概要
一部の局面において、本開示は、増殖するように幹細胞性を促進することによって幹細胞を制御して増殖させ、分化する娘細胞を作り出すための方法であって、有効量の(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤を細胞集団に投与する工程を含む、方法を提供する。
従って、本開示の様々な局面の中でも、細胞集団におけるWnt経路を活性化して、集団の自己複製能(すなわち、同等の増殖能および「細胞運命特定」能をもつ娘細胞を繰り返し生じさせる能力)および分化能(すなわち、分化が特定された娘細胞を生じさせる能力)を高める方法が言及され得る。一態様では、細胞集団は前庭支持細胞集団である。一部の態様では、好ましくは、Wnt経路は、前記集団のメンバーにおいてc-myc遺伝子の上流で、かつ前記集団が遺伝子組換えされることなく活性化される。一部のこのような態様では、Wnt経路は、好ましくは、このような活性を一過的に誘導する低分子によって活性化される。特定の態様では、Wnt経路は、本明細書において開示されるWntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤によって活性化される。さらに、支持細胞集団には、好ましくは、前庭器官に内在する支持細胞が含まれる。
本開示のさらなる局面は、一部の態様では、前庭細胞集団に含まれる支持細胞の幹細胞/前駆細胞の自己複製を誘導するための方法である。すなわち、支持細胞の幹細胞/前駆細胞は、有毛細胞に分化する能力を娘細胞において維持しながら増殖する(すなわち、分裂して娘細胞を形成する)ように誘導される。対照的に、支持細胞の幹細胞/前駆細胞が(多分化能を維持することなく)増殖するようにしか誘導されないのであれば、娘細胞には有毛細胞に分化する能力が無いであろう。さらに、既存の幹細胞/前駆細胞集団が分化するようにしか強制されなかったら、幹細胞プールが枯渇する可能性がある。従って、本開示は、既存の前庭支持細胞が分化する前に増殖するように誘導され、次いで、増殖した集団は有毛細胞に分化するようになされる(か、さらには、一部の態様では、有毛細胞に分化するように誘導される)方法を提供する。一部の態様では、Wnt経路は、好ましくは、前記集団のメンバーにおいてc-myc遺伝子の上流で、かつ前記集団が遺伝子組換えされることなく活性化される。一部のこのような態様では、増殖は、好ましくは、このような活性を一過的に誘導する低分子によって活性化される。特定の態様では、Wnt経路は、本明細書において開示されるWntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤によって活性化される。さらに、特定の態様では、支持細胞集団には、好ましくは、支持細胞であり、かつ前庭器官に内在する細胞が含まれる。
一態様において、Wnt経路は、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤(例えば、表1に開示されるWntアゴニストのいずれか1つ、表6に開示されるGSK3α阻害剤のうちのいずれか1種、または表2に開示されるGSK3β阻害剤のうちのいずれか1種)を用いて活性化される。一部の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤は、CHIR99021、LY2090314、AZD1080、またはGSK3阻害剤XXIIである。
様々な態様において、本開示の方法は、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤によるWnt経路の活性化と、TGF-β経路の阻害の両方を含む。このような1つの態様では、TGF-β経路はTGF-β阻害剤を用いて阻害される。一部の態様では、TGF-β阻害剤は、TGF-β I型受容体阻害剤、TGF-β R1キナーゼ阻害剤、および/またはALK2/4/5/7のいずれか1つもしくは複数の阻害剤である。一部の態様では、TGF-β阻害剤は、表5に列挙した阻害剤のいずれか1つである。一態様では、TGF-β阻害剤は、616452 (Repsox)、ガルニセルチブ(LY2157299)、EW-719、IN-1130、EW-7203、EW-7195、SM16、R268712、GW788388、SB-431542、およびPF-03671148より選択される。一部の態様では、本開示の方法は、BMP経路を阻害する工程、DKK1を阻害する工程、および/またはノギン経路を活性化する工程をさらに含む。一部のこのような態様では、BMP経路はBMP阻害剤(例えば、BMP4阻害剤、例えば、ノギン)を用いて阻害される。一部のこのような態様では、DKK1はDKK1阻害剤を用いて阻害される。従って、一態様では、本開示は、WntアゴニストとTGF-β阻害剤を用いてWnt経路を活性化する工程を含む。一態様では、本開示は、GSK3α阻害剤とTGF-β阻害剤を用いてWnt経路を活性化する工程を含む。一態様では、本開示は、GSK3β阻害剤とTGF-β阻害剤を用いてWnt経路を活性化する工程を含む。様々な態様において、このような方法は、前記細胞を、Notchアクチベーター、HDAC阻害剤、BMP4アンタゴニスト、Sox2のアップレギュレーター、ビタミンD(カルシトリオール)、ビタミンB(ニコチンアミド)、ビタミンA、ビタミンC(pVc)、Lgr4、p38/MAPK阻害剤、ROCK阻害剤、TGF-β RIキナーゼ阻害剤、ならびに/またはAlk2、Alk4、Alk5、および/もしくはAlk7の阻害剤と接触させる工程をさらに含む。
従って、特定の態様では、本開示は、幹細胞特性を誘導することに関与する経路および機構、例えば、「人工多能性幹細胞」を作り出すのに用いられる経路および機構を活性化することによって支持細胞集団の自己複製を誘導するための組成物および方法を提供する。一部の態様では、これらの経路は低分子を用いて活性化される。例えば、化合物がインビトロで支持細胞集団に適用されたときには、この集団が幹細胞増殖アッセイにおいて高度に、かつ高純度で増殖するように誘導し、また、この集団が幹細胞分化アッセイにおいて高純度の組織細胞集団に分化するのも可能にし得る。このような1つの態様では、本開示の化合物または組成物は、何世代にもわたって分裂し、結果として生じた細胞の大きな割合を組織細胞に分化させる能力を維持することができる幹細胞を生成するように増殖させることで幹細胞特性を誘導および維持する。さらに、増殖している幹細胞は、Lgr5、Sox2、Sox9、Opeml、Phex、lin28、Lgr6、サイクリンD1、Msx1、Myb、Kit、Gdnf3、Zic3、Dppa3、Dppa4、Dppa5、Nanog、Esrrb、Rex1、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3l、Utf1、Tcl1、Oct4、Klf4、Pax6、Six2、Zic1、Zic2、Otx2、Bmi1、CDX2、STAT3、Smad1、Smad2、Smad2/3、Smad4、Smad5、およびSmad7のうちの1つまたは複数を含んでもよい幹細胞マーカーを発現する。
特定の態様では、本開示は、前庭組織において前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織を、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、もしくはGSK3β阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容される塩)、(ii)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、もしくはGSK3β阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容される塩)とTGF-β阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容される塩)との組み合わせと接触させ、それによって、増殖した幹細胞集団からの、支持細胞および/または内耳有毛細胞の発生を促進する工程を含む、方法を提供する。特定の態様では、本開示は、前庭細胞集団にある支持細胞の細胞密度を増加させるための方法であって、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤とTGF-β阻害剤との組み合わせを用いて支持細胞を活性化して幹細胞特性を誘導し、(新たに形成された娘細胞において支持細胞の多能性特徴を維持しながら)活性化された支持細胞を増殖させ、増殖した支持細胞を有毛細胞に分化させて、増殖した前庭細胞集団を形成させる工程を含む、方法を提供する。一部の態様では、増殖した前庭細胞集団にある有毛細胞の細胞密度は、最初の(増殖していない)前庭細胞集団にある有毛細胞の細胞密度より大きい。一部の態様では、支持細胞集団はインビトロ支持細胞および有毛細胞集団である。一部の態様では、支持細胞および有毛細胞集団はインビボ細胞集団である。一部の態様では、増殖段階は、前庭構造の天然構造を実質的に維持するように制御される。特定の態様では、支持細胞集団には、前庭器官に内在する支持細胞が含まれる。従って、一態様では、本開示は、前庭組織における前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織をWntアゴニストおよびTGF-β阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。一態様では、本開示は、前庭組織における前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織をGSK3α阻害剤およびTGF-β阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。一態様では、本開示は、前庭組織における前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織をGSK3β阻害剤およびTGF-β阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。
特定の態様では、前記方法は、幹細胞増殖アッセイにおいて、幹細胞マーカー、Sox2、Sox9、Pax2、Pax6、Pax8、Bmi1、Lgr5+を発現する幹細胞を生成する。特定の態様では、幹細胞増殖アッセイにおいて、支持幹細胞と非支持幹細胞の混合集団が配置されれば、前記方法は、この集団において、支持細胞マーカーを発現する細胞の割合を増加させる。
支持細胞集団が前庭構造の天然構造を破壊する程度まで増殖すると前庭機能が阻害される可能性がある。低分子シグナルを用いて既存の支持細胞の増殖を推進することで、特定の細胞タイプを標的化することができず、細胞の遺伝情報を恒久的に変えることができない遺伝子送達を用いるよりももっと制御された有毛細胞再生が可能になるかもしれない。有毛細胞が何列も並んでおり、その間に支持細胞がある、ほぼ正常な前庭構造が望ましく、有毛細胞は他の有毛細胞と接触していない。さらに、前庭器官において、この器官の解剖学的構造を破壊する大きな細胞凝集を作り出すように増殖を推進する遺伝子組換えの使用を回避することが望ましいだろう。態様において、幹細胞の増殖(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤によって誘導される幹細胞の増殖)は、TGF-β経路の細胞周期制御因子のモジュレーターを添加することによって強化される。態様において、幹細胞の増殖(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤によって誘導される幹細胞の増殖)は、TGF-β阻害剤(例えば、当技術分野において公知の、または本明細書に記載のTGF-β阻害剤のうちの1種または複数種)、または任意で、DKK1阻害剤またはBMPアンタゴニスト、例えば、BMP4アンタゴニスト(例えば、ノギン)を添加することによって強化される。
特定の態様では、本開示は、有毛細胞および支持細胞を含む前庭細胞の初期集団において有毛細胞の細胞密度を増加させるための方法であって、初期集団にある支持細胞の数を選択的に増幅して中間前庭細胞集団を形成させる工程を含み、中間前庭細胞集団にある支持細胞の数と有毛細胞の数の比は、初期前庭細胞集団にある支持細胞の数と有毛細胞の数の比より大きい、方法を提供する。一部の態様では、支持細胞の増殖は、支持細胞を、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤と接触させることによって容易にされる。特定の態様では、前記方法は、中間前庭細胞集団において有毛細胞を発生させて、増殖した前庭細胞集団を形成させる工程をさらに含み、増殖した前庭細胞集団にある有毛細胞の数の比と支持細胞の数は、中間前庭細胞集団にある有毛細胞の数の比と支持細胞の数より大きい。従って、一部の態様では、支持細胞の増殖は、支持細胞をWntアゴニストおよびTGF-β阻害剤と接触させることによって容易にされる。一部の態様では、支持細胞の増殖は、支持細胞をGSK3α阻害剤およびTGF-β阻害剤と接触させることによって容易にされる。一部の態様では、支持細胞の増殖は、支持細胞をGSK3β阻害剤およびTGF-β阻害剤と接触させることによって容易にされる。
特定の態様では、本開示は、前庭細胞の初期集団において支持細胞の数を増加させるか、または幹細胞/支持細胞活性を増加させるための方法であって、初期集団が支持細胞および有毛細胞を含む、方法を提供する。例えば、このような1つの方法では、初期集団と比べて支持細胞の数が増幅されている中間集団が形成される。または、このような1つの方法では、初期集団と比べて支持細胞の幹細胞性が増加している中間集団が形成される。または、通常、幹細胞遺伝子発現が無いか、幹細胞遺伝子発現レベルが非常に低い細胞タイプにおいて幹細胞遺伝子発現を活性化することによって、初期細胞集団と比べて支持細胞の数が増加している方法。さらなる例として、初期前庭細胞集団と比べて支持細胞の数が増幅されており、Wnt活性が増加している中間集団が形成される。その後に、増殖した前庭細胞集団を形成するように、中間前庭細胞集団にある有毛細胞が発生されてもよい。この場合、増殖した前庭細胞集団にある有毛細胞と支持細胞の比は、中間前庭細胞集団にある有毛細胞の数と支持細胞の数の比より大きい。一部のこのような態様では、Wnt活性は、支持細胞を、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤と接触させることによって増加する。態様において、このような方法は、支持細胞をTGF-β阻害剤と接触させる工程をさらに含む。
一部の態様では、幹細胞性は、Wnt経路を活性化することによって(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤を用いて)誘導される。態様において、幹細胞性の誘導はTGF-βを阻害する工程をさらに含む。
特定の態様では、本開示は、有毛細胞を発生させるための方法であって、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容される塩)、および(ii)TGF-β阻害剤(またはその誘導体もしくは薬学的に許容される塩)を含む組成物を幹細胞集団に投与し、それによって、幹細胞集団において幹細胞を増殖させ、その結果、内耳有毛細胞に分化することができる増殖した幹細胞集団を得る工程を含む、方法を提供する。
特定の態様では、本開示は、平衡機能不全、例えば、回転性めまい、めまい、良性発作性頭位めまい症(BPPV)、迷路炎または前庭神経炎、メニエール病、および聴器毒性を予防および処置するための組成物、系、および方法を提供する。例えば、特定の態様では、本開示は、対象において平衡障害を予防または処置するための方法であって、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤を含む有効量の組成物を前記対象に投与する工程を含む、方法を提供する。一部の態様では、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤は別々に、例えば、連続して投与される。
特定の態様では、本開示はまた、本明細書に記載の細胞のエクスビボ使用にも関する。例えば、本明細書に記載のアプローチは、ハイスループットスクリーニングのために、および発見目的で使用することができる。例えば、本開示の特定の態様は、有毛細胞前駆細胞を増殖する、および/または有毛細胞の数を増加させる薬剤を特定するのに有用であり、また、支持細胞および/または有毛細胞を保護する(例えば、支持細胞および/または有毛細胞の生存を支持する)薬剤を特定するのにも有用であり、支持細胞または有毛細胞を含む分化した子孫に対して毒性があるか、または毒性がない薬剤を特定するのにも有用である。
特定の態様では、本開示は、対象における聴覚系の細胞の喪失もしくは死亡を阻害するための方法であって、本明細書に記載の有効量の組成物またはその誘導体もしくはその薬学的に許容される塩と、許容される担体または賦形剤を前記対象に投与し、それによって、対象における聴覚系の細胞の喪失もしくは死亡を阻害する工程を含む、方法を提供する。
特定の態様では、本開示は、対象における聴覚系の細胞の増殖を維持または促進するための方法であって、内因性の修復を増強または開始するのに有効な量で、本明細書に記載の薬剤またはその誘導体もしくはその薬学的に許容される塩と、許容される担体または賦形剤を含む組成物を前記対象に投与する工程を含み、それによって、対象における聴覚系の細胞の増殖が維持または促進される、方法を提供する。
支持細胞と多数の支持細胞を含む親細胞集団を含む前庭組織において前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織を幹細胞増殖因子と接触させる工程を含み、それによって前庭組織において増殖した細胞集団が形成され、幹細胞増殖因子が、(i)幹細胞増殖アッセイにおいて、幹細胞増殖アッセイ細胞集団にある支持細胞の数を少なくとも10倍増やすことができ、(ii)幹細胞分化アッセイにおいて、支持細胞を含む細胞集団から有毛細胞を形成することができる、方法も本明細書において説明される。特定の態様では、幹細胞増殖因子は、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤である。特定の態様では、前記方法は、前庭組織をTGF-β阻害剤と接触させる工程をさらに含む。従って、様々な態様において、本開示は、支持細胞と多数の支持細胞を含む親細胞集団を含む前庭組織において前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織をWntアゴニストおよびTGF-β阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。一部の態様では、前記方法は、前庭組織をGSK3α阻害剤およびTGF-β阻害剤と接触させる工程を含む。一部の態様では、前記方法は、支持細胞をGSK3β阻害剤およびTGF-β阻害剤と接触させる工程を含む。
支持細胞を含む親細胞集団を含む前庭組織において前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織を幹細胞増殖因子(例えば、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤)と接触させる工程を含み、それによって前庭組織において増殖した細胞集団が形成される、方法も本明細書において説明される。幹細胞増殖因子は、(i)幹細胞増殖アッセイにおいて増殖アッセイ期間にわたって増殖アッセイ初期細胞集団から増殖アッセイ最終細胞集団を形成させることができ、(ii)幹細胞分化アッセイにおいて分化アッセイ期間にわたって分化アッセイ初期細胞集団から分化アッセイ最終細胞集団を形成させることができ、(a)増殖アッセイ初期細胞集団には、(i)増殖アッセイ初期数の総細胞、(ii)増殖アッセイ初期数の支持細胞、(iii)増殖アッセイ初期数の有毛細胞、(iv)支持細胞の増殖アッセイ初期数と総細胞の増殖アッセイ初期数の比に等しい増殖アッセイ初期支持細胞比、および(v)有毛細胞の増殖アッセイ初期数と総細胞の増殖アッセイ初期数の比に等しい増殖アッセイ初期有毛細胞比があり;(b)増殖アッセイ最終細胞集団には、(i)増殖アッセイ最終数の総細胞、(ii)増殖アッセイ最終数の支持細胞、(iii)増殖アッセイ最終数の有毛細胞、(iv)支持細胞の増殖アッセイ最終数と総細胞の増殖アッセイ最終数の比に等しい増殖アッセイ最終支持細胞比、および(v)有毛細胞の増殖アッセイ最終数と総細胞の増殖アッセイ最終数の比に等しい増殖アッセイ最終有毛細胞比があり;(c)分化アッセイ初期細胞集団には、(i)分化アッセイ初期数の総細胞、(ii)分化アッセイ初期数の支持細胞、(iii)分化アッセイ初期数の有毛細胞、(iv)支持細胞の分化アッセイ初期数と総細胞の分化アッセイ初期数の比に等しい分化アッセイ初期支持細胞比、および(v)有毛細胞の分化アッセイ初期数と総細胞の分化アッセイ初期数の比に等しい分化アッセイ初期有毛細胞比があり;(d)分化アッセイ最終細胞集団には、(i)分化アッセイ最終数の総細胞、(ii)分化アッセイ最終数の支持細胞、(iii)分化アッセイ最終数の有毛細胞、(iv)支持細胞の分化アッセイ最終数と総細胞の分化アッセイ最終数の比に等しい分化アッセイ最終支持細胞比、および(v)有毛細胞の分化アッセイ最終数と総細胞の分化アッセイ最終数の比に等しい分化アッセイ最終有毛細胞比があり;(e)支持細胞の増殖アッセイ最終数は支持細胞の増殖アッセイ初期数よりも少なくとも10倍多く;(f)有毛細胞の分化アッセイ最終数はゼロでない数である。
支持細胞の増殖アッセイ最終数は、支持細胞の増殖アッセイ初期数より少なくとも50倍、または少なくとも100倍多くてもよい。前庭組織内の増殖した細胞集団は、親集団よりも多い数の有毛細胞を含んでもよい。増殖アッセイ最終支持細胞比は分化アッセイ初期支持細胞比より少なくとも2倍多くてもよい。分化アッセイ最終有毛細胞比は増殖アッセイ初期有毛細胞比より少なくとも2倍多くてもよい。増殖アッセイ最終有毛細胞比は増殖アッセイ初期有毛細胞比より少なくとも25%少なくてもよい。増殖アッセイ最終支持細胞比は増殖アッセイ初期支持細胞比より少なくとも10%多くてもよい。前庭組織の1つまたは複数の形態学的特徴を維持することができる。固有の形態を維持することができる。幹細胞増殖因子を生体適合性マトリックスの中に分散させることができ、生体適合性マトリックスは生体適合性ゲルでもよく生体適合性発泡体でもよい。前庭組織はインビボ前庭組織でもエクスビボ前庭組織でもよい。前記方法は、s期にある支持細胞の集団を生成することができる。前庭組織は対象内にあってもよく、前庭組織と前記組成物との接触は、組成物を対象に経鼓膜投与することによって成し遂げることができる。前庭組織を前記組成物と接触させることで、対象の聴覚機能を改善することができる。
一部の態様では、前記方法は、前庭細胞集団を、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、および(ii)Sox2活性を誘導する薬剤と接触させる工程を含む。一部の態様では、Sox2活性を誘導する薬剤はTGF-β阻害剤である。一部の態様では、TGF-β阻害剤は616452 (Repsox)である。
支持細胞を含む親細胞集団を含む前庭組織内の前庭細胞集団においてSox2活性を増加させるための方法であって、前庭組織をTGF-β阻害剤(例えば、616452)と接触させる工程を含み、それによってSox2活性が増加される、方法も本明細書において説明される。
平衡障害を有するかまたはその発症リスクのある対象を処置する方法であって、Sox2活性を増加させる少なくとも1種類の薬剤を含む組成物を、対象の前庭組織に経鼓膜投与する工程を含む、方法も本明細書において説明される。
支持細胞を含む親細胞集団を含む前庭組織内の前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織を、幹細胞増殖因子(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)、およびSox2活性を誘導する薬剤と接触させる工程を含み、それによって前庭組織において増殖した細胞集団が形成される、方法も本明細書において説明される。一部の態様では、Sox2活性を誘導する薬剤は616452/(Repsox)である。従って、様々な態様において、本開示は、支持細胞を含む親細胞集団を含む前庭組織内の前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織をWntアゴニストおよびTGF-β阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。一部の態様では、本開示は、支持細胞を含む親細胞集団を含む前庭組織内の前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織をGSK3α阻害剤およびTGF-β阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。一部の態様において、本開示は、支持細胞を含む親細胞集団を含む前庭組織内の前庭細胞集団を増殖させるための方法であって、前庭組織をGSK3β阻害剤およびTGF-β阻害剤と接触させる工程を含む、方法を提供する。
平衡障害を有するかまたはその発症リスクのある対象を処置する方法も本明細書において説明される。前記方法は、少なくとも1種類の幹細胞増殖因子を含む組成物を対象の前庭組織に経鼓膜投与する工程を含んでもよい。少なくとも1種類の幹細胞増殖因子は、幹細胞性推進剤(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)、および細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター(例えば、TGF-β阻害剤)の少なくとも1つを含んでもよい。少なくとも1種類の幹細胞増殖因子は、幹細胞性推進剤(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)と、細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター(例えば、TGF-β阻害剤)の両方を含んでもよい。
一部の態様では、本開示の方法は、前庭組織を、上皮成長因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン様成長因子1、および616452と個々に、または組み合わせて(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤と接触させることに加えて)接触させる工程をさらに含む。Myo7a+前庭細胞を発生させるための方法も本明細書において説明される。前記方法は、支持前庭細胞を、幹細胞性推進剤(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)およびTGF-β阻害剤を含む組成物と接触させ、それによって、Myo7a+前庭細胞に分化することができる支持細胞の増殖した集団を発生させる工程を含んでもよい。
特定の態様は、薬学的に許容される担体と、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、もしくはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物に関する。一部の態様では、前記組成物は内耳および/または中耳への投与に適している。場合によっては、前記組成物は正円窓膜への局所投与に適している。一部の態様では、前記組成物は、鼓室内投与または経鼓膜投与、例えば、前庭組織への鼓室内投与または経鼓膜投与に適している。
一部の態様では、(i)および(ii)は生体適合性マトリックスの中に分散している。特定の態様では、生体適合性マトリックスは生体適合性ゲルまたは生体適合性発泡体である。
一部の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤は、CHIR99021、LY2090314、AZD1080、またはGSK3阻害剤XXIIより選択される。
特定の態様では、TGF-β阻害剤は、616452 (Repsox)、ガルニセルチブ(LY2157299)、EW-719、IN-1130、EW-7203、EW-7195、SM16、R268712、GW788388、SB-431542、A83-01、およびPF-03671148より選択される。
特定の組成物は、Notchアクチベーター、HDAC阻害剤、BMP4アンタゴニスト、ノギン(BMP4を阻害する)、Sox2、ビタミンD(カルシトリオール)、ビタミンB(ニコチンアミド)、ビタミンA、ビタミンC(pVc)、Lgr4、p38/MAPK阻害、ROCK阻害、および/またはAlk4/7阻害より選択される、さらなる薬剤をさらに含む。
一部の組成物は、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、またはそれらの組み合わせをさらに含む。
一部の態様では、薬学的組成物はポロキサマーを含む。特定の態様において、ポロキサマーは、ポロキサマー188およびポロキサマー407のうちの少なくとも1つまたはそれらの混合物を含む。一部の態様では、ポロキサマーの濃度は前記組成物に対して約5wt%〜約25wt%である。特定の態様において、ポロキサマーの濃度は前記組成物に対して約10wt%〜約23wt%である。一部の態様では、ポロキサマーの濃度は前記組成物に対して約15wt%〜約20wt%である。特定の態様において、ポロキサマーの濃度は前記組成物に対して約17wt%である。
特定の組成物において、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤の濃度は、約0.01uM〜1000mM、約0.1uM〜1000mM、約1uM〜100mM、約10uM〜10mM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1000uM、約1mM〜10mM、もしくは約10mM〜100mMであるか;またはWntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤の濃度比は、その有効幹細胞性推進剤濃度に対して約0.01〜1,000,000倍、もしくはその有効幹細胞性推進剤濃度に対して約0.1〜100,000倍、もしくはその有効幹細胞性推進剤濃度に対して約1〜10,000倍、もしくはその有効幹細胞性推進剤濃度に対して約100〜5000倍、もしくはその有効幹細胞性推進剤濃度に対して約50〜2000倍、もしくはその有効幹細胞性推進剤濃度に対して約100〜1000倍、もしくはその有効幹細胞性推進剤濃度に対して約1000倍であるか;またはWntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤の濃度は、約0.01nM〜1000uM、約0.1nM〜1000uM、約1nM〜100uM、約10nM〜10uM、約1nM〜10nM、約10nM〜100nM、約100nM〜1000nM、約1uM〜10uM、もしくは約10uM〜100uMである。
一部の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤は、約1uM〜1000mM、約10uM〜100mM、約100uM〜100mM、約1mM〜10mM、または約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、もしくは10mM、あるいは約1nM〜1000uM、約10nM〜100uM、約100nM〜100uM、約1uM〜10uM、または約1uM、2uM、3uM、4uM、5uM、6uM、7uM、8uM、9uM、もしくは10uMの濃度のCHIR99021である。
一部の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤は、約0.01uM〜1000mM、約0.1uM〜10mM、約1uM〜1mM、約10uM、約20uM、約30uM、約40uM、もしくは約50uM、または約0.01nM〜1000uM、約0.1nM〜10uM、約1nM〜1uM、約1nM〜100nM、もしくは約10nMの濃度のLY2090314である。
一部の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤は、約0.1uM〜1000mM、約1uM〜1000mM、約10uM〜100mM、約100uM〜10mM、約1mM〜10mM、または約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、もしくは10mM、あるいは約1nM〜1000uM、約10nM〜1000uM、約100nM〜100uM、約1uM〜10uM、または約1uM、2uM、3uM、4uM、5uM、6uM、7uM、8uM、9uM、もしくは10uMの濃度のAZD1080である。
一部の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤は、約0.1uM〜1000mM、約1uM〜100mM、約10uM〜10mM、約100uM〜10mM、約100uM〜1mM、または約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、もしくは10mM、あるいは約0.1nM〜1000uM、約1nM〜100uM、約10nM〜10uM、約100nM〜1uM、または約0.5uMの濃度のGSK3阻害剤XXIIである。
一部の態様では、TGF-β阻害剤の濃度は、約0.01uM〜1000mM、約0.1uM〜1000mM、約1uM〜100mM、約0.1uM〜1uM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1mM、約1mM〜10mM、もしくは約100mM〜1000mM、もしくは約10mM〜100mM、もしくは約100mM〜1000mMであるか;またはTGF-β阻害剤の濃度比は、その有効TGF-β濃度に対して約0.1〜1,000,000倍、もしくはその有効TGF-β濃度に対して約1〜100,000倍、もしくはその有効TGF-β濃度に対して約10〜10,000倍、もしくはその有効TGF-β濃度に対して約100〜1000倍、もしくはその有効TGF-β濃度に対して約1000倍であるか;またはTGF-β阻害剤の濃度は、約0.01nM〜1000uM、もしくは約0.1nM〜1000uM、約1nM〜100uM、約10nM〜10uM、約1nM〜10nM、約10nM〜100nM、約100nM〜1000nM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、もしくは約100uM〜1000uMである。
一部の態様では、TGF-β阻害剤は、約1uM〜1000mM、もしくは約10uM〜1000mM、もしくは約100uM〜10mM、もしくは約2mM、または約1nM〜1000uM、約10nM〜100uM、約100nM〜10uM、もしくは約2uMの濃度の616452 (Repsox)である。
一部の態様では、BMP4アンタゴニストの濃度は、約0.01uM〜1000mM、0.1uM〜1000mM、約1uM〜100mM、約10uM〜10mM、約0.1uM〜1uM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1mM、約1mM〜10mM、約10mM〜100mM、約100mM〜1000mMであるか;またはBMP4アンタゴニストの濃度比は、その有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約0.1〜1,000,000倍、もしくはその有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約1〜100,000倍、もしくはその有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約10〜10,000倍、もしくはその有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約100〜1000倍、もしくはその有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約1000倍であるか;またはBMP4アンタゴニストの濃度は、約0.01nM〜100uM、約1nM〜100uM、約10nM〜10uM、約1nM〜10nM、約10nM〜100nM、約100nM〜1000nM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、もしくは約100uM〜1000uMである。
一部の態様では、BMP4アンタゴニストは、約1uM〜1000mM、約10uM〜100mM、約100uM〜10mM、もしくは約1mM、あるいは約1nM〜1000uM、もしくは約10nM〜100uM、約100nM〜10uM、または約1uMの濃度のDMH1である。
一部の態様では、BMP4アンタゴニストは、約1ug/ml〜10,000ug/ml、約10ug/ml〜1000ug/ml、もしくは約100ug/ml、または約1ng/ml〜10,000ng/ml、約10ng/ml〜1000ng/ml、もしくは約100ng/mlの濃度のノギンである。
一部の態様では、HDAC阻害剤の濃度は、約0.01uM〜100,000mM、約1uM〜10,000mM、約10uM〜10,000mM、約100uM〜1000mM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1000uM、約1000uM〜10mM、約10mM〜100mM、約100mM〜1000mM、もしくは約1000mM〜10,000mMであるか;またはHDAC阻害剤の濃度比は、その有効濃度に対して約0.1〜1,000,000倍、もしくはその有効濃度に対して約1〜100,000倍、もしくはその有効濃度に対して約10〜10,000倍、もしくはその有効濃度に対して約100〜1000倍、もしくはその有効濃度に対して約1000倍であるか;またはHDAC阻害剤の濃度は、約0.01nM〜100,000uM、約1nM〜10,000uM、約10nM〜10,000uM、約100nM〜1000uM、約1nM〜10nM、約10nM〜100nM、約100nM〜1000nM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1000uM、もしくは約1000uM〜10,000uMである。
一部の態様では、HDAC阻害剤は、約10uM〜100,000mM、約1mM〜10,000mM、約10mM〜10,000mM、約100mM〜10,000mM、約200mM〜2000mM、約1000mM、もしくは約600mM、または約10nM〜100,000uM、1uM〜10,000uM、約10uM〜10,000uM、約100uM〜10,000uM、約200uM〜2000uM、もしくは約1000uMの濃度のバルプロ酸である。
特定の態様では、有効幹細胞性推進剤濃度、有効TGF-β濃度、有効BMP4アンタゴニスト濃度、および/または有効濃度は、本明細書に記載のようにLgr5増殖アッセイにおいて測定される。
薬学的組成物は、前庭組織内の前庭細胞集団を増殖させるための前記組成物の使用を含む、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つまたは複数において使用することができる。薬学的組成物はまた、前庭細胞、例えば、I型前庭有毛細胞および/もしくはII型前庭有毛細胞の非存在もしくは欠如に関連する疾患を有するか、または前庭細胞、例えば、I型前庭有毛細胞および/もしくはII型前庭有毛細胞の非存在もしくは欠如に関連する疾患の発症リスクのある対象を処置するために使用することもできる。薬学的組成物はまた、前庭症状を有するかまたはその発症リスクのある対象を処置するために使用することもできる。
他の目的および特徴は一部は明らかであり、一部は下記で指摘される。
詳細な説明
定義
本願において、「または」の使用は、特に定めのない限り「および/または」を意味する。本願において使用する「含む(comprise)」という用語およびこの用語の語尾変化、例えば、「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、他の添加物、成分、整数、または工程を除外することが意図されない。「からなる」とは、「からなる」という句に続くものは何であっても含み、「からなる」という句に続くものに限定されることを意味する。従って、「からなる」という句は、列挙された要素が必要とされるか、または必須のものであり、他の要素が存在しない場合があることを示す。「から本質的になる」とは、この句の後に列挙された、あらゆる要素を含み、列挙された要素について本開示において指定された活性もしくは作用を妨害しないか、または列挙された要素について本開示において指定された活性もしくは作用に寄与しない他の要素に限定されることを意味する。従って、「から本質的になる」という句は、列挙された要素が必要とされるか、または必須のものであるが、他の要素が任意のものであり、列挙された要素の活性または作用に実質的に影響を及ぼすか、または及ぼさないかに応じて存在してもよく、存在しなくてもよいことを示す。
本願において使用する「約」という用語は同義の語句として用いられる。「約」を伴って、または伴わずに、本願において用いられる、あらゆる数字が、関連する分野の当業者によって理解される、あらゆる通常の変動をカバーすることが意図される。特定の態様では、「約」という用語は、特に定めのない限り、または文脈から明らかにされていない限り(このような数字が、あり得る値の100%を超える場合を除いて)、(指定された参照値より大きいか、または指定された参照値より小さい)いずれの方向にしても、指定された参照値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれより少ない%の範囲内にある、ある範囲の値を指す。
「投与」とは、物質を対象に導入することを指す。一部の態様では、投与は、例えば、注射による、耳介投与、耳介内投与、前庭内投与、前庭内投与、または経鼓膜投与である。一部の態様では、投与は内耳への直接投与であり、例えば、正円窓、耳嚢、または前庭階を通る注射である。一部の態様では、投与は、前庭移植片送達系を介した内耳への直接投与である。一部の態様では、前記物質は中耳に経鼓膜注射される。特定の態様では「投与されるようにする」とは、第1の成分がすでに投与された後に、(例えば、異なる時間で、かつ/または異なる行為者によって)第2の成分が投与されることを指す。態様において、本開示のWntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、およびTGF-β阻害剤は、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、およびTGF-β阻害剤を両方とも含む1種類の組成物(例えば、薬学的組成物)として対象に投与される。一部の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、およびTGF-β阻害剤は別々に、例えば、連続して対象に投与される。
「抗体」とは、免疫原結合能力を有する、免疫グロブリンポリペプチドまたはその断片を指す。
本明細書で使用する「アゴニスト」とは、標的遺伝子の発現もしくは活性、タンパク質の発現もしくは活性、または経路の発現もしくは活性を増加させる薬剤である。従って、アゴニストは、標的遺伝子またはタンパク質に対して、この生理学的作用を直接的または間接的に引き起こす何らかのやり方で、そのコグネイト受容体に結合し、これを活性化することができる。アゴニストはまた、経路成分の活性を調整することによって、例えば、経路の負の制御因子の活性を阻害することによって経路の活性を増やすこともできる。従って、「Wntアゴニスト」はWnt経路活性を増強する薬剤と定義することができ、Wnt経路活性の増強は、細胞におけるTCF/LEFを介した転写の増加によって測定することができる。従って、「Wntアゴニスト」は、任意のおよび全てのWntファミリータンパク質、細胞内β-カテニン分解阻害剤、およびTCF/LEFアクチベーターを含む、Frizzled受容体ファミリーメンバーに結合し、これを活性化する真のWntアゴニストでもよい。
「アンタゴニスト」とは、受容体に結合し、その結果、他の分子による結合を減少させるか、または無くす薬剤を指す。
「アンチセンス」とは、長さに関係なく、核酸配列のコード鎖またはmRNAに相補的な核酸配列を指す。アンチセンスRNAを個々の細胞、組織、またはオルガノイドに導入することができる。アンチセンス核酸は、改変されたバックボーン、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、または当技術分野において公知の他の改変されたバックボーンを含んでもよく、非天然のヌクレオシド間結合を含んでもよい。
本明細書において言及される「相補的核酸配列」とは、相補的ヌクレオチド塩基対で構成される別の核酸配列とハイブリダイズすることができる核酸配列である。「ハイブリダイズする」とは、適切なストリンジェンシー条件下で、相補的ヌクレオチド塩基の間で二本鎖分子を形成するように対形成する(例えば、DNAではアデニン(A)がチミン(T)と塩基対を形成し、同様に、グアニン(G)がシトシン(C)と塩基対を形成する)ことを意味する(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507を参照されたい)。
「耳介投与」とは、鼓膜を通過して対象の内耳に組成物を投与するためにカテーテルまたはウィック(wick)装置を使用する方法を指す。ウィックまたはカテーテルの挿入を容易にするために、鼓膜には、適切な大きさの注射器またはピペットを用いて穴が開けられてもよい。前記装置はまた、当業者に公知の他の任意の方法、例えば、前記装置の外科的移植を用いて挿入することもできる。特定の態様において、ウィックまたはカテーテル装置は独立型装置でもよい。独立型装置とは、前記装置が対象の耳に挿入され、次いで、前記組成物が内耳に制御可能に放出されることを意味する。他の特定の態様では、ウィックまたはカテーテル装置は、さらなる組成物の投与を可能にするポンプまたは他の装置に取り付けられてもよく、つなげられてもよい。ポンプは投与単位を送達するように自動プログラムされてもよく、対象または医療従事者によって制御されてもよい。
本明細書で使用する「生体適合性マトリックス」とは、治療剤を放出するためのヒトへの投与が許容されているポリマー担体である。生体適合性マトリックスは生体適合性ゲルでも生体適合性発泡体でもよい。
本明細書で使用する「細胞凝集物」とは、直径が40ミクロン超の、特定の細胞タイプのクラスターを形成するように増殖した、および/または基底膜に対して垂直に3つを超える細胞層が存在する形態を生じた、前庭器官にある細胞の集まりを意味するものとする。「細胞凝集物」はまた、1つまたは複数の細胞タイプが網状層、すなわち内リンパと外リンパとの間の境界を突破するように引き起こす細胞の集まりが、細胞分裂によって作り出されるプロセスも指す場合がある。
特定の細胞タイプに関連して本明細書で使用する「細胞密度」とは、代表的顕微鏡試料にある、面積あたりの細胞タイプの平均数である。細胞タイプには、支持細胞、有毛細胞、または支持細胞が含まれ得るが、これに限定されない。細胞密度は、蝸牛または前庭器官を含むが、これに限定されない、特定の器官または組織内の、特定の細胞タイプを用いて評価され得る。例えば、前庭器官における支持細胞密度は、前庭器官全体にわたって測定されたときの支持細胞の細胞密度である。典型的には、支持細胞と支持細胞は、前庭器官の横断面を見ることによって数え上げられる。典型的には、有毛細胞は、前庭器官の表面を見下ろすことによって数え上げられるが、場合によっては、代表的顕微鏡試料に記載のように横断面が用いられる場合がある。典型的には、支持細胞の細胞密度は、代表的顕微鏡試料に記載のように前庭器官のホールマウント調製物を分析し、上皮の表面に沿って、特定の距離にわたって支持細胞の数を計数することによって測定される。有毛細胞は、形態学的特徴、例えば、束または有毛細胞に特異的な染色(例えば、ミオシンVIIa、オンコモジュリン、vGlut3、Pou4f3、エスピン、結合ファロイジン(conjugated-Phalloidin)、PMCA2、Ribeye、Atoh1など)によって特定されてもよい。支持細胞は特異的な染色または抗体(例えば、Sox9-GFPトランスジェニックレポーター、抗Sox9抗体など)によって特定されてもよい。
本明細書で使用する「前庭における濃度」とは、内耳液(内リンパおよび/または外リンパ)をサンプリングすることによって測定されたときの、特定の薬剤の濃度である。特に定めのない限り、試料は、内耳における薬剤の平均濃度をほぼ表すように、かなり十分な内耳液部分を含まなければならない。例えば、試料は前庭階、および/または正円窓、および/または卵円窓から採取されてもよく、1つ1つの試料が、指定された内耳部分における前庭液で構成されるように、一連の液体試料が連続して採取されてもよい。
「相補的核酸配列」とは、相補的ヌクレオチド塩基対で構成される別の核酸配列とハイブリダイズすることができる核酸配列を指す。
特定の細胞タイプに関連して本明細書で使用する「横断面細胞密度」とは、代表的顕微鏡試料にある組織を通る横断面の面積あたりの細胞タイプの平均数である。特定の面にある細胞数を求めるために前庭器官の横断面も使用することができる。典型的には、有毛細胞の横断面細胞密度は、代表的顕微鏡試料に記載のように前庭器官のホールマウント調製物を分析し、上皮の一部に沿って選ばれた横断面において、特定の距離にわたって有毛細胞の数を計数することによって測定される。典型的には、支持細胞の横断面細胞密度は、代表的顕微鏡試料に記載のように前庭器官のホールマウント調製物を分析し、上皮の一部に沿って選ばれた横断面において、特定の距離にわたって支持細胞の数を計数することによって測定される。有毛細胞は、形態学的特徴、例えば、束または有毛細胞に特異的な染色(適切な染料には、例えば、ミオシンVIIa、vGlut3、Pou4f3、結合ファロイジン、PMCA2、Atoh1、オンコモジュリン、Sox2などが含まれる)によって特定されてもよい。支持細胞は、特異的な染色または抗体によって特定されてもよい(適切な染料および抗体には、Lgr5 mRNA、Sox9トランスジェニックレポーター系、抗Sox9抗体などの蛍光インサイチューハイブリダイゼーションが含まれる)。
「減少させる」とは、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも5%、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%減少させることを指す。
「減少させる」はまた、例えば、参照レベルと比較して、少なくとも1倍、例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、またはそれより多く減少させることも意味する。
本明細書で使用する「分化期間」とは、幹細胞増殖アッセイ後に、増殖因子(成長因子)、有効幹細胞性推進剤濃度、および有効TGF-β阻害剤濃度が除去されている期間である。場合によっては、増殖因子(成長因子)を伴わずに、γセクレターゼ阻害剤および/またはWntアゴニストが添加されてもよい。
「有効濃度」とは、幹細胞性推進剤については有効幹細胞性推進剤濃度でもよく、分化阻害剤ついては有効分化阻害濃度でもよく、TGF-β阻害剤については有効濃度でもよい。
「有効TGF-β濃度」とは、幹細胞性推進剤と組み合わせられたときの幹細胞増殖アッセイの終了時に測定されるコロニー直径を幹細胞性推進剤のみと比較して少なくとも約15%大きくするTGF-β阻害剤の最小濃度である。
本明細書で使用する「有効放出速度(mass/time)とは有効濃度(mass/volume) *30uL/1時間である。
「有効幹細胞性推進剤濃度」とは、幹細胞性推進剤無しで行われるが、他の全ての成分が等濃度で存在する幹細胞増殖アッセイにおける支持細胞の数と比較して、幹細胞増殖アッセイにおける支持細胞数の少なくとも約1.5倍の増加を誘導する幹細胞性推進剤の最小濃度である。
「無くす」とは、検出不可能なレベルまで減少させることを意味する。
「生着する」または「生着」とは、幹細胞または前駆細胞が組織の既存の細胞と接触することによってインビボで関心対象の組織に組み込まれるプロセスを指す。「上皮前駆細胞」とは、上皮細胞となる細胞系列に限定される能力を有する多能性細胞を指す。
「上皮幹細胞」とは、上皮細胞となる細胞系列を含む複数の細胞系列に拘束される(committed)能力を有する多能性細胞を指す。
「断片」とは、ポリペプチドまたは核酸分子の一部を指す。この部分は、好ましくは、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含む。断片は、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、または100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、または1000個のヌクレオチドまたはアミノ酸を含んでもよい。
「ハイブリダイズする」とは、適切なストリンジェンシー条件下で、相補的ポリヌクレオチド塩基の間で二本鎖分子を形成するように対形成する(例えば、DNAではアデニン(A)がチミン(T)と塩基対を形成し、同様に、グアニン(G)がシトシン(C)と塩基対を形成する)ことを指す(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507を参照されたい)。
「阻害剤」とは、標的遺伝子の発現もしくは活性または標的タンパク質の発現もしくは活性を減少させる薬剤を指す。「アンタゴニスト」が阻害剤になる場合があるが、さらに具体的には、受容体に結合し、その結果、他の分子による結合を減少させるか、または無くす薬剤である。
本明細書で使用する「阻害性核酸」とは、哺乳動物細胞に投与されたときに、標的遺伝子の発現を減少させる、二本鎖RNA、RNA干渉、miRNA、siRNA、shRNA、もしくはアンチセンスRNA、またはその一部、またはそのミメティックである。典型的には、核酸阻害剤は、少なくとも、標的核酸分子の一部もしくはそのオルソログ含むか、または少なくとも、標的核酸分子の相補鎖の一部を含む。典型的には、標的遺伝子の発現は10%低減するか、25%低減するか、50%低減するか、75%低減するか、さらには90〜100%低減する。
「インビトロ活性」とは、インビトロ細胞集団におけるLgr5、Sox2、またはSox9などの薬剤の発現レベルまたは活性レベルを指す。「インビトロ活性」は、例えば、レポーター動物(例えば、マウス)に由来する細胞における「インビトロ活性アッセイ」を介して測定される場合がある。例えば、Lgr5活性、Sox2活性、およびSox9活性を測定する場合、それぞれ、Lgr5レポーター動物、Sox2レポーター動物、またはSox9レポーター動物に由来する細胞を単一細胞に解離し、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメーターを用いてレポーター発現を分析する場合がある。同じ培養手順および分析手順を経た野生型(非Lgr5レポーター動物、非Sox2レポーター動物、または非Sox9レポーター動物)に由来する内耳上皮細胞を負の対照として使用することができる。典型的には、2つの細胞集団、レポーター陽性集団とレポーター陰性集団の両方が、少なくとも1つのレポーターを含む1つの変数を用いる二変数プロットに示される。Lgr5陽性細胞は、GFP陽性細胞集団をゲーティングすることによって特定される。Lgr5陽性細胞のパーセントは、GFP陰性集団と負の対照の両方に対してGFP陽性細胞集団をゲーティングすることによって測定される。Lgr5陽性細胞の数は細胞の総数にLgr5陽性細胞パーセントを掛けることによって計算される。非Lgr5-GFPマウスに由来する細胞の場合、Lgr5活性は、抗Lgr5抗体を用いて、またはLgr5遺伝子に対する定量PCRを用いて測定することができる。Sox2陽性細胞は、GFP陽性細胞集団をゲーティングすることによって特定される。Sox2陽性細胞のパーセントは、GFP陰性集団と負の対照の両方に対してGFP陽性細胞集団をゲーティングすることによって測定される。Sox2陽性細胞の数は細胞の総数にSox2陽性細胞パーセントを掛けることによって計算される。非Sox2-GFPマウスに由来する細胞の場合、Sox2活性は、抗Sox2抗体を用いて、またはSox2遺伝子に対する定量PCRを用いて測定することができる。
本明細書で使用する「インビボ活性」とは、対象におけるLgr5、Sox9、またはSox2などの薬剤の発現レベルまたは活性レベルである。「インビボ活性」は、「インビボ活性アッセイ」を介して、例えば、動物の内耳を取り出し、Lgr5、Sox9、もしくはSox2タンパク質またはLgr5、Sox9、もしくはSox2 mRNAを測定することによって測定され得る。Lgr5、Sox9、またはSox2タンパク質の産生は、前庭試料を画像化することで確かめられたときに蛍光強度を測定する目的で抗Lgr5抗体、抗Sox9抗体、または抗Sox2抗体を用いて測定することができる。この場合、蛍光強度は標的タンパク質の存在の尺度として用いられる。抗Lgr5抗体、抗Sox9抗体、または抗Sox2抗体と共にウエスタンブロットを使用することができる。この場合、処置された器官から細胞を採取して、それぞれ、Lgr5、Sox9、またはSox2タンパク質の増加を確かめることができる。定量PCRまたはRNAインサイチューハイブリダイゼーションを用いて、それぞれ、Lgr5 mRNA産生、Sox9 mRNA産生、またはSox2 mRNA産生の相対変化を測定することができる。この場合、内耳から細胞を採取してLgr5 mRNA、Sox9 mRNA、またはSox2 mRNAの変化を確かめることができる。または、Lgr5、Sox9、またはSox2の発現は、Lgr5プロモーター、Sox9プロモーター、またはSox2プロモーターによって動かされるGFPレポータートランスジェニック系を用いて測定することができる。この場合、GFP蛍光の存在または強度はフローサイトメトリー、画像化を用いて直接検出することができるか、または抗GFP抗体を用いて間接的に検出することができる。
「増加させる」とは、例えば、標準品のレベルと比較して、少なくとも1倍、例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、500倍、1000倍、またはそれより多く増加させることも意味する。
「増加させる」とは、例えば、参照のレベルと比較して、少なくとも5%、例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%、またはそれより多く増加させることを指す。
「耳介内投与」とは、組成物を直接注射することによって対象の中耳または内耳に組成物を投与することを指す。
「前庭内」投与は、鼓膜を通過して、および正円窓膜を通過して蝸牛に組成物を直接注射することを指す。
「前庭内」投与は、鼓膜を通過して、および正円窓膜を通過して前庭器官に組成物を直接注射することを指す。
「単離された」とは、天然状態で見出されるように通常、材料に付随する成分を様々な程度まで含まない材料を指す。「単離する」とは、最初の供給源または周囲にあるものからの、ある程度の分離を指す。
「Lgr5」は、Gタンパク質共役受容体49(GPR49)またはGタンパク質共役受容体67(GPR67)とも知られる、Leucine-rich repeat-containing G-protein coupled receptor 5の頭字語である。「Lgr5」は、ヒトではLgr5遺伝子によってコードされるタンパク質である。
「Lgr5活性」は、細胞集団におけるLgr5活性のレベルとして定義される。インビトロ細胞集団では、Lgr5活性はインビトロLgr5活性アッセイにおいて測定される場合がある。インビボ細胞集団では、Lgr5活性はインビボLgr5活性アッセイにおいて測定される場合がある。
「Sox2」は、ANOP2およびMCOPS3とも知られる、SRY(sex determining region Y)-box2の頭字語である。Sox2は、ヒトではSOX2遺伝子によってコードされるタンパク質である。
「Sox2活性」は、細胞集団におけるSox2活性のレベルとして定義される。インビトロ細胞集団では、Sox2活性はインビトロSox2活性アッセイにおいて測定される場合がある。インビボ細胞集団では、Sox2活性はインビボSox2活性アッセイにおいて測定される場合がある。
「Sox9」は、CMPD1、SRXY10、SRXX2、SRA1、およびCMD1とも知られる、SRY(sex determining region Y)-box9の頭字語である。Sox9は、ヒトではSOX9遺伝子によってコードされるタンパク質である。
「Sox9活性」は、細胞集団におけるSox9活性のレベルとして定義される。インビトロ細胞集団では、Sox9活性はインビトロSox9活性アッセイにおいて測定される場合がある。インビボ細胞集団では、Sox9活性はインビボSox9活性アッセイにおいて測定される場合がある。
本明細書で使用する「支持細胞」は、有毛細胞でない、前庭器官内にある上皮細胞である。
本明細書で使用する「Lgr5陽性細胞」とは、Lgr5を発現する細胞である。本明細書で使用する「Lgr5-細胞」とは、支持をしない細胞である。Lgr5陽性細胞は支持細胞である場合がある。
本明細書で使用する「Sox2陽性細胞」とは、Sox2を発現する細胞である。本明細書で使用する「Sox2-細胞」は、支持をしない細胞である。Sox2陽性細胞は支持細胞である場合がある。
本明細書で使用する「Sox9陽性細胞」とは、Sox9を発現する細胞である。本明細書で使用する「Sox9-細胞」は、支持をしない細胞である。Sox9陽性細胞は支持細胞である場合がある。
本明細書で使用する「系統追跡(Lineage Tracing)」とは、レポーターが誘導されたときに標的遺伝子を発現する、あらゆる細胞の運命追跡を可能にするマウス系統を使用することである。これは、有毛細胞または支持細胞の遺伝子(Sox2、Sox9、Lgr5、ミオシンVIIa、Pou4f3など)を含んでもよい。例えば、系統追跡は、誘導されたときに、誘導時にLgr5を発現した細胞の運命を追跡することができる、レポーターマウスと交雑したLgr5-EGFP-IRES-creERT2マウスを使用してもよい。さらなる例として、Lgr5細胞を単離して単一細胞にし、幹細胞増殖アッセイにおいて培養してコロニーを作製し、次いで、その後に分化アッセイにおいて分化させ、有毛細胞および/または支持細胞のタンパク質を染色し、有毛細胞または支持細胞の染色とのレポーター共局在を確かめてLgr5細胞の運命を確かめることによって細胞運命を分析することができる。さらに、系統追跡は、前庭外植片において、処置後の無傷の器官内での支持細胞または有毛細胞の運命を追跡するために行うことができる。例えば、Lgr5細胞運命は、レポーターマウスと交雑したLgr5-EGFP-IRES-creERT2マウスから前庭を単離し、処置前または処置中にLgr5細胞のレポーターを誘導することによって確かめることができる。次いで、有毛細胞および/または支持細胞のタンパク質を染色し、有毛細胞または支持細胞の染色とのレポーター共局在を確かめてLgr5細胞の運命を確かめることによって器官の細胞運命を分析することができる。さらに、系統追跡は、インビボで、処置後の無傷の器官内での支持細胞または有毛細胞の運命を追跡するために行うことができる。例えば、Lgr5細胞運命は、レポーターマウスと交雑したLgr5-EGFP-IRES-creERT2マウスにおいてレポーターを誘導し、動物を処置し、次いで、前庭器官を単離することによって確かめることができる。次いで、有毛細胞および/または支持細胞のタンパク質を染色し、有毛細胞または支持細胞の染色とのレポーター共局在を確かめてLgr5細胞の運命を確かめることによって器官の細胞運命を分析することができる。系統追跡は、当技術分野において標準になっているような関心対象の別のレポーターを用いて行われてもよい。
「哺乳動物」とは、ヒト、マウス、ラット、ヒツジ、サル、ヤギ、ウサギ、ハムスター、ウマ、雌ウシ(cow)、またはブタを含むが、これに限定されない任意の哺乳動物を指す。
本明細書で使用する「平均放出時間」とは、放出アッセイにおいて、薬剤の半分が担体からリン酸緩衝食塩水に放出される時間である。
本明細書で使用する「固有の形態」とは、組織構造が主に健常組織における構造を反映していることを意味する。
本明細書で使用する「非ヒト哺乳動物」とは、ヒトでない任意の哺乳動物を指す。
本明細書において関連する文脈において使用する、細胞の「数」という用語は、0個の細胞でもよく、1個の細胞でもよく、それより多い細胞でもよい。
本明細書で使用する「前庭器官」とは、半規管の卵形嚢、球形嚢、および膨大部稜を指す。
「オルガノイド」または「上皮オルガノイド」とは、器官または器官の一部に似ており、その特定の器官に関連する細胞タイプを有する細胞クラスターまたは凝集物を指す。
細胞の「集団」とは、1個より多いが、好ましくは少なくとも1X103個の細胞、少なくとも1X104個の細胞、少なくとも少なくとも1X105個の細胞、少なくとも1X106個の細胞、少なくとも1X107個の細胞、少なくとも1X108個の細胞、少なくとも1X109個の細胞、または少なくとも1X1010個の細胞である任意の数の細胞を指す。
本明細書で使用する「前駆細胞」とは、幹細胞のように特定のタイプの細胞に分化する傾向を有するが、幹細胞よりもすでに特定の細胞になっており、「標的」細胞に分化するように推進されている細胞を指す。
特定の態様では、組成物中にある任意の化合物の「純度」が具体的に定義される場合がある。例えば、特定の組成物は、限定されることないが、例えば、化合物を分離、特定、および定量するために生化学および分析化学において頻繁に用いられるカラムクロマトグラフィーの周知の形態である高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定されたときに、純度が少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の化合物を、その間にある全ての小数値を含めて含んでもよい。
「参照」とは、標準的な、または対照の(例えば、試験薬剤または試験薬剤の組み合わせで処置されていない)状態を意味する。
本明細書で使用する「放出アッセイ」とは、薬剤が生体適合性マトリックスから透析膜を通って食塩水環境に放出される速度を求める試験である。例示的な放出アッセイは、1mlのリン酸緩衝食塩水に溶解した30マイクロリットルの組成物を、適切なカットオフを持つ食塩水透析バックに入れ、37℃で透析バックを10mLのリン酸緩衝食塩水に入れることによって行われてもよい。透析膜サイズは、評価されている薬剤が膜から出るのを可能にするために薬剤サイズに基づいて選択されてもよい。低分子放出の場合、3.5〜5kDaカットオフが用いられてもよい。前記薬剤は幹細胞性推進剤、TGF-β阻害剤、または他の薬剤でもよい。組成物の放出速度は経時変化する場合があり、1時間刻みで測定される場合がある。
本明細書で使用する「代表的顕微鏡試料」は、測定されている特徴のサイズまたは数の平均が、関連する視野が全て測定された場合の特徴のサイズまたは数の平均を表すと理にかなって言うことができる、細胞培養系、摘出された組織の一部、または摘出された器官全体の内部にある十分な数の視野を表す。例えば、前庭器官上で、周波数の範囲で有毛細胞数を評価するために、ImageJソフトウェア(NIH)を用いて、前庭ホールマウントの全長と、個々の計数されるセグメントの長さを測定することができる。1200〜1400μmの4つの前庭セグメント(頂端、中間〜頂端、中間〜基底、および基底)のうちのいずれかの全体または一部にある、内側有毛細胞、外側有毛細胞、および支持細胞の総数を計数することができる。100μm視野サイズの少なくとも3つの視野が理にかなって代表的顕微鏡試料とみなされるだろう。代表的顕微鏡試料は、特定の距離あたりの細胞として測定することができる、視野内での測定を含んでもよい。代表的顕微鏡試料は、細胞間接触、前庭構造、および細胞成分(例えば、束、シナプス)などの形態を評価するのに使用することができる。
「ロゼットパターニング(Rosette Patterning)」とは、<5%の有毛細胞が他の有毛細胞に隣接しており、かつ支持細胞によって取り囲まれている、前庭上皮における特徴的な細胞配置である。
「試料」という用語は、得られた、提供された、および/または分析に供された体積または質量を指す。一部の態様では、試料は、組織試料、細胞試料、液体試料などであるか、またはそれらを含む。一部の態様では、試料は対象(例えば、ヒトもしくは動物対象)から採取される(か、または対象(例えば、ヒトもしくは動物対象)である)。一部の態様では、組織試料は、脳、毛(毛根を含む)、頬スワブ、血液、唾液、精液、筋肉であるか、もしくはそれらを含むか、または任意の内臓に由来するか、またはこれらのいずれか1つに関連する癌細胞、前癌細胞、もしくは腫瘍細胞に由来する。液体は、尿、血液、腹水、胸膜液、脊髄液などでもよいが、これに限定されない。体組織は、脳組織、皮膚組織、筋肉組織、子宮内膜組織、子宮組織、および子宮頸組織、またはこれらのいずれか1つに関連する癌細胞、前癌細胞、もしくは腫瘍細胞を含んでもよいが、これに限定されない。態様において、体組織は脳組織または脳の腫瘍もしくは癌である。当業者は、一部の態様では、「試料」が供給源(例えば、対象)から得られた点では「一次試料」であることを理解する。一部の態様では、「試料」とは、例えば、汚染する可能性がある、特定の成分を除去するために、および/または関心対象の特定の成分を分離もしくは精製するために一次試料が処理された結果である。「自己複製」とは、幹細胞が分裂して、母細胞と区別がつかない発生能力を持つ、1個(非対称分裂)または2個(対称分裂)の娘細胞を生じるプロセスを指す。自己複製は増殖と、未分化状態の維持を両方とも含む。
「siRNA」とは二本鎖RNAを指す。最適には、siRNAは、長さが18、19、20、21、22、23、または24ヌクレオチドであり、3’末端に2塩基オーバーハングを有する。これらのdsRNAを個々の細胞または培養系に導入することができる。このようなsiRNAはmRNAレベルまたはプロモーター活性をダウンレギュレートするために用いられる。
「幹細胞」とは、自己複製する能力、および複数の細胞系列へ分化する能力を有する多能性細胞を指す。
本明細書で使用する「幹細胞分化アッセイ」とは、幹細胞の分化能力を確かめるためのアッセイである。例示的な幹細胞分化アッセイでは、3〜7日齢のAtoh1-GFPマウスから、前庭器官感覚上皮を単離し、上皮を単一細胞に解離し、細胞を40umセルストレーナーに通すことによって初期細胞集団用の数の細胞を採取する。約5000個の細胞を40μlの培養支持体(例えば: マトリゲル(Corning, Growth Factor Reduced))に閉じ込め、500μlの適切な培養培地と、増殖因子(成長因子)と、試験されている薬剤が入っている24ウェルプレートのウェルの中心に入れる。適切な培養培地および増殖因子(成長因子)は、培地サプリメント(1X N2、1X B27、2mM Glutamax、10mM HEPES、1mM N-アセチルシステイン、および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン)と、増殖因子(成長因子)(50ng/ml EGF、50ng/ml bFGF、および50ng/ml IGF-1)を含むAdvanced DMEM/F12を含み、評価されている薬剤を各ウェルに添加する。細胞を37℃および5%CO2の標準的な細胞培養インキュベーターに入れて10日間培養し、培地を2日ごとに交換する。次いで、幹細胞増殖アッセイ薬剤を除去し、基本培養培地および分化を推進する分子と交換することによって、これらの細胞を培養する。適切な基本培養培地は、1X N2、1X B27、2mM Glutamax、10mM HEPES、1mM N-アセチルシステイン、および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシンを加えたAdvanced DMEM/F12であり、分化を推進する適切な分子は、10日間の3μM CHIR99021および5μM DAPTであり、培地を2日ごとに交換する。集団内にある有毛細胞の数は、GFPを対象にしたフローサイトメトリーを用いて測定される場合がある。さらに、有毛細胞分化のレベルは、適切な、かつ調節されていない参照遺伝子またはハウスキーピング遺伝子(例えば、Hprt)を用いて基準化された有毛細胞マーカー(例えば、Myo7a)発現レベルを測定するqPCRを用いて評価することができる。有毛細胞分化のレベルはまた、有毛細胞マーカー(例えば、ミオシン7a、vGlut3、エスピン、PMCA、Ribeye、結合ファロイジン、Atoh1、Pou4f3など)を対象にした免疫染色でも評価することができる。有毛細胞分化のレベルはまた、ミオシン7a、vGlut3、エスピン、PMCA、オンコモジュリン、Ribeye、Atoh1、Pou4f3を対象にしたウエスタンブロットでも評価することができる。
本明細書で使用する「幹細胞アッセイ」とは、細胞または細胞集団が幹細胞であるかどうか、または幹細胞もしくは幹細胞マーカーが豊富にあるかどうか確かめるための一連の判断基準について細胞または細胞集団を試験するアッセイである。幹細胞アッセイでは、細胞/細胞集団を、幹細胞マーカーの発現などの幹細胞特徴について試験し、さらに、任意で、自己複製能力および分化能力を含む幹細胞機能について試験する。
本明細書で使用する「幹細胞増殖因子」とは、自己複製能力および分化能力を有する細胞の集団の増加を誘導する化合物である。
本明細書で使用する「幹細胞増殖アッセイ」とは、出発細胞集団から幹細胞の生成を薬剤が誘導する能力を確かめるためのアッセイである。例示的な幹細胞増殖アッセイでは、0〜7日日齢のSox9-レポーターマウスまたはSox2-GFPマウス、例えば、B6;129S-Sox2tm2Hoch/(Jackson Lab Stock No: 017592)から、前庭器官を単離し、その器官を単一細胞に解離することによって初期細胞集団用の数の細胞を採取する。約5000個の細胞を40μlの培養支持体(例えば、マトリゲル(Corning, Growth Factor Reduced))に閉じ込め、500μlの適切な培養培地と、増殖因子(成長因子)と、試験されている薬剤が入っている24ウェルプレートのウェルの中心に入れる。適切な培養培地および増殖因子(成長因子)は、培地サプリメント(1X N2、1X B27、2mM Glutamax、10mM HEPES、1mM N-アセチルシステイン、および100U/mlペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン)と、増殖因子(成長因子)(50ng/ml EGF、50ng/ml bFGF、および50ng/ml IGF-1)を含むAdvanced DMEM/F12を含み、評価されている薬剤を各ウェルに添加する。細胞を37℃および5%CO2の標準的な細胞培養インキュベーターに入れて10日間培養し、培地を2日ごとに交換する。支持細胞の数は、インビトロSox9またはSox2遺伝子発現アッセイ(PCRに基づく方法および免疫染色を含む)において支持細胞と特定された細胞の数を計数することによって定量する。さらに、Sox9および/またはSoc2免疫染色は、一部の態様では、幹細胞数を評価および定量するのに用いられる。支持細胞である細胞の割合は、細胞集団にある支持細胞と特定された細胞の数を、細胞集団に存在する細胞の総数で割ることによって定量する。集団の幹細胞/支持細胞活性の平均は、適切な、かつ調節されていない参照遺伝子またはハウスキーピング遺伝子(例えば、Hprt)を用いて基準化された、集団のSox2またはSox9 mRNA発現レベルの平均を測定することによって定量する。集団にある有毛細胞の数は、有毛細胞マーカー(例えば、ミオシンVIIa)によって、または有毛細胞遺伝子(例えば、Pou4f3-GFP、Atoh1-nGFP)の内因性レポーターを用いて染色し、フローサイトメトリーを用いて分析することによって測定することができる。有毛細胞である細胞の割合は、細胞集団にある有毛細胞と特定された細胞の数を、細胞集団に存在する細胞の総数で割ることによって定量する。Sox9、Sox2、およびLgr5の活性はqPCRによって測定することができる。
本明細書で使用する「幹細胞マーカー」は、幹細胞において特異的に発現している遺伝子産物(例えば、タンパク質、RNAなど)と定義することができる。幹細胞マーカーの1つのタイプは、幹細胞同一性の維持を直接、かつ特異的に支持する遺伝子産物である。例にはLgr5、ならびにSox2、Sox9、およびBmi1が含まれる。さらなる幹細胞マーカーは、文献に記載のアッセイを用いて特定することができる。幹細胞同一性の維持に、ある遺伝子が必要とされるかどうか確かめるためには、機能獲得研究および機能喪失研究を使用することができる。機能獲得研究では、特定の遺伝子産物(幹細胞マーカー)の過剰発現が幹細胞同一性を維持するのに役立つだろう。機能喪失研究では、幹細胞マーカーが取り除かれると幹細胞同一性が失われるか、または幹細胞分化が誘導されるだろう。別のタイプの幹細胞マーカーは、幹細胞にしか発現していないが、幹細胞の同一性を維持するための特定の機能を必ず有するとは限らない遺伝子である。このタイプのマーカーは、選別された幹細胞の遺伝子発現シグネチャーと非幹細胞の遺伝子発現シグネチャーをマイクロアレイおよびqPCRなどのアッセイによって比較することによって特定することができる。このタイプの幹細胞マーカーは文献において見出される(例えば、Liu Q. et al., Int J Biochem Cell Biol. 2015 Mar;60:99-111. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25582750)。潜在的な幹細胞マーカーには、Ccdc121、Gdf10、Opcm1、Phexなどが含まれる。特定の細胞または細胞集団におけるLgr5、Sox2、またはSox9などの幹細胞マーカーの発現は、qPCR、免疫組織化学、ウエスタンブロット、およびRNAハイブリダイゼーションなどのアッセイを用いて測定することができる。幹細胞マーカーの発現はまた、示された幹細胞マーカーの発現を示すことができるレポーター、例えば、Lgr5-GFPまたはSox2-GFP、Sox9レポーターを発現するトランスジェニック細胞を用いて測定することもできる。次いで、フローサイトメトリー分析を用いてレポーター発現の活性を測定することができる。レポーター発現を直接視覚化するのに蛍光顕微鏡も使用することができる。さらに、幹細胞マーカーの発現は、全体的な遺伝子発現プロファイル分析のためのマイクロアレイ分析を用いて確かめられる場合がある。特定の細胞集団または精製された細胞集団の遺伝子発現プロファイルを幹細胞の遺伝子発現プロファイルと比較して、2つの細胞集団間の類似性を確かめることができる。幹細胞の機能は、コロニー形成アッセイまたはスフェア(sphere)形成アッセイ、自己複製アッセイ、および分化アッセイによって測定することができる。コロニー(またはスフェア)形成アッセイでは、幹細胞は適切な培養培地中で培養されたときには細胞培養表面(例えば、細胞培養皿)にコロニーを形成することができるか、もしくは細胞培養支持体(例えば、マトリゲル)に埋もれた状態でコロニーを形成することができるか、または懸濁液中で培養されたときにはスフェアを形成することができるはずである。コロニー/スフェア形成アッセイでは、単一幹細胞を適切な培養培地に低細胞密度で播種し、特定の期間(7〜10日)にわたって増殖させる。次いで、形成したコロニーを計数し、オリジナル細胞の幹細胞性の指標である幹細胞マーカー発現についてスコア付けする。次いで、任意で、形成したコロニーを選び、継代して、その自己複製能および分化能を試験する。自己複製アッセイでは、幹細胞は適切な培養培地中で培養されたときには、少なくとも1回(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、10回、20回など)の細胞分裂にわたって幹細胞マーカー(例えば、Lgr5)発現を維持するはずである。幹細胞分化アッセイでは、幹細胞は適切な分化培地中で培養されたときには、qPCR、免疫染色、ウエスタンブロット、RNAハイブリダイゼーション、またはフローサイトメトリーによって測定される有毛細胞マーカー発現によって特定できる有毛細胞を生じることができるはずである。
本明細書で使用する「幹細胞性推進剤」とは、自己複製能または有毛細胞に分化する能力を維持しながら、支持細胞の増殖を誘導するか、細胞においてLgr5をアップレギュレートするか、または細胞においてLgr5発現を維持する組成物である。概して、幹細胞性推進剤は出生後幹細胞の少なくとも1種類のバイオマーカーをアップレギュレートする。幹細胞性推進剤にはWntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤が含まれるが、これに限定されない。
「対象」は、ヒトおよび哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、およびウマ)を含む。多くの態様では、対象は哺乳動物、特に、霊長類、特に、ヒトである。一部の態様では、対象は、家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、雌ウシ、ブタなど;家禽類、例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウなど;ならびに飼いならされた動物、特に、ペット、例えば、イヌおよびネコである。一部の態様において(例えば、特に研究の文脈において)、対象哺乳動物は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、またはブタ、例えば、近交系ブタなどである。
前庭上皮に関連して本明細書で使用する「支持細胞」は、有毛細胞でない、前庭器官内にある上皮細胞を含む。
「統計的に有意な」とは、結果が偶然に起こった可能性は低いことを意味する。統計的有意性は、当技術分野において公知の任意の方法によって求めることができる。有意性の一般的に用いられる尺度にはp値が含まれる。p値とは、帰無仮説が真の場合に、観察された事象が起こる頻度または確率である。得られたp値が有意水準より小さければ、帰無仮説は棄却される。簡単な場合では、有意水準は0.05以下のp値と定義される。
「実質的に」または「本質的に」とは、ほぼ全て、またはほぼ完全に、例えば、ある何らかの量の95%以上を意味する。
「相乗作用」または「相乗効果」とは、別々に生じた各効果の合計よりも大きな効果;相加効果よりも大きな効果である。
本明細書で使用する「TGF-β阻害剤」とは、TGF-β I型受容体阻害剤、TGF-β R1キナーゼ阻害剤、ならびにAlk4、Alk5、Alk7、Smad2、Smad3、Smad3、およびSmad4のうちのいずれか1つまたは複数の阻害剤を含む、TGF-β活性を低減する組成物である。
「組織」とは、例えば、前庭組織、例えば、前庭器官を含む、特定の機能を一緒に果たす、同じ起源に由来する類似の細胞が集まったものである。
「経鼓膜」投与は、鼓膜を通過して中耳に組成物を直接注射することを指す。
細胞集団に関連して本明細書で使用する「処置する」とは、アウトカムを生じさせるために物質を集団に送達することを意味する。インビトロ集団の場合、前記物質は集団に直接送達されてもよい、(さらには間接的に送達されてもよい)。インビボ集団の場合、前記物質は宿主対象への投与によって送達されてもよい。
本明細書で使用する「前庭有毛細胞」はI型有毛細胞および/またはII型有毛細胞を含む。
本明細書で使用する「Wnt活性化」とはWntシグナル伝達経路の活性化である。
「薬学的に許容される塩」とは酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。
「薬学的に許容される酸付加塩」とは、生物学的に望ましくないか、または他の点で望ましくない遊離塩基の生物学的有効性および生物学的特性を保持しており、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などがあるが、これに限定されない無機酸、および酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、ショウノウ-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-二スルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、粘液酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-二スルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸(pamoic acid)、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、/トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などがあるが、これに限定されない有機酸を用いて形成された塩を指す。
「薬学的に許容される塩基付加塩」とは、生物学的に望ましくないか、または他の点で望ましくない遊離酸の生物学的有効性および生物学的特性を保持している塩を指す。これらの塩は、遊離酸への無機塩基または有機塩基の添加から調製される。無機塩基から得られる塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などが含まれるが、これに限定されない。例えば、無機塩には、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩が含まれるが、これに限定されない。有機塩基に由来する塩には、一級アミン、二級アミン、および三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環式アミンの塩、および塩基性イオン交換樹脂、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネサミン(benethamine)、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが含まれるが、これに限定されない。特定の態様において用いられる例示的な有機塩基には、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインが含まれる。
本開示の例示的な態様の説明は以下の通りである。
本開示は、Wnt経路を活性化するための、および/またはTGF-β活性を阻害するための方法および組成物に関する。
一部の局面において、本開示は、幹細胞性を誘導することによって幹細胞を制御して増殖させるための方法を提供する。一部の態様では、幹細胞の増殖は、幹細胞を、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤とTGF-β阻害剤の組み合わせと接触させることによって誘導される。
一部の局面において、本開示は、特定の組織細胞の非存在または欠如に関連する障害または疾患の発生および/または重篤度を予防する、低減する、または処置するための方法に関する。一局面では、本開示は、前庭有毛細胞、その前駆細胞、任意で、内耳神経が関与する前庭障害の発生および/または重篤度を予防する、低減する、または処置するための方法に関する。有毛細胞数の低下が原因となっている可能性のある恒久的な難聴、および/または平衡の低下につながる状態は特に関心が高い。シスプラチンおよびその類似体、アミノグリコシド系抗生物質、サリチル酸塩およびその類似体、またはループ利尿薬を含む聴覚毒性の治療薬物の望まれない副作用として生じた状態も関心が高い。特定の態様では、本開示は、前庭組織、特に、前庭支持細胞および前庭有毛細胞の成長、増殖、または再生を誘導する、促進する、または強化することに関する。
特に、本明細書において示される組成物および方法は、急性および慢性の耳疾患、めまい、ならびに平衡問題、内耳装具移植中の外傷(挿入外傷)、内耳部分の疾患によるめまい、メニエール病に関連する、および/またはメニエール病の症状としてのめまい、メニエール病に関連する、および/またはメニエール病の症状としての回転性めまい、良性発作性頭位めまい症(BPPV)、迷路炎または前庭神経炎、ならびに聴器毒性を予防および/または処置するための薬学的製剤を調製するのに有用である。
前庭支持細胞集団がインビボであってもインビトロであっても、本明細書において開示される組成物(例えば、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤を含む組成物)で処置されたときに、処置された支持細胞は、増殖能と分化能、もっと具体的には前庭有毛細胞に分化する能力を有する点で幹細胞に似た(stem-like)挙動を示す。好ましくは、前記組成物は、何世代にもわたって分裂し、結果として生じた細胞の大きな割合を有毛細胞に分化させる能力を維持することができる娘幹細胞を支持細胞が生成するように誘導および維持する。特定の態様では、増殖中の幹細胞は、Lgr5、Sox2、Sox9、Opeml、Phex、lin28、Lgr6、サイクリンD1、Msx1、Myb、Kit、Gdnf3、Zic3、Dppa3、Dppa4、Dppa5、Nanog、Esrrb、Rex1、Dnmt3a、Dnmt3b、Dnmt3l、Utf1、Tcl1、Oct4、Klf4、Pax6、Six2、Zic1、Zic2、Otx2、Bmi1、CDX2、STAT3、Smad1、Smad2、Smad2/3、Smad4、Smad5、および/またはSmad7を含んでもよい幹細胞マーカーを発現する。
一部の態様では、本開示の方法は、有毛細胞がかなり形成される前に、既存の支持細胞集団の幹細胞性(すなわち、自己複製)を維持するか、さらには一過的に増加させるのに用いられる場合がある。これらの細胞タイプのうちの1つまたは複数の増殖を確認するために、代表的顕微鏡試料の端から端までの免疫染色による形態学的分析(細胞数を含む)と系統追跡が用いられる場合がある。一部の態様では、既存の支持細胞は支持細胞を含む。細胞集団間のLgr5アップレギュレーションを確認するために、免疫染色による形態学的分析(細胞数を含む)とqPCRおよびRNAハイブリダイゼーションが用いられる場合がある。
有利なことに、本開示の方法は、遺伝子操作を用いることなく、これらの目標を成し遂げる。多くの学術研究において用いられる生殖細胞系列操作は、難聴を処置するための治療上望ましいアプローチではない。概して、この療法は、好ましくは、低分子、ペプチド、抗体、または遺伝子療法が伴わない他の非核酸分子もしくは核酸送達ベクターの投与を伴う。特定の態様では、この療法は有機低分子の投与を伴う。好ましくは、聴覚の保護または回復は、中耳に注射され、前庭器官の中に拡散する(非遺伝子)治療剤を用いることによって成し遂げられる。
前庭器官は、存在する全ての細胞タイプに大きく頼っており、これらの細胞の構成は前庭器官の機能にとって重要である。支持細胞は神経伝達物質循環および有毛細胞の栄養上の支援において重要な役割を果たしている。従って、前庭器官内のロゼットパターニングを維持することは機能にとって重要な可能性がある。基底膜の前庭メカニクスは有毛細胞変換を促進する。前庭メカニクスの感度が高いので、多量の細胞を回避することも望ましい。支持細胞の機能と正しいメカニクスは正常な聴覚に必要であるので、全体で、基底膜に沿った有毛細胞と支持細胞の正しい分布と関係を維持することは増殖後であっても聴覚に望ましい特徴である可能性が高い。
本開示の一態様では、前庭細胞集団にある有毛細胞の細胞密度は、前庭上皮に特有のロゼットパターンを維持するか、さらには確立するやり方で増幅される。
本開示の一局面によれば、有毛細胞と支持細胞の両方を含む前庭細胞集団において有毛細胞の細胞密度を増加させることができる。前庭細胞集団はインビボ集団でもよく(すなわち、対象の前庭上皮に含まれてもよく)、前庭細胞集団はインビトロ(エクスビボ)集団でもよい。集団がインビトロ集団であれば、細胞密度の増加は、処置前および処置後に採取した集団の代表的顕微鏡試料を参照することによって確かめることができる。集団がインビボ集団であれば、細胞密度の増加は、聴覚の改善に相関する有毛細胞密度の増加が起こった対象の聴覚への影響を確かめることによって間接的に確かめることができる。
一態様では、幹細胞増殖アッセイにおいて神経細胞の非存在下で配置された支持細胞はリボンシナプスを形成する。
本来の前庭器官では有毛細胞と支持細胞のパターニングは基底膜に平行する形で生じる。本開示の一態様では、前庭細胞集団における支持細胞の増殖は基底膜に平行になるように増殖する。
一態様では、初期前庭細胞集団にある支持細胞の数は、初期前庭細胞集団を本開示の組成物(例えば、有効濃度の幹細胞性推進剤、例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤と、有効濃度の、細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター、例えば、TGF-β阻害剤を含有する組成物)で処置して中間前庭細胞集団を形成することによって選択的に増幅され、中間前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は、初期前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比より大きい。増殖した前庭細胞集団は、例えば、インビボ集団、インビトロ集団、さらにはインビトロ外植片でもよい。このような1つの態様では、中間前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は、初期前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比より大きい。例えば、このような1つの態様では、中間前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は、初期前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比より1.1倍大きい。さらなる例として、このような1つの態様では、中間前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は、初期前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比より1.5倍大きい。さらなる例として、このような1つの態様では、中間前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は、初期前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比より2倍大きい。さらなる例として、このような1つの態様では、中間前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は、初期前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比より3倍大きい。前述の態様のそれぞれにおいて、本段落に記載のように本開示の組成物が前庭細胞集団を増殖させる能力は幹細胞増殖アッセイによって確かめられ得る。
一態様では、前庭細胞集団を本開示の組成物(例えば、有効濃度の幹細胞性推進剤、例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤と、有効濃度の、細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター、例えば、TGF-β阻害剤を含有する組成物)で処置することによって、中間前庭細胞集団を形成するように前庭細胞集団にある幹細胞の数は増幅され、中間前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度は、初期前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度より多い。処置された前庭細胞集団は、例えば、インビボ集団、インビトロ集団、さらにはインビトロ外植片でもよい。このような1つの態様では、処置された前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度は、初期前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度より少なくとも1.1倍多い。例えば、このような1つの態様では、処置された前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度は、初期前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度より少なくとも1.25倍多い。例えば、このような1つの態様では、処置された前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度は、初期前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度より少なくとも1.5倍多い。さらなる例として、このような1つの態様では、処置された前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度は、初期前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度より少なくとも2倍多い。さらなる例として、このような1つの態様では、処置された前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度は、初期前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度より少なくとも3倍多い。インビトロ前庭細胞集団はインビボ集団よりも有意に多く増殖する可能性がある。例えば、特定の態様では、増殖したインビトロ幹細胞集団にある幹細胞の細胞密度は、初期前庭細胞集団にある幹細胞の細胞密度より少なくとも4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、75倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、さらには3000倍多くてもよい。前述の態様のそれぞれにおいて、本段落に記載のように本開示の組成物が前庭細胞集団を増殖させる能力は幹細胞増殖アッセイによって確かめられ得る。
本開示の一局面によれば、前庭支持細胞集団は、前記集団のSox9活性を増加させるために、本開示の組成物(例えば、有効濃度の幹細胞性推進剤、例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤と、有効濃度の、細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター、例えば、TGF-β阻害剤を含有する組成物)によって処置される。例えば、一態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビトロ集団のSox9活性を少なくとも1.2倍増加させる能力、および前庭支持細胞のインビトロ集団のSox9活性を維持する能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビトロ集団のSox9活性を1.5倍増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビトロ集団のSox9活性を2倍、3倍、5倍、10倍、100倍、500倍、1000倍、2000倍、さらには3000倍増加させる能力がある。Sox9活性の増加はインビボ集団についても観察される可能性があるが、観察される増加は、ある程度少なめになるかもしれない。例えば、一態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のSox9活性を少なくとも5%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のSox9活性を少なくとも10%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のSox9活性を少なくとも20%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のSox9活性を少なくとも30%増加させる能力がある。前述の態様のそれぞれにおいて、このようなSox9活性増加についての前記組成物の能力は、例えば、インビトロ幹細胞/支持細胞活性アッセイにおいて証明されてもよく、インビボ集団では、例えば、器官を単離し、免疫染色、Sox9、Sox2、および/またはLgr5の内因性蛍光タンパク質発現、ならびにSox9、Sox2、および/またはLgr5を対象にしたqPCRを用いた形態学的分析を行うことによって測定されるようにインビボ幹細胞/支持細胞活性アッセイにおいて証明されてもよい。
本開示の一局面によれば、前庭支持細胞集団は、前記集団のSox2活性を増加させるために、本開示の組成物(例えば、有効濃度の幹細胞性推進剤、例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤と、有効濃度の、細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター、例えば、TGF-β阻害剤を含有する組成物)によって処置される。例えば、一態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビトロ集団のSox2活性を少なくとも1.2倍増加させる能力、および前庭支持細胞のインビトロ集団のSox2活性を維持する能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビトロ集団のSox2活性を1.5倍増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビトロ集団のSox2活性を2倍、3倍、5倍、10倍、100倍、500倍、1000倍、2000倍、さらには3000倍増加させる能力がある。Sox2活性の増加はインビボ集団についても観察される可能性があるが、観察される増加は、ある程度少なめになるかもしれない。例えば、一態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のSox2活性を少なくとも5%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のSox2活性を少なくとも10%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のSox2活性を少なくとも20%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のSox2活性を少なくとも30%増加させる能力がある。前述の態様のそれぞれにおいて、このようなSox2活性増加についての前記組成物の能力は、例えば、インビトロ幹細胞/支持細胞活性アッセイにおいて証明されてもよく、インビボ集団では、例えば、器官を単離し、免疫染色、Sox9、Sox2、および/またはLgr5の内因性蛍光タンパク質発現、ならびにSox9、Sox2、および/またはLgr5を対象にしたqPCRを用いた形態学的分析を行うことによって測定されるようにインビボ幹細胞/支持細胞活性アッセイにおいて証明されてもよい。
本開示の一局面によれば、前庭支持細胞集団は、前記集団のLgr5活性を増加させるために、本開示の組成物(例えば、有効濃度の幹細胞性推進剤、例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤と、有効濃度の、細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター、例えば、TGF-β阻害剤を含有する組成物)によって処置される。例えば、一態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビトロ集団のLgr5活性を少なくとも1.2倍増加させる能力、および前庭支持細胞のインビトロ集団のLgr5活性を維持する能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビトロ集団のLgr5活性を1.5倍増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビトロ集団のLgr5活性を2倍、3倍、5倍、10倍、100倍、500倍、1000倍、2000倍、さらには3000倍増加させる能力がある。Lgr5活性の増加はインビボ集団についても観察される可能性があるが、観察される増加は、ある程度少なめになるかもしれない。例えば、一態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のLgr5活性を少なくとも5%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のLgr5活性を少なくとも10%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のLgr5活性を少なくとも20%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記組成物には、前庭支持細胞のインビボ集団のLgr5活性を少なくとも30%増加させる能力がある。前述の態様のそれぞれにおいて、このようなLgr5活性増加についての前記組成物の能力は、例えば、インビトロ幹細胞/支持細胞活性アッセイにおいて証明されてもよく、インビボ集団では、例えば、器官を単離し、免疫染色、Sox9、Sox2、および/またはLgr5の内因性蛍光タンパク質発現、ならびにSox9、Sox2、および/またはLgr5を対象にしたqPCRを用いた形態学的分析を行うことによって測定されるようにインビボ幹細胞/支持細胞活性アッセイにおいて証明されてもよい。
集団のSox9活性、Sox2活性、またはLgr5活性を増加させることに加えて、(インビボでもインビトロでも)支持細胞を含有する前庭細胞集団を式Iの化合物で処置することによって、前庭細胞集団にある支持細胞の数が増加する可能性がある。概して、いくつかの機構のうちの1つまたは複数を介して、初期細胞集団と比べて支持細胞の幹細胞/前駆細胞の細胞密度が増幅される可能性がある。例えば、このような1つの態様では、幹細胞の性質が増加した(すなわち、有毛細胞に分化する能力が高い)、新たに発生した支持細胞が発生する可能性がある。さらなる例として、このような1つの態様では、細胞分裂によって娘支持細胞が発生しないが、既存の支持細胞は有毛細胞に分化するように誘導される。さらなる例として、このような1つの態様では、細胞分裂によって娘細胞が発生しないが、支持細胞が高レベルのSox9活性まで活性化され、次いで、活性化された支持細胞は有毛細胞に分化することができる。この機構に関係なく、一態様では、本開示の組成物には、前庭支持細胞のインビトロで単離された細胞集団において支持細胞の細胞密度を少なくとも5倍増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記化合物には、前庭支持細胞のインビトロ集団において支持細胞の細胞密度を少なくとも10倍増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記化合物には、前庭支持細胞のインビトロ集団において支持細胞の細胞密度を少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、さらには少なくとも2000倍増加させる能力がある。支持細胞の細胞密度の増加はまたインビボ集団についても観察される可能性があるが、観察される増加は、ある程度少なめになるかもしれない。例えば、一態様では、前記化合物には、前庭支持細胞のインビボ集団において支持細胞の細胞密度を少なくとも5%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記化合物には、前庭支持細胞のインビボ集団において支持細胞の細胞密度を少なくとも10%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記化合物には、前庭支持細胞のインビボ集団において支持細胞の細胞密度を少なくとも20%増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記化合物には、前庭支持細胞のインビボ集団において支持細胞の細胞密度を少なくとも30%増加させる能力がある。インビトロ集団における支持細胞のこのような増加について、前記化合物の能力は、例えば、幹細胞増殖アッセイにおいて証明されてもよく、適切なインビボアッセイにおいて証明されてもよい。一態様では、本開示の化合物には、固有の形態を維持しながら、前記タンパク質が存在しないか、または前記タンパク質の検出レベルが低い細胞においてLgr5発現を誘導することによって前庭にある支持細胞の数を増加させる能力がある。一態様では、本開示の化合物には、固有の形態を維持しながら、かつ細胞凝集物を生じることなく、前記タンパク質が存在しないか、または前記タンパク質の検出レベルが低い細胞においてSox9発現を誘導することによって前庭にある支持細胞の数を増加させる能力がある。
支持細胞の細胞密度を増加させることに加えて、一態様では、本開示の方法には、前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比を増加させる能力がある。一態様では、初期前庭細胞集団にある支持細胞の数は、初期前庭細胞集団を本開示の化合物で処置して、増殖した細胞集団を形成することによって選択的に増幅され、増殖した前庭細胞集団にある支持細胞の数は少なくとも有毛細胞の数に等しい。増殖した前庭細胞集団は、例えば、インビボ集団でもよく、インビトロ集団でもよく、さらにはインビトロ外植片でもよい。このような1つの態様では、増殖した前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は少なくとも1:1である。例えば、このような1つの態様において、増殖した前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は少なくとも1.5:1である。さらなる例として、このような1つの態様において、増殖した前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は少なくとも2:1である。さらなる例として、このような1つの態様において、増殖した前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は少なくとも3:1である。さらなる例として、このような1つの態様において、増殖した前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は少なくとも4:1である。さらなる例として、このような1つの態様において、増殖した前庭細胞集団にある支持細胞と有毛細胞の比は少なくとも5:1である。前述の態様のそれぞれにおいて、本開示の組成物が本段落に記載のように前庭細胞集団を増殖させる能力は幹細胞増殖アッセイによって確かめられ得る。
特定の態様では、前記方法は、感覚上皮上にある総細胞に対する支持細胞の割合を少なくとも10%、20%、50%、100%、250%、500%、1000%、または5000%増加させる。
特定の態様では、前記方法は、支持細胞が感覚上皮、例えば、前庭器官上にある細胞の少なくとも10%、20%、30%、50%、70%、または85%になるまで支持細胞を増加させる。
概して、前庭器官における支持細胞の過剰増殖は回避されることが好ましい。一態様では、本開示の方法には、本来の前庭器官の表面を飛び出した新たな細胞の突起物、例えば、細胞凝集物を作り出さすことなく前庭細胞集団を増殖させる能力がある。一部の態様では、本開示の組成物(例えば、有効濃度の幹細胞性推進剤、例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤と、有効濃度の、細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター、例えば、TGF-β阻害剤を含有する組成物)を正円窓膜に配置して30日後に前庭組織は固有の形態をとる。一部の態様では、組成物を正円窓膜に配置して30日後に前庭組織は固有の形態をとり、細胞凝集物を欠いている。一部の態様では、組成物を正円窓膜に配置して30日後に前庭組織は固有の形態をとり、前庭器官にある支持細胞の少なくとも10%、20%、30%、50%、75%、90%、95%、98%、さらには少なくとも99%が細胞凝集物の一部でない。
概して支持細胞集団、具体的には支持細胞を前記のように増殖させることに加えて、本開示の方法には、有毛細胞に分化する能力を娘細胞において維持する能力がある。インビボ集団では、この能力の維持は対象の聴覚の改善によって間接的に観察される可能性がある。インビトロ集団では、この能力の維持は、出発集団に対する有毛細胞数の増加によって直接的に観察される可能性があるか、あるいはLGR5活性、SOX2活性、SOX9活性、または本明細書の他の箇所で特定される他の幹細胞マーカーの1つもしくは複数を測定することによって間接的に観察される可能性がある。
一態様では、前記方法が、概して前庭支持細胞集団、特に支持細胞集団の幹細胞性を増加させる能力は、Lgr5、Sox2、またはSox9のインビトロ活性アッセイによって確かめられたときには、単離された支持細胞のインビトロ集団のLgr5活性、Sox2活性、またはSox9活性の増加と相関付けられる可能性がある。以前に述べたように、このような1つの態様では、前記化合物には、初期細胞集団にある細胞のそれぞれのLgr5活性、Sox2活性、またはSox9活性と比べて、中間細胞集団にある幹細胞のLgr5活性、Sox2活性、またはSox9活性を平均して5倍増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記方法には、初期細胞集団にある細胞のLgr5活性、Sox2活性、またはSox9活性と比べて、中間細胞集団にある幹細胞遺伝子のLgr5活性、Sox2活性、またはSox9活性を10倍増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記方法には、初期細胞集団にある細胞のLgr5活性、Sox2活性、またはSox9活性と比べて、中間細胞集団にある幹細胞のLgr5活性、Sox2活性、またはSox9活性を100倍増加させる能力がある。さらなる例として、このような1つの態様では、前記方法には、初期細胞集団にある細胞のLgr5活性、Sox2活性、またはSox9活性と比べて、中間細胞集団にある幹細胞のLgr5活性、Sox2活性、またはSox9活性を1000倍増加させる能力がある。前述の態様のそれぞれにおいて、細胞集団にある幹細胞の活性増加は、インビトロでは、標的遺伝子を対象にした免疫染色もしくは内因性蛍光タンパク質発現と、画像化分析もしくはフローサイトメトリーによる相対強度の分析によって、または標的幹細胞遺伝子を対象にしたqPCRを用いて確かめられる可能性がある。任意で、結果として生じた幹細胞集団の同一性は、幹細胞マーカー発現アッセイ、コロニー形成アッセイ、自己複製アッセイを含む幹細胞アッセイ、および幹細胞アッセイにおいて規定されるような分化アッセイによってさらに確かめられる可能性がある。
一部の態様では、成体哺乳動物に適用された前記方法は、S期にある成体哺乳動物支持細胞の集団を生成する。
一態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤と、細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター(例えば、TGF-β阻害剤)がマウスの正円窓に適用された後に、前庭器官にある細胞集団のインビボ幹細胞/支持細胞活性は、前記組成物に曝露されていない集団のベースラインと比べて1.3x、1.5x、20xまで増加する。一部の態様では、組成物がマウスの正円窓に適用された後に、前庭器官にある細胞の平均インビボ幹細胞/支持細胞活性は、前記組成物に曝露されていない集団のベースラインと比べて1.3x、1.5x、20xまで増加する。
特定の態様では、前記方法は、支持細胞が数で支持細胞集団の少なくとも10%、7.5%、10%、100%までになるまで支持細胞を増加させる。
態様において、幹細胞の増殖は、細胞周期または細胞可塑性を調節する経路のモジュレーター、例えば、TGF-β阻害剤を添加することによって強化される。
一部の態様では、幹細胞性推進剤(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)はSox9+幹細胞の増殖を推進するのに用いられる場合がある。場合によっては、幹細胞性推進剤(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)はまたSox9+細胞から有毛細胞への分化も誘導する可能性がある。増殖と分化を両方とも推進する可能性がある幹細胞性推進剤の例には、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤が含まれる。
一部の態様では、幹細胞性推進剤(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)はSox2+幹細胞の増殖を推進するのに用いられる場合がある。場合によっては、幹細胞性推進剤(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)はSox2+細胞から有毛細胞への分化も誘導する可能性がある。増殖と分化を両方とも推進する可能性がある幹細胞性推進剤の例には、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤が含まれる。
一部の態様では、幹細胞性推進剤(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)はLgr5+幹細胞の増殖を推進するのに用いられる場合がある。場合によっては、幹細胞性推進剤(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤)はLgr5+細胞から有毛細胞への分化も誘導する可能性がある。増殖と分化を両方とも推進する可能性がある幹細胞性推進剤の例には、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤が含まれる。
特定の態様では、組成物には、前庭器官にある支持細胞のパーセントを5%、10%、25%、50%、または80%増加させる能力がある。特定の態様では、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤の組み合わせが用いられ、このような組み合わせには、前庭器官にあるSox9+細胞のパーセントを5%、10%、25%、50%、または80%増加させる能力がある。
幹細胞性推進剤
本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するためのWntアゴニストのクラスには、表1のA列に列挙したWntアゴニストが含まれるが、これに限定されない。本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するための具体的なWntアゴニストには、表1のB列に列挙したWntアゴニストが含まれるが、これに限定されない。表1B列に列挙した薬剤は全て、その誘導体または薬学的に許容される塩を含むことが理解される。表1A列に列挙したクラスは全て、そのクラスを含む薬剤と、その誘導体または薬学的に許容される塩の両方を含むことが理解される。
本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するためのGSK3α阻害剤のクラスには、表6のA列に列挙したGSK3α阻害剤が含まれるが、これに限定されない。本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するための具体的なGSK3α阻害剤には、表6のB列に列挙したGSK3α阻害剤が含まれるが、これに限定されない。表6B列に列挙した薬剤は全て、その誘導体または薬学的に許容される塩を含むことが理解される。表6A列に列挙したクラスは全て、そのクラスを含む薬剤と、その誘導体または薬学的に許容される塩の両方を含むことが理解される。
本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するためのGSK3β阻害剤のクラスには、表2のA列に列挙したGSK3β阻害剤が含まれるが、これに限定されない。本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するための具体的なGSK3β阻害剤には、表2のB列に列挙したGSK3β阻害剤が含まれるが、これに限定されない。表2B列に列挙した薬剤は全て、その誘導体または薬学的に許容される塩を含むことが理解される。表2A列に列挙したクラスは全て、そのクラスを含む薬剤と、その誘導体または薬学的に許容される塩の両方を含むことが理解される。
本開示の範囲内にある例示的なWntアゴニストを表1に示す。
Wntアゴニストには、耳細胞株または耳組織から入手した初代細胞が、薬学的に許容される濃度のWntアゴニストに曝露され、活性がウェスタンブロッティングまたは文献にある他の標準的な方法によって評価されたときに、Wnt活性を5%、10%、20%、30%、または50%を超えて増加させる薬剤も含まれるが、これに限定されない。特定の態様では、前記組成物は、本段落に記載の条件を用いてWnt活性を5%、10%、20%、30%、または50%を超えて増加させる、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤とTGF-β阻害剤の組み合わせを含む。「非常に強力なWntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤」とは、耳細胞株または耳組織から入手した初代細胞が薬学的に許容される濃度のWntアゴニストに曝露され、活性がウェスタンブロッティングまたは文献にある他の標準的な方法によって評価されたときに、Wnt活性を50%を超えて増加させるものである。
本開示の範囲内にある例示的なGSK3β阻害剤を表2に示す。
(表2)GSK3β阻害剤
J. Med. Chem. 2016, 59, 9018-9034
本開示の範囲内にある例示的なNotchアゴニストを表3に示す。
本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するためのNotchアゴニストのクラスには、表3のA列に列挙したNotchアゴニストが含まれるが、これに限定されない。本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するための具体的なNotchアゴニストには、表3のB列に列挙したNotchアゴニストが含まれるが、これに限定されない。表3B列に列挙した薬剤は全て、その誘導体または薬学的に許容される塩を含むことが理解される。表3A列に列挙したクラスは全て、そのクラスを含む薬剤と、その誘導体または薬学的に許容される塩の両方を含むことが理解される。
本開示の範囲内にある例示的なHDAC阻害剤を表4に示す。
本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するためのHDAC阻害剤のクラスには、表4のA列に列挙したHDAC阻害剤が含まれるが、これに限定されない。本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するための具体的なHDAC阻害剤には、表4のB列に列挙したHDAC阻害剤が含まれるが、これに限定されない。表4B列に列挙した薬剤は全て、その誘導体または薬学的に許容される塩を含むことが理解される。表4、A列に列挙したクラスは全て、そのクラスを含む薬剤と、その誘導体または薬学的に許容される塩の両方を含むことが理解される。
特定の態様では、1種類または複数種のさらなる薬剤はTGF-β I型受容体阻害剤を含む。例示的なTGF-β阻害剤を表5に示す。TGF-β I型受容体阻害剤には、Calbiochem(San Diego, Calif.)から購入することができる、2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5ナフチリジン、[3-(ピリジン-2-イル)-4-(4-キノイル)]-1H-ピラゾール、および3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(4-キノリル)-1-フェニルチオカルバモイル-1H-ピラゾールが含まれるが、これに限定されない。他の低分子阻害剤には、特に、SB-431542(例えば、Halder et al., 2005; Neoplasia 7(5):509-521を参照されたい)、SM16(例えば、Fu, K et al., 2008; Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology 28(4):665を参照されたい)、および SB-505124 (例えば、Dacosta Byfield, S., et al., 2004; Molecular Pharmacology 65:744-52を参照されたい)が含まれるが、これに限定されない。
特定の態様では、本開示のTGF-β阻害剤は、ガルニセルチブ(LY2157299){4-(2-(6-メチルピリジン-2-イル)-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-3-イル)キノリン-6-カルボキサミド}、EW-7197{N-(2-フルオロフェニル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-メタンアミン}、IN-1130{3-[[5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-(6-キノキサリニル)-1H-イミダゾール-2-イル]メチル]-ベンズアミド}、EW-7203{3-[[[4-(6-メチル-2-ピリジニル)-5-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-2-チアゾリル]アミノ]メチル]-ベンゾニトリル}、EW-7195{3-[[[5-(6-メチル-2-ピリジニル)-4-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル-1H-イミダゾール-2-イル]メチル]アミノ]-ベンゾニトリル}、Repsox{2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン}、SM16{4-(5-(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-4-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)ビシクロ[2,2,2]オクタン-1-カルボキサミド}、R268712{4-[2-フルオロ-5-[3-(6-メチル-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-4-イル]フェニル]-1H-ピラゾール-1-エタノール}、GW788388{4-(4-(3-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-2-イル)-N-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ベンズアミド}、およびPF-03671148{3-メチル-6-[1-(6-メチル-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-イル]-4(3H)-キナゾリノン}、SB-431542、A-83-01{3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(4-キノリル)-1-フェニルチオカルバモイル-1H-ピラゾール}、A77-01{4-[5-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]キノロン}、SB-525334{6-(2-tert-ブチル-5-(6-メチル-ピリジン-2-イル)-1H-イミダゾール-4-イル)-キノキサリン}、Cmpd16i{[[4-(6-ベンゾチアゾリル)-5-(4-メチル-2-チアゾリル)-1H-イミダゾール-2-イル]メチル]-2-メチルプロピルエステルカルバミン酸}、Cmpd12b{2-N-[(3-フルオロフェニル)メチル]-4-(6-メチル-2-ピリジニル)-5-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イルチアゾールアミン}、Cmpd6d{5-[[2-シクロプロピル-6-(4-フルオロフェニル)イミダゾ[2,1-b]-1,3,4-チアジアゾール-5-イル]メチレン]-4-オキソ-2-チオキソ-3-チアゾリジン酢酸}、およびピルフェニドン{5-メチル-1-フェニル-2(1H)-ピリジノン}より選択される。
特定の態様では、TGF-β阻害剤は、ガルニセルチブ(LY2157299)、EW-719、IN-1130、EW-7203、EW-7195、Repsox、SM16、R268712、GW788388、SB-431542、A-83-01、およびPF-03671148より選択される。
特定の態様では、TGF-β阻害剤は、ガルニセルチブ(LY2157299)、EW-7197、IN-1130、EW-7203、EW-7195、SB-431542、A-83-01、およびRepsoxより選択される。
本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するためのTGF-β阻害剤のクラスには、表5のA列に列挙したTGF-β阻害剤が含まれるが、これに限定されない。本明細書において開示される組成物および方法の様々な態様において使用するための具体的なTGF-β阻害剤には、表5のB列に列挙したTGF-β阻害剤が含まれるが、これに限定されない。表5のB列に列挙した薬剤は全て、その誘導体または薬学的に許容される塩を含むことが理解される。表5のA列に列挙したクラスは全て、そのクラスを含む薬剤と、その誘導体または薬学的に許容される塩の両方を含むことが理解される。
本開示の範囲内にある例示的なGSK3α阻害剤を表6に示す。
(表6)GSK3α阻害剤
ACS Chem. Biol. 2016, 11, 1952-1963
PLoS One (2016), 11(4), e0153075
さらなる治療剤
特定の態様では、投与する工程は、(例えば、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、もしくはGSK3β阻害剤と、TGF-β阻害剤に加えて)1種類もしくは複数種のさらなる薬剤を幹細胞集団に投与する工程、または当該さらなる薬剤が幹細胞集団に投与されるようにする工程を含む。
特定の態様では、1種類もしくは複数種のさらなる薬剤はTGF-β I型受容体阻害剤を含む。TGF-β I型受容体阻害剤には、Calbiochem(San Diego, Calif.)から購入することができる。2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5ナフチリジン、[3-(ピリジン-2-イル)-4-(4-キノイル)]-1H-ピラゾール、および3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(4-キノリル)-1-フェニルチオカルバモイル-1H-ピラゾールが含まれるが、これに限定されない。他の低分子阻害剤には、特に、SB-431542(例えば、Halder et al.,2005; Neoplasia 7(5):509-521を参照されたい)、SM16(例えば、Fu, K et al., 2008; Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology 28(4):665を参照されたい)、およびSB-505124(例えば、Dacosta Byfield, S., et al., 2004; Molecular Pharmacology 65:744-52を参照されたい)が含まれるが、これに限定されない。
一態様では、ALK5阻害剤2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5ナフチリジンが本明細書に記載の方法と共に用いられる。この阻害剤は本明細書中ではALK5阻害剤IIとも呼ばれ、Calbiochem(カタログ番号616452; San Diego、Calif.)から市販されている。一態様では、この阻害剤は、Sigmaから市販されているSB-431542、ALK-4,-5,-7阻害剤(製品番号54317; Saint Louis, Mo.)である。SB-431542はまた、以下の化学名:4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-(2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-2-イル]-ベンズアミド、4-[4-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-5-(2-ピリジル)-1H-イミダゾール-2-イル]-ベンズアミド、または4-(5-ベンゾール[1,3]ジオキソール-5-イル-4-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミド水和物とも呼ばれる。
低分子TGF-βシグナル伝達阻害剤は分子の基本スキャフォールドに基づいて分類することができる。例えば、TGF-βシグナル伝達阻害剤は、ジヒドロピリピラゾールベースのスキャフォールド、イミダゾールベースのスキャフォールド、ピラゾロピリジンベースのスキャフォールド、ピラゾールベースのスキャフォールド、イミダゾピリジンベースのスキャフォールド、トリアゾールベースのスキャフォールド、ピリドピリミジンベースのスキャフォールド、ピロロピラゾールベースのスキャフォールド、イソチアゾールベースのスキャフォールド、およびオキサゾールベースのスキャフォールドに基づいてもよい。
TGF-βシグナル伝達阻害剤は、例えば、
に記載されている。それぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
TGF-βシグナル伝達のオリゴヌクレオチドベースのモジュレーター、例えば、siRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドは、米国特許第5,731,424号;米国特許第6,124,449号;米国特許出願公開第2008/0015161号;同第2006/0229266号;同第2004/0006030号;同第2005/0227936号、および同第2005/0287128号に記載されている。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。他のアンチセンス核酸およびsiRNAは、当業者に公知の方法によって入手することができる。
例示的なTGF-βシグナル伝達阻害剤には、AP-12009(TGF-β受容体II型アンチセンスオリゴヌクレオチド)、レルデリムマブ(Lerdelimumab)(CAT152、TGF-β受容体II型に対する抗体)、GC-1008(ヒトTGF-βの全アイソフォームに対する抗体)、ID11(マウスTGF-βの全アイソフォームに対する抗体)、可溶性TGF-β、可溶性TGF-β受容体II型、ジヒドロピロロイミダゾール類似体(例えば、SKF-104365)、トリアリールイミダゾール類似体(例えば、SB-202620(4-(4-(4-フルオロフェニル)-5-(ピリジン-4-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)安息香酸)およびSB-203580(4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール))、RL-0061425、1,5-ナフチリジンアミノチアゾールおよびピラゾール誘導体(例えば、4-(6-メチル-ピリジン-2-イル)-5-(1,5-ナフチリジン-2-イル)-1,3-チアゾール-2-アミンおよび2-[3-(6-メチル-ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル]-1,5-ナフチリジン)、SB-431542(4-(5-ベンゾール[1,3]ジオキソール-5-イル-4-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミド)、GW788388(4-(4-(3-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ピリジン-2-イル)-N-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ベンズアミド)、A-83-01(3-(6-メチル-2-ピリジニル)-N-フェニル-4-(4-キノリニル)-1H-ピラゾール-1-カルボチオアミド)、デコリン、Lefty1、Lefty2、フォリスタチン、ノギン、コーディン、ケルベロス(Cerberus)、グレムリン(Gremlin)、インヒビン、BIO(6-ブロモ-インジルビン-3'-オキシム)、Smadタンパク質(例えば、Smad2、Smad3)、ならびにシスタチンCが含まれるが、これに限定されない。
TGF-βシグナル伝達阻害剤はまた、TGF-β受容体I型を阻害する分子も含む。TGF-β受容体I型阻害剤は、
に記載されている。これらの全ての内容は、その全体が本明細書に組み入れられる。
特定の態様では、幹細胞集団はインビボ対象の幹細胞集団であり、前記方法は難聴および/または前庭機能不全の処置である(例えば、幹細胞の増殖した集団から内耳有毛細胞が発生すると難聴が部分的もしくは完全に回復する、および/または前庭機能が改善する)。特定の態様では、幹細胞集団はインビボ対象の幹細胞集団であり、前記方法は、(例えば、難聴および/または前庭機能不全に関連しない疾患および/または障害を処置するために)対象にとって既知の安全な最大薬物投与量(例えば、この方法に起因する内耳有毛細胞の発生の非存在下で送達される場合の既知の安全な最大投与量)よりも高い濃度の薬物を(例えば、この薬物の用量制限聴器毒性が低減したか、または無くなったために)対象に送達する工程をさらに含む。
特定の態様では、前記方法は、発生した内耳有毛細胞を用いてハイスループットスクリーニングを行う工程をさらに含む。特定の態様では、前記方法は、発生した内耳有毛細胞を用いて、内耳有毛細胞に対する毒性があるかどうか分子をスクリーニングする工程を含む。特定の態様では、前記方法は、発生した内耳有毛細胞を用いて、内耳有毛細胞の生存を改善する能力があるかどうか分子をスクリーニングする工程(例えば、前記分子に曝露された内耳有毛細胞の生存を改善する能力があるかどうか分子をスクリーニングする工程)を含む。
一部の局面において、本開示は、幹細胞の増殖した集団を生成する方法であって、幹細胞集団(例えば、インビトロ、エクスビボ、もしくはインビボ試料/対象の幹細胞集団)に(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、もしくはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤の両方を投与するか、またはそれらが当該幹細胞集団に投与されるようにし、それによって、幹細胞集団内の幹細胞を増殖させ、幹細胞の増殖した集団を得る工程を含む、方法に関する。特定の態様では、幹細胞集団は支持細胞を含む。特定の態様では、幹細胞集団は出生後幹細胞を含む。特定の態様では、幹細胞集団は上皮幹細胞を含む。特定の態様では、幹細胞は前駆細胞を含む。
特定の態様では、投与する工程は、耳に1回または複数回注射することによって(例えば、中耳および/または内耳に経鼓膜注射することによって)行われる。
特定の態様では、投与する工程は、合成分子を含む、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、もしくはGSK3β阻害剤を幹細胞集団に投与する工程、または、合成分子を含む、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、もしくはGSK3β阻害剤が幹細胞集団に投与されるようにする工程を含む。
特定の態様では、投与する工程は、耳に1回または複数回注射することによって(例えば、中耳および/または内耳に経鼓膜注射することによって)行われる。
特定の態様では、投与する工程は、notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を拍動(pulsatile)投与する工程、ならびにGSK3β阻害剤および/またはWntアゴニストを持続的に投与する工程を含む。
特定の態様では、投与する工程は、notchアゴニストおよび/またはHDAC阻害剤を拍動投与する工程、ならびにGSK3α阻害剤および/またはWntアゴニストおよび/またはGSK3β阻害剤を持続的に投与する工程を含む。
特定の態様では、幹細胞は内耳の幹細胞および/または支持細胞である。
特定の態様では、前記方法は、幹細胞の発生した増殖した集団を用いてハイスループットスクリーニングを行う工程をさらに含む。特定の態様では、前記方法は、発生した幹細胞を用いて、幹細胞および/またはその子孫に対する毒性があるかどうか分子をスクリーニングする工程をさらに含む。特定の態様では、前記方法は、発生した幹細胞を用いて、幹細胞および/またはその子孫の生存を改善する能力があるかどうか分子をスクリーニングする工程を含む。
一部の局面において、本開示は、難聴および/もしくは前庭機能不全を有するかまたはその発症リスクのある対象を処置する方法であって、難聴および/もしくは前庭機能不全を経験したことがあるかまたはその発症リスクのある対象を特定する工程、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、もしくはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤を投与するかまたはそれらが投与されるようにする工程を含む、方法に関する。
特定の態様では、幹細胞集団は支持細胞を含む。特定の態様では、幹細胞集団は出生後細胞を含む。特定の態様では、幹細胞集団は上皮幹細胞を含む。特定の態様では、幹細胞は前駆細胞を含む。
特定の態様では、投与する工程は、耳に1回または複数回注射することによって(例えば、中耳および/または内耳に経鼓膜注射することによって)行われる。
一部の局面において、本開示は、内耳有毛細胞を発生させる方法であって、(例えば、インビトロ、エクスビボ、またはインビボ試料/対象の)初期幹細胞集団にある幹細胞を増殖させて、(例えば、増殖した集団が初期幹細胞集団よりも少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍多くなるように)幹細胞の増殖した集団を得る工程;および幹細胞の増殖した集団から内耳有毛細胞の発生を促進する工程を含む、方法に関する。
一部の局面において、本開示は、内耳有毛細胞を発生させる方法であって、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤(例えば、薬学的に許容される形(例えば、塩)を含む組成物)を、対象の内耳にある細胞集団に投与し、それによって、内耳有毛細胞の発生を促進する工程を含む、方法に関する。
一部の局面において、本開示は、内耳有毛細胞を発生させる方法であって、(例えば、インビトロ、エクスビボ、またはインビボ試料/対象の)初期集団にある出生後支持細胞を増殖させて、(例えば、増殖した集団が初期幹細胞集団よりも少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍多くなるように)支持細胞の増殖した集団を得る工程であって、この支持細胞の増殖した集団から内耳有毛細胞が発生する、工程を含む、方法に関する。特定の態様では、幹細胞は前駆細胞を含む。一部の態様では、増殖は、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤によって誘導される。一部の態様では、増殖は、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、およびTGF-β阻害剤によって誘導される。
一部の局面において、本開示は、疾患または障害を処置する方法であって、対象(インビボ)の初期集団にある出生後支持上皮細胞を増殖させて、(例えば、増殖した集団が初期出生後支持上皮細胞集団よりも少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍多くなるように)支持上皮細胞の増殖した集団を得る工程を含む、方法に関する。一部の態様では、増殖は、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤によって誘導される。一部の態様では、増殖は、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤、およびTGF-β阻害剤によって誘導される。
一部の態様では、支持細胞は有毛細胞に分化される。
組成物および投与
特定の態様は、薬学的に許容される担体と、(i)Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、もしくはGSK3β阻害剤、および(ii)TGF-β阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物、予防用組成物、または治療用組成物に関する。一部の態様では、上記のように、組成物は、内耳および/もしくは中耳への投与、例えば、正円窓膜への局所投与、または鼓室内投与もしくは経鼓膜投与、例えば、前庭組織への鼓室内投与もしくは経鼓膜投与に適している。
特定の組成物は、Notchアクチベーター、HDAC阻害剤、BMP4アンタゴニスト、ノギン(BMP4を阻害する)、Sox2、ビタミンD(カルシトリオール)、ビタミンB(ニコチンアミド)、ビタミンA、ビタミンC(pVc)、Lgr4、p38/MAPK阻害、ROCK阻害、および/またはAlk4/7阻害より選択される、さらなる薬剤をさらに含む。
一部の組成物は、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)、またはそれらの組み合わせをさらに含む。
「薬学的に許容される」という句は、適切な医学的判断の範囲内にあり、過度の毒性、過敏、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を引き起こすことなくヒトおよび動物の組織との接触における使用に適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために本明細書において用いられる。
本明細書で使用する「薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤」は、ヒトまたは家畜での使用が受け入れられると米食品医薬品局により認可された任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動化剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、風味相乗剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、または乳化剤を含むが、それに限定されるわけではない。例示的な薬学的に許容される担体には、糖、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;トラガカントゴム;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオ脂、ろう、動物性脂肪および植物性脂肪、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに薬学的製剤において用いられる他の任意の適合性物質が含まれるが、これに限定されない。
特定の組成物は少なくとも1種類の生体適合性マトリックスを含む。本明細書で使用する「生体適合性マトリックス」という用語は、治療剤を放出するためにヒトへの投与が許容されているポリマー担体である。場合によっては、生体適合性マトリックスは生体適合性ゲルでも生体適合性発泡体でもよい。
特定の組成物は少なくとも1種類のポロキサマーを含む。ポロキサマーは、ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)-ポリ(オキシエチレン)のトリブロックとして構築される、(すなわち、親水性ポリ(オキシエチレン)ブロックと疎水性ポリ(オキシプロピレン)ブロック)から形成されるトリブロックコポリマーである。ポロキサマーは、プロピレンオキシドブロック疎水性物質とエチレンオキシド親水性物質を有するブロック共重合体界面活性剤の一種である。ポロキサマーは市販されている(例えば、Pluronic(登録商標)ポリオールはBASF Corporationから入手可能である)。または、ポロキサマーは公知の技法によって合成することができる。
例示的なポロキサマーには、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、およびポロキサマー407が含まれる。一部の態様では、ポロキサマーは、ポロキサマー124、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、またはポロキサマー407のうち2つ以上の混合物を含む。一部の態様では、2つ以上のポロキサマーの混合物はポロキサマー407およびポロキサマー124を含む。特定の態様において、ポロキサマーは、ポロキサマー188およびポロキサマー407のうちの少なくとも1つ、またはそれらの混合物を含む。一部の態様では、ポロキサマーはポロキサマー407である。
一部の態様では、ポロキサマーの濃度は、前記組成物に対して約5wt%〜約25wt%であるか、または前記組成物に対して約5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、19wt%、20wt%、21wt%、22wt%、23wt%、24wt%、もしくは25wt%である。特定の態様では、ポロキサマーの濃度は前記組成物に対して約10wt%〜約23wt%である。一部の態様では、ポロキサマーの濃度は前記組成物に対して約15wt%〜約20wt%である。特定の態様において、ポロキサマーの濃度は前記組成物に対して約17wt%である。
一部の態様では、湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、離型剤、コーティング薬剤、甘味剤、着香剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化物質も前記組成物中に存在してよい。
特定の組成物は少なくとも1種類の抗酸化物質を含む。薬学的に許容される抗酸化物質の例には、(1)水溶性抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが含まれる。
特定の態様では、体温付近での前記組成物の粘度は、室温での前記組成物の粘度とはかなり異なる(例えば、室温での前記組成物の粘度よりも小さい、室温での前記組成物の粘度よりも大きい)。
一部の態様では、前記組成物は緩衝液を含む。例えば、特定の場合では、緩衝液は生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)である。
一部の態様では、前記組成物は生理学的pHにあるか、生理学的pH付近にある。例えば、一部の態様では、前記組成物のpHは、全ての整数、小数値、およびこの間にある範囲、例えば、約6〜約6.5〜約7〜約7.5〜約8を含む、約6〜約8である。特定の態様において、前記組成物のpHは約7.4(±0.2)である。
特定の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤は、有効な、または別のやり方で規定された濃度または濃度範囲で薬学的組成物中に存在する。例えば、特定の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約0.01uM〜1000mM、約0.1uM〜1000mM、約1uM〜100mM、約10uM〜10mM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1000uM、約1mM〜10mM、もしくは約10mM〜100mMの濃度で;またはその有効幹細胞性推進剤濃度に対して約0.01〜1,000,000倍、もしくは有効幹細胞性推進剤濃度に対して約0.1〜100,000倍、もしくは有効幹細胞性推進剤濃度に対して約1〜10,000倍、もしくは有効幹細胞性推進剤濃度に対して約100〜5000倍、もしくは有効幹細胞性推進剤濃度に対して約50〜2000倍、もしくは有効幹細胞性推進剤濃度に対して約100〜1000倍、もしくは有効幹細胞性推進剤濃度に対して約1000倍の濃度比で;または約0.01nM〜1000uM、約0.1nM〜1000uM、約1nM〜100uM、約10nM〜10uM、約1nM〜10nM、約10nM〜100nM、約100nM〜1000nM、約1uM〜10uM、もしくは約10uM〜100uMの濃度で、組成物中に存在する。一部の態様では、有効幹細胞性推進剤濃度は、本明細書に記載のようにLgr5増殖アッセイにおいて測定される。
一部の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤はCHIR99021であり、組成物中のCHIR99021の濃度は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約1uM〜1000mM、約10uM〜100mM、約100uM〜100mM、約1mM〜10mM、または約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、もしくは10mMであるか、あるいは約1nM〜1000uM、約10nM〜100uM、約100nM〜100uM、約1uM〜10uM、または約1uM、2uM、3uM、4uM、5uM、6uM、7uM、8uM、9uM、もしくは10uMである。
一部の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤はLY2090314であり、組成物中のLY2090314の濃度は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約0.01uM〜1000mM、約0.1uM〜10mM、約1uM〜1mM、約10uM、約20uM、約30uM、約40uM、もしくは約50uMであるか、または約0.01nM〜1000uM、約0.1nM〜10uM、約1nM〜1uM、約1nM〜100nM、もしくは約10nMである。
特定の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤はAZD1080であり、組成物中のAZD1080の濃度は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約0.1uM〜1000mM、約1uM〜1000mM、約10uM〜100mM、約100uM〜10mM、約1mM〜10mM、または約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、もしくは10mMであるか、あるいは約1nM〜1000uM、約10nM〜1000uM、約100nM〜100uM、約1uM〜10uM、または約1uM、2uM、3uM、4uM、5uM、6uM、7uM、8uM、9uM、もしくは10uMである。
特定の態様では、Wntアゴニスト、GSK3α阻害剤、またはGSK3β阻害剤はGSK3阻害剤XXIIであり、組成物中のGSK3阻害剤XXIIの濃度は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約0.1uM〜1000mM、約1uM〜100mM、約10uM〜10mM、約100uM〜10mM、約100uM〜1mM、または約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、もしくは10mMであるか、あるいは約0.1nM〜1000uM、約1nM〜100uM、約10nM〜10uM、約100nM〜1uM、または約0.5uMである。
特定の態様では、TGF-β阻害剤は、有効な、または別のやり方で規定された濃度または濃度範囲で薬学的組成物中に存在する。例えば、一部の態様では、組成物中のTGF-β阻害剤の濃度は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約0.01uM〜1000mM、約0.1uM〜1000mM、約1uM〜100mM、約0.1uM〜1uM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1mM、約1mM〜10mM、もしくは約100mM〜1000mM、もしくは約10mM〜100mM、もしくは約100mM〜1000mMであるか;または組成物中のTGF-β阻害剤の濃度比は、その有効TGF-β濃度に対して約0.1〜1,000,000倍、もしくは有効TGF-β濃度に対して約1〜100,000倍、もしくは有効TGF-β濃度に対して約10〜10,000倍、もしくは有効TGF-β濃度に対して約100〜1000倍、もしくは有効TGF-β濃度に対して約1000倍であるか;または組成物中のTGF-β阻害剤の濃度は、約0.01nM〜1000uM、もしくは約0.1nM〜1000uM、約1nM〜100uM、約10nM〜10uM、約1nM〜10nM、約10nM〜100nM、約100nM〜1000nM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、もしくは約100uM〜1000uMである。一部の態様では、有効TGF-β濃度は、本明細書に記載のようにLgr5増殖アッセイにおいて測定される。
一部の態様では、TGF-β阻害剤は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約1uM〜1000mM、もしくは約10uM〜1000mM、もしくは約100uM〜10mM、もしくは約2mM、または約1nM〜1000uM、約10nM〜100uM、約100nM〜10uM、もしくは約2uMの濃度の616452 (Repsox)である。
特定の態様では、BMP4アンタゴニストは、有効な、または別のやり方で規定された濃度または濃度範囲で薬学的組成物中に存在する。例えば、一部の態様では、組成物中のBMP4アンタゴニストの濃度は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約0.01uM〜1000mM、0.1uM〜1000mM、約1uM〜100mM、約10uM〜10mM、約0.1uM〜1uM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1mM、約1mM〜10mM、約10mM〜100mM、約100mM〜1000mMであるか;または組成物中のBMP4アンタゴニストの濃度比は、その有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約0.1〜1,000,000倍、もしくは有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約1〜100,000倍、もしくは有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約10〜10,000倍、もしくは有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約100〜1000倍、もしくは有効BMP4アンタゴニスト濃度に対して約1000倍であるか;または組成物中のBMP4アンタゴニストの濃度は、約0.01nM〜100uM、約1nM〜100uM、約10nM〜10uM、約1nM〜10nM、約10nM〜100nM、約100nM〜1000nM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、もしくは約100uM〜1000uMである。一部の態様では、有効BMP4アンタゴニスト濃度は、本明細書に記載のようにLgr5増殖アッセイにおいて測定される。
一部の態様では、BMP4アンタゴニストは、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約1uM〜1000mM、約10uM〜100mM、約100uM〜10mM、もしくは約1mM、あるいは約1nM〜1000uM、もしくは約10nM〜100uM、約100nM〜10uM、または約1uMの濃度のDMH1である。
特定の態様では、BMP4アンタゴニストは、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約1ug/ml〜10,000ug/ml、約10ug/ml〜1000ug/ml、もしくは約100ug/ml、または約1ng/ml〜10,000ng/ml、約10ng/ml〜1000ng/ml、または約100ng/mlの濃度のノギンである。
特定の態様では、HDAC阻害剤は、有効な、または別のやり方で規定された濃度または濃度範囲で薬学的組成物中に存在する。例えば、特定の態様では、HDAC阻害剤の濃度は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約0.01uM〜100,000mM、約1uM〜10,000mM、約10uM〜10,000mM、約100uM〜1000mM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1000uM、約1000uM〜10mM、約10mM〜100mM、約100mM〜1000mM、もしくは約1000mM〜10,000mMであるか;またはHDAC阻害剤の濃度比は、その有効濃度に対して約0.1〜1,000,000倍、もしくは有効濃度に対して約1〜100,000倍、もしくは有効濃度に対して約10〜10,000倍、もしくは有効濃度に対して約100〜1000倍、もしくは有効濃度に対して約1000倍であるか;またはHDAC阻害剤の濃度は、約0.01nM〜100,000uM、約1nM〜10,000uM、約10nM〜10,000uM、約100nM〜1000uM、約1nM〜10nM、約10nM〜100nM、約100nM〜1000nM、約1uM〜10uM、約10uM〜100uM、約100uM〜1000uM、もしくは約1000uM〜10,000uMである。一部の態様では、有効濃度は、本明細書に記載のようにLgr5増殖アッセイにおいて測定される。
一部の態様では、HDAC阻害剤は、全ての整数およびこの間にある範囲を含めて、約10uM〜100,000mM、約1mM〜10,000mM、約10mM〜10,000mM、約100mM〜10,000mM、約200mM〜2000mM、約1000mM、もしくは約600mM、または約10nM〜100,000uM、1uM〜10,000uM、約10uM〜10,000uM、約100uM〜10,000uM、約200uM〜2000uM、もしくは約1000uMの濃度のバルプロ酸である。
本明細書に記載の化合物または組成物は、望ましい送達経路、例えば、経鼓膜注射、経鼓膜ウィックおよびカテーテル、蝸牛移植片、ならびに注射デポーに適した任意のやり方で処方することができる。場合によっては、組成物または製剤は、その誘導体またはプロドラッグ、溶媒和化合物、立体異性体、ラセミ体、または互変異性体を含む1種類または複数種の生理学的に許容される成分と、任意の生理学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤を含む。
上記で述べたように、特定の組成物は、中耳または内耳への投与、例えば、正円窓膜への局所投与による中耳または内耳への投与に適しており、特定の方法は、中耳または内耳への投与、例えば、正円窓膜への局所投与による中耳または内耳への投与を使用する。正円窓膜は内耳空間に対する生物学的障壁であり、聴力障害を局所的に処置するための大きな障害である。投与される薬物は、内耳空間に到達するためには、この膜を乗り越えなければならない。薬物は手術(例えば、鼓膜を通過する注射)により正円窓膜に局所的に配置することができ、次いで、正円窓膜を通り抜けることができる。正円窓を通り抜けた物質は典型的には外リンパの中に分布し、従って、有毛細胞および支持細胞に到達する。
薬学的製剤はまた、本明細書において言及された薬剤が正円窓膜を通過するのを助ける膜浸透促進剤も含有してよい。従って、液体、ゲル、または発泡体製剤が用いられてもよい。活性成分を経口的に適用すること、または送達アプローチの組み合わせを使用することも可能である。
特定の組成物は、中耳または内耳への投与、例えば、鼓室内投与または経鼓膜投与による中耳または内耳への投与に適しており、特定の方法は、中耳または内耳への投与、例えば、鼓室内投与または経鼓膜投与による中耳または内耳への投与を使用する。薬物の耳への鼓室内(IT)送達は臨床目的と研究目的の両方で用いられることが多くなっている。いくつかのグループはマイクロカテーテルおよびマイクロウィック(microwick)を用いて薬物を持続的に適用したが、大多数は、単回IT注射として、または(2週間までの期間にわたって8回の注射まで)繰り返しIT注射することで薬物を適用した。
鼓室内に適用された薬物は、主として正円窓(RW)膜および卵円窓(OW)膜を通過することによって内耳液に入ると考えられている。計算から、耳に入る薬物の量と、耳全体にわたる薬物の分布を両方とも制御する主な因子は、薬物が中耳空間に残存する期間であることが分かっている。水溶液を単回「ワンショット」適用するか、または数時間にわたって適用すると、適用された物質の急な薬物勾配が生じる。内耳液が接続されているので、内耳に送達された薬物は前庭器官および蝸牛と接触する。前庭器官は卵円窓のすぐ近くにある。
他の注射アプローチには、浸透圧ポンプによる注射アプローチ、または移植された生体材料との組み合わせによる注射アプローチ、より好ましくは、注射または注入による注射アプローチが含まれる。放出反応速度および薬物分布の制御に役立つことができる生体材料には、ヒドロゲル材料、分解性材料が含まれる。最も好ましく用いられる材料の1つの種類にはインサイチューでゲル化する材料が含まれる。これらの参考文献において述べられた、可能性のある全ての材料および方法が、参照により本明細書に組み入れられる。他の材料には、コラーゲン、またはフィブリン、ゼラチン、および脱細胞組織を含む他の天然材料が含まれる。ゲルフォーム(Gelfoam)も適している場合がある。
送達はまた、送達される組成物に添加される薬剤、例えば、浸透促進剤を含むが、これに限定されない他の手段を介して強化されてもよく、超音波、エレクトロポレーション、または高速噴流を介して装置を通り抜けてもよい。
本明細書に記載の方法はまた、PCT出願番号WO2012103012A1に記載の細胞タイプを含む、当業者に公知の様々な方法を用いて生成され得る内耳細胞タイプにも使用することができる。
ヒトおよび動物の処置について、投与される特定の薬剤の量は、処置されている障害および障害の重篤度;使用される特定の薬剤の活性;患者の年齢、体重、身体全体の健康、性別、および食事;使用される特定の薬剤の投与時間、投与経路、および排出速度;処置期間;使用される特定の薬剤と組み合わせて用いられる、または同時に用いられる薬物;処方している医師または獣医師の判断;ならびに医学分野および獣医学分野において公知の同様の要因を含む様々な要因によって決まる場合がある。
本明細書に記載の薬剤は、処置を必要とする対象に治療有効量で投与されてもよい。本明細書に記載の組成物の投与は、適切な任意の投与経路を介するもの、特に、鼓室内投与によるものでよい。他の経路には、摂取、または非経口経路、例えば、静脈内経路、動脈内経路、腹腔内経路、くも膜下腔内経路、脳室内経路、尿道内経路、胸骨内経路、頭蓋内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、皮下経路、舌下経路、経皮経路、または吸入もしくはガス注入による経路、または外耳道および鼓膜の皮膚を通って吸収させるための耳滴下による局部経路が含まれる。このような投与は、単回または複数回の経口投与、規定された回数の点耳剤、あるいはボーラス注射、複数回の注射、または短期もしくは長期の注入としての投与でもよい。等量の、または異なる投与量の特定の製剤をある期間にわたって周期的に非経口送達するために植込み型装置(例えば、植込み型注入ポンプ)も用いられる場合がある。このような非経口投与の場合、組成物は、好ましくは、水または別の適切な溶媒もしくは溶媒混合物に溶解した滅菌溶液として処方される。溶液は、他の物質、例えば、溶液を血液と同じ浸透圧にする目的で塩、糖(特にグルコースまたはマンニトール)、緩衝剤、例えば、酢酸、クエン酸、および/またはリン酸ならびにそのナトリウム塩、ならびに防腐剤を含有してもよい。
本明細書に記載の組成物は、前記組成物を内耳に送達するのに十分な多数の方法によって投与することができる。組成物の内耳への送達は、前記組成物が正円窓を通って内耳に拡散し得るように前記組成物を中耳に送達することと、正円窓膜を通り抜けて直接注射することによって組成物を内耳に送達することを含む。このような方法には、経鼓膜ウィックもしくはカテーテルによる耳介投与、または非経口投与、例えば、耳介内注射、経鼓膜注射、もしくは前庭内注射による非経口投与が含まれるが、これに限定されない。
特定の態様では、本開示の組成物および製剤は局所投与される。局所投与とは、全身に投与されないことを意味する。
一態様では、耳介投与を用いて化合物または組成物を対象に投与するための注射器および針器具が用いられる。適切な大きさの針を用いて鼓膜に穴をあけ、穴があいた鼓膜を通って対象の中耳の中に、前記組成物を含むウィックまたはカテーテルを挿入する。この装置は、正円窓と接触するように、または正円窓のすぐ隣にあるように挿入されてもよい。耳介投与に用いられる例示的な装置には、経鼓膜ウィック、経鼓膜カテーテル、正円窓マイクロカテーテル(正円窓に薬を送達する小さなカテーテル)、およびSilverstein Microwicks(商標)(対象または医療従事者による調節を可能にする小さなチューブ。チューブから正円窓まで「ウィック」が通っている)が含まれるが、これに限定されない。
一部の態様では、鼓膜を通って中耳および/または内耳に入る注射である経鼓膜注射を用いて化合物または組成物を対象に投与するための注射器および針器具が用いられる。この製剤は経鼓膜注射を介して正円窓膜に直接投与されてもよく、前庭内注射を介して前庭に直接投与されてもよく、前庭内注射を介して前庭器官に直接投与されてもよい。
一部の態様では、送達装置は、化合物または組成物を中耳および/または内耳に投与するように設計された器具である。ほんの一例として、GYRUS Medical GmbHは、正円窓小窩(round window niche)の視覚化用および正円窓小窩への薬物送達用にマイクロオトスコープを提供している。Arenbergは、米国特許第5,421,818号;同第5,474,529号;および同第5,476,446号において内耳構造に液体を送達するための医学的処置装置について説明している。これらはそれぞれ、このような開示のために参照により本明細書に組み入れられる。このような開示のために参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第08/874,208号は、組成物を内耳に送達するために液体導入管を移植するための外科的方法について説明している。さらに、このような開示のために参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2007/0167918号は、経鼓膜で液体をサンプリングし、医用薬剤を適用するための耳吸引器(otic aspirator)と薬物ディスペンサーの組み合わせについて説明している。
一部の態様では、本明細書において開示される組成物は、これを必要とする対象に1回投与される。一部の態様では、本明細書において開示される組成物は、これを必要とする対象に1回より多く投与される。一部の態様では、本明細書において開示される組成物の第1の投与の後に、本明細書において開示される組成物の第2の投与、第3の投与、第4の投与、または第5の投与が行われる。
組成物を必要とする対象に組成物が投与される回数は、医療従事者の裁量、障害、障害の重篤度、および製剤に対する対象の応答によって決まる。一部の態様では、本明細書において開示される組成物は、これを必要とする軽度の急性状態にかかっている対象に1回投与される。一部の態様では、本明細書において開示される組成物は、これを必要とする中程度または重度の急性状態にかかっている対象に1回より多く投与される。対象の状態が改善しない場合、対象の疾患または状態の症状を寛解させるために、または別のやり方で管理もしくは制限するために、組成物は医師の裁量で長期にわたって、すなわち、対象の一生涯を含めて長い期間にわたって投与されることがある。
対象の状態が改善する場合、組成物は医師の裁量で連続して投与されることがある。または、投与されている薬物の用量は一時的に減らされてもよく、特定の時間にわたって一時的に中断されてもよい(すなわち、「休薬期間」)。休薬期間の長さは、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、および365日を含めて2日〜1年まである。休薬期間中の用量の減量は、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含めて10%〜100%でもよい。
対象の聴覚および/または平衡が改善したら、必要であれば維持量を投与することができる。その後に、任意で、症状の関数として、投与量もしくは投与頻度またはその両方を、改善した疾患、障害、または状態が保たれる水準まで少なくする。特定の態様では、症状が再発したら、対象は長期的に断続的な処置を必要とする。
実施例1
内耳からの幹細胞の単離: 全ての動物試験を、米国立衛生研究所のガイドラインに従って、承認された施設プロトコールの下で行った。新生仔マウス(生後1〜3日目)を用いた実験のために、前庭器官をHBSS中で解剖した。次いで、前庭器官をTrypLE(Life Technologies)で37℃で15〜20分間処置した。機械的にすりつぶすことで入手した単一細胞を濾過し(40μm)、3D培養のためにマトリゲル(Corning)に懸濁した。
Sox2陽性細胞およびSox9陽性細胞の増殖
Glutamax(GIBCO)、N2、B27(Invitrogen)、EGF(50ng/mL; Chemicon)、bFGF(50ng/mL; Chemicon)、IGF1(50ng/mL; Chemicon)と、以下の薬剤:CHIR99021(Wntアクチベーター)、616452(TGF-β阻害剤)、ノギン(BMP4阻害剤)、VPA(HDAC阻害剤)、およびそれらの組み合わせを含む組成物を加えたDMEMとF12の1:1混合物中で細胞を培養した。培地を1日おきに交換した。
分化を推進する分子を添加して、または分化を推進する分子を添加することなく増殖因子(成長因子)を除去した後に、Sox2およびSox9前駆細胞幹細胞コロニーを、Glutamax(GIBCO)、N2、B27(Invitrogen)を加えたDMEMとF12の1:1混合物中で分化させた。分化に対する効果を試験するために低分子を培養物に添加した。
図1は、示したように、様々な培養培地条件を用いて三次元(3D)培養されているコロニーの透過光画像を示す。
分析
複数の条件で培養して10日後(D10)に総細胞を定量した。
処置条件は以下の通りであった。
(i)GF;(ii)GF+C(GFC);(iii)GF+C+6(GFC6);(iv)GF+C+V(GFCV);;(v)GF+C+V+6(GFCV6);および(vi)GF+C+N+6(GFCN6)、ここで、
a)GF=EGF、FGF、およびIGF
b)C=CHIR99021
c)V=VPA
d)6=616452
e)N=ノギン
である。
D10に、TrypLE(Gibco)を用いて細胞コロニーを解離して単一細胞にした。次いで、細胞をヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメーター発現を用いて分析した。細胞数を定量した。図2に示したように、Wntアゴニズムは支持細胞/幹細胞の増殖を促進し、Wntアゴニズム+TGF-β阻害は幹細胞増殖を改善し、HDAC阻害は増殖を阻害した。
D10にはさらに、細胞集団の同一性を評価するために、細胞をSox2(データ示さず)、ならびにSox9、ローダミンファロイジン(F-アクチンを染色する)、およびDAPI(核染色)で染色した(図3を参照されたい)。共焦点顕微鏡観察を用いてコロニーを視覚化した。Sox2およびSox9は平衡器官における幹細胞マーカーである。
図3は、支持細胞(赤色)および幹細胞/支持細胞マーカーSox9(緑色)を示す、特徴的なアクチン格子を有するクローン支持細胞/幹細胞コロニーを図示する代表的な共焦点画像を示す。
図4は、LY411575によるγセクレターゼ阻害を用いて前駆細胞コロニーを高純度の有毛細胞に分化できたことを示す。この細胞は有毛細胞を示し、MyoVIIa(緑色)を発現し、アクチン毛束(赤色)を有する。
図5は、GFがバックグラウンドにある状態で、(i)Wntアゴニズム(CHIR99021)が支持細胞/幹細胞の増殖およびコロニー形成を促進し、(ii)Wntアゴニズム+2種類の別のTGF-β阻害剤(SB-431542&A-83-01)を用いたTGF-β阻害が、Wntアゴニズム単独と比較して大きな支持細胞/幹細胞コロニーを生じたことを示す。
前述の説明から、本明細書に記載の発明を様々な使用および条件に取り入れるために、本明細書に記載の発明に変更および修正が加えられ得ることは明らかである。本発明において使用するための方法および材料が本明細書において説明される。当技術分野において公知の他の適切な方法および材料も使用することができる。前記の材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、限定することが意図されない。このような態様も以下の特許請求の範囲の範囲内である。本明細書における変数の任意の定義における要素の一覧の説明は、任意の1つの要素として、または列挙された要素の組み合わせ(もしくはサブコンビネーション(subcombination))として、その変数を定義することを含む。本明細書における態様の説明は、その態様を任意の1つの態様として、または他の任意の態様もしくはその一部と組み合わせて含む。本明細書において言及された全ての特許、公開された出願、および参考文献の開示は、その全体が参照により組み入れられる。本発明は、特に、その例となる態様について示され、説明されたが、添付の特許請求の範囲が包含する本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に形状および細部の様々な変化が加えられ得ることが当業者に理解される。