JP2019185846A - 充填部材、組電池、及び熱伝達の制御方法 - Google Patents

充填部材、組電池、及び熱伝達の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】単電池間の熱移動を好適に制御する。【解決手段】第1の単電池と第2の単電池とを仕切る仕切り部材とともに組電池を構成する充填部材であって、第1の単電池の温度が異常発熱状態の温度以上となった場合において、仕切り部材の熱移動感度Sdが0<Sd≦2であり、仕切り部材の熱移動感度Sdと充填部材の熱移動感度Sbとの関係が0.3≦(Sd/Sb)≦4.0であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、充填部材、組電池、及び熱伝達の制御方法に関する。
近年、車両等の電源としての二次電池の使用が急増している。車両等の限られた空間に搭載する際の自由度を向上させること、一度の充電に対して走行可能な航続距離を伸ばすこと等を目的として、二次電池の高エネルギー密度化の検討が進められている。
二次電池の安全性はエネルギー密度とは相反する傾向にあり、エネルギー密度が高くなるほど二次電池の安全性は低下する傾向にある。例えば、航続距離が数百kmに及ぶような電気自動車に搭載される二次電池では、過充電や内部短絡等により二次電池が損傷した場合の電池表面温度が数百℃を超え、1000℃近くに及ぶ場合もある。
車両等の電源に使用される二次電池は、一般に複数の単電池(以下、「セル」ともいう)から成る組電池として用いられる。このため、組電池を構成する単電池の一つが損傷し上記のような温度域に到達した場合、その発熱により隣接する電池が損傷を受け、連鎖的に組電池全体に損傷が拡がるおそれがある。
ところで、多数の単電池を連結して構成される組電池は、充放電する電流で発熱する。特に、車両用の電源装置として使用される組電池の発熱量は、充放電の電流が極めて大きいことから大きくなる。発熱による温度上昇は電池の電気特性を低下させる原因となる。また、多数の単電池を連結して出力電圧を高くしている車両用の組電池は、組電池を構成する個々の単電池間の温度差をできる限り小さくすることが極めて大切である。それは、単電池間の温度差が電池の電気特性のバランスを崩して残容量を不均一にし、特定の単電池の寿命を短くするからである。このため、通常、車両用の電源装置では、充放電時の温度上昇を少なくするために電池を冷却する装置を備えている。このような冷却装置について、連結された多数の単電池をできるだけ効率的に、かつ均等に冷却することが重要である。
例えば、特許文献1に記載されているように、通常、冷却装置は熱伝導率の良い金属等で構成される。しかし、電池と冷却装置とが直接に接触すると通電するおそれがあるため、電池と冷却装置の隙間には絶縁性を有する部材が設置される。また、電池と冷却装置の間に隙間ができ冷却効率が低下することを防ぐため、電池と冷却装置を密着させる目的においても充填材が設置される。
また、特許文献2では、以下の手法が提案されている。複数の単電池を連結した車両用の電源装置は、各々の単電池の間にあって、単電池の表面に熱結合状態に接触してなるセパレータを備える。また、上記電源装置において、単電池の間に冷却隙間を設けてセパレータを介して積層するように固定し、この冷却隙間に冷却気体を強制送風する送風機構を備える。さらに、上記電源装置は、各々の単電池の外周面に熱結合してなる温度均等化プレートを備え、この温度均等化プレートの熱伝導率を単電池間に備えられたセパレータの熱伝導率よりも大きくする。
特表2014−505333号公報 特開2010−272430号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているような冷却装置は、組電池を構成する単電池のうちの一つが損傷し高温に達した場合にも、隣接する電池への熱の移動を促進してしまうおそれがある。つまり、冷却装置が他の単電池への熱伝導を促進する結果、他の単電池も損傷するおそれがあった。
一方、特許文献2においては、組電池を構成する単電池の一つが損傷を受けた場合に冷却用部材を介して隣接する電池に伝わる熱量について、組電池を構成する単電池の発熱量や、組電池を構成する電池以外の部材による伝熱の影響を定量的に考慮した上での検討は十分になされていない。また、異常時に冷却装置の冷媒フローが止まった場合を想定した上での検討はなされていない。異常時に冷却装置の冷媒フローが止まった場合には、冷却装置による組電池外部への除熱効率が低下し、冷却装置を介した隣接セルへの伝熱への寄与が高まるため、より延焼のおそれがある。このため、冷却装置の冷媒フローが止まった状態をも想定して安全性への対策を構築しておくことが極めて重要である。
本発明は、複数の単電池を含む組電池において、単電池間の熱移動を好適に制御する充填部材を提供することを目的とする。
本発明者は上述した従来技術において十分に検討されていなかった、冷却用部材を介して単電池間を伝達される熱量について着目し、その影響について詳細な検討を行った。その結果、組電池を構成する第1及び第2の単電池を仕切る仕切り部材、並びに組電池を構成する複数の単電池と冷却用部材との間に介装される充填部材について、仕切り部材及び充填部材の熱移動抵抗を適切な範囲内に抑えることで、異常が発生した第1の単電池から第2の単電池に伝わる熱移動量を適切に制御することが重要であることを見出し、本発明に至った。本発明は以下の通りである。
[1] 第1の単電池と、第2の単電池と、前記第1の単電池と前記第2の単電池との間を仕切る仕切り部材とともに組電池を構成する充填部材であって、
前記充填部材は、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記面方向に沿った第1の面と第2の面とを有し、前記第1の単電池及び前記第2の単電池と前記第1の面において接触するとともに、前記第2の面において前記第1及び第2の単電池を冷却可能な冷却部材と接触し、
前記第1の単電池から発せられる熱が前記仕切り部材を介して前記第2の単電池へ移動する場合の前記仕切り部材の熱移動感度Sが以下の式1により定義され、
前記仕切り部材の熱移動感度S[W/K]=
前記仕切り部材の熱伝導率k[W/m・K]×前記仕切り部材と前記第1および第2の単電池との接触面積A[m]/前記仕切り部材の厚みd[m]・・・(式1)
前記第1の単電池から発せられる熱が前記充填部材及び前記冷却部材を介して前記第2の単電池へ移動する場合の前記充填部材の熱移動感度Sが以下の式2により定義され、
前記充填部材の熱移動感度S[W/K]=
前記充填部材の熱伝導率k[W/m・K]×前記充填部材と前記第1及び第2の単電池との接触面積A[m]/前記充填部材の厚みd[m]・・・(式2)
前記第1の単電池の温度が異常発熱状態の温度以上となった場合において、前記仕切り部材の熱移動感度Sが以下の式3を満たし、
0< S ≦ 2 ・・・(式3)
前記熱移動感度Sと前記充填部材の熱移動感度Sbとの関係が以下の式4を満たす
0.3 ≦(S/S)≦ 4.0 ・・・(式4)
ことを特徴とする充填部材。
[2] 前記充填部材の厚み方向の熱伝導率が2.0×10−2W/m・K以上10.0W/m・K以下である、[1]に記載の充填部材。
[3] 前記充填部材の厚みが5.0×10−5m以上5.0×10−3m以下である、[1]又は[2]に記載の充填部材。
[4] [1]に記載の仕切り部材であって、前記第1の単電池及び前記第2の単電池が異常発熱状態の温度に昇温していない場合において、前記熱移動感度Sの値が2より大きい、仕切り部材。
[5] [1]に記載の仕切り部材であって、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記仕切り部材の厚み方向の二面のうち一方の平均温度が180℃を超える場合において、前記厚み方向の熱伝導率が2.0×10−2W/m・K以上2.0W/m・K以下である、仕切り部材。
[6] 前記仕切り部材の厚み方向の二面のうち双方の平均温度が80℃を超えない場合において、前記厚み方向の熱伝導率が5.0×10−2W/m・K以上50W/m・K以下である、[4]又は[5]に記載の仕切り部材。
[7] 前記第1及び第2の単電池の厚みがLmmである場合に、厚みがL/50mm以上L/10mm以下である、[4]から[6]のいずれか1項に記載の仕切り部材。
[8] [1]から[3]のいずれか1項に記載の充填部材を含む組電池。
[9] [4]から[7]のいずれか1項に記載の仕切り部材を含む組電池。
[10] 前記熱移動感度Sが式3を満たすとともに、前記熱移動感度Sと前記熱移動感度Sbとの関係が式4を満たす、[1]に記載の前記仕切り部材及び前記充填部材を用いて、前記第1の単電池から前記仕切り部材、前記充填部材及び前記冷却部材を介して前記第2の単電池に伝わる熱量を制御する、熱伝達の制御方法。
本発明によれば、複数の単電池を含む組電池において、単電池間の熱移動を好適に制御することができる。
図1は、充填部材及び冷却部材の構成を説明するとともに、充填部材の熱移動感度を説明する図である。 図2は、実施形態に係る組電池の一例を示す上面図である。 図3は、図2に示した組電池の側面を、手前側の側板を外した状態で模式的に示す側面図である。 図4は、単電池の一例を示す図である。 図5は、図4に示した単電池の正面図である。 図6は、図4に示した単電池の側面図である。 図7は、仕切り部材の説明図である。 図8は、単電池内部で発した熱の伝達経路を模式的に示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る充填部材、組電池、及び熱伝達の制
御方法を説明する。以下に記載する実施形態の説明は一例であり、本発明は実施形態で説明する構成に限定されない。
本実施形態に係る充填部材は、第1の単電池と、第2の単電池と、第1の単電池と第2の単電池との間を仕切る仕切り部材とともに組電池を構成する。また、充填部材は、厚み方向と厚み方向に直交する面方向とを有し、面方向に沿った第1の面と第2の面とを有し、前記第1の単電池及び前記第2の単電池と前記第1の面において接触するとともに、前記第2の面において前記第1及び第2の単電池を冷却可能な冷却部材と接触する。また、充填部材に関して、第1の単電池から発せられる熱が充填部材及び冷却部材を介して第2の単電池へ移動する場合の充填部材の熱移動感度Sは、以下の式(1)により定義される。
熱移動感度S[W/K]=充填部材の熱伝導率k[W/m・K]×充填部材と第1及び第2の単電池との接触面積A[m]/充填部材の厚みd[m]・・・(1)
ここで、本発明において、或る単電池を構成する電極や電解液等を構成する化学物質の一部ないし全てが、単電池の内部で発熱を伴いながら分解反応を起こすことにより、単電池の温度が上昇し、単電池の一部ないし全領域が200℃以上になった状態を「異常発熱状態」という。
[熱移動感度]
図1は、充填部材及び冷却部材の構成を説明するとともに、充填部材の熱移動感度を説明する図である。図1において、例えば、第1の単電池は、単電池200a(セル#1)であり、第2の単電池は単電池200b(セル#2)である。図1を用いて、充填部材10の熱移動感度Sを説明する。熱移動感度Sとは、充填部材10と組電池100を構成する第1の単電池(セル#1)と第1の単電池と異なる第2の単電池(セル#2)とが接触しており、第1の単電池から発せられた熱が第2の単電池に移動する際に、充填部材と第1及び第2の単電池との接触部分を経由して移動する熱量の程度を示す尺度である。
熱移動感度Sは、充填部材10として使用される材料の厚み方向における熱伝導率(k[W/m・K])及び充填部材10とセル#1及びセル#2(第1及び第2の単電池)との接触部分の面積(A[m])と、充填部材10の厚み(d[m])を用いて表すことができる。
ここで、セル#1から充填部材10及び冷却部材400を介してセル#2に伝わる熱量を考える。充填部材10の厚み方向の2面(面方向に沿った2面)について、セル#1及びセル#2と接触する面を面10a、その裏面を面10bとする。図1において、充填部材10の厚み方向は図1紙面の高さ方向に伸びており、充填部材10の面方向は図1紙面の左右方向に伸びている。冷却部材400は、図1の例では、充填部材10の面10bと密着する平面を有する板状に形成されている。また、充填部材10の厚み方向の熱伝導率をk[W/m・K]と定義し、充填部材10の厚みをd[m]とする。
さらに、充填部材10の面10aとセル#1とが接触する領域(領域a1とする)の平均温度をT1[℃]、領域a1と面対称の関係となる面10b上の領域(領域b1とする)の平均温度をT2[℃]、充填部材10の面10aとセル#2とが接触する領域(領域a2とする)の平均温度をT4[℃]、領域a2と面対称の関係となる領域(領域b2)の平均温度をT3[℃]とする。
平均温度T2が平均温度T1より低い場合、充填部材10の領域a1と領域b1とで表面温度差(T1−T2)が生じている。この場合、充填部材10の領域a1の単位断面積当たりの熱流量(熱流束)q1は、以下の式(3)によって表すことができる。
q1 = k(T1−T2)/d [W/m] ・・・(3)
また、平均温度T4が平均温度T3より低い場合、充填部材10の領域b2と領域a2とで表面温度差(T3−T4)が生じている。この場合、充填部材10の領域b2の単位断面積当たりの熱流量(熱流束)q2は、以下の式(4)によって表すことができる。
q2 = k(T3−T4)/d [W/m] ・・・(4)
ここで、冷却部材400は、例えば熱伝導性のよい金属等で構成することができる。このため、冷却部材400から外部環境への除熱効率が低く、冷却部材400の周囲が断熱された環境に近い状態となっている場合には、冷却部材400内部の温度はほぼ均一とみなすことができる。このような条件下では、平均温度T2と平均温度T3とがほぼ等しい(T2≒T3)と近似できる。この場合、充填部材10の領域b2の単位断面積当たりの熱流量(熱流束)q2は、以下の式(4−2)によって表すことができる。
q2 ≒ k(T2−T4)/d [W/m] ・・・(4−2)
以上より、セル#1から冷却部材400へ充填部材10を経由して移動する接触面積A[m]当たりの熱量Q1、及び、冷却部材400からセル#2へ充填部材10を経由して移動する接触面積A[m]当たりの熱量Q2は、以下の式(5)および(6)によって表すことができる。
Q1 = A × q1 =A(T1−T2)/d [W] ・・・(5)
Q2 = A × q2 =A(T2−T4)/d [W] ・・・(6)
充填部材10の熱移動感度Sは、ある単電池から別の単電池に熱が移動する際、それらの単電池が充填部材10に接触している場合に、その充填部材10の接触部分を経由して移動する熱量の程度を示す尺度であるから、以下の式(7)および(8)で定義することができる。
Q1 = S × (T1−T2)[W] ・・・(7)
Q2 = S × (T2−T4)[W] ・・・(8)
熱移動感度Sは、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)より、以下の式(9)で表すことができる。
= Q1/(T1−T2) = Q2/(T2−T4)
= A/d [W/K] ・・・(9)
また、仕切り部材1の熱移動感度Sは、仕切り部材1と組電池100を構成する第1の単電池(例えばセル#1)と第1の単電池と異なる第2の単電池(例えばセル#2)とが接触しており、第1の単電池から発せられた熱が第2の単電池に移動する際に、仕切り部材1と第1及び第2の単電池との接触部分を経由して移動する熱量の程度を示す尺度である。
熱移動感度Sは、仕切り部材1として使用される材料の厚み方向における熱伝導率(k[W/m・K])及び仕切り部材1とセル#1およびセル#2との接触部分の面積(A[m])と、仕切り部材1の厚み(d[m])を用いて表すことができる。
ここで、セル#1から仕切り部材1を介してセル#2に伝わる熱量を考える。仕切り部材1の厚み方向の2面(面1c及び面1d)について、セル#1と接触する面を面1c、その裏面を面1dとする。なお、面1dはセル#2と接触している(図2参照)。また、仕切り部材1の厚み方向の熱伝導率をk[W/m・K]と定義し、仕切り部材1の厚みをd[m]とする。
さらに、仕切り部材1の面1cとセル#1とが接触する領域(領域a3(図示せず)とする)の平均温度をT11[℃]、領域a2と面対称の関係となる面1d上の領域(領域b3(図示せず)とする)の平均温度をT12[℃]とする。
平均温度T12が平均温度T11より低い場合、仕切り部材1の領域a2と領域b2とで表面温度差(T11−T12)が生じている。この場合、仕切り部材1の領域a2の単位断面積当たりの熱流量(熱流束)q3は、上記した式(10)によって表すことができる。また、セル#1からセル#2へ仕切り部材1を経由して移動する接触面積A [m]当たりの熱量Q3は、上述した式(11)によって表すことができる。
q3 = k(T11−T12)/d [W/m] ・・・(10)
Q3 = A × q3 =A(T11−T12)/d [W] ・・・(11)
熱移動感度Sは、式(10)及び式(11)より、以下の式(12)で表すことができる。
= Q3/(T11−T12) = A/d [W/K] ・・・(12)
本実施形態では、組電池100を構成する仕切り部材1及び充填部材10に関して、セル#1の温度が異常発熱状態の温度以上となった場合において、仕切り部材1の熱移動感度Sが0<S≦2の条件を満たし、この熱移動感度Sと充填部材10の熱移動感度Sとの関係が0.3≦(S/S)≦4.0との条件を満たすように構成される。このようにすれば、セル#1からの熱が充填部材10及び冷却部材400を介してセル#2に適切に伝達されるように制御できる。すなわち、好適な単電池間の熱移動を行うことができる。
<組電池>
本発明の実施形態に係る組電池について説明する。組電池は、例えば、電気自動車(EV、Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV、Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV、Plug−in Hybrid Electric Vehicle)、電動重機、電動バイク、電動アシスト自転車、船舶、航空機、電車、無停電電源装置(UPS、Uninterruptible Power Supply)、家庭用蓄電システム、風力/太陽光/潮力/地熱等の再生可能エネルギーを利用した電力系統安定化用蓄電池システム等に搭載される電池パックに適用される。但し、組電池100は、上述のEV等以外の機器に電力を供給する電力源としても使用し得る。
図2は、複数の単電池(「セル」ともいう)200を用いて形成された組電池100の一例の上面図を示し、図3は、図2に示した組電池100から側板300dを取り外した状態を模式的に示す側面図である。
〔単電池〕
図4は組電池100を構成する単電池200の一例を示す図であり、図5は図4に示した単電池200の正面図であり、図6は、単電池の右側面図である。図4、図5及び図6に示す一例において、単電池200は、高さ方向(H)、幅方向(W)、厚み方向(D)を有する直方体状に形成されており、その上面に端子210、端子220が設けられている。単電池200は、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備えるリチウムイオン二次電池である。リチウムイオン二次電池以外に、リチウムイオン全固体電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の二次電池を適用し得る。
〔組電池〕
図2及び図3において、組電池100は、筐体300と筐体300内に収容された複数の単電池200とを含む。複数の単電池200は、その厚み方向“D”(図2の左右方向)に一列に並べて配置され、単電池200の間に仕切り部材1が介装されている。筐体300は、配列された複数の単電池200の側方を囲むように設けられた側板300a、300b、300c及び300dを有する。側板300a及び側板300bには、図示しない治具などを用いて両者間の距離が縮まるように圧力がかけられ、側板300a及び側板300bに挟まれた各単電池200はその厚み方向に圧力(拘束圧)がかけられた状態で保持される。なお、図2及び図3では、一例として5個の単電池200が例示されているが、単電池の数は適宜選択可能である。また、図2及び図3の例では、組電池100は端子210及び端子220が上方を向くように配置される例を示しているが、組電池100は端子210及び端子220が側方を向くように配置されてもよい。
上述したように、筐体300内において、複数の単電池200はその厚み方向に並べられ、単電池200間には、仕切り部材1が配置されている。仕切り部材1を介して隣り合う(対向する)単電池200の正極端子(例えば端子210)と負極端子(例えば端子220)とは、バスバー301によって電気的に直列に接続される。これによって、組電池100は、所定の電圧の電力を出力する。
〔仕切り部材〕
仕切り部材1は、図7に示すように、高さ方向(H)、幅方向(W)及び厚み方向(D)を有する平行平板状、或いはシート状の全体形状を有する。
仕切り部材1は、その厚み方向(D)において、面1cと、この面1cと反対方向に向いた面1dとを有し、組電池100を構成する単電池200間を仕切るために使用される。仕切り部材1は、断熱材110等で構成することができる。また、仕切り部材1の厚みは、単電池200の厚みがL[mm]である場合に、通常、L/50mm以上L/10mm以下の範囲であり、好ましくは、L/30mm以上L/15mm以下の範囲である。
[断熱材]
断熱材110は、多孔質体材料等で形成される。多孔質体は、例えば、繊維質(繊維状無機物ともいう)や粒子(粉状無機物ともいう)から形成されているものを例示することができる。断熱材110は、例えば、繊維質や粒子を押し固める等の所定の成型技術を用いて形成することができる。
繊維質(繊維状無機物)は、例えば、紙、コットンシート、ポリイミド繊維、アラミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維及び生体溶解性無機繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、これらの中でもガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維及び生体溶解性無機繊維から選ばれる少なくとも1つであることが特に好ましい。セラミック繊維は、主としてシリカとアルミナからなる繊維(シリカ:アルミナ=40:60〜0:100)であり、具体的には、シリカ・アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維を用いることができる。
また、粒子(粉末状無機物)は、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ケイ酸カルシウム、粘土鉱物、バーミキュライト、マイカ、セメント、パーライト、フュームドシリカ及びエアロゲルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、これらの中でもシリカ粒子、アルミナ粒子、粘土鉱物は主としてケイ酸マグネシウム(タルク、セピオライトを含む)、モンモリナイト、カオリナイトである。
[充填部材及び冷却部材]
図3に示すように、筐体300の底部には、冷却部材(冷却装置ともいう)400が配置されている。複数の単電池200の夫々の底面は、平行平板状の充填部材10の上面と接触し、充填部材10の下面の一部ないし全面は、冷却部材400と接している。各単電池200からの熱は、充填部材10を介して冷却部材400へ伝達可能となっている。
冷却部材400は、例えばヒートシンクなどである。冷却部材400は、その内部で流体(冷媒)を移動(循環等)させるものであってもなくてもよい。充填部材10は、例えば、一種類以上の材料、例えば一種類以上のプラスチック、プラスチックコンパウンド、プラスチック・金属複合材料などのうちの単独、又は適宜の組み合わせによって形成される。
図8は、単電池200内部で発した熱の伝達経路を模式的に示す。単電池200内部での発熱は、各種伝達経路を介して、他の単電池200に伝達される。図6の例では、複数の単電池200のうちの一つであるセル#1(CELL #1)からの熱の伝達経路が模式的に
示されている。例えば、単電池200(セル#1)内部での発熱は、仕切り部材1を介して、他の単電池200(セル#2(CELL #2))に伝達することができる。また、単電池
200からの熱は、バスバー301を介して外部に放熱される。また、単電池200からの熱は、充填部材10を介して冷却部材400に伝達され、冷却部材400から外部へ放熱することができる。
<組電池における発熱及び熱移動>
ここで、組電池100における発熱及び熱移動について説明する。単電池200を構成する電極や電解液等を構成する化学物質の一部ないし全てが、単電池200内部で発熱を伴いながら分解反応を起こすことにより、単電池200の温度が上昇し、単電池200の一部ないし全領域が200℃以上になる場合がある。即ち、単電池200が異常発熱状態となる場合がある。
一般に、単電池200を構成する材料のうち正極材料の安全性について、充電による脱リチウム後の結晶構造の安定性が大きく影響していることが知られている。正極材料として一般に用いられるLiCoO、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O等の材料は、充電状態では高温下で、酸素放出を伴う結晶崩壊を起こす。正極から放出された酸素は電解液の酸化等を引き起こし、急激な発熱反応を伴う。放射光を用いた構造解析により、上記正極材料種では200℃付近で結晶の相転移が起こることが報告されている。このため、単電池200の一部ないし全領域が200℃以上になる場合、正極の結晶崩壊が進行している、つまり単電池200が熱暴走状態にあることを意味する(参考文献1:リチウムイオン電池の高安全技術と材料 シーエムシー出版、P.44/参考文献2:J.Dahn et al., Electrochemistry Communication, 9, 2534−2540 (2007)/参考文献3:小林弘典、「放射光を用いたリチウムイオン二次電池用正極材料の評価・解析技術」Spring−8利用推進協議会 ガラス・セラミックス研究会(第二回)(2011))。
また、単電池200を構成する材料のうち負極材料の安全性について、充電負極(リチウム挿入炭素負極)は基本的にリチウム金属と同様の強い還元性を示し、電解液との反応で負極表面上に被膜が形成され、それによってさらなる反応が抑制されていることが知られている。従って、その保護被膜の化学的組成や構造、熱安定性が温度上昇時の充電負極の熱安定性に多大な影響を与える。通常、充電負極と電解液との反応は、保護被膜の形成と、それに続く被膜破壊による爆発的な還元分解反応により説明される。一般に、負極上
での保護被膜形成反応は130℃付近から、引き続く被膜分解反応が200℃付近で進行し、最終的に爆発的還元分解反応に至ることが報告されている。このため、単電池200の一部ないし全領域が200℃以上になる場合、負極表面の被膜破壊が進行している、つまり単電池200が熱暴走状態にあることを意味する(参考文献4:電池ハンドブック第1版 オーム社、P.591/参考文献5:リチウムイオン電池の高安全技術・評価技術の最前線 シーエムシー出版、P.90)。
また、本発明において、単電池200を構成する電極や電解液等を構成する化学物質が、単電池200内部で一定以上の発熱速度を伴う分解反応を起こしていない状態を、「通常状態」という。ここで、反応性化学物質が断熱条件下で自己発熱分解する際の熱的挙動を定量的に測定する手段であるARC(Accelerating rate calorimetry)を用いて、単電池200の発熱状態を評価することができる。例えばDahnらは、ARCにおいて観測される発熱速度が0.04℃/minを上回る場合に、セル内部で自己発熱反応が進行しているものと定義しており、これに倣うことができる(参考文献6:J.Dahn et al., Electrochimica Acta, 49, 4599−4604 (2004))。
また、本発明において、通常状態の単電池200を、「通常状態を保持している単電池」、通常状態を逸脱し異常発熱状態に至っていない単電池200を、「通常状態を逸脱した単電池」という。単電池200が通常状態を逸脱していない場合に想定される表面平均温度の上限値は通常80℃である。ここで、汎用電解液成分の沸点は、下記表1に示すように90℃以上である。汎用電解液成分は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)である。単電池200の表面平均温度が80℃より低い場合は、単電池200を構成する汎用電解液自体の沸騰には至らない。
Figure 2019185846
例えば、仕切り部材1に接触する単電池200が通常状態を逸脱し、異常発熱状態に至っていない場合に想定される表面平均温度の上限値が180℃とする。ここで、仕切り部材1の材料が、仮に、汎用セパレータ材であるポリエチレンやポリプロピレン製であると仮定する。この場合、そのメルトダウン温度は160〜200℃であることが知られている。このため、単電池200の表面平均温度が180℃を超える場合には、単電池200を構成する汎用セパレータ材の一部がメルトダウンし、異常発熱状態に至るおそれがある。
これに対し、仕切り部材1の、組電池100を構成する単電池200間を仕切る厚み方向の二面(厚み方向と直交する二面、すなわち面1c及び面1d)のうちの一方の平均温度が100℃を超えない範囲では、仕切り部材1は、組電池100中の単電池200(例えばセル#1)からの熱をその厚み方向に伝達し、セル#1に仕切り部材1を介して対向する他の単電池200(セル#2)や単電池200以外の部材(例えばバスバー301や冷却部材400)へ伝達することができる。これに対し、平均温度が100℃を超える場合には、熱により仕切り部材1が開口して内包された液体が気相状態又は液相状態で仕切り部材1の外部に流出する。この流出によって仕切り部材1内の断熱材110に空気(断熱作用を有する)が入り、厚み方向の断熱性(熱抵抗)を増加させる。これによって、セ
ル#1から仕切り部材1を介してセル#2へ伝達される熱量を減らすことができる。すなわち、或る単電池200が通常状態を逸脱した状態になることを契機に他の単電池200が通常状態を逸脱した状態となるのを回避することができる。
なお、仕切り部材1の、組電池を構成する単電池間を仕切る厚み方向の二面(面1c及び面1d)の双方の平均温度が80℃よりも低い場合は、内包された液体により厚み方向への熱移動が促進される。組電池100を構成する全ての単電池200が通常状態である場合、仕切り部材1の熱移動抵抗が従来品より低いため、組電池100内の単電池200間の均温化に奏功し、温度ムラによる単電池200の劣化を軽減する効果が期待できる。
<異常発熱状態の単電池の冷却>
本実施形態に係る仕切り部材1は、材料や構造の選択によって、仕切り部材1の厚み方向の二面(面1c及び面1d)のうち一方の平均温度が180℃を超える場合において、厚み方向の熱伝導率が2.0×10−2W/m・K以上2.0W/m・K以下となるように構成される。また、仕切り部材1は、その厚み方向の二面(面1c及び面1d)のうち双方の平均温度が80℃を超えない場合において、厚み方向の熱伝導率が5.0×10−2W/m・K以上50W/m・K以下となるように構成される。
例えば、図3や図8に示すように、仕切り部材1によって仕切られる二つの単電池200(例えばセル#1とセル#2)があり、セル#1が面1cと接触し、セル#2が面1dと接触している状態において、面1c及び面1dの双方の平均温度が80℃以下の場合には、仕切り部材1を介しての熱移動が行われる。一方、セル#1及びセル#2の一方(例えばセル#1)の温度が昇温し、セル#1と接触する面1cの平均温度が180℃を超える場合には、仕切り部材1の熱伝導率が低下(断熱性が向上)し、熱がセル#2へ伝達されにくくなる。これにより、セル#2の損傷を回避する。
セル#1から発せられる熱の多くは、充填部材10を介して冷却部材400に伝達される。
また、充填部材10に移動した熱のうちの一部は、充填部材10や冷却部材400を介して、異常発熱状態になった単電池200以外の単電池200に伝達される。異常発熱状態になった単電池200以外の単電池200は、例えば、異常発熱状態になった単電池200と仕切り部材1を介して対向する(仕切り部材を挟んで隣接する)単電池200である。例えば、図8に示す例では、単電池200の一つであるセル#1が異常発熱状態となった場合に、そのセル#1からの熱の一部が充填部材10及び冷却部材400を介してセル#2に伝達される。
充填部材の熱伝導率は、好ましくは2.0×10−2W/m・K以上50.0W/m・K以下である。また、充填部材の厚みは厚み5.0×10−5m以上5.0×10−2m以下であることが好ましい。
[充填部材]
このため、実施形態に係る充填部材10は、一例として、図1に示した構成を備える。本実施形態では、充填部材10は、平行平板状に形成され、その厚み方向は、仕切り部材1の高さ方向(H)に配置され、充填部材10の面方向は、仕切り部材1の厚み方向(D)に配置されている。また、充填部材10は、その面方向に沿った第1及び第2の面を有する。本実施形態では、充填部材10は、平行平板状に形成され、第1の面に相当する面
10a及び第2の面に相当する面10bを有する。面10aは上方を向き、面10bはその反対方向(下方)を向いている。充填部材10は、面10aにおいて、組電池100を構成する第1及び第2の単電池を含む複数の単電池と接触する。本実施形態では、セル#1が第1の単電池に相当し、セル#2が第2の単電池に相当する。また、充填部材10は、面10bにおいて、第1及び第2の単電池を含む複数の単電池を冷却可能な冷却部材400と接触する。
<実施例>
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
以下に説明する実施例及び比較例では、異常発熱状態となった単電池200から他の単電池200への伝熱経路のうち、単電池200間を仕切る仕切り部材1の熱移動量と、単電池200と冷却部材400との間に配置される充填部材10を介する熱移動量とに着目し、仕切り部材1及び充填部材10による単電池200間の伝熱量抑制の可能性を検討した。
評価対象の組電池100として、図8に示すような5つの単電池200が連結された組電池モデルを構築し、セル#1に異常発熱状態時相当の発熱量1.4×10[J/m](NMC系正極を用いたセル#2の熱量評価から推定される総発熱量)を与え、以下の実施例1〜5並びに比較例1及び2の条件において、熱伝導方程式を有限要素法により解くことにより、セル#1に隣接するセル#2の温度推移を推算し、充填部材10の熱移動感度の変化によるセル間の伝熱量抑制等の効果を評価した。ここで、解析にはCOMSOL AB社製の汎用物理シミュレーションソフトウエアであるCOMSOL Multiphysicsを用い、下記参考文献9、10を参照して解析した。なお、セル#1とセル#2との間の伝熱経路については、図8で説明した経路が想定される(参考文献9:特開2006−010648号公報、参考文献10:R.M.Spotnitz et al., J.Power Sources 163, 1080−1086,(2007))。
実施例及び比較例において、セル#1〜#5の夫々のサイズは、ドイツ自動車工業会で規定されているPHEV2サイズ(縦91mm、幅148mm、厚み26.5mm)とした。また、簡単のため、冷却部材400はアルミニウムやアルミニウム合金等の金属で構成された厚み約4mmの板状材料であると想定し、熱伝導率は200W/m・Kとした。セル#1及び#2と冷却部材400との間に設置される充填部材10は、絶縁塗料等の塗膜またはプラスチックフィルムであると想定した。充填部材10に関しては、膜厚、フィラー(充填部材10内への詰め物)の種類や充填量、あるいは充填部材10の構造体をなすプラスチックの種類で熱移動抵抗を変更できる。また、セル#1とセル#2の間に設置される仕切り部材1は断熱性の材料であると想定した。バスバー301は、アルミニウム製であるものと想定し、熱伝導率は237W/m・Kとした。また、冷却部材400に関して、冷媒の流れ(フロー)が止まった状態を想定し、冷却部材400の周囲の環境には、自然対流相当の熱伝達係数を与えた。これらの条件下で、セル#1が異常発熱状態に至ってから300秒間のセル#2内の温度推移を推算した。
なお、実施例1〜5並びに比較例1及び2においては、異常発熱状態の温度に達した単電池200から伝達された熱に起因する昇温の程度を明確にするため、セル#1以外のセル#2〜セル#5については、セルの自己発熱による昇温を考慮していない。
以下の表2に、実施例1−1〜1−5並びに比較例1−1及び1−2の結果を示す。
Figure 2019185846
実施例1−1〜1−5並びに比較例1−1及び1−2では、仕切り部材1の膜厚(厚み方向の寸法)は1mmで固定とした。また、仕切り部材1の熱伝導率kについては、面1cや面1dの平均温度の変化に拘わらず一定(0.1W/(m・K))とした。膜厚及び熱伝導率kが一定のため、熱移動感度Sも一定の値(1.35W/K)であった。この熱移動感度Sは、0<S≦2の範囲に収まる。一方、充填部材10に関しては、熱伝導率kを変化させて測定を行った。各熱伝導率kに対する熱移動感度Sと感度比(S/S)とを求めた。
(比較例1−1)
充填部材10に熱伝導率kが2.0W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから152秒後に、セル#2内部の最高温度が212.4℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは7.84W/Kであり、感度比S/Sは0.172であった。
(実施例1−1)
充填部材10に熱伝導率kが1.0W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから168秒後に、セル#2内部の最高温度が208.7℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは3.92W/Kであり、感度比S/Sは0.344であった。
(実施例1−2)
充填部材10に熱伝導率kが0.8W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから168秒後に、セル#2内部の最高温度が207.9℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは3.13W/Kであり、感度比S/Sは0.431であった。
(実施例1−3)
充填部材10に熱伝導率kが0.6W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから175秒後に、セル#2内部の最高温度が207.1℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは2.35W/K
であり、感度比S/Sは0.574であった。
(実施例1−4)
充填部材10に熱伝導率kが0.4W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから188秒後に、セル#2内部の最高温度が207.3℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは1.57W/Kであり、感度比S/Sは0.860であった。
(実施例1−5)
充填部材10に熱伝導率kが0.2W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから179秒後に、セル#2内部の最高温度が208.1℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは0.784W/Kであり、感度比S/Sは1.72であった。
(比較例1−2)
充填部材10に熱伝導率kが0.1W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから208秒後に、セル#2内部の最高温度が211.0℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは0.196W/Kであり、感度比S/Sは6.89であった。
実施例1−1〜1−5並びに比較例1−1及び1−2の結果から、以下のことがわかる。組電池100を構成する単電池200と電池温度の冷却および均等化のために備えられた冷却部材400との間に設置される充填部材10について、仕切り部材1の熱移動感度Sが一定の場合、充填部材10の熱移動抵抗(熱伝導率k)を適切な範囲内に収めることで、異常が発生したセル#1(第1の単電池)から冷却部材400を介して伝わる熱量に起因するセル#2(第2の単電池)の昇温の程度を制御できる、すなわち、実施例1−1〜1−5並びに比較例1−1及び1−2によれば、冷却部材400を介した単電池200間の熱移動を好適に制御できる可能性があることが示された。
実施例1−1〜1−5では、セル#2の最高温度を210℃より低い値にすることができるのに対し、比較例1−1及び1−2では、210℃を超える最高温度となった。これらより、熱移動感度Sと熱移動感度Sとの関係が0.3≦(S/S)≦4.0を満たす範囲では、好適な熱伝達の制御がなされていることがわかった。
表3は、実施例2−1〜2−6並びに比較例2−1及び2−2の結果を示す。
Figure 2019185846
実施例2−1〜2−6並びに比較例2−1及び2−2では、仕切り部材1の膜厚(厚み方向の寸法)は1mmで固定とした。これに対し、面1cや面1dの平均温度の変化に応じて熱伝導率kが1.0W/(m・K)から0.1W/(m・K)へ低下する仕切り部材1を用いた。膜厚は一定であり、熱伝導率kが変化後の熱移動感度Sは一定の値(1.35W/K)であった。この熱移動感度Sは、0<S≦2の範囲に収まる。一方、充填部材10に関しては、熱伝導率kを変化させて測定を行った。各熱伝導率kに対する熱移動感度Sと感度比(S/S)とを求めた。
(比較例2−1)
充填部材10に熱伝導率kが2.0W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから137秒後に、セル#2内部の最高温度が210.4℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは7.84W/Kであり、感度比S/Sは0.172であった。
(実施例2−1)
充填部材10に熱伝導率kが1.0W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから160秒後に、セル#2内部の最高温度が204.1℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは3.92W/Kであり、感度比S/Sは0.344であった。
(実施例2−2)
充填部材10に熱伝導率kが0.8W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから168秒後に、セル#2内部の最高温度が202.5℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは3.13W/Kであり、感度比S/Sは0.431であった。
(実施例2−3)
充填部材10に熱伝導率kが0.6W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。
セル#1に異常が発生してから180秒後に、セル#2内部の最高温度が200.6℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは2.35W/Kであり、感度比S/Sは0.574であった。
(実施例2−4)
充填部材10に熱伝導率kが0.4W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから162秒後に、セル#2内部の最高温度が199.6℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは1.57W/Kであり、感度比S/Sは0.860であった。
(実施例2−5)
充填部材10に熱伝導率kが0.2W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから169秒後に、セル#2内部の最高温度が200.1℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは0.784W/Kであり、感度比S/Sは1.72であった。
(実施例2−6)
充填部材10に熱伝導率kが0.1W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから172秒後に、セル#2内部の最高温度が202.1℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは0.392W/Kであり、感度比S/Sは3.44であった。
(比較例2−2)
充填部材10に熱伝導率kが0.02W/m・Kの材料を用い、膜厚は1mmとした。セル#1に異常が発生してから186秒後に、セル#2内部の最高温度が207.4℃に到達するものと推算された。この場合の充填部材10の熱移動感度Sは0.078W/Kであり、感度比S/Sは17.3であった。
実施例2−1〜2−6並びに比較例2−1及び2−2の結果から、以下のことがわかる。充填部材10について、仕切り部材1の熱伝導率k低下後の熱移動感度Sが一定の場合、充填部材10の熱移動抵抗(熱伝導率k)を適切な範囲内に収めることで、異常が発生したセル#1(第1の単電池)から冷却部材400を介して伝わる熱量に起因するセル#2(第2の単電池)の昇温の程度を制御できる、すなわち、実施例2−1〜2−6並びに比較例2−1及び2−2によれば、冷却部材400を介した単電池200間の熱移動を好適に制御できる可能性があることが示された。
実施例2−1〜2−6では、セル#2の最高温度を210℃より低い値にすることができるのに対し、比較例2−1及び2−2では、210℃を超える最高温度となった。実施例2−1〜2−6の結果より、仕切り部材1が表面温度に応じて熱伝導率kを変化(低下)させる機構(スイッチング機能)を有している場合においても、熱移動感度Sと熱移動感度Sとの関係が0.3≦(S/S)≦4.0を満たす範囲では、好適な熱伝達の制御がなされていることがわかった。
ここで、実施例1〜5並びに比較例1及び2では、充填部材10の厚み(膜厚)を1mmに固定したが、充填部材10の厚みは、5.0×10−5m以上5.0×10−3m以下であってもよい。このため、実施例1〜5並びに比較例1及び2の結果から、充填部材10の厚み方向における熱伝導率kが2.0×10−2W/m・K以上10.0W/m・K以下であることが好ましいことがわかった。また、セル#1及びセル#2が異常発熱状態の温度に昇温していない場合における熱移動感度Sの値は2より大きいことが好ましい。
1 仕切り部材
10 充填部材
10a、10b 面
100 組電池
110 内包体
120 外装体
200 単電池
300 筐体
400 冷却部材

Claims (10)

  1. 第1の単電池と、第2の単電池と、前記第1の単電池と前記第2の単電池との間を仕切る仕切り部材とともに組電池を構成する充填部材であって、
    前記充填部材は、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記面方向に沿った第1の面と第2の面とを有し、前記第1の単電池及び前記第2の単電池と前記第1の面において接触するとともに、前記第2の面において前記第1及び第2の単電池を冷却可能な冷却部材と接触し、
    前記第1の単電池から発せられる熱が前記仕切り部材を介して前記第2の単電池へ移動する場合の前記仕切り部材の熱移動感度Sが以下の式1により定義され、
    前記仕切り部材の熱移動感度S[W/K]=
    前記仕切り部材の熱伝導率k[W/m・K]×前記仕切り部材と前記第1の単電池との接触面積A[m]/前記仕切り部材の厚みd[m]・・・(式1)
    前記第1の単電池から発せられる熱が前記充填部材及び前記冷却部材を介して前記第2の単電池へ移動する場合の前記充填部材の熱移動感度Sbが以下の式2により定義され、
    前記充填部材の熱移動感度S[W/K]=
    前記充填部材の熱伝導率k[W/m・K]×前記充填部材と前記第1及び第2の単電池との接触面積A[m]/前記充填部材の厚みd[m]・・・(式2)
    前記第1の単電池の温度が異常発熱状態の温度以上となった場合において、前記仕切り部材の熱移動感度Sが以下の式3を満たし、
    0< S ≦ 2 ・・・(式3)
    前記熱移動感度Sと前記充填部材の熱移動感度Sbとの関係が以下の式4を満たす
    0.3 ≦(S/S)≦ 4.0 ・・・(式4)
    ことを特徴とする充填部材。
  2. 前記充填部材の厚み方向の熱伝導率が2.0×10−2W/m・K以上10.0W/m・K以下である、請求項1に記載の充填部材。
  3. 前記充填部材の厚みが5.0×10−5m以上5.0×10−3m以下である、
    請求項1又は2に記載の充填部材。
  4. 請求項1に記載の仕切り部材であって、前記第1の単電池及び前記第2の単電池が異常発熱状態の温度に昇温していない場合において、前記熱移動感度Sの値が2より大きい、仕切り部材。
  5. 請求項1に記載の仕切り部材であって、厚み方向と前記厚み方向に直交する面方向とを有し、前記仕切り部材の厚み方向の二面のうち一方の平均温度が180℃を超える場合において、前記厚み方向の熱伝導率が2.0×10−2W/m・K以上2.0W/m・K以下である、仕切り部材。
  6. 前記仕切り部材の厚み方向の二面のうち双方の平均温度が80℃を超えない場合において、前記厚み方向の熱伝導率が5.0×10−2W/m・K以上50W/m・K以下である、
    請求項4又は5に記載の仕切り部材。
  7. 前記第1及び第2の単電池の厚みがLmmである場合に、厚みがL/50mm以上L/10mm以下である、請求項4から6のいずれか1項に記載の仕切り部材。
  8. 請求項1から3のいずれか1項に記載の充填部材を含む組電池。
  9. 請求項4から7のいずれか1項に記載の仕切り部材を含む組電池。
  10. 前記熱移動感度Sが式3を満たすとともに、前記熱移動感度Sと前記熱移動感度Sとの関係が式4を満たす、請求項1に記載の前記仕切り部材及び前記充填部材を用いて、前記第1の単電池から前記仕切り部材、前記充填部材及び前記冷却部材を介して前記第2の単電池に伝わる熱量を制御する、熱伝達の制御方法。
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