以下、複数の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
まず第1実施形態について説明する。図1において、第1実施形態に係るヒータ装置20は、道路走行車両、船舶、航空機などの移動体の室内に設置されている。ヒータ装置20は、室内のための暖房装置の一部を構成している。ヒータ装置20は、移動体に搭載された電池、発電機などの電源から給電されて発熱する電気的なヒータである。ヒータ装置20は、薄い板状に形成されている。ヒータ装置20は、電力が供給されると発熱する。ヒータ装置20は、その表面と垂直な方向に位置付けられた対象物を暖めるために、主としてその表面と垂直な方向へ向けて輻射熱Hを放射する。
室内には、乗員12が着座するための座席11が設置されている。ヒータ装置20は、乗員12の足元に輻射熱Hを放射するように室内に設置されている。ヒータ装置20は、たとえば他の暖房装置の起動直後において、乗員12に対して即効的に暖かさを提供するための装置として利用することができる。ヒータ装置20は、室内の壁面に設置される。ヒータ装置20は、想定される通常の姿勢の乗員12に対向するように設置される。例えば、道路走行車両は、ハンドル13を支持するためのステアリングコラム14を有している。ヒータ装置20は、ステアリングコラム14の下面に、乗員12に対向するように設置することができる。
次に、図2、図3、図4を用いて、ヒータ装置20の構成について説明する。図2および図3中において、ヒータ装置20は、軸Xと軸Yによって規定されるX−Y平面に沿って広がっている。ヒータ装置20は、軸Zの方向に厚さをもつ。X軸、Y軸、Z軸は、互いに直交する。ヒータ装置20は、ほぼ四角形の薄い板状に形成されている。ヒータ装置20は、発熱部側低熱伝導部21、発熱層220、絶縁基板23、電極24、電極側低熱伝導部25を備えている。発熱部側低熱伝導部21、発熱層220、絶縁基板23、電極24および電極側低熱伝導部25は、ヒータ本体部を構成している。ヒータ装置20は、主として表面と垂直な方向に向けて輻射熱Hを放射する面状ヒータとも呼ぶことができる。
発熱層220は、通電によって発熱する複数の発熱部22および2つの通電部26を有している。発熱層220は、絶縁基板23の裏面側(すなわち、反人体側)に配置されている。すなわち、各発熱部22および各通電部26は、絶縁基板23の裏面側に形成されている。
各発熱部22は、軸Yの方向に延びる長方形を成しており、互いに離れて軸X方向に並んで配置されている。各発熱部22は、通電部26を介して互いに接続されている。複数の発熱部22は、図中のX−Y平面上の所定面積を占めるように規則的に配列されている。
各発熱部22は、低い電気抵抗をもつ材料によって作られている。各発熱部22は、金属材料によって作ることができる。各発熱部22は、熱伝導率が銅よりも低い材料から選択される。たとえば各発熱部22は、銅、銅とスズとの合金(Cu−Sn)、銀、スズ、ステンレス鋼、ニッケル、ニクロムなどの金属およびこれらを含む合金を用いて構成する
ことができる。
発熱部22は、所定放射温度に加熱されることによって、乗員12、すなわち人に暖かさを感じさせる輻射熱Hを放射することができる。各発熱部22は、高い熱伝導率を有する材料によって作られている。
各通電部26は、軸Xの方向に延びる長方形を成しており、複数の発熱部22の軸Y方向の両端に配置されている。各通電部26は、低い電気抵抗をもつ材料によって作られている。通電部26の一方は、複数の発熱部22の軸Y方向の一端側で複数の発熱部22と接続されるとともに電源端子221と接続されている。また、通電部26の他方は、複数の発熱部22の軸Y方向の他端側で複数の発熱部22と接続されるとともに接地端子222と接続されている。
発熱部22の裏面側(すなわち反人体側)には、発熱部22よりも熱伝導率の低い発熱部側低熱伝導部21が配置されている。発熱部側低熱伝導部21は、発熱部22の裏面側から発熱部22を覆うように配置されている。発熱部側低熱伝導部21は、高い絶縁性を有しており、例えば、ポリイミドフィルム、絶縁樹脂等により構成される。
発熱層220は、複数の発熱部22の間に各発熱部22よりも熱伝導率の低い発熱部側低熱伝導部21が配置されることで、発熱層220の面方向での熱抵抗が大きくされている。
このように、本実施形態の発熱層220は、低熱容量、かつ、高熱抵抗となっており、物体と接触したときに、発熱層220の面方向の熱の移動が抑制され、接触した部分の温度が迅速に低下する。なお、複数の発熱部22の厚みは、50ミクロン以下であるのが好ましく、更には、発熱層220の面方向の熱の移動を十分小さくするためには、20ミクロン以下であるのが好ましい。
各発熱部22の体積は、熱容量を小さくするように設定されている。各発熱部22の熱容量は、ヒータ装置の表面に物体が接触した時に、その接触部分における輻射ヒータ装置の表面温度が短時間で所定温度を下回るように設定される。望ましい形態においては、各発熱部22の熱容量は、ヒータ装置の表面に人体の指等が接触した場合に、接触部分の表面温度が60℃を下回るように設定される。
絶縁基板23は、優れた電気絶縁性を提供し、かつ高温に耐える樹脂材料によって作られている。具体的には、絶縁基板23は、樹脂フィルムによって作られている。絶縁基板23の表面側(すなわち、人体側)に、対を成す電極24が複数配置されている。絶縁基板23は、発熱部22よりも低い熱伝導率を有している。
電極24は、互いに離れて配置された発信電極24aおよび受信電極24bを有している。発信電極24aおよび受信電極24bは、絶縁基板23の表面側に隣接して形成されている。すなわち、絶縁基板23の表面側には、複数の発信電極24aおよび複数の受信電極24bが形成されている。
各発信電極24aは、軸Yの方向に延びる長方形を成しており、各受信電極24bは、軸Yの方向に延びる長方形を成している。一対の電極24を構成する発信電極24aおよび受信電極24bは、軸Xの方向に並ぶように隣接して配置されている。このような電極24が、軸Yの方向に所定間隔毎に配置されている。発信電極24aおよび受信電極24bは、銅等の導電性金属により構成されている。なお、発信電極24aおよび受信電極24bは、同一材料のもので構成されている。
複数の発信電極24aおよび複数の受信電極24bは、それぞれ図中のX−Y平面上の所定面積を占めるように規則的に配列されている。複数の発信電極24aおよび複数の受信電極24bは、それぞれ図中のX−Y平面上に、容量検出に必用な静電容量を発生させるための所定面積を有している。
複数の発信電極24aは、導電部243を介して同じ正極端子241に接続され、複数の受信電極24bは、導電部を介して同じ負極端子242に接続されている。
正極端子241と負極端子242との間に所定の電圧が印加されると、対を成す発信電極24aと受信電極24bの間に電界が形成される。そして、この電界中に指等の物体が近づくと、この静電容量が変化を検出することにより、各電極24への指等の物体の近接または接触が検出される。
複数の発信電極24aおよび複数の受信電極24bは、絶縁基板23の表面側において分散して配置されている。複数の発信電極24aの各々は、複数の受信電極24bのいずれからも離れている。複数の発信電極24aおよび複数の受信電極24bのそれぞれは、高い熱伝導率を有する材料によって作られている。複数の発信電極24aおよび複数の受信電極24bは、それぞれ絶縁基板23よりも高い熱伝導率を有している。
各発信電極24aおよび各受信電極24bの表面側(すなわち、人体側)には、各発信電極24aおよび各受信電極24bよりも熱伝導率の低い電極側低熱伝導部25が配置されている。電極側低熱伝導部25は、各発信電極24aおよび各受信電極24bの表面側から各発信電極24aおよび各受信電極24bを覆うように配置されている。電極側低熱伝導部25は、高い絶縁性を有しており、例えば、ポリイミドフィルム、絶縁樹脂等により構成される。
また、各発信電極24aと各受信電極24bの間に、各発信電極24aおよび各受信電極24bよりも熱伝導率の低い電極側低熱伝導部25が配置される。これにより、発熱層220の面方向での熱抵抗が大きくされている。また、各発信電極24aおよび各受信電極24bは、薄い膜状を成しており、かつ、絶縁基板23の表面側において分散して配置されている。したがって、本実施形態の各発信電極24aおよび各受信電極24bは低熱容量となっている。
このように、各発信電極24aおよび各受信電極24bは、低熱容量、かつ、高熱抵抗となっており、物体と接触したときに、発熱層の面方向の熱の移動が抑制され、接触した部分の温度が急速に低下する特性を有している。
なお、複数の発信電極24aおよび複数の受信電極24bの厚みは、50ミクロン以下であるのが好ましく、更には、複数の発信電極24aおよび複数の受信電極24bの面方向の熱の移動を十分小さくするためには、20ミクロン以下であるのが好ましい。
次に、本実施形態のヒータ装置20のブロック構成について図4を用いて説明する。ヒータ装置20は、検出部30、供給部50および制御部40を備えている。
検出部30は、複数個の発信電極24aと複数個の受信電極24bとの間に電界を形成してそれら発信電極24aおよび受信電極24bの周囲の物体を検出する。具体的には、検出部30は、複数個の発信電極24aと複数個の受信電極24bとの間に所定電圧を印加して複数個の発信電極24aと複数個の受信電極24bとの間に電界を形成する。検出部30は、それとともに、複数の発信電極24aと複数の受信電極24bとの間の静電容量を検出する。そして検出部30は、検出した静電容量を示す信号を制御部40に送出する。
供給部50は、制御部40からの指示に応じて発熱部22への電力供給を行う。供給部50は、複数の発熱部22への通電量を制御する。発熱部22への通電は、供給部50を介して行われる。
制御部40は、CPU、メモリ等を備えたコンピュータとして構成されている。CPUが、メモリに記憶されたプログラムを実行することで、制御部40の後述する各種処理が実現する。これにより、制御部40は、供給部50から発熱部22への通電を制御する。メモリは、非遷移的実体的記憶媒体である。
次に、制御部40の処理について図5、図6、図7を用いて説明する。図5に示す処理は、ヒータ装置20に電源が投入されたことに基づいて、制御部40が実行する処理である。
ヒータ装置20に電源が投入されると、ヒータ装置20が起動する。ヒータ装置20が起動すると、検出部30は、発信電極24aにパルス状のパルス電圧を繰り返し印加して発信電極24aと受信電極24bとの間に電界を形成する。これにより、図6に示すように、発信電極24aと受信電極24bとの間に電界Eが形成される。
そして検出部30は、パルス電圧の立ち下がりから所定期間が経過したときの発信電極24aと受信電極24bとの間の電圧に基づいて、周知の方法で、発信電極24aと受信電極24bの間の静電容量を検出し始める。そして検出部30は、検出した静電容量を示す信号を制御部40に繰り返し出力し始める。以下、発信電極24aと受信電極24bの間の静電容量を、単に静電容量という。
制御部40は、図5の処理において、まずステップS105で、検出部30から出力された静電容量を示す信号に基づいて、静電容量の値を特定し、特定した値を静電容量C1としてメモリに記録する。この静電容量C1は、基準静電容量に対応する。また、この静電容量C1は、検出部30によって検出される複数の発信電極24aと複数の受信電極24bの間の静電容量が、電極24に電圧が印加され始めた後に初めて制御部40に記録される静電容量である。
続いてステップS110では、ステップS105で記録した静電容量C1が所定範囲Cm内に入っているか否かを判定する。ここで使用する所定範囲Cmは、あらかじめメモリに記録されている固定の上限値と下限値を有する範囲である。
この所定範囲は、ヒータ装置20が起動時に正常の使用状態であれば、検出部30が検出する静電容量が入るはずの範囲である。静電容量C1が所定範囲Cm内に入る場合は、ステップS115に進む。
ステップS115では、制御部40は、供給部50を制御して、複数の発熱部22への通電を開始させる。この通電により、複数の発熱部22は発熱し始める。発熱した各発熱部22は、温度が例えば100℃程度まで上昇し、乗員12に暖かさを感じさせる輻射熱Hを放射し始める。
続いて制御部40は、ステップS120で、検出部30から出力された最新の静電容量を示す信号に基づいて、静電容量の値を特定し、特定した値を現在の静電容量Cとしてメモリに記録する。
続いて制御部40は、ステップS125で、ステップS120で記録した静電容量CからステップS105で記録した静電容量C1を減算した値の絶対値が、基準値Ctよりも大きいか否かを判定する。
指等の物体が電極24に十分近接または接触していない場合は、現在の静電容量Cは静電容量C1と概ね同じである。その場合、ステップS120で記録した静電容量CからステップS105で記録した静電容量C1を減算した値の絶対値が、基準値Ctよりも小さくなる。
この場合、制御部40は、ステップS125からステップS120に戻る。つまり、指等の物体が電極24に十分近接または接触していない間は、制御部40は、複数の発熱部22への通電を継続したまま、ステップS120、S125の処理を繰り返す。
一方、図7に示すように、発信電極24aと受信電極24bの少なくとも一方に指等の物体が接近すると、発信電極24aと受信電極24bとの間に形成された電界の一部が指先側に移り、受信電極24bで検知する電界が減少する。その結果、複数の発信電極24aと複数の受信電極24bの間の静電容量が低下する。そして、図7のように、発信電極24aと受信電極24bの少なくとも一方に指等の物体が十分接近するか接触すると、ステップS120で記録した静電容量CからステップS105で記録した静電容量C1を減算した値の絶対値が、基準値Ctよりも大きくなる。
この場合、制御部40は、ステップS125からステップS130に進み、供給部50を制御して、複数の発熱部22への通電を終了させる。この通電停止により、複数の発熱部22は、乗員12に暖かさを感じさせる輻射熱Hの放射を停止する。これにより、発熱部22に接近または接触した物体が発熱部22によって過度に加熱されてしまう可能性が低減される。ステップS130の後は、図5の処理が終了する。このように、ステップS125で行われる判定は、発熱部22への通電を停止するか否かの判定である。
なお、ヒータ装置20は、乗員に暖房感を提供できる温度(例えば、100℃程度)までヒータ温度を上昇させた場合でも、乗員がヒータ表面に接触すると、接触した部分の温度が迅速に低下する。具体的には、接触した部分の温度が熱による乗員の反射反応が起こらない52℃以下まで低下する。
さらに、ヒータ装置20は、周囲の物体の近接または接触を検出すると、発熱部22への通電を停止する。したがって、例えば、乗員がヒータ装置の表面に接触したことに気づくことなくヒータ表面との接触が比較的長時間継続した場合でも、乗員に熱的な不快感を与える可能性が低い。
ここで、ヒータ装置20の起動前から起動直後まで、指等の物体が電極24に十分接近または接触している場合について説明する。このような場合、ヒータ装置20の起動直後に検出部30が検出して制御部40がステップS105で記録する静電容量C1は、正常な使用状態であれば入るはずの所定範囲Cmに入らない。
このような場合、本実施形態とは異なる比較例として、もしステップS105からすぐにステップS115に進んでしまうと、指等の物体の検出が不正確になってしまう可能性がある。具体的には、指等の物体が電極24に十分接近または接触しても複数の発熱部22への通電が停止されなかったり、あるいは、指等の物体が電極24に十分接近していないにもかかわらず複数の発熱部22への通電が停止されたりする可能性がある。
以下、比較例においてこのようになってしまう理由について、図8を用いて説明する。図8のグラフの縦軸は複数の発信電極24aと複数の受信電極24bの間の静電容量であり、横軸は時間である。すなわち、図8のグラフは、検出部30によって検出される静電容量の経時変化を示す。
もし、比較例において、ヒータ装置20の起動前から起動直後の時点t1まで、指等の物体が電極24に十分接近しておらず接触もしていなければ、静電容量の経時変化は破線301のように変化する。すなわち、時点t1において、ステップS105で記録される静電容量C1(以下、静電容量C1aという)は所定範囲Cmの間に収まる。そして時点t1の後の時点t2において、指等の物体が電極24に十分接近するかまたは接触した場合、ステップS120で記録される静電容量Caと静電容量C1aとの差の絶対値|Ca−C1a|=ΔCaは、基準値Ctよりも大きくなる。その結果、制御部40はステップS125からステップS130に進んで複数の発熱部22への通電を停止する。これにより、乗員に熱的な不快感を与える可能性が低い。
しかし、比較例において、ヒータ装置20の起動前から起動直後の時点t1まで、指等の物体が電極24に十分接近しているか接触していれば、静電容量の経時変化は実線302のように変化する。すなわち、時点t1において、ステップS105で記録される静電容量C1(以下、静電容量C1bという)は所定範囲Cmの間に収まらず、所定範囲Cmの下限値よりも低くなる。比較例では制御部40はステップS105からステップS110を経ずにステップS115に進む。そして、時点t1の後の時点t2において、指等の物体が電極24に十分接近するかまたは接触した場合、ステップS120で記録される静電容量Cbと静電容量C1との差の絶対値|Cb−C1b|=ΔCbは、基準値Ctよりも小さくなる。これは、静電容量Cbが正常な所定範囲Cmよりも下回っているので、指等の物体が電極24に十分接近するかまたは接触しても、静電容量の低減量が十分にならないからである。その結果、制御部40はステップS125からステップS120に戻って通電を継続する。つまり、指等の物体が電極24に十分接近するかまたは接触したことを検出できない。したがって、乗員に熱的な不快感を与える可能性が高い。
あるいは、比較例において、ヒータ装置20の起動直後の時点t1において、何らかの外的異常により、ステップS105で記録される静電容量C1は所定範囲Cmの間に収まらず、所定範囲Cmの上限値よりも高くなることがある。ここで、外的要因とはヒータ装置20以外の要因をいう。この場合、比較例では制御部40はステップS105からステップS110を経ずにステップS115に進む。そして、時点t1の後の或る時点において、指等の物体が電極24に接触も十分接近もしていないにも関わらず、ステップS120で記録される静電容量Cと静電容量C1との差の絶対値が、基準値Ctよりも大きくなることがある。その結果、制御部40はステップS125からステップS130に進んで、複数の発熱部22への通電を停止してしまう。その結果、不要なタイミングで複数の発熱部22への通電が停止してしまう。このように、ステップS105で記録される静電容量C1が所定範囲Cmの上限値よりも高くなる場合、指等の物体が電極24に十分接近するかまたは接触したと誤検知してしまう可能性がある。
これに対し、本実施形態では、制御部40は、ステップS105の後、ステップS110を実行する。したがって、制御部40は、上述のように、時点t1においてステップS105で記録される静電容量C1bが所定範囲Cmの下限値よりも低い場合、ステップS110で、静電容量C1bが所定範囲Cm内に入っていないと判定する。そして制御部40は、ステップS115をバイパスして、すなわち、ステップS115−S130の処理を禁止しつつ、図5の処理を終了する。これにより、乗員に熱的な不快感を与えることを未然に防ぐことができる。時点t1は基準時点に対応する。
また、制御部40は、上述のように、時点t1においてステップS105で記録される静電容量C1が所定範囲Cmの上限値よりも高い場合、ステップS110で、静電容量C1bが所定範囲Cm内に入っていないと判定する。そして制御部40は、ステップS115をバイパスして、すなわち、複数の発熱部22への通電を行うことなく、図5の処理を終了する。これにより、指等の物体が電極24に十分接近するかまたは接触したと誤検知してしまうことを未然に防ぐことができる。
また例えば、ヒータ装置20の起動前に外乱によって、図9に例示するように発信電極24aの一部および受信電極24bの一部のうち一方または両方が×印の位置で断線してしまった場合について、説明する。このような場合、ヒータ装置20の起動後に検出部30が検出する静電容量の経時変化は、図8の実線302と同様になる。すなわち、ヒータ装置20の起動後に検出部30が検出して制御部40がステップS105で記録する静電容量C1は、正常な使用状態であれば入るはずの所定範囲Cmに入らず、所定範囲Cmの下限値よりも低くなってしまう。この場合、制御部40は、ステップS110で、静電容量C1が所定範囲Cm内に入っていないと判定する。そして制御部40は、ステップS115をバイパスして、すなわち、複数の発熱部22への通電を行うことなく、図5の処理を終了する。これにより、乗員に熱的な不快感を与えることを未然に防ぐことができる。
以上説明した通り、本実施形態では、制御部40は、時点t1における複数の発信電極24aと受信電極24bの間の静電容量C1が所定範囲Cmに入っているか否かを判定する。そして制御部40は、静電容量C1が所定範囲Cmに入っていると判定した場合、ステップS115−ステップS130を実行する。一方、制御部40は、静電容量C1が所定範囲Cmに入っていないと判定した場合、ステップS115−ステップS130の実行を禁止する。
このように、発熱部22に通電される前の時点t1における静電容量C1が所定範囲Cmに入っていないと判定された場合に、ステップS115−S130の実行が禁止される。したがって、発熱部22に通電される前に物体が既に発熱部に十分接近または接触していたり、あるいは電極が断線していたりする状況において、ステップS125の判定定が不正確になってしまう可能性が低減される。
より具体的には、制御部40は、静電容量C1が所定範囲Cmに入っていないと判定した場合、発熱部22への通電の開始を禁止する。このようにすることで、時点t1において物体が既に発熱部22に十分接近または接触していたり、あるいは電極24が断線していたりする状況における問題が解決される。また、発熱部22に通電される前に物体が既に発熱部22に十分接近または接触していたり、あるいは電極24が断線していたりする状況における問題が解決される。すなわち、物体判定(すなわち、ステップS125の判定)が不正確になったせいで物体が発熱部に接触して過度に加熱される可能性が低減される。
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。本実施形態のヒータ装置20は、第1実施形態のヒータ装置20に対して、不図示の温度センサを更に有している点が異なる。また、本実施形態の制御部40は、図5に示した処理に代えて、図10に示す処理実行する。図10の処理は、ステップS120が実行された後にステップS123が実行されてステップS125が実行される点が、図5の処理と異なる。図5と図10で処理内容が同じステップには、同じステップ番号が付されている。また、本実施形態の制御部40は、図10に示した処理に加え、図10に示した処理と同時並行的に、図11に示す処理を実行する。本実施形態のヒータ装置20のその他の構成は、第1実施形態と同じである。
温度センサは、発熱部22の近傍に配置され、発熱部22の温度を検出して、検出した温度に応じた検出信号を制御部40に出力する。この温度センサは、発熱層220において発熱部22に接触して配置されていてもよいし、絶縁基板23内に埋め込まれていてもよい。
図10の処理において、制御部40は、ステップS120で静電容量Cを特定した後、ステップS123で、当該静電容量Cに対して、補正値Pを適用し、その後、ステップS125で、補正値Pが適用された後の静電容量Cを用いて上述の判定が行う。補正値Pの適用については、後述する。なお、補正値Pは、ヒータ装置20が起動した時点では、デフォルト値である0に設定されている。
図11に示す処理は、ヒータ装置20に電源が投入されたことに基づいて、制御部40によって実行される。制御部40は、図11の処理において、まずステップS205で、発熱部22への通電がオフからオンになったか否かを判定し、オンになっていない場合は、ステップS205に戻る。発熱部22への通電がオフからオンになると、制御部40は、ステップS205からステップS210に進む。なお、発熱部22への通電のオン、オフは、図10の処理において制御される。
ヒータ装置20が起動した後に最初に発熱部22への通電がオンになった後は、発熱部22の温度は時間経過と共に上昇し、次第に安定していく。発熱部22への通電量は、発熱部22の温度が所定の目標温度で安定化するように、ヒータ装置20の製造時にあらかじめ調整されている。なお、発熱部22の温度が安定化するとは、発熱部22の温度の単位時間当たりの変化量の絶対値が十分低下することをいう。
図12に、発熱部22の温度の経時変化を実線311で示す。この実線311に示すように、発熱部22への通電がオフからオンになった時点t1以降、発熱部22の温度は上昇し、時間の経過と共に温度上昇速度が低下していく。そして、目標温度Tx付近においては、温度上昇速度がゼロに近くなる。
また、図12に、発信電極24aと受信電極24bの間の静電容量の経時変化を実線312で示す。この図に示すように、発熱部22への通電がオフからオンになった時点t1以降、発熱部22の温度上昇に伴い、ヒータ装置20以外の物体が電極24に接触しているわけでも十分接近しているわけでもないのに、静電容量が減少していく場合がある。これは、熱によるヒータ装置20の変形が原因である。
具体的には、発熱部22の温度上昇に伴い、絶縁基板23、電極側低熱伝導部25、発熱部側低熱伝導部21等が膨張し、その結果、図13に示すような状態から図14に示すような状態に状態が変化することがある。すなわち、発信電極24aと受信電極24bの間の距離が長くなってしまうことがある。発信電極24aと受信電極24bの間の距離が長くなると静電容量が減少する。あるいは、発熱部側低熱伝導部21、発熱部22、電極側低熱伝導部25の線膨張率の違いに起因してヒータ装置20が曲がってしまい、その結果、発信電極24aと受信電極24bの間の静電容量が減少する。
制御部40は、ステップS205に続くステップS210で、温度センサから入力された検出信号に基づいて発熱部22の温度を特定する。更に制御部40は、ステップS215で、発熱部22の温度が安定化したか否かを判定する。発熱部22の温度が安定化したか否かは、目標温度Txを中心とする所定の温度範囲Tm内に、直前のステップS210で特定した温度が入っているか否かで判定する。例えば、温度範囲Tmの下限値は目標温度Txの0.95倍であってもよい。また例えば、温度範囲Tmの上限値は目標温度Txの1.05倍であってもよい。
直前のステップS210で特定した温度が温度範囲Tm内に入っている場合、ステップS220に進む。直前のステップS210で特定した温度が温度範囲Tm内に入っていない場合、発熱部22の温度が安定化していないと判定してステップS210に戻る。
図12の例では、時点t1から時点t6の間の期間は、制御部40は、ステップS215で発熱部22の温度が安定化していないと判定することにより、ステップS210、S215を繰り返し実行する。
時点t6になると、発熱部22の温度が温度範囲Tm内に入る。すると、その直後のステップS215では、直前のステップS210で特定した温度が温度範囲Tm内に入る。したがって、制御部40は、その時点で、発熱部22の温度が安定化したと判定して、ステップS220に進む。時点t6は、補正時点に対応する。
ステップS220では、制御部40は、検出部30から出力された最新の静電容量を示す信号に基づいて、静電容量の値を特定し、その値を静電容量Cxとする。続いてステップS225では、補正値Pの変更を行う。具体的には、補正値Pを、デフォルト値から、直前に特定した静電容量Cxの値に応じた値に、変更する。具体的には、静電容量C1から静電容量Cxを減算した値を、補正値Pとする。ステップS225の後、図11の処理が終了する。
このようにして算出された補正値Pを用いて、静電容量Cxを補正すれば、すなわち、静電容量Cxに補正値Pを加算すれば、補正後の静電容量Cx+Pは、静電容量C1と同じになる。したがって、補正後の静電容量Cx+Pと静電容量C1の差の絶対値はゼロになる。つまり、補正値Pは、補正後の静電容量Cx+Pと静電容量C1の差の絶対値を小さくしてゼロにするための補正値である。
制御部40は、図10のステップS123では、上述の通り、直前のステップS120で特定した静電容量Cに対して、補正値Pを適用する。具体的には、静電容量Cに対して補正値Pを加算した結果を、新たな静電容量Cとする。発熱部22の温度が安定しない時点t1からt6までの間は、補正値Pはゼロなので、直前のステップS120で特定した静電容量Cと新たな静電容量値Cは同じ値である。したがって、ステップS123に続くステップS125で用いられる静電容量値Cは、ステップS123で補正されていない静電容量値Cとなる。
発熱部22の温度が安定化した時点t6以降は、補正値Pはゼロとは異なる正の値となる。したがって、直前のステップS120で特定された静電容量Cは、新たな静電容量Cに変更される。つまり、ステップS125で用いられる静電容量Cは、直前のステップS123で補正された静電容量値Cとなる。
具体的には、図12の実線312に示すように、時点t6における補正後の静電容量Cが静電容量C1と同じになるように、静電容量Cが補正される。時点t6以降では、直前のステップS120で特定した静電容量Cよりも大きい値が補正後の静電容量Cとなる。
このようにすることの意義について説明する。指等の物体が電極24に接触も十分接近もしていないにも関わらず、検出部30で検出される静電容量Cが静電容量C1よりも小さくなると、時点t6以降において、検出部30で検出される静電容量Cと静電容量C1との差の絶対値が大きくなる。しかも、指等の物体が電極24に近づくと、この絶対値は増大する傾向にある。つまり、時点t6以降において、|C−C1|が基準値Ctよりも大きくなるために静電容量Cが低下しなければならない量が減少する。したがって、もしステップS123で静電容量Cを補正しないと、指等の物体が電極24に十分ではないが少し近づいただけでも、ステップS125で|C−C1|が基準値Ctよりも大きくなってしまう可能性がある。つまり、指等の物体が電極24に十分接近するかまたは接触したと誤検知してしまう可能性がある。
これに対し、本実施形態では、制御部40は、ステップS123で静電容量Cを補正して増大させることで、静電容量Cを実際よりも静電容量C1に近づける。このようになっていることで、補正後の静電容量Cと静電容量C1の差の絶対値が小さくなる。したがって、指等の物体が電極24に十分ではないが少し近づいた場合に、ステップS125で|C−C1|が基準値Ctよりも大きくなってしまう可能性が低減される。すなわち、誤検知の可能性が低減される。
実際、図12に示すように、時点t6よりも後の時点t7に指等の物体が電極24に近づいたときに、補正後の静電容量Cが低下し、その物体が電極24から離れた時点t8に、補正後の静電容量Cが上昇する。時点t7の直前における補正後の静電容量Cが静電容量C1とほぼ同じなので、制御部40は、指等の物体と電極24の間の距離に応じて、ステップS125で、通電の停止と継続を適正に決定することができる。
また、発熱部22の温度が上昇することで、指等の物体が電極24に接触も十分接近もしていないにも関わらず、検出部30で検出される静電容量Cが静電容量C1よりも大きくなる場合もある。その場合、発熱部22の温度が安定化する時点t6以降において、|C−C1|が基準値Ctよりも大きくなるために静電容量Cが低下しなければならない量が増大する。したがって、もしステップS123で静電容量Cを下方に補正しないと、指等の物体が電極24に十分接近または接触しても、ステップS125で|C−C1|が基準値Ctよりも大きくならない可能性がある。つまり、指等の物体が電極24に十分接近するかまたは接触したことを検知できなくなる可能性がある。
これに対し、本実施形態では、制御部40は、ステップS123で静電容量Cを補正して減少させる。この場合補正値Pは負の値だからである。これにより、静電容量Cが実際よりも静電容量C1に近づく。このようになっていることで、ステップS125で|C−C1|が基準値Ctよりも大きくなるために補正後の静電容量Cが低下しなければならない量が減少する。すなわち、指等の物体が電極24に十分接近するかまたは接触したことを検知できなくなる可能性が低減される。
また、制御部40は、発熱部22の温度が安定化しているときに補正値Pを設定する。したがって、補正値Pが適切な値になる。
なお、本実施形態においては、制御部40は、時点t1から時点t6までの期間においても、すなわち、発熱部22の温度が安定化する前も、図10のステップS125において通電の停止、非停止を判定する。しかし、制御部40は、時点t1から時点t6までの期間において、発熱部22の温度が安定化する前は、図10のステップS125における通電の停止、非停止の判定を行わなくてもよい。その場合、制御部40は、時点t1から時点t6までの期間において、静電容量Cに基づいて発熱部22への通電を停止することはない。
以上説明した通り、制御部40は、発熱部22への通電が開始された後の時点t6における、複数の発信電極24aと複数の受信電極24bの間の静電容量(Cx)と静電容量C1との差の絶対値を小さくするための補正値Pを算出する。
そして、制御部40は、時点t6より後の時点t7における、複数の発信電極24aと複数の受信電極24bの間の静電容量Cと静電容量C1と補正値Pとに基づいて、発熱部22への通電量を低減するか否かを判定する。
このように、補正値Pが、時点t6より後の時点t7において、発熱部22への通電量を低減するか否かの判定に利用される。このようにすることで、温度上昇によるヒータ装置20の変形に応じた補正値Pを後の時点の物体判定に適用することができる。その結果、発熱部22への通電後のヒータ装置20の変形の物体判定への影響を軽減することができる。したがって、発熱部22への通電後のヒータ装置20の変形によって物体判定が不正確になってしまう可能性を低減することができる。
また、制御部40は、発熱部22の温度が安定化したか否かを、発熱部22への通電が開始された後に判定する。そして、時点t6は、発熱部22の温度が安定化したと判定された後の時点である。このように、時点t6が発熱部22の温度が安定化した後の時点となっていることで、補正の精度が高まる。
また、制御部40は、温度センサによって検出された発熱部22の温度に基づいて、発熱部22の温度が安定化したか否かを判定する。このように、発熱部22の温度が安定化したか否かを温度センサの検出結果に基づいて判定することで、より直接的な安定化の判定を行うことができる。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が実現する。
(第3実施形態)
次に第3実施形態について説明する。本実施形態は、発熱部22の温度が安定化したことを検出する手法として、発熱部22の通電オン時刻からの経過時間を用いる手法を採用している。本実施形態のヒータ装置20は、第2実施形態のヒータ装置20に対して、制御部40の処理内容が変更になっている。具体的には、制御部40は、図11に示した処理に代えて、図15に示す処理を実行する。図15と図11で処理内容が同じステップには、同じステップ番号が付されている。図15の処理は、図11の処理に対して、ステップS210、S215が廃され、更に、ステップS213が追加されている。その他のヒータ装置20の構成は、第2実施形態と同じである。
制御部40は、図15の処理において、ステップS205で発熱部22への通電がオンになったと判定した場合、ステップS213に進む。ステップS213では、発熱部22への通電が開始されてから基準時間Trが経過したか否か判定する。基準時間Trは、発熱部22への通電が開始されてから発熱部22の温度が安定化するまでの時間として、ヒータ装置20の製造時にあらかじめ定められている。
ステップS213で通電開始から基準時間Trが経過しないと判定した場合、制御部40は、再度ステップS213を実行する。ステップS213で通電開始から基準時間Trが経過したと判定した場合、制御部40は、ステップS220、S225を実行することで、第2実施形態と同様に、補正値Pをデフォルト値から変更する。
このように、発熱部22への通電オンからの経過時間を用いて、発熱部22の温度が安定化したことを検出することもできる。これにより、より簡易な安定化の判定を行うことができる。なお、本実施形態においても、第2実施形態と同様の効果が実現する。
(第4実施形態)
次に第4実施形態について説明する。本実施形態は、発熱部22の温度が安定化したことを検出する手法として、検出部30が検出する静電容量Cを用いる手法を採用している。本実施形態のヒータ装置20は、第2実施形態のヒータ装置20に対して、制御部40の処理内容が変更になっている。具体的には、制御部40は、図11に示した処理に代えて、図16に示す処理を実行する。図16と図11で処理内容が同じステップには、同じステップ番号が付されている。図16の処理は、図11の処理に対して、ステップS210、S215が廃され、更に、ステップS211、S212が追加されている。その他のヒータ装置20の構成は、第2実施形態と同じである。
制御部40は、図15の処理において、ステップS205で発熱部22への通電がオンになったと判定した場合、ステップS211に進む。ステップS211では、検出部30から出力された最新の静電容量を示す信号に基づいて、静電容量の値を特定し、特定した値を現在の静電容量Cとする。
続いて制御部40は、ステップS212で、静電容量Cが安定化したか否かを判定する。そして、静電容量Cが安定化していないと判定した場合はステップS123に戻り、静電容量Cが安定化したと判定した場合はステップS220に進む。
検出部30によって検出される静電容量Cは、第2実施形態で説明した通り、発熱部22の温度変化と共に変化する。したがって、静電容量C1は、図12の時点t1以降、発熱部22の温度上昇に伴って低下していき、時点t6以降において、発熱部22の温度の安定化と共に、安定化する。したがって、静電容量Cが安定したことを検出することは、発熱部22の温度が安定化したことを検出することと同等である。
ここで、ステップS212における静電容量Cが安定化したか否についての判定の詳細について説明する。ステップS212では、制御部40は、直前のステップS211で特定した静電容量Cと、直前より前のステップS212で特定した静電容量Cとに基づいて、静電容量Cの単位時間当たりの変化量の絶対値を特定する。そして、特定した絶対値が基準変化量未満であれば、静電容量Cが安定化したと判定し、未満でなければ、静電容量Cが安定化していないと判定する。
ただし、制御部40は、ヒータ装置20の起動後初めてのステップS212の実行機会においては、直前のステップS211で特定した静電容量Cと、静電容量C1とに基づいて、静電容量Cの単位時間当たりの変化量の絶対値を特定する。このように、静電容量Cが安定化したか否かに基づいて、補正値Pの変更を行うか否かを判定することができる。
以上のように、発熱部22の温度が安定化したか否かを、複数の発信電極24aと複数の受信電極24bの間の静電容量に基づいて判定することで、安定化の判定のために温度センサ等の追加のセンサを設ける必要がなくなる。なお、本実施形態においても、第2実施形態と同様の効果が実現する。
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
なお、上記実施形態では、制御部40は、ステップS110を実行することで範囲判定部に対応し、ステップS115−S130を実行することで通常作動部に対応し、ステップS105を実行することで特定部に対応する。また、制御部40は、ステップS225を実行することで算出部に対応し、ステップS215、S213、S212を実行することで安定判定部に対応する。
(変形例1)
上記各実施形態では、制御部40は、ステップS130で発熱部22への通電を停止する。すなわち、発熱部22に供給される電流がゼロに低減される。しかし、必ずしもこのようになっていなくてもよい。例えば、ステップS130では、発熱部22に供給する電流が1/2に低減されてもよい。つまり、ステップS130では、発熱部22に供給する電流が低減されれば、発熱部22に接近または接触した物体が発熱部22によって過度に加熱されてしまう可能性が低減される。
(変形例2)
上記第2、第3、第4実施形態では、制御部40は、ステップS123で、補正値Pを用いて、時点t6より後の時点において検出部30によって検出された静電容量Cを補正している。しかし、必ずしもこのようになっていなくてもよい。例えば、制御部40は、補正値Pを用いて、発熱部22への通電前の時点t1に検出された静電容量C1を補正してもよい。この場合、制御部40は、時点t6よりも後の時点において検出された静電容量Cと、補正された静電容量C1とを比較して、発熱部22への通電を低減するか否かを判定する。またこの場合、ステップS225で算出される新たな補正値Pは、静電容量Cxから静電容量C1を減算した値となる。この場合においても、補正値Pは、補正後の静電容量C1と静電容量Cの差の絶対値を小さくしてゼロにするための補正値である。
(変形例3)
上記第2、第3、第4実施形態では、補正値Pは、補正後の静電容量C1と静電容量Cの差の絶対値を小さくしてゼロにするための補正値であるが、必ずしもこのようになっていなくてもよい。補正値Pは、補正後の静電容量C1と静電容量Cの差の絶対値を小さくしてゼロ以外の値にする補正値であってもよい。
(変形例4)
上記第2、第3、第4実施形態のステップS225では、補正値Pは、静電容量C1から静電容量Cxを除算した値となっていてもよい。このような補正値Pも、補正後の静電容量C1と静電容量Cの差の絶対値を小さくしてゼロにするための補正値である。この場合、ステップS123では、ステップS120で検出された静電容量Cにこの補正値Pを乗算することで、補正後の静電容量Cが得られる。
(変形例5)
上記第2、第3、第4実施形態では、補正時点に相当する時点t6は、発熱部22の温度が安定化した後の時点であるが、必ずしもこのようになっていなくてもよい。例えば、補正時点に相当する時点t6は、発熱部の温度が安定化する時点よりも前であってもよい。その場合でも、補正後の物体判定が不正確になる可能性をある程度低減することができる。
(変形例6)
上記各実施形態において、ステップS110で静電容量C1が所定範囲Cm内に入っていない場合、制御部40は、発熱部22への通電開始を禁止する。しかし、必ずしもこのようになっていなくてもよい。制御部40は、静電容量C1が所定範囲Cm内に入っていない場合、ステップS115からステップS130までの一連の処理をバイパスするようになっていれば足りる。例えば、制御部40は、静電容量C1が所定範囲Cm内に入っていない場合、ごく弱い電流で発熱部22へ通電を行うと共に物体判定を行わないようになっていてもよい。
(変形例7)
上記各実施形態では、物体判定は相互容量方式で行われている。したがって、上記各実施形態において物体判定に用いられる電極24の静電容量とは、電極24を構成する複数の発信電極24aと複数の受信電極24bの間の静電容量である。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。物体判定は自己容量方式で行われてもよい。この場合、物体判定に用いられる電極の静電容量とは、電極と物体との間の静電容量である。
(変形例8)
上記各実施形態では、ステッS105が実行される基準時点に相当する時点t1は、発熱部22への通電前であった。しかし、基準静電容量を検出して記憶する基準時点は、発熱部22への通電後であってもよい。
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、制御部は、基準時点における前記電極の静電容量である基準静電容量が所定範囲に入っているか否かを判定する範囲判定部と、基準静電容量が所定範囲に入っていると範囲判定部が判定した場合、基準時点の後の時点における電極の静電容量と基準静電容量とに基づいて、発熱部への通電量を低減するか否かを判定する通常作動部と、を有する。また、範囲判定部は、基準静電容量が前記所定範囲に入っていないと判定した場合、通常作動部の作動を禁止する。
また、第2の観点によれば、前記基準時点は、前記発熱部に通電される前の時点であり、前記通常作動部は、前記基準静電容量が前記所定範囲に入っていると前記範囲判定部が判定した場合、前記発熱部への通電を開始し、前記発熱部への通電が開始された後の時点における前記電極の静電容量(C)と前記基準静電容量とに基づいて、前記発熱部への通電量を低減するか否かを判定する。このようになっていることで、発熱部への通電後のヒータ装置の変形によって物体判定が不正確になってしまう可能性を低減することができる。
また、第3の観点によれば、前記範囲判定部は、前記基準静電容量が前記所定範囲に入っていないと判定した場合、前記発熱部への通電の開始を禁止する。このようにすることで、基準静電容量を検出する時点で物体が既に発熱部に十分接近または接触していたり、あるいは電極が断線していたりする状況において、物体判定が不正確になったせいで物体が発熱部に接触して過度に加熱される可能性が低減される。
また、第4の観点によれば、前記制御部は、前記基準静電容量を特定する特定部と、前記基準時点よりも後かつ前記発熱部への通電が開始された後の補正時点における、前記電極の静電容量と前記基準静電容量との差の絶対値を小さくするための補正値を算出する算出部と、を備える。前記通常作動部は、前記補正時点より後の時点における前記電極の静電容量と前記基準静電容量と前記補正値とに基づいて、前記発熱部への通電量を低減するか否かを判定する。
このように、発熱部への通電が開始された後の補正時点における電極の静電容量と基準静電容量との差の絶対値を小さくするための補正値が、補正時点より後の時点において、発熱部への通電量を低減するか否かの判定に利用される。このようにすることで、温度上昇によるヒータ装置の変形に応じた補正値Pを後の時点の物体判定に適用することができる。その結果、発熱部への通電後のヒータ装置の変形の物体判定への影響を軽減することができる。その結果、発熱部への通電後のヒータ装置の変形によって物体判定が不正確になってしまう可能性を低減することができる。
また、第5の観点によれば、制御部は、発熱部への通電が開始された後の補正時点における、電極の静電容量と基準静電容量との差の絶対値を小さくするための補正値を算出する算出部と、補正時点より後の時点における前記電極の静電容量と基準静電容量と補正値とに基づいて、発熱部への通電量を低減するか否かを判定する通常作動部と、を備えたる。
また、第6の観点によれば、前記発熱部の温度が安定化したか否かを、前記発熱部への通電が開始された後に判定する安定判定部を有し、前記補正時点は、前記発熱部の温度が安定化したと前記安定判定部が判定した後の時点である。このように、補正時点(t6)が発熱部の温度が安定化した後の時点となっていることで、補正の精度が高まる。
また、第7の観点によれば、前記安定判定部は、温度センサによって検出された前記発熱部の温度に基づいて、前記発熱部の温度が安定化したか否かを判定する。このように、発熱部の温度が安定化したか否かを温度センサの検出結果に基づいて判定することで、より直接的な安定化の判定を行うことができる。
また、第8の観点によれば、前記安定判定部は、前記発熱部に通電が開始されてから経過した時間に基づいて、前記発熱部の温度が安定化したか否かを判定する。このように、発熱部の温度が安定化したか否かを通電開始から経過した時間に基づいて判定することで、より簡易な安定化の判定を行うことができる。
また、第9の観点によれば、前記安定判定部は、前記電極の静電容量に基づいて、前記発熱部の温度が安定化したか否かを判定する。このように、発熱部の温度が安定化したか否かを静電容量に基づいて判定することで、安定化の判定のために追加のセンサを設ける必要がなくなる。