以下、図面を参照して、キュベット搬送装置及び自動分析装置の実施形態について詳細に説明する。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
(第1の実施形態)
図1を参照して、第1の実施形態に係る自動分析装置の構成について説明する。図1A、図1B及び図2は、第1の実施形態に係る自動分析装置100の構成の一例を示す図である。なお、図1Aは、自動分析装置100の上面図である。図1Bは、自動分析装置100の回転整列機構13の上面図である。図2は、自動分析装置100の側面図である。なお、図1A及び図2は、自動分析装置100を模式的に示す図である。また、図1Bは、回転整列機構13を模式的に示す図である。ここで、図1Aでは、回転整列機構13の整列板13e、押圧機構13c及び後述する貯留ユニット60、接触センサ13h及び制御回路13iの図示が省略されている。また、図1Bでは、自動分析装置100の回転整列機構13の一部のみが示されている。また、図2では、回転整列機構13の複数の構成のうち整列板13e以外の構成、並びに、後述する分注ユニット52、測定ユニット53、接触センサ13h及び制御回路13iの図示が省略されている。
図1A、図1B及び図2に示すように、自動分析装置100は、キュベット搬送装置10と、測光ユニット50と、貯留ユニット60とを有する。
貯留ユニット60は、投入された複数のキュベット70を貯留する。キュベット搬送装置10は、貯留ユニット60に貯留されたキュベット70を測光ユニット50に搬送する。図1A、図1B及び図2に示すように、キュベット搬送装置10は、供給ユニット11、移送ユニット12、回転整列機構13及び挿入機構14を備える。
供給ユニット11は、貯留ユニット60に貯留されているキュベット70を次々に貯留ユニット60の外へ排出し、移送ユニット12に供給する。なお、貯留ユニット60から排出された時点では、キュベット70の向きは、ばらつきがある。このため、このままの向きの状態で、測光ユニット50に挿入されると、全てのキュベット70の向きが測光可能な向きとはならない。なお、測光可能な向きとは、例えば、測光ユニット50により測光されることにより得られた光量に基づいて分析された分析結果の信頼性が、所定の基準以上となる場合のキュベット70の向きを指す。
移送ユニット12は、供給ユニット11により供給されたキュベット70を次々に回転整列機構13に移送する。移送ユニット12の詳細については後述する。
回転整列機構13は、移送ユニット12により移送されたキュベット70を保持しながら回転することで、キュベット70の向きが測光可能な向きとなるようにキュベット70の向きを調整する。本実施形態では、「キュベット70の向きを調整すること」を、「キュベット70の向きを回転整列させる」と表現する場合がある。回転整列機構13は、回転保持機構13aと押圧機構13cとを有する。
回転保持機構13aは、キュベット70を保持しながら回転する。回転保持機構13aは、円板状の部材である。回転保持機構13aには、キュベット70を保持可能な複数(2つ)の保持ガイドが、回転保持機構13aの周方向に沿って180度分離間して形成されている。すなわち、回転保持機構13aは、キュベット70を複数保持可能である。以下の説明では、回転保持機構13aの保持ガイドを「第1保持ガイド」と表記する。回転保持機構13aは、鉛直方向と平行な中心軸13bを回転軸として回転する。例えば、キュベット70を保持していない第1保持ガイドが、移送ユニット12の終端に対向する位置(搬入位置)13yに到達した場合に、移送ユニット12から移送されたキュベット70が第1保持ガイドに嵌め込まれる。そして、その状態から、回転保持機構13aは180度回転して、挿入機構14によるキュベット70の測光ユニット50への挿入が可能な位置(搬出位置)13zに、第1保持ガイドに嵌め込まれたキュベット70を移動させる。このように、回転保持機構13aは、貯留ユニット60から搬送されたキュベット70を搬入位置13yで保持し、キュベット70を搬出位置13zまで保持しながら回転する。なお、搬出位置13zとは、例えば、キュベット70を測光ユニット50に運び出すことが可能な位置である。具体的には、例えば、搬出位置13zとは、挿入機構14の後述する押し込み部材14aを通る線分であって鉛直方向に延びる線分と、回転保持機構13aの上面とが交差する位置である。すなわち、搬出位置13zとは、押し込み部材14aの鉛直方向下側の位置でもある。
ここで、移送ユニット12から移送されたキュベット70が、回転保持機構13aの第1保持ガイドに嵌め込まれる際に、移送ユニット12の最も終端側に位置するキュベット70(すなわち、次に第1保持ガイドに嵌め込まれる予定のキュベット70)と接触する場合がある。この場合には、接触により、キュベット70の向きが測光可能でない向きとなり、第1保持ガイドに、測光可能でない向きのままの状態でキュベット70が嵌め込まれる場合がある。この場合には、その後、測光可能でない向きでキュベット70が測光ユニット50に挿入されると、機械的なエラーとなり、自動分析装置100全体の動作が停止される。
上述したような、他のキュベットとの接触によりキュベットの向きが変わってしまうような問題は、以下のような構成を採用した場合であっても同様に発生しうる。例えば、キュベットの断面形状を長方形にしてキュベットの向きを測光可能な向きにしやすい構成を採用したり、キュベットの断面形状が円形である場合には、キュベットの頂部を構成する平面を直線ガイドでスライド接触させる整列機構を採用したりする場合であっても、上述した問題は、同様に発生しうる。
そこで、第1の実施形態では、測光ユニット50に挿入されるキュベット70の向きが測光可能でない向きになることを抑制するために、キュベット搬送装置10の回転整列機構13が、押圧機構13cを有する。
図1Bに示すように、押圧機構13cは、整列板13e、回転軸13f及びバネ13mを有する。整列板13eは、上面視で概ね長方形となる板状の部材である。ただし、整列板13eは、短手方向の一端側の側面の一部に、回転保持機構13aの周面に概ね沿って窪んだ押圧面13gを有する。例えば、押圧面13gは、整列板13eの短手方向の一端側の側面の長手方向における中央部に設けられる。なお、例えば、押圧面13gの曲率半径は、回転保持機構13aの周面の曲率半径よりも少しだけ大きい。
本実施形態では、回転保持機構13aにより保持されたキュベット70が回転保持機構13aの回転により整列板13eに近づいたときに、キュベット70と押圧面13gとが接触するように、整列板13eが配置される。
また、整列板13eは、長手方向の一端側に設けられた回転軸13f周りを回転可能である。また、整列板13eの短手方向の一端側の側面の全領域のうち、長手方向の他端側の領域には、バネ13mの一端が取り付けられている。
回転軸13fは、鉛直方向と平行な軸であり、整列板13eを回転可能に支持する。バネ13mの他端は、自動分析装置100の図示しない部位に取り付けられている。整列板13eは、バネ13mにより、回転保持機構13a側に付勢される。例えば、整列板13eは、バネ13mにより、整列板13eの重心から、回転保持機構13aの重心を通り鉛直方向に延びる線分上の整列板13eの重心の高さと同じ位置に向かう方向(矢印82が示す方向)に付勢される。
このように、整列板13eには、矢印82が示す方向の付勢力が働いているため、矢印81が示す円周方向に回転中の回転保持機構13aに保持されているキュベット70のうち、押圧面13gと接触しているキュベット70には、押圧面13gにより押圧される。すなわち、整列板13eは、回転保持機構13aにより保持されたキュベット70の後述する頂部70bを矢印82が示す方向に押圧する。このような押圧により、図1Bに示すように、例えば、キュベット70の頂部70bを構成する平面のうちの1つの平面70e_2が、矢印82が示す方向に対して垂直となる(直交する)ように、キュベット70の向きが回転整列される。本実施形態では、このようにして回転整列されたキュベット70の向きは、測光ユニット50により測光可能な向きである。
なお、同様に、キュベット70の頂部70bの後述する他の平面70e_1,70e_3,70e_4のそれぞれが、矢印82が示す方向に対して垂直となるように回転整列されたキュベット70の向きも、測光ユニット50により測光可能な向きである。
そして、回転整列されたキュベット70が挿入機構14により測光ユニット50へ挿入されると、回転保持機構13aは、キュベット70を保持していない状態となった第1保持ガイドが、搬入位置13yに位置するように、更に、180度分回転する。このようにして、回転保持機構13aは、移送ユニット12から移送されるキュベット70を搬入位置13yで次々に保持し、搬出位置13zに移動させる。
なお、キュベット70を保持している第1保持ガイドが、搬入位置13yに到達した場合には、回転保持機構13aは、移送ユニット12から移送されたキュベットを保持することなく、既に保持しているキュベット70を保持し続ける。このため、第1保持ガイドがキュベットを保持しない状態となるまでは、一時的に、移送ユニット12にキュベット70が滞留する状態となる。
挿入機構14は、回転整列機構13によって回転整列された向きのままキュベット70を測光ユニット50に挿入する。例えば、挿入機構14は、回転保持機構13aに保持されたキュベット70が測光可能な向きで搬出位置13zに配置された場合には、キュベット70を測光可能な向きのまま測光ユニット50に挿入する。すなわち、挿入機構14は、キュベット70が搬出位置13zに到達した状態で、回転整列機構13によって回転整列されたキュベット70を測光ユニット50に挿入する。挿入機構14は、押し込み部材14a及び駆動部14bを有する。
押し込み部材14aは、棒状の部材である。押し込み部材14aの長手方向が鉛直方向と一致し、かつ、鉛直方向に移動可能なように押し込み部材14aが挿入機構14の本体に支持される。
駆動部14bは、モータ及びアクチュエータなどの駆動機構を備え、押し込み部材14aを鉛直方向に移動させる。例えば、駆動部14bは、後述する制御回路13iからの指示に基づいて、押し込み部材14aを鉛直方向下側に移動させる。押し込み部材14aが鉛直方向下側に移動されることで、押し込み部材14aの鉛直下側に配置されたキュベット70が押し込み部材14aにより測光ユニット50の保持ユニット51側に押し込まれる。このように、キュベット70が押し込み部材14aにより押し込まれることで、キュベット70の鉛直方向下側に位置する保持ユニット51の保持ガイドに、押し込み部材14aにより押し込まれたキュベット70が挿入される。押し込み部材14aは、キュベット70を押し込むための鉛直方向下側に移動する動作を行った後は、移動前の元の位置に復帰するために鉛直方向上側に移動する。
ここで、本実施形態に係る挿入機構14は、搬出位置13zに配置されたキュベット70の向きが測光可能な向きである場合に、保持ユニット51にキュベット70を挿入する。一方、挿入機構14は、搬出位置13zに配置されたキュベット70の向きが測光可能でない向きである場合には、保持ユニット51にキュベット70を挿入しない。このような動作の詳細については後述する。
測光ユニット50は、キュベット搬送装置10により搬送されたキュベット70に試料及び試薬を投入し、試料及び試薬の混合液を含むキュベット70に光を照射し、キュベット70を透過した光の光量を測定する。例えば、自動分析装置100が臨床検査用の自動分析装置である場合には、試料として、血液や尿などの生体試料が投入される。そして、測定された光量に基づいて、図示しない分析装置により試料の定量分析が行われる。例えば、分析装置により、測定対象物質の濃度や活性値、又は、変化に要する時間などが分析される。
測光ユニット50は、保持ユニット51、分注ユニット52及び測定ユニット53を有する。
保持ユニット51は、キュベット70を保持しながら回転する。保持ユニット51は、円板状の部材である。保持ユニット51には、キュベット70を保持可能な複数の保持ガイドが、保持ユニット51の周方向に沿って形成されている。なお、図1Aに示す円形の破線は、周方向に形成された複数の保持ガイドに保持された複数のキュベット70を示す。以下の説明では、保持ユニット51の保持ガイドを「第2保持ガイド」と表記する。保持ユニット51は、鉛直方向と平行な中心軸51aを回転軸として回転する。
例えば、第2保持ガイドが、上述した搬出位置13zに配置されたキュベット70の鉛直方向下側に位置すると、上述した挿入機構14により、キュベット70が第2保持ガイドに嵌め込まれる。
そして、保持ユニット51は、キュベット70を保持したまま、分注ユニット52による試料の分注が可能な位置(試料分注位置)86及び試薬の分注が可能な位置(試薬分注位置)87にキュベット70が配置されるように回転する。そして、保持ユニット51は、分注ユニット52により試料及び試薬が分注されたキュベット70を保持したまま、測定ユニット53による光量の測定が可能な位置(測定可能位置)88にキュベット70が配置されるように回転する。なお、光量の測定が完了したキュベット70は、図示しない取り出し機構により保持ユニット51から取り出されて、廃棄される。
分注ユニット52は、試料分注位置86に配置されたキュベット70に試料を分注する。その後、分注ユニット52は、試料が分注され、かつ、試薬分注位置87に配置されたキュベット70に試薬を分注する。このように、分注ユニット52は、キュベット70に試料を分注した後に試薬を分注するが、キュベット70に試薬を分注した後に試料を分注するように構成されてもよい。測定ユニット53は、試料及び試薬が分注され、かつ、測定可能位置88に配置されたキュベット70に光を照射し、キュベット70を透過した光の光量を測定する。
次に、図3〜6を参照して、本実施形態に係るキュベット70の一例について説明する。図3は、第1の実施形体に係るキュベット70の斜視図である。図4は、第1の実施形態に係るキュベット70の上面図である。図5は、第1の実施形態に係るキュベット70の正面図である。図6は、第1の実施形態に係るキュベット70の側面図である。
図3に示すように、キュベット70は、上面が開口した有底円筒状の部材である。キュベット70は、胴体部70a、頂部70b及びフランジ70cを有する。
胴体部70aは、上面が開口した有底円筒状の部材である。図3〜6に示すように、胴体部70aは、複数(4つ)の測光部位70f_1〜70f_4を有する。複数の測光部位70f_1〜70f_4のそれぞれは、平面である。複数の測光部位70f_1〜70f_4のそれぞれは、測定ユニット53からの光が照射される部位である。
図3及び図4に示すように、頂部70bは、中空の角筒状の部材である。頂部70bは、キュベット70(胴体部70a)の開口70c_1側に設けられる。頂部70bは、複数(4つ)の平面70e_1〜70e_4を有する。複数の平面70e_1〜70e_4は、フランジ70cの上面に対して垂直な方向に延びるように、フランジ70cの上面に立設している。
平面70e_1は、測光部位70f_1に平行である。同様に、平面70e_2は、測光部位70f_2に平行であり、平面70e_3は、測光部位70f_3に平行であり、平面70e_4は、測光部位70f_4に平行である。したがって、測光部位70f_1は、平面70e_1に対応し、測光部位70f_2は、平面70e_2に対応し、測光部位70f_3は、平面70e_3に対応し、測光部位70f_4は、平面70e_4に対応する。
また、図4に示すように、上面視で、頂部70bの形状は略角型である。したがって、フランジ70cの上面と平行な面で切断することにより得られる頂部70bの断面も略角型である。
フランジ70cは、円環状の部材である。フランジ70cは、頂部70bの底側に設けられる。また、試料及び試薬が胴体部70aに投入可能なように、フランジ70cの中央部に、フランジ70cの上面から下面に亘って孔が形成されている。フランジ70cの外径は、胴体部70aの外径よりも大きい。
ここで、本実施形態では、測定ユニット53の光を出射する光出射部に対して、4つの測光部位70f_1〜70f_4のいずれかが対向すれば、測光ユニット50により測光されることにより得られた光量に基づいて分析された分析結果の信頼性が、所定の基準以上となる。したがって、本実施形態では、測光を可能にするためのキュベット70の向きは、1つではなく、4つある。
次に、図7を参照して、本実施形態に係る移送ユニット12の一例について説明する。図7は、第1の実施形態に係る移送ユニット12の一例を説明するための図である。例えば、移送ユニット12は、図7に示すように、2つのレール12a,12bを有する。2つのレール12a,12bは、供給ユニット11により供給されたキュベット70を回転整列機構13に移送する。
例えば、2つのレール12a,12bは、供給ユニット11から回転整列機構13に向けて延びるレールである。そして、2つのレール12a,12bは、水平方向に、所定距離だけ離間して平行して配置されている。ここで、所定距離は、フランジ70cの外径よりも小さく、胴体部70aの外形よりも大きい距離である。
また、2つのレール12a,12bは、回転整列機構13に近づくにつれて低くなるように、傾斜している。すなわち、2つのレール12a,12bの始端は、終端よりも鉛直方向において高い位置に位置する。
本実施形態では、レール12aとレール12bとの間に胴体部70aが配置される。そして、図7に示すように、レール12a及びレール12bは、フランジ70cを摺動可能に支持する。このような構成のもと、キュベット70は、キュベット70の自重により、レール12a及びレール12bに沿って回転整列機構13に向けて移動する。
ここで、図7に示すように、移送ユニット12による移送方向において隣接する2つのキュベット70に着目すると、後方のキュベット70のフランジ70cが前方のキュベット70の頂部70bを押すことで、移動している最中に各キュベット70の向きが、概ね、レール12a,12bに沿う向きとなるように回転整列される。すなわち、移送ユニット12は、一のキュベット70の頂部70bに、一のキュベット70の後続の他のキュベット70のフランジ70cが接触した状態で、各キュベット70を回転整列機構13に移送する。なお、レール12a,12bに沿う向きとは、例えば、レール12a,12bが延びる方向に対して、キュベット70の平面70e_1〜70e_4のうちいずれかの平面が直交するような向きを言う。このように、本実施形態では、移送ユニット12が、概ね、レール12a,12bに沿う向きとなるように、各キュベット70の向きを回転整列させる。このように、移送ユニット12において、ある程度、各キュベット70の向きを揃えておくことで、上述した回転整列機構13において各キュベット70が測光可能な向きとなるように回転整列されやすくなる。したがって、移送ユニット12は、間接的ではあるものの、貯留ユニット60から非回転整列状態で排出されたキュベット70の向きを測光可能な向きに回転整列させる。ただし、移送ユニット12により全てのキュベット70の向きが、レール12a,12bに沿う向きとなるように回転整列されるとは限らない。
図8,9は、第1の実施形態のキュベット搬送装置10の動作の一例を説明するための図である。キュベット搬送装置10は、上述した各構成要素に加えて、図8に示すように、接触センサ13h及び制御回路13iを有する。
図8には、搬入位置13yにおいて測光可能でない向きでキュベット70が回転保持機構13aにより保持されたものの、その後、押圧機構13cによりキュベット70の向きが測光可能な向きに回転整列された場合が示されている。すなわち、図8には、回転整列機構13が、キュベット70が整列板13eにより押圧されながら回転することで、矢印82が示す方向に対して頂部70bの平面(4つの平面70e_1〜70e_4のうちいずれかの平面)が垂直となるようにキュベット70の向きを回転整列させる場合が示されている。なお、矢印82が示す方向は、バネ13mにより整列板13eに働く付勢力の方向でもあるが、整列板13eがキュベット70の頂部70bに加える押圧力の方向(所定方向)である。このように、回転整列機構13では、整列板13eがキュベット70の頂部70bを押圧しながら、回転保持機構13aが回転する。これにより、キュベット70は、搬出位置13zに到達するまでに回転保持機構13a上で回転整列する。
図8に示す場合には、回転保持機構13a(第1保持ガイド)がキュベット70を同じ向きのまま保持しようとする力よりも、付勢力のほうが強いため、整列板13eがほとんど接触センサ13h側に移動せず、整列板13eと接触センサ13hとが接触しない。
一方、図9には、搬入位置13yにおいて測光可能でない向きでキュベット70が回転保持機構13aにより保持され、その後、押圧機構13cによりキュベット70が押圧されたものの、キュベット70の向きが測光可能でない向きのままである場合が示されている。なお、図9では、バネ13mの図示が省略されている。
図10は、図9に示す場合のキュベット70の拡大図である。図9及び図10に示すように、平面70e_1と平面70e_2とを連結する角部70gと押圧面13gとが接触しているが、押圧面13gによる押圧によっても、キュベット70の向きが測光可能な向きとならない。これは、整列板13eに働く付勢力よりも、回転保持機構13aがキュベット70を同じ向きのまま保持しようとする力のほうが強いからである。図9に示すような場合には、図8に示す場合よりも、キュベット70の頂部70bにより整列板13eが接触センサ13h側に押し込まれる(押圧される)。このため、整列板13eが接触センサ13h側に移動し、整列板13eと接触センサ13hとが接触する。すなわち、整列板13eは、整列板13eに当接するキュベット70が回転整列されない場合に、キュベット70の頂部70bにより押圧されて、矢印82が示す方向とは逆方向に移動する。
接触センサ13hは、整列板13eとの接触を検知することにより、整列板13eの矢印82が示す方向とは逆方向の移動を検知する。図9に示すように、接触センサ13hは、整列板13eと接触している場合には、接触したことを示す信号を制御回路13iに送信する。また、図8に示すように、接触センサ13hは、整列板13eと接触していない場合には、接触していないことを示す信号を制御回路13iに送信する。接触センサ13hは、検知部の一例である。
ここで、接触センサ13hの配置位置について説明する。例えば、接触センサ13hは、図8に示すように整列板13eによってキュベット70の向きが測光可能な向きに回転整列される場合に整列板13eと接触せずに、かつ、図9に示すように整列板13eによってキュベット70の向きが測光可能な向きに回転整列されない場合に整列板13eと接触するような位置に配置される。
制御回路13iは、駆動部14bを介して、押し込み部材14aの移動を制御する。例えば、制御回路13iは、接触センサ13hから送信された信号が接触していないことを示す場合には、キュベット70を保持ユニット51側に押圧する指示(挿入指示)を駆動部14bに送信する。これにより、駆動部14bは、押し込み部材14aを鉛直方向下側に移動させて、押し込み部材14aにキュベット70を押圧させる。この結果、キュベット70の鉛直方向下側に位置する保持ユニット51の第2保持ガイドに、押し込み部材14aにより押し込まれたキュベット70が挿入される。
一方、制御回路13iは、接触センサ13hから送信された信号が接触していることを示す場合には、上述した挿入指示を駆動部14bに送信せずに、待機する。この場合、回転保持機構13aの回転によりキュベット70が整列板13eから一旦離れた後、再び、整列板13eに近づいて、整列板13eにより押圧される動作が、キュベット70の向きが測光可能な向きになるまで繰り返される。すなわち、回転保持機構13aは、接触センサ13hにより整列板13eの矢印82が示す方向とは逆方向の移動が検知された場合、搬出位置13zで挿入機構14により測光ユニット50に挿入されなかったキュベット70を保持したまま、搬入位置13yを経由して、搬出位置13zまで再び回転することを、キュベット70の向きが測光可能な向きになるまで繰り返す。
例えば、図9に示すように、回転保持機構13aが矢印83が示す円周方向に回転するに伴い、キュベット70も搬出位置13zから矢印83が示す円周方向に沿って移動する。ここで、キュベット70が搬出位置13zから円周方向に移動するにつれて、一定の範囲では、キュベット70と押圧面13gとの接触位置が回転軸13fに徐々に近づく。このため、一定の範囲では、キュベット70への押圧面13gによる押圧力が徐々に大きくなる。したがって、一定の範囲内で、キュベット70の向きが測光可能な向きになる場合もある。また、一定の範囲内でキュベット70の向きが測光可能な向きにならなくても、キュベット70が、一旦整列板13eから離れた後、再度、整列板13eにより押圧されることで測光可能な向きとなる場合もある。
そして、上述したような方法でキュベット70の向きが測光可能な向きとなるように回転整列された上で、測光可能な向きのキュベット70が、保持ユニット51に挿入される。第1の実施形態では、挿入機構14は、接触センサ13hにより整列板13eの矢印82が示す方向とは逆方向の移動が検知されない場合に、キュベット70を測光ユニット50に挿入する。例えば、挿入機構14は、キュベット70が搬出位置13zに到達した状態で、整列板13eに当接するキュベット70の頂部70bの平面が、矢印82が示す方向に対して垂直となる場合、キュベット70を測光ユニット50に挿入する。したがって、第1の実施形態によれば、測光ユニット50に挿入されるキュベット70の向きが測光可能でない向きとなることを抑制することができる。
制御回路13iは、例えば、プロセッサにより実現される。なお、「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
図11は、第1の実施形態に係る制御回路13iが実行する処理の流れを示すフローチャートである。図11に示すように、制御回路13iは、接触センサ13hから送信される信号から、整列板13eが移動したか否かを判定する(ステップS101)。
例えば、制御回路13iは、接触センサ13hから送信された信号が接触していないことを示す場合には、整列板13eが移動していないと判定する。一方、制御回路13iは、接触センサ13hから送信された信号が接触していることを示す場合には、整列板13eが移動したと判定する。
整列板13eが移動していないと判定した場合(ステップS101;No)には、制御回路13iは、キュベット70を保持ユニット51側に押圧する指示を駆動部14bに送信し(ステップS102)、処理を終了する。
また、整列板13eが移動したと判定した場合(ステップS101;Yes)には、制御回路13iは、処理を終了する。
以上、第1の実施形体について説明した。第1の実施形体によれば、上述したように、測光ユニット50に挿入されるキュベット70の向きが測光可能でない向きになることを抑制することができる。
(第1の実施形態の第1の変形例)
次に、第1の実施形態の第1の変形例について説明する。第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する場合がある。図12は、第1の変形例に係る整列板13eの構成例を示す図である。第1の変形例に係る自動分析装置100は、図8に示す整列板13eに代えて、図12に示す整列板13eを備える点が、第1の実施形態に係る自動分析装置100と異なる。
図12に示すように、第1の変形例では、回転保持機構13aの回転方向において搬出位置13z(図8参照)よりも上流側の押圧面13gの部分に、2つの切り欠き13rが形成されている。換言すると、第1の変形例に係る整列板13eは、2つの切り欠き13rが形成された押圧面13gを有する。この切り欠き13rにより、切り欠き13rが形成されていない場合と比較して、キュベット70の頂部70bに加わる押圧力の大きさが大きくなる。なお、切り欠き13rの数は2つに限られず、1つでもよいし、3つ以上の複数でもよい。このため、第1の変形例に係る整列板13eによれば、キュベット70の向きを測光可能な向きにさせる確率が高くなる。
したがって、第1の変形例によれば、測光ユニット50に挿入されるキュベット70の向きが測光可能でない向きになることを更に抑制することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態及び第1の変形例と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する場合がある。図13は、第2の実施形態に係るキュベット搬送装置10の構成の一例を示す図である。
第2の実施形態と第1の実施形態とで異なる点について説明する。図13に示すように第2の実施形態に係るキュベット搬送装置10は、接触センサ13hに代えて、光学式センサユニット40を備える点で、第1の実施形態と異なる。なお、第1の実施形態と同様に、第2の実施形態に係る回転整列機構13は、押圧機構13cを有するが、図13では、押圧機構13cの図示が省略されている。
光学式センサユニット40は、回転保持機構13aにより保持されたキュベット70に光を照射して、キュベット70を透過した光の光量を測定する。光学式センサユニット40は、発光部40a及び受光部40bを備える。光学式センサユニット40は、測定部の一例である。
発光部40aは、制御回路13iの制御を受けて、発光する。例えば、発光部40aは、搬入位置13yに位置するキュベット70に光を照射する。なお、発光部40aは、搬入位置13y以外の位置に位置するキュベット70に光を照射するように構成されてもよい。例えば、発光部40aは、搬出位置13zに位置するキュベット70に光を照射してもよい。図14及び図15は、キュベット70に発光部40aにより光が照射される範囲の一例を示す図である。
例えば、キュベット70が測光可能な向きで回転保持機構13aにより保持されている場合には、測光部位70f_1内の範囲、測光部位70f_2内の範囲、測光部位70f_3内の範囲、及び、測光部位70f_4内の範囲のいずれかの範囲に発光部40aからの光が照射される。例えば、図14に示すように、測光部位70f_1内の範囲84に光が照射される。
一方、キュベット70が測光可能でない向きで回転保持機構13aにより保持されている場合には、4つの測光部位70f_1〜70f_4の範囲外の範囲を含む範囲に発光部40aからの光が照射される。例えば、図15に示すように、4つの測光部位70f_1〜70f_4の範囲外の範囲を含む範囲85に光が照射される。
すなわち、発光部40aは、キュベット70の向きが測光可能な向きであるか否かに応じた範囲(例えば、範囲84,85)に光を照射することが可能な位置に設けられる。発光部40aは、例えば、赤色LED(Light Emitting Diode)又は青色LED等により実現される。
受光部40bは、発光部40aによりキュベット70に照射された光であって、キュベット70を透過した光を受光可能な位置に設けられる。受光部40bは、キュベット70を透過した光を受光し、キュベット70を透過した光の光量を示す信号を制御回路13iに送信する。
ここで、4つの測光部位70f_1〜70f_4のいずれかの測光部位内の範囲に発光部40aからの光が照射された場合の受光部40bにより検出される光量の大きさと、4つの測光部位70f_1〜70f_4の範囲外の範囲を含む範囲に発光部40aからの光が照射された場合の受光部40bにより検出される光量の大きさとは異なる。これは、光が透過する範囲のキュベット70を構成する部材の厚さや形状などが異なるからである。
本実施形態では、4つの測光部位70f_1〜70f_4のいずれかの測光部位内の範囲に発光部40aからの光が照射された場合の受光部40bにより検出される光量の大きさの範囲(特定の範囲)が実験で予め求められている。そして、本実施形態では、制御回路13iが、受光部40bから送信された信号が示す光量が特定の範囲内であるか否かを判定することにより、キュベット70の向きが測光可能な向きであるか否かを判定する。
例えば、制御回路13iは、光量が特定の範囲内である場合には、キュベット70の向きが測光可能な向きであるため、キュベット70を保持ユニット51側に押圧する指示を駆動部14bに送信する。これにより、キュベット70の鉛直方向下側に位置する保持ユニット51の第2保持ガイドに、キュベット70が挿入される。
一方、制御回路13iは、光量が特定の範囲内でない場合には、キュベット70の向きが測光可能でない向きであるため、キュベット70を保持ユニット51側に押圧する指示を駆動部14bに送信せずに、待機する。この場合、第1の実施形態と同様に、回転保持機構13aの回転によりキュベット70が整列板13eから一旦離れた後、再び、整列板13eに近づいて、整列板13eにより押圧される動作が、キュベット70の向きが測光可能な向きになるまで繰り返される。すなわち、回転保持機構13aは、光学式センサユニット40により測定された光量が特定の範囲内でない場合、搬出位置13zで挿入機構14により測光ユニット50に挿入されなかったキュベット70を保持したまま、搬入位置13yを経由して、搬出位置13zまで再び回転することを、キュベット70の向きが測光可能な向きになるまで繰り返す。
図16は、第2の実施形態に係る制御回路13iが実行する処理の流れを示すフローチャートである。図16に示すように、制御回路13iは、受光部40bから送信された信号が示す光量が特定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS201)。
光量が特定の範囲内であると判定した場合(ステップS201;Yes)には、制御回路13iは、キュベット70を保持ユニット51側に押圧する指示を駆動部14bに送信し(ステップS202)、処理を終了する。
また、光量が特定の範囲内でないと判定した場合(ステップS201;No)には、制御回路13iは、処理を終了する。
以上、第2の実施形態について説明した。第2の実施形態では、挿入機構14は、光学式センサユニット40により測定された光量が特定の範囲の場合に、キュベット70を測光ユニット50に挿入する。したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、測光ユニット50に挿入されるキュベット70の向きが測光可能でない向きになることを抑制することができる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態又は少なくとも1つの変形例によれば、測光ユニット50に挿入されるキュベット70の向きが測光可能でない向きになることを抑制することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。