JP2019505503A - 心臓の代謝性に対するランタスの効果 - Google Patents

心臓の代謝性に対するランタスの効果 Download PDF

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Abstract

本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓効率または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、ならびに糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防および/もしくは治療することに使用するためのインスリンもしくはインスリンアナログに;糖尿病を発生するリスクにあるかもしくはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延、および/もしくは治療する方法に;心臓効率もしくは心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防および/もしくは治療することに使用するための、インスリンアナログを含む医薬組成物に;ならびにインスリンアナログを用いる治療により恩恵を受けることができる患者を同定する方法に関する。

Description

本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓効率または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、ならびに糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防および/または治療することに使用するためのインスリンまたはインスリンアナログに;糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療する方法に;心臓効率または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防および/または治療することに使用するための、インスリンアナログを含む医薬組成物に;ならびにインスリンアナログを用いる治療により恩恵を受けることができる患者を同定する方法に関する。
糖尿病患者のインスリン療法は、治療域が狭く、高インスリン血症の有害な効果は生命を脅かす可能性があるので、インスリン薬の放出を非常に厳密なレベル内に保つ高度の必要性により特徴づけられる。糖尿病性集団の特異的必要性に適合するために異なる作用プロファイルを有する多数のインスリン製剤が市販されてきた。即効性のインスリンアナログは、食料摂取に続く血漿グルコースにおけるピークを制御するために、食事の直前に投与されるが、それに対して、長時間作用性のインスリンアナログは、定常的な基礎インスリンレベルを提供するために、通常1日に1回または2回与えられる。現行の標準的な基本的インスリン療法は、NPHインスリン、インスリングラルギンまたはインスリンデテミールのような長時間作用性の基礎インスリンの1日に1回または2回の投与からなり、糖尿病に対するデグルデク投与は、心臓血管疾患および関連する疾患または障害を含む広範な重大な長期の結果と関連する。
心臓は、収縮機能を維持するために大量のアデノシントリリン酸(ATP)を連続的に発生させなければならない。心臓におけるATPの連続する合成は、主として脂肪酸および炭水化物の代謝により対処される1〜4。成人の心臓では、ATP供給の90%以上は、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化から生じて、残余は解糖から生ずる。このミトコンドリアのATP産生の大部分は、通常、脂肪酸のβ−酸化から生ずる。1〜4しかしながら、心臓は、i)収縮の要求、ii)栄養学的状態、iii)ホルモンの影響、iv)酸素供給、v)転写/翻訳のおよび翻訳後制御のエネルギー代謝性経路、および/またはvi)底流にある心疾患(単数または複数)の存在1〜4を含む多くの因子に応答して、他の燃料供給源(炭水化物酸化、ケトン酸化、およびアミノ酸代謝のような)に速やかに切り換えることができる。
肥満したおよび糖尿病性の個体では、心臓は、そのエネルギー基質の選好を、グルコース代謝から脂肪酸代謝に切り換える。それに加えて、インスリン抵抗性および糖尿病では、心臓もインスリン抵抗性になる。心臓のレベルにおけるインスリン抵抗性は、衰弱した心臓でも起こる。この心臓のインスリン抵抗性は、重症の心不全の原因になる。1〜4衰弱した心臓におけるグルコース酸化のインスリン刺激の減少は、心臓効率の機能障害の両方の原因になる。1〜4心臓効率におけるこの減少は、心機能不全の原因になる可能性がある。
上記のことに鑑みて、高血糖症の全身的代謝の制御を提供するだけでなく、心不全の発生および心機能不全と関連する形態を含む糖尿病と関連する合併症のリスクも低下させる長時間作用性のインスリン製剤を、患者に提供することが望ましい。したがって、衰弱した心機能を改善するために、グルコースの酸化を増大させる治療手法に対する緊急の必要性がある。さらに、心臓のエネルギー代謝を改善することによる、インスリン抵抗性および心臓拡張期の機能不全のための治療手法を提供することが望ましい。
第1の態様において、本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するためのインスリンアナログを提供する。
第2の態様において、本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するためのインスリンアナログを提供する。
第3の態様において、本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療する方法であって、治療的有効量のインスリンアナログを投与することを含む方法に関する。
第4の態様において、本発明は、心臓効率または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための医薬組成物であって、インスリンアナログならびに少なくとも1種の薬学的に許容される担体、補助剤および/または賦形剤を含む医薬組成物に関する。
第5の態様において、本発明は、患者が減少した心拍出量または減少した心臓鼓動の体積または心臓血管疾患に苦しむかどうかを決定する工程を含む、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ、インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受けることができる患者または患者群を同定する方法を提供する。
第6の態様において、本発明は、インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受ける患者または患者群を同定する方法であって、前記患者または患者群は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しみ、心臓における増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す、方法に関する。
第7の態様において、本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するためのインスリンアナログであって、該患者は心臓における増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す、インスリンアナログに関する。
インスリン、M1ランタス、およびデグルデクを用いる急性治療のための実験設計を示す図である。 C57bl/6およびdb/dbマウスの心臓におけるグルコース酸化(A、C)、およびC57bl/6およびdb/dbマウスの心臓におけるパルミテート酸化(B、D)に対する、インスリン、デグルデク、およびランタスを用いる急性治療の効果を示す図である。 C57bl/6(A)およびdb/db(B)マウスの心臓における心臓効率に対する、インスリン、デグルデク、およびランタスを用いる急性治療の効果を示す図である。 ランタスは、10週齢のC57bl/6マウスの心臓において、急性にグルコース酸化を刺激し、パルミテート酸化を減少させ、および心臓効率を改善することを示す図である。 ランタスは、10週齢のdb/dbマウスの心臓において、急性にグルコース酸化を刺激し、パルミテート酸化を減少させることを示す図である。 C57bl/6(A)およびdb/db(B)マウスの心臓におけるATP産生(%)に対する、インスリン、デグルデクおよびランタスを用いる急性治療の効果を示す図である。 C57bl/6およびdb/dbマウスの心臓における、心臓のAktリン酸化に対する、インスリン、デグルデク、およびランタスを用いる急性治療の効果を示す図である。 NPHインスリン、デグルデクおよびランタスを用いる長期治療のための実験設計を示す図である。 長時間作用性のインスリンを用いる長期治療は、db/dbマウスにおける全身のグルコース寛容を改善することを示す図である。 ランタスを用いる長期治療は、db/dbマウスにおいてインビボで心機能を改善することを示す図である。A、C:心拍出量;B、D:鼓動の体積 db/dbマウスにおける心機能に対する長時間作用性のインスリンの長期治療のインビボにおける効果を示す図である。A:補正された左心室質量;B:E/A、C:E’/A’;D:E/E’ db/dbマウスにおける心機能および心臓の質量に対するインビボにおける、長時間作用性のインスリンを用いる長期治療の効果を示す図である。A:Teiインデックス;B:%EF;C:IVRT;D:湿潤心臓重量(mg);E:湿潤心臓重量/脛骨の長さ
引用文献のリスト
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定義
本発明を下で詳細に説明する前に、本発明は、本明細書で記載される特定の方法、プロトコルおよび試薬は変化することができるので、これらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのみのものであり、添付の請求項によってのみ限定される本発明の範囲を限定することは意図されないことも理解されるべきである。特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者により共通して理解されるものと同じ意味を有する。
数件の文献が本明細書の本文により引用される。本明細書で引用される文献の各々(全ての特許、特許出願、科学的出版物、メーカーの仕様明細書、取り扱い説明書その他を含む)は、前出であろうと後出であろうと、その全体で参照によって本明細書に組み入れる。本明細書におけるどのような記載も、本発明が、先行する発明のために、そのような開示に先んずる権利を与えられないことを容認すると解釈されるべきでない。本明細書で引用された文献の幾つかは、「参照によって組み入れ」ているとして特徴づけられる。そのような組み入れた参考文献の定義または教示と本明細書で述べられた定義または教示との間で対立のある場合には、本明細書の文言が優先する。
以下で、本発明の構成要素を説明する。これらの構成要素は特定の実施形態で記載されるが、しかしながら、それらは、任意の様式および任意の数で組み合わされて、追加の実施形態を創り出すことができることが理解されるべきである。種々の記載された実施例および好ましい実施形態は、本発明を、明示的に記載された実施形態のみに限定すると解釈されるべきでない。この記載は、明示的に記載された実施形態と任意の数の開示されたおよび/または好ましい構成要素とを組み合わせる実施形態を支持および包含すると理解されるべきである。さらに、本出願における全ての記載された構成要素の任意の並べ替えおよび組合せは、文脈が他の事柄を指示しない限り、本出願の記載により開示されたと考えられるべきである。
本明細書および以下の請求項を通じて、文脈が他の事柄を要求しない限り、単語「を含む(comprise)」、および「を含む(comprises)」および「を含む(comprising)」のような変化形は、述べられた整数または工程または整数もしくは工程の群の包含を意味するが、任意の他の整数または工程または整数もしくは工程の群の排除は意味しないと理解される。
本明細書および添付の請求項で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が他の事柄を明らかに指示しない限り複数の指示対象を含む。
用語「約」は、数値と接続して使用される場合、指示された数値より5%小さい下限および指示された数値より5%大きい上限を有する範囲内の数値を包含することが意味される。
アミノ酸は、各アミノ酸に特異的な側鎖と共に、アミン(−NH2)およびカルボン酸(−COOH)官能基で構成される有機化合物である。典型的には、アミノ酸は、それらの側鎖の性質により4群に分類され:側鎖は、アミノ酸を弱酸または弱塩基に、側鎖が極性であれば親水性に、またはそれが非極性であれば疎水性にすることができる。
本発明の異なる態様の文脈で、用語「ペプチド」は、ペプチド結合により連結されたアミノ酸の短いポリマーを指す。それは、タンパク質と同じ化学(ペプチド)結合を有するが、一般的に長さがより短い。最短のペプチドは、単一のペプチド結合により接合された2個のアミノ酸からなるジペプチドである。トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、その他もある可能性がある。好ましくは、ペプチドは、8、10、12、15、18または20アミノ酸までの長さを有する。ペプチドは、それが環状ペプチドでない限り、アミノ末端およびカルボキシル末端を有する。
本発明の異なる態様の文脈で、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合により結合して一緒になったアミノ酸の単一の直鎖を指し、好ましくは少なくとも約21個のアミノ酸を含む。ポリペプチドは、2本以上の鎖で構成されるタンパク質の1本の鎖であることができ、または該タンパク質が1本の鎖で構成されるならば、それ自体がタンパク質であることができる。
本発明の異なる態様の文脈で、用語「タンパク質」は、2次および3次構造を再開する1つまたはそれ以上のポリペプチドを含む分子を指し、それに加えて、数種のポリペプチド、すなわち4次構造を形成する数種のサブユニットで構成されたタンパク質を指す。本発明の文脈で、タンパク質またはポリペプチドの1次構造は、ポリペプチド鎖中におけるアミノ酸の配列である。タンパク質における2次構造は、タンパク質の局所的セグメントの一般的な3次元の形態である。それは、しかしながら、3次元空間中の特定の原子位置を記述せず、そのことは3次構造であると考えられる。タンパク質では、2次構造は、骨格アミドとカルボキシル基との間の水素結合のパターンにより規定される。タンパク質の3次構造は、原子の座標により決定されるタンパク質の3次元構造である。4次構造は、複数サブユニットの複合体における、複数の折り畳まれたかまたはコイル状のタンパク質またはポリペプチド分子の配置である。用語「アミノ酸鎖」および「ポリペプチド鎖」は、本発明の文脈で同義語的に使用される。
本発明のタンパク質およびポリペプチド(タンパク質誘導体、タンパク質変形体、タンパク質フラグメント、タンパク質セグメント、タンパク質エピトープおよびタンパク質ドメインを含む)は、化学的改変によりさらに改変することができる。このことは、そのような化学的に改変されたポリペプチドが、20種の天然に生ずるアミノ酸以外の化学基を含むことを意味する。そのような他の化学基の例には、グリコシル化されたアミノ酸およびリン酸化されたアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチドの化学的改変は、親ポリペプチドと比較して有利な性質、例えば増強された安定性、増大した生物学的半減期、または増大した水溶解度の1つまたはそれ以上を提供することができる。本発明で使用可能な変形体に適用可能な化学的改変は:PEG化、非グリコシル化された親ポリペプチドのグリコシル化、または親ポリペプチドに存在するグリコシル化パターンの改変を含むが、これらに限定されない。タンパク質は、例えば補欠分子族または補助因子のような取り付けられた非ペプチド基も含むことができる。
本明細書において使用する用語「変形体」は、それが由来するポリペプチドまたはタンパク質と比較して、その長さまたは配列における1つまたはそれ以上の変化だけ異なるポリペプチドまたはタンパク質であると理解されるべきである。ポリペプチドの変形体またはタンパク質の変形体がそれから誘導されたポリペプチドまたはタンパク質は、親ポリペプチドまたは親タンパク質としても知られる。用語「変形体」は、親分子の「フラグメント」、「アナログ」および「誘導体」を含む。典型的には、「フラグメント」は、長さまたはサイズが親分子より小さいが、一方、「誘導体」は、親分子と比較して、それらの配列において1箇所またはそれ以上の差を示す。変形体は、人工的に、好ましくは、遺伝子技術的手段によって構築することができるが、それに対して、親ポリペプチドまたは親タンパク質は野生型ポリペプチドまたはタンパク質である。翻訳後に改変されたタンパク質(例えば、グリコシル化された、ビオチン化された、リン酸化された、ユビキチン化された、パルミトイル化された、またはタンパク質分解で切断されたタンパク質)のような改変された分子も包含されるが、これらに限定されない。しかしながら、天然に生ずる変形体も、本明細書において使用する用語「変形体」により包含されると理解されるべきである。
本明細書において使用する「変形体」は、それが誘導された親ポリペプチドまたは親タンパク質とのある程度の配列同一性によって特徴づけることができる。より厳密には、本発明の文脈におけるタンパク質変形体は、その親ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を示す。用語「少なくとも80%の配列同一性」は、本明細書全体を通じて、ポリペプチド配列の比較に関して使用される。この表現は、好ましくは、それぞれの参照ポリペプチドまたはそれぞれの参照ポリヌクレオチドとの、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を指す。好ましくは、問題とするポリペプチドと参照ポリペプチドは、20、30、40、45、50、60、70、80、90、100またはそれ以上のアミノ酸または参照ポリペプチドの全長を超える連続する範囲にわたる指示された配列同一性を示す。
対応する、それがなければ同一の天然に生ずるタンパク質と、少なくとも1つの天然に生ずるアミノ酸残基の他のアミノ酸残基による置換および/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加および/または欠失により異なるタンパク質は、タンパク質の「アナログ」と称される。この関係で、付加および/または置き換えられたアミノ酸残基が天然には生じないものであることも可能である。タンパク質アナログの例はインスリングラルギンであり、ヒトインスリンではA鎖の位置21で、Asn残基がGly残基で置き換えられている。それに加えてB鎖の位置30に、2個のArg残基が付加されている。代謝物グラルギン−M1はインスリングラルギンに基づくが、付加された2つの追加のArg残基を欠く。
最初のタンパク質の、あるアミノ酸残基の化学的改変により得られたタンパク質は、タンパク質の「誘導体」と称される。化学的改変は、例えば、1個またはそれ以上のアミノ酸に対する1個またはそれ以上の特定の化学基の付加からなることもできる。あるアミノ酸が化学的に関連するアミノ酸で置換された半保存的および特に保存的アミノ酸置換が好ましい。典型的な置換は、脂肪族アミノ酸の間、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の間、酸性残基を有するアミノ酸の間、アミド誘導体の間、塩基性残基を有するアミノ酸の間、または芳香族残基を有するアミノ酸の間におけるものである。A、F、H、I、L、M、P、V、WまたはYからCへの変更は、新しいシステインが遊離チオールとしてとどまれば、半保存的である。さらに、当業者は、立体的に過酷な位置にあるグリシンは置換されるべきでなく、Pはアルファ螺旋またはベータシート構造を有するタンパク質の部分に導入されるべきでないことを認識するであろう。最初のタンパク質の、あるアミノ酸残基の化学的改変により得られるタンパク質は、タンパク質の「誘導体」と称される。化学的改変は、例えば、1個またはそれ以上の特定の化学基の1個またはそれ以上のアミノ酸に対する付加からなることもできる。タンパク質誘導体の例は、インスリンデグルデクであり、それは、B鎖の最後のアミノ酸(トレオニンB30)が除去されていることで、正常ヒトインスリンと異なる。さらに、グルタミン酸および16C−脂肪酸がリシンB29に付加されている。
2つの配列が比較されて、比較して配列同一性のパーセンテージが計算されるべき参照配列が特定されていない場合、配列同一性は、特に断りのない限り、比較されるべき2つの配列の長い方に関して計算されるべきである。参照配列が示されていれば、特に断りのない限り、配列同一性は、配列番号により示される参照配列の全長を基準に決定される。アミノ酸配列の類似性、すなわち配列同一性のパーセンテージは、配列のアラインメントにより決定することができる。そのようなアラインメントは、数種の当技術分野で知られたアルゴリズム、好ましくは、KarlinおよびAltschulの数学的アルゴリズム(Karlin & Altschul (1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90巻:5873〜5877頁)、hmmalign (HMMERパッケージ、http://hmmer.wustl.edu/)、または、例えばhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/もしくはhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.htmlもしくはhttp://npsa−pbil.ibcp.fr/cgi−bin/npsa_automat.pl?page=/NPSA/npsa_clustalw.htmlで利用できるCLUSTALアルゴリズム(Thompson、J.D.、Higgins、D.G. & Gibson、T.J. (1994) Nucleic Acids Res. 22巻、4673〜80頁)を用いて実施することができる。使用される好ましいパラメーターは、http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/またはhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.htmlで設定されている初期設定のパラメーターである。配列同一性(配列の一致)の程度は、例えばBLAST、BLATまたはBlastZ(またはBlastX)を使用して計算することができる。同様なアルゴリズムはAltschulら(1990) J.Mol.Biol. 215巻:403〜410頁のBLASTNおよびBLASTPプログラムに組み込まれている。BLASTタンパク質検索は、親ポリペプチドに対するアミノ酸配列相同性を得るために、BLASTPプログラム、スコア=50、ワード長さ=3で実施される。比較の目的で切れ目のあるアラインメントを得るために、Altschulら(1997) Nucleic Acids Res. 25巻:3389〜3402頁に記載されたGapped BLASTが利用される。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用するときには、それぞれのプログラムの初期設定のパラメーターが使用される。配列の一致の分析は、Shuffle−LAGAN (BrudnoM.、Bioinformatics 2003b、19号、補遺1:I54〜I62頁)のような確立された相同性マッピング技法またはMarkovのランダムフィールドにより補完することもできる。配列同一性のパーセンテージが本出願で言及される場合、これらのパーセンテージは、特に断りのない限り、長い方の配列の全長に関して計算される。
用語「疾患」および「障害」は、本明細書では、組織、器官または個体が、その機能をもはや効率的に果たすことができない病気または負傷のような異常な状態、特に異常な病態を指して互換的に使用される。典型的には、疾患は、そのような疾患の存在を示す特異的症状または徴候に関連するが、必ずそうであるとは限らない。したがって、そのような症状または徴候の存在は、疾患に冒された組織、器官または個体を示すことができる。これらの症状または徴候の変質は、そのような疾患の進行を示すこともある。疾患の進行は、典型的には、疾患の「悪化」または「改善」を示すことができる、そのような症状または徴候の増大または減少により特徴づけられる。疾患の「悪化」は、組織、器官または生体のその機能を効率的に果たす能力の低下により特徴づけられるが、それに対して、疾患の「改善」は、典型的には、組織、器官または個体のその機能を効率的に果たす能力における向上により特徴づけられる。疾患「を発生するリスク」にある組織、器官または個体は、健常状態にあるが疾患の出現の可能性を示す。典型的には、疾患を発生するリスクは、そのような疾患の早期のまたは弱い徴候または症状と関連する。そのような場合には、疾患の発症は、治療により防止される可能性が未だある。疾患の例は、外傷性疾患、炎症性疾患、感染性疾患、皮膚の状態、内分泌性疾患、腸の疾患、神経障害、関節の疾患、遺伝的障害、自己免疫疾患、および種々のタイプの癌を含むが、これらに限定されない。
典型的には、疾患または障害は、そのような疾患または負傷の存在を示す特異的「症状」または「徴候」に関連するが、そうであるとは限らない。したがって、そのような症状または徴候の存在は、疾患または負傷に冒された組織、器官または個体を示すことができる。これらの症状または徴候の変質は、そのような疾患または負傷の進行を示すこともある。疾患または負傷の進行は、典型的には、疾患または負傷の「悪化」または「改善」を示すことができるそのような症状または徴候の増大または減少により特徴づけられる。疾患または負傷の「悪化」は、組織、器官または生体のその機能を効率的に果たす能力の低下により特徴づけられるが、それに対して、疾患または負傷の「改善」は、典型的には、組織、器官または個体のその機能を効率的に果たす能力における向上により特徴づけられる。疾患または負傷「を発生するリスク」にある組織、器官または個体は、健常状態にあるが、疾患または負傷の出現の可能性を示す。典型的には、疾患または負傷を発生するリスクは、そのような疾患の早期のまたは弱い徴候または症状と関連する。そのような場合には、疾患または負傷の発症および/または進行は治療により防止される可能性が未だある。
疾患の「症状」は、そのような疾患を有する組織、器官または生体により人目を引く疾患の暗示であり、組織、器官または個体の疼痛、脱力、圧痛、緊張、硬直、および痙攣を含むが、これらに限定されない。疾患の「徴候」または「シグナル」は、バイオマーカーまたは分子のマーカーのような特異的なインジケーターの存在、不在、増大もしくは上昇、減少もしくは下降のような変化または変質、または症状の発生、存在、もしくは悪化を含むが、これらに限定されない。疼痛の症状は、持続性のまたは変動性の灼熱感、拍動、痒みまたは刺すような痛みとして感じられる不快な感覚を含むが、これらに限定されない。
真性糖尿病(DM)は、上昇した血糖により特徴づけられる重篤な慢性疾患である。高血糖の症状は、頻尿、増大した口渇および増大した空腹を含むが、これらに限定されない。糖尿病を治療せずに放置すれば、急性および長期両方の合併症が惹起される可能性がある。急性合併症は、糖尿病性ケトアシドーシスおよび非ケトン性高浸透圧状態を含むが、これらに限定されない。長期の結果は、心臓発作、卒中、末梢脈管疾患、一過性虚血発作、腎機能不全、腎不全、慢性神経障害疼痛、足の潰瘍、手足の切断、失明、網膜の損傷、白内障、骨折、認知低下、非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変および種々の癌を含むが、これらに限定されない。糖尿病は、膵臓が、空腹および満腹状態の両方で、グルコースレベルを正常に保つために十分なインスリンを作ることができないために起こり、糖尿病の多くの人々は、産生されたインスリンに適当に応答しない細胞も有する。真性糖尿病の3種の主要なタイプがある:
1型の真性糖尿病は、膵臓のインスリンを十分に産生する機能の不全から生ずる。この形態は、以前「インスリン依存性真性糖尿病」(IDDM)または「若年性糖尿病」と言われていた。1型の真性糖尿病は、膵臓中のランゲルハンス島のインスリンを産生するベータ細胞の損失により特徴づけられて、インスリン欠損に至る。この型は、免疫媒介性または特発性とさらに分類することができる。1型糖尿病の大部分は、免疫媒介の性質のものであり、この型ではT細胞に媒介される自己免疫攻撃が、ベータ細胞の、したがってインスリンの損失をもたらす。
2型の糖尿病は、膵臓がインスリンの作用に対する抵抗性を克服するために十分なインスリンを作ることができない場合に起こる。この形態は、以前「非インスリン依存性真性糖尿病」(NIDDM)または「成人発症糖尿病」と言われていた。主な原因は、過剰な体重および運動不足である。2型真性糖尿病は、インスリン抵抗性により特徴づけられ、それは、比較的低下したインスリン分泌と組み合わされていることもある。インスリンに対する身体組織の欠陥のある応答性には、インスリン受容体が関係すると考えられる。しかしながら、特異的欠陥は知られていない。2型真性糖尿病は、真性糖尿病の最も一般的な型である。2型の早期のステージでは、支配的な異常は低下したインスリン感度である。このステージでは、高血糖は、種々の手段、およびインスリン感度を改善するかまたは肝臓のグルコース産生を低下させる医薬品によって逆転させることができる。
妊娠糖尿病は、第3の主要な形態であり、糖尿病の前歴がない妊婦が高血糖レベルを発生する場合に起こる。懐胎期間の真性糖尿病(GDM)は、幾つかの点で2型真性糖尿病と似ており、比較的不適切なインスリン分泌および応答性の組合せを含む。それは全ての妊娠の約2〜10%で起こり、分娩後、改善または消失することもある。しかしながら、妊娠後、妊娠糖尿病を有する女性の約5〜10%が、真性糖尿病、大部分は一般的に2型を有することが見いだされている。妊娠糖尿病は完全に治療可能であるが、妊娠期間を通じて注意深い医学的管理が必要である。
糖尿病前症とは、ヒトの血中グルコースレベルが、正常より高いが、2型糖尿病と診断するには十分に高くないときに生ずる状態を指す。2型真性糖尿病を発生すると運命づけられている多くの人々が、糖尿病前症の状態で多くの年を費やしている。
上で指摘したように、糖尿病は、広範な重大な長期の結果と関連する。その他に、これらは心臓血管疾患を含むが、これらに限定されない。
用語「心臓血管疾患(CVD)」は、心臓および血管の障害の群を指し、冠動脈心疾患、脳血管の疾患、末梢動脈の疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、および深部静脈血栓症および肺塞栓症を含むが、これらに限定されない。用語「冠動脈心疾患」は、心筋に供給する血管の疾患を指す。用語「脳血管の疾患」は、脳に供給する血管の疾患を指す。用語「末梢動脈の疾患」は、腕および脚に供給する血管の疾患を指す。用語「リウマチ性心疾患」は、リウマチ熱、特に連鎖球菌により惹起されたリウマチ熱から来る心筋および心臓弁に対する損傷を指す。用語「先天性心疾患」は、出生時に存在する心臓構造の形成異常を指す。用語「深部静脈血栓症および肺塞栓症」は、脚の静脈における凝血を指し、それは、心臓および肺に転移および移動することができる。
心臓血管疾患のうち、「心臓発作」および「卒中」は、通常急性事象であり、血液が心臓または脳に流れることを妨げる閉塞により主として引き起こされる。最も一般的な理由は、血管の内壁における脂肪の堆積の形成である。卒中は、脳中の血管からの出血または凝血により引き起こされる。心臓血管疾患は、世界的に首位の死因である。心臓発作として一般的に知られている「心筋梗塞(MI)」または「急性心筋梗塞(AMI)」は、心臓の部分への血流停止が心筋に損傷を惹起したときに起こる。最も一般的な症状は、胸痛または肩、腕、背中、首、または顎に移動することがある不快感である。しばしば、それは、胸の中心または左側にあり、2〜3分を超えて持続する。不快感は、心臓が焼けるように感じる場合もある。他の症状は、息が詰まる、吐き気、気が遠くなる、冷や汗、または疲労感を含むこともある。約30%の人々が異常な症状を有し、女性は男性よりも異常を強く呈するようである。75歳を超える人々の中で、約5%が、症状の前歴はほとんどまたは全くなくてMIを有したことがある。MIは、心不全、不整脈、または心停止を惹起することもある。大部分のMIは、冠動脈疾患に基づいて起こる。リスク因子は、高血圧、喫煙、糖尿病、運動不足、肥満症、高血液コレステロール、貧しい食事、および過剰なアルコール摂取を含むが、これらに限定されない。MIの機構は、しばしば動脈硬化巣の破裂を含み、冠動脈の完全な閉塞に至る。心電図(ECG)、血液試験、および冠動脈血管造影法を含むが、これらに限定されない多くの試験が、診断を助けるために有用である。
用語「狭心症」または「アンギナ」は、胸痛、圧迫、または絞扼痛の感覚を指し、しばしば、冠動脈の閉塞または痙攣からくる心筋の虚血に基づく。狭心症は、貧血、異常な心臓の拍動および心不全に由来することもあるが、その主たる原因は、冠動脈疾患、心臓に供給する動脈に影響する動脈硬化過程である。労作性狭心症としても知られている安定なアンギナは、心筋の虚血と関係するアンギナの古典的なタイプを指す。安定なアンギナの典型的な現れ方は、幾種類かの活動(ランニング、ウォーキング、その他)により突然引き起こされる胸の不快感および関連する症状の出現で、休憩時または舌下ニトログリセリンの投与後には最小のまたは存在しない症状である。対照的に、不安定なアンギナ(UA)(「漸次強くなるアンギナ」とも言われ;これは急性冠動脈症候群の1形態である)は、変化するかまたは悪化する狭心症として定義される。UAは、休憩時に予測不可能に起こることがあり、それは切迫した心臓発作の重篤インジケーターであることもある。安定なアンギナは、不安定なアンギナと区別され(症状以外で)、アテローム性動脈硬化症の底流にある病態生理学である。不安定なアンギナの病態生理学は、一見正常な内皮上の一過性の血小板凝集に基づく冠動脈流の低下、冠動脈痙攣、または冠動脈血栓症である。該過程は、アテローム性動脈硬化症で開始して、炎症を通して進行し、活性で不安定なプラークを生じ、それは血栓症を経て、急性の心筋虚血を生じさせ、それは、逆転しなければ、細胞壊死(梗塞)を生じさせる。安定なアンギナでは、発生するアテロームは、繊維状のキャップで保護される。このキャップは、不安定なアンギナでは破裂することがあり、凝血塊が沈殿することを可能にして、冠動脈血管のルーメンの面積をさらに減少させる。
用語「心不全」は、心臓血管疾患のうちに含まれるが、別々の意味を有することもある。長く持続する心臓血管疾患の結果または大きい心臓発作の結果として、心筋が弱まり過ぎて、血液および酸素に対する身体の必要性に答えるのに十分な血液を送り出すことができない程度に損傷されることがある。心不全が経時的に発達した心臓損傷により惹起された場合には、それは治癒させることはできない。心不全は、65歳以上の人々の間の入院の最も一般的な理由の1つである。共罹患として糖尿病を有する個体は、心不全を発生する高いリスクにあるだけでなく、それで死亡する増大したリスクにもある。幸いなことに、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、βブロッカーおよびミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストのような典型的な心臓血管療法が、糖尿病でない心不全患者および糖尿病の心不全患者に同様に十分作用する。しかしながら、強力な血糖症の制御および糖尿病を治療するために通常使用される種々のクラス抗高血糖症薬療法に対する応答は、実質的に十分に理解されていない。心臓血管の安全性を示す新しいグルコース低下薬に対する必要性が、プラセボと比較した、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、サキサグリプチンで治療された患者における心不全のための入院のリスクの増大という予想外の発見に導いた。用語「心不全」は、慢性心不全、急性心不全、鬱血性心不全、特発性心不全、心機能不全、心筋症、および糖尿病性心筋症のような、1群の異なる臨床的症状およびそれらの定義を含む。
用語「心臓鼓動の体積」は、1鼓動で送り出される血液の体積を指す。
用語「心臓効率」は、この仕事を実施するために心筋により使用されたエネルギーに対する心筋によりなされた仕事の比率として定義される。
心臓の生理学において、用語「鼓動の仕事」は、血液の体積、すなわち鼓動の体積を、大動脈に排出するために、左心室の心筋によりなされた仕事を指す。鼓動の仕事は、心臓鼓動の体積と排出中の平均大動脈圧の積として見積もることができて、時には、心室機能を評価するために使用される。
心臓の生理学における用語「心拍出量」は、単位時間に心臓により送り出される血液の体積を記載する。心拍出量は、身体の種々の部分に送達される血液の量に関係するので、それは、心臓が身体の要求に如何に効率的に応じるかの重要なインジケーターである。用語「鼓動の体積」と共に、心拍出量は、血行動態−外力下における血流の研究における関心の中心的パラメーターである。
心拍出量および心臓鼓動の体積は、「心エコー検査」、すなわち心臓の超音波画像によって測定することができる。心エコー検査は、心臓の像を創り出すために、標準的2次元、3次元を単独でまたはドップラー超音波と組み合わせて使用し、何らかの疑いがあるかまたは知られている心疾患を有する患者の診断、管理、およびフォローアップで日常的に使用される。それは、心臓病学で最も広く使用されている診断の試験の1つである5、6。心臓のサイズおよび形状に関係する情報を提供することに加えて(例えば内部の室のサイズの定量)、送液容量、および任意の組織損傷の所在および程度、エコー検査図も、心拍出量、排出分率、および拡張期の機能(心臓が如何に十分に弛緩するか)のような心機能の評価を可能にする。心エコー検査は、肥大性心筋症、拡張心筋症、およびその他多数のような心筋症の検出を可能にする。負荷心エコー検査の使用は、任意の胸痛または関連する症状が心疾患に関係するかどうかを決定する助けにもなることがある。心エコー検査の最大の利点は、それが非侵襲的であること(皮膚を破ることも体腔に進入することもない)およびリスクまたは副作用が知られていないことである。特に、パルスの、または連続した波のドップラー超音波を使用するドップラー心エコー検査は、心臓を通って流れる血液の正確なアセスメントを可能にする。カラードップラーならびにスペクトルドップラーは、心臓の左側と右側の間の連絡の何らかの異常、弁を通る血液の何らかの洩れ(弁逆流症)を可視化するために、および弁が如何に十分に開くか(または、弁狭窄の場合には開かないか)を推定するために一般的に使用される。ドップラー技法は、組織ドップラー心エコー検査による組織の動きおよび速度の測定のために使用することもできる。
細胞の呼吸は、生物体の細胞で起こる、栄養素からの生化学的エネルギーをアデノシントリリン酸(ATP)に変換する代謝性反応および過程の組合せである。呼吸で動物および植物の細胞によって共通して使用される栄養素は、糖、アミノ酸および脂肪酸を含み、最も一般的な酸化剤(電子受容体)は分子状酸素(O)である。心臓は、非常に高いエネルギーの要求を有し、ATPを高速で連続的に発生させて、収縮機能、基礎代謝性過程、およびイオン性ホメオスタシスを維持する。正常な成人の心臓では、ATP産生のほとんど全て(約95%)は、脂肪酸のβ−酸化およびグルコース酸化を含むミトコンドリアにおける酸化的リン酸化から誘導される。
心臓では、用語「グルコース酸化」は、グルコースからのエネルギー発生を指す。グルコース酸化は、酸素を使用してグルコースを二酸化炭素および水に酸化する細胞の生化学的過程であり;化学エネルギーが酸化から放出されてATPを発生させるために使用される。グルコースの酸化は、4つのステージを含む。解糖中に、グルコースの1分子が破壊されて2分子のピルベートになり、エネルギーは、NADHおよびATPの2分子の形態で、それぞれ貯蔵される。第2のステージで、ピルベートは、ピルベートデヒドロゲナーゼにより処理されてアセチル−CoA、二酸化炭素およびNADHを発生させる。第3のステージはクレブス回路であり、そこでアセチル−CoAは酸化されて二酸化炭素およびNADH、FADH2およびATPまたはGTPになる。最後のステージは、酸化的リン酸化であり、そこで全てのNADHおよびFADH2分子が酸化されてATPになる。グルコースの取り込みおよび/またはグルコース酸化の測定は、核医学として、放射性グルコース誘導体の陽電子放出断層撮影を使用して確立されている。過分極化した放射性ピルベートを用いる磁気共鳴分光法は、グルコース酸化における変化を検出することができる技法である。この技法で、動的核分極および13Cで標識されたピルベートの代謝性トレーサーとの組合せに基づいて、この測定プロトコルは使用されてきて、糖尿病、虚血性心疾患、心肥大および心不全の異なるモデルにおいて、正常のおよび疾患の心臓における心筋の代謝の変化をインビボで評価するために有効と認められており、ヒトにおけるこの技術の安全な適用が示されている
生化学的血漿バイオマーカー、すなわち脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)ならびにBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのレベルの、非侵襲的撮像技術と組み合わせた同時の測定も、グルコース酸化を測定するために適している。
用語「脂肪酸酸化」または「ベータ酸化」は、脂肪酸からのエネルギー発生を指す。ベータ酸化は、アセチル−CoA、FADH2およびNADHの形成を生じて、それらは、最終的にクレブス回路または酸化的リン酸化反応で酸化される。該過程は、数サイクルからなり、1サイクルは4つの酵素的工程を有する。該過程は、脂肪酸中の全ての炭素がアセチルCoAに転化されるまで継続される。例えば、パルミチン酸は、16個の炭素のアシル鎖からなり、したがって8サイクルが、その特定の鎖長を有するこの脂肪酸を完全に酸化するために必要とされる。正常条件下で、クレブス回路に入るアセチル−CoAの大部分は、FAのベータ−酸化により発生するが、約3分の1は、ピルベートの酸化に由来する。2型糖尿病では、FAに向かう酸化における偏移が、グルコースの損失で起こる。現在のところ、脂質過負荷に基づくこの代謝性障害は、2型糖尿病における心機能不全の1つの底流となる原因であると考えられている。
本明細書において使用する、疾患または負傷を「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」は、以下の1つまたはそれ以上を遂行することを意味する:(a)疾患または負傷の重症度を低下させること;(b)治療されている疾患または負傷の特徴的な症状の発達を制限または予防すること;(c)治療されている疾患または負傷に特徴的な症状の悪化を阻止すること;(d)疾患または負傷を以前に有したことがある個体における疾患または負傷の再発を制限または予防すること;および(e)疾患または負傷について以前症状があった個体における症状の再発を制限または予防すること。
本明細書において使用する、疾患または負傷を「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」、「防止(prevention)」、または「予防(prophylaxis)」は、そのような疾患または負傷が患者に起こることを予防することを意味する。
疾患を「遅延させる」または「遅延させること」という用語は、疾患または障害の進行における減退を指し、すなわち疾患を遅延させることとは、疾患の症状または徴候または原因が悪化する時間枠を長引かせることを指す。
用語「薬」、「医薬組成物」、「薬剤」および「薬物」は、本明細書では互換的に使用され、疾患または負傷の同定、防止または治療のために使用される物質および/または物質の組合せを指す。
本明細書において使用する「投与する」は、インビボ投与、ならびに静脈移植のようなex vivoの組織への直接投与を含む。
「有効量」は、意図される目的を達成するために十分な薬品の量である。所与の薬品の有効量は、薬品の性質、投与経路、薬品を受ける対象のサイズおよび種、ならびに投与の目的のような要因に基づいて変化することもある。各個体の場合における有効量は、当技術分野において確立された方法に従って、当業者により経験的に決定される。
用語「治療的有効量」は、意図される予防または治療の効果を達成するために十分な治療剤の量であり、すなわち治療されるべき障害または疾患の症状の徴候の改善を達成するために、または予防されるべき障害または疾患の症状の徴候の発症を予防するために考慮される前記治療剤の量である。所与の治療剤の有効量は、薬品の性質、投与経路、治療剤を受ける動物のサイズおよび種、ならびに投与の目的のような要因に基づいて変化することがある。各個体の場合における治療的有効量は、当技術分野において確立された方法に従って、当業者が経験的に決定することができる。
「薬学的に許容される」は、連邦または州政府の規制当局により承認されているか、または米国薬局方のリストに、または動物およびより特にヒトにおいて使用するために一般的に認められている他の薬局方のリストに記載されていることを意味する。
用語「有効成分」は、医薬組成物または剤形中の生物学的に活性な物質、すなわち薬学的価値を提供する物質を指す。医薬組成物は、互いに協力してまたは独立に作用することができる1種またはそれ以上の有効成分を含むことができる。有効成分は、中性または塩の形態として剤形化することができる。薬学的に許容される塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、その他から誘導されるもののような遊離アミノ基とで形成される塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導されるもののような、ただしこれらに限定されない遊離カルボキシル基とで形成される塩を含む。
用語「製剤」および「組成物」では、カプセルを提供するカプセル化材料を担体として用いる活性化合物の剤形を含むことが意図されて、カプセル中では活性化合物が、他の担体と共にまたはそれ無しで、そのように活性化合物を伴う担体により取り囲まれている。
本明細書において使用する用語「担体」は、治療的に有効な成分が一緒に投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルのような、ただしこれらに限定されない薬理学的に不活性な物質を指す。そのような薬学的担体は、液体または固体であることができる。液体の担体は、生理食塩水液剤、およびピーナツ油、ダイズ油、ミネラル油、ゴマ油等のような石油、動物、植物または合成起源のものを含む油のような滅菌液体を含むが、これらに限定されない。生理食塩水液剤および水性デキストロ−スおよびグリセリン液剤は、液体担体として、特に注射用液剤のために使用することもできる。生理食塩水液剤は、医薬組成物が静脈内に投与される場合に好ましい担体である。適当な薬学的担体の例は、E.W.Martinにより「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
適当な薬学的「賦形剤」は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセリンモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノール等を含む。
用語「補助剤」は、有効成分の治療効果を増強、刺激、活性化、強化、または調整する薬品を指す。そのような補助剤の例には、無機補助剤(例えば、リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウムのような無機金属塩)、有機補助剤(例えば、サポニンまたはスクワレン)、油系補助剤(例えば、フロイントの完全アジュバントおよびフロイントの不完全アジュバント)、サイトカイン(例えば、IL−1β、IL−2、IL−7、IL−12、IL−18、GM−CFS、およびINF−γ)、粒子状補助剤(例えば、免疫刺激錯体(ISCOMS)、リポソーム、または生分解性マイクロスフェア)、ビロソーム、細菌性アジュバント(例えば、モノホスホリル脂質A、またはムラミルペプチド)、合成補助剤(例えば、非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチドアナログ、または合成脂質A)、または合成ポリヌクレオチド補助剤(例えば、ポリアルギニンまたはポリリシン)が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書において使用する、「患者」は、本発明の恩恵を受けることができる任意の哺乳動物、爬虫類または鳥類を意味する。好ましくは、患者は、実験動物(例えばマウス、ラットまたはウサギ)、家畜(例えばテンジクネズミ、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ラクダ、ネコ、イヌ、ウミガメ、陸生ガメ、ヘビ、またはトカゲを含む)、またはチンパンジー、ボノボ、ゴリラおよび人類を含む霊長類からなる群から選択される。「患者」は人類であることが特に好ましい。
実施形態
糖尿病性の心臓は、インスリン抵抗性であり、脂肪酸酸化が増大して、グルコース酸化が減少している。エネルギー代謝におけるこれらの変化は、心臓効率を低下させて、糖尿病性心臓の低下した機能の原因になる。グルコース酸化を刺激して脂肪酸酸化を阻害するインスリンの能力は有益であり、特に糖尿病性心臓において有益である。グルコース酸化を刺激することによるような心拍出量の改善は、心機能を改善するという証拠がある。
第1の態様において、本発明は、患者に、特に糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者に、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するためのインスリンアナログを提供する。したがって、本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者に、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するためのインスリンアナログを提供する。特定の実施形態では、前記患者は、I型糖尿病またはII型糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいる。特定の実施形態では、患者は、減少した心拍出量または減少した鼓動の体積を示し、および/または心臓における増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す。特定の実施形態では、患者は、糖尿病に苦しみ、心臓血管疾患、特に心不全をすでに経験している。
実施形態で、インスリンアナログは、心拍出量を、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量を20〜30%、特に22〜26%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量を、20%、22%、24%または26%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量を長期治療で増大させる。
実施形態で、インスリンアナログは、心臓鼓動の体積を、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓鼓動の体積を、20〜30%、特に22〜28%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓鼓動の体積を22%、24%、26%または28%増大させる。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓におけるグルコース酸化を増大させて、および/または脂肪酸酸化を減少させる。
したがって、特定の実施形態では、インスリンアナログは、特に糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者において、心臓効率または心臓鼓動の体積を増大させることにおける、短期および/または長期の使用のためのものである。当業者は、心拍出量および/または心臓鼓動の体積における精密な増大は、特定の患者の初期の心機能に依存し、したがって変化することもあることを認識するであろう。さらに、当業者は、心臓効率および/または心臓鼓動の体積における精密な増大は、心拍出量および鼓動の体積を測定するために使用される異なる臨床的方法の感度により制限されることを認識するであろう。
特定の実施形態では、心拍出量および/または心臓鼓動の体積は、撮像技術、特に心臓の超音波検査により評価される。特定の実施形態では、ドップラー超音波が、心エコー検査との組合せで使用されて、心臓への血流のより完全な臨床像を与えることができる。あるいはまたは組合せで、心機能は心臓の磁気共鳴撮像により、および/または例えば脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのようなバイオマーカーのレベルを決定することにより、評価および/または確認することができる。
特定の実施形態では、グルコースの取り込みおよび/またはグルコース酸化の測定は、過分極化した放射性ピルベートの使用を含む磁気共鳴分光法を使用して実施することができる。非侵襲的撮像技術と組み合わされた、生化学的血漿バイオマーカー、すなわち脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのレベルの同時測定も、グルコース酸化を測定するために適している。特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然インスリンと比較すると、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnはAla、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖はC末端および/またはN末端の伸張を有する。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して位置A21でGlyに改変されており、2個のArgがB鎖のC末端に付加されている(インスリングラルギン、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン)。他の実施形態では、インスリンアナログはグラルギン−M1(Gly(A21)ヒトインスリン)であり、ここで2個の追加のArg残基は除去されているがA21は未だGlyである。
特定の実施形態では、患者は、本発明から恩恵を受けることができる哺乳動物、爬虫類または鳥類である。特に、患者は、実験動物(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)、家畜(例えば、テンジクネズミ、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ラクダ、ネコ、イヌ、ウミガメ、陸生ガメ、ヘビ、またはトカゲを含む)、またはチンパンジー、ボノボ、ゴリラおよび人類を含む霊長類からなる群から選択される。特に、患者は人類である。
第2の態様において、本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するためのインスリンアナログを提供する。特定の実施形態では、前記患者は、I型糖尿病またはII型糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいる。特定の実施形態では、患者は、心臓における減少した心拍出量または減少した鼓動の体積を示し、および/または増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す。特定の実施形態では、患者は、糖尿病に苦しみ、心臓血管疾患、特に心不全をすでに経験している。
特定の実施形態では、心臓血管疾患は、減少した心機能を伴う心臓血管障害からなる群から選択される。特定の実施形態では、心臓血管疾患は、心不全、冠動脈心疾患、脳血管の疾患、末梢動脈の疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、および深部静脈血栓症および肺塞栓症からなる群から選択される。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓において、グルコース酸化を増大させ、および/または脂肪酸酸化を減少させて、それにより心臓血管疾患を予防および/または治療する。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓の心拍出量および/または心臓鼓動の体積を増大させ、それにより心臓血管疾患の進行を予防し、および/またはそれを治療し、ならびに心臓血管の転帰を遅延させる。
実施形態で、インスリンアナログは、心拍出量を、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量を、20〜30%、特に22〜26%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量を、20%、22%、24%または26%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量を長期治療で増大させる。
実施形態で、インスリンアナログは、心臓鼓動の体積を、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓鼓動の体積を20〜30%、特に22〜28%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓鼓動の体積を22%、24%、26%または28%増大させる。
当業者は、心拍出量および/または心臓鼓動の体積における精密な増大は、特定の患者の初期の心機能に依存し、したがって変化することもあることを認識するであろう。さらに、当業者は、心拍出量および/または心臓鼓動の体積における精密な増大は、心拍出量および鼓動の体積を測定するために使用される異なる臨床的方法の感度により制限されることを認識するであろう。
特定の実施形態では、心拍出量および/または心臓鼓動の体積は、撮像技術、特に心臓の超音波検査により評価される。特定の実施形態では、ドップラー超音波は心エコー検査との組合せで使用されて、心臓への血流のより完全な臨床像を与えることができる。あるいはまたは組合せで、心機能は心臓の磁気共鳴撮像により、および/または例えば脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのようなバイオマーカーのレベルを決定することにより、評価および/または確認することができる。
特定の実施形態では、グルコースの取り込みおよび/またはグルコース酸化の測定は、過分極化した放射性ピルベートの使用を含む磁気共鳴分光法を使用して実施することができる。非侵襲的撮像技術と組み合わされた、生化学的血漿バイオマーカー、すなわち脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのレベルの同時測定も、グルコース酸化を測定するために適している。特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。
したがって、特定の実施形態では、心臓効率および/または心臓の心臓鼓動の体積を増大させることにより、特に心拍出量を24%、および/または心臓鼓動の体積を26%増大させることにより、心臓血管疾患が予防、治療または遅延される場合に、インスリンアナログは、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者において、心臓血管疾患を予防および/または治療することに使用するため、および/または心臓血管の転帰を遅延させるためのものである。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖は、C末端および/またはN末端の伸張を有する。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然のものと比較して、位置A21でGlyに改変されており、および2個のArgがB鎖のC末端に付加されている。特定の実施形態では、インスリンアナログは、グラルギンまたはグラルギン−M1である。
特定の実施形態では、患者は、本発明から恩恵を受けることができる哺乳動物、爬虫類または鳥類である。特に、患者は、実験動物(例えばマウス、ラットまたはウサギ)、家畜(例えば、テンジクネズミ、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ラクダ、ネコ、イヌ、ウミガメ、陸生ガメ、ヘビ、またはトカゲを含む)、またはチンパンジー、ボノボ、ゴリラおよび人類を含む霊長類からなる群から選択される。特に、患者は人類である。
第3の態様において、本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延、および/または治療する方法であって、治療的有効量のインスリンアナログを患者に投与することを含む前記方法に関する。特定の実施形態では、糖尿病はI型またはII型糖尿病である。特定の実施形態では、患者は、減少した心拍出量または減少した鼓動の体積を示し、および/または心臓における増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す。特定の実施形態では、患者は、糖尿病に苦しみ、心臓血管疾患、特に心不全をすでに経験している。
特定の実施形態では、心臓血管疾患は、減少した心機能を伴う心臓血管障害からなる群から選択される。特定の実施形態では、心臓血管疾患は、心不全、冠動脈心疾患、脳血管の疾患、末梢動脈の疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、および深部静脈血栓症および肺塞栓症からなる群から選択される。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量および/または心臓の心臓鼓動の体積を増大させて、それにより心臓血管疾患の進行を予防し、および/またはそれを治療し、ならびに心臓血管の転帰を遅延させる。
実施形態で、インスリンアナログは、心拍出量を、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量を、20〜30%、特に22〜26%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量を、20%、22%、24%または26%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心拍出量を長期治療で増大させる。
実施形態で、インスリンアナログは、心臓鼓動の体積を、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓鼓動の体積を、20〜30%、特に22〜28%増大させる。特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓鼓動の体積を22%、24%、26%または28%増大させる。
当業者は、心拍出量および/または心臓鼓動の体積における精密な増大は、特定の患者の初期の心機能に依存し、したがって変化することもあることを認識するであろう。さらに、当業者は、心拍出量および/または心臓鼓動の体積における精密な増大は、心拍出量および鼓動の体積を測定するために使用される異なる臨床的方法の感度により制限されることを認識するであろう。
特定の実施形態では、心拍出量および/または心臓鼓動の体積は、撮像技術、特に心臓の超音波検査により評価される。特定の実施形態では、ドップラー超音波は、心エコー検査との組合せで使用されて、心臓への血流のより完全な臨床像を与えることができる。あるいはまたは組合せで、心機能は心臓の磁気共鳴撮像により、および/または例えば脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのようなバイオマーカーのレベルを決定することにより、評価および/または確認することができる。
特定の実施形態では、グルコースの取り込みおよび/またはグルコース酸化の測定は、過分極化した放射性ピルベートの使用を含む磁気共鳴分光法を使用して実施することができる。非侵襲的撮像技術と組み合わされた、生化学的血漿バイオマーカー、すなわち脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのレベルの同時測定も、グルコース酸化を測定するために適している。特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、心臓におけるグルコース酸化を増大させ、および/または脂肪酸酸化を減少させる。したがって、特定の実施形態では、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者において、心臓血管疾患は、治療的有効量のインスリンアナログを投与することにより予防および/または治療されて、その場合、前記インスリンアナログはグルコース酸化を増大させ、および/または脂肪酸酸化を減少させる。
したがって、特定の実施形態では、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を、予防、遅延、および/または治療する方法は、インスリンアナログの投与に先立って、心拍出量、心臓鼓動の体積、および/またはグルコースの取り込みおよび/またはグルコース酸化を決定する工程を含む。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖は、C末端および/またはN末端の伸張を有する。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然のものと比較して、位置A21でGlyに改変されており、および2個のArgがB鎖のC末端に付加されている。特定の実施形態では、インスリンアナログは、グラルギンまたはグラルギン−M1である。
特定の実施形態では、患者は、本発明から恩恵を受けることができる哺乳動物、爬虫類または鳥類である。特に、患者は、実験動物(例えばマウス、ラットまたはウサギ)、家畜(例えば、テンジクネズミ、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ラクダ、ネコ、イヌ、ウミガメ、陸生ガメ、ヘビ、またはトカゲを含む)、またはチンパンジー、ボノボ、ゴリラおよび人類を含む霊長類からなる群から選択される。特に、患者は人類である。
第4の態様において、本発明は、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防および/または治療することに使用するための医薬組成物であって、インスリンアナログならびに少なくとも1種の薬学的に許容される担体、補助剤および/または賦形剤を含む医薬組成物に関する。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖は、C末端および/またはN末端の伸張を有する。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然のものと比較して、位置A21でGlyに改変されており、および2個のArgがB鎖のC末端に付加されている。特定の実施形態では、インスリンアナログは、グラルギンまたはグラルギン−M1である。
特定の実施形態では、心臓血管疾患は、減少した心機能を伴う心臓血管障害からなる群から選択される。特定の実施形態では、心臓血管疾患は、心不全、冠動脈心疾患、脳血管の疾患、末梢動脈の疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、および深部静脈血栓症および肺塞栓症からなる群から選択される。
特定の実施形態では、医薬組成物は、心拍出量および/または心臓の心臓鼓動の体積を増大させ、それにより心臓血管疾患の進行を予防し、および/またはそれを治療し、ならびに心臓血管の転帰を遅延させる。
実施形態で、医薬組成物は、心拍出量を、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%増大させる。特定の実施形態では、医薬組成物は、心拍出量を、20〜30%、特に22〜26%増大させる。特定の実施形態では、医薬組成物は、心拍出量を、20%、22%、24%または26%増大させる。特定の実施形態では、医薬組成物は心拍出量を、長期治療で増大させる。
実施形態で、医薬組成物は、心臓鼓動の体積を、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%増大させる。特定の実施形態では、医薬組成物は、心臓鼓動の体積を、20〜30%、特に22〜28%増大させる。特定の実施形態では、医薬組成物は、心臓鼓動の体積を、22%、24%、26%または28%増大させる。
当業者は、心拍出量および/または心臓鼓動の体積における精密な増大は、特定の患者の初期の心機能に依存し、したがって変化することもあることを認識するであろう。さらに、当業者は、心拍出量および/または心臓鼓動の体積における精密な増大は、心拍出量および鼓動の体積を測定するために使用される異なる臨床的方法の感度により制限されることを認識するであろう。
したがって、特定の実施形態では、医薬組成物は、心拍出量および/または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するためのものであり、その使用で、心拍出量は20〜30%増大し、および/または心臓鼓動の体積は20〜30%増大する。
特定の実施形態では、心拍出量および/または心臓鼓動の体積は、撮像技術、特に心臓の超音波検査により評価される。特定の実施形態では、ドップラー超音波は心エコー検査との組合せで使用されて心臓への血流のより完全な臨床像を与えることができる。あるいはまたは組合せで、心機能は心臓の磁気共鳴撮像により、および/または例えば脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのようなバイオマーカーのレベルを決定することにより、評価および/または確認することができる。
特定の実施形態では、グルコースの取り込みおよび/またはグルコース酸化の測定は、過分極化した放射性ピルベートの使用を含む磁気共鳴分光法を使用して実施することができる。非侵襲的撮像技術と組み合わされた、生化学的血漿バイオマーカー、すなわち脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのレベルの同時測定も、グルコース酸化を測定するために適している。特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。
特定の実施形態では、医薬組成物は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者に使用するためのものである。特定の実施形態では、前記患者は、I型糖尿病またはII型糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいる。特定の実施形態では、医薬組成物は、心臓において、減少した心拍出量または減少した鼓動の体積を示し、および/または増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す患者に使用するためのものである。特定の実施形態では、医薬組成物は、糖尿病に苦しみ、心臓血管疾患、特に心不全をすでに経験している患者に使用するためのものである。
特定の実施形態では、患者は、本発明から恩恵を受けることができる哺乳動物、爬虫類または鳥類である。特に、患者は、実験動物(例えばマウス、ラットまたはウサギ)、家畜(例えば、テンジクネズミ、ウサギ、ウマ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ラクダ、ネコ、イヌ、ウミガメ、陸生ガメ、ヘビ、またはトカゲを含む)、またはチンパンジー、ボノボ、ゴリラおよび人類を含む霊長類からなる群から選択される。特に、患者は人類である。
第5の態様において、本発明は、患者が減少した心拍出量または減少した心臓鼓動の体積または心臓血管疾患を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいるかどうかを決定する工程を含む、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいる、インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受けることができる患者または患者群を同定する方法を提供する。
特定の実施形態では、前記患者または患者群は、I型糖尿病またはII型糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいる。特定の実施形態では、患者または患者群は、心臓における増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す。特定の実施形態では、患者または患者群は、糖尿病に苦しみ、心臓血管疾患、特に心不全をすでに経験している。
特定の実施形態では、心臓血管疾患は、減少した心機能を伴う心臓血管障害からなる群から選択される。特定の実施形態では、心臓血管疾患は、心不全、冠動脈心疾患、脳血管の疾患、末梢動脈の疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、および深部静脈血栓症および肺塞栓症からなる群から選択される。
実施形態で、患者は、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%減少した心拍出量を示す。特定の実施形態では、患者は、20〜30%、特に22〜26%減少した心拍出量を示す。特定の実施形態では、患者は、20%、22%、24%または26%減少した心拍出量を示す。
実施形態で、患者は、15〜40%、すなわち15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、または40%減少した心臓鼓動の体積を示す。特定の実施形態では、患者は、20〜30%、特に22〜28%減少した心臓鼓動の体積を示す。特定の実施形態では、患者は、22%、24%、26%または28%減少した心臓鼓動の体積を示す。
特定の実施形態では、患者は、減少した心拍出量、特に20〜30%減少した心拍出量を示す。特定の実施形態では、患者は、減少した心臓鼓動の体積、特に20〜30%減少した鼓動の体積を示す。
特定の実施形態では、心拍出量および/または心臓鼓動の体積は、撮像技術、特に心臓の超音波検査により評価される。特定の実施形態では、ドップラー超音波は心エコー検査との組合せで使用されて、心臓への血流のより完全な臨床像を与えることができる。あるいはまたは組合せで、心機能は心臓の磁気共鳴撮像により、および/または例えば脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのようなバイオマーカーのレベルを決定することにより、評価および/または確認することができる。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖は、C末端および/またはN末端の伸張を有する。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然のものと比較して、位置A21でGlyに改変されており、および2個のArgがB鎖のC末端に付加されている。特定の実施形態では、インスリンアナログは、グラルギンまたはグラルギン−M1である。
したがって、インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受ける患者または患者群を同定する方法は、心拍出量および/または心臓鼓動の体積を、特に撮像技術を使用して、特に心臓の超音波検査により決定する工程を含む。
第6の態様において、本発明は、インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受ける患者または患者群を同定する方法であって、前記患者または前記患者群は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しみ、心臓における増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す、方法に関する。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖は、C末端および/またはN末端の伸張を有する。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然のものと比較して、位置A21でGlyに改変されており、および2個のArgがB鎖のC末端に付加されている。特定の実施形態では、インスリンアナログは、グラルギンまたはグラルギン−M1である。
特定の実施形態では、前記患者または前記患者群は、I型糖尿病またはII型糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいる。特定の実施形態では、患者または患者群は、減少した心拍出量または減少した鼓動の体積を示す。特定の実施形態では、患者または前記患者群は、糖尿病に苦しみ、心臓血管疾患、特に心不全をすでに経験している。
特定の実施形態では、心臓血管疾患は、減少した心機能を伴う心臓血管障害からなる群から選択される。特定の実施形態では、心臓血管疾患は、心不全、冠動脈心疾患、脳血管の疾患、末梢動脈の疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、および深部静脈血栓症および肺塞栓症からなる群から選択される。
特定の実施形態では、グルコースの取り込みおよび/またはグルコース酸化の測定は、過分極化した放射性ピルベートの使用を含む磁気共鳴分光法を使用して実施することができる。非侵襲的撮像技術と組み合わされた、生化学的血漿バイオマーカー、すなわち脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのレベルの同時測定も、グルコース酸化を測定するために適している。特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。
したがって、インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受ける患者または患者群を同定する方法は、患者におけるグルコース酸化のレベルを、特に磁気共鳴分光法を使用して測定する工程を含み、特に過分極化した放射性ピルベートの使用を含む。
第7の態様において、本発明は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するためのインスリンアナログであって、該患者は増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す、インスリンアナログに関する。
特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖は、C末端および/またはN末端の伸張を有する。特定の実施形態では、インスリンアナログは、天然のものと比較して、位置A21でGlyに改変されており、および2個のArgがB鎖のC末端に付加されている。特定の実施形態では、インスリンアナログは、グラルギンまたはグラルギン−M1である。
特定の実施形態では、前記患者は、I型糖尿病またはII型糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいる。特定の実施形態では、患者は、減少した心拍出量または減少した鼓動の体積を示す。特定の実施形態では、患者は、糖尿病に苦しみ、心臓血管疾患、特に心不全をすでに経験している。
特定の実施形態では、心臓血管疾患は、心機能の減少を伴う心臓血管障害からなる群から選択される。特定の実施形態では、心臓血管疾患は、心不全、冠動脈心疾患、脳血管の疾患、末梢動脈の疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、および深部静脈血栓症および肺塞栓症からなる群から選択される。
特定の実施形態では、グルコースの取り込みおよび/またはグルコース酸化の測定は、過分極化した放射性ピルベートの使用を含む磁気共鳴分光法を使用して実施することができる。非侵襲的撮像技術と組み合わされた、生化学的血漿バイオマーカー、すなわち脳ナトリウム排泄増加ペプチド(BNP)およびBNPの前駆体、アナログおよびフラグメントのレベルの同時測定も、グルコース酸化を測定するために適している。特定の実施形態では、インスリンアナログは、ヒトインスリンから誘導される。
特に、本発明が以下の項目に関する:
1.糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するためのインスリンアナログ。
2.心拍出量を20〜30%増大させ、および/または心臓鼓動の体積を20〜30%増大させる、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための項目1に記載のインスリンアナログ。
3.糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を、予防、遅延および/または治療することに使用するためのインスリンアナログ。
4.減少した心機能を伴う心臓血管障害からなる群から選択される心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目3に記載のインスリンアナログ。
5.糖尿病はI型またはII型糖尿病であり、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目1〜4のいずれか1項に記載のインスリンアナログ。
6.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目1〜5のいずれか1項に記載のインスリンアナログであって、心臓におけるグルコース酸化を増大させ、および/または脂肪酸酸化を減少させるインスリンアナログ。
7.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目1〜6のいずれか1項に記載のインスリンアナログであって、ヒトインスリンから誘導されるインスリンアナログ。
8.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目1〜7のいずれか1項に記載のインスリンアナログであって、天然インスリンと比較して、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖は、C末端および/またはN末端の伸張を有するインスリンアナログ。
9.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目1〜8のいずれか1項に記載のインスリンアナログであって、天然のものと比較して位置A21でGlyに改変されており、2個のArgがB鎖のC末端に付加されているインスリンアナログ。
10.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目1〜9のいずれか1項に記載のインスリンアナログであって、グラルギンまたはグラルギン−M1であるインスリンアナログ。
11.糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療する方法であって、治療的有効量のインスリンアナログを投与することを含む方法。
12.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための医薬組成物であって、インスリンアナログならびに少なくとも1種の薬学的に許容される担体、補助剤および/または賦形剤を含む医薬組成物。
13.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目12に記載の医薬組成物であって、インスリンアナログがヒトインスリンから誘導された医薬組成物。
14.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するためのまたは心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目12または13に記載の医薬組成物であって、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖は、C末端および/またはN末端の伸張を有する医薬組成物。
15.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、項目12〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、インスリンアナログは天然インスリンと比較して位置A21でGlyに改変されており、および2個のArgがB鎖のC末端に付加されている医薬組成物。
16.心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防および/または治療することに使用するための、項目12〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、インスリンアナログはグラルギンまたはグラルギン−M1である医薬組成物。
17.糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいる、インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受けることができる患者または患者群を同定する方法であって、前記患者は、減少した心拍出量または心臓鼓動の体積または心臓血管疾患を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいるかどうかを決定する工程を含む方法。
18.糖尿病はI型またはII型糖尿病である、項目17に記載の方法。
19.心臓血管疾患は、減少した心機能を伴う心臓血管障害からなる群から選択される、項目17に記載の方法。
20.項目17〜19のいずれか1項に記載の方法であって、心臓におけるグルコース酸化は増大し、および/または脂肪酸酸化は減少している前記方法。
21.項目17〜20のいずれか1項に記載の方法であって、心拍出量が20〜30%減少している前記方法。
22.項目17〜21のいずれか1項に記載の方法であって、インスリンアナログはヒトインスリンから誘導される前記方法。
23.項目17〜22のいずれか1項に記載の方法であって、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して、位置B28でAsp、Lys、またはIleの1つに改変されており、位置B29におけるLysはProに改変されており、位置A21におけるAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、TyrまたはValに、特にGly、Ala、Ser、またはThrに、特にGlyに改変されており、位置B3におけるAsnはLysまたはAspに改変されていることがあり、PheBlは欠失しており、および/またはA鎖および/またはB鎖は、C末端および/またはN末端の伸張を有する前記方法。
24.項目17〜23のいずれか1項に記載の方法であって、インスリンアナログは、天然インスリンと比較して位置A21でGlyに改変されており、および2個のArgがB鎖のC末端に付加されている前記方法。
25.項目17〜24のいずれか1項に記載の方法であって、インスリンアナログはグラルギンまたはグラルギン−M1である前記方法。
26.糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するためのインスリンアナログであって、該患者は増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す、インスリンアナログ。
27.インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受ける患者を同定する、または患者群を選択する方法であって、前記患者または前記患者群は糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しみ、心臓における増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す前記方法。
本発明を、実施例および図でより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定すると理解されるべきでない。
心機能に対するインスリン治療の長期の効果を、2通りの異なる設定で評価した。急性治療では、測定は、野性型マウス(C57Bl)または2型糖尿病の表現型を有するマウス(db/dbマウス)のいずれかから単離された動作中の心臓で実施した。第2の慢性の設定では、db/db動物を、異なる高用量のインスリンの毎日投与で4週間治療して、全身的高血糖症に対する同様な効果を達成した。慢性研究の終わりに、心機能に対する効果を心エコー検査により評価した。
〔実施例1〕
ランタスを用いる急性治療は、心臓のグルコース酸化を刺激する。
ヒトインスリン、インスリンデグルデクおよびインスリングラルギンのM1代謝物の3種の異なるタイプのインスリンの心臓の代謝に対する効果を、健常なC57Bl6野性型マウスまたは2型糖尿病のdb/dbマウスのいずれかを使用して、成長した10週齢のマウスで決定した。マウスには標準的食餌を供給して、12時間明所:12時間暗所のサイクルを保った。エネルギー代謝に対するそれらの急性の効果を試験するために、完全に麻酔されたマウスから心臓を取り出して、単離された動作中の心臓として、3%脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(BSA)に結合した0.8mMパルミテート、5mMグルコース、および0.5mMラクテートで補完されたクレブス−ヘンゼライト緩衝液(118.5mM NaCl、1.2mM MgSO、25mM NaHCO、4.7mM KCl、1.2mM KHPO、2.5mM CaCl)で灌流した。心臓は、72分間ビヒクルで、またはインスリン(0、25、50、100μU/ml)、インスリンデグルデク(0、100、300、1000μU/ml)、またはインスリングラルギンのM1代謝物(0、25、50、100μU/ml)の量を増大させて、好気性灌流を受けた。各濃度の上昇工程を18分継続した。心臓の灌流が終わったら、直ちに心臓を液体N中で素早く凍結して−80℃で貯蔵した。図1を参照されたい。
グルコース酸化、解糖、パルミテート酸化、およびラクテート酸化を測定するために、[U−14C]グルコース、[5−H]グルコース、[9,10−H]パルミテート、および[U−14C]ラクテートを、それぞれ、上の実施例1に記載された灌流液に添加した。解糖およびパルミテート酸化の速度は、Oの産生速度に基づいて決定した。
グルコース酸化およびラクテート酸化の速度を決定するために、14CO産生を評価した。
インスリングラルギンのM1代謝物は、C57bl/6およびdb/db両方のマウスの心臓で、グルコース酸化を刺激し、およびパルミテート酸化を阻害することができたが、インスリンデグルデクはそれができなかった(図2〜5)。この結果は、両方のマウスの心臓におけるグルコース酸化から生じた%ATPにおける増大であった:C57bl/6(ビヒクル、13%;インスリン、18%;デグルデク、12%;ランタス、30%)およびdb/db(ビヒクル、5%;インスリン、13%;デグルデク、5%;ランタス、14%)(図6)。それらは、両方のマウスの心臓におけるパルミテート酸化から生じた%ATPに対しても明瞭な効果を有した:C57bl/6(ビヒクル、64%;インスリン、55%;デグルデク、62%;ランタス、37%)およびdb/db(ビヒクル、74%;インスリン、53%;デグルデク、75%;ランタス、56%)(図6)。
インスリングラルギンのM1代謝物もC57bl/6およびdb/dbマウスの心臓の心臓効率を改善した(図4)。
〔実施例3〕
急性のランタスによる治療は、インスリンのシグナル伝達を、インスリンまたはデグルデクよりも大きく刺激する。インスリンのシグナル伝達に関与する数種類の酵素のリン酸化状態も、インスリン、デグルデク、またはランタスで急性治療したC57bl/6およびdb/dbマウスの心臓で、ウェスタンブロット分析により評価した。凍結した心臓の組織を均質化緩衝液(50mM TrisHCl、10%グリセリン、1mM EDTA、0.02%Brij−35、1mM DTT、およびプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Sigma))中で30秒間均質化した。氷上に少なくとも10分置いた後、組織のホモジネートを10,000×gで20分間遠心分離した。それから、上清を−80℃で貯蔵した。上清のタンパク質濃度は、Bradfordタンパク質アッセイを使用して決定した。サンプルを、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で移動させた後、タンパク質をニトロセルロース膜に移した。第1抗体は、pAkt Ser473(細胞シグナル伝達9271)、Akt(細胞シグナル伝達9272)、pGSK3α/βSer21/9(細胞シグナル伝達9331)、GSK3β(細胞シグナル伝達9315)、pPDHSer293(CalbiochemAP1062)、およびPDH(細胞シグナル伝達2784)を含んでいた。タンパク質のバンドを、増強された化学発光(Perkin Elmer)を使用するオートラジオグラフィーフィルムで可視化してImage Jで定量した。
pGSK3β、pPKC、pPDH、またはpIRS1Ser307に対しては有意の効果がなかったが(データ掲載せず)、ランタスは、db/dbマウスの心臓においてpAktを有意に増大した(図7)。
〔実施例4〕
長期のランタス投与は、db/dbマウスにおいてインビボで心機能を改善する。第2の設定で、18週齢のdb/dbマウスを、ビヒクル、NPHインスリン、デグルデク、またはランタスで、毎日4週間治療した(図8を参照されたい)。18週齢のdb/dbマウスを特異的に使用したが、その理由はこの年齢までに彼らは拡張期の機能不全を有するからである。プロトコルの原案は、NPHインスリン(5U/kg体重)、デグルデク(5U/kg体重)、またはランタス(5U/kg体重)のいずれかでマウス治療することを含んでいた。これらのマウスの血中グルコースを追跡して、この用量のNPHインスリン、デグルデクおよびランタスは、血中グルコースレベルを低下させなかったことが認められた(データ掲載せず)。他のグループが、db/dbマウスにおける高血糖を制御するために、より高い用量のインスリンが必要とされることを報告している。安全であると報告されている最高の用量は、150U/kg体重であって、次にはそれをその後の実験のために使用した。150U/kg体重のNPHインスリン、デグルデク、またはランタスを用いてマウスを治療すると、血中グルコース寛容は、はるかにより劇的に改善された(図9)。4週間の治療期間の終わりに、心臓のエネルギー代謝および機能を心エコー検査により評価した。Vevo770高分解能心エコー検査撮像システムを使用してイソフランで麻酔されたマウスでインビボにおける心機能を評価した。結果は、長時間作用性のインスリンがdb/dbマウスの心機能を損なわなかったことを示した(図11および図12)。さらに、特にランタスを用いるdb/dbマウスの長期治療は、心拍出量および心臓鼓動の体積を特異的に有意に増大させたが、他の試験されたインスリンは増大させなかった(図10)。
統計分析
値は平均±SEMである。一元配置分散分析に続いて、Bonferonni事後検定、Kruskal−Wallis検定に続いて、必要に応じて、Dunnの複数の比較検定、またはt−検定を使用して統計的有意性を決定した。p<0.05を、有意に異なると考えた。
まとめると、全ての3種の試験薬物は、全身のグルコース寛容を改善して、心機能または脂肪酸およびグルコース代謝を損なわなかった。しかしながら、ランタスだけが心拍出量および鼓動の体積を改善した。さらに、ランタスのM1−代謝物だけが、グルコース酸化を急性で刺激して、マウスの心臓における心臓効率を改善した。ランタスのグルコース酸化を刺激するこの増大した能力は、何故ランタスを用いる長期治療が、db/dbマウスにおける心機能をインビボで改善したかということを説明することができる。全体として、これらの結果はインスリン、デグルデクおよびランタスは、糖尿病において、心臓血管にリスクを課さないことを示す。驚くべきことに、それらは、特にランタスおよびその主要な代謝物は、血糖症の制御を改善するためだけでなく、糖尿病患者において心臓血管の機能不全を減少させるためにも有益であることもあることをさらに示す。

Claims (15)

  1. インスリンアナログであって、I型またはII型糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者において、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための前記インスリンアナログ。
  2. 心拍出量が20〜30%増大され、および/または心臓鼓動の体積が20〜30%増大される、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための請求項1に記載のインスリンアナログ。
  3. 心臓血管疾患は、心不全および関連する臨床的症候群を含む、減少した心機能を伴う心臓血管障害からなる群から選択される、心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための請求項2に記載のインスリンアナログ。
  4. 心臓におけるグルコース酸化を増大させる、および/または脂肪酸酸化を減少させる、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための請求項1〜3のいずれか1項に記載のインスリンアナログ。
  5. インスリングラルギンまたはグラルギン−M1である、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための請求項1〜4のいずれか1項に記載のインスリンアナログ。
  6. 糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療する方法であって、治療的有効量のインスリンアナログを投与することを含む前記方法。
  7. 心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための医薬組成物であって、インスリンアナログならびに少なくとも1種の薬学的に許容される担体、補助剤および/または賦形剤を含む前記医薬組成物。
  8. インスリングラルギンまたはグラルギン−M1である、心拍出量または心臓鼓動の体積を増大させることに使用するための、または心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するための、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受けることができる患者を同定するかまたは患者群を選択する方法であって、該患者または該患者群は、I型またはII型糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでおり、該患者が、減少した心拍出量もしくは心臓鼓動の体積または心臓血管疾患を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しんでいるかどうかを決定する工程を含む前記方法。
  10. 心臓血管疾患は、心不全および関連する臨床的症候群を含む、減少した心機能を伴う心臓血管障害からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
  11. 心臓におけるグルコース酸化は増大しており、および/または脂肪酸酸化は減少している、請求項9または10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 心拍出量を20〜30%減少させる、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. インスリンアナログはインスリングラルギンまたはグラルギン−M1である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しむ患者における心臓血管疾患を予防、遅延および/または治療することに使用するためのインスリンアナログであって、該患者は増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す、前記インスリンアナログ。
  15. インスリンアナログを用いる治療により恩恵を受ける患者を同定するかまたは患者群を選択する方法であって、該患者または該患者群は、糖尿病を発生するリスクにあるかまたはそれに苦しみ、心臓における増大した脂肪酸酸化および/または低下したグルコース酸化を示す、前記方法。
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