JP2020005600A - 新規組換えバクテリオファージ - Google Patents

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Abstract

【課題】標識タンパク質である蛍光タンパク質の遺伝子または呈色反応を触媒する酵素の遺伝子が、T7ファージのゲノムに発現可能に挿入された組換えT7ファージを提供することを課題とする。【解決手段】T7ファージのgp17遺伝子領域に、蛍光タンパク質の遺伝子または呈色反応を触媒する酵素の遺伝子を発現可能に挿入して、蛍光タンパク質または呈色反応を触媒する酵素を一定の数で安定に発現する組換えT7ファージを作成する。【選択図】図5

Description

本発明は、バクテリオファージT7の組換えバクテリオファージに関する。
バクテリオファージT7(T7ファージ)は、ポドウイルス科に属するエンベロープを持たないDNAウイルスで、正20面体のカプシドの内部に、直鎖状の二本鎖DNAをゲノムとして持つファージである。宿主細胞の大腸菌に感染してファージDNAを宿主中で複製、増殖させて多数のファージ粒子を形成し、宿主の細胞膜を破り溶菌する。ゲノムは1983年に解読されており、約40kbpの核酸配列からなり、55の遺伝子を含む。
大腸菌に感染するファージは、ファージディスプレイ法に利用されており、ファージの表面にファージのコートタンパク質と融合した外来タンパク質、ペプチドを、他の分子と相互作用できる形で提示することができるため、機能モチーフの探索のための最も有力な方法の一つとなっている。しかし、機能モチーフのスクリーニング過程におけるファージの検出工程に、ELISAなどの煩雑な方法を用いるため、スクリーニングに莫大な手間と時間を要するという欠点がある。
最近、ファージのイメージングのために、GFPなどの蛍光タンパク質を用いて、T7ファージ(非特許文献1、2)、T4ファージ(非特許文献3)、またはラムダファージ(非特許文献4)を可視化して検出する報告がなされている。しかし、ファージに発現させる蛍光タンパク質の数が1〜3個と極めて少ないため、蛍光強度が弱く、また、ファージ当たりの蛍光タンパク質の数が制御できないため一定でなく、蛍光強度を指標にした正確なスクリーニングや検出をすることができない。
非特許文献1および2には、GFP−キャプシド融合タンパク質を発現するヘルパープラスミドを、大腸菌内で発現させてファージに補うこと、あるいは、ファージゲノムのキャプシドタンパクのプロモーター活性を極めて減弱させたT7ファージに、GFP−キャプシド融合タンパク質遺伝子を組み込んだ上で、野生型キャプシドタンパクをヘルパープラスミドにより大腸菌内で過剰に発現させてファージに補うことにより、いずれの場合も、T7ファージ1分子あたりGFPタンパク質を1個〜3個含むT7ファージが得られたことが報告されている。しかし、この蛍光は極めて弱いものであり、また、発現させるGFPの数を制御できないため、ファージによってGFPの数が一定しておらず、蛍光強度を指標にしたスクリーニングを行うことができない。
非特許文献3には、T4ファージキャプシドのアクセサリータンパクHocにGFPを融合させたタンパクを、ヘルパープラスミドを用いた大腸菌による過剰発現でT4ファージに付加することにより、蛍光ファージにしたことが記載されているが、ファージに結合しなかった遊離のHoc−GFPタンパク質をFPLCで分離する必要があり、しかも、得られた蛍光T4ファージは、GFPのついていないT4ファージに比べ、1.1倍程度の蛍光強度しか有さない。
非特許文献4には、λファージのネック部分にGFPタンパクが取り込まれるように設計することが記載されているが、ファージに発現させる蛍光タンパク質の数が少なく、ファージ当たりの蛍光タンパク質の数が制御不能である点で変わらない。
さらに、非特許文献1〜3に記載されたファージは、蛍光タンパク質をキャプシドに融合させているために、ファージディスプレイ法に使用した場合に、蛍光タンパク質が、提示するタンパク質と立体障害を起こすという欠点がある。同様に、特許文献1に記載のルシフェラーゼ酵素遺伝子をキャプシド表面に発現させる組換えバクテリオファージにおいても、このような立体障害を起こす可能性がある。
特表2017−511702号公報
Protein Eng. Des. Sel. (2008) Vol.21, No.7, p.413-424 Nucleic Acids Res.(2006) Vol.34, No.20 e137 Bacteriophage (2014) Landes Bioscience Vol.4, e28364-1-6 Appl. Microbiol. Biotechnol. (2014) Vol.98, p.2853-2866
本発明は、T7ファージを十分に可視化することのできる強度で、活性を有する蛍光タンパク質を発現することができ、あるいは、T7ファージを可視化できる、活性を有する呈色反応を触媒する酵素を発現することのできる、ファージディスプレイ法に好適に使用できる組換えT7ファージを提供することをその課題とする。
また、本発明は、そのような組換えT7ファージをファージディスプレイ法に使用する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、標識タンパク質である蛍光タンパク質の遺伝子または呈色反応を触媒する酵素の遺伝子を、T7ファージの特定の遺伝子領域に発現可能に挿入することにより、T7ファージが宿主に感染しその複製中に、蛍光タンパク質または呈色反応を触媒する酵素が正しく折り畳まれ、活性を有する立体構造でファージタンパク質の一部として発現されることを見出し、本発明の完成に至った。この組換えT7ファージは、このように異種遺伝子を発現できるだけでなく、溶菌後感染性ウイルスとして新たな宿主に感染することができる。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)の組換えバクテリオファージT7に関する。
(1)組換えバクテリオファージT7であって、バクテリオファージT7のゲノムのgp17遺伝子領域に、標識タンパク質の遺伝子が発現可能に挿入されていることを特徴とする、組換えバクテリオファージT7。
(2)前記標識タンパク質が、蛍光タンパク質または発光または呈色反応を触媒する酵素である、上記(1)に記載の組換えバクテリオファージT7。
(3)前記蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)であり、前記呈色反応を触媒する酵素が、ルシフェラーゼ、β−グルクロニダーゼ(GUS)、β−ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼのいずれか一つである、上記(2)に記載の組換えバクテリオファージT7。
(4)前記標識タンパク質の遺伝子が、gp17遺伝子コード領域末端近傍に挿入されている、上記(1)ないし(2)のいずれかに記載の組換えバクテリオファージT7。
(5)前記gp17遺伝子コード領域末端近傍が、3´末端領域である、上記(4)に記載の組換えバクテリオファージT7。
(6)組換えバクテリオファージT7が、宿主細胞に感染後の細胞質におけるファージ複製の間に、前記蛍光タンパク質の遺伝子または発光または呈色反応を触媒する酵素の遺伝子を発現して、活性を有する蛍光タンパク質または発光または呈色反応を触媒する酵素生成物を生じる、上記(2)に記載の組換えバクテリオファージT7。
また、本発明は、以下の(7)の組換えバクテリオファージT7をファージディスプレイに使用する方法に関する。
(7)組換えバクテリオファージT7であって、バクテリオファージT7のゲノムのgp17遺伝子領域に、標識タンパク質の遺伝子が発現可能に挿入されている組換えバクテリオファージT7を、ファージディスプレイに使用する方法。
従来法では、1ファージ分子あたりの発現される蛍光タンパク質が1〜3個までと少ないが、本発明の組換えファージでは、従来法に比べ1オーダー上の多数の蛍光タンパク質が発現するため、蛍光強度に各段の差がある。
また、従来法では、ファージ分子あたりの蛍光タンパク質の数を制御することができず、ファージにより蛍光タンパクの数が異なり、蛍光強度が一定ではないが、本発明の組換えファージには、すべてのファージに必ず同じ数の蛍光タンパク質が発現するため、正確な一定の蛍光強度によるスクリーニングを実現できる。
さらに、蛍光タンパク質をファージにヘルパープラスミドを用いた大腸菌による過剰発現による補充の必要がないので、スクリーニングにおけるパニングの過程で、選択したファージを複製・増殖するラウンドごとに、未結合の蛍光タンパク質と目的の蛍光を発するファージとを毎回分離する手間もかからず、また、選択増幅したすべてのファージに蛍光タンパク質が間違いなく結合しているかを、ラウンドのたびに検証する必要がない。
また、本発明の組換えファージをファージディスプレイに使用する場合に、ライブラリ部分のランダムペプチドを発現するキャプシド部分とは異なる構造部分に蛍光タンパク質が発現することから、ターゲットに対する結合の立体障害を生じることなく、ファージディスプレイ法で重要な要素であるターゲットとの結合に対しても見逃しが起きないという優れた効果を奏する。
制限酵素SfiIおよびPmlIによるT7ファージゲノムDNAの切断部位を示す。 制限酵素で切断後のDNAフラグメントのアガロースゲル電気泳動の結果を示す。 GSスペーサーとsfGFP遺伝子を含む2.9kbフラグメントの調製方法を示す。 2.9kbフラグメントのアガロースゲル電気泳動の結果を示す。 組換えT7gp17−sfGFPのゲノムの概略を示す。 組換えT7gp17−sfGFPを感染させた大腸菌のプラークの実体蛍光顕微鏡写真を示す。 第2世代の組み換えファージのgp17−sfGFPのウエスタンブロットを示す。
バクテリオファージT7(T7ファージ)は、二本鎖直鎖状のゲノムDNAを持つ溶菌性のファージであり、大腸菌表面にあるLPSに結合して、大腸菌内へDNAを注入して感染する。ゲノムDNAを格納するファージの頭部は、415個のG10タンパク質の会合により形成され、その下に尾部が付加されている。
ゲノムDNAは、約40kbpの核酸配列からなり55の遺伝子を含み、必須遺伝子には整数の番号が付けられている。gp1はDNA依存性RNAポリメラーゼ遺伝子で、感染初期に大腸菌由来RNAポリメラーゼによって転写された後、それ以降のウイルス遺伝子の転写を行い、gp5はDNAポリメラーゼ遺伝子でDNAの複製を行う。gp10は頭部キャプシドの主成分である外郭を構成する遺伝子であり、gp17は尾部の付け根から伸びる尾部繊維タンパク質遺伝子で、尾部繊維タンパク質は3分子で一本の繊維を形成し、この繊維が6本伸びて尾部の脚を形成する。
本発明において、「バクテリオファージ」もしくは「ファージ」とは、それらを複製する手段として、天然において細菌を使用するように進化したウイルスである。ファージは、このことを、ファージ自体を細菌に付着させ、そのDNAをその細菌の中に注入し、上記ファージを数百倍もしくはさらには数千倍も複製するようにその細菌を誘導することによって行う。これをファージ増幅ともいう。
本発明において、「バクテリオファージT7」とは、天然のバクテリオファージT7と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%の相同性を有するゲノムを有し、かつ上記ファージ増幅を行い、最終的に細菌の細胞壁を破り(溶菌)、細胞外に放出されるバクテリオファージをいう。
また、「組換え」とは、他の方法では見いだされない遺伝的物質を一緒にするための遺伝的な改変をいう。
本発明の組換えファージに導入される標識タンパク質の遺伝子としては、基質が必要ない点で蛍光タンパク質の遺伝子が好ましい。蛍光タンパク質としては、市販されている緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、またはシアン蛍光タンパク質(CFP)の遺伝子を用いることができ、これらのタンパク質の修飾型のすべてのvariantのいずれの遺伝子も用いることができる。
また、発光または呈色反応を触媒する酵素の遺伝子を用いることができ、たとえば、ルシフェラーゼ(Luc)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、β−ガラクトシダーゼ(Gal)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)等の市販されている遺伝子が挙げられる。
また、蛍光・発光タンパク質や蛍光色素に対して結合性を有するペプチドをコードするDNAを用いることができ、それ以外にも、ビオチン化タグ配列ペプチド(大腸菌のビオチンライゲースBirAのアクセプターペプチド)、あるいは各種タグ配列(HA、myc、FLAG、Hisタグ等)も用いることができる。
本発明において、「gp17遺伝子領域に、標識タンパク質の遺伝子が発現可能に挿入されている」とは、gp17遺伝子の発現産物である尾部繊維タンパク質と蛍光タンパク質等が融合タンパク質として発現される状態を意味する。gp17遺伝子は、尾部の付け根から伸びる尾部繊維タンパク質遺伝子であり、3分子で一本の繊維を形成する。T7ファージはその繊維からなる脚を6本有するため、gp17遺伝子領域に蛍光タンパク質等の遺伝子を発現可能に挿入することにより、3×6=18の18個の蛍光タンパク質、酵素、タグ配列等が脚表面に発現した尾部を有する組換えファージを作成することができる。
蛍光タンパク質等の遺伝子が挿入されるgp17遺伝子領域は、蛍光タンパク質等の遺伝子の発現が、gp17遺伝子のプロモーターまたは調節領域により機能的に制御され、かつ、gp17遺伝子が機能的に発現可能な領域であればいかなる領域であってもよい。gp17遺伝子の機能が欠失しにくいgp17遺伝子のコード領域の末端近傍や、gp17遺伝子のコード領域の5´末端または3´末端が好ましい。
gp17遺伝子と蛍光タンパク質等の遺伝子は、同じプロモーターまたは調節領域が、両遺伝子を制御できるように連結される必要があり、スペーサー配列またはリンカー配列を介して連結してもよい。gp17遺伝子と蛍光タンパク質等の遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を含む融合タンパク質が発現するように、インフレームで連結させることにより、一旦プロモーターで転写が始まると、コード領域を通って終止コドンまで転写が続く。gp17遺伝子および蛍光タンパク質等の遺伝子は、5´→3´方向に存在する。
蛍光タンパク質等の異種遺伝子をファージゲノムの特定の領域に挿入する遺伝子組換え操作方法は、当業者に周知であり、相同組み換えやゲノム編集技術を用いることができる。組換え操作の方法の原則は、たとえばPCR増幅によって、組み込むべき断片及び2つの組換えアームを含むDNA断片を作製することである。これらのアームは、挿入する遺伝子に隣接した領域に相同である。これらのDNA断片は、相同なアームを含んだプライマーを用いたPCRによって、数十塩基配列のヌクレオチドから作り出すことも可能である。
本発明では、T7ゲノムの全長DNA中での切断部位がそれぞれ1か所である2つの制限酵素の制限部位が、T7ゲノムのgp17遺伝子の3´末端近傍のコード領域中と3´末端下流領域に存在するため、それらの制限酵素部位を利用して、gp17遺伝子コード領域の3´末端にGFP遺伝子を導入することができる。
後述する実施例では、T7ファージとして、野生型のT7ファージ(40kb)のキャプシドタンパク質のC末端に任意のペプチドを融合タンパク質として発現させることのできる改変体である、T7 Select 415−1b(Merk Millipore社製)を用いた。キャプシドタンパク質の発現に関わるDNA部分以外は、T7 Select 415−1bのDNAは、野生型T7ゲノムDNAと同じである。
SfiI−PmlI間のみならず、gp17遺伝子を含んだ前後のゲノムはすべて保存されているので、本発明の組換えT7ファージの作成方法は、野生型T7を含めたすべてのT7改変体ファージ(T7 Select 415−1b,10−3b,1−1b,1−2a,1−2b,1−2c:Merk Millipore社製)に適用することができる。
最初に、T7ファージのゲノムDNAを制限酵素SfiIおよびPmlIにより切断し、得られた切断断片である33.3kb、2.1kb、1.9kbの3本のDNA断片を、アガロースゲル電気泳動によりサイズ分離して、33.3kbと1.9kbのそれぞれのDNA断片のサイズのバンドのDNAを溶出させてそれぞれ精製する。各精製DNAフラグメントは、アガロース電気泳動で精製をさらに確認する。
次いで、T7ゲノムのgp17配列内のSfiI制限部位からgp17下流にあるPmlI制限部位までの上記2.1kbのDNA断片において、gp17コード領域の3´末端にGSスペーサー配列をコードする遺伝子を介してGFP遺伝子が連結されている約2.9kbのフラグメントを、以下のオーバーラップ伸長PCR法を用いて作製する。
このフラグメントを作製するために、まず2.9kbを約1kbずつの3本のフラグメント(以下、それぞれA、B、Cという。)に分けて、それぞれ化学合成により作製する。A、B、Cのそれぞれの5´末端と3´末端に、30bpのオーバーラップ配列を付加する。フラグメントAとBのオーバーラップ伸長PCRにより、PCR産物A+Bが作製され、このA+B産物とフラグメントCとのオーバーラップ伸長PCRにより、PCR産物A+B+Cという目的の2.9kb産物を得る。各PCR産物はアガロースゲル電気泳動により分離して、該当するバンドを切り取り、精製した2.9kbフラグメントの5´末端と3´末端を、制限酵素SfiIおよびPmlIで消化する。
次に、T7ファージのゲノムDNAを制限酵素SfiIおよびPmlIにより切断して得られ、精製しておいた33.3kbと1.9kbの2つのフラグメントと、オーバーラップ伸長PCR産物である精製した2.9kbフラグメントの合計3本のフラグメントを、T4DNAリガーゼを用いてライゲーション反応により連結する。このライゲーション反応産物とT7ファージ抽出物とを混合してパッケージング反応を行い、組換えT7ファージを作成して大腸菌に感染させる。
感染させた大腸菌をLBプレートに蒔いて、出現するプラークが蛍光を発することにより、蛍光タンパク質が正確に折り畳まれて発現する組換えT7ファージを得られることを確認する。そして、この蛍光を発する組換えT7ファージの感染性を、さらに大腸菌に感染させて液体培地中で増殖させ、溶菌を確認してから溶菌物を遠心して、上清中のファージ液が蛍光を発することにより確認する。
本発明の組換えT7ファージは、1ファージ分子あたり18個の蛍光タンパク質が発現するため、蛍光強度が強く、しかもすべてのファージに必ず同じ数の蛍光タンパク質が発現するため、正確な一定の蛍光強度によるスクリーニングを実現できる。
本発明の組換えT7ファージは、当技術分野において周知の選択またはスクリーニングのためのポリペプチドファージディスプレイに、使用することができる。本発明の組換えT7ファージは、ある特定の細胞タイプのcDNAライブラリに由来するポリペプチドを、ファージ粒子の集団(またはライブラリ)として提示するのに使用することができる。それぞれのファージ粒子は、cDNAライブラリに1つのクローンによりコードされるポリペプチドを提示する。次いでファージ粒子は、関心対象の分子であるターゲットとの親和性相互作用に基づいて選択することができる。
本発明の組換えT7ファージは、ライブラリ部分のランダムペプチドを発現する頭部キャプシド部分とは異なる尾部部分に、蛍光タンパク質が発現することから、ターゲットに対する結合の立体障害を生じることなく、ファージディスプレイ法で重要な要素であるターゲットとの結合の見逃しが起きない。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
T7 Select 415−1b DNAを制限酵素SfiIおよびPmlI(New England Biolab社製)で切断して、33.3kb、2.1kb、1.9kbの3本のDNA断片を得た。概略を図1に示す。この3本のDNAフラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離し(結果を図2に示す。)、電気泳動後、ゲルから各フラグメントのそれぞれのバンドを切り出し、以下のように精製した。
33.3kbフラグメントは、GeBAflex−tube Dialysis Kit(MW:3500、WACO社製)を用いて、切り出したゲル片から電気泳動による溶出(100V,2h,4℃)を行い、回収した溶出液からエタノール沈殿により33.3kbDNAを得た。1.9kbフラグメントは、QIAGEN Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて通常の方法で溶出精製した。得られた各精製DNAフラグメントの純度をアガロース電気泳動で確認した。
T7ゲノムのTail fiber protein(gp17)の3´末端に、GSスペーサー配列(GGGGSGGGGSGGGGS)を介してsuperfolderGFPを連結した融合タンパクTail fiber−sfGFP(gp17−sfGFP)の遺伝子を設計した。Gp17配列内のSfiIサイトからgp17下流T7ゲノム上のPmlIサイトまでの約2.9kbフラグメント(中ほどにGSスペーサーおよびsfGFP遺伝子を含む)を、以下のオーバーラップ伸長PCRを行うことにより調製した。この調製方法を図3に示す。
2.9kbを約1kbずつの3本のフラグメント(A、B、C)に分けて設計し、それぞれ5´および3´末端に30bpのオーバーラップ配列を配置して、A、B、Cの3本のDNAフラグメントを化学合成によって調製した。フラグメントAとBのオーバーラップ伸長PCR産物A+B(5´Primer GTAGGTCAGGCCGTTGTGG(配列番号1)、3´Primer TAATCCTATCAGTGCTCCCTTCC(配列番号2))と、フラグメントCを用いてさらにオーバーラップ伸長PCR(5´Primer GTAGGTCAGGCCGTTGTGG(配列番号1)、3´Primer GTTCTCTTCACGTGTCCTTGGGTACAG(配列番号3))を行い、目的の2.9kb産物を得た。各PCR産物はアガロースゲル電気泳動を行って該当するバンドを切り出し、Gel Extraction Kitを用いて溶出精製した。精製した2.9kbフラグメントの5´および3´末端を制限酵素SfiIおよびPmlIにて消化し、再度アガロースゲル電気泳動を行って(結果を図4に示す。)、Gel Extraction Kitを用いて溶出精製した。
実施例1で精製したT7ゲノムDNAのSfiIおよびPmlI切断産物である33.3kb、1.9kbの2本のフラグメントと、オーバーラップ伸長PCR産物である2・9kbフラグメントの、合計3本のフラグメントを、T4 DNA ligase(Ligation High Ver.2,TOYOBO社製)を用いて ライゲーション反応により連結した。ライゲーション反応産物の概略を図5に示す。in vitro T7 Packaging Kit(Merk Millipore社製)を用いて、ライゲーション反応産物とT7ファージ抽出物とのパッケージング反応を行い(室温2時間)、対数増殖期に達した大腸菌 BL21(Merk Millipore社製)に感染させた。
感染させたBL21をTOP agaroseと混和してLBプレートに蒔き、出現したプラークが蛍光を発することを、実体顕微鏡による蛍光観察で、肉眼で観察して確認した。この実体顕微鏡写真を図6に示す。採取したプラークをファージ抽出緩衝液(20mM Tris−HCl,100mM NaCl,6mM MgSO,pH8.0)とインキュベート(4℃、3h)し、少量のクロロホルムと転倒混和後、遠心(3,000×g,5分)して上清を採取し、ファージ抽出液を得た。抽出したファージ液の蛍光を実体顕微鏡下でさらに確認後、抽出したファージDNAを鋳型にしてPCRを行い(5‘Primer TCAGATAACAACAATGACTGTACCTTCCAC(配列番号4)、3‘Primer TCTTCACGTGTCCTTGGGTACAGAGC(配列番号5))、gp17−sfGFPが予想する分子量および単一バンドであること確認し、GSスペーサーおよびsfGFP配列がT7ゲノムDNAgp17の3´末端に挿入されていることを確認した。
次に、得られたファージのゲノムDNAの塩基配列解析を行い、T7gp17−sfGFPファージが生成されたことを塩基配列レベルで確認した。このT7gp17−sfGFPファージを第1世代とし、さらに大腸菌BL21に感染させて液体培地(L−Broth)中で増殖させて、溶菌を確認したのち遠心(8,000×g,10分)し、上清を採取することによりT7gp17−sfGFPファージを得た(第2世代)。得られたT7gp17−sfGFPファージ液の蛍光を実体蛍光顕微鏡下で確認し、上記第1世代同様、これを鋳型にしてPCRを行い、gp17−sfGFに該当する単一バンドを確認後、さらにゲノムDNAの塩基配列解析を行って、世代を経たファージ増殖後もT7gp17−sfGFPが、ゲノム上の設計通りの位置に継代されていることを確認した。
上記のように、作成したファージにsfGFPの蛍光が認められることから、sfGFPは正しくフォールディングされてファージに組み込まれていることが予想された。また、上記のシークエンス解析によって、sfGFPはgp17にインフレームで組み込まれていることが判明した。そこで、タンパク質レベルで設計どおりに翻訳されているかどうかを以下のように調べた。作成したgp17−sfGFPファージをSDS−PAGEおよびウエスタンブロットにより抗GFP抗体で検出し、検出されるバンドの分子量が、gp17タンパク質+GSスペーサー+sfGFPの総和分子量の約90kDa付近に認められるかどうかを調べた。
コントロールサンプルとして、gp17−GSスペーサー−sfGFPタンパク質のみを大腸菌で作らせ、蛍光を発することを確認したのち、上記T7gp17−sfGFPファージと同様に、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットして抗GFP抗体で検出した。結果は、大腸菌で作成したgp17−GSスペーサー−sfGFPタンパク質と、T7gp17−sfGFPファージとで同じ約90kDa付近に抗GFP抗体で認識されるバンドが検出された(図7)。このことから、上記GFPの蛍光を発するT7gp17−sfGFPファージは、塩基配列レベルおよびタンパク質レベル双方において、設計どおりに構築されていること、そして実際に強い蛍光を認めることから、sfGFPは正しくフォールディングされてT7ファージの尾部繊維タンパク質に組み込まれていることが確認された。
本発明の組換えバクテリオファージT7は、ファージ分子あたりの発現する標識タンパク質である蛍光タンパク質の数が一定であり、数も多くて蛍光強度が高いので、正確な一定の蛍光強度によるスクリーニングを実現することができる。
また、本発明の組換えファージをファージディスプレイに使用する場合に、ライブラリ部分のランダムペプチドを発現するキャプシド部分とは異なる構造部分に蛍光タンパク質等が発現することから、ターゲットに対する結合の立体障害を生じることなく、ファージディスプレイ法で重要な要素であるターゲットとの結合の見逃しが起きないという優れた効果を有する。
本発明の蛍光ファージは、自身の放つ蛍光によってリアルタイム検出ができるので、従来法のELISAなどを用いた間接的で時間と手間のかかるファージ検出法を省略できるのみならず、先行研究のように蛍光タンパク質をヘルパープラスミドを用いた大腸菌による過剰発現でファージに付加しないので、スクリーニングにおけるパニングの過程で、選択したファージを複製・増幅するラウンドごとに、未結合蛍光タンパク質と目的の蛍光を発するファージとを分離する手間もかからない。選択増幅したすべてのファージに蛍光タンパク質が間違いなく結合しているかを、ラウンドのたびに検証する必要がなく、一定強度のファージの極めて迅速かつ正確な選択増幅によるスクリーニングを実現できる。
さらに、非特許文献2では、蛍光タンパク質とT7キャプシドタンパク質の融合タンパク質をヘルパープラスミドを用いて大腸菌による過剰発現でファージに付加しているが、この方法では、野生型のT7キャプシドタンパク質をさらに大過剰に同時に発現させることがファージ生成に必須であり、このことにより、実際は全ファージの一部にしか蛍光タンパク質が入らない(6%〜16%)。すなわち、この方法を用いると、スクリーニングにより選択して得た陽性ファージ群を次のスクリーニングのラウンドのために複製・増幅しても、全ファージの一部(6%〜16%)にしか蛍光が入らず、残りの大部分(84%〜94%)は選択済みの陽性ファージ集団であるにも関わらず、蛍光の無いファージである。選択したファージは、元々ランダムペプチドライブラリから選択したヘテロな配列のファージ集団なので、この蛍光が入らなかった84%〜94%のファージ群の中に、最も目標とする配列を持つファージが含まれてしまう可能性は極めて高く、蛍光タンパク質を大腸菌による過剰発現で付加する方法では、目標とするペプチド配列を持つファージを見逃す可能性が高い。
しかも、6%〜16%の蛍光が入ったファージ群でも、有する蛍光タンパク質は1ファージ当たり1個から最大3個相当なので、前述のように蛍光そのものが弱く強度が一定していないので、スクリーニングには適さない。本発明では、スクリーニングで選択したファージは、選択と増幅のラウンドを重ねてもすべてのファージに蛍光が入った状態で増幅され、陽性ファージの取りこぼしがない。すべてが一定数18個の蛍光タンパク質を有し、極めて高度の蛍光強度を有することからも、スクリーニングに極めて有用である。

Claims (7)

  1. 組換えバクテリオファージT7であって、バクテリオファージT7のゲノムのgp17遺伝子領域に、標識タンパク質をコードする遺伝子が発現可能に挿入されていることを特徴とする、組換えバクテリオファージT7。
  2. 前記標識タンパク質が、蛍光タンパク質または発光または呈色反応を触媒する酵素である、請求項1に記載の組換えバクテリオファージT7。
  3. 前記蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)であり、前記発光または呈色反応を触媒する酵素が、ルシフェラーゼ、β−グルクロニダーゼ(GUS)、β−ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼのいずれか一つである、請求項2に記載の組換えバクテリオファージT7。
  4. 前記標識タンパク質の遺伝子が、gp17遺伝子コード領域末端近傍に挿入されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の組換えバクテリオファージT7。
  5. 前記gp17遺伝子コード領域末端近傍が、3´末端領域である、請求項4に記載の組換えバクテリオファージT7。
  6. 組換えバクテリオファージT7が、宿主細胞に感染後の細胞質におけるファージ複製の間に、前記蛍光タンパク質の遺伝子または発光または呈色反応を触媒する酵素の遺伝子を発現して、活性を有する蛍光タンパク質または発光または呈色反応を触媒する酵素生成物を生じる、請求項2に記載の組換えバクテリオファージT7。
  7. 組換えバクテリオファージT7であって、バクテリオファージT7のゲノムのgp17遺伝子領域に、標識タンパク質の遺伝子が発現可能に挿入されている組換えバクテリオファージT7を、ファージディスプレイに使用する方法。

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