次いで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に詳述する。図1は、本発明に係るクレープ紙の平面図であり、一部(A部分)を拡大して表している。図2は、上記クレープ紙を積層したキッチンペーパーの平面図であり、一部(B部分)を拡大して表している。図3は、図2のC−C断面であり、図4は、図2のD−D断面である。
本実施形態に係るキッチンペーパー1は、エンボスが付与された二枚のクレープ紙10A、10Bの各々エンボス凸部形成面10xが対面されて一体化され、表裏には前記エンボス凸部21A,21Bに対応する凹エンボス22A,22Bが存在するようになっている。そして、特に一方面のクレープ紙10A(10B)におけるエンボス凸部21A(21B)が、他方面のクレープ紙10B(10A)の非エンボス凸部23B(23A)(エンボス凸部以外の部分)に位置する、所謂ネステッド形式の積層構造となっている。
このキッチンペーパー1を構成するクレープ紙10A,10Bの坪量は、15〜35g/m2、好ましくは17〜25g/m2である。なお、坪量は、JIS P 8124(1998)による。上記坪量の範囲であると、紙面に水や油などの液体が触れた際に、十分な液拡散性が得られ、特に吸水性能が十分となり、また、ネステッド形式でありながらも高い吸油量を奏するという本発明の特徴的なエンボス構成による効果が得られやすくなる。また、上記坪量の範囲内であれば、拭き取り操作の際の柔らかさ、拭き取り面に対する追従性といったネステッド形式のキッチンペーパーの利点も低下しない。ここで、本発明に係るクレープ紙10A,10Bの1枚当たりの坪量の測定に関しては、積層構造となっているキッチンペーパー1の坪量を測定し、これを積層枚数、すなわち2枚で割った数値とする。なお、この坪量には、厳密には、積層構造とするための接着糊40を含むが、接着糊40の質量は、通常は、これを含まないクレープ紙10A,10Bそのものの質量に比して、無視できる程度であり、少なくとも、本発明におけるエンボス構成及びそれらと相まって奏する本発明特有の効果との関係では、十分に無視できる。
他方、上記クレープ紙10A,10Bは、その繊維材料がパルプを主材とするものである。そのパルプ組成は、キッチンペーパー1における既知の組成が採用できる。特に、パルプを50質量%以上、好適には90質量%以上、より好適には100質量%を含むのがよく、本発明特有の効果が顕著となる。パルプ組成は、例えば、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプと、を適宜の比率で使用できる。特に、針葉樹パルプを広葉樹パルプに比してより多い組成のパルプ組成であることが好ましい。特に、針葉樹パルプ:広葉樹パルプの比が50:50〜80:20であるのがよい。針葉樹パルプは、広葉樹パルプに比して、繊維長が長いため、針葉樹パルプを多く含むパルプ組成では、針葉樹パルプの長いパルプ繊維に沿って液体が拡散しやすく、本発明の効果が特に発現しやすい。また、しっかりとしたコシが発現しやすくなるため、特に液体を拭き取ったり吸収したりする用途に用いられるキッチンペーパーの使用態様に適する。
本発明に係るキッチンペーパー1の紙厚は、特に限定されない。ネステッド形式の積層構造であることにより、エンボス凹部22A,22Bの深さ(エンボス凸部の高さ)L1が同一のクレープ紙をティップ トウ ティップ形式で積層するよりも全体としての紙厚を薄くできることは層構造上明白であり、そのことによって本願発明の効果が得られる。なお、具体的な紙厚の参考値は、下記測定方法により測定されるもので450〜550μmである。この紙厚の範囲であれば、キッチンペーパーの一般的製品態様であるロール状、束状とした際に過度に嵩高とならず、また、本願発明のエンボス構成による効果、さらにキッチンペーパーとして使用する際の厚み感や強度も十分に発現する。係る紙厚の測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。紙厚は各プライを剥がすことなく測定する。測定の具体的な手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この厚みの測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。なお、紙厚の測定する場所については、少なくともプランジャー端子内に一つの単位凹エンボスの一部が収まるようにする。但し、この紙厚の測定方法は、エンボスの態様によって、測定時におけるキッチンペーパーの厚み方向の潰れ方に差が生ずるため、上記のとおり紙厚については、参考値である。
他方、本発明に係るキッチンペーパー1の主たる製品態様は、帯状で適宜の間隔で分断用のミシン目線が配されたものを紙管に巻き付けたロール状のもの、或いは、ピックアップ式、ポップアップ式等と称される、枚葉のキッチンペーパーが折畳み積層されたものが例示できるが、これらの製品態様が限定されるものではない。
他方、本発明に係るキッチンペーパー1では、各クレープ紙10A,10Bにエンボスが付与されたものとなっているが、このエンボスのパターンが特徴的なものとなっており、上記クレープ紙10A,10Bの後述する積層態様と相まって本発明の効果を奏する。この本発明に係るエンボスのパターンは、特に、図1に示されるように、底面面積1.5〜3.0mm2の単位凹エンボス22A(22B)が20〜80個、中心間間隔L2が5.0〜7.5mmで配置されてなる略矩形のエンボスセクション2と、このエンボスセクション2の間に位置して前記エンボスセクション2の間を区切る4.0〜6.5mmの幅L3のライン状をなす非エンボスセクション3とを有する。
前記単位凹エンボス22A(22B)の底面の形状としては、楕円、角取四角形、円、四角形(長方形、正方形)が挙げられ、上記の順で好ましい形状となる。単位凹エンボス22A(22B)の形状に角がないものであるほうが、キッチンペーパー1として使用する際に柔らかさを感じやすい。また、上記坪量及び後述の積層構造と相まってなされる吸液性能の向上効果が高まる。これは、単位凹エンボス22A(22B)の形状に角部がないほうが、液体が繊維に沿って拡散しやすいからである。つまり、単位凹エンボス22A(22B)の形状が角部を有するものである場合、その角部における繊維の曲りが強く、液が繊維に沿って拡散しがたくなる場合があるが、角部がない形状の場合は、そのような現象が生じがたいためである。ここで、複数の各単位凹エンボス22A(22B)の形状は、必ずしも同形状である必要はない。但し、同形状であるのが吸液性に関する効果や紙の柔らかさ等の物性に部分的な偏りがなくなるため好ましい。なお、本発明においては、単位凹エンボス22A(22B)の深さL1については、必ずしも限定されない。上記の好ましい紙厚を達成できる範囲で適宜に設計すればよい。好適な範囲を示せば、0.2〜1.7mmである。この範囲であれば、本発明の効果を十分に発現できる。
本発明に係る上記中心間間隔L2とは、クレープ紙面において隣り合う単位凹エンボスの底面の重心間の間隔である。左右上下斜め方向において隣り合う単位凹エンボスの距離が異なっていてもそれらが本発明の中心間間隔の範囲内にあればよい。図示の形態は、特に好ましい形態であり、クレープ紙面の上下方向及び左右方向において単位凹エンボスが均等間隔に配されており、上下方向及び左右方向における中心間間隔が一致している。但し、クレープ紙10A(10B)に付与される各単位凹エンボス22A(22B)の中心間間隔は、全て一致していなくてもよい。本発明においては、クレープ紙10A(10B)に存在する各単位凹エンボス22A(22B)の底面形状や面積に相違がある場合、また、単位凹エンボス22A(22B)の配列に製造上の誤差や、若干のバラツキがあり規則正しく配列していない場合には、中心間間隔L2が一定とはならないが、この場合でも各単位凹エンボス22A(22B)の中心間間隔が5.0〜7.5mmの範囲内に収まっていればよい。但し、上記のとおり各単位凹エンボス22A(22B)がクレープ紙面の上下左右各方向に均等間隔に規則正しく配置されているのが望ましい。さらに、本発明に係るクレープ紙10A(10B)に付与される単位凹エンボス22A(22B)の配列態様として最も好ましいのは、各単位凹エンボス22A(22B)の底面の面積及び形状が同一であり、また、各単位凹エンボス22A(22B)がクレープ紙面の左右上下各方向に規則正しく均等間隔で配列されているパターンである。このようなエンボスのパターンでは、本発明の吸液性の効果や物性において紙面に部分的な偏りが発生しない。なお、クレープ紙10A(10B)に付与される単位凹エンボス22A(22B)の底面形状は、必ずしも全てが鮮明な形状とならない場合も多いため、上記底面の面積及び中心間間隔の算出をするにあたっては、底面の外縁が鮮明である単位凹エンボスの存在部分から、3〜18個の範囲で抽出して測定すればよい。
他方、本発明に係るクレープ紙10A,10Bのエンボスのパターンにおける上記エンボスセクション2におけるは単位凹エンボスの個数は、20〜80個となっている。より、好適には40〜70個である上記の単位凹エンボスの底面面積と中心間間隔、さらに後述の積層構造と相まって、当該個数であると、エンボスセクション2における単位凹エンボスの存在による過度の紙面の硬質化が防止され、その周囲の非エンボスセクションの存在とにより、キッチンペーパー全体として、硬質とならずネステッド形式特有のしなやかさが確保されるとともに、他構成との関係で吸油量も向上する。なお、一つのエンボスセクション2は、好適にはクレープ紙面の上下左右各方向に均等間隔で規則正しく配置されてなる略矩形をなす。
このように、本発明に係るキッチンペーパー1では、クレープ紙10A(10B)の単位凹エンボス22A,22Bの間隔が比較的広い間隔で疎となっているとともに、エンボスセクション2内の個数も少なく、後述する態様の上記ネステッド形式の積層構造と相まって、液拡散性にすぐれるとともに、積層構造により形成されるクレープ紙10A,10Bの間の空間が広く、吸液性能、特に吸油量の向上効果が発現しやすくなっているとともに、しなやかさも確保される。
なお、一般的なキッチンペーパー1の大きさは、200〜800cm2である。一つのエンボスセクション2における単位凹エンボスの個数が本発明以上に多く、単位凹エンボスの面積総和が過度に広いと、一般的なキッチンペーパーとした際に、キッチンペーパーの実使用時において、本発明に係るエンボスセクション2と非エンボスセクション3とが十分に存在できず、その効果が得られなくなる。一つのエンボスセクション2における単位凹エンボスの面積の総和は、30〜240mm2、より好ましくは60〜210mm2である。もちろん、エンボスセクション2が二つ以上、それらの間に非エンボスセクション3が存在すれば、本発明の効果は奏する。なお、略矩形とは、単位凹エンボス22A(22B)の集合体である一つのエンボスセクション2が全体として、四角形、好ましくは正方形又は長方形として認識できる程度の形状を形成していればよい。また、本発明においてキッチンペーパーは、その端部に、エンボスセクションの一部により形成される略台形、略三角形の単位凹エンボスの集合部分が存在していてもよい。
また、前記非エンボスセクション3は、単位凹エンボス22A(22B)が存在しない部分であり、複数の略矩形のエンボスセクション2の間を区切るようにしてライン状に配される。その幅は上記のとおり4.0〜6.5mmの幅L3である。つまり、本発明に係るクレープ紙10A,10Bに配されるエンボスのパターンは、単位凹エンボス22A(22B)の集合体であるエンボスセクション2の間にライン状に延在する単位凹エンボス22A(22B)のない非エンボスセクション3が配されている。この非エンボスセクション3の幅L3は、隣接するエンボスセクション2の縁に位置する単位凹エンボス22A(22B)の中心間間隔ではなく、離間距離である。上記のとおり、エンボスセクション2を構成する単位凹エンボス22A(22B)の配列が規則正しくない場合や、全ての単位凹エンボス22A(22B)の形状、面積が同一ではない場合、位置によって非エンボスセクション3の幅L3が異なる場合もあるが、その場合であっても4.0〜6.5mmの範囲内にあればよい。この幅L3の非エンボスセクション3を形成することで、特に、非エンボスセクション3に接した液体は、拡散とともにエンボスセクション2に引き込まれるように作用する。そして、上記のエンボスセクション2における積層構造と相まって高い吸油量と液保持性が確保される。特に、非エンボスセクション3の幅が上記範囲であり、後述する積層構造を採ることで、吸液時、特に吸油時における非エンボスセクション3における空隙構造の潰れが最小限となり、高い液拡散性とエンボスセクション2への液体の引き込みが作用して、吸油速度、吸油量が高いものとなる。
ここで、本発明に係るクレープ紙10A(10B)のエンボスのパターンにおける最も好適なエンボスセクション2と非エンボスセクション3との配置態様は、図1に示されるように、非エンボスセクション3が、格子状に配され、その非エンボスセクション3の間にエンボスセクション2が存在するパターンである。また、非エンボスセクション3の延在方向D1は、好ましくは、クレープ紙10A(10B)のMD方向に対して、30〜60°の傾斜(図中∠A)を有する、さらに好ましくは43〜47°の傾斜を有する方向となっているのが望ましい。係る非エンボスセクション3の延在方向D1とすることで、クレープ紙10A,10Bのクレープ延在方向(皺延在方向)との関係で、より、液拡散性の方向性にムラが無くなり、吸水及び吸油性に関する本発明の効果がより高く発揮される。また、クレープ紙の縦横における剛性の差が、非エンボスセクションの存在によって小さく感じられるようになり、しなやかさを感じやすくなる。
他方、本発明に係るクレープ紙10A,10Bにおけるエンボスのパターンでは、エンボス面積率が4〜10%である。エンボス面積率は、一方のクレープ紙10A(10B)の表面積に対する単位凹エンボス22A(22B)の面積の総和の割合である。換言すれば、製品時における一枚のキッチンペーパー1に一方面全体の面積におけるその面の単位凹エンボス22A(22B)の面積の総和の割合である。このエンボス面積率は、従来のネステッド形式のキッチンペーパー1よりもやや低い値である。このように低いエンボス面積率であることにより、吸油量が多くなり優れるようになる。
一方、本発明に係るキッチンペーパー1は、上記エンボスのパターンを有する各クレープ紙10A(10B)は、図2に示されるように、平面視において非エンボスセクション3の延在方向D1に、一方面のクレープ紙の単位凹エンボス22Aと他方面の単位凹エンボス22Bとが交互に並ぶ凹エンボス配列Yを有する。さらに、平面視において一方面のクレープ紙10A(10B)のエンボスセクション2と他方面のクレープ紙のエンボスセクション2との間隔L4が2.0〜6.5mmとなるようにネステッド形式で積層されている。ここで、一方面のクレープ紙10A(10B)のエンボスセクション2と他方面のクレープ紙のエンボスセクション2との間の間隔L4とは、各クレープ紙10A(10B)における非エンボスセクション同士の重なり部分の幅である。図2に示すように、非エンボスセクション同士の重なり部分L4が二箇所となる場合には、そのいずれか一方が2.0〜6.5mmとなっていればよい。
そのうえ、本発明に係るキッチンペーパー1では、各クレープ紙10A,10Bの単位凸エンボス同士は、非接触となっている。つまり、層構造でみると一方のクレープ紙10A(10B)のエンボス凹部22A(22B)の周囲には、必ず空隙が存在している。そして、上記のクレープ紙10A,10Bのエンボスのパターン、特に、一方紙面の広い単位凹エンボス22A,22A(22B,22B)の中心間間隔と非エンボスセクション3の存在による紙面における液拡散性、さらに、非エンボスセクション3からエンボスセクション2に液を引き込む作用、積層構造による非エンボスセクション3の延在方向に存在する各クレープ紙10A,10Bの単位凹エンボス22A,22Bが交互に存在する凹エンボス配列Yの存在による空隙部分の維持(潰れ防止性)により、速い吸油速度と高い吸油量が確保される。そのうえで、とりわけ、単位凹エンボス22A(22B)の広い中心間間隔を有しつつのネステッド構造により各クレープ紙間における広い空隙と上記の空隙部分の維持性に加えて、各クレープ紙10A,10Bの非エンボスセクション3の間の距離を2.0〜6.5mmというやや幅狭であることによる、非エンボスセクション3においても液吸収時に潰れがたいという効果も相まって、両クレープ紙間に保持される吸液量が多くなるようになっている。このような、本発明に係るクレープ紙の坪量、エンボスのパターン、さらにそのエンボスのパターンのクレープ紙の特定の積層構造とが相まって、本発明に係るキッチンペーパーは、吸液性、特に吸油量に優れ、特に、ティップ トウ ティップの積層構造に劣らない高い吸油量を有する。
なお、本発明に係るキッチンペーパー1は、二枚のクレープ紙10A,10Bがネステッド形式で積層された構造を有するが、各クレープ紙10A,10Bは、接着糊40によって接着することができる。この接着糊40は、積層構造を採るキッチンペーパーに採用される公知の接着剤が使用できる。例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系接着剤等である。本実施形態のキッチンペーパー1は、特に、好ましい態様として、一方のクレープ紙10A(10B)のエンボス凸部21A(21B)の頂部に付与された接着糊40によって、一方のクレープ紙10A(10B)と他方のクレープ紙10B(10A)とが接着されている。このように、一方のクレープ紙10A(10B)のエンボス凸部21A(21B)に付与された接着糊40により、両クレープ紙10A,10Bが接着されている接着態様では、接着剤による吸液性能の阻害が小さく、また、各クレープ紙の積層構造、とりわけネステッド形式の積層構造における両クレープ紙の空隙が維持されやすく、液保持性が効果的に発揮される。但し、本発明においては、各クレープ紙10A,10Bの双方のエンボス凸部21A,21Bに接着剤40が付与されていてもよい。
他方、本発明に係るキッチンペーパー1は、公知のスチールラバー式のエンボス付与方法によるクレープ紙へのエンボス付与、さらに、貼り合せ方法により製造することができる。
以下、本発明の効果について検証した実施例を参照しつつ、さらに本発明に係るキッチンペーパーを説明する。
「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」
本発明に係るエンボスを有するネステッド形式のキッチンペーパー(実施例1及び実施例2)と、従来市販のキッチンペーパーのエンボスパターン及び積層構造であるティップ トウ ティップ形式のキッチンペーパーとについて、引張強度、伸び、ソフトネスの物性を測定するとともに、吸液性能として吸水量、吸油量、吸水速度、吸油速度を測定し評価した。
各例に係る試料は、表裏となるクレープ紙のエンボスパターンに対応する凸エンボスパターンを形成したアクリル板を用い、このアクリル板のエンボスパターンをクレープ紙にそれぞれ型押しすることで、表裏に対応するエンボスパターンを有する各クレープ紙を作成し、これら表裏の各エンボスパターンが付与された各クレープ紙を位置合わせしながら積層することで作成した。各例に係る試料の大きさは、全て120mm四方の大きさのものを作成し、測定に際しては、その中央部分100mm四方を裁断して試験片とした。エンボスセクションと非エンボスセクションを有するものについては、裁断時にその非エンボスセクションの交差位置が、中央位置となるようにした。
なお、本比較試験では、エンボスのパターン及び積層構造による対比を行うべく、各例に係るキッチンペーパーを構成するクレープ紙の原紙と、クレープ紙同士を接着するための接着糊の種類は同一のものを使用した。原紙の繊維原料はパルプ100質量%である。また、本比較試験における各キッチンペーパーは、一方のクレープ紙に形成された全ての凸エンボスの頂部のみに接着糊が付与されており、この接着糊付与部分によって二枚のキッチンペーパーが接着されている構造となっている。また、エンボスの深さは、全て1.0mmとした。
なお、実施例2は、図1〜4に示すエンボスパターンであり、実施例1は、同エンボスパターンで本発明の範囲内で各数値を異なるようにしたものである。実施例2(実施例1)は、ネステッド形式であるので、一方面から観た際には他方面の凹エンボスが視認されず、図1のように視認される。また、比較例1のエンボスパターンは、図5に示すとおりであり、エンボスセクション102と非エンボスセクション103とを有するティップ トウ ティップ形式の積層構造を有するものである(図中、単位凹エンボスは符号122で表す。図6において同様、また、図中比較例に係るキッチンペーパーは符号101で表す図6、7において同様)。
比較例2のエンボスパターンは、図6に示すとおりであり、非エンボスセクションを有さないティップ トウ ティップ形式の積層構造を有するものである。なお、比較例1及び比較例2は、一方面と他方面から同様のエンボスパターンが視認される。したがって、表裏いずれの面から観ても、図5又は図6のエンボスパターンが視認される。
なお、吸水量、吸油量、吸水速度、吸油速度及びソフトネスの測定方法は、下記のとおりとしている。
〔吸水量〕
吸水量の測定は下記(1)〜(5)のとおりとした。
(1)試験片を105℃の乾燥機内で3分間キュアリングした後、その試験片の質量を電子天秤(A&D HR300等)により測定する。
(2)試験片よりも大きいトレイ(例えば、内寸:215mm×160mm)に、20mm程度の深さとなるように、25℃の水を入れる。
(3)試験片を、試験片以上の大きさの剛性のある平網(例えば、120mm×120mm、網目15mm)の上に拡げて載せ、前記水を入れたトレイ内におろして、水面に接触するように試験片を浸水させる。
(4)試験片の表面にまで十分に水が浸みこんだら、平網を水面より真上に上げ、ピンセットにより試験片の角を摘み、四つ折(クロス8頁折り)にし、そのまま30秒静止する。
(5)30秒後に吸水した試験片の質量を電子天秤により測定し、下記式により1m2当たりの吸水量を算出する。
吸水量(g/m2)=((上記(4)で測定した吸水した試験片の質量)−(上記(1)で測定した3分間キュアリング後の試験片の質量))×100(注:試験片1枚100cm2の100倍)
〔吸油量〕
吸油量の測定は下記(1)〜(5)のとおりとした。
(1)試験片を105℃の乾燥機内で3分間キュアリングした後、その試験片の質量を電子天秤(A&D HR300等)により測定する。
(2)試験片よりも大きいトレイ(例えば、内寸:215mm×160mm)に、20mm程度の深さとなるように、25℃のサラダ油(日清サラダ油:日清オイリオグループ株式会社製)を入れる。
(3)試験片を、試験片以上の大きさの剛性のある平網(例えば、120mm×120mm、網目30mm)の上に拡げて載せ、前記サラダ油を入れたトレイ内におろして、油面に接触するように試験片を浸油させる。
(4)試験片の表面にまで十分にサラダ油が浸みこんだら、平網を油面より真上に上げ、そのまま26〜27秒静止した後、ピンセットにより試験片の角を摘み、予め秤量された測定容器に試験片を移す。このとき、平網を油面より挙げて静止を開始してから測定容器に移すまで30秒を超えないようにする。
(5)試験片が入った測定容器の質量を電子天秤により測定し、その測定値より測定容器の質量を差し引いて、吸油後の試験片の質量を算出する。そして、下記式により1m2当たりの吸油量を算出する。
吸油量(g/m2)=((上記(4)で測定した吸油した試験片の質量)−(上記(1)で測定した3分間キュアリング後の試験片の質量))×100(注:試験片1枚100cm2の100倍)
〔吸水速度〕
吸水速度の測定は下記(1)〜(4)のとおりとした。
(1)試験片を105℃の乾燥機内で3分間キュアリングする。
(2)キュアリング後の試験片を中心部に直径40mm以上の穴を有する台(例えば、アルコールランプ用三脚)の上に、その試験片の中央部が前記穴の上に位置するようにして載置する。
(3)試験片の中心に、試験片面より10mmの高さから、25℃の水300μlをマイクロピペットにより滴下する。この滴下は、例えば、アズワン ピペットガイPG−1000を用い目盛り300として行うことができる。
(4)マイクロピペットからの水が試験片に接触した瞬間から、試験片の水が浸透しきるまでの時間をストップウォッチにより測定し、その時間を吸水速度(sec)とする。なお、浸透終了は、試験片表面から水の光沢反射が消えることを目視にて確認することによる。
〔吸油速度〕
吸油速度の測定は下記(1)〜(4)のとおりとした。
(1)試験片を105℃の乾燥機内で3分間キュアリングする。
(2)キュアリング後の試験片を中心部に直径40mm以上の穴を有する台(例えば、アルコールランプ用三脚)の上に、その試験片の中央部が前記穴の上に位置するようにして載置する。
(3)試験片の中心に、試験片面より10mmの高さから、25℃のサラダ油(日清サラダ油:日清オイリオグループ株式会社製)300μlをマイクロピペットにより滴下する。この滴下は、例えば、アズワン ピペットガイPG−1000を用い目盛り300として行うことができる。
(4)マイクロピペットからのサラダ油が試験片に接触した瞬間から、試験片にサラダ油が浸透しきるまでの時間をストップウォッチにより測定し、その時間を吸油速度(sec)とする。なお、浸透終了は、試験片表面からサラダ油の光沢反射が消えることを目視にて確認することによる。
〔ソフトネス〕
JIS L 1096E法に規定のハンドルオメーター法に準じて行い、試験片は、上記のとおり裁断した100mm×100mmの試験片をそのまま用い、ハンドルオメーターのスリット幅は、15mmとして測定した。試験片の縦方向、横方向について各々3回測定し、次式により算出した値をソフトネスとした。ソフトネス(cN)=√((縦方向の平均値)×(横方向の平均値))
上記の試験の結果を、各例のクレープ紙の組成、エンボスパターン、物性とともに表1に示す。なお、紙厚の測定については、上記ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)により測定した値であり、この測定方法は、エンボスの潰れやすさに依存するためあくまで参考値である。各例ともに同じ原紙を用い、また、同じエンボス深さ(1.0mm)としているため、積層構造上、実際には厚み(嵩)は、実施例1と実施例2とはほぼ同等、比較例1及び比較例2は、実施例1及び実施例2の概ね2倍程度である。
本発明の実施例1及び実施例2は、ネステッド形式の利点である吸油速度をそのままに吸油量において、ティップ トウ ティップ形式の積層構造を有する比較例1及び比較例2より優れた結果となった。吸水速度については同等以上の結果となった。
また、ソフトネスについては、単位凹エンボスが疎で型押しによる硬質化、接着糊による硬質化が低減されていることに起因して非常に良好な結果となった。
吸水量については、比較例2よりやや劣る結果となったが、吸水量は、クレープ紙の構成に依存するところが大きく、比較例2よりやや坪量の高いクレープ紙とするなどすれば十分に改善できる。その場合でも、紙厚は、ネステッド形式の利点を十分に発揮できる。
本試験は、原紙、エンボス深さを同等として比較した試験であり、エンボスのパターンと積層構造との相違のみによる、結果の相違が確認できる。そして、その結果からすれば、本発明に係るエンボスパターン及び積層構造とすることにより、ネステッド形式でありながら、ティップ トウ ティップ形式よりも高い吸油量を達成できる。
「ネステッド形式の積層構造同士の比較試験」
さらに、本発明に係るエンボスを有するネステッド形式のキッチンペーパー(実施例1及び実施例2)と、本発明とは異なるエンボス(従来市販のエンボスパターンのものを含む)を有するネステッド形式のキッチンペーパー(比較例3〜8)とについて、引張強度、伸び、ソフトネスの物性を測定するとともに、吸液性能として吸水量、吸油量、吸水速度、吸油速度を測定し評価した。
各例に係る試料は、「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」と同様に、表裏のエンボスパターンに対応する凸エンボスパターンを形成したアクリル板を用い、このアクリル版のエンボスパターンをクレープ紙にそれぞれ型押しすることで、表裏に対応するエンボスパターンを有する各クレープ紙を作成し、これら表裏の各エンボスパターンが付与された各クレープ紙を位置合わせしながら積層することで作成した。各例に係る試料の大きさは、全て120mm四方の大きさのものを作成し、測定に際しては、その中央部分100mm四方を裁断して試験片とした。エンボスセクションを有するものについては、裁断時にその非エンボスセクションの交差位置が、中央位置となるようにした。
なお、本比較試験においても、エンボスのパターン及び積層構造による対比を行うべく、各例に係るキッチンペーパーを構成するクレープ紙の原紙と、クレープ紙同士を接着するための接着糊の種類は同一のものを使用した。また、本比較試験における各キッチンペーパーは、一方のクレープ紙に形成された全ての凸エンボスの頂部のみに接着糊が付与されており、この接着糊付与部分によって二枚のキッチンペーパーが接着されている構造となっている。また、エンボスの深さは、全て1.0mmとした
実施例1及び実施例2のエンボスパターンは、上記「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」における実施例1及び実施例2と同様である。また、比較例4を除く、比較例3、5〜7はエンボスセクションと非エンボスセクションとを有し、非エンボスセクションの配置態様は、実施例1及び実施例2と同様に格子状となっている。すなわち、これらの比較例は、実施例1及び実施例2と同様に、格子状に配された非エンボスセクションと、非エンボスセクションにより囲まれる略矩形のエンボスセクションとを有している。
但し、比較例3の単位凹エンボスの形状は、実施例1及び実施例2と同じ楕円であるものの、単位凹エンボスの底面面積が小さく、また、中心間間隔が狭いものとなっている。つまり、実施例1及び実施例2よりも、エンボスセクションに底面面積の小さい単位凹エンボスが密に配置されたエンボスパターンとなっている。
また、比較例4のエンボスパターンは、単位凹エンボスの形状及び底面面積は、実施例2と同様であるが、非エンボスセクションがなく、また、単位凹エンボスの中心間間隔が実施例2の約1/2となっているパターンである。
比較例5のエンボスパターンは、実施例2と同様であるが、図7に示すように、積層構造において、一方のクレープ紙の単位凹エンボス122Aと他方のクレープ紙における単位凹エンボス122Bが接するように積層(凸エンボス同士が接触するように積層)したものである。
比較例6のエンボスパターンは、単位凹エンボスの形状を長方形として、かつ、中心間間隔を狭く密に単位凹エンボスを配置したパターンである。
比較例7のエンボスパターンは、比較例6の単位凹エンボスの形状を円としたものである。
比較例8のエンボスパターンは、図8に示すパターンであり、非エンボスセクションを有さず、単位凹エンボスが円弧ライン状に配列された葉模様のエンボスパターンを有するものである。
各例において行った、吸水量、吸油量、吸水速度、吸油速度及びソフトネスの試験手順や測定方法は、上記「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」と同様である。
上記条件のもと行った試験の結果を、各例のクレープ紙の組成、エンボスパターン、物性とともに下記表2に示す。なお、紙厚の測定については、上記ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)により測定した値であり、この測定方法は、エンボスの潰れやすさに依存するためあくまで参考値である。
吸油量については、本発明の実施例1及び実施例2、比較例5、比較例8において高い数値となっており、これらは、上記の「ティップ トウ ティップ形式の積層構造」の比較例1及び比較例2と同等かそれよりさらに高い。しかし、比較例5、比較例8においても、実施例1及び実施例2よりは低く、さらに、比較例5及び比較例8は、比較例3とともに吸油速度が、20秒以上と非常に遅くなっており、ネステッド形式の利点が得られなくなってしまっている。
また、ネステッド形式同士の比較試験においても、本発明の実施例1及び実施例2は、ソフトネスの値が小さく、柔らかさ、しなやかさにおいて優れる結果となった。比較例5は、ソフトネスにおいて本発明よりも小さい値となったが、上記のとおり吸油速度が20秒と非常に遅くなってしまっている。
各例を比較してみると、吸油量、吸油速度さらにソフトネスについて顕著に良好な結果が得られたのは本発明の実施例1及び実施例2のみである。
以上の「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」と「ネステッド形式の積層構造同士の比較試験」との結果からして、本発明のエンボスパターン及び積層構造とすることにより、紙厚を薄くでき吸油速度が速いというネステッド形式の利点はそのままに、「ティップ トウ ティップ形式の積層構造」以上の吸油量を達成でき、しかも柔らかさ、しなやかさにも優れるようになる。
次いで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に詳述する。図1は、本発明に係るクレープ紙の平面図であり、一部(A部分)を拡大して表している。図2は、上記クレープ紙を積層したキッチンペーパーの平面図であり、一部(B部分)を拡大して表している。図3は、図2のC−C断面であり、図4は、図2のD−D断面である。
本実施形態に係るキッチンペーパー1は、エンボスが付与された二枚のクレープ紙10A、10Bの各々エンボス凸部形成面10xが対面されて一体化され、表裏には前記エンボス凸部21A,21Bに対応する凹エンボス22A,22Bが存在するようになっている。そして、特に一方面のクレープ紙10A(10B)におけるエンボス凸部21A(21B)が、他方面のクレープ紙10B(10A)の非エンボス凸部23B(23A)(エンボス凸部以外の部分)に位置する、所謂ネステッド形式の積層構造となっている。
このキッチンペーパー1を構成するクレープ紙10A,10Bの坪量は、15〜35g/m2、好ましくは17〜25g/m2である。なお、坪量は、JIS P 8124(1998)による。上記坪量の範囲であると、紙面に水や油などの液体が触れた際に、十分な液拡散性が得られ、特に吸水性能が十分となり、また、ネステッド形式でありながらも高い吸油量を奏するという本発明の特徴的なエンボス構成による効果が得られやすくなる。また、上記坪量の範囲内であれば、拭き取り操作の際の柔らかさ、拭き取り面に対する追従性といったネステッド形式のキッチンペーパーの利点も低下しない。ここで、本発明に係るクレープ紙10A,10Bの1枚当たりの坪量の測定に関しては、積層構造となっているキッチンペーパー1の坪量を測定し、これを積層枚数、すなわち2枚で割った数値とする。なお、この坪量には、厳密には、積層構造とするための接着糊40を含むが、接着糊40の質量は、通常は、これを含まないクレープ紙10A,10Bそのものの質量に比して、無視できる程度であり、少なくとも、本発明におけるエンボス構成及びそれらと相まって奏する本発明特有の効果との関係では、十分に無視できる。
他方、上記クレープ紙10A,10Bは、その繊維材料がパルプを主材とするものである。そのパルプ組成は、キッチンペーパー1における既知の組成が採用できる。特に、パルプを50質量%以上、好適には90質量%以上、より好適には100質量%を含むのがよく、本発明特有の効果が顕著となる。パルプ組成は、例えば、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプと、を適宜の比率で使用できる。特に、針葉樹パルプを広葉樹パルプに比してより多い組成のパルプ組成であることが好ましい。特に、針葉樹パルプ:広葉樹パルプの比が50:50〜80:20であるのがよい。針葉樹パルプは、広葉樹パルプに比して、繊維長が長いため、針葉樹パルプを多く含むパルプ組成では、針葉樹パルプの長いパルプ繊維に沿って液体が拡散しやすく、本発明の効果が特に発現しやすい。また、しっかりとしたコシが発現しやすくなるため、特に液体を拭き取ったり吸収したりする用途に用いられるキッチンペーパーの使用態様に適する。
本発明に係るキッチンペーパー1の紙厚は、特に限定されない。ネステッド形式の積層構造であることにより、エンボス凹部22A,22Bの深さ(エンボス凸部の高さ)L1が同一のクレープ紙をティップ トウ ティップ形式で積層するよりも全体としての紙厚を薄くできることは層構造上明白であり、そのことによって本願発明の効果が得られる。なお、具体的な紙厚の参考値は、下記測定方法により測定されるもので450〜550μmである。この紙厚の範囲であれば、キッチンペーパーの一般的製品態様であるロール状、束状とした際に過度に嵩高とならず、また、本願発明のエンボス構成による効果、さらにキッチンペーパーとして使用する際の厚み感や強度も十分に発現する。係る紙厚の測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。紙厚は各プライを剥がすことなく測定する。測定の具体的な手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この厚みの測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。なお、紙厚の測定する場所については、少なくともプランジャー端子内に一つの単位凹エンボスの一部が収まるようにする。但し、この紙厚の測定方法は、エンボスの態様によって、測定時におけるキッチンペーパーの厚み方向の潰れ方に差が生ずるため、上記のとおり紙厚については、参考値である。
他方、本発明に係るキッチンペーパー1の主たる製品態様は、帯状で適宜の間隔で分断用のミシン目線が配されたものを紙管に巻き付けたロール状のもの、或いは、ピックアップ式、ポップアップ式等と称される、枚葉のキッチンペーパーが折畳み積層されたものが例示できるが、これらの製品態様が限定されるものではない。
他方、本発明に係るキッチンペーパー1では、各クレープ紙10A,10Bにエンボスが付与されたものとなっているが、このエンボスのパターンが特徴的なものとなっており、上記クレープ紙10A,10Bの後述する積層態様と相まって本発明の効果を奏する。この本発明に係るエンボスのパターンは、特に、図1に示されるように、底面面積1.5〜3.0mm2の単位凹エンボス22A(22B)が20〜80個、中心間間隔L2が5.0〜7.5mmで配置されてなる略矩形のエンボスセクション2と、このエンボスセクション2の間に位置して前記エンボスセクション2の間を区切る4.0〜6.5mmの幅L3のライン状をなす非エンボスセクション3とを有する。
前記単位凹エンボス22A(22B)の底面の形状としては、楕円、角取四角形、円、四角形(長方形、正方形)が挙げられ、上記の順で好ましい形状となる。単位凹エンボス22A(22B)の形状に角がないものであるほうが、キッチンペーパー1として使用する際に柔らかさを感じやすい。また、上記坪量及び後述の積層構造と相まってなされる吸液性能の向上効果が高まる。これは、単位凹エンボス22A(22B)の形状に角部がないほうが、液体が繊維に沿って拡散しやすいからである。つまり、単位凹エンボス22A(22B)の形状が角部を有するものである場合、その角部における繊維の曲りが強く、液が繊維に沿って拡散しがたくなる場合があるが、角部がない形状の場合は、そのような現象が生じがたいためである。ここで、複数の各単位凹エンボス22A(22B)の形状は、必ずしも同形状である必要はない。但し、同形状であるのが吸液性に関する効果や紙の柔らかさ等の物性に部分的な偏りがなくなるため好ましい。なお、本発明においては、単位凹エンボス22A(22B)の深さL1については、必ずしも限定されない。上記の好ましい紙厚を達成できる範囲で適宜に設計すればよい。好適な範囲を示せば、0.2〜1.7mmである。この範囲であれば、本発明の効果を十分に発現できる。
本発明に係る上記中心間間隔L2とは、クレープ紙面において隣り合う単位凹エンボスの底面の重心間の間隔である。左右上下斜め方向において隣り合う単位凹エンボスの距離が異なっていてもそれらが本発明の中心間間隔の範囲内にあればよい。図示の形態は、特に好ましい形態であり、クレープ紙面の上下方向及び左右方向において単位凹エンボスが均等間隔に配されており、上下方向及び左右方向における中心間間隔が一致している。但し、クレープ紙10A(10B)に付与される各単位凹エンボス22A(22B)の中心間間隔は、全て一致していなくてもよい。本発明においては、クレープ紙10A(10B)に存在する各単位凹エンボス22A(22B)の底面形状や面積に相違がある場合、また、単位凹エンボス22A(22B)の配列に製造上の誤差や、若干のバラツキがあり規則正しく配列していない場合には、中心間間隔L2が一定とはならないが、この場合でも各単位凹エンボス22A(22B)の中心間間隔が5.0〜7.5mmの範囲内に収まっていればよい。但し、上記のとおり各単位凹エンボス22A(22B)がクレープ紙面の上下左右各方向に均等間隔に規則正しく配置されているのが望ましい。さらに、本発明に係るクレープ紙10A(10B)に付与される単位凹エンボス22A(22B)の配列態様として最も好ましいのは、各単位凹エンボス22A(22B)の底面の面積及び形状が同一であり、また、各単位凹エンボス22A(22B)がクレープ紙面の左右上下各方向に規則正しく均等間隔で配列されているパターンである。このようなエンボスのパターンでは、本発明の吸液性の効果や物性において紙面に部分的な偏りが発生しない。なお、クレープ紙10A(10B)に付与される単位凹エンボス22A(22B)の底面形状は、必ずしも全てが鮮明な形状とならない場合も多いため、上記底面の面積及び中心間間隔の算出をするにあたっては、底面の外縁が鮮明である単位凹エンボスの存在部分から、3〜18個の範囲で抽出して測定すればよい。
他方、本発明に係るクレープ紙10A,10Bのエンボスのパターンにおける上記エンボスセクション2におけるは単位凹エンボスの個数は、20〜80個となっている。より、好適には40〜70個である上記の単位凹エンボスの底面面積と中心間間隔、さらに後述の積層構造と相まって、当該個数であると、エンボスセクション2における単位凹エンボスの存在による過度の紙面の硬質化が防止され、その周囲の非エンボスセクションの存在とにより、キッチンペーパー全体として、硬質とならずネステッド形式特有のしなやかさが確保されるとともに、他構成との関係で吸油量も向上する。なお、一つのエンボスセクション2は、好適にはクレープ紙面の上下左右各方向に均等間隔で規則正しく配置されてなる略矩形をなす。
このように、本発明に係るキッチンペーパー1では、クレープ紙10A(10B)の単位凹エンボス22A,22Bの間隔が比較的広い間隔で疎となっているとともに、エンボスセクション2内の個数も少なく、後述する態様の上記ネステッド形式の積層構造と相まって、液拡散性にすぐれるとともに、積層構造により形成されるクレープ紙10A,10Bの間の空間が広く、吸液性能、特に吸油量の向上効果が発現しやすくなっているとともに、しなやかさも確保される。
なお、一般的なキッチンペーパー1の大きさは、200〜800cm2である。一つのエンボスセクション2における単位凹エンボスの個数が本発明以上に多く、単位凹エンボスの面積総和が過度に広いと、一般的なキッチンペーパーとした際に、キッチンペーパーの実使用時において、本発明に係るエンボスセクション2と非エンボスセクション3とが十分に存在できず、その効果が得られなくなる。一つのエンボスセクション2における単位凹エンボスの面積の総和は、30〜240mm2、より好ましくは60〜210mm2である。もちろん、エンボスセクション2が二つ以上、それらの間に非エンボスセクション3が存在すれば、本発明の効果は奏する。なお、略矩形とは、単位凹エンボス22A(22B)の集合体である一つのエンボスセクション2が全体として、四角形、好ましくは正方形又は長方形として認識できる程度の形状を形成していればよい。また、本発明においてキッチンペーパーは、その端部に、エンボスセクションの一部により形成される略台形、略三角形の単位凹エンボスの集合部分が存在していてもよい。
また、前記非エンボスセクション3は、単位凹エンボス22A(22B)が存在しない部分であり、複数の略矩形のエンボスセクション2の間を区切るようにしてライン状に配される。その幅は上記のとおり4.0〜6.5mmの幅L3である。つまり、本発明に係るクレープ紙10A,10Bに配されるエンボスのパターンは、単位凹エンボス22A(22B)の集合体であるエンボスセクション2の間にライン状に延在する単位凹エンボス22A(22B)のない非エンボスセクション3が配されている。この非エンボスセクション3の幅L3は、隣接するエンボスセクション2の縁に位置する単位凹エンボス22A(22B)の中心間間隔ではなく、離間距離である。上記のとおり、エンボスセクション2を構成する単位凹エンボス22A(22B)の配列が規則正しくない場合や、全ての単位凹エンボス22A(22B)の形状、面積が同一ではない場合、位置によって非エンボスセクション3の幅L3が異なる場合もあるが、その場合であっても4.0〜6.5mmの範囲内にあればよい。この幅L3の非エンボスセクション3を形成することで、特に、非エンボスセクション3に接した液体は、拡散とともにエンボスセクション2に引き込まれるように作用する。そして、上記のエンボスセクション2における積層構造と相まって高い吸油量と液保持性が確保される。特に、非エンボスセクション3の幅が上記範囲であり、後述する積層構造を採ることで、吸液時、特に吸油時における非エンボスセクション3における空隙構造の潰れが最小限となり、高い液拡散性とエンボスセクション2への液体の引き込みが作用して、吸油速度、吸油量が高いものとなる。
ここで、本発明に係るクレープ紙10A(10B)のエンボスのパターンにおける最も好適なエンボスセクション2と非エンボスセクション3との配置態様は、図1に示されるように、非エンボスセクション3が、格子状に配され、その非エンボスセクション3の間にエンボスセクション2が存在するパターンである。また、非エンボスセクション3の延在方向D1は、好ましくは、クレープ紙10A(10B)のMD方向に対して、30〜60°の傾斜(図中∠A)を有する、さらに好ましくは43〜47°の傾斜を有する方向となっているのが望ましい。係る非エンボスセクション3の延在方向D1とすることで、クレープ紙10A,10Bのクレープ延在方向(皺延在方向)との関係で、より、液拡散性の方向性にムラが無くなり、吸水及び吸油性に関する本発明の効果がより高く発揮される。また、クレープ紙の縦横における剛性の差が、非エンボスセクションの存在によって小さく感じられるようになり、しなやかさを感じやすくなる。
他方、本発明に係るクレープ紙10A,10Bにおけるエンボスのパターンでは、エンボス面積率が4〜10%である。エンボス面積率は、一方のクレープ紙10A(10B)の表面積に対する単位凹エンボス22A(22B)の面積の総和の割合である。換言すれば、製品時における一枚のキッチンペーパー1に一方面全体の面積におけるその面の単位凹エンボス22A(22B)の面積の総和の割合である。このエンボス面積率は、従来のネステッド形式のキッチンペーパー1よりもやや低い値である。このように低いエンボス面積率であることにより、吸油量が多くなり優れるようになる。
一方、本発明に係るキッチンペーパー1は、上記エンボスのパターンを有する各クレープ紙10A(10B)は、図2に示されるように、平面視において非エンボスセクション3の延在方向D1に、一方面のクレープ紙の単位凹エンボス22Aと他方面の単位凹エンボス22Bとが交互に並ぶ凹エンボス配列Yを有する。さらに、平面視において一方面のクレープ紙10A(10B)のエンボスセクション2と他方面のクレープ紙のエンボスセクション2との間隔L4が2.0〜6.5mmとなるようにネステッド形式で積層されている。ここで、一方面のクレープ紙10A(10B)のエンボスセクション2と他方面のクレープ紙のエンボスセクション2との間の間隔L4とは、各クレープ紙10A(10B)における非エンボスセクション同士の重なり部分の幅である。図2に示すように、非エンボスセクション同士の重なり部分L4が二箇所となる場合には、そのいずれか一方が2.0〜6.5mmとなっていればよい。
そのうえ、本発明に係るキッチンペーパー1では、各クレープ紙10A,10Bの単位凸エンボス同士は、非接触となっている。つまり、層構造でみると一方のクレープ紙10A(10B)のエンボス凹部22A(22B)の周囲には、必ず空隙が存在している。そして、上記のクレープ紙10A,10Bのエンボスのパターン、特に、一方紙面の広い単位凹エンボス22A,22A(22B,22B)の中心間間隔と非エンボスセクション3の存在による紙面における液拡散性、さらに、非エンボスセクション3からエンボスセクション2に液を引き込む作用、積層構造による非エンボスセクション3の延在方向に存在する各クレープ紙10A,10Bの単位凹エンボス22A,22Bが交互に存在する凹エンボス配列Yの存在による空隙部分の維持(潰れ防止性)により、速い吸油速度と高い吸油量が確保される。そのうえで、とりわけ、単位凹エンボス22A(22B)の広い中心間間隔を有しつつのネステッド構造により各クレープ紙間における広い空隙と上記の空隙部分の維持性に加えて、各クレープ紙10A,10Bの非エンボスセクション3の間の距離を2.0〜6.5mmというやや幅狭であることによる、非エンボスセクション3においても液吸収時に潰れがたいという効果も相まって、両クレープ紙間に保持される吸液量が多くなるようになっている。このような、本発明に係るクレープ紙の坪量、エンボスのパターン、さらにそのエンボスのパターンのクレープ紙の特定の積層構造とが相まって、本発明に係るキッチンペーパーは、吸液性、特に吸油量に優れ、特に、ティップ トウ ティップの積層構造に劣らない高い吸油量を有する。
なお、本発明に係るキッチンペーパー1は、二枚のクレープ紙10A,10Bがネステッド形式で積層された構造を有するが、各クレープ紙10A,10Bは、接着糊40によって接着することができる。この接着糊40は、積層構造を採るキッチンペーパーに採用される公知の接着剤が使用できる。例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系接着剤等である。本実施形態のキッチンペーパー1は、特に、好ましい態様として、一方のクレープ紙10A(10B)のエンボス凸部21A(21B)の頂部に付与された接着糊40によって、一方のクレープ紙10A(10B)と他方のクレープ紙10B(10A)とが接着されている。このように、一方のクレープ紙10A(10B)のエンボス凸部21A(21B)に付与された接着糊40により、両クレープ紙10A,10Bが接着されている接着態様では、接着剤による吸液性能の阻害が小さく、また、各クレープ紙の積層構造、とりわけネステッド形式の積層構造における両クレープ紙の空隙が維持されやすく、液保持性が効果的に発揮される。但し、本発明においては、各クレープ紙10A,10Bの双方のエンボス凸部21A,21Bに接着剤40が付与されていてもよい。
他方、本発明に係るキッチンペーパー1は、公知のスチールラバー式のエンボス付与方法によるクレープ紙へのエンボス付与、さらに、貼り合せ方法により製造することができる。
以下、本発明の効果について検証した実施例を参照しつつ、さらに本発明に係るキッチンペーパーを説明する。
「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」
本発明に係るエンボスを有するネステッド形式のキッチンペーパー(実施例1及び実施例2)と、従来市販のキッチンペーパーのエンボスパターン及び積層構造であるティップ トウ ティップ形式のキッチンペーパーとについて、引張強度、伸び、ソフトネスの物性を測定するとともに、吸液性能として吸水量、吸油量、吸水速度、吸油速度を測定し評価した。
各例に係る試料は、表裏となるクレープ紙のエンボスパターンに対応する凸エンボスパターンを形成したアクリル板を用い、このアクリル板のエンボスパターンをクレープ紙にそれぞれ型押しすることで、表裏に対応するエンボスパターンを有する各クレープ紙を作成し、これら表裏の各エンボスパターンが付与された各クレープ紙を位置合わせしながら積層することで作成した。各例に係る試料の大きさは、全て120mm四方の大きさのものを作成し、測定に際しては、その中央部分100mm四方を裁断して試験片とした。エンボスセクションと非エンボスセクションを有するものについては、裁断時にその非エンボスセクションの交差位置が、中央位置となるようにした。
なお、本比較試験では、エンボスのパターン及び積層構造による対比を行うべく、各例に係るキッチンペーパーを構成するクレープ紙の原紙と、クレープ紙同士を接着するための接着糊の種類は同一のものを使用した。原紙の繊維原料はパルプ100質量%である。また、本比較試験における各キッチンペーパーは、一方のクレープ紙に形成された全ての凸エンボスの頂部のみに接着糊が付与されており、この接着糊付与部分によって二枚のキッチンペーパーが接着されている構造となっている。また、エンボスの深さは、全て1.0mmとした。
なお、実施例2は、図1〜4に示すエンボスパターンであり、実施例1は、同エンボスパターンで本発明の範囲内で各数値を異なるようにしたものである。実施例2(実施例1)は、ネステッド形式であるので、一方面から観た際には他方面の凹エンボスが視認されず、図1のように視認される。また、比較例1のエンボスパターンは、図5に示すとおりであり、エンボスセクション102と非エンボスセクション103とを有するティップ トウ ティップ形式の積層構造を有するものである(図中、単位凹エンボスは符号122で表す。図6において同様、また、図中比較例に係るキッチンペーパーは符号101で表す図6、7において同様)。
比較例2のエンボスパターンは、図6に示すとおりであり、非エンボスセクションを有さないティップ トウ ティップ形式の積層構造を有するものである。なお、比較例1及び比較例2は、一方面と他方面から同様のエンボスパターンが視認される。したがって、表裏いずれの面から観ても、図5又は図6のエンボスパターンが視認される。
なお、吸水量、吸油量、吸水速度、吸油速度及びソフトネスの測定方法は、下記のとおりとしている。
〔吸水量〕
吸水量の測定は下記(1)〜(5)のとおりとした。
(1)試験片を105℃の乾燥機内で3分間キュアリングした後、その試験片の質量を電子天秤(A&D HR300等)により測定する。
(2)試験片よりも大きいトレイ(例えば、内寸:215mm×160mm)に、20mm程度の深さとなるように、25℃の水を入れる。
(3)試験片を、試験片以上の大きさの剛性のある平網(例えば、120mm×120mm、網目15mm)の上に拡げて載せ、前記水を入れたトレイ内におろして、水面に接触するように試験片を浸水させる。
(4)試験片の表面にまで十分に水が浸みこんだら、平網を水面より真上に上げ、ピンセットにより試験片の角を摘み、四つ折(クロス8頁折り)にし、そのまま30秒静止する。
(5)30秒後に吸水した試験片の質量を電子天秤により測定し、下記式により1m2当たりの吸水量を算出する。
吸水量(g/m2)=((上記(4)で測定した吸水した試験片の質量)−(上記(1)で測定した3分間キュアリング後の試験片の質量))×100(注:試験片1枚100cm2の100倍)
〔吸油量〕
吸油量の測定は下記(1)〜(5)のとおりとした。
(1)試験片を105℃の乾燥機内で3分間キュアリングした後、その試験片の質量を電子天秤(A&D HR300等)により測定する。
(2)試験片よりも大きいトレイ(例えば、内寸:215mm×160mm)に、20mm程度の深さとなるように、25℃のサラダ油(日清サラダ油:日清オイリオグループ株式会社製)を入れる。
(3)試験片を、試験片以上の大きさの剛性のある平網(例えば、120mm×120mm、網目30mm)の上に拡げて載せ、前記サラダ油を入れたトレイ内におろして、油面に接触するように試験片を浸油させる。
(4)試験片の表面にまで十分にサラダ油が浸みこんだら、平網を油面より真上に上げ、そのまま26〜27秒静止した後、ピンセットにより試験片の角を摘み、予め秤量された測定容器に試験片を移す。このとき、平網を油面より挙げて静止を開始してから測定容器に移すまで30秒を超えないようにする。
(5)試験片が入った測定容器の質量を電子天秤により測定し、その測定値より測定容器の質量を差し引いて、吸油後の試験片の質量を算出する。そして、下記式により1m2当たりの吸油量を算出する。
吸油量(g/m2)=((上記(4)で測定した吸油した試験片の質量)−(上記(1)で測定した3分間キュアリング後の試験片の質量))×100(注:試験片1枚100cm2の100倍)
〔吸水速度〕
吸水速度の測定は下記(1)〜(4)のとおりとした。
(1)試験片を105℃の乾燥機内で3分間キュアリングする。
(2)キュアリング後の試験片を中心部に直径40mm以上の穴を有する台(例えば、アルコールランプ用三脚)の上に、その試験片の中央部が前記穴の上に位置するようにして載置する。
(3)試験片の中心に、試験片面より10mmの高さから、25℃の水300μlをマイクロピペットにより滴下する。この滴下は、例えば、アズワン ピペットガイPG−1000を用い目盛り300として行うことができる。
(4)マイクロピペットからの水が試験片に接触した瞬間から、試験片の水が浸透しきるまでの時間をストップウォッチにより測定し、その時間を吸水速度(sec)とする。なお、浸透終了は、試験片表面から水の光沢反射が消えることを目視にて確認することによる。
〔吸油速度〕
吸油速度の測定は下記(1)〜(4)のとおりとした。
(1)試験片を105℃の乾燥機内で3分間キュアリングする。
(2)キュアリング後の試験片を中心部に直径40mm以上の穴を有する台(例えば、アルコールランプ用三脚)の上に、その試験片の中央部が前記穴の上に位置するようにして載置する。
(3)試験片の中心に、試験片面より10mmの高さから、25℃のサラダ油(日清サラダ油:日清オイリオグループ株式会社製)300μlをマイクロピペットにより滴下する。この滴下は、例えば、アズワン ピペットガイPG−1000を用い目盛り300として行うことができる。
(4)マイクロピペットからのサラダ油が試験片に接触した瞬間から、試験片にサラダ油が浸透しきるまでの時間をストップウォッチにより測定し、その時間を吸油速度(sec)とする。なお、浸透終了は、試験片表面からサラダ油の光沢反射が消えることを目視にて確認することによる。
〔ソフトネス〕
JIS L 1096E法に規定のハンドルオメーター法に準じて行い、試験片は、上記のとおり裁断した100mm×100mmの試験片をそのまま用い、ハンドルオメーターのスリット幅は、15mmとして測定した。試験片の縦方向、横方向について各々3回測定し、次式により算出した値をソフトネスとした。ソフトネス(cN)=√((縦方向の平均値)×(横方向の平均値))
上記の試験の結果を、各例のクレープ紙の組成、エンボスパターン、物性とともに表1に示す。なお、紙厚の測定については、上記ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)により測定した値であり、この測定方法は、エンボスの潰れやすさに依存するためあくまで参考値である。各例ともに同じ原紙を用い、また、同じエンボス深さ(1.0mm)としているため、積層構造上、実際には厚み(嵩)は、実施例1と実施例2とはほぼ同等、比較例1及び比較例2は、実施例1及び実施例2の概ね2倍程度である。
本発明の実施例1及び実施例2は、ネステッド形式の利点である吸油速度をそのままに吸油量において、ティップ トウ ティップ形式の積層構造を有する比較例1及び比較例2より優れた結果となった。吸水速度については同等以上の結果となった。
また、ソフトネスについては、単位凹エンボスが疎で型押しによる硬質化、接着糊による硬質化が低減されていることに起因して非常に良好な結果となった。
吸水量については、比較例2よりやや劣る結果となったが、吸水量は、クレープ紙の構成に依存するところが大きく、比較例2よりやや坪量の高いクレープ紙とするなどすれば十分に改善できる。その場合でも、紙厚は、ネステッド形式の利点を十分に発揮できる。
本試験は、原紙、エンボス深さを同等として比較した試験であり、エンボスのパターンと積層構造との相違のみによる、結果の相違が確認できる。そして、その結果からすれば、本発明に係るエンボスパターン及び積層構造とすることにより、ネステッド形式でありながら、ティップ トウ ティップ形式よりも高い吸油量を達成できる。
「ネステッド形式の積層構造同士の比較試験」
さらに、本発明に係るエンボスを有するネステッド形式のキッチンペーパー(実施例1及び実施例2)と、本発明とは異なるエンボス(従来市販のエンボスパターンのものを含む)を有するネステッド形式のキッチンペーパー(比較例3〜8)とについて、引張強度、伸び、ソフトネスの物性を測定するとともに、吸液性能として吸水量、吸油量、吸水速度、吸油速度を測定し評価した。
各例に係る試料は、「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」と同様に、表裏のエンボスパターンに対応する凸エンボスパターンを形成したアクリル板を用い、このアクリル版のエンボスパターンをクレープ紙にそれぞれ型押しすることで、表裏に対応するエンボスパターンを有する各クレープ紙を作成し、これら表裏の各エンボスパターンが付与された各クレープ紙を位置合わせしながら積層することで作成した。各例に係る試料の大きさは、全て120mm四方の大きさのものを作成し、測定に際しては、その中央部分100mm四方を裁断して試験片とした。エンボスセクションを有するものについては、裁断時にその非エンボスセクションの交差位置が、中央位置となるようにした。
なお、本比較試験においても、エンボスのパターン及び積層構造による対比を行うべく、各例に係るキッチンペーパーを構成するクレープ紙の原紙と、クレープ紙同士を接着するための接着糊の種類は同一のものを使用した。また、本比較試験における各キッチンペーパーは、一方のクレープ紙に形成された全ての凸エンボスの頂部のみに接着糊が付与されており、この接着糊付与部分によって二枚のキッチンペーパーが接着されている構造となっている。また、エンボスの深さは、全て1.0mmとした
実施例1及び実施例2のエンボスパターンは、上記「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」における実施例1及び実施例2と同様である。また、比較例4を除く、比較例3、5〜7はエンボスセクションと非エンボスセクションとを有し、非エンボスセクションの配置態様は、実施例1及び実施例2と同様に格子状となっている。すなわち、これらの比較例は、実施例1及び実施例2と同様に、格子状に配された非エンボスセクションと、非エンボスセクションにより囲まれる略矩形のエンボスセクションとを有している。
但し、比較例3の単位凹エンボスの形状は、実施例1及び実施例2と同じ楕円であるものの、単位凹エンボスの底面面積が小さく、また、中心間間隔が狭いものとなっている。つまり、実施例1及び実施例2よりも、エンボスセクションに底面面積の小さい単位凹エンボスが密に配置されたエンボスパターンとなっている。
また、比較例4のエンボスパターンは、単位凹エンボスの形状及び底面面積は、実施例2と同様であるが、非エンボスセクションがなく、また、単位凹エンボスの中心間間隔が実施例2の約1/2となっているパターンである。
比較例5のエンボスパターンは、実施例2と同様であるが、図7に示すように、積層構造において、一方のクレープ紙の単位凹エンボス122Aと他方のクレープ紙における単位凹エンボス122Bが接するように積層(凸エンボス同士が接触するように積層)したものである。
比較例6のエンボスパターンは、単位凹エンボスの形状を長方形として、かつ、中心間間隔を狭く密に単位凹エンボスを配置したパターンである。
比較例7のエンボスパターンは、比較例6の単位凹エンボスの形状を円としたものである。
比較例8のエンボスパターンは、図8に示すパターンであり、非エンボスセクションを有さず、単位凹エンボスが円弧ライン状に配列された葉模様のエンボスパターンを有するものである。
各例において行った、吸水量、吸油量、吸水速度、吸油速度及びソフトネスの試験手順や測定方法は、上記「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」と同様である。
上記条件のもと行った試験の結果を、各例のクレープ紙の組成、エンボスパターン、物性とともに下記表2に示す。なお、紙厚の測定については、上記ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)により測定した値であり、この測定方法は、エンボスの潰れやすさに依存するためあくまで参考値である。
吸油量については、本発明の実施例1及び実施例2、比較例5、比較例8において高い数値となっており、これらは、上記の「ティップ トウ ティップ形式の積層構造」の比較例1及び比較例2と同等かそれよりさらに高い。しかし、比較例5、比較例8においても、実施例1及び実施例2よりは低く、さらに、比較例5及び比較例8は、比較例3とともに吸油速度が、20秒以上と非常に遅くなっており、ネステッド形式の利点が得られなくなってしまっている。
また、ネステッド形式同士の比較試験においても、本発明の実施例1及び実施例2は、ソフトネスの値が小さく、柔らかさ、しなやかさにおいて優れる結果となった。比較例5は、ソフトネスにおいて本発明よりも小さい値となったが、上記のとおり吸油速度が20秒と非常に遅くなってしまっている。
各例を比較してみると、吸油量、吸油速度さらにソフトネスについて顕著に良好な結果が得られたのは本発明の実施例1及び実施例2のみである。
以上の「ティップ トウ ティップ形式の積層構造との比較試験」と「ネステッド形式の積層構造同士の比較試験」との結果からして、本発明のエンボスパターン及び積層構造とすることにより、紙厚を薄くでき吸油速度が速いというネステッド形式の利点はそのままに、「ティップ トウ ティップ形式の積層構造」以上の吸油量を達成でき、しかも柔らかさ、しなやかさにも優れるようになる。