JP2019207109A - 分光方法および分光装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】遮光状態における検出信号を生成する。【解決手段】被測定体に光を照射する発光部と、受光強度に応じた検出信号を生成する受光部と、前記発光部から前記被測定体を経由して前記受光部に至る光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第1波長範囲の光を透過させる第1分光部と、前記光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第2波長範囲の光を透過させる第2分光部と、前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複する第1状態と、前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複しない第2状態とが切り替わるように前記第1分光部と前記第2分光部とを制御する制御部とを具備する分光装置。【選択図】図1

Description

本発明は、特定の波長の光を分光するための技術に関する。
例えば特定の波長の光を分光して検出する各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、第1エタロンおよび第2エタロンを透過した所望の波長の透過光を検出する光学フィルターデバイスが開示されている。分光精度を向上させるために、第1エタロンと第2エタロンとに同一のピークに対応する波長の光を透過するように設定している。
特開2013−083685号公報
しかし、特許文献1の技術では、遮光状態での信号が得られず、暗電流や外光に起因したノイズの影響を加味することができない。
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る分光方法は、被測定体に光を照射する発光部と、受光強度に応じた検出信号を生成する受光部と、前記発光部から前記被測定体を経由して前記受光部に至る光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第1波長範囲の光を透過させる第1分光部と、前記光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第2波長範囲の光を透過させる第2分光部とを具備する分光装置を利用した分光方法であって、前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複する第1状態と、前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複しない第2状態とが切り替わるように前記第1分光部と前記第2分光部とを制御する。
本発明の好適な態様に係る分光装置は、被測定体に光を照射する発光部と、受光強度に応じた検出信号を生成する受光部と、前記発光部から前記被測定体を経由して前記受光部に至る光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第1波長範囲の光を透過させる第1分光部と、前記光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第2波長範囲の光を透過させる第2分光部と、前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複する第1状態と、前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複しない第2状態とが切り替わるように前記第1分光部と前記第2分光部とを制御する制御部とを具備する。
本発明の第1実施形態に係る生体解析装置の構成図である。 第1状態における透過特性を示す説明図である。 第2状態における透過特性を示す説明図である。 制御装置の処理のフローチャートである。 第2実施形態に係る第1状態における透過特性を示す説明図である。 目標波長に対するピーク波長のシフト量と合成特性との関係を示す説明図である。 変形例における生体解析装置の構成図である。 変形例における生体解析装置の構成図である。 変形例における生体解析装置の構成図である。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る生体解析装置100の構成図である。生体解析装置100は、被験者の生体指標を非侵襲的に測定する測定機器である。例えば被験者の血糖値(グルコース濃度)が生体指標として例示される。なお、生体指標は血糖値に限定されない。例えば、被験者のヘモグロビン濃度,血中酸素濃度,中性脂肪濃度等の各種の血液成分濃度を生体指標としてもよい。被験者の身体のうち測定対象となる部位(以下「測定部位」という)Hに光Lを照射することで、血糖値が測定される。測定部位H(被測定体の一例)は、例えば掌、指、手首または上腕である。
生体解析装置100は、分光装置20と制御装置30と記憶装置40と表示装置50とを具備する。制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算処理装置であり、生体解析装置100の全体を制御する。なお、制御装置30の機能を複数の集積回路に分散した構成、または、制御装置30の一部または全部の機能を専用の電子回路で実現した構成も採用され得る。
記憶装置40は、例えば不揮発性の半導体メモリーで構成され、制御装置30が実行するプログラムと制御装置30が使用する各種のデータとを記憶する。なお、制御装置30の機能を複数の集積回路に分散した構成、または、制御装置30の一部または全部の機能を専用の電子回路で実現した構成も採用され得る。また、図1では制御装置30と記憶装置40とを別個の要素として図示したが、記憶装置40を内包する制御装置30を例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により実現することも可能である。
表示装置50は、測定結果を含む各種の画像を制御装置30による制御のもとで表示する。例えば液晶表示パネルが表示装置50として好適に利用される。分光装置20は、測定部位Hの状態に応じた検出信号を生成する光学センサーモジュールである。具体的には、分光装置20は、発光部21と帯域通過部23と第1分光部25と第2分光部27と受光部29とを具備する。
発光部21は、測定部位Hに光Lを照射する光源である。例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光素子が発光部21として好適である。制御装置30による制御のもとで発光部21が発光する。なお、相異なる波長の光Lを出射する複数の発光部21を利用してもよい。
発光部21から測定部位Hに入射した光Lは、測定部位Hの内部を通過しながら拡散反射を繰返したうえで生体の外部に出射する。具体的には、測定部位Hの内部に存在する動脈(例えば、上腕動脈、橈骨動脈または尺骨動脈)等の血管と血管内の血液とを通過した光Lが測定部位Hから出射する。
測定部位Hから出射した光Lが帯域通過部23に入射して、帯域通過部23を透過した光Lが第1分光部25および第2分光部27で分光される。第1分光部25および第2分光部27で分光された光Lが受光部29で受光される。すなわち、発光部21から測定部位Hを経由して受光部29に至る光路(具体的には測定部位Hから受光部29に至る光路)上に、帯域通過部23と第1分光部25と第2分光部27とが配置される。
帯域通過部23は、所定の通過帯域内の成分を選択的に透過させて、他の成分を遮光する光学フィルターである。例えば、屈折率が異なる複数の透過膜を積層した構造のバンドパスフィルターが帯域通過部23として好適である。第1実施形態では、測定部位Hを通過した光Lのうち所定の通過帯域内の成分を透過させる。
帯域通過部23を透過した光Lは、第1分光部25および第2分光部27に入射する。第1分光部25と第2分光部27との位置の前後は任意である。第1実施形態では、第1分光部25が帯域通過部23側に位置し、第2分光部27が受光部29側に位置する。各分光部は、特定の波長域(以下「波長可変範囲」という)内の光Lを選択的に透過させる。例えばファブリ・ペロー型干渉計(エタロン)が分光部として好適に利用される。第1分光部25と第2分光部27との構成または特性の異同は不問である。
第1分光部25は、波長可変範囲において、透過率がピークとなる波長(以下「ピーク波長」という)λ1が可変である第1波長範囲W1の光Lを透過させる。第1波長範囲W1は、ピーク波長λ1を中心として透過率が所定値(例えば0%)を上回る範囲である。第2分光部27は、波長可変範囲において、ピーク波長λ2が可変である第2波長範囲W2の光Lを透過させる。第2波長範囲W2は、ピーク波長λ2を中心として透過率が所定値(例えば0%)を上回る範囲である。第1実施形態では、第1波長範囲W1の範囲幅と第2波長範囲W2の範囲幅とは等しい。
ピーク波長(λ1,λ2)は、波長可変範囲内において可変である。波長可変範囲には、特定の干渉次数(例えば1次)に対応する透過率の複数のピークが存在する。波長可変範囲外には、波長可変範囲における干渉次数とは異なる干渉次数の透過率のピークが存在する。前述の帯域通過部23は、波長可変範囲内の光Lを透過させ、波長可変範囲外の光を遮光する。
第1分光部25と第2分光部27とは、第1状態と第2状態とに制御される。制御装置30(制御部31)による制御のもとで、第1状態と第2状態とが切り換わる。なお、制御装置30による制御の方法については後述する。
図2および図3には、第1分光部25の透過特性P1および第2分光部27の透過特性P2が実線で図示されている。図2は、第1状態における特性であり、図3は、第2状態における特性である。透過特性とは、光の波長に対する透過率の分布である。図2に例示される通り、第1状態は、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが重複する状態である。第1実施形態では、ピーク波長λ1とピーク波長λ2とが一致(λ1=λ2)する。ピーク波長は、目標の波長(以下「目標波長」という)に設定される。図2では、目標波長が1100nmである場合を例示する。図2には、第1分光部25と第2分光部27との全体的な透過特性(以下「合成特性」という)P0が破線で図示されている。第1状態における合成特性P0には、目標波長を中心として半値幅が狭く先鋭なピークが現れる。したがって、目標波長(すなわちピーク波長λ1,λ2)を含む局所的な光成分を抽出できる。すなわち、分光精度が向上する。
図3に例示される通り、第2状態は、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが重複しない状態である。すなわち、ピーク波長λ1およびピーク波長λ2は相違する。第2状態では、発光部21から受光部29に向かう光L(具体的には帯域通過部23から受光部29に向かう光L)を遮光した状態(以下「遮光状態」という)になる。
図1の受光部29は、受光強度に応じた検出信号を生成する。例えば、受光強度に応じた電荷を発生するフォトダイオード(PD:Photo Diode)等の受光素子が受光部29として利用される。近赤外光に受光感度を示すInGaAs(インジウムガリウム砒素)で光電変換層が形成された受光素子が好適である。
第1状態において、受光部29は、第1分光部25および第2分光部27を透過した光Lの受光強度に応じた検出信号S1を生成する。すなわち、測定部位Hの内部を通過した光Lの受光強度に応じた検出信号S1が生成される。上述した通り、第1状態では、目標波長を含む局所的な光成分を抽出できるから、目標波長を含む光成分の受光強度に応じた検出信号S1が高精度に生成される。
他方、第2状態(すなわち遮光状態)において、受光部29は検出信号S2を生成する。すなわち、第2状態では、暗電流や外光に起因したノイズを表す検出信号S2が生成される。
第1実施形態の分光装置20は、発光部21と受光部29とが測定部位Hからみて一方側に位置する反射型の光学センサーモジュールである。ただし、発光部21と受光部29とが測定部位Hを挟んで反対側に位置する透過型の光学センサーを分光装置20として利用してもよい。なお、分光装置20は、受光部29の出力信号を増幅およびA/D変換する出力回路(例えば増幅回路とA/D変換器)を包含するが、図1では各回路の図示を省略した。
図1の制御装置30は、記憶装置40に記憶されたプログラムを実行することで、血糖値を算定するための複数の機能(制御部31,処理部33,補正部35および算定部37)を実現する。制御部31は、第1分光部25および第2分光部27に印加する制御電圧を制御する。具体的には、波長可変範囲に対応する範囲内で変化する制御電圧を各分光部(25,27)に供給する。例えば、制御電圧が大きい場合にはピーク波長が小さくなり、制御電圧が小さい場合にはピーク波長が大きくなる。
第1実施形態の制御部31は、第1状態と第2状態とが切り替わるように第1分光部25と第2分光部27とを制御する。第1に、制御部31は、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが重複するように(すなわち第1状態になるように)、第1分光部25および第2分光部27の制御電圧を制御する。第1実施形態では、第1分光部25のピーク波長λ1と第2分光部27のピーク波長λ2とが目標波長に一致するように制御電圧が制御される。図2では、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが1025nm〜1175nmの範囲内で重複し、かつ、ピーク波長λ1とピーク波長λ2とが1100nm(目標波長)で一致するように、制御電圧を制御した場合が例示されている。以上に例示した制御電圧の制御を複数の目標波長の各々について実行することで、波長可変範囲内の複数の目標波長のそれぞれに対応する受光強度が特定される。すなわち、受光部29は、第1状態において、複数の目標波長に対応した光Lの受光強度に応じた検出信号S1を生成する。
第2に、制御部31は、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが重複しないように(すなわち第2状態になるように)、第1分光部25および第2分光部27の制御電圧を制御する。図3では、ピーク波長λ1が1000nmである第1波長範囲W1が950nm〜1050nmであり、ピーク波長λ2が1200nmである第2波長範囲W2が1150nm〜1250nmになるように、制御電圧を制御した場合が例示されている。
図1の処理部33は、受光部29が生成した検出信号からスペクトルを特定する。第1に、処理部33は、第1状態において生成された検出信号S1から分光スペクトル(透過スペクトル)Z1を特定する。具体的には、複数の目標波長について第1状態でそれぞれ特定された複数の受光強度の系列が分光スペクトルZ1として特定される。第2に、処理部33は、第2状態において生成された検出信号S2から補正値Z2を特定する。補正値Z2は、例えば第2状態における検出信号S2の信号強度である。
なお、実際には、参照体に光Lを照射したときの分光スペクトル(以下「参照スペクトル」という)が事前に測定される。処理部33は、第1状態において測定部位Hに光Lを照射したときの検出信号S1から特定された分光スペクトルを、参照スペクトルにより補正することで分光スペクトルZ1を特定する。参照体は、測定部位Hと対比される物体である。例えば、光の波長域内で反射率が均等である物体、または、標準的な生体の光学特性を有する物体が参照体として好適に利用される。
補正部35は、補正値Z2を利用して分光スペクトルZ1を補正することで、補正分光スペクトルZ3を生成する。すなわち、暗電流や外光に起因したノイズを除去した補正分光スペクトルZ3が生成される。例えば、分光スペクトルZ1から補正値Z2を差し引くことで補正分光スペクトルZ3が生成される。
算定部37は、補正部35が生成した補正分光スペクトルZ3から血糖値を算定する。具体的には、算定部37は、補正分光スペクトルZ3から吸光スペクトルを生成し、当該吸光スペクトルから血糖値を特定する。吸光スペクトルを利用した血糖値の特定には、例えば重回帰分析法等の公知の技術が任意に利用され得る。PLS(Partial Least Squares)回帰分析法および独立成分分析法等が重回帰分析法として例示される。表示装置50は、算定部37が算定した血糖値を表示する。
図4は、生体解析装置100が血糖値を測定する処理のフローチャートである。例えば利用者からの測定の指示を契機として図4の処理が開始される。図4の処理が開始されると、制御部31は、第2状態になるように第1分光部25と第2分光部27とを制御する(Sa1)。第2状態において検出信号S2が生成される。処理部33は、検出信号S2から補正値Z2を特定する(Sa2)。制御部31は、第1状態になるように第1分光部25と第2分光部27とを制御する(Sa3)。第1状態において検出信号S1が生成される。ステップSa3の処理は、複数の目標波長のそれぞれについて繰り返し実行される。すなわち、複数の目標波長のそれぞれについて複数の検出信号S1が生成される。処理部33は、複数の検出信号S1から分光スペクトルZ1を特定する(Sa4)。補正部35は、補正値Z2を利用して分光スペクトルZ1を補正することで、補正分光スペクトルZ3を特定する(Sa5)。算定部37は、補正分光スペクトルZ3から血糖値を算定する(Sa6)。算定部37は、血糖値を表示装置50に表示させる(Sa7)。なお、ステップSa1およびSa2の処理と、ステップSa3およびSa4の処理との順番の先後は問わない。
以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、第1状態と第2状態とが切り替わるように第1分光部25と第2分光部27とが制御される。第1状態では、第1分光部25および第2分光部27を透過した光L(すなわち被測定体の内部を通過した光L)の受光強度に応じた検出信号S1が生成される。他方、第2状態では、発光部21から受光部29に向かう光Lを遮光した状態で検出信号S2が生成される。すなわち、暗電流や外光に起因したノイズを表す検出信号S2を生成できる。また、第1実施形態では、補正値Z2を利用して分光スペクトルZ1が補正されるから、ノイズを除去した補正分光スペクトルZ3を生成することができる。
例えば、暗電流や外光に起因したノイズを表す検出信号を生成する方法には、機械式のシャッターを利用した遮光状態において検出信号を生成する方法(以下「対比例1」という)や、発光部を消灯した状態で検出信号を生成する方法(以下「対比例2」という)が想定される。しかし、対比例1のもとでは、シャッターの振動が分光部に伝わることで、分光部の透過特性に影響を与えるという問題がある。また、対比例2のもとでは、発光の開始直後は、発光部による発光の特性(例えば光量)が不安定に変動する可能性がある。したがって、対比例2では、発光の特性が安定してから検出信号を生成する必要があり、検出信号の生成に時間がかかるという問題がある。それに対して、第1実施形態では、第1分光部25と第2分光部27とを第2状態にすることで遮光状態が得られるので、対比例1および対比例2と比較して、分光部の透過特性に影響を与えることなく、短時間で検出信号S1を生成できるという利点がある。
なお、分光部は制御電圧を印加していない状態でも特定の波長に対応する光を透過する性質があるため、分光部が単独の構成のもとでは遮光状態を得ることができない。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図5には、第2実施形態に係る第1状態における第1分光部25の透過特性P1および第2分光部27の透過特性P2が実線で図示されている。第1実施形態の第1状態においては、ピーク波長λ1とピーク波長λ2とが一致(λ1=λ2)する。それに対して、図5に例示される通り、第2実施形態の第1状態においては、ピーク波長λ1とピーク波長λ2とが相違(λ1≠λ2)する。すなわち、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが部分的に重複する。以上の説明から理解される通り、第1状態には、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが重複する状態のもとで、ピーク波長が第1状態と第2状態で一致する場合(第1実施形態)と、第1状態と第2状態とで相違する場合(第2実施形態)との双方が含まれる。第2状態については、第1実施形態と同様である。
第2実施形態の制御部31は、第1実施形態と同様に、第1状態と第2状態とが切り替わるように第1分光部25および第2分光部27を制御する。第1に、制御部31は、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが重複し、かつ、ピーク波長λ1とピーク波長λ2とが相違する状態(すなわち第1状態)になるように、第1分光部25および第2分光部27の制御電圧を制御する。具体的には、ピーク波長λ1とピーク波長λ2との各々が目標波長に対して正側および負側に所定の波長(以下「シフト量」という)Δだけシフトするように、制御電圧が制御される。図5では、目標波長を1100nmとして、ピーク波長λ1を負側に5nmだけシフト(λ1=1095nm)させ、ピーク波長λ2を正側に5nmだけシフト(λ2=1105nm)させた場合を例示している。また、制御部31は、第1実施形態と同様に、第2状態になるように、第1分光部25および第2分光部27の制御電圧を制御する。
図5には、第2実施形態に係る第1状態の合成特性P0が破線で図示されている。第2実施形態に係る第1状態では、合成特性P0には、第1分光部25と第2分光部27とを単独で使用した場合と比較して、目標波長を中心として透過率が低減されたピークが現れる。したがって、発光部21の発光強度が過大である場合でも適切な受光強度で受光部29が光を受光することができる。
図6には、目標波長に対するピーク波長(λ1,λ2)のシフト量Δ(絶対値)と、第1分光部25と第2分光部27との合成特性P0との関係を示す説明図である。縦軸には、合成特性P0におけるピークの半値幅と、分光部を単独で使用した場合における透過率に対する合成特性P0における透過率の比(以下「透過率比」という)とが図示されている。図6から理解される通り、シフト量Δに応じて半値幅(実線)および透過率比(破線)が変化する。半値幅は、シフト量Δが大きくなるにつれて広くなる。他方、透過率比は、シフト量Δが大きくなるにつれて小さくなる。以上の傾向を利用して適切なシフト量Δを選択することで、所望の合成特性P0が設定できる。第2実施形態では、シフト量Δを5nmにしたことにより、半値幅が20nmで透過率比が35%である合成特性P0が得られた。なお、シフト量Δは、合成特性P0のピークの単峰性が確保できる程度に設定される。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1状態において生成された検出信号S1と、第2状態において生成された検出信号S2とから血糖値が算定される。
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。第2実施形態では、第1状態においてピーク波長λ1とピーク波長λ2とが相違するから、第1状態において、第1分光部25と第2分光部27との全体的な透過特性には、第1分光部25と第2分光部27とを単独で使用した場合と比較して、透過率が低減されたピークが現れる。したがって、発光部21の発光強度が過大である場合でも適切な受光強度で受光部29が光を受光することができるという利点がある。
一方で、第1状態においてピーク波長λ1とピーク波長λ2とが一致する第1実施形態の構成によれば、第1状態において、第1分光部25と第2分光部27との全体的な透過特性には半値幅が狭く先鋭なピークが現れる。したがって、目標波長を含む局所的な光成分を抽出できるという利点がある。
なお、第2実施形態では、ピーク波長λ1を負の方向にシフトさせ、ピーク波長λ2を正の方向にシフトさせたが、ピーク波長λ1とピーク波長λ2とをシフトさせる方向は逆でもよい。また、ピーク波長λ1のシフト量Δとピーク波長λ2のシフト量Δとを一致させたが、相違していてもよい。
第1実施形態では、第1状態においてピーク波長λ1とピーク波長λ2とが一致する構成を例示し、第1実施形態では、第1状態においてピーク波長λ1とピーク波長λ2とが相違する構成を例示したが、第1実施形態と第2実施形態との構成を組み合わせて使用してもよい。すなわち、ピーク波長λ1とピーク波長λ2とが一致する第1状態と、ピーク波長λ1とピーク波長λ2とが相違する第1状態と、第2状態とを切り換えて使用してもよい。
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
(1)前述の各形態では、第1波長範囲W1の範囲幅と第2波長範囲W2の範囲幅とは等しい構成を例示したが、第1波長範囲W1の範囲幅と第2波長範囲W2の範囲幅とが相違してもよい。第1状態においてはピーク波長λ1とピーク波長λ2とが一致する場合と相違する場合とが想定されるが、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが重複する態様は、第1波長範囲W1の範囲幅と第2波長範囲W2の範囲幅とに応じて任意に変更し得る。例えば、第1波長範囲W1と第2波長範囲W2とが完全に一致する場合、部分的に一致する場合、または、第1波長範囲W1および第2波長範囲W2の一方が他方に内包される包含関係にある場合が想定される。
(2)前述の各形態において、生体を測定対象として例示したが、測定対象となる被測定体は生体に限定されない。例えば分析または試験等に使用される試料を被測定体としてもよい。なお、前述の生体解析装置100は、被測定体の状態を表す指標を算定する解析装置の一例である。
(3)前述の各形態では、測定部位Hから受光部29に到達する光路上に第1分光部25および第2分光部27を設置する構成(すなわち後分光)を例示したが、発光部21から測定部位Hに到達する光路上に第1分光部25および第2分光部27を設置する構成(すなわち前分光)も採用され得る。また、第1分光部25および第2分光部27の何れか一方を測定部位Hから受光部29に到達する光路上に設置し、他方を発光部21から測定部位Hに到達する光路上に設置してもよい。
(4)前述の各形態では、2個の分光部(第1分光部25および第2分光部27)を分光装置20が具備する構成を例示したが、分光装置20が具備する分光部の個数は2個以上であれば任意である。例えば、3個の分光部を具備する構成では、3個の分光部の波長範囲を重複させることで第1状態が実現され、少なくとも2個の分光部の波長範囲を重複させないことで第2状態が実現される。
(5)前述の各形態では、分光装置20が帯域通過部23を具備したが、帯域通過部23を省略してもよい。また、前述の各形態では、測定部位Hから受光部29に到達する光路上に帯域通過部23を設置したが、発光部21から測定部位Hに到達する光路上に帯域通過部23を設置してもよい。
(6)前述の各形態では、単体の機器として構成された生体解析装置100を例示したが、以下の例示の通り、生体解析装置100の複数の要素は相互に別体の装置として実現され得る。なお、以下の説明では、制御装置30で実現する要素を「演算部70」と表記する。演算部70は、例えば、図7に例示された要素(制御部31,処理部33,補正部35,算定部37)を包含する。
前述の各形態では、分光装置20を具備する生体解析装置100を例示したが、図7に例示される通り、分光装置20を生体解析装置100とは別体とした構成も想定される。生体解析装置100は、例えば携帯電話機またはスマートフォン等の情報端末で実現される。腕時計型の情報端末で生体解析装置100を実現してもよい。分光装置20が生成した検出信号S(S1,S2)が有線または無線で生体解析装置100に送信される。生体解析装置100の演算部70は、検出信号Sから血糖値を算定して表示装置50に表示する。以上の説明から理解される通り、分光装置20は生体解析装置100から省略され得る。
前述の各形態では、表示装置50を具備する生体解析装置100を例示したが、図8に例示される通り、表示装置50を生体解析装置100とは別体とした構成も想定される。生体解析装置100の演算部70は、検出信号Sから血糖値を算定し、当該血糖値を表示するためのデータを表示装置50に送信する。表示装置50は、専用の表示機器であってもよいが、例えば、携帯電話機もしくはスマートフォン等の情報端末、または、被験者が携帯可能な腕時計型の情報端末に搭載されてもよい。生体解析装置100の演算部70が算定した血糖値は、有線または無線により表示装置50に送信される。表示装置50は、生体解析装置100から受信した血糖値を表示する。以上の説明から理解される通り、表示装置50は生体解析装置100から省略され得る。
図9に例示される通り、分光装置20および表示装置50を生体解析装置100(演算部70)とは別体とした構成も想定される。例えば、生体解析装置100(演算部70)が、携帯電話機やスマートフォン等の情報端末に搭載される。なお、以上に例示した演算部70から制御部31および処理部33の何れか一方または双方を省略してもよい。
(7)前述の各形態で例示した生体解析装置100の具体的な形態は任意である。例えば、被験者の手首に装着可能な腕時計型、被験者の身体に貼付可能なパッチ型、被験者の耳部に装着可能な耳装着型、被験者の指先に装着可能な指装着型(例えば着爪型)、または、被験者の頭部に装着可能な頭部装着型など、任意の形態の生体解析装置100が採用され得る。
(8)前述の各形態では、被験者の血糖値を表示装置50に表示したが、血糖値を被験者に報知するための構成は以上の例示に限定されない。例えば、血糖値を音声で被験者に報知することも可能である。被験者の耳部に装着可能な耳装着型の生体解析装置100においては、血糖値を音声で報知する構成が特に好適である。また、血糖値を被験者に報知することは必須ではない。例えば、生体解析装置100が算定した血糖値を通信網から他の通信装置に送信してもよい。また、生体解析装置100の記憶装置40や生体解析装置100に着脱可能な可搬型の記録媒体に血糖値を格納してもよい。
(9)前述の各形態に係る生体解析装置100は、前述の例示の通り、制御装置30とプログラムとの協働により実現される。本発明の好適な態様に係るプログラムは、コンピューターが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピューターにインストールされ得る。また、配信サーバーが具備する記録媒体に格納されたプログラムを、通信網を介した配信の形態でコンピューターに提供することも可能である。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。
100…生体解析装置、20…分光装置、21…発光部、23…帯域通過部、25…第1分光部、27…第2分光部、29…受光部、30…制御装置、31…制御部、33…処理部、35…補正部、37…算定部、40…記憶装置、50…表示装置、70…演算部。

Claims (5)

  1. 被測定体に光を照射する発光部と、
    受光強度に応じた検出信号を生成する受光部と、
    前記発光部から前記被測定体を経由して前記受光部に至る光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第1波長範囲の光を透過させる第1分光部と、
    前記光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第2波長範囲の光を透過させる第2分光部とを具備する分光装置を利用した分光方法であって、
    前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複する第1状態と、前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複しない第2状態とが切り替わるように前記第1分光部と前記第2分光部とを制御する
    分光方法。
  2. 前記第1状態において生成された検出信号から分光スペクトルを特定し、
    前記第2状態において生成された検出信号から補正値を特定し、
    前記補正値を利用して前記分光スペクトルを補正する
    請求項1の分光方法。
  3. 前記第1状態においては、透過率がピークとなる波長が前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とで一致する
    請求項1または請求項2の分光方法。
  4. 前記第1状態においては、透過率がピークとなる波長が前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とで相違する
    請求項1または請求項2の分光方法。
  5. 被測定体に光を照射する発光部と、
    受光強度に応じた検出信号を生成する受光部と、
    前記発光部から前記被測定体を経由して前記受光部に至る光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第1波長範囲の光を透過させる第1分光部と、
    前記光路上に配置され、透過率がピークとなる波長が可変である第2波長範囲の光を透過させる第2分光部と、
    前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複する第1状態と、前記第1波長範囲と前記第2波長範囲とが重複しない第2状態とが切り替わるように前記第1分光部と前記第2分光部とを制御する制御部とを具備する
    分光装置。
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