JP2019531387A - 脂質膜を通した合成ポリマーのトランスロケーション - Google Patents
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Abstract
Description
医学で使用され、かつ分離膜を通過できるコポリマーは、生体適合性である必要がある。国際公開第2015/161841号(WO 2015/161841 A2)からは、埋め込み可能な担体系として生体適合性である、有効成分の制御放出用の修飾されたポリ(ジカルボン酸マルチオール(Multiol)エステル)が公知である。その際、有効成分を、コポリマーの遊離ヒドロキシ基に共有結合させる。Wernerら(Biomacromolecules、2015、16、125〜135)は、計算モデルを手がかりに両親媒性コポリマーをシミュレートし、脂質二重膜上でのまたは脂質二重膜を通した吸収および受動的なトランスロケーションに関するその特性を理論的に予測することを試みている。その結果、コポリマーは、HLB値が5〜10である親油性を示すことが望ましい。さらにWernerらは、シミュレートしたコポリマーの化学構造を記載していない。
Wernerらが記載したように、目下、トランスロケーションによって細胞に入り込むいくつかの物質が公知であり、その中で、例えばいわゆるCPP(cell−penetrating peptides(細胞膜透過性ペプチド))、高分子電解質が公知である。制御放出用のさらなる担体系として、国際公開第2015/161841号(WO 2015/161841)では、例えば非水溶性のミクロ粒子およびナノ粒子が挙げられている。ブロックコポリマー、ランダムコポリマーまたはグラジエントコポリマーは、例えば独国特許第69620898号明細書翻訳文(DE 69620898 T2)、国際公開第01/70288号(WO 01/70288 A2)、国際公開第2005/121196号(WO 2005/121196 A1)または国際公開第2007/109584号(WO 2007/109584 A1)から公知である。例えば癌に対する有効成分用の担体分子も、国際公開第2008/150996号(WO 2008/150996 A1)から公知である。ただし、これらの担体はトランスロケーションに関連しない。
有効成分を制御放出させるためのこれらの担体系(Drug Carrier Systems(ドラッグキャリアシステム)とも呼ばれる)の目的は、一方では、身体から有効成分が素早く排出されるのを阻止することにある。従来の大半の有効成分は小さいため、血液循環内に短時間しかとどまらない。なぜなら、そのサイズに起因して腎閾値を下回り、したがって血液から分離されて再び排出されてしまうからである。
他方、担体系は、できる限り有効成分を特異的に特定の器官または特定の細胞の近傍へと輸送し、そこでできるだけ制御放出することが望ましい。
さらに、これらの分子は、非膜透過性の有効成分および生体効果を示す薬剤も細胞内に移行または輸送可能とすることが望ましい。その際、一実施形態では、細胞膜が損傷を受けないことが望ましい。
さらに、本発明によるコポリマーは、生理的条件下で使用するために、水性媒体に可溶であることが望ましい。
主鎖は、重合生成物であり、場合によっては、コポリマーを形成する少なくとも2つのモノマーの縮合生成物または付加生成物であり、実質的に直鎖状であり、好ましくは直鎖状である。
LCSTは、比濁法または示差走査熱量測定によって測定できる。別法として、LCST値は目視により測定され、その際、LCST値は、溶液の混濁が生じる温度である。その混濁は、ポリマーの沈殿によって引き起こされる。
一別法では、ポリマーは、厳密なある1点のLCST値ではなく、LCST範囲を有する。本発明によれば、LCST値は、および/または特にLCST範囲の場合、特定値周辺の、各値の30%または20%、好ましくは15%、特に10%周辺の温度範囲に関する。このことは、つまり、例えば20℃と定められたLCST値には、14〜26または16〜24、好ましくは17〜23、特に18〜22(それぞれセルシウス度)の値も含まれることを意味する。
本発明によれば、疎水性単位および/または疎水基とは、ポリマーのLCST値を低下させる単位および/または基である。それは、簡易な比較によって特定できる。つまり、まず、合成されたポリマーまたは出発ポリマーのLCST値を測定する。続いて、さらなる単位および/または基を含む、そのポリマーの誘導体を合成する。別法として、そのような単位および/または基を、出発ポリマー内へと組み込む。続いて、その第2のポリマーのLCST値を測定する。測定された第2のLCST値が最初のLCST値よりも低い場合には疎水性単位であり、測定された第2のLCST値が最初のLCST値よりも高い場合には親水性単位である。したがって、LCST値は、ポリマーの親水性または疎水性を表す尺度である。
親水性単位の一例は、EO、ないしは出発原料としてのPEGである。
疎水性の単位ないしは出発原料の例は、アルコールに関しては、ポリアルカンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールおよび/またはポリテトラメチレングリコールである。
非常に重要であるのは、ポリマーの水への溶解挙動である。
コポリマーは、そのLCST値に基づき親水性であるため、親水性の全体的特性を有し、つまり、室温で水溶性である。
本発明の趣旨では、「交互に存在する疎水性単位と親水性単位」とは、疎水性単位と親水性単位とが交互に、つまり−abababab−として存在する交互ポリマーが存在することを意味し、ここで、aが例えば疎水性単位を表してbが親水性単位を表すか、またはその逆である。
したがって、この交互コポリマーは、例えば鎖中でのこれら双方の単位の分布が例えば−aaabbababbbbaababaa−のようにランダムであるランダムコポリマーとは異なる。ランダムコポリマーと類似するものの、例えば−aaaabaaabbaabbbabbbbのように一方の単位の分率は鎖の推移において上昇するが他方の単位の分率は低下するグラジエントコポリマーも、異なる。ブロックコポリマーおよびセグメントコポリマーも、構造の点で本発明による交互コポリマーとは異なる。なぜなら、この場合には、それぞれ疎水性単位および親水性単位から構成される、より長い配列またはブロックが存在するからである。
したがって、本発明によるコポリマーは、親水性単位対疎水性単位の比率が実質的に1:1であり、したがって「実質的」という概念に関して、偏差がそれぞれ最大10%であり、つまり比率は1.1:0.9〜0.9:1.1であるが、好ましくは1:1である。偏差は特に、双方のモノマー単位のうちの一方が合成時に過剰に使用された結果、そのモノマー単位が、好ましくは鎖末端部を形成することになる場合に生じ得る。
一別法では、数平均分子量Mnは、1000〜20000、好ましくは1000〜10000、特に1000〜5000または1000〜3000g/molである。
異なる一別法では、数平均分子量Mnは、7000〜14000、好ましくは8000〜13000、特に7500〜12000g/molであるか、または分子量範囲は、少なくとも5000でかつ10000未満、つまり5000<Mn<10000である。
式A:D=Mw/Mnによれば、適切なGPC法を利用して測定した場合に、本発明によるコポリマーに関して、1.01〜3.0、好ましくは1.3〜2.0という多分散度Dが得られる。
好ましくは、本発明によるコポリマーは、1.01〜1.6、特に1.3〜1.6という値Dを有する。
一別法では、分別されたポリマーに関して、Dは、1.01〜1.2または1.01〜1.5、好ましくは1.01〜1.3、特に好ましくは1.01〜1.2、特に1.01〜1.17または1.01〜1.15である。本発明によれば、分別とは分子量による分離を意味し、つまり、各画分は分子量分布が狭い状態で存在する。
一実施形態では、本発明によるコポリマーは離散分子として存在し、つまり、交差架橋されておらず、かつ/またはゲルも形成しない。
「実質的に直鎖状」という概念は、本発明によれば、コポリマーの長さを決定づける直鎖状の主鎖を有する分子を表す。本発明によるコポリマーは、場合によっては分岐を有してもよく、ただし、場合によっては短い分岐および側鎖を有する二官能性モノマー成分から構成されている。つまり、ベースである直鎖状主鎖は、側鎖を有してもよい。側鎖は、一別法では、生理的条件下で不活性の基、例えばアルキル基、アリール基またはアルキルアリール基である。
さらなる一別法では、いくつかの側鎖、ポリマー末端部もしくは付加的な側鎖またはそのすべてに、有効成分と結合するための末端官能基がある。その際、コポリマーまたは有効成分のいずれか一方が、相補的官能基Aを含み、これらの相補的官能基Aは、それぞれ他方の反応相手に含まれている相補的官能基Bとそれぞれ反応する。相補的官能基AおよびBは、以下を含む群または以下からなる群から選択される。
(I) −(CH2−CH2−O−)l
によって定義され、ここで、l=2〜30または2〜20、好ましくは2〜18または2〜16である。
本発明の一実施形態は、l=3〜20、好ましくは3〜10、特に4〜6であるコポリマーに関する。
本発明の趣旨では、エーテル官能部とは、官能基、つまり一般式R1−O−Raのエーテル基であり、ここで、Ra=もしくはR1=CH2−CH2であるか、またはR1および/もしくはRaは、互いに独立してC3〜C10の炭素鎖を有する基である。その基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また芳香族部を含んでもよいし芳香族部からなってもよい。
ここで、n=3〜500、好ましくは3〜100であり、ただし、指定されるMw値を超過せず、
R2およびR3は、互いに独立して、1〜60個(EO単位各30個であるため)のC原子を含むかまたはこれらからなり、場合によっては主鎖中で2つのC原子の間に少なくとも1つの酸素原子を含む。
R2は、ジカルボン酸の基であり、R3は、ジオールの基である。これらの基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また芳香族部を含んでもよいし芳香族部からなってもよい。
ジカルボン酸は、4〜12個、好ましくは4〜8個、特に好ましくは4〜6個のC原子を有する。
式II−1b:HO−(EO)l−Hのポリエチレングリコール(PEG)との縮合生成物であり、ここで、R2およびlは、前記のとおりである。Eは、CH2−CH2、つまり2つのCH2基を意味し、したがって、EOはエトキシを意味する。
R2が少なくとも10個のC原子を、好ましくは鎖として含む場合、R3は、最大20個のEO単位から構成されている。
好ましくは、150〜1000g/mol、好ましくはおよそ150〜600g/mol、特に200〜450g/molまたは200〜300g/molの分子量を有するPEGを使用する。
その別法では、R3は、2〜30個のEO基、好ましくは4〜20個、特に好ましくは6〜14個、4〜10個または4〜6個のEO基から構成される基である。
式II−2b:HO−(CH2)n1−OHのジオールとの縮合生成物であり、
ここで、n1=2〜20、好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜8、2〜6または2〜4である。
したがって、コポリマーのモノマーは、アミド官能部を介して互いに結合されている。
ここで、m=5〜500、好ましくは5〜100であり、ただし、指定されるMw値を超過せず、
R4は、ジカルボン酸の基であり、R5は、ジアミンの基である。これらの基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また芳香族部を含んでもよいし芳香族部からなってもよい。
式III−1b:H2N−CH2−CH2−O−(EO−)(l−2)−CH2−CH2−NH2のポリエチレングリコールジアミンとの縮合生成物である。
式III−2b:H2N−(CH2)m1−NH2のジアミンとの縮合生成物であり、
ここで、m1=2〜20、好ましくは2〜10または4〜12、特に好ましくは2〜8または4〜6である。
ウレタン官能部を有する本発明によるコポリマーは、一般式IV:−(R6−NRb−CO−O−R7−O−CO−NRb−)oによって表され、
ここで、o=5〜500、好ましくは5〜100であり、ただし、指定されるMw値を超過せず、
R6は、ジイソシアネートの基であり、R7は、ジオールの基である。これらの基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また芳香族部を含んでもよいし芳香族部からなってもよい。
ポリアルコキシジオール、好ましくは式IV−1b(式Iと同一):HO−(EO−)l−H(前記のとおり)のポリエチレングリコールとから構成される付加生成物である。
この別法では、R6は、2〜10個のメチレン基、好ましくは4〜8個、特に好ましくは4〜6個のメチレン基からなるアルキルである。
式IV−2b(II−2bと同一):HO−(CH2)n3−OHのジオールとの付加生成物であり、
ここで、
n4=n5=2〜20、好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜8、特に2であり、
n3=2〜20、好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜8である。
本発明の趣旨では、エーテル官能部とは、官能基、つまり一般式(V)R8−O−R9のエーテル基である。したがって、本発明によるコポリマーのモノマーは、主鎖中でエーテル基を介して互いに結合されている。
好ましくは、親水性出発原料、例えばポリエチレングリコール、ならびに疎水性ジオール、例えばポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリアルカンジオール、および5つ以上の炭素原子を有するアルコキシ単位から構成されるポリエーテルから構成される本発明によるコポリマーを使用する。
一実施形態では、R8および/またはR9は、式Iによる少なくとも1つの親水性単位を含むか、またはそれらからなる。R8および/またはR9は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また芳香族部を含んでもよいし芳香族部からなってもよい。
一実施形態では、親水性単位用の出発原料として、特に以下:
ポリエチレングリコール(HO−(CH2−CH2−O)l−H)、ポリエチレングリコール−ビス(カルボキシメチル)エーテル(HOOC−CH2−O−(CH2−CH2−O)(l−2)CH2−COOH)、ポリエチレングリコールジエチルアミン(H2N−(CH2−CH2−O−)(l−2)CH2−CH2−NH2)、およびポリエチレングリコール−ビス(イソシアナトメチル)エーテル(OCN−CH2−O−(CH2−CH2−O−)(l−2)CH2−NCO)
を含むか、またはそれらからなる群から選択される、好ましくはポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの誘導体を利用する。
アルカンジオール(HO−(CH2)p−OH)、アルカンジカルボン酸(HOOC−(CH2)(p−2)−COOH)、アルカンジアミン(H2N−(CH2)(p−2)−NH2)、およびアルカンジイソシアネート(OCN−(CH2)(p−2)−NCO)(ここで、p=1〜20、好ましくは1〜12である)
から選択される、2つの末端官能基を有する炭化水素基を利用する。
ポリエチレングリコール−ビス(カルボキシメチル)エーテルをアルカンジアミンと反応させると、次の構造−(OC−CH2−O−(CH2−CH2−O−)l−CH2−CO−(NH)−(CH2)p2−(NH))x−を有するポリアミドが得られ、ただし、xは繰返し単位の数を規定し、前記の分子量によって決まる。
本発明による方法の利点は、一別法においてさらなる後処理なく直ちに使用できるコポリマーの簡便な製造にある。
その場合、ポリマーの溶解度が異なることによって、比較的狭い分子量分布を有する特定の画分を分離し精製できる。
分離するためには、すべてのポリマーを好ましくは水または別の溶媒に溶解させ、非溶媒の添加により、該当するコポリマー画分をその溶解度に基づいて沈殿させる。この分離方法は、温度依存性である。
分離は、温度変化によっても行うことができる。
それにより、低分子画分および高分子画分を分離する。これが、分別に相当する(例を参照)。
コポリマーの分子量MwおよびMnの測定は、本発明によれば、場合によってはオンライン光散乱検出と連結させたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−LS)を利用して、または末端基特定によるNMRを利用して行うことができる。
一別法では、有効成分とは、医薬効果および/または生体効果を示すすべての物質と理解される。したがって、有効成分とは、医薬活性化合物、治療活性化合物および生体活性化合物、化粧学的な活性化合物、生化学および/または生理プロセスに生体内でおよび/または量的に影響を及ぼす、つまりこれらのプロセスを促進する、そもそも初めて可能にする、または阻止する物質からなる群から選択される化合物である。
さらに、有効成分は、少量で多大な医薬効果、化学効果、生体効果または生理効果を発揮する。
一実施形態では、有効成分は、色素、蛍光標識剤、放射活性標識剤でもある。
さらなる一実施形態では、有効成分、ないしは生体効果を示す薬剤は、殺生物剤でもある。
その場合、結合は、水素結合、親水性相互作用、疎水性相互作用、静電相互作用、ないしは親水結合、疎水結合、静電結合および/または立体的固定化によって行われる。共有結合によらない結合は、共有結合と比べて容易な有効成分の放出を提供する。なぜなら、化学結合を解く必要がなく、生理環境の変化がすでに放出をもたらし得るからである。
有効成分および/または生体効果を示す薬剤と結合させた前記コポリマーの、医薬品としての使用も主題である。調合は、例えばUrsula Schoeffling、Arzneiformellehre、第4版(2003年)に記載されるような当業者に公知の方法で行われる。
ただし、一実施形態では、前記コポリマーをエクスビボ(ex vivo)で使用し、例えば前記のような担体として、様々な有効成分のトランスロケーションをイン・ビトロ(in vitro)で試験するために使用する。そのためには、例において記載するように実施されるテストを行う。そのためには、特に、人工脂質二重膜が適切である。
コポリマーおよび有効成分を、本発明により互いに調整する。例えば高分子量の疎水性有効成分が存在する場合、この有効成分を、高分子量および/または高LCST値を有するコポリマーと結合させる。その結果、有効成分と結合させるコポリマーの全体的により高い親水性が達成される。
一実施形態では、場合によっては異なる有効成分を伴う、出発原料の化学組成に関してまたは分子量に関して異なるコポリマーを使用して、かなり長期間にわたる有効成分のトランスロケーションを保証するか、または異なる有効成分の正確な順序を保証する。
1.本発明によるポリマーの製造
P(C4EG6):無水コハク酸16.81g(168mmol)を、ガラスフラスコ中で、ポリエチレングリコール300 49.97g(Mn=298g/mol、168mmol)およびトルエンスルホン酸一水和物53mgと混合し、撹拌しながら1日間、アルゴン下で120℃に加熱した。続いて、圧力を100mbarに下げ、2時間以内に160℃に加熱した。その温度において、圧力をさらに20mbarへと下げた。16時間後に圧力をさらにおよそ0.1mbarへと下げて、さらに4日間加熱した。そのようにして得られた生成物を、さらなる後処理なしに引き続き使用した。
絶対分子量(前記の数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mw)ならびにポリマー生成物の多分散度Mw/Mnを、オンライン光散乱検出器を連結させたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−LS)を利用して、溶離剤としてのTHF中で算出した。Mn、ならびにOH末端基およびCOOH末端基の分率(%OH、%COOH)を、重水素化ピリジン中での1H−NMRにより算出した。多分散度Mw/Mnを、さらに、PEO較正を伴うGPC(GPC−PEO)により算出した。この場合、84重量%のTHF、15重量%のジメチルアセトアミドおよび1重量%の酢酸から構成される溶離剤混合物を使用した。結果を表1にまとめる。分別されていないコポリマーは、幅広い分子量分布を有する。GPC−LSを利用した場合、低分子画分が完全には検知されないため、この値は、GPC−PEOを利用して測定した値をいくぶん下回る。
ポリマーの膜透過性の算出
本発明によるポリマーの膜透過性、つまり膜を通したトランスロケーションを測定するために、Bayley(2008年、Journal Anal Chem)による、いわゆるDIB(Droplet Interface Bilayer、液滴界面二重膜)法の変法を使用した。この方法に基づき、自立型脂質二重膜をマイクロ流体チップ中で生成させた。
したがって、形成されたリン脂質二重膜の片側にしか本発明によるポリマーは存在しなかった。24時間後に、元は本発明によるポリマーを含有しなかった水性相から試料(マイクロピペットを使っておよそ100〜200μl)を採取して化学分析した。
本発明によるコポリマー、つまりP(C5EG6)、P(C4EG6)、P(C6EG6)、および(C8EG13)に関して、対照のGPCクロマトグラムおよびNMRスペクトルは、採取された試料のものと同一であった。
前記のように、油相中での2つの水滴の接触により脂質二重層を形成させた。2つのいわゆる水フィンガーを、圧力制御系を利用してマイクロチャネルに注入した。圧力制御系は、マイクロチャネルと直接に結合された静水タンク(hydrostatisches Reservoir)からなっていた。したがって、2つの水フィンガーが互いに接触するまでこれらをマイクロチャネル系の両側から互いの方へと押し、そのようにして脂質二重層を形成させた。その際、元はマイクロチャネル内に存在していた連続的な油相が排除された。双方の液滴、ないしはこの場合は水フィンガーが接触して、それに基づいて脂質二重層が形成されると、双方の水フィンガーに作用する圧力が均一化されたため、力学的平衡が生じた。双方の水フィンガーの各々に作用する静水圧は、水タンクの高さによって精密に調整されている(Ph=pxgxh)。双方の水滴(水フィンガー)の一方は純粋な水性緩衝剤であったのに対して、他方は、同一の緩衝剤中に本発明によるポリマーをおよそ5mg/mlの濃度で含有していた。脂質二重層を通したトランスロケーションに起因し、双方の水フィンガー中におけるポリマー濃度が経時的に変化し、その結果、力学的平衡が崩れた。これが、再び、マイクロチャネル内における脂質二重層の非常にゆっくりとした移動を引き起こした。脂質二重層の位置を、顕微鏡を使って詳細に記録した。脂質二重層の位置は、詳細には水タンクの高さの変更による水フィンガーにかかる圧力の変更によって新たに調整された。二重層の平衡を回復するために必要であった静水圧の変化は、ポリマー濃度の変化によって引き起こされた浸透圧の変化を直接に表した。
図1では、PEGに対する値とP(C10EG22)に対する値とが重なっている。
Claims (15)
- 少なくとも1つの有効成分と共有結合させたまたは物理的に結合させたコポリマーであって、交互に存在する疎水性単位と親水性単位とを含むコポリマーにおいて、20〜90℃のLCST値を有することを特徴とする、コポリマー。
- 20〜80℃、好ましくは20〜70℃のLCST値を有する、請求項1記載のコポリマー。
- 実質的に直鎖状の主鎖を含むかまたは該主鎖からなることを特徴とする、請求項1または2記載のコポリマー。
- 実質的に非イオン性であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のコポリマー。
- 前記親水性単位は、式−(CH2−CH2−O−)l[式中、l=2〜30である]によって定義されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のコポリマー。
- l=2〜20である、請求項1から5までのいずれか1項記載のコポリマー。
- l=3〜8、好ましくは4〜6であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のコポリマー。
- 少なくとも4つ、好ましくは少なくとも6つのエーテル官能基が前記主鎖中に存在することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のコポリマー。
- エステル官能基、アミド官能基および/もしくはウレタン官能基ならびに/もしくはそれらの誘導体および/もしくは組合せを含むかまたはそれらからなる群から選択される少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの官能基が前記主鎖中に存在することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のコポリマー。
- 脂質二重層を通過する有効成分用担体として使用するための、請求項1から9までのいずれか1項記載のコポリマー。
- 前記脂質二重層は、生体膜の一部、好ましくは細胞膜であることを特徴とする、請求項8記載のコポリマー。
- 医薬品として使用するための、請求項8から11までのいずれか1項記載のコポリマー。
- 脂質二重層を通して有効成分を輸送するための、請求項1から11までのいずれか1項記載のコポリマーの使用。
- 前記脂質二重層は、生体膜の一部、好ましくは細胞膜であることを特徴とする、請求項12記載の使用。
- 脂質二重層を通した有効成分の輸送方法であって、請求項1から11までのいずれか1項記載のコポリマーを水溶液中で前記脂質二重層の片側で提供する、方法。
Applications Claiming Priority (3)
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