に戻り、本実施形態のインクジェットプリント方法は、1回の焼成工程で全ての無機顔料が焼成されることが好ましい。焼成が複数回行われる場合、コスト高となり、また焼成後の色ばらつきが発生しやすくなる傾向がある。
焼成温度としては、600〜900℃であることが好ましい。焼成温度が600℃未満である場合、温度が低くガラスフリットを溶融させることができない可能性があり、その場合、所望のプリント物を得ることが難しい。また、焼成温度が900℃を超える場合、インク中の無機顔料が溶解や構造変化を起こしやすくなり、変色や消色が生じやすくなる傾向がある。焼成温度は使用するガラスフリットの種類や基材の熱による変形、炉の種類等を考慮し、適宜設定される。また、焼成時間についても、使用するガラスフリットの種類や基材の熱による変形、炉の種類等を考慮し、適宜設定される。
インクジェットプリント方法において使用されるガラスフリットは、一般的な陶磁器に用いられるガラスフリットと同様に、適正な熱膨張率および軟化点を持った物質が選定される。基材とガラスフリットとの熱膨張率および軟化点が著しく異なる場合、ガラスフリットは、基材との接着性が充分でなく、接着不良やクラックを生じる場合がある。
例えば、基材が600℃付近に軟化点を有するガラスである場合、ガラスフリットは、軟化点が600℃付近またはそれ以下のものが選定されることが好ましく、基材が800℃付近に軟化点を有するタイルや陶器類である場合、ガラスフリットは、軟化点が800℃付近またはそれ以下のものを選定することが好ましい。
以上、本発明の一実施形態について説明した。本発明は、上記実施形態に限定されない。
次に、本発明について実施例を挙げて説明する。本発明は、必ずしもこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
インクを作製するための材料を下記の処方で配合し、ボールミル分散機を用いて分散した。その後、濾過によって不純物を除去し、均一な無機顔料インクを作製した。
<インク処方>
無機顔料 40質量%
分散剤(ソルスパースJ981、日本ルーブリゾール(株)製) 8質量%
有機溶剤(TOENOL#2012−95、東栄ケミカル(株)製) 52質量%
合計 100質量%
インクの物性は下記となるように調整した。
<インク物性>
粘度 11mPa・s
表面張力 25mN/m
無機顔料の粒子径(D50) 230nm
物性値の測定方法を下記に示す。
(粘度)
JIS Z 8803:2011に準じ、インクを35℃に加温した状態で、回転粘度計を用いて粘度を測定した。本実施例においては、回転式粘度測定装置(東機産業(株)製、ビスコブロック VTB−250)を用いて測定した。
(表面張力)
Wilhelmy法により測定された値であり、本実施例においては自動表面張力計(協和界面化学(株)製、CBVP−A3)を用いて測定した。
(粒子径)
動的光散乱法により測定された値であり、本実施例においては粒子径測定装置(Malvern Instruments Ltd製、Zetasizer Nano−S)を用いて測定した。
無機顔料は下記のものを使用した。
<無機顔料>
第1の赤色成分:カラーインデックスピグメントレッド109(TN902、(株)イザワピグメンツ製)
第2の赤色成分:カラーインデックスピグメントレッド233(HS−76 MAROON、日研(株)製)
黄色成分:カラーインデックスピグメントイエロー159(G−400 黄、日研(株)製)
青色成分:カラーインデックスピグメントブルー36:1(NF−2800 BLUE、日研(株)製)
黒色成分:カラーインデックスピグメントブラック27(GC−90 BLACK、日研(株)製)
次いで、下記の方法にてインク受容層の形成を行った。
ガラスフリットに対し、ボールミルを使用し乾式分散を行った。次いで、下記処方にてポリビニルアルコールおよび純水を加え、乳鉢で混練した。
<インク受容層の処方>
ガラスフリット32117
(ガラスフラッキス、(株)イザワピグメンツ製) 65質量%
ポリビニルアルコール(接着剤:PVA−110、クラレ(株)製) 5質量%
純水 残り
合計 100質量%
次いで、スプレーガンを用いて基材(琺瑯板:施釉)にコーティングした後、90℃で10分間乾燥し、基材にインク受容層を形成した。
このインク受容層が施された基材に対して上記インクを使用し、インクジェットプリンタを用いて下記のインクジェット記録条件にて記録を行った。
<インクジェット記録条件>
ノズル径 70μm
電圧 80V
パルス幅 15μm
解像度 600×600dpi
駆動周波数 2kHz
インク付与量 30g/m
マゼンタインク付与量の関係 第一のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量:第二のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量=1:1(質量比)
図柄 各単色、各混色(2次色、組み合わせは表1を参照)をベタ柄で表現
記録後は、陶芸用電気炉を使用し、下記の条件で焼成を行った。なお、本実施例では、焼成温度のばらつきによる色再現性への影響を検証するため、同様の記録を行った基材を3枚用意し、焼成温度の異なる3枚のプリント物を作製した。
<焼成条件>
温度 低温:780℃、中温:800℃、高温:820℃
時間 5分間
<評価内容>
得られたプリント物に対し下記評価を行った。結果を表1に示す。
(1)発色性
得られたプリント物のうち、中温で焼成したものについて、目視にて観察を行い、下記評価基準に基づいて評価を行った。

○ 発色が良好で、色が鮮明に表現されていた
× 鮮明性が乏しく、画像が白けていた
(2)色再現性
得られたプリント物のうち、低温で焼成したものと、高温で焼成したものついて、それぞれ測色計(スペクトロフォトメーターCM−2600d、コニカミノルタ(株)製)を用いて、色相(光源 D65、視野 10°)を測定した。次いで、測定した色相から色差(ΔE)を求め、下記評価基準に基づいて評価を行った。

◎ 色差(ΔE)が1.0未満であった
○ 色差(ΔE)が1.0〜2.0未満であった
△ 色差(ΔE)が2.0〜3.0未満であった
× 色差(ΔE)が3.0以上であった
[実施例2]
インクジェット記録条件のうち、マゼンタインク付与量の関係を、第一のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量:第二のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量=1:0(質量比)に変更した(すなわち、第一のマゼンタインクのみを付与した)以外は、実施例1と同様にして、実施例2のプリント物を得た。結果を表1示す。
[実施例3]
インクジェット記録条件のうち、マゼンタインク付与量の関係を、第一のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量:第二のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量=1:2(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のプリント物を得た。結果を表1に示す。
[実施例4]
インクジェット記録条件のうち、マゼンタインク付与量の関係を、第一のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量:第二のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量=1:5(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のプリント物を得た。結果を表1に示す。
[実施例5]
インクジェット記録条件のうち、マゼンタインク付与量の関係を、第一のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量:第二のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量=1:10(質量比)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5のプリント物を得た。結果を表1に示す。
[比較例1]
無機顔料のうち、赤色成分にカラーインデックスピグメントレッド233のみを使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のプリント物を得た。結果を表1に示す。
[比較例2]
無機顔料のうち、第1の赤色成分にカラーインデックスピグメントブラウン33(Brown4130、アサヒ化成工業(株)製)を使用し、第2の赤色成分にカラーインデックスピグメントレッド233を使用した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のプリント物を得た。結果を表1に示す。
Figure 2020007384
表1から明白なように、本実施例1〜5のインクジェットプリント物は、いずれも鮮明な色表現ができ、焼成温度のばらつきによる色差が少なく、色再現性に優れたものであった。

Claims (9)

  1. 無機顔料を色材とするインクからなるインクジェット用インクセットであって、該インクセットの赤色成分がカラーインデックスピグメントレッド109からなる第一のマゼンタインクおよびカラーインデックスピグメントレッド233からなる第二のマゼンタインクの少なくとも2色のインクを含むことを特徴とする、インクジェット用インクセット。
  2. 無機顔料を色材とするインクからなるインクジェット用インクセットであって、該インクセットの赤色成分がカラーインデックスピグメントレッド109からなる第一のマゼンタインクおよびカラーインデックスピグメントレッド233からなる第二のマゼンタインクであり、かつイエローインク、およびシアンインクを含む少なくとも4色のインクからなることを特徴とする、インクジェット用インクセット。
  3. イエローインクがカラーインデックスピグメントイエロー159、シアンインクがカラーインデックスピグメントブルー36:1からなるインクであることを特徴とする、請求項2に記載のインクジェット用インクセット。
  4. 無機顔料を色材とするインクからなるインクジェット用インクセットであって、該インクセットの赤色成分がカラーインデックスピグメントレッド109からなる第一のマゼンタインクおよびカラーインデックスピグメントレッド233からなる第二のマゼンタインクであり、かつカラーインデックスピグメントイエロー159からなるイエローインク、カラーインデックスピグメントブルー36:1からなるシアンインク、およびブラックインクを含む少なくとも5色のインクからなることを特徴とする、インクジェット用インクセット。
  5. ブラックインクがカラーインデックスピグメントブラック27からなるインクであることを特徴とする、請求項4に記載のインクジェット用インクセット。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクセットを用い、基材上にインクジェット方式にてプリントして前記基材上で画像を形成した後、焼成を行うことを特徴とする、インクジェットプリント物の製造方法。
  7. 第一のマゼンタインクと第二のマゼンタインクを、第一のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量:第二のマゼンタインクによって付与される無機顔料の量=1:0〜10(質量比)を満たす付与量で、付与することを特徴とする、請求項6に記載のインクジェットプリント物の製造方法。
  8. 画像形成後の焼成が、600〜900℃の温度範囲内で実施されることを特徴とする、請求項6または7に記載のインクジェットプリント物の製造方法。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法により得られることを特徴とする、インクジェットプリント物。
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