JP2020006057A - 生体適合性材料、多孔質軟組織修復層、多孔質生体適合性シ−ト、及び人工皮膚 - Google Patents

生体適合性材料、多孔質軟組織修復層、多孔質生体適合性シ−ト、及び人工皮膚 Download PDF

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越美 伊藤
直人 荻原
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Abstract

【課題】本発明の課題は、軟組織修復効果及び酸素透過性が高く、且つ優れた基材密着性を有する生体適合性材料、多孔質軟組織修復層、多孔質生体適合性シ−ト、及び該シ−トを用いた人工皮膚を提供することにある。【解決手段】上記課題は、ポリシロキサン骨格を有し、さらに側鎖にポリオキシアルキレン骨格を有するビニル系ブロック共重合体(F)、及び生分解ポリマー(G)を含む生体適合性材料によって解決される。(ただし、該生分解ポリマー(G)は該ビニル系ブロック共重合体(F)を除く。)【選択図】なし

Description

本発明は、軟組織修復効果及び酸素透過性が高く、且つ優れた基材密着性を有する生体適合性材料、多孔質軟組織修復層、多孔質生体適合性シ−ト、及び該シ−トを用いた人工皮膚に関する。
外科手術、外傷等によって皮膚欠損が生じた場合、創面を覆って保護するものが必要とされ、一時的にはガ−ゼや脱脂綿などが適用される。しかし、ガ−ゼや脱脂綿では、取り外す際に創面を破壊してしまい、再出血を起こすなどの問題があった。そこで現在、創傷治癒を促進しながら、瘢痕形成を抑制するために人工皮膚が使用されており、例えば、スポンジ状のコラーゲン(組織修復性層)とシリコ−ン膜(酸素透過調節層)を組み合わせたペルナック(スミス・アンド・ネフュ−;Smith&nephew)や、テルダ−ミス(オリンパステルモバイオマテリアル株式会社)等が提供されている。
一方、シリコ−ン材料は、安全性が高く且つシロキサン結合の回転エネルギ−が低い。また、典型的なジメチルシロキサン鎖を有するシリコ−ンは、ケイ素原子に二つのメチル基が結合して嵩高いことから分子間の距離が大きくなり、何れも分子間に間隔が生じ酸素が通り易くなって、酸素拡散係数に優れるため、人工皮膚の酸素透過調節層等の再生医療用材料を含めた広範な用途に使用されている。
例えば特許文献1には、ポリ乳酸及び/又はオリゴ酸とポリエチレングリコ−ルの共重合体と、ヒドロキシアパタイト(以下、HAp)を複合化させたものを、シ−ト化に加工し、得られたシ−ト(組織修復性層)をさらに、シリコ−ン膜(酸素透過調節層)に積層させることで、人工皮膚用材料を供給する方法が記載されている。
特開2008−036134号公報
しかし、特許文献1に記載の方法では、軟組織修復性層が親水であり、酸素透過調節層が疎水であるため、層と層との界面自由エネルギ−が高いことから密着性に劣り、ウイルス等が層と層の界面に侵入しやすく、軟組織修復効果が低下する懸念がある。
よって本発明の課題は、軟組織修復効果及び酸素透過性が高く、且つ優れた基材密着性を有する生体適合性材料、多孔質軟組織修復層、多孔質生体適合性シ−ト、及び該シ−トを用いた人工皮膚を提供することにある。
即ち本発明は、下記〔1〕〜〔7〕に関する。
〔1〕 ポリシロキサン骨格を有し、さらに側鎖にポリオキシアルキレン骨格を有するビニル系ブロック共重合体(F)、及び生分解ポリマー(G)を含む生体適合性材料。
(ただし、該生分解ポリマー(G)は該ビニル系ブロック共重合体(F)を除く。)
〔2〕 前記ポリオキシアルキレン骨格が、下記一般式1で表される構造である、〔1〕に記載の生体適合性材料。
一般式1

(一般式1中、
1は炭素数2〜4のアルキレン基、
は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、
Xは炭素数2〜4のアルキレン基又は(C=O)O、
fは2〜100の整数を表す。
*はビニル系ブロック共重合体(F)の主鎖との結合位置を表す。)
〔3〕 前記ビニル系ブロック共重合体(F)が、アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)と、ポリオキシアルキレン骨格を有するビニルモノマ−(a)と、その他モノマ−(b)とからなる共重合体である、〔1〕又は〔2〕に記載の生体適合性材料。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕いずれか1項に記載の生体適合性材料からなる、多孔質軟組織修復層。
〔5〕 乾燥状態の多孔質軟組織修復層の厚みが0.5〜5mmである、〔4〕に記載の多孔質軟組織修復層。
〔6〕 〔4〕又は〔5〕に記載の多孔質軟組織修復層の片面に、シリコ−ン層が積層された、多孔質生体適合性シ−ト。
〔7〕 〔6〕に記載の多孔質生体適合性シ−トを用いた人工皮膚。
本発明によれば、軟組織修復性及び酸素透過性が高く、且つ優れた基材密着性を有する生体適合性材料、多孔質軟組織修復層、多孔質生体適合性シ−ト、及び該シ−トを用いた人工皮膚を提供することができる。
本発明の生体適合性材料は、ポリシロキサン骨格を有し、さらに側鎖にポリオキシアルキレン骨格を有するビニル系ブロック共重合体(F)、及び生分解ポリマー(G)を含む。(ただし、該生分解ポリマー(G)は該ビニル系ブロック共重合体(F)を除く。)
ビニル系ブロック共重合体(F)が、ポリシロキサン骨格と側鎖ポリオキシアルキレン骨格とを有することで、親水性軟組織修復層とシリコ−ン膜との化学的に親和性が高く、層と層の密着性を確保でき、優れた軟組織修復効果を発揮する。さらに、ビニル系ブロック共重合体(F)がポリシロキサン骨格を有することで、優れた酸素透過調節機能を発揮する。
<ビニル系ブロック共重合体(F)>
ビニル系ブロック共重合体(F)は、前述のとおり、ポリシロキサン骨格を有し、さらに側鎖にポリオキシアルキレン骨格を有する。ポリシロキサン骨格は、共重合体の側鎖又は主鎖のどちらに位置してもよく、側鎖と主鎖の両方に位置してもよいが、主鎖に位置することが好ましい。
好適なポリシロキサン結合の繰り返し単位化合物としては、例えば、ポリシロキサン;3−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、メチルジ(トリメチルシロキシ)(メタ)アクリロキシメチルシラン、モノ(メタ)アクリロキシプロピル末端モノ−n−ブチル末端ポリジメチルシロキサン、(2−メチル−)2−プロペン酸、2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル及び9−n−ブチル−1−[3−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)プロピル]−1 ,1,3,3,5,5,7,7,9 ,9−デカメチルペンタシロキサン等のシリコ−ン(メタ)アクリレートモノマ−;並びに、それらの組合せが挙げられる。
更に、ポリシロキサン結合の繰り返し単位化合物は、炭素数1〜4のポリアルキル置換及びポリアリ−ル置換シロキサン繰り返し単位を含んでいてもよい。好適なポリシロキサン繰り返し単位としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン及びそれらのコポリマーが挙げられる。
特に、ジメチルシロキサン鎖を有するシリコ−ンは、ケイ素原子に二つのメチル基が結合して嵩高い。これにより分子間距離が大きくなり、酸素拡散係数が向上し、優れた酸素透過性能を発揮することから、ポリジメチルシロキサン骨格を有するビニル系ブロック共重合体(F)が好ましく使用される。
ビニル系ブロック共重合体(F)を得る方法は特に限定されないが、アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)(以下、ポリシロキサン構造を有するアゾ系開始剤とも言う)と、ポリオキシアルキレン構造を有するビニルモノマ−(a)と、その他モノマ−(b)とからなる共重合体であることが好ましい。
本発明において、ポリシロキサン骨格と側鎖にポリオキシアルキレン構造を有するブロック共重合体(F)は、以下のような方法で得ることができる。即ち、ポリオキシアルキレン構造を有するビニルモノマ−(a)と、後述のその他モノマ−(b)とを、アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)を用いて重合して、ポリオキシアルキレン構造を有するポリマーを得ることができる。
<ポリオキシアルキレン骨格を有するビニルモノマ−(a)>
モノマ−(a)は、ポリオキシアルキレン構造を有するものである。ポリオキシアルキレン構造を有するモノマ−としては、例えば、
ポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、ポリプロピレンレングリコ−ル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコ−ルポリテトラメチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコ−ルポリテトラメチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中でも、ポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレートが好ましい。
モノマ−(a)としては、これらを単独で又は2種以上を用いて得られた繰り返し単位が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を言い表すものとする。
<その他モノマ−(b)>
ビニル系ブロック共重合体(F)を得る際に、前記モノマ−(a)の他に、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する、その他ビニル系モノマ−を用いることができる。ビニル系モノマ−に基づく構造の導入により、極性やTgが適切に制御され、優れたシ−トの耐久性を有することができるほか、溶媒溶解性等を制御することができる。
その他モノマ−としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;1−プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和モノマ−;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマ−;(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェ−トなどのリン酸基を有するモノマ−;(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの1〜3級アミド基を有するモノマ−;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、及びトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの4級アミノ基を有するモノマ−;n−ペンタキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコ−ル(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコ−ル(メタ)アクリレートなどのポリエ−テル鎖を有するモノマ−が挙げられる。
上記以外にも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端にカルボキシル基を有するアルキレンオキサイド付加系コハク酸(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマ−;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシブチル、単官能(メタ)アクリル酸グリセロ−ル、ラクトン環の開環付加により末端に水酸基を有するポリラクトン系(メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系(メタ)アクリル酸エステル、グルコ−ス環系(メタ)アクリル酸エステル類等の水酸基含有モノマ−;を用いることもできる。
これら、カルボキシル基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有するモノマ−を使用する場合、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキセタン、カルボジイミド化合物、アミノ化合物又はイソシアネート化合物等で架橋してもよい。
<アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)>
ビニル系ブロック共重合体(F)は、前述のとおり、アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(以下、ポリシロキサン構造を有するアゾ系開始剤とも言う)と、前述のモノマ−(a)、(b)とからなる共重合体として得ることができる。また、本願のビニル系ブロック共重合体(F)は、アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)、後述のポリエチレンオキサイド構造含有開始剤(E)、及びモノマ−(a)、(b)とからなる共重合体として得ることもできる。
なお、アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)は、シロキサン結合の繰り返し単位を有するマクロアゾ開始、ポリシロキサン構造を有するアゾ系開始剤と記載することもある。
[アゾ基含有ポリシロキサン開始剤の調製]
アゾ基含有ポリシロキサン開始剤は、少なくとも片方の末端にヒドロキシル基、アミノ基、チオ−ル基等の官能基を有する反応性直鎖状ポリシロキサンと、カルボキシ基を有するアゾ系開始剤とを反応させることにより得ることができる。反応性直鎖状ポリシロキサンは、下記一般式10の化合物より選択してもよい。
一般式10
一般式10中、R13 は、置換及び非置換の炭素数1〜24のアルキル基、いくつかの実施形態においては置換及び非置換の炭素数1〜10のアルキル基、他の実施形態においては非置換の炭素数1〜4のアルキル基、また他の実施形態においてはメチル基又はn−ブチル基より選択され、R1 4 〜R17は、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリ−ル基より独立して選択され、rは、5〜60、6〜50、6〜20、6〜15いくつかの実施形態においては6〜12の整数であり、R18及びR19は、水素原子 、非置換の炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシル基やアミノ基等で置換された炭素数1〜4のアルキル基及びそれらの組合せより独立して選択されるが、R18、R19の少なくとも1つは、水素原子であるか、あるいはヒドロキシル基、アミノ基又はメルカプト基を有するアルキル基を含む。
反応性直鎖状ポリシロキサンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
上記式中、mは0〜3であり、nはr+1の整数である。
反応性直鎖状ポリシロキサンを、カルボキシ基を有するアゾ系開始剤と反応させる。好適なアゾ系開始剤としては、4 ,4 ’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びその誘導体、2,2 ’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2 ,2 ’− アゾビス[2−メチル−N−[2−(1−カルボキシブチル)]プロピオンアミド]並びに、2,2 ’−アゾビス[2−メチル−N−(2−カルボキシエチル)プロピオンアミド]等が挙げられ、4 ,4 ’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)が好ましく使用されている。
アゾ系開始剤と反応性直鎖状ポリシロキサンとは、アゾ系開始剤によってラジカルが発生しない十分に低い温度で、縮合反応又はヒドロシリル化反応によって反応させる。反応温度が高過ぎるとアゾ系開始剤からラジカルが発生してしまい、温度が低過ぎると反応が完了するまでに長時間かかってしまう。したがって反応温度は、−20℃〜50℃ が好ましく、0℃〜40℃がより好ましく、10℃〜35℃ が最も好ましい。
アゾ基含有ポリシロキサン開始剤の質量平均分子量は、1,000以上であり、好ましくは2,000〜10,000,000であり、より好ましくは5,000以上であり、さらに好ましくは10,000以上であり、特に好ましくは100,000以上である。分子量が2,000以上であることにより、生体適合性材料の弾性を付与でき、長期間の軟組織修復性及び経時形状安定性を発揮する。
[縮合剤]
また、本発明のアゾ基含有ポリシロキサン開始剤は縮合剤が含まれていてもよい。縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)及びN−エチル−N ’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC= WSCI)、並びに、塩酸塩(WSCI・HCl)が挙げられる。DCC又はWSCIと、N−ヒドロキシスクシンイミド(HONSu) 、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル(HOBt) 又は3 − ヒドロキシ− 4 −オキソ−3 , 4−ジヒドロ−1,2,3− ベンゾトリアジン(HOBt)等との組合せを用いることもできる。使用量が少な過ぎると原料が残って精製が困難になり、量が多過ぎると縮合剤が残って精製が困難になる。したがって添加モル比は、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤の量の1.8〜4.0倍が好ましく、2.0〜3.0倍がより好ましく、2.1〜2.7倍が最も好ましい。
[触媒]
また、本発明のアゾ基含有ポリシロキサン開始剤は、反応性を高めるために、本発明のマクロ開始剤合成反応の際に触媒を加えてもよい。好適な触媒としては、4−ジメチルアミノピリジン等の求核触媒が挙げられる。
アゾ基含有ポリジメチルシロキサンの市販品としては、和光純薬工業社製のVPSシリ−ズが挙げられ、VPS−1001、VPS−0501等が挙げられる。
<ポリエチレンオキサイド構造含有開始剤(E)>
本発明のビニル系ブロック共重合体(F)は、前述のとおり、アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)と、さらにポリエチレンオキサイド構造含有開始剤(E)、及びモノマ−(a)、(b)とからなる共重合体として得ることもできる。ポリエチレンオキサイド構造含有開始剤としては、下記一般式2で表される構造を有するものが好ましい。
一般式2
(一般式2中、x及びyはそれぞれ独立して、1〜100の整数を表す。)
上記一般式2で表される構造を有する開始剤は、ポリエチレンオキサイド構造を有しているため、水、アルコ−ル、有機溶剤に可溶であり、溶液重合にてブロック共重合体の合成が可能である。また、分子骨格中に重合開始部分(ラジカル発生部分:−N=N−)を有しているため、ラジカルの反応性、安定性が高いという特徴を有している。
また、一般式2で表される構造を有する開始剤をビニル系ブロック共重合体(F)に配合することで、ビニル系ブロック共重合体(F)と下記の生分解ポリマー(G)との相溶性がさらなる高くなり、軟組織修復性、層と層の密着性を確保することができる。
前記ポリエチレンオキサイド構造含有開始剤(E)の質量平均分子量は、5,000〜10万程度、好ましくは1万〜5万である。また、該開始剤のポリエチレンオキサイド構造の質量平均分子量は、800〜1万程度、好ましくは1,000〜8,000程度であればよい。
ポリエチレンオキサイド構造含有開始剤(E)の具体例としては、ポリエチレングリコ−ル・ブロック(分子量2,000)を含む高分子アゾ重合開始剤が好ましく、和光純薬製の高分子アゾ開始剤VPE0201(上記一般式2において、(CHCHO)xで表される部分構造の分子量が約2,000であり、yは6程度である。)などが挙げられる。
<ビニル系ブロック共重合体(F)の共重合>
前記ポリオキシアルキレン構造を有するモノマ−(a)は、全モノマ−の合計量に対して、1質量%以上で使用することが好ましい。好ましくは4質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。また、95質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下である。上記範囲とすることで、軟組織修復性が高く、優れた酸素透過性を発揮する。
本発明のビニル系ブロック共重合体の共重合体(F)の質量平均分子量は、2,000以上であり、好ましくは2,000〜10,000,000であり、より好ましくは5,000以上であり、さらに好ましくは10,000以上であり、特に好ましくは100,000以上である。分子量が2,000以上であることにより、塗膜の凝集力を付与でき、塗工基材からの剥離を抑制でき、より長期間の酸素透過性効果を発揮する。また、10,000,000以下であると、適正な粘度になることから、塗工適性が向上するため好ましい。より好ましくは、500,000以下である。
<生分解ポリマー(G)>
生分解ポリマー(G)は、優れた軟組織修復性を発揮することができる。生分解ポリマー(G)は生体ポリマーと合成ポリマーとに大別されるが、本発明の効果を損なわない範囲で、人工皮膚の移植部位や目的、用途に応じて適宜選択することができえる。これらは1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
[生体ポリマー]
生体ポリマーとは、生体に存在することが知られているポリマーの全てを言い、多糖類、蛋白質、核酸の他、糖蛋白などこれらの複合物をも含む。中でも、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、テネイシン、ヒアルロン酸、フィブリン、プロテオグリカン等、細胞外マトリックスと言われる物質が、主に細胞骨格形成や細胞間接着に寄与する点で好ましく使用できる。
例えば、コラーゲンは動物中に含まれるタンパク質であり、種々の形状、すなわち粉体、スポンジ等への成形加工が容易であり、かつ細胞増殖のための足場としての機能を有するため創部の治癒を促進させることができる。しかし、生体ポリマーの使用に相当な規制がかかるようになっているため、合成ポリマーが好ましく使用される。
[合成ポリマー]
合成ポリマーとは、生分解性ブロックと親水性ブロックの重縮合や重付加等の操作によって得られる合成ポリマーのすべてを言う。生分解性ブロックであれば、特に限定されないが、具体例として酢酸セルロ−ス、カプロラクトン− ブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどのサクシネート系、ポリブチレンアジペート・テレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリビニルアルコ−ル、ポリ乳酸系、脂肪族ポリエステル系、ポリグリコ−ル酸、でん粉系などが挙げられるが、本発明においては吸水性や親水性、安全性、入手の容易さなどの点からポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコ−ル酸などのポリ− α − ヒドロキシ酸を用いるのが好ましい。
親水性ブロックとしては、ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコ−ル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ヒドロキシエチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス、ポリエチレンイミン、ポリアスパラギン酸などが挙げられるが、本発明においては生体材料として実績があるポリエチレングリコ−ルを用いるのが好ましい。
合成ポリマーは親水性物質であり、創部よりの浸出水を吸収して湿潤になり、湿潤環境を保持するとともに創傷面に被覆材が癒着するのを防止し、いずれの場合も被覆材そのものに親水性(吸湿性)とクッション性を持たせることにより創部の物理的保護を目的として、自己再生能により欠損部の治癒を促進させる。
生分解ポリマー(G)の質量平均分子量は、2,000以上であり、好ましくは2,000〜10,000,000であり、より好ましくは5,000以上であり、さらに好ましくは10,000以上であり、特に好ましくは100,000以上である。分子量が2,000以上であることにより、塗膜の凝集力を付与でき、塗工基材からの剥離を抑制でき、より長期間の軟組織修復性効果を発揮する。また、10,000,000以下であると、適正な粘度になることから、塗工適性が向上するため好ましい。より好ましくは、500,000以下である。
<生体適合性材料>
本発明の生体適合性材料は、前記ビニル系ブロック共重合体(F)及び生分解ポリマー(G)を含むことを特徴とする。
生体適合性材料は、生体適合性材料100質量%中、前記ビニル系ブロック共重合体(F)を50質量以下%含むことが好ましく、0.5〜50質量%含むことがより好ましい。ビニル系ブロック共重合体(F)の含有量を0.5質量%以上とすることで、優れた酸素透過性を発揮することができる。ビニル系ブロック共重合体(F)の含有量を50質量%以下とすることで、生体適合性材料の軟組織修復性、生分解性を確保することができる。
また、生体適合性材料100質量%中、前記生分解ポリマー(G)を50質量以上%含むことが好ましく、50〜90質量%含むことがより好ましい。生分解ポリマー(G)の含有量を50質量%以上とすることで、生体適合性材料の軟組織修復性、生分解性を発揮することができる。逆に、生分解ポリマー(G)の含有量を90質量%以下とすることで、生体適合性材料の酸素透過性を確保することができ、下記の多孔質軟組織修復層とシリコ−ン層との積層の密着性を向上することができる。
また、本発明の生体適合性材料は、ビニル系ブロック共重合体(F)及び生分解ポリマー(G)の以外の成分を含んでも良い。
[ビニル系ブロック共重合体(F)及び生分解ポリマー(G)の以外の成分]
上記(F)及び(G)以外の成分として、必要に応じて感染防止を目的としてアンピシリン、塩酸タランピシリン、ヘタシリンカルシウム、フェノキシメチルペニシリンカリウム、ベンジルペニシリンベンザチン等のペニシリン系抗生剤、塩酸クリンダマイシン、塩酸リンコマイシン等のリンコマイシン系抗生剤、硫酸カナマイシン、硫酸フラジオマイシン等のアミノグリコキシド系抗生剤、セファクロル、セファドロキシル、セフロキシムアキセチル等のセフェム系抗生剤、ホスホマイシンカルシウム等のホスホマイシン製剤、ミデカマイシン、リン酸オレアンドマイシン、キタサマイシン等のマクロライド系抗生剤、クロラムフェニコル等のクロラムフェニコル系抗生剤、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、塩酸ミノサイクリン等のテトラサイクリン系抗生剤、エノキサシン、オフロキサシン、シノキサシン等のキノロン系抗菌剤、チアンフェニコ−ル等のクロラムフェニコ−ル系抗菌剤、銀及びその塩等の抗菌剤、硝酸イソコナゾ−ル、硝酸エコナゾ−ル等の抗真菌剤等を含有させても良い。
<多孔質軟組織修復層>
多孔質軟組織修復層を製造する方法は特に限定されないが、一例として、前記ビニル系ブロック共重合体(F)、生分解ポリマー(G)及び溶剤を混合して樹脂溶液を調整し、上面が開口し下面が平底である容器に流し込んだ後、凍結乾燥することにより生体適合性シ−トを作製するのが簡便かつ低コストであり好ましい。ここで用いる溶剤としては、1、4−ジオキサンを用いるのが好ましい。凍結乾燥の条件としては、0℃より低い温度で10時間程度以上冷却した後、10時間以上減圧乾燥するのが好ましい。
軟組織への適合性を向上させるために、前記得られた多孔質軟組織修復層にHApを複合化することが好ましい。HApを複合化する方法も特に限定されないが、本発明においては、特開2008−036134号公報の段落0020に記載されている交互浸漬法を用いるのが好ましい。
本発明において、乾燥状態の孔質軟組織修復層の大きさ及び形状は特に限定されず、目的や創面の大きさ、形状に合わせて適宜設定すればよい。例えば、皮膚損傷部に移植して用いる場合には、孔質軟組織修復層の厚みは0 .5〜5mmであることが好ましい。
[弾性率]
本発明において、多孔質軟組織修復層の弾性率が10〜150MPaであることが好ましい。弾性率が低すぎると、創面に貼付した際に皮膚の伸縮により軟組織修復層が破れたりする問題が生じることがある。したがって、弾性率は13MPa以上がより好ましく、17MPa以上がさらに好ましい。逆に、弾性率が高すぎて問題となることは特にないが、人の皮膚の弾性率が150M Pa程度であることから上限としては150MPa程度が適当である。
[細孔径]
本発明の多孔質軟組織修復層は、走査型電子顕微鏡の断面の撮影・観察法より測定された細孔径(以下、平均細孔径ともいう)が、2〜500μmであることが好ましい。細孔径が小さすぎると繊維芽細胞、あるいは、脂肪組織由来の幹細胞の侵入が起こりにくくなる場合がある。したがって、平均細孔径は5μm以上がより好ましく、8μm以上がさらに好ましい。細孔径が大きすぎると細胞侵入を誘引する要因の一つである毛細管現象が起こりにくくなるため、細孔径は450μm以下がより好ましく、400μm以下がさらに好ましく、350μm以下がよりさらに好ましい。また、細孔(空隙)の形状は特に限定されず、円形、楕円形、その他の幾何学的形状や不定形状であっても構わない。また、多孔質軟組織修復層の厚み方向に細孔が連続していてもよいし、不連続であっても良い。連通孔であれば、より好ましい。また、形状、大きさが異なる細孔が混在していてもよい。さらに、創傷部接触面から厚み方向に向かって細孔径がほぼ同一であってもよいし、小さくなるような非対称構造であってもよい。
[空隙率]
本発明において、多孔質軟組織修復層の空隙率は70〜99%であることが好ましい。空隙率が大きすぎると柔軟性や組織浸潤性は向上するが、拘縮抑制能や皮膚組織再生能に劣る可能性がある。また、空隙率が小さすぎると、機械的強度を向上することはできるが、組織浸潤性や柔軟性に劣ることがある。したがって、多孔質軟組織修復層の空隙率は80〜98% であることがより好ましく、90〜97% であることがさらに好ましい。
[吸水率]
本発明において、多孔質軟組織修復層の吸水率は5〜1000%であることが好ましい。吸水率が低すぎると、創面を十分に湿潤状態に保つことが出来なくなる可能性がある。また、生体適合性シ−トの吸水率が高すぎて問題となることは特にないが、生体適合性シ−トを人工皮膚として使用する際に生理食塩水などに浸漬して十分に湿潤させた場合の取り扱い性が低下することがある。したがって、吸水率は900% 以下がより好ましい。
<多孔質生体適合性シ−ト>
本発明において、多孔質軟組織修復層の片面に水分及び酸素透過調節層が積層されていることが好ましい。酸素透過調節層の材料は特に限定されないが、シリコ−ン、ポリウレタン、ポリオレフィン、スチレン−ブタジエンブロックポリマー、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。本発明においては患部からの水分の蒸散や微生物等の浸入等を抑制できるとか、生体適合性が高いなどの理由からシリコ−ンを用いるのが好ましい。
一例として、前記材料からなる生体適合性材料からなるペ−ストをシリコ−ンからなるシ−ト上に、アプリケ−タ−を用いて均一に塗布し、前記ペ−ストが硬化する前に多孔質軟組織修復層を圧着し、乾燥してペ−ストを硬化させ、多孔質生体適合性シ−トに酸素透過調節層を積層する。
[補強材]
前記、多孔質生体適合性シ−トにはさらに補強材を組み合わせることも本発明の範疇から除外しない。多孔質生体適合性シ−トを人工皮膚として使用する際、創部に該シ−トを密着させた後、縫合を施すが、縫合時の強度を確保するためにポリカプロラクトン、ポリビニルアルコ−ル、ポリ乳酸系、ポリグリコ−ル酸、ポリビニルアルコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート等の材料からなる補強材を使用するのも好ましい態様として挙げられる。補強材の形態としては、多孔質シ−ト状でもメッシュ状でも構わない。
<人工皮膚>
以上説明したように、本発明の多孔質生体適合性シ−ト及びそれを用いた人工皮膚は全体として、生体分解性ポリマー(G)及び酸素透過性を有する共重合体(F)を配合させることにより、軟組織への適合性を向上させるとともに、酸素透過を促進させる効果を有するとともに、生体内で分解し、吸収される材料である。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
<分子量の測定>
実施例等において、ブロック共重合体(F)、生分解ポリマー(G)の数平均分子量(Mn) 、質量平均分子量(Mw) 、分散度(Mw/Mn) はゲルろ過クロマトグラフ(GPC)法を用いて測定した。GPC装置として島津製作所社製LC−10AT、検出器はRID−6A、CLASS−LC10デ−タプロセッサ−を用いた。カラムは、TSKガ−ドカラムHHR−H、TSKゲルGMHHR−H(東ソ−社製)を組み合わせて用いた。溶離液はテトラヒドロフランを用い、40℃で分析を行なった。
<アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)>
VPS−1001(和光純薬工業製)を、アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)として用いた。
<ポリエチレンオキサイド構造含有開始剤(E)>
VPE−0201(和光純薬工業社製)を、ポリエチレンオキサイド構造含有開始剤(E)として用いた。
<ビニル系ブロック共重合体(F)の製造>
(ビニル系ブロック共重合体(F−1))
攪拌器、温度計、滴下ロ−ト、還流器を備えた反応容器に、酢酸エチル100部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)のVPS−1001を15部、ポリエチレンオキサイド構造含有開始剤(E)のVPE−0201を15部、モノマ−(b)としてブチルアクリレートを40部、モノマ−(a)としてメトキシポリエチレングリコ−ルメタクリレート(日油社製、ブレンマ−PME−100)30部を混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに2時間撹拌を続けた。固形分測定によって転化率が98%を超えたことを確認後、冷却して、ビニル系ブロック共重合体の溶液を得た。得られたビニル系ブロック共重合体の溶液を12時間真空乾燥し、ビニル系ブロック共重合体(F−1)を得た。得られたビニル系ブロック共重合体(F−1)の質量平均分子量は165,000であった。
(ビニル系ブロック共重合体(F−2)〜(F−6))
表1に示す配合組成とした以外は、ビニル系ブロック共重合体(F−1)と同様の方法でブロック共重合体を合成及び真空乾燥して、ビニル系ブロック共重合体(F−2)〜(F−6)を得た。
表1中の略称を以下に示す。
a−1:メトキシポリエチレングリコール-メタクリレート(ブレンマー(登録商標)PME−100、日油社製)
a−2:メトキシポリエチレングリコール-メタクリレート(ブレンマー(登録商標)PME−200 日油社製)
a−3:メトキシポリエチレングリコール-アクリレート(ブレンマー(登録商標)AME−400 日油社製)
a−4:ラウロキシポリエチレンフリコールーメタアクリレート(ブレンマー(登録商標)PLE−1300 日油社製)
AIBN開始剤:2,2'-アゾジイソブチロニトリル
DCPA:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト
BA:ブチルアクリレート
MEA:2−メトキシエチルアクリレート
VPS−1001:アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(和光純薬工業社製)
VPE−0201:ポリエチレンオキサイド構造含有開始剤(和光純薬工業社製)
<生分解ポリマー(G)の製造>
(生分解ポリマー(G−1))
特開2001−104346号公報の段落0009に記載のコラーゲンスポンジの調整の方法を参考にして、固形分濃度100%の生分解ポリマー(G−1)を得た。
(生分解ポリマー(G−2))
L−乳酸(和光純薬社)を最初常圧下で2時間、次に100mmHgで2時間、さらに30mmHgで2時間、最後に20mmHgで2時間撹拌して脱水した。温度はいずれも150℃ とした。オリゴL−乳酸を得た。
100℃ で8時間脱水したマクロゴ−ル4,000(日本油脂)を25部、上記のオリゴL−乳酸を45部、1,10−デカンジカルボン酸(東京化成)を30部、50質量%のジフェニルエ−テル(シグマ−アルドリッチ)及び0.1質量%の酸化錫(ナカライテスク)を還流冷却器付きのフラスコ内に入れ、180℃ 、30mmHgで還流した。得られた生成物を20質量%となるようクロロホルムに溶解し、10,000rpmで4℃1時間遠心分離して酸化錫を除去した。得られた溶液を30倍のジエチルエ−テル中に加え、沈殿したポリマーを得た。得られたポリマーをろ過して12時間真空乾燥し、固形分濃度100%の生分解ポリマー(G−2)を得た。
<生体適合性材料の製造>
[実施例1〜7、比較例1〜4]
(生体適合性材料(FG−1〜11))
表2に示す配合組成で、得られたビニル系ブロック共重合体(F)と、生分解ポリマー(G)とを、10倍量の1,4−ジオキサン中に加え、混合し、得られた混合物をろ過して12時間真空乾燥し、固形分濃度100%の生体適合性材料(FG−1〜11)を得た。
<多孔質軟組織修復層の製造>
[実施例8〜14、比較例5〜8]
(多孔質軟組織修復層(FGL−1〜11))
表3に示す配合組成で、得られた生体適合性材料(FG−1〜11)を10倍量の1,4−ジオキサン中に加え、溶解し、上面が開口し下面が平底であるビーカーに流し込んだ後、−20℃で12時間凍結乾燥し、多孔質軟組織修復層(1〜11)を得た。
さらに、得られた多孔質軟組織修復層(1〜11)について、塩化カルシウム溶液(濃度:250mM)(以下Ca溶液という)とリン酸水素二ナトリウム溶液(濃度:100mM) (以下P溶液という)に、交互に材料を浸漬する交互浸漬法により、ヒドロキシアパタイト(HAp)を複合化させた。具体的には、「Ca溶液浸漬を5分間、水洗、P溶液浸漬を5分間、水洗、Ca溶液浸漬を5分間」を1サイクルとし、これを3サイクル行った後、水洗し、室温で48時間凍結乾燥し、膜厚が2mmのHApを複合化した、多孔質軟組織修復層(FGL−1〜11)を得た。
<多孔質軟組織修復層の評価>
得られた多孔質軟組織修復層について、以下の評価を実施した。結果を表3に示す
評価項目1:<弾性率>
得られた多孔質軟組織修復層を、長さ30mm 、幅10mm に切り取り、40℃ で12時間真空乾燥した後、島津製作所社製AGS−Hを用いて10Nロ−ドセル、クロスヘッドスピ−ド100m/minで弾性率を測定した。
(評価基準)
○:17<弾性率≦150(良好)
△:10<弾性率≦17(使用可能)
×:弾性率≦10、或いは、弾性率>150(使用不可)
評価項目2:<細孔径>
走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジ−、S−3400N)を用いて、得られた多孔質軟組織修復層の断面を撮影し、500倍の電顕撮影映像からImageJ(ver.1.43u、NIH開発の画像処理ソフトフェア)により細孔径を測定し、細孔50本の細孔径の平均値を、細孔径とした。
(評価基準)
○:8μm<細孔径≦350μm(良好)
△:2μm<細孔径≦8μm 又は、350μm<細孔径≦450μm(使用可能)
×:細孔径≦2μm、又は、450μm<細孔径(使用不可)
評価項目3:<吸水率>
乾燥機にて充分に乾燥した多孔質軟組織修復層の質量:MD(g)を測定すると共に、25℃の蒸留水に24時間浸漬した後、平衡状態にするために2時間煮沸処理を行なって吸水した多孔質軟組織修復層の質量:MW(g)を測定し、それらの値を用いて、次式により、得られた多孔質軟組織修復層の吸水率:WAを算出した。
WA(%)=[(MW−MD)/MD]×100(評価基準)
(評価基準)
○:5%<吸水率≦900%(良好)
△:900%<吸水率≦1000%(使用可能)
×:吸水率≦5%、或いは、1000%<吸水率(使用不可)
<生体適合性シートの製造>
[実施例15〜21、比較例9〜12]
シリコ−ン(シルガ−ド184主剤と硬化剤=10:1(東レ・ダウコ−ニング製))/ 酢酸エチル溶液=1:10(質量比)のシリコーン溶液を、ポリテトラフルオロエチレンからなるシ−ト上に、アプリケ−タ−を用いて乾燥後膜厚が100μmになるように、均一に塗布した。シリコ−ン溶液が硬化する前に、得られたHAp複合化多孔質軟組織修復層(FGL−1〜11)を圧着し、30℃で22時間乾燥して硬化させ、HAp複合化多孔質軟組織修復層に、酸素透過調節層であるシリコ−ン層を積層した。得られたシリコ−ン積層多孔質軟組織修復層を、40℃で6時間エチレンオキサイドガスを用いて滅菌した。得られたシリコ−ン膜積層多孔質軟組織修復層をエアレ−ションして15時間真空乾燥し、生体適合性シ−ト(FGS−1〜11)を得た。
<生体適合性シ−トの評価>
得られた生体適合性シ−トについて、以下の評価を実施した。結果を表4に示す
評価項目4:<拘縮抑制効果(軟組織修復性)>
ラットに麻酔を導入した後、所定の大きさの皮膚全創欠損を作製し、その部分に得られた生体適合性シ−トを吻合固定した。6週間後、皮膚欠損部の生体適合性シ−トを除去し、欠損部の拘縮状態を確認した。拘縮率(残存率)は当初の手術時の欠損領域に対する残存した欠損領域(面積)の割合で示した。(残存率(%)=(6週間後の多孔質シ−ト面積/貼付前多孔質シ−ト面積)×100により求めた。)拘縮率(残存率)は高いほど、皮膚欠損部の再生が順調であり、良好な皮膚再生能を有することを示す。
(評価基準)
◎:残存率>45%(極めて良好)
○:35%<残存率≦45%(良好)
△:25%<残存率≦35%(使用可能)
×:25%≦残存率(不良)
評価項目5:<酸素透過性>
得られた生体適合性シ−トを、GTG(GAStoGAS)ANALYZER(米国:REHDERDEVELOPMENTCOMPANY製)を用いて、測定時間3分にて測定し、その得られた測定値を、ISO9912−2にて規格化されたメニコンEX(Dk=64)を用いて換算して、Dk値を求めた。なお、Dk値は、酸素透過係数の値[(cm/sec)・(mLO/mL×mmHg)]を意味する。
(評価基準)
◎:Dk>1012(極めて良好)
○:1011<Dk≦1012(良好)
△:1010<Dk≦1011(使用可能)
×:1010≦Dk(不良)
評価項目6:<層と層の密着性>
得られた生体適合性シ−トについて、JISK5400(1990年版)に準じて碁盤目テ−プ法により多孔質軟組織修復層とシリコ−ン層との密着性を評価した。100マス中、剥れたマスの数を用いて下記基準で判断した。
(評価基準)
◎:剥れが認められなかった(極めて良好)
○:剥れたマス数が、1以上、50未満である(良好)
△:剥れたマス数が、50以上、75未満である(使用可能)
×:剥れたマス数が、75以上である(不良)
表3に示すように、本発明のブロック共重合体(F)及び生分解ポリマー(G)を含む生体適合性材料を用いた多孔質軟組織修復層は、適度な弾性率、細孔径、吸水率を有していた。また、表4に示すように、上記多孔質軟組織修復層を用いた多孔質生体適合性シ−トは、優れた軟組織修復性、酸素透過性、層と層の密着性を示した。
特に、一般式1で表されるポリオキシアルキレン骨格を有するモノマーa−1、a−2を共重合組成に含む共重合体を用いた多孔質生体適合性シートは、軟組織修復性、酸素透過性、層と層の密着性の全てに優れていた。
一方、ポリシロキサン骨格を有していない共重合体を用いた多孔質生体適合性シートは、酸素透過性、層と層の密着性が劣っていた(比較例9)。
また、側鎖にポリオキシアルキレン骨格を有していない共重合体を用いた多孔質生体適合性シートは、層と層の密着性が劣っていた(比較例10)。
更に、ビニル系ブロック共重合体(F)を含まない多孔質生体適合性シートは、軟組織修復性、酸素透過性、層と層の密着性が劣っていた(比較例11)。
更に、生分解ポリマー(G)を含まない多孔質生体適合性シートは、軟組織修復性、層と層の密着性が劣っていた(比較例12)。

Claims (7)

  1. ポリシロキサン骨格を有し、さらに側鎖にポリオキシアルキレン骨格を有するビニル系ブロック共重合体(F)、及び生分解ポリマー(G)を含む生体適合性材料。
    (ただし、該生分解ポリマー(G)は該ビニル系ブロック共重合体(F)を除く。)
  2. 前記ポリオキシアルキレン骨格が、下記一般式1で表される構造である、請求項1に記載の生体適合性材料。
    一般式1

    (一般式1中、
    1は炭素数2〜4のアルキレン基、
    は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、
    Xは炭素数2〜4のアルキレン基又は(C=O)O、
    fは2〜100の整数を表す。
    *はビニル系ブロック共重合体(F)の主鎖との結合位置を表す。)
  3. 前記ビニル系ブロック共重合体(F)が、アゾ基含有ポリシロキサン開始剤(D)と、ポリオキシアルキレン骨格を有するビニルモノマ−(a)と、その他モノマ−(b)とからなる共重合体である、請求項1又は2に記載の生体適合性材料。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の生体適合性材料からなる、多孔質軟組織修復層。
  5. 乾燥状態の多孔質軟組織修復層の厚みが0.5〜5mmである、請求項4に記載の多孔質軟組織修復層。
  6. 請求項4又は5に記載の多孔質軟組織修復層の片面に、シリコ−ン層が積層された、多孔質生体適合性シ−ト。
  7. 請求項6に記載の多孔質生体適合性シ−トを用いた人工皮膚。
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