JP2019206939A - ポンプ設備及びポンプ設備の管理方法 - Google Patents

ポンプ設備及びポンプ設備の管理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポンプを呼び水で満水させる満水系統の異常を判定する精度を高めることができるポンプ設備及びポンプ設備の管理方法の提供。【解決手段】液体を揚水する主ポンプ10と、主ポンプ10を呼び水で満たす満水系統30と、を備えるポンプ機場1であって、主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかる満水時間に影響する状態量を計測する計測器(水位計2aなど)と、当該計測器の計測結果に基づいて満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、満水系統30によって主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかった満水時間の実測値と、を比較して満水系統30の異常を判定する制御装置100を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、ポンプ設備及びポンプ設備の管理方法に関するものである。
下記特許文献1には、複数台のポンプを備え、大雨等に湛水防除の目的で稼働するポンプ設備が開示されている。このようなポンプ設備では、洪水時において確実な稼働が必要であり、設備全体の健全性を確認するために、主ポンプ及び補機の管理運転が必要不可欠である。例えば、主ポンプが横軸ポンプ等であって、吸込側の水位が羽根車よりも低い機場(吸上げ機場)場合、主ポンプを運転させるために、真空ポンプ(補機)を備える満水系統を用いて、主ポンプを呼び水で満たす必要がある。仮に、満水系統の故障や性能低下により、主ポンプが運転できない状態が生じた場合、設備の排水機能が損なわれてしまう。したがって、満水系統の正常な運転は、主ポンプを適切な時期に適切に運転させるための重要な要素である。
特開2012−246865号公報
上記従来技術では、主ポンプを呼び水で満たすまでの満水時間、具体的には、真空ポンプの始動から停止までの運転時間を記録し、当該運転時間に対して閾値を設定し、運転時間が当該閾値を超えたか否かで、満水系統の異常を判定していた。しかしながら、満水時間は、様々な環境要因によって、その都度変化するため、満水系統の異常の有無を判定する適切な閾値を設定するのが困難であった。このため、上記従来技術では、非常に大雑把な管理となっており、満水系統の異常を判定する手法としては精度が低いものであった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ポンプを呼び水で満水させる満水系統の異常を判定する精度を高めることができるポンプ設備及びポンプ設備の管理方法の提供を目的とする。
(1)本発明の一態様に係るポンプ設備は、液体を揚水するポンプと、前記ポンプを呼び水で満たす満水系統と、を備えるポンプ設備であって、前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかる満水時間に影響する状態量を計測する計測器と、前記計測器の計測結果に基づいて前記満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、前記満水系統によって前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかった前記満水時間の実測値と、を比較して前記満水系統の異常を判定する制御装置を備える。
(2)上記(1)に記載されたポンプ設備であって、前記計測器として、前記ポンプの吸込側の水位を計測する水位計を備え、前記制御装置は、前記水位計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出してもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載されたポンプ設備であって、前記計測器として、大気圧を計測する気圧計を備え、前記制御装置は、前記気圧計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出してもよい。
(4)上記(1)〜(3)に記載されたポンプ設備であって、前記満水系統は、前記ポンプ内に負圧を発生させる真空ポンプを有し、前記測定器として、前記真空ポンプのローターの回転速度を計測する回転速度計を備え、前記制御装置は、前記回転速度計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出してもよい。
(5)上記(1)〜(4)に記載されたポンプ設備であって、前記計測器として、気温を計測する温度計を備え、前記制御装置は、前記温度計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出してもよい。
(6)上記(1)〜(5)に記載されたポンプ設備であって、前記満水系統は、前記ポンプ内に負圧を発生させる水封式の真空ポンプと、前記真空ポンプに補給水を供給する補水槽と、を有し、前記計測器として、前記補給水の水温を計測する水温計を備え、前記制御装置は、前記水温計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出してもよい。
(7)上記(1)〜(6)に記載されたポンプ設備であって、前記ポンプは、複数台設けられており、前記制御装置は、前記計測器の計測結果に基づいて前記複数台のポンプを呼び水で満たすまでにかかる前記満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、前記満水系統によって前記複数台のポンプを呼び水で満たすまでにかかった前記満水時間の実測値と、を比較して前記満水系統の異常を判定する複数台同時異常判定モードを備えてもよい。
(8)上記(7)に記載されたポンプ設備であって、前記制御装置は、前記複数台同時異常判定モードによって異常を検知した場合、前記複数台のポンプのそれぞれについて個別に、前記計測器の計測結果に基づいて前記満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、前記満水系統によって前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかった前記満水時間の実測値と、を比較し、前記満水系統の異常が前記複数台のポンプのうちどのポンプで発生したかを特定する個別異常判定モードを備えてもよい。
(9)上記(8)に記載されたポンプ設備であって、前記制御装置は、前記個別異常判定モードによってポンプを特定した場合、当該ポンプを呼び水で満たすために使用した前記満水系統の構成機器を個別に検査し、前記異常が発生した箇所を特定する異常箇所特定モードを備えてもよい。
(10)上記(9)に記載されたポンプ設備であって、前記満水系統の構成機器には、前記ポンプ内の満水を検知する満水検知器、前記ポンプ内に負圧を発生させる真空ポンプ、前記真空ポンプが水封式である場合、当該真空ポンプに補給水を供給する補水槽、前記真空ポンプと前記ポンプとの間を接続する吸気配管、前記吸気配管に設けられた各種自動弁、及び、前記ポンプに設けられた吐出弁、のうち少なくとも1つが含まれていてもよい。
(11)本発明の一態様に係るポンプ設備の管理方法は、液体を揚水するポンプと、前記ポンプを呼び水で満たす満水系統と、を備えるポンプ設備の管理方法であって、前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかる満水時間に影響する状態量を計測し、前記状態量に基づいて前記満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、前記満水系統によって前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかった前記満水時間の実測値と、を比較して前記満水系統の異常を判定する。
上記本発明の態様によれば、ポンプを呼び水で満水させる満水系統の異常を判定する精度を高めることができるポンプ設備及びポンプ設備の管理方法が得られる。
第1実施形態に係るポンプ機場の全体構成図である。 第1実施形態に係る主ポンプの概略構成図である。 第1実施形態に係る吸込側の水位計に基づく主ポンプの満水時間の理論値の算出方法を説明する説明図である。 第1実施形態に係る満水系統の異常の判定手法の一例を示す図である。 第1実施形態に係る制御装置による制御フローである。 大気圧と真空ポンプの風量との関係を示すグラフである。 補給水の水温が真空ポンプの性能に及ぼす影響を示すグラフである。 第1実施形態に係る吐出側の水位計に基づく主ポンプの満水時間の理論値の算出方法を説明する説明図である。 第2実施形態に係るポンプ機場の構成図である。 第2実施形態に係る制御装置による制御フローである。 第2実施形態に係る異常箇所特定ステップにて実行される吐出弁の検査フローである。 第2実施形態に係る異常箇所特定ステップにて実行される満水検知器の検査フローである。 第2実施形態に係る異常箇所特定ステップにて実行される補水槽の検査フローである。 第2実施形態に係る異常箇所特定ステップにて実行される真空ポンプの検査フローである。 第2実施形態に係る異常箇所特定ステップにて実行される各種自動弁の検査フローである。 第2実施形態に係る異常箇所特定ステップにて実行される吸気ラインの検査フローである。
以下、本発明の実施形態のポンプ設備及びポンプ設備の管理方法について図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の適用例として、大雨等に湛水防除の目的で稼働するポンプ機場を例示する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るポンプ機場1の全体構成図である。
図1に示すポンプ機場1(ポンプ設備)は、複数台の主ポンプ10(ポンプ)と、主ポンプ10を稼働させる複数台の補機20と、を備える。ポンプ機場1は、主ポンプ10として、4台の横軸ポンプを備える。また、ポンプ機場1は、補機20として、真空ポンプ21、ギヤポンプ22、コンプレッサ23、冷却水ポンプ24などを備える。真空ポンプ21は、主ポンプ10を呼び水で満たす満水系統30の構成機器である。
図2は、第1実施形態に係る主ポンプ10の概略構成図である。
主ポンプ10は、図2に示すように、吸込水槽2に開口する吸込口11aと、吐出水槽3に開口する吐出口11bと、を有するケーシング11を備える。吸込水槽2、吐出水槽3には、吸込側,吐出側の水位を計測する水位計2a,3aが設けられている。ケーシング11には、横方向(水平方向)に延びるポンプ軸12が挿入されている。ポンプ軸12には、図示しないインペラ(羽根車)が接続されている。このインペラは、吸込水槽2の水位レベルよりも高い位置に設置されている。また、当該インペラの下流側かつ吐出口11bの上流側には、吐出弁13が設けられている。
主ポンプ10は、駆動機4によって駆動する。駆動機4は、ディーゼルエンジンなどの内燃機関である。この駆動機4が設置されるポンプ機場1内には、温度計4c、気圧計4dが設けられている。なお、駆動機4は、電動機であってもよい。駆動機4の駆動軸4aには減速機5が連結され、減速機5には主ポンプ10のポンプ軸12が連結されている。駆動機4を駆動することによって、減速機5を介してポンプ軸12が回転し、主ポンプ10によって吸込水槽2内の水が揚水されて、その水が吐出水槽3に吐出されるようになっている。
真空ポンプ21は、主ポンプ10の起動時にケーシング11内の空気を吸引し、ケーシング11内を呼び水で満たす。真空ポンプ21は、ケーシング11に吸気ライン30a(吸気配管)を介して接続されている。吸気ライン30aには、ケーシング11内の呼び水の満水を検知するための満水検知器14と、吸気ライン30aを開閉するための吸気弁31(電動弁又は電磁弁)と、が設けられている。
真空ポンプ21は、電動機21aによって駆動する。電動機21aには、真空ポンプ21のローターの回転速度を計測するための回転速度計21bが取り付けられている。この真空ポンプ21は、例えば水封式(具体的にはナッシュ式)真空ポンプであって、図1に示すように、その吸気側には補給水を給水する給水管32が接続され、排気側には給水された水及び吸い込んだ空気を排出する排出管33が接続されている。給水管32は、補水槽34と接続され、給水管32の開閉するための給水弁35が設けられている。また、補水槽34には、補給水の水温を計測する水温計34aが設けられている。
図1に示すギヤポンプ22は、駆動機4の燃料を汲み上げるものである。このギヤポンプ22は、電動機22aによって駆動する。ギヤポンプ22は、燃料供給ライン40(燃料供給配管)に設けられている。燃料供給ライン40においては、ギヤポンプ22の駆動によって、燃料を貯蔵する地下貯油槽6から地上の所定高さに設置された燃料小出槽7に燃料が汲み上げられ、この燃料小出槽7から駆動機4に燃料が供給される。燃料小出槽7に燃料を蓄えておくことで、ギヤポンプ22が駆動していない間でも、必要な供給圧で燃料を駆動機4に供給することができる。
コンプレッサ23は、駆動機4に供給する圧縮空気を生成するものである。このコンプレッサ23は、電動機23aによって駆動する。コンプレッサ23は、空気供給ライン50(空気供給配管)に設けられている。空気供給ライン50においては、コンプレッサ23の駆動によって生成された圧縮空気が空気槽8に貯留され、この空気槽8から駆動機4に圧縮空気が供給される。空気槽8に圧縮空気を蓄えておくことで、コンプレッサ23が駆動していない間でも圧縮空気を内燃機関などの駆動機4に供給して、始動することができる。
冷却水ポンプ24は、駆動機4を冷却する冷却水を組み上げるものである。この冷却水ポンプ24は、電動機24aによって駆動する。冷却水ポンプ24は、冷却水供給ライン60(冷却水供給配管)に設けられている。冷却水供給ライン60においては、冷却水ポンプ24の駆動によって冷却水槽61から冷却水が汲み上げられ、各駆動機4を冷却する熱交換器4bに冷却水が供給される。なお、減速機5にも図示しない熱交換器を設置する場合、冷却水供給ライン60において、駆動機4の熱交換器4bと減速機5の熱交換器とを直列に接続してもよい。
ポンプ機場1は、上述した各構成機器の動作を統括的に制御する制御装置100(図2参照)を備える。制御装置100は、図示しないCPU等の演算部、RAM,ROM,ハードディスクドライブ(HDD),ソリッドステートドライブ(SSD)等の記憶部、各構成機器とデータのやり取りする入出力インターフェース等が、図示しないバスで接続されたものである。入出力インターフェースには、上述した各構成機器以外にも、図示しないディスプレイ等の表示装置、マウス、キーボード等の入力装置が接続されている。
記憶部には、演算部が読み出して実行するためのプログラムが格納されており、制御装置100はそのプログラムに従って、以下説明する満水系統30の異常を判定することができるようになっている。本実施形態の制御装置100は、主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかる満水時間に影響する状態量を計測する計測器の計測結果に基づいて満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、満水系統30によって主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかった満水時間の実測値と、を比較して満水系統30の異常を判定する。
満水時間の実測値は、例えば、真空ポンプ21が始動したときから、満水検知器14が満水を検知し、真空ポンプ21が停止するまでの運転時間を、制御装置100に組み込まれたタイマーなどによって計測することができる。この満水時間の実測値は、記憶部に記憶される。なお、主ポンプ10一台当たりの満水時間は、主ポンプ10の容積にもよるが、満水系統30が健全であれば、例えば5〜10[min]程度である。
一方、満水時間の理論値は、次のようにして算出することができる。
(主ポンプ10の吸込側の水位に基づく理論値の算出)
図3は、第1実施形態に係る吸込側の水位計2aに基づく主ポンプ10の満水時間の理論値の算出方法を説明する説明図である。なお、符号15は、真空破壊弁である。
主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかる満水時間の理論値は、例えば、以下のような式(1)で算出することができる。ここで、Tは満水時間[min]、ALは主ポンプ10内の空気部分の容積[m]、Qは真空ポンプ21の風量[m/min]である。
Figure 2019206939
真空ポンプ21により主ポンプ10内を真空引きする際は、図3に示すように、吐出弁13は閉じられている。すなわち、主ポンプ10内の空気部分の容積ALは、主ポンプ10の吸込側の水位から吐出弁13までの容積となる。この容積ALは、主ポンプ10の吸込側の水位によって変化する。例えば、主ポンプ10の吸込側の水位がh1である場合の容積AL1は、図3における交差線+斜線部の容積となる。また、主ポンプ10の吸込側の水位が、h1より高いh2である場合の容積AL2は、図3における交差線部のみの容積となり、容積AL1よりも小さくなる。すなわち、吸込側の水位がh2の場合の満水時間T2は、吸込側の水位がh1の場合の満水時間T1よりも短くなる。
ポンプ機場1は、このような満水時間に影響する状態量(主ポンプ10の吸込側の水位)を計測する計測器(水位計2a(図2参照))を備えており、制御装置100は、この水位計2aの計測結果に基づいて、満水時間の理論値を、以下のような式(2)で算出(補正)する。ここで、T2は吸込側の水位がh2の場合の満水時間[min]、ΔALは容積AL1と容積AL2の差[m]、Qは真空ポンプ21の風量[m/min]である。なお、ΔALは、以下のような式(3)で算出することができる。ここで、Dは主ポンプ10の吸込管の口径[m]、h3はh1とh2の水位差[m]である。
Figure 2019206939
Figure 2019206939
以上のように、主ポンプ10の吸込側の水位が変化すると、満水時間が変化するので、主ポンプ10の吸込側の水位を水位計2aによって計測し、その計測結果に基づいて、満水時間の理論値を算出するとよい。これにより、満水時間の理論値の算出精度を高めることができる。制御装置100は、算出した満水時間の理論値を、上述した満水時間の実測値と比較することで、満水系統30の異常を判定する。
図4は、第1実施形態に係る満水系統30の異常の判定手法の一例を示す図である。
制御装置100は、図4に示すように、主ポンプ10の満水時間の実測値と理論値を比較し、満水系統30の異常を判定する。具体的には、満水時間の理論値に対し許容値(許容範囲)を設定し、満水時間の実測値が、当該許容値の下方閾値または上方閾値を超えたときに、満水系統30に異常が発生したと判定する。なお、上記例では下方閾値と上方閾値で同じ絶対値を使用しているが、設備及び機器仕様に基づき、下方閾値と上方閾値で値を変えてもよい。例えば、満水系統30の性能が低下した場合、満水時間は延びる方向(値が増える方向)になるのが自然であるため、例えば、上方閾値の絶対値を下方閾値の絶対値よりも大きくしてもよい。
また、制御装置100は、当該満水系統30の異常を判定する点検が定期的に行われる場合、主ポンプ10の満水時間の実測値と理論値との差の変化の傾向に基づいて、満水系統30の異常の予兆を検知してもよい。制御装置100は、例えば、異常の判定の点検が月1回の頻度で行われる場合、その月の計測値と前月の計測値とを結ぶ直線と、前月の計測値と前々月の計測値とを結ぶ直線との角度の差θが、所定の角度以上であれば、異常の予兆を検知したと判定する。この判定は、上述した満水系統30の異常判定の許容値未満で行うとよい。
次に、上記のように構成されたポンプ機場1の管理方法、具体的には、満水系統30の異常を判定する制御装置100の制御フローについて説明する。
図5は、第1実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
制御装置100は、図示しないタイマー等により予め設定された点検タイミングとなったら、満水系統30の点検指令を出す(ステップS1)。次に、制御装置100は、点検の対象となる主ポンプ10の満水時間の理論値を算出し、当該理論値に対して許容値を設定する(ステップS2)。上述したように、満水時間の理論値は、満水時間に影響を与える吸込側の水位を計測する水位計2aの計測結果に基づいて補正を加える。
次に、制御装置100は、真空ポンプ21を運転させ、満水系統30によって対象の主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかった運転時間を、満水時間の実測値として取得する(ステップS3)。そして、制御装置100は、当該満水時間の実測値がステップS2で設定した理論値の許容値内かを判定する(ステップS4)。制御装置100は、満水時間の実測値が理論値の許容値内である場合(ステップS4が「YES」の場合)、満水系統30に異常がないと判定する(ステップS5)。一方、制御装置100は、満水時間の実測値が理論値の許容値を超えていた場合(ステップS4が「NO」の場合)、満水系統30に異常があると判定する(ステップS6)。
上述したように、本実施形態によれば、液体を揚水する主ポンプ10と、主ポンプ10を呼び水で満たす満水系統30と、を備えるポンプ機場1であって、主ポンプ10の吸込側の水位を計測する水位計2aと、水位計2aの計測結果に基づいて満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、満水系統30によって主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかった満水時間の実測値と、を比較して満水系統30の異常を判定する制御装置100を備える。この構成によれば、主ポンプ10の満水時間に影響を与える環境要因である主ポンプ10の吸込側の水位に基づいて、満水時間の理論値を精度よく算出できるため、満水系統30の異常を判定する精度を高めることができる。
ところで、主ポンプ10の満水時間に影響を与える環境要因は、主ポンプ10の吸込側の水位だけではない。このため、主ポンプ10の吸込側の水位の代わりに、または、主ポンプ10の吸込側の水位と組み合わせて、以下の環境要因に基づき、満水系統30の理論値を算出するとよい。なお、これら環境要因の組み合わせは、全部であっても、一部であってもよい。
(大気圧に基づく理論値の算出)
例えば、台風等により標準大気圧が低下すると、真空ポンプ21の風量が低下する。図6は、大気圧と真空ポンプ21の風量との関係を示すグラフである。図6の符号C1は標準大気圧の場合の真空ポンプ21のポンプ性能曲線(又は性能曲線)、符号C2は標準大気圧よりも気圧が低下した場合の真空ポンプ21のポンプ性能曲線(又は性能曲線)を示す。同じ到達真空度(例えば−70[kPa])で比較すると、標準大気圧より気圧が低下した場合には、真空ポンプ21の風量がΔQだけ低下していることが分かる。なお、以下の表1は、大気圧と到達真空度の関係の一例を示している。
Figure 2019206939
すなわち、上述した式(1)に示すように、真空ポンプ21の風量が低下すると、満水時間Tは長くなる。ポンプ機場1は、このような満水時間に影響する状態量(大気圧)を計測する計測器(気圧計4d(図2参照))を備えており、制御装置100は、この気圧計4dの計測結果に基づいて、満水時間の理論値を、以下のような式(4)で算出(補正)することができる。ここで、T´は大気圧低下時の満水時間[min]、Qは標準大気圧時の真空ポンプ21の風量[m/min]、ΔQは標準大気圧時と大気圧低下時の真空ポンプ21の風量の差[m/min]である。
Figure 2019206939
以上のように、大気圧が変化すると、満水時間が変化するので、大気圧を気圧計4dによって計測し、その計測結果に基づいて、満水時間の理論値を算出するとよい。
(真空ポンプ21のローターの回転速度に基づく理論値の算出)
また、例えば、真空ポンプ21の内部において錆等が発生し、羽根車とケーシングの接触(摺動)によりローターの回転速度が低下すると、真空ポンプ21の風量が低下する。すなわち、真空ポンプ21のローターの回転速度が低下すると、上述の大気圧低下時と同様(図6と同様)に、真空ポンプ21の風量が低下するため、満水時間が長くなる。
ポンプ機場1は、このような満水時間に影響する状態量(真空ポンプ21のローターの回転速度)を計測する計測器(回転速度計21b(図2参照))を備えており、制御装置100は、この回転速度計21bの計測結果に基づいて、満水時間の理論値を、以下のような式(5)で算出(補正)することができる。ここで、T´´は回転速度低下時の満水時間[min]、Qは標準回転速度時の真空ポンプ21の風量[m/min]、ΔQは標準回転速度時と回転速度低下時の真空ポンプ21の風量の差[m/min]である。
Figure 2019206939
以上のように、真空ポンプ21のローターの回転速度が変化すると、満水時間が変化するので、真空ポンプ21のローターの回転速度を回転速度計21bによって計測し、その計測結果に基づいて、満水時間の理論値を算出するとよい。
(気温に基づく理論値の算出)
また、一定量の空気の体積は、気温の上昇により膨張する。すなわち、真空ポンプ21の吸込空気量は気温に依存しており、気温によって真空ポンプ21の風量が変化する。つまり、気温の変化は、満水時間に影響する環境要因となる。
ポンプ機場1は、このような満水時間に影響する状態量(気温)を計測する計測器(温度計4c(図2参照))を備えており、制御装置100は、この温度計4cの計測結果に基づいて、真空ポンプ21の風量を、以下のような式(6)で算出(補正)することができる。ここで、QSVは真空ポンプ21の風量[m/min]、QFAは自由空気量[m/min]、Pは真空度[kPa]、Tは真空ポンプ21の吸込大気温度[℃]である。このQSVを式(1)に代入することで、満水時間の理論値を算出することができる。
Figure 2019206939
以上のように、気温が変化すると、真空ポンプ21の風量が変化し、満水時間が変化するので、気温を温度計4cによって計測し、その計測結果に基づいて、満水時間の理論値を算出するとよい。
(補給水の水温に基づく理論値の算出)
また、例えば、真空ポンプ21に供給する補給水の水温が上がるほど、真空ポンプ21のケーシング内に占める蒸気の割合が増えるため、真空ポンプ21の吸込空気量が低下する。すなわち、真空ポンプ21に供給する補給水の水温が上がると、真空ポンプ21の風量が低下し、満水時間が長くなる。
ポンプ機場1は、このような満水時間に影響する状態量(補給水の水温)を計測する計測器(水温計34a(図1参照))を備えており、制御装置100は、この水温計34aの計測結果に基づいて、真空ポンプ21の風量を、以下のような式(7)で算出(補正)することができる。式(7)は、標準水温15[℃]の時の例を示す。ここで、QSVは真空ポンプ21の風量[m/min]、Kは空気量低減係数、QSV15℃は標準真空ポンプ風量(水温15[℃]の時)[m/min]である。このQSVを式(1)に代入することで、満水時間の理論値を算出することができる。なお、Kは、以下のような式(8)で算出することができる。ここで、Pは真空度(絶対圧力)[mmHg]、Pは吸込大気圧[mmHg]、P15℃は蒸気圧(水温15[℃]の時)[mmHg]である。
Figure 2019206939
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図7は、補給水の水温(水温15[℃]基準の時))が真空ポンプ21の性能に及ぼす影響を示すグラフである。図7に示すように、空気量低減係数(K)が1に近いほど、すなわち、標準水温15[℃]に近いほど、高い真空度が得られることが分かる。また、標準水温15[℃]よりも水温が上昇すると、空気量低減係数が1より低下し、真空度が低下することが分かる。すなわち、真空ポンプ21に供給する補給水の水温が上がると、真空ポンプ21の風量が低下するため、満水時間が長くなることが分かる。
以上のように、補給水の水温が変化すると、満水時間が変化するので、補給水の水温を水温計34aによって計測し、その計測結果に基づいて、満水時間の理論値を算出するとよい。
その他、主ポンプ10の満水時間に影響を与える環境要因としては、補水槽34の水位が挙げられる。例えば、補給水の水量が多い場合、真空ポンプ21の風量が減少し、満水時間が長くなる。また、補給水の水量が少ない場合は、空気漏れにより真空ポンプ21の真空度が上がり難くなり、満水時間が長くなる。このため、補水槽34に設けられた図示しない水位計の計測結果に基づいて、満水時間の理論値を算出するとよい。
なお、補水槽34の水位に基づく理論値は、上述したような各環境要因と比べて定量的に算出することが難しいため、例えば、真空ポンプ21の工場での試験記録、もしくは実機場で真空ポンプ21を試運転したときの試運転記録などの実測データ(補水槽34の水位と真空ポンプ21の風量の対比データ)を記憶部に記憶しておき、当該実測データに基づいて、満水時間の理論値を算出してもよい。
また、上述した主ポンプ10の吸込側の水位に基づく理論値の算出においては、吐出弁13を閉じた状態で、主ポンプ10内の空気部分の容積ALを算出していたが、吐出弁13が無い、もしくは、吐出弁13が開いた状態で運転するポンプ機場1については、吸込水槽2の水位に加え、吐出水槽3の水位を水位計3aによって取得し、容積ALを算出(補正)してもよい。
図8は、第1実施形態に係る吐出側の水位計3aに基づく主ポンプ10の満水時間の理論値の算出方法を説明する説明図である。
図8に示すように、吐出弁13が開いている場合、主ポンプ10内の空気部分の容積ALは、吐出弁13及び吐出弁13より下流側の部分を含めた容積となる。例えば、主ポンプ10の吐出側の水位がH1である場合、その容積は図8における交差線+斜線部の容積となる。また、主ポンプ10の吐出側の水位が、H1より高いH2である場合の容積は、図8における交差線部のみの容積となる。すなわち、式(1)に示すように、吐出側の水位がH2の場合の満水時間は、吐出側の水位がH1の場合の満水時間よりも短くなる。なお、この場合、上述した式(2)のh3に係る項は、H1とH2の水位差H3に変更される。また、上述した式(2)のDに係る項(空間断面積)は、吐出管の水平断面形状に応じて(図8の例では楕円形に)変更するとよい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図9は、第2実施形態に係るポンプ機場1の構成図である。
図9では、ポンプ機場1のうち2台の主ポンプ10及びその2台の主ポンプ10に接続された満水系統30を図示している。2台の主ポンプ10の構成は、上述した第1実施形態と同様であるが、満水検知器14の設置高さが異なる。例えば、口径の異なる主ポンプ10がポンプ機場1に複数台存在する場合、満水検知器14の設置高さが異なることがある。以下、吸込側水位から高さA1に満水検知器14が設置された主ポンプ10を主ポンプP1、吸込側水位から高さA1よりも高い、高さA2に満水検知器14が設置された主ポンプ10を主ポンプP2と称して説明する場合がある。
第2実施形態の満水系統30は、2台の真空ポンプ21に対し2本に分岐して接続される吸気ライン30aに、自動弁36a,36b及び真空計37a,37bが設けられている。また、自動弁36a,36bより上流側で1本に合流した吸気ライン30aにも真空計37cが設けられている。2台の真空ポンプ21に補給水を供給する補水槽34には、電極式の水位計34bが設けられている。以下、自動弁36a,真空計37aが配置された吸気ライン30aの分岐経路の真空ポンプ21を真空ポンプVP1、自動弁36a,真空計37aが配置された吸気ライン30aの分岐経路の真空ポンプ21を真空ポンプVP2と称して説明する場合がある。
図9において図示しない第2実施形態の制御装置100は、記憶部に記憶されたプログラムに従って、複数台の主ポンプ10の異常の判定を同時に行う複数台同時異常判定モードと、一台ずつ個別に主ポンプ10の異常の判定を行う個別異常判定モードと、満水系統30のうちどの構成機器に異常が発生したかを特定する異常箇所特定モードと、を実行させる。なお、各モードの実行順序は、複数台同時異常判定モード→個別異常判定モード→異常箇所特定モードの順に設定されており、効率的に満水系統30の異常発生箇所を徐々に絞り込んでいけるようになっている。
複数台同時異常判定モードは、複数台(図9の例では2台全台)の主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかる満水時間の理論値(合計値)を算出すると共に、当該理論値と、満水系統30によって複数台の主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかった満水時間の実測値と、を比較して満水系統30の異常を判定するモードである。すなわち、複数台同時異常判定モードのとき、制御装置100は、満水系統30によって複数台の主ポンプ10に対して一度に真空引きを行う。なお、このとき、制御装置100は、2台の真空ポンプ21を同時に運転させて真空引きを行わせてもよい。また、満水検知器14の設置高さが異なる場合、満水検知の時間差を、満水時間の理論値に反映させてもよい。
個別異常判定モードは、複数台同時異常判定モードによって異常を検知した場合、複数台の主ポンプ10のそれぞれについて個別に、満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、満水系統30によって主ポンプ10を呼び水で満たすまでにかかった満水時間の実測値と、を比較し、満水系統30の異常が複数台の主ポンプ10のうちどのポンプで発生したかを特定するモードである。すなわち、個別異常判定モードのとき、制御装置100は、上述した第1実施形態と同様に、1台の真空ポンプ21を運転させて1台の主ポンプ10の真空引きを行う。
異常箇所特定モードは、個別異常判定モードによって主ポンプ10を特定した場合、当該主ポンプ10を呼び水で満たすために使用した満水系統30の構成機器を個別に検査し、異常が発生した箇所を特定するモードである。異常箇所特定モードで検査される満水系統30の構成機器には、主ポンプ10内の満水を検知する満水検知器14、主ポンプ10内に負圧を発生させる真空ポンプ21、真空ポンプ21が水封式である場合、当該真空ポンプ21に補給水を供給する補水槽34、真空ポンプ21と主ポンプ10との間を接続する吸気ライン30a、吸気ライン30aに設けられた各種自動弁(吸気弁31、真空破壊弁15、自動弁36a,36b)、及び、主ポンプ10に設けられた吐出弁13、のうち少なくとも1つ(本実施形態では全部)が含まれている。
次に、上記のように構成されたポンプ機場1の管理方法、具体的には、満水系統30の点検時に、複数台同時異常判定モード、個別異常判定モード、及び異常箇所特定モードを実行する制御装置100の制御フローについて詳しく説明する。
図10は、第2実施形態に係る制御装置100による制御フローである。
制御装置100は、図10に示すように、先ず、複数台同時異常判定モードによる複数台同時異常判定ステップS10を実行し、次に、個別異常判定モードによる個別異常判定ステップS20を実行し、最後に、異常箇所特定モードによる異常箇所特定ステップS30を実行する。これら各ステップは、満水系統30の点検指令が出ると、自動かつ連続して実行される。
先ず、制御装置100は、図示しないタイマー等により予め設定された点検タイミングとなったら、満水系統30の点検指令を出す(ステップS11)。次に、制御装置100は、点検の対象となる複数台(この例では全台とする)の主ポンプ10の満水時間の理論値を算出する(ステップS12)。ステップS12で算出する満水系統の理論値は、一度に真空引きされる主ポンプ10の全台の満水時間の理論値の合計値である。
次に、制御装置100は、真空ポンプ21を運転させる(ステップS13)。そして、制御装置100は、満水系統30によって主ポンプ10の全台に対して真空引きを行い、満水時間の実測値を取得すると共に、当該満水時間の実測値と理論値とを比較し、主ポンプ10の全体として満水時間に異常がないか確認する(ステップS14)。なお、異常の有無は、第1実施形態と同様に、満水時間の実測値が、設定した理論値の許容値内であるかで判定する。
ステップS14が「NO」の場合、制御装置100は、満水系統30全体に異常がないと判定し(ステップS15)、満水系統30の点検を終了する。このように、複数台同時異常判定モードによって、主ポンプ10の全台に対して一度に真空引きを行うことにより、満水系統30全体の正常状態を素早く確認することができる。したがって、管理者の点検負担を低減し、満水系統30の信頼性を保持することができる。
一方、ステップS14が「YES」の場合、制御装置100は、満水系統30の一部または全体に異常があると判定し(ステップS16)、以下説明する個別異常判定ステップS20に移行する。
個別異常判定ステップS20では、制御装置100は、複数台同時異常判定モードで一度に真空引きした主ポンプ10のそれぞれについて個別に、満水時間の理論値を算出する(ステップS21)。次に、制御装置100は、主ポンプ10一台ずつ真空引きを行うため、真空ポンプ21を運転させる(ステップS22)。そして、制御装置100は、各主ポンプ10に対して1台ずつ真空引きを行い、満水時間の実測値を取得すると共に、当該満水時間の実測値と理論値とを比較し、満水時間に異常がないか確認する(ステップS23)。
ステップS23が「NO」の場合、制御装置100は、異常が判定されるまで1台ずつ真空引きを繰り返し、満水系統30の異常がどの主ポンプ10で発生したかを特定する(ステップS24)。このように、複数台同時異常判定モードにて異常があった場合に、初めて個別異常判定モードで1台ずつ真空引きをすることで、最初から個別異常判定モードで1台ずつ真空引きをするよりも、満水系統30の点検を効率よく行える。
一方、ステップS23が「YES」またはステップS24によって主ポンプ10を特定した場合、制御装置100は、当該特定号機について故障確認を行うため、以下説明する異常箇所特定ステップS30に移行する。
(吐出弁13の異常の有無の検査)
図11は、第2実施形態に係る異常箇所特定ステップS30にて実行される吐出弁13の検査フローである。
制御装置100は、個別異常判定モードで特定した主ポンプ10の吐出弁13に対し、図11に示す検査フローを実施し、吐出弁13の異常の有無を判定する。先ず、制御装置100は、個別異常判定モードで特定した主ポンプ10の満水時間の理論値を算出する(ステップS20−1)と共に、その吐出弁13を閉じ(ステップS20−2)、真空ポンプ21を運転させ(ステップS20−3)、満水検知時間(満水時間の実測値)を測定する(ステップS20−4)。
なお、これらのステップは、上述した個別異常判定ステップS20において実施済みであるため、重複して行わなくてもよい。ステップS20−4にて満水時間の実測値が理論値の許容値内であった場合、吐出弁13は正常であると判定することができる(ステップS30−1)。一方、ステップS20−4にて満水時間の実測値が理論値の許容値外であった場合、今度は吐出弁13を開いた状態で検査をするため、制御装置100は、一旦、真空破壊弁15を開き、真空引きした主ポンプ10の真空破壊をする(ステップS31−1)。
次に、制御装置100は、吐出弁13を開いた状態での主ポンプ10の満水時間の理論値を算出する(ステップS31−2)。ステップS31−2で算出する満水系統の理論値は、上述の図8にて説明した水位計3aに基づく満水時間の理論値の算出方法を用いるとよい。次に、制御装置100は、吐出弁13を全開にし(ステップS31−3)、真空ポンプ21を運転させ(ステップS31−4)、満水検知時間(満水時間の実測値)を測定する(ステップS31−5)。
ステップS31−5にて満水時間の実測値が理論値の許容値内であった場合、制御装置100は、満水系統30の異常が、吐出弁13の異常であったと判定(特定)する(ステップS31−6)。すなわち、ステップS20−4における許容値外との判定は、吐出弁13の漏れ、つまり吐出弁13が不完全な閉鎖状態であり、例えば、二次側(吐出水槽3側)からの空気混入が原因であった可能性がある。
一方、ステップS20−4にて満水時間の実測値が理論値の許容値外であった場合、満水系統30の異常が、吐出弁13以外で発生していると判定することができる(ステップS31−7)。
なお、この吐出弁13の検査では、吐出弁13(自動弁)の開閉時間、動作電流値を取り込み、異常の有無の判定材料としてもよい。また、吐出弁13の二次側(吐出水槽3側)に、図示しない水検知センサを設けて、ステップS20にて吐出弁13を閉じた状態で真空引きをした際に、吐出水槽3からの水の吸い上げの有無を確認してもよい。さらに、吐出弁13の二次側(吐出水槽3側)に、図示しない気圧計を設けて、ステップS20にて吐出弁13を閉じた状態で真空引きをした際に、二次側に圧力変動があるか(吐出水槽3からの水の吸い上げの有無)を確認してもよい。
(満水検知器14の異常の有無の検査)
図12は、第2実施形態に係る異常箇所特定ステップS30にて実行される満水検知器14の検査フローである。
制御装置100は、個別異常判定モードで特定した主ポンプ10に付属する満水検知器14に対し、図12に示す検査フローを実施し、満水検知器14の異常の有無を判定する。先ず、制御装置100は、満水検知器14の点検指令を出す(ステップS32−1)。次に、制御装置100は、吸込水槽2の水位レベルを水位計2aから取得する。そして、制御装置100は、吸込水槽2の水位レベルと、主ポンプ10に付属する満水検知器14の設置高さの差(図9に示すA1もしくはA2)から、真空ポンプ21の吸込圧力の理論値を設定する(ステップS32−3)。
次に、制御装置100は、真空ポンプ21を運転させる(ステップS32−4)。そして、制御装置100は、ステップS32−3で設定した吸込圧力の理論値に未到達で、満水検知器14の発報がされたか否かを判定する(ステップS32−5)。なお、真空ポンプ21の吸込圧力の実測値は、真空計37a,37b,37cのいずれかを用いて計測することができる。なお、制御装置100は、吸込圧力の実測値が理論値に到達し、かつ、満水検知器14の発報を確認したときに、満水状態であると判定している。
すなわち、理論値よりも早く満水検知器14が発報した場合(ステップS32−5が「YES」の場合)、疑似満水状態となっている可能性が高いため、制御装置100は、満水検知器14が異常であると判定する(ステップS32−8)。一方、ステップS32−5が「NO」の場合、制御装置100は、吸込圧力の実測値が理論値に到達した状態で、真空ポンプ21の運転が継続しているか否かを判定する(ステップS32−6)。
すなわち、理論値に到達しているのに満水検知器14が発報せず真空ポンプ21の運転が継続している場合(ステップS32−5が「YES」の場合)、満水検知器14が故障している可能性が高いため、制御装置100は、満水検知器14が異常であると判定する(ステップS32−8)。一方、ステップS32−6が「NO」の場合、制御装置100は、満水検知器14は正常であると判定する(ステップS32−7)。なお、この満水検知器14の検査において、理論値よりも遅く満水検知器14が発報した場合、配管系統、弁等からの漏れが疑われるため、満水系統30の異常が、満水検知器14以外で発生していると判定できる。
(補水槽34の異常の有無の検査)
図13は、第2実施形態に係る異常箇所特定ステップS30にて実行される補水槽34の検査フローである。
制御装置100は、満水系統30の補水槽34に対し、図13に示す検査フローを実施し、補水槽34の異常の有無を判定する。先ず、制御装置100は、補水槽34に設けられた水位計34b(図9参照)を用いて、補水槽34の水位を確認する(ステップS33−1)。
ステップS33−1にて補水槽34の水位が規定水位に達している場合、制御装置100は、補水槽34を含む補水系統が正常であると判定する(ステップS33−2)。一方、ステップS33−1にて補水槽34の水位が規定水位に達していない場合、制御装置100は、例えば補水槽34に補給水を供給するラインに漏れなどの異常があると判定することができる(ステップS33−3)。
(真空ポンプ21の異常の有無の検査)
図14は、第2実施形態に係る異常箇所特定ステップS30にて実行される真空ポンプ21の検査フローである。
制御装置100は、満水系統30の真空ポンプ21に対し、図14に示す検査フローを実施し、真空ポンプ21の異常の有無を判定する。制御装置100は、図9に示す2台(全台)の真空ポンプ21を一定条件で比較するために、自動弁36a,36bを全閉した締切状態にして、2台の真空ポンプ21を同時に運転させる(ステップS34−1)。または、真空破壊弁15を全開した大気開放状態にして、2台の真空ポンプ21を同時に運転させてもよい。
次に、制御装置100は、真空計37a,37bで、2台の真空ポンプ21の締切状態での吸込圧力を計測すると共に、2台の真空ポンプ21を駆動させるそれぞれの電動機21aに設けられた図示しない電流計などで2台の真空ポンプ21の駆動電流値を計測する(ステップS34−2)。そして、制御装置100は、計測した吸込圧力及び電流値が共に正常である場合(ステップS34−3)、真空ポンプ21が正常であると判定する(ステップS34−4)。一方、計測した吸込圧力、電流値のいずれかが異常である場合(ステップS34−5)、制御装置100は、真空ポンプ21が異常(故障状態)であると判定する(ステップS34−6)。
なお、この真空ポンプ21の検査では、上述した第1実施形態と同様に、図2に示す回転速度計21bによって、真空ポンプ21のローターの回転速度を管理してもよい。
(各種自動弁の異常の有無の検査)
図15は、第2実施形態に係る異常箇所特定ステップS30にて実行される各種自動弁の検査フローである。
制御装置100は、満水系統30の各種自動弁(吸気弁31、真空破壊弁15、自動弁36a,36b)に対し、図15に示す検査フローを実施し、各種自動弁の異常の有無を判定する。制御装置100は、満水系統30の各種自動弁を検査するために、各種自動弁(吸気弁31、真空破壊弁15、自動弁36a,36b)を開閉動作させる(ステップS35−1)。
次に、制御装置100は、各種自動弁の開閉動作時の電流値及びその開閉時間を計測する(ステップS35−2)。そして、制御装置100は、計測した電流値及び開閉時間が共に正常である場合(ステップS35−3)、各種自動弁が正常であると判定する(ステップS35−4)。一方、計測した電流値、開閉時間のいずれかが異常である場合(ステップS35−5)、制御装置100は、各種自動弁が異常(故障状態)であると判定する(ステップS35−6)。
(吸気ライン30a(小配管)の異常の有無の検査)
図16は、第2実施形態に係る異常箇所特定ステップS30にて実行される吸気ライン30aの検査フローである。
制御装置100は、満水系統30の吸気ライン30a(小配管)に対し、図16に示す検査フローを実施し、吸気ライン30aの異常の有無を判定する。先ず、制御装置100は、図9に示す2台の主ポンプ10に付属する吸気弁31をそれぞれ全閉した締切状態にして、2台の真空ポンプ21を同時に運転させる(ステップS36−1)。
次に、制御装置100は、真空計37cによって吸気ライン30aの圧力を取得し、真空計37cの計測値が設定圧力に到達したら(ステップS35−2)、2台の真空ポンプ21を停止させる(ステップS36−3)。そして、制御装置100は、その真空状態を一定時間保持し、吸気ライン30aの小配管内の圧力の変化を、真空計37cによって計測する(ステップS36−4)。
制御装置100は、真空計37cで計測した小配管内の圧力の変化が規定値内である場合(ステップS36−5)、吸気ライン30aの小配管が正常であると判定する(ステップS36−6)。一方、真空計37cで計測した小配管内の圧力の変化が規定値外である場合(ステップS36−7)、吸気ライン30aの小配管が異常(例えば空気漏れ状態)であると判定する(ステップS36−8)。
このように、上述した第2実施形態によれば、主ポンプ10の全台の異常判定から、主ポンプ10の個別の異常判定に移り、さらに、満水系統30の異常箇所の特定まで行えるため、管理者の点検負担を低減し、満水系統30の信頼性を高めることができる。なお、上述した各種異常判定の判定結果、異常箇所の特定結果は、図示しない表示装置に表示させて、管理者が確認できるようにするとよい。
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
例えば、上記実施形態では、真空ポンプ21がナッシュ式である場合を例示したが、この構成に限定されるものではなく、例えば真空ポンプ21がルーツ式であってもよい。
また、例えば、上記第1実施形態において、主ポンプ10の満水時間に影響を与える環境要因として、真空ポンプ21内の水蒸気圧を考慮してもよい。
また、複数台の真空ポンプ21で真空引きする場合には、吸気ライン30aの容積、配管抵抗も考慮してもよい。
1…ポンプ機場(ポンプ設備)、2…吸込水槽、2a…水位計、3…吐出水槽、3a…水位計、4…駆動機、4a…駆動軸、4b…熱交換器、4c…温度計、4d…気圧計、5…減速機、6…地下貯油槽、7…燃料小出槽、8…空気槽、10…主ポンプ、11…ケーシング、11a…吸込口、11b…吐出口、12…ポンプ軸、13…吐出弁、14…満水検知器、15…真空破壊弁、20…補機、21…真空ポンプ、21a…電動機、21b…回転速度計、30…満水系統、30a…吸気ライン、31…吸気弁、32…給水管、33…排出管、34…補水槽、34a…水温計、34b…水位計、35…給水弁、36a…自動弁、36b…自動弁、37a…真空計、37b…真空計、37c…真空計、40…燃料供給ライン、50…空気供給ライン、60…冷却水供給ライン、61…冷却水槽、100…制御装置

Claims (11)

  1. 液体を揚水するポンプと、
    前記ポンプを呼び水で満たす満水系統と、を備えるポンプ設備であって、
    前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかる満水時間に影響する状態量を計測する計測器と、
    前記計測器の計測結果に基づいて前記満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、前記満水系統によって前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかった前記満水時間の実測値と、を比較して前記満水系統の異常を判定する制御装置を備える、ことを特徴とするポンプ設備。
  2. 前記計測器として、前記ポンプの吸込側の水位を計測する水位計を備え、
    前記制御装置は、前記水位計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載のポンプ設備。
  3. 前記計測器として、大気圧を計測する気圧計を備え、
    前記制御装置は、前記気圧計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポンプ設備。
  4. 前記満水系統は、前記ポンプ内に負圧を発生させる真空ポンプを有し、
    前記測定器として、前記真空ポンプのローターの回転速度を計測する回転速度計を備え、
    前記制御装置は、前記回転速度計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポンプ設備。
  5. 前記計測器として、気温を計測する温度計を備え、
    前記制御装置は、前記温度計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポンプ設備。
  6. 前記満水系統は、
    前記ポンプ内に負圧を発生させる水封式の真空ポンプと、
    前記真空ポンプに補給水を供給する補水槽と、を有し、
    前記計測器として、前記補給水の水温を計測する水温計を備え、
    前記制御装置は、前記水温計の計測結果に基づいて、前記満水時間の理論値を算出する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポンプ設備。
  7. 前記ポンプは、複数台設けられており、
    前記制御装置は、前記計測器の計測結果に基づいて前記複数台のポンプを呼び水で満たすまでにかかる前記満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、前記満水系統によって前記複数台のポンプを呼び水で満たすまでにかかった前記満水時間の実測値と、を比較して前記満水系統の異常を判定する複数台同時異常判定モードを備える、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポンプ設備。
  8. 前記制御装置は、前記複数台同時異常判定モードによって異常を検知した場合、前記複数台のポンプのそれぞれについて個別に、前記計測器の計測結果に基づいて前記満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、前記満水系統によって前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかった前記満水時間の実測値と、を比較し、前記満水系統の異常が前記複数台のポンプのうちどのポンプで発生したかを特定する個別異常判定モードを備える、ことを特徴とする請求項7に記載のポンプ設備。
  9. 前記制御装置は、前記個別異常判定モードによってポンプを特定した場合、当該ポンプを呼び水で満たすために使用した前記満水系統の構成機器を個別に検査し、前記異常が発生した箇所を特定する異常箇所特定モードを備える、ことを特徴とする請求項8に記載のポンプ設備。
  10. 前記満水系統の構成機器には、前記ポンプ内の満水を検知する満水検知器、前記ポンプ内に負圧を発生させる真空ポンプ、前記真空ポンプが水封式である場合、当該真空ポンプに補給水を供給する補水槽、前記真空ポンプと前記ポンプとの間を接続する吸気配管、前記吸気配管に設けられた各種自動弁、及び、前記ポンプに設けられた吐出弁、のうち少なくとも1つが含まれる、ことを特徴とする請求項9に記載のポンプ設備。
  11. 液体を揚水するポンプと、
    前記ポンプを呼び水で満たす満水系統と、を備えるポンプ設備の管理方法であって、
    前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかる満水時間に影響する状態量を計測し、
    前記状態量に基づいて前記満水時間の理論値を算出すると共に、当該理論値と、前記満水系統によって前記ポンプを呼び水で満たすまでにかかった前記満水時間の実測値と、を比較して前記満水系統の異常を判定する、ことを特徴とするポンプ設備の管理方法。
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