本明細書に記述されるモノクローナル抗体(MAb)は、CD47/SIRPα相互作用をブロックする抗CD47 MAbであり、それによって、腫瘍細胞のマクロファージ媒介性死滅を可能にする。これらの抗体は、CD47発現、活性化および/またはシグナル伝達を調節することができ、例えば、ブロック、阻害、低減、拮抗、中和、または干渉することができ、これらの抗体は、本明細書で赤血球(erythrocytes)と呼ばれる、ヒト赤血球(red blood cells)(RBC)の有意なレベルの血球凝集を引き起こさない。しかしながら、これらの抗体の細胞表面上のCD47と結合し、かつ、細胞の凝集現象を引き起こさない能力は、赤血球に限定されるものではない。これらの抗体は、CD47陽性細胞の凝集を促進しない方法で、一意にCD47と結合する。加えて、またはあるいは、IgG4アイソタイプの抗体は、投与時に、血小板の重大な枯渇を引き起こさない。本明細書に記述される抗体およびその誘導体は、CD47およびSIRPαの相互作用を調節することができ、例えば、ブロック、阻害、低減、拮抗、中和、または干渉することができ、これらの抗体は、ヒト赤血球(RBC)の有意なレベルの血球凝集を引き起こさない。本明細書で提供される抗体は、まとめて「CD47抗体」と称される。これらのCD47抗体は、ヒト赤血球の血球凝集を引き起こす既存のCD47抗体に対する著しい改良である。例えば、Kikuchi Y., Uno S., Yoshimura Y. et al.A bivalent single−chain Fv fragment against CD47 induces apoptosis for leukemic cells.。Biochem Biophys Res Commun 2004; 315:912−8を参照。例えば、これらのCD47抗体は、既存のCD47抗体B6H12、BRC126およびCC2C6の上の著しい改良である。その各々はSIRPαをブロックするが、下に詳細に記述されるように、RBCの血球凝集を引き起こす。例えば、本明細書に記述されるCD47抗体は、マウスおよび/またはカニクイザルに投与した時に赤血球喪失および貧血症(amenia)を引き起こす、親和性が発達したSIRPα−Fc融合タンパク質に対する著しい改良である。Weiskopf et al. Engineered SIRPa Variants as Immunotherapeutic Adjuvants to Anticancer Antibodies. Science 2013; 341:88を参照。本明細書に記述された全IgG CD47抗体(例えば、その内容が全体として本明細書に組み入れられる米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)で開示されるような、表1に提供されたものを含む、2A1およびそのヒト化誘導体)は、有意なレベルで細胞を凝集させない。例えば、本明細書で開示されたCD47抗体は赤血球(RBC)を凝集させない。SIRPαをブロックし、かつ、有意なレベルの凝集および/または血小板枯渇を引き起こさない、全IgGフォーマットでのCD47抗体が本明細書に記述される。加えて、本明細書で開示されたCD47抗体は、有意なレベルのRBC枯渇および/または貧血症を引き起こさない。
本明細書で開示されたCD47抗体は、非限定的な例の一例として、有意なレベルの赤血球の血球凝集を引き起こさないCD47とそのリガンドSIRPαとの間の相互作用の強力なブロック、ならびに、マウス異種移植片モデルにおける強力な抗腫瘍活性、などの多数の望ましい特性を示す。例えば、本明細書で開示されたCD47抗体は、本明細書に記述されるCD47抗体がない状態でのCD47とSIRPαとの間の相互作用のレベルと比較して、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%、CD47とSIRPαとの間の相互作用をブロックする。
本明細書で開示されるCD47抗体は、有意なレベルの細胞の凝集を引き起こさず、例えば、本明細書で開示されたCD47抗体は、有意なレベルの赤血球の血球凝集を引き起こさない。いくつかの場合には、有意なレベルの細胞の凝集とは、既存のCD47抗体の存在下における凝集のレベルを指す。一態様では、本明細書に開示されるCD47抗体の存在下における凝集のレベルは、既存のCD47抗体の存在下での凝集のレベルと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90、%または少なくとも99%、低減する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCD47抗体がある状態の凝集のレベルが、既存のCD47抗体がある状態の凝集のレベルと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも99%、低減する場合、本明細書に開示されるCD47抗体は、有意なレベルの凝集を引き起こさない。他の実施形態では、本明細書に開示されるCD47抗体がある状態の凝集のレベルが、CD47抗体IB4がある状態の凝集のレベルと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも99%、低減する場合、本明細書に開示されるCD47抗体は、有意なレベルの凝集を引き起こさず、該抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されているように、SEQ ID NO:80およびSEQ ID NO:81にそれぞれ提供される可変重鎖配列および可変軽鎖配列を含む。本明細書で開示されたCD47抗体は、10pMと10μMの間の抗体濃度、例えば50pM、100pM、1nM、10nM、50nM、100nM、1μMまたは5μMの抗体濃度で、有意なレベルの細胞の凝集を引き起こさない。
いくつかの実施形態では、RBC枯渇のレベルは、処置、例えば本明細書で開示された抗体、の投与の後に被験体中でRBC数を測定することにより判定される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体を投与した後の被験体のRBC数が正常で健康な被験体の範囲内である場合、本明細書で開示されたCD47抗体は、有意なレベルのRBC枯渇を引き起こさない。例えば、正常で健康な男性のヒトについてのRBC数は、血液サンプル1マイクロリットル当たり約470万から約610万の細胞である。例えば、正常で健康な女性のヒトについてのRBC数は、血液サンプル1マイクロリットル当たり420万から約540万の細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体の投与後(5分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、12時間、24時間、2日、4日、6日、1週、2週、3週、1か月、2か月、またはそれ以上)の被験体内のRBC数が、投与前のRBC数の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%である場合、本明細書で開示されたCD47抗体は、有意なレベルのRBC枯渇を引き起こさない。あるいは、または、これに加えて、本明細書に記載の抗体の投与後(5分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、12時間、24時間、2日、4日、6日、1週、2週、3週、1か月、2か月、またはそれ以上)の被験体内のRBC数が、プラセボ処置(例えばビヒクル)の投与後の被験体内のRBC数の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%である場合、本明細書で開示されたCD47抗体は、有意なレベルのRBC枯渇を引き起こさない。RBC数は当該技術分野の標準的な方法によって判定される。好ましくは、本明細書で開示されるCD47抗体は、10pMと10μMの間の抗体濃度、例えば50pM、100pM、1nM、10nM、50nM、100nM、1μMまたは5μMの抗体濃度で、有意なレベルのRBC枯渇を引き起こさない。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるCD47抗体は、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、50mg/kg、75mg/kg、100mg/kgまたはそれ以上の用量で投与される時、有意なレベルのRBC枯渇を引き起こさない。
本明細書で開示されたCD47抗体のIgG4アイソタイプは、有意なレベルの血小板枯渇を引き起こさない。例えば、IgG4アイソタイプの抗体の投与は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の残存血小板パーセンテージをもたらす。好ましくは、本明細書で開示されたCD47抗体のIgG4アイソタイプは、10pMと10μMの間の抗体濃度、例えば50pM、100pM、1nM、10nM、50nM、100nM、1μMまたは5μMの抗体濃度で、有意なレベルの血小板枯渇を引き起こさない。
また、本明細書で開示されたCD47抗体は、Fcγ受容体(FcγR)に対して低い結合親和力を有する抗体を含むがこれに限定されない。例えば、抗体の定常領域は、IgG1(野生型または突然変異体)、IgG4(野生型または突然変異体、例えばIgG4P)などのサブクラスの抗体の定常領域よりも、FcγRに対して結合親和力が低い。
本明細書で開示された抗体はまた、当該技術分野で既知の抗体と比較して、腫瘍モデルにおいて著しくより強力である。例えば、本明細書に記載のCD47抗体の存在下においてマクロファージが腫瘍細胞を貪食する能力は、既存のCD47抗体の存在下においてマクロファージが腫瘍細胞を貪食する能力と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも99%増加する。
当業者は、過度の実験をすることなく、凝集のレベル、例えばRBCの血球凝集のレベル、を定量することが可能であることを認識するだろう。例えば、当業者は、下記の実施例に述べられているように、本明細書で開示されたCD47抗体の存在下において血球凝集アッセイを実施した後にRBCドット(RBC dot)の領域を測定することにより血球凝集のレベルが確認されることを認識するだろう。いくつかの場合には、本明細書で開示されたCD47抗体の存在下におけるRBCドットの領域が、CD47抗体がない状態、すなわち血球凝集がない状態、でのRBCドットの領域と比較される。このように、血球凝集はベースライン対照に対して定量される。より大きいRBCドット領域は血球凝集のより高いレベルに相当する。あるいは、RBCドットの濃度測定はまた、血球凝集を定量するために利用されてもよい。
当業者は、過度の実験をすることなく、RBC枯渇のレベルを定量することが可能であることを認識するだろう。例えば、当業者は、例えば細胞カウンタまたは血球計の使用によりRBC数(すなわち血液サンプル中のRBCの総数)を測定することによって、RBC枯渇のレベルが確認されることを認識するだろう。当業者は、計数前に、例えば遠心分離を用いて全血を分画することにより、血液サンプル中のRBCを随意に単離できることを認識するだろう。いくつかの場合には、本明細書に記載のCD47抗体の存在下におけるRBC数が、CD47抗体がない状態、すなわちRBC枯渇がない状態、のRBC数と比較される。このように、RBC枯渇の濃度はベースライン対照に対して正規化される。
本明細書に記述されるCD47抗体は、癌または他の腫瘍性疾患の処置、その進行の遅延、その再発の予防、またはその症状を緩和に有用である。例えば、本明細書に記述されるCD47抗体は、血液学的悪性腫瘍および/または腫瘍、例えば血液学的悪性腫瘍および/または腫瘍、を処置するのに有用である。例えば、本明細書に記述されるCD47抗体は、CD47+腫瘍を処置するのに有用である。非限定的な例としては、本明細書に記述されるCD47抗体は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、乳癌、卵巣癌、頭頚部癌、膀胱癌、黒色腫、大腸癌、膵癌、肺癌、平滑筋腫、平滑筋肉腫、神経膠腫、膠芽腫、などの処置に有用である。固形腫瘍は、例えば乳房腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫性の腫瘍、結腸直腸の腫瘍、肺腫瘍、頭頚部腫瘍、膀胱腫瘍、食道腫瘍、肝臓腫瘍および腎臓腫瘍、を含む。
本明細書に使用されるように、「血液学的癌」は血液の癌を指し、特に白血病、リンパ腫および骨髄腫を含む。「白血病」とは、感染症の治療に効果のない白血球が多すぎて、それゆえ血小板や赤血球などの血液を構成する他の部分を押しのける(crowding out)血液の癌を指す。白血病の症例は急性または慢性として分類されることが理解される。白血病の特定の形式には、非限定的な例として、急性リンパ性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);慢性リンパ球性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML);骨髄増殖性疾患/腫瘍(MPDS);および、脊髄形成異常症候群、が含まれる。「リンパ腫」は、とりわけ、ホジキンリンパ腫、無痛性かつ侵襲性の非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫および濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)を指すことがある。骨髄腫は、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖または、ベンスジョーンズ骨髄腫を指しうる。
本明細書で開示された例示的なモノクローナル抗体は、例えば、本明細書に記述される抗体を含んでいる。例示的な抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されているような、SEQ ID NO:5−30から選択される可変重鎖、および、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されているような、SEQ ID NO:31−47から選択される可変軽鎖、を有する抗体を含む。抗体はまた、SEQ ID NO:5−30の少なくとも1つに開示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一である可変重鎖、および、SEQ ID NO:31−47の少なくとも1つに開示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一である可変軽鎖、を有する抗体を含む。好ましくは、抗体はヒトCD47を認識し結合し、有意なレベルのヒト赤血球の血球凝集を引き起こさない。これらの抗体はそれぞれ、本明細書でCD47抗体と呼ばれる。CD47抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体、ならびにヒト化モノクローナル抗体およびキメラ抗体を含む。これらの抗体は、ヒトCD47についての特異性を示し、これらは、有意なレベルの赤血球の血球凝集、赤血球枯渇、貧血症および/または血小板枯渇を引き起こすことなく、CD47発現、活性化、および/またはシグナル伝達を調節すること、例えば、ブロック、阻害、低減、拮抗、中和、または干渉することを示した。
本明細書で提供されるCD47抗体は、例えば、CD47発現(例えばCD47の細胞表面発現の阻害)、活性化、および/またはシグナル伝達を阻害することにより、または、CD47とSIRPαとの間の相互作用に干渉することにより、阻害活性を示す。本明細書で提供される抗体は、完全にまたは部分的に、CD47(例えばヒトCD47)に結合またはそうでなければ相互作用する際に、CD47発現または活性化を低減するかそうでなければ調節する。CD47の生物学的機能の低減または調節は、抗体とヒトCD47ポリペプチドおよび/またはペプチドとの間の相互作用において、完全、有意、または部分的である。抗体がある状態でのCD47発現または活性化のレベルが、本明細書に記述される抗体との相互作用、例えば結合、がない状態でのCD47発現または活性化のレベルと比較して、少なくとも95%、例えば96%、97%、98%、99%、または100%減少する場合、抗体は完全にCD47発現または活性化を阻害すると考えられる。CD47抗体がある状態でのCD47発現または活性化のレベルが、本明細書に記述されるCD47抗体との結合がない状態でのCD47発現または活性化のレベルと比較して、少なくとも50%、例えば55%、60%、75%、80%、85%、または90%減少する場合、CD47抗体は有意にCD47発現または活性化を阻害すると考えられる。抗体がある状態でのCD47発現または活性化のレベルが、本明細書に記述される抗体との相互作用、例えば結合、がない状態でのCD47発現または活性化のレベルと比較して、95%未満、例えば10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、または90%、減少する場合、抗体は部分的にCD47発現または活性化を阻害すると考えられる。
本明細書で開示された抗体はまた、特異的にCD47と結合するモノクローナル抗体を含み、ここで、該抗体は、有意なレベルの凝集、例えば赤血球の血球凝集(「RBC血球凝集」)、を引き起こさない。本明細書に開示される抗体は、CD47陽性細胞の凝集を促進しない方法で一意にCD47と結合し;しかしながら、本明細書で開示された抗体の、細胞表面上のCD47と結合し、かつ細胞凝集現象を引き起こさない能力は、赤血球に限定されるものではない。さらにまたはあるいは、本明細書で開示される抗体は、有意なレベルの血小板枯渇、RBC枯渇、および/または貧血症を引き起こさない。
本明細書で開示される医薬組成物は、本明細書に開示される抗体および担体を含みうる。これらの医薬組成物は、例えば診断キットなどのキット内に含まれることができる。
CD47に結合するモノクローナル抗体またはその免疫学的に活性なフラグメントが本明細書に開示され、ここで、該抗体は、投与後に有意なレベルの細胞の凝集を引き起こさず、例えば、抗体は、投与後に有意なレベルの赤血球凝集を引き起こさない。加えてまたはあるいは、抗体またはそのフラグメントは、有意なレベルの血小板枯渇を引き起こさない。いくつかの実施形態では、抗体はキメラ抗体、またはヒト化抗体、または、完全ヒト(fully human)抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒトCD47に結合する。いくつかの実施形態では、抗体、または、その免疫学的に活性なフラグメントは、CD47がSIRPαと相互作用するのを防ぐ。抗体がある状態でのCD47/SIRPα相互作用のレベルが、抗体との相互作用、例えば抗体との結合、がない状態でのCD47/SIRPα相互作用のレベルと比較して、少なくとも95%、例えば96%、97%、98%、99%、または100%減少する場合、抗体は完全にCD47とSIRPαとの相互作用を阻害すると考えられる。抗体がある状態でのCD47/SIRPα相互作用のレベルが、抗体との相互作用、例えば抗体との結合、がない状態でのCD47/SIRPα相互作用のレベルと比較して、95%未満、例えば10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、または90%、減少する場合、抗体は部分的にCD47とSIRPαとの相互作用を阻害すると考えられる。
被験体の癌を処置または予防するのに十分な抗体の量は、例えば、CD47シグナル伝達を低減するのに十分な量である。(例えば以下を参照。Yamauchi et al., 2013 Blood, Jan 4. [Epub ahead of print]; Soto−Pantoja et al., 2013 Expert Opin. Ther. Targets, 17:89−103;Irandoust et al., 2013 PLoS One, Epub Jan 8;Chao et al., 2012 Curr.Opin.Immunol., 24:225−32;Theocharides et al., 2012 J Exp Med, 209(10):1883−99;Csanyi et al., 2012 Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol., 32:2966−73;Maxhimer et al., 2009 Sci.Transl. Med., 1:3ra7;Sarfati et al., 2008 Curr.Drug Targets, 9:842−850;Miyashita et al., 2004 Mol.Biol.Cell, 15:3950−3963;E. J. Brown and W. A. Frazier, 2001 Trends Cell Biol, 11:130−135;Oldenborg et al., 2001 J. Exp. Med., 193:855−862;Blazar et al., 2001 J. Exp. Med., 194:541−549;Oldenborg et al., 2000 Science, 288:2051−2054;およびGao et al., 1996 J. Biol.Chem., 271:21−24)。例えば、被験体の癌を処置または予防するのに十分な抗体の量は、CD47/SIRPαシグナル伝達系中のCD47/SIRPα相互作用によって生成されたマクロファージ中の食作用阻害シグナルを低減するのに十分な量であり、すなわち、本明細書で開示される抗体は、CD47発現細胞のマクロファージ媒介性食作用を促進する。本明細書に使用されるように、用語「低減された(reduced)」は、本明細書で開示された抗体の存在下におけるCD47シグナル伝達の減少を指す。本明細書に開示されたCD47抗体のある状態でのCD47シグナル伝達のレベルが、CD47シグナル伝達の対照レベル(すなわち、抗体がない状態でのCD47シグナル伝達のレベル)より、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、99%または100%以上低い時、CD47媒介性シグナル伝達は減少している。CD47シグナル伝達のレベルは、非限定的な例として、下流遺伝子活性化、および/またはCD47活性化に反応するルシフェラーゼリポーターアッセイなどの、様々な標準的な技術のうちのいずれかを使用して、測定される。当業者は、例えば市販のキットを含む様々なアッセイを使用して、CD47シグナル伝達のレベルを測定することができることを認識するだろう。
いくつかの実施形態では、抗体またはその免疫学的に活性なフラグメントはIgGアイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗体の定常領域は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有する、ヒトIgG1アイソタイプである。
いくつかの実施形態では、抗体のグリコシル化を防ぐために、ヒトIgG1定常領域をアミノ酸Asn297(Boxed、Kabat Numbering)で修飾する(例えばAsn297Ala(N297A))。いくつかの実施形態では、Fc受容体相互作用を変更するために、抗体の定常領域をアミノ酸Leu235(Kabat Numbering)で修飾する(例えばLeu235Glu(L235E)またはLeu235Ala(L235A))。いくつかの実施形態では、Fc受容体相互作用、を変更するために、抗体の定常領域をアミノ酸Leu234(Kabat Numbering)で修飾する(例えばLeu234Ala(L234A))。いくつかの実施形態では、抗体の定常領域は、アミノ酸234および235の両方で変更される(例えばLeu234AlaおよびLeu235Ala)(EU index of Kabat et al. 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest)。
いくつかの実施形態では、抗体の定常領域は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有する、ヒトIgG2アイソタイプである。
いくつかの実施形態では、抗体のグリコシル化を防ぐために、ヒトIgG2定常領域をアミノ酸Asn297(Boxed、Kabat Numbering)で修飾する(例えばAsn297Ala(N297A))。
いくつかの実施形態では、抗体の定常領域は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:3のアミノ酸配列を有する、ヒトIgG3アイソタイプである。
いくつかの実施形態では、抗体のグリコシル化を防ぐために、ヒトIgG3定常領域をアミノ酸Asn297(Boxed、Kabat Numbering)で修飾する(例えばAsn297Ala(N297A))。いくつかの実施形態では、半減期を伸長するために、ヒトIgG3定常領域をアミノ酸435、で修飾する(例えばArg435H(R435H))(EU index of Kabat et al. 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest)。
いくつかの実施形態では、抗体の定常領域は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有する、ヒトIgG4アイソタイプである。
いくつかの実施形態では、鎖交換反応を防止または低減するために、ヒトIgG4定常領域をヒンジ領域内で修飾する(例えばSer228Pro(S228P))。他の実施形態では、Fc受容体相互作用を変更するために、ヒトのIgG4の定常領域をアミノ酸235で修飾する(例えばLeu235Glu(L235E))。いくつかの実施形態では、ヒトのIgG4定常領域をヒンジ内およびアミノ酸235で修飾する(例えばSer228ProおよびLeu235Glu(S228P/L235E))。いくつかの実施形態では、抗体のグリコシル化を防ぐために、ヒトIgG4定常領域をアミノ酸Asn297(Kabat Numbering)で修飾する(例えばAsn297Ala(N297A))。本明細書で開示されるいくつかの実施形態において、ヒトのIgG4定常領域を、アミノ酸位置Ser228、Leu235およびAsn297で修飾する(例えばS228P/L235E/N297A)。(EU index of Kabat et al. 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest)。本明細書で開示された他の実施形態では、抗体はヒトIgG4サブクラスで、グリコシル化を欠く。これらの実施形態では、グリコシル化は、297位(Kabat numbering)で変異によって除去することができる(例えばN297A)。他の実施形態では、グリコシル化は、翻訳後グリコシル化の能力を欠く宿主細胞、例えば、細菌または酵母由来系または改変された哺乳動物細胞発現系、において抗体を産生することによって除去することができる。
いくつかの実施形態では、ヒトのIgG定常領域はFcRn結合を増強するために修飾される。FcRnに対する結合を増強するFc変異の例は、Met252Tyr、Ser254Thr、Thr256Glu(それぞれM252Y、S254T、T256E)(Kabat numbering, Dall’Acqua et al. 2006, J. Biol. Chem. Vol. 281(33) 23514−23524)、または、Met428LeuおよびAsn434Ser(M428L, N434S)(Zalevsky et al. 2010 Nature Biotech, Vol. 28(2) 157−159)である。(EU index of Kabat et al. 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest)。
いくつかの実施形態では、ヒトのIgG定常領域は、抗体依存細胞性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を変更するために修飾され、例えばNatsume et al., 2008 Cancer Res., 68(10):3863−72;Idusogie et al., 2001 J. Immunol., 166(4):2571−5;Moore et al., 2010 mAbs, 2(2):181−189;Lazar et al., 2006 PROC.NATL.ACAD.SCI., 103(11):4005−4010, Shields et al., 2001 JBC, 276(9):6591−6604;Stavenhagen et al., 2007 Cancer Res., 67(18):8882−8890;Stavenhagen et al., 2008 Advan.Enzyme Regul., 48:152−164;Alegre et al., 1992 J Immunol, 148:3461−3468;に記載され、KanekoおよびNiwa, 2011 Biodrugs, 25(1):1−11でレビューされたアミノ酸修飾である。
いくつかの実施形態では、ヒトIgG定常領域は、ヘテロ二量化を誘導するために修飾される。例えば、CH3ドメイン内でThr366にアミノ酸修飾を有することは、より嵩張った(bulky)アミノ酸(例えば、Try(T366W))で置換されている時、Thr366、Leu368、および、Tyr407の位置で嵩張りがより小さいアミノ酸(例えば、それぞれSer、Ala、およびVal)へのアミノ酸修飾を有する第2のCH3ドメインと好ましく対になることを可能にする(T366S/L368A/Y407V)。CH3修飾を介するヘテロ二量化は、例えば、反対のCH3ドメイン上のSer354のCysへの変更(S354C)、およびY349のCysへの変更(Y349C)によるジスルフィド結合の導入によりさらに安定化されることができる(Carter, 2001 Journal of Immunological Methods, 248:7−15でレビューされる)。
本明細書で開示された他の実施形態では、抗体はグリコシル化を欠くが、アミノ酸Asn297(Kabat numbering)で修飾されない。これらの実施形態では、グリコシル化は、翻訳後グリコシル化能力を欠く宿主細胞、例えば、細菌または酵母由来系または改変された哺乳動物細胞発現系、において抗体を産生することによって除去することができる。
また、CD47またはその免疫学的に活性なフラグメントに結合する1つ以上のモノクローナル抗体を含んでいる、医薬組成物も本明細書に開示され、ここで、該抗体は、投与後に有意なレベルの赤血球の血球凝集を引き起こさない。
血球凝集は同型の相互作用の例であり、ここで、2つのCD47発現細胞は、二価のCD47結合物(binding entity)で処置された場合に、凝集またはクランプが引き起こされる。本明細書に開示される抗体の、細胞表面上のCD47に結合する能力、および細胞凝集現象を引き起こさない能力は、赤血球に限定されるものではない。本明細書で開示された抗体は、CD47陽性細胞系(例えば、Daudi細胞)のクランピングを促進することがないようにCD47に一意的に結合すると観察されている。
いくつかの場合では、抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:5−30からなる群から選択される可変重(VH)鎖領域を含む。抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:31−47からなる群から選択される可変軽(VL)鎖領域を随意に含む。いくつかの場合では、抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:5−30からなる群から選択されるVH鎖領域を含み、および、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:31−47からなる群から選択されるVL鎖領域を含む。本明細書で開示される抗体はまた、SEQ ID NO:5−30の少なくとも1つに開示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一である可変重鎖領域を有し、および、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるような、SEQ ID NO:31−47の少なくとも1つに開示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一である可変軽鎖領域を有する抗体を含んでいる。他の態様では、抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるような、SEQ ID NO:5、7、8、11、15−17、20−22および27−30のいずれか1つで提供されるVH領域を含み、これらは、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるような、SEQ ID NO:31−39、42、43、44および47のいずれか1つで提供されるVL領域と対になる。他の実施形態では、抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるような、SEQ ID NO:5、7、8、11、12、15−17、20−22および27−30のいずれか1つで提供されるVH領域を含み、これらは、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるような、SEQ ID NO:31、32、35、40、41、42、43、44および47のいずれか1つで提供されるVL領域と対になる。また別の態様では、抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるような、表1に列挙される組み合わせから選択される、VH鎖領域およびVL鎖領域の組み合わせを含む。
いくつかの実施形態では、CD47抗体またはその免疫学的に活性なフラグメントは、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、またはSEQ ID NO:66、に記載のVH相補性決定領域1(CDR1)配列を含み、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、またはSEQ ID NO:76、に記載のVH CDR2配列を含み、SEQ ID NO:52またはSEQ ID NO:77、に記載のVH CDR3配列を含み、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:67、またはSEQ ID NO:68、に記載のVL CDR1配列を含み、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、またはSEQ ID NO:71、に記載のVL CDR2配列を含み、および、SEQ ID NO:55に記載のVL CDR3配列を含む。例えば、抗体またはその免疫学的に活性なフラグメントは、SEQ ID NO:50に記載のVH CDR1配列、SEQ ID NO:51に記載のVH CDR2配列、SEQ ID NO:52に記載のVH CDR3配列、SEQ ID NO:53に記載のVL CDR1配列、SEQ ID NO:54に記載のVL CDR2配列、および、SEQ ID NO:55に記載のVL CDR3配列を含む。別の例において、抗体またはその免疫学的に活性なフラグメントは、SEQ ID NO:50に記載のVH CDR1配列、SEQ ID NO:72に記載のVH CDR2配列、SEQ ID NO:52に記載のVH CDR3配列、SEQ ID NO:53に記載のVL CDR1、SEQ ID NO:71に記載のVL CDR2配列、および、SEQ ID NO:55に記載のVL CDR3配列を含み、−すべてのSEQ IDの参照は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるとおりのものである。
一実施形態では、本明細書に開示される抗体が、頭部がCD47発現細胞の膜の近くに重鎖が位置する側面へ配向するように結合し、軽鎖がCD47上のSIRPα結合部位を塞ぐ。他の実施形態では、本明細書に開示される抗体が、頭部がCD47発現細胞の膜の近くに軽鎖が位置する側面へ配向するように結合し、重鎖がCD47上のSIRPα結合部位を塞ぐ。
SEQ ID NO:147(すなわち、シグナル配列(アミノ酸1−18)を除くSEQ ID NO:48)に従って番号を付けた場合、CD47抗体は、CD47のアミノ酸残基1−116のいずれか1つを含むエピトープに結合する。例えば、SEQ ID NO:147に従って付けられた場合、本明細書で開示された抗体は、CD47のアミノ酸残基Q31、N32、T33、T34、E35、V36、Y37、V38、K39、W40、K41、F42、K43、G44、R45、D46、I47、Y48、T49、F50、D51、G52、A53、L54、N55、K56、S57、T58、V59、P60、T61、D62、F63、S64、S65、A66、K67、I68、E69、V70、S71、Q72、L73、L74、K75、G76、D77、A78、S79、L80、K81、M82、D83、K84、S85、D86、A87、V88、S89、H90、T91、G92、N93、Y94、T95、C96、E97、V98、T99、E100、L101、T102、R103、E104、G105、E106、T107、1108、1109およびE110の1つ以上を含むエピトープに結合する。−すべてのSEQ IDの参照は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるとおりのものである。
SEQ ID NO:147に従って番号付けされた場合、本明細書に開示された抗体は、CD47のアミノ酸残基Y37、V38、K39、W40、K41、F42、K43、G44、R45、D46、I47、Y48、T49、F50、およびD51の内の1つ以上を含む不連続なエピトープに結合する。例えば、本明細書で開示された抗体は、SEQ ID NO:147に従って番号付けされた場合、CD47のアミノ酸残基Y37、V38、K39、K41、K43、G44、R45、D46、D51、H90、N93、E97、T99、E104、またはE106の内の1つ以上を含む不連続なエピトープに結合する。例えば、本明細書で開示された抗体は、SEQ ID NO:147に従って番号付けされた場合、少なくともCD47のKGRD(SEQ ID NO:56)ループ(残基43−46)の残基を含む不連続なエピトープに結合する。例えば、SEQ ID番号:147に従って番号付けされた場合、本明細書で開示された抗体は、少なくともCD47の残基Y37、K39、K41、KGRD(SEQ ID NO:56)ループ(残基43−46)、D51、H90、N93、E97、T99、E104、およびE106を含む不連続なエピトープに結合する。例えば、SEQ ID番号:147に従って番号付けされた場合、本明細書で開示された抗体は、CD47の残基Y37、K39、K41、KGRD(SEQ ID NO:56)ループ(残基43−46)、D51、H90、N93、E97、T99、E104、およびE106を含む不連続なエピトープに結合する。−すべてのSEQ IDの参照は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるとおりのものである。
本明細書に記述されるCD47抗体のVH領域は、CD47のKGRD(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:56)ループへの結合に主として関与する。従って、本明細書に記述される抗体が結合する一意の(unique)エピトープは、CD47の側面にある。当該技術分野で知られる既存のCD47抗体とは対照的に、膜近傍位置(membrane proximal position)における本明細書に記述されるCD47抗体のVHドメインの配向(orientation)は、抗体が隣接した細胞上のCD47分子に架橋することができないように抗体を拘束することにより、細胞クランピング、例えば赤血球の赤血球凝集、を妨げるこれらの抗体の決定的な特徴である。さらに、本明細書に記述されるCD47抗体のVKドメインは、SIRPα結合に関与する、Y37、T102、およびE104などの頂点の残基(apical residues)と相互作用するので、主としてVKドメインがCD47に結合するSIRPαを物理的に締め出す。
CD47がSIRPαと相互作用するのを妨げるための本明細書に記載されるCD47抗体と競合する、単離された抗体またはその免疫学的に活性なフラグメントも提供される。
米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:147に従って番号付けされた場合、CD47のアミノ酸残基Y37、K39、K41、K43、G44、R45、D46、D51、H90、N93、E97、T99、E104、およびE106を含むポリペプチドが本明細書に開示される。SEQ ID番号:147に従って番号付けされた場合、CD47のアミノ酸残基1−116の内の任意の1つを含むポリペプチドもまた提供される。例えば、ポリペプチドは、SEQ ID NO:147に従って番号を付けられた時のCD47のアミノ酸残基Q31、N32、T33、T34、E35、V36、Y37、V38、K39、W40、K41、F42、K43、G44、R45、D46、I47、Y48、T49、F50、D51、G52、A53、L54、N55、K56、S57、T58、V59、P60、T61、D62、F63、S64、S65、A66、K67、I68、E69、V70、S71、Q72、L73、L74、K75、G76、D77、A78、S79、L80、K81、M82、D83、K84、S85、D86、A87、V88、S89、H90、T91、G92、N93、Y94、T95、C96、E97、V98、T99、E100、L101、T102、R103、E104、G105、E106、T107、I108、I109およびE110の1つ以上を含む。また、抗原、例えばCD47抗体と結合する抗原、としてこのポリペプチドを使用する方法も提供される。
本発明は、投与を必要とする対象に、CD47に結合する1つ以上のモノクローナル抗体またはその免疫学的に活性なフラグメントを投与することにより、癌または他の腫瘍性疾患を緩和する方法を提供し、ここで、該抗体は、投与後に、有意なレベルの赤血球の血球凝集、赤血球枯渇、貧血症、および/または血小板枯渇を引き起こさない。抗体は、癌または被験体の他の腫瘍性疾患の症状を緩和するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。いくつかの実施形態では、抗体はキメラ抗体、またはヒト化抗体、または、完全ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はヒトCD47に結合する。いくつかの実施形態では、抗体、または、その免疫学的に活性なフラグメントは、CD47がSIRPαと相互作用するのを防ぐ。いくつかの実施形態では、抗体またはその免疫学的に活性なフラグメントは、IgG1アイソタイプ、IgG2アイソタイプ、IgG3アイソタイプおよびIgG4アイソタイプからなる群から選択されたIgGアイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗体またはその免疫学的に活性なフラグメントは、IgG4PとIgG4PEからなる群から選択されたIgGアイソタイプである。
いくつかの実施形態では、本明細書に記述されるCD47抗体は、1つ以上の追加の薬剤または追加の薬剤の組み合わせと共に使用される。適切な追加の薬剤は、意図される用途、例えば癌、のための現在の医薬的なおよび/または外科的治療を含む。例えば、CD47抗体は、1つ以上の追加の化学療法剤または抗腫瘍剤と共に使用され得る。あるいは、追加の化学療法剤は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、細胞死誘導剤である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、例えばホスファチヂルセリン(PS)の細胞表面露出をもたらす、細胞膜を非対称に横断するリン脂質の喪失を誘導する。いくつかの実施形態では、化学療法剤は小胞体(ER)ストレスを誘導する。いくつかの実施形態では、化学療法剤はプロテアソーム阻害剤である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、ERタンパク質の細胞表面への転置を誘導する。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、カルレチキュリンの転移および細胞表面露出を誘導する。
いくつかの実施形態では、CD47抗体および追加の薬剤は単一の治療の組成物に調製され、CD47抗体および追加の薬剤は同時に投与される。あるいは、CD47抗体および追加の薬剤は互いに分離され、例えば、そのそれぞれは別個の治療的な組成物に調製され、および、CD47抗体および追加の薬剤は同時に投与され、またはCD47抗体および追加の薬剤は、処置レジメンの間の異なった時間に投与される。例えば、CD47抗体は追加の薬剤の投与前に投与され、またはCD47抗体は追加の薬剤の投与後に投与され、または、CD47抗体および追加の薬剤は交互に投与される。本明細書に記述されるように、CD47抗体および追加の薬剤は単回投与または反復投与で投与される。
当業者は、本明細書で開示された抗体が様々な用途を有することを認識するだろう。例えば、本明細書で開示された抗体は、治療剤として、診断キットの試薬としてまたは診断ツールとして、または、治療的な試薬を生成するための競合アッセイ(competition assay)の試薬として使用される。
本明細書で参照される特許文献および科学文献は、当業者が利用可能な知識を確立する。本明細書に引用されたすべての米国特許、および公開または非公開の米国特許出願が参照により援用される。本明細書で引用したすべての公開された外国の特許および特許出願が、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用される受託番号によって示されるGenbankおよびNCBIの提出が、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用した他の公開された参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
本開示がその好ましい実施形態に関して特別に示され記載されてきたが、形式や詳細の様々な変更が、添付の請求項により包含される本開示の範囲から逸脱することなく本明細書で行われ得ることが当業者に理解されよう。
ヒトCD47を含むCD47に特異的に結合するモノクローナル抗体が本明細書に開示される。これらの抗体は、本明細書ではまとめてCD47抗体と呼ばれる。
標的細胞除去のための抗体の主要なFc依存性機能は、Fc領域にClqを結合させることにより開始する補体依存性細胞傷害(CDC)であり;Fcγ受容体(FcγRs)、免疫エフェクター細胞上の初代FcγRIIIa(例えばNK細胞および好中球)とのFc領域の相互作用によって媒介される抗体依存性細胞傷害(ADCC)であり;および、FcγRIを介してオプシン化された(opsinized)標的細胞の認識を通じてマクロファージによって実行される、抗体依存性細胞食作用(ADCP)である。抗体サブクラスは、Fc依存性エフェクター活性を媒介する能力において差異を有する。ヒトでは、IgG1とIgG3サブクラスは、Clqの結合のためにCDCに対する高い効力を有する。加えて、IgG1サブクラスは、FcγRに対して最も高い親和性を有し、それによりADCCおよびFc依存性ADCPに関して最も強力である。IgG4サブクラスはClq結合能力を欠いており、FcγR結合親和性が大きく低下しており、それによってエフェクター機能が著しく低下していた。
免疫グロブリンスーパーファミリーに属する複数にわたる膜貫通受容体(a multi−spanning transmembrane receptor)は、マクロファージ上のSIRPα(シグナル調節タンパク質a)と相互作用し、それによって食作用を減衰させる。この経路を接収する(co−opt)癌細胞は食作用を回避する。下に詳細に記述されるように、これは腫瘍免疫回避の新しいメカニズムであり、CD47を治療的に標的とすることは、多数の癌において広範囲に応用されている。
CD47の発現は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、卵巣癌、神経膠腫、膠芽腫などを含む多くの別個の悪性腫瘍において臨床結果の悪化と相関する。加えて、CD47は、白血病および固形腫瘍の両方において、癌幹細胞マーカーとして同定されている。(Jaiswal et al., 2009 Cell, 138(2):271−85; Chan et al., 2009 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106(33):14016−21; Chan et al., 2010 Curr. Opin. Urol., 20(5):393−7; Majeti R et al., 2011 Oncogene, 30(9):1009−19)。
CD47ブロッキング抗体は、複数のインビボ腫瘍モデルにおいて抗腫瘍活性を実証した。さらに、これらの抗体は、腫瘍モデルにおいてRituxan(商標)およびHerceptin(商標)を含む他の治療的な抗体と相乗作用することを示した。CD47とSIRPαとの相互作用をブロックすることは、マクロファージによるCD47発現細胞の食作用を促進することができる(Chao et al., 2012 Curr. Opin. Immunol., 24(2):225−32においてレビューされる)。CD47を欠くマウスは放射線療法に対して際立って耐性であり、放射線療法と組み合わせたCD47標的化の役割を示唆している(Isenberg et al., 2008 Am. J. Pathol., 173(4):1100−1112; Maxhimer et al., 2009 Sci Transl Med, 1(3):3ra7)。さらに、これらのマウスにおける同系腫瘍モデルは、野生型マウスと比較して骨転移の減少を示す(Uluckan et al., 2009 Cancer Res., 69(7):3196−204)。
ほとんどのCD47抗体は、ヒト赤血球の血球凝集ならびに赤血球枯渇および貧血症を引き起こすと報告されてきた。血球凝集は同型の相互作用の例であり、ここで、2つのCD47発現細胞は、二価のCD47結合物(binding entity)で処置された場合に、凝集またはクランプが引き起こされる。例えば、CD47抗体MABLが、全IgG(full IgG)またはF(ab’)2として、赤血球の血球凝集を引き起こすと報告されており、MABLがscFvまたは二価scFvへ変更された時だけ、この効果が緩和された。(例えばUno S., Kinoshita Y., Azuma Y. et al. Antitumor activity of a monoclonal antibody against CD47 in xenograft models of human leukemia. Oncol. Rep. 2007; 17:1189−94; Kikuchi Y., Uno S., Yoshimura Y. et al. A bivalent single−chain Fv fragment against CD47 induces apoptosis for leukemic cells. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004; 315:912−8を参照)。下に詳細に記述されるように、B6H12、BRC126およびCC2C6を含む他の既知のCD47抗体も、RBC赤血球凝集を引き起こす。
加えて、SIRPα−Fc融合タンパク質に拮抗するCD47抗体およびCD47は、マウスおよび/またはカニクイザルに投与された時、赤血球枯渇および貧血症を引き起こすと報告されてきた。(Weiskopf et al. Engineered SIRPα Variants as Immunotherapeutic Adjuvants to Anticancer Antibodies. Science 2013; 341:88を参照)。貧血症は、組織に酸素を運ぶために十分な量の赤血球またはヘモグロビンが血液に欠けている状態である。貧血症は、当該技術分野において一般的に既知の多くの方法により診断できる。例えば、貧血症は、赤血球の数、サイズ、ボリュームおよびヘモグロビン含量を判定する完全血球算定(CBC)の判定により診断される。貧血症はまた、血液の鉄の濃度、および/または、身体の合計鉄貯蔵の指標である血清フェリチン濃度の測定により診断される。加えて、貧血症は、ビタミンB12と葉酸の濃度、網赤血球数およびビリルビンの測定により診断される。
したがって、細胞の凝集、RBC枯渇および貧血症は、既存の十分なIgG抗体および/またはSIRPα−Fc融合タンパク質でのCD47の治療的な標的化の主要な制限を示す。
さらに、CD47抗体の重要な特徴は、マクロファージによるCD47発現細胞の食作用を促進するためにCD47とSIRPαとの相互作用をブロックする能力である。多くの既存のCD47抗体がSIRPαをブロックする;しかしながら、本明細書に記述される本発明前には、SIRPαをブロックした既存の抗体は、血球凝集の副作用を引き起こし、これは、上述されたように、望ましくない。2D3などの他の既存の抗体は血球凝集を引き起こさない;しかしながら、これらの抗体はまたSIRPαをブロックせず、食作用の促進において効果をなくす。したがって、本明細書に記述した本発明前には、細胞の凝集を引き起こさずにSIRPαをブロックするCD47抗体を同定する差し迫った必要性が存在した。
本明細書で開示されたCD47抗体は、赤血球凝集の望ましくない影響を回避し、それによって、治療的にCD47を標的とする効能を高め、SIRPαでのCD47の相互作用をブロックする能力を維持し、それによって、CD47発現細胞の食作用を促進する。具体的には、本明細書に開示される完全IgG CD47抗体(例えば、2A1および表1に提供されるものを含むそのヒト化誘導体)は、有意なレベルで細胞を凝集させない。例えば、本明細書で開示されるCD47抗体は、有意なレベルでRBCを凝集させない。SIRPαをブロックし、有意なレベルの赤血球凝集および/またはRBC枯渇を引き起こさない、完全なIgGフォーマットでの第1のCD47抗体が本明細書に記述される。まとめると、本明細書で開示された抗体(例えば2A1抗体およびそのヒト化誘導体)は、SIRPαをブロックするが有意なレベルの赤血球凝集および/またはRBC枯渇を引き起こさないそれらの能力という点で、既存のCD47抗体の中でも独特である。
本明細書で開示されたCD47抗体は、非限定的な一例として、有意なレベルの赤血球の血球凝集を引き起こさない、または赤血球の血球凝集を調節しない、CD47とそのリガンドSIRPαとの間の相互作用の強力なブロッキング、ならびに、強力な抗腫瘍活性、などの多数の望ましい特性を示す。例えば、本明細書で開示されたCD47抗体は、本明細書に記述されるCD47抗体がない状態でのCD47とSIRPαとの間の相互作用のレベルと比較して、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%、CD47とSIRPαとの間の相互作用をブロックする。本明細書で開示されるCD47抗体は、有意なレベルの細胞の凝集を引き起こさず、例えば、本明細書で開示されたCD47抗体は、有意なレベルの赤血球の血球凝集を引き起こさない。例えば、本明細書に開示されるCD47抗体の存在下における凝集のレベルは、既存のCD47抗体の存在下での凝集のレベルと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも99%、低減する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCD47抗体がある状態の凝集のレベルが、CD47抗体IB4がある状態の凝集のレベルと比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、80%、少なくとも90%、または少なくとも99%、低減する場合、本明細書に開示されるCD47抗体は、有意なレベルの凝集を引き起こさず、該抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されているように、それぞれSEQ ID NO:80およびSEQ ID NO:81に提供される可変重鎖配列および可変軽鎖配列を含む。本明細書で開示されたCD47抗体は、有意なレベルのRBC枯渇を引き起こさない。例えば、本明細書に開示される抗体の投与後(5分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、12時間、24時間、2日、4日、6日、1週、2週、3週、1か月、2か月、またはそれ以上)の被験体内のRBC数が、投与前のRBC数の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%である。あるいは、または、これに加えて、本明細書に開示される抗体の投与後(5分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、12時間、24時間、2日、4日、6日、1週、2週、3週、1か月、2か月、またはそれ以上)の被験体内のRBC数が、プラセボ処置(例えばビヒクル)の投与後の被験体内のRBC数の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%である。RBC数は当該技術分野の標準的な方法によって判定される。本明細書で開示された抗体はまた、当該技術分野で既知の抗体と比較して、腫瘍モデルにおいて著しくより強力である。例えば、本明細書に記載のCD47抗体の存在下においてマクロファージが腫瘍細胞を貪食する能力は、既存のCD47抗体の存在下においてマクロファージが腫瘍細胞を貪食する能力と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも99%増加する。
当業者は、過度の実験をすることなく、凝集のレベル、例えばRBCの血球凝集のレベル、を定量することが可能であることを認識するだろう。例えば、当業者は、下記の実施例に述べられているように、本明細書で開示されたCD47抗体の存在下において血球凝集アッセイを実施した後にRBCドット(RBC dot)の領域を測定することにより血球凝集のレベルが確認されることを認識するだろう。いくつかの場合には、本明細書で開示されたCD47抗体の存在下におけるRBCドットの領域が、CD47抗体がない状態、すなわち血球凝集がない状態、でのRBCドットの領域と比較される。このように、血球凝集はベースライン対照に対して定量される。より大きいRBCドット領域は血球凝集のより高いレベルに相当する。あるいは、RBCドットの濃度測定はまた、血球凝集を定量するために利用されてもよい。
加えて、本明細書で開示されたCD47抗体などの抗体は、投与時に血小板枯渇に(例えばFc依存性の方法で)役割を果たすことができる。例えば、CD47に結合するIgG1サブクラスの抗体でのカニクイザルの処置は、複数回投与で血小板の重大な枯渇をもたらす可能性がある。例えば実施例12、図12C−Dを参照。血小板枯渇の欠点は、重度の場合、致命的な出血を引き起こす可能性があることである。本発明は、FcγR結合を減少させる抗体の変異は、高用量(例えば、100mg/kg)であっても低レベルの血小板枯渇を検出しないという驚くべき発見に部分的に基づく。例えば実施例12、図12G−Hを参照。したがって、FcγR結合およびエフェクター機能が著しく低下したCD47結合抗体は、血小板枯渇をもたらさない。
血小板数は、当業者に一般的に既知の通例の(routine)方法を使用して測定することができる。経時的な残存血小板パーセンテージは、治療の適用前(例えば1時間、3時間、6時間、12時間、1日、2日、4日、5日、6日、または、それ以上)のいつかの血小板に正規化された、本明細書に開示された治療(例えばCD47抗体)の投与後の特定の時点での残存する血小板数として、計算されうる。著しい血小板枯渇は、投与後の100%未満の残存血小板パーセンテージ(例えば95%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、50%、40%、30%、20%または10%未満)として定義することができる。本明細書に開示される治療(例えば抗体)は、わずかなレベルの血小板枯渇(例えば、投与後の残存血小板パーセンテージが少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%)をもたらした。本明細書で開示されたCD47抗体は、ヒトCD47に結合し、SIRPαとの相互作用をブロックする(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されている図1B、3および7J)。これらの抗体は、有意なレベルのヒト赤血球の血球凝集を引き起こさない(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されている図4。また、これらの抗体は、有意なレベルの血小板枯渇を引き起こさない特性を持つことができる(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される、実施例12および図12)。これらの抗体は、マクロファージによる腫瘍細胞の食作用を促進できる(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されている図9)。さらに、CD47抗体は、ヒトリンパ腫のマウスモデルにおける強力な抗腫瘍活性を示す(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されている図10)。したがって、本明細書で開示されたCD47抗体は、CD47の治療的標的化の主要な制限因子を回避する。従って、本明細書で開示されたCD47抗体は、複数の癌の処置に非常に重要になりうる。
赤血球の血球凝集を有意なレベルで引き起こすことなく、または赤血球の血球凝集を調節することなく、特異的にヒトCD47と結合し、ヒトCD47とヒトSIRPαとの間の相互作用をブロック、阻害、干渉、またはさもなければ調整する、抗体が本明細書で開示される。
本明細書に開示される抗体は、平衡結合定数(Kd)が≦1μM、例えば≦100nM、好ましくは≦10nM、より好ましくは≦1nM、のCD47エピトープに結合する例えば、本明細書で提供されるCD47抗体は、約1nMから約1pMの範囲のK dを示す。
本明細書で開示されたCD47抗体は、広く分配されたCD47の機能的な活性で調節、ブロック、阻害、低減、中和、またはさもなければ干渉する役目をする。CD47の機能的な活性は、例えば、SIRPαとの相互作用によるシグナル伝達、細胞外マトリックスへの細胞接着の際の細胞内のカルシウム濃度の調整、例えば上昇、トロンボスポンジンのC末端細胞結合ドメインとの相互作用、フィブリノゲンとの相互作用、および、様々なインテグリンとの相互作用、を含む。例えば、CD47抗体は、部分的にまたは完全にCD47のSIRPαへの結合を調節、ブロック、阻害、低減、拮抗、中和、またはさもなければ干渉することにより、完全にまたは部分的にCD47の機能的な活性を阻害する。
CD47抗体がある状態でのCD47の機能的活性のレベルが、本明細書に記載のCD47抗体との結合がない状態でのCD47の機能的活性のレベルと比較して、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%減少する場合、CD47抗体は、CD47の機能的活性を、完全に調節、ブロック、阻害、低減、拮抗、中和、またはさもなければ干渉すると考えられる。CD47抗体がある状態でのCD47の活性のレベルが、本明細書に記載のCD47抗体との結合がない状態でのCD47の活性のレベルと比較して、少なくとも50%、例えば55%、60%、75%、80%、85%、または90%減少する場合、CD47抗体は、CD47の機能的活性を、著しくブロック、阻害、低減、拮抗、中和、またはさもなければ干渉すると考えられる。CD47抗体がある状態でのCD47の活性のレベルが、本明細書に記載のCD47抗体との結合がない状態でのCD47の活性のレベルと比較して、95%未満、例えば10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、または90%減少する場合、CD47抗体は、CD47の機能的活性を、部分的にブロック、阻害、低減、拮抗、中和、またはさもなければ干渉すると考えられる。
定義
他に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって特に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載の、細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法は、当技術分野において周知で一般的に使用されている命名法である。標準的な技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および、組織の培養と形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に使用される。酵素の反応および精製技術はメーカーの仕様書によって行なわれる、あるいは、技術中で一般に遂行されたとともに、または本明細書に記述されるとともに。前述の技術および手順は、一般に、当該技術分野で公知の従来の方法に従い、および、本明細書にわたって引用および議論される様々な一般的でより具体的な参考文献で記載されるように、行われる。例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(1989)参照。本明細書に記載された分析化学、合成有機化学、および薬学的および製薬化学に関連して用いられる命名法およびその検査法および技術は、当該技術分野において周知かつ一般的に使用されているものである。化学合成、化学分析、薬剤の調整、処方、および、送達、ならびに、患者の処置について、標準的な技術が用いられる。
本開示に従って利用される場合、以下の用語は、他に示されない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである。
本明細書に使用されるように、CD47、インテグリン関連性タンパク質(IAP)、卵巣癌抗原OA3、Rh関連抗原およびMERGという用語は同義語であり、五感的に使用されてもよい。
赤血球(red blood cell(s))および赤血球(erythrocyte(s))という用語は同義語であり、本明細書では互換的に使用される。
凝集という用語は細胞凝集を意味し、血球凝集という用語は細胞の特定のサブセット、すなわち赤血球の凝集を意味する。したがって、血球凝集は一種の凝集である。
本明細書に使用されるように、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、すなわち特異的に抗原と結合する(抗原と免疫反応する)抗原結合部位を含む分子、および、免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、を指す。「特異的に結合する」または「免疫反応する」「〜に対して向けられる(directed against)」とは、抗体が、所望の抗原の1つ以上の抗原決定基と反応し、他のポリペプチドと反応しないか、またははるかに低い親和性で結合する(Kd>10−6)。抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、単鎖、Fab、Fab’およびF(ab’)2フラグメント、Fv、scFvs、およびFab発現ライブラリが含まれるが、これに限定されない。
基本的な抗体構造単位はテトラマーを含むことが知られている。各テトラマーは、同一の2組のポリペプチド鎖からなり、各ペアは1つの「軽」鎖(約25 kDa)、および1つの「重」鎖(約50−70 kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100から110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端の部分は、エフェクター機能の主に担う定常領域を定義する。一般に、ヒトから得られた抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのいずれかに関し、これらは分子中に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。特定のクラスには、IgG1、IgG2などのサブクラス(アイソタイプとしても知られる)もある。さらに、ヒトでは、軽鎖はカッパ鎖またはラムダ鎖でありうる。
用語「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書に使用されるように、一意の軽鎖遺伝子産物と一意の重鎖遺伝子産物とからなる抗体分子の分子種を1つだけ含む抗体分子の集団を指す。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、集団のすべての分子において同一である。MAbは、それに対する一意の結合親和性を特徴とする抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含む。
一般に、ヒトから得られた抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのいずれかに関し、これらは分子中に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。特定のクラスはIgG1、IgG2、ほかなどのサブクラスも有する。さらに、ヒトでは、軽鎖はカッパ鎖またはラムダ鎖でありうる。
用語「抗原結合部位」または「結合部分」は、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の部分を指す。抗原結合部位は、重(「H」)鎖、軽(「L」)鎖のN−末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と呼ばれる、重鎖および軽鎖のV領域内の非常に分岐する3つのストレッチ(stretches)が、「フレームワーク領域」または「FR」として知られる、より多くの保存された隣接するストレッチ間に挿入される。したがって、用語「FR」は、免疫グロブリン中の超可変領域の間に、およびそれに隣接して、天然に存在するアミノ酸配列を指す。抗体分子では、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、抗原結合表面を形成するために3次元空間内で互いに対して配置される。抗原結合表面は、結合抗原の三次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1987 and 1991)), or Chothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901−917(1987), Chothia et al. Nature 342:878−883(1989)の定義に従う。
本明細書に使用されるように、用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはそのフラグメント、またはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基が含まれる。用語「エピトープ」は免疫グロブリンまたはT細胞受容体への特異的に結合できる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または砂糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面のグループからなり、通常、比電荷特性と同様に特異的な3次元の構造的な特性を有している。抗体は、解離定数が≦1μM、例えば≦ 100nM、好ましくは≦10nM、より好ましくは≦1nMである場合に、抗原に特異的に結合すると言われる。
本明細書に使用されるように、用語「免疫学的結合」および「免疫学的結合特性」は、免疫グロブリン分子と免疫グロブリンが特異的である抗原との間に生じるタイプの非共有結合の相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(Kd)で表現することができ、より小さいKdはより大きな親和性を表す。選択されるポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該技術分野において周知の方法を用いて定量されうる。そのような方法の1つは、抗原結合部位/抗原複合体形成および解離の速度(rate)を測定する必要があり、これら速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および、双方向への速度に等しく影響する幾何学的なパラメータに依存する。従って、「オンの速度定数」(kon)および「オフの速度定数」(koff)の両方は、結合(association)および解離の濃度および現実の速度の計算により決定することができる。Nature 361:186−87(1993)参照。koff/konの割合は、親和性に関係しない全てのパラメータの除外(cancellation)を可能にし、そして解離定数Kdに等しい。(一般に、Davies et al.(1990) Annual Rev. Biochem. 59:439−473を参照)。放射性リガンド結合アッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)、フローサイトメトリー結合アッセイ、または当業者に周知の類似のアッセイなどのアッセイにより測定された場合、平衡結合定数(Kd)が、≦1μMであり、好ましくは、≦100nMであり、さらに好ましくは≦10nMであり、もっとも好ましくは≦100pMから約1pMである場合に、本発明の抗体は、CD47に特異的に結合すると言われる。
本明細書に使用されるような用語「単離されたポリヌクレオチド」は、ゲノム、cDNA、または合成起点またはいくつかのそれらの組み合わせのポリヌクレオチドを意味するべきであり、その起源に由来して、「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)天然に「単離されたポリヌクレオチド」が見られるポリヌクレオチドの全てまたは一部と結合(associated)せず、(2)天然にそれと連結(link)しないポリヌクレオチドに機能可能に(operably)連結し、または、(3)より長い配列の部分として天然に生じない。
本明細書で参照される用語「単離されたタンパク質」は、本願においては、cDNA、組み換えRNA、または合成起点またはいくつかのそれらの組み合わせのタンパク質を意味し、その起源または派生の源に由来して、「単離されたタンパク質」は、(1)天然に見られるタンパク質と結合しない、(2)同一のソースからの他のタンパク質を含んでいない(例えば、海洋タンパク質を含んでいない)、(3)異なる種からの細胞により発現される、または、(4)天然に生じない。
「ポリペプチド」という用語は、本明細書では、ポリペプチド配列の天然のタンパク質、フラグメント、またはアナログを指す一般的な用語として使用される。従って、天然のタンパク質のフラグメントおよびアナログはポリペプチド属の種(species of the polypeptide genus)である。
本明細書において対象物に適用される用語「天然に存在する」は、対象物が自然界に見出され得るという事実を指す。例えば、自然界の供給源から単離することができ、実験室でヒトによって意図的に改変されていないか、または天然に存在する生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列である。
本明細書で使用される「機能可能に連結された」という用語は、そのように記載された成分の位置が、それらが意図された態様で機能することを可能にする関係にあることを指す。コード配列に「機能可能に連結された」制御配列は、コード配列の発現が制御配列と適合する条件下で達成されるように連結される。
本明細書に使用されるような用語「制御配列」は、それらが結合される、コード配列の発現およびプロセシングをもたらすのに必要であるポリヌクレオチド配列を意味する。そのような制御配列の性質は原核生物の宿主生命体に依存して異なり、その様な制御配列は、一般的にプロモーター、リボソーム結合部位および真核生物の転写終結配列を含み、一般的に、その様な制御配列は、プロモーター、および転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、少なくとも、その存在が発現およびプロセシングに必須である全ての要素を含むことを意図し、そしてまた、その存在が有利である追加の要素、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列(fusion partner sequence)を含むことができる。用語「ポリヌクレオチド」は、本願で言及される場合、少なくとも10塩基長のヌクレオチドの重合ホウ素(polymeric boron)、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれか、または、ヌクレオチドのどちらかのタイプの修飾された形態を意味する。この用語は、DNAの一本鎖および二本鎖の形態を含む。
用語「オリゴヌクレオチド」は、本願において、天然に生じるヌクレオチドおよび、天然に生じおよび非天然に生じるオリゴヌクレオチド連結によってお互いに連結される、修飾されたヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、一般的に200塩基以下の長さを含むポリヌクレオチドサブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、長さ10から60塩基であり、もっとも好ましくは、長さ12、13、14、15、16、17、18、19、または20から40塩基である。オリゴヌクレオチドは、多くの場合、例えばプローブでは一本鎖であるが、例えば、遺伝子変異体の構築における使用では、オリゴヌクレオチドは二本鎖であってよい。本明細書に開示されるオリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスのどちらかのオリゴヌクレオチドである。
本明細書に引用される用語「天然に生じるヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書に引用される用語「修飾されたヌクレオチド」は、修飾されたまたは置換された糖類などを有するヌクレオチドを含む。本明細書に引用される用語「オリゴヌクレオチド連結」は、フォスフォロチオアート、フォスフォロジチオアート、フォスフォロセレロアート(phosphoroselerloate)、フォスフォロジセレノアート(phosphorodiselenoate)、フォスフォロアニロチオアート(phosphoroanilothioate)、フォスホラニラダート(phoshoraniladate)、フォスフォロニミダート(phosphoronmidate)等などのオリゴヌクレオチド連結を含む。例えば以下を参照。 LaPlanche et al. Nucl.Acids Res.14:9081(1986);Stec et al.J. Am.Chem. Soc.106:6077(1984), Stein et al. Nucl.Acids Res.16:3209(1988), Zon et al.Anti Cancer Drug Design 6:539(1991);Zon et al.Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach, pp. 87−108(F. Eckstein, Ed., Oxford University Press, Oxford England(1991));Stec et al. U.S. Patent No. 5,151,510;Uhlmann & Peyman, Chem. Reviews 90:543(1990)オリゴヌクレオチドは、所望の場合、検出のためのラベルを含むことができる。
用語「選択的にハイブリダイズする(selectively hybridize)」は、検出可能にかつ特異的に結合することを指す。本発明に関するポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびそれらのフラグメントは、ハイブリダイゼーションおよび非特異的な核酸への検出可能な結合のかなりの量を最小化する洗浄条件下で核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件(high stringency conditions)は、その技術分野において周知であり、そして本願で検討されるような選択的ハイブリダイゼーション条件を達成するために使用され得る。一般的に、本明細書に開示される、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびフラグメントと、目的の核酸配列との間の核酸配列相同性は、少なくとも80%であろうし、より典型的には、少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%の好ましく増加した相同性を有するだろう。2つのアミノ酸配列は、それらの配列の間で部分的なまたは完全な一致がある場合に、相同である。例えば、85%の相同は、2つの配列がもっとも一致して整列した場合に、85%のアミノ酸が同一であることを意味する。一致するギャップ長を最大化する際に(2つの配列のいずれかに一致する)ギャップが許容され、5以下のギャップ長が好ましく、2以下がより好ましい。あるいは、好ましくは、2つのタンパク質配列(または、それらに由来する、少なくとも30アミノ酸長のポリペプチド配列)が、変異体データマトリクスおよび6以上のギャップペナルティを使用するALIGNプログラムを使用して、(標準偏差ユニットにおいて)5より大きい整列スコアを有している場合、この用語が本明細書で使用される通り、2つのタンパク質配列(または、少なくとも30アミノ酸の長さのそれら由来のポリペプチド配列)は相同である。Dayhoff, M.O., in Atlas of Protein Sequence and Structure, pp. 101−110(Volume 5, National Biomedical Research Foundation(1972))および Supplement 2 to this volume, pp. 1−10を参照。ALIGNプログラムを使用して最適に整列させたとき、それらのアミノ酸が50%以上同一である場合に、2つの配列またはその部分はより好ましく相同である。語「に対応する」は、本明細書において、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部分に相同(すなわち、同一であり、厳密に進化的に関連しない)であるという意味で使用され、または、ポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であるという意味で使用される。対照的に、用語「と相補的である」は、本願において、相補的な配列が、参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部分に相同であるという意味で使用される。例示のために、ヌクレオチド配列「TATAC」は、参照配列「TATAC」と対応し、そして、参照配列「GTATA」と相補的である。
次の用語は、2つ以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の配列関連性を記載するのに用いられる:「参照配列」、「比較ウィンドウ(comparison window)」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、および「実質的な同一性」。「参照配列」は、配列比較のための基礎として用いられる定義された配列であり、参照配列は、例えば全長のcDNAのセグメントまたは配列表にある遺伝子配列のセグメントのような、より大きな配列のサブセットでありえ、または、完全なcDNAまたは遺伝子配列を含むことができる。一般的に、参照配列は、少なくとも18ヌクレオチドまたは6アミノ酸長であり、しばしば、少なくとも24ヌクレオチドまたは8アミノ酸長であり、そして多くの場合、少なくとも48ヌクレオチドまたは16アミノ酸長である。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ、(1)2つの分子の間で類似である配列(すなわち、完全なポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部分)を含んでもよく、および(2)2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間で相違する(divergent)配列を更に含んでもよく、2つ(またはそれ以上)の分子の間の配列比較は、典型的には、「比較ウィンドウ」にわたって2つの分子の配列を比較することにより行われ、そして配列類似性の局所領域(local region)を同定および比較する。「比較ウィンドウ」は、本明細書に使用されるように、少なくとも18の隣接したヌクレオチド位置または6アミノ酸の概念セグメント(conceptual segment)を意味し、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、少なくとも18の隣接したヌクレオチドまたは6アミノ酸配列の参照配列と比較することができ、そして、比較ウィンドウのポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメント(ないし整列、alignment)のための参照配列(これは、付加または削除を含まない)と比較して20パーセント以下の付加、削除、置換など(すなわちギャップ)を含み得る。比較ウィンドウを整列させるための最適なアラインメントは、Smith and Waterman Adv. Appl. Math. 2:482(1981)の局所ホモロジーアルゴリズムにより、Needleman and Wunsch J. Mol. Biol. 48:443(1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci.(U.S.A.) 85:2444(1988)の類似法に関する検索により、これらアルゴリズムのコンピュータ化された実施(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0,(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Geneworks、またはMacVector software packages)により、または、検査により行われてもよく、様々な方法により生成されたもっとも良いアラインメント(すなわち、比較ウィンドウにわたり、相同性の最も高いパーセンテージをもたらす)が選択される。
用語「配列同一性」は、比較ウィンドウにわたって2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が(すなわち、ヌクレオチドとヌクレオチドまたは残基と残基基準で)同一であることを意味する。用語「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較し、両方の配列において、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、UまたはI)または残基が生ずる位置の数を決定し、マッチした位置の数を得て、マッチした位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数(すなわちウィンドウの大きさ)で割り、そして結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。本明細書に使用される用語「実質的な同一性」は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特徴を示し、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸は、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)位置の比較ウィンドウにわたって、頻繁には少なくとも24−48ヌクレオチド(8−16アミノ酸)位置のウィンドウにわたって、参照配列と比較した場合、少なくとも85パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90から95パーセントの配列同一性、より通常には、少なくとも99パーセント配列同一性を有する配列を含み、配列同一性のパーセンテージは、比較ウィンドウにわたって、参照配列を、参照配列の総計20パーセント以下の欠損または付加を含み得る配列と比較することにより計算される。参照配列は、より大きな配列のサブセットであり得る。
本明細書に使用されるように、20の従来型のアミノ酸およびその省略表記は、従来型の用途に従う。Immunology−A Synthesis(2nd Edition, E.S. Golub and D.R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland 7 Mass.(1991))を参照。20の従来型のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、α−、α−2基置換のアミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸および他の非従来型のアミノ酸などの非天然のアミノ酸はまた、本明細書に開示されるポリペプチドにとって適切な要素であり得る。非従来型アミノ酸の例は以下を含む。4ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸塩、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−フォスフォセリン、N−アセチルセリン、N−フォルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、σ−N−メチルアルギニン、および他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)。本明細書に使用されるポリペプチド表記では、標準的な用法および慣習に従って、左側方向はアミノ末端方向であり、そして右側方向は、カルボキシ末端方向である。
同様に、もし他の方法で規定されなかったならば、単鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は、5’末端であり、二重鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は5’方向と称される。新生RNA転写産物の5’から3’付加の方向は、RNAと同じ配列を有し、RNA転写物の5’末端から5’末端にあるDNA鎖上の転写方向配列領域を指し、「上流配列」と称され、RNAと同じ配列を有し、RNA転写物の3’末端に対して3’側であるDNA鎖上の配列領域を「下流配列」と称される。
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な同一性」は、既定のギャップウェイト(gap weights)を使用するプログラムGAPまたはBESTFITによるなどして最適に整列させた場合、2つのペプチド配列は、少なくとも80%配列同一性、好ましくは、少なくとも90%配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%配列同一性、およびもっとも好ましくは、少なくとも99%配列同一性を共有することを意味する。
好ましくは、同一でない残基位置は、保存的なアミノ酸置換により異なる。
保存的なアミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンである;脂肪族のヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンとトレオニンである;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンとグルタミンである;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンである;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群はリジン、アルギニンおよびヒスチジンである;および、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群はシステインとメチオニンである。好ましい保存的なアミノ酸置換群は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニンバリン、グルタミン−アスパラギン、およびアスパラギン−グルタミン、である。
本明細書に議論されるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列におけるわずかなバリエーションは、本願発明により包含されることが検討され、アミノ酸配列におけるバリエーションが、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、およびもっとも好ましくは99%を維持することを提供する。保存的なアミノ酸置換が考えられる。保存的な置換は、アミノ酸の側鎖に関するアミノ酸ファミリー内で行われるものである。遺伝学的にコード化されたアミノ酸は、(1)酸性アミノ酸であるアスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性アミノ酸である、リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性アミノ酸であるアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、および(4)非荷電極性アミノ酸であるグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、のファミリーに分けられる。親水性のアミノ酸はアルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、グルタミン、グルタミン酸塩、ヒスチジン、リジン、セリンおよびトレオニンを含んでいる。疎水性アミノ酸はアラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンおよびバリンを含んでいる。アミノ酸の他のファミリーは、(i)脂肪族ヒドロキシファミリーであるセリンおよびスレオニン;(ii)アミド含有ファミリーであるアスパラギンおよびグルタミン;(iii)脂肪族ファミリーであるアラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;および(iv)芳香族ファミリーであるフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンを含む。例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンでの分離した置換、アスパラギン酸のグルタミン酸での分離した置換、スレオニンのセリンでの分離した置換、または、アミノ酸の構造的に関連するアミノ酸での類似の置換は、特に、置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を含まない場合、結果の分子の結合または性質における主要な効果を有さないだろうことを期待することが妥当である。アミノ酸変更が機能的なペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的な活性をアッセイすることにより容易く決定され得る。アッセイは詳細に本明細書に記述される。抗体または免疫グロブリン分子のフラグメントまたはアナログは、当業者により容易く調製され得る。好ましいフラグメントまたはアナログのアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能的なドメインの隣接の境界に生じる。構造的なおよび機能的なドメインは、公開のまたは自己の(proprietary)配列データベースとヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データの比較により同定され得る。好ましくは、コンピュータ化された比較方法が、既知の構造および/または機能を有する他のタンパク質で生じる配列モチーフまたは予想されるタンパク質コンフォメーション(conformation)ドメインを同定するのに使用される。既知の3次元構造に折りたたまれるタンパク質配列を同定する方法が知られている。Bowie et al. Science 253:164(1991)。従って、前述の例は、当業者が、本発明に一致する構造的なおよび機能的なドメインを定義するのに使用され得る配列モチーフおよび構造的なコンフォメーションを認識できることを表す。
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解への感受性を減少させる、(2)酸化への感受性を減少させる、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させる、(4)結合親和性を変化させる、および、(4)そのようなアナログの他の物理化学的なまたは機能的な性質を授与するまたは修正するものである。アナログは、天然に生ずるペプチド配列以外の配列の様々な変異タンパク質を含むことができる。例えば、単一のまたは多重のアミノ酸置換(好ましくは保存的なアミノ酸置換)は、天然に生じる配列において(好ましくは、分子間接触を形成するドメイン(1または複数)の外側のポリペプチドの部分において)行われ得る。保存的なアミノ酸置換は、親である配列の構造的な特徴を実質的に変化させるべきではない(例えば、アミノ酸置換は、親の配列において生ずるヘリックスを壊す傾向であるべきではなく、または、親の配列を特徴付ける二次構造の他のタイプを破壊する傾向であるべきではない)。技術分野で認識されるポリペプチドの二次構造または三次構造の例は、以下に記載される。(Creighton, Ed., W.H. Freeman and Company, New York(1984));Introduction to Protein Structure(C. Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, NY(1991));およびThornton et al. Nature 354:105(1991)。
本明細書に使用されるような用語「ポリペプチドフラグメント」は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠損を有するポリペプチドを指すが、残余のアミノ酸配列は、例えば、全長cDNA配列から推定される天然に生ずる配列における対応する位置と同一である。フラグメントは典型的には、少なくとも5、6、8または10アミノ酸長であり、好ましくは、少なくとも14アミノ酸長、さらに好ましくは少なくとも20アミノ酸長、通常は、少なくとも50アミノ酸長であり、そしてさらに好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。本明細書に使用されるような用語「アナログ」は、推定されるアミノ酸配列の一部分に実質的な同一性を有し、および適切な結合条件下でCD47に特異的な結合を有する、少なくとも25アミノ酸のセグメントからなるポリペプチドを指す。典型的には、ポリペプチドアナログは、天然に生じる配列に対する保存的なアミノ酸置換(または付加若しくは削除)を含む。アナログは典型的には、少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50アミノ酸長またはそれ以上、であり、そして、多くの場合、全長の天然に生じるポリペプチドと同じくらいの長さであり得る。
ペプチドアナログは、鋳型ペプチドの性質と類似した性質を有する非ペプチド薬として製薬業界において一般的に使用される。これらのタイプの非ペプチド化合物は「ペプチド模倣剤」または「ペプチド模倣薬」と名付けられる。Fauchere(J.Adv)。Drug Res.15:29(1986), Veber & Freidinger, TINS p.392(1985);and Evans et al., J. Med.Chem. 30:1229(1987).そのような化合物は、通常、コンピュータ化された分子モデリングを用いて開発される。治療上有用なペプチドと構造的に類似のペプチド模倣剤は、同等の治療的な効果または予防効果を生じさせるために使用され得る。一般的に、ペプチド模倣剤は、ヒト抗体などのパラダイムポリペプチド(paradigm polypeptide)(すなわち、生化学的な性質または医薬的な活性を有するポリペプチド)に構造的に類似し、当該技術分野で周知の方法により、−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−−CH2−−、−−CH.dbd.CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、CH(OH)CH2−−および−−CH2SO−−から成る群より選択される連結により随意に置換された1つ以上のペプチド連結を有する。コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の、同じタイプのD−アミノ酸(例えば、L−リシンの代わりのD−リシン)での体系的な置換は、より安定なペプチドを生じさせるのに使用され得る。加えて、コンセンサス配列または実質的に同一であるコンセンサス配列バリエーションを含む拘束された(constrained)ペプチドは、例えば、ペプチドを環状化する分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内在システイン残基を付加することによってなど、当該技術分野で知られた方法によって生成されうる(Rizo and Gierasch Ann. Rev. Biochem. 61:387(1992))。
用語「薬剤」は化合物、化合物の混合物、生物学的なマクロ分子、または生物学的な材料から作られる抽出物を指すために本明細書で使用される。
本明細書に使用されるように、用語「ラベル」または「ラベルされた」は、例えば、放射線ラベルされたアミノ酸の取り込み、または、印のあるアビジン(例えば、蛍光マーカーまたは光学的な方法もしくは熱量測定法により検出され得る酵素学的な活性を含むストレプトアビジン)により検出され得るビオチニル部分(biotinyl moieties)のポリペプチドへの取り付けによる、検出可能なマーカーの取り込みを指す。ある状況で、ラベルまたはマーカーはまた治療的でありうる。ポリペプチドと糖タンパク質にラベルを付ける様々な方法は、当該技術中で周知であり、使用されてもよい。ポリペプチドのためのラベルの例は限定されないが、下記を含んでいる:放射線同位体または放射線核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光ラベル(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体(lanthanide phosphors))、酵素ラベル(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、p−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光、ビオチニル群(biotinyl groups)、二次レポーターにより認識される予め決定されたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に関する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態では、ラベルは潜在的立体障害を低減するために様々な長さのスペーサー腕(spacer arm)によって付けられる。本明細書に使用されるような用語「医薬的な薬剤または薬物」は、患者に適切に投与される場合、所望の治療的な効果を含むことができる化合物または組成物を意味する。
用語「抗腫瘍剤」は、本明細書において、ヒトにおける腫瘍(例えば癌腫、肉腫、リンパ腫、または白血病のような)特に悪性(癌の)病変の発達ないし進行を阻害する機能的な性質を有する薬剤を指すために使用される。転移の阻害はしばしば、抗腫瘍剤の性質である。
本明細書の他の化学用語は、The McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker, S., Ed., McGraw−Hill, San Francisco(1985))により例示されるように、その技術分野の従来型の用途に従って用いられる。
本明細書に使用されるように、「実質的に純粋な」とは、対象の種が優勢な種である(すなわち、モル基準(molar basis)で、組成物中において他の個々の種よりも豊富である)こと、および、好ましくは、実質的に精製された分画は、目的の種は、全てのマクロ分子種の(モル基準で)少なくとも約50パーセントを含む組成物であることを意味する。
一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物中にある全てのマクロ分子種の約80パーセントを上回り、より好ましくは約85%、90%、95%、および99%を上回って含むだろう。最も好ましくは、対象の種は、本質的な等質性(homogeneity)(混入種が、従来型の検出方法により組成物中に検出されない)を有するように精製され、組成物は、本質的に、単一のマクロ分子種からなる。
CD47抗体
本明細書に開示されるモノクローナル抗体は、CD47に結合し、CD47へのSIRPαの結合を阻害し、CD47−SIRPα媒介シグナル伝達を減少させ、食作用を促進し、および、腫瘍成長および/または転移を阻害する能力を有する。例えば、実施例において本願に記載される細胞アッセイを用いて阻害は決定される。
本明細書で開示された例示的な抗体は2A1抗体、2A1のキメラバージョン、および2A1のヒト化変異体を含んでいる。本明細書で開示された例示的な抗体は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるSEQ ID NO:5−30から選択される可変重(VH)鎖を有し、および、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されているSEQ ID NO:31−47から選択される可変軽(VL)鎖を有する抗体を含む。具体的には、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される表1に提供されたものを含んでいる。
また、本明細書に記述したCD47抗体と同じエピトープに結合する抗体が本発明に含まれている。例えば、本明細書に開示される抗体は、ヒトCD47(GenBank受入番号Q08722.1参照)上の1つ以上のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する。
例示的なヒトCD47のアミノ酸配列は、以下に提供され(GenBank受入番号Q08722.1(GI:1171879)、参照により本明細書に組み込まれる)。シグナル配列(アミノ酸1〜18)は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されているように、SEQ ID NO:48に関して下線が引かれている。
分かりやすくするために、シグナル配列を除く例示的なヒトCD47のアミノ酸配列は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されているように、SEQ ID NO:147として提供される。
CD47−IgVドメインを除く例示的なヒトCD47のアミノ酸配列は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されているように、SEQ ID NO:49として提供される。本明細書で開示された例示的なモノクローナル抗体は、例えば、下記の配列に示される可変重鎖領域(VH)および/または可変軽鎖(VL)領域を有するヒト化抗体を含む。
CD47抗体の可変重鎖(VH)領域を以下に示す。CD47抗体のVH鎖の相補性決定領域(CDR)は、下で強調される(highlighted)。いくつかの実施形態では、VH CDR1のアミノ酸配列はGFNIKDYYLH(SEQ ID No:50)、GYTFTYYYLH(SEQ ID NO:57)、GFTFTYYYLH(SEQ ID NO:58)、GYNFTYYYLH(SEQ ID NO:59)、GYTITYYYLH(SEQ ID NO:60)、GYTFKYYYLH(SEQ ID NO:61)、GYTFTDYYLH(SEQ ID NO:62)、GFTFTDYYLH(SEQ ID NO:63)、GFTITDYYLH(SEQ ID NO:64)、GYTFKDYYLH(SEQ ID NO:65)またはGFTFKDYYLH(SEQ ID NO:66)である。いくつかの実施形態では、VH CDR2のアミノ酸配列は、WIDPDNGDTE(SEQ ID NO:51)、WIDPDQGDTE(SEQ ID NO:72)、WIDPDYGDTE(SEQ ID NO:73)、WIDPDSGDTE(SEQ ID NO:74)、WIDPDNADTE(SEQ ID NO:75)またはWIDPDNTDTE(SEQ ID NO:76)である。いくつかの実施形態では、VH CDR3のアミノ酸配列は、NAAYGSSSYPMDY(SEQ ID NO:52)またはNAAYGSSPYPMDY(SEQ ID NO:77)であり、−すべてのSEQ IDの参照は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるとおりのものである。
CD47抗体の可変軽鎖(VL)領域を以下に示す。CD47抗体のVL鎖のCDRは下に強調される。いくつかの実施形態では、VL CDR1のアミノ酸配列は、KASQDIHRYLS(SEQ ID NO:53)、RASQDIHRYLA(SEQ ID NO:67)またはRARQGIHRYLS(SEQ ID NO:68)である。いくつかの実施形態では、VL CDR2のアミノ酸配列は、RANRLVD(SEQ ID NO:54)、RANRLQS(SEQ ID NO:69)、RANRRAT(SEQ ID NO:70)またはRANRLVS(SEQ ID NO:71)である。いくつかの実施形態では、VL CDR3のアミノ酸配列はLQYDEFPYT(SEQ ID NO:55)であり、−すべてのSEQ IDの参照は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるとおりのものである。
いくつかの場合には、本明細書に記載のCD47抗体は、SEQ ID NO:5−30から選択される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:31−47から選択される可変軽鎖領域を含む。例示的なCD47抗体は、SEQ ID NO:5に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:31に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:7に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:11に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:42に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:5に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:32に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:7に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:33に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:7に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:34に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:7に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:36に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:7に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:37に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:7に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:38に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:29に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:30に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:7に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:43に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:11に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:43に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:11に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:47に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:15に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:43に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:15に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:44に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:11に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:44に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:22に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:7に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:39に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:8に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:39に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:16に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:20に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:21に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:17に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、SEQ ID NO:28に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、または、SEQ ID NO:27に示される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:35に示される可変軽鎖領域を含み、−すべてのSEQ IDの参照は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるとおりのものである。
本明細書に記述されるCD47抗体は、SEQ ID NO:31−47に提供されるVL領域のいずれか1つと対になる、SEQ ID NO:5−30に提供されるVH領域のいずれか1つを含む。本明細書に記述されるCD47抗体は、SEQ ID NO:31−39、42、43、44および47に提供されるVL領域のいずれか1つと対になる、SEQ ID NO:5、7、8、11、15−17、20−22に提供されるVH領域のいずれか1つを含み、−すべてのSEQ IDの参照は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるとおりのものである。
本明細書に記述されるCD47抗体は、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:65、およびSEQ ID NO:66、で提供されるVH CDR1領域のうちのいずれか1つを含み、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、およびSEQ ID NO:76、で提供されるVH CDR2領域のうちのいずれか1つを含み、SEQ ID NO:52、およびSEQ ID NO:77、で提供されるVH CDR3領域のうちのいずれか1つを含み:SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:67、およびSEQ ID NO:68、SEQ ID NO:で提供されるVL CDR1領域のうちのいずれか1つを含み、SEQ ID NO:54、SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、およびSEQ ID NO:71、で提供されるVL CDR2領域のうちのいずれか1つを含み、および、SEQ ID NO:55で提供されるVL CDR3領域を含む。−すべてのSEQ IDの参照は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるとおりのものである。
当業者であれば、過度の実験をすることなく、モノクローナル抗体が本明細書に開示されるモノクローナル抗体(例えば、2A1抗体、または米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:5−31から選択される可変重鎖と、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようなSEQ ID NO:31−47から選択される可変軽鎖と、を有する抗体)と同じ特異性を有するかどうかを、後者がCD47に結合するのを前者が妨げるかどうかを確かめることによって、判定することができることを認識するだろう。本明細書に開示されるモノクローナル抗体による結合の減少によって表されるように、試験されるモノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体と競合する場合、2つのモノクローナル抗体は、同一のまたは密接に関連するエピトープに結合する。
モノクローナル抗体が、本明細書に開示されるモノクローナル抗体の特異性を有するかどうかを決定するための代わりの方法は、本明細書に開示されるモノクローナル抗体を、(本発明のモノクローナル抗体と正常に反応する)可溶性CD47タンパク質と共に前インキュベート(pre−incubate)し、そして、試験されるモノクローナル抗体を添加して、試験されるモノクローナル抗体がそのCD47に結合する能力において阻害されるかどうかを判定することである。試験されるモノクローナル抗体が阻害される場合には、おそらく、本明細書に開示されるモノクローナル抗体と同一または機能的に同等のエピトープ特異性を有する。
本発明の抗体
本発明のモノクローナル抗体のスクリーニングは、例えば、CD47媒介性シグナル伝達および/またはCD47/SIRPα媒介性シグナル伝達を測定すること、および、試験モノクローナル抗体がCD47媒介性シグナル伝達および/またはCD47/SIRPα媒介性シグナル伝達を、調節、ブロック、阻害、低減、拮抗、中和または干渉できるか否かを決定すること、によっても実行され得る。これらのアッセイは競合的結合アッセイを含むことができる。さらに、さらに、これらのアッセイは、生物学的読出情報(biologic readout)、例えば、実施例9(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図9)に記載されるように、マクロファージによるCD47発現細胞の食作用を促進する能力、を測定することができる。
CD47、または、その誘導体、フラグメント、アナログ、ホモログまたはオーソログに対するモノクローナル抗体の生成のために、本発明の技術分野において公知の種々の手法が使用され得る(例えばAntibodies:A Laboratory Manual, Harlow E, and Lane D, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.,を参照。これは参照によって本明細書に組み込まれる)。完全なヒト抗体は抗体分子であり、CDRを含む軽鎖および重鎖の両方の全体配列がヒト遺伝子に由来する。そのような抗体は「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」と本明細書に命名される。ヒトモノクローナル抗体は下に提供された例に述べられていた手術を使用して、例えば準備されている。ヒトモノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体を生成するためのトリオーマ技法;ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor, et al., 1983 Immunol Today 4:72を参照);およびEBVハイブリドーマ技法を使用することによっても調製され得る(Cole, et al., 1985 In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77−96を参照)。ヒトモノクローナル抗体が利用され得るし、ヒトハイブリドーマを使用することによって(Cote, et al., 1983. Proc Natl Acad Sci USA 80:2026−2030を参照)、またはインビトロにおいてヒトB細胞をエプスタイン・バーウイルスで形質転換することによって生成され得る(Cole, et al., 1985 In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77−96を参照)。
抗体は、タンパク質Aまたはタンパク質Gを使用するアフィニティークロマトグラフィーなどの、周知技術によって精製され、これは主に免疫血清のIgG分画を提供する。その後、またはその代わりに、探索される免疫グロブリンの標的である特異的抗原、またはそのエピトープをカラムに固定して、免疫アフィニティークロマトグラフィーによって免疫特異的抗体が精製され得る。免疫グロブリンの精製は、例えD. Wilkinson(The Scientist, published by The Scientist, Inc., Philadelphia Pa., Vol. 14, No. 8(Apr. 17, 2000), pp. 25−28)によって議論されている。
本明細書に開示されるCD47抗体は、モノクローナル抗体である。CD47媒介性細胞シグナリングおよび/またはCD47/SIRPα媒介性細胞シグナリングを調節、ブロック、阻害、低減、拮抗、中和または干渉するモノクローナル抗体は、例えば、ヒトCD47または免疫原性のフラグメント、誘導体またはその変異体などの膜結合型CD47および/または可溶性CD47で動物を免疫化することにより、生成される。あるいは、CD47を発現して形質導入された細胞の表面に出現させるようにCD47をコードする核酸分子を含むベクターで形質導入された細胞を用いて動物は免疫化される。あるいは、抗体は、CD47に結合するための抗体または抗原結合ドメイン配列を含むライブラリをスクリーニングすることによって取得される。このライブラリは、例えば、バクテリオファージにおいて、集合した(assembled)ファージ粒子の表面上に発現するバクテリオファージコートタンパク質に対するタンパク質融合物またはペプチド融合物として、そしてファージ粒子内に含まれるコードDNA配列(すなわち、「ファージディスプレイライブラリ」)として調製される。骨髄腫/B細胞の融合に由来するハイブリドーマは、次にCD47への反応性に関してスクリーニングされる。
モノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495(1975)などに記載されるようなハイブリドーマ技法を使用して調製される。ハイブリドーマ技法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物は、典型的には免疫剤で免疫化されて、免疫剤に対して特異的に結合するであろう抗体を産生するか、または該抗体を産生することが可能なリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫化されうる。
免疫剤は典型的にはタンパク質抗原、そのフラグメントまたはその融合タンパク質を含むだろう。一般的には、ヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血液リンパ球が使用されるか、ヒト以外の哺乳類のソースが望まれる場合には脾臓細胞またはリンパ節細胞が使用されるかのいずれかである。次に、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使用してリンパ球を不死化細胞系統と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Academic Press,(1986) pp. 59−103)。不死化細胞系統は、通常、形質転換哺乳類細胞であり、特にげっ歯類、ウシおよびヒト由来の細胞の骨髄腫である。通常、ネズミまたはマウスの骨髄腫細胞系統が採用される。ハイブリドーマ細胞は、融合されていない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含むことが好ましい、適切な培地で培養することができる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合には、ハイブリドーマのための培養液は典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(「HAT培地」)を含み、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨げるだろう。
本明細書で開示された不死化細胞系は、効率的に融合し、選択した抗体産生細胞による抗体の安定で高レベルの発現を支持し、かつHAT培地などの培地に対して感受性である。より好ましい不死化細胞系統はネズミ骨髄腫系統であり、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California and the American Type Culture Collection, Manassas, Virginiaから取得され得る。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系統も、モノクローナル抗体の産生に関する記載がある。Kozbor, J. Immunol., 133:3001(1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York,(1987) pp.51−63)を参照。
ハイブリドーマ細胞を培養する培養液は、次いで抗原に対するモノクローナル抗体の存在に関してアッセイされ得る。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が免疫沈降アッセイまたはインビトロ結合アッセイ(放射免疫アッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)など)によって判定される。そのような技術およびアッセイは、本発明の技術分野において知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220(1980)のスキャチャード解析によって判定され得る。さらに、モノクローナル抗体の治療上の適用において、標的抗原に関する高度な特異性および高い結合親和性を有する抗体を同定することは重要である。
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後に、クローンは限界希釈法によってサブクローニングされ、標準的な方法によって成長させられる。Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice, Academic Press,(1986) pp. 59−103を参照。この目的のための適切な培養液は、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地およびRPMI−1640培地を含む。あるいは、ハイブリドーマ細胞を哺乳類の腹水(ascites)としてインビボで成長させられ得る。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシルアパタイクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製法によって培養液または腹水流動体から単離または精製され得る。
モノクローナル抗体は、米国特許出願4,816,567号に記載される方法などの組み換えDNA法によって作製され得る。本明細書に開示されるモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手法を使用して(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離およびシーケンスされ得る。本明細書で開示されるハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい入手元としての役割を果たす。一度単離されると、DNAは発現ベクターに入れることができ、次に発現ベクターをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)293細胞、サルCOS細胞、PER.C6(商標)、NS0細胞、SP2/0、YB2/0、または骨髄腫細胞などの宿主細胞あるいは他に免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞に形質導入して、組み換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成物が得られる。例えば、相同マウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を置換すること(米国特許4,816,567号;Morrison, Nature 368, 812−13(1994)を参照)、または、免疫グロブリンをコードする配列の全部または一部を非免疫グロブリンポリペプチド共有結合させることによって、DNAを修飾することもできる。本明細書で開示される抗体の定常ドメインは、そのような非免疫グロブリンポリペプチドで置換され得るし、または本明細書で開示される抗体の1つの抗原組み合わせ部位の可変ドメインを置換してキメラ型二価抗体が作製され得る。
ヒト抗体および抗体のヒト化
本明細書で開示されたモノクローナル抗体は完全ヒト化抗体またはヒト化抗体を含む。これらの抗体は、投与された免疫グロブリンに対するヒトによる免疫応答を引き起こすことなく、ヒトに投与するのに適している。
CD47抗体は、例えば、以下に提供される実施例に記載される手順を使用して生成される。例えば、本明細書中に開示されるCD47抗体は、マウスにおける修飾RIMMS(反復免疫多重部位)(Repetitive Immunization Multiple Sites)免疫化戦略およびその後のハイブリドーマ生成を使用して同定される。
他の代替方法では、CD47抗体は、例えば、ヒト配列のみを含有する抗体を用いたファージディスプレイ法を用いて開発されている。そのようなアプローチは、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO92/01047および米国特許第6,521,404号において、当技術分野において周知である。このアプローチでは、軽鎖および重鎖のランダムな対を保有するファージのコンビナトリアルライブラリは、cd47またはそのフラグメントの天然または組換えのソースを使用してスクリーニングされる。他のアプローチにおいて、CD47抗体は、ヒトCD47タンパク質でトランスジェニック非ヒト動物を免疫化する1ステップを少なくとも含むプロセスによって生成することができる。この取り組みでは、この異種非ヒト動物の内因性重鎖および/またはカッパ軽鎖遺伝子座のいくつかは無能化されており、抗原に応答して免疫グロブリンをコードする遺伝子を生成するのに必要な再配列ができない。加えて、少なくとも1つのヒト重鎖遺伝子座および少なくとも1つのヒト軽鎖遺伝子座が、動物に安定的に形質導入されている。従って、投与された抗原に対する応答において、ヒト遺伝子座の再アレンジによって抗原に対して免疫特異的なヒト可変領域をコードする遺伝子が提供される。従って、免疫化の際に、ゼノマウスは完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産出する。
異種非ヒト動物を作製するための種々の技術が当該分野で周知である。米国特許第6,075,181号および第6,150,584号を参照、これは参照により本明細書に組み込まれる。この一般的な戦略は、1994年に発表された最初のXenoMouse(商標)株の生成に関連して実証された。Green et al. Nature Genetics 7:13−21(1994)を参照、これは参照により本明細書に組み込まれる。米国特許6,162,963号;第6,150,584号;第6,114,598号;第6,075,181号;および5,939,598および日本特許3068180B2、3068 506B2および3068507B2および欧州特許EP0463151B1および国際特許出願 WO94/02602、WO96/34096、WO98/24893、WO00/76310、および関連するファミリーメンバーも参照のこと。
別のアプローチにおいて、他のものは、外因性Ig遺伝子座がIg遺伝子座からの断片(個々の遺伝子)の包含を通して模倣される「ミニローカス」アプローチを利用してきた。したがって、1つ以上のVH遺伝子、1つ以上のDH遺伝子、1つ以上のJH遺伝子、ミュー定常領域および第2の定常領域(好ましくはガンマ定常領域)が、動物の中への挿入のための構築物を形成される。例えば、米国特許第5,545,806号、第5,545,807号;第5,591,669号;第5,612,205号;第5,625,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,643,763号;第5,661,016号;第5,721,367号;第5,770,429号;第5,789,215号;第5,789,650号;第5,814,318号;第5,877,397号;第5,874,299号;第6,023,010号;および、第6,255,458号;ならびに、欧州特許0546730B1;および国際特許出願番号WO92/03918、WO92/22645、WO92/22647、WO92/22670、WO93/12227、WO94/00569、WO94/25585、WO96/14436、WO97/13852およびWO98/24884、および関連するファミリーメンバーを参照。
マイクロセル融合を通して、大きな染色体片、または全染色体が導入されたマウスからのヒト抗体の生成もまた証明されている。欧州特許出願773288および843961を参照。
ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答により、業界はキメラ抗体またはそうでなければヒト化抗体を調製するようになった。キメラ抗体はヒト定常領域および免疫可変領域を有するが、特に抗体の慢性的利用またはマルチドーズ利用において、特定のヒト抗キメラ型抗体(HACA)応答が観察されるであろうことが予想される。したがって、HAMAまたはHACA応答の懸念および/または影響を無にするまたはそうでなければ軽減するために、CD47に対する完全ヒト抗体を提供することが望ましいであろう。
減少した免疫原性を有する抗体の生成は、ヒト化、キメラ化および適切なライブラリを使用するディスプレイ法を介しても達成される。マウス抗体または他の種由来の抗体を本発明の技術分野において公知の技術を使用してヒト化またはプリマタイズ(primatized)することができることが分かるだろう。Winter & Harris, Immunol Today 14:43 46(1993) and Wright et al. Crit, Reviews in Immunol. 12125−168(1992)を参照。対象の抗体は、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメインおよび/またはフレームワークドメインを対応するヒト配列で置換するように組み換えDNA法によって遺伝子操作することができる(WO92102190および米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,761号;第5,693,792号;第 5,714,350号;および第5,777,085号を参照)。また、キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのIg cDNAの使用は当技術分野において公知である(Liu et al. Proc. Natl. Acads. Scis. 84:3439(1987) and J. Immunol. 139:3521(1987))。mRNAは、抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞から単離され、そしてcDNAを産生するために使用される。目的のcDNAは、特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって増幅することができる(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号を参照)。あるいは、目的の配列を単離するためにライブラリが作製され、そしてスクリーニングされる。次に、抗体の可変領域をコードするDNA配列をヒト定常領域配列に融合させる。ヒト定常領域の遺伝子の配列は、Kabat et al.(1991) Sequences of Proteins of immunological Interest, N.I.H. publication no. 91−3242において見つけることができる。ヒトC領域の遺伝子は、既知のクローンから容易に利用可能である。アイソタイプの選択は、補体結合反応または抗体依存的細胞毒性における活性などの所望のエフェクター機能によってガイドされるだろう。好ましいアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域(カッパまたはラムダ)の何れかが使用される。次に、キメラ型ヒト化抗体を従来の方法によって発現させる。
Fv、F(ab’)2およびFabなどの抗体フラグメントを、例えば、プロテアーゼまたは化学的切断による無処置のタンパク質の切断によって調製することができる。あるいは、切断型(truncated)遺伝子が設計される。例えば、F(ab’)2フラグメントの一部分をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含み、その後には、翻訳停止コドンが続き、切断した分子を産生する。
H鎖およびL鎖のJ領域のコンセンサス配列を使用してプライマーとして使用するオリゴヌクレオチドを設計して、その後のV領域セグメントとヒトC領域セグメントとの連結に有用な制限部位をJ領域へ導入することができる。C領域cDNAは、ヒト配列の類似の位置に制限部位を配置するために部位特異的突然変異誘発によって修飾することができる。
発現ベクターはプラスミド、レトロウイルス、YAC、EBV派生エピソームなどを含んでいる。便利なベクターは、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードし、VHまたはVL配列のいずれかを容易に挿入かつ発現できるように遺伝子操作される適切な制限部位を有するものである。そのようなベクターでは、挿入されたJ領域内のスプライスレセプター部位とヒトC領域の前方のスプライスアクセプター部位との間において通常スプライシングが生じ、そしてヒトCHエクソン内で生じるスプライス領域においてもスプライシングが生じる。ポリアデニル化および転写の終了が、コード領域の下流における天然の染色体部位で生じる。結果として生じるキメラ型抗体は、レトロウイルスLTR(例えば、SV−40初期(early)プロモーター)を含むいずれかの強力なプロモーターに結合することができる(Okayama et al., Mol. Cell. Bio. 3:280(1983)), Rous sarcoma virus LTR(Gorman et al. P.N.A.S. 79:6777(1982)), および moloney murine leukemia virus LTR(Grosschedl et al. Cell 41:885(1985))。以下で分かるように、天然のIgプロモーターおよび同様のものも使用することができる。
さらに、ヒト抗体または他の種由来の抗体は、ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、および他の技術(これらに限定されない)を含むディスプレイ型技術を介して、本発明の技術分野において良く知られた技術を使用して生成することができ、結果として生じる分子を親和性成熟などの追加の成熟化に供することができ、そのような技術は当該技術分野において良く知られている。Wright et al.Crit, Reviews in Immunol.12125−168(1992), Hanes and Pliickthun PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 94:4937−4942(1997)(ribosomal display), Parmley and Smith Gene 73:305−318(1988)(phage display), Scott, TIBS, vol. 17:241−245(1992), Cwirla et al. PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 87:6378−6382(1990), Russel et al. Nucl.Acids Research 21:1081−1085(1993), Hoganboom et al. Immunol.Reviews 130:43−68(1992), Chiswell and McCafferty TIBTECH;10:80−8A(1992)、および米国特許第5,733,743号。ディスプレイ技術をヒトでない抗体を生成するために利用する場合には、そのような抗体を上述のようにヒト化することもできる。
これらの技術を使用して、CD47発現細胞、可溶性の形状のCD47、それらのエピトープまたはペプチドおよびそれらに対する発現ライブラリ(例えば米国特許5,703,057号参照)に対する抗体を生成することができ、その後に本願に記載の活性について上述のようにスクリーニングすることができる。
本明細書に開示されるCD47抗体は、上記の1本鎖抗体をコードするDNAセグメントを含むベクターによって発現することができる。
これらは、ベクター、リポソーム、ネイキッドDNA、アジュバント−支援型DNA、遺伝子銃、カテーテルなどを含むことができる。ベクターは、標的化部分(moiety)(例えば、細胞の表面受容体に対するリガンド)および核酸結合部分(例えば ポリリシン)を含むWO93/64701などに記載した化学コンジュゲート、ウイルスベクター(例えば DNAまたはRNAウイルスベクター)、ターゲット部分および核酸結合部分(例えば、プロタミン)を含む融合タンパク質(例えば、ターゲット細胞に特異的な抗体)であるPCT/US95/02140(WO95/22618)に記載したような融合タンパク質、プラスミド、ファージなどである。ベクターは、染色体、非染色体または合成のものであり得る。
本明細書に開示されるベクターは、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学的コンジュゲートを含む。レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルスを含む。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターには、オルソポックスまたはアビポックスベクターなどのポックスベクター、単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクターなどのヘルペスウイルスベクターが含まれる(Geller, A. I. et al., J. Neurochem, 64:487(1995);Lim, F., et al., in DNA Cloning:Mammalian Systems, D. Glover, Ed.(Oxford Univ. Press, Oxford England)(1995);Geller, A. I. et al., Proc Natl.Acad. Sci.:U.S.A. 90:7603(1993);Geller, A. I., et al., Proc Natl.Acad. Sci.USA 87:1149(1990), Adenovirus Vectors(see LeGal LaSalle et al., Science, 259:988(1993);Davidson, et al., Nat.Genet.3:219(1993);Yang, et al., J. Virol.69:2004(1995)およびAdeno−associated Virus Vectors(see Kaplitt, M. G., et al., Nat.Genet.8:148(1994)を参照。
ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞質へ導入する。アビポックスウイルスベクターは、核酸の短期間の発現のみをもたらす。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよびヘルペスシンプレックスウイルス(HSV)ベクターが、神経細胞へ核酸を導入することに好ましい。アデノウイルスベクターは、結果的にアデノ随伴ウイルス(約4ヶ月間)よりも短期間で発現(約2ヶ月間)し、これはHSVベクターよりも短い。選択される特定のベクターは、標的細胞および処置される状態に依存するであろう。導入は標準的技術、例えば、感染、形質導入、トランスダクションまたはトランスフォーメーション、によって実行することができる。遺伝子導入の様式の例には、例えば、ネイキッドDNA、CaPO 4沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、およびウイルスベクターが含まれる。
ベクターは、実質的に任意の所望の標的細胞を標的とするために使用され得る。例えば、定位注射を使用して、ベクター(例えば、アデノウイルス、HSV)を所望の位置に向かわせることができる。さらに、粒子は、SynchroMed Infusion Systemなどのミニポンプ注入システムを用いた脳室内(i.c.)注入によって送達することができる。対流と呼ばれるバルクフローに基づく方法はまた、脳の広い領域に大きな分子を送達するのに効果的であることが証明されており、標的細胞にベクターを送達するのに有用であり得る。Bobo et al., Proc.Natl.Acad. Sci.USA 91:2076−2080(1994);Morrison et al., Am.J. Physiol. 266:292−305(1994)を参照。使用することができる他の方法はカテーテル、静脈内、腸管外、腹腔内および皮下注射、および経口または他の既知の投与ルートを含む。
これらのベクターは、様々な方法で使用することができる大量の抗体を発現するために使用することができる。例えばサンプルのCD47の存在を発見することに使用することができる。抗体はまた、CD47および/またはCD47/SIRPα相互作用ならびにCD47/SIRPα媒介シグナル伝達に結合してそれらを破壊することを試みるためにも使用され得る。
本明細書に開示される抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生に、技術を適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照)。加えて、タンパク質、それらの誘導体、フラグメント、アナログまたはホモログの所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの急速でかつ有効な同定を可能にするように、Fab発現ライブラリの構築に方法を適用することができる(例えば、Huse, et al., 1989 Science 246:1275−1281参照)。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体フラグメントを、(i) 抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab’)2フラグメント;(ii) F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成されるFabフラグメント;(iii) パパインおよび還元剤を用いた抗体分子の処理によって生成されるFabフラグメントおよび(iv)Fvフラグメント、を含むが、これらに限定されない本発明の技術分野において周知の技術によって生成することができる。
本発明は、Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)2CD47フラグメント、単鎖CD47抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディまたはVHHs)、二重特異性CD47抗体、およびヘテロコンジュゲートCD47抗体も含む。
二重特異性の抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に結合特異性を有する抗体である。本発明の場合には、結合特異性の1つはCD47についてのものである。第2の結合ターゲットは、任意の他の抗原であり、有利には、細胞表面タンパク質または受容体または受容体サブユニットである。
二重特異性抗体を作製するための方法は当該分野で公知である。従来は、二重特異性の抗体の組み換え生成は、免疫グロブリン重鎖/軽鎖の2つのペアの共発現に基づき、2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello, Nature, 305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな種別(assortment)のために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、1つのみが正しい二重特異性の構造を有する。正確な分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって達成される。類似の手法は1993年5月13日に公開されたWO93/08829およびTraunecker et al., EMBO J., 10:3655−3659(1991) に開示されている。
所望の結合特異性(抗体抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させることができる。好ましくは、融合は、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも部分を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも1つの融合に存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物をコードするDNAs、および所望するならば免疫グロブリン軽鎖は、個別の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生命体へ共形質導入される。二重特異性の抗体の生成の更なる詳細は、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121:210(1986)を参照されたい。
WO96/27011に記載の他のアプローチによれば、1つのペアの抗体分子の間の界面は、組み換え細胞培養液から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にするように遺伝子操作され得る。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えばアラニンまたはトレオニン)で置き換えることによって、大きな側鎖と同一または類似のサイズの代償的「キャビティ」が第二の抗体分子の界面に作り出される。このことは、ホモ二量体などの他の不所望の最終製造物を上回るようにヘテロ二量体の産出量を増加させるメカニズムを提供する。
二重特異性の抗体は、全長抗体または抗体フラグメント(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製され得る。抗体フラグメントから二重特異性抗体を生成するための技術は文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は化学結合を使用して調製することができる。Brennan et al., Science 229:81(1985)は、無処置の抗体をタンパク分解的に開裂してF(ab’)2フラグメントを生成する手法を記載する。これらのフラグメントは、ジチオール錯体化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、近隣のジチオールを安定させて、分子間のジスルフィド形成を防止する。次いで、生成されたFab’フラグメントは、チオニトロベンゾアート(TNB)誘導体へ転換される。次いで、1つのFab’−TNB誘導体を、メルカプトエチルアミンでの還元によりFab’−チオールに再変換し、そして等モル量の他のFab’ −TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。生成された二重特異性の抗体は、酵素の選択的な固定のための薬剤として使用され得る。
さらに、Fab’フラグメントは、E.コリから直接的に回収され得るし、化学的にカップル化されて二重特異性の抗体を形成し得る。Shalaby et al., J. Exp. Med. 175:217−225(1992)は完全ヒト化二重特異性の抗体F(ab’)2分子の生成を開示する。各Fab’フラグメントは大腸菌から別々に分泌され、二重特異性抗体を形成するようにインビトロで指向性(directed)化学カップリングに供された。従って、形成された二重特異性の抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞およびノーマルヒトT細胞に結合することができ、そして、ヒト胸部腫瘍標的に対するヒト細胞毒性のリンパ球の溶解活性を引き起こすことができた。
組み換え細胞培養液から直接的に二重特異性抗体フラグメントを作製および単離することに関する種々の技術も記載されてきた。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生成されてきた。Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547−1553(1992)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分が連結された。抗体ホモ二量体は、モノマーを形成するようにヒンジ領域において還元され、そして次に抗体ヘテロ二量体を形成するように再び酸化される。この方法は抗体ホモ二量体の製造にも利用できる。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444−6448(1993)に記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体フラグメントを作製する代わりのメカニズムを提供している。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つのフラグメントのVHドメインおよびVLドメインは、別のフラグメントの相補的VLドメインおよびVHドメインと対合することを強いられ、それによって2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体フラグメントを作製するための別の戦略もまた報告されている。Gruber et al., J. Immunol. 152:5368(1994)を参照。
2つを上回る結合価を有する抗体が考えられる。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tutt et al., J. Immunol. 147:60(1991)。
例示的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合することができ、そのうちの少なくとも1つは、本明細書に開示されるタンパク質抗原に由来する。あるいは、免疫グロブリン分子の抗抗原性(anti−antigenic)のアームは、特定の抗原を発現する細胞に対する細胞の防御メカニズムに焦点を当てるようにT細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28、またはB7)またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)などのIgGに関するFc受容体(FcγR)のような白血球上のトリガー分子に対して結合するアームと組み合わせられ得る。二重特異性の抗体も、細胞毒性の薬剤を特定の抗原を発現する細胞に対して指向させるために使用され得る。これらの抗体は、抗原結合性アームおよびEOTUBE、DPTA、DOTAまたはTETAなどの細胞毒性剤または放射性核種キレート剤を結合するアームを有する。目的の他の二重特異性の抗体は、本明細書に記載のタンパク質抗原を結合し、そして更に組織因子(TF)を結合する。
ヘテロコンジュゲート抗体もまた本明細書に開示される範囲内にある。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合抗体からなる。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的化すること(米国特許第4,676,980号を参照)、およびHIV感染の処置のために提案されている(WO91/00360; WO92/200373;EP03089参照)。抗体は、架橋剤を含むものを含む合成タンパク質化学における既知の方法を用いてインビトロで調製することができると考えられる。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって構築することができる。この目的のための適切な試薬の例は、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデート、例えば、米国特許4,676,980号に開示されたものを含む。
本明細書に開示される抗体を修飾することは、例えば、異常なCD47シグナル伝達に関連する疾患および障害の治療における抗体の有効性を高めるように、エフェクター機能に関して可能である。例えば、システイン残留物をFc領域へ導入することができ、それによって、この領域における鎖間のジスルフィド結合構成を可能にする。このようにして生成されたホモ二量体抗体は、改善された内在化能力および/または増加した補体媒介性細胞死滅および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有することができる。Caron et al., J. Exp Med., 176:1191−1195(1992);Shopes, J. Immunol., 148:2918−2922(1992)を参照。あるいは、二重Fc領域を有し、それによって補体溶解およびADCC能力を増強することができる抗体を操作することができる。Stevenson et al., Anti−Cancer Drug Design, 3:219−230(1989)を参照。
本明細書に開示される免疫複合体は、トキシン(例えば、細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素的に活性なトキシン、またはそれらのフラグメント)、または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)などの細胞毒性の薬剤にコンジュゲートされた抗体を含むものを含む。
使用され得る酵素的に活性なトキシンおよびそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンを含む。放射性コンジュゲート抗体の製造には様々な放射性核種が利用可能である。例は、212Bi、131I、131In、90Yおよび186Reを含む。
抗体および細胞毒性剤のコンジュゲートは、N−サクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオレーン(IT)、イミドエステルの二重機能誘導体(ジメチルアジピミダートHCLなど)、活性エステル(ジサクシニミジルスベラートなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)、および二重活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)などの多種多様な二重機能タンパク質−カップリング剤を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されているように調製することができる。炭素14標識の1−イソチオシアナートベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、抗体へのラジオヌクレオチド(radionucleotide)のコンジュゲーションのためのキレート剤の例である。WO94/11026を参照。
当業者は、多種多様な可能性のある部分が、本明細書に開示される得られた抗体に結合され得ることを認識するであろう。例えば、“Conjugate Vaccines”, Contributions to Microbiology and Immunology, J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr(eds), Carger Press, New York,(1989)を参照。この内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
抗体および他の部分がそれらのそれぞれの活性を保持している限り、カップリングは2つの分子を結合する任意の化学反応によって達成され得る。この結合は、多くの化学的メカニズム、例えば、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合および複合体形成を含み得る。しかしながら、好ましい結合は共有結合である。共有結合は、既存の側鎖を直接縮合させることによって、または外部架橋分子を組み込むことによって達成することができる。本明細書に開示されている抗体のような、タンパク質分子を他の分子にカップリングさせるのに、多くの二価または多価結合剤が有用である。例えば、代表的なカップリング剤は、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミンのような有機化合物を含み得る。このリストは、当技術分野において公知の様々な種類のカップリング剤を網羅することを意図するものではなく、むしろより一般的なカップリング剤の例示である。Killen and Lindstrom, Jour.Immun.133:1335−2549(1984);Jansen et al., Immunol.Rev. 62:185−216(1982);およびVitetta et al., Science 238:1098(1987)を参照。
本明細書に開示されるリンカーは、文献に記載されたものを含む。例えばMBS(M−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用を記載するRamakrishnan, S. et al., Cancer Res. 44:201−208(1984)を参照。オリゴペプチドリンカーによって抗体に結合されたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用を記載する米国特許第5030719号も参照。特に好ましいリンカーは以下を含む:(i)EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミドヒドロクロリド;(ii)SMPT(4−サクシニミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(Pierce Chem. Co., Cat #21651G);(iii)SPDP(サクシニミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem. Co. Cat. #2165−G);(iv)スルホ−LC−SPDP(スルホサクシニミジル6[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem. Co. Cat. #2165−G);および(v)EDCに対してコンジュゲートされるスルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミド:Pierce Chem. Co., Cat. #24510)。
上記のリンカーは、異なる属性を有する成分を含み、したがって異なる物理化学的特性を有するコンジュゲートをもたらす。例えば、アルキルカルボキシラートのスルホ−NHSエステルは、芳香族カルボキシラートのスルホ−NHSエステルより安定である。リンカーを含むNHS−エステルは、スルホ−NHSエステルよりも低可溶性である。さらに、リンカーSMPTは立体障害のあるジスルフィド結合を含み、そして安定性が増した複合体を形成することができる。ジスルフィド結合はインビトロで開裂され、その結果利用可能なコンジュゲートが少なくなるので、ジスルフィド結合は一般に他の結合よりも不安定である。特にスルホ−NHSはカルボジイミドカップリングの安定性を高めることができる。カルボジイミドカップリング(EDCなど)をスルホ−NHSと組み合わせて使用すると、カルボジイミドカップリング反応単独よりも加水分解に対してより耐性のあるエステルが形成される。
本明細書に開示される抗体はまた、免疫リポソームとして処方され得る。抗体を含有するリポソームは、以下のものなどに記載の当技術分野において公知の方法によって調製される。Epstein et al., Proc.Natl.Acad. Sci.USA, 82:3688(1985);Hwang et al., Proc.Natl.Acad. Sci.USA, 77:4030(1980);および米国特許第4485045号および第4544545号;循環時間が延長されたリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示される。
リポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いる逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームを所定の孔径のフィルターを通して押し出して所望の直径を有するリポソームを得る。本明細書に開示される抗体のFab’フラグメントは、Martin et al., J. Biol. Chem., 257:286−288(1982)に記載されるように、ジスルフィドインターチェンジ反応を介してリポソームに対してコンジュゲートされ得る。
CD47に対する抗体の使用
本発明による治療物質の投与は、適切な担体と、賦形剤と、改善された移行、送達、耐性などを提供するために製剤に組み込まれる他の薬剤と共に投与されるであろうことが理解されよう。多数の適切な製剤を、全ての薬剤師に知られている処方書(Remington’s Pharmaceutical Sciences(15th ed, Mack Publishing Company, Easton, PA(1975)), 特にその中のBlaug, Seymour,による第87章)に見出すことができる。これらの製剤は例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性の)を含む小胞(Lipofectin(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、油中水および水中油エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含む半固体混合物を含む。製剤中の活性成分が製剤によって不活性化されず、製剤が生理学的に適合性であり投与経路に耐えられるという条件で、前述の混合物のいずれも本発明による治療および治療に適切であり得る。Baldrick P.“Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.” Regul.Toxicol Pharmacol. 32(2):210−8(2000), Wang W. “Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.” Int.J. Pharm. 203(1−2):1−60(2000), Charman W N “Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery−some emerging concepts.” J Pharm Sci.89(8):967−78(2000), Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA J Pharm Sci Technol. 52:238−311(1998)および製薬化学者によく知られている製剤、賦形剤および担体に関するさらなる情報については、その中の引用を参照のこと。
本明細書に開示のモノクローナル抗体を含む本明細書に開示の抗体は、治療薬として使用することができる。そのような薬剤は一般に、被験体における異常なCD47発現、活性および/またはシグナル伝達に関連する疾患または病状を診断、予後予測、監視、治療、軽減および/または予防するために使用されるであろう。処置レジメンは、被験体(例えば、異常なCD47発現、活性および/またはシグナル伝達と関連した病気または疾患(例えば、癌または他の腫瘍性の疾患)を患う(または発症するリスクがある)ヒト患者)を、標準的な方法を使用して同定することによって実行される。抗体調製物、好ましくはその標的抗原に対して高い特異性および高い親和性を有するものが、被験体に投与され、そして一般的にその標的との結合により効果を有する。抗体の投与は、標的(例えば、CD47)の発現、活性および/またはシグナル伝達機能を無効にするかまたは阻害するかまたは干渉し得る。抗体の投与は、それが天然に結合する内因性リガンド(例えばSIRPα)との標的(例えばCD47)の結合を無効にするかまたは阻害するかまたは干渉することができる。例えば、抗体は標的に結合し、そしてCD47の発現、活性および/またはシグナル伝達を調節、ブロック、阻害、低減、拮抗、中和、またはそうでなければ妨害する。
異常なCD47の発現、活性および/またはシグナル伝達に関連する疾患または障害には、非限定的な例として、血液の癌および/または固形腫瘍が含まれる。血液の癌は、例えば白血病、リンパ腫、髄腫を含む。白血病の特定の形式は、非限定的な例としては、急性リンパ性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);慢性リンパ球性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML);骨髄増殖性疾患/腫瘍(MPDS);および脊髄形成異常症候群、を含む。リンパ腫の特定の形式は、非限定的な例としては、ホジキンリンパ腫、無痛性かつ侵襲性の非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫および濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)を含む。髄腫の特定の形式は、非限定的な例としては、多発性骨髄腫(MM)、巨大細胞髄腫、重鎖髄腫、および軽鎖または、ベンスジョーンズ骨髄腫を含んでいる。固形腫瘍は、例えば乳房腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫性の腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、頭頸部腫瘍、膀胱腫瘍、食道腫瘍、肝臓腫瘍および腎臓腫瘍、を含む。
癌および他の腫瘍性障害に関連する症状としては、例えば、炎症、発熱、一般的な倦怠感、発熱、しばしば炎症を起こした部位に限局するが、疼痛、食欲不振、体重減少、浮腫、頭痛、疲労、発疹、貧血症、筋力低下、筋肉疲労、ならびに、例えば腹痛、下痢または便秘などの腹部症状を含む。
本明細書に開示される抗体の治療上有効な量は、一般に、治療目的を達成するために必要とされる量に関する。上述のように、これは、抗体とその標的抗原との間の結合相互作用であり得、これは、ある場合には、標的の機能を妨害する。投与に必要とされる量はさらに、その特異的抗原に対する抗体の結合親和性に依存し、そして投与された抗体が投与される他の被験体の自由体積(free volume)から枯渇する速度にも依存する。本明細書で開示された抗体または抗体のフラグメントの治療上有効な投薬のための一般的な範囲は、非限定的な例としては、約0.1mg/kg体重から約100mg/kg体重までであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、50mg/kg、75mg/kg、100mg/kg、またはより多い投与量を被験体に投与する。一般的な投与頻度は、例えば、1日2回から週1回の範囲であり得る。
処置の有効性は、特定の炎症関連障害を診断または処置するための任意の公知の方法と関連して決定される。炎症関連障害の1つ以上の症状の軽減は、抗体が臨床的利益をもたらすことを示している。
所望の特異性を有する抗体をスクリーニングするための方法は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)および当該分野で公知の他の免疫学的に媒介された技術を含むがこれらに限定されない。
CD47に対する抗体は、CD47の局在化および/または定量化に関する当該分野で公知の方法において使用され得る(例えば、適切な生理学的サンプル内のCD47および/またはCD47およびSIRPαの両方のレベルの測定における使用のため、診断方法における使用のため、タンパク質の画像化における使用のためなど)。所与の実施形態では、抗体由来の抗原結合ドメインを含む、CD47に特異的な抗体、またはその誘導体、フラグメント、アナログもしくはホモログは、薬理学的に活性な化合物として利用される(以下「治療薬」と称される)。
CD47に特異的な抗体を用いて、免疫親和性、クロマトグラフィーまたは免疫沈降法のような標準的技術によりCD47ポリペプチドを単離することができる。CD47タンパク質(あるいはそのフラグメント)に対して向けられた抗体は、臨床試験手順の一部として組織内のタンパク質レベルをモニタするために、例えば所定の処置レジメンの有効性を判定するために、診断的に使用することができる。検出は、抗体を検出可能な物質にカップリング(すなわち、物理的に連結)することによって促進され得る。検出できる物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料および放射性物質が含まれる。適切な酵素の例は、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれ;切な蛍光材料の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジアミンアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリスリンが含まれ;発光材料の例にはルミノールが含まれ;生物発光材料の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが含まれ、適切な放射性材料の例には、125I、131I、35Sまたは3Hが含まれる。
本明細書に開示される抗体はまた、サンプル中のCD47および/またはCD47とSIRPαタンパク質の両方(またはそのタンパク質フラグメント)の存在を検出するための薬剤として使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体は検出可能な標識を包含している。抗体はポリクローナル抗体、またはより好ましくはモノクローナル抗体である。無処置の抗体、またはそのフラグメント(例えばFab、scFvまたはF(ab’)2)が使用される。用語「標識された」とは、プローブまたは抗体に関し、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(すなわち物理的に結合)することによってプローブまたは抗体を直接標識すること、ならびに直接標識される別の試薬との反応性によってプローブまたは抗体を間接的に標識することが含まれるように意図されている。間接標識の例としては、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出、および蛍光標識ストレプトアビジンで検出できるようにDNAプローブをビオチンで末端標識することが挙げられる。用語「生体サンプル」は、被験体から単離された組織、細胞および体液、ならびに被験体内に存在する組織、細胞および体液を含むことを意図している。従って、用語「生物サンプル」の使用には、血液、および血清、血漿またはリンパを含む血液の分画または構成要素が含まれる。すなわち、本明細書に開示される検出方法は、インビトロならびにインビボで生体サンプル中の分析物mRNA、タンパク質、またはゲノムDNAを検出するために使用され得る。例えば、分析物mRNAの検出用のインビトロの技術はノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチュハイブリッド形成を含んでいる。分析物タンパク質の検出のためのインビトロ技術には、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降法、および免疫蛍光法が含まれる。分析物ゲノムDNAの検出用のインビトロの技術はサザンハイブリダイゼーションを含む。免疫測定を実施するための手順は、例えば以下に記載されている:“ELISA:Theory and Practice:Methods in Molecular Biology”, Vol. 42, J. R. Crowther(Ed.)Human Press, Totowa, N.J., 1995;“Immunoassay”, E. Diamandis and T. Christopoulus, Academic Press, Inc., San Diego, Calif., 1996;および“Practice and Theory of Enzyme Immunoassays”, P. Tijssen, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1985。さらに、分析物タンパク質を検出するためのインビボ技術は、標識された抗分析物タンパク質抗体を被験体に導入することを含む。例えば、抗体は、被験体におけるその存在および位置を標準的な画像化技術によって検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
CD47抗体の治療的投与および処方
本明細書に開示される抗体(本明細書では「活性化合物」とも呼ばれる)、ならびにその誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログは、投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。そのような組成物を調製することに含まれる原理および考察、ならびに成分の選択における手引きは、例えば、以下に提供されている。Remington’s Pharmaceutical Sciences:The Science And Practice Of Pharmacy 19th ed.(Alfonso R. Gennaro, et al., editors) Mack Pub.Co., Easton, Pa.:1995;Drug Absorption Enhancement:Concepts, Possibilities, Limitations, And Trends, Harwood Academic Publishers, Langhorne, Pa., 1994;およびPeptide And Protein Drug Delivery(Advances In Parenteral Sciences, Vol.4), 1991, M. Dekker, New York。
そのような組成物は典型的には抗体および薬学的に許容可能な担体を含む。抗体フラグメントが使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害性フラグメントが好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。そのようなペプチドは、化学的に合成することができ、および/または、組換えDNA技術によって生産しうる。例えばMarasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:7889−7893(1993)を参照。
本明細書に使用されるように、用語「薬学的に許容可能な担体」は、医薬的な投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことを意図している。適切な担体は、当該分野における標準引用文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載され、該文献は引用によって本願に組み込まれる。このような担体または希釈液の好ましい例は、水、食塩水、リンガー液、デキストロース溶液および5%のヒト血清アルブミンを含むが、これに限定されない。リポソーム、および、不揮発性油などの非水性のビヒクルも使用されてもよい。薬学的に活性な物質用のこうした媒体と薬剤の使用は当該技術分野では周知である。任意の従来の培地または薬剤が活性化合物と適合しない限り、治療用組成物のそれらの使用が企図される。
インビボの投与に使用される製剤は無菌であるに違いない。これは濾過滅菌法膜による濾過によって容易に達成される。
本明細書で開示される医薬組成物は、その意図した投与ルートと適合するように製剤化されてもよい。投与ルートの例には、腸管外、例えば、静脈内、真皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜、および直腸内の投与、が含まれる。非経口、真皮内または皮下の適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の構成要素を含むことができる:注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒、などの無菌希釈液;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート試薬;クエン酸またはホスファートなどのバッファ、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧を調節するための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。非経口の調製物は、アンプル、使い捨て可能なシリンジ、あるいはガラスまたはプラスチック製の複数回投与バイアルに封入され得る。
注射使用に適する医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性)、無菌分散剤、および、無菌注射溶液または分散剤の即席調製物のための無菌粉末、を含む。静脈内投与については、適切な担体は、生理食塩水、静菌水(bacteriostatic water)、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全てのケースにおいて、組成物は無菌状態でなければならず、かつ、注射器充填容易性(easy syringeability)が存在する程度の流動体であるべきである。これは、製造状態および貯留状態下で安定でなければならず、かつ、細菌および真菌などの微生物の異物混入作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および、液体のポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えばレシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、および、界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤と抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど、によって達成されうる。多くの場合では、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウム、を組成物中に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期間の吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン、を組成物に含ませることによってもたらされる場合がある。
無菌の注射可能な溶液は、上に列挙された成分の1つまたはその組み合わせを含む適切な溶媒中に必要な量の活性化合物を組み入れることによって、必要に応じてその後の殺菌によって、調製される。概して、分散剤は、基本的な分散媒および上記に列挙したもの以外の必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクルへと活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合には、調製方法は、真空乾燥と冷凍乾燥であり、これにより、あらかじめ無菌ろ過した溶液から任意のさらなる所望の成分と活性成分の粉末が得られる。
経口の組成物は概して不活性希釈液または食用の担体を含んでいる。それらはゼラチンカプセル剤に封入されるか、または錠剤に圧縮されうる。経口治療投与のために、活性化合物を賦形剤に組み入れ、錠剤、トローチまたはカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口剤として使用するための流体担体を使用して調製することができ、ここで、流体担体中の化合物は経口適用され、および洗口し(swished)および吐き出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合性の結合剤、および/または、アジュバント材料を、組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチなどは、以下の成分、または類似の性質の化合物のいずれかを含むことができる:微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogelまたはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterotes)などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;ショ糖またはサッカリンなどの甘味剤;あるいは、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジの調味料などの香料添加剤。
吸入による投与のために、化合物は、適切な噴霧剤、例えば二酸化炭素などのガス、を含む被加圧容器、ディスペンサー、または噴霧器からエアロゾルスプレーの形状で送達される。
全身性投与は、また、経粘膜または経皮的な手段によることができる。経粘膜または経皮的な投与のために、障壁に浸透させるのに適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野において一般的に知られており、例えば、経粘膜投与用には、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜な投与は、スプレー式点鼻薬または坐薬の使用を介して達成され得る。経皮投与のために、活性化合物は、本発明の技術分野において一般的に知られているように、軟膏(ointments)、膏薬(salves)、ゲル、またはクリームに製剤化される。
化合物はまた、坐剤(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて)または直腸送達用の停留浣腸剤の形態で調製することもできる。
一実施形態では、活性化合物は、維持型/コントロール型放出製剤などの、身体からの急速な脱離から化合物を保護するだろう担体と一緒に調製され、移植およびマイクロカプセル化送達システムを含む。エチレンビニルアセタート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの、生分解性で生体適合性のポリマーが、使用され得る。そのような製剤の調製のための方法は当業者に明白であろう。
例えば、有効成分は、例えば、コアセルベーション技術によってまたは界面のポリマー化によって調製されるマイクロカプセル、内に封入され得、例えば、それぞれ、(コロイド状の薬剤送達システム内(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)においてまたはマクロエマルジョンにおける、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリル酸)マイクロカプセル、内に封入され得る。
徐放性調製物を調製することができる。徐放性調製物の適切な例は、抗体を含む固形疎水性ポリマーの半透過性のマトリックスを含み、このマトリックスは造形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOT(商標)など)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドを含む注射可能なミクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。一方、エチレン−ビニルアセテートおよび乳酸−グリコール酸のなどのポリマーは、100日を超える分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い期間でタンパク質を放出する。
これらの材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的とするリポソームを含む)も薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法によって調製することができる。
経口または非経口組成物は、投与の容易さおよび投与量の均一性のために投与単位形態(dosage unit form)に製剤され得る。本明細書に使用されるような投与単位形態は、処置される被験体のための単位投与量として適した、物理的に別々の単位を指す。各単位は、必要な薬学的担体と共に所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。本明細書に開示される投与単位形態の仕様は、活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、および個体の処置のためのそのような活性化合物を調合する技術に固有の制限によって決定され、これらに直接的に依拠している。
医薬組成物は投与についての指示書と一緒に、容器、パックまたはディスペンサーに含むことができる。
製剤は、処置される特定の症状に必要な場合には、1つを上回る活性化合物(好ましくは互いに不利に影響しない相補的な活性を有するもの)を含むこともできる。その代わりに、または更に、組成物は、例えば、細胞毒性薬剤、サイトカイン、化学療法剤、または成長阻害性の薬剤などの、その機能を増強する薬剤を含むことができる。そのような分子は、意図した目的に有効な量の組み合わせで適切に存在する。
本明細書に開示される活性化合物は、併用療法で、すなわち、様々な形態の癌、自己免疫障害および炎症性疾患などの病的状態または障害を処置するのに有用な他の薬剤、例えば治療薬、と組み合わせて、投与することができる。用語「組み合わせで」とは、薬剤が実質的に同時期、同時、または順次継続的のいずれか、で与えられることを意味する。順次継続的に与えられる場合には、第2の化合物の投与の開始時に、2つの化合物のうちの第1の化合物が、処置部位において依然として有効濃度で検出可能であることが好ましい。
例えば、以下により詳細に記述されるように、併用療法は、1以上の追加の治療剤(例えば、1つ以上のサイトカインおよび増殖因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、および/または細胞毒性または細胞分裂抑制剤)と一緒に共製剤および/または共投与される、本明細書に開示される1つ以上の抗体を含むことができる。そのような併用療法は、投与される治療薬のより低い投与量を有利に利用することができ、それにより様々な単独療法に関連して起こり得る毒性または合併症を回避する。
本明細書に開示されている治療薬は、炎症反応の様々な段階で干渉する薬剤とともに本明細書に開示されている抗体と組み合わせて使用することができ、および、炎症反応の様々な段階で干渉する薬剤を含むことができる。本明細書に記述される1つ以上の抗体は、他のサイトカインまたは増殖因子アンタゴニスト(例えば、可溶性受容体、ペプチド阻害剤、小分子、リガンド融合物)などの1つ以上の追加の薬剤;あるいは、他の標的に対して結合するその抗体または抗原結合フラグメント(例えば、他のサイトカインまたは増殖因子、それらの受容体、または他の細胞表面分子に対して結合する抗体);および、その抗炎症性サイトカインまたはアゴニスト、と一緒に共製剤および/または共投与され得る。
本明細書で開示される抗体は、自己免疫疾患、炎症性疾患などに対するワクチンアジュバントとして使用されてもよい。これらのタイプの疾患の処置のためのアジュバントの組み合わせは、標的とされた自己抗原、すなわち、自己免疫に関与する自己抗原、例えばミエリン塩基性たんぱく質;炎症性自己抗原(例えばアミロイドペプチドタンパク質)または、移植抗原(例えば同種抗原)、に由来する多種多様な抗原との組み合わせでの使用に適する。抗原は、タンパク質に由来するペプチドまたはポリペプチド、ならびに以下のいずれかのフラグメントを含み得る:サッカライド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、自己抗原、アミロイドペプチドタンパク質、移植抗原、アレルゲンまたは他のマクロ分子構成要素。いくつかの例では、1つを超える抗原が抗原組成物に含まれている。
他の治療薬の設計および生成
CD47に関して本明細書中で産生され特徴付けられる抗体の活性に基づいて、抗体部分を超えた他の治療モダリティ(therapeutic modalities)の設計が容易になる。そのようなモダリティは、二重特異性抗体などの先進的(advanced)抗体治療薬、免疫毒素、および放射標識療法剤、ペプチド療法剤、遺伝子治療、特に細胞内抗体、アンチセンス療法剤および小分子の生成を含むがそれらに限定されない。
例えば、二重特異性抗体に関して、(i)1つはCD47に対する特異性を、もう1つは一緒に結合している第2の分子に対する特異性を有する2つの抗体、(ii)CD47に特異的な1本の鎖と第2の分子に特異的な第2の鎖を持つ単一の抗体、あるいは(iii)CD47に特異的な一本鎖抗体と第2の分子、を含む二重特異性抗体を生成しうる。そのような二重特異性抗体は、例えば、(i)および(ii)に関連しては、以下の周知の技術を用いて作製される。例えば、Immunol Methods 4:72−81(1994) and Wright et al.Crit, Reviews in Immunol.12125−168(1992)を参照、および、(iii)に関してはTraunecker et al. Int.J. Cancer(Suppl.) 7:51−52(1992)を参照。
免疫毒素に関して、当技術分野で周知の技術を利用して、抗体を免疫毒素として作用するように修飾することができる。例えば、Vitetta Immunol.Today 14:252(1993)を参照。米国特許5,194,594号も参照のこと。放射標識抗体の調製に関して、そのような修飾抗体はまた、本発明の技術分野において良く知られた技術を利用して容易に調製され得る。例えばJunghans et al. in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655−686(2d edition, Chafner and Longo, eds., Lippincott Raven(1996))を参照。また米国特許番号4,681,581号、第4,735,210号、第5,101,827号、第5,102,990号(RE 35,500)、第5,648,471号および第5,697,902号も参照。免疫毒素および放射性標識分子のそれぞれは、CD47を発現している細胞を死滅させる可能性がある。
治療ペプチドの生成に関しては、本明細書に開示されている抗体またはペプチドライブラリのスクリーニングなどの、CD47およびそれに対する抗体に関連した構造情報の利用またはペプチドライブラリのスクリーニングを介して、治療ペプチドをCD47に対して指向するように(directed)生成することができる。ペプチド治療剤の設計およびスクリーニングは13:412−421(1992), Houghten PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 82:5131−5135(1985), Pinalla et al. Biotechniques 13:901−905(1992), BlakeおよびLitzi−Davis BioConjugate Chem. 3:510−513(1992)に関して議論される。免疫毒素および放射性標識分子もまた、抗体に関して上記で考察したように、ペプチド部分と関連して、そして同様の様式で調製され得る。CD47分子(またはスプライス変異体もしくは代替形態などの形態)が疾患過程において機能的に活性であると仮定すると、従来の技術を通じて遺伝子およびそれに対するアンチセンス治療薬を設計することも可能であろう。そのような形式性はCD47の機能の調整のために利用することができる。それに関連して、本明細書に開示される抗体は、それに関連する機能的アッセイの設計および使用を容易にする。アンチセンス治療剤の設計および戦略は、国際特許出願WO94/29444にて詳細に議論される。遺伝子治療のための設計および戦略はよく知られている。しかしながら、特に、細胞内抗体を含む遺伝子治療技術の使用は特に有利であることが証明され得る。Chen et al. Human Gene Therapy 5:595−601(1994) and Marasco Gene Therapy 4:11−15(1997)を参照。遺伝子治療薬の一般的設計およびそれに関連する考慮事項もまた、国際特許出願番号WO97/38137に記載されている。
CD47分子の構造、ならびに、SIRPαおよび/または本明細書に開示の抗体などの本明細書に開示の他の分子とのその相互作用は、さらなる治療モダリティの合理的な設計を容易にし得る。この点に関して、X線結晶学、コンピュータ支援型(またはアシスト型)分子モデリング(CAMM)、構造−活性の量的または質的関係(QSAR)および類似技術などの合理的な薬剤設計技術が、薬剤発見の試みに焦点をあてることに利用され得る。合理的な設計により、IL−6Rcの活性を改変または調節するために使用することができる分子またはその特定の形態と相互作用することができるタンパク質または合成構造の予測が可能になる。そのような構造は化学的に合成することができ、または生物系において発現させることができる。このアプローチは、Capsey et al. Genetically Engineered Human Therapeutic Drugs(Stockton Press, NY(1988))においてレビューされている。更に、コンビナトリアルライブラリが設計および合成され得、高スループットスクリーニング試行(efforts)などのスクリーニングプログラムにおいて使用され得る。
スクリーニング法
本発明は、調節因子、すなわち、CD47のSIRPαへの結合を調節または干渉する候補または試験化合物または薬剤(例えば、ペプチド、ペプチド模倣物、小分子または他の薬剤)、あるいは、CD47および/またはCD47−SIRPαのシグナル伝達機能を調節または干渉する候補または試験化合物または薬剤、を同定するための方法(本明細書では「スクリーニングアッセイ」とも称される)を提供する。異常なCD47および/またはCD47−SIRPαの発現、活性および/またはシグナル伝達に関連する障害を処置するのに有用な化合物を同定する方法もまた提供される。スクリーニング方法は、当技術分野において公知であるか使用されるもの、または本明細書に記載されるものを含み得る。例えば、CD47をマイクロタイタープレート上に固定し、SIRPαの存在下で候補化合物または試験化合物、例えばCD47抗体、と共にインキュベートすることができる。続いて、結合SIRPαは二次抗体を用いて検出することができ、吸光度はプレートリーダーで検出することができる。
マクロファージによって腫瘍細胞の食作用を促進することができる化合物を特定する方法も提供される。これらの方法は、当技術分野において公知であるかまたは使用されるもの、あるいは本明細書に記載されるものを含み得る。例えば、マクロファージは、候補化合物、例えばCD47抗体、の存在下において、標識された腫瘍細胞とインキュベートされる。しばらくして、マクロファージは、食作用を同定するための腫瘍標識の内部移行について観察され得る。これらの方法に関するさらなる詳細、例えばSIRPαブロッキングアッセイおよび食作用アッセイが実施例に提供されている。また、これらのスクリーニングアッセイで同定された化合物は本明細書に開示される。
CD47のシグナル伝達機能を調節する候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイが開示されている。本明細書に開示されている試験化合物は、当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリ法における多数の方法のいずれかを用いて得ることができ、該方法は、生物学的ライブラリ;空間的にアドレス可能な平行な固相または液相ライブラリ;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法;「1ビーズ1化合物」ライブラリ法;および、アフィニティークロマトグラフィセレクションを使用する合成ライブラリ法、を含む。生物学的ライブラリアプローチはペプチドライブラリに限定されているが、他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリに適用可能である。例えば、Lam, 1997. Anticancer Drug Design 12:145を参照。
本明細書に使用される「小分子」は、約5kD未満、最も好ましくは約4kD未満の分子量を有する組成物を指すことを意味する。小分子は、例えば核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬、炭水化物、脂質、他の有機または無機分子でありうる。真菌、細菌、または藻類抽出物などの化学的および/または生物学的混合物のライブラリは当技術分野において公知であり、本明細書に開示されるアッセイのいずれかを用いてスクリーニングすることができる。
分子ライブラリの合成方法の例は当分野で、例えば以下に見出すことができる。DeWitt, et al., 1993 Proc.Natl.Acad. Sci.U.S.A. 90:6909;Erb, et al., 1994 Proc.Natl.Acad. Sci.U.S.A. 91:11422;Zuckermann, et al., 1994 J. Med.Chem. 37:2678;Cho, et al., 1993 Science 261:1303;Carrell, et al., 1994 Angew.Chem. Int.Ed.Engl.33:2,059;Carell, et al., 1994 Angew.Chem. Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallop, et al., 1994 J. Med.Chem. 37:1233。
化合物のライブラリは以下において提示されうる。溶液中(例えばHoughten, 1992 Biotechniques 13:412−421を参照)、ビーズ上(Lam, 1991 Nature 354:82−84を参照)、チップ上(Fodor, 1993 Nature 364:555−556を参照)、細菌内(米国特許第5,223,409号を参照)、胞子(米国特許第5,233,409号を参照)、プラスミド(Cull, et al., 1992. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865−1869を参照)、または、ファージ上(Scott and Smith, 1990 Science 249:386−390; Devlin, 1990 Science 249:404−406; Cwirla, et al., 1990 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:6378−6382; Felici, 1991 J. Mol. Biol. 222:301−310; and U.S. Patent No. 5,233,409を参照)。
候補化合物を抗体−抗原複合体に導入し、候補化合物が抗体−抗原複合体を破壊するかどうかを決定することができ、ここで、この複合体の崩壊は、候補化合物がCD47のシグナル伝達機能および/またはCD47とSIRPαとの間の相互作用を調節することを示している。本明細書で開示される可溶性CD47および/またはCD47とSIRPαの両方のタンパク質が提供され、および、少なくとも1つの中和モノクローナル抗体に曝露される。抗体−抗原複合体の構成が検出され、1つ以上の候補化合物が複合体に導入される。抗体−抗原複合体が1つ以上の候補化合物の導入後に破壊される場合、候補化合物は異常なCD47および/またはCD47−SIRPαシグナル伝達に関連する障害を処置するのに有用である。
抗体−抗原複合体を干渉または破壊する試験化合物の能力の決定は、例えば、試験化合物の抗原またはその生物学的活性部分に対する結合が複合体中の標識された化合物を検出することによって判定され得るように試験化合物と放射線同位体または酵素標識とをカップリングすることによって、達成され得る。例えば、試験化合物は、直接的または間接的に125I、35S、14C、または3Hで標識することができ、放射性同位体は、電波放出(radioemission)の直接的なカウントまたはシンチレーションカウントによって検出することができる。あるいは、試験化合物は、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素標識され(enzymatically−labeled)、および、酵素標識は適切な基質から生成物への転換の判定によって検出され得る。
アッセイは抗体−抗原複合体をテスト化合物と接触させること、および、抗原と相互作用するか、またはそうでなければ既存の抗体−抗原複合体を破壊する、試験化合物の能力を判定すること、を含みうる。試験化合物の、抗原と相互作用する能力および/又抗体−抗原複合体を破壊する能力の判定は、抗体と比較して、抗原またはその生物学的活性部分に対して優先的に結合する、試験化合物の能力を判定することを含む。
アッセイはまた、抗体−抗原複合体を試験化合物と接触させること、および試験化合物が抗体−抗原複合体を調節する能力を判定すること、を含み得る。試験化合物の抗体−抗原複合体を調節する能力を判定することは、例えば、試験化合物の存在下で、抗原の抗体に結合するかまたは抗体と相互作用する能力を判定することによって達成することができる。
本明細書中に開示されるスクリーニング方法のいずれにおいても、抗体は中和抗体であり得、これはCD47活性および/またはシグナル伝達を調節するかまたは干渉することを、当業者は認識するだろう。
本明細書中に開示されるスクリーニング方法は、細胞ベースのアッセイとして、または無細胞アッセイとして行われ得る。本明細書に開示される無細胞アッセイは、可溶性形態または膜結合形態のCD47およびその断片の使用に適している。膜結合型の形態のCD47を含む無細胞アッセイの場合には、タンパク質の膜結合形態が溶液中で維持されるように、可溶化剤を利用することが望ましい場合がある。そのような可溶化剤の例には、n−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、Triton(登録商標)X−100、Triton(登録商標)X−114、Thesit(登録商標)、イソポリデシルポリ(エチレングリコールエーテル)n、N−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(3−コラミドプロピル)ジメチルアミニオール(dimethylamminiol)−1−プロパンスルホナート(CHAPS)、または、3−(3−コラミドプロピル)ジメチルアミニオール−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホナート(CHAPSO)、などの非イオン洗剤を含む。
候補化合物の導入後に一方または両方の複合体を形成していない形態から複合体を形成した形態の分離を容易にするため、ならびにアッセイの自動化に対応するために、抗体または抗原のいずれかを固定することが望ましい場合がある。候補化合物の存在下および非存在下での抗体−抗原複合体の観察は、反応物を入れるのに適した任意の容器中で達成することができる。そのような容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管およびマイクロ遠心分離管が含まれる。タンパク質の一方または両方をマトリックスに結合させることを可能にするドメインを付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、GST−抗体融合タンパク質またはGST−抗原融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical, St. Louis, MO)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレートに吸着させられ、これは次に試験化合物と組み合わせられ、そして、混合物は、複合体形成が行われる条件下で(例えば、生理的状態の塩およびpHで)インキュベートされ得る。インキュベーションに続いて、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルは洗浄されて、非結合性の構成要素が除去され、ビーズの場合ではマトリックスは固定されており、複合体が直接的または間接的に判定される。あるいは、複合体をマトリックスから解離することができ、および抗体−抗原複合体形成のレベルを標準的な技術を用いて判定することができる。
タンパク質をマトリックス上に固定するための他の技術もまた、本明細書中に開示されるスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。例えば、抗体(例えば2A1抗体、または米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるSEQ ID NO:5−30から選択される可変重鎖および米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるSEQ ID NO:31−47から選択される可変軽鎖を有する抗体)、または抗原(例えばCD47タンパク質)を、ビオチンとストレプトアビジンのコンジュゲーションを利用して固定することができる。ビオチン化抗体または抗原分子は、当該分野で周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, Ill.)を使用してビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製され得、そしてストレプトアビジンコーティング96ウェル(Pierce Chemical)中に固定され得る。 あるいは、目的の抗体または抗原とは反応するが目的の抗体抗原複合体の形成に干渉しない他の抗体はプレートのウェルに誘導体化され得るし、非結合性抗体または抗原は抗体コンジュゲーションによってウェルにトラップされた。そのような複合体を検出するための方法は、GST固定化複合体について上述したものに加えて、抗体または抗原と反応するそのような他の抗体を用いた複合体の免疫検出を含む。前述のスクリーニングアッセイのいずれかによって同定された新規な薬剤および本明細書に記載の処置のためのその使用も提供される。
診断的および予防的な製剤
本明細書で開示されるCD47 MAbは、診断的および予防的な製剤において使用される。一実施形態では、本明細書に開示されるCD47 MAbは、例えば、限定されないが、癌または他の腫瘍の疾患などの、1つ以上の前述の疾患を発達させる危険がある患者に投与される。前述の癌または他の腫瘍性疾患のうちの1つ以上に対する患者または器官の素因は、遺伝子型、血清学的または生化学的マーカーを使用して決定され得る。
本明細書で開示された別の実施形態では、CD47抗体は、例えば、限定されるものではないが、癌または他の腫瘍性疾患などの前述の疾患の1つ以上に関連する臨床的な徴候を診断されたヒト個体に投与される。診断の際、CD47抗体は、前述の疾患のうちの1つ以上に関連する臨床的な徴候の影響を軽減または元に戻す(reverse)ために投与される。
本明細書に開示される抗体はまた、患者サンプル中のCD47および/またはSIRPαの検出にも有用であり、したがって診断薬としても有用である。例えば、本明細書に開示されるCD47抗体は、患者サンプル中のCD47および/またはSIRPαレベルを検出するためのインビトロアッセイ、例えばELISA、において使用される。
一実施形態では、本明細書に開示されるCD47抗体は、固体支持体(例えば、マイクロタイタープレートのウェル)上に固定されている。固定された抗体は、試験サンプル中に存在しうるいずれかのCD47および/またはSIRPαについての捕捉抗体(capture antibody)としての役割を果たす。固定された抗体を患者サンプルと接触させる前に、固体支持体をすすぎ、乳タンパク質またはアルブミンなどのブロッキング剤で処理して、分析物の非特異的吸着を防ぐ。
続いて、ウェルを、抗原を含有することが疑われる試験サンプルで、または標準量の抗原を含有する溶液で、処理する。そのようなサンプルは、例えば、病状の診断に役立つと考えられるレベルの循環抗原を有することが疑われる対象からの血清サンプルである。試験サンプルまたは標準品を洗い流した後、固体支持体を、検出可能なように標識されている二次抗体で処理する。標識された二次抗体は検出抗体として機能する。検出可能な標識のレベルを測定し、そして試験サンプル中のCD47および/またはSIRPαの濃度を、標準的なサンプルから作成された標準曲線との比較により決定する。
インビトロ診断アッセイにおいて本明細書に開示されているCD47抗体を用いて得られた結果に基づいて、CD47および/またはSIRPαの発現レベルに基づき、被験体における疾患(例えば、虚血、自己免疫または炎症性障害に関連する臨床的な兆候)をステージを分類する(stage)ことが可能であることが理解されよう。所与の疾患について、血液サンプルは、疾患の進行における様々な段階で、および/または疾患の治療的処置における様々な時点で、診断されている被験体から、採取される。進行または治療の各ステージについて統計的に有意な結果を提供するサンプルの集団を使用して、各ステージの特徴と考えられ得る抗原の濃度範囲を指定する。
本明細書で引用した全ての刊行物および特許文書は、あたかもそのような各刊行物または文書が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれることが示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。刊行物および特許文書の引用は、それらが適切な先行技術であることを承認することを意図するものではなく、その内容または日付に関していかなる承認も構成するものでもない。本発明は、今、記載によって述べられているが、当業者は、本発明が多種多様な実施形態で実施され得ること、および上述の記載および以下の実施例が図示および請求の範囲の限定という目的のためのものでは無いことを認識するだろう。
実施された実験および達成された結果を含む以下の実施例は、例示の目的のためにのみ提供され、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
<実施例1>
<CD47抗体の生成および選択>
CD47抗体を、CD47−IgV(免疫グロビン様可変型)を表す組換えタンパク質でマウスを免疫化し、、複数の部位において改変急速免疫化法(modified rapid immunization strategy)をすることによって生成した(Kilpatrick et al.(1997) Rapid development of affinity matured monoclonal antibodies using RIMMS. Hybridoma 16, 381−389)。加えて、免疫化した群の半数のマウスに、抗マウスGITRアゴニスト抗体DTA−1の単回注射を受けさせた。免疫化スケジュールに続いて、すべてのマウス(DTA−1処理および未処理)からのリンパ節を採取して解離させ、それによってB細胞の単離およびその後の骨髄腫細胞系への融合を可能にした。ハイブリドーマ上清を、ELISAおよびDaudi(ATCC#CCL−213)細胞上のフローサイトメトリーにより、CD47への結合についてスクリーニングした(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図1A)。また、ハイブリドーマ上清をCD47−SIRPα相互作用をブロックする能力について分析した(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図1B)。組換えCD47をMedisorp(NUNC)マイクロタイタープレートに固定し、続いて、ヒトIgGのFcドメインに融合した組換えヒトSIRPα−ECDの存在下でハイブリドーマ上清とインキュベートした。HRPコンジュゲート型抗ヒトIgG Fc特異的二次抗体(Jackson Immuno Research)を使用し、プレートリーダーにおいて検出される吸光度650nmで、結合したSIRPαを検出した。
<実施例2>
<CD47抗体の特徴付け>
本明細書に開示されている例示的なマウスCD47抗体を米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されている図2に示す。SIRPαブロッキングCD47抗体の親和性ランク付けを、Raji細胞(ATCC#CCL−86)(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図2A)、および、CCRF−CEM細胞(ATCC#CCL−119)(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図2B)に対するフローサイトメトリーによって実行した。結合したCD47抗体をFITCコンジュゲート型抗マウスIgG二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を使用して検出した。当技術分野で周知のCD47抗体B6H12を陽性対照として含ませた。例えば、米国特許5,057,604号参照。米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図2Bでは、B6H12および2D3両方(市販の非SIRPαブロッキング抗体)を、本明細書で生成された抗体と比較された。本明細書に開示される抗体は、B6H12および2D3抗体と比較して、内因性(細胞表面)形態のCD47に対してより高い親和性を示す。
<実施例3>
<CD47抗体のSIRPαブロッキング活性>
CD47抗体によるSIRPαブロッキングの効力を、組換えHisタグ付きCD47−IgVをMedisorpマイクロタイタープレート上に固定したELISAによって測定した。ヒトIgGのFcドメインに融合した組換えSIRPαの結合を、漸増するCD47抗体の存在下でモニタした。結合したSIRPαを、HRPコンジュゲート型抗ヒトIgG(Fc特異的)二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を使用して測定した。本明細書で開示された抗体は、B6H12抗体と比較して、SIRPαブロッキングの増強された効力を示す。米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されている図3Aは、ELISAに基づくSIRPαブロッキングアッセイの代表的なデータを示す。
CD47抗体を、組み換えSIRPαの細胞表面CD47に対する結合をブロックするそれらの能力に関してフローサイトメトリーによって解析した。アッセイにおいて、CCRF−CEM(ATCC#CCL−119)細胞をCD47のソースとして使用し、ヒトIgGのFcドメインに融合した組み換えSIRPαの結合を、増加するCD47抗体の存在下でモニタした。結合したSIRPαを、APCコンジュゲート型抗ヒトIgG(Fc特異的)二次抗体(Jackson ImmunoResearch)を使用して測定した(米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図3B)。B6H12および商業的に入手可能な非SIRPαブロッキングCD47抗体2D3を、それぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。
<実施例4>
<CD47抗体媒介性ホモタイプ相互作用>
SIRPαブロッキングCD47抗体を、細胞のクラスタリング(CD47陽性細胞の間のホモタイプ相互作用として知られている)を誘導するそれらの能力について解析した。Daudi細胞およびラージ細胞をCD47発現細胞系の候補として使用した。検査した抗体の中で、本開示の2A1抗体のみが、CD47発現細胞のホモタイプ相互作用を促さないSIRPαブロッキング抗体であった。
<実施例5>
<CD47抗体の赤血球凝集能>
ホモタイプ相互作用の一例は、RBCの凝集によって表わされる赤血球凝集である。CD47抗体を、ヒトRBCの沈降(settling)を防止する抗体の能力によって観察されるRBC凝集についてスクリーニングした。予想されなかったことに、2A1抗体は、赤血球凝集を促すことができないが、その一方で高い親和性とSIRPαをブロックする能力を有するという点で、他のCD47抗体の中にあって特異であることが分かった。赤血球凝集の減少を示す他の抗体は、SIRPαのCD47への結合をブロックしなかった。
CD47抗体の赤血球凝集能力を評価するために、ヒトRBCをPBS中で10%まで希釈し、丸底96ウェルプレートにおいてCD47抗体の力価測定をしつつ37℃で2−6時間インキュベートした。赤血球凝集の証拠は、非赤血球凝集RBCの赤いドット(a punctuate red dot)に比べてぼんやりと現れる、非沈降RBCの存在によって示された。予想されなかったことに、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)で開示され図4Aに示されるように、本開示のCD47抗体、特に本明細書において2A1として言及される抗体は、赤血球凝集活性を示さなかった。グラフは赤血球凝集アッセイの定量を示し、表示値「赤血球凝集インデックス」は、抗体存在下でのRBCペレットの面積を抗体不在下での面積に対して規格化して定量化することによって決定した。
マウス9E4抗体は、試験されたすべての濃度において最も重大な赤血球凝集を引き起こした。したがって、9E4抗体はCD47に結合し、かつCD47とSIRPαの相互作用をブロックする;しかしながら、9E4抗体は重大な赤血球凝集を引き起こす。9E4抗体のVH鎖領域は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようにSEQ ID NO:78として提供される。9E4抗体のVL鎖領域は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようにSEQ ID NO:79として提供される。
SIRPαブロッキングCD47抗体に期待されるように、対照抗体B6H12は赤血球凝集を引き起こした。2A1抗体の非赤血球凝集能の独自性を調査するために、多数の他のCD47抗体をRBC赤血球凝集アッセイでスクリーニングした(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図4B)。このアッセイには2A1抗体(2A1−xi)のキメラ型バージョンが含まれ、それはマウスの2A1の可変重鎖領域、アミノ酸106(すなわちM106I)において修飾されたマウスの2A1の可変軽鎖領域、およびヒトIgG1およびヒトIgκの定常領域から成る。2A1抗体および2A1−xi抗体のVHおよびVL領域配列は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される表1に提供される。抗体を12.5、25、50および100nMで試験した。予想外に、2A1は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるように、図4Bで検査されたCD47抗体の中では珍しく、赤血球凝集能の欠如または減少を伴い、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるように図4Bにおける唯一の抗体であった。米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるように、図4Eは、2A1、キメラ型2A1(2A1−xi)、およびヒト化された変異体が赤血球凝集を引き起こさないことを示す。
米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図4Cは、RBC赤血球凝集アッセイにおける追加のCD47抗体をスクリーニングした結果を示す。米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図4Cに示されるように、市販のCD47モノクローナル抗体2D3は、SIRPαをブロックせず、赤血球凝集を引き起こさなかった。しかしながら、SIRPαをブロックする他の市販のCD47抗体(例えばCC2C6、BRC126およびB6H12)は、赤血球凝集を引き起こした(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図4C)。したがって、本明細書に記載の発明に先立って、SIRPαをブロックした既存の抗体は赤血球凝集を引き起こし、他方で2D3などの既存の抗体はSIRPαをブロックせず、赤血球凝集を引き起こさなかった。総合すれば、本明細書に開示される抗体(例えば2A1抗体およびそのヒト化された派生物)は、SIRPαをブロックするが赤血球凝集を引き起こさないという能力の点で、既存のCD47抗体の中にあって特異である。
選択したCD47抗体の高濃度範囲を、赤血球凝集アッセイにおいて再試験した(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図4D)。このアッセイは、B6H12と9E4による赤血球凝集のプロゾーン効果を明らかにし、ここで赤血球凝集は、試験された濃度の最高値と最低値で低減された。赤血球凝集インデックスのグラフ表示もまたプロゾーン効果を強調する。プロゾーン効果はさらに、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるように図4Cと4Eに明らかであった。重要なことには、マウス2A1およびキメラ型2A1 CD47抗体は、すべての濃度において赤血球凝集能を欠いていた。
米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図4Eに示されるように、マウス1B4抗体は狭い範囲の赤血球凝集を示した。
1B4抗体のVH鎖領域は、米国特許出願13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようにSEQ ID NO:80として提供される。1B4抗体のVL鎖領域は、米国特許出願13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるようにSEQ ID NO:81として提供される。
マウス2A1由来のヒト化抗体の凝集能を、上記のように試験した。重要なことには、多数のヒトIgGアイソタイプ(IgG1、IgG4−S228PおよびIgG4−S228P/L235E)において代表的なヒト化抗体AB6.12は、RBC赤血球凝集を引き起こさなかった。2A1および2A1−xiを非凝集抗体に関する対照として含み、他方でB6H12と9E4を、赤血球凝集に関する陽性対照として含んだ(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図4F)。
<実施例6>
<カニクイザルCD47への結合>
カニクイザル(cyno)のCD47に結合するマウス2A1の能力を評価した。B6H12抗体は、cynoCD47と交差反応性であることが以前に報告されており、アッセイではcynoCD47の存在に関する陽性対照として使用した。カニクイザルCD47への2A1の結合を測定する実験は、カニクイザルB細胞およびヒト細胞のCD47への2A1の結合を比較するように設計され、ここでラージ細胞系をヒトのCD47陽性細胞として使用した。カニクイザルの末梢血単核球(PBMC)を、ficoll−paque勾配遠心分離によって、カニクイザルの全血から単離した。カニクイザルおよびヒトのB細胞(ラージ)を10μg/mLのヒトCD20抗体オファツムマブ(Arzerra)で標識し、マウスCD47抗体2A1またはB6H12の希釈系列と反応させた。ヒトCD20抗体で標識されたB細胞を、DyLite649にコンジュゲートしたポリクローナル抗ヒト抗体で検出し、他方でCD47マウス抗体はDyLite488にコンジュゲートしたポリクローナル抗マウス抗体で検出した。細胞をフローサイトメトリーにより分析し、まずFSCとSSCによって生細胞をゲートオンし、次にFL4陽性(CD20陽性)細胞をゲートオンし、最後にFL1(CD47陽性)の中央値を測定した。データを、各濃度におけるシグナルを各細胞集団に対する各抗体の最大シグナルで割ることによって正規化した。米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)で開示される図5に示される正規化された結果は、2A1がcynoCD47と交差反応すること、およびヒトCD47と比較して同等の親和性を有することを示す。上記の結果と整合して、B6H12は、ラージ細胞とカニクイザルB細胞の両方の細胞表面CD47に関して、本開示の抗体と比較してより低い親和性を有した。
<実施例7>
<キメラ型抗体の生成>
マウス2A1抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の配列を特定するために、リボ核酸(RNA)をハイブリドーマから単離し、および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Phusion RT−PCR Kit Thermo Scientific)において利用し、一本鎖cDNAを生成した。VHとVLの両方のマウス抗体リーダー配列の完全レパートリーをカバーする変性プライマーセットをPCRにおいて使用し、ここで一本鎖cDNAは鋳型としての役割を果たした。
フォワードプライマー(マウスIgGリーダー)は、VH1−1(SEQ ID NO:82);VH1−2(SEQ ID NO:83);VH1−3(SEQ ID NO:84);VH1−4(SEQ ID NO:85);VH1−5(SEQ ID NO:86);VH1−6(SEQ ID NO:87);VH1−7(SEQ ID NO:88);VH1−8(SEQ ID NO:89);VH1−9(SEQ ID NO:90);VH1−10(SEQ ID NO:91);VH1−11(SEQ ID NO:92);VH1−12(SEQ ID NO:93);VH1−13(SEQ ID NO:94);VH1−14(SEQ ID NO:95);VH1−15(SEQ ID NO:96);VH2−1(SEQ ID NO:97);VH2−2(SEQ ID NO:98);VH3−1(SEQ ID NO:99);VH3−2(SEQ ID NO:100);VH4(SEQ ID NO:101);VH5−1(SEQ ID NO:102);VH5−2(SEQ ID NO:103);VH6(SEQ ID NO:104);VH7−1(SEQ ID NO:105);VH7−2(SEQ ID NO:106);VH8(SEQ ID NO:107);VH9(SEQ ID NO:108);VH10(SEQ ID NO:109);VH11(SEQ ID NO:110);VH12(SEQ ID NO:111);VH14(SEQ ID NO:112);VH15(SEQ ID NO:113)として提供され、すべてのSEQ IDの参照番号が米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)で開示される通りである。
リバースプライマー(マウスIgG定常領域)は、HC−rev(SEQ ID NO:114)として提供され、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される通りである。
フォワードプライマー(マウスIgκリーダー)は、VK1−1(SEQ ID NO:115);VK1−2(SEQ ID NO:116);VK2(SEQ ID NO:117);VK4/5−1(SEQ ID NO:118);VK4/5−2(SEQ ID NO:119);VK8−1(SEQ ID NO:120);VK8−2(SEQ ID NO:121);VK9A/9B−1(SEQ ID NO:122);VK9A/9B−2(SEQ ID NO:123);VK10(SEQ ID NO:124);VK11(SEQ ID NO:125);VK12/13−1(SEQ ID NO:126);VK12/13−2(SEQ ID NO:127);VK12/13−3(SEQ ID NO:128);VK12/13−4(SEQ ID NO:129);VK12/13−5(SEQ ID NO:130);VK19/28−1(SEQ ID NO:131);VK19/28−2(SEQ ID NO:132);VK19/28−3(SEQ ID NO:133);VK20(SEQ ID NO:134);VK21−1(SEQ ID NO:135);VK21−2(SEQ ID NO:136);VK22−1(SEQ ID NO:137);VK22−2(SEQ ID NO:138);VK23(SEQ ID NO:139);VK24/25−1(SEQ ID NO:140);VK24/25−2(SEQ ID NO:141);VK32(SEQ ID NO:142);VK33/34(SEQ ID NO:143);VK31/38C(SEQ ID NO:144):VKRF(SEQ ID NO:145)として提供され、すべてのSEQ IDの参照番号は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される通りである。
リバースプライマー(マウスIgκ定常領域)は、LC−rev(SEQ ID NO:146)として提供され、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される通りである。
増幅されたVHおよびVLを、その後、マウスとヒトのキメラ型DNA構築物を生成するために、それぞれ適切な抗体分泌配列と、ヒトIgG1およびIgκの定常領域を含むベクターへと、インフレームクローン化を行った。これらの構築物を、293Freestyle細胞(Life Technologies)に共トランスフェクトし、および結果として得られた抗体をプロテインAクロマトグラフィによって細胞培養上清から精製した。正しいVHおよびVLの配列が特定されたことを判定するために、キメラ型2A1(2A1−xiと称される)を、ラージ細胞上でのフローサイトメトリーによるマウスの親2A1抗体とCD47結合アッセイと比較した(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図6)。このアッセイは、陽性対照としてB6H12をさらに含んだ。結合した2A1−xiを、FITC−コンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して検出した。結合した2A1およびB6H12を、FITC−コンジュゲート抗マウスIgG二次抗体を使用して検出した。明白な親和性を、様々な抗体濃度での蛍光強度の中央値の非線形モデル(Prism Graphpad Software)によって判定した(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される表2)。2A1−xi抗体は、マウス2A1抗体に類似する、細胞表面CD47に対する結合親和性を有しており、VHおよびVLの配列が適切に特定されたことを実証している。
<実施例8>
<抗体のヒト化>
マウス2A1 CD47抗体を、ヒト患者に投与された時の免疫原生の潜在力を減らすために、ヒト化した。2A1のVH領域およびVL領域の配列を、IMGTデータバンクのヒト抗体配列と比較した。続いて、タンパク質データバンク(PDB)において最も密接に関連したヒト化抗体およびヒト抗体の既知の構造を使用して、2A1のVH領域およびVL領域の構造モデルを作成した。2A1抗体の重鎖と軽鎖の両方における3つの相補性決定領域(CDR)を固定し、およびマウスのフレームワークを、CDRの適切な配向を維持している可能性の最も高い多数のヒトフレームワークで置き換えた。各ヒト化2A1変異体に対応する構築物を遺伝子合成によって作成し、適切な分泌配列とヒトIgG1およびIgκ定常領域を含むベクターにインフレームクローン化した。種々のヒト化重鎖および軽鎖の組み合わせを、293Freestyle細胞(Life Technologies)に共トランスフェクトし、および結果として得られた抗体をプロテインAクロマトグラフィによって細胞培養上清から精製した。
ヒト化抗体をフローサイトメトリーにより、ラージ細胞に結合するそれらの能力に関して試験した(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図7)。2A1−xi抗体を、これらのアッセイのほとんどにおいて、結合親和性のベンチマークを設定するための対照として使用した。発現を増強し、かつ潜在的な異性化および脱アミド部位を含む問題の部位を減らすために、ヒト化抗体をさらに最適化した。マウス2A1抗体由来の最適化したヒト化抗体の例はAB6.12抗体と称され、2A1−xi抗体と非常に類似する結合親和性を示す(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図7H;表3)。明白な親和性を、様々な抗体濃度での蛍光強度の中央値の非線形モデル(Prism Graphpad Software)によって判定した。
次に、AB6.12抗体を、重鎖の定常領域の置換によってIgG1から他のヒトIgGアイソタイプに変換した。図7Iに示されるように、IgGアイソタイプからヒンジ安定型バージョンのIgG4(IgG4P:S228P)への変更、およびヒンジ安定型IgG4のFc受容体結合性低下型変異体(IgG4Pe:S228P/L235E)への変更は、細胞表面CD47に対するヒト化抗体の結合親和性を変化させなかった(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図7I;表4)。明白な親和性を、様々な抗体濃度での蛍光強度の中央値の非線形モデル(Prism Graphpad Software)によって判定した。
ヒト化プロセスの全体にわたって、CD47抗体を、SIRPαブロッキング機能が完全であったことを確証するために試験した。図7Jに示すように、上記の実施例3に記載のフローサイトメトリーベースの方法を使用し、ヒト化抗体(AB6.12)の複数のIgGアイソタイプは、SIRPα:CD47相互作用をブロックした。例示的なCD47抗体およびそれらの対応するVH領域とVL領域は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)で開示されるように、表1に提供されたものを含む。
ヒト化プロセス中に、いくつかの実施形態では、VHのCDR3(SEQ ID NO:52またはSEQ ID NO:77、米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示)の開始位置におけるアミノ酸配列モチーフ「NA」は、本明細書に記載されるCD47抗体の結合にとって重要である。いくつかの実施形態において、VHのCDR3(SEQIDNO:52またはSEQIDNO:77、米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示)の開始位置におけるアミノ酸残基「NA」が存在しない場合に、本明細書に開示のCD47抗体はそれらの標的に結合しない、またはアミノ酸残基「NA」が存在する場合のものよりも低い親和性でそれらの標的に結合する。例えば、「NA」モチーフを、よりカノニカルなモチーフの「AR」または「AT」へ変更した場合には、結合が実質的に減少した(すなわち10倍より大きく)。他の実施形態において、VHのCDR3(SEQIDNO:52またはSEQIDNO:77、米国特許出願第13960,136号[公開番号US20140140989]に開示)の開始位置におけるアミノ酸残基「NA」が存在しない場合に、本明細書に開示のCD47抗体は、アミノ酸残基「NA」が存在する場合の結合と比較して同等の親和性でそれらの標的に結合する。
当業者は、過度の実験をせずに、本明細書に開示のCD47抗体の配列のアミノ酸置換が、実質的に同一の機能を有する抗体、例えば、SIRPαをブロックするが、有意なレベルの赤血球凝集および/または血小板枯渇を引き起こさないという能力を有するCD47抗体、をもたらすかどうかを判定することができると認識するだろう。
superdex200カラムを有するAKTA FLPCを使用した分子ふるいクロマトグラフィによる追跡の画像は、図8Aに示される。AB6.12抗体のIgG1、IgG4PおよびIgGPE変異体が示される。3つの変異体はすべて、98%を超えるモノマーである。米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示されるように図8Bは、分解状態(R)および非分解状態(NR)の多数の2A1のヒト化変異体の、クーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルの写真である。
<実施例9>
<CD47抗体は腫瘍細胞系の食作用を促進する>
CD47は、腫瘍細胞でアップレギュレートされる細胞表面受容体であり、またその天然のリガンドSIRPαとのその相互作用を介して免疫回避に寄与すると考えられる。CD47とマクロファージのSIRPαとのライゲーションは、食細胞活性の減少をもたらす。以下に詳細に記載するように、2A1抗体およびその変形の、CD47結合およびSIRPαブロッキング活性が、ヒトマクロファージの存在下での腫瘍細胞食作用を促進するか否かを判定した。
PBMCをヒト血液から単離し、および単球を7日間、AIM−V培地(Life Technologies)でインキュベートすることによってマクロファージへ分化させた。これらの単球由来マクロファージ(MDM)は接着性になり、他の細胞を洗浄して取り除くことを可能にする。MDMをかき集め、および12ウェル皿に再び平板培養し、そして24時間接着させた。ヒト腫瘍細胞系CCRF−CEMを、その高いCD47発現ゆえに標的細胞タイプとして選択した。CCRF−CEM細胞を、0.3μMのCFSEで、37℃で15分間標識し、続いて洗浄し、および4:1の食細胞あたりの腫瘍細胞の割合でMDMに加え、そしてCD47抗体を様々な濃度で加えた。標的細胞の食作用を3時間許容した。その後、貪食されていない標的細胞をPBSで洗浄した。残りの食細胞をかき集め、DyLite 649(Biolegend)に結合したマクロファージマーカーCD14の抗体で染色し、そしてフローサイトメトリーで分析した。食作用は、FL4陽性(CD14+)の生細胞をゲートオンし、次にFL1(CFSE+)陽性細胞の割合を評価することによって、測定した。
米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図9は、CD47抗体2A1およびそのヒト化変異体が、MDMによる腫瘍細胞の食作用の用量依存的な増加を示したことを、示す。抗体2A1およびヒト化変異体AB2.05は、66.7pMで腫瘍細胞の食作用を誘導するその能力の点で特異であり、他方でB6H12はその濃度では活性を有さなかった(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図9A)。米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図9Bは、2A1と、ヒト化変異体AB2.05、AB6.12−IgG1、AB6.12−IgG4PおよびAB6.12−IgG4PEがすべて、0.3μg/mlまたは2nMにおいてどのように最大の食作用を誘導するかを示し、他方でB6H12がより高い濃度を必要とすることを示す。このデータは、CD47抗体、2A1(およびそれに由来するヒト化変異体)がCD47陽性腫瘍細胞のマクロファージ媒介性食作用を誘導することを実証する。この実施例では、CCFR−CEM細胞を、CD47陽性の標的細胞として用いた。
<実施例10>
<CD47抗体の抗腫瘍活性>
マウスCD47抗体の抗腫瘍活性を、リンパ腫のラージモデルで評価した。ラージ細胞を、NOD/SCIDマウスの皮下に移植し、および無作為に5つの群に分けた(各群あたり10のマウス、0日目)。群1:ビヒクル(緩衝剤のみ);群2:B6H12(陽性の対照);群3:1B4;群4:2A1;および群5:9E4。各抗体またはビヒクル(緩衝剤のみ)での処置は、腫瘍が触知可能な時(50mm3、13日目)に開始し、それらの腫瘍の体積が約1500mm3に達した時にマウスを安楽死させた。腫瘍体積を週3回測定した。抗体を3週間、週3回、200μgで静脈内(IV)に投薬した(1つのマウス当たり計9回の投与)。13日目に処置を開始し、32日目に終了した。
米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図10Aに示されるように、本開示のCD47抗体、特に2A1抗体は、このリンパ腫の動物モデルにおいて抗腫瘍活性を示した。1500mm3の腫瘍体積に達するために、群1(ビヒクルのみ)は〜25日を要し;群2(B6H12.2)は〜45日を要し;群3(1B4)は〜37日を要し;群4(2A1)は〜85日を要し;および群5(9E4)は、〜1500mm3の腫瘍体積に達するのに〜40日を要した。これらのデータは、CD47に結合し、CD47のSIRPαとの相互作用をブロックし、およびヒト癌のマウスモデルにおける腫瘍形成を抑制することが知られているB6H12を含む試験された全てのCD47結合抗体よりも、抗体2A1が有意により強力であったことを示す。予想されなかったことに、これらのCD47抗体の腫瘍抑制活性は、公開されたデータに基づいて予想される、CD47に結合するそれらの効能、またはCD47のSIRPαとの相互作用をブロックするそれらの効能と相関しなかった。
実施例2と3に記載したように、2A1、1B4および9E4は、CD47に対する類似の親和性を有するとともに、CD47とSIRPαとの相互作用をブロックする類似の効能を有した。加えて、この研究で使用した全ての抗体は同一のマウスIgG1ドメインから成るため、2A1の増強された効果を、記載した抗体のFcドメインにおける差異によって説明することができない。したがって、特有の組成に加えて、2A1抗体は、CD47発現細胞(例えば、赤血球)の間のホモタイプ相互作用を誘導することができないこと、およびCD47への結合の増強またはCD47とSIRPαとの相互作用をブロックする能力の増強により説明することのできない腫瘍抑制活性の増強、を含む予期せぬ特異な特徴を有する。
ヒト化2A1抗体がその抗腫瘍活性を維持したことを確認するために、類似するラージ腫瘍の試験を行った。試験の設計は上記と同じであった。ラージ細胞を、NOD/SCIDマウスの皮下に移植し、および無作為に5つの群に分けた(各群あたり10のマウス、0日目)。この試験では、抗体を3週間、週3回200μgで腹腔内(IP)に投与し(1つのマウスにつき計9回の投与)、および腫瘍体積を週3回測定した。しかしながら、この試験に関しては、マウスIgG1 2A1抗体(群2)をヒト化誘導体、AB6.12と比較した。この試験では、AB6.12をヒトIgG1(群3)、ヒトIgG4P(群4)、およびヒトIgG4PE(群4)に構築した(実施例8に記載の通り)。したがって、この試験は、その腫瘍抑制活性に対する2A1ヒト化の影響と、多くの抗体の抗腫瘍活性に寄与することが当技術分野で知られているFcドメインエフェクター機能の潜在的役割とを明らかにすることを目指した。ヒトIgG1がヒトIgG4Pと比較して有意により多くのエフェクター機能を有することはよく報告されている。エフェクター機能をさらに減少させるように、IgG4PEを開発した。米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図10Bに見られるように、2A1のヒト化は、2A1の抗腫瘍活性を減ぜず、実際には増強する場合もある。AB6.12−hIgG1、AB6.12−hIgG4PおよびAB6.12−hIgG4PEはすべて、マウス2A1(2A1mIgG)よりも有意に大きい、類似の抗腫瘍活性を示した。2A1mIgG1、AB6.12−hIgG1、AB6.12−hIgG4PおよびAB6.12−hIgG4PEが類似するCD47結合およびSIRPαブロッキング活性を有しているため、この結果は予期せぬものである。加えて、AB6.12−hIgG1、AB6.12−hIgG4PおよびAB6.12−hIgG4PEが同様の抗腫瘍活性を有するため、エフェクター機能はヒト化2A1抗体AB6.12の有効性に寄与することがわかる。
<実施例11>
<CD47抗体のCD47との共結晶>
CD47は、6つの部位において高度にグリコシル化された単一の細胞外IgV(免疫グロブリン様可変型)ドメインを備えた5回膜貫通型タンパク質である。CD47−IgVドメインの構造は、SIRPαのIgVドメイン、その天然のリガンドとの複合体において解明されている(タンパク質データバンク(PDB)参照番号2JJS;Hatherley et al.,2008 Mol Cell,25;31(2):266−77[図11A])。この構造は、CD47のN末端のピログルタミン酸を含むアピカルエピトープ上のCD47−IgVに結合するSIRPα−IgVを示す。この構造は、どのように細胞表面膜貫通型タンパク質同士が、頭と頭が向き合う配向で隣接する細胞と生産的に相互作用するのかを十分に説明する。B6H12のFabとの複合体におけるCD47−IgVのX線結晶学的構造は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図11Bに示される。明瞭化のために、Fabの定常領域(CH1とCL)は図中で省略されており、FV(VHとVL)のみが示されている。これは、アピカル結合部位を示しており、細胞膜から非常に離れた末端部の表面上にこの抗体が位置することを示した(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図11B)。B6H12によるSIRPαブロッキングのメカニズムはこの構造から明白である。この配向は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される図11において、細胞膜の相対的位置が破線で示されることを意図する。
本開示の抗体の標的エピトープを判定するために、CD47−IgVドメインと2A1−xiのFab(ヒトCH1とCLドメインを有するキメラ型抗体)の共複合体のX線結晶構造を判定した(米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示される図11C)。明瞭化のために、Fabの定常領域(CH1とCL)は図中で省略されており、FV(VHとVL)のみが示されている。以前に判定された頭と頭とが向き合うように配向するCD47とSIRPαの結合構造(図11A、米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示)、および膜から離れたアピカルに位置するB6H12抗体(図11B、米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示)とは異なり、CD47との複合体における2A1の構造は、CD47に対する抗体の膜近くの結合が、予期せぬ特異な頭と側面とが向き合う配向(head to side orientation)であることを明らかにした(図11C、米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示)。CD47上の2A1エピトープは不連続であり、およびSEQ ID NO:147(すなわち、シグナル配列[アミノ酸1−18]を除いたSEQ ID NO:48)に従って番号付けした場合に、CD47の残基Y37、K39、K41、KGRD(SEQ ID NO:56)ループ(残基43−46)、D51、H90、N93、E97、T99、E104、およびE106を含む。CD47に結合した2A1の構造はさらに、VHがCD47のKGRD(SEQ ID NO:56)ループへの結合に基本的に関与し、他方でVKドメインが、Y37、T102およびE104を含むアピカル残基(SIRPα結合に関与する)と相互作用することを明らかにする:すべてのSEQ ID参照番号は、米国特許出願第13/960,136号(公開番号US20140140989)に開示される。したがって、CD47とSIRPαとの結合を物理的に不可能にするものは、基本的にVKドメインである。これらの構造研究は、2A1が結合する特異なエピトープがCD47の側面に存在することを示唆する。本発明の技術分野において既知のCD47抗体とは対照的に、膜の近位置における2A1VH領域の配向は、この抗体が隣接する細胞上のCD47分子に架橋できないように拘束することによって有意なレベルの赤血球凝集を妨げるという、この抗体の重要な特性である。
<実施例12>
<血小板枯渇に対するアイソタイプとアイソタイプの突然変異の効果>
標的細胞除去に関する抗体(例えばCD47抗体)の主要なFc依存性機能は、Fc領域へのClqの結合によって開始される補体依存性細胞障害(CDC);Fcγ受容体(FcγR)、免疫エフェクター細胞(例えばNK細胞および好中球)上の主要なFcγRIIIaを伴うFc領域との相互作用によって媒介される、抗体依存性細胞障害(ADCC);および、FcγRIを介したオプシン化(opsinized)標的細胞の認識を通じて、マクロファージによって実行される抗体依存性細胞食作用(ADCP)である。抗体のサブクラスは、Fc依存性エフェクター活性を媒介する能力に違いがある。ヒトでは、IgG1とIgG3のサブクラスは、Clqに結合することによってCDCに対する高い効能を有する。さらに、IgG1サブクラスは、FcγRに対する最も高い親和性を有しており、その結果としてADCCおよびFc依存性ADCPに関して最も強力なものである。IgG4サブクラスは、Clq結合能を欠いており、およびFcγR結合親和力が大幅に低下しており、その結果としてエフェクター機能がかなりの程度低下している。
血小板枯渇に対する、CD47を結合する抗体の効果を調べた。CD47に結合するIgG1サブクラスの抗体の単回投与によるカニクイザルの処置は、試験されたすべての用量(10、30、100mg/kg)において血小板の有意な枯渇に帰結したが(図12C−D、米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示)、これに対してビヒクルを投与した場合には血小板の有意な枯渇はなかった(図12A−B、米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示)。したがって、CD47を結合するIgG1サブクラスの抗体は、Fc依存性の方法で血小板の枯渇をもたらし得る。
抗体の異なるサブクラスもまた血小板枯渇を引き起こすかどうかを判定するために、IgG4サブクラスのCD47抗体を用いて試験を繰り返した。CD47を結合する抗体のIgG4サブクラス(抗体のヒンジ領域を安定させる変異S228Pを有するIgG4P)もまた、IgG1サブクラスバージョンに対してより少ない程度であったとはいえ、試験されたすべての濃度において血小板の枯渇をもたらした(図12E−F、米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示)。次に、抗CD47抗体のIgG4サブクラスの変異形態(FcγR結合を減じるL235E変異と共にS228P変異を有するIgG4PE)を、血小板枯渇に関して試験した(図12G−H、米国特許出願第13/960,136号[公開番号US20140140989]に開示)。驚いたことに、非常に高い投与量(100mg/kg)においても、IgG4PE抗体は血小板の枯渇をもたらさなかった。したがって、FcγR結合とエフェクター機能が非常に低下したCD47結合抗体は、血小板枯渇をもたらさない。
<実施例13>
<CD47抗体の赤血球(RBC)枯渇活性>
Weiskopf らは、マウスCD47を結合したCD47抗体、または親和性の進化したSIRPα−Fc融合タンパク質を、マウスおよび/またはカニクイザルに投与した場合に、赤血球の減少および貧血症が観察されることを発見した。Weiskopf et al.“Engineered SIRPα Variants as Immunotherapeutic Adjuvants to Anticancer Antibodies”;Science 2013;341:88を参照されたい。本明細書に提示される本発明に先立って、SIRPαをブロックし、かつFc領域を包むすべての既知のCD47結合分子(例えば、CD47抗体および組換えSIRPα−Fc融合タンパク質)もまた、RBC枯渇を誘導した。
インビボでの赤血球枯渇に対する、SIRPαブロッキング、すなわち本明細書に開示の非赤血球凝集CD47抗体の効果を判定するために試験を行った。驚いたことに、本明細書に開示の非赤血球凝集CD47抗体は、投与後に有意な赤血球枯渇を引き起こさない。具体的には、AB06.12抗体のIgG4−PおよびIgG4−PE変異体を、静脈注射により10、30および100mg/kgの投与量でカニクイザルに与えた。各抗体に対して、用量群ごとに3匹のサルを使用した。赤血球数を経時的にモニタリングし、およびビヒクルで処置したサルと比較した。図13は、抗体で治療したサルからのRBCの平均数を示し、ビヒクルで処置したサルのRBCの平均数に正規化されている。ビヒクルで処置された動物と比較して、抗体で処置されたサルでは有意なRBC枯渇は観察されず、非赤血球凝集CD47は高用量で投与することが可能であり、かつ被験体に貧血症をもたらさないことが実証された。
<実施例14>
<CD47とTSP−1の競合研究>
試験CD47抗体の結合の特異性を特徴づけるために、試験を行った。CD47は、他のタンパク質の中でもSIRPαとTSP−1にトランス相互作用(trans−interact)することができ、およびこれらの試験は、一方または両方のリガンドへのCD47の結合に試験抗体が干渉し得るかどうかを判定することを目指した。表面プラズモン共鳴(Biacore)と呼ばれる生化学的プラットフォームを使用して、組換えCD47およびTSP−1タンパク質の結合動態を評価した。まず、CD47の細胞外ドメイン(ECD)とTSP−1の間に結合を確立した;続いて、CD47とTSP−1の相互作用を妨害する性能を評価するために、試験抗体を導入した。結果は、試験抗体がTSP1へのCD47−ECDの結合をブロックしないことを実証する。
さらに、CD47への結合に関して、TSP−1が試験抗体と競合するかどうかを問うことにより、試験抗体の相互作用の特異性を評価するために、細胞試験をさらに行った。この試験に使用された物質には、以下が含まれる:
・CCRF−CEMの腫瘍細胞系
・抗CD47試験抗体:0.02μg/ml
・抗CD47−1A2抗体IgG2、マウスの背骨:0.02μg/ml(LifeSpan Bioscience #LS−C188327)
・抗CD47−2D3抗体IgG1、マウスの背骨:0.02μg/ml(eBioscience #140479)
・抗CD47−B6H12抗体IgG1、マウスの背骨:0.02μg/ml(eBioscience #140478)
・組換えTSP−1:TSP−1:0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30μg/ml(R&D #3074−TH−50)
・IgGアイソタイプ対照(Eureka)
・ヤギの抗ヒトIgG(H+L)二次抗体、Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲート(Lifetechnologies #A−21445)
細胞を完全なRPMI1640+10%のFBSで培養し、細胞を採取し、および冷たい1×PBSで洗浄した。それらを2×106細胞/mLでFACS緩衝液(1%のBSA、1×PBS)中で再懸濁し、および50μL(100K細胞/ウェル)をU底プレートの各ウェルに加えた。TSP−1を、氷の上で1時間CCRF−CEMでインキュベートしたFACS緩衝液に希釈した。CD47抗体を加え、および細胞を氷の上で追加の時間、インキュベートし、続いていくつかの冷たい1×PBSで洗浄した。100μL/ウェルの二次Ab(10μg/ml)を適切なウェルに加え、暗やみで氷の上で30分インキュベートした。細胞を洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、およびFACSによって分析した(10,000の事象)。
CD47抗体、試験抗体、CD47−1A4およびCD47−B6H12を、1:600のAb:TSP−1の比率で評価し、ここで抗体は0.02または0.05μg/mlで存在し、およびTSP−1を0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30μg/ml加えた。結果(本明細書の上記に開示される図1A−Bを参照)は、TSP−1が、CD47に結合する試験抗体とは競合しないが、CD47に結合する他のCD47抗体、B6H12(〜80%)、2D3(〜40%)および1A2(〜50%)と競合することを明らかにした。
<実施例15>
<癌幹細胞CD47の発現および抗CD47の有効性>
癌幹細胞(CSC)とCD47の関係を検討するために、特に、より多くの幹様集団がより高レベルのCD47を発現するかどうか、および抗CD47抗体での処置が癌幹細胞の生存率に好ましく影響するかどうかを検討するために、MCF7乳癌細胞系を使用して試験を行った。試験はER+/PR+/Her−2+MCF7乳癌細胞系を使用し、単層として3D培養で培養され、および密集してしっかり結合したマンモスフェアの形成を誘導して潜在的により多くの幹細胞様特性を誘発した。実験プロトコルは、単層培養のための37℃、5%のCO2でのインキュベーションを含み、4日間、培養培地(EMEM、10%のウシ胎仔血清、1%の非必須アミノ酸)中に20,000細胞/cm2の播種密度で、6ウェルプレートの表面に細胞を付着させた。マンモスフェア培養については、7日間、完全なMammocult培地で、40,000細胞/ウェルの播種密度で、極めて低い付着の6ウェルプレート上で細胞を成長させた。
細胞を以下のプロトコルに従って処置し、および各処置を4回繰り返した。以下の処置グループを、単層培養とマンモスフェア培養の両方において評価した:対照−抗体なし;抗CD47抗体B6H12−培養の1日目と3日目に2.5μg/ml;抗CD47試験抗体−培養の1日目と3日目に2.5μg/ml。マンモスフェア数および細胞の生存率(マンモスフェア培養のみ)、Cell titergloの細胞増殖と生存率、全ウェルから抽出されたmRNAによって判定されるCD47遺伝子発現;JAG1の幹標識遺伝子発現分析、およびALDHと細胞の存在に関して染色された細胞によって判定される幹フローマーカーを、評価した。
この試験は、単層培養中の細胞と比較してJAG1、幹細胞マーカーおよびCD47を有意により高いレベルで発現するCSCが、マンモスフェア培養中のMCF−7乳癌細胞に豊富であることを明らかにし、CD47が癌幹細胞でアップレギュレートされ得ることを示唆した。腫瘍細胞増殖は、マンモスフェア培養においてB6H12によって多少抑制され、および試験CD47抗体で処理されたマンモスフェア培養においては非常に慎ましく抑制される。CD47発現は、B6H12または試験CD47抗体で処理された単層とマンモスフェアの培養においてダウンレギュレートされる。JAG1、幹標識遺伝子の発現もまた、試験CD47抗体で処理された培養においてダウンレギュレートされる。要約すると、この試験からの発見(上記の図2A−Dを参照)は、癌幹細胞集団においてCD47がアップレギュレートされ得ること、およびCD47のブロックは結果としてCSCの成長と保全を遅らせ得ることを示唆する。CD47の阻害は、乳癌および相当な癌幹細胞集団を伴う他の癌の処置を発展させるのに有益であり得る。他の細胞系および一次細胞サンプルにおけるさらなる研究によって、この発見が乳癌だけでなく他の固形腫瘍または血液系悪性腫瘍におよぶかどうかが明らかになるだろう。