JP2020002095A - 電気化学的手法による修飾タンパク質の製造方法 - Google Patents

電気化学的手法による修飾タンパク質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 酸化剤や触媒を使用せずに、タンパク質を修飾する手段を提供する。【解決手段】 電気化学的手法により、タンパク質の特定の部位に修飾剤を結合させることを特徴とする修飾タンパク質の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、修飾タンパク質の製造方法に関する。本発明は、抗体などのタンパク質に部位特異的に修飾剤を導入できるので、抗体薬物複合体の作製に有用である。
抗体薬物複合体Antibody-Drug Conjugate (ADC)とは抗体と低分子薬物を共有結合で連結した分子であり、抗体に強力な細胞増殖阻害剤(薬物)を結合させがん組織にデリバリーできる技術であるため、次世代のがん治療法として大きな注目を集めている。ADCは米国を中心に開発が盛んに行われており、世界市場規模の予測では2025年に1兆円を超えるとされているが、解決すべき課題も残されている。
ADC開発において重要な項目として、1)高活性な薬物部位の構造、2)血中では安定であるが腫瘍内では薬物を放出できるリンカー構造、3)抗体との結合部位の制御が挙げられる。これまでに1)と2)については研究が盛んに行われ、有用なものが開発されている。3)抗体との結合部位の制御は残された課題であると言え、抗体の構造上に存在する多点の反応点でランダムに起きる有機化学反応(求電子剤-求核性アミノ酸残基の化学)を利用して薬物と抗体を共有結合させる手法が用いられてきた。しかし、この手法では抗体上の薬物の結合部位と薬物抗体比(drug-to-antibody ratios, DAR)を制御できないという課題を抱えている。実際に、これまでに上市されている薬物や現在臨床試験段階にある多くのADCは化学修飾を用いた手法によって作製されているが、DARの制御や部位特異的な抗体の化学修飾は現在も困難な課題である。具体的な例として、現在上市されている抗HER2のADCであるKadcylaTMを挙げると、抗HER2抗体のトラスツズマブの構造に存在するリジン(Lys)残基に対してランダムな箇所で0〜7個のリンカー-薬物が結合されたもの(平均結合個数 :DAR=3.5)である。
抗体はその構造に由来する機能(抗原結合能、血中安定性、エフェクター細胞との結合能等)を有しており、ADCにおいては、これらの機能を損なわずに薬物を結合させる必要が有るため、薬物の結合位置の制御は重要な課題である。近年では、遺伝子工学的に望みの位置に、反応性の官能基を導入し、クリック反応と呼ばれる生体直交性の共有結合形成手法により抗体の部位特異的な薬物結合が可能になっている。しかし、これらの手法は、工業プロセスに求められる大量生産化が困難であるという欠点がある。そのため、理想的なADC作製技術は従来の様に既に製造法が確立された抗体医薬に対して有機化学反応で修飾を施しつつ、部位特異性を制御する技術であり、そのためには、有機化学的な革新的反応開発による新規バイオコンジュゲ―ション法(生体由来分子を化学修飾する手法)の確立が望まれている。
本発明者は従来のバイオコンジューション法で汎用される、求電子的な手法とは異なるタンパク質を修飾する手法を開発している。この手法では一電子酸化的に活性化し、タンパク質のチロシン(Tyr)残基とだけ特異的に共有結合を形成するような試薬(ルミノール誘導体)を開発した(非特許文献1、特許文献1)。また、触媒としてhorseradish peroxidase (HRP)を用いることで、現時点で反応の効率面、Tyr残基の選択性の面で世界最高クラスのバイオコンジュゲーション法(Tyrosine Click Reaction)を開発した(非特許文献2)。
特開2016-108266号公報
S. Sato et al., ACS Chem. Biol. 10(11), 2633-2640 (2015) S. Sato et al., ChemBioChem. 18(5), 475-478 (2017)
本発明者によって開発された上記のタンパク質修飾方法は、反応効率面及びTyr残基の選択性の面などで、非常に優れたものであったが、タンパク質に対して酸化的損傷を引き起こす可能性のある過酸化水素を用いなければならず、また、タンパク質修飾後、触媒であるHRPを除去しなければならないといった問題を有していた。
本発明は、このような問題を解決し、より優れたタンパク質の修飾手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、過酸化水素とHRPを用いる代わりに、ポテンシオスタットを用い、電気化学的手法により、タンパク質をルミノール誘導体で修飾できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供するものである。
(1)電気化学的手法により、タンパク質の特定の部位に修飾剤を結合させることを特徴とする修飾タンパク質の製造方法。
(2)タンパク質の特定の部位がチロシン残基であり、修飾剤が下記の一般式(I)、(II)、又は(III)
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー若しくは末端に標識物質を有するリンカーを表し(但し、LがA上に存在する場合LはA上の任意の位置に存在してよい。)、R1は水素原子を表すか、A上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又はA上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物であることを特徴とする(1)に記載の修飾タンパク質の製造方法。
(3)一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
〔式中、Lは水素原子を表すか、又はベンゼン環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー若しくは末端に標識物質を有するリンカーを表す。〕
で表される化合物であることを特徴とする(2)に記載の修飾タンパク質の製造方法。
(4)タンパク質の特定の部位が電子の豊富なアミノ酸残基であり、修飾剤が下記の一般式(IV)、(V)、又は(VI)

〔式中、Lは水素原子を表すか、又は末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー若しくは末端に標識物質を有するリンカーを表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物であることを特徴とする(1)に記載の修飾タンパク質の製造方法。
(5)タンパク質の特定の部位がC末端カルボキシル基、アスパラギン酸側鎖のカルボキシル基、又はグルタミン酸側鎖のカルボキシル基であり、修飾剤がマイケルアクセプターであることを特徴とする(1)に記載の修飾タンパク質の製造方法。
(6)タンパク質が、抗体であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の修飾タンパク質の製造方法。
本発明は、新規な修飾タンパク質の製造方法を提供する。この方法は、酸化剤や触媒が不要であるため、酸化剤によるタンパク質の酸化的損傷の懸念がなく、また、反応終了後の触媒の除去操作が不要であるといった利点を有する。また、抗体などのタンパク質に部位特異的に修飾剤を導入できるので、特にADCの作製に有用である。
重鎖における反応部位のLC-MSによる解析結果を示す図。液体クロマトグラフィーでは、HRPと過酸化水素を使用して修飾した場合(上段)と電気化学的手法により修飾した場合(下段)で、同じ保持時間にピークが検出された(A)。LC-MS解析の結果、Tyr57に蛍光物質が結合したペプチド断片が検出された(B)。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)定義
本発明において「炭素数1〜20のアルキル基」とは、炭素数が1以上20以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、iso-ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などである。
本発明において「炭素数1〜10のアルキル基」とは、炭素数が1以上10以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、iso-ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などである。
本発明において「炭素数1〜3のアルキル基」とは、炭素数が1以上3以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基などである。
本発明において「炭素数1〜20のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上20以下の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、neo-ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、iso-ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、iso-ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基などである。
本発明において「炭素数1〜10のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上10以下の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、neo-ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、iso-ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、iso-ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などである。
本発明において「炭素数1〜3のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上3以下の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基などである。
本発明において「置換基を有していてもよい芳香族基」とは、置換基を有していない芳香族基又は少なくとも一つの置換基を有している芳香族基を意味する。ここで、「芳香族基」とは、芳香族化合物から一個の水素原子を除いた基をいい、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ピリジン-2-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、ピリミジン-2-イル基、ピリミジン-4-イル基、ピリミジン-5-イル基、ピラジン-2-イル基、ピラジン-3-イル基、ピリダジン-3-イル基、ピリダジン-4-イル基、フラン-2-イル基、フラン-3-イル基、チオフェン-2-イル基、チオフェン-3-イル基、ピロール-1-イル基、ピロール-2-イル基、ピロール-3-イル基、ピラゾール-1-イル基、ピラゾール-3-イル基、ピラゾール-4-イル基、ピラゾール-5-イル基、イミダゾール-1-イル基、イミダゾール-2-イル基、イミダゾール-4-イル基、イミダゾール-5-イル基などである。置換基としては、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、及びメトキシ基などからなる群から選択することができる。少なくとも一つの置換基を有している芳香族基の好適な例としては、少なくとも一つの置換基を有しているフェニル基を挙げることができ、その具体例としては、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニ基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2,3-ジブロモフェニル基、2,4-ジブロモフェニル基、2,5-ジブロモフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、3,4-ジブロモフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基などを挙げることができる。
本発明において「クリック反応に用いられる官能基」とは、例えば、アジド基やエチニル基である。
本発明において「共役環」とは、共役二重結合を有する環をいう。共役環は、芳香環であっても、非芳香環であってもよい。また、共役環は、炭素原子のみからなる環であっても、炭素以外の原子、例えば、窒素、酸素、硫黄などの原子を含む複素環であってもよい。共役環の具体例としては、ベンゼン環、1,3-シクロヘキサジエン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環などの6員環、シクロペンタジエン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環などの5員環などを挙げることができる。
本発明において「放射性同位体」とは、例えば、11C、13N、15O、18F、62Cu、68Ga、76Br、99mTc、111In、67Ga、201Tl、123I、133Xeなどを挙げることができる。これらの中で好適な放射性同位体としては、18Fを挙げることができる。
本発明において「標識物質」とは、ペプチドなどと直接的又は間接的に結合することにより、そのペプチドを検出できるようにする物質をいい、例えば、蛍光物質、放射性同位体、特定の物質と相互作用をする物質などである。蛍光物質としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンなどを挙げることができ、特定の物質と相互作用をする物質としては、例えば、ビオチン、ジニトロフェニル基等の低分子抗体の抗原になりうる構造を持つ物質、Halo Tag(登録商標)やSNAP-tag(登録商標)等の共有結合を形成できる分子構造を持つ物質などを挙げることができる。
(2)修飾剤
本発明において使用する修飾剤は、電気化学的手法により、タンパク質の特定の部位に結合させることができるものであれば特に限定されない。
このような修飾剤としては、例えば、チロシン残基と結合する下記の一般式(I)で表される化合物(特開2016-108266号公報、WO2017/061288)を挙げることができる。また、一般式(I)で表される化合物と同様に、チロシン残基と結合する下記の一般式(II)及び(III)で表される化合物(S. Sato et al., Chem. Commun. 54, 5871-5874 (2018))も修飾剤として使用することができる。更に、下記の一般式(IV)で表される化合物(S. Sato et al., Angew. Chem. Int. Ed. 52, 8681-8684 (2013))、下記の一般式(V)で表される化合物(K. L. Seim et al., J. Am. Chem. Soc. 133, 16970-16976 (2011))、下記の一般式(VI)で表される化合物(J. S. Rees et al., Mol Cell Proteomics. 14(11):2848-2856 (2015))は、チロシン残基、トリプトファン残基、遊離システイン残基、ヒスチジン残基などの電子の豊富なアミノ酸残基と結合することができるので、これらの化合物も、修飾剤として使用することができる。
一般式(I)及び(II)においてAは共役環を表す。Aは共役環であればよいが、ベンゼン環であることが好ましい。
一般式(I)及び(II)においてR1は水素原子を表すか、A上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又はA上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表す。ここで、アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜10であることが更に好ましく、炭素数が1〜3であることが特に好ましい。R1は、前記した基であればよいが、水素原子、又は1個のアミノ基、アセトアミド基、若しくはメトキシ基であることが好ましく、水素原子、又は1個のメトキシ基であることが更に好ましい。上記の置換基が2個存在する場合、各置換基は同一であっても、異なっていてもよい。置換基は共役環上の任意の位置に存在してよいが、合成上の容易さなどから、隣接する複素環から離れた位置に存在することが好ましい。
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、及び(V)においてR2は水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。ここで、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜10であることが更に好ましく、炭素数が1〜3であることが特に好ましい。R2は、前記した基であればよいが、メチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、及び(V)においてR3は水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。ここで、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数が1〜10であることが更に好ましく、炭素数が1〜3であることが特に好ましい。R3は、前記した基であればよいが、水素原子であることが好ましい。
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び(VI)においてLは、水素原子、末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー、又は末端に標識物質を有するリンカーを表す。また、LがA上に存在する場合LはA上の任意の位置に存在してよい。リンカーは、クリック反応に用いられる官能基の結合性や標識物質の機能を失わせないような構造であればどのような構造でもよいが、アルキレン基であることが好ましい。但し、アルキレン基の1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-、又は-CO-で置換されていてもよい。アルキレン基の炭素数は特に限定されないが、5〜20であることが好ましく、5〜15であることがより好ましい。なお、アルキレン基中の-CH2-を、-O-、-S-、又は-NH-で置換した場合も、これらの基は1つの炭素を持つものとして、前記した「アルキレン基の炭素数」に含める。
一般式(I)で表される化合物の好ましい例としては、下記の一般式(Ia)
で表される化合物を挙げることができる。ここで、Lはベンゼン環上の任意の位置に存在してよいが、ジヒドロフタラジン環上の6位又は7位に存在することが好ましい。また、一般式(Ia)で表される化合物は、一種類の化合物だけ使用してもよいが、二種類以上の化合物の混合物を使用してもよい。例えば、Lが6位に存在する化合物とLが7位に存在する化合物の混合物を使用してもよい。
上記の一般式(I)〜(VI)で表される化合物以外にも、例えば、S. Bloom et al. Nature Chemistry volume 10, pages 205-211 (2018) に記載されているマイケルアクセプターも修飾剤として使用することができる。このマイケルアクセプターは、タンパク質のC末端カルボキシル基に結合することができる。また、条件によっては、アスパラギン酸側鎖のカルボキシル基、グルタミン酸側鎖のカルボキシル基に結合させることも可能であると考えられる。
マイケルアクセプターとしては、前記論文に記載されているジエチルエチリデンマロナートなどのα,β-不飽和カルボニル化合物を使用することができる。
使用されるマイケルアセクプターは、一般式(I)で表される化合物と同様に、クリック反応に用いられる官能基や標識物質を有していてもよい。また、クリック反応に用いられる官能基や標識物質は、リンカーを介してマイケルアセクプターと結合していてもよく、リンカーを介さずにマイケルアセクプターと結合していてもよい。
以上の修飾剤をタンパク質の特定の部位(アミノ酸残基など)に結合させ、タンパク質を部位特異的に修飾することができる。但し、露出していない部位に修飾剤を結合させるのは困難なので、通常、タンパク質の表面に露出した部位に修飾剤を結合させる。
(3)タンパク質
使用するタンパク質は特に限定されず、一般的には「タンパク質」ではなく、「ペプチド」と認識されているような短い鎖長のタンパク質を使用してもよい。タンパク質としては、抗体を使用するのが好ましい。抗体に、クリック反応に用いられる官能基を有する修飾剤を結合させ、更に、そのクリック反応に用いられる官能基に、低分子薬物を結合させることにより、容易にADCを作製することができるからである。
抗体としては、ADCに用いられている抗体、例えば、抗HER2抗体であるトラスツズマブ、抗FRA抗体であるファレツズマブなどを使用するのが好ましい。
抗体の相補性決定領域には、表面に露出したチロシン残基が多数存在するので、修飾剤として一般式(I)で表される化合物を使用した場合、この抗体の相補性決定領域を部位特異的に修飾することができる。相補性決定領域は、抗原の認識能に関与するので、このような領域に修飾剤を結合させると、抗原認識能が失われるとこれまで考えられていたが、本発明者は抗原認識能が失われないことを確認している。
(4)修飾タンパク質の製造方法
本発明の修飾タンパク質の製造方法は、電気化学的手法により、タンパク質の特定の部位に修飾剤を結合させることを特徴とするものである。
ここで、「電気化学的手法」とは、例えば、タンパク質及び修飾剤を溶解させた溶媒中に電極を挿入し、その電極間に外部から電圧を印加することで、電解反応により修飾タンパク質を生成させる手法をいう。
電解方式は、定電流方式、定電圧方式のいずれでもよいが、定電圧方式が好ましい。定電圧方式とする場合は、市販のポテンシオスタットを使用するのが好ましい。また、この場合、電圧は0.5〜1.5Vとするのが好ましく、0.8〜1.2Vとするのがより好ましく、電圧印加時間(累計時間)は、1〜120分とするのが好ましく、5〜30分とするのがより好ましい。
電極は、一般的な電気化学的反応において使用されるものと同様のものでよく、例えば、カーボン電極、白金電極、銀電極、銅電極などを電極として使用することができる。また、陽極にはカーボン電極、陰極には白金電極を使用するのが好ましい。
使用する溶媒は、導電性で、タンパク質に悪影響を及ぼさないようなものであれば特に限定されない。例えば、リン酸緩衝液(例えば、リン酸カリウム緩衝液)などの電解質溶液を溶媒として使用することができる。溶媒のpHは特に限定されないが、5〜9であることが好ましく、6〜8であることがより好ましい。
溶媒中のタンパク質の濃度は、使用するタンパク質の種類によって適宜設定されるが、タンパク質として抗体を使用する場合は、1〜1000μMとするのが好ましく、1〜50μMとするのがより好ましい。
溶媒中の修飾剤の濃度も、使用する修飾剤の種類によって適宜設定されるが、修飾剤として一般式(I)で表される化合物を使用する場合は、1〜10000μMとするのが好ましく、1〜100μMとするのがより好ましい。
反応時の温度は特に限定されないが、5〜50℃とするのが好ましく、20〜40℃とするのがより好ましい。
上記の修飾タンパク質を生成させる反応は、通常、電解槽中で行うが、電解槽は無隔膜式、隔膜式のいずれでもよい。
生成した修飾タンパク質は、クロマグラフィーなどを用いた常法に従って、精製することができる。修飾剤のクリック反応に用いられる官能基に、低分子薬物などを結合させる場合は、修飾タンパク質の精製前に行ってもよく、精製後に行ってもよい。
本発明の修飾タンパク質の製造方法は、以下のような用途に利用できる。
1)ADCの作製
前記したように、抗体に修飾剤を結合させ、その修飾剤に低分子薬物を結合させることにより、ADCを作製できる。
2)タンパク質の標識
タンパク質に、標識物質を有する修飾剤を結合させ、そのタンパク質を標識することができる。
3)チロシンホスファターゼやチロシンキナーゼ活性の測定
一般式(I)で表される化合物は、リン酸化していないチロシン残基にのみ結合するので、この性質を利用してチロシンホスファターゼやチロシンキナーゼ活性を測定することができる(WO2017/061288)。この測定方法において、本発明の修飾タンパク質の製造方法を利用することができる。
本発明の修飾タンパク質の製造方法は、以下のような利点を有する。
1)部位特異的に修飾剤を結合させることができる。
2)過酸化水素などの酸化剤を使用する必要がなく、タンパク質の酸化的損傷を避けることができる。
3)触媒も使用する必要がなく、反応終了後の触媒の除去操作が不要である。
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
トラスツズマブ(中外製薬)を 200 mM リン酸カリウム緩衝液(pH 7.4)に10 μMの濃度で溶解させ、下記の構造のNMe-Luminol-N3を終濃度 200 μMの濃度になるように添加した。
100 mLビーカーに電極をセットし、(作用電極:BAS社 多孔質カーボン電極、対極:BAS社 白金電極、参照極:BAS社 Ag/AgCl 電極)、0.8 Vの定電圧モード(北斗電工 HSV-110)で電圧を印加した。5分の電圧印加ごとに作用極を0.1M KOH溶液で30秒超音波洗浄、アセトン中で30秒超音波洗浄し、超純水で洗浄した。累計電圧印加時間が40分になるまで、上記の作業を繰り返し行った。
N3基で修飾された抗体は、DBCO-Cy3 (Aldrich)を終濃度10 μMになるように加え37℃で30分反応させた。低分子化合物はSephadex-G25カラムで除去した。Cy3の結合量解析は電気泳動により行った。重鎖における反応部位の解析はゲル内トリプシン処理後にLC-MS(micro TOF II、Bruker)により行った(図1)。
本発明は、ADCなどの医薬品の作製に有用なので、そのような医薬品の製造に関連する産業分野において利用可能である。

Claims (6)

  1. 電気化学的手法により、タンパク質の特定の部位に修飾剤を結合させることを特徴とする修飾タンパク質の製造方法。
  2. タンパク質の特定の部位がチロシン残基であり、修飾剤が下記の一般式(I)、(II)、又は(III)
    〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー若しくは末端に標識物質を有するリンカーを表し(但し、LがA上に存在する場合LはA上の任意の位置に存在してよい。)、R1は水素原子を表すか、A上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又はA上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
    で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  3. 一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
    〔式中、Lは水素原子を表すか、又はベンゼン環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー若しくは末端に標識物質を有するリンカーを表す。〕
    で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  4. タンパク質の特定の部位が電子の豊富なアミノ酸残基であり、修飾剤が下記の一般式(IV)、(V)、又は(VI)

    〔式中、Lは水素原子を表すか、又は末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー若しくは末端に標識物質を有するリンカーを表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
    で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  5. タンパク質の特定の部位がC末端カルボキシル基、アスパラギン酸側鎖のカルボキシル基、又はグルタミン酸側鎖のカルボキシル基であり、修飾剤がマイケルアクセプターであることを特徴とする請求項1に記載の修飾タンパク質の製造方法。
  6. タンパク質が、抗体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の修飾タンパク質の製造方法。
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