JP2019210199A - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1の方法では、石英坩堝における底部の肉厚に対し、シリコン融液の対流との接触部分である開口部の肉厚を厚くして、当該接触部分の内壁の温度をシリコン融液の再結晶温度よりも高く、かつ、接触部分以外の温度よりも低くする。これにより、石英坩堝内壁からの対流によるシリコン融液への酸素の溶け込み抑制し、シリコン単結晶の酸素濃度を低くしている。
しかしながら、育成条件を同じにしても、シリコン単結晶の酸素濃度が狙い値から外れてしまうことがあり、酸素濃度の狙い値からの乖離を抑制することが求められていた。
本発明によれば、シリコン単結晶の多くの領域における酸素濃度の狙い値からの乖離を抑制でき、収率(直胴部のうち製品にすることができる領域の割合)を向上できる。
まず、本発明の関連技術を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、単結晶引き上げ装置1は、CZ法(Czochralski法)に用いられる装置であって、引き上げ装置本体2と、メモリ3と、制御部4とを備えている。
引き上げ装置本体2は、チャンバ21と、このチャンバ21内に配置された坩堝22と、この坩堝22を加熱するヒータ23と、引き上げ部24と、熱遮蔽体25と、断熱材26と、坩堝駆動部27とを備えている。
なお、単結晶引き上げ装置1は、二点鎖線で示すように、MCZ(Magnetic field applied Czochralski)法に用いられる装置であって、チャンバ21の外側において坩堝22を挟んで配置された一対の電磁コイル28を有していてもよい。
引き上げ部24は、一端に種結晶SCが取り付けられるケーブル241と、このケーブル241を昇降および回転させる引き上げ駆動部242とを備えている。
熱遮蔽体25は、シリコン単結晶SMを囲むように設けられ、ヒータ23から上方に向かって放射される輻射熱を遮断する。
坩堝駆動部27は、黒鉛坩堝222を下方から支持する支持軸271を備え、坩堝22を所定の速度で回転および昇降させる。
なお、単結晶引き上げ装置1におけるホットゾーンは、チャンバ21、坩堝22、ヒータ23、ケーブル241、熱遮蔽体25、断熱材26、支持軸271、シリコン融液M、シリコン単結晶SMなどである。
制御部4は、メモリ3に記憶された各種情報や、作業者の操作に基づいて、シリコン単結晶SMを製造する。
本発明者は、酸素濃度の狙い値からの乖離の原因を鋭意検討した結果、石英坩堝221の重量が酸素濃度に影響を及ぼしているという知見を得た。以下、この知見について説明する。
次に、使用済みの石英坩堝221を新しい石英坩堝221に交換したこと以外は、従前と同じ引き上げ条件で1本のシリコン単結晶SMを製造し、上記所定位置の酸素濃度を測定した。
その後、同様にして、複数の新しい石英坩堝221を用いて、石英坩堝221と同じ数のシリコン単結晶SMを製造した。
石英坩堝221の重量のヒストグラムを図2に、石英坩堝221の重量と酸素濃度との関係を図3に示す。なお、図2および図3の横軸は、石英坩堝221の重量の設計値からの差を示す。図2の縦軸は、度数を示す。図3の縦軸は、酸素濃度の狙い値からの差を示す。
図3に示すように、石英坩堝221の重量と酸素濃度との間に、石英坩堝221の重量が増えるほど酸素濃度が減り、石英坩堝221の重量が減るほど酸素濃度が増えるという負の相関があることわかった。つまり、1つの単結晶引き上げ装置1を用いて、酸素濃度に影響を与える因子、例えばチャンバ21の炉内圧、チャンバ21に供給する不活性ガスの流量、石英坩堝221の回転数を同じにして複数のシリコン単結晶SMを製造しても、石英坩堝221の重量の影響によって、酸素濃度が狙い値から大きく乖離する場合があることがわかった。
次に、本発明の一実施形態に係るシリコン単結晶SMの製造方法について説明する。
なお、本実施形態では、円筒研削後の直胴部の直径が300mmのシリコン単結晶SMを製造する場合を例示するが、円筒研削後の直径は200mmや450mmあるいは他の大きさであってもよい。また、抵抗率調整用のドーパントをシリコン融液Mに添加してもよいし、しなくてもよい。
「トップ部」は、シリコン単結晶SMの直径や抵抗率などによっても異なるが、シリコン単結晶SMの直胴部全体を100%とした場合、直胴部の引き上げ方向上端から1%以上33%以下の領域を示し、「ボトム部」は、直胴部の下端から67%以上100%以下の領域を示し、「ミドル部」は、トップ部とボトム部との間の領域を示す。
まず、図3の関係を求めるための実験と同様の実験を行う。重量が設計値よりも1.2kg軽い石英坩堝221を用いて基準の引き上げ条件でシリコン単結晶SMを製造したときに、当該シリコン単結晶SMのトップ部およびミドル部における酸素濃度が、基準酸素濃度に対して+2.3%増加した値(=基準酸素濃度+基準酸素濃度×2.3%)になるという結果が得られたとする。この場合に、トップ部およびミドル部における調整量が、基準酸素濃度の2.3%だけ減少するように設定される。
すなわち、シリコン単結晶SMを基準の引き上げ条件で製造したときの酸素濃度と、当該シリコン単結晶SMの製造に用いた石英坩堝221の重量との関係を予め求めておき、さらに、基準の引き上げ条件を変化させたときに、酸素濃度がどのように変化するのかを予め把握しておく。
そして、新しい石英坩堝221を用いてシリコン単結晶SMを製造するときには、その新しい石英坩堝221の重量に基づいてシリコン単結晶SMの酸素濃度を推定し、この推定値と狙い値とに基づいて引き上げ条件を設定すればよい。
なお、表1の関係は、シミュレーションで作成されたものであってもよい。
違う型式の単結晶引き上げ装置1の場合、ホットゾーンの形状や配置の違いによってシリコン融液Mの加熱条件が異なる場合があり、同じ型式の単結晶引き上げ装置1であっても、ホットゾーンの形状や配置の公差などによってシリコン融液Mの加熱条件が異なる場合がある。これらのようにシリコン融液Mの加熱条件が異なると、全く同じ形状の石英坩堝221を用いて全く同じ引き上げ条件でシリコン単結晶SMを製造しても、酸素濃度が異なってしまうからである。
このステップS2の処理によって、例えば、石英坩堝221の重量が設計値よりも0.4kg重く、かつ、狙い値が基準酸素濃度の場合、トップ部およびミドル部における引き上げ条件を、酸素濃度が基準酸素濃度に対して0.8%だけ増加するように設定し、ボトム部における引き上げ条件を、酸素濃度が基準酸素濃度に対して1.5%だけ増加するように設定する。このとき基準の引き上げ条件に対して調整する条件は、酸素濃度に影響を及ぼす因子であればよい。例えば、チャンバ21の炉内圧、チャンバ21に供給する不活性ガスの流量、石英坩堝221の回転数が挙げられ、これら因子のうちいずれか1つを選択することが好ましい。
この場合、チャンバ21の炉内圧、チャンバ21に供給する不活性ガスの流量あるいは石英坩堝221の回転数が、シリコン単結晶の酸素濃度に及ぼす影響を定量的に予め把握しておく必要がある、すなわち、チャンバ21の炉内圧、チャンバ21に供給する不活性ガスの流量あるいは石英坩堝221の回転数を変化させた場合に、シリコン単結晶の酸素濃度がどの程度変化するのかを予め把握しておく必要がある。
上記実施形態によれば、石英坩堝221の重量の測定結果と表1の関係とに基づいて、当該石英坩堝221を用いて製造されたシリコン単結晶SMの酸素濃度が狙い値となるような引き上げ条件を設定する。この後、重量が測定された石英坩堝221を用いて、前記設定された引き上げ条件でシリコン単結晶SMを製造する。
このため、石英坩堝221を交換した場合でも、酸素濃度の狙い値からの乖離を抑制できる。
表1において、トップ部、ミドル部およびボトム部に応じて、すなわちシリコン単結晶SMにおける結晶軸方向の複数の所定位置ごとに、酸素濃度の調整量を設定しているため、直胴部の全域における酸素濃度の狙い値からの乖離を抑制でき、収率を向上できる。
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
引き上げ条件の設定は、酸素濃度に影響を与える因子を設定すればよく、例えば、MCZ法でシリコン単結晶を製造する場合には、シリコン融液に印加する磁場の強度や磁場の印加位置を設定してもよい。
表1の関係は、単結晶引き上げ装置1の合計使用時間に応じて設定されていてもよい。ホットゾーンの構成部材の劣化が酸素濃度に影響を与えるからである。
まず、図1に示すような単結晶引き上げ装置1に石英坩堝221を取り付けた。引き上げ条件の設定は、石英坩堝221の重量を考慮することなく、従前に製造したシリコン単結晶SMの酸素濃度に基づいて、トップ部、ミドル部およびボトム部のそれぞれの酸素濃度が狙い値となるように行った。その後、この設定された引き上げ条件で、円筒研削後の直径が300mmになるようなシリコン単結晶SMを製造し、直胴部を複数のブロックに分割した。当該ブロックにおけるトップ部、ミドル部およびボトム部にそれぞれ対応する位置からウェーハを取得し、各ウェーハの中心の酸素濃度(ASTM F121−1979)をFTIRで測定した。各ウェーハの取得位置に対応する狙い値と酸素濃度の測定結果との差(以下、「酸素濃度差」という)の絶対値を求めた後、1本のシリコン単結晶SMから取得した複数のウェーハにおける酸素濃度差の絶対値の平均値を求めた。
比較例1では、合計34本のシリコン単結晶SMを製造して、それぞれのシリコン単結晶SMについて酸素濃度差の絶対値の平均値を求めた。その結果を図5に示す。図5および後述する図6の1つのデータは1本のシリコン単結晶SMの値である。
比較例1とは異なる単結晶引き上げ装置1を用いて、比較例1と同様の処理(引き上げ条件を石英坩堝221の重量を考慮することなく設定)によって比較例1と同じサイズのシリコン単結晶SMを20本製造し、それぞれシリコン単結晶SMについて酸素濃度差の絶対値の平均値を求めた。その結果を図6に示す。
比較例1と同じ単結晶引き上げ装置1に石英坩堝221を取り付けた。引き上げ条件の設定は、石英坩堝221の重量と、表1に示すような石英坩堝221の重量および酸素濃度の調整量の関係とに基づいて、トップ部、ミドル部およびボトム部のそれぞれの酸素濃度が狙い値となるような調整量を求め、当該調整量に基づいて行った。その後、この設定された引き上げ条件で、比較例1と同じサイズのシリコン単結晶SMを製造し、比較例1と同様にして酸素濃度差の絶対値の平均値を求めた。
実施例1では、合計37本のシリコン単結晶SMを製造して、それぞれのシリコン単結晶SMについて酸素濃度差の絶対値の平均値を求めた。その結果を図5に示す。
比較例2と同じ単結晶引き上げ装置1を用いて、実施例1と同様の処理(引き上げ条件を石英坩堝221の重量を考慮して設定)によって実施例1と同じサイズのシリコン単結晶SMを34本製造し、それぞれシリコン単結晶SMについて酸素濃度差の絶対値の平均値を求めた。その結果を図6に示す。
図5および図6に示すように、実施例1および比較例1のそれぞれにおける酸素濃度差の絶対値の平均値の平均値(以下、単に「酸素濃度差平均値」という)を直線Lで結び、実施例2および比較例2についても同様に直線Lで結んだ。各単結晶引き上げ装置1において、酸素濃度差平均値は、実施例1,2の方が比較例1,2よりも小さかった。
実施例1,2における酸素濃度差の絶対値の平均値のばらつきは、比較例1,2よりも小さかった。
以上のことから、石英坩堝221の重量の測定結果と表1に示すような関係とに基づいて、当該石英坩堝221を用いて製造されたシリコン単結晶SMの酸素濃度が狙い値となるような引き上げ条件を設定することで、石英坩堝221を交換した場合でも、酸素濃度の狙い値からの乖離を抑制できることが確認できた。
Claims (4)
- 単結晶引き上げ装置を用いたチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法であって、
石英坩堝の重量を測定する工程と、
前記重量の測定結果に基づいて、当該重量が測定された石英坩堝を用いて製造されたシリコン単結晶の酸素濃度が狙い値となるような引き上げ条件を設定する工程と、
前記重量が測定された石英坩堝を用いて、前記設定された引き上げ条件でシリコン単結晶を製造する工程とを備えていることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記引き上げ条件を設定する工程は、他の石英坩堝の重量および当該他の石英坩堝を用いて製造されたシリコン単結晶の酸素濃度を所定の酸素濃度にするための引き上げ条件の関係と、前記重量の測定結果とに基づいて、前記引き上げ条件を設定することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記引き上げ条件を設定する工程は、前記シリコン単結晶における、結晶軸方向の複数の所定位置ごとに、前記酸素濃度が狙い値となるような引き上げ条件を設定することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記引き上げ条件を設定する工程は、前記単結晶引き上げ装置のチャンバの炉内圧、前記チャンバに供給する不活性ガスの流量、および、前記石英坩堝の回転数のうち少なくともいずれか1つを前記引き上げ条件として設定することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
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