JP2019202910A - 窒化アルミニウム焼結体 - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度かつ焼結性の良い窒化アルミニウム焼結体の提供。【解決手段】窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粒子および窒化アルミニウムウィスカーを含む窒化アルミニウム焼結体であって、前記窒化アルミニウム焼結体は、相対密度が99%以上であり、かつ前記窒化アルミニウム焼結体の断面において前記窒化アルミニウムウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含み、前記窒化アルミニウムウィスカーは、前記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である、高強度焼結体。【選択図】図1
Description
本発明は、窒化アルミニウム焼結体に関する。
熱伝導性に優れた窒化アルミニウム焼結体(以下、「AlN焼結体」とも記す)に対し、高強度を有する窒化アルミニウムウィスカー(以下、「AlNウィスカー」とも記す)を添加することによって、優れた熱伝導性および強度を併せ持つ新たな材料の開発が進められている。たとえば特開平11−092228号公報(特許文献1)は、窒化アルミニウム粉末に焼結助剤と、窒化アルミニウムファイバー、窒化アルミニウムウィスカーおよび27R型酸窒化アルミニウムポリタイポイドから選ばれる少なくとも1種の添加物とを加え、これを成形した後、1500℃以上1700℃未満の温度で焼結することにより得られる窒化アルミニウム焼結体を開示している。このAlN焼結体において、上記添加物の含有量は30重量%未満である。
特許文献1に開示されたAlN焼結体は、上述のように上記添加物の添加量が30重量%未満であるので、強度が大きく向上していない。一方、上記添加物の添加量が30重量%以上である場合、上記添加物の1つであるAlNウィスカーのアスペクト比が非常に大きいことなどによって上記窒化アルミニウム粉末(以下、「AlN粉末」とも記す)の成形体が緻密化せず、AlN焼結体の焼結性が悪くなることが指摘されている。したがって、未だ望まれる強度を有し、かつ焼結性にも優れたAlN焼結体は得られておらず、その開発が切望されている。
本開示は、上記実情に鑑みてなされ、高強度かつ焼結性の良い窒化アルミニウム焼結体を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粒子および窒化アルミニウムウィスカーを含む窒化アルミニウム焼結体であって、上記窒化アルミニウム焼結体は、相対密度が99%以上であり、かつ上記窒化アルミニウム焼結体の断面において上記窒化アルミニウムウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含み、上記窒化アルミニウムウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である。
上記によれば、高強度かつ焼結性の良い窒化アルミニウム焼結体を提供することができる。
[本願発明の実施形態の説明]
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ね、本開示に到達した。すなわちAlNウィスカーを含有するAlN焼結体において、AlNウィスカーによって亀裂進展の抑制および迂回が生じることにより、曲げ強度が向上することが従来より知られていた。一方AlNウィスカーは、そのアスペクト比が非常に大きいため、AlNウィスカーを添加したAlN粉末の成形体が緻密化せず、もってAlN焼結体の焼結性を悪くさせていた。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ね、本開示に到達した。すなわちAlNウィスカーを含有するAlN焼結体において、AlNウィスカーによって亀裂進展の抑制および迂回が生じることにより、曲げ強度が向上することが従来より知られていた。一方AlNウィスカーは、そのアスペクト比が非常に大きいため、AlNウィスカーを添加したAlN粉末の成形体が緻密化せず、もってAlN焼結体の焼結性を悪くさせていた。
これらの知見に基づき本発明者らは、AlNウィスカーの粉砕および分級処理などの検討を重ねることにより、AlNウィスカーを所定量含有した場合であっても焼結性が良いAlN焼結体を得ることができるAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径および平均アスペクト比を見出した。これにより、高強度かつ焼結性の良いAlN焼結体に到達した。
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示の一態様に係る窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粒子および窒化アルミニウムウィスカーを含む窒化アルミニウム焼結体であって、上記窒化アルミニウム焼結体は、相対密度が99%以上であり、かつ上記窒化アルミニウム焼結体の断面において上記窒化アルミニウムウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含み、上記窒化アルミニウムウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である。これにより、高強度かつ焼結性の良いAlN焼結体を得ることができる。
[1]本開示の一態様に係る窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粒子および窒化アルミニウムウィスカーを含む窒化アルミニウム焼結体であって、上記窒化アルミニウム焼結体は、相対密度が99%以上であり、かつ上記窒化アルミニウム焼結体の断面において上記窒化アルミニウムウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含み、上記窒化アルミニウムウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である。これにより、高強度かつ焼結性の良いAlN焼結体を得ることができる。
[2]上記窒化アルミニウム焼結体は、上記断面において上記窒化アルミニウムウィスカーを9.5面積%以上12面積%以下含み、上記窒化アルミニウムウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下であることが好ましい。これにより、強度においてより優れたAlN焼結体を得ることができる。
[3]上記窒化アルミニウム焼結体は、上記断面において上記窒化アルミニウムウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含み、上記窒化アルミニウムウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上6.5μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下であることが好ましい。これにより、強度においてより優れたAlN焼結体を得ることができる。
[4]上記窒化アルミニウム焼結体は、上記断面において上記窒化アルミニウムウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含み、上記窒化アルミニウムウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.5以上5.1以下であることが好ましい。これにより、強度においてより優れたAlN焼結体を得ることができる。
[5]上記窒化アルミニウム焼結体は、上記断面において上記窒化アルミニウムウィスカーを9.5面積%以上12面積%以下含み、上記窒化アルミニウムウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上6.5μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.5以上5.1以下であることが好ましい。これにより強度においてさらに優れたAlN焼結体を得ることができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記す)について、さらに詳細に説明する。
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記す)について、さらに詳細に説明する。
ここで、本明細書において「A〜B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味しており、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。さらに、本明細書において化合物を化学式で表す場合において、原子比を特に限定しないときは従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるものではない。たとえば「AlN」と記載されている場合、AlNを構成する原子数の比はAl:N=1:1に限られず、従来公知のあらゆる原子比が含まれる。このことは、「AlN」以外の化合物の記載についても同様である。本実施形態において、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)などの金属元素と、窒素(N)、酸素(O)またはフッ素(F)などの非金属元素とは、必ずしも化学量論的な組成を構成している必要がない。
≪窒化アルミニウム焼結体(AlN焼結体)≫
本実施態様に係る窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粒子(以下、「AlN粒子」とも記す)およびAlNウィスカーを含むAlN焼結体である。上記AlN焼結体は、相対密度が99%以上であり、かつ上記AlN焼結体の断面において上記AlNウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含む。上記AlNウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である。
本実施態様に係る窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粒子(以下、「AlN粒子」とも記す)およびAlNウィスカーを含むAlN焼結体である。上記AlN焼結体は、相対密度が99%以上であり、かつ上記AlN焼結体の断面において上記AlNウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含む。上記AlNウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である。
AlN焼結体は、上記断面において上記AlNウィスカーを9.5面積%以上12面積%以下含むことが好ましい。上記AlNウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上6.5μm以下であることが好ましい。さらに上記AlNウィスカーは、上記断面において平均アスペクト比が4.5以上5.1以下であることが好ましい。
このようなAlN焼結体は、その断面において上記AlNウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含む場合であっても緻密で焼結性に優れ、99%以上の相対密度を得ることができる。さらにAlN焼結体は、上述のとおりAlN焼結体の断面においてAlNウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含むため、AlNウィスカー固有の高強度の特性を備えることができる。AlN焼結体は、後述するように特に曲げ強度に優れることができる。
AlN焼結体において、AlNウィスカーを除いた残部には、AlN粒子が含まれる。さらに残部には、後述するように焼結助剤を含む場合がある。その他AlN焼結体には、気孔が含まれることがある。
<窒化アルミニウム粒子(AlN粒子)>
AlN焼結体は、粒子状のAlNの結晶であるAlN粒子を含む。このAlN粒子は、上述のとおりAlN焼結体に含まれるAlN結晶の中で、AlNウィスカーを除いた残部となる成分である。本明細書において「AlN粒子」は、後述するAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率(面積%)を求める測定方法において、顕微鏡像に現れたAlN結晶のうち、そのアスペクト比が2未満となるAlN結晶をいう。
AlN焼結体は、粒子状のAlNの結晶であるAlN粒子を含む。このAlN粒子は、上述のとおりAlN焼結体に含まれるAlN結晶の中で、AlNウィスカーを除いた残部となる成分である。本明細書において「AlN粒子」は、後述するAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率(面積%)を求める測定方法において、顕微鏡像に現れたAlN結晶のうち、そのアスペクト比が2未満となるAlN結晶をいう。
AlN粒子は、その平均粒径を特に制限すべきではないが、AlN焼結体の焼結性および強度を高める点において1〜10μmとすることが好ましい。AlN粒子の平均粒径は、より好ましくは1〜5μmである。
AlN粒子の粒径(平均粒径)は、次の測定方法により求めることができる。すなわち後述の方法により得たAlN焼結体の断面の顕微鏡像から、任意に30点のAlN粒子を選択することにより、これらAlN粒子の長軸および短軸の平均値を算出し、これをAlN粒子の平均粒径とすることができる。上記顕微鏡像に現れたAlN結晶がすべてAlNウィスカーであった場合、任意に30点のAlNウィスカーを選択することにより、これらAlNウィスカーの短軸(後述する繊維径)の平均値を算出し、これをAlN粒子の平均粒径とみなすことができる。
<窒化アルミニウムウィスカー(AlNウィスカー)>
AlN焼結体は、上述のとおりAlNウィスカーを含む。AlNウィスカーは、AlN焼結体の断面において7.2面積%以上12面積%以下含まれる。さらにAlNウィスカーは、AlN焼結体の断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である。AlNウィスカーは、上記断面において9.5面積%以上12面積%以下含まれることが好ましい。AlNウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上6.5μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.5以上5.1以下であることが好ましい。
AlN焼結体は、上述のとおりAlNウィスカーを含む。AlNウィスカーは、AlN焼結体の断面において7.2面積%以上12面積%以下含まれる。さらにAlNウィスカーは、AlN焼結体の断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である。AlNウィスカーは、上記断面において9.5面積%以上12面積%以下含まれることが好ましい。AlNウィスカーは、上記断面において平均繊維径が5μm以上6.5μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.5以上5.1以下であることが好ましい。
「AlNウィスカー」は一般に、AlNの結晶表面からその外側に向け、髭のように細長く結晶成長することにより形成される繊維状のAlN結晶(単結晶)をいう。本明細書では後述するように、AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率(面積%)を求める測定方法において、顕微鏡像に現れたAlN結晶のうち、そのアスペクト比が2以上となるAlN結晶をAlNウィスカーとみなして上記AlNウィスカーの断面における含有率(面積%)を算出している。AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーのアスペクト比は、顕微鏡像に現れたAlNウィスカーにおいて、その最大長さを長軸とし、この長軸に対して垂直な方向における最大長さを短軸とした場合における「長軸」/「短軸」の式に基づいて算出される数値で表わされる。さらに本明細書において、上記アスペクト比が2以上であるAlN結晶粒(AlNウィスカー)において、上記長軸は「AlNウィスカーの長さ」と定義され、上記短軸は「AlNウィスカーの繊維径」と定義される。
ここでAlN焼結体は、上述のようにAlNウィスカーをAlN焼結体の断面において7.2面積%以上12面積%以下含む。この場合において、図1に示すAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率(面積%)と、AlN焼結体中のAlNウィスカーの含有率(体積%)との相関関係を示すグラフによれば、AlN焼結体中のAlNウィスカー含有率(体積%)は、57体積%以上93体積%以下であると読み取れる。このようなAlN焼結体は、その全体にAlNウィスカーが分布するため、亀裂が生じた際にその進展が抑制されることにより優れた強度を有することができる。AlN焼結体の優れた強度は、AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率が9.5面積%以上12面積%以下である場合に顕著に現れる。
AlN焼結体は、その断面におけるAlNウィスカーの含有率が7.2面積%未満となる場合、強度の向上が不十分となる恐れがある。AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率の上限は、特に制限すべきではないが、良好な焼結性を得る観点から、12面積%とすることができる。
さらにAlNウィスカーは、上述のように上記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である。この場合において、図2に示すAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均アスペクト比と、AlN焼結体中のAlNウィスカーの平均アスペクト比との相関関係を示すグラフによれば、AlN焼結体中のAlNウィスカーの平均アスペクト比は、7.2以上12.0以下であると読み取れる。このような平均アスペクト比を示すAlN焼結体は、焼結時にAlNウィスカーによって緻密化が阻害されることがなく、かつ亀裂の進展が抑制されることとなる。このため、AlN焼結体の緻密化が容易であると同時に亀裂が生じた際に、その進展が抑制されることにより、優れた強度を有することができる。AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径は、5.0μm以上6.5μm以下であることが好ましい。さらにAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均アスペクト比は、4.5以上5.1以下であることが好ましい。
AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径が5μm未満である場合、亀裂が生じた際にその進展が抑制されにくく、かつ亀裂の迂回が不十分となる傾向があるため、AlN焼結体の強度が低下する恐れがある。さらに、AlN焼結体の焼結性も悪くなる恐れがある。AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均アスペクト比が4.1未満となる場合も、亀裂が生じた際にその進展が抑制されにくく、かつ亀裂の迂回が不十分となる傾向があり、もってAlN焼結体の強度の向上が不十分となる恐れがある。
一方、AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径が8μmを超える場合、AlNウィスカーのサイズが過大となることによって周囲の粒子(AlN粒子およびAlNウィスカー)との間に空隙が発生するため、緻密化が著しく阻害される恐れがある。さらにAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均アスペクト比が5.1を超える場合も、AlNウィスカーのサイズが過大となることによって周囲の粒子との間に空隙が発生するため、緻密化が著しく阻害される恐れがある。
ここで図1および図2に示す相関関係のグラフは、極座標の概念を用いることにより得ることができる。すなわち一のAlNウィスカーに関し、そのパラメータとしてr(原点からAlNウィスカーの先端までの距離)、θ(XY平面上での角度)、およびφ(Z軸に平行な面に対する角度)を規定する。次に、これらのパラメータに基づいてXY平面上での断面形状を求めることにより、上述した一のAlNウィスカーの断面(XY平面)における長軸および短軸、ならびにアスペクト比を得ることができる。上記一のAlNウィスカーは、完全な非配向性を有することを前提とする。
上述した一のAlNウィスカーの関係は、AlN焼結体中のAlNウィスカーと、AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーとの関係に相当する。したがって、この関係から得られる長軸および短軸、ならびにアスペクト比に統計的な処理を加えることにより、図2に示す相関関係のグラフを得ることができる。さらに、上述の関係をAlN焼結体の単位体積(たとえば1mm3)に存在するAlNウィスカーと、AlN焼結体の単位面積(断面、たとえば1mm2)に存在するAlNウィスカーとの関係に当てはめる。次いで、この関係に基づいてAlN焼結体中のAlNウィスカーの含有率(体積%)と、AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率(面積%)とを得ることにより、図1に示す相関関係のグラフを得ることができる。
(AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径、平均アスペクト比および含有率(面積%))
本実施形態において、電子顕微鏡による顕微鏡観察に基づいたAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径、平均アスペクト比および含有量(面積%)の測定方法および算出方法は、次のとおりである。
本実施形態において、電子顕微鏡による顕微鏡観察に基づいたAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径、平均アスペクト比および含有量(面積%)の測定方法および算出方法は、次のとおりである。
まず後述の方法によりAlN焼結体を得る。このAlN焼結体に対しクロスセクションポリッシャ(商品名:「SM−09010」、日本電子株式会社製)を用いることにより、AlN焼結体の断面を得る。このAlN焼結体の断面に対し、走査型電子顕微鏡(SEM、商品名:「JSM−7800」、日本電子株式会社製)を用いて500倍の倍率で、任意の箇所を重複がないように撮影することにより40枚(40視野)の顕微鏡像を得る。
次に、上記顕微鏡像に現れたAlN焼結体におけるすべてのAlN結晶(AlN粒子およびAlNウィスカー)に対し、その結晶の面(上記顕微鏡像に現れたAlN結晶の断面)における最大長さを長軸とし、上記長軸に対して垂直な方向における最大長さを短軸とし、それぞれの値を求める。この場合において上記長軸または上記短軸の長さが短く測定が困難である場合、観察位置および倍率の変更を適宜行なうことにより、それぞれの値を求めることが好ましい。これらの値を「長軸」/「短軸」の式に代入し、もってAlN結晶のアスペクト比を求めることができる。このアスペクト比が2以上であったAlN結晶をAlNウィスカーとみなす。
さらに、上記顕微鏡像1枚(1視野)につき3個のAlNウィスカーを任意に選択し、合計120個のAlNウィスカーの短軸(AlNウィスカーの繊維径)およびアスペクト比のデータを得るとともに、その平均値をそれぞれ求める。以上の方法により求めた繊維径の平均値を、AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径とすることができる。同様に、上述の方法により求めたアスペクト比の平均値を、AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均アスペクト比とすることができる。
AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率(面積%)については、まず上記のクロスセクションポリッシャを用いることにより得たAlN焼結体の断面に対し、上記走査型電子顕微鏡を用いて1000倍の倍率で、任意の箇所を重複がないように撮影することにより、10枚(10視野)の顕微鏡像を得る。この10枚(10視野)の顕微鏡像に対して画像処理ソフト(商品名:「粒子解析」、日鉄住金テクノロジー株式会社製)を用いた二値化処理を行なう。これにより合計10枚(10視野)のAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカー部分の面積をそれぞれ測定し、個々のAlN焼結体の断面の総面積に占めるAlNウィスカーの面積(すなわち含有率(面積%))を算出するとともに、その平均値を求める。これにより求めた平均値を、AlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率(面積%)とすることができる。
<窒化アルミニウム焼結体の相対密度>
AlN焼結体は、相対密度が99%以上である。この相対密度は、99.2%以上であることが好ましい。AlN焼結体の相対密度の上限値は、理想値としての100%である。
AlN焼結体は、相対密度が99%以上である。この相対密度は、99.2%以上であることが好ましい。AlN焼結体の相対密度の上限値は、理想値としての100%である。
相対密度は、その物質の真質量に対する実際の質量の百分率を意味する。AlN焼結体の相対密度の算出方法は、次のとおりである。まずJIS R 1634(1998)に規定されたアルキメデス法を用いることにより、AlN焼結体の見かけ密度を算出する。次いで、AlN焼結体に含まれるAlNの理論密度(3.26g/cm3)、および焼結助剤(たとえばY2O3:5.01g/cm3))の理論密度に基づいて、AlN焼結体の理論密度を算出する。最後に、AlN焼結体の見かけ密度をAlN焼結体の理論密度で除算することにより、AlN焼結体の相対密度を求めることができる。
<焼結助剤>
AlN焼結体は、AlN粒子およびAlNウィスカーに加え、焼結助剤を含むことが好ましい。これによりAlN粒子およびAlNウィスカーを含んだ焼結前の成形体を緻密化することを通じ、AlN焼結体の強度をさらに向上させることができる。焼結助剤としては、第2族元素、第3族元素および第13族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物、窒化物、フッ化物であることが好ましい。
AlN焼結体は、AlN粒子およびAlNウィスカーに加え、焼結助剤を含むことが好ましい。これによりAlN粒子およびAlNウィスカーを含んだ焼結前の成形体を緻密化することを通じ、AlN焼結体の強度をさらに向上させることができる。焼結助剤としては、第2族元素、第3族元素および第13族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素の酸化物、窒化物、フッ化物であることが好ましい。
たとえば第2族元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)などが好適に挙げられる。第3族元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などの希土類元素が好適に挙げられる。第13族元素としては、アルミニウム(Al)などが好適に挙げられる。この中で焼結助剤としては、Y2O3、Al5Y3O12(YAG)、AlYO3(YAL)、Al4Y2O9(YAM)などのイットリウム酸化物が好ましい。
焼結助剤の含有量は、特に制限すべきではないが、AlN焼結体の密度および純度を考慮すれば、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。AlN焼結体中の焼結助剤の種類およびその含有量は、ICP質量分析装置(商品名:「ICMS−2030」、株式会社島津製作所製)により測定することができる。
≪窒化アルミニウム焼結体の製造方法≫
本実施形態に係るAlN焼結体の製造方法は、AlNウィスカーを準備し、AlN粒子からなるAlN粉末と混合することにより原料粉を得る工程(第1工程)と、上記原料粉から原料スラリーを作製し、次いで原料スラリーを成形することにより窒化アルミニウム成形体(以下、「AlN成形体」とも記す)を得る工程(第2工程)と、AlN成形体を焼結することによりAlN焼結体を得る工程(第3工程)とを含むことが好ましい。
本実施形態に係るAlN焼結体の製造方法は、AlNウィスカーを準備し、AlN粒子からなるAlN粉末と混合することにより原料粉を得る工程(第1工程)と、上記原料粉から原料スラリーを作製し、次いで原料スラリーを成形することにより窒化アルミニウム成形体(以下、「AlN成形体」とも記す)を得る工程(第2工程)と、AlN成形体を焼結することによりAlN焼結体を得る工程(第3工程)とを含むことが好ましい。
<第1工程>
第1工程は、AlNウィスカーを準備し、AlN粒子からなるAlN粉末と混合することにより原料粉を得る工程である。
第1工程は、AlNウィスカーを準備し、AlN粒子からなるAlN粉末と混合することにより原料粉を得る工程である。
まずAlNウィスカーを準備する。AlNウィスカーは、金属アルミニウム粉末を原料とし、髭のように細長く成長した繊維状のAlNを従来公知の方法を用いて作製するとともに、これを粉砕し、次いで分級することにより得ることができる。具体的には、まず金属アルミニウム粉末をプレス成形することによりアルミニウム成形体を製造した後、このアルミニウム成形体を、酸化アルミニウムおよびモリブデンからなる反応容器内へ投入する。次に、窒素および水素を導入することにより反応容器内をN2−H2雰囲気とした上で、所定の温度および時間で窒化反応を起こすことにより窒化アルミニウム生成物(以下、「AlN生成物」とも記す)を得る。
さらに、このAlN生成物を成形することにより成形体とし、次いで顕微鏡観察およびX線回折を行なうことにより、この成形体が、髭のように細長く成長した繊維状のAlNウィスカーの前駆体(以下、「AlNウィスカー前駆体」とも記す)で構成されていることを確認する。その後、このAlNウィスカー前駆体に対して乾式のボールミルを用いて粉砕するとともに、分級処理を行なうことによりAlNウィスカーを得る。その後、このAlNウィスカーに対して顕微鏡観察を行ない、平均繊維径が5〜8μmであって、かつ平均アスペクト比が5〜10であることを確認する。以上により、AlNウィスカーを準備することができる。
次に上記AlNウィスカーを、AlN粒子からなるAlN粉末と混合することにより原料粉を得る。これにより、原料粉を準備することができる。
<第2工程>
第2工程は、原料粉から原料スラリーを作製し、次いで原料スラリーを成形することによりAlN成形体を得る工程である。まず上記原料粉に対し、焼結助剤、バインダー、分散剤、溶媒などを混合することにより原料スラリーを得る。原料スラリーは、ボールミルによる混合、超音波による混合などの従来公知の方法により得ることができる。
第2工程は、原料粉から原料スラリーを作製し、次いで原料スラリーを成形することによりAlN成形体を得る工程である。まず上記原料粉に対し、焼結助剤、バインダー、分散剤、溶媒などを混合することにより原料スラリーを得る。原料スラリーは、ボールミルによる混合、超音波による混合などの従来公知の方法により得ることができる。
さらに原料スラリーから、たとえばスプレードライ法により顆粒を作製し、次いでこの顆粒をプレス成形することによりAlN成形体を得ることができる。AlN成形体は、たとえばドクターブレード法、押出し成形および鋳込み成形などの成形方法を用いることによって得ることができる。
ここで原料スラリーを得るのに用いるバインダーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル樹脂などを挙げることができる。バインダーの含有量は、特に制限すべきではないが、たとえばプレス成形であれば原料スラリーに対して、1質量%以上5質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上3質量%以下とすることがより好ましい。
原料スラリーを作製するのに用いる分散剤は、特に制限すべきではないが、高分子型分散剤であることが好ましい。たとえば、ポリカルボン酸系分散剤、ポリエチレングリコールなどを用いることが好適である。原料スラリーを作製するのに用いる溶媒は、特に制限すべきではないが、有機溶媒であることが好ましい。たとえば有機溶媒としてエタノール、メタノール、ヘキサンなどを用いることが好適である。
第2工程では、原料スラリーを成形することにより得たAlN成形体に対し、第3工程に進む前に脱脂を行なうことが好ましい。脱脂は、従来公知の方法を用いて行なうことができる。たとえば大気雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気またはこれらの組み合わせの雰囲気中で、成形体を加熱することによって脱脂することができる。特に、不活性ガス雰囲気で脱脂することが、AlN焼結体の熱伝導率が低下することを防止することができるので好ましい。
脱脂の加熱温度は、500℃以上1000℃未満であることが好ましい。500℃未満の温度で脱脂すると、バインダーを十分に除去することができないため、脱脂後の焼結において焼結性が悪化する傾向がある。1000℃以上の温度で脱脂すると、AlN焼結体の熱伝導率が低下する傾向がある。
<第3工程>
第3工程は、AlN成形体を焼結することによりAlN焼結体を得る工程である。具体的には、上述のように脱脂をしたAlN成形体に対し、非酸化性雰囲気で焼結を行なうことが好ましい。具体的には、窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、1600〜2000℃の温度で熱処理することにより上記AlN成形体を焼結する。1600℃未満の温度で焼結すると、不十分な焼結となって緻密な焼結体が得られない傾向がある。2000℃を超える温度で焼結すると、AlNが分解する傾向がある。焼結の時間は、AlN成形体の大きさ、組成、温度などによって異なるが、たとえば2〜10時間とすることができる。
第3工程は、AlN成形体を焼結することによりAlN焼結体を得る工程である。具体的には、上述のように脱脂をしたAlN成形体に対し、非酸化性雰囲気で焼結を行なうことが好ましい。具体的には、窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、1600〜2000℃の温度で熱処理することにより上記AlN成形体を焼結する。1600℃未満の温度で焼結すると、不十分な焼結となって緻密な焼結体が得られない傾向がある。2000℃を超える温度で焼結すると、AlNが分解する傾向がある。焼結の時間は、AlN成形体の大きさ、組成、温度などによって異なるが、たとえば2〜10時間とすることができる。
焼結は、常圧焼結法、加圧焼結法のいずれを用いて行なってもよいが、緻密な焼結体を得るために加圧焼結法を用いることが好ましい。加圧焼結法としてホットプレス(HP)、熱間静水圧焼結法(HIP)などが挙げられる。加圧焼結法は、AlN結晶同士およびAlN結晶と焼結助剤との間の粒子間距離が小さくなるので、焼結が促進される。
以上により、相対密度が99%以上であり、かつAlN焼結体の断面においてAlNウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含むAlN焼結体を作製することができる。このAlN焼結体に含まれるAlNウィスカーは、上述のとおりAlN焼結体の断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である。AlN焼結体は、高強度で、かつ焼結性が良いという特性を併せ持つことができる。
以下、実施例を挙げて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
≪実施例1≫
<第1工程>
(原料粉の準備)
まず、原料粉を準備するためAlNウィスカーを次の要領で得た。すなわち平均粒径が10μmの金属アルミニウム粉末(商品名:「TFH−A10P」、東洋アルミニウム株式会社製)をプレス成形することにより、厚さ1mmの箔状アルミニウム成形体を得た。次いで、この箔状アルミニウム成形体をグラファイトボードに載置した上で、酸化アルミニウムおよびモリブデンからなる反応容器内に設置した。さらに反応容器内を高純度窒素ガス(グレード:G1、大陽日酸株式会社製)および高純度水素ガス(グレード:G1、大陽日酸株式会社製)を導入することにより窒素が5体積%となるN2−H2混合雰囲気とした。その後、上記反応容器において1500℃および4時間の条件で窒化反応を起こすことにより、AlN生成物を得た。
<第1工程>
(原料粉の準備)
まず、原料粉を準備するためAlNウィスカーを次の要領で得た。すなわち平均粒径が10μmの金属アルミニウム粉末(商品名:「TFH−A10P」、東洋アルミニウム株式会社製)をプレス成形することにより、厚さ1mmの箔状アルミニウム成形体を得た。次いで、この箔状アルミニウム成形体をグラファイトボードに載置した上で、酸化アルミニウムおよびモリブデンからなる反応容器内に設置した。さらに反応容器内を高純度窒素ガス(グレード:G1、大陽日酸株式会社製)および高純度水素ガス(グレード:G1、大陽日酸株式会社製)を導入することにより窒素が5体積%となるN2−H2混合雰囲気とした。その後、上記反応容器において1500℃および4時間の条件で窒化反応を起こすことにより、AlN生成物を得た。
次に、上記AlN生成物を回収し、10mm×10mm×1mmのサイズの成形体に成形した後、この成形体の走査型電子顕微鏡(商品名:「JSM−7800」、日本電子株式会社製)による観察、およびX線回折装置(商品名:「Ultima IV」、株式会社リガク製)を用いたX線回折を行なうことにより、上記成形体が髭のように細長く成長した繊維状のAlNウィスカー前駆体から構成されていることを確認した。
その後、上記AlNウィスカー前駆体を酸化アルミニウムのボールを用いた乾式のボールミルにより24時間粉砕するとともに、気流分級機(商品名:「クラッシール」、株式会社セイシン企業製)を用いて分級処理することにより、AlNウィスカーを得た。最後に、上記AlNウィスカーについて上記走査型電子顕微鏡を用いて500倍の倍率で重複が無いように撮影することにより10枚(10視野)の顕微鏡像を得た。この顕微鏡像10枚についてそれぞれ任意に20個(合計200個)のAlNウィスカーを選択した。この選択したAlNウィスカーに対し、観察位置および倍率の変更を適宜行なうことにより、長軸および短軸を測定するとともにそのアスペクト比を求めた。その結果、上記AlNウィスカーは、その平均繊維径が5〜8μmであって、平均アスペクト比が5〜10であることを確認した。
次に、上記AlNウィスカーを60質量%添加し、残部をAlN粒子からなる窒化アルミニウム粉末(Hグレード、株式会社トクヤマ製)として、これらを混合することにより原料粉を準備した。
<第2工程>
(原料スラリーの準備)
上記原料粉95質量%に対し、焼結助剤として5質量%のY2O3(商品名:「RU−P」、信越化学工業株式会社製)を加えて混合粉とし、この混合粉100質量%に対し、1質量%の比率で分散剤(商品名:「セルナE−503」、中京油脂株式会社製)、および2質量%の比率でバインダーとしてのポリビニルブチラール(商品名:「セルナSE604」、中京油脂株式会社製)をそれぞれ加え、エタノールを溶媒としてナイロン製のボールミルで20時間混合することにより、原料スラリーを得た。
(原料スラリーの準備)
上記原料粉95質量%に対し、焼結助剤として5質量%のY2O3(商品名:「RU−P」、信越化学工業株式会社製)を加えて混合粉とし、この混合粉100質量%に対し、1質量%の比率で分散剤(商品名:「セルナE−503」、中京油脂株式会社製)、および2質量%の比率でバインダーとしてのポリビニルブチラール(商品名:「セルナSE604」、中京油脂株式会社製)をそれぞれ加え、エタノールを溶媒としてナイロン製のボールミルで20時間混合することにより、原料スラリーを得た。
(成形体の作製)
上記原料スラリーを取り出して乾燥し、これを200kg/cm2の圧力で一軸成形機(商品名:「NT−200H/AF」、エヌピーエーシステム株式会社製)を用いて成形することにより60mm×5mm×5mmのサイズの成形体を得た。この成形体に対し、窒素雰囲気中で600℃、5時間の条件で加熱することにより脱脂した。
上記原料スラリーを取り出して乾燥し、これを200kg/cm2の圧力で一軸成形機(商品名:「NT−200H/AF」、エヌピーエーシステム株式会社製)を用いて成形することにより60mm×5mm×5mmのサイズの成形体を得た。この成形体に対し、窒素雰囲気中で600℃、5時間の条件で加熱することにより脱脂した。
<第3工程>
(AlN焼結体の作製)
上記の脱脂した成形体を、内壁を窒化ホウ素(BN)で被覆したカーボン製の焼結用型に装着し、窒素雰囲気中で1気圧、1850℃、10時間の条件の下でホットプレス(HP)により焼結を行ない、その後冷却した。これにより実施例1のAlN焼結体を得た。
(AlN焼結体の作製)
上記の脱脂した成形体を、内壁を窒化ホウ素(BN)で被覆したカーボン製の焼結用型に装着し、窒素雰囲気中で1気圧、1850℃、10時間の条件の下でホットプレス(HP)により焼結を行ない、その後冷却した。これにより実施例1のAlN焼結体を得た。
≪実施例2≫
第1工程において、AlNウィスカーを80質量%添加し、残部を上記窒化アルミニウム粉末とし、これらを混合することにより原料粉を準備し、それ以外についてはすべて実施例1と同じとすることにより実施例2のAlN焼結体を得た。
第1工程において、AlNウィスカーを80質量%添加し、残部を上記窒化アルミニウム粉末とし、これらを混合することにより原料粉を準備し、それ以外についてはすべて実施例1と同じとすることにより実施例2のAlN焼結体を得た。
≪実施例3≫
第1工程において、AlNウィスカーを100質量%とすることにより原料粉を準備し、それ以外についてはすべて実施例1と同じとすることにより実施例3のAlN焼結体を得た。
第1工程において、AlNウィスカーを100質量%とすることにより原料粉を準備し、それ以外についてはすべて実施例1と同じとすることにより実施例3のAlN焼結体を得た。
≪比較例1≫
第1工程において、AlNウィスカーを40質量%添加し、残部を上記窒化アルミニウム粉末とし、これらを混合することにより原料粉を準備し、それ以外についてはすべて実施例1と同じとすることにより比較例1のAlN焼結体を得た。
第1工程において、AlNウィスカーを40質量%添加し、残部を上記窒化アルミニウム粉末とし、これらを混合することにより原料粉を準備し、それ以外についてはすべて実施例1と同じとすることにより比較例1のAlN焼結体を得た。
≪比較例2≫
第1工程において、AlNウィスカーを作製するのに酸化アルミニウムのボールを用いたボールミルによる粉砕、および分級処理をいずれも行なわず、AlN生成物の平均繊維径および平均アスペクト比の測定のみを実施した。具体的には、上述したAlN生成物から10mm×10mm×1mmのサイズの成形体を5個作製し、それぞれの成形体に対して500倍の倍率で上記走査型顕微鏡を用いて観察した。これにより、5つの顕微鏡像からそれぞれ任意に20個(合計100個)の繊維状のAlN結晶を選択した。この選択したAlN結晶に対し、観察位置および倍率の変更を適宜行なうことにより、長軸および短軸を測定するとともにそのアスペクト比を求めた。その結果、上記AlN結晶は、いずれも繊維径が1〜20μmであり、アスペクト比が50〜1000であった。それ以外については、すべて実施例1と同じとすることにより比較例2のAlN焼結体を得た。
第1工程において、AlNウィスカーを作製するのに酸化アルミニウムのボールを用いたボールミルによる粉砕、および分級処理をいずれも行なわず、AlN生成物の平均繊維径および平均アスペクト比の測定のみを実施した。具体的には、上述したAlN生成物から10mm×10mm×1mmのサイズの成形体を5個作製し、それぞれの成形体に対して500倍の倍率で上記走査型顕微鏡を用いて観察した。これにより、5つの顕微鏡像からそれぞれ任意に20個(合計100個)の繊維状のAlN結晶を選択した。この選択したAlN結晶に対し、観察位置および倍率の変更を適宜行なうことにより、長軸および短軸を測定するとともにそのアスペクト比を求めた。その結果、上記AlN結晶は、いずれも繊維径が1〜20μmであり、アスペクト比が50〜1000であった。それ以外については、すべて実施例1と同じとすることにより比較例2のAlN焼結体を得た。
≪比較例3≫
第1工程において、AlNウィスカー前駆体を得た後、これを酸化アルミニウムのボールを用いた乾式のボールミルにより96時間粉砕するとともに、気流分級機(商品名:「クラッシール」、株式会社セイシン企業製)を用いて長軸が20〜30μmとなるように処理することにより、AlNウィスカーを得た。このAlNウィスカーに対して実施例1と同様に顕微鏡観察を行なったところ、上記AlNウィスカーは、その平均繊維径が5〜8μmであって、かつ平均アスペクト比が3〜4であることを確認した。それ以外についてはすべて実施例1と同じとすることにより比較例3のAlN焼結体を得た。
第1工程において、AlNウィスカー前駆体を得た後、これを酸化アルミニウムのボールを用いた乾式のボールミルにより96時間粉砕するとともに、気流分級機(商品名:「クラッシール」、株式会社セイシン企業製)を用いて長軸が20〜30μmとなるように処理することにより、AlNウィスカーを得た。このAlNウィスカーに対して実施例1と同様に顕微鏡観察を行なったところ、上記AlNウィスカーは、その平均繊維径が5〜8μmであって、かつ平均アスペクト比が3〜4であることを確認した。それ以外についてはすべて実施例1と同じとすることにより比較例3のAlN焼結体を得た。
≪評価≫
上記実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3のAlN焼結体に対し、上述した測定方法に沿って走査型電子顕微鏡による観察、および画像処理ソフトによる二値化処理を行なった。これにより、各実施例および比較例のAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径および平均アスペクト比を求めた。さらに各実施例および比較例のAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率(面積%)を求めた。さらに上述した方法を用いて各実施例および比較例のAlN焼結体の相対密度についても算出した。これらの結果を表1に示す。
上記実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3のAlN焼結体に対し、上述した測定方法に沿って走査型電子顕微鏡による観察、および画像処理ソフトによる二値化処理を行なった。これにより、各実施例および比較例のAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの平均繊維径および平均アスペクト比を求めた。さらに各実施例および比較例のAlN焼結体の断面におけるAlNウィスカーの含有率(面積%)を求めた。さらに上述した方法を用いて各実施例および比較例のAlN焼結体の相対密度についても算出した。これらの結果を表1に示す。
次に実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3のAlN焼結体から、長さ40mm、幅4mm、厚み3mmとなるサイズの試験片(実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例3の試験片)をそれぞれ作製した。この試験片に対し、JIS R 1601(2008)に沿ってクロスヘッド速度0.5mm/分、スパン30mmの条件の下で曲げ強度測定(3点曲げ強度)を行なった。その結果についても表1に示す。上記曲げ強度測定は、その測定された数値が大きい程、高強度であることを示す。
≪考察≫
表1によれば、実施例1〜実施例3のAlN焼結体は、比較例1〜比較例3のAlN焼結体に比べ、3点曲げ強度で優れた値を示し、高強度であることが分かった。実施例1〜実施例3のAlN焼結体は、相対密度が99%以上であり、かつAlN焼結体の断面においてAlNウィスカーを7.2〜12面積%含んでいた。さらに実施例1〜実施例3のAlN焼結体は、AlN焼結体の断面においてAlNウィスカーの平均繊維径が5〜8μmであり、かつ平均アスペクト比が4.1〜5.1であった。一方、比較例1〜比較例3のAlN焼結体は、AlN焼結体の断面においてAlNウィスカーを7.2〜12面積%含む点、AlNウィスカーの平均繊維径が5〜8μmである点、AlNウィスカーの平均アスペクト比が4.1〜5.1である点のうち、いずれかの点を満たさなかった。
表1によれば、実施例1〜実施例3のAlN焼結体は、比較例1〜比較例3のAlN焼結体に比べ、3点曲げ強度で優れた値を示し、高強度であることが分かった。実施例1〜実施例3のAlN焼結体は、相対密度が99%以上であり、かつAlN焼結体の断面においてAlNウィスカーを7.2〜12面積%含んでいた。さらに実施例1〜実施例3のAlN焼結体は、AlN焼結体の断面においてAlNウィスカーの平均繊維径が5〜8μmであり、かつ平均アスペクト比が4.1〜5.1であった。一方、比較例1〜比較例3のAlN焼結体は、AlN焼結体の断面においてAlNウィスカーを7.2〜12面積%含む点、AlNウィスカーの平均繊維径が5〜8μmである点、AlNウィスカーの平均アスペクト比が4.1〜5.1である点のうち、いずれかの点を満たさなかった。
特に、実施例2〜実施例3のAlN焼結体は、AlN焼結体の断面においてAlNウィスカーを9.5〜12面積%含み、3点曲げ強度で非常に優れた値を示した。実施例1〜実施例3のAlN焼結体は、相対密度が99%以上であることから緻密であり、焼結性が良いことも理解される。図1によれば、実施例1〜実施例3のAlN焼結体におけるAlNウィスカーの含有率(体積%)は、その順に57体積%、70体積%、93体積%であると読み取れる。このようなAlN焼結体は、その全体にAlNウィスカーが分布するため、亀裂が生じた際にその進展が抑制されることにより、優れた強度を有することができると考えられる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
Claims (5)
- 窒化アルミニウム粒子および窒化アルミニウムウィスカーを含む窒化アルミニウム焼結体であって、
前記窒化アルミニウム焼結体は、相対密度が99%以上であり、かつ前記窒化アルミニウム焼結体の断面において前記窒化アルミニウムウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含み、
前記窒化アルミニウムウィスカーは、前記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である、窒化アルミニウム焼結体。 - 前記窒化アルミニウム焼結体は、前記断面において前記窒化アルミニウムウィスカーを9.5面積%以上12面積%以下含み、
前記窒化アルミニウムウィスカーは、前記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である、請求項1に記載の窒化アルミニウム焼結体。 - 前記窒化アルミニウム焼結体は、前記断面において前記窒化アルミニウムウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含み、
前記窒化アルミニウムウィスカーは、前記断面において平均繊維径が5μm以上6.5μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.1以上5.1以下である、請求項1に記載の窒化アルミニウム焼結体。 - 前記窒化アルミニウム焼結体は、前記断面において前記窒化アルミニウムウィスカーを7.2面積%以上12面積%以下含み、
前記窒化アルミニウムウィスカーは、前記断面において平均繊維径が5μm以上8μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.5以上5.1以下である、請求項1に記載の窒化アルミニウム焼結体。 - 前記窒化アルミニウム焼結体は、前記断面において前記窒化アルミニウムウィスカーを9.5面積%以上12面積%以下含み、
前記窒化アルミニウムウィスカーは、前記断面において平均繊維径が5μm以上6.5μm以下であり、かつ平均アスペクト比が4.5以上5.1以下である、請求項1に記載の窒化アルミニウム焼結体。
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JP2022032638A (ja) * | 2020-08-13 | 2022-02-25 | 古河電子株式会社 | 窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法 |
-
2018
- 2018-05-23 JP JP2018098546A patent/JP2019202910A/ja active Pending
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