JP2019506150A - 改善されたタンパク質発現株 - Google Patents

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Abstract

本発明は、所望のタンパク質を産生するための、改良された宿主株を提供する。
【選択図】なし

Description

本願は米国特許仮出願第62/270762号(2015年12月22日出願)及び米国特許仮出願第62/278728号(2016年1月14日出願)に基づく優先権の利益を主張する。また、本願は欧州特許出願第16152977.1号(2016年1月27日出願)に基づく優先権の利益も主張する。前記各出願はその内容全体が引用により本願に組み込まれる。
本願は紙媒体及びコンピューター読み取り可能な形態の配列表を含む。斯かる紙媒体及びコンピューター読み取り可能な形態の配列表は、本願明細書の一部であり、或いは引用により本願に組み込まれる。
本発明は主に、親株よりも実質的に高いレベルでタンパク質を発現する真菌株の開発に関する。
約30年もの間、所望の異種タンパク質は微生物により産生されてきた。しかし、必要なコーディング配列を導入して発現を得たとしても、商業生産用にプロセスを最適化するためには、まだ達成すべきことが多く残っている。関心を集める領域の1つとして、株の改善、即ち、タンパク質をより高い収量又はより良い純度で産生できる宿主微生物の株の探索又は作製が挙げられる。
産生量を向上する上で、良好な発現系を設計したら、次はコーディング配列のコピー数を増加させ、或いはmRNAの量又は安定性を上昇させ、或いはタンパク質の折り畳み及び/又は分泌を向上させ、或いはタンパク質の分解を低減するべく試みるであろう。しかし、所望される発現増強の効果がみられるのは、阻害因子を標的とした場合のみである。
従って必要となるのは、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質の産生量の増加を可能とする宿主株である。本発明者等は、驚くべきことに、Not4(別名MOT2)を変異させることで、斯かる産生量の増大が達成されることを見出した。
Not4はユビキチン連結酵素であり、Ccr4−Not複合体の一部である。Ccr4−Not複合体は真核細胞において保存されており、酵母では本複合体は9つのコアサブユニット:Ccr4、Caf1、Caf40、Caf130、Not1、Not2、Not3、Not4、及びNot5からなる(Collart, 2003, Global control of gene expression in yeast by the Ccr4-Not complex. Gene 313: 1-16; Bai et al., 1999, The CCR4 and Caf1 proteins of the Ccr4-Not complex are physically and functionally separated from Not2, Not4, and Not5. Mol. Cell. Biol. 19: 6642-6651)。本複合体が環境からシグナルを識別すると共に、あらゆるレベルの遺伝子発現を纏め上げて、斯かるシグナルに効率的に反応するための、中心的な交換機として機能すると考えられている(Collart, 2012, The Ccr4-Not complex.遺伝子 492(1): 42-53)。Notタンパク質(Not1、Not2、Not3、Not4)は、転写調節への広範な関与が推測されるRNAポリメラーゼII複合体の構築に必要であると考えられている(Collart, 1994, Not1(cdc39), Not2(cdc36), Not3, and Not4 encode a global-negative regulator of transcription that differentially affects tata-element utilization. Genes & Development 8(5): 525-537; Collart, 2012, 上述)。
最近では共結晶構造から、Ccr4−Not複合体の骨格タンパク質であるNot1のHEAT繰り返し領域に、Not4のC末端領域が巻き付いている様子が示唆されている(Bhaskar, 2015, Architecture of the ubiquitylation module of the yeast Ccr4-Not complex. Structure 23(5): 921-8)。
本発明は、
a.改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、又は
b.Not4タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベル、又は
c.改変されたNot4遺伝子又はそのホモログ、又は
d.Not4遺伝子又はそのホモログの改変された発現レベル
を有する真菌宿主細胞を提供する。
また、本発明は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む真菌宿主細胞の培養物であって、当該真菌宿主細胞がNot4タンパク質又はそのホモログの低減された活性レベルを有することを特徴する、培養物を提供する。
更に、本発明は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質を、真菌宿主細胞により産生する方法を提供する。
本発明は、真菌宿主細胞による所望のポリペプチドの産生量を改変する方法を提供する。
また、本発明は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質を提供する。所望のタンパク質としては、アルブミン、或いはその変異体、断片、及び/又は融合体が好ましい。
更に、本発明は、斯かる所望のタンパク質を含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。
また、本発明は、患者を治療する方法であって、斯かる組成物の有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。
更に、本発明は、真菌宿主細胞を調製する方法を提供する。
また、本発明は、Not4タンパク質又はそのホモログであって、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を含むと共に、配列番号2の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470から選択される1又は2以上の位置に対応する位置に、変異を含むNot4タンパク質又はそのホモログを提供する。
更に、本発明は、本発明のNot4変異体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
本明細書に記載の態様は、実施例及び/又は好適な態様の欄にのみ記載されたものも含め、他の任意の態様と組み合わせることが可能である。但し、斯かる組合せが不適切である旨を明示した場合を除く。
図1は、20種のアミノ酸の分類及び相互関係を示すベン図である。 図2は、プラスミドpDB5438の構成を示す。 図3は、プラスミドpDB2244の構成を示す。「rHA」は組換ヒトアルブミンを意味し、「FL」はリーダー配列である。 図4は、プラスミドpDB2305の構成を示す。「mFL」はリーダー配列である。 図5は、プラスミドpDB3029の構成を示す。「Inv」はリーダー配列である。 図6は、プラスミドpDB5912の構成を示す。「mFL」はリーダー配列である。 図7は、プラスミドpDB3936の構成を示す。「mFL」はリーダー配列である。
定義
アルブミン:「アルブミン」という語は、ヒト血清アルブミン(HSA)又はHSAドメインと同一及び/又は極めて類似の三次構造を有すると共に、HSA又はその関連ドメインと類似の特性を有するタンパク質を意味する。類似の三次構造とは、例えば、親アルブミンと同一の分類に属する種のアルブミンの構造である。アルブミンの主な特性としては、i)血漿の量を調節する能力(膨脹活性)、ii)約19日±5日という長い血漿半減期、iii)gp60、別名アルボンディン(albondin)への結合能、iv)FcRnへの結合能、v)リガンド結合能、例えば内因性分子、例えば酸性親油性化合物、例えばビリルビン、脂肪酸、ヘミン、及びチロキシンへの結合能(Kragh-Hansen et al, 2002, Biol. Pharm. Bull. 25, 695の表1も参照:本文献は引用により本明細書に組み込まれる)、及びvi)酸性又は電気陰性の性質を有する小型有機化合物、例えば薬物、例えばワルファリン、ジアゼパム、イブプロフェン、及びパクリタキセルへの結合能(Kragh-Hansen et al, 2002, Biol. Pharm. Bull. 25, 695の表1も参照:本文献は引用により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。あるタンパク質又は断片をアルブミンと特定する上で、これらの特性の全てが満たされる必要はない。例えば、ある断片が特定のリガンドや有機化合物への結合に関与するドメインを含まないの場合、斯かる断片の変異体はこれらの特性の全ては有さないものと推測される。
アレル変異体:「アレル変異体」という語は、同一の染色体座を占める一遺伝子が有する2又はそれ以上の択一的形態の各々を意味する。アレル変異は天然において変異を通じて発生し、従って個体集団内における多型を生じうる。遺伝子変異はサイレントである(コードされるポリペプチドには変化が生じない)場合もあるが、従ってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列にも変化が生じる場合もある。あるポリペプチドのアレル変異体とは、遺伝子のアレル変異体によりコードされるポリペプチドである。
cDNA:「cDNA」という語は、真核細胞又は原核細胞から得られる成熟後のスプライスされたmRNA分子からの逆転写により調製されるDNA分子を意味する。cDNAは、対応するゲノムDNA内に存在するイントロン配列を有さない。mRNAの前駆体たる初期一次RNA転写生成物は、スプライシングを含む一連の工程を経て、成熟後のスプライスされたmRNAとなる。
コーディング配列:「コーディング配列」という語は、ポリペプチドのアミノ酸配列を直接特定するポリヌクレオチドを意味する。コーディング配列は通常はオープンリーディングフレームによって定められる。オープンリーディングフレームは開始コドン、例えばATG、GTG、又はTTGから始まり、停止コドン、例えばTAA、TAG、又はTGAで終わる。コーディング配列は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、又はこれらの組合せの何れであってもよい。
調節配列:「調節配列」という語は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現に必要な核酸配列を意味する。各々の調節配列は、前記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して、また、他の調節配列に対して、固有(即ち、同一の遺伝子に由来)するものであってもよく、外来(即ち、異なる遺伝子に由来)するものであってもよい。斯かる調節配列としては、これらに限定されるものではないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、転写ターミネーター等が挙げられる。調節配列としては少なくともプロモーターと、転写及び翻訳の停止シグナルとが含まれていればよい。前記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコーディング領域に対する調節配列の連結を容易とするべく、特定の制限部位を導入する目的で、調節配列にリンカーを設けてもよい。
発現:「発現」という語には、ポリペプチドの産生に関与する一連の工程が含まれる。斯かる工程としては、これらに限定されるものではないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌が挙げられる。
発現カセット:「発現カセット」という語は、ポリペプチドをコードすると共に、その発現を可能とする上流及び下流の調節配列を更にコードするポリヌクレオチドを意味する。
発現宿主:「発現宿主」という語は、所望のタンパク質、特に異種タンパク質を発現する宿主細胞を意味する。
発現ベクター:「発現ベクター」という語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むと共に、その発現を可能とする調節配列と作動式に連結された、直鎖状又は環状のDNA分子を意味する。
断片:「断片」という語は、成熟ポリペプチドのアミノ及び/又はカルボキシ末端、及び/又は、成熟ポリペプチドの内部領域から、1又は2以上の(数個の)アミノ酸が欠失されてなるポリペプチドを意味する。断片は、あるポリペプチドに由来する単一の中断のない配列であってもよいが、ポリペプチドの異なる部位に由来する2又はそれ以上の配列を含んでいてもよい。アルブミンに関して言えば、断片のサイズは約20アミノ酸残基以上、好ましくは30アミノ酸残基以上、より好ましくは40アミノ酸残基以上、より好ましくは50アミノ酸残基以上、より好ましくは75アミノ酸残基以上、より好ましくは100アミノ酸残基以上、より好ましくは200アミノ酸残基以上、より好ましくは300アミノ酸残基以上、より一層好ましくは400アミノ酸残基以上、最も好ましくは500アミノ酸残基以上である。好ましい態様では、断片はアルブミンの1又は2以上のドメインに相当する。本発明において好ましいアルブミンのドメインとしては、配列番号6のアミノ酸残基1〜194±1〜15アミノ酸からなるHSAドメインIに対して、少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5%、又は100%の同一性を有するドメイン;配列番号6のアミノ酸残基192〜387±1〜15アミノ酸からなるHSAドメインIIに対して、少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5%、又は100%の同一性を有するドメイン;及び、配列番号6のアミノ酸残基381〜585±1〜15アミノ酸からなるHSAドメインIIIに対して、少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5%、又は100%の同一性を有するドメイン;並びに、これらのドメインのうち1又は2以上(数個)、例えばドメインI及びII、ドメインII及びIII、又はドメインI及びIIIが、互いに連結されてなるものが挙げられる。なお、アルブミンのドメイン間の正確な境界を定める、一般に認められた基準は存在しないため、前記の範囲は互いに重複していてもよく、ドメインのN末端及び/又はC末端において、各々±1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15アミノ酸、好ましくは±1〜15アミノ酸、より好ましくは±1〜10アミノ酸、最も好ましくは±1〜5アミノ酸の違いがあってもよい。惹いては、各ドメインの長さに最大30アミノ酸、好ましくは最大20アミノ酸、より好ましくは最大10アミノ酸のばらつきがあってもよい。また、複数のドメイン間の境界上に存在するアミノ酸残基が何れのドメインに属するかには、幾分の意見の相違があるかもしれない。同様の理由により、アルブミンドメインのアミノ酸残基に関して、前述の数とは異なる文献が存在する可能性もある。しかし、当業者であれば、斯かる文献の教示及び上記の教示を勘案することで、どのようにアルブミンドメインを特定するかを理解するであろう。非ヒトアルブミンの対応するドメインについては、EMBOSSパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)、好ましくはバージョン3.0.0以降、より好ましくはバージョン5.0.0以降のNeedleプログラムにより実行されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)により、HSAとのアラインメントを行うことで決定できる。使用される任意パラメーターは、例えばギャップオープンペナルティー(gap open penalty)が10、ギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)が0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。利用可能な他のアラインメントツールとしては、例えば本明細書に記載のMUSCLEが挙げられる。なお、DockalとKjeldsenとではドメインの定義が異なる場合がある:Dockal et al(The Journal of Biological Chemistry, 1999, Vol. 274(41): 29303-29310)によるHSAのドメインの定義は、ドメインIが配列番号6のアミノ酸1〜197、ドメインIIが配列番号6のアミノ酸189〜385、ドメインIIIが配列番号6のアミノ酸381〜585である。Kjeldsen et al(Protein Expression and Purification, 1998, Vol 13: 163-169)によるHSAのドメインの定義は、ドメインIが配列番号6のアミノ酸1〜192、ドメインIIが配列番号6のアミノ酸193〜382、ドメインIIIが配列番号6のアミノ酸383〜585である。各ドメインはそれ自体2つの相同のサブドメイン、即ち1〜105と120〜194、195〜291と316〜387、及び388〜491と512〜585からなり、これらはそれぞれ残基Lys106〜Glu119、Glu292〜Va1315、及びGlu492〜Ala511を含む柔軟なサブドメイン間リンカー領域により連結されてなる。
従って、本発明では以下のようにドメインを定義することが好ましい。まず、アミノ酸番号は配列番号6(HSA)に対応する。しかし、当業者であれば、これらの番号を用いて、他のアルブミン配列における対応するドメインを特定することが可能である。ドメインIは、アミノ酸1から開始してもよく、しなくてもよく、アミノ酸192、193、194、195、196又は197の何れか、好ましくはアミノ酸192、194又は197の何れかで停止してもよく、しなくてもよい。ドメインIIは、アミノ酸189、190、191、192又は193、好ましくはアミノ酸189、192又は193の何れかで開始してもよく、しなくてもよく、アミノ酸382、383、384、385、386又は387、好ましくはアミノ酸382、285又は387の何れかで停止してもよく、しなくてもよい。ドメインIIIは、アミノ酸381、382又は383、好ましくはアミノ酸381又は383で開始してもよく、しなくてもよく、アミノ酸585で停止してもよく、しなくてもよい。非ヒトアルブミンのドメインのアミノ酸長及び/又は残基数は、HSAのドメインと同一でも異なってもよい。例えば、1又は2以上(数個)の他のアルブミン、断片、誘導体、変異体、及び/又は融合体について、HSAのドメイン1、2及び/又は3に対応するドメインを特定するために、多重アラインメント又はペアワイズアラインメントを作成してもよい。
融合パートナー:本明細書を通じて、融合パートナーとは、アルブミン或いはその変異体及び/又は断片と遺伝子工学的に連結されていてもよい非アルブミン部分を意味する。
異種タンパク質:異種タンパク質とは、宿主細胞により天然では産生されないタンパク質であって、好ましくは選択マーカー(例えば抗生物質抵抗性マーカー、栄養要求性選択マーカー等)、シャペロン、FLP、REP1、又はREP2等のタンパク質を含まないタンパク質を意味する。
宿主細胞:「宿主細胞」という語は、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸コンストラクト又は発現ベクターの形質転換(transformation)、トランスフェクション(transfection)、形質導入(transduction)等を許容しうる任意の細胞型を意味する。「宿主細胞」という語は、複製時に生じた変異により親細胞との同一性が失われた親細胞の任意の子孫を包含する。
成熟ポリペプチド:「成熟ポリペプチド」という語は、翻訳及び任意の翻訳後修飾、例えばN末端プロセシング、C末端切断、グリコシル化、リン酸化等を経たポリペプチドの最終形態を意味する。ヒトアルブミンの成熟配列を配列番号6に、未成熟形態の例を配列番号8にそれぞれ示す。
成熟ポリペプチドコーディング配列:「成熟ポリペプチドコーディング配列」という語は、成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。ヒトアルブミンの成熟ポリペプチドコーディング配列の例を配列番号5に、ヒトアルブミンの未成熟形態のコーディング配列の例を配列番号7にそれぞれ示す。
ミュータント:「ミュータント」(mutant)という語は、変異体(variant)をコードするポリヌクレオチドを意味する。
核酸コンストラクト:「核酸コンストラクト」という語は、天然遺伝子から単離され、或いは核酸セグメントを含むように改変され、天然では存在しない形態となった、或いは合成された、一本鎖又は二本鎖の核酸分子であって、1又は2以上の調節配列を含むものをいう。
作動式に連結された:「作動式に連結された」という語は、ポリヌクレオチドのコーディング配列に対して調節配列が適切な位置に配置され、調節配列によってコーディング配列の発現が誘導されるように構成されることをいう。
親又は親アルブミン:「親」又は「親アルブミン」という語は、本発明のアルブミン変異体を産生するべく改変を加える元のアルブミンを意味する。親は天然(野生型)ポリペプチドでもそのアレルでもよく、その変異体でもよい。好ましい態様では、親アルブミンは野生型アルブミン、より好ましくは配列番号8に開示のヒト由来の野生型アルブミン(UNIPROT: P02768.2)又はその成熟配列(配列番号6)である。他の野生型アルブミンとしては、表1に示す非網羅的なリストから選択することができる。
好ましくは、親アルブミンは成熟アルブミンである。他の態様では、親アルブミンは、配列番号6に対して少なくとも70%、より好ましくは75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.8%同一であると共に、アルブミン、例えばHSAの主な特性の少なくとも1つを維持するか、又は、類似の三次構造を有するものをいう。アルブミンの主な特性は、Sleep, 2015, “Albumin and its application in drug delivery”, Expert Opinion on Drug Delivery 12(5): 793-812に要約されている。
配列同一性:2つのアミノ酸配列又は2つのヌクレオチド配列の間の類似度は「配列同一性」(sequence identity)というパラメーターを用いて記載される。
本発明の目的において、2つのアミノ酸配列の間の配列同一性は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)、好ましくはバージョン5.0.0以降を用いて実施されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)により決定される。使用されるパラメーターは、ギャップオープンペナルティー(gap open penalty)が10、ギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)が0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needleの「最長同一性」(longest identity)と付された出力値(-nobrief オプションを用いて得られる)を、配列同一性として使用する。これは以下のように計算される。
本発明の目的において、2つのデオキシリボヌクレオチド配列の間の配列同一性は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, 同上)、好ましくはバージョン5.0.0以降を用いて実施されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, 同上)により決定される。使用されるパラメーターは、ギャップオープンペナルティー(gap open penalty)が10、ギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)が0.5、EDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needleの「最長同一性」(longest identity)と付された出力値(-nobrief オプションを用いて得られる)を、配列同一性として使用する。これは以下のように計算される。
変異体:「変異体」(variant)という語は、親ポリペプチド、例えばアルブミンに由来するポリペプチドであって、1又は2以上(数個)の位置に、改変、即ち置換、挿入、及び/又は欠失を有するものを意味する。置換(substitution)とは、ある位置を占めるアミノ酸が、異なるアミノ酸で置き換えられることを意味し、欠失(deletion)とは、ある位置を占めるアミノ酸が取り除かれることを意味し、挿入(insertion)とは、ある位置を占めるアミノ酸の隣に1〜3アミノ酸が付け加えられることを意味する。改変されたポリペプチド(変異体)は、人為的な介入により、親ポリペプチド、例えばアルブミンをコードするポリヌクレオチド配列に修飾を加えることにより得ることができる。変異体アルブミンは、配列番号6に対して、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.8%同一である。また、親アルブミン、例えばHSAの、主要な特性の少なくとも1つ又は類似の三次構造を維持していてもよく、いなくてもよい。一般に、HSAの変異体又は断片は、HSAと比較して少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は95%)のリガンド結合活性(例えばビリルビン結合性)を有すると共に、HSAと比較して重量対重量比率で少なくとも50%(好ましくは少なくとも70%、80%、90%、又は95%)の膨脹活性を有する。アルブミン、アルブミン変異体、又はアルブミンの断片の膨脹活性、別名コロイド浸透圧は、Hoefs, J.C. (1992) Hepatology 16:396-403に記載の方法で決定することができる。ビリルビン結合性は、例えばHSAを基準とした527nmの蛍光増強により測定することができる。ビリルビン(1.0mg)を50μLの1M NaOHに溶解させ、脱塩水で1.0mLに希釈する。ビリルビンのストックを、蛍光光度計のキュベット内で100mM Tris−HCI、pH8.5、1mM EDTAで希釈し、0.6nmolビリルビン/mLとする。励起波長448nm、発光波長527nm(スリット幅10nm)で蛍光を測定し、HSA:ビリルビン比0〜5mol:molの範囲に亘ってHSAで較正する。変異体は、そのFcRn結合親和性及び/又は血漿半減期が、親アルブミンと比較して改変されていてもよい。
変異体Not4タンパク質の場合も、活性がアルブミン活性ではなく、Not4活性であることを除いては、同様の原理を適用することができる。
変異体ポリペプチド配列は、天然に見出されないものであることが好ましい。
ベクター:「ベクター」(vector)という語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、これと作動式に連結された、その発現を誘導する調節配列とを含む、直鎖状又は環状のDNA分子を意味する。ベクターにはプラスミドが含まれる。ベクターには発現ベクターが含まれる。
野生型:「野生型」(wild-type:WT)アルブミンという語は、天然で動物又はヒトに見出されるアルブミンと同一のアミノ酸配列を有するアルブミンを意味する。配列番号6はヒト野生型アルブミンの例である。「野生型」(WT)ヒトアルブミン(HSA)の配列は、GenBank登録番号AAA98797.1として参照可能である(Minghetti et al. “Molecular structure of the human albumin gene is revealed by nucleotide sequence within q11-22 of chromosome 4”, J. Biol. Chem. 261 (15), 6747-6757 (1986))。野生型アルブミンの例を表1(上掲)に示す。
アミノ酸位置を指定する際の規則
本発明の目的においては、配列番号2に開示されるポリペプチドを用いて、Not4タンパク質のホモログ中の対応するアミノ酸残基を決定する。Not4タンパク質のホモログのアミノ酸配列を、配列番号2に開示されるポリペプチドとアラインし、このアラインメントに基づいて、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)、好ましくはバージョン5.0.0以降を用いて実施されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)により、配列番号2に開示されるポリペプチド中の任意のアミノ酸残基に対応するアミノ酸位置番号をを決定することができる。使用されるパラメーターは、ギャップオープンペナルティー(gap open penalty)が10、ギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)が0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。
Not4タンパク質のホモログ中の対応するアミノ酸残基の特定は、幾つかのコンピュータープログラム、例えば、これらに限定されるものではないが、MUSCLE(multiple sequence comparison by log-expectation;バージョン3.5以降;Edgar, 2004, Nucleic Acids Research 32: 1792-1797)、MAFFT(バージョン6.857以降; Katoh and Kuma, 2002, Nucleic Acids Research 30: 3059-3066; Katoh et al., 2005, Nucleic Acids Research 33: 511-518; Katoh and Toh, 2007, Bioinformatics 23: 372-374; Katoh et al., 2009, Methods in Molecular Biology 537: 39-64; Katoh and Toh, 2010, Bioinformatics 26: 1899-1900)、及びClustalWを用いたEMBOSS EMMA(1.83以降;Thompson et al., 1994, Nucleic Acids Research 22: 4673-4680)により、それぞれのデフォルトパラメーターを用いて、複数のポリペプチド配列のアラインメントを作成することにより決定することができる。
本発明のポリペプチドを記述するに当たり、参照の便宜のために、以下に説明する命名法を採用する。一般に許容されているIUPACの一文字又は三文字のアミノ酸略称を用いる。
置換。アミノ酸置換の場合、以下の命名法を用いる:元のアミノ酸、位置、置換後のアミノ酸。従って、位置226のトレオニンのアラニンによる置換は、「Thr226Ala」又は「T226A」と表す。多重変異は加算記号(「+」)で区切って示す。例えば、「Gly205Arg+Ser411Phe」又は「G205R+S411F」は、位置205のグリシン(G)をアルギニン(R)で、位置411のセリン(S)をフェニルアラニン(F)で、それぞれ置換することを表す。
欠失。アミノ酸欠失の場合、以下の命名法が用いられる:元のアミノ酸、位置、*。従って、位置195のグリシンの欠失は、「Gly195*」又は「G195*」と表す。多重欠失は加算記号(「+」)で区切って、例えば「Gly195*+Ser411*」又は「G195*+S411*」の用に表す。
挿入。上述のように、挿入には、ある位置を占めるアミノ酸(「所定の(或いは「元の」)アミノ酸」、「X」)のN側(「上流」、「X−1」)に対するものと、C側(「下流」、「X+1」)に対するものとが挙げられる。
元のアミノ酸(‘X’)のC側(「下流」、「X+1」)へのアミノ酸挿入の場合、以下の命名法が用いられる:元のアミノ酸、位置、元のアミノ酸、挿入されたアミノ酸。従って、位置195のグリシンの後へのリシンの挿入は、「Gly195GlyLys」又は「G195GK」と記す。アミノ酸の多重挿入の場合は、[元のアミノ酸、位置、元のアミノ酸、挿入されたアミノ酸#1、挿入されたアミノ酸#2;等]と記す。例えば、位置195のグリシンの後へのリシン及びアラニンの挿入は、「Gly195GlyLysAla」又は「G195GKA」と記す。
このような場合、挿入された複数のアミノ酸残基は、挿入されたアミノ酸残基に先立つアミノ酸残基の位置番号に対して、小文字を付して区別する。上記の例の場合、その順番は以下のとおりとなる。
元のアミノ酸(X)のN側(「上流」、「X−1」)に対するアミノ酸挿入の場合、以下の命名法が用いられる:元のアミノ酸、位置、挿入されたアミノ酸、元のアミノ酸。従って、位置195のグリシン(G)の前へのリシン(K)(K)の挿入は、「Gly195LysGly」又は「G195KG」と記す。アミノ酸の多重挿入の場合は、[元のアミノ酸、位置、挿入されたアミノ酸#1、挿入されたアミノ酸#2;等、元のアミノ酸]と記す。例えば、位置195のグリシンの前へのリシン(K)及びアラニン(A)の挿入は、「Gly195LysAlaGly」又は「G195KAG」と記す。
このような場合、挿入された複数のアミノ酸残基は、挿入されたアミノ酸残基に続くアミノ酸残基の位置番号に対して、ダッシュ付きの小文字を付して区別する。上記の例の場合、その順番は以下のとおりとなる。
多重改変。多重改変を含むポリペプチドは、加算記号(「+」)で区切って示す。例えば、「Arg170Tyr+Gly195Glu」又は「R170Y+G195E」は、位置170のアルギニンをチロシンで、位置195のグリシンをグルタミン酸で、それぞれ置換することを表す。
異なる改変。ある位置に複数の異なる改変を導入可能な場合には、これらの異なる改変をコンマで区切って示す。例えば、「Arg170Tyr,Glu」は、位置170のアルギニンをチロシン又はグルタミン酸で置換することを示す。即ち、「Tyr167Gly,Ala+Arg170Gly,Ala」は、以下の変異体を表す:「Tyr167Gly+Arg170Gly」、「Tyr167Gly+Arg170Ala」、「Tyr167Ala+Arg170Gly」、及び「Tyr167Ala+Arg170Ala」。
本発明の詳細な説明
本発明の第一の側面は、
a.改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、又は
b.改変されたNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル、又は
c.改変されたNot4遺伝子又はそのホモログ、又は
d.Not4遺伝子又はそのホモログの改変された発現レベル
を有する真菌宿主細胞を提供する。
Not4は別名MOT2ともいう。改変されたNot4タンパク質とは、例えば参照Not4タンパク質、例えば野生型Not4タンパク質、例えば配列番号2と比較して、改変されたNot4タンパク質をいう。好ましくは、改変されたNot4タンパク質又はそのホモログは、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性、より好ましくは配列番号2に対して少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、又は少なくとも99.9%の同一性を有する。より好ましくは、改変されたNot4タンパク質は、配列番号4を含むか、配列番号4からなる。
Not4タンパク質又はそのホモログの改変されたレベルとは、Not4タンパク質又はそのホモログの低減された発現レベル、又は、Not4タンパク質又はそのホモログの低減された活性レベルであることが好ましい。前記低減されたレベルとは、参照真菌宿主細胞、例えばNot4タンパク質が配列番号2を含み、又は配列番号2からなる真菌宿主細胞と比較して、低減されたレベルであることが好ましい。参照真菌宿主のNot4タンパク質は、例えば野生型Not4配列、例えば配列番号2である。適切な参照真菌宿主細胞としては、S.セレビシエ(S. cerevisiae)S288C又はS.セレビシエ(S. cerevisiae)DXY1が挙げられる。S288Cは遺伝子型MATα SUC2 gal2 mal2 mel flo1 flo8−1 hap1 ho bio1 bio6を有する。DXY1は遺伝子型leu2−3、leu2−122、can1、pra1、ubc4、ura3:yap3を有する(Kerry-Williams et al. (1998) Yeast 14:161-169)。他の適切な参照真菌宿主細胞としては、Not4遺伝子又はNot4タンパク質又はそのホモログを除いて、宿主細胞と同一である細胞が挙げられる。例えば、参照のNot4遺伝子が野生型(例えば配列番号1)であってもよく、参照のNot4遺伝子が野生型Not4タンパク質(例えば配列番号2)であってもよく、参照によりコードされるNot4タンパク質が野生型(例えば配列番号2)であってもよい。本発明の宿主細胞は、Not4遺伝子又はNot4タンパク質若しくはそのホモログを除いて、親株と同一であることが好ましい。参照真菌宿主を、「対応する」(corresponding)真菌宿主と呼ぶ場合もある。参照真菌宿主は、例えば親真菌宿主である。
Not4タンパク質の低減されたレベル、又は、Not4タンパク質の活性レベルは、例えばNot4遺伝子を変異又は欠失させて、変異Not4タンパク質又はそのホモログを産生させ、或いはNot4タンパク質又はそのホモログを完全に消失させることにより;当該遺伝子のオープンリーディングフレームを除去又は改変することにより;Not4遺伝子の調節配列、例えばプロモーター配列及び/又はターミネーター配列を除去又は改変することにより;適切な干渉RNA、例えばアンチセンスmRNAを導入して、Not4遺伝子の転写を阻害又は低減することにより;適切な転写活性化遺伝子を導入、制御、又は修飾することにより;又は、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルを阻害する剤を導入することにより、達成することができる。タンパク質のレベル及びタンパク質の活性を測定する方法は、本技術分野では周知である。
Not4タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベルは、レベルの低減であってもよい。即ち、親又は参照真菌宿主細胞、例えば野生型真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルに対して、0、10、20、30、40、50、60、70、80又は90%から、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は95%の低減であってもよい。真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの低減された活性レベルは、例えば参照真菌宿主細胞、例えば上述の親真菌宿主細胞又は野生型真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルと比較して、そのレベルが低減されている。従って、宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルは、参照真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの最大95%、例えば参照真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの最大90、80、70、60、50、40、30、20、又は最大10%である。Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルは、ゼロ又は実質的にゼロとなるまで低減されてもよい。
Not4タンパク質又はそのホモログの改変された発現レベル(量)は、レベルの低減であってもよい。即ち、参照真菌宿主細胞、例えば野生型真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルに対して、0、10、20、30、40、50、60、70、80又は90%から、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は95%の低減であってもよい。真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの低減された発現レベルは、例えば参照真菌宿主細胞、例えば上述の親真菌宿主細胞又は野生型真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルと比較して、そのレベルが低減されている。従って、宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルは、参照真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルの最大95%、例えば参照真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルの最大90、80、70、60、50、40、30、20、又は最大10%である。Not4タンパク質又はそのホモログの発現レベルは、ゼロ又は実質的にゼロとなるまで低減されてもよい。
真菌宿主細胞は、機能的なNot4遺伝子若しくはそのホモログ、又は、Not4タンパク質若しくはそのホモログを欠失していてもよい。例えば、真菌宿主細胞は、Not4タンパク質又はそのホモログの低減された発現レベル、又は、Not4タンパク質又はそのホモログの低減された活性レベルを生じうるよう改変されたNot4遺伝子を含んでいてもよい。真菌宿主細胞は、Not4遺伝子又はそのホモログを、例えば欠失により欠いていてもよく、及び/又は、Not4タンパク質又はそのホモログを欠いていてもよい。
改変されたNot4タンパク質、又はそのホモログは、そのNot1タンパク質、又はそのホモログとの相互作用が改変されるように、変異されていてもよい。例えば、Not4タンパク質、又はそのホモログのN末端領域が変異されることで、例えば配列番号2の位置426〜439に対応するアミノ酸を含むαヘリックスが改変されてもよい。
即ち、本発明は、野生型Not4タンパク質(例えば配列番号2)と野生型Not1タンパク質(例えば配列番号9)との間の相互作用と比較して、Not4タンパク質又はそのホモログのNot1との相互作用、例えば疎水性相互作用が弱められてなる、真菌宿主細胞を提供する。
真菌宿主細胞は、配列番号2の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470から選択される位置に対応する位置、好ましくは:
配列番号2の位置426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、又は439、好ましくは429、430、434、又は437、最も好ましくは位置429に対応する位置;
配列番号2の位置460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470、好ましくは463、464、又は466に対応する位置;又は、
配列番号2の位置438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、又は456、好ましくは442、445、447又は452に対応する位置
から選択される位置に対応する位置に変異を含む、改変されたNot4タンパク質又はそのホモログを有していてもよい。
ここでの変異としては、例えば1又は2以上(例えば数個)の位置における置換、挿入、及び/又は欠失である。中でも置換が好ましい。
真菌宿主細胞は、改変されたNot4タンパク質又はそのホモログをコードするポリヌクレオチド配列、例えば配列番号3を含んでいてもよい。遺伝子コードの縮重ゆえに、所望の改変Not4タンパク質又はそのホモログをコードするポリヌクレオチド配列としては、複数の異なるポリヌクレオチド配列が存在する。
真菌宿主細胞は、改変されたNot4タンパク質又はそのホモログを含んでいてもよい。ここで変異としては、配列番号2を基準とした、あるアミノ酸の置換、好ましくはA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W及びYから選択される非保存アミノ酸への置換が挙げられる。
アミノ酸は種々の周知の群へと分類可能である。即ち、一部のアミノ酸は他のアミノ酸よりも相互の関連性が強い。本明細書で使用する場合、「保存アミノ酸置換」(conservative amino acid substitution)とは、同一群内で行われる置換であって、通常はタンパク質の機能に実質的な影響を与えない置換を意味する。「保存置換」とは、例えば図1の群内で行われる置換を意図した語である。図1は、保存のレベルを可視化した一体系を表すベン図である。一般に、低保存の置換とは、置換前のアミノ酸と置換後のアミノ酸との間に、多数の境界(線)hが存在するような置換である。「置換アミノ酸置換」としては、例えば以下に示す同一の群内での置換が挙げられる。
芳香族アミノ酸:F、H、W、Y;
脂肪族アミノ酸:I、L、V;
疎水性アミノ酸:A、C、F、H、I、K、L、M、T、V、W、Y;
荷電アミノ酸:D、E、H、K、R等:
正荷電アミノ酸:H、K、R;
負荷電アミノ酸:D、E;
極性アミノ酸:C、D、E、H、K、N、Q、R、S、T、W、Y;
小型アミノ酸:A、C、D、G、N、P、S、T、V等:
超小型アミノ酸:A、C、G、S。
或いは、「保存置換」としては、例えば以下の群内での置換が挙げられる。
脂肪族側鎖を有するアミノ酸:G、A、V、L、I;
芳香族側鎖を有するアミノ酸:F、Y、W;
硫黄含有側鎖を有するアミノ酸:C、M;
脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸:S、T;
塩基性側鎖を有するアミノ酸:K、R、H;
酸性アミノ酸及びそれらのアミド誘導体:D、E、N、Q。
置換は、本技術分野で公知の技術、例えば米国特許第4,302,386号公報(引用により本明細書に組み込まれる)に記載の部位特異的突然変異誘発法により作成することができる。
非保存アミノ置換とは、例えば、ある群から別の群への置換、例えば芳香族側鎖を有する群から脂肪族側鎖を有する群への置換を意味する。
配列番号2の位置429に対応する位置の変異は、天然アミノ酸、例えばFから、非天然アミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、好ましくはG、A、V、L、又はI、より好ましくはV、L又はI、最も好ましくはIへの置換であってもよい。非保存アミノ酸への置換であってもよい。脂肪族アミノ酸への置換であってもよい。特に好ましい置換はFからIへの置換である。
配列番号2の位置430に対応する位置の変異は、天然アミノ酸、例えばLから、任意の非天然アミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYへの置換であってもよい。非保存アミノ酸への置換であってもよい。
位置434に対応する位置の変異は、天然アミノ酸、例えばLから、任意の非天然アミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYへの置換であってもよい。非保存アミノ酸への置換であってもよい。
配列番号2の位置437に対応する位置の変異は、天然アミノ酸、例えばLから、任意の非天然アミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYへの置換であってもよい。非保存アミノ酸への置換であってもよい。
改変されたNot4タンパク質は、配列番号2のF429に対応する位置に、変異を有することが好ましい。
改変されたNot4タンパク質は、配列番号4を含む、或いは配列番号4からなることが好ましい。即ち、変異F429Lを含むことが好ましい。
或いは、改変されたレベルが、レベルの上昇であってもよい。Not4タンパク質又はそのホモログの上昇したレベル又は上昇した活性は、所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の産生量を低減する可能性が高い。斯かる産生量の低減は、例えば所望のタンパク質が宿主細胞の生存性にとって有害である場合等に望ましい。上昇したレベルとは、例えば参照宿主、例えば親宿主を基準として、少なくとも105、110、120、130、140、150、175、又は200%のレベルとなることが挙げられる。
真菌宿主細胞は、組換真菌宿主細胞であってもよい。
真菌宿主細胞は、酵母又は糸状菌であってもよい。本明細書で使用する場合、「真菌」(fungi)には、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、及び接合菌門(Zygomycota)(Hawksworth et al., In, Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKの定義による)が含まれると共に、卵菌類(Oomycota)(Hawksworth et al., 1995, 同上, page 171にて列記)及びあらゆる栄養胞子形成菌類(Hawksworth et al., 1995, 同上)も含まれる。
好ましい側面では、真菌宿主細胞は、酵母細胞である。本明細書で使用する場合、「酵母」(yeast)には、子嚢胞子形成酵母(エンドミセス:Endomycetales)、担子胞子形成酵母、及び、不完全菌類に属する酵母(分芽菌:Blastomycetes)が挙げられる。斯かる酵母の分類は将来変更される可能性もあるため、本発明の目的においては、Biology and Activities of Yeast (Skinner, F.A., Passmore, S.M., and Davenport, R.R., eds, Soc. App. Bacteriol. Symposium Series No: 9, 1980)の記載に基づいて酵母を定義するものとする。
より好ましい側面では、酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クルイウェロミセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、又はヤロウイア(Yarrowia)細胞である。
より好ましい側面では、酵母宿主細胞は、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロミセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、又はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)細胞である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)宿主が特に好ましい。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の遺伝子型の特徴のうち1又は2以上を有していてもよく、いなくてもよい:leu2−3、leu2−122、can1、pra1、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2、pmt1::URA3(国際公開第2014/138371号:引用により本明細書に組み込まれる)、例えばS.セレビシエ(S. cerevisiae)BXP10。S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、MATaを含むことが好ましい。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の遺伝子型のうち1又は2以上を含んでいてもよく、いなくてもよい:MATa、leu2−3、leu2−112、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2;更にPDI1、URA3及びYIplac211がPDI1遺伝子座に組み込まれたもの(Finnis et al 2010, Microbial Cell Factories 9:87)、例えば S.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の遺伝子型のうち1又は2以上を含んでいてもよく、いなくてもよい:MATα、leu2、pep4−3、例えばFinnis et al 1993, Eur. J. Biochem, 212: 201-210に記載のS.セレビシエ(S. cerevisiae)MT302/28B。
S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の遺伝子型を含んでいてもよく、いなくてもよい: MATα、SUC2、gal2、mal2、mel、flo1、flo8-1、hap1、ho、bio1、bio6(Mortimer and Johnston (1986) Genetics 113:35-43)、例えばS.セレビシエ(S. cerevisiae)S288C。
好ましいS.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主株は、以下の全てを含むか、以下の全てからなる:MATa、leu2−3、leu2−122、can1、pra1、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2、及びpmt1::URA3。
他の好ましいS.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の全てを含むか、以下の全てからなる:MATa、leu2−3、leu2−112、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2、更にPDI1、URA3及びYIplac211がPDI1遺伝子座に組み込まれたもの。
他の好ましいS.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の全てを含むか、以下の全てからなる:MATα、SUC2、gal2、mal2、mel、flo1、flo8−1、hap1、ho、bio1、bio6。
他の好ましいS.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の全てを含むか、以下の全てからなる:MATα、leu2、pep4−3。
宿主は、倍数体、二倍体、又は単数体である。単数体又は二倍体の酵母宿主が好ましく、中でも好ましいのは単数体である。
宿主交配型としては、例えばMATa又はMATα(Mat−アルファ)が挙げられる。S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、ヒトアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体をコードするプラスミドを含むことが好ましい。
「糸状菌」(filamentous fungi)には、真菌類(Eumycota)及び卵菌類(Oomycota)亜区分のあらゆる糸状形態が含まれる(Hawksworth et al., 1995, 同上の定義による)。糸状菌(filamentous fungi)の特徴は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合多糖類から構成される菌糸壁(mycelial wall)である。栄養成長は菌糸伸長によって行われ、炭素異化は偏性好気性である。対称的に、酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等による栄養成長は、単細胞性葉状体の出芽によって行われ、炭素異化としては発酵の場合もある。
好ましい糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞は、Acremonium、Aspergillus、Aureobasidium、Bjerkandera、Ceriporiopsis、Chrysosporium、Coprinus、Coriolus、Cryptococcus、Filibasidium、Fusarium、Humicola、Magnaporthe、Mucor、Myceliophthora、Neocallimastix、Neurospora、Paecilomyces、Penicillium、Phanerochaete、Phlebia、Piromyces、Pleurotus、Schizophyllum、Talaromyces、Thermoascus、Thielavia、Tolypocladium、Trametes、又はTrichodermaを含んでもよく、含まなくてもよい。
真菌宿主細胞は、所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでいてもよい。所望のタンパク質は、異種タンパク質であることが好ましい。異種タンパク質とは、天然では宿主細胞によって産生されないタンパク質である。好ましくは、例えば選択マーカー、例えば抗生物質抵抗性マーカー又は栄養要求性マーカー、シャペロン、FLP又はFRT等を含まないことが好ましい。
真菌宿主細胞は発現宿主であってもよい。真菌宿主細胞は発現カセットを含んでいてもよく、これは例えば所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードしていてもよい。斯かる発現カセットは、例えばベクター、例えばプラスミドの中に存在していてもよい。真菌宿主細胞は発現ベクターを含んでいてもよい。
所望のタンパク質は、植物性タンパク質若しくは動物性タンパク質又はそれらの変異体であってもよく、なくてもよい。所望のタンパク質は、アルブミン、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン(antistasin)、ダニ抗凝固ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小モジュラー免疫医薬(登録商標)(「SMIP」)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、Kunitzドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号に記載のもの、アルブミン融合体を有するものも含む)、インターフェロン、インターロイキン、IL−10、IL−11、IL−2、インターフェロンα(アルファ)種及び亜種、インターフェロンβ(ベータ)種及び亜種、インターフェロンγ(ガンマ)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL−1−受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣体、トロンボポイエチン(TPO)及びTPO模倣体、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン(cyanovirin)−N、5−ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIV gp41、HIV gp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエクステンジン(exendin)−4、GLP−1又はGLP−2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(ベータ)、腫瘍壊死因子、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、FGF、凝固因子(前駆体及び活性型を含む)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand's)因子、アルファ1−抗トリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝生成物、抗生物質、又は上記の何れかの変異体若しくは断片の配列を含んでいてもよく、いなくてもよい。
当該変異体は、上記のタンパク質のうち1又は2以上に対して、少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有することが好ましい。
好ましい所望のタンパク質は、血清タンパク質、例えばアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体であってもよく、なくてもよい。斯かるアルブミンは、配列番号6に対して、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、98.2、98.4、98.6、98.8、99、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、又は99.9から、70、75、80、85、90、95、96、97、98、98.2、98.4、98.6、98.8、99、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、又は100%の配列同一性を有することが好ましい。中でも、前記アルブミンは、配列番号6を含み、又は配列番号6からなることが最も好ましい。
アルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体は、配列番号6の位置K573に対応する位置にA、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを、より好ましくは、配列番号6の位置K573に対応する位置にP、H、W又はYを含んでいてもよく、いなくてもよい。特に、アルブミン変異体は、配列番号6に対して少なくとも95%の同一性(より好ましくは少なくとも96、97、98又は99%の同一性)を有すると共に、配列番号6の位置573に対応する位置にPを含むことが好ましい。
他の好ましいアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体としては、国際公開第2011/051489号、国際公開第2011/124718号、国際公開第2012/059486号、国際公開第2012/150319号、国際公開第2014/072481号、国際公開第2013/135896号、国際公開第2015/036579号、国際公開第2010/092135号、国際公開第2013/075066号、国際公開第2014/179657号、国際公開第2009/126920号、国際公開第2010/059315号、国際公開第2011/103076号、国際公開第2012/112188号、及び国際公開第2015/063611号(各々引用により本明細書に組み込まれる)に記載のもの、並びにその断片又は融合体が挙げられる。
斯かるアルブミンは、アルブミン又はその変異体の断片であってもよく、なくてもよい。
斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体は、親アルブミン、或いはその断片及び/又は融合体と比較して、FcRnに対する結合親和性がより強められ、又は弱められてなる(好ましくは、より強められてなる)。
斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体のFcRn(例えばshFcRn)に対するKDは、対応するHSA又はそのコンジュゲートのKDよりも低くてもよい。アルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体のFcRnに対するKDは、HSAのFcRnに対するKD×0.9未満、より好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.5未満、より好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.1未満、より一層好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.05未満、より一層好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.02未満、より一層好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.01未満、最も好ましくは、HSAのFcRnに対するKD×0.001未満であることが好ましい(ここで×は倍数を表す)。KDが低いほど結合親和性は強くなる。
斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体のFcRnに対するKDは、対応するHSA又はそのコンジュゲートのKDよりも高くてもよい。アルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体のFcRnに対するKDは、HSAのFcRnに対するKD×2以上、より好ましくはHSAのFcRnに対するKD×5以上、より好ましくはHSAのFcRnに対するKD×10以上、より一層好ましくはHSAのFcRnに対するKD×25以上、最も好ましくはHSAのFcRnに対するKD×50以上であることが好ましい。斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体は、FcRnに対して全く結合しなくてもよい。KDが高いほど結合親和性は弱くなる。
KDを決定及び/又は比較する際には、以下のパラメーターのうち1又は2以上(例えば数個)(好ましくは全て)を用いてもよい。
機器: Biacore 3000 instrument(GE Healthcare)。
フローセル:cm5センサーチップ。
FcRn:ヒトFcRn、好ましくは可溶性ヒトFcRn、任意によりタグを連結。タグの例としてはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)又はヒスチジン(His)、最も好ましくはHis、例えばベータ−2−ミクログロブリンのC末端に6つのヒスチジン残基を付加。
FcRnの量:1200〜2500RU。
結合化学:アミンカップリング化学(例えば機器メーカーが提供するプロトコールの記載に準拠)。
結合方法:カップリングは、例えば10mM 酢酸ナトリウム、pH5.0(GE Healthcare)中20μg/mLのタンパク質を注入して実施する。ラニングバッファー及び希釈用バッファーとしては、リン酸緩衝液(67mM リン酸緩衝液、0.15M NaCl、0.005% Tween 20)、pH5.5を使用すればよい。表面の再生は、HBS−EP緩衝液(0.01M HEPES、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20)、pH7.4(Biacore AB)を注入して行えばよい。
試験分子(例えばHSA又は変異体)の注入量:20〜0.032μM。
注入流速:定速、例えば30μL/mL。
注入温度:25℃。
データ評価用ソフトウェア:BIAevaluation 4.1ソフトウェア(Biacore AB)。
斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体の血漿半減期は、親アルブミン、或いはその断片及び/又は融合体と比較してより長く、又はより短くてもよいが、より長いことが好ましい。
血漿半減期は、適切な個人において、インビボで決定するのが理想的である。しかし、動物又はヒトで実験を行うと、時間及び費用が掛かる上に、倫理的な懸念が避けられない。よって、血漿半減期が延長又は短縮されたことを確認するためには、インビトロアッセイを用いることが望ましい。アルブミンのその受容体(FcRn)への結合は、血漿半減期にとって重要な因子であること、また、受容体結合性と血漿半減期との相関によれば、アルブミンのその受容体への親和性が高いほど、血漿半減期は長くなることが知られている。従って、本発明では、アルブミンのFcRnへの親和性が高いほど、血漿半減期が延長されており、アルブミンのその受容体への親和性が低いほど、血漿半減期が短縮されていると判断ことができる。
アルブミンのその受容体FcRnへの結合は、親和性という言葉と、「より強い」(stronger)又は「より弱い」(weaker)という表現を用いて表すことができる。即ち、FcRnに対する親和性がHSAよりも強い分子は、HSAよりもFcRnへの結合性が強く、FcRnに対する親和性がHSAよりも弱い分子は、HSAよりもFcRnへの結合性が弱いと判断ことができる。「結合親和性」(binding affinity)という言葉に替えて、「結合係数」(binding coefficient)という言葉を用いてもよい。
「血漿半減期がより長い」又は「血漿半減期がより短い」という記載、及び類似の表現は、対応する親又は参照又は対応するアルブミン分子との対比に基づくものと解すべきである。即ち、本発明の変異体アルブミンに関して、血漿半減期がより長いとは、斯かる変異体が、本明細書に記載の改変を有する他は同一の配列を有する対応するアルブミンと比較して、より長い血漿半減期を有することを意味する。
斯かるアルブミン、或いはその変異体及び/又は断片は、遺伝子工学的に融合パートナーと連結されていてもよく、いなくてもよい。融合パートナーは、非アルブミンタンパク質であることが好ましい。融合パートナーは、例えばアルブミンのN’末端又はC’末端に連結される。アルブミン部分とパートナー部分との間には、1又は2以上のスペーサーアミノ酸が存在していてもよい。融合パートナーは、アルブミン配列内に挿入されていてもよい。融合パートナーは、例えば少なくとも5アミノ酸長、例えば少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、又は少なくとも100アミノ酸長である。斯かる融合パートナーの最大長は、例えば35、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000アミノ酸長である。
融合体タンパク質は、1又は2以上の融合パートナーを有していてもよい。これらは例えばアルブミンのN’又はC’末端に連結され、或いはアルブミン配列内に挿入される。融合体タンパク質は、1又は2以上(例えば数個、例えば2、3、4又は5)コピーの同一の融合パートナーを有していてもよく、2種又はそれ以上の異なるパートナーを有していてもよい。斯かる融合パートナーは、例えば上述した所望のタンパク質又は異種タンパク質の中から選択される。
好ましい融合体タンパク質は、GLP−1活性を有するポリペプチド、例えば国際公開第2014/138371号(引用により本明細書に組み込まれる。特に第13、14、26、34〜37ページを参照)に記載のものを含んでいてもよい。例えば、好ましい融合体タンパク質は、HSA(配列番号6)、或いはHSAの変異体及び/又は断片が、1コピーのGLP類似物(例えば配列番号10)と遺伝子工学的に連結されたものを含んでいてもよく、HSA(配列番号6)、或いはHSAの変異体及び/又は断片が、GLP類似物のタンデムリピート(例えば配列番号11)と遺伝子工学的に連結されたものを含んでいてもよい。例えば、融合体タンパク質は、配列番号12(アルビグルチド:albiglutide)を含んでいてもよく、配列番号12からなるものでもよい。
斯かるアルブミン、変異体、或いはその断片及び/又は融合体の産生に特に適した真菌宿主細胞としては、これらに限定されるものではないが、アスペルギルス(Aspergillus)(国際公開第06/066595号)、クルイウェロミセス(Kluyveromyces)(Fleer, 1991, Bio/technology 9: 968-975)、ピチア(Pichia)(Kobayashi, 1998, Therapeutic Apheresis 2: 257-262)、及びサッカロミセス(Saccharomyces)(Sleep, 1990, Bio/technology 8: 42-46)が挙げられる。これらの文献は、各々引用により本明細書に組み込まれる。
所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)は、分泌タンパク質であってもよく、なくてもよい。即ち、宿主細胞によりコードされるタンパク質は、シグナルペプチド(文献によっては「リーダー配列」と記載される場合もある)を含んでいてもよく、いなくてもよい。通常、タンパク質が宿主細胞から分泌される際に、シグナルペプチド配列はタンパク質から切断されるため、最終的な(成熟)タンパク質は、シグナルペプチド配列を含まない。適切なシグナルペプチド配列の例を以下に挙げる。シグナルペプチドは、プロペプチドを含んでいてもよく、いなくてもよい。
或いは、所望のタンパク質は、細胞内タンパク質であってもよく、なくてもよい。
所望のタンパク質は、プラスミドによりコードされるものであってもよく、なくてもよい。
所望のタンパク質は、染色体核酸によりコードされるものであってもよく、なくてもよい。
適切なプラスミドとしては、2ミクロンファミリープラスミド、例えば国際公開第2006/067511号(引用により本明細書に組み込まれる。特に強調すべきは「2ミクロンファミリープラスミド」(“The 2μm-family plasmids”、第46〜61ページ)と題された項目である。)に記載のものが挙げられる。2ミクロンファミリープラスミドと総称される斯かるプラスミドとしては、チゴサッカロミセス・ルーキシィ(Zygosaccharomyces rouxii)(旧来の分類はチゴサッカロミセス・ビスポラス(Zygosaccharomyces bisporus))由来のpSR1、pSB3、及びpSB4、チゴサッカロミセス・バイリィ(Zygosaccharomyces bailii)由来のプラスミドpSB1及びpSB2、チゴサッカロミセス・フェルメンタティ(Zygosaccharomyces fermentati)由来のプラスミドpSM1、クルイベロミセス・ドロソフィラルム(Kluyveromyces drosphilarum)由来のプラスミドpKD1、ピチア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens)由来の未だ命名されていないプラスミド(「pPM1」)、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の2μmプラスミド(例えば国際公開第2006/067511号の図1に示す)及び変異体(例えばScp1、Scp2、及びScp3)が挙げられる(Volkert, et al., 1989, Microbiological Reviews 53: 299; Murray et al., 1988, J. Mol. Biol. 200: 601; Painting, et al., 1984, J. Applied Bacteriology 56: 331)。
2ミクロンファミリープラスミドは、通常は少なくとも3つのオープンリーディングフレーム(「ORF」)を含む。これらのORFは各々、2ミクロンファミリープラスミドを多重コピープラスミドとして安定的に維持する機能を有するタンパク質をコードする。これら3つのORFによりコードされるタンパク質は、FLP、REP1、及びREP2と記される。2ミクロンファミリープラスミドが、FLP、REP1、及びREP2をコードするこれら3つのORFの全てを含んでいない場合には、欠落しているタンパク質をコードするORFを、他のプラスミド又は染色体組み込みにより、トランスで補う必要がある。
好ましいプラスミドとしては、S.セレビシエ(S. cerevisiae)由来の2ミクロンプラスミドが挙げられる。これは所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードすることが好ましい。
Not4タンパク質、及び/又は、所望の(例えば異種の)タンパク質が、1又は2以上の調節配列と作動式に連結されたヌクレオチド配列によってコードされてもよい。この場合、斯かる調節配列は、これと適合する条件下で、適切な宿主細胞によるコーディング配列の発現を誘導するように構成される。
斯かるポリヌクレオチドは、ポリペプチドの発現を提供するように、種々の方法で改変されてもよい。発現ベクターによっては、斯かるポリヌクレオチドをベクターへ挿入する前に、これを改変することが望ましい、或いは必要である場合がある。組換DNA法を用いたポリヌクレオチドの改変技術は、本技術分野では公知である。
調節配列としては、プロモーターが挙げられる。これは、斯かるポリヌクレオチドを発現させるべく、宿主細胞により認識されるポリヌクレオチドである。プロモーターは、斯かるポリペプチドの発現を媒介する転写調節配列を含む。斯かるプロモーターは、宿主細胞において転写活性を示す任意のポリヌクレオチドであってよい。例としては、ミュータント、切断型、及びハイブリッドプロモーターが挙げられる。また、宿主細胞に対して同種又は異種の細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子であってもよい。
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において本発明の核酸コンストラクトの転写を誘導する適切なプロモーターの例としては、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アセトアミナーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)中性アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)耐酸性アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)、又はアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)アルカリ性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)トリオーズリン酸イソメラーゼ、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(国際公開第96/00787号)、フザリウム・ヴェネナタム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ(国際公開第00/56900号)、フザリウム・ヴェネナタム(Fusarium venenatum)Daria(国際公開第00/56900号)、フザリウム・ヴェネナタム(Fusarium venenatum)Quinn(国際公開第00/56900号)、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ベータ−グルコシダーゼ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドラーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドラーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼ III、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼ I、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ベータ-キシロシダーゼ、並びにNA2 tpiプロモーター(アスペルギウス(Aspergillus)中性アルファアミラーゼ遺伝子由来の改変プロモーターであって、その非翻訳リーダーがアスペルギウス(Aspergillus)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーで置換されてなるもの;非限定的な例としては、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)中性アルファアミラーゼ遺伝子由来の改変プロモーターであって、その非翻訳リーダーアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーで置換されたもの);並びにそのミュータント、切断型、及びハイブリッドプロモーターの遺伝子から得られるプロモーターが挙げられる。
酵母宿主において有用なプロモーターとしては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)メタロチオネイン(CUP1)、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)3−ホスホグリセリン酸キナーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。酵母宿主細胞における他の有用なプロモーターとしては、Romanos et al., 1992, 同上に記載のものが挙げられる。
調節配列としては、転写ターミネーターも挙げられる。これは、転写を終了するために、宿主細胞によって認識される配列である。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’末端に、作動式に連結される。宿主細胞において機能しうる任意のターミネーターを用いることができる。
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において好ましいターミネーターとしては、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)アルファ-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、及びフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。
酵母宿主細胞において好ましいターミネーターとしては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)cytochrome C(CYC1)、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)グリセルアルデヒドー3ーリン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。酵母宿主細胞において有用な他のターミネーターとしては、Romanos et al., 1992, 同上に記載のものが挙げられる。
調節配列としては、mRNA安定化領域も挙げられる。これは、プロモーターの下流且つ遺伝子のコーディング配列の上流に配置され、遺伝子の発現を増強する。
調節配列としては、リーダーも挙げられる。これは、宿主細胞による翻訳にとって重要なmRNAの非翻訳領域である。リーダー配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの5’末端に、作動式に連結される。宿主細胞において機能しうる任意のリーダーを用いることができる。
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において好ましいリーダーとしては、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ及びアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)トリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。
酵母宿主細胞に適したリーダーとしては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO-1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルファ因子、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒドー3ーリン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)の遺伝子から得られるものが挙げられる。
調節配列としては、ポリアデニル化配列も挙げられる。これは、ポリペプチドエンコーディング配列の3’末端に作動式に連結され、転写の際に宿主細胞によって、転写されたmRNA配列に対してポリアデノシン残基を付加するシグナルとして認識される配列である。宿主細胞において機能しうる任意のポリアデニル化配列を用いることができる。
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において好ましいポリアデニル化配列としては、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)アルファ-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKA アミラーゼ、及びフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。
酵母宿主細胞において有用なポリアデニル化配列としては、Guo and Sherman, 1995, Mol. Cellular Biol. 15: 5983-5990に記載のものが挙げられる。
調節配列としては、シグナルペプチドコーディング領域も挙げられる。これは、ポリペプチドのN末端に連結され、ポリペプチドを細胞の分泌経路に誘導する、シグナルペプチドをコードする配列である。ポリヌクレオチドのコーディング配列の5’末端は、ポリペプチドをコードするコーディング配列のセグメントに、翻訳リーディングフレームにおいて連結された、天然のシグナルペプチドコーディング配列を含んでいてもよい。或いは、コーディング配列の5’末端は、コーディング配列に対して外来のシグナルペプチドコーディング配列を含んでいてもよい。コーディング配列が天然のシグナルペプチドコーディング配列をふくまない場合には、外来のシグナルペプチドコーディング配列が必要である。或いは、ポリペプチドの分泌を増強するために、外来のシグナルペプチドコーディング配列によって、天然のシグナルペプチドコーディング配列をそのまま置換してもよい。しかし、発現されたポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に誘導しうる、任意のシグナルペプチドコーディング配列を用いることができる。
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において有効なシグナルペプチドコーディング配列としては、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)中性アミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼ、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)エンドグルカナーゼV、ヒュミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)リパーゼ、及びリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼの遺伝子から得られるシグナルペプチドコーディング配列が挙げられる。
酵母宿主細胞、例えばアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体の産生のための酵母宿主細胞において好ましいシグナルペプチドとしては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルファ因子の遺伝子から得られるシグナルペプチド、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)インベルターゼの遺伝子から得られるシグナルペプチド、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)KEX2の遺伝子から得られるシグナルペプチド、例えば配列番号13を含む、又は配列番号13からなるもの、又は、改変されたKEX2シグナルペプチド配列、例えば配列番号14を含む、又は配列番号14からなるものが挙げられる。
特に好ましいシグナルペプチドとしては:国際公開第90/01063号(引用により本明細書に組み込まれる)に教示される、交配因子アルファシグナルペプチド配列とヒトアルブミンシグナルペプチド配列との融合体を含むシグナルペプチド(斯かるシグナルペプチド配列の例を配列番号15に示す);配列番号16のペンタペプチドモチーフを含むシグナルペプチド(ここでペンタペプチドモチーフは、シグナルペプチド配列の疎水性ドメインに、例えば未成熟タンパク質の−10〜−25の位置に存在する(ここで位置−1は、成熟配列の第一のアミノ酸のN末端に直接隣接するシグナルペプチド配列のアミノ酸を指し、或いはプロペプチドを含むシグナルペプチド配列の場合、位置−1は、プロペプチドの第一のアミノ酸のN末端に直接隣接するシグナルペプチド配列のアミノ酸を指す))(斯かるシグナルペプチド配列の例は、国際公開第2004/009819号(引用により本明細書に組み込まれる)に開示されている);配列番号16のペンタペプチドモチーフを含むように改変されたアルブミンシグナルペプチド(ペンタペプチドモチーフがシグナルペプチド配列の疎水性ドメイン内に存在していてもよい)(斯かる改変されたシグナルペプチド配列の例を配列番号17に示す)(ここで斯かるペンタペプチドモチーフは、インベルターゼシグナルペプチド内に挿入されて、改変されたインベルターゼシグナルペプチドを生成するように構成されてもよい(改変されたインベルターゼシグナルペプチドの例を配列番号35及び配列番号36に示す));又は配列番号16のペンタペプチドモチーフを含むと共に、シグナルペプチド配列のC’末端にプロペプチドを含むように改変されたアルブミンシグナルペプチド(ここでペンタペプチドモチーフは、シグナルペプチド配列の疎水性ドメイン内に配置されてもよい)(斯かる改変されたシグナルペプチド配列の例を、配列番号18、配列番号19、及び配列番号20に示す)が挙げられる。
例えば、アルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体の発現の場合、配列番号15、配列番号20、及び配列番号36を含む、又はこれらからなるシグナルペプチドが特に好ましい。
他の有用なシグナルペプチドコーディング配列は、Romanos et al., 1992, 同上に記載されている。
調節配列としては、プロペプチドコーディング配列も挙げられる。これは、ポリペプチドのN末端に位置するプロペプチドをコードする配列である。その結果として生じるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は場合によってはチモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般に不活性であり、触媒又は自己触媒作用によってプロポリペプチドからプロペプチドが切断されると、活性ポリペプチドに転換される。プロペプチドコーディング配列としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルファ因子の遺伝子から得られるものが挙げられる。
シグナルペプチド及びプロペプチド配列がともに存在する場合、プロペプチド配列はポリペプチドのN末端に隣接して配置され、シグナルペプチド配列はプロペプチド配列のN末端に隣接して配置される。
宿主細胞の増殖に伴いポリペプチドの発現を調節する調節配列を追加することも望ましい。調節系の例としては、調節性化合物の存在等の化学的又は物理的な刺激に応答して、遺伝子の発現を開始又は停止する系が挙げられる。酵母では、ADH2系又はGAL1系を使用することができる。糸状菌(filamentous fungi)では、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)グルコアミラーゼプロモーター、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアルファ-アミラーゼプロモーター、及びアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼプロモーターを使用することができる。調節配列の他の例としては、遺伝子の増幅を可能とするものが挙げられる。真核系では、これらの調節配列としては、メトトレキサートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子や、重金属により増幅されるメタロチオネイン遺伝子等が挙げられる。これらの例では、前記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、斯かる調節配列と作動式に連結されることになる。
宿主株 は、1又は2以上のシャペロンタンパク質を発現又は過剰発現してもよく、しなくてもよい。例としては、国際公開第2005/061718号、国際公開第2006/067511号、国際公開第2006/136831号、又は国際公開第2014/138371号に記載のものが挙げられる。これらは何れも引用により本明細書に組み込まれる。例えば、宿主株は、以下の遺伝子のうち1又は2以上を過剰発現してもよく、しなくてもよい:AHA1、CCT2、CCT3、CCT4、CCT5、CCT6、CCT7、CCT8、CNS1、CPR3、CPR6、ERO1、EUG1、FMO1、HCH1、HSP10、HSP12、HSP104、HSP26、HSP30、HSP42、HSP60、HSP78、HSP82、JEM1、MDJ1、MDJ2、MPD1、MPD2、PDI1、PFD1、ABC1、APJ1、ATP11、ATP12、BTT1、CDC37、CPR7、HSC82、KAR2、LHS1、MGE1、MRS11、NOB1、ECM10、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSC1、SSE2、SIL1、SLS1、ORM1、ORM2、PER1、PTC2、PSE1、UBI4、及びHAC1、又は切断型イントロン欠失HAC1(Valkonen et al., 2003, Applied Environ. Micro., 69: 2065)、並びにTIM9、PAM18(別名TIM14)、及びTCP1(別名CCT1)、或いはこれらの変異体。中でも、PDI1(配列番号21)又はその変異体若しくは断片、及び/又は、ERO1(配列番号22)又はその変異体若しくは断片の過剰発現が好ましい。過剰発現としては、宿主細胞におけるシャペロンの天然レベルでの発現と比較して、シャペロンの発現が少なくとも25、50、75、100、200、300、400、500%増加することが挙げられる。過剰発現はシャペロン量の増加に相当してもよく、或いはシャペロン活性に相当してもよい。過剰発現は、例えばシャペロンをコードする遺伝子のコピー数を増加させることにより、例えば当該遺伝子を2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のコピー数で含む宿主細胞を提供すること等により達成される。変異体シャペロンは、元のシャペロンに対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有することが好ましい。斯かる変異体は、シャペロンの機能的な活性を維持していることが好ましい。
宿主細胞は、プロテアーゼ又はその断片及び/又は変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸を含んでいてもよく、いなくてもよい。宿主細胞は、プロテアーゼ、例えばカルシウム依存性セリンプロテアーゼ、例えばキラー発現プロテアーゼ(Killer expression protease:Kex2p)、又はその断片及び/又は変異体等をコードする核酸を少なくとも1つ、含んでいてもよく、いなくてもよい。プロテアーゼ変異体又は断片は機能的である、例えば認識配列Arg−Arg/X又はLys−Arg/Xのカルボキシ末端で、ポリペプチドを切断する能力を有することが好ましい。KEX2ヌクレオチド配列は配列番号23を含み、或いは配列番号23からなっていてもよく、Kex2pタンパク質は配列番号24を含み、或いは配列番号24からなっていてもよい。KEX2及びKex2pの変異体は、それぞれ配列番号23及び配列番号24と、少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%の同一性を有していてもよい。KEX2は過剰発現されていてもよく、いなくてもよい。
宿主細胞、最も好ましくはS.セレビシエ(S. cerevisiae)は、PDI1及び/又はERO1を過剰発現し、Kex2pをコードする核酸を少なくとも1つふくむことが好ましい。
Not4タンパク質又はそのホモログをコードするヌクレオチド配列、及び所望のタンパク質は、本技術分野で公知の任意の突然変異誘発法、例えば部位特異的突然変異誘発法、合成遺伝子構築法、半合成遺伝子構築法、ランダム突然変異誘発法、シャッフリング等により調製することができる。
部位特異的突然変異誘発法は、親をコードするポリヌクレオチド内の1又は2以上の所定の部位に、1又は2以上の(例えば数個の)変異を導入する技術である。
部位特異的突然変異誘発法は、インビトロにおいて、所望の変異を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRにより達成することができる。また、部位特異的突然変異誘発法は、インビトロにおいて、親をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド内の一部位を制限酵素で切断した後、前記ポリヌクレオチド内に変異を含むオリゴヌクレオチドを連結することを含むカセット突然変異誘発法により達成することもできる。通常は、プラスミドとオリゴヌクレオチドとを同一の制限酵素で切断することにより、プラスミド及び挿入物に粘着末端を形成し、相互に連結を可能とすることが好ましい。例えばScherer and Davis, 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 4949-4955;及びBarton et al., 1990, Nucleic Acids Res. 18: 7349-4966等を参照のこと。
部位特異的突然変異誘発法は、本技術分野で公知の方法により、インビボデ達成することもできる。例えば、米国特許出願公開第2004/0171154号公報;Storici et al., 2001, Nature Biotechnol. 19: 773-776;Kren et al., 1998, Nat. Med. 4: 285-290;及びCalissano and Macino, 1996, Fungal Genet. Newslett. 43: 15-16等を参照のこと。
本発明では任意の部位特異的突然変異誘発法を使用できる。ポリペプチドの調製に使用可能なキットは多数市販されている。
合成遺伝子構築法は、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を設計し、インビトロで合成することを含む。遺伝子合成には多数の技術を用いることができる。例としては、Tian et al. (2004, Nature 432: 1050-1054)が記載する多重マイクロチップ系技術や、光プログラム可能なマイクロ流通チップを用いてオリゴヌクレオチドの合成及び組み立てを行う類似の技術が挙げられる。
単一又は多重のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入は、既知の突然変異誘発法、組換法、及び/又は、シャッフリング法を実施し、続いて関連するスクリーニング方を実施することにより、作製及び検証することができる。例としては、Reidhaar-Olson and Sauer, 1988, Science 241: 53-57;Bowie and Sauer, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 2152-2156;国際公開第95/17413号;又は国際公開第95/22625号に記載の方法が挙げられる。使用可能な他の方法としては、エラー許容性(error-prone)PCR、ファージディスプレイ(例えばLowman et al., 1991, Biochemistry 30: 10832-10837;米国特許第5,223,409号公報;国際公開第92/06204号)、及び領域特異的突然変異誘発法(Derbyshire et al., 1986, Gene 46: 145;Ner et al., 1988, DNA 7: 127)等が挙げられる。
突然変異誘発/シャッフリング法を高スループット自動スクリーニング法と組み合わせ、宿主細胞が発現するクローン化突然変異誘発ポリペプチドの活性を検出することもできる(Ness et al., 1999, Nature Biotechnology 17: 893-896)。活性ポリペプチドをコードする突然変異誘発DNA分子の宿主細胞殻の回収及び即時の配列決定は、本分野で標準的な方法により実施することができる。これらの方法により、ポリペプチド中の個々のアミノ酸残基の重要性を、迅速に決定することが可能となる。
半合成遺伝子構築法は、合成遺伝子構築法、及び/又は、部位特異的突然変異誘発法、及び/又は、ランダム突然変異誘発法、及び/又は、シャッフリング法の各側面を組み合わせることにより実施することができる。半合成構築法は、合成されたポリヌクレオチド断片を用い、これをPCR技術と組み合わせたことを特徴とする方法である。従って、例えば遺伝子のある所定の領域を新規に(de novo)合成し、他の領域を部位特異的突然変異誘発プライマーを用いて増幅し、更に他の領域をエラー許容性(error-prone)PCR又はエラー非許容性(non-error prone)PCR増幅に供することができる。その後、ポリヌクレオチドのサブ配列をシャッフルしてもよい。
本発明の第二の側面は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、真菌宿主細胞の培養物であって、当該真菌宿主細胞が、改変された、例えば低減された、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル、又は、改変された、例えば低減された、Not4タンパク質又はそのホモログの発現レベルを有する、培養物を提供する。本発明の第二の側面に係る真菌宿主細胞は、本発明の第一の側面について説明したものと同様である。
或いは、本発明の第二の側面は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、真菌宿主細胞の培養物であって、当該真菌宿主細胞が、上昇したNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル、又は、上昇したNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルを有する、培養物を提供する。斯かる本発明の第二の側面の代替例に係る真菌宿主細胞は、本発明の第一の側面について説明したものと同様である。斯かる例は例えば、宿主の生存性に害を及ぼす所望のタンパク質の産生に有用である。
本発明の第三の側面は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質を、真菌宿主細胞により産生する方法であって、本発明の第一の側面に係る真菌宿主細胞、又は、本発明の第二の側面に係る培養物を供し、前記真菌宿主細胞又はその培養物を培養して、前記所望のタンパク質を産生させることを含む、方法を提供する。斯かる方法を使用することで、例えば、真菌宿主細胞による所望のポリペプチドの産生量を改変することができる。ある例によれば、あるタンパク質の産生量を増加させることが望ましい。他の例によれば、あるタンパク質、例えば宿主細胞に対して毒性を有しうるタンパク質について、その産生量を低減することが望ましい。
斯かる所望のタンパク質は、宿主細胞から分泌されるものであってもよく、なくてもよいが、分泌タンパク質であることが好ましい。
宿主細胞は例えば、所望のタンパク質の産生に適した栄養培地中、本技術分野で公知の方法により培養することができる。例えば、斯かる細胞は、震盪フラスコ培養により、或いは小スケール又は大スケール発酵(例えば連続、バッチ、供給バッチ、又は固相発酵等)により、実験室又は工業用発酵漕により、適切な培地中、ポリペプチドの発現及び/又は単離を許容する条件下で培養することができる。培養は、例えば炭素及び窒素源並びに無機塩を含む適切な栄養培地中、本技術分野で公知の方法を用いて実施することができる。適切な培地は、市販の製造業者から入手してもよく、(例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログ等で)公表されている組成に基づき調製してもよい。好ましい培地としては、実施例2に記載のMW11Dを含む培地が挙げられる。所望のタンパク質が栄養培地中に分泌される場合、所望のタンパク質を培地から直接回収してもよい。所望のタンパク質が分泌されない場合、例えば細胞溶解物から回収すればよい。
培養は小スケールでも大スケールでもよく、例えばマイクロタイタープレート スケール(例えば培養培地体積10〜500μL)、震盪フラスコスケール(例えば培養体積5〜1000mL)、或いは発酵漕又は同等の系のスケール(例えば少なくとも培養体積5mL、より好ましくは少なくとも1、2、3、4又は5L、より好ましくは少なくとも10、50、100Lから、例えば少なくとも500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000Lまで)のいずれでもよい。
培養は、例えば宿主細胞に適したpHで行うことができる。S.セレビシエ(S. cerevisiae)の場合、そのpHは5〜7、例えば5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、又は6.9から、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9又は7までの範囲とすることができる。好ましいpH範囲は、約6.0から約6.4までの範囲である。
所望のタンパク質の検出は、所望のタンパク質に特異的な本技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。斯かる検出方法としては、これらに限定されるものではないが、特異抗体の使用や、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられる。
好ましいHPLCとしては、ゲル浸透HPLC(GP−HPLC)が挙げられる。適切な装置としてはLC2010 HPLC系(Shimadzu)を用い、これにUV検出器を装備し、Shimadzu VP7.3クライアントサーバーソフトウェアで制御したものが挙げられる。例えば注入量を75μLとし、これを7.8mm id×300mm長さのTSK G3000SWXLカラム(Tosoh Bioscience)に、6.0mm id×40mm長さのTSK SWガードカラム(Tosoh Bioscience)を組み合わせたものに導入する。試料のクロマトグラフ測定は、例えば25mM リン酸ナトリウム、100mM 硫酸ナトリウム、0.05%(w/v)アジ化ナトリウム、pH7.0中、1mL・分−1で、稼働時間20分間で実施することができる。試料の定量は、例えば280nmでUV検出を行い、ピーク面積を既知の濃度(例えば10mg/mL)の組換ヒトアルブミン標準品と比較し、相対吸光係数で補正することにより行うことができる。
本方法は任意により、前記所望のタンパク質を回収することを含む。例としては、宿主細胞又は宿主細胞培養物から、例えば細胞培地又は細胞溶解物から、所望のタンパク質を単離してもよい。
所望のタンパク質の回収は、本技術分野で公知の方法を用いて実施しうる。例えば、所望のタンパク質の栄養培地からの回収は、従来の方法、例えばこれらに限定されるものではないが、収集、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸散、又は沈殿を用いて行うことができる。
本方法は任意により、前記所望のタンパク質を精製することを含む。所望のタンパク質の精製は、本技術分野で公知の種々の方法により実施しうる。例としては、これらに限定されるものではないが、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性、疎水性、クロマト分画、及びサイズ排除)、電気泳動法(例えば予備的等電点電気泳動法)、示差溶解性(例えば硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE、又は抽出法(例えばProtein Purification, Janson and Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989)等を用いて、実質的に純粋な所望のタンパク質を得ることができる。
代替的な側面によれば、所望のタンパク質を回収する代わりに、所望のタンパク質を発現する本発明の宿主細胞を、所望のタンパク質の供給源として用いることもできる。
前記所望のタンパク質(例えば所望の異種タンパク質)を培養宿主細胞又は培地から精製する工程は、任意により細胞固定化、細胞分離、及び/又は、細胞破砕をふくんでいてもよい。但し、斯かる工程とは異なる他の少なくとも1つの精製工程、或いは細胞固定化、分離、及び/又は破砕の工程を含む。
細胞固定化技術、例えば細胞をアルギン酸ナトリウムビーズに内包させる技術は、本技術分野で公知である。同様に、細胞分離技術、例えば遠心分離、濾過(例えば直交流濾過)、膨張床(expanded bed)クロマトグラフィー等も、本技術分野で公知である。同様に、細胞破砕の方法、例えばビーズミル処理、超音波処理、酵素暴露等も、本技術分野で公知である。
他の少なくとも1つの精製工程は、タンパク質精製に適した工程であれば、本技術分野で公知の任意の工程を用いることができる。例えば、組換発現アルブミンの回収のための精製技術は、国際公開第2010/128142号、アルブミン特異性リガンド、例えば2−クロロ−4,6−ジ(2’−スルホアニリノ)−S−トリアジン等を用いた親和性精製;国際公開第92/04367号、マトリックス由来染料の除去;欧州特許出願第464590号公報、酵母由来色素の除去;欧州特許出願第319067号公報、アルカリ沈殿及びそれに続くアルブミンの親油性相への暴露;並びに、国際公開第96/37515号、米国特許第5728553号、及び国際公開第00/44772号公報に記載の、完全精製工程等が挙げられる。これらは何れも引用により本明細書に組み込まれる。
アルブミン以外の他の所望のタンパク質も、斯かるタンパク質の精製に有用であることが知られている任意の技術を用いて、培地から精製することができる。
適切な方法としては、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸又は溶媒抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、濃縮、希釈、pH調節、透析濾過、限界濾過、高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)、逆相HPLC、導電率調節等が挙げられる。
任意により、斯かる方法は、単離されたタンパク質を、商業的又は工業的許容しうるレベルに至るまで精製することを含んでいてもよい。商業的又は工業的許容しうるレベルの純度としては、例えば少なくとも0.01g・L−1、0.02g・L−1、0.03g・L−1、0.04g・L−1、0.05g・L−1,0.06g・L−1,0.07g・L−1、0.08g・L−1、0.09g・L−1、0.1g・L−1、0.2g・L−1、0.3g・L−1、0.4g・L−1、0.5g・L−1、0.6g・L−1、0.7g・L−1、0.8g・L−1、0.9g・L−1、1g・L−1、2g・L−1、3g・L−1、4g・L−1、5g・L−1、6g・L−1、7g・L−1、8g・L−1、9g・L−1、10g・L−1、15g・L−1、20g・L−1、25g・L−1、30g・L−1、40g・L−1,50g・L−1、60g・L−1、70g・L−1、80g・L−1、90g・L−1、100g・L−1、150g・L−1、200g・L−1,250g・L−1、300g・L−1、350g・L−1、400g・L−1、500g・L−1、600g・L−1、700g・L−1、800g・L−1、900g・L−1、1000g・L−1、又はそれ以上のタンパク質濃度が挙げられる。商業的又は工業的許容しうるレベルの純度としては、例えば単離タンパク質中に存在する他の物質(例えば1又は2以上(例えば数個)の夾雑物)の比率が、少なくとも例えば少なくとも50%未満、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%、0.00001%、又は0.000001%未満、最も好ましくは0%のレベルで存在することが挙げられる。
斯かるタンパク質は、例えば少なくとも0.01g・L−1、0.02g・L−1、0.03g・L−1、0.04g・L−1、0.05g・L−1,0.06g・L−1,0.07g・L−1、0.08g・L−1、0.09g・L−1、0.1g・L−1、0.2g・L−1、0.3g・L−1、0.4g・L−1、0.5g・L−1、0.6g・L−1、0.7g・L−1、0.8g・L−1、0.9g・L−1、1g・L−1、2g・L−1、3g・L−1、4g・L−1、5g・L−1、6g・L−1、7g・L−1、8g・L−1、9g・L−1、10g・L−1、15g・L−1、20g・L−1、25g・L−1、30g・L−1、40g・L−1,50g・L−1、60g・L−1、70g・L−1、80g・L−1、90g・L−1、100g・L−1、150g・L−1、200g・L−1,250g・L−1、300g・L−1、350g・L−1、400g・L−1、500g・L−1、600g・L−1、700g・L−1、800g・L−1、900g・L−1、1000g・L−1、又はそれ以上の濃度濃度で供される。
所望のタンパク質を精製することにより、医薬的に許容可能なレベルの純度を達成することが好ましい。タンパク質が医薬的に許容可能なレベルの純度を有するとは、タンパク質が実質的に発熱物質を含まず、惹いては、タンパク質の活性とは関連しない医薬作用を引き起こすことなく、タンパク質の医薬有効量を投与できる濃度を意味する。
本方法は任意により、前記所望のタンパク質を、治療上許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療製剤を製造することを含む。
得られた所望のタンパク質は、その既知の用途のうち何れかに用いるものでもよく、用いなくともよい。斯かる用途の例としては、アルブミンの場合、患者に静脈内(i.v.)投与することにより、重傷の火傷、ショック及び貧血を治療することに加え、補充培養培地としての使用や、他のタンパク質の製剤の賦形剤としての使用が挙げられる。
本発明の方法により得られた治療的、診断的、工業的、家庭的、又は栄養的に有用な所望のタンパク質は、単独で供給又は投与してもよいが、1又は2以上の許容しうる担体又は希釈剤と組み合わせ、製剤(例えば医薬製剤、特に治療的及び/又は診断的に有用なタンパク質の場合)の形態とすることが好ましい。担体又は希釈剤が「許容しうる」とは、所望のタンパク質と適合しうると共に、需要者への投与を意図した製剤の場合、その受容者に有害でないことを意味する。通常、担体又は希釈剤は水又は食塩水であり、無菌で且つ発熱物質を含まない。
任意により、こうして製剤化されたタンパク質を単位投与形態として、例えば錠剤、カプセル、注射溶液等の形態で提供してもよい。
任意により、斯かる方法は更に、前記所望のタンパク質を単位投与形態として提供することを含む。
本発明の第四の側面は、所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の産生量を増加させる方法であって、本発明の第二の側面に係る方法を提供する。
また、本発明の第四の側面は、所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の産生量を増加させるための、本発明の第一の側面に係る宿主細胞、又は、本発明の第二の側面に係る培養物の使用を提供する。
産生量とは、溶液、例えば培養液や細胞溶解混合物等の中における、生成物、例えば所望のタンパク質等の量を意味する。産生量は、例えば参照宿主株からの産生量を100%として、相対量として表してもよい。宿主株と比較する場合、所定の条件群の下で産生量を測定することが好ましい。絶対産生量は、例えばμL当たりng(ng/μL)又はL当たりg(g/L)として表現することができる。
前記所望のタンパク質の産生量は、参照真菌宿主細胞、例えば野生型Not4タンパク質、例えば配列番号2のタンパク質を有する真菌宿主細胞からの産生量と比較して、少なくとも2%高い、より好ましくは少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高いことが好ましい。参照真菌宿主細胞は、配列番号2のNot4タンパク質を有することが好ましい。
所望のタンパク質は、本発明の第一の側面について説明したとおりであり、特にアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体である。
本発明の第五の側面は、本発明の第二、第三又は第四の側面に係る方法により作製された所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)を提供する。
また、本発明は、本発明の第四の側面の所望のタンパク質を含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。斯かる医薬組成物は、更に1又は2以上の医薬的に許容可能な担体、例えば米国食品医薬品局又は欧州医薬品庁等の規制当局によって承認されたものを含んでいてもよい。更に、本発明は、患者を治療する方法であって、斯かる医薬組成物の有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。
本発明の第六の側面は、本発明の第一の側面に係る真菌宿主細胞、又は、本発明の第二の側面に係る培養物を調製する方法を提供する。斯かる方法は、(親)真菌宿主細胞を遺伝子工学的に改変することにより、結果として得られるNot4タンパク質又はそのホモログを改変し、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルを改変、例えば低減し、Not4遺伝子又はそのホモログ又はその調節配列を改変し、或いは、Not4遺伝子又はそのホモログの発現レベルを改変することを含む。活性及び/又は発現レベルの変異、欠失、及び修飾は、本発明の第一、第二、及び第三の側面について説明したとおりである。宿主細胞を改変する方法は、本技術分野で公知である。
本発明の第七の側面は、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有すると共に、配列番号2の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470から選択される1又は2以上の位置、好ましくは(a)429、430、434、又は437;(b)463、464又は466;又は(c)442、445、447又は452から選択される1又は2以上の位置に対応する位置に変異を有する、Not4タンパク質、又はそのホモログを提供する。配列番号2の位置429に対応する位置の変異が特に好ましい。
本発明の第七の側面に係るNot4タンパク質は、例えば本発明の第一の側面について説明したとおりである。斯かるNot4タンパク質は、配列番号4を含む、又は配列番号4からなることが好ましい。本発明の第七の側面のNot4タンパク質は、単離されたタンパク質であってもよく、なくてもよい。
本発明の第八の側面は、本発明のNot4変異体、例えば配列番号2の変異体であって、野生型Not4タンパク質、例えば配列番号2、又はそのホモログをコードする宿主細胞と比べて、Not4タンパク質の発現レベルが低減されてなる変異体若しくはそのホモログ、又は、Not4タンパク質の活性レベルが低減されてなる変異体若しくはそのホモログをコードするポリヌクレオチドを提供する。斯かるNot4タンパク質は、本発明の第一から第六の側面について説明したとおりである。
好ましいポリヌクレオチドとしては、変異F429I(配列番号4)を有するNot4タンパク質が挙げられる。斯かるポリヌクレオチド配列の例は、配列番号3に供される。
また、本発明は例えば、本発明のNot4変異体をコードするポリヌクレオチドと、これと作動式に連結された1又は2以上の調節配列とを含む核酸コンストラクトであって、前記調節配列が、適切な宿主細胞内で、且つ、前記調節配列と適合しうる条件下で、前記コーディング配列の発現を誘導するように構成された、核酸コンストラクトにも関する。適切な調節配列は、本発明の第一から第六の側面について説明したとおりである。斯かるポリヌクレオチドは、ベクター内に位置していてもよく、宿主細胞のゲノム内に位置していてもよい。
従って、本発明は、本発明のNot4変異体をコードするポリヌクレオチド、プロモーター、並び、転写及び翻訳停止シグナルを含む組換ベクターにも関する。また、本発明は、Not4をコードするポリヌクレオチドと、Not4のレベル又はNot4の活性を改変しうる、例えば低減しうる、1又は2以上(例えば数個)の調節配列とを含むベクターにも関する。種々のヌクレオチド及び調節配列を組み合わせることで、組換ベクター内に1又は2以上の有用な制限部位を組み込んでもよく、これにより、変異体をコードするポリヌクレオチドを、斯かる部位に挿入又は置換することが可能となる。或いは、ポリヌクレオチド又はそれを含む核酸コンストラクトを、適切な発現用ベクターに挿入することにより、斯かるポリヌクレオチドを発現させてもよい。ベクターを作製する際には、コーディング配列が発現用の適切な調節配列と作動式に連結されるように、コーディング配列をベクター内に配置する。
組換ベクターは、組換DNA手順に簡便に供することができ、且つ、斯かるポリヌクレオチドの発現を生じさせることが可能な限り、任意のベクター(例えばプラスミド又はウイルス)であってよい。ベクターの選択は、通常はベクターを導入する宿主細胞との適合性に依存する。ベクターは直鎖状でも閉鎖環状プラスミドでもよい。
ベクターは自己複製ベクター、即ち染色体外に存在し、染色体複製とは独立に複製されるベクターであってもよい。その例としては、プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、又は人工染色体が挙げられる。ベクターは自己複製を行うための何らかの手段を含んでいてもよい。或いはベクターは、宿主細胞内に導入されるとゲノムに組み込まれると共に、導入された染色体と一緒に複製されるものであってもよい。更に、宿主細胞のゲノムに取り込まれるべきDNAは、単一のベクター又はプラスミドにまとめて含まれていてもよく、2又はそれ以上のベクター又はプラスミドに分割して含まれていてもよい。更にはトランスポゾンを用いてもよい。
ベクターは、形質転換、トランスフェクト、形質導入等された細胞の選択を可能とする、1又は2以上の選択マーカーを含むことが好ましい。選択マーカーとしては、殺生物性、ウイルス抵抗性、重金属に対する抵抗性、栄養要求体に対する原栄養性等を提供する遺伝子生成物を発現する遺伝子が挙げられる。
斯かるベクターは、ベクターが宿主細胞のゲノム内に組み込まれること、又は、ベクターがゲノムとは独立に細胞内で自己複製することを可能とする要素を含むことが好ましい。
ベクターが宿主細胞ゲノム内に組み込まれるには、ベクターが相同又は非相同組換によりゲノム内に組み込まれるように、ポリヌクレオチド内の変異体をコードする配列、又は、ベクターの他の任意の要素の構成を設計してもよい。或いは、ベクターが(1又は2以上の)染色体内の(1又は2以上の)位置に対して、相同組換により正確に組み込まれるように、ベクターに追加のポリヌクレオチドを付与してもよい。正確な位置で組み込みが生じる確率を高めるべく、組み込みのための要素として、対応する標的配列に対して高い配列同一性を有する十分な数の核酸、例えば100〜10,000塩基対、400〜10,000塩基対、及び800〜10,000塩基対の核酸を設けることで、相同組換の可能性を向上させることができる。斯かる組み込みのための要素は、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相同であれば、任意の配列とすることができる。更に、組み込みのための要素は、ポリヌクレオチドをコードする配列であってもよく、コードしない配列であってもよい。或いは、ベクターは、宿主細胞のゲノムに対して、非相同組換により組み込まれてもよい。
ベクターが自己複製を生じるように、所望の宿主細胞内での自律的複製を可能とする複製起点を、ベクターに含めてもよい。複製起点としては、細胞内で自己複製を媒介するよう機能しうる任意のプラスミド複製子が挙げられる。「複製起点」又は「プラスミド複製子」という語は、プラスミド又はベクターのインビボでの複製を可能とするポリヌクレオチドを意味する。
酵母宿主細胞で使用可能な複製起点の例としては、2ミクロン複製起点、ARS1、ARS4、ARS1とCEN3との組合せ、及び、ARS4とCEN6との組合せが挙げられる。
糸状菌(filamentous fungi)細胞で有用な複製起点の例としては、AMA1及びANS1が挙げられる(Gems et al., 1991, Gene 98: 61-67;Cullen et al., 1987, Nucleic Acids Res. 15: 9163-9175;国際公開第00/24883号)。AMA1遺伝子の単離、及び、当該遺伝子を含むプラスミド又はベクターの構築は、国際公開第00/24883号に開示の方法に従って行うことができる。
所望のタンパク質の産生を高めるために、本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞に2コピー以上導入してもよい。ポリヌクレオチドのコピー数の増加は、少なくとも1コピー分多い配列を宿主細胞のゲノム内に組み込むことにより、或いは、ポリヌクレオチドと共に増幅可能な選択マーカー遺伝子を導入し、その後に適切な選択物質の存在下で細胞を培養することで、増幅されたコピー数の選択マーカー遺伝子を含む細胞、惹いては増幅されたコピー数のポリヌクレオチドを含むを含む細胞を選択することにより、達成することができる。
上述の要素を連結して本発明の組換ベクターを構築するための手法は、当業者には既知である(例えばSambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor, New Yorkを参照)。
好ましい態様
1.a.改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、又は
b.Not4タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベル又は発現レベル、又は
c.改変されたNot4遺伝子又はそのホモログ、又は
d.Not4遺伝子又はそのホモログの改変された発現レベル
を有する真菌宿主細胞。
2.前記改変されたレベルが、低減されたレベルである、態様1の真菌宿主細胞。
3.前記改変されたレベルが、上昇したレベルである、態様1の真菌宿主細胞。
4.前記改変されたレベルが、参照真菌宿主細胞、例えば、
a.Not4タンパク質又はそのホモログが、野生型Not4タンパク質又はそのホモログである真菌宿主細胞、
b.Not4タンパク質が配列番号2を含み、又は配列番号2からなる真菌宿主細胞、
c.S.セレビシエ(S. cerevisiae)S288C、又は
d.S.セレビシエ(S. cerevisiae)DXY1
のレベルに対して相対的に改変されたレベルである、前記の何れかの態様の真菌宿主細胞。
5.所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列、例えば異種タンパク質を含む、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
6.前記所望のタンパク質が、アルブミン、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン(antistasin)、ダニ抗凝固ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小モジュラー免疫医薬(登録商標)(「SMIP」)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、Kunitzドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号に記載のもの、アルブミン融合体を有するものも含む)、インターフェロン、インターロイキン、IL−10、IL−11、IL−2、インターフェロンα(アルファ)種及び亜種、インターフェロンβ(ベータ)種及び亜種、インターフェロンγ(ガンマ)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL−1−受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣体、トロンボポイエチン(TPO)及びTPO模倣体、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン(cyanovirin)−N、5−ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIV gp41、HIV gp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエクステンジン(exendin)−4、GLP−1又はGLP−2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(ベータ)、腫瘍壊死因子、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、FGF、凝固因子(前駆体及び活性型を含む)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand’s)因子、アルファ1−抗トリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝生成物、抗生物質、又は上記の何れかの変異体若しくは断片から選択される、態様5に係る真菌宿主細胞。
7.前記所望のタンパク質が、アルブミン、変異体、或いはその断片及び/又は融合体を含む、或いはアルブミン、変異体、或いはその断片及び/又は融合体からなる、態様5又は6に係る真菌宿主細胞。
8.前記のアルブミン或いはその変異体、断片及び/又は融合体が、配列番号6に対して、少なくとも70%の同一性を有する、態様7に係る真菌宿主細胞。
9.前記のアルブミン或いはその変異体、断片及び/又は融合体が、配列番号6に対して、少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有する、態様7に係る真菌宿主細胞。
10.前記のアルブミン或いはその変異体、断片及び/又は融合体が、配列番号6に対して少なくとも70%の同一性、好ましくは配列番号6に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有すると共に、配列番号6の位置K573に対応する位置に、A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを含む、態様9に係る真菌宿主細胞。
11.前記のアルブミン或いはその変異体、断片及び/又は融合体が、配列番号6の位置K573に対応する位置に、P、H、W又はYを含む、態様10に係る真菌宿主細胞。
12.前記のアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体が、配列番号6に対して少なくとも98%の同一性を有すると共に、配列番号6の位置K573に対応する位置にPを含む、態様11に係る真菌宿主細胞。
13.前記融合体が融合パートナーを含むと共に、前記融合パートナーがアルブミン、或いはその変異体又は断片又は融合体ではない、態様5〜12の何れかに係る真菌宿主細胞。
14.前記融合体が融合パートナーを含むと共に、前記融合パートナーがモノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン(antistasin)、ダニ抗凝固ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小モジュラー免疫医薬(登録商標)(「SMIP」)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、Kunitzドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号に記載のものインターフェロン、インターロイキン、IL−10、IL−11、IL−2、インターフェロンα(アルファ)種及び亜種、インターフェロンβ(ベータ)種及び亜種、インターフェロンγ(ガンマ)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL−1−受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣体、トロンボポイエチン(TPO)及びTPO模倣体、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン(cyanovirin)−N、5−ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIV gp41、HIV gp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエクステンジン(exendin)−4、GLP−1又はGLP−2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(ベータ)、腫瘍壊死因子、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、FGF、凝固因子(前駆体及び活性型を含む)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand’s)因子、アルファ1−抗トリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝生成物、抗生物質、又は上記の何れかの変異体若しくは断片から選択される、態様7〜13の何れかに係る真菌宿主細胞。
15.前記融合パートナーが、グルカゴン様タンパク質又はその類似物を含む、或いはグルカゴン様タンパク質又はその類似物からなる、態様13又は14に係る真菌宿主細胞。
16.前記融合パートナーが、配列番号10又は配列番号11を含む、或いは配列番号10又は配列番号11からなる、態様15に係る真菌宿主細胞。
17.前記所望のタンパク質が、配列番号12を含む、或いは配列番号12からなる、態様5〜16の何れかに係る真菌宿主細胞。
18.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベル又は発現レベルが、親真菌宿主細胞、例えば野生型真菌宿主細胞における、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルに対して、相対的に改変された活性レベル又は発現レベルである、態様2〜17の何れかに係る真菌宿主細胞。
19.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが、親真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの90%以下に低減されたレベルである、態様18に係る真菌宿主細胞。
20.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが、親真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの80%以下に低減されたレベルである、態様19に係る真菌宿主細胞。
21.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが、親真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの70%以下に低減されたレベルである、態様20に係る真菌宿主細胞。
22.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが、親真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの60%以下に低減されたレベルである、態様21に係る真菌宿主細胞。
23.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが、親真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの50%以下に低減されたレベルである、態様22に係る真菌宿主細胞。
24.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが、親真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの40%以下に低減されたレベルである、態様23に係る真菌宿主細胞。
25.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが、親真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの30%以下に低減されたレベルである、態様24に係る真菌宿主細胞。
26.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが、親真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの20%以下に低減されたレベルである、態様25に係る真菌宿主細胞。
27.前記のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが、親真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルに対して、実質的に0%まで低減されたレベルである、態様26に係る真菌宿主細胞。
28.前記宿主細胞が、機能的なNot4遺伝子又はそのホモログ又は機能的なNot4タンパク質又はそのホモログを欠失している、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
29.前記宿主細胞が、Not4遺伝子若しくはそのホモログ、又は、Not4タンパク質若しくはそのホモログを欠失している、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
30.Not4タンパク質又はそのホモログとNot1タンパク質又はそのホモログとの相互作用を改変するように、前記のNot4遺伝子若しくはそのホモログ、又は、Not4タンパク質若しくはそのホモログが変異されてなる、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
31.前記のNot4タンパク質又はそのホモログが、配列番号2の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470から選択される位置に対応する位置に変異を有する、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
32.前記位置が、配列番号2の429、430、434、又は437に対応する位置から選択される、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
33.前記位置が、配列番号2の463、464又は466に対応する位置から選択される、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
34.前記位置が、配列番号2の442、445、447又は452に対応する位置から選択される、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
35.前記変異が置換、好ましくは非保存アミノ酸である、態様32〜34の何れかに係る真菌宿主細胞。
36.配列番号2の位置429に対応する位置の変異が、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくはG、A、V、L又はI、より好ましくはI、L又はV、最も好ましくはIへの置換である、態様31、32又は35に係る真菌宿主細胞。
37.配列番号2の位置429に対応する位置の変異が、芳香族アミノ酸から脂肪族アミノ酸への置換である、態様31、32又は35に係る真菌宿主細胞。
38.前記Not4タンパク質が、配列番号4を含む、或いは配列番号4からなる、態様36又は37に係る真菌宿主細胞。
39.改変されたNot4遺伝子、例えば配列番号4をコードするポリヌクレオチドを含む、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
40.前記宿主細胞が、Not4遺伝子若しくはそのホモログ、又は、Not4タンパク質若しくはそのホモログを欠失してなる、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
41.AHA1、CCT2、CCT3、CCT4、CCT5、CCT6、CCT7、CCT8、CNS1、CPR3、CPR6、ERO1、EUG1、FMO1、HCH1、HSP10、HSP12、HSP104、HSP26、HSP30、HSP42、HSP60、HSP78、HSP82、JEM1、MDJ1、MDJ2、MPD1、MPD2、PDI1、PFD1、ABC1、APJ1、ATP11、ATP12、BTT1、CDC37、CPR7、HSC82、KAR2、LHS1、MGE1、MRS11、NOB1、ECM10、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSC1、SSE2、SIL1、SLS1、ORM1、ORM2、PER1、PTC2、PSE1、UBI4、及びHAC1又は切断型イントロン欠失HAC1、TIM9、PAM18、TCP1、又はその変異体からなるシャペロンのうち、1又は2以上が過剰発現されている、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
42.KEX2、又はその変異体若しくは断片が、発現又は過剰発現されている、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
43.PDI1又はその変異体が過剰発現されている、又は、ERO1又はその変異体が過剰発現されている、態様41又は42に係る真菌宿主細胞。
44.PDI1又はその変異体が過剰発現されており、且つ、ERO1又はその変異体が過剰発現されている、態様41又は42に係る真菌宿主細胞。
45.PDI1又はその変異体が過剰発現されており、且つ、KEX2又はその変異体が発現又は過剰発現されている、態様41又は42に係る真菌宿主細胞。
46.ERO1又はその変異体が過剰発現されており、且つ、KEX2又はその変異体が発現又は過剰発現されている、態様41又は42に係る真菌宿主細胞。
47.PDI1又はその変異体が過剰発現されており、且つ、ERO1又はその変異体が過剰発現されており、且つ、KEX2又はその変異体が発現又は過剰発現されている、態様41〜46の何れかに係る真菌宿主細胞。
48.前記真菌宿主が酵母又は糸状菌である、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
49.前記宿主細胞が、サッカロミセス(Saccharomyces)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クルイウェロミセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、又はヤロウイア(Yarrowia)である、前記の何れかの態様に係る真菌宿主細胞。
50.サッカロミセス(Saccharomyces)が、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ディアスタティクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ダグラシー(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・(Saccharomyces norbensis)、又はサッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)であり、好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、態様49に係る真菌宿主細胞。
51.所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、真菌宿主細胞の培養物であって、前記真菌宿主細胞がNot4タンパク質又はそのホモログの低減された活性レベルを有することを特徴とする、真菌宿主細胞の培養物。
52.前記宿主細胞が、態様1〜50の何れかに規定される宿主細胞である、態様51の真菌宿主細胞の培養物。
53.所望のタンパク質、例えば異種タンパク質を、真菌宿主細胞により産生する方法であって、
(i)態様1〜50の何れかに係る真菌宿主細胞、又は、態様51若しくは52に係る培養物を提供し、
(ii)前記真菌宿主細胞又はその培養物を培養して、前記所望のタンパク質を産生させ、
(iii)任意により前記所望のタンパク質を回収し、
(iv)任意により前記所望のタンパク質を精製し、
(v)任意により前記所望のタンパク質を、治療上許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療製剤を製造し、
(vi)任意により前記所望のタンパク質を単位投与形態として提供する
ことを含む方法。
54.所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の産生量を増加させる方法であって、
(i)a.改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、又は
b.Not4タンパク質又はそのホモログの改変された(好ましくは低減された)活性レベル、又は
c.改変されたNot4遺伝子又はそのホモログ、又は
d.改変された(好ましくは低減された)発現レベルのNot4遺伝子又はそのホモログ
を有する真菌宿主細胞(例えば酵母又は糸状菌)を提供し、
(ii)前記宿主細胞を培養して前記所望のタンパク質を産生させ、
(iii)任意により前記所望のタンパク質を回収し、
(iv)任意により前記所望のタンパク質を精製し、
(v)任意により前記所望のタンパク質を、治療上許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療製剤を製造し、
(vi)任意により前記所望のタンパク質を単位投与形態として提供する
ことを含む方法。
55.前記所望のタンパク質の産生量が、参照真菌宿主細胞、例えば野生型Not4タンパク質を有する真菌宿主細胞、例えば配列番号2を有する真菌宿主細胞からの産生量と比較して、少なくとも2%高い、態様53又は54に係る方法。
56.前記産生量が、参照真菌宿主細胞からの産生量と比較して、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高い、態様55に係る方法。
57.前記所望のタンパク質の産生量が、参照真菌宿主細胞、例えば配列番号2のNot4タンパク質を有する真菌宿主細胞による産生量と比較して、少なくとも2%高い、態様55又は56に係る方法。
58.前記産生量が、参照真菌宿主細胞からの産生量と比較して、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高い、態様57に係る方法。
59.前記所望のタンパク質が、アルブミン、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン(antistasin)、ダニ抗凝固ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小モジュラー免疫医薬(登録商標)(「SMIP」)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、Kunitzドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号に記載のもの、アルブミン融合体を有するものも含む)、インターフェロン、インターロイキン、IL−10、IL−11、IL−2、インターフェロンα(アルファ)種及び亜種、インターフェロンβ(ベータ)種及び亜種、インターフェロンγ(ガンマ)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL−1−受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣体、トロンボポイエチン(TPO)及びTPO模倣体、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン(cyanovirin)−N、5−ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIV gp41、HIV gp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエクステンジン(exendin)−4、GLP−1又はGLP−2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(ベータ)、腫瘍壊死因子、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、FGF、凝固因子(前駆体及び活性型を含む)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand’s)因子、アルファ1−抗トリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝生成物、抗生物質、又は上記の何れかの変異体若しくは断片から選択される、態様53〜58の何れかに係る方法。
60.前記所望のタンパク質が、アルブミン、又はその変異体、断片及び/若しくは融合体を含み、或いはアルブミン、又はその変異体、断片及び/若しくは融合体からなる、態様53〜59の何れかに係る方法。
61.前記アルブミン或いはその変異体、断片及び/又は融合体が、配列番号6に対して少なくとも70%の同一性を有する、態様60に係る方法。
62.前記アルブミン或いはその変異体、断片及び/又は融合体が、配列番号6に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有する、態様61に係る方法。
63.前記アルブミン或いはその変異体、断片及び/又は融合体が、配列番号6に対して少なくとも70%の同一性、好ましくは配列番号6に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有すると共に、配列番号6の位置K573に対応する位置にA、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを含む、態様62に係る方法。
64.前記アルブミン或いはその変異体、断片及び/又は融合体が、配列番号6の位置K573に対応する位置にP、H、W又はYを含む、態様63に係る方法。
65.前記アルブミン或いはその変異体、断片及び/又は融合体が、配列番号6に対して少なくとも98%の同一性を有すると共に、配列番号6の位置K573に対応する位置にPを含む、態様64に係る方法。
66.前記融合体が融合パートナーを含み、前記融合パートナーがアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体ではない、態様53〜65の何れかに係る方法。
67.前記融合体が、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン(antistasin)、ダニ抗凝固ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小モジュラー免疫医薬(登録商標)(「SMIP」)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、Kunitzドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号に記載のものインターフェロン、インターロイキン、IL−10、IL−11、IL−2、インターフェロンα(アルファ)種及び亜種、インターフェロンβ(ベータ)種及び亜種、インターフェロンγ(ガンマ)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL−1−受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣体、トロンボポイエチン(TPO)及びTPO模倣体、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン(cyanovirin)−N、5−ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIV gp41、HIV gp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエクステンジン(exendin)−4、GLP−1又はGLP−2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(ベータ)、腫瘍壊死因子、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、FGF、凝固因子(前駆体及び活性型を含む)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand’s)因子、アルファ1−抗トリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝生成物、抗生物質、又は上記の何れかの変異体若しくは断片から選択される融合パートナーを含む、態様53〜66の何れかに係る方法。
68.前記融合パートナーが、グルカゴン様タンパク質又はその類似物を含む、或いはグルカゴン様タンパク質又はその類似物からなる、態様67に係る方法。
69.前記融合パートナーが、配列番号10又は配列番号11を含む、或いは配列番号10又は配列番号11からなる、態様68に係る方法。
70.前記所望のタンパク質が、配列番号12を含む、或いは配列番号12からなる、態様53〜69の何れかに係る方法。
71.前記宿主細胞が、少なくとも1Lのスケールで培養される、態様53〜70の何れかに係る方法。
72.前記宿主細胞が、少なくとも2Lのスケールで培養される、態様71に係る方法。
73.前記宿主細胞が、少なくとも5Lのスケールで培養される、態様72に係る方法。
74.前記宿主細胞が、少なくとも10Lのスケールで培養される、態様73に係る方法。
75.前記宿主細胞が、少なくとも1000Lのスケールで培養される、態様74に係る方法。
76.前記宿主細胞が、少なくとも5000Lのスケールで培養される、態様75に係る方法。
77.前記所望のタンパク質が、真菌宿主細胞から分泌される、態様53〜76の何れかに係る方法。
78.前記所望のタンパク質が、シグナルペプチドを含む未成熟タンパク質に由来する、態様77に係る方法。
79.前記シグナルペプチドが、配列番号13の、配列番号14、配列番号15、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号35、又は配列番号36を含む、或いはこれらの何れかの配列からなる、或いは、配列番号16のペンタペプチドモチーフを含むシグナルペプチドである、態様78に係る方法。
80.前記シグナルペプチドが、配列番号15を含む、或いは配列番号15からなる、態様79に係る方法。
81.前記シグナルペプチドが、配列番号20を含む、或いは配列番号20からなる、態様79に係る方法。
82.前記シグナルペプチドが、配列番号36を含む、或いは配列番号36からなる、態様79に係る方法。
83.前記所望のタンパク質が、細胞内に存在する、態様53〜77の何れかに係る方法。
84.態様53〜83の何れかに係る方法により製造される所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)。
85.予防、治療、又は診断のための、態様84に係る所望のタンパク質。
86.態様84又は85に係る所望のタンパク質と、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物、例えば医薬組成物。
87.態様84若しくは85に係る所望のタンパク質、又は、態様86に係る組成物を、患者に投与することを含む治療方法。
88.態様1〜50の何れかに係る真菌宿主細胞、又は、態様51若しくは52に係る培養物を調製する方法であって、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルが低減されるように、(親)真菌宿主細胞を遺伝子工学的に改変することを含む方法。
89.真菌宿主細胞による所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の産生量等を増加させるための、真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルを減少させる手段の使用であって、前記手段が:Not4遺伝子を変異又は欠失させることにより、Not4タンパク質又はそのホモログを変異させ、又はNot4タンパク質又はそのホモログを完全に欠失させる手段;前記遺伝子のオープンリーディングフレームを除去又は改変する手段;Not4遺伝子の調節配列、例えばプロモーター配列及び/又はターミネーター配列を変異又は改変する手段;例えば適切な干渉RNA、例えばアンチセンスmRNAを導入して、Not4遺伝子の転写を阻害又は低減する手段;適切な転写活性化遺伝子を導入、制御、又は修飾する手段;或いは、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルを阻害する剤を導入する手段である、使用。
90.配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有すると共に、配列番号2の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470から選択される1又は2以上の位置に対応する位置に変異を含む、Not4タンパク質又はそのホモログ。
91.前記位置が、配列番号2の429、430、434、又は437に対応する位置から選択される、態様90に係るNot4タンパク質又はそのホモログ。
92.前記位置が、配列番号2の463、464又は466に対応する位置から選択される、態様90に係るNot4タンパク質又はそのホモログ。
93.前記位置が、配列番号2の442、445、447又は452に対応する位置から選択される、態様90に係るNot4タンパク質又はそのホモログ。
94.前記変異が置換であり、好ましくは非保存アミノ酸への置換である、態様90〜93の何れかに係るNot4タンパク質又はそのホモログ。
95.配列番号2の位置429に対応する位置の変異が、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはG、A、V、L又はIへの置換、より好ましくはI、L又はVへの置換、最も好ましくはIへの置換、態様90又は91に係るNot4タンパク質又はそのホモログ。
96.配列番号2の位置429に対応する位置の変異が、芳香族アミノ酸から脂肪族アミノ酸への置換である、態様90又は91に係るNot4タンパク質又はそのホモログ。
97.配列番号4を含む、或いは配列番号4からなる、態様90、91、95又は96の何れかに係るNot4タンパク質又はそのホモログ。
実施例1:サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のNot4遺伝子の変異
S.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9は遺伝子型cir° MATa、leu2−3、leu2−112 ubc4 ura3 yap3::URA3 lys2 hsp150:LYS2を有し、更にPDI1、URA3及びYIplac211がPDI1遺伝子座に組み込まれてなる(Finnis et al, 2010, Microbial Cell Factories 9: 87)。本発明者等は、S.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9(アルブミンをコードするプラスミドで形質転換されたもの)が、その前駆体株、例えばS.セレビシエ(S. cerevisiae)DB1と比較して、組換ヒトアルブミンをより高い産生量で産生できるとの知見を得た。S.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9の特性決定によれば、Not4遺伝子内に一塩基ポリヌクレオチド多型(SNP)が存在することが判明した。このSNPがS.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9のタンパク質産生量向上に寄与しているか否かを決定するために、以下の手順に従って、このSNP(T1285A、配列番号3)を野生型のもの(即ち位置1285がT、配列番号1)に戻した。これに伴い、ミュータントNot4タンパク質(I429、配列番号4)も野生型(F429、配列番号2)に変更された。
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のNot4遺伝子は染色体Vに存在する。ミュータントNot4遺伝子内のSNP(T1285A)を野生型のものに戻すべく、遺伝子断片をNot4遺伝子座内に導入し、塩基1285AをTに変更した。これにより、ミュータントNot4タンパク質(位置429がI、配列番号4)が、野生型Not4タンパク質(位置429がF、配列番号2)に変更された。
これを達成するために、まずPCRにより、適切な選択マーカー(KanMX)を、突然変異誘発単鎖化DNAプライマーを用いて増幅した。ここで使用したプライマーは、KanMX遺伝子の5’及び3’末端を改変することにより、Not4のオープンリーディングフレーム(配列番号25)の下流の領域と同一のDNA配列を導入した、以下のプライマーA及びプライマーBである。KanMXはジェネティシン(Geneticin:G418)に対する抵抗性を付与する。
プライマーA:
5’−CCGTTTATAACGAAATGCAAGAAAAAAAAATCTCACCCATTTTTTTAAACCTTTGACGTGGAAAGGTATCTGGGAAAGGTATCTGGCTAATGAATAATGCCGTACGCTGCAGGTCG−3’(配列番号26)
プライマーB:
5’−ATATATCATGATGATTATTTTCTATGAATTAGTCATTCTTGCAGCGCTGACGCTTTCATACGTTGTAACGAGTAAATAGACTATACTGGTATATGCTATGATCGATGAATTCGAGCTCG−3’(配列番号27)
PCR反応を実施してプラスミドpDB5438からKanMX遺伝子を増幅した(図1)。条件は以下のとおりとした。100ngのプラスミドpDB5438及び0.5μMの各プライマーを用い、初回の変性は98℃で30秒とし、次いで98℃で10秒の変性、63℃で30秒のアニーリング、及び72℃で1.5分間の伸長からなるサイクルを35サイクル行い、その後に72℃で4分間の最終伸長を行ってから、4℃まで冷却した。以上の操作は、Applied Biosystems 2720サーマルサイクラー及びNEB Q5 Hot Start High-Fidelity DNAポリメラーゼPCRキット(M0493S)を使用し、総反応体積は50μLとし、製造メーカーの指示に従って実施した。
得られた生成物である5’−Not4 3’UTR−KanMX−Not4 3’UTR−3’を、ゲル電気泳動で分析したところ、そのサイズは予想どおり約1.6kbであった。このPCR増幅生成物を、QIAGEN QIAquick PCR精製キットを使用し、製造メーカーの指示に従って精製した。精製生成物を用いて、Not4が野生型(即ち配列番号1)であるS.セレビシエ(S. cerevisiae)株の形質転換を行った。形質転換にはSigma Yeast形質転換キットを使用し、以下の点を除いては製造メーカーの指示に従って実施した。即ち、形質転換混合物を遠心分離した後、ペレットを1mL YEPD培地に再懸濁し、3mL YEPDを含む30mLのSterilinチューブに移した。なお、YEPD(g/L)の組成は以下の通り。10gのBacto(登録商標)酵母エキスTechnical、20gのBacto(登録商標)ペプトン、20gのグルコース。
このチューブを震盪しながら(200rpm)30℃で16時間インキュベートした。その後、Sterilinチューブを3,000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを静かに除去した。次いでペレットを500μLの1Mソルビトールに再懸濁させた。約150μLを新規調製したG418寒天プレート(G418最終濃度300μg/mL)に播種し、寒天表面を下にして30℃で5日間インキュベートした。なお、G418寒天プレートは以下のように調製した。0.17gの酵母窒素ベース((NHSO非含有)、0.1gのグルタミン酸(一ナトリウム塩、Sigma G-1626)、0.069gのCSM−Leu粉末、100mLのHO(注射用無菌水、非発熱性、低張性)、及び1gのBacto寒天を、200mL用のオートクレーブ済ガラス瓶に入れて混合した。その後ガラス瓶をスチーマーで1時間加熱し、次いで水槽で55℃まで冷却した。0.6mLの50mg/mLジェネティシン(Geneticin:G418)及び4mLの無菌50%デキストロース(w/v)を加えて混合した。混合物のアリコートをペトリ皿に注いで静置した。
G418抵抗性形質転換体からゲノムDNAを抽出し、これをテンプレートとして、プライマーMBP260及びMBP266を用いて第二のPCRを行い、Not4遺伝子の3’部分、Not4 3’UTR、KanMX遺伝子、及び下流配列を含む、5’−Not4−Not4 3’UTR−KanMX−Not4 3’UTR−3’断片(配列番号28)を増幅した。
プライマーMBP260:
5’−TGCAAGATGTATAGCTCAGG−3’ (配列番号29)
プライマーMBP266:
5’−TGCAAATCCTGCTATGGTGG−3’ (配列番号30)
PCRの材料、方法、及び条件は上述の通りである。生成物である5'-Not4-Not4 3’UTR−KanMX-Not4 3’UTR−3'をゲル電気泳動で分析し、予想どおりサイズが約3.3kbであることを確認した。増幅PCR生成物を、QIAGEN QIAquick PCR精製キットを用い、製造メーカーの指示に従って精製した。精製生成物を用いて、上記の形質転換法によりDP9[pDB2305]の形質転換を行った。S.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9は、Not4 SNP(T1285A、F429I)を含む株である。pDB2305はヒトアルブミンをコードするプラスミドである(図3)。G418寒天プレートでの増生及び選択を上記手順に従い行った。抵抗性コロニーからゲノムDNAを抽出し、プライマーMBP269及びMBP287を用いたPCRにより、約4.5kbの断片を増幅した。各サイクルの条件を、98℃で10秒の変性、62℃で20秒のアニーリング、及び72℃で2.5分間の伸長に変更した他は、前記と同一のキット及び条件を用いた。
プライマーMBP269:
5’−ATAAAATCACCTGGCATTACG−3’ (配列番号31)
プライマーMBP287:
5’−CAACAGTTGGATCACAGTGG−3’ (配列番号32)
得られた生成物を上記に従って清浄化した。Life Technologies BigDyeTerminator v3.1 Cycleシークエンシングキットを用いて、製造メーカーの指示に従って生成物の配列決定を行った。総反応体積は50μLとし、清浄化された生成物50ngをテンプレートとし、1μMのプライマー(MBP274及びMBP282を4μL用いた。条件は以下の通りとした。初回変性は96℃で1分間とした。続いて、96℃で10秒の変性、50℃で5秒のアニーリング、60℃で4分間の伸長からなるサイクルを25回実施し、その後4℃まで冷却した。シークエンシング反応物を沈殿させ、HiDi(Applied BioSystems)に再懸濁し、Applied BioSystems 3130xl Genetic Analyserにより分析した。
プライマーMBP274:
5’−CTCTGGGCCATCATACTACC−3’ (配列番号33)
プライマーMBP282:
5’−GTTGCTGCTGAATAGGAACC−3’ (配列番号34)
配列決定分析の結果、3つの形質転換体が野生型のTを位置1285に有していた(F429)。これらの株をPRM5と命名した。2つの形質転換体がAを位置1285に有していた(I429)。これらの株をPSM7と命名した。3つのPRM5形質転換体と2つのPSM7形質転換体を、0.5mL BMMD(アミノ酸及び硫酸アンモニウムを含まない0.17%(w/v)酵母窒素源(Difco)、37.8mMの硫酸アンモニウム、36mM クエン酸、126mMのオルトリン酸水素二ナトリウム(pH6.5)、2%(w/v)グルコース、NaOHでpH6.5に調整)を各ウェルに含む48ウェルのマイクロタイタープレート(MTP)で培養した(各形質転換体につき6つの重複実験)。このMTPを、湿度室内で振盪(200rpm)しながら30℃で48時間インキュベートした。その後、各ウェルから50μLの細胞培養を、各ウェル0.45mLのBMMDを含む新たな48ウェルのMTPに移した。この新たなMTPを、湿度室で振盪(200rpm)しながら30℃で96時間インキュベートした。
遠心分離で上澄みを単離し、組換アルブミンの生産性をGP−HPLC分析により決定した。GP−HPLC分析は、LC2010 HPLC系(Shimadzu)にUV検出器を装着したものを用い、Shimadzu VP7.3クライアントサーバーソフトウェアの制御下で行った。7.8mm id×300mm長さのTSK G3000SWXL カラム(Tosoh Bioscience)に、6.0mm id×40mm長さのTSK SW ガードカラム(Tosoh Bioscience)を組み合わせたものに、75μLを注入した。試料のクロマトグラムの取得は、25mM リン酸ナトリウム、100mM 硫酸ナトリウム、0.05%(w/v)アジ化ナトリウム、pH7.0を1mL・分−1で流通しながら、ランタイム20分間で行った。試料の定量は、280nmのUV検出によりピーク面積を決定し、既知濃度(10mg/mL)の組換ヒトアルブミン標準との比を求め、それらの相対吸光係数に基づき補正を行った。
表2に示すように、このSNPの存在により、平均アルブミン産生量は18%増加していた。
この作業を更にS.セレビシエ(S. cerevisiae)株を用いて繰り返した。簡単に述べると、S.セレビシエ(S. cerevisiae)BXP10の同じSNPを野生型に戻した上で、BXP10(SNPを含む、即ちBSM6[pDB2244])のアルブミンの産生量を、SNPを野生型に戻したBXP10株(BRM4[pDB2244])のアルブミンの産生量と比較した。BXP10は遺伝子型MATa、leu2−3、leu2−122、can1、pra1、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2、及びpmt1::URA3を有する。
表3に示すように、このSNPの存在により、アルブミン産生量は8%増加していた(各形質転換体につき6つの重複実験)。
実施例2:サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のNot4遺伝子の変異により、10Lスケールでの組換タンパク質の産生が増強された
S.セレビシエ(S. cerevisiae)PRM5[pDB2305]及びPSM7[pDB2305]の生産性を、10L発酵漕での増殖性に基づき検討した(Wigley et al (2007) Genetic Engineering News. 27(2):40-42)。発酵はMW11D培地を用い、以下の点を除いては、国際公開第97/33973号の実施例1の記載に従って実施した。即ち、MFCSソフトウェアの代わりにWonderware Supervisory Control and Data Acquisitionソフトウェアを用い、発酵容器を使用前にクエン酸で洗浄し、微量元素ストックとしてはNaMoO・5HOの代わりにNaMoO・2HOを含むものを用い、当初pHをアンモニア溶液(比重0.901)でpH6.0〜6.4に調整し、容器への無菌空気の初回導入を0.5vvmではなく約1.0vvm(即ち1.0L)で行い、発酵時のエアフローの増加を2段階ではなく1段階で行い、約1.0vvmのエアフローを維持し、比増殖速度を約0.06h−1とし、指数時定数(K)を0.06で維持した。
組換アルブミン標準と比較した組換アルブミンの生産性をGP−HPLCにより決定した。上記条件下でのPSM7[pDB2305]による組換アルブミンの生産性は、同一条件下で測定したPRM5[pDB2305]による生産性と比較して、約13%高かった(表4)。
この作業を更にS.セレビシエ(S. cerevisiae)BXP10を用いて10Lスケールで繰り返し、このSNPを含むBXP10(即ちBSM6[pDB2305])によるアルブミンの産生量を、このSNPを野生型に戻したBXP10株(BRM4[pDB2305])によるアルブミンの産生量と比較した。
表5に示すように、このSNPの存在により、アルブミン産生量は15%上昇した(各形質転換体につき2つの重複実験)。
実施例3:サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるNot4遺伝子の欠失により、組換タンパク質の産生は増強された
ヒト血清アルブミンをコードするプラスミドpDB2244を含むサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)MT302/28B cir°(MATα, leu2, pep4-3, Finnis et al 1993, Eur. J. Biochem, 212: 201-210)のNot4遺伝子を欠失させた。欠失は、Not4遺伝子をマーカーKanMXで置換することにより実施した。その結果得られる株(MT302/2B Δnot4)は、Not4タンパク質の産生能を有さなかった。
これらの株MT302/28B及び株MT302/28B Δnot4を培養し(各株につき8つの重複実験)、そのアルブミン生産性を実施例1の記載に従って決定した。表6に示すように、Not4の欠失によりアルブミン産生量は61%増加した。
実施例4: 変異 of the サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のNot4遺伝子の変異により、アルブミン融合体タンパク質(アルブミン−IL−1Ra)及びscFv(vHvL)−FLAGの発現が増強された
本実施例で発現されるタンパク質は、(a)ヒト血清アルブミンのC末端に遺伝子工学的にIL−1Raを連結したもの(配列番号38)、及び、(b)scFv、FITC8(Evans et al 2010, Protein Expression and Purification 73:113-124、及び本文献の引用文献16及び17を含む。これらの文献はその全てが引用により本明細書に組み込まれる。)のC末端にFLAGタグ(DYKDDDDK)を連結したもの(配列番号40)である。
アルブミン−IL−1Raの発現の準備として、プラスミドpDB3936(図7)を制限酵素Acc65I及びBamHIで切断し、プラスミドpDB5912(アルブミン−IL−1Ra発現カセットを含む)を酵素NsiI及びPvuIで切断した。pDB5912のプラスミドマップを図6に示し、IL−1RaをコードするDNA配列を配列番号37に示す。制限酵素及び緩衝剤はNew England Biolabsのものを用いた。両プラスミド消化産物を、QiagenPCR精製キットを用い、製造メーカーの指示に従って精製した。
PRM5[pDB2305]、PSM7[pDB2305]、BRM4[pDB2244]、及びBSM6[pDB2244]という4つの株を、YEPD培地中、震盪フラスコにて培養し、プラスミド(pDB2305又はpDB2244)を除去するために更に3回サブ培養した。最終培養物を希釈してYEPD上にプレート化し、これらのプレートから単一コロニーをYEPD上にパッチ化した。YEPDパッチをBMMDプレートに移し、30℃でインキュベートした。BMMDで成長しない細胞を、プラスミドを有さない細胞として特定した。得られた酵母株を各々、形質転換に供した。形質転換は、Sigma Yeast形質転換キットを使用し、製造メーカーの指示に従って、プラスミドpDB3029(scFv(vHvL)−FLAG発現用)(pDB3029のプラスミドマップを図5に示し、scFv−FLAGをコードするDNA配列を配列番号39に示す)、又はpDB3936及びpDB5912(ギャップ修復プラスミドpDB3936:GR:pDB5912からのアルブミン−IL−1RA発現用)の精製された制限酵素消化物を用いて行った。細胞をBMMD上にプレート化し、30℃で5日間インキュベートした。各株6つの形質転換体を、各ウェルに0.5mL BMMDを含む48ウェルのMTPで培養した。プレートは湿度室内で200rpmの振盪下、30℃で48時間インキュベートした。次いでこのプレートの各培養物のうち50μLを新しいプレートに移し、450μL BMMD中でサブ培養した。このプレートのインキュベートは96時間行った。
遠心分離により上澄みを単離し、実施例1と同様の手順で、組換タンパク質の生産性(アルブミン−IL−1Ra又はScFv)をGP−HPLCにより決定した。
表7及び表8に示すように、このSNP(F429I)の存在によって、アルブミン−IL−1Raの産生量は増加した。DP9由来株では、Not4中にこのSNPを含む株(PSM7)の産生量は、野生型Not4を有する株(PRM5)(表7)の産生量と比較して8%高かった。BXP10由来株では、Not4中にこのSNPを含む株(BSM6)の産生量は、野生型Not4を有する株(BRM4)の産生量と比較して24%高かった(表8)。
表9及び表10に示すように、このSNP(F429I)の存在により、ScFv−FLAGの産生量が増加した。DP9由来株では、Not4中にこのSNPを含む株(PSM7)の産生量は、野生型Not4を有する株(PRM5)の産生量と比較して14%高かった(表9)。BXP10由来株では、Not4中にこのSNPを含む株(BSM6)の産生量は、野生型Not4を有する株(BRM4)の産生量と比較して19%高かった(表10)。

Claims (17)

  1. a.改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、又は
    b.Not4タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベル、又は
    c.改変されたNot4遺伝子又はそのホモログ、又は
    d.Not4遺伝子、又はそのホモログの改変された発現レベル
    を有する真菌宿主細胞。
  2. 前記改変されたレベルが低減されたレベルである、請求項1に記載の真菌宿主細胞。
  3. 前記低減されたレベルが、参照真菌宿主細胞、例えばNot4タンパク質が配列番号2を含み、又は配列番号2からなる真菌宿主細胞と比較して減少したレベルである、請求項2に記載の真菌宿主細胞。
  4. 前記真菌宿主が酵母又は糸状菌である、請求項1〜3の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
  5. 所望のタンパク質、例えば異種タンパク質、例えば血清タンパク質、好ましくはアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
  6. 前記Not4タンパク質が、配列番号2の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470から選択される位置に対応する位置、好ましくは429、430、434、又は437から選択される位置に変異を含む、請求項1〜5の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
  7. 配列番号2の位置429に対応する位置の変異が、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくはG、A、V、L又はI、より好ましくはI、L又はV、最も好ましくはIに対する置換である、請求項6に記載の真菌宿主細胞。
  8. 配列番号2の位置429に対応する位置の変異がF429Iである、請求項6に記載の真菌宿主細胞。
  9. 配列番号4をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1〜8の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
  10. 前記宿主細胞が、Not4遺伝子若しくはそのホモログ、又は、Not4タンパク質若しくはそのホモログを欠失している、請求項1〜5の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
  11. 前記宿主細胞が、サッカロミセス(Saccharomyces)例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項1〜10の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
  12. 所望のタンパク質、例えば異種タンパク質を、真菌宿主細胞により産生する方法であって、
    (i)請求項1〜11の何れか一項に記載の真菌宿主細胞を供し、
    (ii)前記真菌宿主細胞又はその培養物を培養して前記所望のタンパク質を産生させ、
    (iii)任意により前記所望のタンパク質を回収し、
    (iv)任意により前記所望のタンパク質を精製し、
    (v)任意により前記所望のタンパク質を、治療上許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療製剤を製造し、
    (vi)任意により前記所望のタンパク質を単位投与形態として提供する
    ことを含む方法。
  13. 所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の産生量を増加させる方法であって、
    (i)a.改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、又は
    b.Not4タンパク質又はそのホモログの改変された(好ましくは低減された)活性レベル、又は
    c.改変されたNot4遺伝子又はそのホモログ、又は
    d.Not4遺伝子、又はそのホモログの改変された(好ましくは低減された)発現レベル
    を有する真菌宿主細胞(例えば酵母又は糸状菌)を供し、
    (ii)前記宿主細胞を培養して前記所望のタンパク質を産生させ、
    (iii)任意により前記所望のタンパク質を回収し、
    (iv)任意により前記所望のタンパク質を精製し、
    (v)任意により前記所望のタンパク質を、治療上許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療製剤を製造し、
    (vi)任意により前記所望のタンパク質を単位投与形態として提供する
    ことを含む方法。
  14. 前記所望のタンパク質の産生量が、参照真菌宿主細胞、例えば配列番号2のNot4タンパク質を有する真菌宿主細胞による産生量と比べて、少なくとも2%高い、請求項12又は13に記載の方法。
  15. 前記所望のタンパク質が、アルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体である、請求項12〜14の何れか一項に記載の方法。
  16. 前記宿主細胞が、少なくとも5Lのスケールで培養される、請求項12〜15の何れか一項に記載の方法。
  17. 真菌宿主細胞による所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の産生量を増加させるための、前記真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルを減少させる手段の使用。
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