JP2020005624A - 自動車の高温害虫駆除方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】薫蒸剤を使用せずに高温処理によって効率よく害虫を駆除することができる高温害虫駆除方法を提供する。【解決手段】処理室20内に出し入れ自在に収容された被処理物Cに対して、害虫駆除温度に熱せられた加熱空気を一定時間付与して被処理物に付着した害虫を高温駆除する方法において、前記処理室内に、吸い込み部32を処理室の内側方向に向けて配置した循環ファン装置30の吐き出し部33に加熱部材40を設置して前記加熱部材を介して加熱した空気を室内に送り出すとともに、室内を流通する空気を前記循環ファン装置の前記吸い込み部へ導入して循環流通させる。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や電気機器等の種々の製品に付着した害虫を高温処理により駆除する高温害虫駆除方法に関する。
日本は世界でも有数の貿易大国であり、数多くの物品が海外へと輸出されている。輸出される物品としては、自動車、テレビや冷蔵庫等の家電製品、映像機器、パソコン、半導体等の電子部品等の各種電気機器類等の種々の製品が知られる。これらの製品の輸出に際して、輸出品や輸送船等に輸出元国に生息している昆虫等が付着していると、輸出先国において外来生物として生態系に悪影響を及ぼす等の問題が生じることがある。特に、この種の外来生物による農作物への被害は深刻であり、輸出先国では害虫として処理されて輸出品の積み下ろしが許可されないことがあるため、輸出品の厳格な検疫が要求される。
例えば、近年、ニュージーランドにおいて、日本からの輸出自動車にクサギカメムシの付着が確認された。カメムシは発見しにくく、駆除も困難で繁殖力が高いこと等が知られており、農業が盛んなニュージーランドでは駆除対象害虫として特に警戒されている。そのため、カメムシの付着が確認された輸送船が相次いで国外退去を強いられ、日本からの自動車の輸出状況が悪化している。
ニュージーランドは、国内で自動車製造が行われていないことから、日本にとって非常に重要な自動車輸出市場となっている。従って、日本からの自動車の輸出状況の悪化は、日本経済に大きな打撃を与えるのみならず、国内で流通する自動車を日本の輸出自動車に頼っているニュージーランドの経済にとっても大きな打撃となる。そこで、カメムシに代表される害虫を確実に駆除する手段を構築することが急務である。
一般に、害虫を駆除する場合には、ヨウ化アルキル等の薬剤を用いた薫蒸が行われる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、薬剤の薫蒸による害虫駆除は、自動車を処理対象とした場合、自動車は精密機械であるため種々の機器に悪影響を及ぼしたり、エアコンのフィルター等に薬剤が残留して悪臭の原因となったりして好ましくない。また、薫蒸処理は数日間を要し、薫蒸剤の使用によりコストも高くなる。そのため、特に輸出台数が年間数十万台に及ぶ輸出自動車を処理対象とすると、1台を害虫駆除するのに時間がかかりすぎて、大量の自動車を処理するには極めて広大な処理施設を確保しなければならない。これでは、輸出自動車の適切な害虫駆除は現実的に不可能である。
これらは、自動車に限らず、他の輸出品でも起こり得る問題である。そこで、大量の輸出品の処理に対応して効率よく適切に害虫駆除することが可能な新たな手法が求められている。
特開2003−267803号公報
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、薫蒸剤等を使用せずに高温処理によって被処理物に付着した害虫を効率よく駆除することができる高温害虫駆除方法を提供するものである。
すなわち、請求項1の発明は、処理室内に収容された被処理物に対して、害虫駆除温度に熱せられた加熱空気を一定時間付与して被処理物に付着した害虫を高温駆除する方法において、前記処理室内に、吸い込み部を処理室の内側方向に向けて配置した循環ファン装置の吐き出し部に加熱部材を設置して前記加熱部材を介して加熱した空気を室内に送り出すとともに、室内を流通する空気を前記循環ファン装置の前記吸い込み部へ導入して循環流通させることを特徴とする高温害虫駆除方法に係る。
請求項2発明は、前記処理室内に空気の流通方向を整える整風部材が配置された請求項1に記載の高温害虫駆除方法に係る。
請求項3の発明は、前記処理室内の空気が水平方向に流通される請求項1に記載の高温害虫駆除方法に係る。
請求項4の発明は、前記処理室が接続可能な処理ユニットとして複数連結配置され、前記複数連結配置された各処理室の高温処理が集中管理部により一括管理される請求項1に記載の高温害虫駆除方法に係る。
請求項5の発明は、被処理物が自動車または電気機器である請求項1に記載の高温害虫駆除方法に係る。
請求項1の発明に係る高温害虫駆除方法によると、処理室内に収容された被処理物に対して、害虫駆除温度に熱せられた加熱空気を一定時間付与して被処理物に付着した害虫を高温駆除する方法において、前記処理室内に、吸い込み部を処理室の内側方向に向けて配置した循環ファン装置の吐き出し部に加熱部材を設置して前記加熱部材を介して加熱した空気を室内に送り出すとともに、室内を流通する空気を前記循環ファン装置の前記吸い込み部へ導入して循環流通させるため、薫蒸剤を使用せずに高温処理によって害虫を駆除することができるのみならず、処理室内に循環ファン装置及び加熱部材を設けて加熱空気を循環流通させることにより害虫駆除温度への昇温及びその維持を含む処理全体の効率が大幅に向上するとともにコストの低減を図ることができる。
請求項2の発明に係る高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、前記処理室内に空気の流通方向を整える整風部材が配置されたものであるため、処理室内の空気の循環流通を効果的かつ効率よく行うことができ、適切な害虫駆除することができる。
請求項3の発明に係る高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、前記処理室内の空気が水平方向に流通されるものであるため、処理室内を効率よく加熱することができるとともに、例えば自動車のような床板及び屋根板を有する箱型の物体や積層物に対しても効果的に加熱空気を接触させることができ適切な害虫駆除することができる。
請求項4の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、前記処理室が接続可能な処理ユニットとして複数連結配置され、前記複数連結配置された各処理室の高温処理が集中管理部により一括管理されるものであるため、多数ないし大量の被処理物への対応が可能となり適切に高温処理することができるとともに、高温処理の管理が簡素化されて処理効率が向上する。
請求項5の発明に係る高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、被処理物が自動車または電気機器であるため、現実の要求に効率よく適切に対応することができる。
本発明の一実施例を自動車の高温害虫駆除方法について説明した装置の概略横断面図である。 処理室が複数連結された高温害虫駆除装置の模式図である。 循環ファン装置の斜視図である。 処理室が複数並列配置された高温害虫駆除装置の模式図である。 高温処理における加熱温度の変化を表すグラフである。
図1は、本発明の一実施例を自動車の高温害虫駆除方法について説明した高温害虫駆除装置10の概略断面図であって、処理室20と、循環ファン装置30と、加熱部材40とを備える。符号Cは被処理物である自動車で、符号45は整風部材、50は車内温度検知手段、60は加熱温度制御手段である。この高温害虫駆除装置10は、普通自動車,バス,トラック,オートバイ等の一般的な自動車を被処理自動車Cとして、車両の内外に付着した害虫を高温処理により駆除する装置である。駆除対象の害虫は、内外地貿易においてその商品の移動に影響を及ぼすクサギカメムシ等のカメムシ類、アジア型マイマイガ等のガ類、ヒメカツオブシムシ等のカツオブシムシ類、ミバエ等のハエ類、セアカゴケグモ等のクモ類、アフリカマイマイ等のカタツムリ類、メイガ等のチョウ類、ゴキブリ類、コクゾウムシ類、バッタ類、アブラムシ類等の節足動物や軟体動物であり、成虫に限らず幼虫や卵も含まれる。
被処理物Cとしては、前記の自動車類の他、テレビや冷蔵庫等の家電製品,ビデオカメラ等の映像機器,パソコン,携帯電話等の通信機器,半導体等の電子部品,計測機器等の電気機器類、スチールテーブルやスチールタンス等の金属製の家具類等、内外に害虫が付着するおそれがあり、害虫駆除のニーズがある種々の製品が含まれる。特に、これらの製品のうち自動車や電気機器等の輸出品が被処理物Cの対象とされる。そこで、高温害虫駆除装置10は、輸出自動車の積み込みが行われる各港の検疫検査場等の施設に付随して設置される。
処理室20は、図1に示すように、被処理自動車Cが搬出入可能であり、搬入された被処理自動車Cの高温処理が行われる閉鎖空間である。処理室20は、耐熱性や断熱性を有する壁材によって天井、床、側壁等がそれぞれ構成されている。処理室20の側壁部21には、被処理自動車Cの搬入や搬出を可能とする搬入口22及び搬出口23が形成される。搬入口22と搬出口23は対向配置されて、被処理自動車Cが搬入口22から搬出口23へ直進して通過可能とされる。また、搬入口22と搬出口23を同一の開口部で構成し、被処理自動車Cを前進(または後退)させて搬入後、後退(または前進)させて搬出可能としてもよい。処理室20内への被処理自動車Cの搬入は、自走やコンベア等の移送手段を使用する等、適宜である。図1において、符号21aは搬入口22が設けられた第1側壁部、21bは第1側壁部21aの対面側の第2側壁部、21cは後述の循環ファン装置30が配置される第3側壁部、21dは第3側壁部21cの対面側の第4側壁部、22aは搬入口22を開閉する搬入扉部、23aは搬出口23を開閉する搬出扉部である。
処理室20では、図1に示すように、室内温度を検知する室内温度検知手段25が配置される。室内温度検知手段25は、公知の温度センサーが使用される。この室内温度検知手段25は、処理室20内で他の場所と比較して高温となる場所に設置することが好ましい。室内温度検知手段25の設置場所としては、例えば、加熱空気の発生源に相当する後述の循環ファン装置30の吐き出し部33の近傍である。このように、他の場所と比較して高温となる場所の温度を検知することにより、処理室20の室内温度が全体として室内温度検知手段25によって検知された温度以下であると想定することが可能となる。また、室内温度検知手段25は、処理室20内の複数個所に設置することにより、より正確に室内温度を想定することができる。
処理室20の大きさは、被処理自動車Cの大きさや処理台数、設置場所の広さや処理効率等に応じて適宜である。また、処理室20は、図2に示すように、接続可能なユニット20u,20u,20uを直列状に複数連結させて(20A)、複数の被処理自動車C,Cを収容可能としてもよい。図示の例では、3つのユニット20u,20u,20uが連結された処理室20Aに、普通乗用車等の被処理自動車C1と、被処理自動車C1より大きいバス等の被処理自動車C2が収容されている。この処理室20Aでは、大型の被処理自動車C2が複数(図示の例では2つ)のユニット20u,20uにまたがって収容される。すなわち、1のユニット20uを1の被処理自動車Cに対応させる必要はなく、接続された処理室20A内に被処理自動車が収容可能であればどのように収容してもかまわない。このように、複数の処理室(20u,20u,20u)を連結することにより、処理室20A内の被処理自動車Cの収容スペースを自在に調整することが可能となる。そのため、被処理自動車Cの処理台数や設置場所の広さ等への対応が容易となり、汎用性が向上する。なお、図示の例では、ユニット20u,20u同士が側壁部を介して連結される構成としたが、側壁部を着脱可能に構成する等して連結時に側壁部を介さずにユニット20u,20u同士を直結してもよい。
循環ファン装置30は、図1に示すように、処理室20内に配置されて、加熱空気を処理室20内に循環流通させて、室内の加熱ムラを抑制して加熱温度を略均一に保持するように作動する。実施例の循環ファン装置30は、図1,3に示すように、吸い込み部32と吐き出し部33とファン部材である大型のプロペラファン35とを備える。図において、符号31は循環ファン装置30の筐体部材である。循環ファン装置30は、処理室20の側壁部21(第3側壁部21c)に、筐体部材31の前面に形成された吸い込み部32を処理室の内側方向に向けて配置される。
ファン部材35は、図1,3に示すように、処理室20の内側方向に向けて配置されて、吸い込み部32を介して処理室20内の空気を吸引する吸引ファンからなる。ファン部材35の形状は、二枚羽、三枚羽、四枚羽等、適宜である。また、ファン部材35の大きさは処理室20の広さや加熱効率等に応じて適宜であるが、例えば実施例では直径1000mm〜1500mm程度の大型のものである。このファン部材35は、処理室20の広さ等に応じて一又は複数(図示の例では1つ)配置される。
加熱部材40は、ファン部材35によって吸引された空気を加熱する部材であり、後述の吐き出し部33に配置される。加熱部材40は、蒸気配管や熱水配管等の熱交換器、電熱線ヒーター等の公知の加熱機器が用いられる。図3に示す加熱部材40は、複数の直管状の配管部材41を並列配置して各配管部材41に蒸気を流通させる蒸気配管式の熱交換器である。複数の配管部材41が直管状に形成されて並列配置されることにより、加熱時の温度むらの発生が抑制されて、熱効率が良好となる。
吐き出し部33は、図1,3に示すように、循環ファン装置30の筐体部材31の両側部を全面的に開放して形成された通気用の開口部である。吐き出し部33では、ファン部材35に吸引されて加熱部材40によって加熱された加熱空気が通過して処理室20へ吐出される。また、吐き出し部33には、室内に吐出された加熱空気の流通方向を整える整風部材45が設けられている。この整風部材45は、筐体部材31の前面の両端部にそれぞれ設けられ、端部から前側へ屈曲して延設された板状部材からなる風向規制部46である。この風向規制部46からなる整風部材45は、吐き出し部33から加熱空気が拡散されずに直進方向へ流通させるとともに、室内の空気を吸い込み部32に流入させる案内部ともなる。なお図示しないが、必要に応じて吐き出し部33に排出用のファン部材を配置してもよい。排出用のファン部材を配置することにより、加熱空気の排出をより促進することができる。
上記循環ファン装置30は、図1に示すように、ファン部材35が処理室20の内側方向に向けて配置されているので、加熱空気は処理室20内の水平方向に循環される。すなわち、まず、ファン部材35により、循環ファン装置30の前面側の吸い込み部32から処理室20内の空気が吸引される。この吸引された空気は、ファン部材35の後面側の吐き出し部33を介して循環ファン装置30の両側部方向へ吐出される。このとき、吐き出し部33に配置された加熱部材40を通過しながら加熱されて、加熱空気として吐き出し部33から処理室20内へ吐出される。吐き出し部33から吐出された加熱空気は処理室20の壁面に沿って流通する。
ここで、循環ファン装置30のファン部材35の風量及び風速について述べると、前記したように、実施例のファン部材35は直径1000mm〜1500mm程度の大型のプロペラファンよりなるもので、風量は1分間あたり1500m3で、平均風速は秒速5.8mで、樹木の葉や小枝が揺れる程度(風力2)である。実施例の処理室の体積は大きいものが391m3、小さいものが346m3である。実験によれば、加熱空気の風速は秒速4〜7m程度(風力2強〜3弱)が熱処理を効率よく行うことができ、好ましい。なお、この実施例では、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持の効率が良いので、工程全体の処理時間を約30分程度(以内)と大幅に短縮することができる。
次に加熱空気の加熱室内での循環流通について説明する。前記したように、吐き出し部33から吐出された加熱空気は処理室20の壁面に沿って流通する。図1の第1側壁部21a方向へ流通した加熱空気は、さらに第1側壁部21aに沿って第4側壁部21d方向へと流通される。または第2側壁部21b方向へ流通した加熱空気は、第1側壁部21a方向へ流通した加熱空気と左右対称に、第2側壁部21bに沿って第4側壁部21d方向へと流通される。そして第1側壁部21a側の加熱空気と第2側壁部21b側の加熱空気は、第4側壁部21dの中央部付近で合流して処理室20の中央方向へ流通して、循環ファン装置30のファン部材35により再び循環ファン装置30へ吸引される。
このように、循環ファン装置30では、ファン部材35により前面側の吸い込み部32から処理室20内の空気を吸引し、吐き出し部33両側から加熱空気として吐出することにより、処理室20の側壁部21沿いに第3側壁部21c側から第4側壁部21d側への空気の流れが作出される。そして、第4側壁部21d側へ流通した加熱空気は再びファン部材35により吸引されるため、処理室20内で加熱空気が循環される。この際、吐き出し部33が循環ファン装置30の側部を全面的に開放して形成されているため、排出される加熱空気が処理室20内を略水平方向に流通される。
循環ファン装置30によって加熱空気を循環させる場合、図1に示すように、処理室20の複数個所に加熱空気の流通方向を整える整風部材45を配設することが好ましい。整風部材45は加熱空気の流通方向に対して所定方向に傾斜配置された風当面49を有し、加熱空気が整風部材45の風当面49に衝突することによってその傾斜方向へ流通方向を誘導するものである。実施例の整風部材45は、循環ファン装置30の吐き出し部33近傍に配設される板状部材からなる風向規制部46のほか、処理室20の各角部に配設される風向補助部47、第1側壁部21a側の加熱空気と第2側壁部21b側の加熱空気との合流箇所近傍に配設された風向補助部48とを有する。これらの整風部材45の風向規制部46、風向補助部47,48を配設することにより、循環ファン装置30から吐出された加熱空気をより効率よく処理室内を循環流通させることが可能となる。
次に、車内温度検知手段50は、図1に示すように、被処理自動車Cの内部に設置されてその車内温度を検知する部材であり、公知の温度センサーが使用される。車内温度検知手段50は、被処理自動車C内の比較的加熱されにくい部位や比較的加熱されやすい部位に適宜設置される。加熱されにくい部位は、例えば、被処理自動車Cのエンジンルーム内や座席の下部等であり、被処理自動車C内の他の部位と比較して高温処理時に加熱温度が最も低くなりやすい部位(低温部位)である。また、加熱されやすい部位は、被処理自動車Cの座席の上部等であり、被処理自動車C内の他の部位と比較して高温処理時に加熱温度が最も高くなりやすい部位(高温部位)である。
車内温度検知手段50を用いて、被処理自動車C内で他の部位と比較して加熱されにくい部位(低温部位)の温度を検知することにより、被処理自動車Cの車内温度が全体として車内温度検知手段50によって検知された温度以上であると想定することが可能となる。また、車内温度検知手段50を用いて、被処理自動車C内で他の部位と比較して加熱されさすい部位(高温部位)の温度を検知することにより、被処理自動車Cの車内温度が全体として車内温度検知手段50によって検知された温度以下であると想定することが可能となる。そこで、加熱されにくい部位(低温部位)と加熱されやすい部位(高温部位)の双方に車内温度検知手段50を設置してそれぞれの温度を検知すれば、被処理自動車Cの車内温度が全体として低温部位で検知された温度以上かつ高温部位で検知された温度以下であると想定することが可能となる。なお、車内温度検知手段50は、被処理自動車Cの内部の複数個所に配置することが好ましい。複数個所の車内温度を検知することにより、より正確に被処理自動車Cの車内温度を想定することができる。
加熱温度制御手段60は、図1に示すように、処理室20外に設置され、車内温度検知手段50に基づいて循環ファン装置30の加熱温度を制御する。この加熱温度制御手段60は、公知の制御装置が使用される。カメムシ等の駆除対象害虫である昆虫は高温に弱い性質を有しており、例えば、50℃以上の高温にさらされることによって致死する。これは、害虫の体内のたんぱく質が高温により凝固するためと考えられる。しかしながら、被処理自動車Cは、精密機械であり、各所に樹脂材料の部材が用いられていることから、長時間高温にさらされると種々の機器や部材等に悪影響であり、故障したり傷みが生じたり変質したりする等の破損の原因となるおそれがある。そこで、被処理自動車Cへの高温による悪影響を回避するために、加熱温度は80℃以下とされる。そこで、加熱温度制御手段60は、車内温度検知手段50による被処理自動車Cの車内温度が50〜80℃、より好ましくは60〜75℃に保持されるように制御する。循環ファン装置30の制御は、ファン部材35の回転数や、循環ファン装置30の蒸気の量等を調整して行われる。
また、加熱温度制御手段60は、車内温度検知手段50に基づく循環ファン装置30の制御と平行して、室内温度検知手段25に基づいて循環ファン装置30の加熱温度を制御する。室内温度検知手段25によって検知される室内温度は、処理室20内で最も高いと推定される温度であることから、室内温度の上限温度に相当する。さらに、室内温度は被処理自動車Cの車外温度にも相当し、被処理自動車Cの車外の害虫駆除や高温による損傷等に影響する。そのため、加熱温度制御手段60は、車内温度と同様に、室内温度検知手段25による処理室20内の室内温度(被処理自動車Cの車外温度)が50〜80℃以下、より好ましくは60〜75℃以下に保持されるように制御する。なお、複数のユニット20uを連結した処理室20Aの場合、室内温度は処理室20A全体(すべてのユニット)として管理する必要があるため、各ユニット20uごとの室内温度検知手段25に基づく検知温度を一括して制御することが好ましい。
加熱温度制御手段60では、高温処理の処理時間の制御も行われる。高温処理の処理時間は、被処理自動車Cの大きさや処理台数等に応じて設定されるが、例えば、被処理自動車Cの車内温度が所定温度に到達してから10〜20分程度とされる。この処理時間であれば、駆除対象害虫を確実に致死させることができて、処理効率やコスト面でも好ましい。ちなみに、前記したように、この実施例では、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持の効率が良いので、全体の処理時間を約30分程度(以内)と短縮することできる。
本発明の高温害虫駆除装置10では、図4に示すように、処理室を複数並列配置(20L,20L,20L)して複数の被処理自動車Cの高温処理を実施することも可能である。複数並列配置された処理室20L,20L,20Lは、接続可能なユニット20uを直列状に複数連結して構成してもよい(処理室20A)。図示の例では、1列がユニット20uを6つ連結させた処理室20Aによって構成された3列の処理室20L,20L,20Lからなる。各列の処理室20L,20L,20Lには、小型の被処理自動車C1,大型の被処理自動車C2,中型の被処理自動車C3がそれぞれ不規則に収容されている。このように、複数連結された処理室20Aを複数並列配置すれば、より多数の被処理自動車Cを高温処理することができ、処理効率が向上する。なお、実施例では、ユニットを5つ連結させて4台の被処理自動車を収容した際に、35℃から80℃までの昇温を約10分で行うことができた。そのため、複数のユニットを接続した処理室においても、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持を含む全体の処理時間を約30分程度(以内)と短縮することできる。
また、処理室が複数並列配置された高温害虫駆除装置10は、各処理室20L,20L,20Lの循環ファン装置30による高温処理を一括管理する集中管理部70を有することが好ましい。集中管理部70は、公知の制御装置が使用される。この集中管理部70は、複数の処理室20ごとの車内温度検知手段50に基づいて対応する各循環ファン装置30を制御する。特に、複数のユニット20uが連結された処理室20Aを有する場合、室内温度検知手段25と車内温度検知手段50とに基づいて各循環ファン装置30を制御することが好ましい。これは、複数の被処理自動車Cごとに高温処理の上限温度を管理するのではなく、ユニットが連結された処理室20A全体で管理される室内温度を、加熱処理の上限温度として処理することが効率面で有利なためである。なお、集中管理部70は、加熱温度制御手段60を兼ねるように構成してもよいし、加熱温度制御手段60を別途設けて各加熱温度制御手段60に基づいてそれぞれの高温処理を制御してもよい。集中管理部70により、多数の被処理自動車Cに対する高温処理の全体の状況を容易に把握することができるとともに、処理状況への対応も効率的に行うことができる。
次に、本発明の高温害虫駆除装置10を用いた自動車の高温害虫駆除方法について説明する。この高温害虫駆除方法は、図1に示すように、処理室20内に被処理自動車Cを搬入し、処理室20内を加熱するとともに、被処理自動車C内に設置した車内温度検知手段50によって車内温度を検知し、加熱温度制御手段60により車内温度検知手段50に基づいて加熱温度を制御して被処理自動車C内を所定温度以上で高温処理することによって、被処理自動車C内の害虫を駆除する。以下、単一の処理室20内での単一の被処理自動車Cの高温害虫駆除方法を例に詳述する。
まず、被処理自動車Cの座席の下部やエンジンルーム内等の比較的加熱されにくい部位に、予め車内温度検知手段50が必要数配置される。図1に図示の例では、エンジンルームの車内温度検知手段50a、座席下部の車内温度検知手段50b、トランクルームの車内温度検知手段50cが配置されている。また、循環ファン装置30による高温処理の温度条件や処理時間が加熱温度制御手段60により設定される。ここでの高温処理の条件は、上限温度が75℃、処理温度が60℃、処理時間が10分である。
高温処理の設定後、被処理自動車Cが処理室20内に自走またはコンベア等により搬入される。処理室20内に搬入された被処理自動車Cは、車両扉、ボンネット、バックドア等がそれぞれ開放されて、座席部分、エンジンルーム、トランクルーム等の被処理自動車C内の通気性が確保される。続いて、処理室20の搬入口22が閉じられて室内が閉鎖状態とされ、循環ファン装置30による処理室20内の加熱が開始される。循環ファン装置30では、ファン部材35により加熱空気が処理室20内の水平方向に循環される。
すなわち、ファン部材35によって循環ファン装置30の前面側から処理室20内の空気が吸引されて、筐体部材31内の加熱部材40によって吸引された空気が加熱される。このようにして加熱された空気は、循環ファン装置30の両側部の吐き出し部33から加熱空気として処理室20内へ排出される。この時、吐き出し部33が循環ファン装置30の側部を全面的に開放して形成されているため、排出される加熱空気は処理室20内を略水平方向に流通される。循環ファン装置30の両側部から排出された加熱空気は、第3側壁部21c側から第4側壁部21d側へ第1側壁部21a側と第2側壁部21b側の双方の側壁部に沿って流通される。そして、両側の各加熱空気は、第4側壁部21dの中央部付近で合流して処理室20の中央方向へ流通されて、循環ファン装置30のファン部材35により循環ファン装置30へ吸引される。従って、処理室20内の左右両側から側壁部21に沿って加熱空気の略水平方向への循環が繰り返される。これにより、処理室20内が効率的に加熱される。また、自動車のような床板及び屋根板を有する箱型の物体に対して効果的に加熱空気を接触させることができる。
循環ファン装置30による加熱では、処理室20内全体の加熱が行われることによって、処理室20内に搬送された被処理自動車C内が徐々に加熱される。ここで、循環ファン装置30による温度変化を図5のグラフに示す。図5のグラフでは、室内温度検知手段25によって検知された室内温度(車外温度)、エンジンルームの車内温度検知手段50aによって検知された第1の車内温度、座席下部の車内温度検知手段50bによって検知された第2の車内温度、トランクルームの車内温度検知手段50cによって検知された第3の車内温度の各温度変化をそれぞれ表している。
図5に示すように、室内温度(符号25参照)の上昇に伴って車内温度(符号50a、50b、50c)が徐々に上昇する。そこで、室内温度検知手段25によって検知された室内温度に基づいて室内温度が上限温度(この例では75℃)に保持されるように、加熱温度制御手段60によって循環ファン装置30の作動が制御される。これは、室内温度(車外温度)が80℃より高温となって被処理自動車Cに破損等が生じないようにするための措置である。
図5に示すように、車内温度は車外温度の上昇に伴って経時的に上昇される。そして、室内温度が上限温度(75℃)に保持されることにより、上昇した各車内温度が高温処理の処理温度(この例では60℃)到達する。車内温度の変化は、被処理自動車Cの部位に応じて上昇具合が異なる。そのため、各部位の高温処理の処理温度(60℃)に到達する時間も一致しない。図5に示す例では、トランクルームの車内温度(50c)が最初に処理温度に到達し、次いでエンジンルームの車内温度(50a)、座席下部の車内温度(50b)の順で処理温度に到達する。そこで、複数の車内温度検知手段(50a,50b,50c)のうち、処理温度(60℃)に最も遅く到達した時間(t)が高温処理の開始時間とされる。
ここで、最も遅く処理温度に到達した部位は、被処理自動車C内で最も温度が低い部位であると推定される。そのため、この部位が処理温度に到達することによって、被処理自動車C全体が処理温度以上に達して、被処理自動車C全体が適切に高温処理できる状態となったとみなすことができる。従って、この時点(t)を高温処理の開始時間とすれば、被処理自動車C全体を不足なく高温処理することが可能となる。
高温処理は、開始時間(t)から、設定された処理時間(この例では10分)にわたって処理温度(60℃)以上の高温状態が保持される。そこで、高温処理中は、室内温度が上限温度(75℃)に保持される。これにより、被処理自動車Cの車内温度は、処理温度(60℃)に到達した後も室内温度(75℃)以下の範囲で上昇する。従って、車内温度が80℃より高温となることがなく、被処理自動車Cへの高温による悪影響が抑制される。このように、高温処理中(10分間)は、車内温度及び車外温度(室内温度)が害虫が致死する温度である50℃(この例では60℃)以上で常時保持される。従って、被処理自動車Cに付着する害虫を確実に駆除することが可能となる。
高温処理の処理時間(t+10分)が経過した後、循環ファン装置30が停止されるとともに、処理室20の搬入口22及び搬出口23が開放されて、被処理自動車Cが徐冷される。被処理自動車Cは、徐冷後に適宜搬出され、新たに未処理状態の他の被処理自動車Cが搬入されて、以後同様の工程が繰り返される。
次に、複数連結された処理室20を複数並列配置した高温害虫駆除装置10を用いた高温害虫駆除方法について説明する。この高温害虫駆除方法では、図4に示すように、車内温度検知手段50が適宜配置された複数の被処理自動車Cが各処理室20L,20L,20Lに適宜搬入され、必要台数の搬入が完了した後、処理室20L,20L,20Lが閉鎖される。そして、集中管理部70の制御により、各処理室20の循環ファン装置30による加熱が開始される。
集中管理部70は、各処理室20の室内温度検知手段25によって検知された室内温度に基づいて、すべての室内温度が上限温度(75℃)以下に保持されるように、各循環ファン装置30の作動が制御される。また、室内温度の上昇に伴って被処理自動車Cの車内温度も経時的に上昇する。そこで、集中管理部70は、複数並列配置された処理室20L,20L,20Lに関し、各列ごとに車内温度検知手段50に基づいて循環ファン装置30の制御が行われる。すなわち、各列の処理室20L,20L,20Lごとに、複数の車内温度検知手段50のいずれかにおいて処理温度(60℃)に最も遅く到達した時点から、設定された処理時間(10分間)にわたって高温処理が行われるように制御される。
各列において、高温処理の処理時間が経過した列の処理室20Lから、順次被処理自動車Cの徐冷が行われ、未処理状態の他の被処理自動車Cとの入れ替えが行われて、以後同様の工程が繰り返される。このように、複数並列配置された処理室20L,20L,20Lの各循環ファン装置30による高温処理を集中管理部70により一括管理すれば、より多数の被処理自動車Cを適切に高温処理することができるとともに、複数の高温処理の管理が簡素化されて処理効率が向上する。
なお、上記高温害虫駆除方法では、被処理物Cとして自動車の代わりを電気機器としても同様に高温処理することができる。その際、電気機器では、各扉等を開放して内部の通気性を確保しておくとともに、比較的温度が上昇しにくい部位に内部温度検知手段50を適宜配置するとよい。そして、室内の空気が水平方向に流通されることにより、箱型の物体や積層物に対しても効果的に加熱空気を接触させることができる。このように本発明の高温害虫駆除方法は、主要な輸出品目のいずれにおいても適切な高温処理が可能であるため、輸出品の検疫検査の効率化やコスト低減を図ることができ、現実の要求に効率よく適切に対応することができる。
以上図示し説明したように、本発明の高温害虫駆除方法は、処理室内に収容された被処理物に対して、害虫駆除温度に熱せられた加熱空気を一定時間付与して被処理物に付着した害虫を高温駆除する方法において、前記処理室内に、吸い込み部を処理室の内側方向に向けて配置した循環ファン装置の吐き出し部に加熱部材を設置して前記加熱部材を介して加熱した空気を室内に送り出すとともに、室内を流通する空気を前記循環ファン装置の前記吸い込み部へ導入して循環流通させるものである。そのため、高温処理によって害虫を駆除することができ、従来のように薫蒸剤を使用する必要がなく、被処理物内に薫蒸剤が残留する等の悪影響が回避できる。また、処理室内に循環ファン装置及び加熱部材を設けて加熱空気を循環流通させることにより、害虫駆除温度への昇温及びその維持を含む処理全体の効率が大幅に向上するとともにコストの低減を図ることができる。
本発明の自動車の高温害虫駆除方法は、処理室に循環ファン装置及び加熱部材を備えて加熱空気を循環流通するので、効率よく高温処理ができるばかりでなく、実施例でも述べたように、処理室を複数連結することにより、多数かつ多種類の被処理自動車の熱処理を効率よく実施でき、大量処理及び設置場所の広さ等への対応が容易となり汎用性が向上し高い産業利用性を有する。
10 高温害虫駆除装置
20 処理室
20A 複数連結された処理室
20L 複数並列配置された処理室
20u ユニット
21 側壁部
21a 第1側壁部
21b 第2側壁部
21c 第3側壁部
21d 第4側壁部
22 搬入口
22a 搬入扉部
23 搬出口
23a 搬出扉部
25 室内温度検知手段
30 循環ファン装置
31 筐体部材
32 吸い込み部
33 吐き出し部
35 ファン部材
40 加熱部材
41 配管部材
45 整風部材
46 整風部材の風向規制部
47,48 整風部材の風向補助部
49 整風部材の風当面
50,50a,50b,50c 車内温度検知手段
60 加熱温度制御手段
70 集中管理部
C,C1,C2,C3 被処理自動車
t 高温処理の開始時間
本発明は、自動車付着した害虫を高温処理により駆除する高温害虫駆除方法に関する。
日本は世界でも有数の貿易大国であり、数多くの物品が海外へと輸出されている。輸出される物品としては、自動車、テレビや冷蔵庫等の家電製品、映像機器、パソコン、半導体等の電子部品等の各種電気機器類等の種々の製品が知られる。これらの製品の輸出に際して、輸出品や輸送船等に輸出元国に生息している昆虫等が付着していると、輸出先国において外来生物として生態系に悪影響を及ぼす等の問題が生じることがある。特に、この種の外来生物による農作物への被害は深刻であり、輸出先国では害虫として処理されて輸出品の積み下ろしが許可されないことがあるため、輸出品の厳格な検疫が要求される。
例えば、近年、ニュージーランドにおいて、日本からの輸出自動車にクサギカメムシの付着が確認された。カメムシは発見しにくく、駆除も困難で繁殖力が高いこと等が知られており、農業が盛んなニュージーランドでは駆除対象害虫として特に警戒されている。そのため、カメムシの付着が確認された輸送船が相次いで国外退去を強いられ、日本からの自動車の輸出状況が悪化している。
ニュージーランドは、国内で自動車製造が行われていないことから、日本にとって非常に重要な自動車輸出市場となっている。従って、日本からの自動車の輸出状況の悪化は、日本経済に大きな打撃を与えるのみならず、国内で流通する自動車を日本の輸出自動車に頼っているニュージーランドの経済にとっても大きな打撃となる。そこで、カメムシに代表される害虫を確実に駆除する手段を構築することが急務である。
一般に、害虫を駆除する場合には、ヨウ化アルキル等の薬剤を用いた薫蒸が行われる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、薬剤の薫蒸による害虫駆除は、自動車を処理対象とした場合、自動車は精密機械であるため種々の機器に悪影響を及ぼしたり、エアコンのフィルター等に薬剤が残留して悪臭の原因となったりして好ましくない。また、薫蒸処理は数日間を要し、薫蒸剤の使用によりコストも高くなる。そのため、特に輸出台数が年間数十万台に及ぶ輸出自動車を処理対象とすると、1台を害虫駆除するのに時間がかかりすぎて、大量の自動車を処理するには極めて広大な処理施設を確保しなければならない。これでは、輸出自動車の適切な害虫駆除は現実的に不可能である。
こで、大量の輸出自動車の処理に対応して効率よく適切に害虫駆除することが可能な新たな手法が求められている。
特開2003−267803号公報
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、薫蒸剤等を使用せずに高温処理によって自動車に付着した害虫を効率よく駆除することができる高温害虫駆除方法を提供するものである。
すなわち、請求項1の発明は、開閉可能な扉部を備えた搬入口と搬出口とを有し被処理自動車が収容される閉鎖空間に害虫駆除温度に熱せられた加熱空気が付与される処理室と、前記処理室内の側壁部に吸い込み部を処理室の内側方向に向けかつ吐き出し部を側壁に沿って配置した循環ファン装置と、前記循環ファン装置の吐き出し部に設けられた吐き出し空気を加熱する加熱部材とを有し、前記処理室の室内温度を検知する室内温度検知手段と、被処理自動車の複数の部位の車内温度を検知する車内温度検知手段とを設けて、前記室内温度検知手段及び車内温度検知手段に基づいて前記循環ファン装置から吐き出される空気の加熱温度と処理時間を制御する加熱温度制御手段を設けるとともに、前記加熱温度制御手段は、前記複数の部位の車内温度検知手段のうち、処理温度に最も遅く到達した部位の時間から所定の処理時間を開始することを特徴とする自動車の高温害虫駆除方法に係る。
請求項2発明は、前記処理室内に空気の流通方向を整える整風部材が配置された請求項1に記載の自動車の高温害虫駆除方法に係る。
請求項3の発明は、前記処理室内の空気が水平方向に流通される請求項1に記載の自動車の高温害虫駆除方法に係る。
請求項4の発明は、前記処理室が接続可能な処理ユニットとして複数連結配置され、前記複数連結配置された各処理室の高温処理が集中管理部により一括管理される請求項1に記載の自動車の高温害虫駆除方法に係る。
請求項1の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、開閉可能な扉部を備えた搬入口と搬出口とを有し被処理自動車が収容される閉鎖空間に害虫駆除温度に熱せられた加熱空気が付与される処理室と、前記処理室内の側壁部に吸い込み部を処理室の内側方向に向けかつ吐き出し部を側壁に沿って配置した循環ファン装置と、前記循環ファン装置の吐き出し部に設けられた吐き出し空気を加熱する加熱部材とを有し、前記処理室の室内温度を検知する室内温度検知手段と、被処理自動車の複数の部位の車内温度を検知する車内温度検知手段とを設けて、前記室内温度検知手段及び車内温度検知手段に基づいて前記循環ファン装置から吐き出される空気の加熱温度と処理時間を制御する加熱温度制御手段を設けるとともに、前記加熱温度制御手段は、前記複数の部位の車内温度検知手段のうち、処理温度に最も遅く到達した部位の時間から所定の処理時間を開始するため、薫蒸剤を使用せずに高温処理によって確実に害虫を駆除することができるのみならず、被処理自動車が収容される閉鎖空間である処理室内に循環ファン装置及び加熱部材を設けて加熱空気を循環流通させることにより処理効率が大幅に向上するとともにコストの低減を図ることができる。
請求項2の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、前記処理室内に空気の流通方向を整える整風部材が配置されたものであるため、処理室内の空気の循環流通を効果的かつ効率よく行うことができ、適切な害虫駆除することができる。
請求項3の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、前記処理室内の空気が水平方向に流通されるものであるため、処理室内を効率よく加熱することができるとともに、自動車のような床板及び屋根板を有する箱型の物体や積層物に対しても効果的に加熱空気を接触させることができ適切な害虫駆除することができる。
請求項4の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、前記処理室が接続可能な処理ユニットとして複数連結配置され、前記複数連結配置された各処理室の高温処理が集中管理部により一括管理されるものであるため、多数ないし大量の被処理自動車への対応が可能となり適切に高温処理することができるとともに、高温処理の管理が簡素化されて処理効率が向上する。
本発明の一実施例を自動車の高温害虫駆除方法について説明した装置の概略横断面図である。 処理室が複数連結された高温害虫駆除装置の模式図である。 循環ファン装置の斜視図である。 処理室が複数並列配置された高温害虫駆除装置の模式図である。 高温処理における加熱温度の変化を表すグラフである。
図1は、本発明の一実施例を自動車の高温害虫駆除方法について説明した高温害虫駆除装置10の概略断面図であって、処理室20と、循環ファン装置30と、加熱部材40とを備える。符号Cは被処理物である自動車で、符号25は処理室の室内温度検知手段、50は被処理自動車Cの車内温度検知手段、45は整風部材、60は加熱温度制御手段である。この高温害虫駆除装置10は、普通自動車,バス,トラック,オートバイ等の一般的な自動車を被処理自動車Cとして、車両の内外に付着した害虫を高温処理により駆除する装置である。特に、輸出自動車が被処理物Cの対象とされる。そこで、高温害虫駆除装置10は、輸出自動車の積み込みが行われる各港の検疫検査場等の施設に付随して設置される。駆除対象の害虫は、内外地貿易においてその商品の移動に影響を及ぼすクサギカメムシ等のカメムシ類、アジア型マイマイガ等のガ類、ヒメカツオブシムシ等のカツオブシムシ類、ミバエ等のハエ類、セアカゴケグモ等のクモ類、アフリカマイマイ等のカタツムリ類、メイガ等のチョウ類、ゴキブリ類、コクゾウムシ類、バッタ類、アブラムシ類等の節足動物や軟体動物であり、成虫に限らず幼虫や卵も含まれる。
処理室20は、図1に示すように、被処理自動車Cが搬出入可能であり、搬入された被処理自動車Cの高温処理が行われる閉鎖空間である。処理室20は、耐熱性や断熱性を有する壁材によって天井、床、側壁等がそれぞれ構成されている。処理室20の側壁部21には、被処理自動車Cの搬入や搬出を可能とする搬入口22及び搬出口23が形成される。搬入口22と搬出口23は対向配置されて、被処理自動車Cが搬入口22から搬出口23へ直進して通過可能とされる。また、搬入口22と搬出口23を同一の開口部で構成し、被処理自動車Cを前進(または後退)させて搬入後、後退(または前進)させて搬出可能としてもよい。処理室20内への被処理自動車Cの搬入は、自走やコンベア等の移送手段を使用する等、適宜である。図1において、符号21aは搬入口22が設けられた第1側壁部、21bは第1側壁部21aの対面側の第2側壁部、21cは後述の循環ファン装置30が配置される第3側壁部、21dは第3側壁部21cの対面側の第4側壁部、22aは搬入口22を開閉する搬入扉部、23aは搬出口23を開閉する搬出扉部である。
処理室20では、図1に示すように、室内温度を検知する室内温度検知手段25が配置される。室内温度検知手段25は、公知の温度センサーが使用される。この室内温度検知手段25は、処理室20内で他の場所と比較して高温となる場所に設置することが好ましい。室内温度検知手段25の設置場所としては、例えば、加熱空気の発生源に相当する後述の循環ファン装置30の吐き出し部33の近傍である。このように、他の場所と比較して高温となる場所の温度を検知することにより、処理室20の室内温度が全体として室内温度検知手段25によって検知された温度以下であると想定することが可能となる。また、室内温度検知手段25は、処理室20内の複数個所に設置することにより、より正確に室内温度を想定することができる。
処理室20の大きさは、被処理自動車Cの大きさや処理台数、設置場所の広さや処理効率等に応じて適宜である。また、処理室20は、図2に示すように、接続可能なユニット20u,20u,20uを直列状に複数連結させて(20A)、複数の被処理自動車C,Cを収容可能としてもよい。図示の例では、3つのユニット20u,20u,20uが連結された処理室20Aに、普通乗用車等の被処理自動車C1と、被処理自動車C1より大きいバス等の被処理自動車C2が収容されている。この処理室20Aでは、大型の被処理自動車C2が複数(図示の例では2つ)のユニット20u,20uにまたがって収容される。すなわち、1のユニット20uを1の被処理自動車Cに対応させる必要はなく、接続された処理室20A内に被処理自動車が収容可能であればどのように収容してもかまわない。このように、複数の処理室(20u,20u,20u)を連結することにより、処理室20A内の被処理自動車Cの収容スペースを自在に調整することが可能となる。そのため、被処理自動車Cの処理台数や設置場所の広さ等への対応が容易となり、汎用性が向上する。なお、図示の例では、ユニット20u,20u同士が側壁部を介して連結される構成としたが、側壁部を着脱可能に構成する等して連結時に側壁部を介さずにユニット20u,20u同士を直結してもよい。
循環ファン装置30は、図1に示すように、処理室20内に配置されて、加熱空気を処理室20内に循環流通させて、室内の加熱ムラを抑制して加熱温度を略均一に保持するように作動する。実施例の循環ファン装置30は、図1,3に示すように、吸い込み部32と吐き出し部33とファン部材である大型のプロペラファン35とを備える。図において、符号31は循環ファン装置30の筐体部材である。循環ファン装置30は、処理室20の側壁部21(第3側壁部21c)に、筐体部材31の前面に形成された吸い込み部32を処理室の内側方向に向けて配置される。
ファン部材35は、図1,3に示すように、処理室20の内側方向に向けて配置されて、吸い込み部32を介して処理室20内の空気を吸引する吸引ファンからなる。ファン部材35の形状は、二枚羽、三枚羽、四枚羽等、適宜である。また、ファン部材35の大きさは処理室20の広さや加熱効率等に応じて適宜であるが、例えば実施例では直径1000mm〜1500mm程度の大型のものである。このファン部材35は、処理室20の広さ等に応じて一又は複数(図示の例では1つ)配置される。
加熱部材40は、ファン部材35によって吸引された空気を加熱する部材であり、後述の吐き出し部33に配置される。加熱部材40は、蒸気配管や熱水配管等の熱交換器、電熱線ヒーター等の公知の加熱機器が用いられる。図3に示す加熱部材40は、複数の直管状の配管部材41を並列配置して各配管部材41に蒸気を流通させる蒸気配管式の熱交換器である。複数の配管部材41が直管状に形成されて並列配置されることにより、加熱時の温度むらの発生が抑制されて、熱効率が良好となる。
吐き出し部33は、図1,3に示すように、循環ファン装置30の筐体部材31の両側部を全面的に開放して形成された通気用の開口部である。吐き出し部33では、ファン部材35に吸引されて加熱部材40によって加熱された加熱空気が通過して処理室20へ吐出される。また、吐き出し部33には、室内に吐出された加熱空気の流通方向を整える整風部材45が設けられている。この整風部材45は、筐体部材31の前面の両端部にそれぞれ設けられ、端部から前側へ屈曲して延設された板状部材からなる風向規制部46である。この風向規制部46からなる整風部材45は、吐き出し部33から加熱空気が拡散されずに直進方向へ流通させるとともに、室内の空気を吸い込み部32に流入させる案内部ともなる。なお図示しないが、必要に応じて吐き出し部33に排出用のファン部材を配置してもよい。排出用のファン部材を配置することにより、加熱空気の排出をより促進することができる。
上記循環ファン装置30は、図1に示すように、ファン部材35が処理室20の内側方向に向けて配置されているので、加熱空気は処理室20内の水平方向に循環される。すなわち、まず、ファン部材35により、循環ファン装置30の前面側の吸い込み部32から処理室20内の空気が吸引される。この吸引された空気は、ファン部材35の後面側の吐き出し部33を介して循環ファン装置30の両側部方向へ吐出される。このとき、吐き出し部33に配置された加熱部材40を通過しながら加熱されて、加熱空気として吐き出し部33から処理室20内へ吐出される。吐き出し部33から吐出された加熱空気は処理室20の壁面に沿って流通する。
ここで、循環ファン装置30のファン部材35の風量及び風速について述べると、前記したように、実施例のファン部材35は直径1000mm〜1500mm程度の大型のプロペラファンよりなるもので、風量は1分間あたり1500m3で、平均風速は秒速5.8mで、樹木の葉や小枝が揺れる程度(風力2)である。実施例の処理室の体積は大きいものが391m3、小さいものが346m3である。実験によれば、加熱空気の風速は秒速4〜7m程度(風力2強〜3弱)が熱処理を効率よく行うことができ、好ましい。なお、この実施例では、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持の効率が良いので、工程全体の処理時間を約30分程度(以内)と大幅に短縮することができる。
次に加熱空気の加熱室内での循環流通について説明する。前記したように、吐き出し部33から吐出された加熱空気は処理室20の壁面に沿って流通する。図1の第1側壁部21a方向へ流通した加熱空気は、さらに第1側壁部21aに沿って第4側壁部21d方向へと流通される。または第2側壁部21b方向へ流通した加熱空気は、第1側壁部21a方向へ流通した加熱空気と左右対称に、第2側壁部21bに沿って第4側壁部21d方向へと流通される。そして第1側壁部21a側の加熱空気と第2側壁部21b側の加熱空気は、第4側壁部21dの中央部付近で合流して処理室20の中央方向へ流通して、循環ファン装置30のファン部材35により再び循環ファン装置30へ吸引される。
このように、循環ファン装置30では、ファン部材35により前面側の吸い込み部32から処理室20内の空気を吸引し、吐き出し部33両側から加熱空気として吐出することにより、処理室20の側壁部21沿いに第3側壁部21c側から第4側壁部21d側への空気の流れが作出される。そして、第4側壁部21d側へ流通した加熱空気は再びファン部材35により吸引されるため、処理室20内で加熱空気が循環される。この際、吐き出し部33が循環ファン装置30の側部を全面的に開放して形成されているため、排出される加熱空気が処理室20内を略水平方向に流通される。
循環ファン装置30によって加熱空気を循環させる場合、図1に示すように、処理室20の複数個所に加熱空気の流通方向を整える整風部材45を配設することが好ましい。整風部材45は加熱空気の流通方向に対して所定方向に傾斜配置された風当面49を有し、加熱空気が整風部材45の風当面49に衝突することによってその傾斜方向へ流通方向を誘導するものである。実施例の整風部材45は、循環ファン装置30の吐き出し部33近傍に配設される板状部材からなる風向規制部46のほか、処理室20の各角部に配設される風向補助部47、第1側壁部21a側の加熱空気と第2側壁部21b側の加熱空気との合流箇所近傍に配設された風向補助部48とを有する。これらの整風部材45の風向規制部46、風向補助部47,48を配設することにより、循環ファン装置30から吐出された加熱空気をより効率よく処理室内を循環流通させることが可能となる。
次に、車内温度検知手段50は、図1に示すように、被処理自動車Cの内部に設置されてその車内温度を検知する部材であり、公知の温度センサーが使用される。車内温度検知手段50は、被処理自動車C内の比較的加熱されにくい部位や比較的加熱されやすい部位に適宜設置される。加熱されにくい部位は、例えば、被処理自動車Cのエンジンルーム内や座席の下部等であり、被処理自動車C内の他の部位と比較して高温処理時に加熱温度が最も低くなりやすい部位(低温部位)である。また、加熱されやすい部位は、被処理自動車Cの座席の上部等であり、被処理自動車C内の他の部位と比較して高温処理時に加熱温度が最も高くなりやすい部位(高温部位)である。
車内温度検知手段50を用いて、被処理自動車C内で他の部位と比較して加熱されにくい部位(低温部位)の温度を検知することにより、被処理自動車Cの車内温度が全体として車内温度検知手段50によって検知された温度以上であると想定することが可能となる。また、車内温度検知手段50を用いて、被処理自動車C内で他の部位と比較して加熱されすい部位(高温部位)の温度を検知することにより、被処理自動車Cの車内温度が全体として車内温度検知手段50によって検知された温度以下であると想定することが可能となる。そこで、加熱されにくい部位(低温部位)と加熱されやすい部位(高温部位)の双方に車内温度検知手段50を設置してそれぞれの温度を検知すれば、被処理自動車Cの車内温度が全体として低温部位で検知された温度以上かつ高温部位で検知された温度以下であると想定することが可能となる。なお、車内温度検知手段50は、被処理自動車Cの内部の複数個所に配置することが好ましい。複数個所の車内温度を検知することにより、より正確に被処理自動車Cの車内温度を想定することができる。
加熱温度制御手段60は、図1に示すように、処理室20外に設置され、車内温度検知手段50に基づいて循環ファン装置30の加熱温度を制御する。この加熱温度制御手段60は、公知の制御装置が使用される。カメムシ等の駆除対象害虫である昆虫は高温に弱い性質を有しており、例えば、50℃以上の高温にさらされることによって致死する。これは、害虫の体内のたんぱく質が高温により凝固するためと考えられる。しかしながら、被処理自動車Cは、精密機械であり、各所に樹脂材料の部材が用いられていることから、長時間高温にさらされると種々の機器や部材等に悪影響であり、故障したり傷みが生じたり変質したりする等の破損の原因となるおそれがある。そこで、被処理自動車Cへの高温による悪影響を回避するために、加熱温度は80℃以下とされる。そこで、加熱温度制御手段60は、車内温度検知手段50による被処理自動車Cの車内温度が50〜80℃、より好ましくは60〜75℃に保持されるように制御する。循環ファン装置30の制御は、ファン部材35の回転数や、循環ファン装置30の蒸気の量等を調整して行われる。
また、加熱温度制御手段60は、車内温度検知手段50に基づく循環ファン装置30の制御と行して、室内温度検知手段25に基づいて循環ファン装置30の加熱温度を制御する。室内温度検知手段25によって検知される室内温度は、処理室20内で最も高いと推定される温度であることから、室内温度の上限温度に相当する。さらに、室内温度は被処理自動車Cの車外温度にも相当し、被処理自動車Cの車外の害虫駆除や高温による損傷等に影響する。そのため、加熱温度制御手段60は、車内温度と同様に、室内温度検知手段25による処理室20内の室内温度(被処理自動車Cの車外温度)が50〜80℃以下、より好ましくは60〜75℃以下に保持されるように制御する。なお、複数のユニット20uを連結した処理室20Aの場合、室内温度は処理室20A全体(すべてのユニット)として管理する必要があるため、各ユニット20uごとの室内温度検知手段25に基づく検知温度を一括して制御することが好ましい。
加熱温度制御手段60では、高温処理の処理時間の制御も行われる。高温処理の処理時間は、被処理自動車Cの大きさや処理台数等に応じて設定されるが、例えば、被処理自動車Cの車内温度が所定温度に到達してから10〜20分程度とされる。この処理時間であれば、駆除対象害虫を確実に致死させることができて、処理効率やコスト面でも好ましい。ちなみに、前記したように、この実施例では、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持の効率が良いので、全体の処理時間を約30分程度(以内)と短縮することできる。
本発明の高温害虫駆除装置10では、図4に示すように、処理室を複数並列配置(20L,20L,20L)して複数の被処理自動車Cの高温処理を実施することも可能である。複数並列配置された処理室20L,20L,20Lは、接続可能なユニット20uを直列状に複数連結して構成してもよい(処理室20A)。図示の例では、1列がユニット20uを6つ連結させた処理室20Aによって構成された3列の処理室20L,20L,20Lからなる。各列の処理室20L,20L,20Lには、小型の被処理自動車C1,大型の被処理自動車C2,中型の被処理自動車C3がそれぞれ不規則に収容されている。このように、複数連結された処理室20Aを複数並列配置すれば、より多数の被処理自動車Cを高温処理することができ、処理効率が向上する。なお、実施例では、ユニットを5つ連結させて4台の被処理自動車を収容した際に、35℃から80℃までの昇温を約10分で行うことができた。そのため、複数のユニットを接続した処理室においても、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持を含む全体の処理時間を約30分程度(以内)と短縮することできる。
また、処理室が複数並列配置された高温害虫駆除装置10は、各処理室20L,20L,20Lの循環ファン装置30による高温処理を一括管理する集中管理部70を有することが好ましい。集中管理部70は、公知の制御装置が使用される。この集中管理部70は、複数の処理室20ごとの車内温度検知手段50に基づいて対応する各循環ファン装置30を制御する。特に、複数のユニット20uが連結された処理室20Aを有する場合、室内温度検知手段25と車内温度検知手段50とに基づいて各循環ファン装置30を制御することが好ましい。これは、複数の被処理自動車Cごとに高温処理の上限温度を管理するのではなく、ユニットが連結された処理室20A全体で管理される室内温度を、加熱処理の上限温度として処理することが効率面で有利なためである。なお、集中管理部70は、加熱温度制御手段60を兼ねるように構成してもよいし、加熱温度制御手段60を別途設けて各加熱温度制御手段60に基づいてそれぞれの高温処理を制御してもよい。集中管理部70により、多数の被処理自動車Cに対する高温処理の全体の状況を容易に把握することができるとともに、処理状況への対応も効率的に行うことができる。
次に、本発明の高温害虫駆除装置10を用いた自動車の高温害虫駆除方法について説明する。この高温害虫駆除方法は、図1に示すように、処理室20内に被処理自動車Cを搬入し、処理室20内を加熱するとともに、被処理自動車C内に設置した車内温度検知手段50によって車内温度を検知し、加熱温度制御手段60により車内温度検知手段50に基づいて加熱温度を制御して被処理自動車C内を所定温度以上で高温処理することによって、被処理自動車C内の害虫を駆除する。以下、単一の処理室20内での単一の被処理自動車Cの高温害虫駆除方法を例に詳述する。
まず、被処理自動車Cの座席の下部やエンジンルーム内等の比較的加熱されにくい部位に、予め車内温度検知手段50が必要数配置される。図1に図示の例では、エンジンルームの車内温度検知手段50a、座席下部の車内温度検知手段50b、トランクルームの車内温度検知手段50cが配置されている。また、循環ファン装置30による高温処理の温度条件や処理時間が加熱温度制御手段60により設定される。ここでの高温処理の条件は、上限温度が75℃、処理温度が60℃、処理時間が10分である。
高温処理の設定後、被処理自動車Cが処理室20内に自走またはコンベア等により搬入される。処理室20内に搬入された被処理自動車Cは、車両扉、ボンネット、バックドア等がそれぞれ開放されて、座席部分、エンジンルーム、トランクルーム等の被処理自動車C内の通気性が確保される。続いて、処理室20の搬入口22が閉じられて室内が閉鎖状態とされ、循環ファン装置30による処理室20内の加熱が開始される。循環ファン装置30では、ファン部材35により加熱空気が処理室20内の水平方向に循環される。
すなわち、ファン部材35によって循環ファン装置30の前面側から処理室20内の空気が吸引されて、筐体部材31内の加熱部材40によって吸引された空気が加熱される。このようにして加熱された空気は、循環ファン装置30の両側部の吐き出し部33から加熱空気として処理室20内へ排出される。この時、吐き出し部33が循環ファン装置30の側部を全面的に開放して形成されているため、排出される加熱空気は処理室20内を略水平方向に流通される。循環ファン装置30の両側部から排出された加熱空気は、第3側壁部21c側から第4側壁部21d側へ第1側壁部21a側と第2側壁部21b側の双方の側壁部に沿って流通される。そして、両側の各加熱空気は、第4側壁部21dの中央部付近で合流して処理室20の中央方向へ流通されて、循環ファン装置30のファン部材35により循環ファン装置30へ吸引される。従って、処理室20内の左右両側から側壁部21に沿って加熱空気の略水平方向への循環が繰り返される。これにより、処理室20内が効率的に加熱される。また、自動車のような床板及び屋根板を有する箱型の物体に対して効果的に加熱空気を接触させることができる。
循環ファン装置30による加熱では、処理室20内全体の加熱が行われることによって、処理室20内に搬送された被処理自動車C内が徐々に加熱される。ここで、循環ファン装置30による温度変化を図5のグラフに示す。図5のグラフでは、室内温度検知手段25によって検知された室内温度(車外温度)、エンジンルームの車内温度検知手段50aによって検知された第1の車内温度、座席下部の車内温度検知手段50bによって検知された第2の車内温度、トランクルームの車内温度検知手段50cによって検知された第3の車内温度の各温度変化をそれぞれ表している。
図5に示すように、室内温度(符号25参照)の上昇に伴って車内温度(符号50a、50b、50c)が徐々に上昇する。そこで、室内温度検知手段25によって検知された室内温度に基づいて室内温度が上限温度(この例では75℃)に保持されるように、加熱温度制御手段60によって循環ファン装置30の作動が制御される。これは、室内温度(車外温度)が80℃より高温となって被処理自動車Cに破損等が生じないようにするための措置である。
図5に示すように、車内温度は車外温度の上昇に伴って経時的に上昇される。そして、室内温度が上限温度(75℃)に保持されることにより、上昇した各車内温度が高温処理の処理温度(この例では60℃)に到達する。車内温度の変化は、被処理自動車Cの部位に応じて上昇具合が異なる。そのため、各部位の高温処理の処理温度(60℃)に到達する時間も一致しない。図5に示す例では、トランクルームの車内温度(50c)が最初に処理温度に到達し、次いでエンジンルームの車内温度(50a)、座席下部の車内温度(50b)の順で処理温度に到達する。そこで、複数の車内温度検知手段(50a,50b,50c)のうち、処理温度(60℃)に最も遅く到達した時間(t)が高温処理の開始時間とされる。
ここで、最も遅く処理温度に到達した部位は、被処理自動車C内で最も温度が低い部位であると推定される。そのため、この部位が処理温度に到達することによって、被処理自動車C全体が処理温度以上に達して、被処理自動車C全体が適切に高温処理できる状態となったとみなすことができる。従って、この時点(t)を高温処理の開始時間とすれば、被処理自動車C全体を不足なく高温処理することが可能となる。
高温処理は、開始時間(t)から、設定された処理時間(この例では10分)にわたって処理温度(60℃)以上の高温状態が保持される。そこで、高温処理中は、室内温度が上限温度(75℃)に保持される。これにより、被処理自動車Cの車内温度は、処理温度(60℃)に到達した後も室内温度(75℃)以下の範囲で上昇する。従って、車内温度が80℃より高温となることがなく、被処理自動車Cへの高温による悪影響が抑制される。このように、高温処理中(10分間)は、車内温度及び車外温度(室内温度)が害虫が致死する温度である50℃(この例では60℃)以上で常時保持される。従って、被処理自動車Cに付着する害虫を確実に駆除することが可能となる。
高温処理の処理時間(t+10分)が経過した後、循環ファン装置30が停止されるとともに、処理室20の搬入口22及び搬出口23が開放されて、被処理自動車Cが徐冷される。被処理自動車Cは、徐冷後に適宜搬出され、新たに未処理状態の他の被処理自動車Cが搬入されて、以後同様の工程が繰り返される。
次に、複数連結された処理室20を複数並列配置した高温害虫駆除装置10を用いた高温害虫駆除方法について説明する。この高温害虫駆除方法では、図4に示すように、車内温度検知手段50が適宜配置された複数の被処理自動車Cが各処理室20L,20L,20Lに適宜搬入され、必要台数の搬入が完了した後、処理室20L,20L,20Lが閉鎖される。そして、集中管理部70の制御により、各処理室20の循環ファン装置30による加熱が開始される。
集中管理部70は、各処理室20の室内温度検知手段25によって検知された室内温度に基づいて、すべての室内温度が上限温度(75℃)以下に保持されるように、各循環ファン装置30の作動が制御される。また、室内温度の上昇に伴って被処理自動車Cの車内温度も経時的に上昇する。そこで、集中管理部70は、複数並列配置された処理室20L,20L,20Lに関し、各列ごとに車内温度検知手段50に基づいて循環ファン装置30の制御が行われる。すなわち、各列の処理室20L,20L,20Lごとに、複数の車内温度検知手段50のいずれかにおいて処理温度(60℃)に最も遅く到達した時点から、設定された処理時間(10分間)にわたって高温処理が行われるように制御される。
各列において、高温処理の処理時間が経過した列の処理室20Lから、順次被処理自動車Cの徐冷が行われ、未処理状態の他の被処理自動車Cとの入れ替えが行われて、以後同様の工程が繰り返される。このように、複数並列配置された処理室20L,20L,20Lの各循環ファン装置30による高温処理を集中管理部70により一括管理すれば、より多数の被処理自動車Cを適切に高温処理することができるとともに、複数の高温処理の管理が簡素化されて処理効率が向上する。
以上図示し説明したように、本発明の自動車の高温害虫駆除方法によると、開閉可能な扉部を備えた搬入口と搬出口とを有し被処理自動車が収容される閉鎖空間に害虫駆除温度に熱せられた加熱空気が付与される処理室と、前記処理室内の側壁部に吸い込み部を処理室の内側方向に向けかつ吐き出し部を側壁に沿って配置した循環ファン装置と、前記循環ファン装置の吐き出し部に設けられた吐き出し空気を加熱する加熱部材とを有し、前記処理室の室内温度を検知する室内温度検知手段と、被処理自動車の複数の部位の車内温度を検知する車内温度検知手段とを設けて、前記室内温度検知手段及び車内温度検知手段に基づいて前記循環ファン装置から吐き出される空気の加熱温度と処理時間を制御する加熱温度制御手段を設けるとともに、前記加熱温度制御手段は、前記複数の部位の車内温度検知手段のうち、処理温度に最も遅く到達した部位の時間から所定の処理時間を開始するようにしたので、薫蒸剤を使用せずに高温処理によって確実に害虫を駆除することができ、被処理物内に薫蒸剤が残留する等の悪影響が回避できる。また、処理室内に循環ファン装置及び加熱部材を設けて加熱空気を循環流通させることにより、害虫駆除温度への昇温及びその維持を含む処理全体の効率が大幅に向上するとともにコストの低減を図ることができる。
本発明の自動車の高温害虫駆除方法は、被処理自動車が収容される閉鎖空間である処理室に循環ファン装置及び加熱部材を備えて加熱空気を循環流通するので、自動車用の大型の処理空間においても、効率よく高温処理ができるばかりでなく、実施例でも述べたように、処理室を複数連結することにより、多数かつ多種類の被処理自動車の熱処理を効率よく実施でき、大量処理及び設置場所の広さ等への対応が容易となり汎用性が向上し高い産業利用性を有する。
10 高温害虫駆除装置
20 処理室
20A 複数連結された処理室
20L 複数並列配置された処理室
20u ユニット
21 側壁部
21a 第1側壁部
21b 第2側壁部
21c 第3側壁部
21d 第4側壁部
22 搬入口
22a 搬入扉部
23 搬出口
23a 搬出扉部
25 室内温度検知手段
30 循環ファン装置
31 筐体部材
32 吸い込み部
33 吐き出し部
35 ファン部材
40 加熱部材
41 配管部材
45 整風部材
46 整風部材の風向規制部
47,48 整風部材の風向補助部
49 整風部材の風当面
50,50a,50b,50c 車内温度検知手段
60 加熱温度制御手段
70 集中管理部
C,C1,C2,C3 被処理自動車
t 高温処理の開始時間
本発明は、自動車に付着した害虫を高温処理により駆除する高温害虫駆除方法に関する。
日本は世界でも有数の貿易大国であり、数多くの物品が海外へと輸出されている。輸出される物品としては、自動車、テレビや冷蔵庫等の家電製品、映像機器、パソコン、半導体等の電子部品等の各種電気機器類等の種々の製品が知られる。これらの製品の輸出に際して、輸出品や輸送船等に輸出元国に生息している昆虫等が付着していると、輸出先国において外来生物として生態系に悪影響を及ぼす等の問題が生じることがある。特に、この種の外来生物による農作物への被害は深刻であり、輸出先国では害虫として処理されて輸出品の積み下ろしが許可されないことがあるため、輸出品の厳格な検疫が要求される。
例えば、近年、ニュージーランドにおいて、日本からの輸出自動車にクサギカメムシの付着が確認された。カメムシは発見しにくく、駆除も困難で繁殖力が高いこと等が知られており、農業が盛んなニュージーランドでは駆除対象害虫として特に警戒されている。そのため、カメムシの付着が確認された輸送船が相次いで国外退去を強いられ、日本からの自動車の輸出状況が悪化している。
ニュージーランドは、国内で自動車製造が行われていないことから、日本にとって非常に重要な自動車輸出市場となっている。従って、日本からの自動車の輸出状況の悪化は、日本経済に大きな打撃を与えるのみならず、国内で流通する自動車を日本の輸出自動車に頼っているニュージーランドの経済にとっても大きな打撃となる。そこで、カメムシに代表される害虫を確実に駆除する手段を構築することが急務である。
一般に、害虫を駆除する場合には、ヨウ化アルキル等の薬剤を用いた薫蒸が行われる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、薬剤の薫蒸による害虫駆除は、自動車を処理対象とした場合、自動車は精密機械であるため種々の機器に悪影響を及ぼしたり、エアコンのフィルター等に薬剤が残留して悪臭の原因となったりして好ましくない。また、薫蒸処理は数日間を要し、薫蒸剤の使用によりコストも高くなる。そのため、特に輸出台数が年間数十万台に及ぶ輸出自動車を処理対象とすると、1台を害虫駆除するのに時間がかかりすぎて、大量の自動車を処理するには極めて広大な処理施設を港湾等の制約の多い場所に確保しなければならない。これでは、輸出自動車の適切な害虫駆除は現実的に不可能である。
そこで、大量の輸出自動車の処理に対応して効率よく適切に害虫駆除することが可能な新たな手法が求められている。
特開2003−267803号公報
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、薫蒸剤を使用せずに高温処理によって処理時間を短縮し大量の被処理自動車に対しても効率よくかつ効果的に害虫を駆除することができる高温害虫駆除方法を提供するものである。
すなわち、請求項1の発明は、開閉可能な扉部を備えた搬入口と搬出口とを有し被処理自動車が収容される閉鎖空間に害虫駆除温度に熱せられた加熱空気が付与される処理室と、前記処理室内に配置され、吸い込み部と吐き出し部とファン部材とを備え、前記ファン部材は大型のプロペラファンよりなり前面側を前記処理室の内側方向に向けて配置され、前記吸い込み部を介して処理室内の空気を前面側から吸引するとともに、吸引された空気を前記ファン部材後面側の前記吐き出し部を介して両側部方向へ吐出するよう構成された循環ファン装置と、前記循環ファン装置の吐き出し部に設けられた吐き出し空気を加熱する加熱部材と、前記加熱部材を介して室内に送り出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材とを有し、前記処理室の室内温度を検知する室内温度検知手段と、被処理自動車の複数の部位の車内温度を検知する車内温度検知手段とを設けて、前記室内温度検知手段及び車内温度検知手段に基づいて前記循環ファン装置から吐き出される空気の加熱温度と処理時間を制御する加熱温度制御手段を設けるとともに、前記加熱温度制御手段は、前記複数の部位の車内温度検知手段のうち、処理温度に最も遅く到達した部位の時間から所定の処理時間を開始することを特徴とする自動車の高温害虫駆除方法に係る。
請求項2発明は、前記ファン部材が直径1000mmから1500mmの大型のプロペラファンである請求項1に記載の自動車の高温害虫駆除方法に係る。
請求項の発明は、前記処理室が接続可能な処理ユニットとして複数連結配置され、前記複数連結配置された各処理室の高温処理が集中管理部により一括管理される請求項1に記載の自動車の高温害虫駆除方法に係る。
請求項1の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、開閉可能な扉部を備えた搬入口と搬出口とを有し被処理自動車が収容される閉鎖空間に害虫駆除温度に熱せられた加熱空気が付与される処理室と、前記処理室内に配置され、吸い込み部と吐き出し部とファン部材とを備え、前記ファン部材は大型のプロペラファンよりなり前面側を前記処理室の内側方向に向けて配置され、前記吸い込み部を介して処理室内の空気を前面側から吸引するとともに、吸引された空気を前記ファン部材後面側の前記吐き出し部を介して両側部方向へ吐出するよう構成された循環ファン装置と、前記循環ファン装置の吐き出し部に設けられた吐き出し空気を加熱する加熱部材と、前記加熱部材を介して室内に送り出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材とを有し、前記処理室の室内温度を検知する室内温度検知手段と、被処理自動車の複数の部位の車内温度を検知する車内温度検知手段とを設けて、前記室内温度検知手段及び車内温度検知手段に基づいて前記循環ファン装置から吐き出される空気の加熱温度と処理時間を制御する加熱温度制御手段を設けるとともに、前記加熱温度制御手段は、前記複数の部位の車内温度検知手段のうち、処理温度に最も遅く到達した部位の時間から所定の処理時間を開始するため、薫蒸剤を使用せずに高温処理によって確実に自動車の害虫を駆除することができるのみならず、この発明によれば、処理室内に循環ファン装置及び加熱部材を設けて加熱空気を循環流通させることにより、室内の加熱ムラを抑制して加熱温度を略均一に保持して処理室内を効果的かつ効率よく加熱することができ、処理効率が大幅に向上しコストの低減を図ることができる。
とりわけ、大型のプロペラファンよりなるファン部材が前面側を処理室内に向けて配置されているので、室内空気の吸引及び吐出を適度な風量及び風速で循環流通させることができ、大型の被処理物である自動車に対しても熱処理温度の昇温及び維持の効率が良く、効果的な熱処理を行うことができ、処理時間を短縮することができ、また、加熱部材を介して室内に送り出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材により、床板及び屋根板を有する箱型形状でかつ入り組んだ内部構造を備えた自動車の内外に対して効果的に加熱空気を接触させることができ大量の被処理自動車に対しても適切な害虫駆除をすることができ、その結果、大量の被処理自動車に対しても効率よくかつ効果的に適切な害虫駆除を行うことができる。
請求項2の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、 前記ファン部材が直径1000mmから1500mmの大型のプロペラファンであるから、熱処理を効率よく行うことができ、処理時間を大幅に短縮することができる。
請求項の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、前記処理室が接続可能な処理ユニットとして複数連結配置され、前記複数連結配置された各処理室の高温処理が集中管理部により一括管理されるものであるため、多数ないし大量の被処理自動車への対応が可能となり適切に高温処理することができるとともに、高温処理の管理が簡素化されて処理効率が向上する。
本発明の一実施例を自動車の高温害虫駆除方法について説明した装置の概略横断面図である。 処理室が複数連結された高温害虫駆除装置の模式図である。 循環ファン装置の斜視図である。 処理室が複数並列配置された高温害虫駆除装置の模式図である。 高温処理における加熱温度の変化を表すグラフである。
図1は、本発明の一実施例を自動車の高温害虫駆除方法について説明した高温害虫駆除装置10の概略断面図であって、処理室20と、循環ファン装置30と、加熱部材40とを備える。符号Cは被処理物である自動車で、符号25は処理室の室内温度検知手段、50は被処理自動車Cの車内温度検知手段、45は整風部材、60は加熱温度制御手段である。この高温害虫駆除装置10は、普通自動車,バス,トラック,オートバイ等の一般的な自動車を被処理自動車Cとして、車両の内外に付着した害虫を高温処理により駆除する装置である。特に、輸出自動車が被処理物Cの対象とされる。そこで、高温害虫駆除装置10は、輸出自動車の積み込みが行われる各港の検疫検査場等の施設に付随して設置される。駆除対象の害虫は、内外地貿易においてその商品の移動に影響を及ぼすクサギカメムシ等のカメムシ類、アジア型マイマイガ等のガ類、ヒメカツオブシムシ等のカツオブシムシ類、ミバエ等のハエ類、セアカゴケグモ等のクモ類、アフリカマイマイ等のカタツムリ類、メイガ等のチョウ類、ゴキブリ類、コクゾウムシ類、バッタ類、アブラムシ類等の節足動物や軟体動物であり、成虫に限らず幼虫や卵も含まれる。
処理室20は、図1に示すように、被処理自動車Cが搬出入可能であり、搬入された被処理自動車Cの高温処理が行われる閉鎖空間である。処理室20は、耐熱性や断熱性を有する壁材によって天井、床、側壁等がそれぞれ構成されている。処理室20の側壁部21には、被処理自動車Cの搬入や搬出を可能とする搬入口22及び搬出口23が形成される。搬入口22と搬出口23は対向配置されて、被処理自動車Cが搬入口22から搬出口23へ直進して通過可能とされる。また、搬入口22と搬出口23を同一の開口部で構成し、被処理自動車Cを前進(または後退)させて搬入後、後退(または前進)させて搬出可能としてもよい。処理室20内への被処理自動車Cの搬入は、自走やコンベア等の移送手段を使用する等、適宜である。図1において、符号21aは搬入口22が設けられた第1側壁部、21bは第1側壁部21aの対面側の第2側壁部、21cは後述の循環ファン装置30が配置される第3側壁部、21dは第3側壁部21cの対面側の第4側壁部、22aは搬入口22を開閉する搬入扉部、23aは搬出口23を開閉する搬出扉部である。
処理室20では、図1に示すように、室内温度を検知する室内温度検知手段25が配置される。室内温度検知手段25は、公知の温度センサーが使用される。この室内温度検知手段25は、処理室20内で他の場所と比較して高温となる場所に設置することが好ましい。室内温度検知手段25の設置場所としては、例えば、加熱空気の発生源に相当する後述の循環ファン装置30の吐き出し部33の近傍である。このように、他の場所と比較して高温となる場所の温度を検知することにより、処理室20の室内温度が全体として室内温度検知手段25によって検知された温度以下であると想定することが可能となる。また、室内温度検知手段25は、処理室20内の複数個所に設置することにより、より正確に室内温度を想定することができる。
処理室20の大きさは、被処理自動車Cの大きさや処理台数、設置場所の広さや処理効率等に応じて適宜である。また、処理室20は、図2に示すように、接続可能なユニット20u,20u,20uを直列状に複数連結させて(20A)、複数の被処理自動車C,Cを収容可能としてもよい。図示の例では、3つのユニット20u,20u,20uが連結された処理室20Aに、普通乗用車等の被処理自動車C1と、被処理自動車C1より大きいバス等の被処理自動車C2が収容されている。この処理室20Aでは、大型の被処理自動車C2が複数(図示の例では2つ)のユニット20u,20uにまたがって収容される。すなわち、1のユニット20uを1の被処理自動車Cに対応させる必要はなく、接続された処理室20A内に被処理自動車が収容可能であればどのように収容してもかまわない。このように、複数の処理室(20u,20u,20u)を連結することにより、処理室20A内の被処理自動車Cの収容スペースを自在に調整することが可能となる。そのため、被処理自動車Cの処理台数や設置場所の広さ等への対応が容易となり、汎用性が向上する。なお、図示の例では、ユニット20u,20u同士が側壁部を介して連結される構成としたが、側壁部を着脱可能に構成する等して連結時に側壁部を介さずにユニット20u,20u同士を直結してもよい。
循環ファン装置30は、図1に示すように、処理室20内に配置されて、加熱空気を処理室20内に循環流通させて、室内の加熱ムラを抑制して加熱温度を略均一に保持するように作動する。実施例の循環ファン装置30は、図1,3に示すように、吸い込み部32と吐き出し部33とファン部材である大型のプロペラファン35とを備える。図において、符号31は循環ファン装置30の筐体部材である。循環ファン装置30は、処理室20の側壁部21(第3側壁部21c)に、筐体部材31の前面に形成された吸い込み部32を処理室の内側方向に向けて配置される。
ファン部材35は、図1,3に示すように、処理室20の内側方向に向けて配置されて、吸い込み部32を介して処理室20内の空気を吸引する吸引ファンからなる。ファン部材35の形状は、二枚羽、三枚羽、四枚羽等、適宜である。また、ファン部材35の大きさは処理室20の広さや加熱効率等に応じて適宜であるが、例えば実施例では直径1000mm〜1500mm程度の大型のものである。このファン部材35は、処理室20の広さ等に応じて一又は複数(図示の例では1つ)配置される。
加熱部材40は、ファン部材35によって吸引された空気を加熱する部材であり、後述の吐き出し部33に配置される。加熱部材40は、蒸気配管や熱水配管等の熱交換器、電熱線ヒーター等の公知の加熱機器が用いられる。図3に示す加熱部材40は、複数の直管状の配管部材41を並列配置して各配管部材41に蒸気を流通させる蒸気配管式の熱交換器である。複数の配管部材41が直管状に形成されて並列配置されることにより、加熱時の温度むらの発生が抑制されて、熱効率が良好となる。
吐き出し部33は、図1,3に示すように、循環ファン装置30の筐体部材31の両側部を全面的に開放して形成された通気用の開口部である。吐き出し部33では、ファン部材35に吸引されて加熱部材40によって加熱された加熱空気が通過して処理室20へ吐出される。また、吐き出し部33には、室内に吐出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材45が設けられている。この整風部材45は、筐体部材31の前面の両端部にそれぞれ設けられ、端部から前側へ屈曲して延設された板状部材からなる風向規制部46である。この風向規制部46からなる整風部材45は、吐き出し部33から加熱空気が拡散されずに直進方向へ流通させるとともに、室内の空気を吸い込み部32に流入させる案内部ともなる。なお図示しないが、必要に応じて吐き出し部33に排出用のファン部材を配置してもよい。排出用のファン部材を配置することにより、加熱空気の排出をより促進することができる。
上記循環ファン装置30は、図1に示すように、ファン部材35が処理室20の内側方向に向けて配置されているので、加熱空気は処理室20内の水平方向に循環される。すなわち、まず、ファン部材35により、循環ファン装置30の前面側の吸い込み部32から処理室20内の空気が吸引される。この吸引された空気は、ファン部材35の後面側の吐き出し部33を介して循環ファン装置30の両側部方向へ吐出される。このとき、吐き出し部33に配置された加熱部材40を通過しながら加熱されて、加熱空気として吐き出し部33から処理室20内へ吐出される。吐き出し部33から吐出された加熱空気は処理室20の壁面に沿って流通する。
ここで、循環ファン装置30のファン部材35の風量及び風速について述べると、前記したように、実施例のファン部材35は直径1000mm〜1500mm程度の大型のプロペラファンよりなるもので、風量は1分間あたり1500m3で、平均風速は秒速5.8mで、樹木の葉や小枝が揺れる程度(風力2)である。実施例の処理室の体積は大きいものが391m3、小さいものが346m3である。実験によれば、加熱空気の風速は秒速4〜7m程度(風力2強〜3弱)が熱処理を効率よく行うことができ、好ましい。なお、この実施例では、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持の効率が良いので、工程全体の処理時間を約30分程度(以内)と大幅に短縮することができる。
次に加熱空気の加熱室内での循環流通について説明する。前記したように、吐き出し部33から吐出された加熱空気は処理室20の壁面に沿って流通する。図1の第1側壁部21a方向へ流通した加熱空気は、さらに第1側壁部21aに沿って第4側壁部21d方向へと流通される。または第2側壁部21b方向へ流通した加熱空気は、第1側壁部21a方向へ流通した加熱空気と左右対称に、第2側壁部21bに沿って第4側壁部21d方向へと流通される。そして第1側壁部21a側の加熱空気と第2側壁部21b側の加熱空気は、第4側壁部21dの中央部付近で合流して処理室20の中央方向へ流通して、循環ファン装置30のファン部材35により再び循環ファン装置30へ吸引される。
このように、循環ファン装置30では、ファン部材35により前面側の吸い込み部32から処理室20内の空気を吸引し、吐き出し部33両側から加熱空気として吐出することにより、処理室20の側壁部21沿いに第3側壁部21c側から第4側壁部21d側への空気の流れが作出される。そして、第4側壁部21d側へ流通した加熱空気は再びファン部材35により吸引されるため、処理室20内で加熱空気が循環される。この際、吐き出し部33が循環ファン装置30の側部を全面的に開放して形成されているため、排出される加熱空気が処理室20内を略水平方向に流通される。
循環ファン装置30によって加熱空気を循環させる場合、図1に示すように、処理室20の複数個所に加熱空気の流通方向を整える整風部材45を配設することが好ましい。整風部材45は加熱空気の流通方向に対して所定方向に傾斜配置された風当面49を有し、加熱空気が整風部材45の風当面49に衝突することによってその傾斜方向へ流通方向を誘導するものである。実施例の整風部材45は、循環ファン装置30の吐き出し部33近傍に配設される板状部材からなる風向規制部46のほか、処理室20の各角部に配設される風向補助部47、第1側壁部21a側の加熱空気と第2側壁部21b側の加熱空気との合流箇所近傍に配設された風向補助部48とを有する。これらの整風部材45の風向規制部46、風向補助部47,48を配設することにより、循環ファン装置30から吐出された加熱空気をより効率よく処理室内を水平方向に循環流通させることが可能となり、床板及び屋根板を有する箱型形状でかつ入り組んだ内部構造を備えた自動車の内外に対して効果的に加熱空気を接触させることができる。
次に、車内温度検知手段50は、図1に示すように、被処理自動車Cの内部に設置されてその車内温度を検知する部材であり、公知の温度センサーが使用される。車内温度検知手段50は、被処理自動車C内の比較的加熱されにくい部位や比較的加熱されやすい部位に適宜設置される。加熱されにくい部位は、例えば、被処理自動車Cのエンジンルーム内や座席の下部等であり、被処理自動車C内の他の部位と比較して高温処理時に加熱温度が最も低くなりやすい部位(低温部位)である。また、加熱されやすい部位は、被処理自動車Cの座席の上部等であり、被処理自動車C内の他の部位と比較して高温処理時に加熱温度が最も高くなりやすい部位(高温部位)である。
車内温度検知手段50を用いて、被処理自動車C内で他の部位と比較して加熱されにくい部位(低温部位)の温度を検知することにより、被処理自動車Cの車内温度が全体として車内温度検知手段50によって検知された温度以上であると想定することが可能となる。また、車内温度検知手段50を用いて、被処理自動車C内で他の部位と比較して加熱されやすい部位(高温部位)の温度を検知することにより、被処理自動車Cの車内温度が全体として車内温度検知手段50によって検知された温度以下であると想定することが可能となる。そこで、加熱されにくい部位(低温部位)と加熱されやすい部位(高温部位)の双方に車内温度検知手段50を設置してそれぞれの温度を検知すれば、被処理自動車Cの車内温度が全体として低温部位で検知された温度以上かつ高温部位で検知された温度以下であると想定することが可能となる。なお、車内温度検知手段50は、被処理自動車Cの内部の複数個所に配置することが好ましい。複数個所の車内温度を検知することにより、より正確に被処理自動車Cの車内温度を想定することができる。
加熱温度制御手段60は、図1に示すように、処理室20外に設置され、車内温度検知手段50に基づいて循環ファン装置30の加熱温度を制御する。この加熱温度制御手段60は、公知の制御装置が使用される。カメムシ等の駆除対象害虫である昆虫は高温に弱い性質を有しており、例えば、50℃以上の高温にさらされることによって致死する。これは、害虫の体内のたんぱく質が高温により凝固するためと考えられる。しかしながら、被処理自動車Cは、精密機械であり、各所に樹脂材料の部材が用いられていることから、長時間高温にさらされると種々の機器や部材等に悪影響であり、故障したり傷みが生じたり変質したりする等の破損の原因となるおそれがある。そこで、被処理自動車Cへの高温による悪影響を回避するために、加熱温度は80℃以下とされる。そこで、加熱温度制御手段60は、車内温度検知手段50による被処理自動車Cの車内温度が50〜80℃、より好ましくは60〜75℃に保持されるように制御する。循環ファン装置30の制御は、ファン部材35の回転数や、循環ファン装置30の蒸気の量等を調整して行われる。
また、加熱温度制御手段60は、車内温度検知手段50に基づく循環ファン装置30の制御と並行して、室内温度検知手段25に基づいて循環ファン装置30の加熱温度を制御する。室内温度検知手段25によって検知される室内温度は、処理室20内で最も高いと推定される温度であることから、室内温度の上限温度に相当する。さらに、室内温度は被処理自動車Cの車外温度にも相当し、被処理自動車Cの車外の害虫駆除や高温による損傷等に影響する。そのため、加熱温度制御手段60は、車内温度と同様に、室内温度検知手段25による処理室20内の室内温度(被処理自動車Cの車外温度)が50〜80℃以下、より好ましくは60〜75℃以下に保持されるように制御する。なお、複数のユニット20uを連結した処理室20Aの場合、室内温度は処理室20A全体(すべてのユニット)として管理する必要があるため、各ユニット20uごとの室内温度検知手段25に基づく検知温度を一括して制御することが好ましい。
加熱温度制御手段60では、高温処理の処理時間の制御も行われる。高温処理の処理時間は、被処理自動車Cの大きさや処理台数等に応じて設定されるが、例えば、被処理自動車Cの車内温度が所定温度に到達してから10〜20分程度とされる。この処理時間であれば、駆除対象害虫を確実に致死させることができて、処理効率やコスト面でも好ましい。ちなみに、前記したように、この実施例では、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持の効率が良いので、全体の処理時間を約30分程度(以内)と短縮することできる。
実施例の高温害虫駆除装置10では、図4に示すように、処理室を複数並列配置(20L,20L,20L)して複数の被処理自動車Cの高温処理を実施することも可能である。複数並列配置された処理室20L,20L,20Lは、接続可能なユニット20uを直列状に複数連結して構成してもよい(処理室20A)。図示の例では、1列がユニット20uを6つ連結させた処理室20Aによって構成された3列の処理室20L,20L,20Lからなる。各列の処理室20L,20L,20Lには、小型の被処理自動車C1,大型の被処理自動車C2,中型の被処理自動車C3がそれぞれ不規則に収容されている。このように、複数連結された処理室20Aを複数並列配置すれば、より多数の被処理自動車Cを高温処理することができ、処理効率が向上する。なお、実施例では、ユニットを5つ連結させて4台の被処理自動車を収容した際に、35℃から80℃までの昇温を約10分で行うことができた。そのため、複数のユニットを接続した処理室においても、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持を含む全体の処理時間を約30分程度(以内)と短縮することできる。
また、処理室が複数並列配置された高温害虫駆除装置10は、各処理室20L,20L,20Lの循環ファン装置30による高温処理を一括管理する集中管理部70を有することが好ましい。集中管理部70は、公知の制御装置が使用される。この集中管理部70は、複数の処理室20ごとの車内温度検知手段50に基づいて対応する各循環ファン装置30を制御する。特に、複数のユニット20uが連結された処理室20Aを有する場合、室内温度検知手段25と車内温度検知手段50とに基づいて各循環ファン装置30を制御することが好ましい。これは、複数の被処理自動車Cごとに高温処理の上限温度を管理するのではなく、ユニットが連結された処理室20A全体で管理される室内温度を、加熱処理の上限温度として処理することが効率面で有利なためである。なお、集中管理部70は、加熱温度制御手段60を兼ねるように構成してもよいし、加熱温度制御手段60を別途設けて各加熱温度制御手段60に基づいてそれぞれの高温処理を制御してもよい。集中管理部70により、多数の被処理自動車Cに対する高温処理の全体の状況を容易に把握することができるとともに、処理状況への対応も効率的に行うことができる。
次に、実施例の高温害虫駆除装置10を用いた自動車の高温害虫駆除方法について説明する。この高温害虫駆除方法は、図1に示すように、処理室20内に被処理自動車Cを搬入し、処理室20内を加熱するとともに、被処理自動車C内に設置した車内温度検知手段50によって車内温度を検知し、加熱温度制御手段60により車内温度検知手段50に基づいて加熱温度を制御して被処理自動車C内を所定温度以上で高温処理することによって、被処理自動車C内の害虫を駆除する。以下、単一の処理室20内での単一の被処理自動車Cの高温害虫駆除方法を例に詳述する。
まず、被処理自動車Cの座席の下部やエンジンルーム内等の比較的加熱されにくい部位に、予め車内温度検知手段50が必要数配置される。図1に図示の例では、エンジンルームの車内温度検知手段50a、座席下部の車内温度検知手段50b、トランクルームの車内温度検知手段50cが配置されている。また、循環ファン装置30による高温処理の温度条件や処理時間が加熱温度制御手段60により設定される。ここでの高温処理の条件は、上限温度が75℃、処理温度が60℃、処理時間が10分である。
高温処理の設定後、被処理自動車Cが処理室20内に自走またはコンベア等により搬入される。処理室20内に搬入された被処理自動車Cは、車両扉、ボンネット、バックドア等がそれぞれ開放されて、座席部分、エンジンルーム、トランクルーム等の被処理自動車C内の通気性が確保される。続いて、処理室20の搬入口22が閉じられて室内が閉鎖状態とされ、循環ファン装置30による処理室20内の加熱が開始される。循環ファン装置30では、ファン部材35により加熱空気が処理室20内の水平方向に循環される。
すなわち、ファン部材35によって循環ファン装置30の前面側から処理室20内の空気が吸引されて、筐体部材31内の加熱部材40によって吸引された空気が加熱される。このようにして加熱された空気は、循環ファン装置30の両側部の吐き出し部33から加熱空気として処理室20内へ排出される。この時、吐き出し部33が循環ファン装置30の側部を全面的に開放して形成されているため、排出される加熱空気は処理室20内を略水平方向に流通される。循環ファン装置30の両側部から排出された加熱空気は、第3側壁部21c側から第4側壁部21d側へ第1側壁部21a側と第2側壁部21b側の双方の側壁部に沿って流通される。そして、両側の各加熱空気は、第4側壁部21dの中央部付近で合流して処理室20の中央方向へ流通されて、循環ファン装置30のファン部材35により循環ファン装置30へ吸引される。従って、処理室20内の左右両側から側壁部21に沿って加熱空気の略水平方向への循環が繰り返される。これにより、処理室20内が効率的に加熱される。また、自動車のような床板及び屋根板を有する箱型の物体に対して効果的に加熱空気を接触させることができる。
循環ファン装置30による加熱では、処理室20内全体の加熱が行われることによって、処理室20内に搬送された被処理自動車C内が徐々に加熱される。ここで、循環ファン装置30による温度変化を図5のグラフに示す。図5のグラフでは、室内温度検知手段25によって検知された室内温度(車外温度)、エンジンルームの車内温度検知手段50aによって検知された第1の車内温度、座席下部の車内温度検知手段50bによって検知された第2の車内温度、トランクルームの車内温度検知手段50cによって検知された第3の車内温度の各温度変化をそれぞれ表している。
図5に示すように、室内温度(符号25参照)の上昇に伴って車内温度(符号50a、50b、50c)が徐々に上昇する。そこで、室内温度検知手段25によって検知された室内温度に基づいて室内温度が上限温度(この例では75℃)に保持されるように、加熱温度制御手段60によって循環ファン装置30の作動が制御される。これは、室内温度(車外温度)が80℃より高温となって被処理自動車Cに破損等が生じないようにするための措置である。
図5に示すように、車内温度は車外温度の上昇に伴って経時的に上昇される。そして、室内温度が上限温度(75℃)に保持されることにより、上昇した各車内温度が高温処理の処理温度(この例では60℃)に到達する。車内温度の変化は、被処理自動車Cの部位に応じて上昇具合が異なる。そのため、各部位の高温処理の処理温度(60℃)に到達する時間も一致しない。図5に示す例では、トランクルームの車内温度(50c)が最初に処理温度に到達し、次いでエンジンルームの車内温度(50a)、座席下部の車内温度(50b)の順で処理温度に到達する。そこで、複数の車内温度検知手段(50a,50b,50c)のうち、処理温度(60℃)に最も遅く到達した時間(t)が高温処理の開始時間とされる。
ここで、最も遅く処理温度に到達した部位は、被処理自動車C内で最も温度が低い部位であると推定される。そのため、この部位が処理温度に到達することによって、被処理自動車C全体が処理温度以上に達して、被処理自動車C全体が適切に高温処理できる状態となったとみなすことができる。従って、この時点(t)を高温処理の開始時間とすれば、被処理自動車C全体を不足なく高温処理することが可能となる。
高温処理は、開始時間(t)から、設定された処理時間(この例では10分)にわたって処理温度(60℃)以上の高温状態が保持される。そこで、高温処理中は、室内温度が上限温度(75℃)に保持される。これにより、被処理自動車Cの車内温度は、処理温度(60℃)に到達した後も室内温度(75℃)以下の範囲で上昇する。従って、車内温度が80℃より高温となることがなく、被処理自動車Cへの高温による悪影響が抑制される。このように、高温処理中(10分間)は、車内温度及び車外温度(室内温度)が害虫が致死する温度である50℃(この例では60℃)以上で常時保持される。従って、被処理自動車Cに付着する害虫を確実に駆除することが可能となる。
高温処理の処理時間(t+10分)が経過した後、循環ファン装置30が停止されるとともに、処理室20の搬入口22及び搬出口23が開放されて、被処理自動車Cが徐冷される。被処理自動車Cは、徐冷後に適宜搬出され、新たに未処理状態の他の被処理自動車Cが搬入されて、以後同様の工程が繰り返される。
次に、複数連結された処理室20を複数並列配置した高温害虫駆除装置10を用いた高温害虫駆除方法について説明する。この高温害虫駆除方法では、図4に示すように、車内温度検知手段50が適宜配置された複数の被処理自動車Cが各処理室20L,20L,20Lに適宜搬入され、必要台数の搬入が完了した後、処理室20L,20L,20Lが閉鎖される。そして、集中管理部70の制御により、各処理室20の循環ファン装置30による加熱が開始される。
集中管理部70は、各処理室20の室内温度検知手段25によって検知された室内温度に基づいて、すべての室内温度が上限温度(75℃)以下に保持されるように、各循環ファン装置30の作動が制御される。また、室内温度の上昇に伴って被処理自動車Cの車内温度も経時的に上昇する。そこで、集中管理部70は、複数並列配置された処理室20L,20L,20Lに関し、各列ごとに車内温度検知手段50に基づいて循環ファン装置30の制御が行われる。すなわち、各列の処理室20L,20L,20Lごとに、複数の車内温度検知手段50のいずれかにおいて処理温度(60℃)に最も遅く到達した時点から、設定された処理時間(10分間)にわたって高温処理が行われるように制御される。
各列において、高温処理の処理時間が経過した列の処理室20Lから、順次被処理自動車Cの徐冷が行われ、未処理状態の他の被処理自動車Cとの入れ替えが行われて、以後同様の工程が繰り返される。このように、複数並列配置された処理室20L,20L,20Lの各循環ファン装置30による高温処理を集中管理部70により一括管理すれば、より多数の被処理自動車Cを適切に高温処理することができるとともに、複数の高温処理の管理が簡素化されて処理効率が向上する。
以上図示し説明したように、本発明の自動車の高温害虫駆除方法によると、開閉可能な扉部を備えた搬入口と搬出口とを有し被処理自動車が収容される閉鎖空間に害虫駆除温度に熱せられた加熱空気が付与される処理室と、前記処理室内の側壁部に吸い込み部を処理室の内側方向に向けかつ吐き出し部を側壁に沿って配置した循環ファン装置と、前記循環ファン装置の吐き出し部に設けられた吐き出し空気を加熱する加熱部材とを有し、前記処理室の室内温度を検知する室内温度検知手段と、被処理自動車の複数の部位の車内温度を検知する車内温度検知手段とを設けて、前記室内温度検知手段及び車内温度検知手段に基づいて前記循環ファン装置から吐き出される空気の加熱温度と処理時間を制御する加熱温度制御手段を設けるとともに、前記加熱温度制御手段は、前記複数の部位の車内温度検知手段のうち、処理温度に最も遅く到達した部位の時間から所定の処理時間を開始するようにしたので、薫蒸剤を使用せずに高温処理によって確実に害虫を駆除することができ、被処理物内に薫蒸剤が残留する等の悪影響が回避できる。のみならず、この発明によれば、処理室内に循環ファン装置及び加熱部材を設けて加熱空気を循環流通させることにより処理室内の加熱ムラを抑制して加熱温度を略均一に保持して処理室内を効果的かつ効率よく加熱することができ、処理効率が大幅に向上しコストの低減を図ることができる。
とりわけ、大型のプロペラファンよりなるファン部材が前面側を処理室内に向けて配置されているので、室内空気の吸引及び吐出を適度な風量及び風速で循環流通させることができ、大型の被処理物である自動車に対しても熱処理温度の昇温及び維持の効率が良く、効果的な熱処理を行うことができ、処理時間を短縮することができ、また、加熱部材を介して室内に送り出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材により、床板及び屋根板を有する箱型形状でかつ入り組んだ内部構造を備えた自動車の内外に対して効果的に加熱空気を接触させることができ大量の被処理自動車に対しても適切な害虫駆除をすることができ、その結果、大量の被処理自動車に対しても効率よくかつ効果的に適切な害虫駆除を行うことができる。
本発明の自動車の高温害虫駆除方法は、被処理自動車が収容される閉鎖空間である処理室に循環ファン装置及び加熱部材を備えて加熱空気を循環流通するので、自動車用の大型の処理空間においても、効率よく高温処理ができるばかりでなく、実施例でも述べたように、処理室を複数連結することにより、多数かつ多種類の被処理自動車の熱処理を効率よく実施でき、大量処理及び設置場所の広さ等への対応が容易となり汎用性が向上し高い産業利用性を有する。本発明の自動車の高温害虫駆除方法は、例えば処理施設の設置に制約の多い港湾等における輸出自動車の害虫処理において、実務上かつ実際的な大きなアドバンテージを持つ。
10 高温害虫駆除装置
20 処理室
20A 複数連結された処理室
20L 複数並列配置された処理室
20u ユニット
21 側壁部
21a 第1側壁部
21b 第2側壁部
21c 第3側壁部
21d 第4側壁部
22 搬入口
22a 搬入扉部
23 搬出口
23a 搬出扉部
25 室内温度検知手段
30 循環ファン装置
31 筐体部材
32 吸い込み部
33 吐き出し部
35 ファン部材
40 加熱部材
41 配管部材
45 整風部材
46 整風部材の風向規制部
47,48 整風部材の風向補助部
49 整風部材の風当面
50,50a,50b,50c 車内温度検知手段
60 加熱温度制御手段
70 集中管理部
C,C1,C2,C3 被処理自動車
t 高温処理の開始時間
本発明は、自動車に付着した害虫を高温処理により駆除する高温害虫駆除方法に関する。
日本は世界でも有数の貿易大国であり、数多くの物品が海外へと輸出されている。輸出される物品としては、自動車、テレビや冷蔵庫等の家電製品、映像機器、パソコン、半導体等の電子部品等の各種電気機器類等の種々の製品が知られる。これらの製品の輸出に際して、輸出品や輸送船等に輸出元国に生息している昆虫等が付着していると、輸出先国において外来生物として生態系に悪影響を及ぼす等の問題が生じることがある。特に、この種の外来生物による農作物への被害は深刻であり、輸出先国では害虫として処理されて輸出品の積み下ろしが許可されないことがあるため、輸出品の厳格な検疫が要求される。
例えば、近年、ニュージーランドにおいて、日本からの輸出自動車にクサギカメムシの付着が確認された。カメムシは発見しにくく、駆除も困難で繁殖力が高いこと等が知られており、農業が盛んなニュージーランドでは駆除対象害虫として特に警戒されている。そのため、カメムシの付着が確認された輸送船が相次いで国外退去を強いられ、日本からの自動車の輸出状況が悪化している。
ニュージーランドは、国内で自動車製造が行われていないことから、日本にとって非常に重要な自動車輸出市場となっている。従って、日本からの自動車の輸出状況の悪化は、日本経済に大きな打撃を与えるのみならず、国内で流通する自動車を日本の輸出自動車に頼っているニュージーランドの経済にとっても大きな打撃となる。そこで、カメムシに代表される害虫を確実に駆除する手段を構築することが急務である。
一般に、害虫を駆除する場合には、ヨウ化アルキル等の薬剤を用いた薫蒸が行われる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、薬剤の薫蒸による害虫駆除は、自動車を処理対象とした場合、自動車は精密機械であるため種々の機器に悪影響を及ぼしたり、エアコンのフィルター等に薬剤が残留して悪臭の原因となったりして好ましくない。また、薫蒸処理は数日間を要し、薫蒸剤の使用によりコストも高くなる。そのため、特に輸出台数が年間数十万台に及ぶ輸出自動車を処理対象とすると、1台を害虫駆除するのに時間がかかりすぎて、大量の自動車を処理するには極めて広大な処理施設を港湾等の制約の多い場所に確保しなければならない。これでは、輸出自動車の適切な害虫駆除は現実的に不可能である。
そこで、大量の輸出自動車の処理に対応して効率よく適切に害虫駆除することが可能な新たな手法が求められている。
特開2003−267803号公報
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、薫蒸剤を使用せずに高温処理によって処理時間を短縮し大量の被処理自動車に対しても効率よくかつ効果的に害虫を駆除することができる高温害虫駆除方法を提供するものである。
すなわち、請求項1の発明は、開閉可能な扉部を備えた搬入口と搬出口とを有し被処理自動車が収容される閉鎖空間に害虫駆除温度に熱せられた加熱空気が付与される処理室と、前記処理室内に配置され、吸い込み部と吐き出し部とファン部材とを備え、前記ファン部材は直径1000mmから1500mmの大型のプロペラファンよりなり前面側を前記処理室の内側方向に向けて配置され、前記吸い込み部を介して処理室内の空気を前面側から吸引するとともに、吸引された空気を前記ファン部材後面側の前記吐き出し部を介して両側部方向へ吐出するよう構成された循環ファン装置と、前記循環ファン装置の吐き出し部に設けられた吐き出し空気を加熱する加熱部材と、前記加熱部材を介して室内に送り出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材とを有し、前記処理室の室内温度を検知する室内温度検知手段と、被処理自動車の複数の部位の車内温度を検知する車内温度検知手段とを設けて、前記室内温度検知手段及び車内温度検知手段に基づいて前記循環ファン装置から吐き出される空気の加熱温度と処理時間を制御する加熱温度制御手段を設けるとともに、前記加熱温度制御手段は、前記複数の部位の車内温度検知手段のうち、処理温度に最も遅く到達した部位の時間から所定の処理時間を開始することを特徴とする自動車の高温害虫駆除方法に係る。
請求項の発明は、前記処理室が接続可能な処理ユニットとして複数連結配置され、前記複数連結配置された各処理室の高温処理が集中管理部により一括管理される請求項1に記載の自動車の高温害虫駆除方法に係る。
請求項1の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、開閉可能な扉部を備えた搬入口と搬出口とを有し被処理自動車が収容される閉鎖空間に害虫駆除温度に熱せられた加熱空気が付与される処理室と、前記処理室内に配置され、吸い込み部と吐き出し部とファン部材とを備え、前記ファン部材は直径1000mmから1500mmの大型のプロペラファンよりなり前面側を前記処理室の内側方向に向けて配置され、前記吸い込み部を介して処理室内の空気を前面側から吸引するとともに、吸引された空気を前記ファン部材後面側の前記吐き出し部を介して両側部方向へ吐出するよう構成された循環ファン装置と、前記循環ファン装置の吐き出し部に設けられた吐き出し空気を加熱する加熱部材と、前記加熱部材を介して室内に送り出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材とを有し、前記処理室の室内温度を検知する室内温度検知手段と、被処理自動車の複数の部位の車内温度を検知する車内温度検知手段とを設けて、前記室内温度検知手段及び車内温度検知手段に基づいて前記循環ファン装置から吐き出される空気の加熱温度と処理時間を制御する加熱温度制御手段を設けるとともに、前記加熱温度制御手段は、前記複数の部位の車内温度検知手段のうち、処理温度に最も遅く到達した部位の時間から所定の処理時間を開始するため、薫蒸剤を使用せずに高温処理によって確実に自動車の害虫を駆除することができる。のみならず、この発明によれば、処理室内に循環ファン装置及び加熱部材を設けて加熱空気を循環流通させることにより、室内の加熱ムラを抑制して加熱温度を略均一に保持して処理室内を効果的かつ効率よく加熱することができ、処理効率が大幅に向上し、コストの低減を図ることができる。
とりわけ、直径1000mmから1500mmの大型のプロペラファンよりなるファン部材が前面側を処理室内に向けて配置されているので、室内空気の吸引及び吐出を適度な風量及び風速で循環流通させることができ、大型の被処理物である自動車に対しても熱処理温度の昇温及び維持の効率が良く、効果的な熱処理を行うことができ、処理時間を大幅に短縮することができ、また、加熱部材を介して室内に送り出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材により、床板及び屋根板を有する箱型形状でかつ入り組んだ内部構造を備えた自動車の内外に対して効果的に加熱空気を接触させることができ大量の被処理自動車に対しても適切な害虫駆除をすることができ、その結果、大量の被処理自動車に対しても効率よくかつ効果的に適切な害虫駆除を行うことができる。
請求項の発明に係る自動車の高温害虫駆除方法によると、請求項1の発明において、前記処理室が接続可能な処理ユニットとして複数連結配置され、前記複数連結配置された各処理室の高温処理が集中管理部により一括管理されるものであるため、多数ないし大量の被処理自動車への対応が可能となり適切に高温処理することができるとともに、高温処理の管理が簡素化されて処理効率が向上する。
本発明の一実施例を自動車の高温害虫駆除方法について説明した装置の概略横断面図である。 処理室が複数連結された高温害虫駆除装置の模式図である。 循環ファン装置の斜視図である。 処理室が複数並列配置された高温害虫駆除装置の模式図である。 高温処理における加熱温度の変化を表すグラフである。
図1は、本発明の一実施例を自動車の高温害虫駆除方法について説明した高温害虫駆除装置10の概略断面図であって、処理室20と、循環ファン装置30と、加熱部材40とを備える。符号Cは被処理物である自動車で、符号25は処理室の室内温度検知手段、50は被処理自動車Cの車内温度検知手段、45は整風部材、60は加熱温度制御手段である。この高温害虫駆除装置10は、普通自動車,バス,トラック,オートバイ等の一般的な自動車を被処理自動車Cとして、車両の内外に付着した害虫を高温処理により駆除する装置である。特に、輸出自動車が被処理物Cの対象とされる。そこで、高温害虫駆除装置10は、輸出自動車の積み込みが行われる各港の検疫検査場等の施設に付随して設置される。駆除対象の害虫は、内外地貿易においてその商品の移動に影響を及ぼすクサギカメムシ等のカメムシ類、アジア型マイマイガ等のガ類、ヒメカツオブシムシ等のカツオブシムシ類、ミバエ等のハエ類、セアカゴケグモ等のクモ類、アフリカマイマイ等のカタツムリ類、メイガ等のチョウ類、ゴキブリ類、コクゾウムシ類、バッタ類、アブラムシ類等の節足動物や軟体動物であり、成虫に限らず幼虫や卵も含まれる。
処理室20は、図1に示すように、被処理自動車Cが搬出入可能であり、搬入された被処理自動車Cの高温処理が行われる閉鎖空間である。処理室20は、耐熱性や断熱性を有する壁材によって天井、床、側壁等がそれぞれ構成されている。処理室20の側壁部21には、被処理自動車Cの搬入や搬出を可能とする搬入口22及び搬出口23が形成される。搬入口22と搬出口23は対向配置されて、被処理自動車Cが搬入口22から搬出口23へ直進して通過可能とされる。また、搬入口22と搬出口23を同一の開口部で構成し、被処理自動車Cを前進(または後退)させて搬入後、後退(または前進)させて搬出可能としてもよい。処理室20内への被処理自動車Cの搬入は、自走やコンベア等の移送手段を使用する等、適宜である。図1において、符号21aは搬入口22が設けられた第1側壁部、21bは第1側壁部21aの対面側の第2側壁部、21cは後述の循環ファン装置30が配置される第3側壁部、21dは第3側壁部21cの対面側の第4側壁部、22aは搬入口22を開閉する搬入扉部、23aは搬出口23を開閉する搬出扉部である。
処理室20では、図1に示すように、室内温度を検知する室内温度検知手段25が配置される。室内温度検知手段25は、公知の温度センサーが使用される。この室内温度検知手段25は、処理室20内で他の場所と比較して高温となる場所に設置することが好ましい。室内温度検知手段25の設置場所としては、例えば、加熱空気の発生源に相当する後述の循環ファン装置30の吐き出し部33の近傍である。このように、他の場所と比較して高温となる場所の温度を検知することにより、処理室20の室内温度が全体として室内温度検知手段25によって検知された温度以下であると想定することが可能となる。また、室内温度検知手段25は、処理室20内の複数個所に設置することにより、より正確に室内温度を想定することができる。
処理室20の大きさは、被処理自動車Cの大きさや処理台数、設置場所の広さや処理効率等に応じて適宜である。また、処理室20は、図2に示すように、接続可能なユニット20u,20u,20uを直列状に複数連結させて(20A)、複数の被処理自動車C,Cを収容可能としてもよい。図示の例では、3つのユニット20u,20u,20uが連結された処理室20Aに、普通乗用車等の被処理自動車C1と、被処理自動車C1より大きいバス等の被処理自動車C2が収容されている。この処理室20Aでは、大型の被処理自動車C2が複数(図示の例では2つ)のユニット20u,20uにまたがって収容される。すなわち、1のユニット20uを1の被処理自動車Cに対応させる必要はなく、接続された処理室20A内に被処理自動車が収容可能であればどのように収容してもかまわない。このように、複数の処理室(20u,20u,20u)を連結することにより、処理室20A内の被処理自動車Cの収容スペースを自在に調整することが可能となる。そのため、被処理自動車Cの処理台数や設置場所の広さ等への対応が容易となり、汎用性が向上する。なお、図示の例では、ユニット20u,20u同士が側壁部を介して連結される構成としたが、側壁部を着脱可能に構成する等して連結時に側壁部を介さずにユニット20u,20u同士を直結してもよい。
循環ファン装置30は、図1に示すように、処理室20内に配置されて、加熱空気を処理室20内に循環流通させて、室内の加熱ムラを抑制して加熱温度を略均一に保持するように作動する。実施例の循環ファン装置30は、図1,3に示すように、吸い込み部32と吐き出し部33とファン部材である大型のプロペラファン35とを備える。図において、符号31は循環ファン装置30の筐体部材である。循環ファン装置30は、処理室20の側壁部21(第3側壁部21c)に、筐体部材31の前面に形成された吸い込み部32を処理室の内側方向に向けて配置される。
ファン部材35は、図1,3に示すように、処理室20の内側方向に向けて配置されて、吸い込み部32を介して処理室20内の空気を吸引する吸引ファンからなる。ファン部材35の形状は、二枚羽、三枚羽、四枚羽等、適宜である。また、ファン部材35の大きさは処理室20の広さや加熱効率等に応じて適宜であるが、例えば実施例では直径1000mm〜1500mm程度の大型のものである。このファン部材35は、処理室20の広さ等に応じて一又は複数(図示の例では1つ)配置される。
加熱部材40は、ファン部材35によって吸引された空気を加熱する部材であり、後述の吐き出し部33に配置される。加熱部材40は、蒸気配管や熱水配管等の熱交換器、電熱線ヒーター等の公知の加熱機器が用いられる。図3に示す加熱部材40は、複数の直管状の配管部材41を並列配置して各配管部材41に蒸気を流通させる蒸気配管式の熱交換器である。複数の配管部材41が直管状に形成されて並列配置されることにより、加熱時の温度むらの発生が抑制されて、熱効率が良好となる。
吐き出し部33は、図1,3に示すように、循環ファン装置30の筐体部材31の両側部を全面的に開放して形成された通気用の開口部である。吐き出し部33では、ファン部材35に吸引されて加熱部材40によって加熱された加熱空気が通過して処理室20へ吐出される。また、吐き出し部33には、室内に吐出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材45が設けられている。この整風部材45は、筐体部材31の前面の両端部にそれぞれ設けられ、端部から前側へ屈曲して延設された板状部材からなる風向規制部46である。この風向規制部46からなる整風部材45は、吐き出し部33から加熱空気が拡散されずに直進方向へ流通させるとともに、室内の空気を吸い込み部32に流入させる案内部ともなる。なお図示しないが、必要に応じて吐き出し部33に排出用のファン部材を配置してもよい。排出用のファン部材を配置することにより、加熱空気の排出をより促進することができる。
上記循環ファン装置30は、図1に示すように、ファン部材35が処理室20の内側方向に向けて配置されているので、加熱空気は処理室20内の水平方向に循環される。すなわち、まず、ファン部材35により、循環ファン装置30の前面側の吸い込み部32から処理室20内の空気が吸引される。この吸引された空気は、ファン部材35の後面側の吐き出し部33を介して循環ファン装置30の両側部方向へ吐出される。このとき、吐き出し部33に配置された加熱部材40を通過しながら加熱されて、加熱空気として吐き出し部33から処理室20内へ吐出される。吐き出し部33から吐出された加熱空気は処理室20の壁面に沿って流通する。
ここで、循環ファン装置30のファン部材35の風量及び風速について述べると、前記したように、実施例のファン部材35は直径1000mm〜1500mm程度の大型のプロペラファンよりなるもので、風量は1分間あたり1500m3で、平均風速は秒速5.8mで、樹木の葉や小枝が揺れる程度(風力2)である。実施例の処理室の体積は大きいものが391m3、小さいものが346m3である。実験によれば、加熱空気の風速は秒速4〜7m程度(風力2強〜3弱)が熱処理を効率よく行うことができ、好ましい。なお、この実施例では、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持の効率が良いので、工程全体の処理時間を約30分程度(以内)と大幅に短縮することができる。
次に加熱空気の加熱室内での循環流通について説明する。前記したように、吐き出し部33から吐出された加熱空気は処理室20の壁面に沿って流通する。図1の第1側壁部21a方向へ流通した加熱空気は、さらに第1側壁部21aに沿って第4側壁部21d方向へと流通される。または第2側壁部21b方向へ流通した加熱空気は、第1側壁部21a方向へ流通した加熱空気と左右対称に、第2側壁部21bに沿って第4側壁部21d方向へと流通される。そして第1側壁部21a側の加熱空気と第2側壁部21b側の加熱空気は、第4側壁部21dの中央部付近で合流して処理室20の中央方向へ流通して、循環ファン装置30のファン部材35により再び循環ファン装置30へ吸引される。
このように、循環ファン装置30では、ファン部材35により前面側の吸い込み部32から処理室20内の空気を吸引し、吐き出し部33両側から加熱空気として吐出することにより、処理室20の側壁部21沿いに第3側壁部21c側から第4側壁部21d側への空気の流れが作出される。そして、第4側壁部21d側へ流通した加熱空気は再びファン部材35により吸引されるため、処理室20内で加熱空気が循環される。この際、吐き出し部33が循環ファン装置30の側部を全面的に開放して形成されているため、排出される加熱空気が処理室20内を略水平方向に流通される。
循環ファン装置30によって加熱空気を循環させる場合、図1に示すように、処理室20の複数個所に加熱空気の流通方向を整える整風部材45を配設することが好ましい。整風部材45は加熱空気の流通方向に対して所定方向に傾斜配置された風当面49を有し、加熱空気が整風部材45の風当面49に衝突することによってその傾斜方向へ流通方向を誘導するものである。実施例の整風部材45は、循環ファン装置30の吐き出し部33近傍に配設される板状部材からなる風向規制部46のほか、処理室20の各角部に配設される風向補助部47、第1側壁部21a側の加熱空気と第2側壁部21b側の加熱空気との合流箇所近傍に配設された風向補助部48とを有する。これらの整風部材45の風向規制部46、風向補助部47,48を配設することにより、循環ファン装置30から吐出された加熱空気をより効率よく処理室内を水平方向に循環流通させることが可能となり、床板及び屋根板を有する箱型形状でかつ入り組んだ内部構造を備えた自動車の内外に対して効果的に加熱空気を接触させることができる。
次に、車内温度検知手段50は、図1に示すように、被処理自動車Cの内部に設置されてその車内温度を検知する部材であり、公知の温度センサーが使用される。車内温度検知手段50は、被処理自動車C内の比較的加熱されにくい部位や比較的加熱されやすい部位に適宜設置される。加熱されにくい部位は、例えば、被処理自動車Cのエンジンルーム内や座席の下部等であり、被処理自動車C内の他の部位と比較して高温処理時に加熱温度が最も低くなりやすい部位(低温部位)である。また、加熱されやすい部位は、被処理自動車Cの座席の上部等であり、被処理自動車C内の他の部位と比較して高温処理時に加熱温度が最も高くなりやすい部位(高温部位)である。
車内温度検知手段50を用いて、被処理自動車C内で他の部位と比較して加熱されにくい部位(低温部位)の温度を検知することにより、被処理自動車Cの車内温度が全体として車内温度検知手段50によって検知された温度以上であると想定することが可能となる。また、車内温度検知手段50を用いて、被処理自動車C内で他の部位と比較して加熱されやすい部位(高温部位)の温度を検知することにより、被処理自動車Cの車内温度が全体として車内温度検知手段50によって検知された温度以下であると想定することが可能となる。そこで、加熱されにくい部位(低温部位)と加熱されやすい部位(高温部位)の双方に車内温度検知手段50を設置してそれぞれの温度を検知すれば、被処理自動車Cの車内温度が全体として低温部位で検知された温度以上かつ高温部位で検知された温度以下であると想定することが可能となる。なお、車内温度検知手段50は、被処理自動車Cの内部の複数個所に配置することが好ましい。複数個所の車内温度を検知することにより、より正確に被処理自動車Cの車内温度を想定することができる。
加熱温度制御手段60は、図1に示すように、処理室20外に設置され、車内温度検知手段50に基づいて循環ファン装置30の加熱温度を制御する。この加熱温度制御手段60は、公知の制御装置が使用される。カメムシ等の駆除対象害虫である昆虫は高温に弱い性質を有しており、例えば、50℃以上の高温にさらされることによって致死する。これは、害虫の体内のたんぱく質が高温により凝固するためと考えられる。しかしながら、被処理自動車Cは、精密機械であり、各所に樹脂材料の部材が用いられていることから、長時間高温にさらされると種々の機器や部材等に悪影響であり、故障したり傷みが生じたり変質したりする等の破損の原因となるおそれがある。そこで、被処理自動車Cへの高温による悪影響を回避するために、加熱温度は80℃以下とされる。そこで、加熱温度制御手段60は、車内温度検知手段50による被処理自動車Cの車内温度が50〜80℃、より好ましくは60〜75℃に保持されるように制御する。循環ファン装置30の制御は、ファン部材35の回転数や、循環ファン装置30の蒸気の量等を調整して行われる。
また、加熱温度制御手段60は、車内温度検知手段50に基づく循環ファン装置30の制御と並行して、室内温度検知手段25に基づいて循環ファン装置30の加熱温度を制御する。室内温度検知手段25によって検知される室内温度は、処理室20内で最も高いと推定される温度であることから、室内温度の上限温度に相当する。さらに、室内温度は被処理自動車Cの車外温度にも相当し、被処理自動車Cの車外の害虫駆除や高温による損傷等に影響する。そのため、加熱温度制御手段60は、車内温度と同様に、室内温度検知手段25による処理室20内の室内温度(被処理自動車Cの車外温度)が50〜80℃以下、より好ましくは60〜75℃以下に保持されるように制御する。なお、複数のユニット20uを連結した処理室20Aの場合、室内温度は処理室20A全体(すべてのユニット)として管理する必要があるため、各ユニット20uごとの室内温度検知手段25に基づく検知温度を一括して制御することが好ましい。
加熱温度制御手段60では、高温処理の処理時間の制御も行われる。高温処理の処理時間は、被処理自動車Cの大きさや処理台数等に応じて設定されるが、例えば、被処理自動車Cの車内温度が所定温度に到達してから10〜20分程度とされる。この処理時間であれば、駆除対象害虫を確実に致死させることができて、処理効率やコスト面でも好ましい。ちなみに、前記したように、この実施例では、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持の効率が良いので、全体の処理時間を約30分程度(以内)と短縮することできる。
実施例の高温害虫駆除装置10では、図4に示すように、処理室を複数並列配置(20L,20L,20L)して複数の被処理自動車Cの高温処理を実施することも可能である。複数並列配置された処理室20L,20L,20Lは、接続可能なユニット20uを直列状に複数連結して構成してもよい(処理室20A)。図示の例では、1列がユニット20uを6つ連結させた処理室20Aによって構成された3列の処理室20L,20L,20Lからなる。各列の処理室20L,20L,20Lには、小型の被処理自動車C1,大型の被処理自動車C2,中型の被処理自動車C3がそれぞれ不規則に収容されている。このように、複数連結された処理室20Aを複数並列配置すれば、より多数の被処理自動車Cを高温処理することができ、処理効率が向上する。なお、実施例では、ユニットを5つ連結させて4台の被処理自動車を収容した際に、35℃から80℃までの昇温を約10分で行うことができた。そのため、複数のユニットを接続した処理室においても、熱処理温度(60〜80℃)の昇温及び維持を含む全体の処理時間を約30分程度(以内)と短縮することできる。
また、処理室が複数並列配置された高温害虫駆除装置10は、各処理室20L,20L,20Lの循環ファン装置30による高温処理を一括管理する集中管理部70を有することが好ましい。集中管理部70は、公知の制御装置が使用される。この集中管理部70は、複数の処理室20ごとの車内温度検知手段50に基づいて対応する各循環ファン装置30を制御する。特に、複数のユニット20uが連結された処理室20Aを有する場合、室内温度検知手段25と車内温度検知手段50とに基づいて各循環ファン装置30を制御することが好ましい。これは、複数の被処理自動車Cごとに高温処理の上限温度を管理するのではなく、ユニットが連結された処理室20A全体で管理される室内温度を、加熱処理の上限温度として処理することが効率面で有利なためである。なお、集中管理部70は、加熱温度制御手段60を兼ねるように構成してもよいし、加熱温度制御手段60を別途設けて各加熱温度制御手段60に基づいてそれぞれの高温処理を制御してもよい。集中管理部70により、多数の被処理自動車Cに対する高温処理の全体の状況を容易に把握することができるとともに、処理状況への対応も効率的に行うことができる。
次に、実施例の高温害虫駆除装置10を用いた自動車の高温害虫駆除方法について説明する。この高温害虫駆除方法は、図1に示すように、処理室20内に被処理自動車Cを搬入し、処理室20内を加熱するとともに、被処理自動車C内に設置した車内温度検知手段50によって車内温度を検知し、加熱温度制御手段60により車内温度検知手段50に基づいて加熱温度を制御して被処理自動車C内を所定温度以上で高温処理することによって、被処理自動車C内の害虫を駆除する。以下、単一の処理室20内での単一の被処理自動車Cの高温害虫駆除方法を例に詳述する。
まず、被処理自動車Cの座席の下部やエンジンルーム内等の比較的加熱されにくい部位に、予め車内温度検知手段50が必要数配置される。図1に図示の例では、エンジンルームの車内温度検知手段50a、座席下部の車内温度検知手段50b、トランクルームの車内温度検知手段50cが配置されている。また、循環ファン装置30による高温処理の温度条件や処理時間が加熱温度制御手段60により設定される。ここでの高温処理の条件は、上限温度が75℃、処理温度が60℃、処理時間が10分である。
高温処理の設定後、被処理自動車Cが処理室20内に自走またはコンベア等により搬入される。処理室20内に搬入された被処理自動車Cは、車両扉、ボンネット、バックドア等がそれぞれ開放されて、座席部分、エンジンルーム、トランクルーム等の被処理自動車C内の通気性が確保される。続いて、処理室20の搬入口22が閉じられて室内が閉鎖状態とされ、循環ファン装置30による処理室20内の加熱が開始される。循環ファン装置30では、ファン部材35により加熱空気が処理室20内の水平方向に循環される。
すなわち、ファン部材35によって循環ファン装置30の前面側から処理室20内の空気が吸引されて、筐体部材31内の加熱部材40によって吸引された空気が加熱される。このようにして加熱された空気は、循環ファン装置30の両側部の吐き出し部33から加熱空気として処理室20内へ排出される。この時、吐き出し部33が循環ファン装置30の側部を全面的に開放して形成されているため、排出される加熱空気は処理室20内を略水平方向に流通される。循環ファン装置30の両側部から排出された加熱空気は、第3側壁部21c側から第4側壁部21d側へ第1側壁部21a側と第2側壁部21b側の双方の側壁部に沿って流通される。そして、両側の各加熱空気は、第4側壁部21dの中央部付近で合流して処理室20の中央方向へ流通されて、循環ファン装置30のファン部材35により循環ファン装置30へ吸引される。従って、処理室20内の左右両側から側壁部21に沿って加熱空気の略水平方向への循環が繰り返される。これにより、処理室20内が効率的に加熱される。また、自動車のような床板及び屋根板を有する箱型の物体に対して効果的に加熱空気を接触させることができる。
循環ファン装置30による加熱では、処理室20内全体の加熱が行われることによって、処理室20内に搬送された被処理自動車C内が徐々に加熱される。ここで、循環ファン装置30による温度変化を図5のグラフに示す。図5のグラフでは、室内温度検知手段25によって検知された室内温度(車外温度)、エンジンルームの車内温度検知手段50aによって検知された第1の車内温度、座席下部の車内温度検知手段50bによって検知された第2の車内温度、トランクルームの車内温度検知手段50cによって検知された第3の車内温度の各温度変化をそれぞれ表している。
図5に示すように、室内温度(符号25参照)の上昇に伴って車内温度(符号50a、50b、50c)が徐々に上昇する。そこで、室内温度検知手段25によって検知された室内温度に基づいて室内温度が上限温度(この例では75℃)に保持されるように、加熱温度制御手段60によって循環ファン装置30の作動が制御される。これは、室内温度(車外温度)が80℃より高温となって被処理自動車Cに破損等が生じないようにするための措置である。
図5に示すように、車内温度は車外温度の上昇に伴って経時的に上昇される。そして、室内温度が上限温度(75℃)に保持されることにより、上昇した各車内温度が高温処理の処理温度(この例では60℃)に到達する。車内温度の変化は、被処理自動車Cの部位に応じて上昇具合が異なる。そのため、各部位の高温処理の処理温度(60℃)に到達する時間も一致しない。図5に示す例では、トランクルームの車内温度(50c)が最初に処理温度に到達し、次いでエンジンルームの車内温度(50a)、座席下部の車内温度(50b)の順で処理温度に到達する。そこで、複数の車内温度検知手段(50a,50b,50c)のうち、処理温度(60℃)に最も遅く到達した時間(t)が高温処理の開始時間とされる。
ここで、最も遅く処理温度に到達した部位は、被処理自動車C内で最も温度が低い部位であると推定される。そのため、この部位が処理温度に到達することによって、被処理自動車C全体が処理温度以上に達して、被処理自動車C全体が適切に高温処理できる状態となったとみなすことができる。従って、この時点(t)を高温処理の開始時間とすれば、被処理自動車C全体を不足なく高温処理することが可能となる。
高温処理は、開始時間(t)から、設定された処理時間(この例では10分)にわたって処理温度(60℃)以上の高温状態が保持される。そこで、高温処理中は、室内温度が上限温度(75℃)に保持される。これにより、被処理自動車Cの車内温度は、処理温度(60℃)に到達した後も室内温度(75℃)以下の範囲で上昇する。従って、車内温度が80℃より高温となることがなく、被処理自動車Cへの高温による悪影響が抑制される。このように、高温処理中(10分間)は、車内温度及び車外温度(室内温度)が害虫が致死する温度である50℃(この例では60℃)以上で常時保持される。従って、被処理自動車Cに付着する害虫を確実に駆除することが可能となる。
高温処理の処理時間(t+10分)が経過した後、循環ファン装置30が停止されるとともに、処理室20の搬入口22及び搬出口23が開放されて、被処理自動車Cが徐冷される。被処理自動車Cは、徐冷後に適宜搬出され、新たに未処理状態の他の被処理自動車Cが搬入されて、以後同様の工程が繰り返される。
次に、複数連結された処理室20を複数並列配置した高温害虫駆除装置10を用いた高温害虫駆除方法について説明する。この高温害虫駆除方法では、図4に示すように、車内温度検知手段50が適宜配置された複数の被処理自動車Cが各処理室20L,20L,20Lに適宜搬入され、必要台数の搬入が完了した後、処理室20L,20L,20Lが閉鎖される。そして、集中管理部70の制御により、各処理室20の循環ファン装置30による加熱が開始される。
集中管理部70は、各処理室20の室内温度検知手段25によって検知された室内温度に基づいて、すべての室内温度が上限温度(75℃)以下に保持されるように、各循環ファン装置30の作動が制御される。また、室内温度の上昇に伴って被処理自動車Cの車内温度も経時的に上昇する。そこで、集中管理部70は、複数並列配置された処理室20L,20L,20Lに関し、各列ごとに車内温度検知手段50に基づいて循環ファン装置30の制御が行われる。すなわち、各列の処理室20L,20L,20Lごとに、複数の車内温度検知手段50のいずれかにおいて処理温度(60℃)に最も遅く到達した時点から、設定された処理時間(10分間)にわたって高温処理が行われるように制御される。
各列において、高温処理の処理時間が経過した列の処理室20Lから、順次被処理自動車Cの徐冷が行われ、未処理状態の他の被処理自動車Cとの入れ替えが行われて、以後同様の工程が繰り返される。このように、複数並列配置された処理室20L,20L,20Lの各循環ファン装置30による高温処理を集中管理部70により一括管理すれば、より多数の被処理自動車Cを適切に高温処理することができるとともに、複数の高温処理の管理が簡素化されて処理効率が向上する。
以上図示し説明したように、本発明の自動車の高温害虫駆除方法によると、開閉可能な扉部を備えた搬入口と搬出口とを有し被処理自動車が収容される閉鎖空間に害虫駆除温度に熱せられた加熱空気が付与される処理室と、前記処理室内の側壁部に吸い込み部を処理室の内側方向に向けかつ吐き出し部を側壁に沿って配置した循環ファン装置と、前記循環ファン装置の吐き出し部に設けられた吐き出し空気を加熱する加熱部材とを有し、前記処理室の室内温度を検知する室内温度検知手段と、被処理自動車の複数の部位の車内温度を検知する車内温度検知手段とを設けて、前記室内温度検知手段及び車内温度検知手段に基づいて前記循環ファン装置から吐き出される空気の加熱温度と処理時間を制御する加熱温度制御手段を設けるとともに、前記加熱温度制御手段は、前記複数の部位の車内温度検知手段のうち、処理温度に最も遅く到達した部位の時間から所定の処理時間を開始するようにしたので、薫蒸剤を使用せずに高温処理によって確実に害虫を駆除することができ、被処理物内に薫蒸剤が残留する等の悪影響が回避できる。のみならず、この発明によれば、処理室内に循環ファン装置及び加熱部材を設けて加熱空気を循環流通させることにより処理室内の加熱ムラを抑制して加熱温度を略均一に保持して処理室内を効果的かつ効率よく加熱することができ、処理効率が大幅に向上し、コストの低減を図ることができる。
とりわけ、大型のプロペラファンよりなるファン部材が前面側を処理室内に向けて配置されているので、室内空気の吸引及び吐出を適度な風量及び風速で循環流通させることができ、大型の被処理物である自動車に対しても熱処理温度の昇温及び維持の効率が良く、効果的な熱処理を行うことができ、処理時間を短縮することができ、また、加熱部材を介して室内に送り出された加熱空気の流通方向を水平方向に整える整風部材により、床板及び屋根板を有する箱型形状でかつ入り組んだ内部構造を備えた自動車の内外に対して効果的に加熱空気を接触させることができ大量の被処理自動車に対しても適切な害虫駆除をすることができ、その結果、大量の被処理自動車に対しても効率よくかつ効果的に適切な害虫駆除を行うことができる。
本発明の自動車の高温害虫駆除方法は、被処理自動車が収容される閉鎖空間である処理室に循環ファン装置及び加熱部材を備えて加熱空気を循環流通するので、自動車用の大型の処理空間においても、効率よく高温処理ができるばかりでなく、実施例でも述べたように、処理室を複数連結することにより、多数かつ多種類の被処理自動車の熱処理を効率よく実施でき、大量処理及び設置場所の広さ等への対応が容易となり汎用性が向上し高い産業利用性を有する。本発明の自動車の高温害虫駆除方法は、例えば処理施設の設置に制約の多い港湾等における輸出自動車の害虫処理において、実務上かつ実際的な大きなアドバンテージを持つ。
10 高温害虫駆除装置
20 処理室
20A 複数連結された処理室
20L 複数並列配置された処理室
20u ユニット
21 側壁部
21a 第1側壁部
21b 第2側壁部
21c 第3側壁部
21d 第4側壁部
22 搬入口
22a 搬入扉部
23 搬出口
23a 搬出扉部
25 室内温度検知手段
30 循環ファン装置
31 筐体部材
32 吸い込み部
33 吐き出し部
35 ファン部材
40 加熱部材
41 配管部材
45 整風部材
46 整風部材の風向規制部
47,48 整風部材の風向補助部
49 整風部材の風当面
50,50a,50b,50c 車内温度検知手段
60 加熱温度制御手段
70 集中管理部
C,C1,C2,C3 被処理自動車
t 高温処理の開始時間

Claims (5)

  1. 処理室内に収容された被処理物に対して、害虫駆除温度に熱せられた加熱空気を一定時間付与して被処理物に付着した害虫を高温駆除する方法において、
    前記処理室内に、吸い込み部を処理室の内側方向に向けて配置した循環ファン装置の吐き出し部に加熱部材を設置して前記加熱部材を介して加熱した空気を室内に送り出すとともに、室内を流通する空気を前記循環ファン装置の前記吸い込み部へ導入して循環流通させることを特徴とする高温害虫駆除方法。
  2. 前記処理室内に空気の流通方向を整える整風部材が配置された請求項1に記載の高温害虫駆除方法。
  3. 前記処理室内の空気が水平方向に流通される請求項1に記載の高温害虫駆除方法。
  4. 前記処理室が接続可能な処理ユニットとして複数連結配置され、前記複数連結配置された各処理室の高温処理が集中管理部により一括管理される請求項1に記載の高温害虫駆除方法。
  5. 被処理物が自動車または電気機器である請求項1に記載の高温害虫駆除方法。
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