以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる腫瘍位置表示装置及び放射線治療システムを説明する。
本実施形態に係る腫瘍位置表示装置は、放射線治療における治療計画のために、患者の腫瘍の位置を表示するためのコンピュータである。本実施形態に係る腫瘍位置表示装置は、腫瘍の位置を表示するための専用のコンピュータであっても良いし、治療計画用のコンピュータ(以下、治療計画装置と呼ぶ)に組み込まれても良いし、医用画像診断装置や放射線治療装置等の他の装置に組み込まれても良い。以下、本実施形態に係る腫瘍位置表示装置は、治療計画装置に組み込まれているものとする。
図1は、本実施形態に係る放射線治療システム1の構成を示す図である。図1に示すように、放射線治療システム1は、医用画像診断装置10、治療計画装置30、放射線治療情報管理システム(OIS: Oncology Information System)50、呼吸同期照射管理システム70及び放射線治療装置90を有する。医用画像診断装置10、治療計画装置30、放射線治療情報管理システム50、呼吸同期照射管理システム70及び放射線治療装置90は、互いにネットワークを介して通信可能に接続されている。
医用画像診断装置10は、治療対象の患者に医用撮像を施して、治療計画に使用する4次元医用画像データを生成する。4次元医用画像データは、複数の時相に関する複数の3次元医用画像(ボリュームデータ)を含む。本実施形態に係る医用画像診断装置10は、4次元医用画像を生成可能な如何なるモダリティ装置に適用可能である。本実施形態に適用可能なモダリティ装置としては、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、コーンビームCT装置、核医学診断装置等が挙げられる。生成された4次元医用画像データは、例えば、治療計画装置30に送信される。
治療計画装置30は、4次元医用画像データを利用して治療対象の患者の治療計画を作成するコンピュータである。図1に示すように、治療計画装置30は、処理回路31、記憶装置33、表示機器35、入力機器37及び通信機器39を有する。処理回路31、記憶装置33、表示機器35、入力機器37及び通信機器39は、バス(Bus)等を介して通信可能に接続されている。
処理回路31は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。当該プロセッサは、当該メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、腫瘍領域特定機能311、移動時間算出機能312、滞留パラメータ算出機能313、腫瘍位置設定機能314、照射態様決定機能315、治療計画機能316及び表示制御機能317を実現する。
腫瘍領域特定機能311において処理回路31は、医用画像診断装置10により生成された複数の時相に関する複数の3次元医用画像に含まれる腫瘍領域を特定する。腫瘍領域が特定される3次元医用画像は、医用画像診断装置10により生成された全ての時相に関する全ての3次元医用画像であっても良いが、全ての時相のうちの一部時相に関する3次元医用画像でも良い。
移動時間算出機能312において処理回路31は、腫瘍領域特定機能311により特定された腫瘍領域の複数の時相に亘る移動時間を算出する。
滞留パラメータ算出機能313において処理回路31は、腫瘍領域特定機能311により特定された腫瘍領域の複数の時相に亘る移動経路に含まれる画素各々について、当該画素各々への腫瘍領域の滞留の程度を示すパラメータを算出する。以下、滞留の程度を示すパラメータを滞留パラメータと呼ぶことにする。
腫瘍位置設定機能314において処理回路31は、画像処理により又は入力機器37を介した操作者の指示に従い、複数の時相に関する複数の3次元医用画像等に腫瘍領域の位置を設定する。
照射態様決定機能315において処理回路31は、所定のアルゴリズムに従い自動的に又は入力機器37を介した操作者の指示に従い、放射線治療における放射線の照射態様を決定する。
治療計画機能316において処理回路31は、腫瘍位置設定機能314により設定された位置の腫瘍領域と照射態様決定機能315により決定された照射態様に基づき治療計画を作成する。
表示制御機能317において処理回路31は、表示機器35に種々の情報を表示する。例えば、処理回路31は、複数の3次元医用画像のうちの少なくとも一の3次元医用画像に基づく2次元画像を、滞留パラメータ算出機能313により算出された滞留パラメータの値に応じた濃度又は色で表示する。2次元画像は、処理回路31による3次元画像処理により生成される。3次元画像処理としては、例えば、ボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画素値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等が挙げられる。また、処理回路31は、治療計画機能316により作成された治療計画等を表示機器35に表示しても良い。
記憶装置33は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。記憶装置33は、例えば、医用画像診断装置10により生成された複数の時相に関する複数の3次元医用画像を記憶する。記憶装置33は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、記憶装置33は、治療計画装置30にネットワークで接続された外部記憶装置として実現されても良い。
表示機器35は、各種の情報を表示する。例えば、表示機器35は、処理回路31によって生成された2次元画像や治療計画等を表示する。例えば、表示機器35としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが利用可能である。
入力機器37は、操作者からの各種指令を受け付ける。入力機器37としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力機器37は、受け付けた指令に応じた操作信号をバスを介して処理回路31に供給する。
通信機器39は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療システム1を構成する医用画像診断装置10、治療計画装置30、放射線治療情報管理システム50、呼吸同期照射管理システム70及び放射線治療装置90との間でデータ通信を行う。
放射線治療情報管理システム50は、医用画像診断装置10、治療計画装置30、呼吸同期照射管理システム70及び放射線治療装置90等と連携して放射線治療に関する情報を管理するコンピュータシステムである。放射線治療情報管理システム50は、汎用のコンピュータ又はワークステーションが備える入力機器、ディスプレイ、通信機器及び記憶装置を備える。例えば、放射線治療情報管理システム50は、治療計画装置30により作成された治療計画を管理する。放射線治療情報管理システム50は、治療計画に含まれる照射条件等を呼吸同期照射管理システム70や放射線治療装置90に供給する。
呼吸同期照射管理システム70は、放射線照射前又は放射線照射中等の放射線治療時において、放射線治療室の治療寝台に載置された患者の呼吸動を計測する。例えば、呼吸同期照射管理システム70は、機械式又は光学式等の呼吸センサにより患者の呼吸レベルの推移を示す呼吸波形を生成し、患者の呼吸レベルを監視する。呼吸レベルが所定の閾値範囲内にある場合、呼吸同期照射管理システム70は、放射線照射指示信号を放射線治療装置90に供給する。
放射線治療装置90は、放射線治療を目的とした装置であり、治療計画装置30により作成された治療計画に従い患者に放射線を照射して患者を治療する。放射線治療装置90は、治療室に設けられた治療架台と治療寝台とを有する。治療架台は、回転軸回りに回転可能に照射ヘッド部を支持する。照射ヘッド部は、放射線治療情報管理システム50から供給された照射条件等に従い放射線を照射する。具体的には、照射ヘッド部は、多分割絞り(マルチリーフコリメータ)により照射野を形成し、当該照射野により正常組織への照射を抑える。治療部位に放射線が照射されることにより当該治療部位が消滅又は縮小する。呼吸同期照射の場合、放射線治療装置90は、呼吸同期照射管理システム70からの放射線照射指示信号を受けた場合に限定して放射線を照射する。これにより、腫瘍が呼吸動等により大きく動く場合であっても正常組織への放射線照射を低減することができる。
以下、本実施形態に係る放射線治療システム1による治療計画の動作例について説明する。
図2は、本実施形態に係る放射線治療システム1による治療計画の典型的な流れを示す図である。図2に示すように、まず、医用画像診断装置10は、治療対象の患者に医用撮像を施して4次元医用画像データを生成する(ステップS1)。ステップS1において医用画像診断装置10は、一定期間に亘り繰り返し医用撮像を施し、4次元医用画像データとして、複数の時相に関する複数の3次元医用画像を生成する。本実施形態に係る治療対象は、患者の呼吸により位置が変化する腫瘍であるとする。このような腫瘍としては、例えば、胸部や腹部の組織に発生した癌が挙げられる。3次元画像各々について医用撮像時における患者の呼吸時相を把握するため、3次元画像各々に呼吸時相に係る情報が関連付けられる。呼吸時相に係る情報としては、呼吸時相の数値や名称でも良いし、患者の胸部や腹部の高さ(以下、呼吸レベルと呼ぶ)の数値が挙げられる。1呼吸周期において呼吸レベルが最も低い時相は最大呼気時と呼ばれ、呼吸レベルが最も高い時相は最大吸気時と呼ばれる。呼吸時相の数値は、例えば、1呼吸周期の時間に占める基準時相からの時間の割合でも良いし、基準時相からの時間でも良い。呼吸時相の名称は、前述の最大呼気時や最大吸気時である。
ステップS1が行われると治療計画装置30の処理回路31は、腫瘍領域特定機能311を実行する(ステップS2)。ステップSS2において処理回路31は、医用画像診断装置10により生成された3次元医用画像のうちの特定期間の3次元医用画像を対象として腫瘍領域及び移動経路領域を特定する。特定期間は、少なくとも最大呼気時から最大吸気時又は最大吸気時から最大呼気時を含む期間に設定される。以下の実施形態において特定期間は、一呼吸周期に設定されるものとする。一呼吸周期は、隣り合う任意の特定呼吸時相の間の期間に規定される。典型的には、一呼吸周期は、隣り合う最大呼気時の間の期間又は隣り合う最大吸気時の間の期間に規定される。
図3は、ステップS2において処理回路31により行われる腫瘍領域及び移動経路領域の特定処理を示す図である。図3に示すように、一呼吸周期は、例えば、最大呼気時Te1、最大呼気時Te1に続く最大吸気時Ta、最大吸気時Taに続く最大呼気時Te2を含む。処理回路31は、最大呼気時Te1から最大呼気時Te2までの各時相について3次元医用画像に含まれる腫瘍領域を特定する。処理回路31は、閾値処理やセグメント処理、機械学習等の任意の画像処理により腫瘍領域を抽出しても良いし、入力機器37を介したユーザの指示に従い手動的に腫瘍領域を特定しても良い。例えば、最大呼気時Te1に関する3次元医用画像Vte1について腫瘍領域Rte1が、最大呼気時Te1に関する3次元医用画像Vtaについて腫瘍領域Rtaが、最大呼気時Te2に関する3次元医用画像Vte2について腫瘍領域Rte2が特定される。図3に示すように、医用撮像時における患者の呼吸動により3次元医用画像VO内において腫瘍領域の位置が周期的に変化する。
腫瘍領域が特定されると処理回路31は、一呼吸周期を構成する複数の時相の腫瘍領域の和領域を算出する。例えば、最大呼気時Te1から最大呼気時Te2までに含まれる複数の時相に関する複数の腫瘍領域の和領域が算出される。算出された和領域は、最大呼気時Te1から最大呼気時Te2までに腫瘍領域が移動した経路であると推定される。算出された和領域は移動経路領域Rtrに設定される。
ステップS2が行われると処理回路31は、移動時間算出機能312を実行する(ステップS3)。ステップS3において処理回路31は、一呼吸周期における腫瘍領域の移動時間を算出する。本実施形態に係る移動時間は、腫瘍領域が移動している期間の長さに規定される。換言すれば、本実施形態に係る移動時間は、呼吸制動等の人体の生体活動における臓器移動が考慮された腫瘍の移動時間である。例えば、最大呼気時から最大吸気時までの時間が1.2秒、最大吸気時から最大呼気時までの時間は2.4秒である場合、一呼吸周期における腫瘍領域の移動時間は、3.6秒である。腫瘍領域が常に移動している場合、一呼吸周期における移動時間は一呼吸周期の時間長に等しい。一呼吸周期における腫瘍領域の移動時間は、1サイクル呼吸時間とも呼ばれる。なお、最大呼気時から最大吸気時までの時間と最大吸気時から最大呼気時までの時間とは、最大呼気時に関連付けられた時間情報と最大吸気時に関連付けられた時間情報とに基づいて算出されれば良い。
ステップS3が行われると処理回路31は、滞留パラメータ算出機能313を実行する(ステップS4)。ステップS4において処理回路31は、一呼吸周期における腫瘍領域の滞留パラメータを算出する。滞留パラメータは、移動経路領域に含まれる画素各々について算出される。滞留パラメータは、移動経路領域に含まれる画素各々への腫瘍領域の滞留の程度を示すパラメータである。以下、移動経路領域に含まれる画素を移動経路画素と呼ぶことにする。滞留パラメータとしては、移動経路画素各々に腫瘍領域が存在するフレーム数(以下、滞留フレーム数と呼ぶ)、1サイクル呼吸時間あたりにおける滞留フレーム数、1サイクル呼吸時間に対する一呼吸周期あたりの滞留フレーム数の比率(以下、滞留比率と呼ぶ)、滞留比率と1サイクル呼吸時間との積(以下、滞留時間と呼ぶ)、1サイクル呼吸時間に対する滞留比率の比率(以下、滞留比率比と呼ぶ)、腫瘍領域の移動速度が挙げられる。なお、フレームは、各3次元医用画像の時相に対応する。フレームレートは、単位時間に含まれる時相数、換言すれば、3次元医用画像の個数に規定される。
図4は、ステップS4において処理回路31により算出される滞留パラメータの概念を示す図である。図4に示すように、3次元医療画像VOにおいて腫瘍領域が呼吸動に伴い周期的に移動する。ここで、移動経路領域に含まれる移動経路画素Vxに着目する。処理回路31は、一呼吸周期を構成する複数の時相(フレーム)各々について腫瘍領域が当該移動経路画素Vxに含まれるか否かを判定する。腫瘍領域が当該移動経路画素Vxに含まれる場合、当該時相(フレーム)について「滞留あり」、腫瘍領域が当該移動経路画素Vxに含まれない場合、当該時相(フレーム)について「滞留なし」と判定される。例えば、図4に示すように、最大呼気時に関する腫瘍領域Rte1は移動経路画素Vxに含まれないので最大呼気時に関して「滞留なし」、最大吸気時に関する腫瘍領域Rtaは移動経路画素Vxに含まれないので最大吸気時に関して「滞留なし」、最大呼気と最大吸気時との中間時相に関する腫瘍領域Rtmは移動経路画素Vxに含まれるので中間時相に関して「滞留あり」と判定される。
例えば、最大呼気時→最大吸気時→最大呼気時からなる1サイクル呼吸時間は3.6秒であり、4次元CTにおける撮像フレームレートが15fpsであるとする。この場合、最大呼気時→最大吸気時→最大呼気時からなる1呼吸サイクルにおいて腫瘍領域は、3.6×15=54個抽出される。すなわち、1呼吸サイクルの時相数(フレーム数)は54である。処理回路31は、移動経路画素各々について「滞留あり」と判定された時相数(フレーム数)を、滞留フレーム数として計数する。例えば、1呼吸サイクルにおいて、ある移動経路画素で腫瘍領域が27個のフレームで「滞留あり」と判定された場合、滞留フレーム数は27と算出される。処理回路31は、滞留フレーム数と1サイクル呼吸時間とに基づいて滞留比率を算出する。具体的には、処理回路31は、滞留フレーム数を1サイクル呼吸時間で除することにより滞留比率を算出する。例えば、滞留フレーム数が27、1呼吸サイクルのフレーム数が54である場合、滞留比率は、27/54=0.5と算出される。処理回路31は、滞留比率と1サイクル呼吸時間とに基づいて滞留時間を算出する。具体的には、処理回路31は、滞留比率を1サイクル呼吸時間に乗算することにより滞留時間を算出する。例えば、滞留比率が0.5、1サイクル呼吸時間は3.6秒である場合、滞留時間は、0.5×3.6=1.8秒と算出される。
図5は、ステップS4において処理回路31により算出される滞留時間の概念を示す図である。図5に示すように、処理回路31は、移動経路領域Rtrを構成する移動経路画素Vx毎に滞留時間を算出する。例えば、移動経路画素Vx1の滞留時間は1.8秒、移動経路画素Vx2の滞留時間は1.7秒、というように全ての移動経路画素Vxについて滞留時間が算出される。
患者の呼吸に関わらず腫瘍領域が全く動かない場合、1サイクル呼吸時間が3.6秒、1呼吸サイクルのフレーム数が54であり、全フレームにおいて「滞留あり」と判定され場合、滞留比率は54/54=1.0、滞留時間は3.6×1.0=3.6秒である。
なお、処理回路31は、滞留パラメータとして、1サイクル呼吸時間に対する滞留比率の比率である滞留比率比を算出しても良い。例えば、1サイクル呼吸時間が3.6秒、滞留比率が0.5である場合、滞留比率比は0.5/3.6=0.14である。処理回路31は、滞留パラメータとして、腫瘍領域の移動速度を算出しても良い。例えば、腫瘍領域の移動速度は、単位時間あたりに腫瘍領域が移動した画素数により規定される。
ステップS4が行われると処理回路31は、表示制御機能317を実行する(ステップS5)。ステップS5において処理回路31は、滞留パラメータに応じた重み付け表示を行う。詳細には、処理回路31は、まず、一呼吸周期に亘る複数の時相に関する複数の3次元画像の少なくとも一の3次元医用画像に3次元画像処理を施して2次元画像を生成する。例えば、特定の1時相の3次元医用画像のボリュームレンダリング処理を施してボリュームレンダリング画像を生成しても良いし、MPR処理を施して任意断面の断面画像を生成しても良い。また、処理回路31は、複数の時相に関する3次元医用画像の加算平均画像を生成し、生成された加算平均画像に基づくボリュームレンダリング画像や断面画像を生成しても良い。
また、処理回路31は、ステップS4において算出された滞留パラメータの空間分布を表現するマップ(以下、滞留パラメータマップと呼ぶ)を生成する。滞留パラメータマップは、当該マップを構成する移動経路画素毎に滞留パラメータの値に応じた濃度を割り当てることにより生成される。なお移動経路画素の色は、白や黒、赤、青等の任意の色に設定されれば良い。
図6は、図2のステップS5において処理回路31により生成される滞留パラメータマップMtrを示す図である。図6に示す滞留パラメータマップMtrは、滞留パラメータの値に応じた濃度が画素に割り当てられたマップである。図6においては、滞留パラメータマップMtrの各画素には、滞留パラメータ値に応じた灰色の濃度、すなわち、グレイレベルが割り当てられている。図6に示すように、最大呼気時と最大吸気時との間で腫瘍領域Rtが周期的に移動する。典型的には、最大呼気時と最大吸気時とにおいて腫瘍領域Rtは一時的に留まる傾向にある。すなわち、最大呼気時の腫瘍領域Rtと最大吸気時の腫瘍領域Rtとの存在範囲において滞留パラメータ(例えば、滞留時間や滞留比率)は比較的大きな値になる。従って滞留パラメータマップMtrは、両端に行くにつれ濃度が高く、中央に行くにつれ濃度が低くなるような濃度分布を有する。滞留パラメータマップMtrの生成対象である滞留パラメータの種類としては、上記の滞留フレーム数、滞留比率、滞留時間、滞留比率比及び腫瘍移動速度の中から入力機器37等を介して任意に設定可能である。
図7は、図2のステップS5において処理回路31により表示される、滞留パラメータマップMtrが重畳された2次元画像I1の一例を示す図である。図7に示すように、2次元画像I1は、患者の体内の構造RPを描出する形態画像である。処理回路31は、2次元画像I1に滞留パラメータマップMtrを位置整合して重畳し、表示機器35に表示する。これにより、滞留パラメータの重み付け表示が行われることとなる。例えば、滞留パラメータマップMtrは、2次元画像I1のオーバレイ(Overlay)として表示される。滞留パラメータマップMtrは、重畳されている2次元画像I1の部分も視認できるように、半透明で表示される。ユーザは、滞留パラメータマップMtrが重畳された2次元画像I1を観察することにより、患者の体内における腫瘍の移動範囲や当該移動範囲内での腫瘍の滞留の程度を把握することが可能になる。
ステップS5が行われると処理回路31は、表示制御機能317を実行する(ステップS6)。ステップS6において処理回路31は、一呼吸周期における腫瘍領域の移動距離を表示機器35に表示する。
図8は、ステップS6において処理回路31により表示される移動距離の表示画面SC1を示す図である。図8に示すように、表示画面SC1は、滞留パラメータマップMtrが重畳された2次元画像I2と表示欄I3とを含む。表示欄I3には、一呼吸周期における腫瘍領域の移動距離が表示される。当該移動距離は、最大呼気時の腫瘍領域と最大吸気時の腫瘍領域との間の距離により規定される。例えば、処理回路31は、ステップS2において特定された移動経路領域の移動方向に関する両端部間の距離を当該移動距離として算出する。距離は、画素数として算出されても良いし、ミリ・メートル(mm)等の単位で表される実寸の距離として算出されても良い。図8に示すように、処理回路31は、滞留パラメータマップMtrが重畳された2次元画像I2と、腫瘍領域の移動距離の表示欄I3とを並べて表示する。例えば、移動距離が15mmであると算出された場合、「腫瘍の移動距離:15mm」のように表示される。ユーザは、腫瘍の移動距離を知ることにより、患者の体内における腫瘍の移動範囲や当該移動範囲内での腫瘍の滞留の程度を更に良く把握することが可能になる。
ステップS6が行われると処理回路31は、腫瘍位置設定機能314及び照射態様決定機能315を実行する(ステップS7)。ステップS7において処理回路31は、腫瘍位置及び照射態様が選択されることを待機する。
図9は、ステップS7において処理回路31により表示される腫瘍位置及び照射態様の選択画面SC2を示す図である。図9に示すように、選択画面SC2は、滞留パラメータマップMtrが重畳された2次元画像I4と、一呼吸周期における腫瘍領域の移動距離が表示される表示欄I5と、照射態様の選択欄I6とを含む。また、選択画面SC2には、腫瘍位置と照射態様とを確定させるための確定ボタンB1が表示される。ユーザは、2次元画像I4に、入力機器37を介して、治療計画に用いる腫瘍領域の位置Ptを指定する。処理回路31は、指定された位置Ptを腫瘍位置として設定する。本実施形態によれば、滞留パラメータマップMtrを観察できるので、呼吸動をより正確に考慮して腫瘍位置を指定することができる。例えば、滞留パラメータマップMtrの全体を囲むように腫瘍位置Ptが指定されても良いし、滞留パラメータマップMtrにおける一部(滞留の度合いが局所的に高い部分)のみが腫瘍位置Ptに指定されても良い。
図9に示すように、選択欄I6には照射態様の指定ボタンBr1、Br2、Br3が表示される。本実施形態に係る照射態様は、放射線治療における放射線の照射方式を指す。照射態様としては、例えば、呼吸同期、強度変調、通常照射が挙げられる。「呼吸同期」は、腫瘍が特定範囲に位置しているときに限定して放射線を照射するために、特定の呼吸時相に限定して放射線を照射する照射態様である。「強度変調」は、空間的に非均一な線量分布での非呼吸同期法である。「強度変調」では、放射線の照射範囲内において放射線の強度を空間的に変調させながら常に放射線が照射される。「通常照射」は、空間的に均一な線量分布での非呼吸同期法である。「通常照射」では、放射線の照射範囲内において放射線の強度を空間的に変調させず常に放射線が照射される。図9においては、呼吸同期に対応する指定ボタンBr1が選択されている。処理回路31は、選択された指定ボタンに対応する照射態様を、放射線治療における照射態様として設定する。
図10は、照射態様の決定の指針を概念的に示す図である。図10に示すように、滞留パラメータマップと移動距離との両方から照射態様が判断される。例えば、図10の左端に示すように、腫瘍領域の移動距離が比較的長く(12mm)、滞留パラメータマップ内において滞留パラメータの値に偏りがある(すなわち、濃度又は色に偏りがある)場合、照射態様として呼吸同期が選択される。図10の中央に示すように、腫瘍領域の移動距離が比較的短く(3mm)、滞留パラメータマップ内において滞留パラメータの値に偏りがない(すなわち、濃度又は色に偏りがない)場合、照射態様として通常照射が選択される。図10の右端に示すように、腫瘍領域の移動距離が比較的短く(7mm)、滞留パラメータマップ内において滞留パラメータの値に偏りがある場合、照射態様として強度変調が選択される。
ユーザにより入力機器37を介して確定ボタンB1が押下された場合、処理回路31は、選択された照射態様と腫瘍位置とを確定する。
なお、処理回路31は、滞留パラメータマップと移動距離とに基づいて放射線治療における照射態様を自動的に決定しても良い。具体的には、処理回路31は、滞留パラメータマップにおける滞留パラメータ値の偏りの有無を判定する。偏りの有無は、例えば、滞留パラメータマップの端部の滞留パラメータ値と中央の滞留パラメータ値との差分と第1閾値との大小関係により判定される。処理回路31は、当該差分が第1閾値より大きい場合、偏りがあると判定し、当該差分が第1閾値より小さい場合、偏りがないと判定する。次に、処理回路31は、移動距離を第2閾値に対して比較する。処理回路31は、移動距離が第2閾値より長い場合、移動距離が比較的長いと判定し、移動距離が第2閾値より短い場合、移動距離が比較的短いと判定する。図10の左端に示すように、偏りがあり且つ移動距離が比較的長いと判定した場合、処理回路31は、照射態様として「呼吸同期」を選択する。図10の中央に示すように、偏りがなく且つ移動距離が比較的短いと判定した場合、処理回路31は、照射態様として「通常照射」を選択する。図10の右端に示すように、偏りがあり且つ移動距離が比較的短いと判定した場合、処理回路31は、照射態様として「強度変調」を選択する。このように本実施形態によれば、腫瘍の移動距離と滞留パラメータとに基づいて照射態様を客観的に採択することができる。
なお、処理回路31は、照射態様と滞留パラメータマップとに基づいて腫瘍位置を自動的に設定することも可能である。例えば、照射対象が「呼吸同期」である場合、滞留パラメータマップのうちの滞留パラメータ値が第3閾値よりも高い領域を腫瘍位置に設定する。これにより、滞留の程度が比較的部分を標的とした治療計画を行う事が出来る。なお、第3閾値は、入力機器37を介して任意の値に設定可能である。照射対象が「通常照射」及び「強度変調」である場合、滞留パラメータマップの全体領域を腫瘍位置に設定する。これにより、腫瘍移動領域全体を標的とした治療計画を行う事が出来る。なお、呼吸動のばらつき等を考慮して、滞留パラメータマップの全体領域からマージン範囲だけ拡大した領域が腫瘍位置に設定されても良い。
ステップS7において腫瘍位置及び照射態様が選択されたと判定された場合(ステップS7:YES)、処理回路31は、治療計画機能316を実行する(ステップS8)。ステップS8において処理回路31は、一呼吸周期に含まれる複数の時相に関する複数の3次元医用画像の少なくとも一の3次元医用画像を利用して、ステップS7において選択された腫瘍位置及び照射態様に基づいて治療計画を作成する。治療計画としては、空間的な線量分布等が算出される。処理回路31は、ステップS7において選択された腫瘍位置を標的領域とし、ステップS7において選択された照射態様に依存した空間的な線量分布を生成する。作成された治療計画は、処理回路31により表示機器35に表示される。
以上により、本実施形態に係る放射線治療システム1による治療計画の動作例についての説明を終了する。
なお、上記の治療計画の流れは一例であり種々の変形が可能である。例えば、ステップS6における移動距離の表示は、必要が無ければ省略が可能である。また、ステップS2における腫瘍領域及び移動経路領域の特定とステップS3における移動時間の算出とは順番が逆であっても良い。
滞留パラメータマップの表示態様についても上記例に限定されない。上記例において滞留パラメータマップは、任意色の濃度で滞留パラメータ値を表現するものとしている。しかしながら、滞留パラメータマップは、色の種類により滞留パラメータ値を表現したカラーマップでも良い。例えば、滞留パラメータ値を大きさに応じて複数の区分に分け、当該区分毎に色が割り当てられる。例えば、5つの区分に分割された場合、最も値が大きい1番目の区分は赤色、2番目の区分は橙色、3番目の区分は緑色、4番目の区分は青色、5番目の区分は紫色が割り当てられる。このように、色の種類により滞留パラメータ値を表現することにより、滞留の程度をより迅速且つ明確に把握することが可能になる。なお、各区分において色の濃度は同一でも良いし、滞留パラメータ値に応じて変化させても良い。
2次元画像の表示態様についても上記例に限定されない。処理回路31は、2次元画像に重畳して複数の時相に亘る腫瘍領域の動きをアニメーションで表示しても良い。具体的には、処理回路31は、2次元画像に描出される腫瘍領域に重畳して腫瘍を表現する絵を表示する。アニメーション表示に係る腫瘍領域は、2次元画像の腫瘍領域に比して視認性が高いため、複数の時相に亘る腫瘍領域の動きや時相毎の腫瘍領域の位置を明確に把握することができる。なお、処理回路31は、滞留パラメータマップに重畳して複数の時相に亘る腫瘍領域の動きをアニメーションで表示しても良い。
上記例において治療計画は、ステップS7において選択された腫瘍位置呼び腫瘍態様に基づいて作成されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。放射線治療は複数日に亘り行われるので、治療開始日から比較して患者の呼吸パターンが変化することが想定される。本実施形態に係る処理回路31は、腫瘍領域の移動距離と滞留パラメータ値と照射態様とが異なる複数の組合せ各々について治療計画を作成することが可能である。治療計画は、当該複数の組合せ各々について、上記の通り、一呼吸周期に含まれる複数の時相に関する複数の3次元医用画像の少なくとも一の3次元医用画像を利用して作成される。処理回路31は、当該複数の組合せ各々について作成された治療計画を表示機器35に表示する。
図11は、処理回路31により表示される治療計画の選択画面SC3を示す図である。図11に示すように、選択画面SC3には、腫瘍領域の移動距離と照射態様とが異なる複数の組合せ各々について作成された治療計画DDが表示される。治療計画DDとして、CT画像に空間的線量分布が重畳された線量分布画像が表示される。例えば、照射対象「通常照射」且つ移動距離「3mm」についての線量分布画像I7、照射対象「強度変調」且つ移動距離「7mm」についての線量分布画像I8、照射対象「呼吸同期」且つ移動距離「15mm」についての線量分布画像I9が表示される。各線量分布画像の近傍には、対応する治療計画の選択を指示するための指示ボタンBrが表示される。例えば、図11に示すように、線量分布画像I7の下方には、当該線量分布画像I7に対応する治療計画の選択を指示するための指示ボタンBr4が表示される。任意の指示ボタンBrが押下され、確定ボタンB2が押下された場合、処理回路31は、押下された指示ボタンに対応する治療計画を採用する。例えば、ユーザは、各照射態様について移動距離の変化による空間的線量分布の変化を観察する。そしてユーザは、空間的線量分布の少ない照射態様を選択し、選択された照射態様に関し且つステップS4において算出された滞留パラメータ値及びステップS6において算出された移動距離又はその近傍に関する治療計画を選択する。これにより、呼吸パターンの変化に強いロバストら治療計画を採用することができる。
なお、図11においては、移動距離と照射態様との組合せ毎に線量分布画像が作成され表示されるとしたが、移動距離毎、滞留パラメータ値毎、照射態様毎、移動距離と滞留パラメータ値との組合せ毎、移動距離と滞留パラメータ値と照射態様との組合せ毎、滞留パラメータ値と照射態様との組合せ毎に線量分布画像が作成され表示されても良い。
このように、本実施形態に係る処理回路31は、移動距離と滞留パラメータ値と照射態様との少なくとも一からなる複数の組合せ毎に治療計画を作成及び表示することが可能になる。これによりユーザは、呼吸動に伴う腫瘍領域の移動距離及び滞留の程度等を考慮しつつ、呼吸パターンの変化に強い治療計画を採用することができる。
上記の通り、本実施形態に係る腫瘍位置表示装置30は、少なくとも腫瘍領域特定機能311、滞留パラメータ算出機能313及び表示制御機能317を実行可能な処理回路31を有する。処理回路31は、複数の時相に関する複数の3次元医用画像に含まれる腫瘍領域を特定する。処理回路31は、複数の時相に亘る腫瘍領域の移動経路に含まれる移動経路画素各々について、移動経路画素各々への腫瘍領域の滞留の程度を示す滞留パラメータを算出する。処理回路31は、複数の3次元医用画像のうちの少なくとも一の3次元医用画像に基づく2次元医用画像を、滞留パラメータの値に応じた濃度又は色で表示機器35に表示する。
上記の構成により、本実施形態に係る腫瘍位置表示装置30は、滞留パラメータの上記重み付け表示を行うことにより、呼吸動に伴う腫瘍の動きの程度及び態様をユーザに提示することができる。ユーザは、重み付け表示を観察することにより、呼吸動に伴う個々の腫瘍の動きを正確に把握することができる。これによりユーザは、呼吸動に伴う個々の腫瘍の動きに対応した適切な照射態様を選択することができ、ひいては、適切な放射線治療計画方針を決定することができる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、個々の腫瘍の動きに対応した適切な放射線治療計画方針の決定を支援することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。