JP2019529501A - 可逆的に保護された、チオレート化求電子性脂肪酸としてのプロドラッグ - Google Patents

可逆的に保護された、チオレート化求電子性脂肪酸としてのプロドラッグ Download PDF

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Abstract

本発明の多様な形態は、医薬組成物及び疾病を処置する方法に関する。組成物の実施形態には、チオレート化ニトロ脂肪酸を含む。本発明の多様な形態は、処置を必要とする患者に対し有効量の医薬組成物を投与する工程を備える。【選択図】図1

Description

<関連特許出願の相互参照>
本出願は、2016年10月5日に出願された米国仮出願番号62/404,368の優先権を主張し、その内容全体を本明細書に援用する。
本発明の種々の実施形態は、チオールを内転したニトロ脂肪酸(チオレート化脂肪酸)の合成及び使用に関する。本発明の種々の実施形態は、有効量のチオレート化脂肪酸を含有する医薬品組成物に関する。本発明の種々の実施形態は、被験者に対して有効量のチオレート化脂肪酸を投与し、胃腸への副作用を軽減しつつ、炎症性疾患、肥満、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患を処置する方法に関する。
本発明は、アメリカ合衆国 国立保健研究所助成金番号 第HL−058815号、HL−64937号及びAT006822号の政府助成金を受けている。米国連邦政府は本発明に一定の権利を有する。
OA- NO2-Sxの核磁気共鳴スペクトル(NMR)である。 OA- NO2-Sxによって誘発されたヘムオキシゲナーゼ1(HO−1)のトランスクリプション(転写)である。 OA- NO2-Sxによって誘発されたNAD(P)Hデヒドロゲナーゼ−キノン1(NQO−1)のトランスクリプションである。 OA- NO2-Sxによって誘発されたγ-グルタミン酸システインリガーゼ修飾(GCLM)のトランスクリプションである。 OA- NO2-Sxによって誘発されたヘムオキシゲナーゼ1のトランスクリプションの経時変化を示す。 OA- NO2-Sxによって誘発されたAD(P)Hデヒドロゲナーゼ−キノン1のトランスクリプションの経時変化を示す。 OA- NO2-Sxによって誘発されたγ-グルタミン酸システインリガーゼ修飾のトランスクリプションの経時変化を示す。
本発明は特定の工程、組成物または方法論に限定されるものではなく、これらは多様である。本明細書で使用される用語は特定のバージョン又は実施例を表すためだけに使用され、本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。別途定義された場合を除き、本明細書で使用された全ての技術的及び学術用語は、当業者が一般的に理解する意味と同じ意味を持つ。本明細書で引用した全ての刊行物は、本明細書中において組み込まれる。本明細書のいずれの部分も、本発明が先行する発明の結果このような刊行物に先行する資格がないと認めたとは解釈されない。
用語「誘導体」とは、類似する化合物から誘導された化合物、または1個以上の原子が他の原子または原子群で置換された場合に別の化合物から生じることが想定される化合物を表す。
用語「生物学的サンプル」とは、組織、細胞、液体、細胞抽出物、均質化された組織抽出物、又は好適な生理学的に許容される担体中の1つ又は複数の酵素混合物を表し、非限定的に、混合物はリポソーム、アルブミン及びリポプロテインを含む。
本発明の化合物は、立体配置異性体、幾何異性体、配座異性体を含む、種々の異性体型並びに種々の互変異性型で存在することができ、特に水素原子の結合点が異なる型及び構造異性体で存在することができ、これらの反復単位は可変である。用語「異性体」は、本発明の化合物の全ての異性体型を包含することを意図し、これには化合物の互変異性型が含まれる。
本明細書中に記載の特定の化合物は不斉中心を有し、そのため、異なるエナンチオマー及びジアステレオマーとして存在する。本発明の化合物は、光学異性体またはジアステレオマーの形式であってよい。すなわち、本発明は光学異性体、ジアステレオ異性体およびそれらの混合物の形式の化合物を包含し、それにはラセミ混合物を含む。本発明の化合物の光学異性体は、例えば不斉合成、キラルクロマトグラフィー、疑似移動床技術、または光学活性分割剤を用いる立体異性体の化学的分離など、公知の技術によって取得することができる。特に指定されない限り、「立体異性体」とは、当該化合物の他の立体異性体を実質的に含まない、化合物の立体異性体を意味する。すなわち、1つのキラル中心を有する立体異性的に純粋な化合物は、化合物の反対のエナンチオマーを実質的に含まない。2つのキラル中心を有する立体異性的に純粋な化合物は、化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まない。
用語「プロドラッグ」とは、インビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)において、生物学的な条件の下、加水分解、酸化または他の様式で反応でき、活性化合物、特に本発明の化合物を提供することができる化合物の誘導体を指す。プロドラッグの例には、非限定的ではあるが、生物加水分解性基、例えば硝酸ソーダ、亜硝酸塩、ニトロソ化合物、生物加水分解性アミド、生物加水分解性エステル、生物加水分解性カルバマート、生物加水分解性チオレート、生物加水分解性チオエステル、生物加水分解性セレニド及び生物加水分解性リン酸類似体(例えば、一リン酸、二リン酸または三リン酸化合物)を含む、本発明の化合物の誘導体および代謝産物が含まれる。例えば、カルボキシル官能基を有する化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子上に存在する任意のカルボン酸部分をエステル化することによって好都合に形成される。プロドラッグは、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed. (Wiley, 2001)及びDesign and Application of Prodrugs (Harwood Academic Publishers Gmbh, 1985)に記載される方法など、周知の方法を使用して典型的に製造することができる。
本明細書中及び添付の請求項において、単数形の「a」、「an」及び「the」は、別途の明確な記載がない限り、複数形を含む。すなわち、例えば「細胞(cell)」は、1個または複数の細胞を、又は当業者にとって一般に受け入れられているものと同等であるものを表す。
本明細書中における用語「約」は、使用される数値の±10%を意味する。すなわち、約100mgとは、90〜110mgの範囲を指す。
治療方法と併せて使用する場合の「投与する」とは、患者に治療薬を投与し、標的となった組織に好影響を与えることを意味する。本明細書で、本明細書に記載の化合物と併せて「投与する」という用語を使用する場合は、非限定的ではあるが、例えば静脈注射によって患者に対して全身的に本明細書中の化合物を提供し、治療薬が目的組織に到達することを含む。化合物を「投与する」には、例えば注射、経口、局所投与、または他の既知の技法と組み合わせた方法によって達成され得る。投与は自己投与であってもよく、このような処置を必要とする患者は治療薬を受け入れ、または投与は処置を必要とする患者の医療従事者、その他健康管理専門者又はケアテイカーによって投与される。
本明細書中の用語「動物」、「患者」又は「対象」には、限定的ではないものの、ヒト及びヒト以外の脊椎動物を含み、例えば野生動物、家畜、牧場動物を含む。
用語「増進する」は、本発明が、それが提供、適用又は投与された組織の特徴及び/又は身体的属性を変化させることを伝達するために使用される。用語「増進する」は、疾病状態と併用して使用することもでき、すなわち、疾病状態が「増進」すると、疾病によって引き起こされた症状又は身体的特徴が減少し、低下し、または消失する状態を指す。
用語「阻害する」とは、疾病の発症を阻止し、症状を低減し、又は病気、疾患、障害または症状を除去するために、本発明の化合物を投与することを含む。
「医薬として許容可能」とは、担体、希釈液又は賦形剤が、組成物の他の成分と適合でき、投与者にとって有害ではないことを意味する。
本明細書中の用語「治療薬(therapeutic)」とは、特定の実施例で示され得る、患者に求められていない疾患、障害または症状を防ぎ、阻止し、改善し、増進し、予防し、阻害し、ブロックし又は逆転させるために使用される薬剤である。一部において、本発明の実施形態は、炎症性疾患、肥満、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患、アテローム形成、脂肪生成、新生内膜増殖、腎臓障害及び生体異物に伴う損傷、限局性筋炎、アンジオテンシンIIの生成に伴う全身的高血圧、肺動脈性高血圧、心臓及び肺線維症、潰瘍性大腸炎、痛覚、卒中、運動ニューロン疾患、糖尿病、喘息、COPD、メタボリックシンドローム、高トリグリセリド血症、脂肪肝及び自己免疫疾患の治療に対応する。
組成物の「治療的に有効な量」または「有効量」は、所望の効果を達成するために、すなわち特定の実施例で示された患者の疾患、病気、または病気を防ぎ、阻止し、改善し、増進し、予防し、阻害し、ブロックし又は逆転させるために計算した所定量である。例えば「処置方法」の実施例に記載されている「治療に有効な量」は、所望の処置効果を達成するための必要量、すなわち、症状、疾病または病気を防ぎ、阻止し、改善し、増進するために必要な量である。例えば「予防方法」の実施例に記載されている「治療に有効な量」は、所望の処置効果を達成するための必要量、すなわち、症状、疾病または病気の発症前に予防し、阻害し、ブロックし又は逆転するために必要な量である。一部において、本発明の実施形態は、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、急性腎疾患(AKI)、慢性腎疾患 (CKD)、アテローム形成、脂肪生成、新生内膜増殖、腎臓障害及び生体異物に伴う損傷、限局性筋炎、アンジオテンシンIIの生成に伴う全身的高血圧、肺動脈性高血圧、心臓及び肺線維症、潰瘍性大腸炎、痛覚、卒中、運動ニューロン疾患、糖尿病、喘息及びCOPDの治療に対応する。本実施方法で熟考される活動は、適切に、薬学的治療及び/又は予防的処置の双方が含まれる。治療及び/又は予防の効果を得るために本発明に沿った化合物を所定量投与することは、当然ながら、当該事情に関する特定の状況に応じて決定され、例えば投与される化合物、投与される経路、処置する状況が含まれる。しかし有効投与量は、関連する状況に応じて医療従事者によって決定されると理解され、これには処置が必要な状態、投与する化合物の選択、並びに投与する経路が含まれ、そのため、ここに含まれる投与量の範囲は本発明の範囲をいかなる場合も狭めるものではない。本発明の化合物における治療的に有効な量は、典型的には、生理学的に許容可能な賦形剤組成物として投与した場合、組織において有効な全身濃度または局所濃度を達成するために十分な投与量である。
本明細書中の用語「処置(treat)」、「処置した(treated)」、「処置する(treating)」、「改善する(ameliorate)」、「増進する(improve)」、又は「促進する(promote)」は、治療処置及び予防的治療又は予備的治療の両方が含まれ、当該剤形が望ましくない生理的疾患、障害又は病気を予防し又は遅らせ(軽減し)、又は有利な又は望ましい臨床的結果を得ることを目的とする。本発明の目的において、有利な又は望ましい臨床的結果は、非限定的ではあるが、疾患、障害又は病気の軽減、疾患、障害又は病気のある程度の消滅、疾患、障害又は病気の状態の安定(例えば悪化させない)、障害、疾患又は疾病の維持、疾患、障害又は病気の発症又は進行を遅らせる、疾患、障害又は病気を(部分的または全体的に)、検知可能または不可能を問わずに寛解する、疾患、障害又は病気の状態が改善し又は増進することをいう。改善又は促進には、所定の水準を超えた副作用を起こすことなく、臨床的に顕著な反応を引き出すことをいう。
一般的に、用語「組織」とは、特定の機能を遂行するために結びつけられた、特殊化された細胞の凝集体をいう。
ニトロ脂肪酸は、典型的には酸化ストレス又はニトロ化ストレスに反応して上昇し、または食品に含まれる化合物である。このような化合物は、炎症性疾患、肥満、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患、アテローム形成、脂肪生成、新生内膜増殖、腎臓I/R(虚血再灌流)障害及び生体異物に伴う損傷、限局性心筋I/R障害、アンジオテンシンIIの生成に伴う全身的高血圧、肺動脈性高血圧、心臓及び肺線維症、潰瘍性大腸炎、痛覚、卒中、運動ニューロン疾患、糖尿病、喘息及びCOPDに対する、潜在的な酸化防止治療薬及び非炎症性治療薬である。特に、ニトロオレイン酸(NO2-OA)は複数の研究対象となっている。ニトロオレイン酸は、Nrf2、NF-κB、熱ショック因子(HSF)、PPAR-γを含む、複数の調節経路に影響を与え、抗酸化及び抗炎症効果を引き起こす。またニトロオレイン酸は、キサンチンオキシダーゼ、可溶性エポキシドヒドロラーゼ及び5−リポキシゲナーゼの酵素阻害に直接的に繋がる。ニトロ脂肪酸によって修飾される調節経路にはさらに、細胞外シグナル調節キナーゼ、Junアミノ末端キナーゼ、p38分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT1)、TNF受容体関連因子6及びToll様受容体4(TLR4)が含まれる。
しかし、ニトロオレイン酸を医薬品の候補する際のポテンシャル障壁は、プロスタグランジンレダクターゼ1、肝臓で初回通過、グルタチオンの可逆内転及び排泄に伴う、β酸化反応の結果及びニトロアルケンの減少による急激な代謝である。効能を上げるためには、医薬品は代謝の初回通過に耐えられることを要する。活性医薬品は、ミクロビオームおよび肝臓内で代謝するため、活性薬物の有効量を回路へ適切に送達するためには、保護される必要がある。
ニトロアルケンの可逆チオール化によるニトロオレイン酸修飾は、代謝の停止を防止し、ニトロオレイン酸の潜在的な求電子的特徴を保護する。
本明細書で開示する発明の実施例は、チオレート化した求電子性の不飽和の活性脂肪酸に関し、特に、チオレート化したニトロ化不飽和脂肪酸に関する。本明細書において「活性脂肪酸」とは、脂肪酸の飽和又は不飽和の脂肪族鎖の不飽和炭素と共有結合した、少なくとも一つの電子求引基を有する脂肪酸を指す。このような活性脂肪酸は、炭化水素鎖上のいずれの数の位置において、いずれの数の電子求引基と置換された脂肪族鎖を含んでもよく、このような電子求引基は、炭素−炭素二重結合と関連していても、していなくてもよい。同様に、本明細書に開示されたチオレート化活性脂肪酸は、いずれの数の二重結合を有する脂肪族鎖を含んでもよく、これらは電子求引基と関連していても、していなくてもよく、さらにチオレート化活性脂肪酸は、チオール基などの硫黄含有官能基を含む。いくつかの実施形態において、硫黄含有官能基は、不飽和の脂肪族鎖のうちのβ(ベータ)炭素、γ(ガンマ)炭素又はδ(デルタ)炭素に位置していてもよく、電子求引基はα(アルファ)炭素に付随する。
ニトロアルケンの求電子性二重結合は、H(S)xRによって可逆的に保護され、チオレート化活性脂肪酸を生成する。チオレート化活性脂肪酸はプロドラッグとなり、初回通過による代謝を回避できる。求電子性二重結合は、下記に示す通り、保護基のロスの後に再生成される。
例えば、一実施形態において、チオレート化活性脂肪酸は、以下の式(I)で表される。
うち、Rは水素(−H)、メチル、又はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニルであり、(S)xRはスルフィノ(−SOOH)、スルホ(−SOOOH)又はチオシアン酸(−SCN)等の硫黄含有官能基であり、xは1〜5の整数であり、q及びmはそれぞれ、独立した1〜10の整数である。式(I)の化合物は、β炭素に硫黄を含有する官能基を含む。
他のチオレート化活性脂肪酸を含有する化合物は、以下の式(II)で表される。
うち、Rは水素(−H)、メチル、又はC〜Cアルキル、アルケニル、アルキニルであり、(S)xRはスルフィノ(−SOOH)、スルホ(−SOOOH)又はチオシアン酸(−SCN)等の硫黄含有官能基であり、xは1〜5の整数であり、q及びmはそれぞれ、独立した1〜10の整数である。式(II)の化合物は、δ炭素に硫黄を含有する官能基を含む。
一実施形態では、式(I)又は(II)のRは、活性脂肪酸のカルボキシル基に付着した二官能性のアルキル、アルケニル又はアルキニルであり、橋構造又は環構造を形成する。一実施形態では、残基を含有する硫黄は、β、χ又はδ炭素に配置される。例えば、β炭素に二官能性環状硫黄の残基を含有する、式(IIIa)及び(IIIb)の化合物は、以下の式で表される。
ここで、Yは独立して酸素(O)又は窒素(N)であり、各xは独立して整数1〜5の間の数字であり、q、m、p及びtは、独立して整数1〜10の間の数字である。
一実施形態において、硫黄を含有する官能基は、2個の活性脂肪酸を結合し得る。例えば、本発明の多様な実施形態は、式(IV)の化合物に関する。
及びRは、独立して水素の陰イオン(−H)及び電子求引基から選択される。電子求引基は、非限定的ではあるが、-COH, -COR, -COOH, -COOR, -Cl, -F, -Br, -I, -CF3, -CN, -SO3-, -SO2R, -SO3H, -NH3 +, -NH2R+, -NHR2 +, -NR3 +及び -NO2を含む。R及びRのうち少なくとも一つは電子求引基であり、Y及びYは-H, -COH, -COR, -COOH 及び-COORから独立して選択され、R及びRのうちの少なくとも一つは電子求引基であり、各xは独立して1〜5の間の整数であり、q、m、p及びtは、独立して1〜10の間の整数である。
本発明の多様な実施形態は、式(Va)、(Vb)及び(Vc)の化合物に関する。
ここで、各xは独立して1〜5の間の整数であり、q、m、p及びtは、独立して1〜10の間の整数であり、化合物もこれを含有する。
本発明の他の実施形態は、式(VI)の化合物に関する。
ここで、各xは独立して1〜5の間の整数であり、化合物もこれを含有する。
一実施形態において、化合物は式(VII)に表される、チオレート化ニトロオレイン酸(NO2-OA-Sx)の種である。
電子求引基は、元の二重結合におけるcis又はtrans構造、又はsp3キラル/不斉中心のR/S絶体立体化学のどちらかに位置していてもよい。例えば一実施形態では、チオレート化活性脂肪酸は一つの電子求引基を有してもよく、他の形態では、チオレート化活性脂肪酸は炭化水素鎖に沿って複数の位置において複数の電子求引基によって置換されていてもよい。本発明のチオレート化活性脂肪酸は、カルボキシの末端炭素から端末メチル基(ω位置)の間に、脂肪族炭化水素鎖に沿って配置された炭素のいずれに電子求引基が配置されてもよいが、一実施形態では、電子求引基はカルボキシ末端炭素及び/またはメチル末端炭素から約3炭素以内に配置され、他の実施形態では、電子求引基はカルボキシ末端炭素及び/またはメチル末端炭素から約5炭素以内に配置される。他の実施形態では、電子求引基はカルボキシ末端炭素及び/またはメチル末端炭素から約7炭素以内に配置され、さらなる実施形態では、電子求引基はカルボキシ末端炭素及び/またはメチル末端炭素から約9炭素以内に配置される。
ある実施形態では、電子求引基は活性脂肪酸の二重結合から発生する炭素に位置し、「電子求引性を有するビニル基」を生成する。このようなビニル基の電子求引基は、二重結合のどちら側に配置されてもよい。本発明の実施形態に包含される脂肪酸は、脂肪族炭化水素鎖上のうちのいずれかの炭素の1個以上の電子求引性ビニル基に配置され、不飽和脂肪酸が1の電子求引基を持つには複数の手法がある。一実施形態では、チオレート化活性オレイン酸(octadec-9-enoic acid)は、18炭素に由来し、9位炭素(C−9)及び10位炭素(C−10)の間に1つの二重結合を持つ(「18:1」と数値表現される)ω-9脂肪酸であって、9位炭素又は10位炭素において電子求引基を有し得、代替位置においてチオール(−SR)を有し得る。他の実施形態において、チオレート化活性リノール酸(octadeca-9,12,-dienoic acid)は、18炭素に由来し、ω-6炭素(C−13)及びω-7炭素(C−12)の間と、ω-9炭素(C−10)及びω-10炭素(C−9)との間に2つの二重結合を有し、9位炭素又は10位炭素、又は12位炭素又は13位炭素において電子求引基を有し得、代替位置においてチオール(−SR)を有し得る。同様に、他の多価不飽和脂肪酸は、3、4、5、6、またはそれ以上の二重結合を有し、元の二重結合の位置において一つの電子求引基を有し、対応する隣接した代替位置にチオール基(−SR)を有し、全ての可能な順位の位置及び電子求引基の群を含む。
他の実施形態において、一価不飽和脂肪酸又は多価不飽和脂肪酸は2つの電子求引基を有し、多様な手法によって、多価不飽和脂肪酸は2つの電子求引基を持つことができる。例えば、一実施形態では、チオレート化活性リノール酸(octadeca-9,12,-dienoic acid)は、18炭素に由来し、ω−6(C−13)及びω−7(C−12)炭素間及びω−9(C−10)及びω−10(C−9)炭素間の2つが二重結合であるω-6脂肪酸であり、C−9、C−10、C−12またはC−13のうちのいずれか2つの位置で電子求引基を有していてもよく、想定される置換はC−9及びC−12、C−9及びC−13、C−10及びC−12又はC−10及びC−13であり、代替位置において1つ又は複数のチオール(−SR)を有する。
前述した1つの電子求引基又は2つの電子求引基を有する化合物の記載に関連し、3、4、5またはそれ以上の電子求引基を有していてもよい。上述の理論に従い、前述した1つの電子求引基又は2つの電子求引基を有する化合物では、1の電子求引基又は2の電子求引基を有する化合物、3、4、5、6またはそれ以上の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸は、接合している又は接合していないに関わらず、想定できる全ての置換位置、求核性置換基及び電子求引基を含む、二重結合のうちのいずれの位置に配置されていてもよい。加えて、上述したいずれの実施例においても、非電子求引基の数に関わらず、活性脂肪酸の脂肪鎖の炭素と共有結合してもよい。例えば一実施例では、本発明のチオレート化活性脂肪酸は、1つまたは複数のメチルと、C〜Cアルキル、アルケニル、又はアルキニル又はアミノが、チオレート化活性脂肪酸の脂肪鎖の炭素のうちの1つまたは複数と共有結合してもよい。
用語「電子求引基」は、当該技術分野において認識されている用語であり、隣接原子から価電子を引きつける傾向がある置換基を指し、例えば置換基は隣接原子に対して電気陰性である。用語「求核剤」又は「電子供与基」は、当該技術分野において認識されている用語であり、置換基が余剰な価電子を隣接する原子に寄付する習性であり、例えば置換基は隣接する原子に対して電子的に陽性である。電子求引力の定量化は、ハメットシグマ(σ)定数による(March, Advanced Organic Chemistry 251-259, (McGraw Hill Book Company, New York, 1977を参照)。ハメット定数値は、一般に電子供与基ではマイナスであり、電子求引基ではプラスである。例えばハメット定数値は、パラ置換NH2(σ[P])は約−0.7、ニトロ基(σ[P])はσ約+0.8である。
本発明の実施例は、既知の電子求引基を包含する。例えば電子求引基は、非限定的であるが、アルデヒド(-COH)、アシル(-COR)、カルボン酸(-COOH)、エステル(-COOR)、ハリド(-Cl、-F、-Br等)、フルロメチル(-CFn)、フルオロアルキル(-CFnH2-nR)、シアノ(-CN)、スルホキシド(-SOR)、スルホニル(-SO2R)、スルホネート(SO3R)、1°, 2°, 3°アンモニウム(-NR3+)及びニトロ(-NO2)が含まれていてよく、各Rは、独立して水素、メチル、又はC〜Cアルキル、アルケニル又はアルキニルである。一実施形態では、電子求引基はσが少なくとも0.2以上の強い電子求引基であり、一実施形態では電子求引基が双極子を形成する。例えば、特定の実施形態では、電子求引基はニトロ、アンモニウム、又はスルホニルである。一実施例では、本発明のチオレート化活性脂肪酸は、例えばチオール (-SR)、アルコール (-OH)、リバースエステル (-OOCR)、アルキル、アルケニル、アルキニル、1°及び2° アミン (-NR2)、N-含有ヘテロ環(-N=, -NR-)、硝酸塩(-ONO2)、ニトリト(-ONO)等を含む、非電子求引基又は電子供与基によってさらに置換されてもよい。
本実施例の脂肪酸は、全ての既知の不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸でありえる。用語「脂肪酸」は、脂肪族モノカルボン酸を意味する。多様な実施形態には、特定された、天然由来の脂肪酸と同一又は同様の脂肪族炭化水素鎖を有する、活性化脂肪酸を含み得る。例えば、既知である天然由来の脂肪酸の脂肪族炭化水素鎖は、一般的には分岐しておらず、約4〜約24の間の偶数個の炭素を含み、他には脂肪族炭化水素鎖に12〜18の炭素を有する脂肪酸を含む。他の実施形態では、脂肪族炭化水素鎖によって、脂肪酸に24以上の炭素を含み得る。本発明の実施形態は、このような天然に存在する脂肪酸のみならず、奇数個の炭素を含み得る天然に存在しない脂肪酸及び/又は天然に存在しないリンカーをも包含する。よって、本発明の実施例は、例えば5〜23個の炭素等、奇数個の炭素を有する脂肪酸を含み、他の実施例では11〜17個の炭素を有する脂肪酸を含む。他の実施形態では、本実施例の脂肪酸は23個よりも多い炭素を有し得る。本発明の天然由来及び天然由来ではない脂肪酸は、炭化水素鎖に沿って1か所以上で分岐してもよく、他の実施例では、それぞれの分岐では1〜24個の炭素、2〜20個の炭素又は4〜18個の炭素である脂肪族炭化水素鎖を含み、各分岐の炭素数は偶数又は奇数である。
本実施例に係る脂肪酸の脂肪族炭化水素鎖は、不飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸であってよい。用語「不飽和」は、少なくとも1つの二重結合及び/又は置換基を含む、脂肪族炭化水素鎖を有する脂肪酸である。反対に、「飽和」炭化水素鎖は、二重結合又は置換基を有しない。すなわち、炭化水素鎖の各炭素は「飽和」しており、最大数の水素を有する。「多不飽和性脂肪酸」は、一般的には1つ以上の二重結合を有する、炭化水素鎖を持つ脂肪酸である。多様な実施例の不飽和脂肪酸又は多価脂肪酸の二重結合は、脂肪族炭化水素鎖に沿ったいずれの位置に配置されてもよく、これらはシス型又はトランス型でありえる。用語「シス型(cis)」とは、隣接する炭素が同じ側にある二重結合をいい、用語「トランス型(trans)」とは、隣接する炭素が反対側にある二重結合をいう。典型的に「cis」がZと同一配置であり、「trans」がEと同一配置であるが、化合物を命名するIUPAC規則がこの反対の名称を与えることもあり、ニトロアルケンはその典型例である。例えば、ニトロアルケンは2つの炭素基「cis」を有し得るが、化合物の命名で優先する2つの基(アルケンの一方の炭素上のニトロ基とアルケンの他方の炭素上の炭素基)は反対側にあるためEとなる。すなわち、「cis」二重結合のニトロアルケン類似体は実際にはEニトロアルケンである。同様に、「trans」二重結合のニトロアルケン類似体は実際にはZニトロアルケンである。理論に拘束されることを望むものではないが、炭素鎖に沿ったcis構造の二重結合(cis炭素鎖であるがEニトロアルケン)は、炭素鎖内に曲がり誘発し得る。炭素鎖に沿った「trans」構造の二重結合(trans炭素鎖であるがZニトロアルケン)は、炭化水素鎖を曲がらせることはない。本発明の実施形態は、cis又はtrans配置のどちらかで二重結合を有する活性化脂肪酸を含み得、チオレート化活性脂肪酸及びチオレート化活性脂肪酸の幾何異性体を含むcisとtransの組合せを含み得る組成物を包含する。
多くの不飽和及び多価不飽和脂肪酸が特定されており、天然に存在することが判明している。このような天然に存在する不飽和又は多価不飽和脂肪酸は、一般的に、その脂肪族炭化水素鎖内に偶数個の炭素を含む。例えば、天然に存在する不飽和又は多価不飽和脂肪酸は、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22個などの炭素を有し得、オメガ(ω)-3、ω-5、ω-6、ω-7、ω-9炭素−炭素二重結合を含み得る。いずれの脂肪酸も本発明の実施形態で役に立ち得る。記号「ω」は、脂肪族炭化水素鎖の末端メチル炭素を表すために使用される。ω−X脂肪酸の二重結合の配置は、ω炭素から炭素数Xの炭素−炭素二重結合である。例えばω-6脂肪酸は、ω炭素から逆方向に数えて6番目と7番目の炭素間に二重結合を有し、ω-3脂肪酸は、ω炭素から逆方向に数えて3番目と4番目の炭素間に二重結合を有する。本発明の種々の実施形態は非限定的であるが、例えばリノレン酸、α-リノレン酸、エイコサペンタン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサン酸及びステアリドン酸を含むニトロ化ω-3脂肪酸、非限定的であるがミリストレイン酸などのニトロ化ω-5脂肪酸、非限定的であるがリノール酸、γ-リノール酸、ジホモ-γ-リノール酸及びアラキドン酸などニトロ化ω-6脂肪酸、非限定的であるが共役リノール酸及びパルミトレイン酸などのニトロ化ω-7脂肪酸、及び非限定的であるがオレイン酸及びエルカ酸などのニトロ化ω-9脂肪酸が挙げられる。勿論、二重結合の配置がカルボン酸の炭素から数えることによって決定されるIUPAC命名法を用いて本発明の脂肪酸を表してもよく、IUPAC命名法を用いると「C−X」は脂肪族炭化水素の炭素を表し、Xはカルボン酸から数えた炭素数(カルボニル炭素そのものを含む)である。本発明の実施形態は天然に存在する脂肪酸及びその誘導体の合成等価物をも包含する。
本発明の他の実施形態は、例えば、5、7、9、11、13、15、17、19、20、21等の奇数個の炭素を有し得る、天然に存在しない不飽和又は多価不飽和脂肪酸を含む。天然に存在する脂肪酸のように、天然に存在しない脂肪酸と関係がある1つ以上の二重結合は、脂肪族炭化水素鎖に沿ったいずれの位置に配置されてもよく、二重結合はcis又はtrans配置のどちらであってもよい。さらに他の実施形態では、天然に存在しない脂肪酸は、脂肪族炭化水素鎖を中断する1つ以上のリンカー基を含んでよい。例えば、一部の実施形態では、活性化脂肪酸は、脂肪族炭化水素鎖内のいずれの位置においても、例えばエステル、エーテル、ビニルエーテル、チオエーテル、アミノ、イミン等、1つ以上の非炭素−炭素結合を有し得る。
本発明の多様な実施形態は、脂肪酸の脂肪族鎖のいずれの2個の炭素間にも炭素−炭素二重結合を有し得る、不飽和若しくは多価不飽和脂肪酸を含み、多価不飽和脂肪酸にはいずれの数の炭素−炭素二重結合をも存在し得る。例えば一部の実施形態では、多価不飽和脂肪酸は2、3、4、5、又は6以上の炭素−炭素二重結合を有し得る。このような実施形態では、1以上の炭素−炭素二重結合は、個々にcis又はtrans配置のいずれであってよい。ある実施例では、チオレート化活性脂肪酸は、関連する電子求引基を有する、多価不飽和脂肪酸のうちの少なくとも一つの炭素−炭素二重結合の反応から導きだされ、他の実施形態では、多価不飽和脂肪酸の炭素−炭素二重結合のうちの1つ以上は関連する電子求引基を有し得る。さらに他の実施形態において、電子求引基は、二重結合した炭素-炭素の元の炭素又は二重結合した炭素-炭素のどちらかに直接隣接する炭素のいずれかと関係があってよく、チオールは、二重結合した炭素−炭素とは他の炭素又は二重結合した炭素-炭素のどちらかに直接隣接する炭素のいずれかと関係があってよい。例えば一部の実施形態では、電子求引基は元の炭素−炭素二重結合のアルファ(α)炭素に結合し、他の実施形態では、電子求引基は元の炭素−炭素二重結合のベータ(β)炭素と関係していてもよい。これらの実施形態では、チオールは元の炭素−炭素二重結合のベータ(β)炭素に結合し、他の実施形態では、電子求引基は元の炭素−炭素二重結合のベータ(α)炭素に隣接する。
特定の実施形態では、少なくとも1つの電子求引基を有する不飽和脂肪酸は、共役脂肪酸でありえる。当該実施形態では、脂肪族鎖の2つの炭素−炭素二重結合は、その間にメチレン基が存在しないように相互に隣接している。当該共役化合物は、一般的に1,3-ジエン、又は共役脂肪酸と呼ばれる。このような1,3-ジエンは、6つの位置、すなわち1,3-ジエンの1、2、3、及び/又は4位、並びにジエンに隣接する2個の炭素(1,3-ジエンの炭素を特定する1、2、3、4法と関連させると0及び5位)のどの位置に1つ以上の電子求引基を含んでよい。例えば、1つの関連電子求引基は、上記6つの位置、すなわちジエンの1、2、3、若しくは4位又は1,3-ジエンに隣接する炭素のどちらか(上述したように、0若しくは5位)のいずれにも結合し得る。さらなる実施形態では、2つの関連する電子求引基は、6つの位置のうちのいずれの2つにも結合でき、3つの関連する電子求引基は6つの可能性のある位置のいずれの2つにも結合でき、4つの関連する電子求引基は6つの可能性のある位置のいずれの2つにも結合でき、5つの関連する電子求引基は6つの可能性のある位置のいずれの2つにも結合でき、6つの関連する電子求引基は6つの可能性のある位置のいずれの2つにも結合できる。すなわち、1,3-ジエンにおいて上述した6つの位置のいずれかに結合した電子求引基の構造も、本発明の内容に包含される。
多様な実施形態では、本発明のチオレート化活性脂肪酸は、調製後に異性化を受け、二重結合のcis/trans構造又は二重結合の位置のいずれか、又はその両方が変化し得る。例えば多様な実施形態では、チオレート化活性脂肪酸は、炭素−炭素二重結合のγ炭素に結合した電子求引基を有する炭素−炭素二重結合から調製される。調製後、炭素−炭素二重結合は異性化を受け、異性化後、電子求引基は炭素−炭素二重結合と共役結合状態となる。このような異性化は、調製後のいずれの時点でも自発的に起こり得、最初に生成された第1調製の活性化脂肪酸の異性体の組合せを実質的に含む、単一種のチオレート化活性脂肪酸を含むように、当初調製された組成物を生成する。
さらに他の実施形態では、チオレート化活性脂肪酸のカルボキシ末端が修飾され得る。例えばある実施形態では、チオレート化活性脂肪酸は、脂肪酸のカルボキシ末端と関係があるグリセロールを含むことによりグリセロ脂質を生成し、このグリセロ脂質はモノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドであってよい。ジグリセリド又はトリグリセリドの脂肪酸の少なくとも1つは活性化脂肪酸であり、残りのいずれの脂肪酸も飽和又は不飽和脂肪酸である。同様に他の実施形態では、炭水化物がチオレート化した活性脂肪酸のカルボキシ末端と関連し、糖脂質を形成する。このような実施形態では、技術上周知のいずれの炭水化物も糖脂質の炭水化物成分であり得、これには、非限定的にガラクトース及びグルコースが含まれる。さらに他の実施形態では、炭水化物は、チオレート化活性脂肪酸のカルボキシ末端と関連するグリセリドと関連し、グリセロ−糖脂質を形成することがあり、該グリセロ−糖脂質のグリセロ部分と関係がある1又は2つの活性化脂肪酸を有し得る。1つの活性化脂肪酸のみがグリセロ−糖脂質と関係がある実施形態では、グリセロールの残りの位置は、飽和若しくは不飽和脂肪酸又は水素、アルキル、又は例えば、アルコール、アミン、ホスファート、ホスホン酸、チオール、スルホン酸などの官能基を含み得る。一定の実施形態では、本発明の活性脂肪酸のカルボキシ末端がリン酸塩と関連し、リン脂質を形成することがある。このような実施形態では、リン酸塩はカルボキシ末端を介して脂肪酸と直接関連してもよく、或いはリン酸塩は、1又は2つの活性化脂肪酸がグリセロール残基と結合しているジグリセリドと関連してもよい。1つのチオレート化した活性脂肪酸のみがグリセロールに結合している実施形態では、グリセロール上の残りの位置は、飽和若しくは不飽和脂肪酸又は水素、アルキル、又は例えば、アルコール、アミン、ホスファート、ホスホン酸、チオール、スルホン酸などの官能基を含み得る。さらなる実施形態では、活性脂肪酸のカルボキシ末端は、コレステロール又は他のステロール成分と関連していてもよい。さらに他の実施形態では、カルボキシ末端を第2の活性剤の共有結合で修飾することができる。特定の実施形態では、グリセロールを含むカルボキシ末端の修飾はニトロ基を含み得ない。理論に拘束されることを望むものではないが、チオレート化活性脂肪酸のカルボキシ末端の修飾は、投与後の活性化脂肪酸の分配を増強し、かつ投与後のミトコンドリアにおけるβ-酸化を阻害することによって活性脂肪酸の回復力を改善することもできる。
本発明の化合物は、チオレート分子の中にダイマーとして存在する活性化脂肪酸の生物学的利用能を増加させる。求電子アルケンのチオレート化は、腸管から肝臓の初回通過による代謝において、分子を保護する。この保護は、プロスタグランジンレダクターゼ1によるアルケンの減少を防止し、グルタチオンの可逆内転を遅延することによって発生する。さらに、ポリスルフィド鎖が長くなると、分子の安定性が向上し、循環において活性脂肪酸の長期的な放出を提供する。チオレート化ニトロ脂肪酸がニトロ酸及び硫化水素を放出すると、さらなる予防策が提供される。
本発明で開示されるさらなる実施形態は、チオレート化脂肪酸は多硫化水素を放出し、少なくとも一つの実施形態では硫化水素を放出する。硫化水素(HS)は、一酸化窒素及び一酸化炭素と共に、ガス状伝達物質又はガス状メディエータとして一般的に参照される、生物的に活性化した気体である。硫化水素(HS)は、硫黄トランスフェラーゼの経路の延長として、シスタチオニンγ−リアーゼ、シスタチオニンβ−シンターゼ、又は3−メルカプトピルビン酸サルファトランスフェラーゼによって、細胞内のシステインから合成され、主にHSのアニオン形式で発見される。HSの反応は、その還元性及び求核性の性質、並びに遷移金属と複合体を合成する硫黄能力によって、主影響を受ける。硫化水素(HS)はタンパク質を変形し、イオンチャネル機能を修飾し、アポトーシスを阻害して内皮細胞、筋肉細胞、炎症細胞、ミトコンドリア、小胞体及び核転写因子の酸化ストレスを抑制する。特に、硫化水素はKATP及び一過性受容器電位(TRP)チャネルを活性化し、大コンダクタンスCa2+活性化K+(BKCa)チャネル、T−タイプカルシウムチャネル及びM−タイプカルシウムチャネルを阻害すると共に、NF−kB核移行、及びp38、ERK及びAktを含む複数のキナーゼを変化させる。このように変化した細胞及び代謝経路は、心血管系恒常性及び健康を改善させる。硫化水素は、血管の保護、血圧の調節に役立ち、心筋損傷及び炎症を防止する。
一実施形態では、チオレート化脂肪酸を投与することにより、硫化水素の生理学的及び/又は薬理的水準を達成し、血管を保護し、血圧を調節し、心筋損傷及び炎症を防止する。チオレート化脂肪酸は循環において硫化水素を放出し、炎症、虚血及び再灌流、血流低下、無酸素及び低酸素状態から離れた臓器を保護し、血管系恒常性を維持する。
本開示の実施形態において、チオレート化活性脂肪酸の治療上有効な量は、約5ミリグラムから約5000ミリグラムの間である。上述した本開示の多様な実施形態において、チオレート化活性脂肪酸の治療上有効な量は、一日量または一回量として、最小量から最大量の範囲において投与される。本開示の実施形態において、最小量は約5 mg、 約 10 mg、 約 25 mg、 約 50 mg、 約 75 mg、 約 100 mg、 約 125 mg、 約150 mg、 約 175 mg、 約 200 mg、 約 225 mg、 約 250 mg、 約 275 mg、 約 300 mg、 約325 mg、 約 350 mg、 約、 375 mg、 約 400 mg、 約 425 mg、 約 450 mg、 約 475 mg、 約500 mg、 約 525 mg、 約 550 mg、 約 575 mg、 約 600 mg、 約 625 mg、 約 650 mg、 約675 mg、 約 700 mg、 約 725 mg、 約 750 mg、 約 775 mg、 約 800 mg、 約 825 mg、 約850 mg、 約 875 mg、 約 900 mg、 約 925 mg、 約 950 mg、 約 975 mg、 約 1000 mg、 約 1500 mg、 約 2000 mg、 約 2500 mg、 約 3000 mg、 約 3500 mg、 約 4000 mg、 約 4500 mgである。本開示の実施形態において、最大量は約 5000mg、約 4500 mg、約 4000 mg、約3500 mg、約 3000 mg、約 2500 mg、約 2000 mg、約 1500 mg、1000 mg、約 975 mg、約 950 mg、約 925 mg、約 900 mg、約875 mg、約 850 mg、約 825 mg、約 800 mg、約 775 mg、約750 mg、約 725 mg、約 700 mg、約 675 mg、約 650 mg、約625 mg、約 600 mg、約 575 mg、約 550 mg、約 525 mg、約500 mg、約 475 mg、約 450 mg、約 425 mg、約 400 mg、約375 mg、約 350 mg、約 325 mg、約 300 mg、約 275 mg、約250 mg、約 225 mg、約 200 mg、約 175 mg、約 150 mg、約125 mg、約 100 mg、約 75 mg、又は約 50 mgである。一実施形態において、一日量は上述した最大量及び最小量の範囲内である。一実施形態において、一日量は約 25 mg から約 450 mg以下、約 25 mg から 約 425 mg、約25 mg から 約 400 mg、約 25 mg から 約 375 mg、約 25 mg から 約 350 mg、約 25 mg から 約325 mg、約 25 mg から 約 300 mg、約 25 mg から 約 275 mg、約25 mg から 約 250 mg、約 25 mg から 約 225 mg、約 25 mg から 約 200 mg、約 25 mg から 約175 mg,又は約 25 mg から 約 150 mgである。一実施形態において、一日量は約 50 mg から 約 450 mg、約75 mg から 約 450 mg、約 100 mg から 約 450 mg、約 150 mg から 約 450 mg、約 175 mg から 約 450 mg、約 200 mg から 約 450 mg、約 225 mg から 約 450 mg、約 250 mg から 約 450 mg,または約 275 mg から 約 450 mgである。
本明細書の実施例において、上述した一日量は、一日一回投与される。本明細書の実施例において、上述した一日量は、一日2回、同量が投与される。本明細書の実施例において、上述した一日量は、一日3回、同量が投与される。上述した一日量は、一日4回、同量が投与される。
他の実施例において、治療的に有効な量のチオレート化活性脂肪酸は、処置が進むにつれて異なってくる。例えば、一日量(または投与計画)は処置が進むにつれて、投与サイクルを通じて増やしても減らしてもよく、または一回量は投与中を通して増やしても減らしてもよい。
本明細書のチオレート化活性脂肪酸は、医薬として許容可能な組成物として調合してもよい。本明細書中、用語「医薬として許容可能」とは、化合物が医薬製品としての使用に適していることを意味する。医薬として許容可能なカチオンは、例えば金属イオンおよび有機イオンが含まれる。典型的な金属イオン塩には、非限定的であるが、適したアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びその他生理学的に許容される金属イオンが含まれる。そのような塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛のイオンから構成されてよい。好ましい有機塩は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカインからを含む、三級アミン及び四級アンモニウム塩から組成されてよい。医薬として許容可能な酸の例には、非限定的ではあるが、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、ギ酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、グルクロン酸、ピルビン酸、オキサル酢酸、フマル酸、プロピオン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸などが含まれる。
本発明の範囲には、本発明に係るチオレート化活性脂肪酸の異性体及び互変異体、並びにこれらの化合物の医薬として許容可能な塩も含まれる。医薬として許容可能な塩の例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルゲン酸、β-ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸およびガラクツロン酸から製造される。
本発明のチオレート化活性脂肪酸に関連して使用される医薬として許容可能な塩基付加には、金属イオン塩及び有機イオン塩が含まれる。典型的な金属イオン塩は、非限定的であるが、適したアルカリ金属(Ia群)塩、アルカリ土類金属(IIa群)塩、及びその他生理学的に許容される金属イオンが含まれる。そのような塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛のイオンから構成されてよい。好ましい有機塩は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカインからを含む、三級アミン及び四級アンモニウム塩から組成されてよい。上記の塩は、全て本発明の対応する化合物から、当業者が従来から慣用する手段によって製造することができる。
本明細書で開示する実施例において、チオレート化活性脂肪酸または医薬として許容可能なこれらの塩を治療上有効量で投与することは、第2製剤を投与することを含む。本明細書で開示する実施例では、第2製剤は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)、アンギオテンシンII受容体ブロッカ、又はこれらの組合せから選択される。一実施形態では、第2製剤はエナラプリルである。一実施形態では、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)は、ペリンドプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、ゾフェノプリル、キナプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、トランドラプリル、シラザプリル及びフォシノプリルの群から選択される。本明細書の実施形態では、アンギオテンシンII受容体ブロッカは、アジルサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、フィマサルタン、スピロノラクトンの群から選択される。
本実施形態において、第2製剤の治療的な有効量は、約2.5mgから250mg以下である。一実施形態において、第2製剤の一日量は、約5 mgから約200 mg、約10 mgから約150 mg、約15 mgから約100 mg、約20 mg から約75 mg、約25 mg から約50 mg、又は約30 mg から約40 mgである。
本発明のチオレート化活性脂肪酸は、従来の方法によって活性である経路によって投与することができる。投与は全身投与または局所投与であってよい。例えば投与方法は、非限定的であるが、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、口腔内または眼内経路、または経鼻、膣内、吸引によって、デポー注射によって、またはインプラントによってである。本明細書の一実施形態において、投与は非経口または静脈内投与であり、全て長期に渡る全身投与、組織の半減期及び細胞内送達に望ましい安定添加剤が存在する又は存在しない状態で送達される。すなわち、本発明の化合物の投与モード(単独又は他の医薬品との組み合わせの双方)は、注射可能である(短時間作用、デポー、インプラント、ペレット形態を含み、注射は皮下または筋肉注射である)。他の実施形態において、チオレート化活性脂肪酸を含む注射可能な調製物は、損傷又は炎症箇所へのデポーであり、例えば関節鏡検査、血管形成術、ステント配置、バイパス手術などによって生じた手術跡又は炎症箇所である。
本発明の更なる実施例は、チオレート化活性脂肪酸を投与する方法に関する。投与の具体的様式はさまざまであり、適応に依存する。具体的な投与経路および投与計画の選択は、最適な臨床反応を得るために、臨床家が、臨床家にとって公知の方法に沿って調節または漸増することができる。投与すべき化合物の量は、治療上の有効量である。投与する用量は、治療される被験体の特徴、例えば、治療される具体的な動物、年齢、体重、健康状態、該当する場合は並行療法の種類、および治療の頻度に依存し、当業者(例えば臨床家)が容易に決定することができる。当業者は、例えば、Goodman & Goldman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition (1996), Appendix II, pp. 1707-1711またはGoodman & Goldman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition (2001), Appendix II, pp. 475-493の指針に基づいて用量を決定することができる。両文献は参照によりその全体がここに組み入れられる。さらに、動物治験に基づき人体への投与量を特定するためには、アメリカ合衆国保健福祉省管轄のアメリカ食品医薬品局から発行された、以下の文献を使用できる。
http://www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatoryinformation/guidances/ucm078932.pdf.
本発明に係る化合物を含有する医薬的組成、及び適した担体は、多様な形態であってよく、非限定的であるが、本発明のチオレート化活性脂肪酸を有効量で含有した固体、液体、粉末、液体エマルジョン、懸濁液、半固体及び乾燥粉末を含む。係る製剤中には、医薬として許容可能な滑沢剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、防腐剤等と共に活性成分が含有され得ることも、当該技術分野において既知である。投与のための手段及び方法は当該技術分野において一般に受け入れられており、当業者は手引きとして様々な薬理学の参考文献を参照し得る。例えば、MODERN Pharmaceutics, Banker & Rhodes, Marcel Dekker, Inc.(1979);及び Goodman & Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,6th Edition,MacMillan Publishing Co., New York(1980)を参考にし得る。
本発明の化合物は、例えばボーラス注射や連続注入等、注射により非経口または静脈投与することができる。本開示に係る投与の組成は、例えば大量瞬時注射または持続注入による、非経口投与用に製剤化されてもよい。本組成物は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルジョン等の形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤等の、製剤化剤を含有してもよい。
例えば無菌注射用の水性もしくは油性懸濁液等の注射用製剤は、従来知られている方法により、適した分散剤又は湿潤剤、および懸濁化剤を用いて調製され得る。無菌注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口で投与される希釈液または溶媒における、無菌注射用液又は懸濁液であり得る。許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液、及び等張食塩水の溶液である。加えて、無菌の不揮発性油も、従来から溶媒または懸濁媒体として採用されている。この目的のために、合成のモノ−またはジグリセリドを含む、あらゆるブランドの不揮発性油が採用され得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸希釈液にも、注射物質としての調製用途が見いだせる。本発明の実施形態で有用な追加の脂肪酸希釈液には、例えば、1種又は複数種のステアリン酸、金属性ステアラート、フマル酸ステアリルナトリウム、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、ベヘン酸グリセリル、鉱油、植物油、パラフィン、ロイシン、シリカ、ケイ酸、タルク、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−グリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリエトキシル化ステロール、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化植物油などが含まれる。一実施形態では、脂肪酸希釈剤は脂肪酸の混合物であってよい。一実施形態では、脂肪酸は、脂肪酸エステル、脂肪酸の糖エステル、脂肪酸のグリセリド、またはエトキシル化脂肪酸エステルであってよく、他の実施形態では、脂肪酸希釈剤は脂肪アルコール、例えば、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、パルミトリル酸、セチルアルコール、カプリルアルコール、カプリリルアルコール、オレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキドニックアルコール、ベヘニルアルコール、イソベヘニルアルコール、セラキルアルコール、キミルアルコール、およびリノレイルアルコール等、並びにこれらの混合物であってよい。
本発明の実施例には上述したチオレート化活性脂肪酸を含み、これらは経口投与のために、カプセル、錠剤、ピル、粉末、顆粒として調製される。このような実施形態において、活性化合物は、例えばスクロース、ラクトース、またはデンプン等、1種以上の不活性希釈液と混合し得る。
そのような剤形には、通常実施の通り、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウムなどの希釈液も含まれていてよい。カプセル剤、錠剤、ピルの場合、剤形は緩衝剤を含んでもよく、さらに腸溶コーティングを用いて調製することができる。
上述の実施例において、治療に有効な量のチオレート化活性脂肪酸は、医薬化合物に含まれる。チオレート化活性脂肪酸の固体剤形としての調製は多様であってよい。例えば一実施形態において、チオレート化活性脂肪酸の液体またはゼラチン製剤は、チオレート化した活性脂肪酸と上記の1種以上の脂肪酸希釈液とを混合し、液体混合物に増粘剤を加えてゼラチンを形成させることによって調製されてもよい。その後、ゼラチンを単位剤形でカプセル化し、カプセルを形成する。別の典型的な実施形態では、上述した方法で調製されたチオレート化活性脂肪酸を凍結乾燥して固体を形成し、1種以上の医薬として許容可能な賦形剤、担体または希釈剤と混合して錠剤を形成することができ、さらに別の実施形態では、油性のチオレート化した活性脂肪酸は、結晶化して固体を形成し、医薬として許容可能な賦形剤、担体または希釈剤と混合して錠剤を形成することができる。
チオレート化活性脂肪酸の経口投与による使用に有用な別の実施形態には、液体剤形が含まれる。そのような実施形態では、液体剤形は、水などの当該技術分野で一般に使用される不活性希釈液を含む、医薬として許容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤を含んでもよい。そのような組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、並びに甘味剤、香味物質、香料物質などの補助剤を備えていてもよい。
さらに別の実施形態では、チオレート化活性脂肪酸は、持効性製剤として製剤化することもできる。そのような長時間作用型の製剤は、インプラント(例えば皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。持効性製剤は、約1〜約6か月またはそれ以上の間隔で投与することができる。そのため化合物は、例えば好適なポリマーまたは疎水性材料(例えば許容できる油中のエマルジョンとして)、またはイオン交換樹脂を用いて、または例えば難溶性の塩などの難溶性の誘導体として製剤することができる。
注射用製剤に適したな他の希釈液には、非限定的ではあるが、以下のものが含まれる。
植物油:本明細書中で使用される用語「植物油」とは、植物油のエトキシル化によって形成される化合物または化合物の混合物であり、ポリエチレングリコールの少なくとも1つの鎖が共有結合によって植物油に結合しているものを指す。一実施形態では、エトキシル化の量は、約2から約200、約5から100、約10から約80、約20から約60、または約12から約18のエチレングリコール反復単位で変動させることができる。植物油は硬化型または非硬化型であってよい。好適な植物油には、非限定的ではあるが、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ゴマ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ダイズ油、安息香酸ベンジル、ゴマ油、綿実油、およびパーム油が含まれる。他の好適な植物油には、市販の合成油、例えば、非限定的ではあるが、Miglyol 810及び812 (Dynamit Nobel Chemicals, Swedenから入手可能)、Neobee M5 (Drew Chemical Corp.から入手可能)、Alofine (Jarchem Industriesから入手可能)、Lubritabシリーズ(JRS Pharmaから入手可能)、Sterotex.TM. (Abitec Corp.から入手可能)、Softisan.TM. 154 (Sasolから入手可能)、Croduret.TM. (Crodaから入手可能)、Fancol.TM. (the Fanning Corp.から入手可能)、Cutina.TM. HR (Cognisから入手可能)、Simulsol.TM. (CJ Petrowから入手可能)、EmCon.TM. CO (Amisol Co.から入手可能)、Lipvol.TM. CO、SES、およびHS-K (Lipoから入手可能)、およびSterotex.TM. HM (Abitec Corp.から入手可能)が含まれる。ゴマ、トウゴマ、トウモロコシ、および綿実油を含む他の好適な植物油には、R. C. Rowe and P. J. Shesky, Handbook of Pharmaceutical Excipients, (2006), 5th ed.で列挙されるものが含まれる。当該文献は参照により全体が組み入れられる。好適なポリエトキシル化植物油には、非限定的ではあるが、Cremaphor.TM. ELまたはRHシリーズ(BASFから入手可能)、Emulphor.TM. EL-719 (Stepan productsから入手可能)、およびEmulphor.TM. EL-620P (GAFから入手可能)が含まれる。
鉱油:本明細書中で使用される用語「鉱油」とは、未精製および精製(軽)鉱油の両方を表す。好適な鉱油には、非限定的ではあるが、Avatechグレード(Avatar Corp.から入手可能)、Drakeolグレード(Penrecoから入手可能)、Siriusグレード(Shellから入手可能)、及びCitationグレード(Avater Corp.から入手可能)が含まれる。
ヒマシ油:本明細書中で使用される用語「ヒマシ油」とは、ヒマシ油のエトキシル化によって形成される化合物であり、ポリエチレングリコールの少なくとも1つの鎖が共有結合によってヒマシ油に結合している。ヒマシ油は硬化型または非硬化型であってよい。ポリエトキシル化ヒマシ油の同義語には、非限定的ではあるが、ポリオキシルヒマシ油、硬化ポリオキシルヒマシ油、ムクロゴールグリセロリリシノレアス(mcrogolglyceroli ricinoleas)、マクロゴールグリセロリヒドロキシステアラス(macrogolglyceroli hydroxystearas)、ポリオキシル35ヒマシ油及びポリオキシル40硬化ヒマシ油が含まれる。好適なポリエトキシル化ヒマシ油には、非限定的に、Nikkol HCOシリーズ(日光ケミカルズから入手可能)、例えばNikkol HCO-30、HC-40、HC-50及びHC-60 (ポリエチレングリコール-30硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール-40硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール-50硬化ヒマシ油、及びポリエチレングリコール-60硬化ヒマシ油、Emulphor EL-719 (ヒマシ油40モル-エトキシラート、Stepan Productsから入手可能)、Cremophoreシリーズ(BASFから入手可能)、例えばCremophore RH40、RH60、およびEL35(それぞれ、ポリエチレングリコール-40硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール-60硬化ヒマシ油、およびポリエチレングリコール-35硬化ヒマシ油)、およびEmulgin(登録商標)ROおよびHREシリーズ(Cognis PharmaLineから入手可能)が含まれる。他の好適なポリオキシエチレンヒマシ油誘導体には、R. C. Rowe and P. J. Shesky, Handbook of Pharmaceutical Excipients, (2006), 5th ed.で列挙されるものが含まれる、当該文献は参照により全体が組み入れられる。
ステロール:本明細書中で使用される用語「ステロール」とは、ステロール分子のエトキシル化から得られる化合物、または化合物の混合物を表す。好適なポリエトキシル化ステロールには、非限定的ではあるが、PEG-24コレステロールエーテル、Solulamm C-24 (Amercholから入手可能);PEG-30コレスタノール(cholestanol)、Nikkol DHC(日光ケミカルズから入手可能);フィトステロール、GENEROL.TM.シリーズ(Henkelから入手可能);PEG-25フィトステロール、Nikkol BPSH-25 (Nikkoから入手可能);PEG-5ダイズステロール(soya sterol)、Nikkol BPS-5 (Nikkoから入手可能);PEG-10ダイズステロール、Nikkol BPS-10(日光ケミカルズから入手可能);PEG-20ダイズステロール、Nikkol BPS-20 (日光ケミカルズから入手可能);およびPEG-30ダイズステロール、NikkolBPS-30 (日光ケミカルズから入手可能)が含まれる。本明細書中で使用される用語「PEG」は、ポリエチレングリコールを指す。
ポリエチレングリコール:本明細書中で使用される用語「ポリエチレングリコール」または「PEG」は、式−O−CH−CH−のエチレングリコールモノマー単位を含むポリマーを表す。好適なポリエチレングリコールはポリマー分子の各端に遊離ヒドロキシル基を有するもの、または低級アルキル、例えばメチル基でエーテル化された1個以上のヒドロキシル基を有してよい。さらに、エステル化可能なカルボキシ基を有するポリエチレングリコールの誘導体も好適である。本発明において有用なポリエチレングリコールは、任意の鎖長または分子量のポリマーであり、分岐を含むことができる。一実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は約200〜約9000である。一実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は約200〜約5000である。一実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は約200〜約900である。一実施形態では、ポリエチレングリコールの平均分子量は約400である。好適なポリエチレングリコールには、非限定的ではあるが、ポリエチレングリコール−200、ポリエチレングリコール−300、ポリエチレングリコール−400、ポリエチレングリコール−600、およびポリエチレングリコール−900が含まれる。名称中のダッシュ(−)に続く数字は、ポリマーの平均分子量を表す。一実施形態では、ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール−400である。好適なポリエチレングリコールには、非限定的にCarbowaxおよびCarbowax Sentryシリーズ(Dowから入手可能)、Lipoxolシリーズ(Brenntagから入手可能)、Lutrolシリーズ(BASFから入手可能)、およびPluriolシリーズ(BASFから入手可能)が含まれる。
プロピレングリコール脂肪酸エステル:本明細書中で使用される用語「プロピレングリコール脂肪酸エステル」とは、プロピレングリコールまたはポリプロピレングリコールと脂肪酸との間で形成されるモノエステルまたはジエステル、またはそれらの混合物を指す。プロピレングリコール脂肪アルコールエーテルを誘導するために有用な脂肪酸には、非限定的ではあるが、本明細書中で規定されるものが含まれる。一実施形態では、モノエステルまたはジエステルはプロピレングリコールから得られる。一実施形態では、モノエステルまたはジエステルは、約1〜約200オキシプロピレン単位を有する。一実施形態では、分子のポリプロピレングリコール部分は、約2〜約100オキシプロピレン単位を有する。一実施形態では、モノエステル又はジエステルは、約4〜約50オキシプロピレン単位を有する。一部の実施形態では、モノエステル又はジエステルは、約4〜約30オキシプロピレン単位を有する。好適なプロピレングリコール脂肪酸エステルには、非限定的ではあるが、ラウリン酸プロピレングリコールとしてはLauroglycol FCC及び90 (Gattefosseから入手可能);カプリル酸プロピレングリコールとしては、Capryol PGMC及び90 (Gatefosseから入手可能);プロピレングリコールジカプリルカプラートとしては、Labrafac PG (Gatefosseから入手可能)が含まれる。
ステアロイルマクロゴールグリセリド:ステアロイルマクロゴールグリセリドとは、主にステアリン酸から合成される、または主にステアリン酸に由来する化合物から合成されるポリグリコール化グリセリドを表すが、他の脂肪酸または他の脂肪酸由来の化合物を同様に合成で使用してよい。好適なステアロイルマクロゴールグリセリドには、非限定的ではあるが、Gelucire(登録商標)50/13 (Gattefosseから入手可能)が含まれる。
一実施形態では、希釈液成分は、1種以上のマンニトール、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、ソルビトール、キシリトール、粉末化セルロース、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファデンプン、リン酸カルシウム、金属炭酸塩、金属酸化物、または金属アルミノケイ酸塩を含む。
固体及び/又は液体剤形として使用する、例示的な賦形剤又は担体には、非限定的ではあるが、以下のものが挙げられる。
ソルビトール:適したソルビトールには、非限定的であるが、例えばPharmSorbidex E420 (Cargillから入手可能)、Liponic 70-NC及び76-NC (Lipo Chemicalから入手可能)、Neosorb (Roquetteから入手可能)、Partech SI (Merckから入手可能)及びSorbogem (SPI Polyolsから入手可能)が含まれる。
デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、およびアルファデンプンには、非限定的であるが、R. C. Rowe and P. J. Shesky, Handbook of Pharmaceutical Excipients, (2006), 5th ed.に記載のものが含まれる。当該文献は参照により全体が組み入れられる。
崩壊剤:崩壊剤には、1種以上のクロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、イオン交換樹脂、食物酸及びアルカリ炭酸塩成分に基づく沸騰系、粘土、滑石、デンプン、アルファデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、セルロースフロック、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸カルシウム、金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム又はリン酸カルシウムが含まれる。
一実施形態において、治療できる疾病は、非限定的ではあるが、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患、アテローム形成、脂肪生成、新生内膜増殖、腎臓障害及び生体異物に伴う損傷、限局性筋炎、アンジオテンシンIIの生成に伴う全身的高血圧、肺動脈性高血圧、心臓及び肺線維症、潰瘍性大腸炎、痛覚、卒中、運動ニューロン疾患、糖尿病、喘息及びCOPDである。
一実施形態において、炎症症状は、移植のための臓器保存、骨関節炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アテローム性動脈硬化症、同種移植拒絶、骨盤内炎症性疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、肺でのアレルギー性炎症、悪液質、卒中、うっ血性心不全、肺線維症、肝炎、グリア芽細胞腫、ギラン・バレー症候群、全身性エリテマトーデス、ウイルス性心筋炎、移植後臓器保護、急性膵炎、過敏性腸疾患、一般的炎症、自己免疫疾患、自己炎症性疾患(autoinflammatory disease)、動脈狭窄、臓器移植拒絶およびやけど、慢性肺損傷および呼吸困難、インスリン依存性糖尿病、インスリン非依存性糖尿病、高血圧症、肥満症、関節炎、神経変性障害、ループス、ライム病、痛風、敗血症、高体温、潰瘍、全腸炎、骨粗鬆症、ウイルスまたは細菌感染、サイトメガロウイルス、歯周病、糸球体腎炎、サルコイドーシス、肺疾患、肺炎症、肺の線維症、喘息、後天性呼吸困難症候群、タバコ誘発性肺疾患、肉芽腫形成、肝臓の線維症、移植片対宿主病、術後炎症、血管形成術、ステント留置またはバイパス移植後の冠血管および末梢血管再狭窄、冠動脈バイパス移植(CABG)、急性および慢性白血病、リンパ球白血病、新生物疾患、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎症、乾癬、免疫不全、播種性血管内血液凝固、全身性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳脊髄炎、浮腫、炎症性腸疾患、高IgE症候群、癌転移または増殖、養子免疫療法、再潅流症候群、放射線熱傷、円形脱毛症、虚血、心筋梗塞、動脈狭窄、関節リウマチ、冠血管再狭窄、神経認知の減退およびインスリン抵抗性である。
本明細書で開示された実施例は、有効量のチオレート化活性脂肪酸及び医薬として許容可能な賦形剤を被検体に投与し、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患を治療する方法に関する。
本明細書で開示された実施例は、有効量のチオレート化活性脂肪酸及び医薬として許容可能な賦形剤を被検体に投与して炎症性疾患、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患を治療する方法に関し、チオレート化活性脂肪酸は活性脂肪酸を長時間放出する。
本明細書で開示された実施例は、有効量のチオレート化活性脂肪酸及び医薬として許容可能な賦形剤を被検体に投与し、炎症性疾患、肥満、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患を治療する方法に関し、プロスタグランジンレダクターゼ1による活性脂肪酸アルケンの減少を防止する。
本明細書で開示された実施例は、炎症性疾患、肥満、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患を治療する方法に関し、被検体に対して有効量のチオレート化活性脂肪酸及び医薬として許容可能な賦形剤を投与し、グルタチオンによる活性脂肪酸の内転を遅延する。
本開示の実施例は、被験者の消化器系への副作用を減少しつつ炎症を治療する方法に関し、被験者に対し、有効量のチオレート化活性脂肪酸及び医薬として許容可能な賦形剤を投与する。被験者の消化器系への副作用には、下痢、痙攣、刺激、炎症性の腸疾患、大腸炎、潰瘍が含まれる。
本発明は以下の実施例を参照することにより、さらに詳しく理解されるが、これは発明の内容を説明するものであり、本発明を限定するものではない。
ニトロオレイン酸と、3〜5倍超の硫化ナトリウム又は水硫化ソーダを加えたメタノール及びpH9リン酸バッファを含有する溶液と、を直接反応させ、チオレート化した求電子脂肪酸を合成した。ニトロオレイン酸(NO2-OA)をメタノールに溶解し、バッファ内の硫化物の溶液にゆっくりと添加し、窒素大気において室温で2時間攪拌した。反応が静まり、希酸及び飽和塩化アンモニウム水溶液で短時間攪拌して、ジエチルエーテルによって分離及び抽出した。溶液を標準方法によって仕上げ、フラッシュクロマトグラフィによって精製した。調製物は、NMR及びLCMS分析を介して、可変数の架橋硫黄原子を有するジアステレオマーの組み合わせ、ダイマーとして特定される。
精製されたチオレート化ニトロオレイン酸で実験を行い、マウスマイクロファージ細胞(RAW264.7)において、所望の遺伝子発現モジュレーション及び抗酸化型発現が発生するかを確認した。これは、コントロールと比較して、ヘムオキシゲナ−ゼ−1、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ(キノン1)、グルタミン酸システインリガーゼ修飾サブユニットのNrf2依存性転写の活性化の増加により、反映された。ニトロオレイン酸で4時間及び8時間治療した場合と同様、チオレート化ニトロオレイン酸は、マウスマイクロファージ細胞に対し、用量依存的な抗酸化反応を示した。しかし時間が経過するにつれて、チオレート化ニトロオレイン酸によって活性化された遺伝子の誘発は、ニトロオレイン酸(16〜24時間経過後)の誘発よりも大変多かった。加えて、高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法によると、チオレート化ニトロオレイン酸は、自由ニトロオレイン酸を遊離し、それが次に同様のβ酸化および脂肪酸飽和プロファイルを示すことが示された。これによって、チオレート化ニトロオレイン酸は、腸管及び肝臓の初回通過による不活性化を回避し、チオレート化の反転によって、自由ニトロオレイン酸と同様の代謝及び生物的プロファイルを示す、実行可能なプロドラッグの候補となりえる結果を示した。
概要:OA−NO−Sプロドラッグを成功的に合成及び精製した。図1はNMRスペクトルを表し、Nrf2−依存遺伝子(ヘムオキシゲナーゼ1、AD(P)Hデヒドロゲナーゼ−キノン1、グルタミン酸システインリガーゼ修飾)はOA−NO−Sによって誘発され、OA−NO−Sの代謝プロファイルはプロドラッグからのニトロオレイン酸の放出及び代謝を示す。
マウスマイクロファージ細胞(RAW264.7)に対し、精製したチオレート化ニトロオレイン酸で4時間の治療を行った。RNAはをTrizol法によって抽出され、nanodrop技術を用いて定量化され、cDNAに逆転写された。そしてTaqmanアッセイを使用して定量的PCRを実行した。チオレート化ニトロオレイン酸で4時間治療した後、コントロール(ニトロオレイン酸又はOA−NO−Sを溶解するビヒクルとして使用される、培地交換又は低濃度もしくは高濃度のメタノール)と比較して、ヘムオキシゲナ−ゼ−1(HO−1、図2参照)、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ−キノン1(NQO−1、図3参照)及びグルタミン酸システインリガーゼ修飾サブユニット(GCLM、図4参照)に、Nrf2依存性転写の上昇が見られた。濃度50μMの OA−NO−Sの濃度は、治療後4時間の時点において、濃度5μMのニトロオレイン酸(HO−1(23.5倍)、NQO−1(7.7倍)およびGCLM(6.8倍))と同様に、HO−1(18.0倍)、NQO−1(6.8倍)およびGCLM(6.3倍)について同様のNrf2活性化プロファイルを誘導した。
実験詳細:各実験において、RAW264.7細胞に対し、濃度7.5μM、15μM、50μM及び100μMのOA−NO−S、濃度5μMのニトロオレイン酸、ビヒクル(5μM及び100μM)の最大量及び最低量に合わせるための2種類のメタノール(MeOH)及び培地コントロールのみで処理された。各実験において、処置グループ毎に2〜3の生物的レプリカを使用した。処置後、Trizol法によってRNAを抽出し、Nanodrop技術を用いて定量化し、cDNAに逆転写し、Taqmanアッセイを使用して定量的PCR(qPCR)を実行した。各qPCR実験において、各RNAのサンプルに対し2個のレプリカを生成した。2個のレプリカは、各生物的レプリカで平均化された。グラフ上の棒は、生物的レプリカの平均値の±標準誤差(SEM)を表す。
結果:RAW264.7細胞に対し、OA−NO−S及びニトロオレイン酸を用いて4時間治療をしたところ、ヘムオキシゲナ−ゼ−1(HO−1)、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ−キノン1(NQO−1)及びγ-グルタミルシステインリガーセ(GCLM)のNrf2依存性転写が増加した。
マウスマイクロファージ細胞(RAW264.7)に対し、濃度50μMのOA−NO−S、濃度5μMのニトロオレイン酸、メタノール(最大濃度である濃度50μMのOA−NO−Sと一致するように、最大量のビヒクルを追加した)及び培地のみを用いて、4時間、8時間、16時間及び24時間で処置された。各時間ポイントにおいて、Trizol法によってRNAを抽出し、Nanodrop技術を用いて定量化し、cDNAに逆転写し、Taqmanアッセイを使用して定量的PCRを実行した。図5によると、約8時間経過後に、ヘムオキシゲナ−ゼ−1の定常状態のmRNA水準が最大となり、培地及びビヒクルコントロールと比較し、OA−NO−S(116.5倍)及びニトロオレイン酸(30.7倍)を示した。そして、24時間経過後には基準値に戻った。16時間経過後、OA-NO2-Sx(7.5倍)処置によりヘムオキシゲナ−ゼ−1のmRNA水準は著しく高い状態を維持しているが、ニトロオレイン酸治療は基準値に戻っている(培地及びビヒクルコントロールと同じ水準)。図6によると、ニトロオレイン酸の処置では、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ−キノン1のmRNA水準が、8時間経過後及び16時間経過後に最大に達した(それぞれ115.0倍及び98.9倍)。しかし処置開始から16時間経過後におけるニトロオレイン酸と比較すると、OA−NO−Sを使用した処置では、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ−キノン1のmRNA水準が著しく高い水準にあることが分かる(OA−NO−Sは701.1倍であるのに対し、OA−NOは98.9倍)。グルタミン酸システインリガーゼ修飾のmRNA水準においても同様の傾向が見られ(図7参照)、処置から16時間経過後において、OA−NO−Sは30倍であるのに対し、濃度5μMのニトロオレイン酸を用いた処置では1.7倍である。図5〜7のデータによると、時間が経過するにつれて、チオレート化ニトロオレイン酸によって活性される遺伝子の誘発は、ニトロオレイン酸による処置よりも著しく多く(特に24時間経過後よりも、8〜16時間経過後において顕著である)、これはチオレート化ニトロオレイン酸が有望なプロドラッグであることを示している。
実験の詳細:マウスマイクロファージ細胞(RAW264.7)に対し、濃度50μMの OA−NO−S、濃度5μMのニトロオレイン酸、MeOH(濃度50μMの OA−NO−Sの最大濃度である50μMと一致するように、RAW細胞に対し最大量のビヒクルを追加した)及び培地を用いて、それぞれ4時間、8時間、16時間及び24時間の処置を行った。各時間のポイントにおいて、RNAをTrizol法によって抽出し、Nanodrop技術を用いて数値化し、cDNAに逆転写し、Taqmanアッセイを使用し、ヘムオキシゲナーゼ1、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ−キノン1及びグルタミン酸システインリガーゼ修飾に対して数値化PCRを実行した。独立した各実験において、それぞれの時点において少なくとも2個の生物的レプリカを生成した。データは、2つの独立した実験を標準エラーとして示している。
結果:濃度50μMの OA−NO−S、又は濃度5μMのニトロオレイン酸よる、4時間、8時間、16時間及び24時間の処置後、ヘムオキシゲナ−ゼ−1(HO−1)、NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ−キノン1(NQO−1)及びグルタミン酸システインリガーゼ修飾(GCLM)の経時変化を示す。

Claims (9)

  1. 以下の式によって表されるチオレート化ニトロ脂肪酸と、
    {式中、xは1〜5の整数であり、q、m、p、tはそれぞれ独立した1〜10の整数である}
    医薬として許容可能な賦形剤と、を備える組成物。
  2. 以下の式によって表されるチオレート化ニトロ脂肪酸と、
    {式中、xは1〜5の整数であり、q、m、p、tはそれぞれ独立した1〜10の整数である}
    医薬として許容可能な賦形剤と、を被検体に投与し、炎症性疾患、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患を処置する方法。
  3. 前記チオレート化ニトロ脂肪酸は、ニトロ脂肪酸を長期的に放出する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記チオレート化ニトロ脂肪酸がニトロ酸及び硫化水素を放出し、予防策を提供する、請求項3に記載の方法。
  5. さらにニトロ脂肪酸アルケンの減少を防止する、請求項2に記載の方法。
  6. グルタチオンによるニトロ脂肪酸の内転を遅延させる、請求項2に記載の方法。
  7. ニトロ脂肪酸の副作用を軽減する、請求項2に記載の方法。
  8. 被験者の消化器系への前記副作用には、下痢、痙攣、刺激、炎症性の腸疾患、大腸炎、潰瘍が含まれる、請求項7に記載の方法。
  9. 前記炎症性疾患は、炎症、肥満、メタボリックシンドローム、急性腎疾患、慢性腎疾患、アテローム形成、脂肪生成、新生内膜増殖、腎臓I/R(虚血再灌流)障害及び生体異物に伴う損傷、限局性心筋I/R障害、アンジオテンシンIIの生成に伴う全身的高血圧、肺動脈性高血圧、心臓及び肺線維症、炎症性腸疾患、痛覚、卒中、運動ニューロン疾患、糖尿病、喘息及びCOPDの群から選択される、請求項2に記載の方法。
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