JP2019209010A - 空気浄化装置及び空気浄化方法 - Google Patents

空気浄化装置及び空気浄化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】空気に含まれる揮発性有機化合物などの有機化合物をより効率良く除去可能な空気浄化技術を提供する。【解決手段】軸を上下に向けて配置され、底面部1Aに空気及び液体が流通可能な複数の開口1Aaを有すると共に内部に複数の多孔質体2が積層された筒体1を有する。連続的若しくは間欠的に、筒体1の上側から下方に向けて、筒体1内に有機物を分解可能な好気性のバクテリアが混入されたバクテリア溶液4を落下させて、複数の多孔質体2をバクテリア溶液4で濡らした状態とし、処理する空気を、上記筒体1内の積層した多孔質体2の層へ通過させることで当該空気の浄化を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、空気中の汚染物質を浄化する空気浄化の技術に関する。特に、本発明は、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)を、空気中から簡便に除去する処理に好適な技術である。
有機溶媒を扱う工場内ではホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物などが汚染物質として空気に含まれる。このような汚染物質を除去して空気を浄化する方法としては、例えば観葉植物等の鉢植え植物を室内に設置する方法がある。この浄化方法は、植物の葉や根などから汚染物質を吸収させるものである。
しかし、この浄化方法は、葉に触れた汚染物質には対応可能ではあるが、大気中に浮遊する汚染物質を積極的に吸引して処理するものでは無いため、汚染物質除去の効率が低い。また植物が吸収できる汚染物質やその量も限られているという課題がある。
これに対し、特許文献1では、汚染物質を含む空気を浄化容器内に吸引し、吸引した汚染物質を水に溶解させて溶解水とし、その溶解水を、植物が植えられた土壌に供給することで、汚染物質を植物の根部から効率的に吸収させる従来技術が記載されている。
特開2002−709号公報
上記従来技術では、植物の根部からの汚染物質の吸収が効率的に行われる可能性はあるが、やはり植物の吸収能力に頼っているため、空気清浄に限度があるといった課題がある。また、VOCをそのまま直接植物に吸収させることは、植物への負担やダメージも大きい。
また、仮に汚染空気を土壌に圧送させる構成としても、土壌の緻密性などから、土壌内を通過させる単位時間当たりの空気の量に限界がある。
本発明は、そのような課題に着目したもので、空気に含まれる揮発性有機化合物などの有機化合物をより効率良く除去可能な空気浄化技術を提供することを目的としている。
課題を解決するために、本発明の一態様は、軸を上下に向けて配置され、底面部に空気及び液体が流通可能な複数の開口を有すると共に内部に複数の多孔質体が積層された筒体を有し、連続的若しくは間欠的に、上記筒体の上側から下方に向けて、上記筒体内を有機物を分解可能な好気性のバクテリアが混入されたバクテリア溶液を落下させて、上記複数の多孔質体を上記バクテリア溶液で濡らした状態とし、処理する空気を、上記筒体内の積層した多孔質体の層へ通過させることで当該空気の浄化を行うことを要旨とする。
ここで、上記バクテリアは例えば従属性栄養細菌であり、バイオセイフティレベル1に属するバクテリアが好ましい。また好気性には、通気好気性も含まれる。
本発明の一態様によれば、筒体内の多孔質体に対し濡れた状態でバクテリアを付着させ、処理する空気を強制的に通すことで、空気に含まれる汚染物質は、多孔質体に吸着し、バクテリアによって分解されて空気の浄化がなされる。
ここで、各多孔質体は、多数の凹凸を有することで、供給されるバクテリア溶液を保持でき、また、表面積が広いため、汚染物質の上記吸着・分解を効率的に行うことが可能である。
また、各多孔質体間の隙間が、バクテリア溶液及び空気の通り道となるため、土壌内に空気を通す場合に比べて、空気の強制循環量を多くすることも可能である。
また上側からバクテリア溶液を連続的若しくは間欠的に落下させることで、積層している多孔質体に付着しているバクテリアを濡れた状態としてバクテリアによる汚染物質の分解が確実に行われる。更に、適宜、多孔質体に付着しているバクテリア及び溶液の交代が行われることでも、バクテリアによる汚染物質の分解低下を抑制することができる。
以上のように、本発明の一態様によれば、大量の植物を設置しなくても、より効率良く周りの空気に含まれる汚染物質を分解して、より効率良く汚染物質の除去が可能となる。即ち、本発明の一態様によれば、より効率良く空気を浄化することが可能となる。
本発明に基づく第1実施形態に係る空気浄化装置を説明する部分断面図である。 本発明に基づく実施形態に係る空気浄化装置の上面図である。 筒体を説明する図であって、(a)は上面図、(b)は断面側面図、(c)は底面図である。 本発明に基づく第2実施形態に係る空気浄化装置を説明する図であって、(a)は上面図、(b)は部分断面図である。 本発明に基づく第3実施形態に係る空気浄化装置を説明する部分断面図である。 本発明に基づく第4実施形態に係る空気浄化装置を説明する部分断面図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は必ずしも現実のものと同じではない。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
「第1実施形態」
(構成)
本実施形態の空気浄化装置は、図1〜図3に示すように、軸を上下に向けて配置される筒体1と、筒体1内に上下に積層した複数の多孔質体2と、バクテリア溶液4を収容した液体収容部3と、溶液循環装置7と、排気装置9とを有する。筒体1と複数の多孔質体2でVOC除去反応層が構成される。
<筒体1>
筒体1の材質は、液体が漏れ出さなければ特に材質の限定がない。
筒体1の断面積や高さは、除去する空気量や設置場所の大きさを考慮して適宜設定すればよい。
図1〜図3では、筒体1が円筒状の場合を例示しているが、筒体1は、断面四角形状などの角柱状であっても良いし、長手方向の途中位置が膨らんだ樽状であっても良い、また、長手方向に沿って断面が小さく若しくは大きくなる錐体形状であっても良い。
筒体1の下端開口部は板状の底面部1Aで閉塞されている。ただし、底面部1Aには、空気及び液体が流通可能な大きさの複数の開口1Aaが設けられ、その開口1Aaを通じて、筒体1内の溶液が下方に自由落下すると共に、下側から空気が筒体1内に供給可能となっている。
筒体1の上端開口部は板状の上面部1Bで閉塞されている。但し、上面部1Bにも、空気が流通可能な複数の開口1Baが形成されている。
<溶液循環装置7>
溶液循環装置7は、筒体1の上部から筒体1内へバクテリア溶液4を連続的若しくは間欠的に供給する装置である。供給されたバクテリア溶液4は、筒体1の底面部1Aの開口1Aaから下方に落下して液体収容部3に回収されることで循環使用される。
本実施形態の溶液循環装置7は、管部6とポンプ5とを有する。
管部6は、筒体1内を上下に延在するように配置されると共に底面部1Aを貫通して下方に突出している。管部6は、上端部が上面部1Bに固定されると共に当該上面部1Bに固定されている。管部6は、下部が底面部1Aに支持されている。管部6の上部には、溶液を吐出するための複数の孔6aが開口している。孔6aにノズルを設けて噴射方向を制御しても良い。
本実施形態では、図1及び図3に示すように、管部6に設ける孔6aが上下2段で構成されると共に、上面部1Bの下面に下側に突出する円筒状の邪魔板1Bbが配置されている。これによって、上側の孔6aから吐出(噴射)された溶液が、邪魔板1Bbにぶつかって管部6に近い位置で落下するようになり、積層した複数の多孔質体2の上面に対し、より均一にバクテリア溶液4が降り注ぐようになる。
なお、孔6aは、積層した複数の多孔質体2上部位置と同じ高さにも設けても良い。
管部6の下端開口は、筒体1の下方に配置されたポンプ5に接続する。ポンプ5は、下側に吸込口4aが設けられると共に、上側に吐出口4bが設けられ、その吐出口4bに管部6の下端開口部が接続する。ポンプ5の大きさは、図2のように、上面視で筒体1に完全に隠れる大きさが好ましい。
<多孔質体2>
筒体1に収納される複数の多孔質体2は、例えば多孔質ガラス発泡材、活性炭、ゼオライト、軽石など、多数の気孔を有する物質からなる。
各多孔質体2は、例えば底面部1Aに形成した開口1Aaよりも粒径が大きな粒体から構成され、その粒体からなる複数の多孔質体2を、筒体1の所定高さまで充填することで、複数の多孔質体2を筒体1内で上下に積層する。
もっとも多孔質体2は、練炭のような上下に微細な貫通孔が形成されたような円柱形状から構成され、その円柱状の多孔質体2を筒体1内に積層するように配置しても良い。空気との接触面積や簡便性を考慮すると、多孔質体2は粒状の方が好ましい。
<液体収容部3>
液体収容部3は、バクテリア溶液4を収容するタンクである。液体収容部3の天井面には、筒体1の下端部を着脱可能に取り付ける取付け用開口部3Aを有する。取付け用開口部3Aは、内壁面3Aaが筒体1下部の外形と同一の形状になっていると共に筒体1下端面の外周部が当接する段部を有する。そして、段部に当接するまで、上側から筒体1を差し込むことで、筒体1の下部は取付け用開口部3Aに着脱可能に取り付けられる。
また液体収容部3の天井面には、液体収容部3と外気とを連通する開口である通気穴3Bが形成されている。
液体収容部3内には、有機物を分解可能な好気性のバクテリアが混入されたバクテリア溶液4が収容されている。収容されたバクテリア溶液4の上面である液面は、図1に示すように、液体収容部3内の上部に空気層SPが形成される高さであって、ポンプ5の吸込口4aの設置よりも高い位置に設定される。これによって、筒体1の下端面(底面部1Aの下面)の下方に空気層SPが形成され、底面部1Aの下面は、通気穴3Bを介して外気と連通した状態となる。
<バクテリア溶液4>
バクテリア溶液4は、有機物を分解可能な好気性のバクテリアを水に溶かし込んだ液体である。
以下の説明では、主に、バクテリアとして従属性栄養細菌を使用した場合で例示する。
「従属性栄養細菌」は、生存に必要な炭素を得るために有機化合物を利用する細菌であって、エネルギーの供給を他種の生物に依存する細菌である。つまり、バクテリア溶液4に含まれるバクテリアが従属性栄養細菌の場合は、揮発性有機化合物(VOCとも呼ぶ)などの有機物からなる汚染物質を分解することができる。
従属性栄養細菌は、好気性細菌でも通性好気性細菌でもよい。「好気性細菌」とは、例えば、糖や脂質のような基質を酸化してエネルギーを得るために酸素を利用する細菌をいう。また、「通性好気性細菌」とは、発育する際に酸素があった方がよいが、酸素がなくても発育できる細菌をいう。つまり、バクテリア溶液4に含まれるバクテリアが好気性細菌と通性好気性細菌のいずれか一方であれば、酸素の存在量が多い環境下や酸素の存在量が少ない環境下であってもバクテリアは、多孔質体2に付着した汚染物質を食物として効率良く消費する。本実施形態の場合、バクテリア溶液4によって多孔質体2が常に濡れた状態となっていることで、その溶液からなる液体に汚染物質が吸着(捕獲)され、吸着された汚染物質が溶液中にバクテリアで分解される。
また、従属性栄養細菌は、例えば、胞子型細菌であってもよい。「胞子型細菌」とは、代謝活性が少なく休眠状態をとり得るタイプの細菌をいう。つまり、バクテリア溶液4に含まれるバクテリアが胞子型細菌であれば、液体収容部3内に存在する状態(未使用の状態)ではバクテリアは休眠状態となっているため、バクテリア溶液4を長期間保存することができる。使用するバクテリアは、室内での使用を考えた場合、安全性が一番高いバイオセイフティレベル1に属する安全菌を使用することが好ましい。
また、空気浄化装置を設置する室内の主な汚染物質の種類によって、使用するバクテリアを選択することが好ましい。
例えば、CとHからなる炭化水素を構成要素とする汚染物質の清浄を主とした有機溶媒を扱うような工場内の空気清浄の場合、CとHとOからなる炭水化物、脂肪、それにNが入ったタンパク質などを構成要素とする汚染物質の清浄を主としたアスレチックルームや病院などの場合など、空気浄化装置の使用環境に応じて、使用する主なバクテリアの種類を決定することが好ましい。
例えば、家畜場、アスレチックルーム、病院、高齢者養護施設などの室内の空気清浄を想定した場合、生活臭や加齢臭などの臭いの元が主な汚染物質となる。このような汚染物質は、CとHとOからなる炭水化物、脂肪、それにNが入ったたんぱく質であるため、従属性栄養細菌で、胞子型細菌であるバクテリアを使用することが好ましい。
具体的には、これらのバクテリアとして、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)が例示できる。これらの少なくとも1種類のバクテリアを含むように、水に溶かし込むバクテリアを選定する。これらのバクテリアは、酸素の存在量が多い環境下や酸素の存在量が少ない環境下であってもバクテリアはタンパク質等の汚染物質を食物として確実に消費する。これらのバクテリアを、本明細書では、第1のバクテリアとも呼ぶ。
なお、バチルス・サブティリスは、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼ、澱粉や糖の分解酵素であるアミラーゼ、脂肪分解酵素であるリパーゼ等を出す細菌である。また、バチルス・リケニフォルミスは、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼ等を出す細菌である。また、バチルス・メガテリウムは、澱粉や糖の分解酵素であるアミラーゼ、脂肪分解酵素であるリパーゼ等を出す細菌である。
また、有機溶媒を扱う工場などの室内においては、VOCが主に空気から除去する汚染物質となる。VOCとは、通常、揮発性有機化合物で、沸点が50℃〜260℃の物質の総称である。VOCとは、水素(H)と炭素(C)からなる炭化水素(HC)で、ベンゼンCやホルムアルデヒドCH0、トルエンC(CCH)、キシレンC10、酢酸エチルCなどであって、これらの有機化合物は大気中では気体状となっている。
このようなVOCを分解する菌としては、VOCを栄養源として利用する従属性栄養細菌を利用すればよい。例えば、好気性菌である、シュードモナス菌、アシネトバクター・ベネティアヌス、アースロバクターspなどから選択して使用すればよい。これらのバクテリアを、本明細書では第2のバクテリアとも呼ぶ。
ここで、室内に存在する汚染物質の状況に応じて、第1のバクテリアと第2のバクテリアを適宜混合した溶液を使用すれば良い。
そして、液体収容部3に収容するバクテリア溶液4中に含まれる前記バクテリアの量は、例えば、10個/cc以上10個/cc以下の範囲内とする。
汚染物質の量にもよるが、バクテリアの量が10個/cc未満であると、取り込んだ汚染物質がバクテリアによって十分に分解されないおそれがある。また、バクテリアの量が10個/ccを超えると、汚染物質はバクテリアによって十分に分解されるが、必要量以上のバクテリアを用いるため、コスト高になる可能性がある。
<排気装置9>
筒体1の上端部(上面部1Bの上)に排気装置9を接続する。
排気装置9は、筒体1内の上部の空気を吸引して外部に排気することで、筒体1内を下方から上方に向けて空気を強制循環させるための装置である。本実施形態の排気装置9は排気用の換気扇から構成する。換気扇としては、公知の換気扇構造を採用すれば良い。換気扇からなる排気装置9は、例えば回転するプロペラ9aからなるファンと、ファンを回転駆動するモータと、モータを駆動する電源部を備える。電源部は電源ケーブルのプラグをコンセントに接続することで、電力が供給されてモータがファンを回転駆動可能となっている。
すなわち排気装置9は、閉鎖空間を形成する筒体1内の空気を吸引して外部に排気することで、筒体1内が負圧となり、筒体1の底面部1Aに形成された開口1Aaを通じて、液体収容部3の上部に形成される空気層SPの空気が筒体1内に吸引される。そして、液体収容部3の上部の空気層SPは、通気穴3Bを介して外気に通じているため、汚染物質を含む外気が筒体1の下端から吸引されることになる。
ここで、排気装置9は、換気扇構造に限定されず、エアコンプレッサなどの吸排気装置を採用しても良い。ただし換気扇が簡易な構成で好ましい。
通気穴3Bに換気扇構造などからなる吸引装置を設けて、液体収容部3に積極的に外気を導入するようにしても良い。
ここで、本実施形態では、排気装置9及び溶液循環装置7(管部6及びポンプ5)は筒体1に取り付けられて一つのカセットを構成し、そのカセットを単位に着脱して扱い可能となっている。
<溶液供給タンク10>
符号10は、溶液供給タンク10である。溶液供給タンク10内には、バクテリア溶液4が収納され、液体収容部3内におけるバクテリア溶液4の液面の高さが一定となるように調整する。符号10aは逆止弁であり、液面が所定以下となると、弁10aが開となって、溶液供給タンク10内のバクテリア溶液4が液体収容部3に供給される。
もっともバクテリア溶液4は循環して使用するため、溶液供給タンク10は無くても良い。
<動作その他>
上記構成の空気浄化装置では、ポンプ5を連続的若しくは間欠的に駆動することで、連続的若しくは間欠的に、筒体1内の上側から下方に向けて、筒体1内を、有機物を分解可能な好気性のバクテリアが混入されたバクテリア溶液4を落下させる。これを繰り返すことで、筒体1内をバクテリア溶液4が連続して若しくは間欠的に循環させる。この結果、筒体1内の複数の多孔質体2を常にバクテリア溶液4で濡らした状態とすることができる。
この状態で、処理する空気を、筒体1の底面部1Aの開口1Aaから筒体1内を上方に向けて流通させ、筒体1の上方から外部に排気することで、空気の浄化が行われる。
更に、具体的に説明する。
ポンプ5を連続的若しくは間欠的に駆動すると、液体収容部3内のバクテリア溶液4が管部6を通じて、筒体1の上部まで移動し管部6上部に形成されている孔6aから、シャワーのように筒体1内の上部に吐出されて、積層された多孔質体2の上面に供給される。
多孔質体2の上面に供給されたバクテリア溶液4は、多孔質体2内を下方に向けて染み込みながら下方に移動する。多孔質体2に付着しなかったバクテリア溶液4は、筒体1の底面部1Aの開口1Aaから空気層SPを介して液体収容部3内に落下して液体収容部3内へ回収される。
連続的若しくは間欠的に、上記のようにバクテリア溶液4を循環させることで、筒体1内の多孔質体2は常にバクテリア溶液4で濡れた状態となって、多孔質体2にバクテリアがくっついた状態となる。また濡れているので、バクテリアも水分が有る状態に保持される。
この状態で、排気装置9を駆動すると、筒体1の下端から外部の空気が吸引され、吸引された空気が多孔質体2の層を通過することで、空気中の汚染物質が、多孔質体2に吸着されて取り込まれる。なお、吸着は物理的吸着やイオン結合によって行われる。
そして、多孔質体2に付着するバクテリア溶液4中のバクテリアが、取り込まれた有機物からなる汚染物質を、食べることで低分子に分解する。
ここで、バクテリアによる分解は、「高分子→低分子→水+二酸化炭素」のように行われる。
具体的には、炭化水素系や塩素系有機化合物などのVOCが主な汚染物質の場合、VOCの炭化水素が、バクテリアによって、「アルコール→脂肪酸→水+二酸化炭素」に分解される。また、炭化水素の水素Hが塩素CLに替わった有機塩素系溶剤の場合は、バクテリアによって二酸化炭素・ギ酸・グリオキシル酸を含む多様な物質に分解されて、最終的に二酸化炭素、塩化物、水に分解される。
また、日常生活空間の臭いの元は、人や動物を含む生物から発生する汚染物質である。ここで生物は糖、たんぱく質、脂肪からなっており、基本は炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の化合物で、これに(N)が加わるとたんぱく質になる。糖の代表的なグルコースは次のような経路で分解する。
12+6O→6C0+6H0+エネルギー
このように、多孔質体2に取り込まれた汚染物質は、バクテリアによって分解される。これによって、周りの空気に存在する揮発性有機化合物等の有機物をより効率良く除去できる。即ち、より効率良く空気を浄化することが可能となる。
ここで、バクテリアが汚染物質を分解する際に、副産物としてアルコール、酸、塩化物などの副産物も発生して、バクテリアの分解効率に影響が出る可能性があるが、本実施形態では、上側から連続的または間欠的にバクテリア溶液4を供給することで、上記副産物が下方に落下すると共に、多孔質体2に付着しているバクテリア溶液4が適宜入れ替わることで、バクテリアによる分解効率の低下が抑制される。なお、二酸化炭素などの気体は、空気と共に外部に排出される。
また、筒体1がカセット式となっているので、適宜取り外して他の筒体1を取り付けて空気浄化を行いつつ、外した筒体1の洗浄などを行うことも可能である。
(効果)
本実施形態は次のような効果を奏する。
(1)本実施形態の空気浄化装置は、軸を上下に向けて配置され、底面部1Aに空気及び液体が流通可能な複数の開口1Aaを有する筒体1と、上記筒体1の軸方向に向けて空気及び液体が流通可能な状態で上記筒体1内に積層した複数の多孔質体2と、有機物を分解可能な好気性のバクテリアが混入されたバクテリア溶液4を収容した液体収容部3と、上記液体収容部3内のバクテリア溶液4を吸引し、吸引したバクテリア溶液4を上記筒体1内の上部位置に吐出する溶液循環装置7と、上記筒体1の上部に設けられて筒体1内の空気を吸引して外部に排気する排気装置9と、を有し、上記筒体1の底面部1Aの下面は、外部の空気と連通し、上記筒体1の底面部1Aの開口1Aaから落下した上記バクテリア溶液4は、空気層SPを介して上記液体収容部3内に戻される。
この構成によれば、筒体1内の多孔質体2に濡れた状態のバクテリアを付着させ、処理する空気を強制的に通すことで、空気に含まれる汚染物質は、多孔質体2に吸着し、バクテリアによって分解されて空気の浄化がなされる。各多孔質体2は、多数の凹凸を有することで、供給されるバクテリア溶液4が保持でき、また、表面積が広いため、汚染物質の上記吸着・分解を効率的に行うことが可能である。
また、各多孔質体2間の隙間が、バクテリア溶液4及び空気の通り道となるため、土壌内に空気を通す場合に比べて、空気の強制循環量を多くすることも可能である。
また上側からバクテリア溶液4を連続的若しくは間欠的に落下させることで、積層している多孔質体2に付着しているバクテリアを濡れた状態としてバクテリアによる汚染物質の分解を確実に行うことができる環境を形成し、更に、適宜、多孔質体2に付着しているバクテリアの交代が行われることでも、バクテリアによる汚染物質の分解低下を抑制することができる。
以上のように、本発明の一態様によれば、より効率良く周りの空気に含まれる汚染物質を分解することで、より効率良く汚染物質の除去が可能となる。即ち、より効率良く空気を浄化することが可能となる。
(2)本実施形態の空気浄化装置では、溶液循環装置7は、筒体1内を上下に延在すると共に底面部1Aを貫通して下方に突出する管部6と、管部6の下端部に吐出口4bを接続すると共に底面部1Aよりも下方に吸込口4aが配置されたポンプ5と、を有し、液体収容部3は、収容している溶液の液面よりも上側となる位置に、筒体1の下端部を着脱可能に取り付ける取付け用開口部3Aを有すると共に、筒体1の底面部1Aの下面と外部の空気と連通する通気穴3Bを有する。
この構成によれば、筒体1をカセット式として簡易に交換することが可能となる。
例えば、仮に筒体1が目詰まりしても、別の筒体1とポンプ5等の組からなるカセットと入れ替えることで、空気浄化を継続して行うことができる。
(3)使用するバクテリアは、バチルス・サブティリス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウムの少なくとも一つを含む。
この構成によれば、日常生活環境下で発生する生活臭や加齢臭等の臭い汚れの元を効率良く除去することができる。
(4)使用するバクテリアは、シュードモナス菌、アシネトバクター・ベネティアヌス、アースロバクターspの少なくとも一つを含む。
この構成によれば、溶剤を扱う工場で発生するVOCをより有効に除去することができる。
<変形例>
(1)上記説明では、バクテリア溶液4を筒体1上部に供給する管部6が筒体1内を通過する例を説明した。管部6を筒体1外壁面に沿って上方に延在させ、管部の上端部側を筒体1内に挿入するような構成としても良い。また、一つの筒体1に対し、管部6を2本以上設けても良い。
(2)上記説明では、筒体1の下方に、空気層SPを介して、液体収容部3に貯留しているバクテリア溶液4の液面が存在する場合を例示しているが、筒体1の下方に、液体収容部3に貯留しているバクテリア溶液4の液面が存在していなくても良い。筒体1の下方に、落下してきたバクテリア溶液4を液体収容部3に案内する傾斜路などの案内路を筒体1の下方に配置しても良い。
(3)上記説明では、液体収容部3と筒体1とが着脱可能な構成を説明したが、液体収容部3と筒体1とが一体に形成されていても良い。
(4)バクテリア溶液4の循環を間欠的に実施するように、ポンプ5を間欠的に(周期的に)駆動するように構成しても良い。
(5)排気装置9を逆回転するように構成して排気装置9を吸気装置としてもよい。
この場合、筒体1内の上部に外気が圧送され、筒体1内に積層した多孔質体2を通過することで浄化された空気が、底面部1Aの開口1Aaから下方に排出され、通気穴3Bを通じて外部に放出される。
すなわち、バクテリア溶液4と空気をともに、筒体1上部から筒体1の下方(同方向)に流して浄化をする装置構成であっても良い。
またこのとき、排気装置9を所定時間間隔(所定周期)で、順回転駆動による排気モードと、逆回転駆動による吸気モードとを繰り返し行うように設定しても良い。この場合には、間欠的に筒体1内の空気が攪乱することができる。また例えば、バクテリア溶液4の循環を間欠的に実施し、バクテリア溶液4の供給時に、排気装置を吸気装置として使用しても良い。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1実施形態と同様な構成には同一の符号を付して説明する。
本実施形態の空気清浄装置は、第1実施形態に比べて、よりコンパクトな装置構成とする場合の例である。すなわち、本実施形態では、図4に示すように、筒体1下端部を取り付ける取付け用開口部3Aの外周部に通気穴3Bを設けた例であり、液体収容部3を小型化している。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
この構成では。筒体1と通気穴3Bが近接して配置されることで、より確実に筒体1下端部から外気を吸引できると共に、装置自体をコンパクトにすることがきできる。本実施形態の空気清浄装置は、例えば、机の下や机の上などの狭い場所への設置も可能となる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1実施形態と同様な構成には同一の符号を付して説明する。
本実施形態の空気清浄装置は、図5に示すように、基本構成は第1実施形態と同様であるが、一つの液体収容部3に複数の取付け用開口部3Aを形成し、各取付け用開口部3Aにそれぞれ筒体1とポンプ5等の組からなるカセットを取り付けた構成である。
なお、図5では、筒体1を本体とした複数のカセットが、一方向に向けて並んだ状態が図示されているが、複数のカセットが一列に並んでいる必要はない。また、各カセット間にも通気穴を形成しても良い。
ただし、工場における汚染空気が発生する箇所が決まっている場合には、その位置に近い位置だけ通気穴3Bが形成されていることが好ましい。
この例では、複数の筒体1を備えることで、空気の浄化能力が向上する。
また、複数の筒体1の排気装置9を交互駆動させて外気を循環させることで、よりバクテリアによる分解低下を抑えることができる。
生物であるバクテリアは、汚染物質を分解する状態と休んでいる状態とを交互に繰り返した方が、バクテリアによる分解能の低下が抑えられるからである。
「第4実施形態」
次に、第4実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1実施形態と同様な構成には同一の符号を付して説明する。
本実施形態の空気清浄装置は、図6に示すように、通気穴を上記取付け用開口部3Aと同じ構成の開口(図6中、左側)とし、その開口に他の筒体1とポンプ5等からなるカセットを取り付ける。但し、その左側の筒体1用の排気装置9を逆回転して、外気を吸引して筒体1上部に圧送するように構成したものである。すなわち、左側の筒体1上部には排気装置9の代わりに吸気装置11を設定したものである。
この構成では、左側の筒体1上部に圧送された空気は、左側の筒体1内を下方に移動する際に浄化され、更に右側の筒体1の下端面から吸引されて、右側の筒体1を上方に通過される際に再度、浄化され、その後に外部に排出される。
これによって、汚染物質の濃度が濃い場合でも、より効率良く空気の浄化を行うことが可能である。
ここで、図6において、右側のカセットを外して、右側の取付け用開口部3Aを通気穴として構成させても良い。
この場合には、左側の筒体1上部に圧送された空気は、左側の筒体1内を下方に移動する際に、多孔質体2の層を通過して浄化され、液体収容部3内の上部に形成される空気層SPの位置を通じて右側の取付け用開口部に移動し、当該右側の通気穴としての取付け用開口部から外部に排出される。
その他の効果は第1実施形態と同様である。
次に、本実施形態に基づく実施例を説明する。
空気浄化装置として、第1実施形態の構造(図1参照)を採用した。
<実施例1>
装置の浄化槽となる筒体1として、直径100mmで高さ50cmのアクリル製の円筒を採用し、その筒体1の高さ3/4までに、多孔質体2として複数のガラス発泡材を充填した。
塩素系有機化合物分解用のバクテリアを使用したバクテリア溶液4を、液体収容部3に1.7Lの容量、収容して浄化実験を実施した。
ここで、VOCモニター(測定器)として、ToxiRAE Pro PID(RAEシステム社製)を用い、VOCの測定項目をブタキシエタノールとした。
そして、空気浄化装置を、容積が120Lの密閉容器内に設置した。そして、VOCを含有スルウォーター洗浄剤HB7に脱脂綿を漬け、湿らせた脱脂綿を、密閉容器内に3分程度入れ、その後、脱脂綿を取り出して、空気浄化装置を24時間、連続稼働させた。
なお、バクテリア溶液4の循環は連続循環とした。
その結果を表1に示す。
Figure 2019209010
表1から分かるように、初期のVOC濃度が11.8ppmであったが、24時間後には、4.7ppmまで浄化できた。
<実施例2>
液体収容部3に収容するバクテリア溶液4を1.8Lとし、空気浄化装置を72時間、連続稼働した以外は、実施例1と同様な装置で実施した。
その結果を表2に示す。
Figure 2019209010
表2から分かるように、初期のVOC濃度が16.8ppmであったが、24時間後には、6.4ppmと60.5%の低減率まで浄化でき、72時間後には完全に浄化できた。
<実施例3>
液体収容部3に収容するバクテリア溶液4を2.0Lとし、空気浄化装置を70時間稼働させた。実施例3では、排気装置9は連続稼働させるが、筒体1内へのバクテリア溶液4の供給を30分実施したら30分停止するという、30分間隔で実施した以外は、実施例1と同様な装置で実施した。
その結果を表3に示す。
Figure 2019209010
表3から分かるように、初期のVOC濃度が35.8ppmの上記の実施例よりも濃度が高かったが、24時間後には、13.9ppmと61.2%の低減率まで浄化でき、低減率に変化は無かった。また、72時間後には完全に浄化できた。
実施例3から、バクテリア溶液4の循環を間欠的に実施しても効果があることが分かる。多孔質体2に付着しているバクテリアが乾燥しないで濡れた状態が確保され、間欠的に多孔質体2に付着しているバクテリアや溶液の入れ替えが実施されることで、バクテリアによるVOC分解能が低下しないことが分かる。
<実施例4>
液体収容部3に収容するバクテリア溶液4を2.0Lとし、空気浄化装置を117時間、連続稼働した以外は、実施例1と同様な装置で実施した。
その結果を表4に示す。
Figure 2019209010
表4から分かるように、初期のVOC濃度が40.9ppmであったが、72時間後には、10.5ppmと74.3%の低減率まで浄化でき、117間後には完全に浄化できた。
また実施例3と実施例4とを比較すると、条件によっては、バクテリア溶液4の循環を間欠的に実施した方がバクテリアによるVOC分解能が向上することが分かる。
1 筒体
1A 底面部
1Aa 開口
1B 上面部
2 多孔質体
3 液体収容部
3A 取付け用開口部
3B 通気穴
4 バクテリア溶液
4a 吸込口
4b 吐出口
5 ポンプ
6 管部
6a 孔
7 溶液循環装置
9 排気装置
10 溶液供給タンク
10a 逆止弁
11 吸気装置

Claims (5)

  1. 軸を上下に向けて配置され、底面部に空気及び液体が流通可能な複数の開口を有する筒体と、
    上記筒体内を上下に向けて空気及び液体が流通可能な状態で上記筒体内に積層した複数の多孔質体と、
    有機物を分解可能な好気性のバクテリアが混入されたバクテリア溶液を収容した液体収容部と、
    上記液体収容部内のバクテリア溶液を吸引し、吸引したバクテリア溶液を上記筒体内の上部位置に吐出する溶液循環装置と、
    上記筒体内の上部から空気を吸引して外部に排気する排気装置と、
    を有し、
    上記筒体の底面部の下面は、外部の空気と連通し、
    上記筒体の底面部の開口から落下した上記バクテリア溶液は、上記底面部の下方に位置する空気層を介して上記液体収容部内に戻されることを特徴とする空気浄化装置。
  2. 軸を上下に向けて配置され、底面部に空気及び液体が流通可能な複数の開口を有する筒体と、
    上記筒体の軸方向に向けて空気及び液体が流通可能な状態で上記筒体内に積層した複数の多孔質体と、
    有機物を分解可能な好気性のバクテリアが混入されたバクテリア溶液を収容した液体収容部と、
    上記液体収容部内のバクテリア溶液を吸引し、吸引したバクテリア溶液を上記筒体内の上部位置に吐出する溶液循環装置と、
    上記筒体内の上部に外部の空気を圧送する吸気装置と、
    を有し、
    上記筒体の底面部の下面は、外部の空気と連通し、
    上記筒体の底面部の開口から落下した上記バクテリア溶液は、上記底面部の下方に位置する空気層を介して上記液体収容部内に戻されることを特徴とする空気浄化装置。
  3. 上記溶液循環装置は、
    上記筒体内を上下に延在し上部に液体を吐出可能な孔が開口していると共に上記底面部を貫通して下方に突出する管部と、
    上記管部の下端部に吐出口を接続すると共に上記底面部よりも下方に吸込口が配置されたポンプと、を有し、
    上記液体収容部は、収容しているバクテリア溶液の液面よりも上側となる位置に、上記筒体の下端部を着脱可能に取り付ける取付け用開口部を有すると共に、上記筒体の底面部の下面と外部の空気と連通する通気穴を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した空気浄化装置。
  4. 上記バクテリアは、バチルス・サブティリス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウム、シュードモナス菌、アシネトバクター・ベネティアヌス、アースロバクターspの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した空気浄化装置。
  5. 軸を上下に向けて配置され、底面部に空気及び液体が流通可能な複数の開口を有すると共に内部に複数の多孔質体が積層された筒体を有し、
    連続的若しくは間欠的に、上記筒体の上側から下方に向けて、上記筒体内を有機物を分解可能な好気性のバクテリアが混入されたバクテリア溶液を落下させて、上記複数の多孔質体を上記バクテリア溶液で濡らした状態とし、
    処理する空気を、上記筒体内の積層した多孔質体の層へ通過させることで当該空気の浄化を行うことを特徴とする空気浄化方法。
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