以下、添付図面参照して、本発明に係る刃口部貫入幅測定システム及びケーソン沈設方法の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る刃口部貫入幅測定システム100の概略構成及び刃口部貫入幅測定システム100の特定結果を利用したケーソン沈設方法を説明するための概念図である。本実施形態においては、ニューマチックケーソン1を沈設させて橋脚等の基礎を構築するケーソン沈設工法に、本発明に係る刃口部貫入幅測定システム100の特定結果を利用したケーソン沈設方法を適用した場合について、以下に説明する。
まず、ニューマチックケーソン1の概略の構造等について説明する。
ニューマチックケーソン1は、円筒、角筒等の所定の断面形状を有し、筒形状をなして上下方向に延びる周壁2を有するものである。本実施形態では、ニューマチックケーソン1は、全体として、概ね円筒形状であり、鉛直方向に所定個数に分割されており、下から順に、ケーソン基部3と、図示省略したケーソン中間部と、同じく図示省略したケーソン頂部とにより構成される。図1では、ニューマチックケーソン1の構築途中の状態が示されている。詳しくは、ニューマチックケーソン1のうちのケーソン基部3の大半が地盤G内に沈下して静止している状態が示されている。
周壁2は、ケーソン基部3、前記ケーソン中間部及び前記ケーソン頂部の外周壁からなる。例えば、前記ケーソン中間部及び前記ケーソン頂部は、それぞれ、ケーソン基部3の最大外径より若干小さい外径を有して形成される。
ケーソン基部3は、ニューマチックケーソン1の最下端部を構成するものであり、円筒部3aと隔壁部3bとからなる。
円筒部3aは、円筒状に形成され上下方向に延び、ニューマチックケーソン1の周壁2の下端部を構成する。円筒部3aの径方向内側の内部空間は、隔壁部3bにより上下方向に二分されており、下側の空間が地盤掘削用の後述する作業室Rを構成する。円筒部3aの下端部は、刃口部4を構成する。刃口部4は、ニューマチックケーソン1の下端部の備えられるものである。刃口部4は、図1に示すように、ケーソン沈下時に地盤G(詳しくは、後述する下方地盤G2)に貫入する部位であり、概ね円筒状に形成されている。刃口部4の内周面4aは、刃口部先端4bから上方(言い換えると、隔壁部3b側)に向かうほどニューマチックケーソン1の中心軸Z側に近づくように傾斜したテーパー状に形成されている。詳しくは、刃口部4の最下端部における内周面4aの傾斜角(つまり、中心軸Zに対する内周面4aの傾斜角)は、例えば、その上側の内周面4aにおける前記傾斜角よりも大きくなるように設定されている。
また、円筒部3aは、具体的には、その上端側の外径が下端側の外径よりも若干小さくなるように、段付き状の外周面を有して形成されている。前記ケーソン中間部及び前記ケーソン頂部の外周壁は、円筒部3aにおける上端側の外径に合せた外径で形成されている。なお、円筒部3aの外周面は段付き状に限らず、同一外径を有していてもよい。この場合、ニューマチックケーソン1に対する沈下抵抗力の一部を構成する円筒部3a(周壁2)に作用する周面摩擦力は段付き状の場合よりも大きくなる。
作業室Rは、ニューマチックケーソン1における刃口部内側の空間、つまり、作業員や後述する掘削機5等により地盤を掘削するための地盤掘削用の空間であり、刃口部4の内周面4aと隔壁部3bとにより区画されている。作業室R内には外部から空気等が供給されており、作業室R内は圧気状態になっている。これにより、地盤から作業室R内への地下水、泥及びガス等の流入を抑制又は防止して、掘削作業の安全及び効率化を図っている。なお、この作業室R内の圧気により生じる揚圧力はニューマチックケーソン1の沈下力に抗する沈下抵抗力の一部を構成する。また、図示省略したが、作業室R内を照明する照明装置が、例えば、隔壁部3bの作業室R側の壁面の外縁部における周方向に間隔を空けた複数の箇所に、少なくとも刃口部4の内周面4aを照らすようにそれぞれ取り付けられている。
隔壁部3bは、前述したように、円筒部3aの径方向内側の内部空間を上下方向に二分し、作業室Rの天井壁となる部位である。本実施形態では、隔壁部3bの作業室R側の壁面(下面)には、掘削機5の走行ガイド用のガイドレール6が取り付けられている。掘削機5は、地盤Gのうちの、刃口部4の内側の地盤G1や、刃口部4の下方に位置する下方地盤G2を掘削するものである。掘削機5は、例えば、作業室R外からの遠隔操作により、ガイドレール6に沿って走行して掘削対象領域の近傍まで移動し、地盤G1及び下方地盤G2を掘削可能に構成されている。なお、刃口部4の内側の地盤G1と下方地盤G2との境は厳密に区分けされるものではない。
また、隔壁部3bには、貫通孔3b1がガイドレール6等と干渉しない位置に開口されている。この貫通孔3b1は、隔壁部3bの上側の壁面に設置される筒状のマンロック7及びマテリアルロック8の内部空間と作業室Rとの間を連通する。図1では、マンロック7の内部空間との連通用の貫通孔3b1と、マテリアルロック8の内部空間との連通用の貫通孔3b1が示されている。図示省略したが、作業室Rの圧気用の配管及び作業室R内のガスモニタリング用等の貫通孔がそれぞれ、適宜の位置に形成されている。なお、マンロック7には、上方開口部から下方開口部を経て作業室Rまで到達する階段が形成されており、この階段を通って、作業員が作業室R内に入室可能とされている。また、マンロック7には、途中に減圧室が設けられており、作業員は圧気された作業室Rでの作業終了後、この減圧室を経由して地上側に退出可能になっている。そして、マテリアルロック8は、作業室Rにおいて掘削した土砂をクレーン等によって排出する際等に利用される。
ここで、ケーソン沈設施工の際に、ケーソン基部3の刃口部4は、図1に示すように、下方地盤G2に貫入する。この刃口部4の内周面4aは傾斜しているため、刃口部4における下方地盤G2へ貫入している幅である貫入幅Bは、刃口部4の下方地盤G2への貫入深さが深くなるほど広くなる。貫入幅Bは、言い換えると、内周面4aにおける地盤Gに貫入している部位についての刃口部先端4bからの高さ範囲Hが高くなるほど広くなる。貫入幅Bとは、詳しくは、刃口部4のうち下方地盤G2に接触している内周面4aについての水平方向(つまり、ニューマチックケーソン1の中心軸Zと直交する方向)の幅をいう。また、貫入幅Bは、下方地盤G2からの反力がケーソン基部3に作用する幅、つまり沈下抵抗力の一部を構成する地盤反力の作用幅(作用面積)を表すものともいえ、その意味においてケーソン沈下の施工管理上重要なパラメーターの一つである。貫入幅Bが狭くなるほど、刃口部4に作用する地盤反力の合計が小さくなり、沈下抵抗力が小さくなる。このような貫入幅Bは、以下に詳述する刃口部貫入幅測定システム100により演算(測定)可能である。
次に、刃口部貫入幅測定システム100について、図1から図4を参照してその概略構成を説明する。図2は刃口部貫入幅測定システム100の概略構成を説明するための概念図である。図3は、刃口部貫入幅測定システム100の光学的測距装置とセンサー部との位置関係を説明するための断面図である。図4は、刃口部4の地盤Gへの貫入状態の一例を説明するため図面であり、図3に示すA−A’矢視断面における刃口部先端4bを含む部分拡大断面である。
刃口部貫入幅測定システム100は、ニューマチックケーソン1の沈設施工の際における刃口部4の地盤G(下方地盤G2)への貫入幅Bを測定するものであり、図1及び図2に示すように、光学的測距装置10(以下、測距装置10という)と、センサー部20と、本体部30とを含んで構成されている。
測距装置10は、刃口部4における傾斜した内周面4aの内側の作業室R内に設けられ、作業室Rに露出する地盤面G2’(以下、露出地盤面G2’という)及び内周面4aまでの距離を測定する装置である。
測距装置10は、例えば、測距部と駆動機構部とを含んで構成され、作業室R内において露出地盤面G2’及び内周面4aをレーザー光でスキャニングするいわゆる3Dレーザースキャナである。前記測距部は、レーザー光を対象物に向けて照射し、その対象物の表面からの反射光が戻ってくるまでの時間を測ることにより対象物までの距離を測定する。前記駆動機構部は、レーザー光の照射方向を仰角(上下方向)及び内周面4aの周方向に変更させるものである。
具体的には、測距装置10は、隔壁部3bの作業室R側の壁面における径方向中心(つまり、ニューマチックケーソン1の中心軸Zが交わる位置)に取り付けられている。ガイドレール6は隔壁部3bに径方向中心を避けた位置に取り付けられており、測距装置10の前記測距部は、例えば、ガイドレール6と干渉しない隔壁部3bの径方向中心において、前記駆動機構部により仰角方向に揺動すると共に中心軸Z回り(内周面4aの周方向)に360°回動することにより照射方向を変更し、スキャニング可能に構成されている。前記測距部は、例えば、レーザー光を連続的に照射する。そして、前記測距部は、スキャニング中に、レーザー光の照射方向(つまり、仰角方向並びに中心軸Z回りの回動方向で定まる方向)の所定角度刻み又は所定時間刻み等のサンプリング間隔で、測距を実行する。したがって、測距装置10は、対象物の表面(作業室R内において露出地盤面G2’及び内周面4a)におけるレーザー光のスキャニング走査軌跡に沿って前記サンプリング間隔に応じて定まる照射点までの測距結果を、照射方向毎(照射点毎)に取得する。
本実施形態では、図3に示すように、作業室R内に作業用の固定機器等の障害物(図1では図示省略されている)が設置されており、この障害物は容易に移動させることができないものとする。したがって、露出地盤面G2’及び刃口部4の内周面4aにおいて、この障害物の影となって、測距装置10からのレーザー光の照射されない領域(以下、非照射領域という)が存在するものとする。このため、本実施形態では、測距装置10は、この非照射領域については、距離を測定できないものとする。
本実施形態では、測距装置10は、測距結果に基づいて、対象物の表面における複数の照射点についての三次元の座標データ(以下、実測座標データという)からなる三次元点群データを生成可能に構成されている。したがって、測距装置10は、取得した三次元点群データに基づき、露出地盤面G2’と内周面4aの表面形状を測定する装置でもある。作業室R内に設置された測距装置10は、照射したレーザー光の照射方向毎に、前記測距部から露出地盤面G2’及び内周面4aまでの距離を測定し、この照射方向と測定した距離とに基づいて、露出地盤面G2’及び内周面4aについての複数の三次元の実測座標データからなる三次元点群データを生成する。この三次元点群データに基づく、露出地盤面G2’と内周面4aの表面形状の測定結果等は、本体部30の後述する表示部31に立体的等の所定の態様で表示可能に構成されている。
また、測距装置10は、撮像機能も有しており、カメラ一体型の3Dレーザースキャナである。測距装置10により撮像された画像Fについては後に詳述する。
センサー部20は、図1及び図3に示すように、ニューマチックケーソン1の刃口部4における傾斜した内周面4aにおける周方向の少なくとも所定角度範囲において、内周面4aに沿って上下方向に延在している。そして、センサー部20は、図1に示すようにニューマチックケーソン1の地盤G(下方地盤G2)内への沈下に伴って刃口部4が地盤Gに貫入すると、内周面4aにおける地盤Gに貫入している部位についての刃口部先端4bからの高さ範囲Hを識別可能な識別信号Sを出力するものである。
本実施形態では、センサー部20の設置される前記所定角度範囲は、図3に示すように、測距装置10からのレーザー光が照射されない前記非照射領域に対応する位置に設定されている。具体的には、センサー部20は、内周面4aに形成された凹溝内に埋め込まれ、内周面4aから作業室R側に突出しないように取り付けられている。そして、前記凹溝内に埋め込まれた状態のセンサー部20は、内周面4aと面一な感知面を有し識別信号Sを出力する。より具体的には、センサー部20は、2段階に傾斜した内周面4aのうち、刃口部先端4bの部位を避けた上側の部位に取り付けられている。
本実施形態では、センサー部20は、内周面4aに作用する地盤Gからの圧力に応じた信号を識別信号Sとして出力する圧力センサー群21からなるものである。圧力センサー群21は、例えば、複数の素子からなり、各素子はそれぞれ圧力に応じた信号を識別信号Sとして出力する。圧力センサー群21としては、具体的には、複数の圧電素子が上下方向及び周方向に間隔を空けて平面的(二次元的)にアレイ配置されて一体に形成された面圧センサーからなるものとして以下説明する。
例えば、図1に示すように、刃口部4が下方地盤G2に貫入しているとする。この状態において、圧力センサー群21における前記複数の圧電素子のうち下方地盤G2に貫入して下方地盤G2(堀残し残土)に接触している素子(以下では、これらの素子をそれぞれ適宜に接触素子という)には、下方地盤G2からの反力が作用する。そのため、これらの接触素子は、地盤反力に応じた信号を識別信号Sとしてそれぞれ出力する。一方、圧力センサー群21における前記複数の圧電素子のうち作業室Rに露出している素子(以下では、これらの素子をそれぞれ適宜に露出素子という)には、下方地盤G2からの反力は作用していない。そのため、これらの露出素子は、圧力ゼロを示す基準レベルの信号を識別信号Sとして出力する。したがって、圧力センサー群21における複数の圧電素子のそれぞれから出力される識別信号Sの信号レベル(例えば電圧値)の大きさは、前記接触素子と前記露出素子との間において急激に変化しており、前記露出素子からの信号レベルの大きさが前記接触素子からの信号レベルの大きさよりも急激に下がることになる。
本体部30は、刃口部貫入幅測定システム100全体の制御等をする本体であり、例えば、掘削機5の遠隔操作用の装置(図示省略)と共に地上側に設けられる。本実施形態では、本体部30は、表示部31と、境界特定部32と、計測部33と、記憶部34とを含んで構成されている。
本体部30には、測距装置10からの測距結果である実測距離データがどの照射方向のときの測距結果に対応するデータであるのかを判別可能に入力される。また、三次元点群データは、点群を構成する各照射点の実測座標データがどの照射方向のときの測距結果に対応するデータであるのかを判別可能に入力される。つまり、本体部30には、各照射点について、実測距離データと実測座標データとが照射方向毎に関連付けて入力される。さらに、この本体部30には、センサー部20からの各識別信号Sは、どの取り付け角度位置におけるどの高さ位置の圧電素子からの信号であるのかを判別可能に入力される。また、本体部30には、測距装置10により撮像した画像Fの画像データはその撮像範囲が中心軸Z回りのどの角度範囲のデータであるのかを判別可能に入力される。
表示部31は、例えば、液晶ディスプレイからなり、測距装置10により生成された三次元点群データに基づく露出地盤面G2’と内周面4aの表面形状を表す画像(図示省略)や、測距装置10の撮像機能により撮像された画像Fを表示可能に構成された表示機器である。また、表示部31は、センサー部20からの識別信号Sに基づく圧力や、貫入幅Bの計測結果等を表示可能に構成されている。
境界特定部32は、測距装置10の測距結果に基づいて、図4に示すように、刃口部4の内周面4aのうちの作業室Rに露出している露出領域S1と内周面4aのうちの地盤G(下方地盤G2)内に貫入している貫入領域S2との境界Wを特定するように構成されている。この境界特定部32における境界Wの特定方法のより詳しい内容については後に詳述する。
計測部33は、境界特定部32による境界Wの特定結果とセンサー部20からの識別信号Sとに基づいて、刃口部4の地盤への貫入幅Bを内周面4aの全周に亘って計測するように構成されている。この計測部33における貫入幅Bの計測方法のより詳しい内容については後に詳述する。
記憶部34は、所定の記憶媒体であり、ニューマチックケーソン1の寸法等の構造データや、測距装置10及び圧力センサー群21の取り付け位置を特定可能なデータ等が記憶されている。
詳しくは、記憶部34には、測距装置10の取付け位置のデータとして、例えば、隔壁部3bの作業室R側の壁面における中心軸Zが交わる点の座標データが記憶されている。そして、記憶部34には、内周面4a全体が作業室Rに露出している状態で、内周面4a全体をレーザースキャニングした場合における測距装置10(詳しくは前記測距部の投受光部分)と内周面4aとの間の設計距離データが記憶されている。この設計距離データは、測距装置10におけるレーザー光の照射方向の所定角度刻み又は所定時間刻み等のサンプリング間隔に合せて、照射方向毎に記憶されている。そして、設計距離データは、この設計距離データに対応する内周面4aにおけるレーザー照射点の位置を示す設計座標のデータ(以下、設計座標データという)とこのレーザー照射点における刃口部4の幅(つまり貫入幅B)のデータとが、照射方向毎に関連付けて記憶されている。つまり、記憶部34には、設計距離データと設計座標データと貫入幅Bのデータとが照射方向毎に関連付けて記憶されている。
そして、記憶部34には、圧力センサー群21の取り付け位置のデータとして、例えば、圧力センサー群21全体について、前記所定角度範囲に対応する内周面4aにおける中心軸Z回りの取り付け角度範囲データが記憶されている。また、記憶部34には、複数の圧電素子それぞれについて、刃口部先端4bを基準とした中心軸Zの延伸方向の高さ位置の座標データと中心軸Z回りの取り付け角度データとが関連付けて記憶されている。
次に、測距装置10の撮像機能により撮像された画像Fについて、図5を参照して説明する。図5は刃口部4の地盤への貫入状態を作業室R側から部分的に撮像した画像Fの一例を示す図である。図5に示す画像Fは、例えば、図4に示すようにセンサー部20が設けられていない断面位置における刃口部4の貫入状態を測距装置10の撮像機能により撮像したものである。
図5に示した画像Fでは、上側に刃口部4の内周面4aの露出領域S1が映し出されており、下側(図中、網掛け部)に下方地盤G2のうちの作業室Rに露出している露出地盤面G2’の法面が映し出されている。したがって、この画像Fにおいて露出地盤面G2’の映し出されている領域の紙面奥側の領域が内周面4aのうちの貫入領域S2に対応する領域である。しかし、図5に示した画像Fは、露出領域S1と露出地盤面G2’の境界、つまり、露出領域S1と貫入領域S2との境界Wが不明瞭であり、人の視覚だけでは画像Fにおいて正確に境界Wを特定することが困難であるものとする。このように画像Fだけでは境界Wを正確に特定することが困難な場合等に、以下に詳述する境界特定部32は有用である。
次に、境界特定部32による境界Wの特定方法について、図5及び図6を参照して詳述する。図6は、図5に示す画像Fにおいて境界Wを強調して描画したものである。
境界特定部32は、例えば、記憶部34に記憶された設計距離データと測距装置10の測距結果である実測距離データとを比較することにより、境界Wを特定する。
境界特定部32は、具体的には、測距装置10により計測された距離の実測距離データをレーザー光の照射方向毎(照射点毎)に取得すると共に、設計距離データを記憶部34から照射方向毎に読み出す。そして、境界特定部32は、設計距離データから実測距離データを差し引く演算処理を照射方向毎に実行する。そして、境界特定部32は、照射方向毎に演算される設計距離データと実測距離データとの差分値が測距精度等により予め定めた所定の閾値より小さいか否かを判定する。境界特定部32は、差分値が閾値より小さいと判定した場合、その照射方向(照射点)の領域は、露出領域S1であると特定する。また、境界特定部32は、差分値が閾値以上であると判定した場合、その照射方向の領域は、貫入領域S2内の領域であると特定する。そして、境界特定部32は、例えば、図6に示すように、露出領域S1と貫入領域S2との境界Wを強調する境界線を画像Fに描画することで、境界Wを視覚的に容易に特定可能な画像F’を表示部31に表示させる。このとき、境界特定部32は、例えば、貫入領域S2内の領域であると特定した複数の照射方向のうち境界Wに沿う各照射方向(以下、境界対応照射方向という)に対応する座標を、記憶部34内の設計座標データ、又は、測距装置10からの三次元点群データを構成する複数の実測座標データの中から選択する。そして、境界特定部32は、この選択した選択座標のデータを、境界Wの特定結果の情報として、境界対応照射方向毎に記憶部34に記憶させる。なお、非照射領域についての実測距離データは測距装置10から入力されないため、境界特定部32は、この非照射領域については測距結果に基づいて境界Wを特定しない。
次に、計測部33による貫入幅Bの計測方法について、図7を参照して詳述する。図7は計測部33による貫入幅Bの計測結果の一例を示す概念図である。
具体的には、計測部33は、例えば、記憶部34に予め記憶されている設計座標データの中から境界Wの特定結果の情報としての選択座標のデータに対応する設計座標データを特定すると共に、この設計座標データと関連付けて記憶部34に予め記憶されている貫入幅Bのデータを、境界対応方向毎に読み出す。そして、計測部33は、この読み出した境界対応方向毎の貫入幅Bのデータを、貫入幅Bの計測結果として、表示部31に表示する。このとき、計測部33は、例えば、読み出した境界対応方向毎の貫入幅Bのデータとこれら境界対応方向の選択座標のデータとに基づいて、図7に示すように、刃口部4の全周に亘る貫入幅Bの状態を、表示部31に実線で示すように表示させる。
測距装置10の非照射領域についての測距結果は計測部33に入力されない。したがって、計測部33は、測距装置10から全周についての測距結果が入力されているか否かを判定するように構成されている。そして、本実施形態では、計測部33は、全周についての測距結果が入力されていないと判定し、入力されていない領域、つまり、非照射領域については、非照射領域に対応する部位に設けられたセンサー部20からの識別信号Sに基づいて、貫入幅Bを計測する。具体的には、計測部33には、圧力センサー群21における複数の圧電素子のうちの下側の複数の前記接触素子から地盤反力に応じた信号レベルの識別信号Sが入力されると共に、これら複数の前記接触素子の上方の複数の前記露出素子から圧力ゼロを示す基準レベルの識別信号Sが入力される。そして、計測部33は、例えば、入力された各識別信号Sについてのサンプリングデータに基づいて、複数の圧電素子のうち予め定めた所定閾値以上の信号レベルの大きさの変化があるか否かを判定する。図1に示す状態では、計測部33は、複数の前記接触素子と複数の前記露出素子との間に、所定閾値以上の信号レベルの大きさの変化があると判定する。そして、計測部33は、例えば、複数の前記接触素子のうちの高さ位置の座標データが一番大きい前記接触素子としての圧電素子の座標データと内周面4aの傾斜角度のデータとを前記記憶部から読み出し、この傾斜角度のデータと座標データとから貫入幅Bを演算し、図7に示す非照射領域における貫入幅Bの測定結果として出力する。図7において、太線の二点鎖線で示した部分がセンサー部20の識別信号Sに基づいて特定された境界Wを示している。なお、計測部33は、仮に、全周についての測距結果が入力されていると判定した場合には、前述したように計測部33からの測距結果に基づく境界Wの特定結果に基づいて、全周についての貫入幅Bの計測を実行すればよい。
このようにして、計測部33は、境界特定部32による境界Wの特定結果とセンサー部20からの識別信号Sとに基づいて、貫入幅Bを内周面4aの全周に亘って計測する。そして、図1に示すように、ケーソン基部3が傾くことなく沈下していると、貫入幅Bの測定結果は全周に亘って略等しい値となる。その結果、図7に示すように、刃口部4の貫入幅Bが内周面4aの周方向に亘って略等しい状態を示す測定結果を得ることができる。
ここで、ケーソン沈設施工の際に、ケーソン基部3の上部に沈設深さに応じた所定個数の前記ケーソン中間部が鉛直方向に順次積み重ねて構築されると、ケーソン基部3が前記ケーソン中間部と共に地盤G内に沈下する。そして、さらに、前記ケーソン中間部の最上部に前記ケーソン頂部が積み重ねられると、ケーソン基部3が前記ケーソン中間部及び前記ケーソン頂部と共に地盤G内に沈下する。これにより、地表面側から所定の沈設深さまで延びるニューマチックケーソン1が地盤G内に構築される。そして、ニューマチックケーソン1の上部(つまり、前記ケーソン頂部)に、橋脚等が設置されることになる。詳しくは、作業室Rにおける内側の地盤G1及び下方地盤G2の掘削とこの掘削によるケーソン沈下とが、ニューマチックケーソン1の沈設深さまで順次繰り返される。つまり、刃口部4が下方地盤G2に貫入して静止している状態において、作業室R内にて下方地盤G2等が掘削されて沈下抵抗力が沈下力より低くなると、ケーソン基部3は沈下し始め、予測される所定量だけ沈下したところで静止する。その後、再び掘削を行って所定量だけ沈下させ、これを複数回繰り返すと共に、途中で前記ケーソン中間部及び前記ケーソン頂部を順次積み重ねていく。
また、ケーソン沈設施工における掘削の際に、刃口部4の内周面4aに接触している下方地盤G2を制限なく掘削すると、沈下抵抗力が急激に低下し、ケーソン基部3を意図せず沈下させたり予定以上の深さまで沈下(過沈下)させたりしてしまう可能性がある。そのため、ケーソン沈下を安全に開始又は再開させるためには、掘削後においても刃口部4の内周面4aには、下方地盤G2の一部を適度に残して接触させる必要がある。したがって、刃口部貫入幅測定システム100により測定された刃口部4の下方地盤G2への現時点における貫入幅Bは、現時点における内周面4aの下方に残されて接触している堀残し残土幅、言い換えると、地盤からの反力の大きさを把握可能なパラメーターでもある。この意味において、貫入幅Bは、刃口部4の下方地盤G2をあとどの程度掘削可能であるかについて、その掘削量等を定める際に有用な情報となる。前記堀残し残土は、下方地盤G2そのものであり、作業室R内において刃口部4の内周面4aの全周に亘って接触して、刃口部4の内周面4aの下方に存在する概ね環状の残土である。
次に、本発明に係るケーソン沈設方法の一実施形態を、ニューマチックケーソン1を用いた場合について、図1及び図8を参照して説明する。図8は、本実施形態のケーソン沈設方法を説明するための刃口部4の拡大図の一例である。
前述したように、ケーソン沈設施工では、掘削と沈下が繰り返される。つまり、ケーソン基部3の沈下が停止して、ケーソン基部3が静止している場合に、その後、次の沈下を再開させるためには、再度、下方地盤G2を掘削する必要がある。そして、この掘削は適度な掘削量等で行う必要がある。
そのため、本実施形態におけるケーソン沈設方法では、前述した刃口部貫入幅測定システム100の貫入幅Bの測定結果を利用して刃口部4の下方地盤G2の掘削量を調整しつつ、ニューマチックケーソン1を地盤Gの地表面側から所定深さまで沈下させて設置するように構成されている。
具体的には、図8に示すように、刃口部4が下方地盤G2に貫入して、ケーソン基部3が静止している状態で、刃口部貫入幅測定システム100によって貫入幅Bを測定する。そして、測定された貫入幅Bにより、現時点におけるケーソン基部3(刃口部4)に作用する地盤反力の作用幅が分かるため、刃口部4に作用する地盤反力の合計を推定できる。そして、主にこの推定した地盤反力の合計と予め推定可能な周面摩擦力とからなる沈下抵抗力が沈下力よりも適度に低くなるような、刃口部4の下方地盤G2の掘削量を決定する。そして、決定した掘削量に応じて下方地盤G2(堀残し残土)における作業室R側に露出する法面(つまり、露出地盤面G2’)を刃口部4の内周面4a側に向って掘削する。図8に網掛けされた領域が掘削領域である。図8に示す二点鎖線で示した部分が、掘削後の下方地盤G2の(堀残し残土)の法面(露出地盤面G2’)である。この掘削後の貫入幅Bは掘削前の貫入幅Bよりも適度に狭くなっているため、沈下抵抗力が適度に低くなり、沈下がゆっくりと再開する。そして、この沈下中においても貫入幅Bの測定は継続され、沈下に伴い貫入幅Bは大きくなり、予測される所定量だけ沈下したところで沈下が再び停止する。これを複数回繰り返すと共に、途中で前記ケーソン中間部及び前記ケーソン頂部を順次積み重ねることにより、地表面側から所定の沈設深さまで延びるニューマチックケーソン1を地盤G内に構築する。
また、この沈設施工の際に、ケーソン基部3を略鉛直方向に沈下させることが求められる。そのため、下方地盤G2の掘削量(言い換えると堀残し残土幅)が内周面4aの周方向に亘って略均一になるように、下方地盤G2の一部が掘削される。この掘削により、ケーソン基部3が傾斜せずに略鉛直方向に沈下する。このとき、刃口部4の貫入幅Bは、図7に示すように、内周面4aの周方向に亘って若干のバラツキがあっても、所定のバラツキの範囲内であれば、ケーソン基部3を傾斜せずに略鉛直方向に沈下させることが可能である。
かかる本実施形態による刃口部貫入幅測定システム100によれば、ケーソン沈設の際に、刃口部4の内周面4aの全周に亘って、刃口部4の地盤Gへの貫入幅Bを常時測定できるため、刃口部4の地盤Gへの貫入状況を常時把握(モニタリング)することができ、ひいては、ケーソン沈下の施工管理をより確実且つ安全に行うことができる。
かかる本実施形態によるケーソン沈設方法によると、刃口部貫入幅測定システム100の測定結果を利用して刃口部4の下方地盤G2の掘削量を調整しつつ、ニューマチックケーソン1を地盤Gの地表面側から所定深さまで沈下させて設置する構成である。したがって、例えば、刃口部貫入幅測定システム100により測定された貫入幅Bに基づいて現時点における地盤Gからの反力の合計を推定することができる。そして、主にこの推定した地盤Gからの反力の合計と周壁2に作用する周面摩擦力とからなる沈下抵抗力が沈下力(主にケーソン自重)よりも適度に低くなるように、刃口部4の下方地盤G2の掘削量を調整して、ニューマチックケーソン1の沈下を開始させることができる。その結果、ニューマチックケーソン1を地盤Gの地表面側から所定深さまで、安全に沈下させて設置させることができる。
このようにして、刃口部4の地盤Gへの貫入幅Bを測定可能な刃口部貫入幅測定システム100、及び、これを利用したケーソン沈設方法を提供することができる。
ここで、光学的測距装置としては、一般的に、本実施形態の測距装置10のように、レーザースキャナ等の光学的手段を用いた装置を採用するが、障害物が光学的測距装置と対象物(つまり、露出地盤面G2’及び刃口部4の内周面4a)との間に存在する場合には、光学的に測距できない領域があり、その領域における刃口部4の貫入幅Bを測定できない場合もある。この点、本実施形態に係る刃口部貫入幅測定システム100では、計測部33は、測距装置10の測距結果に基づいて境界特定部32により特定された境界Wの特定結果だけでなく、この境界Wの特定結果とセンサー部20からの識別信号Sとに基づいて、貫入幅Bを計測する構成である。したがって、例えば、本実施形態のように、光学的に測距できず、測距結果だけでは貫入幅Bを測定できないデータ欠損領域(つまり非照射領域)が生じることが予め判明している場合等には、少なくともそのデータ欠損領域に対応する内周面4aにおける周方向の所定角度範囲にセンサー部20を設けることにより、前記データ欠損領域の貫入幅Bをセンサー部20の識別信号Sを用いて補間的に測定できる。その結果、本実施形態のように、内周面4aの全周に亘る貫入幅Bを確実に測定することができる。
また、本実施形態では、測距装置10は、測距結果に基づいて、露出地盤面G2’及び内周面4aについての三次元点群データを生成可能である。これにより、測距装置10は、三次元点群データに基づいて露出地盤面G2’と内周面4aの表面形状等を測定することができる。なお、刃口部貫入幅測定システム100において、測距装置10から本体部30に入力される三次元点群データに基づいて、図4に示すような掘削前の露出地盤面G2’と内周面4aとの位置関係を示す現時点での貫入状態断面図を描画して表示部31に表示すると共に、図8に示すように、計測した貫入幅Bに基づく掘削量に応じた掘削後の露出地盤面G2’の予測位置を二点鎖線で描画した予測断面図を生成して表示部31に表示するように構成してもよい。掘削量はオペレータが刃口部貫入幅測定システム100に入力してもよいし、予め定めた所定の算出方法により刃口部貫入幅測定システム100自体が算出してもよい。
なお、本実施形態では、センサー部20としての圧力センサー群21は、非照射領域に対応した所定角度範囲にのみ設けるものとしたが、これに限らない。図9から図11に示す変形例に示すように、センサー部20は、内周面4aの周方向に間隔を空けた複数の箇所(図では12箇所)に設ける構成としてもよい。この場合、面圧センサーからなる圧力センサー群21を配置される非照射領域以外の部分には、センサー部20として、複数の圧電素子が上下方向の一方向に間隔を空けて一列に配置されて一体に形成された棒状のセンサアレイからなる圧力センサー群21’を並べて構成してもよい。この圧力センサー群21’は、例えば、面圧センサーからなる圧力センサー群21の一列分と同じように、内周面4aに作用する地盤Gからの圧力に応じた信号を識別信号Sとして出力する。この圧力センサー群21’は、以下に説明する撥ね付け土と下方地盤G2とを区別する場合に有用である。
ここで、作業室R内では、掘削機5等により、刃口部4の内側の地盤G1や、刃口部4の下方に位置する下方地盤G2が掘削される。この掘削により生じる掘削土は、最終的にはマテリアルロック8を通じてクレーン等によって外部へ排出されることになる。しかし、掘削してから排出されるまでの間は、例えば、図12に示すように、掘削後の下方地盤G2の上に、撥ね付け土(図中網掛け部の範囲)として仮置きすることがある。この撥ね付け土は、掘削機5等によって、ほぐされているため、内周面4aのうちこの撥ね付け土が接触している部分についての圧力は、下方地盤G2に貫入している部分の圧力よりも著しく低く、この撥ね付け土の部分についての沈下抵抗力は著しく低く、ケーソン沈下に抵抗する支持地盤としては機能していない。したがって、このような撥ね付け土の仮置きを行うことが想定される場合には、撥ね付け土を考慮した実質的な貫入幅Bを計測する工夫が必要である。
この点、前述した図9から図11に示す変形例が有用である。この場合には、計測部33は、刃口部4の内周面4aにおいて、識別信号Sにより定まる圧力が所定の閾値より低い圧力を示す低圧領域がある場合には、この低圧領域についての貫入幅Bの計測については、境界Wの特定結果を除外し、識別信号Sに基づいて計測するように構成する。
具体的には、計測部33には、センサアレイからなる圧力センサー群21’における複数の圧電素子のうちの下方地盤G2に接触している下側の複数の素子から地盤反力に応じた信号レベルの識別信号Sが入力され、撥ね付け土に接触している複数の素子からは低圧の信号レベルの識別信号Sが入力され、作業室Rに露出している複数の素子から圧力ゼロを示す基準レベルの識別信号Sが入力される。撥ね付け土はほぐされているため、圧力センサー群21’における複数の圧電素子のそれぞれから出力される識別信号Sの信号レベルの大きさは、下方地盤G2に接触する圧電素子と撥ね付け土に接触する圧電素子との間において急激に変化しており、撥ね付け土からの信号レベルの大きさが急激に下がることになる。計測部33は、例えば、圧力センサー群21’からの各識別信号Sについてのサンプリングデータに基づいて、複数の圧電素子のうち予め定めた所定閾値以上の信号レベルの大きさの変化があるか否かを判定することにより前記低圧領域があるか否かを判定する。図12に示す状態では、計測部33は、下方地盤G2に接触する複数の圧電素子と撥ね付け土に接触する複数の圧電素子との間に、所定閾値以上の信号レベルの大きさの変化があると判定し、少なくともこの圧力センサー群21’の取り付け角度位置に前記低圧領域があると判定する。この場合、計測部33は、この取り付け角度位置における貫入幅Bの計測については、境界Wの特定結果を除外し、例えば、信号レベルの大きさに基づいて下方地盤G2に接触する圧電素子の領域を特定すると共に、この特定した複数の圧電素子のうちの高さ位置の座標データが一番大きい圧電素子の座標データと内周面4aの傾斜角度のデータとを記憶部34から読み出し、この傾斜角度のデータと座標データとから貫入幅Bを演算する。計測部33は、演算した貫入幅Bをこの圧力センサー群21’の 取り付け角度位置における貫入幅Bの計測結果として取得する。撥ね付け土は内周面4aの周方向に広がりを有している。したがって、計測部33は、例えば、所定閾値以上の信号レベルの変化がある圧力センサー群21’の取り付け角度位置を中心にして周方向に所定幅分だけ撥ね付け土が存在するものとみなし、この所定幅分に相当する領域についても、境界Wの特定結果を除外し、この圧力センサー群21’の識別信号Sに基づいて演算した貫入幅Bの結果を援用する。このように構成することにより、測距装置10では区別することができない下方地盤G2と撥ね付け土との違いを、区別することができる。このため、撥ね付け土の領域であり、低圧領域であると判定した部分については、圧力センサー群21’の識別信号Sに基づいて実質的な貫入幅Bを計測することができる。なお、非照射領域に配置される圧力センサー群21においても、上記と同じ方法により、撥ね付け土と下方地盤G2とを区別して、実質的な貫入幅Bを計測するように構成することができる。
また、記憶部34には、さらに、地盤Gからの圧力と地盤Gの土質種類とを関連付けたデータテーブルを予め記憶させてもよい。この場合、計測部33は、圧力センサー群21、21’からの識別信号Sに基づいて定まる圧力に対応する前記データテーブル内の地盤の土質種類を特定すると共に、この特定した土質種類に応じて予め定めた目標貫入幅のデータを出力する構成とする。この場合、例えば、計測部33から出力された目標貫入幅を表示部31に表示する。これにより、目標貫入幅に基づいて、掘削量を容易に定めることができ、施工管理等をより迅速、確実かつ容易に行うことができる。
また、計測部33は、貫入幅を常時計測し、貫入幅Bについての所定時間内における変化量を内周面4aの全周に亘って演算するように構成してもよい。これにより、その変化量に基づいて、ケーソン沈下の速度等をモニタリングすることができる共に、例えば、貫入幅Bの変化の時間履歴のデータを保存することにより、同様の施工現場に有用なデータを取得することができる。また、この変化量が所定閾値以上になった場合には、オペレータ等へ異常を報知する手段を設けてもよい。
また、本実施形態では、複数のセンサー部20は、それぞれ圧力センサー群21、21’からなるもの、つまり、一種類のセンサーからなるものとしたが、これに限らず、図13及び図14に示すように複数の種類のセンサーの組み合せからなるものとしてもよい。
例えば、図13に示すように、センサー部20は、圧力センサー群21、21’と、照度に応じた信号を識別信号Sとして出力する照度センサー群22との組み合わせからなるものとしてもよい。照度センサー群22は、圧力センサー群21、21’における複数の前記圧電素子に替って複数の照度検知素子22aを配置させたものである。この場合、例えば、図13に示すように、圧力センサー群21、21’を、内周面4aにおける上下方向についての下側部位に設け、照度センサー群22を、内周面4aにおける上下方向についての上側部位に設けるとよい。具体的には、圧力センサー群21、21’と照度センサー群22とを並べて全体として上下方向に延伸するように配置する。そして、圧力センサー群21、21’における複数の圧電素子間での信号レベルの大きさの変化についての前記閾値とは別に、照度センサー群22における複数の照度検知素子間での信号レベルの大きさの変化についての閾値を設定すればよい。つまり、刃口部4の下方地盤G2(堀残し残土)への貫入が内周面4aのうち圧力センサー群21、21’の取り付け位置で止まっている場合には、計測部33は、複数の圧電素子のうちの前記接触素子と前記露出素子との間に、所定閾値以上の信号レベルの大きさの変化があると判定する。仮に、図13に示すように、刃口部4の下方地盤G2(堀残し残土)への貫入が内周面4aのうち照度センサー群22の取り付け位置にまで及んでいる場合には、計測部33、複数の照度検知素子のうちの前記接触素子と前記露出素子との間に、所定閾値以上の信号レベルの大きさの変化があると判定する。これにより、地盤反力が常に作用し得る内周面4aの下側部位では、圧力センサー群21、21’により地盤反力の変化を確実に検知し、地盤反力が作用する可能性が低い一方で照明のもと一定の照度のある作業室Rに露出する可能性の高い内周面4aの上側部位では、照度センサー群22により照度変化を確実に検知することで、貫入幅Bを確実に測定できる。
また、図14に示すように、センサー部20は、圧力センサー群21、21’と、温度に応じた信号を識別信号Sとして出力する温度センサー群23との組み合わせからなるものとしてもよい。温度センサー群23は、圧力センサー群21、21’における複数の前記圧電素子に替って複数の温度検知素子23aを配置させたものである。この場合も、例えば、図14に示すように、温度センサー群23を、内周面4aにおける上下方向についての上側部位に設け、圧力センサー群21、21’と温度センサー群23とを並べて全体として上下方向に延伸するように配置するとよい。そして、圧力センサー群21、21’における前記閾値とは別に、温度センサー群23における複数の温度検知素子間での信号レベルの大きさの変化についての閾値を設定すればよい。これにより、地盤反力が常に作用し得る内周面4aの下側部位では、圧力センサー群21、21’により地盤反力の変化を確実に検知し、地盤反力が作用する可能性が低い一方で作業室Rに露出して地盤G内よりも比較的低い温度を検知し得る内周面4aの上側部位では、温度センサー群23により温度変化を確実に検知することで、貫入幅Bを確実に測定できる。
また、図13や図14では、内周面4aの周方向に離間した複数の箇所にそれぞれ設けられセンサー部20のそれぞれが二種類のセンサーの組み合わせからなるものとしたが、これに限らず、面圧センサーからなる圧力センサー群21を設けると共に、内周面4aの周方向に、圧力センサー群21’と照度センサー群22とを交互に設けたり、圧力センサー群21’と温度センサー群23とを交互に設けたりしてもよい。また、全てのセンサー部20を、照度センサー群22としてもよいし、温度センサー群23としてもよい。また、センサー部20は、上下方向に延在するものとしたが、これに限らず、例えば、内周面4aの全周に亘って設けてもよい。この場合、例えば、センサー部20として面圧センサーを内周面4aの全周に貼り付ける等して敷設するとよい。
次に、図15及び図16は、本発明の第2実施形態に係る刃口部貫入幅測定システム100’の概略構成を説明するための概念図である。図17は、刃口部貫入幅測定システム100’の光学的測距装置10と後述する撮像部40との位置関係を説明するための断面図である。図18は撮像部40により撮像されて得られた画像F”の一例を示す。なお、第1実施形態における刃口部貫入幅測定システム100と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図15及び図16に示すように、第2実施形態に係る刃口部貫入幅測定システム100’では、刃口部貫入幅測定システム100におけるセンサー部20に替って撮像部40を備えている。
撮像部40は、作業室R内における測距装置10の設置位置と異なる位置に配置され、刃口部4の内周面4aにおける周方向の少なくとも所定角度範囲を撮像するものであり、例えば、一般的なデジタルカメラである。図17に示すように、撮像部40の撮像する前記所定角度範囲は、内周面4aのうちの測距装置10からのレーザー光が照射されない非照射領域に対応する位置に設定されている。つまり、撮像部40は、内周面4aのうちの非照射領域を撮像可能な位置に配置されている。撮像部40は、撮像した画像F”の画像データを本体部30に出力する。この画像F”の画素数は、例えば、数十万から数百万のうちの所定の画素数を採用できる。図18では、各画素の単位を分かり易く示すために各画素を誇張して大きく示したが、各画素の範囲(大きさ)は実際には図18で示したものよりも狭い(小さい)。図18に示した画像F”では、上側に刃口部4の内周面4aの露出領域S1が映し出されており、下側(図中、網掛け部)に下方地盤G2のうちの作業室Rに露出している露出地盤面G2’が映し出されている。したがって、この画像F”において露出地盤面G2’の映し出されている領域の紙面奥側の領域が内周面4aのうちの貫入領域S2に対応する領域である。
第2実施形態では、計測部33は、境界特定部32による境界Wの特定結果と撮像部40により撮像された画像F”のデータ(以下、画像データという)とに基づいて、刃口部4の地盤Gへの貫入幅Bを内周面4aの全周に亘って計測する。
具体的には、計測部33は、画像解析部33aを備えている。画像解析部33aは、撮像部40からの画像データに基づいて、露出領域S1と貫入領域S2との境界Wを特定するように構成されている。例えば、記憶部34には、撮像部40の撮像画角等のデータ等が記憶されている。具体的には、撮像部40の設置位置における一度の撮像により取得される画像F”内の全体に、刃口部4の内周面4aが映し出されていると仮定する。そして、記憶部34には、この場合の画像F”の各画素における内周面4aの実際の空間座標位置(例えば、3次元座標位置)のデータと、この空間座標位置における刃口部4の幅(つまり貫入幅B)のデータとが、画素毎に関連付けて記憶されている。計測部33の画像解析部33aは、例えば、入力された画像データの各画素の濃淡等を示すデータに基づいて、濃淡等のデータが予め定めた閾値以上に変化する境界部分の画素位置を特定する。そして、画像解析部33aは、特定した画素位置に対応する空間座標位置のデータを記憶部から読み出し、この読み出した空間座標位置のデータを境界Wの特定データとして取得する。さらに、計測部33は、取得した境界Wの特定データの空間座標位置のデータに対応する貫入幅Bのデータを、特定した境界部分の画素位置毎に読み込み、この読込んだ貫入幅Bのデータを、非照射領域における貫入幅Bの計測結果とする。
このように、第2実施形態に係る刃口部貫入幅測定システム100’では、刃口部貫入幅測定システム100におけるセンサー部20に替って撮像部40を備え、この撮像部40によって、測距装置10により測距できない非照射領域についての貫入幅Bを撮像部40の画像データを用いて補間的に測定できる。その結果、第1実施形態と同様に、内周面4aの全周に亘る貫入幅Bを確実に測定することができる。
なお、撮像部40は、一つに限らず、複数台でもよい。また、撮像部40は、一般的なデジタルカメラに限らず、画像の画素毎に、所定の波長帯域における光の強度Iの分布(強度分布)を検出可能なカメラ、例えば、350nmから1100nmの波長帯域における所定波長帯域の光を1nmから10nmのうちの所定の波長間隔で分光し、この波長間隔で前記強度分布を検出する、いわゆるハイパースペクトルカメラからなるものでもよい。つまり、ハイパースペクトルカメラは、言い換えると、例えば、数十バンド(種類)以上の波長刻みで分光された光の強度分布(スペクトル)の情報(ハイパースペクトル情報)を取得可能なカメラである。ハイパースペクトルカメラからなる撮像部40は、例えば、350nm(近紫外)〜1100nm(近赤外)の波長を5nm間隔で分光し、画像の画素毎に前記ハイパースペクトル情報を取得可能に構成されている。このハイパースペクトル情報は、人の目や一般的なRGBデジタルカメラでは捉えられない撮像対象の特性等を捉えることが可能な情報である。この場合、画像解析部33aは、前記画像データの各画素のデータとして、前記ハイパースペクトル情報に基づいて、境界Wを特定することができる。
また、測距装置10の前記測距部としては、レーザー光を照射するものに限らず、ミリ波、赤外線等の適宜の波長の光を照射する測距部を適用することができる。また、測距装置10の前記測距部は、3Dレーザースキャナに限らず、ステレオカメラ等の適宜の光学的手段を採用いることができる。ステレオカメラを採用する場合、測距装置10は、ステレオカメラによって取得された画像を用いた三角測量方式により、三次元点群データを取得する。
また、上記説明では、ニューマチックケーソン1を橋脚の基礎としたが、ニューマチックケーソン1は、橋脚に限らず他の建築構造物の基礎として用いることができる。また、ニューマチックケーソン1は、建築構造物の基礎に限らず、地下構造物として用いることもできる。また、ニューマチックケーソン1は、円筒状のみでなく、角筒状等のあらゆる形状を適用することができる。
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能であることはもちろんである。