JP2019501888A - 前駆細胞を用いた網膜変性の治療 - Google Patents

前駆細胞を用いた網膜変性の治療 Download PDF

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Abstract

分娩後由来細胞などの前駆細胞及び前駆細胞からの馴化培地を用いて、網膜変性を治療する及び低減するための方法及び組成物が開示される。光受容細胞などの網膜細胞の保護及び網膜細胞のアポトーシスの阻害を補助する、前駆細胞によって発現される遺伝因子及び受容体もまた開示される。

Description

本発明は、眼疾患及び障害に対する細胞に基づく療法又は再生療法の分野に関する。具体的には、本発明は、臍帯組織由来細胞及び胎盤組織由来細胞、並びにこれらの細胞から調製された馴化培地などの前駆細胞を用いた、眼細胞及び組織の再生又は修復のための方法及び組成物を提供する。
身体の複雑かつ繊細な器官として、眼は、多数の疾患、及び身体が正常に機能する能力に影響を及ぼす他の有害な状態を経験し得る。これらの状態の多くが、特定の眼細胞、及びこれらの細胞から構成される組織の損傷又は変性を伴う。一例として、視神経及び網膜の疾患及び変性状態は、全世界における失明の主な原因である。角膜、水晶体、及び付随する眼組織の損傷又は変性は、全世界における失明の別の大きな原因を占める。
網膜は、光信号を神経信号に変換する、7層の交互になる細胞及び突起を含む。網膜視細胞及び隣接する網膜色素上皮(RPE)は、多くの障害において、遺伝変種又は環境条件(加齢を含む)のために不均衡となる機能単位を形成している。これは、アポトーシス又は二次的変性による視細胞の喪失をもたらし、これが進行性の視力悪化、及び場合によっては、失明をもたらす(概説については、例えば、Lund,R.D.et al.,Progress in Retinal and Eye Research,2001;20:415〜449)を参照されたい)。このパターンに該当する眼障害の2つの部類は、加齢性黄斑変性(AMD)、及び網膜色素変性(RP)である。
AMDは、米国の50歳以上の人口で最も大きな視力喪失の原因であり、その有病率は年齢と共に増加する。AMDの一次的障害は、RPEの機能障害及びブルッフ膜内の変化が原因であると考えられ、とりわけ、脂質沈着、タンパク質架橋、及び養分透過性の減少によって特徴付けられる(上記のLundら(2001)を参照されたい)。遺伝子構造、加齢、栄養、喫煙、及び太陽光又は他の酸化ストレスへの曝露を含む様々な要素が、黄斑変性の一因となり得る。AMDの非滲出性、即ち「乾燥」形態は、AMDの事例の90%を占め、その他の10%は、滲出性新生血管形態(「湿潤型」AMD)である。乾燥型AMDの患者においては、網膜色素上皮(RPE)の段階的な消失が起こり、限局性の萎縮領域をもたらす。RPEの消失に続いて視細胞の喪失が起こるため、影響を受けた網膜領域は視覚機能をほとんど又は全く有しない。
AMDの現行の療法は、例えばレーザー療法及び薬学的インターベンションなどの処置を伴う。熱エネルギーを移送することによって、レーザービームは、黄斑下の漏孔のある血管を破壊して、視力喪失の速度を低下させる。レーザー療法の欠点は、ビームによって送達される高い熱エネルギーが、隣接する健康な組織も破壊してしまうことである。Neuroscience 4th edition,(Purves,D,et al.2008)は、「現在、乾燥型AMDに対する治療法は存在しない」と述べている。
RPE移植は、ヒトにおいては失敗している。例えば、Zarbin,M(2003)は、「通常の加齢下では、ヒトのブルッフ膜の、特に黄斑下区域は、(例えば、厚さの増大、ECM及び脂質の堆積、タンパク質の架橋、糖化最終産物の非酵素的形成を含む)様々な変化を経験する、と述べている。これらの変化及びAMDが原因の更なる変化は、ECMリガンド(例えば、ラミニン、フィブロネクチン、及びコラーゲンIV)の生物学的利用性を低下させて、AMDを患う眼内におけるRPE細胞の極めて低い生存率の原因となり得る。そのため、ヒトRPE細胞が、これらのECM分子と結合するために必要なインテグリンを発現するものの、加齢した黄班下のヒトブルッフ膜上で生存するRPE細胞は、障害を生じる」と記載されている。(Zarbin,MA,Trans Am Ophthalmol Soc,2003;101:493〜514)。
網膜色素変性は、主に遺伝性疾患であり、100を超える突然変異が視細胞の喪失に関係していると考えられている(上述のLundら(2001)を参照されたい)。突然変異の大部分は視細胞を標的にしているが、いくつかはRPE細胞に直接影響を与える。これらの突然変異は、視細胞とRPE細胞との間における分子の輸送及び光伝達としてのこうしたプロセスに、協働して影響を及ぼす。
それほど一般的ではないが、なおかつ消耗性の他の網膜症は、視力喪失及び失明をもたらす進行性の細胞変性を更に伴い得る。これらとしては、例えば、糖尿病性網膜症、及び脈絡膜新生血管膜(CNVM)が挙げられる。
組織の修復及び再生のための幹細胞に基づく療法の出現は、上記の数多くの細胞変性病態及び他の眼障害に対する潜在的な治療を提供する。幹細胞は、自己複製及び分化して多種多様な成熟細胞系統を発生させる能力を有する。こうした細胞の移植は、標的組織を再構成することによって、生理学的及び解剖学的機能を修復するための臨床的手段として用いられ得る。幹細胞技術の適用は広範にわたり、組織工学、遺伝子治療の送達、及び細胞治療(即ち、生物学的薬剤を生成するか、又はそれらの薬剤を含む、生細胞又は細胞成分を体外から供給することによって、標的部位にそのような生物学的薬剤を送達すること)を含む。(概説については、Tresco,P.A.et al.,Advanced Drug Delivery Reviews,2000,42:2〜37を参照されたい)。
近年では、分娩後由来細胞が網膜変性を改善することが示されている(米国特許出願公開第2010/0272803号)。英国外科医師会(RCS)ラットは、チロシン受容体キナーゼ(Mertk)が欠損して、外節食作用に影響を及ぼし、視細胞の細胞死をもたらすことを示す。(Feng W.et al.,J Biol Chem.,2002,10:277(19):17016〜17022)。RCSラットの網膜下腔に網膜色素上皮(RPE)細胞を移植することで、視細胞の喪失の進行を制限して、視覚機能を維持することが判明した。(米国特許出願公開第2010/0272803号)。分娩後由来細胞を用いて、RCSモデルの視細胞のレスキューを促進して、視細胞を保存し得ることも実証されている。(米国特許出願公開第2010/0272803号)。ヒト臍帯組織由来細胞(hUTC)をRCSラットの眼に網膜下注入することで、視力が向上し、網膜変性が改善された(米国特許出願公開第2010/0272803号、Lund RD,et al.,Stem Cells.2007、25(3):602〜611)。更に、hUTC由来の馴化培地(CM)を用いた治療によって、インビトロでジストロフィRPE細胞におけるROSの食作用が回復した。(米国特許出願公開第2010/0272803号)。
食細胞によるアポトーシス細胞の排除は、正常な生命の不可欠な構成要素であり、このプロセスにおける欠陥は、自己免疫寛容及び自己免疫に顕著な影響を有し得る(Ravichandran et al.,Cold Spring Harb Perspect Biol.,2013,5(1):a008748.doi:10.1101/cshperspect.a008748.Review)。アポトーシス細胞の認識及び除去は、マクロファージ、単球、及び他の白血球などの特化型の食細胞(食作用のために病原体に結合する受容体)、並びに上皮細胞、RPE細胞、内皮細胞などの非特化型の食細胞(食作用が主要な機能でない)によって主に媒介される。表面タンパク質のグリコシル化の変化又は表面電荷の変化を含む、多数の「私を食べろ(eat me)」というシグナルがこれまでに特定されてきた(Ravichandran et al.,Cold Spring Harb Perspect Biol.,2013)。ホスファチジルセリン(PS)の細胞外移行は、アポトーシスの特徴であり、最もよく研究された「私を食べろ」シグナルである(Wu et al.,Trends.Cell Biol.,2006,16(4):189〜197)。「私を食べろ」シグナルは、食作用性貪食受容体によって、直接的(PS受容体の場合のように)又はブリッジ分子及び補助受容体を介して間接的に認識される(Erwig et al.,Cell Death.Differ.,2008;15:243〜250)。ブリッジ分子の乳脂肪球−EGF−第8因子(MFG−E8)、増殖停止特異的6(Gas6)、プロテインS、トロンボスポンジン(TSP)、アポリポタンパク質H(以前はβ2−糖タンパクI、β2−GPIとして知られていた)は全て、アポトーシス細胞表面上のPSに結合する。MFG−E8は次いで、そのRGDモチーフを通してαvβ3及びαvβ5インテグリンによって(Hanayama et al.,Science,2004,304:1147〜1150、Borisenko et al.,Cell Death Differ.,2004;11:943〜945)、Gas6はAxl、Tyro3及びMerファミリーの受容体チロシンキナーゼによって(Scott et al.,Nature,2001;411:207〜211)、及びアポリポタンパク質Hはβ2−GPI受容体に(Balasubramanian et al.,J Bio Chem,1997;272:31113〜31117)認識することができる。コレクチンファミリーサーファクタントタンパク質A及びDなどの他のブリッジ分子が、アポトーシス細胞表面上の改変糖及び/又は脂質の認識に関連付けられている(Vandivier et al.,J Immunol,2002;169:3978〜398)。
コレクチンファミリーの分子は次いで、それらのコラーゲン状テールの、カルレティキュリン(CRT)との相互作用を通して認識され、これが今度は、低比重リポタンパク質(LDL)−受容体関連タンパク質(LRP−1/CD91)を通した食細胞による取り込みをシグナル伝達する(Gardai et al.,Cell,2003;115:13〜23)。別の例として、特定された最初のブリッジ分子は、細胞外マトリックス糖タンパク質であるトロンボスポンジン(TSP)−1(Savill et al.,J Clin Invest,1992;90:1513〜1522)であり、アポトーシス細胞上のTSP−1結合部位に結合し、次いでαvβ3及びαvβ5インテグリンβ5並びにスカベンジャ受容体CD36を含む食細胞上の受容体複合体に結合すると考えられた。アネキシンIは、Ca2+依存性リン脂質結合タンパク質のアネキシンファミリーに属し、原形質膜の細胞質ゾル面上に優先的に位置する。アネキシンIは、PSと共局在化することが示された。
RPEによるROSの食作用は、網膜機能にとって必須である(Finnemann et al.,PNAS,1997;94:12932〜937)。RPEによるROSの食作用に関与すると報告されている受容体には、スカベンジャ受容体CD36、Mertkとして知られる受容体チロシンキナーゼであるインテグリン受容体αvβ5、及びマンノース受容体(MR)(CD206)(Kevany et al.,Physiology,2009;25:8〜15)が含まれる。Finnemannは、単離されたROSが細胞外移行したPSを保有し、このPSの封鎖又は除去が培養中でRPEによるそれらの結合及び貪食を低減することを見出した(Finnemann et al.,PNAS,2012;109(21):8145〜8148)。RPEによる食作用における受容体の役割が調査されている。
本発明は、眼疾患及び障害に対する細胞に基づく療法又は再生療法に適用可能な組成物又は方法を提供する。具体的には、本発明は、分娩後由来細胞などの前駆細胞及びこれらの細胞から生成された馴化培地を用いた、眼組織の再生又は修復を含む、眼疾患又は状態を治療するための方法及び組成物を特徴とする。分娩後由来細胞は、臍帯組織由来細胞(UTC)、又は胎盤組織由来細胞(PDC)であり得る。
本発明の一態様は、網膜変性における光受容体細胞の損失を低減するための方法であり、本方法は、対象の眼に、分娩後由来細胞の集団、分娩後由来細胞の集団を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地を、光受容体細胞の損失を低減するのに有効な量で投与することを含む。実施形態では、分娩後由来細胞は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織又は胎盤組織から単離される。実施形態では、分娩後由来細胞の集団は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36を調節する。一実施形態では、分娩後由来細胞の集団は、MFG−E8、Gas6、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子を分泌する。実施形態では、ブリッジ分子は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合する。一実施形態では、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合したブリッジ分子は、分娩後由来細胞による食作用を促進する。
別の態様は、分娩後由来細胞の集団、分娩後由来細胞を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地を対象の眼に投与することによって、食細胞により眼におけるアポトーシス網膜細胞を除去する方法である。実施形態では、分娩後由来細胞の集団は、MFG−E8、Gas6、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子を分泌する。実施形態では、分娩後由来細胞の集団によるアポトーシス細胞の排除が、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36によって調節される。いくつかの実施形態では、アポトーシス網膜細胞の排除は、分娩後由来細胞の集団によって分泌されたブリッジ分子が食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36と相互作用することによって媒介される。
本発明の更なる態様は、対象における眼変性又は眼変性状態を治療する方法であり、対象の眼に、分娩後由来細胞の集団、分娩後由来細胞の集団を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地を、眼変性又は眼変性状態を治療するのに有効な量で投与することを含む。実施形態では、分娩後由来細胞は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織又は胎盤組織から単離される。実施形態では、分娩後由来細胞の集団は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36を調節する。一実施形態では、分娩後由来細胞の集団は、MFG−E8、Gas6、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子を分泌する。実施形態では、ブリッジ分子は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合する。一実施形態では、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合したブリッジ分子は、分娩後由来細胞による食作用を促進する。
一実施形態は、対象における眼変性若しくは眼変性状態を治療するため、又は対象の網膜変性における光受容体細胞の損失を低減するための、分娩後由来細胞の集団、分娩後由来細胞の集団を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地の使用を含む。実施形態では、分娩後由来細胞は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織又は胎盤組織から単離される。実施形態では、分娩後由来細胞の集団は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36を調節する。一実施形態では、分娩後由来細胞の集団は、MFG−E8、Gas6、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子を分泌する。実施形態では、ブリッジ分子は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合する。一実施形態では、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合したブリッジ分子は、分娩後由来細胞による食作用を促進する。
一実施形態では、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合した、分娩後由来細胞によって分泌されたブリッジ分子は、光受容体細胞のアポトーシスを調節する。別の実施形態では、分娩後由来細胞によって分泌されたブリッジ分子は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合して、光受容体細胞の損失を低減する。一実施形態では、光受容体細胞の損失は、光受容体断片の食作用を刺激する食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合したブリッジ分子によって低減される。
別の実施形態では、上述の分娩後由来細胞の集団又は上述の分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地は、桿体外節(ROS)を変化させて食作用を促進する。更なる実施形態では、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36は、網膜色素上皮(RPE)細胞によるROSの結合及び細胞内移行を強化する。
別の実施形態では、馴化培地は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織又は胎盤組織に由来する、単離された分娩後由来細胞又は分娩後由来細胞の集団から生成される。実施形態では、分娩後由来細胞は培養中に増殖することが可能であり、また、神経表現型の細胞に分化する潜在性を有し、細胞は、増殖するためにL−バリンを必要とし、少なくとも約5%の酸素中で増殖することが可能である。この細胞は、(a)培養中少なくとも約40回の倍加の潜在性、b)コーティングされた又はコーティングされていない組織培養容器上での付着及び増殖(ここでコーティングされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオミチン(polyomithine)、ビトロネクチン、又はフィブロネクチンのコーティングを含む)、(c)組織因子、ビメンチン、及びα−平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つの産生、(d)CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、PD−L2、及びHLA−A、B、Cのうちの少なくとも1つの産生、(e)フローサイトメトリによって検出される、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7−H2、HLA−G、及びHLA−DR、DP、DQのうちの少なくとも1つの産生の欠如、(f)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8;レチクロン1;ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1(黒色腫(melonoma)増殖刺激活性、α);ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド6(顆粒球走化性タンパク質2);ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド3;腫瘍壊死因子、α誘導タンパク質3;C型レクチンスーパーファミリーメンバー2;ウイルムス腫瘍1;アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバーA2;レニン;酸化低密度リポタンパク質受容体1;ホモサピエンスクローンIMAGE:4179671;プロテインキナーゼCζ;仮想タンパク質DKFZp564F013;downregulated in ovarian cancer1;及びクローンDKFZp547k1113由来のホモサピエンス遺伝子、をコードする遺伝子のうちの少なくとも1つが増大されている遺伝子発現、(g)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、低身長感受性(short stature)ホメオボックス2;熱ショック27kDaタンパク質2;ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド12(ストロマ細胞由来因子1);エラスチン(大動脈弁上狭窄症、ウィリアムズ−ビューレン症候群);ホモサピエンスmRNA;cDNA DKFZp586M2022(クローンDKFZp586M2022由来);間葉ホメオボックス2(増殖停止特異的ホメオボックス);sine oculisホメオボックスホモログ1(ドロソフィラ);クリスタリン、αB;形態形成のdisheveled関連アクチベータ2(disheveled associated activator of morphogenesis 2);DKFZP586B2420タンパク質;ニューラリン1の類似体;テトラネクチン(プラスミノーゲン結合タンパク質);src相同性3(SH3)及びシステイン豊富ドメイン;コレステロール25−ヒドロキシラーゼ;runt関連転写因子3;インターロイキン11受容体、α;プロコラーゲンC−エンドペプチダーゼエンハンサ;frizzledホモログ7(ドロソフィラ);仮定的遺伝子BC008967;コラーゲン、VIII型、α 1;テネイシンC(ヘキサブラキオン);iroquoisホメオボックスタンパク質5;ヘファエスチン;インテグリン、β8;シナプス小胞糖タンパク質2;神経芽腫、腫瘍形成抑制1;インスリン様増殖因子結合タンパク質2、36kDa;ホモサピエンスcDNA FLJ12280 fis、クローンMAMMA1001744;サイトカイン受容体様因子1;カリウム中間体/低コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー4;インテグリン、β7;PDZ結合モチーフ(TAZ)を有する転写コアクチベータ;sine oculisホメオボックスホモログ2(ドロソフィラ);KIAA1034タンパク質;小胞関連膜タンパク質5(ミオブレビン);EGF含有フィビュリン様細胞外マトリックスタンパク質1;初期増殖応答3;distal−lessホメオボックス5;仮想タンパク質FLJ20373;アルド−ケト還元酵素ファミリー1、メンバーC3(3−αヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、II型);バイグリカン;PDZ結合モチーフ(TAZ)を有する転写コアクチベータ;フィブロネクチン1;プロエンケファリン;インテグリン、β様1(EGF様リピートドメインを有する);ホモサピエンスmRNA完全長インサートcDNAクローンEUROIMAGE 1968422;EphA3;KIAA0367タンパク質;ナトリウム利尿ペプチド受容体C/グアニル酸シクラーゼC(心房性ナトリウム利尿ペプチド受容体C);仮想タンパク質FLJ14054;ホモサピエンスmRNA;cDNA DKFZp564B222(クローンDKFZp564B222由来);BCL2/アデノウイルスE1B 19kDa相互作用タンパク質3様;AE結合タンパク質1;シトクロムcオキシダーゼサブユニットVIIaポリペプチド1(筋肉);ニューラリン1の類似体;B細胞転座遺伝子1;仮想タンパク質FLJ23191;並びにDKFZp586L151、をコードする遺伝子のうちの少なくとも1つが低減されている遺伝子発現、並びに(h)hTERT又はテロメラーゼ発現の欠如、の特徴のうちの1つ又は2つ以上を更に含む。一実施形態では、臍帯組織由来細胞は、ELISAにより検出される、(i)MCP−l、IL−6、IL−8、GCP−2、HGF、KGF、FGF、HB−EGF、BDNF、TPO、MIPlb、I309、MDC、RANTES、及びTIMP1のうちの少なくとも1つの分泌、(j)TGF−β2、MIP1a、ANG2、PDGFbb、及びVEGFのうちの少なくとも1つの分泌の欠如、の特徴を更に有する。別の実施形態では、胎盤組織由来細胞は、ELISAにより検出される、(i)MCP−l、IL−6、IL−8、GCP−2、HGF、KGF、HB−EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、及びTIMP1のうちの少なくとも1つの分泌、(j)TGF−β2、MIPlb、ANG2、PDGFbb、FGF、及びVEGFのうちの少なくとも1つの分泌の欠如、の特徴を更に有する。
特定の実施形態では、分娩後由来細胞は、細胞型UMB022803(P7)(ATCC受託番号PTA−6067)、細胞型UMB022803(P17)(ATCC受託番号PTA−6068)、細胞型PLA071003(P8)(ATCC受託番号PTA−6074)、細胞型PLA071003(P11)(ATCC受託番号PTA−6075);又は細胞型PLA071003(P16)(ATCC受託番号PTA−6079)の全ての識別特徴を有する。一実施形態では、臍組織由来の分娩後由来細胞は、細胞型UMB022803(P7)(ATCC受託番号PTA−6067)、又は細胞型UMB022803(P17)(ATCC受託番号PTA−6068)の全ての識別特徴を有する。別の実施形態では、胎盤組織由来の分娩後由来細胞は、細胞型PLA071003(P8)(ATCC受託番号PTA−6074);細胞型PLA071003(P11)(ATCC受託番号PTA−6075);又は細胞型PLA071003(P16)(ATCC受託番号PTA−6079)の全ての識別特徴を有する。
特定の実施形態では、分娩後由来細胞は、メタロプロテアーゼ活性、粘液溶解活性、及び中性プロテアーゼ活性を含む、1つ又は2つ以上の酵素活性の存在下で単離される。好ましくは、分娩後由来細胞は、培養中に継代される際に維持される、正常核型を有する。好ましい実施形態では、分娩後由来細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90をそれぞれ発現する。実施形態では、分娩後由来細胞はCD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cをそれぞれ発現する。好ましい実施形態では、分娩後由来細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117を発現しない。実施形態では、分娩後由来細胞は、フローサイトメトリで検出した場合に、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、又はHLA−DR、DP、DQを発現しない。実施形態では、細胞は、hTERT又はテロメラーゼの発現を欠如する。
上記の実施形態では、細胞集団は分娩後由来細胞の実質的に均質な集団である。特定の実施形態では、集団は分娩後由来細胞の均質な集団である。本発明の実施形態では、分娩後由来細胞は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織又は胎盤組織から誘導される。
特定の実施形態では、上述の分娩後由来細胞の集団、分娩後由来細胞の集団を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地は、星状細胞、乏突起神経膠細胞、ニューロン、神経前駆細胞、神経幹細胞、網膜上皮幹細胞、角膜上皮幹細胞、又は他の複能性若しくは多能性の幹細胞などの、少なくとも1つの他の細胞型と共に投与される。これらの実施形態では、他の細胞タイプは、分娩後由来細胞の集団又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地と同時、その前、又は後に投与することができる。
同様に、これら及び他の実施形態では、上述の分娩後由来細胞の集団、分娩後由来細胞の集団を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地は、眼治療用の薬物などの少なくとも1つの他の薬、又は抗炎症剤、抗アポトーシス剤、抗酸化剤、若しくは増殖因子などの別の有益な補助剤と共に投与される。これらの実施形態では、他方の薬剤は、分娩後由来細胞の集団又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地と同時、その前、又は後に投与することができる。
本明細書に記載される様々な実施形態では、分娩後由来細胞の集団(臍又は胎盤)、分娩後由来細胞の集団を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地は、眼に、例えば、眼の表面に投与に、あるいは眼の内部又は眼に近接する位置、例えば、眼の背後に投与される。分娩後由来細胞の集団、組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地は、カニューレを介して、又は患者の身体の眼内若しくは眼に近接した位置に移植された装置から、投与してもよく、あるいは、この細胞の集団又は馴化培地を有するマトリックス又はスカフォールドを移植することによって投与してもよい。
特定の実施形態では、上記の組成物は、星状細胞、乏突起神経膠細胞、ニューロン、神経前駆細胞、神経幹細胞、網膜上皮幹細胞、角膜上皮幹細胞、又は他の複能性若しくは多能性の幹細胞などの、少なくとも1種の他の細胞型を含む。これらの又は他の実施形態では、本組成物は、眼変性障害を治療するための薬物などの少なくとも1つの他の薬剤、又は、例えば、抗炎症剤、抗アポトーシス剤、抗酸化剤、若しくは増殖因子などの別の有益な補助剤を含む。
上述の実施形態では、組成物は、医薬的に許容可能な担体を更に含む医薬組成物である。特定の実施形態では、医薬組成物は、眼の表面に投与するように配合される。代替的に、これらは、眼の内部、又は眼に近接する位置(例えば、眼の背後)に投与するように配合してもよい。医薬組成物はまた、上述の前駆細胞又は前駆細胞から調製された馴化培地を含有するマトリックス又はスカフォールドとして配合することができる。
本発明の更に別の態様によれば、眼変性状態を有する患者を治療するためのキットが提供される。本キットは、医薬的に許容可能な担体、分娩後組織から単離された細胞、好ましくは上述の分娩後由来細胞などの前駆細胞、前駆細胞を含む組成物、又は前駆細胞から生成された馴化培地と、患者の治療法におけるキットの使用説明書とを含む。本キットは、馴化培地を生成するための試薬及び説明書、又は少なくとも1つの他の細胞型の集団、又は眼変性状態の治療に有用な1つ若しくは2つ以上の薬剤などの、1つ若しくは2つ以上の追加的な構成要素を更に含み得る。
一実施形態では、本発明は、網膜変性における光受容体細胞の損失を低減するための方法であり、本方法は、分娩後由来細胞の集団、分娩後由来細胞の集団を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地を、光受容体細胞の損失を低減するのに有効な量で投与することを含み、この細胞集団は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織から単離され、また、この細胞集団は、培養中に増殖することが可能であり、少なくとも神経表現型の細胞に分化する潜在性を有し、継代時に正常核型を維持し、かつ、以下の特徴:
a)培養中40回の集団倍加の潜在性、
b)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90の産生、
c)CD31、CD34、CD45、CD117、及びCD141の産生の欠如、並びに
d)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8及びレチクロン1をコードする遺伝子の増加した発現、を有し、
この分娩後由来細胞の集団は、MFG−E8、Gas6、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子を分泌する。実施形態では、ブリッジ分子は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合し、光受容体細胞の損失を阻害する。実施形態では、細胞集団は、MCP−l、IL−6、IL−8、GCP−2、HGF、KGF、FGF、HB−EGF、BDNF、TPO、MIPlb、I309、MDC、RANTES、及びTIMP1を分泌する。いくつかの実施形態では、細胞集団は、ELISAで検出した場合に、TGF−β2、MIP1a、ANG2、PDGFbb、及びVEGFの分泌を欠如する。実施形態では、細胞集団は、HLA−A、B、Cに関して陽性であり、HLA−DR、DP、DQに関して陰性である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、実質的に均質な集団である。特定の実施形態では、細胞の集団は、均質である。更に、細胞集団は、hTERT又はテロメラーゼの発現を欠如する。
別の実施形態では、本発明は、対象の眼に、分娩後由来細胞の集団、分娩後由来細胞の集団を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地を、眼変性又は眼変性状態を治療するのに有効な量で投与することを含む、対象における眼変性又は眼変性状態を治療するための方法であり、この細胞集団は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織から単離され、また、この細胞集団は、培養中に増殖することが可能であり、少なくとも神経表現型の細胞に分化する潜在性を有し、継代時に正常核型を維持し、かつ、以下の特徴:
a)培養中40回の集団倍加の潜在性、
b)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90の産生、
c)CD31、CD34、CD45、CD117、及びCD141の産生の欠如、並びに
d)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8及びレチクロン1をコードする遺伝子の増加した発現、を有し、
この分娩後由来細胞の集団は、MFG−E8、Gas6、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子を分泌する。実施形態では、ブリッジ分子は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合し、光受容体細胞の損失を阻害する。実施形態では、細胞集団は、MCP−l、IL−6、IL−8、GCP−2、HGF、KGF、FGF、HB−EGF、BDNF、TPO、MIPlb、I309、MDC、RANTES、及びTIMP1を分泌する。いくつかの実施形態では、細胞集団は、ELISAで検出した場合に、TGF−β2、MIP1a、ANG2、PDGFbb、及びVEGFの分泌を欠如する。実施形態では、細胞集団は、HLA−A、B、Cに関して陽性であり、HLA−DR、DP、DQに関して陰性である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、実質的に均質な集団である。特定の実施形態では、細胞の集団は、均質である。更に、細胞集団は、hTERT又はテロメラーゼの発現を欠如する。
更なる実施形態は、対象における眼変性若しくは眼変性状態を治療する、又は対象の網膜変性における光受容体細胞の損失を低減するための、分娩後由来細胞の集団、分娩後由来細胞の集団を含む組成物、又は分娩後由来細胞の集団から調製された馴化培地の使用であり、この細胞集団は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織から単離され、また、この細胞集団は、培養中に増殖することが可能であり、少なくとも神経表現型の細胞に分化する潜在性を有し、継代時に正常核型を維持し、かつ、以下の特徴:
a)培養中40回の集団倍加の潜在性、
b)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90の産生、
c)CD31、CD34、CD45、CD117、及びCD141の産生の欠如、並びに
d)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8及びレチクロン1をコードする遺伝子の増加した発現、を有し、この分娩後由来細胞の集団は、MFG−E8、Gas6、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子を分泌する。実施形態では、ブリッジ分子は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合し、光受容体細胞の損失を阻害する。実施形態では、細胞集団は、MCP−l、IL−6、IL−8、GCP−2、HGF、KGF、FGF、HB−EGF、BDNF、TPO、MIPlb、I309、MDC、RANTES、及びTIMP1を分泌する。いくつかの実施形態では、細胞集団は、ELISAで検出した場合に、TGF−β2、MIP1a、ANG2、PDGFbb、及びVEGFの分泌を欠如する。実施形態では、細胞集団は、HLA−A、B、Cに関して陽性であり、HLA−DR、DP、DQに関して陰性である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、実質的に均質な集団である。特定の実施形態では、細胞の集団は、均質である。更に、細胞集団は、hTERT又はテロメラーゼの発現を欠如する。
本発明の上述の実施形態では、分娩後由来細胞の集団は、コーティングされた又は未コーティングの組織培養容器上への付着及び増殖(コーティングされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオルニチン、ビトロネクチン、又はフィブロネクチンのコーティングを含む)、ビメンチン及びα−平滑筋アクチンの産生、並びにHLA−A、B、Cに関して陽性であり、HLA−DR、DP、DQに関して陰性である、の特性を有する。
本発明の上述の実施形態では、網膜変性、網膜症、又は網膜/黄斑疾患などの、眼変性若しくは眼変性状態は、加齢性黄斑変性である。代替的な実施形態では、網膜変性、網膜症、又は網膜/黄斑疾患は、萎縮型(dry)加齢性黄斑変性である。
抗インテグリンαvβ5抗体P1F6の、RCS RPEによるROS食作用に対する効果を示す。RCS RPEを、種々の用量の抗インテグリンαvβ5抗体P1F6(25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL)、又は抗マウスIgG1アイソタイプ対照抗体(25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL)でそれぞれプレインキュベートした。単離したROSをhUTC CMと共にインキュベートし、次いで、培地を変更することなく食作用アッセイのために、抗体でプレインキュベートしたRCS RPE細胞に供給した。データは、平均+/−SEM(n=3)を表す。****p<0.0001、**p<0.01、n.s.、有意差なし。(ELN:CNTO 2476−00303)。 インテグリンブロッキングペプチドGRGDSPの、RCS RPEによるROS食作用に対する効果を示す。RCS RPEを、種々の用量のインテグリンブロッキングペプチド(1mg/mL、2mg/mL)と共に、又は陰性対照ペプチドGRADSP(1mg/mL、2mg/mL)と共にそれぞれプレインキュベートした。単離したROSをhUTC CMと共にインキュベートし、次いで、培地を変更することなく食作用アッセイのために、ペプチドでプレインキュベートしたRCS RPE細胞に供給した。データは、平均+/−SEM(n=3)を表す。****p<0.0001、p<0.05、n.s.、有意差なし。(ELN:CNTO 2476−00303)。 抗CD36抗体FA6−152の、RCS RPEによるROS食作用に対する効果を示す。RCS RPEを、種々の用量の抗CD36抗体FA6−152(2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL)、又は抗マウスIgG1アイソタイプ対照抗体(2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL)でそれぞれプレインキュベートした。単離したROSをhUTC CMと共にインキュベートし、次いで、培地を変更することなく食作用アッセイのために、抗体でプレインキュベートしたRCS RPE細胞に供給した。データは、平均+/−SEM(n=3)を表す。****p<0.0001、***p<0.001、**p<0.01、p<0.05、n.s.、有意差なし。(ELN:CNTO 2476−00303)。
本発明の他の特徴及び有利点は、以下の「発明を実施するための形態」及び実施例から明らかとなるであろう。
様々な特許及び他の刊行物が、本明細書の全体を通して参照される。これらの刊行物のそれぞれは、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。以下の例示的実施形態の詳細な説明において、本明細書の一部を構成する添付図面が参照されている。これらの実施形態は、当業者が本発明を実践できるように十分に詳細に説明されており、本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく、他の実施形態を用いることができること、及び論理構造的、機械的、電気的、及び化学的変更がなされ得ることが理解されよう。当業者が本明細書に記載される実施形態を実践することを可能にするために必要でない詳細な説明を避けるために、当業者に周知の特定の情報の説明が省略されている場合がある。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈されるべきではなく、例示される実施形態の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
定義
本明細書及び特許請求の範囲の全体で用いられる様々な用語は、以下で定めるとおりに定義され、これらは本発明を明確にすることを目的とする。
幹細胞は、単一細胞の、自己複製する能力、並びに自己複製前駆細胞、非複製前駆細胞、及び最終分化細胞を含む子孫細胞を産生するために分化する能力の双方によって定義される、未分化細胞である。幹細胞はまた、インビトロで複数の胚葉(内胚葉、中胚葉及び外胚葉)から様々な細胞系統の機能細胞に分化する能力によって、並びに、移植後に複数の胚葉組織を生じさせる能力、及び胚盤胞内への注入後に、全部ではないが実質的に殆どの組織に寄与する能力によっても、特徴付けられる。
幹細胞は、その発生能に応じて、(1)全能性、(2)多能性、(3)複能性、(4)少能性、及び(5)単能性に分類される。全能細胞は、全ての胚細胞型及び胚体外細胞型を生じさせることが可能である。多能性細胞は、全ての胚細胞型を生じさせることが可能である。複能性細胞は、細胞系統のサブセットを生じさせることが可能であるが、全てが、特定の組織、器官、又は生理系の範囲内であるものを含む(例えば、造血幹細胞(HSC)は、HSCを含む子孫(自己複製)、血球に制限された少能性前駆細胞、並びに血液の正常成分である全ての細胞型及び要素(例えば、血小板)を産生することができる)。少能性の細胞は、複能性幹細胞よりも制限された、細胞系統のサブセットを生じさせることができ、単能性の細胞は、単一の細胞系統を生じさせることができる(例えば、精原幹細胞)。
幹細胞はまた、それらの幹細胞を得ることができる供給源に基づいても分類される。成体幹細胞は、全般的には、複数の分化細胞型を含む組織内に見出される、複能性の未分化細胞である。成体幹細胞は、自己複製することができる。通常の状況下では、成体幹細胞はまた、その細胞が起源とする組織の、特殊化した細胞型、また恐らくは他の組織型を産生するように、分化することもできる。誘導された多能性幹細胞(iPS細胞)は、多能性幹細胞に変換された成熟細胞である。(Takahashi et al.,Cell,2006;126(4):663〜676、Takahashi et al.,Cell,2007;131:1〜12)。胚幹細胞は、胚盤胞期の胚の内部細胞塊からの、多能性細胞である。胎生幹細胞は、胎児組織又は胎膜を起源とする幹細胞である。分娩後幹細胞は、出産後に入手可能な胚体外組織、即ち、胎盤及び臍帯を実質的に起源とする、複能性若しくは多能性の細胞である。これらの細胞は、迅速な増殖、及び多くの細胞系統への分化に関する潜在性を含む、多能性幹細胞に固有の特徴を保有することが見出されている。分娩後幹細胞は、血液由来(例えば、臍帯血から得られる幹細胞のような)又は非血液由来(例えば、臍帯及び胎盤の非血液組織から得られるような)のものとすることができる。
胚組織は、典型的には、胚(ヒトの場合、受精から、約6週間の発達までの期間を指す)を起源とする組織として定義される。胎児組織は、ヒトでは約6週間の発達から分娩までの期間を指す、胎児に由来する組織を指す。胚体外組織は、胚又は胎児に関連するが、胚又は胎児を起源とはしない組織である。胚体外組織としては、胚体外膜(絨毛膜、羊膜、卵黄嚢、及び尿膜)、臍帯、並びに胎盤(それ自体は、絨毛膜及び母体基底脱落膜から形成される)が挙げられる。
分化は、特殊化されていない(「コミットされていない」)細胞、又は比較的特殊化されていない細胞が、例えば、神経細胞又は筋細胞などの、特殊化細胞の特徴を獲得するプロセスである。分化した細胞は、細胞の系統の範囲内で、より特殊化した(「コミットされた」)状態を呈している細胞である。コミットされたという用語は、分化のプロセスに適用される場合、通常の状況下では、特定の細胞型又は細胞型のサブセットへと分化を継続して、通常の状況下では、異なる細胞型へと分化することも、又はより未分化の細胞型に復帰することもできない地点まで、分化経路が進行している細胞を指す。脱分化とは、細胞が、細胞の系統の範囲内で、比較的特殊化されて(又はコミットされて)いない状態に復帰するプロセスを指す。本明細書で使用するとき、細胞の系統は、その細胞の遺伝性、即ち、その細胞がどの細胞に由来するか、またその細胞がどのような細胞を生じさせることができるかを規定する。細胞の系統は、発達及び分化の遺伝スキームの範囲内で、その細胞を位置付けるものである。
広義には、前駆細胞は、それ自体よりも分化した子孫を作り出す能力を有し、かつ前駆細胞のプールを補充する能力を更に保持する細胞である。その定義によれば、幹細胞自体もまた、より直接的な、最終分化細胞への前駆体であるため、前駆細胞である。以下でより詳細に説明されるように、本発明の細胞に言及する場合、この広い意味での前駆細胞の定義を使用することができる。より狭義には、前駆細胞は、分化経路での中間体である細胞として定義される場合が多く、即ち、前駆細胞は、幹細胞から生じるものであり、成熟細胞型又は細胞型のサブセットを産生する際の中間体である。このタイプの前駆細胞は、全般的には、自己複製が不可能である。したがって、このタイプの細胞が本明細書で言及される場合には、その細胞は、非複製前駆細胞、又は中間的前駆細胞若しくは中間的前駆細胞と称される。
本明細書で使用するとき、「眼系統又は眼表現型への分化」という句は、網膜及び角膜幹細胞、網膜及び虹彩の色素上皮細胞、視細胞、網膜神経節及び他の視神経系統(例えば、網膜グリア、小神経膠、星状細胞、ミュラー細胞)、水晶体形成細胞、並びに強膜、角膜、縁、及び結膜の上皮細胞が挙げられるがこれらに限定されない、特定の眼表現型に部分的又は完全にコミットされるようになった細胞を指す。「神経系統又は神経表現型への分化」という句は、CNS又はPNSの特定の神経表現型へ、即ち、ニューロン又はグリア細胞(後者の分類としては、星状細胞、乏突起神経膠細胞、シュワン細胞、及び小神経膠細胞が挙げられるが、これらに限定されない)に、部分的又は完全にコミットされるようになった細胞を指す。
本明細書で例示され、かつ本発明での使用に好ましい細胞は、一般に分娩後由来細胞(又はPPDC)と称される。これらは、時には、より具体的に、臍由来細胞又は胎盤由来細胞(UDC又はPDC)と称される場合もある。更には、この細胞は、幹細胞又は前駆細胞として説明することができ、後者の用語は広義で使用される。由来するという用語は、その細胞が、それらの生物学的起源から得られ、インビトロで、増殖されるか又は他の方法で操作されている(例えば、増殖培地中で培養されて、その集団を増殖させ、かつ/又は細胞株を産生する)ことを示すために使用される。臍幹細胞及び胎盤幹細胞のインビトロ操作、及び本発明の臍由来細胞及び胎盤由来細胞の独自の特徴が、以下で詳細に説明される。他の手段によって分娩後胎盤及び臍から単離された細胞も、本発明での使用に好適であると考えられる。本明細書では、こうした他の細胞は、分娩後細胞と称される(分娩後由来細胞ではなく)。
様々な用語が、培養中の細胞を説明するために使用される。細胞培養物とは、一般に、生体から取得され、制御条件下で増殖される(「培養中」又は「培養される」)細胞を指す。初代細胞培養物は、最初の継代培養の前に、生物から直接取得された細胞、組織、又は器官の培養物である。細胞は、細胞増殖及び/又は細胞分裂を促進する条件下で、増殖培地内に定置される場合に、培養増殖して、細胞の大集団を生じさせる。細胞を培養中に増殖させる場合、細胞増殖の速度は、その細胞の数が倍加するために必要な時間量によって測定される場合がある。この時間は、倍加時間と称される。
細胞株は、初代細胞培養物の1回又は複数回の継代培養によって形成される、細胞の集団である。継代培養の各一巡は、1継代と称される。細胞が継代培養される場合、それらの細胞は、継代されているとして言及される。特定の細胞集団、又は細胞株は、継代された回数によって言及されるか、又は特徴付けられる場合がある。例えば、10回継代されている培養細胞集団は、P10培養物と称することができる。初代培養物、即ち、組織から細胞を単離した後の最初の培養物は、P0と表される。最初の継代培養後には、それらの細胞は、二次培養物(P1又は継代数1)として説明される。2回目の継代培養後には、それらの細胞は、三次培養物(P2又は継代数2)となる、といった具合である。当業者には、継代期間中には多くの集団倍加が存在し得、したがって、培養物の集団倍加の数は継代の数よりも大きいということが理解されるであろう。継代の合間の期間中の細胞の増殖(即ち、集団倍加の数)は、多くの因子に応じて変化するものであり、それらの因子としては、播種密度、基質、培地、増殖条件、及び継代の合間の時間が挙げられるが、これらに限定されない。
増殖培地という用語は、一般に、PPDCの培養に十分な培地を指す。具体的には、本発明の細胞の培養に関して、現時点で好ましい1つの培地は、ダルベッコ変法必須培地(本明細書ではまた、DMEMとも略される)を含む。特に好ましいのは、DMEM−低グルコース(本明細書では、DMEM−LGとも称される)(Invitrogen(Carlsbad,Calif.))である。DMEM−低グルコースには、好ましくは、15%(v/v)のウシ胎児血清(例えば、規定ウシ胎児血清、Hyclone(Logan Utah))、抗生物質/抗真菌剤(好ましくは、50〜100単位/ミリリットルのペニシリン、50〜100マイクログラム/ミリリットルのストレプトマイシン、及び0〜0.25マイクログラム/ミリリットルのアンホテリシンB(Invitrogen(Carlsbad,Calif.)))、及び0.001%(v/v)の2−メルカプトエタノール(Sigma(St.Louis Mo))が添加される。以下の実施例で使用するとき、増殖培地とは、15%のウシ胎児血清及び抗生物質/抗真菌剤(ペニシリン/ストレプトマイシンが含まれる場合、好ましくは、それぞれ50U/mL及び50マイクログラム/mLであり、ペニシリン/ストレプトマイシン/アンホテリシンが使用される場合、好ましくは、それぞれ100U/mL、100マイクログラム/mL、及び0.25マイクログラム/mLである)を有する、DMEM−低グルコースを指す。一部の場合には、異なる増殖培地が使用されるか、又は異なる補助剤が提供され、これらは、通常は、増殖培地に対する補助剤として、本テキスト内に示される。
馴化培地は、特定の細胞又は細胞の集団が、その中で培養されて、その後取り出された、培地である。細胞が培地中で培養される場合、それらの細胞は、他の細胞に栄養的支援を提供することができる細胞因子を分泌する場合がある。そのような栄養因子としては、ホルモン、サイトカイン、細胞外マトリックス(ECM)、タンパク質、小胞、抗体、及び顆粒が挙げられるが、これらに限定されない。それらの細胞因子を含む培地が、馴化培地である。
一般に、栄養因子は、細胞の生存、成長、分化、増殖、及び/又は成熟を促進するか、あるいは細胞の活性の増大を刺激する物質として定義される。栄養因子を介した細胞間の相互作用は、異なる型の細胞間で発生し得る。栄養因子による細胞相互作用は、本質的に全ての細胞型で見出され、神経細胞型間の、特に重要な情報伝達の手段である。栄養因子はまた、自己分泌方式でも機能することができ、即ち、細胞は、その細胞自体の生存、成長、分化、増殖、及び/又は成熟に影響を及ぼす栄養因子を、産生することができる。
培養された脊椎動物細胞に言及するとき、老化(また、複製老化又は細胞老化)という用語は、有限細胞培養に起因する特性、即ち、それらが有限数の集団倍加を超えて増殖する能力の欠如を指す(時にはヘイフリック限界と称される)。細胞老化は、最初に、線維芽細胞様細胞を使用して説明されたが、培養中に成功裏に増殖させることができる、殆どの正常ヒト細胞型が、細胞老化を経る。種々の細胞型のインビトロでの寿命は、様々であるが、最大寿命は、典型的には、100回の集団倍加より少ない(100は、培養中の全細胞が老化することにより、培養物が分裂不能になる倍化数である)。老化は、経時的な時間に応じて決定されるものではなく、むしろ、その培養物が経験している、細胞分裂又は集団倍加の数によって測定される。
本明細書では、眼の(ocular、ophthalmic、及びoptic)という用語は、「眼の、眼に関する、又は眼に関連する」を定義するように互換的に用いられる。眼変性状態(又は障害)という用語は、細胞の損傷、変性、又は欠失を伴う、眼と脳との神経連絡を含む、眼の急性及び慢性状態、障害、又は疾患を包含する、包括的用語である。眼変性状態は、加齢性である場合もあり、損傷若しくは外傷から生じる場合もあり、又は特定の疾患若しくは障害に関連する場合もある。急性の眼変性状態としては、脳血管機能不全に起因する状態を含む、眼に影響を及ぼす細胞死若しくは細胞の損失を伴う状態、局所性若しくはびまん性脳外傷、びまん性脳損傷、眼の感染若しくは炎症状態、網膜の裂傷若しくは剥離、眼内損傷(挫傷、穿通、圧迫、裂傷)、又は他の物理的損傷(例えば物理的若しくは化学的火傷)が挙げられるが、これらに限定されない。慢性の眼変性状態(進行性状態を含む)としては、網膜色素変性(RP)、加齢性黄斑変性(AMD)、脈絡膜新生血管膜(CNVM)などの網膜症及び他の網膜/黄斑変性;糖尿病性網膜症、閉塞性網膜症、鎌状赤血球網膜症及び高血圧性網膜症、網膜中心静脈閉塞症、頚動脈狭窄症、緑内障及び関連する症候群などの視神経症などの網膜症;例えば、化学的傷害又は熱傷などにおいて起きる輪部幹細胞欠損(LSCD)(輪部上皮細胞欠損(LECD)とも称される)、スティーブンス・ジョンソン症候群、コンタクトレンズ由来角膜症、眼部瘢痕性類天疱瘡、無虹彩症又は外胚葉異形成症の先天性疾患、及び複数の内分泌欠乏関連角膜炎などの水晶体及び外眼の障害;が挙げられるが、これらに限定されない。
眼変性状態を治療する(又は眼変性状態の治療)という用語は、本明細書で定義される眼変性状態の影響を改善すること、眼変性状態の進行を遅延、中断、若しくは逆行させること、又は眼変性状態の発症を遅延若しくは予防することを指す。
有効量という用語は、本明細書で説明されるような、インビトロ若しくはインビボでの細胞の増殖及び/又は分化、あるいは眼変性状態の治療を含む意図された結果を生じさせるために有効な、増殖因子、分化剤、栄養因子、細胞集団、若しくは他の薬剤などの試薬又は医薬組成物の濃度又は量を指す。増殖因子に関しては、有効量は、約1ナノグラム/ミリリットル〜約1マイクログラム/ミリリットルの範囲とすることができる。インビボで患者に投与されるPPDCに関しては、有効量は、数百以下の少量から、数百万以上の大量までの範囲であり得る。特定の実施形態では、有効量は、10〜1111の範囲の細胞数、より具体的には、少なくとも約10の細胞数であり得る。投与される細胞の数は、治療される障害の詳細に応じて決定され、それらの詳細としては、医薬生物学者には周知の他の要因の中でも特に、治療されるサイズ又は総容積/表面積、並びに治療される領域の場所に対する、投与部位の近接性が挙げられるが、これらに限定されないことが理解されるであろう。
有効期間(又は時間)及び有効条件という用語は、薬剤又は医薬組成物が、その意図された結果を達成するために必要であるか、若しくは好ましい期間又は他の制御可能な条件(例えば、インビトロ法の場合は、温度、湿度)を指す。
患者又は対象という用語は、その医薬組成物を使用して、又は本明細書で説明される方法に従って治療される、哺乳類、好ましくはヒトを含めた、動物を指す。
医薬的に許容可能な担体(又は培地)という用語は、生物学的に適合可能な担体又は培地という用語と、互換的に使用することができ、治療的に投与される細胞及び他の薬剤と適合可能であるばかりではなく、健全な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスクの比率に見合った、過度の毒性、炎症、アレルギー反応、若しくは他の合併症を伴わない、ヒト及び動物の組織と接触させる使用に関しても好適である、試薬、細胞、化合物、材料、組成物、並びに/あるいは剤形を指す。
細胞置換療法に関して、いくつかの用語が使用される。自家移入、自家移植、自己移植片などの用語は、細胞のドナーが、その細胞置換療法のレシピエントでもある、治療を指す。同種異系移入、同種異系移植、同種移植片などの用語は、細胞のドナーが、その細胞置換療法のレシピエントと同じ種のものであるが、同じ個体ではない、治療を指す。ドナーの細胞が、レシピエントと組織適合的に一致している細胞移入は、同系移入と称される場合がある。異種移入、異種移植、異種移植片などの用語は、細胞のドナーが、その細胞置換療法のレシピエントとは異なる種のものである、治療を指す。本明細書で使用するとき、移植とは、自家又は同種異系ドナー細胞置換療法をレシピエントに導入することを指す。
本明細書で使用するとき、量、時間の長さなどの測定可能な値に関して使用する「約」という用語は、指定値から±20%〜±0.1%、好ましくは±20%又は±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%、いっそうより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、これらの変動は開示される方法を実施する上で適切である。
説明
様々な原因を有する、急性、慢性、及び進行性の障害並びに疾患を包含する眼変性状態は、眼細胞の特定の群又は易損性の群の機能障害又は喪失を、共通の特徴として有する。この共通性のために、易損性の損傷した又は喪失した眼組織の修復及び再生のための類似した治療的手法の開発が可能となり、それらの手法のうちの1つが、細胞療法である。眼変性状態のための細胞療法の開発は、眼由来幹細胞自体(例えば、網膜及び角膜幹細胞)、胚幹細胞、及び数種類の成熟幹細胞又は前駆細胞(例えば、神経、粘膜、上皮、及び骨髄幹細胞)を含む、比較的少ない種類の幹細胞又は前駆細胞に限定されてきた。分娩後臍帯及び胎盤から単離された細胞は、この目的のための前駆細胞の重要な新たな供給源として特定されている。(米国特許出願公開第2005−0037491号及び米国特許出願公開第2010−0272803号)更に、分娩後胎盤及び臍帯組織から単離した細胞から生成した馴化培地は、眼変性状態を治療するための別の新たな供給源を提供する。したがって、本明細書に記載されるその種々の実施形態では、本発明は、前駆細胞由来の馴化培地及び分娩後組織から単離した細胞集団を用いる、眼組織の修復及び再生のための方法及び組成物(医薬組成物を含む)を特徴とする。本発明は、眼変性状態に適用可能であるが、従来は治療又は治癒が困難又は不可能であった、数多くの眼障害に対しても特に好適であることが期待される。これらの眼障害としては、非限定的であるが、加齢性黄斑変性、網膜色素変性、糖尿病、及び他の網膜症が挙げられる。
当該技術分野において既知の任意の方法に従って分娩後臍帯又は胎盤から単離した細胞などの前駆細胞由来の馴化培地は、本発明での使用に好適であると期待される。しかしながら、一実施形態では、本発明は、好ましくは下記で説明する方法に従って血液を実質的に含まないようにした臍帯組織又は胎盤に由来する、上記で定義した臍帯組織由来細胞(hUTC)又は胎盤組織由来細胞(PDC)に由来する馴化培地を用いる。hUTC又はPDCは、培養中に増殖することが可能であり、他の表現型の細胞に分化する潜在性を有する。特定の実施形態は、こうした前駆細胞から調製された馴化培地、本馴化培地を含む組成物、及び急性又は慢性の眼変性状態を患う患者を治療するための医薬組成物などの組成物の使用方法を特徴とする。本発明の分娩後由来細胞は、それらの培養中の増殖特性によって、それらの細胞表面マーカーによって、それらの遺伝子発現によって、それらの、特定の生化学的栄養因子を産生する能力によって、及びそれらの免疫学的特性によって、特徴付けられる。分娩後由来細胞から誘導された馴化培地は、細胞によって分泌される栄養因子及びブリッジ分子によって特徴付けられている。
前駆細胞の調製
本発明の組成物及び方法に使用される、細胞、細胞集団、及び細胞溶解物、馴化培地などを含む調製物が、本明細書に記載され、米国特許第7,524,489号及び同第7,510,873号、並びに米国公開出願第2005/0058634号(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)に詳述される。本方法によれば、哺乳類の臍帯及び胎盤は、満期妊娠若しくは早期妊娠のいずれかの終了時に、又はその直後に、例えば、出産後の圧出の後で回収される。この分娩後組織は、出産場所から、実験室へと、フラスコ、ビーカー、培養皿、又は袋などの滅菌容器に入れて移送することができる。この容器は、溶液又は培地を含み得、これらとしては、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)若しくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの、食塩水、又はウィスコンシン大学液若しくはペルフルオロ化合物溶液などの、移植に使用される器官の移送のために使用される任意の溶液が挙げられるが、これらに限定されない。限定するものではないが、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、及びナイスタチンなどの、1種以上の抗生物質及び/又は抗真菌剤を、培地若しくは緩衝液に添加することができる。分娩後組織は、ヘパリン含有溶液などの抗凝固溶液ですすぐことができる。この組織は、PPDCの抽出の前に、約4〜10℃に保つことが好ましい。この組織は、PPDCの抽出の前に凍結させないことが、更により好ましい。
PPDCの単離は、好ましくは、無菌環境下で実施する。臍帯は、当該技術分野において既知の手段によって、胎盤から分離することができる。代替的に、臍帯及び胎盤は、分離することなく使用される。血液及び残渣は、PPDCの単離前に、分娩後組織から除去することが好ましい。例えば、分娩後組織は、限定するものではないが、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝溶液で洗浄してもよい。この洗浄緩衝液はまた、限定するものではないが、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、及びナイスタチンなどの、1種又は2種以上の抗真菌剤及び/又は抗生物質も含み得る。
胎盤の全体、臍帯、又はそれらの断片若しくは切片を含む分娩後組織は、機械的な力(細断力又は剪断力)によって脱凝集させる。現時点で好ましい実施形態では、この単離手順はまた、酵素消化プロセスも利用する。多くの酵素が、培養中の増殖を促進するための、複合組織マトリックスからの個々の細胞の単離に関して有用であることは、当該技術分野において既知である。弱い消化性(例えば、デオキシリボヌクレアーゼ、及び中性プロテアーゼであるディスパーゼ)から、強い消化性(例えば、パパイン及びトリプシン)の範囲にわたって、そのような酵素が市販されている。本明細書に適合する酵素の非網羅的なリストとしては、粘液溶解酵素活性、メタロプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシン、又はエラスターゼなど)、及びデオキシリボヌクレアーゼが挙げられる。メタロプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、及び粘液溶解活性から選択される酵素活性が、現時点で好ましい。例えば、コラゲナーゼは、組織から様々な細胞を単離するために有用であることが既知である。デオキシリボヌクレアーゼは、一本鎖DNAを消化することができ、単離中の細胞凝集を最小限に抑えることができる。好ましい方法は、例えば、コラゲナーゼ及びディスパーゼ、あるいはコラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼを使用する、酵素処理を伴い、そのような方法が提供される場合、特定の好ましい実施形態では、コラゲナーゼと中性プロテアーゼのディスパーゼとの混合物が、この解離工程で使用される。ヒストリチクス菌由来の少なくとも1種のコラゲナーゼ、並びにプロテアーゼ活性のディスパーゼ、及びサーモリシンのいずれかの存在下での消化を採用する方法が、より好ましい。コラゲナーゼ酵素活性及びディスパーゼ酵素活性の双方での消化を採用する方法が、更により好ましい。また、コラゲナーゼ活性及びディスパーゼ活性に加えて、ヒアルロニダーゼ活性での消化を含む方法も好ましい。様々な組織源から細胞を単離するための、そのような多くの酵素処理が、当該技術分野において既知であることが、当業者には理解されるであろう。例えば、LIBERASE(商標)Blendzyme 3(Roche)シリーズの酵素の組み合わせが、本方法での使用に対して好適である。他の酵素源が既知であり、当業者はまた、そのような酵素を、それらの天然源から直接取得することもできる。当業者は、更に、本発明の細胞を単離する際の有用性に関して、新たな、又は追加的な酵素若しくは酵素の組み合わせを評価するための設備を十分に備えている。好ましい酵素処理は、0.5時間、1時間、1.5時間、又は2時間以上の長さである。他の好ましい実施形態では、組織は、解離工程の酵素処理の間、37℃でインキュベートされる。
本発明のいくつかの実施形態において、分娩後組織は、例えば、胎盤の新生児、新生児/母体、及び母体の態様などの、様々な組織の態様を含む切片へと分離される。次いで、分離された切片は、本明細書で説明される方法に従って、機械的解離及び/又は酵素的解離によって解離される。新生児又は母体系統の細胞は、当該技術分野において既知の任意の手段によって、例えば、Y染色体の核型分析又はインサイチュハイブリダイゼーションによって、識別することができる。
それからPPDCが増殖する、単離された細胞又は分娩後組織を使用して、細胞培養を開始、即ち播種することができる。細胞外マトリックス又はリガンド、例えば、ラミニン、コラーゲン(天然、変性、又は架橋)、ゼラチン、フィブロネクチン、及び他の細胞外マトリックスタンパク質によりコーティングされていない又はコーティングされた組織培養用滅菌容器に、単離細胞を移す。PPDCを、例えば、限定するものではないが、DMEM(高又は低グルコース)、改変DMEM、DMEM/MCDB201、イーグル基本培地、ハムF10培地(F10)、ハムF−12培地(F12)、スコフ改変ダルベッコ培地、間葉系幹細胞増殖培地(MSCGM)、DMEM/F12、RPMI1640及びcellgro FREE(商標)などといった、細胞の生育を維持することのできる任意の培養培地で培養する。培養培地は、例えば、好ましくは約2〜15%(v/v)のウシ胎児血清(FBS);ウマ血清(ES);ヒト血清(HS);好ましくは約0.001%(v/v)のβ−メルカプトエタノール(BME又は2−ME);1つ又は2つ以上の増殖因子、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、白血球阻害因子(LIF)、及びエリスロポエチン;L−バリンを含むアミノ酸;並びに、例えば、単独又は組み合わせのいずれかでの、ペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、及びナイスタチンなどの、微生物汚染を制御するための1種又は2種以上の抗生物質及び/又は抗真菌剤を含む1種又は2種以上の成分を添加してもよい。この培養培地は、好ましくは、増殖培地(DMEM−低グルコース、血清、BME、及び抗生物質)を含む。
細胞は、細胞増殖を可能にする密度で、培養容器中に播種される。好ましい実施形態では、細胞は、空気中約0〜約5容量%のCOで培養される。一部の好ましい実施形態では、細胞は、空気中約2〜約25%のO、好ましくは、空気中約5〜約20%のOで培養される。細胞は、好ましくは、約25〜約40℃で培養され、より好ましくは、37℃で培養される。細胞は、好ましくは、インキュベータ内で培養される。培養容器内の培地は、静的状態とすることができ、又は例えば、バイオリアクタを使用して撹拌することもできる。PPDCは、好ましくは、低酸化ストレス下で(例えば、グルタチオン、ビタミンC、カタラーゼ、ビタミンE、N−アセチルシステインを添加して)増殖される。本明細書で使用される「低酸化ストレス」とは、フリーラジカルが培養細胞に損傷を与えないか、又は損傷が最低限に抑えられる条件を指す。
最も適切な培養培地、培地調製、及び細胞培養技術の選択法は、当該技術分野において周知であり、Doyleら(編)「CELL & TISSUE CULTURE:LABORATORY PROCEDURES」,John Wiley & Sons(Chichester)(1995)、並びにHo及びWang(編)「ANIMAL CELL BIOREACTORS」,Butterworth−Heinemann(Boston)(1991)を含む様々な出典に説明されており、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
単離された細胞又は組織断片を、十分な期間にわたって培養すると、分娩後組織からの遊走、若しくは細胞分裂のいずれか、又はその両方の結果として、PPDCが増殖する。本発明の一部の実施形態では、PPDCは、継代され、即ち、取り出されて最初に使用されたものと同じ又は異なる種類の新鮮培地を収容する別個の培養容器に移され、ここで細胞の集団は有糸分裂的に増殖することができる。本発明の細胞は、継代数0と老化との間の任意の時点で使用することができる。この細胞は、好ましくは、約3回〜約25回継代され、より好ましくは、約4回〜約12回継代され、好ましくは、10回又は11回継代される。クローニング及び/又はサブクローニングを実行することにより、細胞のクローン集団が単離されていることを確認することができる。
本発明のいくつかの態様において、分娩後組織内に存在する種々の細胞型は、そこからPPDCを単離することができる下位集団に分画される。これは、分娩後組織をその構成細胞へと解離する酵素処理が挙げられるがこれに限定されない細胞分離のための標準的技術を使用し、それに続いて、例えば、形態学的マーカー及び/又は生化学的マーカーに基づく選択;所望される細胞の選択的増殖(正の選択)、不要な細胞の選択的破壊(負の選択);例えば大豆凝集素を使用するような、混合集団中での示差的な細胞凝集能(differential cell agglutinability)に基づく分離;凍結−解凍処理法;混合集団における細胞の示差的な接着特性;濾過;従来型及びゾーン遠心分離;遠心エルトリエーション(対向流(counter-streaming)遠心分離);単位重力分離;向流分布;電気泳動;及び蛍光活性化セルソータ(FACS)が挙げられるがこれらに限定されない、特定の細胞型をクローニング及び選択することによって達成することができる。クローン選択及び細胞分離技術の概説に関しては、参照により本明細書に組み込まれる、Freshney、「CULTURE OF ANIMAL CELLS:A MANUAL OF BASIC TECHNIQUES,3rd Ed.」,Wiley−Liss,Inc.(New York)(1994)を参照されたい。
培養培地は、例えば、必要に応じて、例えばピペットで、皿から培地を慎重に吸引して、新鮮培地を補充することによって変更される。インキュベーションは、十分な数又は密度の細胞が皿内に蓄積するまで継続される。標準的技術を使用して、又はセルスクレーパーを使用して、元の外移植組織の切片を取り出し、残余の細胞をトリプシン処理することができる。トリプシン処理の後、細胞を収集して、新鮮培地に取り出し、上記のようにインキュベートする。いくつかの実施形態において、培地は、トリプシン処理の約24時間後に、少なくとも1回交換して、あらゆる浮遊細胞を除去する。培養中に残存する細胞が、PPDCであると考えられる。
PPDCは、凍結保存することができる。したがって、以下でより詳細に説明される好ましい実施形態では、自家移入に関する(母又は子のいずれかに関する)PPDCは、子の誕生後に適切な分娩後組織から誘導して、続いて、これらが後に移植に必要とされる事象で利用可能となるように、凍結保存することができる。
前駆細胞の特性
本発明のPPDCなどの前駆細胞は、例えば、成長特性(例えば、集団倍加能力、倍加時間、老化までの継代)、核型分析(例えば、正常な核型;母性又は新生児系統)、フローサイトメトリ(例えば、FACS分析)、免疫組織化学分析及び/若しくは免疫細胞化学分析(例えば、エピトープの検出のため)、遺伝子発現プロファイリング(例えば、遺伝子チップアレイ;ポリメラーゼ連鎖反応(例えば、逆転写PCR、リアルタイムPCR、及び従来のPCR)、タンパク質配列、タンパク質分泌(例えば、プラズマ凝固アッセイ又はPDC−馴化培地の分析によって、例えば、酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって)、混合リンパ球反応(例えば、PBMCの刺激の尺度として)、並びに/又は当該技術分野において既知の他の方法によって特徴付けられ得る。
臍組織由来のPPDCの例は、2004年6月10日にAmerican Type Culture Collection(ATCC,10801 University Boulevard,Manassas,VA,20110)に寄託され、以下のATCC受託番号が割り当てられた。(1)菌株表示UMB022803(P7)には受託番号PTA−6067が割り当てられ、(2)菌株表示UMB022803(P17)には受託番号PTA−6068が割り当てられた。胎盤組織由来のPPDCの例は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas,Va.)に寄託され、以下のATCC受託番号が割り当てられた。(1)菌株表示PLA071003(P8)は2004年6月15日に寄託され、受託番号PTA−6074が割り当てられ、(2)菌株表示PLA 071003(P11)は2004年6月15日に寄託され、受託番号PTA−6075が割り当てられ、(3)菌株表示PLA 071003(P16)は2004年6月16日に寄託され、受託番号PTA−6079が割り当てられた。
様々な実施形態では、PPDCは以下の増殖特性のうちの1つ又は2つ以上を有する。(1)培養中に増殖するためにL−バリンを必要とすること、(2)約5%〜少なくとも約20%の酸素を含む大気下での増殖が可能であること、(3)老化に達する前に培養中少なくとも約40回の倍加の潜在性を有すること、及び、(4)コーティングされた又はコーティングされていない組織培養容器上で付着及び増殖すること(ここでコーティングされた組織培養容器は、ゼラチン、ラミニン、コラーゲン、ポリオミチン(polyomithine)、ビトロネクチン、又はフィブロネクチンのコーティングを含む)。
特定の実施形態では、PPDCは、その細胞が継代される際に維持される、正常核型を有する。核型分析は、胎盤由来の母体細胞から、新生児細胞を識別して区別するために、特に有用である。核型分析に関する方法は、当業者に利用可能であり、既知である。
他の実施形態では、PPDCは、(1)ビメンチン、及びα−平滑筋アクチンのうちの少なくとも1つの産生、並びに(2)フローサイトメトリによって検出される、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、PD−L2、及びHLA−A、B、C細胞表面マーカーのうちの少なくとも1つの産生を含む、特定のタンパク質の産生によって特徴付けられ得る。他の実施形態では、PPDCは、フローサイトメトリによって検出される、CD31、CD34、CD45、CD80、CD86、CD117、CD141、CD178、B7−H2、HLA−G、及びHLA−DR、DP、DQ細胞表面マーカーのうちの少なくとも1つの産生の欠如によって、特徴付けることができる。ビメンチン及びα−平滑筋アクチンを産生する細胞が特に好ましい。
他の実施形態では、PPDCは、線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8;レチクロン1;ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1(黒色腫(melonoma)増殖刺激活性、α);ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド6(顆粒球走化性タンパク質2);ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド3;腫瘍壊死因子、α誘導タンパク質3;C型レクチンスーパーファミリーメンバー2;ウイルムス腫瘍1;アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバーA2;レニン;酸化低密度リポタンパク質受容体1;ホモサピエンスクローンIMAGE:4179671;プロテインキナーゼCζ;仮想タンパク質DKFZp564F013;downregulated in ovarian cancer1;及びクローンDKFZp547k1113由来のホモサピエンス遺伝子のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子に関して増大した遺伝子発現によって特徴付けられ得る。一実施形態では、臍帯組織由来のPPDCは、線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8;レチクロン1;又はケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド3のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子に関して増大した遺伝子発現によって特徴付けられ得る。別の実施形態では、胎盤組織由来のPPDCは、線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、レニン、又は酸化低密度リポタンパク質受容体1のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子に関して増大した遺伝子発現によって特徴付けることができる。
更に他の実施形態では、PPDCは、線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、低身長感受性ホメオボックス2;熱ショック27kDaタンパク質2;ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド12(ストロマ細胞由来因子1);エラスチン(大動脈弁上狭窄症、ウィリアムズ−ビューレン症候群);ホモサピエンスmRNA;cDNA DKFZp586M2022(クローンDKFZp586M2022由来);間葉ホメオボックス2(増殖停止特異的ホメオボックス);sine oculisホメオボックスホモログ1(ドロソフィラ);クリスタリン、αB;形態形成のdisheveled関連アクチベータ2(disheveled associated activator of morphogenesis 2);DKFZP586B2420タンパク質;ニューラリン1の類似体;テトラネクチン(プラスミノーゲン結合タンパク質);src相同性3(SH3)及びシステイン豊富ドメイン;コレステロール25−ヒドロキシラーゼ;runt関連転写因子3;インターロイキン11受容体、α;プロコラーゲンC−エンドペプチダーゼエンハンサ;frizzledホモログ7(ドロソフィラ);仮定的遺伝子BC008967;コラーゲン、VIII型、α1;テネイシンC(ヘキサブラキオン);iroquoisホメオボックスタンパク質5;ヘファエスチン;インテグリン、β8;シナプス小胞糖タンパク質2;神経芽腫、腫瘍形成抑制1;インスリン様増殖因子結合タンパク質2、36kDa;ホモサピエンスcDNA FLJ12280 fis、クローンMAMMA1001744;サイトカイン受容体様因子1;カリウム中間体/低コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー4;インテグリン、β7;PDZ結合モチーフ(TAZ)を有する転写コアクチベータ;sine oculisホメオボックスホモログ2(ドロソフィラ);KIAAI034タンパク質;小胞関連膜タンパク質5(ミオブレビン);EGF含有フィビュリン様細胞外マトリックスタンパク質1;初期増殖応答3;distal−lessホメオボックス5;仮想タンパク質FLJ20373;アルド−ケト還元酵素ファミリー1、メンバーC3(3−αヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、II型);バイグリカン;PDZ結合モチーフ(TAZ)を有する転写コアクチベータ;フィブロネクチン1;プロエンケファリン;インテグリン、β様1(EGF様リピートドメインを有する);ホモサピエンスmRNA完全長インサートcDNAクローンEUROIMAGE 1968422;EphA3;KIAA0367タンパク質;ナトリウム利尿ペプチド受容体C/グアニル酸シクラーゼC(心房性ナトリウム利尿ペプチド受容体C);仮想タンパク質FLJ14054;ホモサピエンスmRNA;cDNA DKFZp564B222(クローンDKFZp564B222由来);BCL2/アデノウイルスE1B 19kDa相互作用タンパク質3様;AE結合タンパク質1;及びシトクロムcオキシダーゼサブユニットVIIaポリペプチド1(筋肉)のうちの少なくとも1つをコードする遺伝子に関して低減した遺伝子発現によって特徴付けられ得る。
他の実施形態では、PPDCは、MFG−E8、Gas6、TSP−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子の分泌によって特徴付けられ得る。実施形態では、実施形態では、PPDCによって分泌されるブリッジ分子は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合する。更に、臍帯組織由来のPPDCは、MCP−1、IL−6、IL−8、GCP−2、HGF、KGF、FGF、HB−EGF、BDNF、TPO、MIP1b、I309、RANTES、MDC、及びTIMP1のうちの少なくとも1つの分泌によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、臍帯組織由来のPPDCは、ELISAにより検出される、TGF−β2、ANG2、PDGFbb、MIP1a及びVEGFのうちの少なくとも1つの分泌の欠損によって特徴付けることができる。代替的な実施形態では、胎盤組織由来のPPDCは、ELISAにより検出される、MCP−l、IL−6、IL−8、GCP−2、HGF、KGF、HB−EGF、BDNF、TPO、MIP1a、RANTES、及びTIMP1のうちの少なくとも1つの分泌によって、並びにTGF−β2、ANG2、PDGFbb、FGF、及びVEGFのうちの少なくとも1つの分泌の欠如によって特徴付けることができる。更なる実施形態では、PPDCは、hTERT又はテロメラーゼの発現を欠如する。
好ましい実施形態では、それらの細胞は、上記の増殖特性、タンパク質/表面マーカーの産生特性、遺伝子発現特性、又は物質分泌特性のうちの2つ以上を含む。それらの特性のうちの3つ、4つ、又は5つ以上を含むような細胞が、より好ましい。それらの特性のうちの6つ、7つ、又は8つ以上を含むPPDCが、更により好ましい。上記の特性の全てを含むような細胞が、現時点では更により好ましい。
特に好ましい実施形態では、培養中に増殖することが可能な、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織から単離された細胞は、CD117又はCD45の産生を欠如し、hTERT又はテロメラーゼを発現しない。一実施形態において、この細胞にはCD117及びCD45の産生がなく、任意で、hTERT及びテロメラーゼを発現しない。別の実施形態において、この細胞は、hTERT及びテロメラーゼを発現しない。更に別の実施形態では、培養中に増殖することが可能な、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織から単離された細胞は、CD117又はCD45の産生を欠如し、hTERT又はテロメラーゼを発現せず、また、以下の特性のうちの1つ又は2つ以上を有する:CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90を発現すること;CD31又はCD34を発現しないこと;ヒト線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞と比較して、インターロイキン8又はレチクロン1の発現レベルが増加していること;並びに分化する可能性を有していること。
その態様のうちのいくつかで本発明と共に使用するのに現時点で好ましい細胞は、とりわけ、上述の特性を有する分娩後細胞であり、より具体的には、細胞が正常核型を有し、継代で正常核型を維持する分娩後細胞であり、更には、細胞がマーカーCD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cのそれぞれを発現する分娩後細胞であり、細胞が列記されたマーカーに対応する免疫学的に検出可能なタンパク質を産生する分娩後細胞である。前述に加えて、フローサイトメトリによって検出されるような、マーカーCD31、CD34、CD45、CD117、CD141、又はHLA−DR、DP、DQのいずれかに対応するタンパク質も産生しないような細胞が、更により好ましい。更なる好適な実施形態では、細胞は、hTERT又はテロメラーゼの発現を欠如する。
各種表現型に向かう系列に従い分化する可能性がある、ある種の株は、不安定であり、したがって自発的に分化する場合がある。例えば、神経株に沿って、自然発生的に分化することのない細胞が、本発明と共に使用するために、現時点で好ましい。好ましい細胞は、増殖培地中で増殖させる場合、それらの細胞の表面上に産生される細胞マーカーに関して、また、例えばAffymetrix GENECHIPを用いて判定される様々な遺伝子の発現パターンに関して、実質的に安定である。それらの細胞は、例えば、複数回の集団倍加を経る継代にわたって、それらの表面マーカー特性を、実質的に一定なまま保持する。
しかしながら、PPDCの1つの特徴は、分化を誘導する細胞培養条件にそれらを曝露することによって様々な系統の表現型へと分化するように、それらの細胞を意図的に誘導することができる点である。特定の眼変性状態の治療における用途では、当該技術分野において既知の1つ以上の方法を用いて、PPDCを神経表現型に分化するように誘導することができる。例えば、本明細書で例示されるように、PPDCは、B27(B27サプリメント、Invitrogen)、L−グルタミン、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有する、Neurobasal−A培地(Invitrogen(Carlsbad,Calif.))中、ラミニンでコーティングされたフラスコ上にプレーティングすることができ、この培地の組み合わせは、本明細書では、神経前駆細胞増殖(NPE)培地と称される。NPE培地には、bFGF及び/又はEGFを更に添加することができる。代替的に、PPDCは、(1)神経前駆細胞と共にPPDCを共培養すること、又は(2)神経前駆細胞馴化培地中でPPDCを増殖させること、によってインビトロで分化するように誘導することもできる。
PPDCの神経表現型への分化は、伸長した突起を有する双極細胞形態によって証明され得る。誘導された細胞集団は、ネスチンの存在に関して、陽性に染色することができる。分化したPPDCは、ネスチン(nest in)、TuJ1(BIIIチューブリン)、GFAP、チロシンヒドロキシラーゼ、GABA、04、及び/又はMBPの検出によって、評価することができる。いくつかの実施形態では、PPDCは、ニューロスフェアのニューロン幹細胞形成に固有の、3次元体を形成する能力を呈している。
細胞集団
本発明の別の一態様は、分娩後由来細胞などの前駆細胞の集団を特徴とする。分娩後由来細胞は、胎盤又は臍帯組織から単離することができる。好ましい実施形態では、細胞集団は上記のPPDCを含むが、この細胞集団については下記の項で説明する。
一部の実施形態では、この細胞集団は不均質である。本発明の不均質な細胞集団は、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の細胞を含み得る。本発明の不均質な細胞集団は、前駆細胞(分娩後由来細胞)、又は上皮若しくは神経前駆細胞などの他の前駆細胞を更に含み得るか、あるいは完全に分化した細胞を更に含み得る。
いくつかの実施形態では、この集団は、実質的に均質であり、即ち、実質的にPPDCのみ(好ましくは、少なくとも約96%、97%、98%、99%以上の細胞)を含む。一部の実施形態では、この細胞集団は均質である。実施形態では、本発明の均質な細胞集団は、臍又は胎盤由来細胞を含み得る。臍由来細胞の均質な集団は、好ましくは、母体系統の細胞を含まない。胎盤由来細胞の均質な集団は、新生児又は母体系統であり得る。細胞集団の均質性は、当該技術分野において既知の任意の方法によって、例えば、細胞選別(例えば、フローサイトメトリ)によって、又は既知の方法によるクローン増殖によって、達成することができる。したがって、好ましい均質なPPDC集団は、分娩後由来細胞のクローン細胞株を含み得る。そのような集団は、極めて望ましい機能性を有する細胞クローンが単離されている場合、特に有用である。
また、所望の形成経路(例えば神経、上皮)に沿った幹細胞分化を刺激する、1種又は2種以上の因子の存在下、又はそのような条件下でインキュベートされた細胞の集団も本明細書で提供される。そのような因子は、当該技術分野において既知であり、当業者には、分化に好適な条件の決定は、慣用の実験方法を使用して達成することができる点が、理解されるであろう。そのような条件の最適化は、統計的実験計画及び分析によって達成することができ、例えば、応答曲面法により、例えば生物学的培養での、複数の変数の同時最適化が可能となる。現在好ましい因子には、増殖因子又は栄養因子などの因子、脱メチル化剤、神経若しくは上皮系統細胞との共培養又は神経若しくは上皮系統細胞の馴化培地中での培養、並びにこれらの経路に沿った幹細胞分化を刺激するための、当該技術分野において既知の他の条件(例えば、Lang,K.J.D.et al.,2004,J.Neurosci.Res.76:184〜192、Johe,K.K.et al.,1996,Genes Devel.10:3129〜3140、Gottleib,D.,2002,Ann.Rev.Neurosci.25:381〜407を参照されたい)。
馴化培地
一態様では、本発明は、後述するように、インビトロ及びインビボで用いるための、分娩後由来細胞又は他の前駆細胞などの培養した前駆細胞由来の馴化培地を提供する。こうした馴化培地の使用により、拒絶反応又は他の有害な免疫応答を誘発する恐れがある無傷細胞を導入することなく、細胞によって分泌された有益な栄養因子を、患者内で同種異系的に(allogeneically)使用することが可能となる。馴化培地は、培養培地中で細胞(細胞の集団など)を培養し、続いて、その培地から細胞を除去することによって調製される。特定の実施形態では、分娩後細胞は、UTC又はPDCであり、より好ましくはhUTCである。
上記細胞の集団から調製される馴化培地は、そのまま使用するか、例えば限外濾過若しくは凍結乾燥によって更に濃縮するか、更には乾燥させるか、部分的に精製するか、当該技術分野において既知の、医薬的に許容可能な担体若しくは希釈剤と組み合わせるか、又は生物学的製剤、例えば医薬的に有用なタンパク質組成物などの他の化合物と組み合わせることができる。馴化培地は、インビトロ又はインビボで、単独、又は例えば自家若しくは同系の生細胞と共に使用することができる。この馴化培地は、インビボで導入される場合は、治療部位で局所的に、又は遠隔で導入して、例えば必要な細胞増殖因子若しくは栄養因子を、患者に提供することができる。
細胞の改変、構成成分、及び産物
分娩後細胞などの前駆細胞はまた、治療的に有用な遺伝子産物を産生するように、又は腫瘍治療のための抗腫瘍薬を産生するように遺伝子操作されてもよい。遺伝子操作は、例えばレトロウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターなどの組み込みウイルスベクター;例えばパピローマウイルスベクター、SV40ベクター、アデノウイルスベクターなどの非組み込み複製ベクター;又は複製欠陥ウイルスベクター、が挙げられるがこれらに限定されない様々なベクターのうちのいずれかを用いて達成され得る。細胞内にDNAを導入する他の方法としては、リポソーム、電気穿孔法、粒子ガンの使用、又は直接的DNA注入によるものが挙げられる。
宿主細胞に、好ましくは、とりわけ、プロモータ配列若しくはエンハンサ配列、転写ターミネータ、ポリアデニル化部位などの、1つ又は2つ以上の適切な発現制御要素によって制御されるか、あるいは有効に関連するDNA、及び選択マーカーを、形質転換又は形質移入する。任意のプロモータを使用して、挿入遺伝子の発現を駆動することができる。例えば、ウイルスプロモータとしては、CMVプロモータ/エンハンサ、SV40、パピローマウイルス、エプスタイン−バールウイルス、又はエラスチン遺伝子プロモータが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、インビボで必要とされる場合にのみ、その産物が合成されるように、目的の遺伝子の発現を制御するために使用される制御要素によって、調節された遺伝子発現が可能となる。一過性発現が所望される場合には、構成的プロモータが、好ましくは、非組み込みベクター及び/又は複製欠陥ベクター内で使用される。代替的に、誘導性プロモータを使用して、必要とされる際に、挿入遺伝子の発現を駆動することが可能である。誘導性プロモータとしては、メタロチオネイン及び熱ショックタンパク質を伴うものが挙げられるが、これらに限定されない。
外来DNAの導入後に、操作された細胞を、富栄養培地中で増殖させ、次いで、選択培地に切り替えることができる。外来DNA中の選択マーカーは、選択に耐性を付与し、細胞が、例えば、プラスミド上に、その染色体中に外来DNAを安定に組み込み、増殖して増殖巣を形成することを可能にし、次にこの増殖巣は、クローン化して細胞株へと増殖することができる。この方法は、有利には、遺伝子産物を発現する細胞株を操作するために、使用することができる。
細胞は、移植部位での炎症若しくは拒絶反応を促進する因子の発現を、「ノックアウト」又は「ノックダウン」するように、遺伝子組み換えすることができる。標的遺伝子発現レベル又は標的遺伝子産物活性レベルの低減のための、負調節技術を、以下で説明する。「負調節」とは、本明細書で使用するとき、調節処理の非存在下での標的遺伝子産物のレベル及び/又は活性に対する、標的遺伝子産物のレベル及び/又は活性の低減を指す。ニューロン又はグリア細胞に本来ある遺伝子発現は、例えば、相同組み換え技術を使用して遺伝子を不活性化させることによる、発現の阻害を含めた、数多くの技術を使用して、低減若しくはノックアウトすることができる。典型的には、タンパク質の重要領域をコードするエクソン(即ち、その領域に対して5’側のエクソン)が、陽性選択マーカー、例えばneoによって干渉されることで標的遺伝子からの正常なmRNAの産生が妨げられて、その遺伝子の不活性化をもたらす。遺伝子はまた、遺伝子の一部に欠失を作り出すことによって、又は遺伝子全体を欠失させることによって、不活性化させることもできる。ゲノム中で離間している、標的遺伝子に対して2つの相同な領域を有する、構築物を使用することによって、その2つの領域に介在する配列を、欠失させることができる(Mombaerts et al.,1991,Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.88:3084〜3087)。アンチセンス、DNAザイム、リボザイム、低分子干渉RNA(siRNA)、及び標的遺伝子の発現を阻害する他のそのような分子もまた、標的遺伝子活性のレベルを低減するために使用することができる。例えば、主要組織適合遺伝子複合体(HLA)の発現を阻害する、アンチセンスRNA分子は、免疫反応に関して、最も汎用的であることが示されている。また更には、標的遺伝子活性のレベルを低減する際に、3重らせん分子を利用することもできる。これらの技術は、L.G.Davisら(編)、「BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,2nd ed.」(1994)、Appleton & Lange(Norwalk,CT)で詳細に説明されている。
他の態様では、本発明は、分娩後細胞、好ましくはPPDCから調製される細胞溶解物及び細胞可溶性画分、又はPPDC細胞を含む不均質若しくは均質な細胞集団、並びに神経形成経路に沿って分化するように遺伝子操作されているか又は刺激されている、PPDC又はその集団を提供する。こうした溶解物及びその画分は、多くの有用性を有する。インビボでの細胞溶解物の可溶性画分(即ち、実質的に膜を含まない)の使用により、例えば、拒絶反応、又は他の有害な免疫学的応答を誘発する可能性が最も高い、相当量の細胞表面タンパク質を導入することなく、有益な細胞内環境を、患者内で同種異系的に使用することが可能となる。細胞を溶解する方法は、当該技術分野において周知であり、機械的破壊、酵素破壊、若しくは化学的破壊、又はこれらの組み合わせの様々な手段が挙げられる。そのような細胞溶解物は、増殖培地中で細胞から直接調製されるので、分泌された増殖因子等を含有した状態で調製されてもよく、又は培地を用いずに、例えば、PBS若しくは他の溶液中で、洗浄された細胞から調製されてもよい。洗浄細胞は、好ましい場合には、元の集団密度よりも高い濃度で、再懸濁させることができる。
一実施形態では、例えば、細胞を破壊し、その後に細胞画分を分離しないことによって、細胞溶解物の全体が調製される。別の実施形態では、当該技術分野において既知の慣用的方法、例えば、遠心分離、濾過、又は同様の方法によって、細胞の可溶性画分から、細胞膜画分が分離される。
分娩後由来細胞などの前駆細胞の集団から調製される、細胞溶解物又は細胞可溶性画分は、そのまま使用するか、例えば限外濾過若しくは凍結乾燥によって更に濃縮するか、更に乾燥させるか、部分的に精製するか、当該技術分野において既知の、医薬的に許容可能な担体若しくは希釈剤と組み合わせるか、又は生物学的製剤、例えば医薬的に有用なタンパク質組成物などの他の化合物と組み合わせることができる。細胞溶解物又はその画分は、インビトロ若しくはインビボで、単独で、又は、例えば自家若しくは同系の生細胞と共に、使用することができる。細胞溶解物は、インビボに導入される場合には、治療部位で局所的に、又は遠隔で導入して、例えば、必要な細胞増殖因子を患者に提供することができる。
更なる実施形態では、分娩後細胞、好ましくはPPDCは、インビトロで培養することにより、生物学的産物を高収率で産生することができる。例えば、そのような細胞は、目的とする具体的な生物学的産物(例えば、栄養因子)を天然に産生するか、又は生物学的産物を産生するように遺伝子操作されており、本明細書で説明される培養技術を使用して、クローン増殖させることができる。代替的に、所望の系統への分化を誘導する培地中で、細胞を増殖させることができる。いずれの場合でも、その細胞によって産生され、培地中に分泌された生物学的産物は、例えば、いくつか例を挙げると、示差的タンパク質沈殿法、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、電気泳動、及びHPLCなどの、標準的な分離技術を使用して、馴化培地から容易に単離することができる。「バイオリアクタ」を使用して、例えば、インビトロで3次元培養物に栄養を与えるための、フロー法を活用することができる。本質的には、新鮮培地が3次元培養物を通過する際、生物学的産物は、培養物から洗い出され、次いで、上記のように、その流出物から単離されることができる。
代替的に、目的の生物学的産物は、細胞内部に留まる場合があり、それゆえ、その収集には、上述のように、細胞を溶解させることが必要となる場合がある。続いて、上記の技術のうちの任意の1つ以上を使用して、その生物学的産物を精製することができる。
別の実施形態では、液体、固体、又は半固体の基質上に分娩後細胞(好ましくはPPDC)を培養することによって産生される、細胞外マトリックス(ECM)が調製、収集され、組織の修復又は置換を必要とする対象内への生細胞の移植の代替案として利用される。細胞は、インビトロで、本明細書の他の箇所で説明される3次元フレームワーク上に、所望の量のECMがそのフレームワーク上に分泌されるような条件下で培養される。細胞及びフレームワークが取り出され、例えば注入可能製剤としての更なる使用のために、ECMが処理される。このことを達成するために、フレームワーク上の細胞を死滅させ、そのフレームワークから、あらゆる細胞残渣を除去する。このプロセスは、多種多様な方法で実施することができる。例えば、凍結保存剤を使用することなく、その生組織を液体窒素中で急速凍結することができ、又は細胞が浸透圧に反応して破裂するように、滅菌蒸留水中に組織を浸漬させることができる。
細胞を死滅させた後、EDTA、CHAPS、又は双極性イオン性洗剤などの弱い洗剤ですすぎ処理することによって、細胞膜を破壊し、細胞残渣を除去することができる。代替的に、細胞膜を分解し、細胞内容物の除去を可能とする試薬で、その組織を酵素消化させ、かつ/又は抽出することができる。そのような酵素の例としては、ヒアルロニダーゼ、ディスパーゼ、プロテアーゼ、及びヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。洗剤の例としては、例えばアルキルアリールポリエーテルアルコール(TRITON X−100)、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Rohm and Haas(Philadelphia,Pa.))、BRIJ−35、ポリエトキシエタノールラウリルエーテル(Atlas Chemical Co.(San Diego,Calif.))、ポリソルベート20(TWEEN 20)、ポリエトキシエタノールソルビタンモノラウレート(Rohm and Haas)、ポリエチレンラウリルエーテル(Rohm and Haas)などの非イオン性洗剤、並びに、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、硫酸化高級脂肪族アルコール、分岐又は非分岐鎖中に7〜22個の炭素原子を含有するスルホン化アルカン及びスルホン化アルキルアレーンなどのイオン性洗剤が挙げられる。
ECMの収集は、例えば、新たな組織が、生分解性又は非生分解性である3次元フレームワーク上で形成されているかどうかによって、様々な方法で達成することができる。例えば、そのフレームワークが、非生分解性である場合には、音波処理、高圧水ジェット、機械的掻き取り、又は洗剤若しくは酵素での穏和な処理、あるいは上記の任意の組み合わせを、そのフレームワークに施すことによって、ECMを取り出すことができる。
フレームワークが、生分解性である場合には、例えば、そのフレームワークを溶液中で分解させるか、又は溶解させることによって、ECMを収集することができる。代替的に、生分解性フレームワークが、それ自体をECMと併せて注入することが可能な材料からなる場合には、そのフレームワーク及びECMは、その後の注入のために、まとめて処理することができる。代替的に、ECMは、非生分解性フレームワークからのECMの収集に関して上述された方法のうちのいずれかによって、生分解性フレームワークから取り出すことができる。全ての収集プロセスは、好ましくは、ECMを変性させないように設計される。
ECMを収集した後、更にECMを処理することができる。例えば、ECMは、音波処理などによる、当該技術分野において周知の技術を使用して、微粒子へと均質化することができるため、そのECMは、外科用ニードルの中を通過することができる。ECMの成分は、必要に応じて、γ線照射によって架橋することができる。好ましくは、ECMは、0.25〜2メガラドで照射することにより、ECMを滅菌及び架橋することができる。グルタルアルデヒドなどの、毒性の薬剤を使用する化学架橋も可能であるが、一般的には好ましくない。
ECM中に存在する様々なタイプのコラーゲンなどの、タンパク質の量及び/又は比率は、本発明の細胞によって産生されるECMと、1種又は2種以上の他の細胞型のECMとを混合することによって、調整することができる。更には、タンパク質、増殖因子、及び/又は薬物などの、生物学的に活性な物質を、ECM中に組み込むことができる。例示的な生物学的に活性な物質としては、注入部位での治癒及び組織修復を促進する、TGF−βなどのような、組織増殖因子が挙げられる。そのような追加的薬剤は、例えば、全細胞溶解物、可溶性細胞分画、あるいは細胞によって産生される更なる精製成分及び産物と共に、本明細書で上述された実施形態のいずれかで利用することができる。
医薬組成物
別の態様では、本発明は、分娩後細胞(好ましくはPPDC)などの前駆細胞、その細胞集団、こうした細胞によって産生される馴化培地、並びに、眼変性状態の治療のための様々な方法においてこうした細胞によって産生される細胞成分及び産物を用いる医薬組成物を提供する。特定の実施形態は、生細胞(例えば、PPDC単独、又は他の細胞型との混合)を含む医薬組成物を包含する。他の実施形態は、PPDC馴化培地を含む医薬組成物を包含する。更なる実施形態は、PPDCの細胞成分(例えば、細胞溶解物、可溶性細胞分画、ECM、又は前述のうちのいずれかの構成成分)、又は産物(例えば、細胞によって天然に又は遺伝子操作を通じて産生される、栄養及び他の生物学的因子、細胞を培養することから得られる馴化培地)を用い得る。いずれの場合でも、この医薬組成物は、当該技術分野において既知の、抗炎症剤、抗アポトーシス剤、抗酸化剤、増殖因子、神経栄養因子、又は神経再生薬、神経保護薬、若しくは点眼薬などの、他の活性剤を更に含み得る。
医薬組成物に添加できる他の成分の例としては、(1)他の神経保護薬又は神経有効薬、(2)当該技術分野において既知の1つ又は2つ以上のタイプのコラーゲンなどの、選択された細胞外マトリックス成分、並びに/又は増殖因子、多血小板血漿、及び薬物(代替的に、増殖因子を発現及び産生するように、PPDCを遺伝子組み換えしてもよい)、(3)抗アポトーシス剤(例えば、エリスロポエチン(EPO)、EPOミメティボディ、トロンボポエチン、インスリン様増殖因子(IGF)−I、IGF−II、肝細胞増殖因子、カスパーゼ阻害剤)、(4)抗炎症化合物(例えば、p38MAPキナーゼ阻害剤、TGF−β阻害剤、スタチン、IL−6及びIL−1阻害剤、PEMIROLAST、TRANILAST、REMICADE、SIROLIMUS、及び非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(TEPOXALIN、TOLMETIN、及びSUPROFENなど)、(5)カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、抗増殖薬、コルチコステロイド、及び様々な抗体などの、免疫抑制剤あるいは免疫調節剤、(6)プロブコール、ビタミンC及びビタミンE、補酵素(conenzyme)Q−10、グルタチオン、L−システイン、並びにN−アセチルシステインなどの、抗酸化剤、及び(6)局所麻酔剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体又は媒質と共に配合された、分娩後細胞(好ましくはPPDC)などの前駆細胞、これらの細胞から生成された馴化培地、又はこれらの構成成分若しくは産物を含む。好適な医薬的に許容可能な担体としては、水、食塩水(リンガー液など)、アルコール、油、ゼラチン、及び炭水化物(ラクトース、アミロース、又はデンプンなど)、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、並びにポリビニルピロリドンが挙げられる。そのような調製物は、滅菌することができ、また必要に応じて、滑沢剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、及び着色剤などの、補助剤と混合することができる。典型的であるが非限定的に、細胞成分又は産物を含むが生細胞を含まない医薬組成物は、液状で配合される。PPDC生細胞を含む医薬組成物は、典型的には、液体、半固体(例えば、ゲル)、又は固体(例えば、眼組織工学に関して適切なマトリックス、スカフォールドなど)として配合される。
医薬組成物は、医薬品化学者又は生物学者に周知されるような補助成分を含んでもよい。例えば、医薬組成物は、用いられる抗酸化剤の種類に応じて変化する範囲の抗酸化剤を含んでもよい。一般に用いられる抗酸化剤の妥当な範囲は、約0.01〜約0.15w/v%のEDTA、約0.01〜約2.0w/v%の亜硫酸ナトリウム、及び約0.01〜約2.0w/v%のメタ重亜硫酸ナトリウムである。当業者は、上記のそれぞれに対して約0.1w/v%の濃度を用い得る。他の例示的な化合物としては、メルカプトプロピオニルグリシン、N−アセチルシステイン、β−メルカプトエチルアミン、グルタチオン、及び類似の種が挙げられるが、眼投与に好適な他の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸及びその塩、又は亜硫酸塩若しくはメタ重亜硫酸ナトリウムを用いてもよい。
緩衝剤を使用して、点眼薬配合物のpHを約4.0〜約8.0の範囲に維持して、その結果、眼刺激を最小化することができる。硝子体内又は眼内直接注入のためには、配合物はpH7.2〜7.5、好ましくはpH7.3〜7.4であるべきである。眼科組成物は、眼への投与に好適な等張化剤を更に含んでもよい。中でも、配合物を0.9%生理的食塩水溶液とほぼ等張にするのには、塩化ナトリウムがとりわけ好適である。
特定の実施形態では、医薬組成物は増粘剤と共に配合される。例示的な剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、及びポリビニルピロリドンである。医薬組成物は、必要であれば共溶媒を有してもよい。好適な共溶媒としては、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベート、プロピレングリコール、及びポリビニルアルコールが挙げられ得る。更に、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀若しくは硝酸フェニル水銀、チメロサール、又はメチル若しくはプロピルパラベンなどの防腐剤を添加してもよい。
注入用配合物は、好ましくは、単用投与用に設計して、防腐剤を含まない。注入剤は、0.9%の塩化ナトリウム溶液と等価の等張性を有するべきである(290〜300ミリオスモルのオスモル濃度)。これは、塩化ナトリウム、若しくは上記の他の共溶媒、又は上記の緩衝剤及び抗酸化剤などの賦形剤を添加することによって達成され得る。
眼の前房組織は房水に浸されており、一方で、網膜は硝子体に連続的に曝露されている。これらの流体/ゲルは、抗酸化化合物及び酵素を含むため、高還元性の酸化還元状態で存在する。したがって、眼科組成物に還元剤を含めることは有利となり得る。好適な還元剤としては、N−アセチルシステイン、アスコルビン酸、又は塩形態、及び亜硫酸ナトリウム又はメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられ、アスコルビン酸、及び/又はN−アセチルシステイン若しくはグルタチオンは注入剤に特に好適である。
細胞若しくは馴化培地、又は細胞成分若しくは細胞産物を含む医薬組成物は、当該技術分野において既知のいくつかの送達モードのうちの1つ又は2つ以上で患者の眼に送達することができる。いくつかの場合で使用に好適であり得る一実施形態では、組成物は点眼液又は洗眼剤形態で眼に局所送達される。別の実施形態では、組成物は、周期的な眼内注入によって、又は、BSS若しくはBSS PLUS(Alcon USA(Fort Worth,Tex))などの潅注溶液形態での注入によって眼内の様々な位置に送達することができる。代替的に、組成物は、例えば、Herrero−Vanrellに対する米国特許第5,718,922号で開示されるような、予形成又はインサイチュ形成されるゲル又はリポソームなどの、当業者に既知の他の眼科剤形で適用されてもよい。別の実施形態では、組成物は、コンタクトレンズ(例えば、Lidofilcon B.Bausch & Lomb CW79、又はDELTACON(Deltafilcon A))、又は眼の表面に一時的に置かれる他の物体を介して、処置の必要な眼の水晶体に対して又はそれを通して送達されてもよい。他の実施形態では、コラーゲン角膜シールド(例えば、BIO−COR可溶性角膜シールド、Summit Technology(Watertown,Mass))のような支持体を用いてもよい。また、組成物は、浸透圧ポンプ(ALZET,Alza Corp(Palo Alto,Calif.))からカニューレを通して、又は徐放カプセル(OCCUSENT)若しくは生分解性ディスク(OCULEX,OCUSERT)を移植することによって、眼球中に注入することで投与されてもよい。これらの投与経路は、眼への医薬組成物の連続的な供給を提供するという利点を有する。これは例えば、角膜への局所送達のために有利であろう。
半固形又は固形の担体中に生細胞を含む医薬組成物は、典型的には、眼の損傷又は苦痛部位における外科的移植のために配合される。更に、例えば馴化培地などの液体組成物も、外科的処置によって投与可能であることが理解されるであろう。具体的な実施形態では、半固体又は固体の医薬組成物は、非生分解性若しくは生分解性とすることができる、半透性ゲル、格子、細胞スカフォールドなどを含み得る。例えば、特定の実施形態では、外来性の細胞を、それらの周囲から隔離するが、それらの細胞が、周囲の細胞に生体分子を分泌及び送達できるようにすることが、望ましいか、又は適切である場合がある。これらの実施形態では、細胞は、移植細胞を宿主組織から物理的に隔離する、非生分解性の選択的透過性障壁によって包囲された、生きているPPDC、又はPPDCを含む細胞集団を含む、自律的移植片として配合されてもよい。こうした移植片は、薬理学的に誘導された免疫抑制の不在下で、免疫細胞及び巨大分子が移植細胞を殺傷することを防ぐ能力を有するため、「免疫防御性」と称される場合がある(こうした装置及び方法の概説については、例えば、P.A.Tresco et al.,2000,Adv.Drug Delivery Rev.42:3〜27を参照されたい)。
他の実施形態では、本発明の医薬組成物に関して、多種多様な分解性ゲル及び分解性ネットワークが利用される。例えば、持続放出性製剤に関して特に好適な、分解性材料としては、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの、生体適合性ポリマーが挙げられる。薬物送達ビヒクル中の分解性ポリマーの構造、選択、及び使用については、A.Domb et al.,1992,Polymers for Advanced Technologies 3:279〜291を含むいくつかの刊行物で概説されている。米国特許第5,869,079号(Wongら)は、生分解性持続放出性眼移植片における親水性物質と疎水性物質との組み合わせを開示している。加えて、米国特許第6,375,972号(Guoら)、同第5,902,598号(Chenら)、同第6,331,313号(Wongら)、同第5,707,643号(Oguraら)、同第5,466,233号(Weinerら)、及び同第6,251,090号(Averyら)が、それぞれ医薬組成物の送達に用いられ得る眼内移植装置及びシステムについて説明している。
他の実施形態では、例えば、損傷若しくは断裂した視神経などの、神経損傷部位の修復に関しては、生分解性、好ましくは生体再吸収性又は生体吸収性のスカフォールド若しくはマトリックス上に、又はそれらの内部に細胞を送達することが望ましいか、又は適切な場合がある。これらの典型的な3次元生体材料は、スカフォールドに付着されるか、スカフォールド内部に分散されるか、又はスカフォールド内に封入された細胞外マトリックス内に組み込まれる、生細胞を含む。身体の標的領域内に移植された後、これらの植え込み片は、宿主組織と一体化され、それらの移植細胞が、徐々に定着していく(例えば、P.A.Tresco et al.,2000(上記参照)を参照されたく、また、D.W.Hutmacher,2001,J.Biomater.Sci.Polymer Edn.12:107〜174も参照されたい)。
本発明で使用できるスカフォールド又はマトリックス(「フレームワーク」と総称される場合がある)材料としては、不織布マット、多孔質発泡体、又は自己集合性ペプチドが挙げられる。不織性マットは、例えば、商標名VICRYL(Ethicon,Inc.(Somerville,N.J))で市販されているグリコール酸と乳酸との吸収性合成コポリマー(PGA/PLA)からなる繊維を用いて形成することができる。更に、例えば、米国特許第6,355,699号に記載されているような、凍結乾燥法又は凍結乾燥法などのプロセスにより形成されたポリ(エプシロン−カプロラクトン)/ポリ(グリコール酸)(PCL/PGA)コポリマーからなる発泡体を用いてもよい。自己集合性ペプチド(例えば、RAD16)などのヒドロゲルもまた、使用することができる。インサイチュで形成される分解性ネットワークもまた、本発明での使用に好適である(例えば、Anseth,K.S.et al.,2002,J.Controlled Release 78:199〜209、Wang,D.et al.,2003,Biomaterials 24:3969〜3980、Heらの米国特許出願公開第2002/0022676号を参照されたい)。これらの材料は、注入に好適な流体として配合し、続いて、インサイチュ又はインビボで、分解性ヒドロゲルネットワークを形成するように、様々な手段(例えば、温度、pH、露光の変更)によって誘導することができる。
別の実施形態では、このフレームワークは、生体吸収性材料、例えば、PGA、PLA、PCLのコポリマー若しくはブレンド、又はヒアルロン酸から作製されたマルチフィラメント糸で構成することができる、フェルトである。この糸は、圧着、切断、カーディング、及びニードリングからなる標準的なテキスタイル加工技術を使用して、フェルトにされる。別の実施形態では、細胞は、複合材料構造体とすることができる発泡体スカフォールド上に播種される。
上記の実施形態の多くで、フレームワークを有用な形状に成形することができる。更に、PPDCは、例えば、線維芽細胞含有GDC血管内コイルを調製するために使用される方式に対応する方法によって、予備形成された非分解性の外科用装置又は移植可能装置上で培養することができるということが理解されるであろう(Marx,W.F.et al.,2001,Am.J.Neuroradiol.22:323〜333)。
これらのマトリックス、スカフォールド、又は装置は、細胞付着を増強するために、細胞の接種の前に処理することができる。例えば、接種の前に、ナイロンマトリックスを0.1モルの酢酸で処理し、かつポリリシン、PBS、及び/又はコラーゲン中でインキュベートすることにより、そのナイロンをコーティングすることができる。ポリスチレンは、硫酸を使用して、同様に処理することができる。フレームワークの外側表面もまた、そのフレームワークの血漿コーティング、あるいは1種又は2種以上のタンパク質(例えば、コラーゲン、弾性繊維、細網繊維)、糖タンパク質、グリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン硫酸、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸)、細胞マトリックス、並びに/又は、限定するものではないが、とりわけ、ゼラチン、アルギン酸塩、寒天、アガロース、及び植物ゴムなどの他の材料の添加などによって、細胞の付着若しくは増殖、及び組織の分化を改善するように、改変することができる。
生細胞含有フレームワークは、当該技術分野で既知の方法に従って調製される。例えば、細胞は、準集密又は集密まで、培養容器内で自由に増殖させて、その培養物から取り上げ、フレームワーク上に接種することができる。必要に応じて、細胞の接種前、接種中、若しくは接種後に、培養培地に増殖因子を添加することにより、分化及び組織形成を誘発させることができる。代替的に、フレームワーク上での細胞の増殖が増強されるように、又は移植片の拒絶のリスクが低減されるように、フレームワーク自体を改変することができる。したがって、抗炎症剤、免疫抑制剤、又は増殖因子が挙げられるが、これらに限定されない1種又は2種以上の生物学的に活性な化合物を、局所放出のためにフレームワークに添加することができる。
使用方法
分娩後細胞(好ましくはhUTC又はPDC)などの前駆細胞、若しくはその細胞集団、又はこうした細胞の馴化培地若しくは他の成分、あるいはこうした細胞によって産生される産物を、眼細胞及び組織の修復及び再生を支援及び促進するために様々な方法で用いてもよい。そのような有用性は、インビトロ法、エクスビボ法、及びインビボ法を包含する。以下に記載する方法は、PPDCを目的としているが、他の分娩後細胞も、これらの方法で用いるのに好適であり得る。
インビトロ法及びエクスビボ法
一実施形態では、分娩後細胞(好ましくはhUTC又はPDC)などの前駆細胞、及びそれから生成された馴化培地を、インビトロで用いて、医薬品、増殖因子、調節因子などの有効性及び細胞毒性に関して、多種多様な化合物をスクリーニングすることができる。例えば、こうしたスクリーニングを、実質的に均質なPPDCの集団に対して実行して、眼状態の治療のためにそのPPDCと共に配合されるかあるいは同時投与される候補化合物の有効性又は毒性を評価することができる。代替的に、こうしたスクリーニングは、新規の医薬品候補の有効性を評価する目的で、眼内で見出される細胞型、又はその前駆細胞へと分化するよう刺激されているPPDCに対して実行してもよい。この実施形態では、PPDCは、インビトロで維持され、試験される化合物に曝される。細胞毒性の可能性がある化合物の活性は、培養細胞に損傷を与えるか又は死滅させる、その能力によって測定することができる。このことは、生体染色技術によって、容易に評価することができる。
上述のように、PPDCは、これらの細胞によって天然に産生されるか、他の系統に分化するように誘導される際にこれらの細胞によって産生されるか、又は遺伝子操作を介してこれらの細胞によって産生されるか、のいずれかである生物学的産物を産生するようにインビトロ培養することができる。例えば、TIMP1、TPO、KGF、HGF、FGF、HBEGF、BDNF、MIP1b、MCP1、RANTES、I309、TARC、MDC、及びIL−8は、増殖培地中で増殖させた臍由来細胞から分泌されることが判明した。TIMP1、TPO、KGF、HGF、HBEGF、BDNF、MIP1a、MCP−1、RANTES、TARC、エオタキシン、及びIL−8は、増殖培地中で培養した胎盤由来PPDCから分泌されることが判明した(実施例を参照)。
この点に関し、本発明の実施形態は、馴化培地を産生するためのPPDCの使用を特徴とする。PPDC由来馴化培地の産生は、未分化のPPDCから、又は分化を刺激する条件下でインキュベートされたPPDCから、のいずれかであってよい。こうした馴化培地は、例えば、上皮又は神経前駆細胞のインビトロ又はエクスビボ培養、あるいは、PPDCの均質集団、又はPPDCと他の前駆細胞とを含む不均質集団を含む移植細胞を支援するためのインビボにおける使用が想到される。
PPDCの細胞溶解物、可溶性細胞画分若しくはその成分、又はECM若しくはその成分が、様々な目的のために用いられ得る。上述のように、これらの成分の一部は、医薬組成物中で使用することができる。他の実施形態では、細胞溶解物又はECMを使用して、外科的な使用のための、若しくは移植のための、又はエクスビボ目的のための物質又は装置を、コーティングするか、あるいは他の方法で処理することにより、こうした処理の過程で接触する細胞又は組織の治癒又は生存が促進される。
実施例10及び12で説明するとおり、PPDCは、これらの細胞との共培養で増殖させた場合に、成体神経前駆細胞の生存、増殖、及び分化を支援する能力を実証している。同様に、従来の研究で、PPDCが栄養機構を介して網膜細胞を支援するように機能し得ることが指摘されている(米国特許出願公開第2010/0272803号)。したがって、PPDCは、他の細胞、特に神経細胞、並びに神経及び眼前駆細胞(例えば、神経幹細胞、及び網膜又は角膜上皮幹細胞)に栄養的支援を提供するために、インビトロ共培養で有利に用いられる。共培養の場合、PPDC及び所望の他の細胞が、この2つの細胞型が接触する条件下で共培養されることが望ましい場合がある。このような接触は、例えば、培養培地中、又は好適な培養基質上に、不均質な細胞集団として、それらの細胞を播種することによって行うことができる。代替的に、PPDCは、最初にコンフルエンスまで増殖されてもよく、続いて、培養中の第2の所望の細胞型のための基質としての機能を果たす。この後者の実施形態では、それらの細胞は、例えば、膜又は同様の装置によって、更に物理的に分離させることができ、これにより、共培養の期間の後に、他の細胞型を取り出して、個別に使用することができる。神経又は眼細胞型の増殖及び分化を促進するための、共培養中のPPDCの使用は、研究分野及び臨床/治療分野での応用性を見出し得る。例えば、PPDCの共培養を利用して、例えば、基礎研究目的のために、又は薬物スクリーニングアッセイでの使用のために、培養下細胞の増殖及び分化を促進することができる。PPDCの共培養は、更に、治療目的で後に投与するための神経又は眼前駆細胞のエクスビボ増殖のために利用することもできる。例えば、神経又は眼前駆細胞を個体から採取して、PPDCとの共培養中にエクスビボ増殖させ、続いて、その個体に戻す(自家移入)か、又は別の個体に戻す(同系移入又は同種異系移入)ことができる。これらの実施形態では、エクスビボ増殖の後に、PPDC及び前駆細胞を含む混合細胞集団を、治療を必要とする患者に投与することが可能である点が、理解されるであろう。代替的に、自家移入が適切であるか、又は望ましい状況では、共培養された細胞集団を培養中に物理的に分離して、患者に投与するための自家前駆細胞の取り出しを実現することができる。
インビボ法
実施例で記載するとおり、馴化培地は、眼変性状態の治療のために効果的に用いられ得る。眼内の標的部位内に移植されると、PPDCなどの前駆細胞由来の馴化培地は、眼細胞にインサイチュで栄養的支援を提供する。
PPDCなどの前駆細胞由来の馴化培地は、当該技術分野において既知の、他の有益な薬物、増殖因子、栄養因子などの生体分子、馴化培地(前駆細胞又は分化細胞培養由来の)、又は抗炎症剤、抗アポトーシス剤、抗酸化剤、増殖因子、神経栄養因子、若しくは神経再生薬若しくは神経保護薬などの他の活性剤、と共に投与することができる。馴化培地が他の薬剤と共に投与される場合、それらは、単一の医薬組成物として一緒に、あるいは別個の医薬組成物として、他の薬剤と同時に、若しくは逐次的に(他の薬剤の投与より前又は後のいずれかで)、投与することができる。
PPDCなどの前駆細胞、及び馴化培地産物と共に投与できる他の成分の例としては、(1)他の神経保護薬又は神経有効薬、(2)当該技術分野において既知の1つ又は2つ以上のタイプのコラーゲンなどの、選択された細胞外マトリックス成分、並びに/又は増殖因子、多血小板血漿、及び薬物(代替的に、細胞は、増殖因子を発現及び産生するように、遺伝子組み換えすることもできる)、(3)抗アポトーシス剤(例えば、エリスロポエチン(EPO)、EPOミメティボディ、トロンボポエチン、インスリン様増殖因子(IGF)−I、IGF−II、肝細胞増殖因子、カスパーゼ阻害剤)、(4)抗炎症化合物(例えば、p38MAPキナーゼ阻害剤、TGF−β阻害剤、スタチン、IL−6及びIL−1阻害剤、PEMIROLAST、TRANILAST、REMICADE、SIROLIMUS、及び非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(TEPOXALIN、TOLMETIN、及びSUPROFENなど)、(5)カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、抗増殖薬、コルチコステロイド、及び様々な抗体などの、免疫抑制剤あるいは免疫調節剤、(6)プロブコール、ビタミンC及びビタミンE、補酵素(conenzyme)Q−10、グルタチオン、L−システイン、並びにN−アセチルシステインなどの、抗酸化剤、及び(6)局所麻酔剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
液体又は流体医薬組成物は、眼内のより一般的な位置に(例えば、局所又は眼内に)投与してもよい。
他の実施形態は、PPDCなどの前駆細胞由来の馴化培地、又はこれらの細胞により天然に産生されたか、若しくは細胞の遺伝子操作によって産生された、栄養及び他の生物学的因子を含む医薬組成物を投与することにより、眼変性状態を治療する方法を包含する。この場合も、これらの方法は、当該技術分野において既知のような増殖因子、神経栄養因子、又は神経再生薬若しくは神経保護薬などの、他の活性剤を投与することを更に含み得る。
本明細書で説明されるPPDCなどの前駆細胞由来の馴化培地、又は他の医薬組成物のうちのいずれかを投与するための、剤形及び投与計画は、個々の患者の状態、例えば、眼変性状態の性質及び程度、年齢、性別、体重及び全般的な医学的状態、並びに医師には既知の他の因子を考慮して、適正な臨床に従って開発される。それゆえ、患者に投与される医薬組成物の有効量は、当該技術分野において既知のこれらの考慮事項によって決定される。
細胞療法を開始する前に、患者を薬理学的に免疫抑制することが、望ましいか、又は適切な場合がある。このことは、全身性若しくは局所性の免疫抑制剤の使用を通じて達成することができ、又は上述のように、封入装置内の細胞を送達することによって達成することができる。移植細胞に対する免疫反応を低減若しくは排除するための、これらの手段及び他の手段は、当該技術分野において既知である。別の方法として、上述のように、遺伝子操作したPPDCから馴化培地を調製して、それらの免疫原性を低減することができる。
生きている患者内での移植細胞の生存は、様々な走査技術、例えば、コンピュータ体軸断層撮影(CAT又はCT)スキャン、磁気共鳴映像(MRI)スキャン、又は陽電子放出断層撮影(PET)スキャンを使用することによって判定することができる。移植片の生存の判定は、組織を摘出し、目視、又は顕微鏡を介して、それを検査することによって、死後に実施することもできる。代替的に、神経若しくは眼細胞、又はその産物、例えば、神経伝達物質に対して特異的な染色剤で、細胞を処理してもよい。移植細胞は、更に、ローダミン標識マイクロスフェア若しくはフルオレセイン標識マイクロスフェア、ファーストブルー、第2鉄微小粒子、ビスベンズアミドなどの追跡用染料、又はβ−ガラクトシダーゼ若しくはβ−グルクロニダーゼなどの、遺伝子導入されたレポータ遺伝子産物を予め組み込むことによっても識別することができる。
移植細胞又は馴化培地の対象の眼組織内への機能的組み込みは、損傷又は罹患した眼機能の回復を検査することによって、評価することができる。例えば、黄斑変性、又は他の網膜症の治療における有効性は、視力の改善、並びにステレオカラー眼底写真の異常評価及び等級付けによって判定することができる(Age−Related Eye Disease Study Research Group,NEI,NIH,AREDS Report No.8,2001,Arch.Ophthalmol.119:1417〜1436)。
キット及びバンク
別の態様では、本発明は、上述した眼再生及び修復のための様々な方法における、PPDCなどの前駆細胞、並びに細胞集団、細胞(好ましくはPPDC)から調製された馴化培地、並びにその成分及び産物を利用するキットを提供する。眼変性状態の治療、又は他の計画的治療のために使用する場合、キットは、少なくとも分娩後細胞又は分娩後細胞から誘導された馴化培地を含む、1つ又は2つ以上の細胞集団又は馴化培地、及び医薬的に許容可能な担体(液体、半固体、又は固体)を含み得る。このキットは、更に、例えば注射によって細胞及び馴化培地を投与する手段も、任意選択的に含み得る。このキットは、細胞及び馴化培地の使用に関する使用説明書を、更に含み得る。軍事利用のためなどに野戦病院で使用するために準備されたキットは、組織スカフォールド、外科用縫合糸などを含む、完全処置のための供給品を含んでもよく、細胞又は馴化培地は、急性損傷の修復に関して用いられる。本明細書で説明するアッセイ及びインビトロ法のためのキットは、例えば、(1)PPDC若しくはその成分、又はPPDCの馴化培地若しくは他の産物、(2)インビトロ法を実施するための試薬、(3)必要に応じて、他の細胞又は細胞集団、及び(4)インビトロ法を実施するための説明書、のうちの1つ又は2つ以上を含み得る。
更に別の態様では、本発明は、更に、本発明の組織、細胞、細胞集団、馴化培地、及び細胞成分のバンキングも提供する。上述のように、細胞及び馴化培地は、容易に凍結保存され得る。それゆえ、本発明は、バンク内に細胞を凍結保存する方法を提供し、細胞は、凍結保存されて、その細胞の免疫学的特性、生化学的特性、及び遺伝的特性に基づいて、それらの細胞の完全な特性評価と関連付けられる。凍結細胞は、手順の要件、及び患者の必要性に応じて、自家療法、同系療法、若しくは同種異系療法のために、解凍して増殖させるか又は直接使用することができる。好ましくは、凍結保存された各試料についての情報は、コンピュータ内に保存され、その情報は、外科医、手順、及び患者の要件に基づいて検索可能であり、好適な照合が、それらの細胞又は集団の特性評価に基づいて行われる。好ましくは、本発明の細胞は、所望の細胞の量まで、増殖及び拡大培養され、治療用細胞組成物が、マトリックス若しくは支持体の存在下又は非存在下で、別個に、あるいは共培養物として、調製される。一部の用途に関しては、新たに調製された細胞を使用することが好ましい場合があるが、残余の細胞は、それらの細胞を凍結して、コンピュータに情報を入力し、そのコンピュータ入力と試料とを関連付けることによって、凍結保存及びバンクすることができる。そのような細胞の供給源又はドナーとレシピエントとを照合することが必要とされない場合であっても、このバンクシステムは、免疫学的目的のために、例えば、バンク細胞の望ましい生化学的特性又は遺伝的特性と、治療的必要性とを照合することを容易にする。所望の特性とバンクの試料とを照合した後、その試料を回収して、治療使用のために調製する。本明細書で説明されるように調製された、細胞溶解物、ECM、又は細胞成分もまた、凍結保存若しくは他の方法で保存して(例えば、凍結乾燥によって)、本発明に従ってバンクすることができる。
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するために提供される。それらの実施例は、本発明を限定することではなく、例示することを意図するものである。
以下の略語は、本明細書の実施例及び他の個所、並びに特許請求の範囲に出現する場合がある。ANG2(又はAng2)はアンジオポエチン−2を表し、APCは抗原提示細胞を表し、BDNFは脳由来神経栄養因子を表し、bFGFは塩基性線維芽細胞増殖因子を表し、bid(BID)は「bis in die」(1日2回)を表し、CK18はサイトケラチン18を表し、CNSは中枢神経系を表し、CXCリガンド3はケモカイン受容体リガンド3を表し、DMEMはダルベッコの最少必須培地を表し、DMEM:lg(又はDMEM:Lg、DMEM:LG)は低グルコースのDMEMを表し、EDTAはエチレンジアミン四酢酸を表し、EGF(又はE)は上皮成長因子を表し、FACSは蛍光活性化細胞選別法を表し、FBSはウシ胎児血清を表し、FGF(又はF)は線維芽細胞増殖因子を表し、GCP−2は顆粒球走化性タンパク質−2を表し、GDNFはグリア細胞由来神経栄養因子を表し、GF APはグリア筋原線維酸性タンパク質を表し、HB−EGFはヘパリン結合上皮成長因子を表し、HCAECはヒト冠動脈内皮細胞を表し、HGFは肝細胞増殖因子を表し、hMSCはヒト間葉系幹細胞を表し、HNF−1αは肝細胞特異的転写因子を表し、HVVECはヒト臍静脈内皮細胞を表し、I309はケモカイン及びCCR8受容体のためのリガンドを表し、IGF−1はインスリン様増殖因子1を表し、IL−6はインターロイキン−6を表し、IL−8はインターロイキン8を表し、K19はケラチン19を表し、K8はケラチン8を表し、KGFはケラチノサイト増殖因子を表し、LIFは白血病阻害因子を表し、MBPはミエリン塩基性タンパク質を表し、MCP−1は単球走化性タンパク質1を表し、MDCはマクロファージ由来ケモカインを表し、MIP1αはマクロファージ炎症性タンパク質1αを表し、MIP1βはマクロファージ炎症性タンパク質1βを表し、MMPはマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を表し、MSCは間葉系幹細胞を表し、NHDFは正常ヒト皮膚線維芽細胞を表し、NPEは神経前駆細胞増殖培地を表し、NT3はニューロトロフィン3を表し、O4は乏突起神経膠細胞又はグリア分化マーカーO4を表し、PBMCは末梢血単核細胞を表し、PBSはリン酸緩衝生理食塩水を表し、PDGF−CCは血小板由来増殖因子−Cを表し、PDGF−DDは血小板由来増殖因子−Dを表し、PDGFbbは血小板由来増殖因子bbを表し、POは「per os」(経口)を表し、PNSは末梢神経系を表し、Rantes(又はRANTES)は活性化時調節、正常T細胞発現及び分泌物を表し、rhGDF−5はリコンビナントヒト増殖及び分化因子5を表し、SCは皮下を表し、SDF−1αは間質由来因子1αを表し、SHHはソニックヘッジホッグを表し、SOPは標準的操作手順を表し、TARCは胸腺及び活性化調節ケモカインを表し、TCPは組織培養プラスチックを表し、TCPSは組織培養ポリスチレンを表し、TGFβ2はトランスフォーミング増殖因子β2を表し、TGFβ−3はトランスフォーミング増殖因子β−3を表し、TIMP1はマトリックスメタロプロテアーゼ組織阻害物質1を表し、TPOはトロンボポエチンを表し、TUJ1はBIIIチューブリンを表し、VEGFは血管内皮増殖因子を表し、vWFはヴォン・ヴィレブランド因子を表し、αFPはα−胎児性タンパク質を表す。
以下の実施例により本発明を更に例示するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
臍由来細胞の、桿体外節食作用を救済する効果
hUTCは、ブリッジ分子である乳脂肪球−EGF−第8因子(MFG−E8)、増殖停止特異的6(Gas6)、プロテインS、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2を分泌する(米国特許出願第14/960,006号、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。MFG−E8は、そのRGDモチーフを通してαvβ3及びαvβ5インテグリンによって(Hanayama et al.,Science.2004,304:1147〜1150、Borisenko et al.,Cell Death Differ.2004,11:943〜945)、Gas6はAxl、Tyro3及びMerファミリーの受容体チロシンキナーゼによって(Scott et al.,Mer.Nature 2001,411:207〜211)、認識することができる。トロンボスポンジンは、アポトーシス細胞上のTSP結合部位に結合し、次いで、αvβ3及びαvβ5インテグリン並びにスカベンジャ受容体CD36を含む、食細胞上の受容体複合体に結合すると考えられてきた(Erwig et al.,Cell Death Differ.2008,15:243〜250)。しかしながら、RPE食作用におけるトロンボスポンジンの役割は明確でない。網膜色素上皮(RPE)によるROS食作用におけるCD36及びαvβ5インテグリンの特異的役割が報告されている(Finnemann SC,J.Exp.Med.2001,194:1289〜1298)。同文献において、RPE細胞における食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36並びにhUTC調節性食作用が調査された。
材料及び方法
ラットROSの単離:眼を、光発症(light onset)から数時間後に6〜8週齢のLong Evansラット(2〜4匹の動物/群)から得た。網膜を単離し、ポリトロン(8mm発生器)又はガラス製ダウンス型ホモジナイザでホモジナイズし、27%〜50%の直線ショ糖勾配の上部に層状に重ね、SW41ロータ(240,000xg)において38,000rpmで、4℃で1時間遠心分離した。上部の2つのROSバンドを採取し、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Lift Technologies Corp.,Carlsbad,CA)で希釈し、HB−4ロータ(8000xg)において7000rpmで10分間、遠心分離して、ROSをペレット化した。
UTC馴化培地(CM)の調製:1日目に、hUTCを、T75細胞培養フラスコ中、hUTC増殖培地(DMEM低グルコース+15% FBS+4mM L−グルタミン)において10,000生存細胞/cmで播種した。細胞を37℃の5% COインキュベータ中で24時間インキュベートした。2日目に、培地を吸引除去し、21mLのDMEM/F12完全培地(DMEM:F12培地+10% FBS+50U/ml Pen/50μg/ml Strep)で補充した。細胞を更に48時間培養した。対照培地(DMEM:F12完全培地)単独もまた48時間培養した。4日目に、細胞培養上清及び対照培地を回収し、250×gで、室温で5分間、遠心分離し、次いでクライオチューブに1mL/チューブで分注した。試料を−70℃で凍結した。(ELN:CNTO 2476−00428,CNTO 2476−00487)。DMEM低グルコース、L−グルタミン及びPen/Strepは、Lift Technologies Corp.(Carlsbad,CA)によるものであった。FBSは、ThermoFisher,Inc.(Logan,UT)によるものであった。
抗体及びペプチド:インテグリンαvβ5ブロッキング抗体マウスモノクローナルP1F6(カタログ番号ab24694、ロット番号GR207301−4)及びCD36ブロッキング抗体マウスモノクローナルFA6−152(カタログ番号ab17044、ロット番号GR131080−4)は、Abcam,Inc.(Cambridge,MA)から得た。抗マウスIgG1アイソタイプ対照抗体(カタログ番号MA1−10405、ロット番号QD200641)は、Life Technologies Corp(Carlsbad,CA)からのものであった。インテグリンブロッキングペプチドGRGDSP(カタログ番号SCP0157、ロット番号E1115)及びその陰性対照ペプチドGRADSP(カタログ番号SCP0156、ロット番号E1077)は、Sigma−Aldrich,Inc.(Saint Louis,MO)から購入した。両方のペプチドとも超純粋滅菌水に可溶性である。
統計分析:統計的有意性を、対応のない両側スチューデントt検定によって評価した。P値<0.05を統計的に有意であるとみなした。ばらつきの記述は全て、別途記載のない限り平均値の標準誤差(SEM)に対するものである。
RCS RPE細胞のhUTC調節性食作用における食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36の効果:RCS RPEを、CO細胞培養インキュベータ中37℃で1時間、種々の用量の抗αvβ5インテグリンモノクローナル抗体P1F6(25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL)、又はインテグリンブロッキングペプチドGRGDSP(1mg/mL、2mg/mL)、又は抗CD36モノクローナル抗体FA6−152(2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL)と共にそれぞれプレインキュベートした。次いでこれらの細胞に、hUTC CM前処理済みROSを供給し、培地を変更することなく食作用アッセイに供した。陰性対照は、CO細胞培養インキュベータ中37℃で1時間、対応する用量の抗マウスIgG1アイソタイプ対照抗体(25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL)と共に(抗インテグリン抗体P1F6に対して)、又はインテグリンブロッキングペプチド陰性対照ペプチドGRADSP(1mg/mL、2mg/mL)と共に、若しくは抗マウスIgG1アイソタイプ対照抗体(2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL)(抗CD36抗体FA6−152に対して)と共にプレインキュベートし、続いてhUTC CM前処理済みROSを添加し、培地を変更することなく食作用アッセイに供した、RCS RPEを含む。hUTC CM処理済みROSを供給した未処理のRCS RPEを、陽性対照として使用した。
結果
試験した全ての用量での抗インテグリン抗体が、hUTC CM処理済みROSの食作用を完全にブロックした(図1)。アイソタイプ対照抗体は、25μg/mLで使用したとき、ROS食作用に何の効果も有しなかった。しかしながら、より高い用量では(50μg/mL、100μg/mL)、アイソタイプ対照抗体は、ROS食作用にいくらかの阻害効果を示した。
この効果は、RCS RPEをインテグリンブロッキングペプチドGRGDSPと共にプレインキュベーションし、その後、食作用アッセイのためにhUTC CM処理済みROSを添加することによって更に確認された(図2)。GRGDSPは、hUTC CM処理済みROSの食作用を完全にブロックした。陰性対照ペプチドGRADSPは、2mg/mLで使用したとき、ROS食作用に阻害効果を示した(図2)。抗CD36抗体がhUTC CM処理済みROSの食作用を用量依存的にブロックすることは、CD36がRCS RPEにおけるhUTC CM媒介性の食作用調節において役割を果たすことを示す(図3)。抗CD36抗体に対するアイソタイプ対照抗体は、10μg/mLで使用したとき、ROS食作用に何の効果も有しなかった。しかしながら、より低い用量の(2.5μg/mL、5μg/mL)アイソタイプ対照抗体は、ROS食作用にいくらかの刺激効果を示した(図3)。
hUTCは、ROSに結合する、ブリッジ分子MFG−E8、TSP−1、及びTSP−2を分泌する(米国特許出願第14/960、006号)。同文献において、食細胞受容体インテグリンαvβ5及びCD36のブロッキングは、RCS RPEによるhUTC CM処理済みROSの食作用を阻害した。
(実施例2)
分娩後組織からの細胞の誘導
この実施例では、胎盤組織及び臍帯組織由来の分娩後由来細胞の調製について説明する。分娩後臍帯及び胎盤を、満期妊娠又は早期妊娠のいずれかの出産時に得た。細胞は、臍及び胎盤組織の、5つの別個のドナーから採取した。細胞単離の様々な方法を、これらが、1)幹細胞に共通の特性である、異なる表現型を有する細胞へと分化する潜在性、又は2)他の細胞及び組織に有用な栄養因子を提供する潜在性、を有する細胞をもたらす能力に関して試験した。
方法及び材料
臍細胞の単離:臍帯は、National Disease Research Interchange(NDR1,Philadelphia,Pa.)から得た。それらの組織は、正常分娩後に得られたものであった。細胞単離プロトコルを、層流フード内で、無菌的に実行した。血液及び残渣を除去するために、この帯をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Invitrogen(Carlsbad,Calif.))中、抗真菌剤及び抗生物質(100単位/ミリリットルペニシリン、100マイクログラム/ミリリットルストレプトマイシン、0.25マイクログラム/ミリリットルアンホテリシンB)の存在下で洗浄した。次いで、それらの組織を、150cmの組織培養プレート内で、50ミリリットルの培地(DMEM−低グルコース又はDMEM−高グルコース、Invitrogen)の存在下、組織が微細なパルプ状へと細断されるまで、機械的に解離させた。細断した組織を、50mLの円錐管に移した(チューブ1本当り組織約5グラム)。
次いで、それぞれ上述のとおりに抗真菌剤及び抗生物質を含有させた、DMEM−低グルコース培地若しくはDMEM−高グルコース培地のいずれか中で、この組織を消化させた。いくつかの実験では、コラゲナーゼ及びディスパーゼの酵素混合物を使用した(「C:D」)、DMEM−低グルコース培地中、コラゲナーゼ(Sigma(St Louis,Mo.))500単位/ミリリットル、及びディスパーゼ(Invitrogen)50単位/ミリリットル)。他の実験では、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼの混合物(「C:D:H」)を使用した(DMEM−低グルコース培地中、コラゲナーゼ500単位/ミリリットル、ディスパーゼ50単位/ミリリットル、及びヒアルロニダーゼ(Sigma)5単位/ミリリットル)。これらの組織、培地、及び消化酵素を収容する円錐管を、225rpmの軌道振とう器(Environ(Brooklyn,N.Y.))内で2時間、37℃でインキュベートした。
消化の後、組織を150×gで5分間、遠心分離し、上清を吸引した。ペレットを、20ミリリットルの増殖培地(DMEM−低グルコース(Invitrogen)、15(v/v)パーセントのウシ胎児血清(FBS、規定のウシ胎児血清、ロット番号AND18475、Hyclone,Logan,Utah)、0.001(v/v)%2−メルカプトエタノール(Sigma)、100ミリリットル当たり1ミリリットルの抗生物質/抗真菌剤中に上述のように再懸濁させた。この細胞懸濁液を、孔径70μmのナイロン細胞濾過器(BD Biosciences)に通して濾過した。増殖培地を含む、追加の5mLの洗液を、濾過器に通過させた。次いで、その細胞懸濁液を、孔径40μmのナイロン細胞濾過器(BD Biosciences)に通過させ、続いて、増殖培地の洗液を追加で5mL通過させた。
この濾液を、増殖培地(総体積50mL)に再懸濁させ、150×gで5分間、遠心分離した。上清を吸引して、50mLの新鮮増殖培地中に、細胞を再懸濁させた。このプロセスを、更に2回繰り返した。
最終的な遠心分離の後、上清を吸引して、5mLの新鮮な増殖培地に細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー染色を使用して、生存細胞の数を判定した。次いで、標準条件下で、細胞を培養した。
臍帯から単離した細胞を、上述の抗生物質/抗真菌剤を含む増殖培地中で、ゼラチンコーティングされたT−75cmフラスコ(Corning Inc.(Corning,N.Y.))上に、5,000細胞/cmで播種した。2日後に(各種実験で、細胞は、2〜4日間インキュベートした)、フラスコから、培養に使用された培地を吸引した。PBSで細胞を3回洗浄して、残渣及び血液由来細胞を除去した。次いで、細胞に、増殖培地を補充して、コンフルエンスまで増殖させ(継代数0から約10日)、継代数1とした。その後の継代(継代数1から継代数2へ、など)の際には、細胞は、4、5日でサブコンフルエンス(75〜85%コンフルエンス)に到達した。これらの後続の継代に関しては、細胞を5000細胞/cmで播種した。細胞は、5%の二酸化炭素及び大気酸素に設定した加湿インキュベータ内で、37℃で増殖させた。
胎盤細胞の単離:胎盤組織は、NDRI(Philadelphia,Pa)から得た。それらの組織は、妊婦由来のものであり、通常の外科的分娩時に得たものであった。胎盤細胞を、臍細胞の単離に関して説明されたように、単離した。
以下の実施例は、胎盤組織からの、母体由来細胞及び新生児由来細胞の別個の集団の単離に適用される。
細胞単離プロトコルを、層流フード内で、無菌的に実行した。胎盤組織を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Invitrogen(Carlsbad,Calif.))中、(上述の)抗真菌剤及び抗生物質の存在下で洗浄して、血液及び残渣を除去した。次いで、その胎盤組織を、3つの切片:上層(新生児側又は新生児態様)、中間層(新生児と母体との混合細胞単離)、及び下層(母体側又は母体態様)へと切り分けた。
分離した切片を、個別に、抗生物質/抗真菌剤を有するPBS中で数回洗浄して、血液及び残渣を更に除去した。次いで、各切片を、150cmの組織培養プレート内で、50ミリリットルのDMEM−低グルコースの存在下、微細なパルプへと機械的に解離させた。このパルプを、50ミリリットル円錐管に移した。各管は、約5グラムの組織を収容するものとした。抗真菌剤及び抗生物質(100U/ミリリットルのペニシリン、100マイクログラム/ミリリットルのストレプトマイシン、0.25マイクログラム/ミリリットルのアンホテリシンB)及び消化酵素を含有する、DMEM−低グルコース培地若しくはDMEM−高グルコース培地のいずれか中で、この組織を消化させた。いくつかの実験では、DMEM−低グルコース培地中、コラゲナーゼ(Sigma(St Louis,Mo.))を500単位/ミリリットルで、及びディスパーゼ(Invitrogen)を50単位/ミリリットルで含有する、コラゲナーゼ及びディスパーゼの酵素混合物(「C:D」)を使用した。他の実験では、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼの混合物(C:D:H)を使用した(DMEM−低グルコース培地中、コラゲナーゼ500単位/ミリリットル、ディスパーゼ50単位/ミリリットル、及びヒアルロニダーゼ(Sigma)5単位/ミリリットル)。これらの組織、培地、及び消化酵素を収容する円錐管を、225rpmの軌道振とう器(Environ(Brooklyn,N.Y.))内で、37℃で2時間インキュベートした。
消化の後、150×gで5分間、組織を遠心分離して、得られた上清を吸引除去した。ペレットを、ペニシリン/ストレプトマイシン/アンホテリシンBを有する20ミリリットルの増殖培地中に、再懸濁させた。この細胞懸濁液を、70マイクロメートルのナイロン細胞濾過器(BD Biosciences)に通して濾過し、追加的な5ミリリットルの増殖培地を含む洗液を、続けて通過させた。細胞懸濁液の全体を、40マイクロメートルのナイロン細胞濾過器(BD Biosciences)に通過させ、追加的な5ミリリットルの増殖培地を、洗液として、続けて通過させた。
この濾液を、増殖培地(総体積50mL)に再懸濁させ、150×gで5分間、遠心分離した。上清を吸引して、50ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させた。このプロセスを、更に2回繰り返した。最終的な遠心分離の後に、上清を吸引して、5ミリリットルの新鮮増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー排除試験を使用して、細胞計数を判定した。次いで、標準条件で、細胞を培養した。
LIBERASE細胞単離:LIBERASE(Boehringer Mannheim Corp.(Indianapolis,Ind.))(2.5ミリグラム/ミリリットル、Blendzyme3;Roche Applied Sciences(Indianapolis,Ind.))及びヒアルロニダーゼ(5単位/ミリリットル、Sigma)を含む、DMEM−低グルコース培地中で、臍組織から細胞を単離した。組織の消化及び細胞の単離は、上記の他のプロテアーゼ消化に関する説明と同様であったが、C:D又はC:D:H酵素混合物の代わりに、LIBERASE/ヒアルロニダーゼ混合物を使用した。LIBERASEを使用する組織の消化は、分娩後組織から、容易に増殖する細胞集団の単離をもたらした。
他の酵素の組み合わせを使用する細胞単離:様々な酵素の組み合わせを使用して、臍帯から細胞を単離するための手順を比較した。消化に関して比較した酵素には、i)コラゲナーゼ、ii)ディスパーゼ、iii)ヒアルロニダーゼ、iv)コラゲナーゼ:ディスパーゼ混合物(C:D);v)コラゲナーゼ:ヒアルロニダーゼ混合物(C:H);vi)ディスパーゼ:ヒアルロニダーゼ混合物(D:H);及びvii)コラゲナーゼ:ディスパーゼ:ヒアルロニダーゼ混合物(C:D:H)。これらの様々な酵素消化条件を用いて、細胞単離の差異を観察した(表2−1)。
臍帯内残留血液からの細胞の単離:様々なアプローチによって臍帯から細胞のプールを単離するための他の試みを実施した。一例では、臍帯を薄切りにして、増殖培地で洗浄し、血餅及びゼラチン状物質を取り除いた。血液、ゼラチン状物質、及び増殖培地の混合物を収集して、150×gで遠心分離した。ペレットを再懸濁させ、ゼラチンコーティングされたフラスコ上に、増殖培地中で播種した。これらの実験から、容易に増殖する細胞集団が単離された。
臍帯血からの細胞の単離:細胞は、NDR1から入手した臍帯血試料からも単離された。ここで用いた単離プロトコルは、Hoらによる国際公開第2003/025149号(Ho,T.W.らの「Cell Populations Which Co−Express CD49C and CD90,」、出願番号PCT/US02/29971号)のプロトコルとした。臍帯血(NDRl(Philadelphia Pa.))の試料(それぞれ、50ミリリットル及び10.5ミリリットル)を、溶解緩衝液(濾過除菌された155mMの塩化アンモニウム、10ミリモルの重炭酸カリウム、pH 7.2に緩衝させた0.1ミリモルのEDTA(全成分ともSigma(St.Louis,Mo)より入手))と混合した。1:20の、臍帯血と溶解緩衝液との比率で、細胞を溶解させた。得られた細胞懸濁液を、5秒間ボルテックス撹拌して、周囲温度で2分間インキュベートした。この溶解液を遠心分離した(200×gで10分間)。細胞ペレットを、10パーセントのウシ胎児血清(Hyclone(Logan Utah))、4ミリモルのグルタミン(Mediatech(Herndon,Va))、100単位/100ミリリットルのペニシリン、及び100マイクログラム/100ミリリットルのストレプトマイシン(Gibco(Carlsbad,Calif.))を含有する、完全最少必須培地(Gibco(Carlsbad,Calif.))中に再懸濁させた。再懸濁した細胞を、遠心分離して(200×gで10分間)、上清を吸引し、完全培地中で細胞ペレットを洗浄した。T75フラスコ(Corning(N.Y.))、T75ラミニンコーティングフラスコ、又はT175フィブロネクチンコーティングフラスコ(双方ともBecton Dickinson(Bedford,Mass))内に、細胞を直接播種した。
様々な酵素の組み合わせ及び増殖条件を用いた細胞の単離:細胞集団を様々な条件下で単離し、単離直後に様々な条件下で増殖することが可能かどうかを判定するために、上記の手順に従って、0.001パーセント(v/v)の2−メルカプトエタノール(Sigma(St.Louis,Mo))を含む又は含まない増殖培地中で、C:D:Hの酵素の組み合わせを使用して、細胞を消化させた。そのように単離した胎盤由来細胞を、様々な条件下で播種した。全ての細胞は、ペニシリン/ストレプトマイシンの存在下で増殖させた(表6−2)。
様々な酵素の組み合わせ及び増殖条件を用いた細胞の単離:全ての条件で、細胞は、継代数0〜1の間に、良好に付着し増殖した(表2−2)。条件5〜8及び条件13〜16の細胞は、播種の後に継代数4まで良好に増殖することが実証され、その時点で、それらの細胞を凍結保存し、バンクした。
結果
様々な酵素の組み合わせを使用する細胞単離:C:D:Hの組み合わせが、単離の後の、最良の細胞収量をもたらし、他の条件よりも、多くの世代にわたって培養中に増殖する細胞を生じさせた(表2−1)。コラゲナーゼ又はヒアルロニダーゼを単独で使用しても、増殖可能な細胞集団は得られなかった。この結果が、試験したコラーゲンに特異的なものであるか否かを判定する試みは、行わなかった。
略語:+=良好、++=非常に良好、+++=優良、X=成功せず
様々な酵素の組み合わせ及び増殖条件を用いた細胞の単離:細胞は、酵素消化及び増殖に関して試験した全ての条件下で、継代数0〜1の間に、良好に付着し増殖した(表2−2)。実験条件5〜8及び実験条件13〜16の細胞は、播種の後、継代数4まで良好に増殖し、その時点で、それらの細胞を凍結保存した。更なる検討のために、全ての細胞を凍結保存した。
臍帯内の残留血液からの細胞の単離:有核細胞が急速に付着し増殖した。これらの細胞は、フローサイトメトリによって分析したところ、酵素消化によって得られた細胞と同様であった。
臍帯血からの細胞の単離:これらの調製物は、赤血球及び血小板を含有していた。最初の3週間は、有核細胞が付着及び分裂することはなかった。播種の3週間後に、培地を交換したが、細胞の付着及び増殖は観察されなかった。
要約:細胞集団は、酵素の組み合わせ、即ちコラゲナーゼ(マトリックスメタロプロテアーゼ)、ディスパーゼ(中性プロテアーゼ)、及びヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸を分解する粘液溶解酵素)を用いて、臍帯及び胎盤組織から、効率的に誘導することができる。BlendzymeであるLIBERASEもまた、使用することができる。具体的には、コラゲナーゼ(4Wunsch単位/g)及びサーモリシン(1714カゼイン単位/g)であるBlendzyme 3もまた、細胞を単離するために、ヒアルロニダーゼと共に使用した。これらの細胞は、ゼラチンコーティングされたプラスチック上の増殖培地中で培養した場合、多数の継代にわたって、容易に増殖した。
細胞はまた、臍帯内の残留血液からも単離されたが、臍帯血からは単離されなかった。使用した条件下で付着及び増殖する、組織から洗い流された血餅中の細胞の存在は、解剖プロセス中に細胞が遊離することによるものである可能性がある。
(実施例3)
分娩後由来細胞の核型分析
細胞療法に使用される細胞株は、好ましくは、同種であり、いずれの汚染細胞型も含まない。細胞療法に使用される細胞は、正常な染色体数(46)及び構造を有するべきである。均質であり、かつ、非分娩後組織起源の細胞を含まない、胎盤由来細胞株及び臍由来細胞株を識別するために、細胞試料の核型を分析した。
方法及び材料
新生男児の分娩後組織由来のPPDCを、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する増殖培地中で培養した。新生児由来細胞と母体由来細胞(X,X)との区別が可能となるように、新生男児由来の分娩後組織(X,Y)が選択された。細胞を、T25フラスコ(Corning(Corning Inc.,N.Y.))内の増殖培地中に、5,000細胞/平方センチメートルで播種し、80%コンフルエンスまで増殖させた。細胞を収容するT25フラスコは、首部分まで増殖培地で充填した。臨床細胞遺伝学研究所に、急送便で試料を配送した(研究所間の推定輸送時間は、1時間である)。細胞は、染色体が最も良好に可視化される、分裂中期の間に分析された。計数した分裂中期の20個の細胞のうち、5個の細胞を、正常な同種核型数(2)に関して分析した。細胞試料は、2つの核型が観察された場合に同種であると特徴付けられた。細胞試料は、3つ以上の核型が観察された場合に異種であると特徴付けられた。異種性の核型数(4)が識別されると、更なる分裂中期細胞を計数して、分析した。
結果
染色体分析のために送られた全ての細胞試料は、正常な様相を呈していると解釈された。分析された16の細胞株のうちの3つは、新生児起源及び母体起源の双方に由来する細胞の存在を示す、異質の表現型(XX及びXY)を呈した(表3−1)。胎盤−Nの組織由来の細胞は、胎盤の新生児態様から単離された。継代数0では、この細胞株は、均質なXYを表した。しかしながら、継代数9では、この細胞株は、従前には検出されなかった母体起源の細胞の存在を示す、不均質(XX/XY)なものであった。
凡例:N−新生児側、V−絨毛領域、M−母体側、C−クローン
要約:染色体分析は、臨床細胞遺伝学研究所によって解釈されるように、核型が正常を表す胎盤由来細胞及び臍由来細胞を識別した。核型分析はまた、同種核型により判断される、母体細胞を含まない細胞株も識別した。
(実施例4)
ヒト分娩後に誘導される細胞表面マーカーのフローサイトメトリによる評価
フローサイトメトリによる、細胞表面タンパク質又は「マーカー」の特性評価を使用して、細胞株の同一性を判定することができる。この発現の一貫性は、複数のドナーから、並びに種々の処理及び培養条件に曝された細胞において、判定することができる。胎盤及び臍から単離された分娩後由来細胞(PPDC)株を、(フローサイトメトリによって)特徴付けして、これらの細胞株の識別に関するプロファイルを提供した。
方法及び材料
培地及び培養容器:ペニシリン/ストレプトマイシンを含む増殖培地(Gibco Carlsbad,Calif.)中で、細胞を培養した。血漿処理されたT75、T150、及びT225組織培養フラスコ(Corning Inc.(Corning,N.Y.))内で、細胞をコンフルエントまで培養した。2%(w/v)のゼラチン(Sigma(St.Louis,Mo))を、室温で20分間インキュベートすることによって、これらのフラスコの増殖表面をゼラチンでコーティングした。
抗体染色及びフローサイトメトリ分析:フラスコ内の接着細胞を、PBS中で洗浄し、トリプシン/EDTAを使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBS中に、1×10/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。製造元の指示書に従って、100μLの細胞懸濁液に、目的の細胞表面マーカーに対する抗体(下記参照)を添加し、その混合物を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、非結合抗体を除去した。500μLのPBS中に、細胞を再懸濁させ、フローサイトメトリによって分析した。フローサイトメトリ分析は、FACScalibur(商標)計器(Becton Dickinson(San Jose,Calif.))を使用して実施した。表4−1は、使用された細胞表面マーカーに対する抗体を列挙する。
胎盤と臍との比較:胎盤由来細胞を、継代数8で、臍由来細胞と比較した。
継代間の比較:胎盤由来細胞及び臍由来細胞を、継代数8、15、及び20で分析した。
ドナー間の比較:ドナー間の差異を比較するために、様々なドナーからの胎盤由来細胞を互いに比較し、また、様々なドナーからの臍由来細胞を互いに比較した。
表面コーティングの比較:ゼラチンコーティングフラスコ上で培養した胎盤由来細胞を、非コーティングフラスコ上で培養した胎盤由来細胞と比較した。ゼラチンコーティングフラスコ上で培養した臍由来細胞を、非コーティングフラスコ上で培養した臍由来細胞と比較した。
消化酵素の比較:細胞の単離及び調製に関して使用される、4つの処理を比較した。1)コラゲナーゼ、2)コラゲナーゼ/ディスパーゼ、3)コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ、及び4)コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ/ディスパーゼを用いる処理によって胎盤から単離された細胞を比較した。
胎盤の層の比較:胎盤組織の母体態様由来の細胞を、胎盤組織の絨毛領域由来の細胞、及び胎盤の新生胎児態様由来の細胞と比較した。
結果
胎盤と臍との比較:フローサイトメトリによって分析された、胎盤由来細胞及び臍由来細胞は、IgG対照と比較して高い蛍光値によって示される、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの陽性発現を示した。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの検出可能な発現に関しては陰性であり、このことは、IgG対照と同等の蛍光値によって示された。陽性曲線の蛍光値の変動を考慮した。陽性曲線の平均(即ち、CD13)及び範囲(即ち、CD90)は、ある程度の変動を示したが、これらの曲線は、正常であると考えられ、均質な集団であることが確認された。双方の曲線が、それぞれIgG対照よりも高い値を示した。
継代間の比較−胎盤由来細胞:フローサイトメトリによって分析された、継代数8、15、及び20での胎盤由来細胞は、IgG対照と比較してより高い蛍光値に反映されるように、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの発現に関して、全て陽性であった。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有した。
継代間の比較−臍由来細胞:フローサイトメトリによって分析された、継代数8、15、及び20での臍由来細胞は、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現し、これは、IgG対照と比較してより高い蛍光によって示された。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQに関しては陰性であり、このことは、IgG対照と一致する蛍光値によって示された。
ドナー間の比較−胎盤由来細胞:フローサイトメトリによって分析された、別個のドナーから単離された胎盤由来細胞は、それぞれCD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現し、IgG対照と比較してより高い蛍光値を有した。これらの細胞は、IgG対照と一致する蛍光値によって示されるように、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であった。
ドナー間の比較−臍由来細胞:フローサイトメトリによって分析された、別個のドナーから単離された臍由来細胞は、それぞれIgG対照と比較してより高い蛍光値に反映される、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの陽性発現を示した。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有していた。
胎盤由来細胞に対する、ゼラチンによる表面コーティングの効果:フローサイトメトリによって分析された、ゼラチンコーティングフラスコ又は非コーティングフラスコ上のいずれかで増殖させた胎盤由来細胞は、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現し、これは、IgG対照と比較して高い蛍光値に反映された。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であり、このことは、IgG対照と一致する蛍光値によって示された。
臍由来細胞に対する、ゼラチンによる表面コーティングの効果:フローサイトメトリによって分析された、ゼラチンフラスコ及び非コーティングフラスコ上で増殖させた臍由来細胞は、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの発現に関して陽性であり、IgG対照と比較してより高い蛍光値を有した。これらの細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であり、IgG対照と一致する蛍光値を有していた。
細胞表面マーカープロファイルに対する、細胞の調製に使用される酵素消化手順の効果:フローサイトメトリによって分析された、様々な消化酵素を使用して単離した胎盤由来細胞は、IgG対照と比較してより高い蛍光値によって示されるように、全て、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cを発現した。これらの細胞は、IgG対照と一致する蛍光値によって示されるように、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であった。
胎盤の層の比較:フローサイトメトリによって分析された、それぞれ、胎盤の母体層、絨毛層、及び新生児層から単離した細胞は、IgG対照と比較してより高い蛍光値によって示されるように、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cの陽性発現を示した。これらの細胞は、IgG対照と一致する蛍光値によって示されるように、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQの発現に関しては陰性であった。
要約:フローサイトメトリによる、胎盤由来細胞及び臍由来細胞の分析により、これらの細胞株の同一性が確立された。胎盤由来細胞及び臍由来細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、PDGFr−α、及びHLA−A、B、Cに関しては陽性であり、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、及びHLA−DR、DP、DQに関しては陰性である。この同一性は、ドナー、継代数、培養容器の表面コーティング、消化酵素、及び胎盤の層を含む変数が変動しても、一貫していた。個々の蛍光値ヒストグラム曲線の平均及び範囲には、ある程度の変動が観察されたが、全ての試験条件下での、全ての陽性曲線は正常であり、発現した蛍光値は、IgG対照よりも大きく、それゆえ、これらの細胞が、マーカーの陽性発現を有する均質な集団を含むことが確認された。
(実施例5)
分娩後組織表現型の免疫組織化学的な特性評価
ヒト分娩後組織、即ち臍帯及び胎盤内に見出される細胞の表現型を、免疫組織化学によって分析した。
方法及び材料
組織調製:ヒト臍帯組織及びヒト胎盤組織を採取して、4%(w/v)パラホルムアルデヒド中に、4℃で一晩、浸漬固定した。次のエピトープに対する抗体を使用して、免疫細胞化学分析を行った:ビメンチン(1:500、Sigma、St.Louis,Mo.)、デスミン(1:150、ウサギに対して産生、Sigma、又は1:300、マウスに対して産生、Chemic on、Temecula,Calif.)、α平滑筋アクチン(SMA;1.400、Sigma)、サイトケラチン18(CK18; 1:400;Sigma)、フォン・ヴィレブランド因子(vWF;1:200;Sigma)、及びCD34(ヒトCD34クラスIII;1:100;DAKOCytomation、Carpinteria,Calif)。加えて、次のマーカーを試験した:抗ヒトGROα−−PE(1:100;Becton Dickinson、Franklin Lakes,N.J)、抗ヒトGCP−2(1:100;Santa Cruz Biotech、Santa Cruz,Calif)、抗ヒト酸化LDL受容体1(ox−LDL R1;1:100;Santa Cruz Biotech)、及び抗ヒトNOGO−A(1:100;Santa Cruz Biotech)。固定された検体を外科用メスを使用してトリミングし、エタノールを含有するドライアイス浴上の、OCT包理化合物(Tissue−Tek OCT;Sakura、Torrance,CA)内に定置した。次いで、凍結ブロックを、一般的クライオスタット(Leica Microsystems)を使用して切片(厚さ10μm)とし、染色のためにスライドガラス上に載置した。
免疫組織化学分析:免疫組織化学分析は、従前の研究(例えば、Messina,et al.,2003,Exper.Neurol.184:816〜829)と同様に実施した。組織切片を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemic on(Temecula,Calif.))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、1時間曝した。目的のエピトープが細胞表面上に局在している場合には(CD34、ox−LDL R1)、エピトープの減少を防ぐため、この手順の全ての工程でTritonを省いた。更に、一次抗体がヤギ(GCP−2、ox−LDL R1、Nogo−A)に対して産生された場合には、手順全体を通して、ヤギ血清の代わりに、3%(v/v)ロバ血清を使用した。次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体を、室温で4時間にわたって、これらの切片に適用した。一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−−Texas Red(1:250;Molecular Probes、Eugene,Oreg.)、及び/又はヤギ抗ウサギIgG−−Alexa488(1:250;Molecular Probes)若しくはロバ抗ヤギIgG−−FITC(1:150;Santa Cruz Biotech)と共にブロッキング剤を含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。培養物を洗浄し、10μM DAPI(Molecular Probes)を10分間用い、細胞核を可視化した。
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,N.Y.))上で、適切な蛍光フィルタを使用して、蛍光を可視化した。陽性染色は、対照染色を上回る蛍光シグナルによって表された。例示的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,Calif.))を使用して取り込んだ。3重染色試料に関しては、1回に1つのみの発光フィルタを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,Calif.))を使用して、階層モンタージュを準備した。
結果
臍帯の特徴付け:ビメンチン、デスミン、SMA、CKI8、vWF、及びCD34マーカーは、臍帯内部に見出される細胞のサブセット内で発現した。具体的には、vWF及びCD34の発現は、臍帯内部に含まれる血管に限定されていた。CD34+細胞は、最内層(内腔側)に存在した。ビメンチンの発現は、臍帯のマトリックス及び血管の全域に見られた。SMAは、動脈及び静脈の、マトリックス及び外壁に限定されたが、血管自体には含まれなかった。CK18及びデスミンは、血管内部のみに観察され、デスミンは、中層及び外層に限定された。
胎盤の特徴付け:ビメンチン、デスミン、SMA、CKI8、vWF、及びCD34は全て、胎盤内部で観察され、かつ領域特異的であった。
GROα、GCP−2、ox−LDL RI、及びNogo−Aの組織発現:これらのマーカーのいずれも、臍帯組織又は胎盤組織内部では観察されなかった。
要約:ビメンチン、デスミン、α−平滑筋アクチン、サイトケラチン18、ヴォン・ヴィレブランド因子、及びCD34は、ヒト臍帯及びヒト胎盤内部の細胞内で発現する。
(実施例6)
オリゴヌクレオチドアレイを使用する分娩後組織由来細胞の分析
Affymetrix GENECHIPアレイを使用して、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の遺伝子発現プロファイルを、線維芽細胞、ヒト間葉系幹細胞、及びヒト骨髄由来の別の細胞株と比較した。この分析により、分娩後に誘導された細胞の特性評価が提供され、これらの細胞に関係する固有の分子マーカーが識別された。
方法及び材料
細胞の単離及び培養:ヒト臍帯及びヒト胎盤は、National Disease Research Interchange(NDRI(Philadelphia,Pa))より、患者の同意を得て、正常な満期分娩から得た。これらの組織を受け取り、実施例6で説明されるように、細胞を単離した。細胞は、増殖培地(DMEM−LGを使用)により、組織培養用ゼラチンコートプラスチックフラスコ上で培養した。この培養物を、5%のCOを使用して、37℃でインキュベートした。
ヒト皮膚線維芽細胞は、Cambrex Incorporated(Walkersville,Md.、ロット番号9F0844)及びATCC CRL−1501(CCD39SK)から購入した。双方の株を、10%(v/v)ウシ胎児血清(Hyclone)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を有する、DMEM/F12培地(Invitrogen(Carlsbad,Calif.)中で培養した。これらの細胞は、標準的な組織処理プラスチック上で増殖させた。
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)は、Cambrex Incorporated(Walkersville,Md.、ロット番号2F1655、2F1656、及び2F1657)から購入し、製造元の仕様書に従ってMSCGM培地(Cambrex)中で培養した。これらの細胞は、5%のCOを使用して、37℃で、標準的な組織培養プラスチック上で増殖させた。
ヒト腸骨稜の骨髄は、患者の同意を得て、NDRIより提供された。この骨髄を、Hoらによって概説される方法(国際公開第03/025149号)に従って処理した。この骨髄を、溶解緩衝液(155mMのNH4Cl、10mMのKHCO、及び0.1mMのEDTA、pH7.2)と、骨髄1部対溶解緩衝液20部の比率で混合した。この細胞懸濁液を、ボルテックス撹拌して、周囲温度で2分間インキュベートし、500×gで10分間、遠心分離した。上清を廃棄して、10%(v/v)ウシ胎児血清及び4mMグルタミンを添加した最少必須培地−α(Invitrogen)中に、細胞ペレットを再懸濁させた。これらの細胞を、再び遠心分離して、新鮮培地中に細胞ペレットを再懸濁させた。トリパンブルー排除(Sigma(St.Louis,Mo))を使用して、生存単核細胞を計数した。これらの単核細胞を、組織培養プラスチックフラスコ内に、5×10細胞/cmで播種した。細胞を、標準大気O又は5% Oのいずれかで、5% COを使用して、37℃でインキュベートした。培地を交換することなく、細胞を5日間培養した。5日間の培養の後、培地及び非接着細胞を除去した。付着細胞は、培養物中に維持された。
mRNAの単離及びGENECHIP分析:活発に増殖する細胞の培養物を、冷PBS中で、セルスクレーパーを使用してフラスコから取り出した。これらの細胞を、300×gで5分間、遠心分離した。上清を除去して、新鮮なPBS中に細胞を再懸濁させ、再び遠心分離した。上清を除去して、細胞ペレットを速やかに凍結して−80℃で保存した。細胞mRNAを抽出し、cDNAへと転写させ、これを次いでcRNAへと転写させ、ビオチン標識した。このビオチン標識cRNAを、HG−U133A GENECHIPオリゴヌクレオチドアレイ(Affymetrix(Santa Clara Calif.))とハイブリダイズさせた。このハイブリダイゼーション及びデータ収集は、製造元の仕様書に従って実行した。「Significance Analysis of Microarrays」(SAM)バージョン1.21コンピュータソフトウェア(Stanford University;Tusher,V.G.et al.,2001,Proc.Natl.Acad.USA 98:5116〜5121)を使用して、分析を実行した。
結果
14の異なる細胞の集団を分析した。これらの細胞を、継代情報、培養基質、及び培養培地と共に、表6−1に列挙する。
データは、これらの細胞で示差的に発現した290の遺伝子を分析する、主成分分析によって評価した。この分析により、集団間の類似性に関する、相対的な比較が可能となる。
表6−2は、細胞対の比較のために計算された、ユークリッド距離を示す。これらのユークリッド距離は、細胞型間で示差的に発現した290の遺伝子に基づく、細胞の比較に基づいたものである。ユークリッド距離は、290の遺伝子の発現間の類似性に反比例する(即ち、距離が大きくなるほど、存在する類似性が少なくなる)。
表6−3、6−4、及び6−5は、胎盤由来細胞内で増大した遺伝子の発現(表6−3)、臍由来細胞内で増大した遺伝子の発現(表10−4)、並びに臍由来細胞及び胎盤由来細胞内で低減した遺伝子の発現(表6−5)を示す。「プローブセットID」と表記される縦列は、チップ上の特定の部位上に配置される、いくつかのオリゴヌクレオチドプローブのセットに関する製造元の識別コードを指し、これらのプローブのセットは、NCBI(GenBank)データベース内の指定の受託番号(縦列「NCBI受託番号」)で見出され得る配列を含む、命名された遺伝子(縦列「遺伝子名」)とハイブリダイズする。
表6−6、表6−7、及び表6−8は、ヒト線維芽細胞(表6−6)、ICBM細胞(表6−7)、及びMSC(表6−8)内で増大した、遺伝子の発現を示す。
要約:本検査は、臍帯及び胎盤由来の分娩後細胞の分子特徴付けを提供するために実施された。この分析は、3つの異なる臍帯及び3つの異なる胎盤に由来する細胞を含んだ。この検査にはまた、皮膚線維芽細胞の2つの異なる株、間葉系幹細胞の3つの株、及び腸骨稜の骨髄細胞の3つの株も含めた。これらの細胞が発現したmRNAを、22,000の遺伝子プローブを含むオリゴヌクレオチドアレイを使用して分析した。結果、これら5つの異なる細胞型において、290の遺伝子が示差的に発現することが示された。これらの遺伝子には、胎盤由来細胞内で特異的に増加した10の遺伝子、及び臍帯由来細胞内で特異的に増加した7の遺伝子が含まれる。他の細胞型と比較して、胎盤及び臍帯内では、54の遺伝子が、特異的に低い発現レベルを有することが判明した。選択された遺伝子の発現が、PCRによって確認されている(以下の実施例を参照)。これらの結果は、これらの分娩後由来細胞が、例えば、骨髄由来細胞及び線維芽細胞と比較して、異なる遺伝子発現プロファイルを有することを実証している。
(実施例7)
分娩後由来細胞中の細胞マーカー
前述の実施例では、ヒト胎盤由来細胞とヒト臍由来細胞との類似性及び相違を、それらの遺伝子発現プロファイルを、他の供給源由来の細胞の遺伝子発現プロファイルと比較することによって(オリゴヌクレオチドアレイを使用して)評価した。6つの「シグネチャ」遺伝子である、酸化LDL受容体1、インターロイキン−8、レンニン、レチクロン、ケモカイン受容体リガンド3(CXCリガンド3)、及び顆粒球走化性タンパク質2(GCP−2)が識別された。これらの「シグネチャ」遺伝子は、分娩後由来細胞において比較的高レベルに発現していた。
この実施例で説明される手順は、マイクロアレイデータを検証して、遺伝子とタンパク質発現との間の一致/不一致を見出すと共に、胎盤由来細胞及び臍由来細胞に関する一意的識別子を検出するための、信頼性の高い一連のアッセイを確立するために実施された。
方法及び材料
細胞:ゼラチンコーティングされたT75フラスコ内で、ペニシリン/ストレプトマイシンを含む増殖培地中で増殖された胎盤由来細胞(核型分析によって主に新生児性であると識別された1つの単離株を含む、3つの単離株)、臍由来細胞(4つの単離株)、及び正常なヒト皮膚線維芽細胞(NHDF、新生児及び成人)。間葉系幹細胞(MSC)を、間葉系幹細胞増殖培地Bulletキット(MSCGM;Cambrex、Walkerville,Md)中で増殖させた。
IL−8プロトコルに関しては、細胞を液体窒素から解凍して、ゼラチンコーティングフラスコ内に、5,000細胞/cmでプレートして、増殖培地中で48時間増殖させ、続いて、更に8時間、10ミリリットルの血清飢餓培地[DMEM−低グルコース(Gibco(Carlsbad,Calif.))、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco(Carlsbad,Calif.))、及び0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma(St.Louis,Mo))]中で増殖させた。この処理の後、RNAを抽出して、150×gで5分間、上清を遠心分離することにより、細胞残渣を除去した。続いて、ELISA分析のために、上清を−80℃で凍結した。
ELISAアッセイのための細胞培養:胎盤及び臍由来の分娩後細胞、並びにヒト新生児包皮由来のヒト線維芽細胞を、ゼラチンコーティングされたT75フラスコ内の増殖培地中で培養した。継代数11で、液体窒素中で細胞を凍結させた。細胞を解凍して、15mL遠心管に移した。150×gで5分間の遠心分離後、上清を廃棄した。4mLの培養培地中に、細胞を再懸濁させ、計数した。15mLの増殖培地を収容する75cmフラスコ内で、375,000細胞/フラスコで、細胞を24時間生育させた。この培地を、8時間かけて血清飢餓培地に交換した。インキュベーション終了時に、血清飢餓培地を回収し、14,000×gで5分間、遠心分離した(続いて−20℃で保存した)。
各フラスコ内の細胞の数を概算するために、2ミリリットルのトリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,Calif))を、各フラスコに添加した。フラスコから細胞を剥離した後、8mLの増殖培地によりトリプシン活性を中和した。細胞を15mL遠心管に移し、150×gで5分間、遠心分離した。上清を除去し、各管に1mLの増殖培地を添加して、細胞を再懸濁した。血球計数器を使用して、細胞数を概算した。
ELISAアッセイ:細胞によって血清飢餓培地中へ分泌されたIL−8の量を、ELISAアッセイ(R&D Systems(Minneapolis,Minn))を使用して分析した。全てのアッセイは、製造元によって提供される使用説明書に従って試験した。
全RNA単離:コンフルエントな分娩後由来細胞及び線維芽細胞から、あるいはIL−8の発現のために上記のように処理した細胞から、RNAを抽出した。製造元の説明書(RNeasy(登録商標)Mini Kit;Qiagen(Valencia,Calif))に従って、β−メルカプトエタノール(Sigma(St.Louis,Mo))を含有する350μLの緩衝液RLTを使用して、細胞を溶解した。RNAを製造元の説明書に従って抽出し(RNeasy(登録商標)Mini Kit;Qiagen、Valencia,Calif)、DNase処理に供した(2.7U/試料)(Sigma(St.Louis,Mo.))。50マイクロリットルのDEPC処理水を使用して、RNAを溶出させ、−80℃で保存した。
逆転写:ヒト胎盤及びヒト臍からもRNAを抽出した。2−メルカプトエタノールを添加した700μLの緩衝RLT中に、組織(30mg)を懸濁させた。試料を機械的に均質化し、製造元の仕様書に従って、RNAの抽出を進めた。50マイクロリットルのDEPC処理水を使用して、RNAを抽出し、−80℃で保存した。ランダムヘキサマーと、TaqMan(登録商標)逆転写試薬(Applied Biosystems(Foster City,Calif.))とにより、25℃で10分間、37℃で60分間、及び95℃で10分間、RNAを逆転写した。試料を、−20℃で保存した。
cDNAマイクロアレイによって分娩後細胞内で特異的に調節されていると識別された遺伝子(酸化LDL受容体、インターロイキン−8、レンニン、及びレチクロンを含むシグネチャ遺伝子)を、リアルタイムPCR及び従来のPCRを使用して、更に検討した。
リアルタイムPCR:Assays−on−Demand(登録商標)遺伝子発現製品を使用して、cDNA試料に対してPCRを実行した。酸化LDL受容体(Hs00234028)、レンニン(Hs00166915)、レチクロン(Hs00382515)、CXCリガンド3(Hs00171061)、GCP−2(Hs00605742)、IL−8(Hs00174103)、及びGAPDH(Applied Biosystems(Foster City,Calif.))を、ABI Prism7000SDSソフトウェア(Applied Biosystems(Foster City,Calif.))を備えた7000配列検出システムを使用して、製造元の使用説明書(Applied Biosystems(Foster City,Calif.))に従って、cDNA及びTaqMan(登録商標)Universal PCRマスターミックスと混合した。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分間及び95℃で10分間とし、その後に、95℃で15秒間及び60℃で1分間の40サイクルとした。PCRデータは、製造元の仕様書(ABI Prism7700配列検出システムに関する、Applied BiosystemsによるUser Bulletin#2)に従って分析した。
従来のPCR:ABI PRISM 7700(Perkin Elmer Applied Biosystems(Boston,Mass,USA))を使用して、従来のPCRを実行することにより、リアルタイムPCRからの結果を確認した。PCRは、2マイクロリットルのcDNA溶液、1×AmpliTaq GoldユニバーサルミックスPCR反応緩衝液(Applied Biosystems(Foster City,Calif.))、及び94℃で5分間の初期変性を用いて実行した。各プライマーセットに関して、増幅を最適化させた。IL−8、CXCリガンド3、及びレチクロンの場合(94℃で15秒間、55℃で15秒間、及び72℃で30秒間を30サイクル)、レンニンの場合(94℃で15秒間、53℃で15秒間、及び72℃で30秒間を38サイクル)、酸化LDL受容体及びGAPDHの場合(94℃で15秒間、55℃で15秒間、及び72℃で30秒間を33サイクル)。増幅に使用したプライマーを、表7−1に列挙する。最終PCR反応でのプライマー濃度は、1μMとしたが、ただし、GAPDHに関しては、0.5μMとした。GAPDHプライマーは、リアルタイムPCRと同じものとしたが、ただし、製造元のTaqMan(登録商標)プローブは、最終PCR反応に加えなかった。2%(w/v)アガロースゲル上に各試料を流し、臭化エチジウム(Sigma(St.Louis,Mo))で染色した。画像を、667Universal Twinpackフィルム(VWR International(South Plainfield,N.J.))を用いる焦点距離ポラロイド(登録商標)カメラ(VWR International(South Plainfield,N.J.))を用いて取り込んだ。
免疫蛍光:PPDCを室温にて10分間、4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma−Aldrich(St.Louis,Mo))を使用して固定した。継代数0(P0)(単離直後)及び継代数11(P11)の、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の単離株をそれぞれ1つずつ(胎盤由来細胞の単離株が2つ、臍由来細胞の単離株が2つ)と、線維芽細胞(P11)と、を使用した。免疫細胞化学分析を、次のエピトープに指向された抗体を用いて実施した:ビメンチン(1:500、Sigma,St.Louis,Mo.)、デスミン(1:150;Sigma−−ウサギに対して産生;又は1:300;Chemicon,Temecula,Calif−−マウスに対して産生)、α平滑筋アクチン(SMA;1.400;Sigma)、サイトケラチン18(CK18;1:400;Sigma)、フォン・ヴィレブランド因子(vWF;1:200;Sigma)、及びCD34(ヒトCD34クラスIII;1:100;DAKOCytomation、Carpinteria,Calif)。加えて、継代11分娩後細胞に対して次のマーカーを試験した:抗ヒトGROα−−PE(1:100;Becton Dickinson、Franklin Lakes,N.J)、抗ヒトGCP−2(1:100;Santa Cruz Biotech、Santa Cruz,Calif)、抗ヒト酸化LDL受容体1(ox−LDL R1;1:100;Santa Cruz Biotech)、及び抗ヒトNOGA−A(1:100;Santa Cruz Biotech)。
培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,Calif.))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma,St.Louis,Mo.)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、30分間曝露した。目的のエピトープが、細胞表面(CD34、ox−LDL R1)上に位置している場合には、エピトープの損失を防ぐために、この手順の全ての工程で、Triton X−100を省略した。更には、一次抗体がヤギに対して産生された場合には(GCP−2、ox−LDL R1、Nogo−A)、全体を通して、ヤギ血清の代わりに、3%(v/v)ロバ血清を使用した。次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−−Texas Red(1:250;Molecular Probes、Eugene,Oreg.)、及び/又はヤギ抗ウサギIgG−−Alexa488(1:250;Molecular Probes)若しくはロバ抗ヤギIgG−−FITC(1:150、Santa Cruz Biotech)と共にブロッキング剤を含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10μMのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
免疫染色の後に、Olympus(登録商標)倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,N.Y.))上で、適切な蛍光フィルタを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合で、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて、上記で概説した全手順に従った対照染色を上回る、蛍光シグナルを表した。例示的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImagePro(登録商標)ソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,Calif))を使用して取り込んだ。3重染色試料に関しては、1回に1つのみの発光フィルタを使用して、各画像を撮影した。続いて、Adobe Photoshop(登録商標)ソフトウェア(Adobe(San Jose,Calif))を使用して、階層モンタージュを準備した。
FACS分析のための細胞の調製:フラスコ内の接着細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,Calif))で洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,Calif))を用いて剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBSに、1×10 7/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。100μLのアリコートを、円錐管に移した。細胞内抗原が染色された細胞に対して、Perm/Wash緩衝液(BD Pharmingen(San Diego,Calif))によって透過処理した。製造元の仕様書に従って、アリコートに抗体を添加し、それらの細胞を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベート後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離して余分な抗体を除去した。二次抗体試験用の細胞を、100μLの3%FBS中に再懸濁させた。製造元の仕様書に従って、二次抗体を添加し、それらの細胞を、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、余分な二次抗体を除去した。洗浄した細胞を、0.5mLのPBS中に再懸濁させ、フローサイトメトリによって分析した。次の抗体を使用した:酸化LDL受容体1(sc−5813;Santa Cruz,Biotech)、GROa(555042;BD Pharminge、Bedford,Mass.)、マウスIgG1カッパ、(P−4685及びM−5284;Sigma)、ロバ抗ヤギIgG(sc−3743;Santa Cruz,Biotech.)。フローサイトメトリ分析は、FACScalibur(商標)(Becton Dickinson(San Jose,Calif.))を使用して実行した。
結果
ヒト胎盤、成体及び新生児線維芽細胞、並びに間葉系幹細胞(MSC)由来の細胞からのcDNAに対して実行した、選択された「シグネチャ」遺伝子に関するリアルタイムPCRの結果は、胎盤由来細胞内では、酸化LDL受容体及びレンニンの両方が、他の細胞と比較してより高レベルで発現したことを示す。このリアルタイムPCRから得られたデータを、AACT法によって分析し、対数目盛上に表した。レチクロン及び酸化LDL受容体の発現のレベルは、他の細胞と比較して、臍由来細胞内で高かった。分娩後由来細胞と、対照との間で、CXCリガンド3及びGCP−2の発現レベルに有意差は見られなかった。リアルタイムPCRの結果を、従来のPCRによって確認した。PCR産物の配列決定により、これらの観察結果が更に立証された。分娩後由来細胞と、上記の表7−1で示す従来のPCRのCXCリガンド3プライマーを使用した対照と、の間には、CXCリガンド3の発現レベルに有意な差は存在しなかった。
分娩後のサイトカイン、IL−8の産生は、増殖培地で培養した細胞、及び血清飢餓分娩後由来細胞の双方で増加した。リアルタイムPCRの全データは、従来のPCRで、またPCR産物を配列決定することによって立証された。
血清フリー培地中で増殖させた細胞の上清を、IL−8の存在に関して検査したところ、臍細胞由来の培地、及び一部の胎盤細胞の単離株由来の培地中で、最高量が検出された(表7−2)。ヒト皮膚線維芽細胞由来の培地からはIL−8は検出されなかった。
ND:検出されず
胎盤由来細胞はまた、FACS分析によって、酸化LDL受容体、GCP−2、及びGROαの産生に関しても検査された。細胞の検査結果は、GCP−2陽性を示した。酸化LDL受容体及びGROは、この方法によっては検出されなかった。
胎盤由来細胞はまた、免疫細胞化学分析によって、選択されたタンパク質の産生に関しても試験された。単離の直後(継代数0)に、ヒト胎盤由来細胞を、4%パラホルムアルデヒドで固定し、6つのタンパク質:ヴォン・ヴィレブランド因子、CD34、サイトケラチン18、デスミン、α−平滑筋アクチン、及びビメンチンに関する抗体に曝した。細胞は、α−平滑筋アクチン及びビメンチンの双方に関して陽性染色された。このパターンは、継代数11まで保持された。継代数0での少数の細胞(<<5%)のみが、サイトケラチン18に関して陽性染色された。
継代0でのヒト臍由来細胞を、選択されたタンパク質の産生に関して、免疫細胞化学分析によって調べた。単離の直後(継代数0)に、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、6つのタンパク質、即ち、ヴォン・ヴィレブランド因子、CD34、サイトケラチン18、デスミン、α−平滑筋アクチン、及びビメンチンに関する抗体に曝した。臍由来細胞は、α−平滑筋アクチン及びビメンチンに関して陽性であり、この染色パターンは、継代数11まで一貫していた。
要約:マイクロアレイ及びPCR(リアルタイム及び従来の両方)によって測定される遺伝子発現レベル間の一致が、酸化LDL受容体1、レンニン、レチクロン、及びIL−8の4遺伝子に関して立証された。これらの遺伝子の発現は、PPDCにおいてmRNAレベルで異なる調節をなされ、IL−8はまた、タンパク質レベルでも異なる調節をされていた。酸化LDL受容体の存在は、胎盤由来細胞内では、FACS分析によって、タンパク質レベルでは検出されなかった。GCP−2と及びCXCリガンド3の示差的発現は、mRNAレベルでは確認されなかったが、しかしながら、GCP−2は、胎盤由来細胞内で、FACS分析によって、タンパク質レベルで検出された。この結果は、マイクロアレイ実験から最初に得られたデータには反映されていないが、これは、それらの方法の感度の差異が原因であった可能性がある。
単離の直後(継代数0)に、ヒト胎盤由来細胞は、α−平滑筋アクチン及びビメンチンの双方に関して陽性染色された。このパターンはまた、継代数11の細胞内でも観察された。ビメンチン及びα−平滑筋アクチンの発現は、増殖培地中、これらの手順で用いられる条件下で継代する細胞内で保持され得る。継代数0でのヒト臍由来細胞を、α−平滑筋アクチン及びビメンチンの発現に関して調べたところ、双方に関して陽性であった。この染色パターンは、継代数11まで保持された。
(実施例8)
分娩後由来細胞のインビトロでの免疫学的評価
存在する場合には、インビボ移植時に分娩後由来細胞(PPDC)が誘導する免疫応答を予測する目的で、PPDC細胞をそれらの免疫学的特性に関してインビトロで評価した。HLA−DR、HLA−DP、HLA−DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の存在に関して、PPDCを、フローサイトメトリによってアッセイした。これらのタンパク質は、抗原提示細胞(APe)によって発現され、ナイーブCD4+T細胞の直接刺激のために必要とされる(Abbas&Lichtman,CELLULAR AND MOLECULAR IMMUNOLOGY,5th Ed.(2003)Saunders,Philadelphia,p.171)。これらの細胞株を、更に、HLA−G(Abbas & Lichtman,2003、上記参照)、CD178(Coumans,et al.,(1999)Journal of Immunological Methods 224,185〜196)、及びPD−L2(Abbas & Lichtman,2003、上記参照、Brown,et.al.(2003)The Journal of Immunology,170:1257〜1266)の発現に関しても、フローサイトメトリによって分析した。胎盤組織内に存在する細胞による、これらのタンパク質の発現は、子宮内の胎盤組織の免疫特権状態を媒介すると考えられる。胎盤由来細胞株及び臍由来細胞株が、インビボで免疫反応を誘発する程度を予測するために、それらの細胞株を、一方向混合リンパ球反応(MLR)で試験した。
方法及び材料
細胞培養:細胞を、ペニシリン/ストレプトマイシン含有増殖培地中で、2%ゼラチン(Sigma(St.Louis,Mo))でコーティングしたT75フラスコ(Corning Inc.(Corning,N.Y.))でコンフルエンスまで培養した。
抗体染色:リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco(Carlsbad,Calif.))で細胞を洗浄し、トリプシン/EDTA(Gibco(Carlsbad,Mo))を使用して剥離させた。細胞を採取して、遠心分離し、PBS中3%(v/v)のFBSに、1×10/ミリリットルの細胞濃度で再懸濁させた。製造元の仕様書に従って、100マイクロリットルの細胞懸濁液に、抗体(表8−1)を加え、暗所で30分間、4℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、遠心分離することにより、非結合抗体を除去した。500μLのPBSに細胞を再懸濁させ、FACSCalibur(商標)計器(Becton Dickinson(San Jose,Calif.))を用いたフローサイトメトリによって分析した。
混合リンパ球反応:細胞株Aとして標識される継代数10の臍由来細胞、及び細胞株Bとして標識される継代数11の胎盤由来細胞の凍結保存バイアルを、ドライアイス梱包してCTBR(Senneville(Quebec))に送付し、CTBR SOP No.CAC−031を用いて混合リンパ球反応を実施した。末梢血単核細胞(PBMC)を、複数の男性及び女性のボランティアドナーから収集した。刺激物質(ドナー)の同種異系PBMC、自家PBMC、及び分娩後細胞株をマイトマイシンCで処理した。マイトマイシンC処理した自家刺激細胞を応答物質(レシピエント)のPBMCに添加し、4日間培養した。インキュベーション後、各試料に[H]チミジンを添加して、18時間培養した。これらの細胞を採取した後に、放射標識DNAを抽出し、シンチレーション計数器を使用して、[H]−チミジンの取り込みを測定した。
同種異系ドナーに関する刺激指数(SIAD)は、受容者+マイトマイシンC処理同種異系ドナーの平均増殖を、受容者のベースライン増殖によって除算したものとして、計算した。PPDCの刺激指数は、受容者+マイトマイシンC処理分娩後細胞株の平均増殖を、受容者のベースライン増殖によって除算したものとして算出した。
結果
混合リンパ球反応−−胎盤由来細胞:7人のヒトボランティア血液ドナーをスクリーニングして、他の6人の血液ドナーとの混合リンパ球反応で旺盛な増殖反応を呈する、1人の同種異系ドナーを識別した。このドナーを、同種異系陽性対照ドナーとして選択した。残りの6人の血液ドナーを、レシピエントとして選択した。同種異系陽性対照ドナー及び胎盤由来細胞株を、マイトマイシンCで処理し、6人の個々の同種異系受容者との混合リンパ球反応下で培養した。反応は、プレート当り3人の受容者を入れた細胞培養プレートを2つ使用して、3回実施した(表8−2)。平均刺激指数は、1.3(プレート2)〜3(プレート1)の範囲であり、同種異系ドナー陽性対照は、46.25(プレート2)〜279(プレート1)の範囲であった(表8−3)。
混合リンパ球反応−臍由来細胞:6人のヒトボランティア血液ドナーをスクリーニングして、他の5人の血液ドナーとの混合リンパ球反応で旺盛な増殖反応を呈する、1人の同種異系ドナーを識別した。このドナーを、同種異系陽性対照ドナーとして選択した。残りの5人の血液ドナーを、レシピエントとして選択した。同種異系陽性対照ドナー及び胎盤細胞株を、マイトマイシンC処理して、5人の個々の同種異系受容者との混合リンパ球反応下で培養した。反応は、プレート当り3人の受容者を入れた細胞培養プレートを2つ使用して、3回実施した(表8−4)。平均刺激指数は、6.5(プレート1)〜9(プレート2)の範囲であり、同種異系ドナー陽性対照は、42.75(プレート1)〜70(プレート2)の範囲であった(表8−5)。
抗原提示細胞マーカー−胎盤由来細胞:フローサイトメトリによって分析された胎盤由来細胞のヒストグラムは、IgG対照と一致した蛍光値によって認められるHLA−DR、DP、DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の陰性発現を示し、これは、胎盤細胞株が、CD4+T細胞を直接刺激するのに必要な細胞表面分子を欠いていることを示す。
免疫調節マーカー−胎盤由来細胞:フローサイトメトリによって分析された胎盤由来細胞のヒストグラムは、IgG対照と比較してより高い蛍光値により示されるPD−L2の陽性発現を示し、IgG対照と一致した蛍光値によって認められるCD178及びHLA−Gの陰性発現を示す。
抗原提示細胞マーカー−臍由来細胞:フローサイトメトリによって分析された臍由来細胞のヒストグラムは、IgG対照と一致した蛍光値によって認められるHLA−DR、DP、DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の陰性発現を示し、これは、臍細胞株が、CD4+T細胞を直接刺激するのに必要な細胞表面分子を欠いていることを示す。
免疫調節細胞マーカー−臍由来細胞:フローサイトメトリによって分析された臍由来細胞のヒストグラムは、IgG対照と比較してより高い蛍光値によって認められるPD−L2の陽性発現を示し、また、IgG対照と一致した蛍光値によって認められるCD178及びHLA−Gの陰性発現を示す。
要約:胎盤由来細胞系統で行った混合リンパ球反応では、平均刺激指数は1.3〜3の範囲であり、同種異系陽性対照の平均刺激指数は46.25〜279の範囲であった。臍由来細胞株を使用して実施された混合リンパ球反応では、平均刺激指数は、6.5〜9の範囲であり、同種異系陽性対照の平均刺激指数は、42.75〜70の範囲であった。胎盤由来細胞株及び臍由来細胞株は、フローサイトメトリによって測定されたように、刺激タンパク質HLA−DR、HLA−DP、HLA−DQ、CD80、CD86、及びB7−H2の発現に関しては陰性であった。胎盤由来細胞株及び臍由来細胞株は、フローサイトメトリによって測定されたように、免疫調節タンパク質HLA−G及びCD178の発現に関しては陰性であり、PD−L2の発現に関しては陽性であった。同種異系ドナーPBMCは、HLA−DR、DQ、CD8、CD86、及びB7−H2を発現する抗原提示細胞を含むことにより、ナイーブCD4+T細胞の刺激が可能となる。ナイーブCD4+T細胞の直接刺激に必要とされる、胎盤由来細胞及び臍由来細胞上の抗原提示細胞表面分子の不在、並びに免疫調節タンパク質であるPD−L2の存在は、MLRにおいてこれらの細胞が示す、同種異系対照と比較してより低い刺激指数の原因となり得る。
(実施例9)
分娩後由来細胞による栄養因子の分泌
胎盤由来細胞及び臍由来細胞由来の選択された栄養因子の分泌を測定した。検出のために選択された因子には、以下が含まれた:(1)血管新生促進活性を有することが知られるもの、例えば肝細胞増殖因子(HGF)(Rosen et al.(1997)Ciba Found.Symp.212:215〜26)、単球走化性タンパク質l(MCP−l)(Salcedo et al.(2000)Blood 96;34〜40)、インターロイキン−8(IL−8)(Li et al.(2003)J.Immunol.170:3369〜76)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)(Hughes et al.(2004)Ann.Thorac.Surg.77:812〜8)、マトリックスメタロプロテナーゼ1(TIMP1)、アンジオポエチン2(ANG2)、血小板由来増殖因子(PDGF−bb)、トロンボポチエン(TPO)、ヘパリン結合性表皮増殖因子(HB−EGF)、間質由来因子1α(SDF−lα);(2)神経栄養/神経保護活性を有することが知られているもの、例えば脳由来神経栄養因子(BDNF)(Cheng et al.(2003)Dev.Biol.,258:319〜33)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球走化性タンパク質−2(GCP−2)、トランスフォーミング増殖因子β2(TGFβ2)などの、神経栄養/神経保護活性を有することが既知であるもの;(3)マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP1a)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP1b)、単球走化性因子−1(MCP−1)、Rantes(活性化時調節正常T細胞発現及び分泌物)、I309、胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARe)、エオタキシン、マクロファージ由来ケモカイン(MDC)、IL−8)などの、ケモカイン活性を有することが既知であるもの。
方法及び材料
細胞培養:胎盤及び臍由来のPPDC、並びにヒト新生児包皮由来線維芽細胞を、ゼラチンコーティングT75フラスコ上の、ペニシリン/ストレプトマイシンを含む増殖培地で培養した。継代数11で、細胞を凍結保存し、液体窒素中で保存した。細胞の解凍後、それらの細胞に増殖培地を添加し、その後、15mL遠沈管に移して、150×gで5分間、それらの細胞を遠心分離した。上清を廃棄した。4mLの増殖培地中に、細胞ペレットを再懸濁させ、細胞を計数した。15ミリリットルの増殖培地を収容する、75cmのフラスコあたり375,000細胞で細胞を播種し、24時間培養した。この培地を、無血清培地(DMEM−低グルコース(Gibco)、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン(Sigma)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco))に替え、8時間培養した。インキュベーションの終了時に、14,000×gで5分間の遠心分離によって、無血清馴化培地を収集し、−20℃で保存した。
各フラスコ内の細胞の数を概算するために、PBSで細胞を洗浄し、2mLのトリプシン/EDTAを使用して剥離させた。8mLの増殖培地を添加し、トリプシン活性を抑制した。150×gで5分間、細胞を遠心分離した。上清を除去し、1mLの増殖培地中に、細胞を再懸濁させた。血球計数器を使用して、細胞数を概算した。
ELISAアッセイ:細胞を37℃、5%二酸化炭素及び大気酸素下で増殖させた。胎盤由来細胞(バッチ101503)は、5%酸素又はβ−メルカプトエタノール(BME)下でも増殖させた。各細胞試料により産生されたMCP−1、IL−6、VEGF、SDF−1α、GCP−2、IL−8、及びTGF−β2の量をELISAアッセイ(R&D Systems(Minneapolis,Minn))により測定した。全てのアッセイは、製造元の使用説明書に従って実行した。
SearchLight(商標)多重ELISAアッセイ:ケモカイン(MIP1a、MIP1b、MCP−1、Rantes、1309、TARC、エオタキシン、MDC、IL8)、BDNF、及び血管新生因子(HGF、KGF、bFGF、VEGF、TIMP1、ANG2、PDGF−bb、TPO、HB−EGFを、SearchLight(商標)プロテオームアレイ(Pierce Biotechnology Inc.)を用いて測定した。このプロテオームアレイは、1ウェル当り2〜16のタンパク質を定量測定するための、多重サンドイッチELISAである。これらのアレイは、96ウェルプレートの各ウェルに、2×2、3×3、又は4×4パターンの4〜16の異なる捕捉抗体をスポットすることにより作製される。サンドイッチELISA手順の後に、プレート全体を画像化して、プレートの各ウェル内部の各スポットで生成された、化学発光シグナルを捕捉する。各スポット内で生成されるシグナルの量は、元の標準又は試料中の、標的タンパク質の量に比例する。
結果
ELISAアッセイ:MCP−1及びIL−6は、胎盤由来細胞及び臍由来細胞、並びに皮膚線維芽細胞により分泌された(表9−1)。SDF−1αは、5%O2中で培養された胎盤由来細胞、及び線維芽細胞により分泌された。GCP−2及びIL−8は、臍由来細胞により、及びBME又は5%Oの存在下で培養された胎盤由来細胞により分泌された。GCP−2はまた、ヒト線維芽細胞によっても分泌された。TGF−β2は、ELISAアッセイでは検出されなかった。
略語:ND:検出なし、=/−sem
SearchLight(商標)多重ELISAアッセイ:TIMP1、TPO、KGF、HGF、FGF、HBEGF、BDNF、MIP1b、MCP1、RANTES、I309、TARC、MDC、及びIL−8は、臍由来細胞から分泌された(表9−2及び表9−3)。TIMP1、TPO、KGF、HGF、HBEGF、BDNF、MIP1a、MCP−1、RANTES、TARC、エオタキシン、及びIL−8は、胎盤由来細胞から分泌された(表9−2及び表9−3)。Ang2、VEGF、又はPDGF−bbは、検出されなかった。
略語:hFB(ヒト線維芽細胞)、P1(胎盤由来細胞(042303))、U1(臍由来細胞(022803))、
P3(胎盤由来細胞(071003))、U3(臍由来細胞(071003))。ND:検出されず。
略語:hFB(ヒト線維芽細胞)、P1(胎盤由来PPDC(042303))、U1(臍由来PPDC(022803))、
P3(胎盤由来PPDC(071003))、U3(臍由来PPDC(071003))。ND:検出されず。
(実施例10)
分娩後由来細胞の短期的神経分化
胎盤由来細胞及び臍由来細胞(集合的に分娩後由来細胞又はPPDCと呼ぶ)の神経系統細胞に分化する能力を調べた。
方法及び材料
分娩後細胞の単離及び増殖:実施例2に記載されるように、胎盤組織及び臍組織からPPDCを単離して増殖させた。
改変Woodbury−Blackプロトコル(A):このアッセイは、元は骨髄ストロマ細胞(1)の神経誘導能を試験するために実施されたアッセイから採用したものであった。臍由来細胞(022803)P4、及び胎盤由来細胞(042203)P3を解凍して、サブコンフルエンス(75%)に達するまで、増殖培地中に、5,000細胞/cmで培養増殖させた。続いて、細胞をトリプシン処理して、TitretekIIスライドガラス(VWR International(Bristol,Conn))の1ウェル当り、6,000細胞で播種した。対照として、間葉系幹細胞(P3;1F2155;Cambrex,Walkersville,Md.)、骨芽細胞(P5;CC2538;Cambrex)、脂肪由来細胞(Artecel、米国特許第6,555,374(B1)号)(P6;ドナー2)及び新生児ヒト皮膚線維芽細胞(P6;CC2509;Cambrex)もまた同じ条件下で播種した。
全ての細胞を最初に、15(v/v)%ウシ胎児血清(FBS;Hyclone(Logan,Utah))、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;20ナノグラム/ミリリットル;Peprotech(Rocky Hill,N.J.))、表皮成長因子(EGF;20ナノグラム/ミリリットル;Peprotech)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を含有するDMEM/F12培地(Invitrogen(Carlsbad,Calif.))(v/v)中で4日間増殖させた。4日後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Invitrogen)中ですすぎ、続いてDMEM/F12培地+20%(v/v)FBS+ペニシリンストレプトマイシン中で24時間培養した。24時間後に、細胞をPBSですすいだ。続いて、200mMのブチル化ヒドロキシアニソール、10μMの塩化カリウム、5ミリグラム/ミリリットルのインスリン、10μMのフォルスコリン、4μMのバルプロ酸、及び2μMのヒドロコルチゾン(全ての化学薬品はSigma(St.Louis,Mo)より入手)を含有する、DMEM/FI2(無血清)からなる誘導培地中で、1〜6時間、細胞を培養した。次いで、100%氷冷メタノール中で、細胞を固定し、免疫細胞化学を実行して(下記の方法を参照)、ヒトネスチンタンパク質の発現を査定した。
改変Woodbury−Blackプロトコル(B):PPDC(臍(022803)P11;胎盤(042203)P11)及び成体ヒト皮膚線維芽細胞(1F1853、P11)を解凍して、サブコンフルエンス(75%)に達するまで、増殖培地中に、5,000細胞/cmで培養増殖させた。続いて、細胞をトリプシン処理して、(A)と同様の密度で、ただし、(1)24ウェル組織培養処理プレート(TCP、Falconブランド(VWR International))、(2)TCPウェル+室温で1時間吸着させた2%(w/v)ゼラチン、又は(3)TCPウェル+20μg/ミリリットルの吸着マウスラミニン(37℃で最低2時間吸着(Invitrogen))上に播種した。
厳密に(A)と同様に、細胞を最初に増殖させ、培地を前述の時間枠で切り替えた。前述のように、培養物の1セットを、5日と6時間の時点で、この場合は、氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して、室温で10分間固定した。培養物の第2のセットでは、培地を除去して、B27(B27サプリメント(Invitrogen))、L−グルタミン(4mM)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を含有する、Neurobasal−A培地(Invitrogen)からなる、神経前駆細胞増殖培地(NPE)に切り替えた。NPE培地に、レチノイン酸(RA;1μM;Sigma)を更に添加した。4日後に、この培地を除去して、氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して、培養物を、室温で10分間にわたって固定し、ネスチン、GFAP、及びTuJ1タンパク質の発現に関して染色した(表10−1を参照)。
二段階分化プロトコル:PPDC(臍(042203)P11、胎盤(022803)P11)、成体ヒト皮膚線維芽細胞(P11;1F1853;Cambrex)を解凍し、サブコンフルエンス(75%)に達するまで、増殖培地中、5,000細胞/cmで培養増殖させた。続いて、細胞をトリプシン処理し、2,000細胞/cmで、bFGF(20ナノグラム/ミリリットル(Peprotech(Rocky Hill,N.J.))及びEGF(20ナノグラム/ミリリットル(Peprotech))を補充したNPE培地の存在下で、ラミニン(BD Biosciences(Franklin Lakes,N.J.))でコーティングした24ウェルプレートに播種した[全培地組成物は更にNPE+F+Eとも称される]。同時に、海馬から単離された成体ラット海馬前駆細胞(P4;(062603)もまた、NPE+F+E培地中、24ウェリアミニンコーティングプレートにプレートした。全ての培養物を、こうした条件下で6日間維持し(その期間中、細胞に1回栄養補給した)、その時点で、更に7日間にわたって、表10−2に列挙される分化条件に培地を切り替えた。培養物を室温で10分間氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、ヒト又はラットネスチン、GFAP、及びTuJ1タンパク質の発現に関して染色した。
複数の増殖因子プロトコル:臍由来細胞(P11;臍由来細胞(P11;(042203))を解凍して、サブコンフルエンス(75%)に達するまで、増殖培地中、5,000細胞/cmで培養増殖させた。続いて、細胞をトリプシン処理して、NPE+F(20ナノグラム/ミリリットル)+E(20ナノグラム/ミリリットル)の存在下で、24ウェリアミニンコーティングプレート(BD Biosciences)上に、2,000細胞/cmで播種した。更に、いくつかのウェルは、NPE+F+E+2% FBS、又は10% FBSを含んだ。「予備分化」条件下で4日後、全ての培地を除去し、試料を、ソニックヘッジホッグ(SHH;200ナノグラム/ミリリットル;Sigma(St.Louis,Mo.))、FGF8(100ナノグラム/ミリリットル;Peprotech)、BDNF(40ナノグラム/ミリリットル;Sigma)、GDNF(20ナノグラム/ミリリットル;Sigma)、及びレチノイン酸(1μM;Sigma)を補充したNPE培地に切り替えた。培地交換から7日後に、氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して、培養物を、室温で10分間固定し、ヒトネスチン、GFAP、TuJ1,デスミン、及びα−平滑筋アクチンの発現に関して染色した。
神経前駆細胞共培養プロトコル:成体ラット海馬前駆細胞(062603)を、ラミニンコーティング24ウェルディッシュ(BD Biosciences)上のNPE+F(20ナノグラム/ミリリットル)+E(20ナノグラム/ミリリットル)中に、ニューロスフェア又は単一細胞としてプレーティング(10,000細胞/ウェル)した。
別に、臍由来細胞(042203)P11、及び胎盤由来細胞(022803)P11を解凍して、NPE+F(20ナノグラム/ミリリットル)+E(20ナノグラム/ミリリットル)中に、5,000細胞/cmで、48時間にわたって培養増殖させた。次いで、細胞をトリプシン処理して、既存の神経前駆細胞の培養物上に、2,500細胞/ウェルで播種した。その時点で、既存の培地を、新鮮培地に交換した。4日後、培養物を室温で10分間氷冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、PPDCを識別するために、ヒト核タンパク質(hNuc;Chemicon)に関して染色した(上記の表14−1)。
免疫細胞化学:免疫細胞化学法を、表14−1に列挙した抗体を用いて行った。培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,Calif))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、30分間曝露した。次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。次に、一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,Oreg.))、及びヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)と共にブロッキング溶液を含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10μMのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,N.Y.))上で、適切な蛍光フィルタを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合で、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて、上記で概説した全手順に従った対照染色を上回る、蛍光シグナルを表した。例示的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,Calif))を使用して取り込んだ。3重染色試料に関しては、1回に1つのみの発光フィルタを使用して、各画像を撮影した。続いて、Adobe Photoshop(登録商標)ソフトウェア(Adobe(San Jose,Calif))を使用して、階層モンタージュを準備した。
結果
改変Woodbury−Blackプロトコル(A):この神経誘導組成物中でのインキュベーションでは、全ての細胞型が、双極性形態及び伸長した突起を有する細胞へと形質転換した。他の、より大きい非双極性形態もまた、観察された。更には、これらの誘導細胞集団は、複能性の神経幹細胞及び前駆細胞のマーカーである、ネスチンに関して、陽性染色された。
改変Woodbury−Blackプロトコル(B):組織培養プラスチック(TCP)ディッシュ上で繰り返しても、培養表面に予めラミニンを吸着させない限り、ネスチンの発現は観察されなかった。ネスチン発現細胞が続いて成熟ニューロンの生成へ進むことができるか否かを更に評価するため、PPDC及び線維芽細胞を、神経幹細胞及び前駆細胞からこうした細胞への分化を誘導することが知られている培地組成であるNPE+RA(1μM)に曝露した(2、3、4)。未熟ニューロン及び成熟ニューロンのマーカーであるTuJ1、星状細胞のマーカーであるGFAP、並びにネスチンに関して、細胞を染色した。TuJ1が検出された条件はなく、ニューロン形態を有する細胞も観察されなかった。更に、免疫細胞化学により判定されたように、ネスチン及びGFAPは、PPDCによってこれ以上発現されなかった。
2段階分化:臍及び胎盤PPDC単離株(並びにそれぞれ陰性対照細胞型及び陽性対照細胞型としてのヒト線維芽細胞及びげっ歯類神経前駆細胞)をラミニン(神経促進)コーティングディッシュにプレートし、神経前駆細胞からニューロン及び星状細胞への分化を促進することが知られている13の異なる増殖条件(及び2つの対照条件)に曝露した。更に、PPDC分化に対する、GDF5及びBMP7の影響を検査するために、2つの条件を追加した。全般的には、2段階分化アプローチを採択して、細胞を、最初に6日間、神経前駆細胞増殖条件に置き、その後に7日間、完全分化条件に置いた。形態学的には、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の両方が、この手順の時間経過の全体を通して、細胞形態の根本的変化を呈した。しかしながら、対照の神経前駆細胞プレーティング条件を除き、神経細胞又は星状細胞は観察されなかった。ヒトネスチン、TuJ1、及びGFAPに関して陰性の、免疫細胞化学により、これらの形態学的観察結果が確認された。
複数の増殖因子:様々な神経分化剤に1週間曝露した後、神経前駆細胞(ヒトネスチン)、ニューロン(TuJ1)、及び星状細胞(GFAP)の指標となるマーカーに関して、細胞を染色した。第一段階で非血清含有培地中に増殖させた細胞は、血清含有(2%又は10%)培地中の細胞とは異なる、潜在的な神経分化を示す形態を有していた。具体的には、臍由来細胞をEGF及びbFGFに曝し、その後、SHH、FGF8、GDNF、BDNF、及びレチノイン酸に曝す2段階手順の後に、細胞は、培養星状細胞の形態と同様の、長く伸長した突起を示した。第1段階の分化で、2%FBS又は10%FBSを含んでいた場合、細胞数が増大し、細胞形態は、高密度の対照培養から変化しなかった。潜在的な神経分化は、ヒトネスチン、TuJ1、又はGFAPに関する免疫細胞化学分析によっては、証明されなかった。
神経前駆細胞とPPDCの共培養:2日前に、神経伸長条件(neural expansion conditions)(NPE+F+E)に播種したラット神経前駆細胞培養物上にPPDCをプレートした。プレーティングしたPPDCの視覚的検査によって、これらの細胞が単一細胞としてプレーティングされたことが明らかとなったが、プレーティング4日後(全体で6日目)のヒト特異的核染色(hNuc)によって、これらは球状に固まり、神経前駆細胞との接触を回避する傾向があることを示した。更に、PPDCが付着する場合に、これらの細胞は散開し、ラット起源のものであった分化ニューロンによって神経支配されたように思われたが、これは、PPDCが、筋細胞へと分化した可能性があることを示唆する。この観察結果は、位相差顕微鏡下での形態に基づくものであった。別の観察結果は、典型的に大型の細胞体(神経前駆細胞よりも大きい)は、複数の方向に広がる薄い突起を有する、神経前駆細胞に類似する形態を有していたことである。hNuc染色(細胞核の2分の1で見出される)は、これらのヒト細胞が、一部の場合には、ラットの前駆細胞と融合して、それらの表現型を呈し得ることを示した。神経前駆細胞のみを収容する対照ウェルは、臍又は胎盤PPDCを収容する共培養ウェルよりも、前駆細胞及び明白な分化細胞の総数が少なかったが、これは、臍由来細胞及び胎盤由来細胞の両方が、ケモカイン及びサイトカインの放出によって、又は接触が媒介する効果によってのいずれかで、神経前駆細胞の分化及び挙動に影響を及ぼしたことを更に示す。
要約:PPDCが神経系統細胞へ分化する短期的能力を判定するため、複数のプロトコルを実施した。これらのプロトコルには、それぞれ、複能性の神経幹細胞及び前駆細胞、未熟ニューロン及び成熟ニューロン、並びに星状細胞に関連するタンパク質である、ネスチン、TuJ1、及びGFAPに関する、免疫細胞化学と組み合わせた、形態の位相コントラスト画像法を含めた。
(実施例11)
分娩後由来細胞の長期的神経分化
臍由来及び胎盤由来細胞(集合的に分娩後由来細胞又はPPDCと呼ぶ)の、神経系統細胞へと長期的に分化を受ける能力を評価した。
方法及び材料
PPDCの単離及び増殖:上述した実施例に記載されるとおりに、PPDCを単離して増殖させた。
PPDC細胞の解凍及びプレーティング:予め増殖培地中で増殖させたPPDCの凍結アリコート(臍(022803)P11;(042203)P11;(071003)P12;胎盤(101503)P7)を解凍して、B27(B27サプリメント、Invitrogen)、L−グルタミン(4mM)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(10ミリリットル)を含有する、Neurobasal−A培地(Invitrogen(Carlsbad,Calif))(この組み合わせは、本明細書では、神経前駆細胞増殖(NPE)培地と称される)中、ラミニン(BD(Franklin Lakes,N.J.))でコーティングしたT−75フラスコ内に、5,000細胞/cm2でプレートした。NPE培地に、bFGF(20ナノグラム/ミリリットル(Peprotech(Rocky Hill,N.J.)))、及びEGF(20ナノグラム/ミリリットル(Peprotech(Rocky Hill,N.J.)))(本明細書では、NPE+bFGF+EGFと称する)を更に添加した。
対照細胞のプレーティング:更に、成体ヒト皮膚線維芽細胞(P11(Cambrex(Walkersville,Md)))、及び間葉系幹細胞(P5(Cambrex))を解凍して、NPE+bFGF+EGF中の、ラミニンコーティングT−75フラスコ上に、同じ細胞播種密度でプレートした。更なる対照として、線維芽細胞、臍及び胎盤PPDCを、増殖培地中で、全ての培養物に関して指定された期間にわたって増殖させた。
細胞の増殖:全ての培養物からの培地は、1週間に1回、新鮮培地に置き換えて、細胞の増殖を観察した。一般的には、NPE+bFGF+EGF中での増殖の限界のため、各培養物は、1か月の期間で1回継代した。
免疫細胞化学:1か月の期間の後に、全てのフラスコを、室温で10分間、冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して固定した。免疫細胞化学分析を、TuJ1(BIIIチューブリン;1:500;Sigma(St.Louis,Mo.))及びGFAP(グリア筋原線維酸性タンパク質;1:2000;DakoCytomation(Carpinteria,Calif.)に指向された抗体を用いて実施した。簡潔に述べると、培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,Calif.))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、30分間曝露した。次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。次に、一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,Oreg.))、及びヤギ抗ウサギIgG−Alexa 488(1:250;Molecular Probes)と共にブロックを含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10μMのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,N.Y.))上で、適切な蛍光フィルタを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合で、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて、上記で概説した全手順に従った対照染色を上回る、蛍光シグナルを表した。例示的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,Calif.))を使用して取り込んだ。3重染色試料に関しては、1回に1つのみの発光フィルタを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,Calif.))を使用して、階層モンタージュを準備した。
結果
NPE+bFGF+EGF培地はPPDCの増殖を遅くし、形態を変化させる。プレーティングの直後に、PPDCのサブセットが、ラミニンでコーティングした培養フラスコに付着した。このことは、凍結/解凍プロセスの機能としての細胞死によるものか、又は新たな増殖条件が原因であった可能性がある。付着した細胞は、増殖培地中で観察されるものとは異なる形態を取っていた。
臍由来細胞のクローンはニューロンタンパク質を発現する:解凍/プレーティングの1か月後に、培養物を固定し、ニューロンタンパク質TuJ1、及び星状細胞内に見出される中間径フィラメントであるGFAPに関して、染色した。増殖培地中で増殖させた全ての対照培養物、並びにNPE+bFGF+EGF培地中で増殖させたヒト線維芽細胞及びMSCは、TuJ1−/GFAP−であることが判明したが、臍由来細胞及び胎盤PPDCでは、TuJ1が検出された。神経様形態を有する細胞、及び有しない細胞内で、発現が観察された。いずれの培養物内にも、GFAPの発現は観察されなかった。神経様形態を有する、TuJ1を発現する細胞の百分率は、全集団の1%以下であった(試験した臍由来細胞単離株n=3)。定量化されていないが、神経形態を有しないTuJ1+細胞の百分率は、胎盤由来細胞培養物よりも、臍由来細胞培養物内で高かった。これらの結果は、増殖培地中の同齢の対照がTuJ1を発現しなかったため、特異的であると考えられた。
要約:臍由来細胞から、分化ニューロンを生成するための方法(TuJ1の発現及び神経形態学に基づく)が開発された。TuJ1に関する発現は、インビトロでは、1か月よりも早い時点では検査しなかったが、臍由来細胞の少なくとも小集団は、既定の分化を通じてか、あるいはL−グルタミン、塩基性FGF、及びEGFを添加した最少培地に1か月曝露した後の長期誘導を通じてかのいずれかで、ニューロンを生じさせ得ることは明らかである。
(実施例12)
神経前駆細胞支援のためのPPDC栄養因子
非接触依存性(栄養性)機構による、成体神経幹細胞及び前駆細胞の生存及び分化に対する臍由来細胞及び胎盤由来細胞(集合的に分娩後由来細胞又はPPDCと称する)の影響を調べた。
方法及び材料
成体神経幹細胞及び前駆細胞の単離:Fisher 344成体ラットをCO窒息とその後の頸脱臼により屠殺した。骨鉗子を使用して、脳全体を無傷な状態で摘出し、脳の運動領域及び体性感覚領域の後方の冠状切開に基づいて、海馬組織を解剖した(Paxinos,G.& Watson,C.1997.The Rat Brain in Stereotaxic Coordinates)。組織を、B27(B27補充剤;Invitrogen)、L−グルタミン(4mM;Invitrogen)、及びペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を含有する、Neurobasal−A培地(Invitrogen(Carlsbad,Calif.))(この組み合わせは、本明細書で神経前駆細胞増殖(NPE)培地と称される)中で洗浄した。NPE培地に、bFGF(20ナノグラム/ミリリットル、Peprotech(Rocky Hill,N.J.))、及びEGF(20ナノグラム/ミリリットル、Peprotech(Rocky Hill,N.J.))を更に添加し、これを本明細書ではNPE+bFGF+EGFと称する。
洗浄の後に、上を覆う髄膜を除去して、外科用メスで組織を細断した。細断した組織を収集し、トリプシン/EDTA(Invitrogen)を、総容積の75%として添加した。更に、DNアーゼ(100マイクロリットル/総容積8ミリリットル(Sigma(St.Louis,Mo)))を添加した。次に、この組織/培地を、18ゲージのニードル、20ゲージのニードル、及び最終的に25ゲージのニードルに各1回、連続的に通過させた(全てのニードルは、Becton Dickinson(Franklin Lakes,N.J.)より)。この混合物を250gで3分間遠心分離した。上清を除去し、新鮮なNPE+bFGF+EGFを添加して、ペレットを再懸濁させた。得られた細胞懸濁液を、40マイクロメートル細胞濾過器(Becton Dickinson)に通し、ラミニンコーティングT−75フラスコ(Becton Dickinson)又は低クラスター24ウェルプレート(Becton Dickinson)上にプレーティングし、NPE+bFGF+EGF培地中で、概説される研究のために十分な細胞数が得られるまで増殖させた。
PPDCプレーティング:予め増殖培地中で増殖させた分娩後由来細胞(臍(022803)P12、(042103)P12、(071003)P12;胎盤(042203)P12)を、5,000細胞/トランスウェルインサート(24ウェルプレート用のサイズ)でプレーティングし、インサート内の増殖培地中で、1週間にわたって増殖させ、コンフルエンスに到達させた。
成体神経前駆細胞のプレーティング:ニューロスフェアとして、又は単細胞として増殖させた神経前駆細胞を、細胞付着を促進するために、1日間、ラミニンコート24ウェルプレート上のNPE+bFGF+EGF中に、およそ密度2,000細胞/ウェルで播種した。1日後、分娩後細胞を含むトランスウェルインサートを次のスキームに従って加えた。
a.トランスウェル(増殖培地中の臍由来細胞、200マイクロリットル)+神経前駆細胞(NPE+bFGF+EGF、1ミリリットル)
b.トランスウェル(増殖培地中の胎盤由来細胞、200マイクロリットル)+神経前駆細胞(NPE+bFGF+EGF、1ミリリットル)
c.トランスウェル(増殖培地中の成人ヒト皮膚線維芽細胞[1 F 1853;Cambrex,Walkersville,Md.]P12、200マイクロリットル)+神経前駆細胞(NPE+bFGF+EGF、1ミリリットル)
d.対照:神経前駆細胞単独(NPE+bFGF+EGF、1ミリリットル)
e.対照:神経前駆細胞単独(NPE単独、1ミリリットル)
免疫細胞化学:共培養7日後、全ての条件を、室温で10分間にわたって、4%(w/v)冷パラホルムアルデヒド(Sigma)を使用して固定した。表14−1に列挙されるエピトープに指向された抗体を使用して、免疫細胞化学分析を実行した。簡潔に述べると、培養物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするために、PBS、4%(v/v)ヤギ血清(Chemicon(Temecula,Calif.))、及び0.3%(v/v)Triton(Triton X−100;Sigma)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に、30分間曝露した。次いで、ブロッキング溶液で希釈された一次抗体を、室温で、1時間にわたって、これらの培養物に適用した。次に、一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄した後、ヤギ抗マウスIgG−Texas Red(1:250;Molecular Probes(Eugene,Oreg.))、及びヤギ抗ウサギIgG−Alexa488(1:250;Molecular Probes)と共にブロッキング溶液を含有する、二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで、培養物を洗浄し、10μMのDAPI(Molecular Probes)を10分間適用して、細胞核を可視化した。
免疫染色の後に、Olympus倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus(Melville,N.Y.))上で、適切な蛍光フィルタを使用して、蛍光を可視化した。全ての場合で、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて、上記で概説した全手順に従った対照染色を上回る、蛍光シグナルを表した。例示的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びImageProソフトウェア(Media Cybernetics(Carlsbad,Calif.))を使用して取り込んだ。3重染色試料に関しては、1回に1つのみの発光フィルタを使用して、各画像を撮影した。次いで、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe(San Jose,Calif.))を使用して、階層モンタージュを準備した。
神経前駆細胞分化の定量分析:海馬神経前駆細胞分化の定量化を検討した。各条件当り、最低1000細胞を計数し、少ない場合には、その条件内で観察された細胞の総数とした。所定の染色に関して陽性の細胞の百分率を、DAPI(核)染色によって判定されるように、陽性細胞の数を細胞の総数で除算することによって、評価した。
質量分析及び2Dゲル電気泳動:共培養の結果としての固有の分泌因子を識別するため、培養物の固定の前に採取した馴化培地試料を、−80℃で一晩凍結させた。次いで、限外濾過スピン装置(分画分子量30kD)に、試料を適用した。残余分を免疫アフィニティークロマトグラフィ(抗Hu−アルブミン;IgY)(免疫アフィニティーは、試料からアルブミンを除去しなかった)に適用した。濾液を、MALDIによって分析した。この透過物を、Cibachron Blueアフィニティークロマトグラフィに適用した。試料を、SDS−PAGE及び2Dゲル電気泳動によって分析した。
結果
PPDC共培養は成体神経前駆細胞分化を刺激する:臍由来細胞又は胎盤由来細胞と共に培養した後、成体ラット海馬由来の共培養神経前駆細胞は、中枢神経系の主要な3つの系統全てに有意な分化を示した。この効果は、共培養5日後に、明確に観察され、数多くの細胞が、複雑な突起を作り出し、分裂中の前駆細胞に固有の、相の明るい特徴を喪失していた。反対に、bFGF及びEGFの非存在下で、単独で増殖させた神経前駆細胞は、健常性が見られず、生存に限界があった。
この手順の完了後、未分化幹細胞及び前駆細胞(ネスチン)、未熟ニューロン及び成熟ニューロン(TuJ1)、星状細胞(GFAP)、並びに成熟乏突起神経膠細胞(MBP)の指標となるマーカーに関して、培養物を染色した。3つの全ての系統に沿った分化が確認されたが、対照条件は、大多数の細胞中でのネスチン陽性染色の保持によって証明されるように、有意な分化を呈さなかった。臍由来細胞及び胎盤由来細胞の両方が、細胞の分化を誘導したが、3つ全ての系統に関する分化の度合いは、臍由来細胞との共培養の場合よりも、胎盤由来細胞との共培養の場合のほうが少なかった。
臍由来細胞との共培養の後に、分化した神経前駆細胞の百分率を定量化した(表12−2)。臍由来細胞は、成熟乏突起神経膠細胞(MBP)の数を、有意に増加させた(両方の対照条件での24.0%対0%)。更に、共培養は、培養中にGFAP+星状細胞、及びTuJ1+ニューロンの数を増加させた(それぞれ、47.2%、及び8.7%)。これらの結果は、共培養後に前駆細胞状態が喪失したことを示す、ネスチン染色(対照条件4で13.4%対71.4%)によって確認された。
分化はまた、成体ヒト線維芽細胞によっても影響を受けるものと考えられたが、そのような細胞は、成熟乏突起神経膠細胞の分化を促進することは不可能であり、感知し得る量のニューロンを生成することも不可能であった。しかしながら、定量化されなかったものの、線維芽細胞は、神経前駆細胞の生存を増進させるものと思われた。
固有な化合物の識別:臍由来共培養物及び胎盤由来共培養物由来の馴化培地を、適切な対照(NPE培地±1.7%血清、線維芽細胞との共培養由来の培地)と併せて、差異に関し検査した。潜在的に固有な化合物を識別して、それらの対応する2Dゲルから切除した。
要約:臍又は胎盤PPDCとの、成体神経前駆細胞の共培養は、それらの細胞の分化を生じさせる。この実施例で提示される結果により、臍由来細胞との共培養後の成体神経前駆細胞の分化が、特に顕著であることが示される。具体的には、有意な百分率の成熟乏突起神経膠細胞が、臍由来細胞の共培養物内に生成された。
(実施例13)
分娩後由来細胞の移植
分娩後の臍及び胎盤由来細胞は、再生療法に有用である。SCIDマウスに生分解性材料と共に移植された分娩後由来細胞(PPDC)によって産生された組織を評価した。評価する材料は、バイクリル不織布、35/65 PCL/PGA発泡体、及びRAD16自己集合性ペプチドヒドロゲルとした。
方法及び材料
細胞培養:胎盤及び臍由来細胞を、ゼラチンをコーティングしたフラスコ中、増殖培地(DMEM−低グルコース(Gibco、(Carlsbad Calif.))、15(v/v)%ウシ胎児血清(カタログ番号SH30070.03;Hyclone(Logan,Utah))、0.001(v/v)%ベータメルカプトエタノール(Sigma(St.Louis,Mo.))、ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco))中で増殖させた。
試料調製:100万個の生細胞を、15マイクロリットルの増殖培地中、直径5mm、厚さ2.25mmのバイクリル不織布スカフォールド(64.33ミリグラム/cc;ロット番号3547−47−1)又は直径5mmの35/65 PCL/PGA発泡体(ロット番号3415−53)上に播種した。2時間にわたって細胞を付着させた後、更なる増殖培地を追加して、これらのスカフォールドを覆った。スカフォールド上で一晩、細胞を増殖させた。細胞を有しないスカフォールドもまた、培地中でインキュベートした。
RAD16自己集合性ペプチド(3D Matrix(Cambridge,MA)を水中1%(w/v)の無菌溶液として得、これを使用直前にダルベッコ変法培地(DMEM;Gibco)中、10%(w/v)スクロース(Sigma(St Louis,Mo.))、10mMのHEPES中の1×10個の細胞と1:1で混合した。RAD16ヒドロゲル中の細胞の最終濃度は、1×10細胞/100マイクロリットルとした。
試験材料(N=4/Rx)
a.バイクリル不織布+1×10個の臍由来細胞
b.35/65 PCL/PGA発泡体+1×10個の臍由来細胞
c.RAD16自己集合性ペプチド+1×10個の臍由来細胞
d.バイクリル不織布+1×10個の胎盤由来細胞
e.35/65 PCL/PGA発泡体+1×10個の胎盤由来細胞
f.RAD16自己集合性ペプチド+1×10個の胎盤由来細胞
g.35/65 PCL/PGA発泡体
h.バイクリル不織布
動物の準備:動物福祉法の現行の要件に従って、動物を取扱い及び維持した。上記公法との準拠性は、動物福祉規則(9CFR)を遵守し、「the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(第7版)」で公布された現行標準に従うことによって達成した。
マウス(Mus Musculus)/Fox Chase SCID/雄(Harlan Sprague Dawley,Inc.(Indianapolis,Ind.))、5週齢:SCIDマウスの取扱いは全てフード内で行った。マウスを個々に秤量して、60ミリグラム/kgのKETASET(塩酸ケタミン(Aveco Co,Inc.(Fort Dodge,Iowa)))及び10ミリグラム/kgのROMPUN(キシラジン(Mobay Corp.(Shawnee,Kans)))と生理食塩水との混合物の腹腔内注射を使用して麻酔した。麻酔導入の後、動物用電気バリカンを使用して、背側頸部区域から背側腰仙区域までの、動物の背部全体の毛を刈り取った。次いで、その区域を、二酢酸クロルヘキシジンを使用して擦り洗いし、アルコールですすぎ、乾燥させ、有効ヨウ素1%のヨードフォア水溶液を塗布した。眼用軟膏を眼に塗布して、麻酔期間中の組織の乾燥を防止した。
皮下移植技術:マウスの背に、各約1.0cm長の4つの皮膚切開部を作った。2つの頭蓋部位を、背外側胸部領域の上に、触診した肩胛骨の下縁の約5mm尾側で、一方は脊柱の左に、もう一方は右に、横方向で配置した。別の2つは、尾の仙腰レベルの臀筋区域の上に、触診した腸骨稜の約5mm尾側で、正中線の各側上に1つずつ、横方向で配置した。実験計画に従って、これらの部位内に、移植片を無作為に定置した。下層の結合組織から皮膚を分離して、小さいポケットを作製し、その切開部の約1cm尾側に、移植片を定置した(あるいはRAD16の場合は、注射した)。適切な試験材料を、皮下空間内に移植した。皮膚の切開部は、金属クリップで閉鎖した。
動物の飼育:マウスは実験過程の全体を通して個々に小型隔離ケージで、温度範囲19℃〜26℃(64°F〜79°F)、相対湿度30%〜70%で飼育し、約12時間明期/12時間暗期の周期に維持した。温度及び相対湿度は、可能な限り、記載の範囲内に維持した。食餌は、Irradiated Pico Mouse Chow 5058(Purina Co.)からなるものとし、水は自由に摂取させた。
指定の時間間隔で、二酸化炭素吸入によってマウスを安楽死させた。皮下移植部位を、それらの部位を覆う皮膚と共に切除して、組織学のために凍結した。
組織学:移植片と共に切り取った皮膚を10%中性緩衝ホルマリン(Richard−Allan(Kalamazoo,Mich))で固定した。試料を、上を覆う隣接組織と共に、中央で2等分して、パラフィン処理を施し、慣用の方法を使用して割面上に埋め込んだ。ミクロトームによって5マイクロメートルの組織切片を得て、常法を用いて、ヘマトキシリン及びエオシン(Poly Scientific(Bay Shore,N.Y))で染色した。
結果
30日後の、SCIDマウス内に皮下移植された発泡体(細胞を有さず)内への組織の内植は、最小限のものであった。対照的に、臍由来細胞又は胎盤由来細胞と共に移植された発泡体内には、広範囲の組織充填が存在した。バイクリル不織布スカフォールド内には、ある程度の組織の内植が観察された。臍由来細胞又は胎盤由来細胞が播種された不織布スカフォールドは、マトリックス沈着及び成熟血管の増大を示した。
要約:合成吸収性不織/発泡体ディスク(直径5.0mm×厚さ1.0mm)又は自己集合性ペプチドヒドロゲルにヒト臍又は胎盤のいずれかに由来する細胞を播種し、SCIDマウスの背棘領域の両側に皮下移植した。それらの結果は、分娩後由来細胞が、生分解性スカフォールド内の良質の組織形成を、劇的に増大させることが可能である点を実証した。
(実施例14)
臍帯組織由来細胞におけるテロメラーゼ発現
テロメラーゼは、染色体の完全性を保護し、また細胞の複製寿命を延長するために役立つ、テロメア繰り返し体を合成するように機能する(Liu,K,et al.,PNAS,1999;96:5147−5152)。テロメラーゼは、テロメラーゼRNAテンプレート(hTER)、及びテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の2つの成分からなる。テロメラーゼの調節は、hTERではなく、hTERTの転写によって決定される。hTERTmRNAに関するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、それゆえ、細胞のテロメラーゼ活性を判定するための容認された方法である。
細胞単離。リアルタイムPCR実験を実施して、ヒト臍由来細胞のテロメラーゼ産生を評価した。ヒト臍由来細胞を、上述の実施例に従って調製した。全般的には、正常な分娩後の、National Disease Research Interchange(Philadelphia,Pa.)から得た臍帯を洗浄して、血液及び残渣を除去し、機械的に解離させた。次いで、この組織を、培養培地中、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、及びヒアルロニダーゼを含む消化酵素と共に、37℃でインキュベートした。ヒト臍帯由来細胞を、上記の実施例に記載される方法に従って培養した。間葉系幹細胞及び正常真皮線維芽細胞(cc−2509ロット番号9F0844)をCambrex(Walkersville,Md)から得た。多能性ヒト精巣胎児癌(奇形腫)細胞株nTera−2細胞(NTERA−2 cl.Dl)、(Plaia et al.,Stem Cells,2006;24(3):531〜546を参照されたい)をATCC(Manassas、Va)から購入し、上記の方法に従って培養した。
全RNA単離。RNeasy(登録商標)kit(Qiagen,Valencia,Ca.)を使用して、RNAを細胞から抽出した。50マイクロリットルのDEPC処理水を使用して、RNAを溶出させ、−80℃で保存した。ランダムヘキサマーと、TaqMan(登録商標)逆転写試薬(Applied Biosystems,Foster City,Ca.)とを使用し、25℃で10分間、37℃で60分間、及び95℃で10分間、RNAを逆転写した。試料を、−20℃で保存した。
リアルタイムPCR。Applied Biosystems Assays−On−Demand(商標)(TaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイとしても既知)を、製造元の仕様書(Applied Biosystems)に従って使用して、cDNA試料に対してPCRを実行した。この市販のキットは、ヒト細胞内のテロメラーゼに関してアッセイするために、広く使用される。簡潔には、hTERT(ヒトテロメラーゼ遺伝子)(Hs00162669)及びヒトGAPDH(内部対照)を、ABI prism 7000 SDSソフトウェア(Applied Biosystems)と共に7000配列検出システムを使用して、cDNA及びTaqMan(登録商標)Universal PCRマスターミックスと混合した。熱サイクル条件は、最初に50℃で2分間及び95℃で10分間とし、その後に、95℃で15秒間及び60℃で1分間の40サイクルとした。PCRデータを、製造元の仕様書に従って分析した。
ヒト臍由来細胞(ATCC受託番号PTA−6067)、線維芽細胞、及び間葉系幹細胞を、hTERT及び18S RNAに関してアッセイした。表14−1に示すように、hTERT、よってテロメラーゼは、ヒト臍帯組織由来細胞内では検出されなかった。
ヒト臍帯組織由来細胞(単離株022803、ATCC受託番号PTA−6067)及びnTera−2細胞をアッセイしたところ、それらの結果は、ヒト臍帯組織由来細胞の2つのロットでは、テロメラーゼの発現を示さなかったが、一方で、テラトーマ細胞株は、高レベルで発現することが明らかとなった(表14−2)。
したがって、本発明のヒト臍由来細胞は、テロメラーゼを発現しないと結論付けることができる。
様々な特許及び他の刊行物が、本明細書の全体を通して参照される。これらの刊行物のそれぞれは、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
以上、本発明の様々な態様を実施例及び好ましい実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲は、上記の説明文によってではなく、特許法の原則の下で適切に解釈される以下の特許請求の範囲によって定義されるものである点は認識されるであろう。

Claims (14)

  1. 眼変性状態の治療又は網膜変性における光受容細胞の損失の低減のための、分娩後由来細胞の集団を含む組成物の使用であって、前記分娩後由来細胞は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織から単離され、前記分娩後由来細胞の集団は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36を調節する、使用。
  2. 前記分娩後由来細胞は、MFG−E8、Gas6、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子を分泌し、前記ブリッジ分子は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36に結合する、請求項1に記載の使用。
  3. 前記血液を実質的に含まないヒト臍帯組織から単離された細胞集団は、培養中に増殖することが可能であり、少なくとも神経表現型の細胞に分化する潜在性を有し、継代時に正常核型を維持し、かつ、以下の特徴:
    a)培養中40回の集団倍加の潜在性、
    b)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90の産生、
    c)CD31、CD34、CD45、CD117、及びCD141の産生の欠如、並びに
    d)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8及びレチクロン1をコードする遺伝子の増加した発現、を有する、請求項1に記載の使用。
  4. 前記組成物は、医薬組成物である、請求項1に記載の使用。
  5. 前記医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体を含む、請求項1に記載の使用。
  6. 前記網膜変性は、加齢性黄斑変性である、請求項1に記載の使用。
  7. 前記加齢性黄斑変性は、乾燥型加齢性黄斑変性である、請求項5に記載の使用。
  8. 前記細胞集団は、HLA−A、B、Cに関して陽性であり、HLA−DR、DP、DQに関して陰性である、請求項2に記載の使用。
  9. 眼内のアポトーシス網膜細胞を排除するための、分娩後由来細胞の集団を含む組成物の使用であって、前記分娩後由来細胞は、血液を実質的に含まないヒト臍帯組織から単離され、前記分娩後由来細胞の集団は、食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36を調節する、使用。
  10. 前記分娩後由来細胞は、MFG−E8、Gas6、トロンボスポンジン(TSP)−1及びTSP−2から選択されるブリッジ分子を分泌し、前記ブリッジ分子は、前記食細胞受容体αvβ5インテグリン及びCD36を調節する、請求項8に記載の使用。
  11. 前記血液を実質的に含まないヒト臍帯組織から単離された細胞集団は、培養中に増殖することが可能であり、少なくとも神経表現型の細胞に分化する潜在性を有し、継代時に正常核型を維持し、かつ、以下の特徴:
    a)培養中40回の集団倍加の潜在性、
    b)CD10、CD13、CD44、CD73、及びCD90の産生、
    c)CD31、CD34、CD45、CD117、及びCD141の産生の欠如、並びに
    d)線維芽細胞、間葉系幹細胞、又は腸骨稜骨髄細胞であるヒト細胞と比較して、インターロイキン8及びレチクロン1をコードする遺伝子の増加した発現、を有する、請求項8に記載の使用。
  12. 前記組成物は、医薬組成物である、請求項8に記載の使用。
  13. 前記医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体を含む、請求項8に記載の使用。
  14. 前記細胞集団は、HLA−A、B、Cに関して陽性であり、HLA−DR、DP、DQに関して陰性である、請求項8に記載の使用。
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