JP2019189009A - 構造物疲労強度推定方法及びシステム - Google Patents

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宗正 徳永
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Abstract

【課題】構造物の疲労強度を非破壊で推定することができるようにする。【解決手段】標準時刻表のデータ及び標準ランカーブのデータに基づいて所定の線区における所定の構造物の上を通過する列車編成による載荷が単線載荷又は複線載荷のいずれであるかを判定する工程と、前記標準ランカーブのデータから算出される前記構造物の上を通過する通過速度と、乗車率のデータとに基づいて前記構造物に加わる荷重列を作成する工程と、前記荷重列を有限要素法による解析に導入して前記構造物の動的応答を算出する工程と、前記構造物における着目要素の応力の応答波形をレインフロー法によって応力範囲に分解し、前記着目要素の時間依存疲労強度を評価する工程と、を含む。【選択図】図1

Description

本開示は、構造物疲労強度推定方法及びシステムに関するものである。
鉄道の構造物には古いものが多く、在来線では供用期間が100年を超えるものも多数存在する。また、新幹線においても、供用期間は50年を超え、現在もなお、高速化、増便を続けている。構造物は適切に維持管理されるならば、設計耐用年数を超えてもなお供用を続けることが可能である(例えば、非特許文献1参照。)。
鉄道総合技術研究所、「鉄道構造物等設計標準・同解説(コンクリート構造物)」、丸善、2004
しかしながら、供用期間中の疲労の累積は、予測・発見が難しく、既設構造物の疲労累積度を評価するためには、現状では鉄筋などの部材を取り出して疲労試験を行う等の方法のみであり、非破壊かつ定量的な評価手法の確立が望まれている。
固定ダイヤの設計図書に基づく条件で複線載荷が疲労強度に及ぼす影響を検討しているが、既設構造物の評価に適用することができるものではない。
鉄道分野においては、一定期間毎に更新される標準ダイヤに基づき、発車時刻、車両型式等が規定されており、特に近年の新幹線においては、乗車率等の記録もデータベースに残っている。これらの鉄道運行情報のビッグデータを活用することで、構造物が経験した荷重履歴をある程度の精度でモデル化することができる可能性がある。
ここでは、前記従来の技術の問題点を解決して、構造物の疲労強度を非破壊で推定することができる構造物疲労強度推定方法及びシステムを提供することを目的とする。
そのために、構造物疲労強度推定方法においては、標準時刻表のデータ及び標準ランカーブのデータに基づいて所定の線区における所定の構造物の上を通過する列車編成による載荷が単線載荷又は複線載荷のいずれであるかを判定する工程と、前記標準ランカーブのデータから算出される前記構造物の上を通過する通過速度と、乗車率のデータとに基づいて前記構造物に加わる荷重列を作成する工程と、前記荷重列を有限要素法による解析に導入して前記構造物の動的応答を算出する工程と、前記構造物における着目要素の応力の応答波形をレインフロー法によって応力範囲に分解し、前記着目要素の時間依存疲労強度を評価する工程と、を含む。
他の構造物疲労強度推定方法においては、さらに、前記構造物はPRC桁であり、前記着目要素は前記構造物の最下縁のPC鋼材である。
更に他の構造物疲労強度推定方法においては、さらに、前記構造物に加わる荷重列は、単線載荷時及び複線載荷時のそれぞれについて作成される。
更に他の構造物疲労強度推定方法においては、さらに、前記荷重列を作成する工程においては、上下線駅の発車時刻及び通過速度を乱数によってモデル化する。
構造物疲労強度推定システムにおいては、標準時刻表のデータ及び標準ランカーブのデータに基づいて所定の線区における所定の構造物の上を通過する列車編成による載荷が単線載荷又は複線載荷のいずれであるかを判定する判定部と、前記標準ランカーブのデータから算出される前記構造物の上を通過する通過速度と、乗車率のデータとに基づいて前記構造物に加わる荷重列を作成する荷重列作成部と、前記荷重列を有限要素法による解析に導入して前記構造物の動的応答を算出する応答算出部と、前記構造物における着目要素の応力の応答波形をレインフロー法によって応力範囲に分解し、前記着目要素の時間依存疲労強度を評価する評価部と、を含む。
本開示によれば、構造物の疲労強度を非破壊で推定することができる。
本実施の形態における構造物疲労強度推定システムの機能構成を示すブロック図である。 本実施の形態におけるランカーブとダイヤとの関係を示す図である。 本実施の形態における複線載荷の判定方法を示す図である。 本実施の形態における複線載荷時の荷重列による列車荷重のモデル化の概要を示す図である。 本実施の形態における有限要素法による動的解析の概要を示す図である。 本実施の形態における累積疲労損傷度の評価方法を示す図である。 本実施の形態における時間依存疲労強度の評価方法を示す図である。 本実施の形態における複線PRC桁の構造力学モデルを示す図である。 本実施の形態における鉛直ばねの骨格曲線の算出方法を示す図である。 本実施の形態における鉛直ばねの履歴モデルを示す図である。 本実施の形態における完全複線載荷の発生回数及び発生確率を示す図である。 本実施の形態におけるPC鋼材の疲労強度のシミュレーション結果を示す図である。
以下、本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本実施の形態における構造物疲労強度推定システムの機能構成を示すブロック図である。
図において、10は、本実施の形態における構造物疲労強度推定システムであって、構造物疲労強度推定方法を実行して、鉄道の構造物の疲労損傷度、特に新幹線実線区における鉄筋コンクリート製のPRC(Prestressed Reinforced Concrete)桁の着目要素の時間依存疲労強度や累積疲労損傷度を評価するために使用される一種のコンピュータシステムである。なお、前記構造物疲労強度推定システム10は、CPU、MPU等の演算装置、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶装置、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置、CRT、液晶ディスプレイ等の表示装置、通信インターフェイス等を備えるコンピュータ内に構築されたコンピュータシステムである。そして、前記コンピュータは、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバ、タブレットコンピュータ等であるが、記憶装置にインストールされたアプリケーションソフトウェア等のプログラムに従って動作するコンピュータであればいかなる種類のものであってもよく、また、単独のコンピュータであってもよいし、複数台のコンピュータをネットワークで通信可能に接続したコンピュータ群であってもよい。また、前記構造物疲労強度推定システム10は、インターネット、イントラネット、LAN、WAN等の図示されない通信回線網又は通信回線を介して、外部のデータベース等に通信可能に接続されたものであってもよい。
前記構造物疲労強度推定システム10は、シミュレーションシステムであって、数十万編成以上の数値シミュレーションを現実的な時間で実現することを念頭に置き、列車編成と構造物とを別々にモデル化し、それらの相互作用は考慮しないことを基本とするものである。そして、前記構造物疲労強度推定システム10は、機能の観点から、運行情報データベースとしての運行情報ビッグデータ21と、荷重列作成部としてのLOADモジュール11と、判定部としてのCROSSモジュール12と、応答算出部としてのRESPONSEモジュール13と、評価部としてのFATIGUEモジュール14と、第1乱数発生部としての通過速度ばらつき部22と、第2乱数発生部としての発車時刻ばらつき部23とを備える。また、前記運行情報ビッグデータ21は、運転曲線格納部としてのランカーブDB21aと、乗車率格納部としての乗車率DB21bと、時刻表格納部としての時刻表DB21cとを含んでいる。
前記ランカーブDB21aに格納されているランカーブ(運転曲線図)は、標準ランカーブである。また、前記乗車率DB21bには、列車運行において通常記録される乗車率が格納されている。さらに、前記時刻表DB21cには、一定期間毎に更新される発車時刻、到着時刻、車両型式等の情報が格納されている。そして、前記LOADモジュール11は、数値シミュレーションの対象となる構造物である対象構造物の上を通過する数値シミュレーションの対象となる列車の編成である対象列車編成を、実際の乗車率に基づく軸重を用いた荷重列によって、モデル化する。この際、前記LOADモジュール11に組み込まれたCROSSモジュール12は、対象列車編成が、単線載荷又は複線載荷のいずれとして対象構造物の上を通過するのかを判定する。また、前記RESPONSEモジュール13は、算出された荷重列を有限要素法による解析に導入して、構造物の動的応答を算出する(例えば、非特許文献2参照。)。この際、前記RESPONSEモジュール13は、通過毎の構造特性の変化、例えば、RC(鉄筋コンクリート)構造物のひび割れによる剛性軟化、基礎地盤やバラストの残留変位の累積等を記録して、次回の解析に反映する。さらに、前記FATIGUEモジュール14は、着目要素の応力の応答波形をレインフロー法によって応力範囲に分解し、時間依存疲労強度や累積疲労損傷度を評価することができる(例えば、非特許文献3及び4参照。)。
後藤恵一ら、「高速すれ違いを考慮した鉄道コンクリート構造物の疲労設計法」、土木学会論文集A2(応用力学)、Vol.68、No.2(応用力学論文集Vol.15)、I_741−I_750、2012 鉄道総合技術研究所、「鉄道構造物等維持管理標準・同解説(鋼・合成構造物)」、丸善、2007 小林裕介ら、「鋼橋の複線同時載荷確率を考慮した疲労照査法」、鉄道総研報告、Vol.23、No.5、pp.23−28、2009
次に、前記構成の構造物疲労強度推定システム10の動作について説明する。まず、前記CROSSモジュール12の動作について説明する。
図2は本実施の形態におけるランカーブとダイヤとの関係を示す図、図3は本実施の形態における複線載荷の判定方法を示す図である。なお、図2において、(a)は速度曲線を示す図、(b)は時間曲線を示す図である。
前記CROSSモジュール12は、対象列車編成に該当する標準時刻表及び標準ランカーブのデータを用いて、対象構造物上において、上下線の片方のみを列車が通過する単線載荷となるのか、又は、上下線の両方を列車が通過する複線載荷となるのかを判定する。なお、前記標準時刻表及び標準ランカーブのデータは、運行情報ビッグデータ21のランカーブDB21a及び時刻表DB21cから取得されたデータである。
図2は、ランカーブとダイヤとの関係を示している。対象構造物上における上下線通過の時刻差を評価するためには、列車運行シミュレーションが必要となる。通常、列車運行で用いられるランカーブにおいて、図2(a)に示されるような運転曲線を実際に作成する際には、対象線区の勾配、曲線、速度制限、編成車両等の条件と、車両性能に関係する引張力、列車抵抗、制動力等の関係を考慮して、位置sと速度vとの関係が設定される。一方、図2(b)に示されるようなダイヤでは、列車編成の走行する駅の発車時刻、到着時刻、通過時刻等が示されている。ダイヤは直線で示されているものの、実際には位置sと時間tとの関係は、駅付近において走行速度が落ちることから、時間曲線となる。位置sと時間tとの関係から時間曲線を求めると、次の式(1)のように表される。
前記式(1)からs−t関係を算出するには、ランカーブを微小区間に離散化して数値積分する必要がある。一例として、18420〔m〕の駅間を対象として、試行錯誤的に微小区間増分を小さくしていったところ、2〔m〕程度まで分割することによって、ランカーブ及びダイヤから算出される所要時間が概ね一致する結果となった。そこで、ここでは、微小区間増分Δsを2〔m〕とした場合について説明する。
図3は、複線載荷の判定方法を示している。具体的には、対象構造物の近傍の駅間におけるダイヤの概念を示している。1日の列車運行ダイヤを考えると、対象構造物上で複線載荷となる組み合わせは限られている。標準ダイヤの発車時刻及び到着時刻から、複線載荷となる可能性のある組み合わせに対してのみ、図2(b)に示されるような時間曲線を算出し、詳細な上下線の交差位置を算出する。算出された上下線の交差位置と対象構造物の位置との距離が探索範囲以内であれば、上下線の通過波形の重畳の影響があるものとして、複線載荷と判定する。例えば、列車速度が260〔km/h〕であるとすると、200〔m〕の編成列車が30〔m〕の橋梁を通過するのに要する時間は3秒程度であることから、共振による残留波形と発車時刻のばらつきとを考慮しても、15秒程度の時間差を見込んでおけば十分と考えられる。したがって、交差位置が遠い場合には実際にはほぼ単線載荷の状態となる可能性もあるが、ここでは、列車が260〔km/h〕で15秒走行する距離と概ね等しい30〔m〕を探索範囲として判定を行うものとする。
次に、前記LOADモジュール11の動作について説明する。
図4は本実施の形態における複線載荷時の荷重列による列車荷重のモデル化の概要を示す図である。
前記LOADモジュール11は、対象構造物上を通過する対象列車編成を、荷重列による列車荷重でモデル化するモジュールである。前記LOADモジュール11は、CROSSモジュール12で判定された単線載荷及び複線載荷のそれぞれに対し、乗車率DB21bから取得した実際の乗車率のデータに基づく軸重、及び、ランカーブDB21aから取得した標準ランカーブのデータによって算出される通過速度に基づいて、荷重列を作成する。この際、実測に基づき、上下線駅の発車時刻を標準偏差15秒及び30秒の正規分布による乱数によってモデル化し、列車通過速度を標準偏差15〔km/h〕の正規分布による乱数によってモデル化し、日々の運行のばらつきを考慮する。なお、新幹線の駅通過時の許容誤差は、一般的に、15秒程度である。
図4は、複線載荷時の荷重列による列車荷重のモデル化の概要を示している。輪重は、列車編成で使用される車両の空車重量に定員、単位質量70〔kg/人〕及び乗車率を考慮して算出される。前記CROSSモジュール12は、図1に示されるような発車時刻ばらつき部23から取得した正規分布による乱数を標準ダイヤに加えることによって、日々のばらつきを考慮に入れた上下線駅の発車時刻を得るようになっている。また、通過速度ばらつき部22から取得した正規分布による乱数を標準ランカーブから得られる列車速度に加えることによって、日々のばらつきを考慮に入れた列車の通過速度を得るようになっている。なお、列車速度は、乱数を加えることによってその数値が設計速度である260〔km/h〕を超えた場合には、260〔km/h〕となるように上限を設定した。
次に、前記RESPONSEモジュール13の動作について説明する。
図5は本実施の形態における有限要素法による動的解析の概要を示す図である。
前記RESPONSEモジュール13は、LOADモジュール11によって作成された荷重列を有限要素法(FEM)による解析に導入し、構造物の動的解析を実行するモジュールである。
本実施の形態における構造物疲労強度推定システム10は、米国のMathWorks社が開発した数値解析ソフトウェアであるMATLABに実装された図5に示されるような3次元有限要素法プログラムを用いている。したがって、梁要素、シェル要素等を用いて詳細な構造物モデルを構築することは可能であるが、システム全体として、RESPONSEモジュール13で要する実行時間の割合が大きく、数十万編成の列車通過を繰り返しシミュレーションするためには、再現すべき現象を必要十分に考慮することができるエッセンシャルモデルとして計算の高速化を図ることが望ましい。そこで、繰り返し計算の際、列車通過毎の構造特性の変化、例えば、RC構造物のひび割れによる剛性軟化、基礎地盤やバラストの残留変位の累積等、を記録して、次回の解析に反映する機能が導入されている。
数値計算では、運動方程式をNewmark−β法によって時間増分Δt単位毎に解いていく。ただし、運動方程式が非線形であることから、不釣合力が十分小さくなるまでΔt内において反復計算を行う。この際、数値解析速度を向上させるために、時間増分Δt内における収束回数をモニターし、Δtの大きさをプログラム内で自動的に調整する手法を用いる。なお、解析に用いるΔtは、1次固有周期の1/20秒を標準とする。
次に、前記FATIGUEモジュール14の動作について説明する。
図6は本実施の形態における累積疲労損傷度の評価方法を示す図、図7は本実施の形態における時間依存疲労強度の評価方法を示す図である。
鉄道構造物において、鋼材、接合部、鉄筋等の疲労の蓄積を評価するためには、供用開始から経験した個々の列車通過による応答波形を分析する必要がある。コンクリート構造物を設計する際、鉄筋の疲労照査に取り入れられている応力照査による体系(例えば、非特許文献1及び2参照。)は簡便であるが、既設構造物の疲労の累積の評価には適当でない。一方、鋼構造物の設計では、疲労限の照査を満足しなかった場合、繰り返し回数の影響を、累積疲労損傷度を用いて評価する体系(例えば、非特許文献3及び4参照。)となっている。
図6は、FATIGUEモジュール14による累積疲労損傷度の評価方法を示している。前記FATIGUEモジュール14は、各列車編成が通過した際に得られる着目要素の応力の応答波形を、レインフロー法によって、各応力範囲の独立波と繰り返し回数とに分解し、マイナー則を適用して、最大応力範囲Δσeqi と等価繰り返し回数neqi とを算出する。そして、全列車編成に対する最大応力範囲Δσeqi 及び等価繰り返し回数neqi を算出し、以下の式(2)によって累積疲労損傷度Dを算出する。
ここで、iは列車編成、neqi は各列車編成が通過したときの等価繰り返し回数、Ni はΔσeqi が一定振幅で繰り返されたときの疲労寿命、Δσeqi は各列車編成が通過したときの最大応力範囲である。
また、図7は、FATIGUEモジュール14による時間依存疲労強度の評価方法を示している。前記FATIGUEモジュール14は、各列車編成が通過した際に得られる着目要素の応力の応答波形を、レインフロー法によって、各応力範囲の独立波と繰り返し回数とに分解し、マイナー則を適用して、以下の式(3)によって、時間依存疲労強度fsrを算出する。
ここで、Neqは以下の式(4)で表され、fsuk はPC鋼材の引張強度(例えば、1900〔N/mm2 〕)、σ0 はPC鋼材の最小引張強度(例えば、1100〔N/mm2 〕)である。
次に、本実施の形態における構造物疲労強度推定システム10の具体的な動作例として、所定の線区内における所定の構造物を対象としてシミュレーションを行い、対象構造物の鉄筋、具体的には、PC鋼材の疲労強度を推定した例について説明する。
本実施の形態においては、供用約20年の既設新幹線の駅間18420〔m〕程度の線区をシミュレーションの対象となる対象線区とした。約20年の間に、455636編成の列車が前記対象線区を通過した。該対象線区を通過した列車は、1日当たり上下各30〜40本、8両又は12両編成、乗車率は5〜195〔%〕であり、通過速度は20〜260〔km/h〕であった。そして、標準設計が適用されたスパン(支間)29.2〔m〕の複線PRC桁(以下、単に「PRC桁」という。)であって、起点側の駅から9650〔m〕の地点に設置されているPRC桁を、PC鋼材の疲労強度を推定する対象構造物とした。該対象構造物は、桁長30.0〔m〕のポストテンション式単純T形4主桁(複線桁)のPRC桁が示されている。
次に、前記対象構造物の力学モデルについて説明する。
図8は本実施の形態における複線PRC桁の構造力学モデルを示す図、図9は本実施の形態における鉛直ばねの骨格曲線の算出方法を示す図、図10は本実施の形態における鉛直ばねの履歴モデルを示す図である。なお、図9において、(a)はファイバーモデルによる曲げM−曲率φ関係の算出方法を示す図、(b)はプッシュオーバーによる荷重P−変位δ関係の算出方法を示す図、(c)は鉛直ばねの骨格曲線を示す図である。
本実施の形態においては、対象構造物であるPRC桁の構造特性の変化等を評価するために必要十分なエッセンシャルモデルとして、図8に示されるような複線桁の低次の振動モードのみを考慮した構造力学モデルを採用する。該構造力学モデルは、桁の断面内の挙動を1質点2自由度モデルによる剛体モデルで一般化し、線路方向にモーダルリダクションを行い、上下線の挙動を鉛直方向と回転方向の2自由度とした構造系を備え、2本の鉛直ばねによって鉛直モードを表現し、回転ばねによってねじりモードを表現する。
質点の等価質量meqは、スパン29.2〔m〕、単位重量22.245〔t/m〕の条件から鉛直モードのモード質量を算出し、413.51〔t〕とした。質点の等価回転慣性Ieqは、断面より算出される回転慣性I0 /断面積A0 の値が10程度であるので、4135.1〔tm2 〕とした。
また、鉛直ばねは、初期剛性をk0 とする非線形履歴モデルとする。図9に示されるように、非線形モデルの骨格は、半断面を考慮したファイバーモデル解析によって断面の曲げM−曲率φ関係を算出し、梁理論に基づくプッシュオーバー解析によってスパン中央の荷重P−変位δを算出した。この荷重P−変位δは材料特性であって、RC部のコンクリートの圧縮強度及びヤング率を、それぞれ、30〔N/mm2 〕及び28〔kN/mm2 〕とし、PC部のコンクリートの圧縮強度及びヤング率を、それぞれ、40〔N/mm2 〕及び31〔kN/mm2 〕とし、ひび割れ以降の軟化を評価するために、引張側にはテンションスティフニングを考慮した。RC部の初期応力は0として、設計計算書より得られる導入プレストレスをPC部材のみに導入し、断面内応力の初期釣り合いを取った上で曲げM−曲率φ関係を算出した。数値解析の収束計算には、修正ニュートンラプソン法を用いた。
図10に示されるように、鉛直ばねの履歴特性は小谷らのモデルに従うこととした。そして、ひび割れ発生以降で過去に最大の荷重を受けた場合は、除荷時の指向点がディコンプレッションモーメントに向かうPC部材と反対側のひび割れ点に向かうRC部材の中間となるモデルとした。
また、図8に示されるような回転ばねは、設計計算書によって得られる上下線の荷重分担が等価となるように設定した。PRC桁の載荷側の荷重分担率をβ1 とし、非載荷側の荷重分担率をβ2 として、鉛直方向の力及び回転モーメントの釣り合いを考慮すると、回転ばねの剛性は、次の式(5)によって得られる。
ここで、Bは質点重心から2本の鉛直ばねまでの距離、eは質点重心から載荷点までの距離、k0 は鉛直ばねの初期剛性である。対象構造物であるPRC桁の設計計算書に基づいて、β1 =0.7、β2 =0.3、B=e=2.6〔m〕とすると、回転ばねの剛性は、前記式(5)より、20.28k0 となる。
次に、シミュレーションの結果について説明する。なお、着目要素は、PRC桁の最下縁のPC鋼材の応力度とした。また、当該PC鋼材の引張強度fsuk は1900〔N/mm2 〕、最小引張強度σ0 は1100〔N/mm2 〕であるものとした。
図11は本実施の形態における完全複線載荷の発生回数及び発生確率を示す図、図12は本実施の形態におけるPC鋼材の疲労強度のシミュレーション結果を示す図である。なお、図11において、(a)は対象線区の各地点における完全複線載荷の発生回数を示す図、(b)は対象線区の各地点における完全複線載荷の発生確率を示す図であり、図12において、(a)は上り線におけるPC鋼材の応力度を示す図、(b)は下り線におけるPC鋼材の応力度を示す図である。
図11(a)には、CROSSモジュール12が判定した対象線区における複線載荷の発生回数、すなわち、供用約20年の間に455636編成の列車が通過した既設新幹線の駅間18420〔m〕の線区における上下線の列車の進入時間が一致した完全複線載荷の発生回数が示されている。また、図11(b)には、対象線区における複線載荷の発生確率が示されている。なお、図11(a)及び(b)の横軸は、対象線区の起点側の駅からの距離程を示している。
そして、図11において、シミュレーション対象として示されている地点に設置されている対象構造物であるPRC桁の時間依存疲労強度fsrが、図12に示されている。該時間依存疲労強度fsrは、FATIGUEモジュール14が前記式(3)によって算出したものである。なお、図12の横軸は、供用開始からの経過年数を示している。
このように、本実施の形態において、構造物疲労強度推定方法は、標準時刻表のデータ及び標準ランカーブのデータに基づいて所定の線区における所定の構造物の上を通過する列車編成による載荷が単線載荷又は複線載荷のいずれであるかを判定する工程と、標準ランカーブのデータから算出される前記構造物の上を通過する通過速度と、乗車率のデータとに基づいて構造物に加わる荷重列を作成する工程と、荷重列を有限要素法による解析に導入して構造物の動的応答を算出する工程と、構造物における着目要素の応力の応答波形をレインフロー法によって応力範囲に分解し、着目要素の時間依存疲労強度を評価する工程と、を含んでいる。したがって、着目要素の時間依存疲労強度に基づいて、構造物疲労強度を非破壊で推定することができる。
また、構造物はPRC桁であり、着目要素は構造物の最下縁のPC鋼材である。したがって、PRC桁のPC鋼材の時間依存疲労強度を適切に把握することができる。
さらに、構造物に加わる荷重列は、単線載荷時及び複線載荷時のそれぞれについて作成される。また、荷重列を作成する工程においては、上下線駅の発車時刻及び通過速度を乱数によってモデル化する。これにより、構造物疲労強度をより適切に推定することができる。
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
本開示は、構造物疲労強度推定方法及びシステムに適用することができる。
10 構造物疲労強度推定システム
11 LOADモジュール
12 CROSSモジュール
13 RESPONSEモジュール
14 FATIGUEモジュール

Claims (5)

  1. 標準時刻表のデータ及び標準ランカーブのデータに基づいて所定の線区における所定の構造物の上を通過する列車編成による載荷が単線載荷又は複線載荷のいずれであるかを判定する工程と、
    前記標準ランカーブのデータから算出される前記構造物の上を通過する通過速度と、乗車率のデータとに基づいて前記構造物に加わる荷重列を作成する工程と、
    前記荷重列を有限要素法による解析に導入して前記構造物の動的応答を算出する工程と、
    前記構造物における着目要素の応力の応答波形をレインフロー法によって応力範囲に分解し、前記着目要素の時間依存疲労強度を評価する工程と、を含むことを特徴とする構造物疲労強度推定方法。
  2. 前記構造物はPRC桁であり、前記着目要素は前記構造物の最下縁のPC鋼材である請求項1に記載の構造物疲労強度推定方法。
  3. 前記構造物に加わる荷重列は、単線載荷時及び複線載荷時のそれぞれについて作成される請求項1又は2に記載の構造物疲労強度推定方法。
  4. 前記荷重列を作成する工程においては、上下線駅の発車時刻及び通過速度を乱数によってモデル化する請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物疲労強度推定方法。
  5. 標準時刻表のデータ及び標準ランカーブのデータに基づいて所定の線区における所定の構造物の上を通過する列車編成による載荷が単線載荷又は複線載荷のいずれであるかを判定する判定部と、
    前記標準ランカーブのデータから算出される前記構造物の上を通過する通過速度と、乗車率のデータとに基づいて前記構造物に加わる荷重列を作成する荷重列作成部と、
    前記荷重列を有限要素法による解析に導入して前記構造物の動的応答を算出する応答算出部と、
    前記構造物における着目要素の応力の応答波形をレインフロー法によって応力範囲に分解し、前記着目要素の時間依存疲労強度を評価する評価部と、を含むことを特徴とする構造物疲労強度推定システム。
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