JP2019194445A - 排気浄化システム - Google Patents

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賢吾 古川
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Abstract

【課題】燃費の悪化およびNOx触媒の熱劣化を抑制しつつ、被毒したNOx触媒の再生が可能な排気浄化システムを提供する。【解決手段】NOx触媒21は、エンジン10の排気通路12に設けられる。炭化水素供給部31は、NOx触媒21に炭化水素を供給する。触媒状態取得部41は、NOx触媒21の状態を取得する。炭化水素状態制御部42は、触媒状態取得部41により取得したNOx触媒21の状態に基づき、炭素数および基種が所定のものになるよう、炭化水素供給部31からNOx触媒21に供給される炭化水素の状態を制御する。触媒再生部43は、炭化水素状態制御部42により状態を制御した炭化水素をNOx触媒21に供給することで、NOx触媒21の被毒量を低減しNOx触媒21を再生可能である。【選択図】図1

Description

本発明は、排気浄化システムに関する。
従来、排気に含まれるNOxを浄化するNOx触媒を備えた排気浄化システムが知られている。排気浄化システムでは、排気に含まれる硫黄等の被毒物質がNOx触媒に吸着し、NOx触媒が被毒することがある。NOx触媒が被毒すると、NOx触媒の性能が低下する。
特開2004−330077号公報
特許文献1の排気浄化システムでは、NOx触媒が高温かつ低酸素濃度のとき、NOx触媒に燃料(炭化水素)を供給することで、硫黄により被毒したNOx触媒の再生を図っている。しかしながら、特許文献1の排気浄化システムでは、NOx触媒を再生可能な温度条件および酸素濃度条件とするために、大量の燃料を内燃機関に供給し排気を高温かつ低酸素濃度にする必要がある。そのため、燃費が悪化するおそれがある。また、高温かつ低酸素濃度の条件においては、NOx触媒の熱劣化が進行するおそれもある。
本発明の目的は、燃費の悪化およびNOx触媒の熱劣化を抑制しつつ、被毒したNOx触媒の再生が可能な排気浄化システムを提供することにある。
本発明は、内燃機関(10)からの排気を浄化する排気浄化システム(1)であって、NOx触媒(21)と炭化水素供給部(31)と触媒状態取得部(41)と炭化水素状態制御部(25、26、42)と触媒再生部(43)とを備えている。NOx触媒は、内燃機関の排気通路(12)に設けられる。炭化水素供給部は、NOx触媒に炭化水素を供給する。触媒状態取得部は、NOx触媒の状態を取得する。炭化水素状態制御部は、触媒状態取得部により取得したNOx触媒の状態に基づき、炭素数および基種が所定のものになるよう、炭化水素供給部からNOx触媒に供給される炭化水素の状態を制御する。触媒再生部は、炭化水素状態制御部により状態を制御した炭化水素をNOx触媒に供給することで、NOx触媒の被毒量を低減しNOx触媒を再生可能である。
本発明では、NOx触媒の状態に応じて炭化水素の状態を制御、すなわち、改質し、改質した炭化水素をNOx触媒に供給することで、より低温かつ高酸素濃度の条件においてもNOx触媒の被毒を再生することができる。そのため、NOx触媒の被毒を再生するための条件として排気を高温かつ低酸素濃度にする必要がなく、燃費の悪化を抑制できる。また、低温かつ高酸素濃度の条件においてもNOx触媒を再生可能なため、NOx触媒の熱劣化を抑制することができる。
第1実施形態による排気浄化システムを示す模式図。 改質により生成される炭化水素等と温度および空燃比との関係を示す図。 第1実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理を示すフロー図。 炭化水素の供給によりNOx触媒の被毒を再生可能な領域について、NOx触媒における温度と酸素濃度との関係を示す図。 第2実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理を示すフロー図。 第2実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理で用いるマップを示す図。 第2実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理で重み付けをするときに用いるグラフを示す図。 第2実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理で用いるマップを示す図。 第2実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理で算出する改質度の算出の根拠を示すための図。 第2実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理で算出する改質度の算出の根拠を示すための図。 第3実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理を示すフロー図。 第3実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理で被毒係数を算出するときに用いるグラフを示す図。 NOx触媒に付着した炭化水素の量と、時間の経過に伴う硫黄酸化物の放出量との関係を示すグラフ。 第4実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理を示すフロー図。 (A)は第4実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理でS放出係数を算出するときに用いるグラフを示す図、(B)は第4実施形態による排気浄化システムのNOx触媒の再生に関する処理でS放出基準速度を算出するときに用いるグラフを示す図。 第5実施形態による排気浄化システムを示す模式図。 第6実施形態による排気浄化システムを示す模式図。 第7実施形態による排気浄化システムを示す模式図。
以下、本発明の複数の実施形態による排気浄化システムを図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位は、同一または同様の作用効果を奏する。
(第1実施形態)
第1実施形態による排気浄化システムを図1に示す。排気浄化システム1は、図示しない車両に設けられ、車両の内燃機関(以下、「エンジン」という)10から排出される排気を浄化するのに用いられる。
車両は、エンジン10、燃料タンク2、吸気通路11、排気通路12、新気通路14、燃料噴射弁30、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)40等を備えている。燃料タンク2には、燃料としての軽油が貯留されている。燃料噴射弁30は、エンジン10に設けられている。燃料噴射弁30は、燃料タンク2に貯留された軽油をエンジン10の燃焼室に噴射供給する。すなわち、本実施形態では、エンジン10は、ディーゼルエンジンである。
吸気通路11は、一端が大気に開放され、他端がエンジン10に接続するよう設けられている。吸気通路11は、吸気をエンジン10に導く。排気通路12は、一端がエンジン10に接続し、他端が大気に開放されている。排気通路12は、エンジン10の燃焼室で燃料が燃焼することで生じた排気をエンジン10から大気側へ導く。
吸気通路11には、図示しないスロットルバルブが設けられている。スロットルバルブは、吸気通路11を開閉し、吸気通路11を流れる吸気の量、すなわち、吸気量を制御可能である。
ECU40は、演算手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAM、EEPROM、入出力手段としてのI/O等を有する小型のコンピュータである。ECU40は、車両の各部に設けられた各種センサからの信号等の情報に基づき、ROM等に格納されたプログラムに従い演算を実行し、車両の各種装置および機器の作動を制御する。このように、ECU40は、非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行する。このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。
ECU40は、各種センサからの信号等の情報に基づき、スロットルバルブ、燃料噴射弁30等の作動を制御可能である。ECU40は、スロットルバルブの作動を制御することにより、エンジン10に供給される吸気の量を制御可能である。また、ECU40は、燃料噴射弁30の作動を制御することにより、エンジン10の燃焼室に噴射供給される燃料の量を制御可能である。
排気浄化システム1は、NOx触媒21、改質器25、ヒータ26、炭化水素供給部31、触媒状態取得部41、炭化水素状態制御部42、触媒再生部43、再生判断部44、流量センサ51、52、温度センサ61、62、63、濃度センサ71、72等を備えている。NOx触媒21は、排気通路12に設けられている。NOx触媒21は、例えばアルミナ等からなる担体、および、担体に担持された金属触媒を有している。例えば金属触媒は、Ag2O(酸化銀)が挙げられる。金属触媒は、微粒粉の状態で担体の表面に設けられている。NOx触媒21は、排気通路12を流れる排気に含まれるNOx(窒素酸化物)を還元し浄化可能である。
新気通路14は、一端が図示しない供給部に接続し、他端が排気通路12に接続している。ここで、上記供給部は、ポンプ等の加圧により大気側から新気通路14に新気を導入する。また、新気通路14の他端は、NOx触媒21の上流側に位置している。そのため、新気通路14の一端から流入した新気は、新気通路14を流れ、排気通路12で排気と合流し、NOx触媒21に流入する。
炭化水素供給部31は、新気通路14に設けられている。炭化水素供給部31は、燃料タンク2に貯留された燃料(燃料HC)、すなわち、炭化水素(HC)を新気通路14に噴射し、下流のNOx触媒21に供給可能である。
炭化水素供給部31からNOx触媒21に供給された炭化水素は、還元剤として働き、NOx触媒21によるNOxの浄化作用を促進する。ECU40は、炭化水素供給部31の作動を制御することにより、NOx触媒21に供給される炭化水素の量を制御可能である。
改質器25は、新気通路14に設けられている。改質器25は、図示しない改質触媒を有している。ヒータ26は、改質器25に設けられている。ヒータ26は、改質器25を加熱可能である。ECU40は、ヒータ26の作動を制御可能である。炭化水素供給部31は、新気通路14において改質器25に対し新気流れの上流側に設けられている。そのため、炭化水素供給部31から噴射された炭化水素(HC)は、改質器25に流入する。
炭化水素供給部31から噴射された炭化水素が、ヒータ26により加熱された改質器25を通過すると、還元剤としての炭化水素は、アルデヒド、アルコール、エーテル等に改質される。すなわち、炭化水素は、改質器25により、炭素数および基種が所定のものになるよう状態が制御される。改質器25により改質された炭化水素をNOx触媒21に供給することにより、NOx触媒21の性能を向上することができる。ECU40は、炭化水素供給部31およびヒータ26の作動を制御することにより、NOx触媒21に供給する改質された炭化水素の量および種類等を調整することができる。
なお、HC(炭化水素)スリップが多い場合、ヒータ26により改質器25の温度を制御したり、炭化水素供給部31からの炭化水素の噴射量を調節して空燃比を制御したりすることで、改質器25の状態をアルデヒド等が生成され易い条件にすることができる(図2参照)。また、制御性を上げるため、新気通路14の炭化水素供給部31に対し新気流れの上流側に、新気の流量を絞るバルブ等を設け、当該バルブ等により、改質器25に流入する新気の流量や流速を制御してもよい。
NOx触媒21の初期状態においては、触媒のサイトには、物質が吸着しておらず空の状態である。NOx触媒21による排気の浄化が開始され、所定期間経過すると、触媒のサイトには、硫黄(S)や硫黄酸化物(SOx)といった硫黄系化合物、リン(P)、鉄(Fe)およびマグネシウム(Mg)等のオイルや部品由来の金属分等、ならびに、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、酸素(O2)および水(H2O)等、触媒に吸着することにより被毒を生じさせる物質である被毒物質が吸着した状態となる。NOx触媒21の被毒後、触媒のサイトが炭化水素やその他の物質により埋まることで、NOx触媒21の性能が大きく低下する。なお、改質器25により改質された炭化水素をNOx触媒21に供給することにより、NOx触媒21の被毒量を低減しNOx触媒21を再生、すなわち、NOx触媒21の性能を回復できる。また、NOx触媒21は、高温かつ低酸素濃度の環境下に長期間置かれること等により熱劣化することがある。NOx触媒21は、熱劣化によっても性能が低下する。以下、硫黄(S)によりNOx触媒21が被毒することを、適宜、「S被毒」という。
図1に示すように、触媒状態取得部41、炭化水素状態制御部42、触媒再生部43、再生判断部44は、機能部としてECU40に設けられている。ここで、ECU40が実行する機能の一部または全部(機能部)を、1つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。つまり、ECU40が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組み合わせによって提供することができる。
流量センサ51は、吸気通路11に設けられている。流量センサ51は、エンジン10に吸入される吸気の流量を検出可能である。流量センサ52は、新気通路14において改質器25に対し新気流れの上流側に設けられている。流量センサ52は、改質器25に流入する新気の流量を検出可能である。流量センサ51、52は、検出した流量に対応する信号をECU40に伝送する。
温度センサ61は、排気通路12においてNOx触媒21に対し排気流れの上流側に設けられている。温度センサ61は、NOx触媒21に流入する排気および新気の温度を検出可能である。温度センサ62は、新気通路14において改質器25に対し新気流れの上流側に設けられている。温度センサ62は、改質器25に流入する新気の温度を検出可能である。温度センサ63は、新気通路14において改質器25に対し新気流れの下流側に設けられている。温度センサ63は、改質器25から流出した新気の温度を検出可能である。温度センサ61、62、63は、検出した温度に対応する信号をECU40に伝送する。
濃度センサ71は、排気通路12においてエンジン10に対し排気流れの下流側に設けられている。濃度センサ71は、エンジン10から排出された排気の酸素濃度を検出可能である。濃度センサ72は、新気通路14において改質器25に対し新気流れの上流側に設けられている。濃度センサ72は、改質器25に流入する新気の酸素濃度を検出可能である。濃度センサ71、72は、検出した酸素濃度に対応する信号をECU40に伝送する。
触媒状態取得部41は、NOx触媒21の状態を取得可能である。具体的には、触媒状態取得部41は、温度センサ61から伝送された信号に基づき、NOx触媒21の状態のうち温度を取得する。また、触媒状態取得部41は、濃度センサ71、72から伝送された信号に基づき、NOx触媒21の状態のうち酸素濃度を取得する。また、触媒状態取得部41は、NOx触媒21への硫黄(S)の被毒の量であるS被毒量を取得する。なお、S被毒量は、例えばエンジン10の運転状態等に基づき推定した積算値であり、エンジン10の運転中、所定のタイミングでECU40の記憶手段に記憶される。
炭化水素状態制御部42は、触媒状態取得部41により取得したNOx触媒21の状態に基づき、炭素数および基種が所定のものになるよう、炭化水素供給部31からNOx触媒21に供給される炭化水素の状態を制御する。具体的には、炭化水素状態制御部42は、改質器25のヒータ26等の作動を制御し、炭化水素供給部31から噴射されて改質器25に流入した炭化水素を、炭素数および基種が所定のもの、例えばアルデヒド、アルコール、エーテル等、基としてH、CだけでなくO(酸素)を含む分子構造をもつもの(以下、適宜、「含酸素炭化水素」または「含酸素HC」という)を含む高活性炭化水素等に改質する。ここで、炭化水素状態制御部42、改質器25およびヒータ26は、「炭化水素状態制御部」に対応する。
触媒再生部43は、炭化水素状態制御部42により状態を制御した炭化水素をNOx触媒21に供給することで、NOx触媒21の被毒量(S被毒量)を低減しNOx触媒21を再生可能である。
再生判断部44は、触媒状態取得部41により取得したNOx触媒21の状態、および、炭化水素状態制御部の状態に基づき、触媒再生部43によるNOx触媒21の再生の実施または不実施を判断する。
次に、本実施形態のECU40によるNOx触媒21の再生に関する処理について、図3に基づき説明する。図3に示す一連の処理S100は、例えば車両のイグニッションキーがオンされECU40が起動すると、実行される。処理S100は、NOx触媒21の被毒量を低減しNOx触媒21の性能を回復、すなわち、NOx触媒21を再生する被毒再生制御に関する処理である。
S101では、ECU40は、NOx触媒21の状態を取得する。具体的には、ECU40は、温度センサ61、濃度センサ71、72から伝送された信号に基づき、NOx触媒21の状態として、温度、酸素濃度を取得する。また、ECU40は、NOx触媒21の状態として、NOx触媒21への硫黄(S)の被毒の量であるS被毒量を取得する。S101の後、処理はS102へ移行する。
S102では、ECU40は、S被毒量が所定値以下か否かを判断する。ECU40は、S101で取得したS被毒量が所定値以下であると判断した場合(S102:YES)、一連の処理S100を終了する。一方、S101で取得したS被毒量は所定値以下でないと判断した場合(S102:NO)、処理はS103へ移行する。
S103では、ECU40は、現在の改質器25により改質される炭化水素の改質の度合である改質度合(炭化水素状態制御部の状態)を取得する。ここで、改質度合としては、改質器25における改質により生成される含酸素炭化水素の割合や量等が該当する。S103の後、処理はS104へ移行する。
S104では、ECU40は、S101で取得したNOx触媒21の状態とS103で取得した改質度合とのマッチングを行う。具体的には、ECU40は、S101で取得したNOx触媒21の状態において、S103で取得した改質度合の炭化水素でNOx触媒21を再生可能か否か判断する。ECU40は、S101で取得したNOx触媒21の状態において、S103で取得した改質度合の炭化水素でNOx触媒21を再生可能であると判断した場合(S104:YES)、処理はS105へ移行する。一方、S101で取得したNOx触媒21の状態において、S103で取得した改質度合の炭化水素でNOx触媒21を再生可能でないと判断した場合(S104:NO)、処理はS111へ移行する。
S111では、ECU40は、S被毒量が上限値以上か否かを判断する。ECU40は、S101で取得したS被毒量が上限値以上であると判断した場合(S111:YES)、処理はS112へ移行する。一方、S101で取得したS被毒量は上限値以上でないと判断した場合(S111:NO)、ECU40は、一連の処理S100を終了する。
S112では、ECU40は、NOx触媒21の状態と改質度合とを強制的にマッチングさせるようヒータ26、炭化水素供給部31、燃料噴射弁30等の作動を制御する。すなわち、ECU40は、改質器25により改質した炭化水素によってNOx触媒21を、強制的に再生可能な状態とするために、ヒータ26、炭化水素供給部31、燃料噴射弁30等の作動を制御する。
具体的には、ECU40は、改質器25側の状態の制御として、ヒータ26により改質器25の温度を上げたり、炭化水素供給部31から噴射する炭化水素の添加頻度を増大させて改質器25に流入する新気における炭化水素の濃度を薄めたりすることで改質器25における炭化水素の改質反応の速度を高める。これにより、改質器25で生成される含酸素炭化水素の量を増大させ、NOx触媒21を再生可能な状態にする。あるいは、ECU40は、NOx触媒21側の状態の制御として、燃料噴射弁30から噴射する燃料の量を通常運転時よりも増大させ、エンジン10から排出される排気の温度を上げるとともに酸素濃度を低下させ、NOx触媒21の状態を、改質した炭化水素により再生可能な状態にする。
なお、新気通路14の炭化水素供給部31に対し新気流れの上流側に、新気の流量を絞るバルブ等を設けた場合、当該バルブ等で新気の流量を絞ることにより、改質器25に流入する新気の流量を低減させ、改質器25における炭化水素の改質反応のための時間を確保することができる。また、改質器25に流入する新気における酸素の濃度を高めることで、改質器25における炭化水素の改質反応の速度を高めることができる。S112の後、処理はS105へ移行する。
S105では、ECU40は、改質した炭化水素のNOx触媒21への供給制御を実施する。具体的には、ECU40は、ヒータ26の作動を制御するとともに炭化水素供給部31から炭化水素を噴射することで、改質器25において炭化水素を改質し、改質した炭化水素をNOx触媒21に供給する。これにより、NOx触媒21の被毒量(S被毒量)が低減しNOx触媒21が再生される。S105の後、ECU40は、一連の処理S100を終了する。
ECU40は、S102でYESと判断した後、S111でNOと判断した後、または、S105の後、一連の処理S100を終了し、その後、再び処理S100を開始する。このように、処理S100は、ECU40の起動中、繰り返し実行される処理である。
上述のように、ECU40は、S101で触媒状態取得部41として機能し、NOx触媒21の温度、酸素濃度、S被毒量等、NOx触媒21の状態を取得する。また、ECU40は、S105、112で炭化水素状態制御部42として機能し、取得したNOx触媒21の状態に基づき、炭素数および基種が所定のものになるよう、炭化水素供給部31からNOx触媒21に供給される炭化水素の状態を制御する。また、ECU40は、S105で触媒再生部43として機能し、状態を制御した炭化水素をNOx触媒21に供給することで、NOx触媒21の被毒量(S被毒量)を低減しNOx触媒21を再生する。また、ECU40は、S102、103、104、111で再生判断部44として機能し、取得したNOx触媒21の状態、および、炭化水素状態制御部の状態(改質度合)に基づき、触媒再生部43によるNOx触媒21の再生の実施または不実施を判断する。
次に、本実施形態の奏する効果について、図4に基づき説明する。図4は、炭化水素の供給によりNOx触媒21のS被毒を再生可能な領域について、NOx触媒21における温度と酸素濃度との関係を示す図である。本実施形態では、NOx触媒21の状態に基づき、炭素数および基種が所定のものになるよう、炭化水素供給部31からNOx触媒21に供給される炭化水素の状態を制御することにより、NOx触媒21のS被毒を再生可能な領域を、「状態を制御していない炭化水素(燃料HC)によりS被毒の再生が可能な領域R1」から、より低温または高酸素濃度の領域である領域R2、R3に拡大できる。これにより、車両の走行条件に近い領域、または、走行条件に含まれる領域において、NOx触媒21のS被毒を再生することができる。したがって、より低温、高酸素濃度の条件でもNOx触媒21のS被毒を再生でき、高温、低酸素濃度にするための排気状態変更に伴う燃費の悪化を抑制できる。また、HC(炭化水素)スリップによる燃費の悪化も抑制できる。さらに、NOx触媒21のS被毒を再生するにあたり、NOx触媒21の状態を、高温、低酸素濃度の熱劣化領域にする必要がないため、NOx触媒21の熱劣化を抑制できる。なお、上記特許文献1(特開2004−330077号公報)の排気浄化システムでは、「状態を制御していない炭化水素(燃料HC)によりS被毒の再生が可能な領域R1」でNOx触媒のS被毒を再生するため、燃費の悪化やNOx触媒の熱劣化が懸念される。
また、図4に示すように、同じ走行条件Cond1でも、実走行ではそこに至る過程で改質器25の状態、つまり、改質度合が変化する。そのため、NOx触媒21の状態と改質度合とのマッチングを正確に判断できれば、再生時間を確保でき、燃費を低減できる。
以上説明したように、<1>本実施形態は、エンジン10からの排気を浄化する排気浄化システム1であって、NOx触媒21と炭化水素供給部31と触媒状態取得部41と炭化水素状態制御部42と触媒再生部43とを備えている。NOx触媒21は、エンジン10の排気通路12に設けられる。炭化水素供給部31は、NOx触媒21に炭化水素を供給する。触媒状態取得部41は、NOx触媒21の状態を取得する。炭化水素状態制御部42は、触媒状態取得部41により取得したNOx触媒21の状態に基づき、炭素数および基種が所定のものになるよう、炭化水素供給部31からNOx触媒21に供給される炭化水素の状態を制御する。触媒再生部43は、炭化水素状態制御部42により状態を制御した炭化水素をNOx触媒21に供給することで、NOx触媒21の被毒量を低減しNOx触媒21を再生可能である。
本実施形態では、NOx触媒21の状態に応じて炭化水素の状態を制御、すなわち、改質し、改質した炭化水素をNOx触媒21に供給することで、より低温かつ高酸素濃度の条件においてもNOx触媒21の被毒を再生することができる。そのため、NOx触媒21の被毒を再生するための条件として排気を高温かつ低酸素濃度にする必要がなく、燃費の悪化を抑制できる。また、低温かつ高酸素濃度の条件においてもNOx触媒21を再生可能なため、NOx触媒21の熱劣化を抑制することができる。
また、<4>本実施形態は、再生判断部44をさらに備えている。再生判断部44は、触媒状態取得部41により取得したNOx触媒21の状態、および、炭化水素状態制御部としての改質器25の状態に基づき、触媒再生部43によるNOx触媒21の再生の実施または不実施を判断する。これにより、過渡等、改質器25の応答性が許す範囲でS被毒の再生を最大限行うことができ、燃費悪化を抑制できるとともに、NOx触媒21の性能を維持できる。
また、本実施形態では、ホットスタート、コールドスタート、運転パターン等で、同じNOx触媒21の条件下でも改質器25の状態に差が出る、つまり、改質による生成物質に差が出る条件を作り、同じNOx触媒21の条件下でもS被毒再生の有無で差が生じるか確認することにより、対象製品が本発明の技術的範囲に含まれるかを判定できる。
また、低負荷等のS被毒再生が確実にできない条件で長時間運転することでS被毒を進め、強制再生(強制マッチング制御)が行われる際に、再生のために改質により含酸素炭化水素を生成しているか確認することにより、対象製品が本発明の技術的範囲に含まれるかを判定できる。
(第2実施形態)
第2実施形態による排気浄化システムについて、図5〜8に基づき説明する。第2実施形態は、物理的な構成は第1実施形態と同様である。
以下、本実施形態のECU40によるNOx触媒21の再生に関する処理について、図5に基づき説明する。図5に示す一連の処理S200は、例えば車両のイグニッションキーがオンされECU40が起動すると、実行される。処理S200は、処理S100と同様、NOx触媒21を再生する被毒再生制御に関する処理である。
S201では、ECU40は、NOx触媒21の状態を取得する。具体的な処理は、S101と同様のため、説明を省略する。S201の後、処理はS202へ移行する。
S202では、ECU40は、S被毒量が所定値以下か否かを判断する。ECU40は、S201で取得したS被毒量が所定値以下であると判断した場合(S202:YES)、一連の処理S200を終了する。一方、S201で取得したS被毒量は所定値以下でないと判断した場合(S202:NO)、処理はS203へ移行する。
S203では、ECU40は、改質器25すなわち「炭化水素状態制御部」の状態を取得する。具体的には、ECU40は、温度センサ62、濃度センサ72から伝送された信号に基づき、改質器25の状態として、温度、酸素濃度を取得する。また、ECU40は、現在の改質器25の制御範囲を取得する。ここで、現在の改質器25の制御範囲とは、現在の改質器25のヒータ26や、炭化水素供給部31からの炭化水素の噴射パターン等で制御可能な範囲である。S203の後、処理はS204へ移行する。
S204では、ECU40は、現在の改質器25により改質される炭化水素の改質の度合に対応する改質度Cx(炭化水素状態制御部の状態)を算出する。具体的には、ECU40は、下記式1により、改質度Cxを算出する。
Cx=A1*[HC1]+A2*[HC2]+・・・+An*[HCn] ・・・式1
式1における[HC1]〜[HCn]は、改質器25で生成される各種の炭化水素の量に対応している。[HC1]〜[HCn]は、例えば、改質器25の条件毎に記憶されているマップ(図6参照)に基づき算出される。当該マップは、各条件における、炭化水素の基種分子構造(直鎖パラフィン、側鎖パラフィン、ナフテン、アロマ、オレフィン、アルデヒド等)毎の炭素数に応じた生成量(成分比率)を表すものである。
式1におけるA1〜Anは、改質器25で生成される各種の炭化水素の重み付けに関する値である。A1〜Anは、例えば、図7に示すように、ナフテンやアルデヒド等、基として酸素を含む炭化水素である含酸素炭化水素、および、アロマやオレフィン等、基として酸素を含まない炭化水素である非含酸素炭化水素毎に、NOx触媒21における酸素濃度に応じて設定される値である。ここで、含酸素炭化水素の場合、NOx触媒21における酸素濃度に関わらず重みAxは一定である。一方、非含酸素炭化水素の場合、NOx触媒21における酸素濃度が低いほど、重みAxは小さい。また、含酸素炭化水素の重みAxは、非含酸素炭化水素の重みAxより大きい。なお、ここで参照するNOx触媒21における酸素濃度は、S201で取得したNOx触媒21の酸素濃度を用いる。S204の後、処理はS205へ移行する。
S205では、ECU40は、S204で算出した改質度Cxが基準値Cnnより大きいか否か判断(マッチング)する。具体的には、ECU40は、図8に示すマップに基づき基準値Cnnを求め、改質度Cxと比較する。図8に示すように、基準値Cnnは、NOx触媒21の温度と酸素濃度との関係毎に記憶されている。つまり、ECU40は、現在のNOx触媒21の状態で十分な効率で被毒の再生が可能な条件があるかマップにより判定する。ここで、基準値Cnnは、酸素濃度が低いほど、温度が高いほど、値が小さくなるよう設定されている。
ECU40は、S201で取得したNOx触媒21の温度、酸素濃度とマップ(図8参照)とから基準値Cnnを算出し、S204で算出した改質度Cxが基準値Cnnより大きいと判断した場合(S205:YES)、処理はS206へ移行する。一方、S204で算出した改質度Cxは基準値Cnnより大きくないと判断した場合(S205:NO)、処理はS211へ移行する。
S206では、ECU40は、改質器25の状態を制御する。具体的には、ECU40は、NOx触媒21の被毒を再生可能と判断される条件の中で最もエネルギ消費の少ない条件(改質時の温度、酸素濃度)に、ヒータ26の設定、および、炭化水素供給部31の噴射パターンの設定を合わせることで、改質器25による生成物(改質された炭化水素)を制御する。S206の後、処理はS207へ移行する。
S211では、ECU40は、S被毒量が所定の上限値以上か否かを判断する。ECU40は、S201で取得したS被毒量が上限値以上であると判断した場合(S211:YES)、処理はS212へ移行する。一方、S201で取得したS被毒量は上限値以上でないと判断した場合(S211:NO)、ECU40は、一連の処理S200を終了する。
S212では、ECU40は、NOx触媒21の状態(基準値Cnn)と改質度Cxとを強制的にマッチングさせるようヒータ26、炭化水素供給部31、燃料噴射弁30等の作動を制御する。すなわち、ECU40は、改質器25により改質した炭化水素によってNOx触媒21を、強制的に再生可能な状態とするため、つまり、強制的に改質度Cx>基準値Cnnとなる条件になるよう、ヒータ26、炭化水素供給部31、燃料噴射弁30等の作動を制御する。具体的な処理は、S112と同様のため、説明を省略する。なお、改質器25側の状態を制御することで、改質度Cxを大きくすることができる。また、NOx触媒21側の状態を制御することで、基準値Cnnを小さくすることができる。S212の後、処理はS207へ移行する。
S207では、ECU40は、改質した炭化水素のNOx触媒21への供給制御を実施する。具体的な処理は、S105と同様のため、説明を省略する。S207の後、ECU40は、一連の処理S200を終了する。
ECU40は、S202でYESと判断した後、S211でNOと判断した後、または、S207の後、一連の処理S200を終了し、その後、再び処理S200を開始する。このように、処理S200は、ECU40の起動中、繰り返し実行される処理である。
上述のように、ECU40は、S201で触媒状態取得部41として機能し、NOx触媒21の温度、酸素濃度、S被毒量等、NOx触媒21の状態を取得する。また、ECU40は、S206、207、212で炭化水素状態制御部42として機能し、取得したNOx触媒21の状態に基づき、炭素数および基種が所定のものになるよう、炭化水素供給部31からNOx触媒21に供給される炭化水素の状態を制御する。また、ECU40は、S207で触媒再生部43として機能し、状態を制御した炭化水素をNOx触媒21に供給することで、NOx触媒21の被毒量(S被毒量)を低減しNOx触媒21を再生する。また、ECU40は、S202〜205、211で再生判断部44として機能し、取得したNOx触媒21の状態、および、「炭化水素状態制御部」の状態(改質度Cx)に基づき、NOx触媒21の再生の実施または不実施を判断する。
次に、S204における改質度Cxの算出の根拠について、図9、10に基づき説明する。改質の目的である含酸素炭化水素のみ着目した場合、判断を誤り、必要のない昇温や炭化水素の増量により燃費が悪化するおそれがある。炭化水素の改質で含酸素炭化水素のみを生成することは難しい。そこで、本実施形態では、S204において、非含酸素炭化水素の寄与も正確に把握することにより、正確に制御することが可能である(図9参照)。
図10に示すように、従来の知見通り、含酸素炭化水素の場合、量が多いほど、NOx触媒21における酸素濃度が低いほど、NOx触媒21からのSOx放出速度が高く、S被毒の回復に優れることがわかる。一方、非含酸素炭化水素の場合、酸素がないとS被毒の再生反応が進まないため、NOx触媒21における酸素濃度が高い方がS被毒の回復に優れる領域が生じる。そこで、本実施形態では、S204において、炭化水素毎に重み付けを行い(図7参照)、NOx触媒21における酸素濃度が低いときほど、非含酸素炭化水素の効果が小さいことを表している。また、S205において、NOx触媒21が高温、低酸素濃度のときほど、要求改質度(基準値Cnn)を小さくすることで、従来の傾向を表している。
以上説明したように、<2>本実施形態では、炭化水素状態制御部42は、NOx触媒21が低温で高濃度の酸素に晒されているときほど、基として酸素を含む炭化水素である含酸素炭化水素の生成量が多くなるよう炭化水素の状態を制御する。これにより、S被毒の再生がより厳しい条件ほど、含酸素炭化水素の生成量を多くでき、SOxと反応する炭化水素の割合が高まるため、必要な炭化水素の量を削減できる。
また、<3>本実施形態では、炭化水素状態制御部42は、NOx触媒21が低温で高濃度の酸素に晒されているときほど、炭素数の大きい炭化水素の生成量が多くなるよう炭化水素の状態を制御する。これにより、反応性の高い高炭素数の炭化水素を優先的に生成し、S被毒の再生を促進することができる。
また、<5>本実施形態では、再生判断部44は、基として酸素を含む炭化水素である含酸素炭化水素を炭化水素状態制御部42によって多く生成できるときほど、より低温条件でNOx触媒21の再生を実施可能であると判断する。これにより、改質度が高いときほど、より低温で改質した炭化水素を供給し、NOx触媒21のS被毒の再生を効率的に実施できる。
また、<6>本実施形態では、再生判断部44は、基として酸素を含む炭化水素である含酸素炭化水素を炭化水素状態制御部42によって多く生成できるときほど、より広範囲な酸素条件でNOx触媒21の再生を実施可能であると判断する。これにより、改質度が高いときほど、より広範囲な酸素条件で改質した炭化水素を供給し、NOx触媒21のS被毒の再生を効率的に実施できる。
また、<7>本実施形態では、再生判断部44は、炭素数および官能基毎に重みを付けて炭化水素の現在の改質度を評価し(図6、7参照)、当該改質度が高いときほど、より低温、高酸素条件でNOx触媒21の再生を実施可能であると判断する。これにより、改質で生成される様々な物質を考慮することで、より高精度に判断することができる。
また、<8>本実施形態では、再生判断部44は、基として酸素を含む炭化水素である含酸素炭化水素ほど重みを付け(図7参照)、改質度を高く評価する。これにより、含酸素化した炭化水素の割合が高いほどS被毒の再生が進み易いことを加味し、高精度化できる。
また、<9>本実施形態では、再生判断部44は、基として酸素を含まない炭化水素である非含酸素炭化水素についてNOx触媒21の状態が低酸素濃度条件であるほど重みを軽くし(図7参照)、改質度を低く評価する。これにより、低酸素濃度条件ではオレフィン等の非含酸素炭化水素の反応は進み難く、S被毒を再生し難いことを加味し、高精度化できる。
(第3実施形態)
第3実施形態による排気浄化システムについて、図11、12に基づき説明する。第3実施形態は、物理的な構成は第1実施形態と同様である。
本実施形態のECU40によるNOx触媒21の再生に関する処理について、図11に基づき説明する。図11に示す一連の処理S300は、例えば車両のイグニッションキーがオンされECU40が起動すると、実行される。処理S300は、処理S200と同様、NOx触媒21を再生する被毒再生制御に関する処理である。
S301では、ECU40は、NOx触媒21の状態を取得する。具体的な処理は、S201と同様のため、説明を省略する。S301の後、処理はS302へ移行する。
S302では、ECU40は、改質器25すなわち「炭化水素状態制御部」の状態を取得する。具体的な処理は、S203と同様のため、説明を省略する。S302の後、処理はS303へ移行する。
S303では、ECU40は、現在の改質器25により改質される炭化水素の改質の度合に対応する改質度Cxを算出する。具体的な処理は、S204と同様のため、説明を省略する。S303の後、処理はS304へ移行する。
S304では、ECU40は、S303で算出した改質度Cxが基準値Cnn*被毒係数sより大きいか否か判断(マッチング)する。具体的には、ECU40は、図8に示すマップに基づき基準値Cnnを求め、図12に示す被毒係数sと掛け合わせ、改質度Cxと比較する。図12に示すように、被毒係数sは、S被毒量が多いほど、小さい。これは、S被毒の再生速度は、S被毒量が多いほど速い(短時間)ためである。このことは、NOx触媒21に硫黄(S)が多量に付着しているときほど、NOx触媒21からのSO2の放出量が多く、多量に脱離することを根拠とする(図13参照)。
ECU40は、S301で取得したNOx触媒21の温度、酸素濃度とマップ(図8参照)とから基準値Cnnを算出し、S303で算出した改質度Cxが基準値Cnn*被毒係数sより大きいと判断した場合(S304:YES)、処理はS305へ移行する。一方、S303で算出した改質度Cxは基準値Cnn*被毒係数sより大きくないと判断した場合(S304:NO)、ECU40は、一連の処理S300を終了する。
S305では、ECU40は、改質器25の状態を制御する。具体的な処理は、S206と同様のため、説明を省略する。S305の後、処理はS306へ移行する。
S306では、ECU40は、改質した炭化水素のNOx触媒21への供給制御を実施する。具体的な処理は、S207と同様のため、説明を省略する。S306の後、ECU40は、一連の処理S300を終了する。
ECU40は、S304でYESと判断した後、または、S306の後、一連の処理S300を終了し、その後、再び処理S300を開始する。このように、処理S300は、ECU40の起動中、繰り返し実行される処理である。
上述のように、ECU40は、S301で触媒状態取得部41として機能し、NOx触媒21の温度、酸素濃度、S被毒量等、NOx触媒21の状態を取得する。また、ECU40は、S305、306で炭化水素状態制御部42として機能し、取得したNOx触媒21の状態に基づき、炭素数および基種が所定のものになるよう、炭化水素供給部31からNOx触媒21に供給される炭化水素の状態を制御する。また、ECU40は、S306で触媒再生部43として機能し、状態を制御した炭化水素をNOx触媒21に供給することで、NOx触媒21の被毒量(S被毒量)を低減しNOx触媒21を再生する。また、ECU40は、S302〜304で再生判断部44として機能し、取得したNOx触媒21の状態、および、「炭化水素状態制御部」の状態(改質度Cx)に基づき、NOx触媒21の再生の実施または不実施を判断する。
以上説明したように、<11>本実施形態では、再生判断部44は、NOx触媒21の被毒量が多いときほど、より低温、高酸素条件でNOx触媒21の再生を実施可能であると判断する。S被毒量が多いほど、硫黄(S)が脱離し易いため、より硫黄脱離の機会を増加でき、よりNOx触媒21の浄化性能の維持が期待できる。
(第4実施形態)
第4実施形態による排気浄化システムについて、図14、15に基づき説明する。第4実施形態は、物理的な構成は第1実施形態と同様である。
本実施形態では、第2実施形態で示したS207、第3実施形態で示したS306における「改質した炭化水素のNOx触媒21への供給制御」に関し、図14に示す一連の処理S400を実行する。
S401では、ECU40は、S被毒再生の目標値と現在のS被毒量との差であるΔSを算出する。具体的には、ECU40は、S被毒再生の目標値とS201またはS301で取得したS被毒量との差からΔSを算出する。S401の後、処理はS402へ移行する。
S402では、ECU40は、最適な炭化水素(HC)の供給量yを算出する。具体的には、ECU40は、まず、S204またはS303で算出した改質度Cxと、横軸に改質度、縦軸にS放出係数をとるグラフのマップ(図15(A)参照)とから、S放出係数αを算出する。続いて、ECU40は、S201またはS301で取得したS被毒量と、横軸にS被毒量、縦軸にS放出基準速度をとるグラフのマップ(図15(B)参照)とから、S放出基準速度βを算出する。そして、ECU40は、S放出係数αとS放出基準速度βとの組み合わせ(掛け合わせ:αβ)を、NOx触媒21の再生の速度である再生速度として推定する。
ECU40は、S401で算出したS被毒量と推定した上記再生速度αβとに基づき、下記式2となる条件の中で、燃費、すなわち、y(供給量)*t(被毒再生の所要時間)が最低となるような供給量yを算出する。
ΔS<∫(αβ)dt ・・・式2
S402の後、処理はS403へ移行する。
S403では、ECU40は、ヒータ26の作動を制御するとともに、炭化水素供給部31からの炭化水素(HC)供給量を、S402で算出した供給量yに設定し、炭化水素供給部31から改質器25に炭化水素を供給する。S403の後、ECU40は、一連の処理S400を終了し、処理はS200またはS300へ戻る。
上述のように、ECU40は、S401〜403で触媒再生部43として機能し、取得したNOx触媒21の状態(S被毒量)、および、炭化水素状態制御部の状態(改質度Cx)に基づき、NOx触媒21の再生の速度である再生速度を推定(αβ)し、推定した再生速度に基づき、炭化水素供給部31からの炭化水素の供給量が最も少なくなるよう供給量を調整する。
以上説明したように、<12>本実施形態では、触媒再生部43は、触媒状態取得部41により取得したNOx触媒21の状態、および、「炭化水素状態制御部」の状態に基づき、NOx触媒21の再生の速度である再生速度を推定し、推定した再生速度に基づき、炭化水素供給部31からの炭化水素の供給量を調整する。これにより、炭化水素の供給量の増大によるS被毒の再生時間の短縮を加味し、供給量*供給時間が最も小さくなるよう制御することで燃費の悪化を抑制することができる。
(第5実施形態)
第5実施形態による排気浄化システムを図16に示す。第5実施形態は、物理的な構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、排気浄化システム1は、新気通路14、改質器25、ヒータ26、流量センサ52、温度センサ62、63、濃度センサ72を備えていない。炭化水素供給部31は、排気通路12においてNOx触媒21に対し排気流れの上流側に設けられている。
本実施形態では、改質器25を備えないものの、再生判断部44が判断に用いる改質度合または改質度Cxとして、改質していない炭化水素(燃料HC)のものを適用することにより、第1〜4実施形態と同様、ECU40による制御によって、NOx触媒21の状態に応じてNOx触媒21を再生可能である。
(第6実施形態)
第6実施形態による排気浄化システムを図17に示す。第6実施形態は、物理的な構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、排気浄化システム1は、新気通路14に代えて、改質通路13を備えている。改質通路13は、一端が排気通路12に接続し、他端が一端より下流において排気通路12に接続している。ここで、改質通路13の他端は、NOx触媒21の上流側に位置している。そのため、エンジン10から排出されて排気通路12を流れる排気は、一部が改質通路13の一端および他端を経由して再び排気通路12に流入し、NOx触媒21に流入する。
改質器25は、改質通路13に設けられている。炭化水素供給部31は、改質通路13において改質器25に対し排気流れの上流側に設けられている。ヒータ26は、改質器25に設けられている。
流量センサ52、温度センサ62、濃度センサ72は、改質通路13において炭化水素供給部31に対し排気流れの上流側に設けられている。温度センサ63は、改質通路13において改質器25に対し排気流れの下流側に設けられている。
本実施形態では、第1〜4実施形態と同様、ECU40による制御によって、NOx触媒21の状態に応じてNOx触媒21を再生可能である。
(第7実施形態)
第7実施形態による排気浄化システムを図18に示す。第7実施形態は、物理的な構成が第5実施形態と異なる。
本実施形態では、排気通路12において炭化水素供給部31に対し排気流れの下流側、かつ、NOx触媒21に対し排気流れの上流側に改質器25が設けられている。ヒータ26は、改質器25に設けられている。また、排気通路12において炭化水素供給部31に対し排気流れの上流側に流量センサ52、温度センサ62、濃度センサ72が設けられている。濃度センサ71は、排気通路12において改質器25に対し排気流れの下流側、かつ、NOx触媒21に対し排気流れの上流側に設けられている。
本実施形態では、第1〜4実施形態と同様、ECU40による制御によって、NOx触媒21の状態に応じてNOx触媒21を再生可能である。
(他の実施形態)
上述の第2実施形態では、S205において1つのマップ(図8参照)を用いて基準値Cnnを求める例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、S被毒量が多いほど、基準値Cnnを下げる等、S被毒量に対し複数のマップを用いることとしてもよい。また、S被毒量が多いほど、基準値Cnnを下げる等、S被毒量に応じて基準値Cnnを補正することとしてもよい。これにより、都度再生を効率よく行うことができ、NOx浄化と被毒再生とを適切に行うことができる。
また、本発明の他の実施形態では、排気通路12に電気ヒータ等を設け、NOx触媒21に供給する排気の温度を上げてもよい。
また、<10>本発明の他の実施形態では、再生判断部44は、炭素数の小さな炭化水素ほど重みを軽くし、改質度を低く評価することとしてもよい。これにより、CH4等の反応性の悪い物質については重みを軽くし、反応に寄与し難いことを表現することにより、高精度に判断できる。
また、上述の第3実施形態では、適時、S被毒の再生を行うため、S被毒量が上限値以上となることはほとんどないと考えられる。しかしながら、本発明の他の実施形態では、S被毒量が上限値以上となった場合の対応として、S304でNOと判断した場合、S212と同様の強制マッチング制御に関する処理を実行することとしてもよい。
また、<13>本発明の他の実施形態では、排気中の硫黄化合物の濃度を検出可能な濃度センサを排気通路12またはNOx触媒21に設けてもよい。触媒再生部43は、前記濃度センサにより検出した硫黄化合物の濃度に基づき、推定した再生速度が所望の値になるよう炭化水素供給部31からの炭化水素の供給量yを調整してもよい。これにより、S被毒量をより正確に制御し、NOx触媒21の性能の維持を高精度化できる。
また、上述の実施形態では、触媒としてAg2Oを担体に担持させる例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、例えばゼオライト等を担体として、白金等の活性金属を触媒として用いてもよい。
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
1 排気浄化システム、10 エンジン(内燃機関)、12 排気通路、21 NOx触媒、25 改質器(炭化水素状態制御部)、26 ヒータ(炭化水素状態制御部)、31 炭化水素供給部、41 触媒状態取得部、42 炭化水素状態制御部、43 触媒再生部

Claims (13)

  1. 内燃機関(10)からの排気を浄化する排気浄化システム(1)であって、
    前記内燃機関の排気通路(12)に設けられるNOx触媒(21)と、
    前記NOx触媒に炭化水素を供給する炭化水素供給部(31)と、
    前記NOx触媒の状態を取得する触媒状態取得部(41)と、
    前記触媒状態取得部により取得した前記NOx触媒の状態に基づき、炭素数および基種が所定のものになるよう、前記炭化水素供給部から前記NOx触媒に供給される炭化水素の状態を制御する炭化水素状態制御部(25、26、42)と、
    前記炭化水素状態制御部により状態を制御した炭化水素を前記NOx触媒に供給することで、前記NOx触媒の被毒量を低減し前記NOx触媒を再生可能な触媒再生部(43)と、
    を備える排気浄化システム。
  2. 前記炭化水素状態制御部は、前記NOx触媒が低温で高濃度の酸素に晒されているときほど、基として酸素を含む炭化水素である含酸素炭化水素の生成量が多くなるよう炭化水素の状態を制御する請求項1に記載の排気浄化システム。
  3. 前記炭化水素状態制御部は、前記NOx触媒が低温で高濃度の酸素に晒されているときほど、炭素数の大きい炭化水素の生成量が多くなるよう炭化水素の状態を制御する請求項1または2に記載の排気浄化システム。
  4. 前記触媒状態取得部により取得した前記NOx触媒の状態、および、前記炭化水素状態制御部の状態に基づき、前記触媒再生部による前記NOx触媒の再生の実施または不実施を判断する再生判断部(44)をさらに備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
  5. 前記再生判断部は、基として酸素を含む炭化水素である含酸素炭化水素を前記炭化水素状態制御部によって多く生成できるときほど、より低温条件で前記NOx触媒の再生を実施可能であると判断する請求項4に記載の排気浄化システム。
  6. 前記再生判断部は、基として酸素を含む炭化水素である含酸素炭化水素を前記炭化水素状態制御部によって多く生成できるときほど、より広範囲な酸素条件で前記NOx触媒の再生を実施可能であると判断する請求項4または5に記載の排気浄化システム。
  7. 前記再生判断部は、炭素数および官能基毎に重みを付けて炭化水素の現在の改質度を評価し、当該改質度が高いときほど、より低温、高酸素条件で前記NOx触媒の再生を実施可能であると判断する請求項4〜6のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
  8. 前記再生判断部は、基として酸素を含む炭化水素である含酸素炭化水素ほど重みを付け、改質度を高く評価する請求項7に記載の排気浄化システム。
  9. 前記再生判断部は、基として酸素を含まない炭化水素である非含酸素炭化水素について前記NOx触媒の状態が低酸素濃度条件であるほど重みを軽くし、前記改質度を低く評価する請求項7または8に記載の排気浄化システム。
  10. 前記再生判断部は、炭素数の小さな炭化水素ほど重みを軽くし、改質度を低く評価する請求項7〜9のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
  11. 前記再生判断部は、前記NOx触媒の被毒量が多いときほど、より低温、高酸素条件で前記NOx触媒の再生を実施可能であると判断する請求項4〜10のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
  12. 前記触媒再生部は、前記触媒状態取得部により取得した前記NOx触媒の状態、および、前記炭化水素状態制御部の状態に基づき、前記NOx触媒の再生の速度である再生速度を推定し、推定した前記再生速度に基づき、前記炭化水素供給部からの炭化水素の供給量を調整する請求項1〜11のいずれか一項に記載の排気浄化システム。
  13. 前記排気通路または前記NOx触媒に設けられ、排気中の硫黄化合物の濃度を検出可能な濃度センサをさらに備え、
    前記触媒再生部は、前記濃度センサにより検出した硫黄化合物の濃度に基づき、推定した前記再生速度が所望の値になるよう前記炭化水素供給部からの炭化水素の供給量を調整する請求項12に記載の排気浄化システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110935294A (zh) * 2019-12-28 2020-03-31 广州市绿河环保设备有限公司 一种VOCs废气处理系统

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