JP2019180187A - 永久磁石電動機 - Google Patents

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Abstract

【課題】軸受の電食を防止する絶縁部材に、第1軸方向穴と第2軸方向穴に区切る壁部を形成した場合に、第1軸方向穴および第2軸方向穴の側壁と底部間の外周側に生じる熱応力の集中を緩和できる永久磁石電動機を提供する。【解決手段】回転子3は、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間に位置する絶縁部材33を備え、絶縁部材33の第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の少なくとも一方の、内周側の側壁335aと底部335cの境界部分の周辺に熱応力を緩和するための第1応力緩和傾斜部336aと、外周側の側壁335bと底部335cの境界部分の周辺に熱応力を緩和するための第2応力緩和傾斜部336bとを形成し、第2応力緩和傾斜部336bの軸方向長さを、第1応力緩和傾斜部336aの軸方向長さよりも長く設定した。【選択図】図5

Description

本発明は、絶縁部材を有する回転子を備えた永久磁石電動機に関する。
従来の永久磁石電動機には、回転磁界を発生する固定子の内側に、永久磁石を有する回転子を回転可能に配置したインナーロータ型の永久磁石電動機が知られている。この永久磁石電動機は、例えば、空気調和機に搭載する送風ファンの回転駆動用として用いられる。
この永久磁石電動機は、高周波スイッチングを行うPWM方式のインバータで駆動する場合に、軸受の内輪と外輪の間に電位差(軸電圧)を生じる。この軸電圧が軸受内部の油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受内部に電流が流れて軸受に電食を発生させる。この軸受の電食を防止するために、例えば、絶縁部材を有する回転子を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この回転子は、例えば、環状の永久磁石と、永久磁石の内径側に位置する環状の外周側鉄心と、外周側鉄心の内径側に位置する環状の内周側鉄心と、外周側鉄心と内周側鉄心の間に位置する絶縁部材と、内周側鉄心の中心軸の方向に貫通する貫通孔に固着されたシャフトを備えている。
このような回転子の絶縁部材は、例えば、外周側鉄心と内周側鉄心の間に充填された樹脂で形成されている。
特開2012−39875号公報
ところで、上述した軸受の電食は、永久磁石電動機をPWM方式のインバータで駆動すると、固定子の巻線の中性点電位が零にならず、コモンモード電圧と呼ばれる電圧が発生する。このコモンモード電圧は、スイッチングによる高周波成分が含まれるため、永久磁石電動機の内部の浮遊容量によって、軸受の外輪と内輪の間に軸電圧を発生させる。
コモンモード電圧は、固定子の巻線とシャフトの間の静電容量分布と、シャフトとインバータ駆動用回路基板の間の静電容量により、軸受の内輪側(シャフト側)の電位として分圧される。そして、コモンモード電圧は、固定子の巻線とブラケットの間の静電容量とブラケットとインバータ駆動用回路基板の間の静電容量により、軸受の外輪側(ブラケット側)の電位として分圧される。この軸受の内輪側と外輪側の電位差が軸電圧となる。
回転子の絶縁部材の厚みの上限が構造上規制され、且つ材料としてPBT樹脂を使用しても回転子側(軸受内輪側)のインピーダンスが低く、軸電圧が高い場合に、軸電圧を抑制するため、特許文献1に記載の先行技術では、絶縁部材の一部に空気層や空孔を形成するようにしている。空気の比誘電率は、ほぼ1であるため、3程度のPBTに比べて小さい。したがって、空気層や空孔を設けることによって回転子の静電容量を小さくすることが可能となり、回転子側(軸受内輪側)のインピーダンスを高くするようにしている。
しかしながら、特許文献1に記載の回転子のように、絶縁部材に空気層を形成するために空孔として貫通孔を形成する場合には、絶縁部材の強度が低下することから、貫通孔の内部に、貫通孔を絶縁部材の軸方向の一端側に開口する第1軸方向穴と、絶縁部材の軸方向の他端側に開口する第2軸方向穴に区切る壁部を設け、この壁部により絶縁部材の強度を確保することが考えられている。この壁部を設けることで、壁部の一端側には第1軸方向穴の底部が形成され、壁部の他端側には第2軸方向穴の底部が形成される。
一方で、永久磁石電動機の使用環境や駆動時の固定子巻線からの発熱によって、絶縁部材に熱応力が生じる。特に、第1軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分や、第2軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分に熱応力が集中する。熱応力が集中すると、絶縁部材の耐久性の低下や割れやクラックの発生が懸念される。この熱応力集中を緩和するために、第1軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分や、第2軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分にR面取りやC面取りを形成することが行われている。
第1軸方向穴および第2軸方向穴は、図3および図4に示すように、例えば、端面形状が円周方向に沿う円弧状に形成され、端面から軸方向に沿う方向に深さを有している。
しかし、半径が小さく軸方向に厚い回転子に対して静電容量を低減させる場合、第1軸方向穴および第2軸方向穴の深さを深くする必要がある。そして、絶縁部材の機械的強度や、第1軸方向穴および第2軸方向穴の成形時の金型の抜き勾配を考慮した場合、図3および図4に示すように、第1軸方向穴および第2軸方向穴の半径方向の長さRを十分に取ることができない。
結果、図9に示すように、第1軸方向穴HL1の側壁SW1と底部BSが交わる部分や、第1軸方向穴HL1の側壁SW2と底部BSが交わる部分、あるいは、同様に第2軸方向穴の両側壁と底部が交わる部分の熱応力集中を緩和するために、C面取りによって軸方向に対して、例えば、45度の傾斜角θ1の傾斜部IS1、IS2を形成する。なお、第2軸方向穴は、壁部W0に対して第1軸方向穴HL1と対称に形成されているので、図示を省略する。第1軸方向穴HL1および第2軸方向穴を形成する絶縁部材IRは、壁部W0を形成する領域A、傾斜部IS1、IS2を形成する領域B、側壁SW1、SW2を形成する領域Cを有する構造になっている。第1軸方向穴HL1と第2軸方向穴はそれぞれ、傾斜部IS1、IS2と側壁SW1、SW2との境界部分P3、P4と、傾斜部IS1、IS2と底部BSとの境界部分P1、P2の間の領域Bが狭くなり、領域Bの軸方向長さL1を十分にとることができない。この場合には、領域Aでの熱膨張を領域Bで吸収することができず、領域Bと領域Cで示す熱膨張の方向が大きく異なるため、領域Bと領域Cとの境界部分P3、P4に熱応力が集中してしまう。
一般的に、金属製の内周側鉄心Ci及び外周側鉄心Coや絶縁部材IRは、温度が上昇すると膨張する。その膨張方向は、軸方向への膨張と内周側から外周側への膨張に分けられる。また、絶縁部材IRの線膨張係数は、絶縁部材IRの内周側のシャフトSHに固定された内周側鉄心Ciや、絶縁部材IRの外周側の外周側鉄心Coの線膨張係数に対して大きい。これによって、外周側の側壁SW2およびC面取りの傾斜部IS2では、最外周位置に外周側鉄心Coが存在することから、外周側鉄心Coによって内周側から外周側への熱膨張が阻止される。
このため、領域Aと領域Bで示す熱膨張の方向は、底部BSと傾斜部IS2において、それぞれの底面や傾斜面に垂直な方向にならず、外周側に傾いた方向になる。これにより、領域Bと領域Cで示す熱膨張の方向の変化は、内周側の傾斜部IS1と側壁SW1で示す方向の変化と比べて、外周側の傾斜部IS2と側壁SW2で示す方向の変化の方が大きくなっている。したがって、内周側のC面取りの傾斜部IS1と側壁SW1の境界部分P3よりも、外周側のC面取りの傾斜部IS2と側壁SW2の境界部分P4に熱応力がより集中してしまう。
そこで、本発明は、上記特許文献1に記載された先行技術の課題に着目してなされたものであり、絶縁部材の貫通孔の内部に第1軸方向穴と第2軸方向穴に区切る壁部を設け、壁部の一端側に第1軸方向穴の底部が形成され、壁部の他端側に第2軸方向穴の底部が形成される場合に、第1軸方向穴および第2軸方向穴の側壁と底部の境界部分や、第1軸方向穴および第2軸方向穴の傾斜部と側壁の境界部分の外周側に対する熱応力の集中を緩和できる永久磁石電動機を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の永久磁石電動機の一態様は、モータ外郭に固定された固定子と前記固定子の内側に配置された回転子を備え、回転子は、永久磁石を配置した環状の外周側鉄心と、外周側鉄心の内径側に位置する環状の内周側鉄心と、外周側鉄心と前記内周側鉄心の間に位置する絶縁部材と、内周側鉄心を支持し、モータ外郭に軸受によって回転自在に支持されたシャフトを備えている。絶縁部材は、軸方向の一端面に開口する第1軸方向穴と、軸方向の他端面に開口する第2軸方向穴と、第1軸方向穴と第2軸方向穴の間に形成される壁部を有し、壁部の一端側に第1軸方向穴の底部が形成され、壁部の他端側に第2軸方向穴の底部が形成され、第1軸方向穴および第2軸方向穴の少なくとも一方の内周側の側壁と底部の境界部分の周辺に熱応力を緩和するための第1応力緩和傾斜部と、外周側の側壁と底部の境界部分の周辺に熱応力を緩和するための第2応力緩和傾斜部とを形成し、第2応力緩和傾斜部の軸方向長さが、第1応力緩和傾斜部の軸方向長さよりも長く設定されている。
本発明の永久磁石電動機の一態様によれば、軸受の電食を防止するために、絶縁部材に軸方向に延びる第1軸方向穴と第2軸方向穴に区切る壁部を設け、壁部の一端側に第1軸方向穴の底部が形成され、壁部の他端側に第2軸方向穴の底部が形成される場合に、第1軸方向穴および第2軸方向穴の側壁と底部の境界部分や、第1軸方向穴および第2軸方向穴の傾斜部と側壁の境界部分に対する熱応力の集中を緩和することができる。
本発明に係る永久磁石電動機を示す説明図である。 本発明に係る永久磁石電動機の回転子の第1実施形態を示す斜視図である。 図2の回転子の平面図である。 図2の回転子の底面図である。 図3の断面図であり、(a)はA−A断面図、(b)は(a)のC部の部分断面図である。 外周側鉄心に永久磁石を装着した状態を示す回転子の平面図である。 従来の第1軸方向穴の底部周辺における熱応力集中と、本発明の第1軸方向穴の底部周辺における熱応力集中の緩和を説明する図であり、(a)は従来の説明図であり、(b)は本発明の説明図である。 本発明に係る永久磁石電動機の回転子の第2実施形態を示す拡大断面図である。 従来の第1軸方向穴の底部周辺における熱応力集中を説明する図である。
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な構成部品については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
以下に、本発明の一実施形態に係る永久磁石電動機について説明する。
<電動機の全体構成>
図1乃至図5は、第1実施形態における永久磁石電動機1の構成を説明する図である。図1乃至図5に示すように、この永久磁石電動機1は、例えば、ブラシレスDCモータである。この永久磁石電動機1は、空気調和機の室内機に搭載される送風ファンを回転駆動するために用いられる。
以下では、回転磁界を発生する固定子2の内部に、永久磁石31を有する回転子3を回転可能に配置したインナーロータ型の永久磁石電動機1を例に説明する。本実施形態における永久磁石電動機1は、固定子2と、回転子3と、モータ外郭6を備えている。
<固定子と回転子>
固定子2は、円筒形状のヨーク部とヨーク部から内径側に延びる複数のティース部を有した固定子鉄心21と、インシュレータ22を介してティース部に巻回された巻線23を備えている。この固定子2は、固定子鉄心21の内周面を除いて、樹脂で形成されたモータ外郭6で覆われている。
回転子3は、固定子2の固定子鉄心21の内周側に所定の空隙(ギャップ)を持って回転自在に配置されている。この回転子3は、固定子鉄心21に対向する外周面に環状に永久磁石31を配置した表面磁石形である。永久磁石31は、後述する外周側鉄心32、絶縁部材33および内周側鉄心34を介してシャフト35の周囲に固定されている。このシャフト35は、第1軸受41および第2軸受42によって支持され、第1軸受41が第1ブラケット51に、第2軸受42が第2ブラケット52にそれぞれ支持されることで、回転子3が回転自在に支持されている。
<軸受とブラケット>
第1軸受41は、回転子3のシャフト35の一端側(出力側)を支持している。第2軸受42は、回転子3のシャフト35の他端側(反出力側)を支持している。第1軸受41および第2軸受42は、例えば、ボールベアリングが用いられる。
第1ブラケット51は、金属製(鋼板やアルミニウムなど)であり、モータ外郭6の一端側すなわちシャフト35の出力側に固定されている。この第1ブラケット51は、一端を開放し、他端を底面板部510で閉塞した円筒形状のブラケット本体511と、底面板部510に設けられ第1軸受41を収容するための第1軸受収容部512を有する。
ブラケット本体511は、開放端側がモータ外郭6の外周面に圧入されている。第1軸受収容部512は、底面板部510の中央部からモータ外郭6とは反対側に突出された底部を有する円筒状に形成されている。この第1軸受収容部512の円筒内面に第1軸受41の外輪が圧入され、この第1軸受41の内輪に支持されたシャフト35の出力側が底部の中央に形成された貫通孔から外部に突出されている。
第2ブラケット52は、金属製(鋼板やアルミニウムなど)であり、モータ外郭6の他端側すなわちシャフト35の反出力側に配置されている。この第2ブラケット52は、第2軸受42を収容するための第2軸受収容部521と、第2軸受収容部521の開放端から周りに広がるフランジ部522を有する。第2軸受収容部521は、底部を有する円筒形状に形成されており、第2ブラケット52のフランジ部522は、モータ外郭6の成形時にインサート成形され、モータ外郭6と一体になっている。
第1軸受41は、第1ブラケット51に設けられた第1軸受収容部512に収容され、第2軸受42は、第2ブラケット52に設けられた第2軸受収容部521に収容されている。そして、第1軸受41と第1軸受収容部512、第2軸受42と第2軸受収容部521はそれぞれ電気的に導通している。
<回転子の具体的な構成>
以上のように構成された永久磁石電動機1では、第1軸受41や第2軸受42に電食が生じないようにするため、図1に示すように、回転子3の一部に絶縁部材33を備えている。以下、回転子3の具体的構成について説明する。
回転子3は、図1乃至図5に示すように、外径側から内径側に向かって、永久磁石31と、外周側鉄心32と、絶縁部材33と、内周側鉄心34と、シャフト35を備えている。
永久磁石31は、図1及び図6に示すように、N極とS極が周方向に等間隔に交互に表れるように複数(例えば8個)の永久磁石片311で環状に形成されている。なお、永久磁石31は、磁石粉末を樹脂で固めることで環状に形成されたプラスチックマグネットを用いてもよい。
外周側鉄心32は、図3に示すように、環状に形成されており、永久磁石31の内径側に位置している。外周側鉄心32には、図示を省略するが、後述する絶縁部材33との回り止めの機能を確保するために、内周面321(図5参照)から内径側に突出する複数(例えば4個)の外周側凸部と内周面321から外径側に凹む外周側凹部を備えている。複数の外周側凸部および外周側凹部は、中心軸Oの方向に延びるとともに周方向に等間隔に配置されている。
内周側鉄心34は、図3に示すように、環状に形成されており、外周側鉄心32の内径側に位置している。内周側鉄心34には、図示を省略するが、後述する絶縁部材33との回り止めの機能を確保するために、外周面341(図5参照)から内径側に凹む複数(例えば8個)の内周側凹部を備えている。複数の内周側凹部は、中心軸Oの方向に延びるとともに周方向に等間隔に配置されている。そして、内周側鉄心34には、中心に中心軸Oの方向に貫通する貫通穴343を備えている。
絶縁部材33は、PBTやPETなどの誘電体の樹脂で形成されており、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間に位置している。絶縁部材33は、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間に樹脂が充填されることで、外周側鉄心32と内周側鉄心34と一体に成形されている。この絶縁部材33は、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間の静電容量(固定子2の巻線23とシャフト35の間の静電容量の一部)を小さくして第1軸受41および第2軸受42の内輪側の電位を下げて内輪側と外輪側の電位を合わせている。
シャフト35は、内周側鉄心34に備えた貫通穴343に圧入やカシメなどによって固着されている。
<本発明に係る回転子の構造、作用および効果>
次に、本実施形態における永久磁石電動機1において、図2乃至図5を用いて、本発明に係る回転子3の構造やその作用および効果について説明する。
空気調和機に搭載する送風ファンを回転駆動するために用いられる永久磁石電動機1は、PWM方式のインバータで駆動されるため、巻線の中性点電位が零にならず、コモンモード電圧と呼ばれる電圧が発生する。このコモンモード電圧に起因して、永久磁石電動機1の内部の浮遊容量によって、第1軸受41や第2軸受42の外輪と内輪の間に電位差(軸電圧)が発生する。この軸電圧が軸受内部油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受内部に電流が流れて軸受内部に電食を発生させる。
上記した回転子3の構成において、絶縁部材33は、図2乃至図4に示すように、円筒形状を有し、回転子3の静電容量を低減させるために、軸方向の一端に第1軸方向穴331が形成され、軸方向の他端に同様に回転子3の静電容量を低減させるための第2軸方向穴332が形成されている。これらの第1軸方向穴331および第2軸方向穴332は、円周方向に等間隔に複数(例えば8個)形成されている。複数の第1軸方向穴331のそれぞれの間、および、複数の第2軸方向穴332のそれぞれの間には、隔壁334が形成され、隣接する第1軸方向穴331同士、および、隣接する第2軸方向穴332同士を区切っている。
さらに、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332は、図3乃至図5に示すように、軸方向で互いに対向しており、軸方向中央位置で互いの深さが同じになるように区切る壁部333が設けられている。この壁部333を設けることで、壁部333の一端側には第1軸方向穴331の底部335cが形成され、壁部333の他端側には第2軸方向穴332の底部335cが形成されている。そして、第1軸方向穴331と第2軸方向孔332のそれぞれの底部335cから軸方向に沿って側壁335aおよび側壁335bが形成されている。このように、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332は、壁部333と隔壁334の形成によって、端面形状が円周方向に沿う円弧状に形成され、端面から軸方向に沿う方向に深さを有する構造になっており、それぞれが等間隔に複数(例えば8個)形成されている。
ここで、例えば、半径が小さく軸方向に厚い回転子3に対して第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を形成するときは、回転子3の半径が小さくなるので、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の半径方向の長さ(幅)Rも小さくなる。このような回転子3の静電容量を低減させるには、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の深さを深くする必要がある。しかしながら、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の深さを深くしすぎると、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を区切る壁部333の厚さが薄くなり、絶縁部材33の機械的強度が低下することから、機械的強度を確保するためには適当な厚さの壁部333が必要となる。
したがって、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の深さは、回転子3の静電容量の低減と機械的強度の確保の両方を考慮して設定する。
そして、絶縁部材33は、PBTやPETなどの誘電体の樹脂を外周側鉄心32および内周側鉄心34とともに一体成型することから、回転子3の機械的強度や、第1軸方向孔331と第2軸方向穴332の成型時の金型の抜き勾配を考慮した場合には、上記で説明したように、図2乃至図5に示すように、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332は、壁部333と隔壁334の形成により、端面形状が円周方向に沿う円弧状に形成され、端面から軸方向に沿う方向に深さを有する構造になっており、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の半径方向の長さ(幅)Rを十分にとることができない。
ところで、一般的に、絶縁部材33の線膨張係数は、周囲の金属製の外周側鉄心32および内周側鉄心34の線膨張係数に比較して大きく、温度上昇時の膨張量や温度降下時の収縮量が外周側鉄心32および内周側鉄心34に比較して大きくなる。
絶縁部材33は、図5(a)に示すように、絶縁部材33における側壁335a、335bの膨張量や収縮量は、側壁335a、335bが半径方向に薄く、軸方向に厚いため、半径方向に比較して軸方向の方が大きくなる。
また、絶縁部材33の壁部333の膨張量や収縮量は、半径方向の成分と軸方向の成分に分けられるが、半径方向は外周側鉄心32および内周側鉄心34によって規制されるので、半径方向の膨張や収縮に比べて軸方向の膨張や収縮の方が大きくなる。
このため、温度上昇による絶縁部材33の壁部333の膨張を考えたときに、半径方向への膨張に比べて軸方向への膨張が多くなり、この壁部333の膨張の影響により、第1軸方向穴331の底部335cと側壁335aおよび335bが交わる部分や、第2軸方向穴332の底部335cと側壁335aおよび335bが交わる部分に熱応力が集中する。
ここで、第1軸方向穴331について熱応力の集中度合を検討する。なお、第2軸方向穴332は、壁部333に対して第1軸方向穴331と対称に形成されているので、説明を省略する。通常は、図7(a)で点線図示のように、第1軸方向穴331を形成する絶縁部材33の互いに対向する側壁335aおよび335bに対して底部335cがほぼ直角となっており、第1軸方向穴331を形成する絶縁部材33は、壁部333を形成する領域A、側壁335aおよび335bを形成する領域Cを有するものとなり、このままでは、領域Aと領域Cで矢印が示す熱膨張の方向が大きく異なるため、側壁335aと底部335cとの境界部分P0aおよび側壁335bと底部335cとの境界部分P0bで熱応力が集中する。
このため、境界部分P0aおよびP0bへの熱応力の集中を緩和するために、図7(a)に示すように、側壁335aおよび335bと底部335cの間に、例えば45度の角度でカットするC面取りを行って傾斜部335dおよび335eを形成することが考えられる。この場合には、第1軸方向穴331を形成する絶縁部材33は、壁部333を形成する領域A、傾斜部335dおよび335eを形成する領域B、側壁335aおよび335bを形成する領域Cを有するものとなり、傾斜部335dの形成によって、底部335cと側壁335aの境界部分P0aでの熱応力の緩和を行い、傾斜部335eの形成によって、底部335cと側壁335bの境界部分P0bでの熱応力の緩和を行い、熱応力の集中を抑制することができる。
ところで、第1軸方向穴331を形成する絶縁部材33は、壁部333を形成する領域Aの軸方向厚さや、側壁335aおよび335bを形成する領域Cの径方向厚さや、回転子3の半径の長さや、面取りの形状によっては、傾斜部335dおよび335eを形成する領域Bの軸方向長さL1を、壁部333を形成する領域Aの軸方向の熱膨張を吸収することで熱応力を緩和することができる軸方向長さLSにすることができないことがある。例えば、一般的に、金属製の内周側鉄心34及び外周側鉄心32や絶縁部材33は、温度が上昇すると膨張する。その膨張方向は、軸方向への膨張と内周側から外周側への膨張に分けられる。また、絶縁部材33の線膨張係数は、絶縁部材33の内周側のシャフト35に固定された内周側鉄心34や、絶縁部材33の外周側の外周側鉄心32の線膨張係数に対して大きい。これによって、内周側の側壁335aおよび傾斜部335dでは、絶縁部材33の熱膨張を阻止する外周側鉄心32が存在しないことから、内周側から外周側への熱膨張が阻止されることがないが、外周側の側壁335bおよび傾斜部335eでは、絶縁部材33の最外周位置に外周側鉄心32が存在することから、外周側鉄心32によって内周側から外周側への熱膨張が阻止される。
このため、領域Aと領域Bで示す熱膨張の方向は、底部335cと外周側の傾斜部335eにおいて、それぞれの底面や傾斜面に垂直な方向にならず、外周側に傾いた方向になる。これにより、領域Bと領域Cで示す熱膨張の方向の変化は、内周側の傾斜部335dと側壁335aで示す方向の変化と比べて、外周側の傾斜部335eと側壁335bで示す方向の変化の方が大きくなっている。この結果、外周側の傾斜部335eと側壁335bの境界部分P4の熱応力集中の大きさは、内周側の傾斜部335dと側壁335aの境界部分P3の熱応力集中の大きさよりも大きくなる。
したがって、例えば、領域Aの軸方向厚さが領域Cの径方向厚さよりも十分に大きく、回転子3の半径の長さも十分大きいものとした場合、第1軸方向穴331の半径方向の長さRが十分大きくなるため、45度の角度でカットするC面取りによって傾斜部335dおよび335eを形成する領域Bの軸方向長さL1を長く形成することができるので、この軸方向長さL1を熱応力を緩和することができる軸方向長さLSに設定することができる。しかしながら、図7(a)に示すように、第1軸方向穴331の半径方向の長さRが小さい場合、同じ大きさのC面取りによって内周側の傾斜部335dと外周側の傾斜部335eを形成することができるものの、内周側の傾斜部335dと側壁335aの境界部分P3よりも、外周側の傾斜部335eと側壁335bの境界部分P4の方が熱応力集中が大きいため、次のような問題が生じる。
領域Bの軸方向長さに相当する、内周側の傾斜部335dと側壁335aの境界部分P3と、側壁335aと底部335cの境界部分P0aとの間の軸方向長さL1は、小さな熱応力集中の大きさに応じて熱応力を緩和することができる軸方向長さに設定することができる。しかしながら、外周側の傾斜部335eと側壁335bの境界部分P4と、側壁335bと底部335cの境界部分P0bとの間の軸方向長さL1は、大きな熱応力集中の大きさに応じて熱応力を緩和することができる軸方向長さLsに比較して短くなる。このため、外周側の傾斜部335eと側壁335bの境界部分P4には依然として熱応力が集中してしまう。
そこで、本実施形態では、図7(b)に示すように、内周側の側壁335aと底部335cの境界部分P0aの周辺と、外周側の側壁335bと底部335cの境界部分P0bの周辺での熱応力の集中を緩和するために、内周側の側壁335aと底部335cの境界部分P0aの周辺に45度のC面取りによって傾斜角θ1の熱応力を緩和するための第1応力緩和傾斜部336aを形成し、外周側の側壁335bと底部335cの境界部分P0bの周辺に45度のC面取りによって傾斜角θ1の熱応力を緩和するための第2応力緩和傾斜部336bを形成している。
第1応力緩和傾斜部336aは、内周側での小さな熱応力集中の大きさに応じて、側壁335aの内面を壁部333まで延長させた仮想面に対して第1応力緩和傾斜部336aを半径方向に投影したときの軸方向長さ(以下、単に軸方向長さと称す)L2を熱応力緩和に必要な軸方向長さLsに設定している。例えば、第1軸方向穴331の半径方向の長さRを3mm、熱応力緩和に必要な長さL2を0.8mmとした。これにより、内周側の側壁335aと第1応力緩和傾斜部336aの境界部分P3を形成している。
また、第2応力緩和傾斜部336bは、外周側の大きな熱応力集中の大きさに応じて、側壁335bの内面を壁部333まで延長させた仮想面に対して第2応力緩和傾斜部336bを半径方向に投影したときの軸方向長さ(以下、単に軸方向長さと称す)L1を熱応力緩和に必要な軸方向長さLsに設定している。例えば、第1軸方向穴331の半径方向の長さRを3mm、熱応力緩和に必要な長さL1を1.7mmとした。この結果、外周側の側壁335bと第2応力緩和傾斜部336bの境界部分P4を形成している。
したがって、外周側の第2応力緩和傾斜部336bの熱応力の緩和に必要な軸方向長さL1を、内周側の第1応力緩和傾斜部336aの熱応力の緩和に必要な軸方向長さL2よりも長く設定することにより、第1軸方向穴331の内周側と外周側の熱応力集中の大きさの違いに応じて、温度上昇による壁部333からの軸方向の熱膨張を吸収することができる。このため、内周側の側壁335aと第1応力緩和傾斜部336aの境界部分P3とともに、外周側の側壁335bと第2応力緩和傾斜部336bの境界部分P4での応力集中を緩和することができる。
なお、図7(b)に示す熱応力の緩和に必要な軸方向長さL1とL2の関係は、第1軸方向穴331の内周側と外周側の熱応力集中の大きさの違いに応じて、内周側の第1応力緩和傾斜部336aでは、図7(a)での軸方向長さL1が熱応力緩和に必要な軸方向長さLsより過剰な長さとなるため、この軸方向長さL1より短く、熱応力緩和に必要な軸方向長さLsと等しい軸方向長さL2になるようにし、外周側の第2応力緩和傾斜部336bでは、図7(a)での軸方向長さL1が熱応力緩和に必要な軸方向長さLsに対して不足した長さとなるため、この軸方向長さL1より長い熱応力緩和に必要な軸方向長さLs(L1)になるようにした。このような軸方向長さL1およびL2を確保するために、図7(b)に示すように、第1応力緩和傾斜部336aのC面取りと第2応力緩和傾斜部336bのC面取りの位置を第1軸方向穴331の半径方向の中央位置から内周側にずらすようにしている。
本出願人により実際に熱応力解析を行った結果では、第1軸方向穴331の半径方向の長さRを3mmしか取れない構造であっても、図7(a)のように、C面取りのみを行った場合に比較して熱応力を約5分の4まで低下させることが可能となった。
したがって、内周側の側壁335aと底部335cの境界部分P0aの周辺に熱応力を緩和するための第1応力緩和傾斜部336aを形成し、外周側の側壁335bと底部335cの境界部分P0bの周辺に熱応力を緩和するための第2応力緩和傾斜部336bを形成し、第2応力緩和傾斜部336bの熱応力の緩和に必要な軸方向長さL1(=Ls)を、第1応力緩和傾斜部336aの熱応力の緩和に必要な軸方向長さL2(=Ls)よりも長く設定することにより、壁部333の軸方向の熱膨張の影響による第1軸方向穴331の底部335cの周辺(底部周辺)の外周側における熱応力の集中を解消することができる。このため、絶縁部材33の繰り返しの熱応力の集中による耐久性の低下を抑制することができ、割れやクラックの発生を抑制して長寿命化することができる。ここで、第1軸方向穴331の底部335cの周辺(底部周辺)とは、内周側の側壁335aと底部335cの境界部分P0aの周辺や、外周側の側壁335bと底部335cの境界部分P0bの周辺のことを示す。以下の説明では底部周辺と省略して表記することとする。
また、第1軸方向穴331と同様に、第2軸方向穴322についても、図5(b)に示すように、第2軸方向穴332の底部周辺には、第1応力緩和傾斜部336aと第2応力緩和傾斜部336bを形成し、第2応力緩和傾斜部336bの軸方向に対する熱応力の緩和に必要な軸方向長さL1を、第1応力緩和傾斜部335dの軸方向に対する熱応力の緩和に必要な軸方向長さL2よりも長く設定することにより、上記と同様の作用効果を得ることができる。
しかも、第1応力緩和傾斜部336aと第2応力緩和傾斜部336bで必要とする軸方向長さは、C面取りの位置を第1軸方向穴331の半径方向の中心線を挟んで対称な位置から内周側にずらすだけで容易に確保することができる。
以上のとおり説明してきた第1の実施形態によれば、回転子3の直径が小さく、回転子3の静電容量を低減させるために、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の底部周辺に十分な大きさのC面取りを行うことができないときでも、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332に対して、内周側の側壁335aと底部335cの境界部分P0aの周辺に熱応力を緩和するための第1応力緩和傾斜部336aを形成し、外周側の側壁335bと底部335cの境界部分P0bの周辺に熱応力を緩和するための第2応力緩和傾斜部336bを形成し、第2応力緩和傾斜部336bの軸方向長さL1を、第1応力緩和傾斜部336aの軸方向長さL2よりも長く設定することにより、第1軸方向穴331及び第2軸方向穴332の外周側の側壁335bと底部335cの境界部分P0bや、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の外周側の第2応力緩和傾斜部336bと側壁335bの境界部分P4に対する熱応力の集中を緩和することができる。
上記説明では、永久磁石電動機1の使用環境や駆動状態で固定子2の巻線23での発熱によって壁部333が熱膨張する場合について説明したが、永久磁石電動機1の使用環境や駆動状態によって温度降下する際の熱収縮時にも第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の底部周辺における熱応力の集中を緩和することができる。
したがって、シャフト35を支持する第1軸受41および第2軸受42の電食を防止するために回転子3に絶縁部材33を配置し、絶縁部材33に第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を形成した場合に、直径の小さな回転子3を製作する際に問題となる絶縁部材33に発生する熱応力の集中を緩和させることができる。結果、回転子3の静電容量を低減するとともに、耐久性を有する小型の回転子3を製作することができ、永久磁石電動機1自体も小型化することができる。
なお、上記第1の実施形態では、第1応力緩和傾斜部336aおよび第2応力緩和傾斜部336bを、それぞれC面取りの形状とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、C面取りの形状に代えてR面取りの形状を適用することもできる。また、上記第1の実施形態では、内周側の側壁335aと底部335cの境界部分P0aの周辺に45度のC面取りによって傾斜角θ1の第1応力緩和傾斜部336aと、外周側の側壁335bと底部335cの境界部分P0bの周辺に45度のC面取りによって傾斜角θ1の第2応力緩和傾斜部336bとを形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、内周側の第1応力緩和傾斜部336aと外周側の第2応力緩和傾斜部336bで傾斜角を変えてもよく、例えば、45度のC面取りによって内周側の第1応力緩和傾斜部336aの傾斜角を45度にし、面取りによって長さL1を1.7mmより大きくして外周側の第2応力緩和傾斜部336bの傾斜角を30度にし、内周側の傾斜角よりも外周側の傾斜角を小さくしてもよい。
なお、上記実施形態では、第1応力緩和傾斜部336aの軸方向長さL1を応力緩和に必要な軸方向長さLsと等しく設定した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、軸方向長さL1を応力緩和に必要な軸方向長さLsより長く設定するようにしてもよい。同様に、第2応力緩和傾斜部336bの軸方向長さL2についても応力緩和に必要な軸方向長さLsより長く設定するようにしてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について図8を用いて説明する。
この第2の実施形態では、第1応力緩和傾斜部336aと第2応力緩和傾斜部336bを、C面取りの形状とする場合に代えて、2段の応力緩和傾斜部を適用するようにしたものである。なお、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332は壁部333に対して対称形状に形成されているため、第2軸方向穴332の説明は省略する。
すなわち、第2の実施形態では、図8に示すように、底部335cから熱応力を緩和することができる軸方向長さLs(L4)に相当する内周側の側壁335aの端部から軸方向に対して、例えば、図8に示す寸法により15度の面取りを行って第1傾斜角θ2の第3応力緩和傾斜部336c1を形成し、底部335c側については応力緩和を行うことができる、例えば、図8に示す寸法により45度の面取りを行って第2傾斜角θ3の第4応力緩和傾斜部336c2を形成している。
45度の面取りを行った第4応力緩和傾斜部336c2の形成によって、第4応力緩和傾斜部336c2と側壁335aとの間の角度θ3は45度に形成され、第4応力緩和傾斜部336c2と底部335cとの間の角度θ4は45度に形成される。これにより、第1軸方向穴331の内周側の側壁335aと底部335cの間には、第3応力緩和傾斜部336c1と第4応力緩和傾斜部336c2の組合わせにより、2段の応力緩和傾斜部336が形成されている。したがって、絶縁部材33に形成される第1軸方向穴331の内周側の側壁335aと底部335cの境界部分P0aの周辺には、壁部333を形成する領域A、第3応力緩和傾斜部336c1および第4応力緩和傾斜部336c2を形成する領域Bと、内周側の側壁335aを形成する領域Cを有するものとなる。
また、図8に示すように、底部335cから熱応力を緩和することができる軸方向長さLs(L3)に相当する外周側の側壁335bの端部から軸方向に対して、例えば、図8に示す寸法により約13度の面取りを行って第3傾斜角θ5の第5応力緩和傾斜部336d1を形成し、底部335c側については応力緩和を行うことができる、例えば、図8に示す寸法により45度の面取りを行って第4傾斜角θ6の第6応力緩和傾斜部336d2を形成している。
45度の面取りを行った第6応力緩和傾斜部336d2の形成によって、第6応力緩和傾斜部336d2と側壁335bとの間の角度θ6は45度に形成され、第6応力緩和傾斜部336d2と底部335cとの間の角度θ7は45度に形成される。これにより、第1軸方向穴331の外周側の側壁335bと底部335cの間には、第5応力緩和傾斜部336d1と第6応力緩和傾斜部336d2の組合わせにより、2段の応力緩和傾斜部336が形成されている。したがって、絶縁部材33に形成される第1軸方向穴331の外周側の側壁335bと底部335cの境界部分P0bの周辺には、壁部333を形成する領域A、第5応力緩和傾斜部336d1および第6応力緩和傾斜部336d2を形成する領域Bと、外周側の側壁335bを形成する領域Cを有するものとなる。
また、上記のように、第4応力緩和傾斜部336c2の軸方向に対する第2傾斜角θ3は、第3応力緩和傾斜部336c1の軸方向に対する第1傾斜角θ2より大きく設定され、第6応力緩和傾斜部336d2の軸方向に対する第4傾斜角θ6は、第5応力緩和傾斜部336d1の軸方向に対する第3傾斜角θ5より大きく設定されている。
この第2の実施形態によると、第1軸方向穴331の底部周辺の内周側に2段の第3応力緩和傾斜部336c1及び第4応力緩和傾斜部336c2を設け、第1軸方向穴331の底部周辺の外周側に2段の第5応力緩和傾斜部336d1及び第6応力緩和傾斜部336d2を設けることにより、矢印で示す第3応力緩和傾斜部336c1と内周側の側壁335aの境界部分P3での熱膨張の方向の変化を図7(b)と比べて小さくすることができ、矢印で示す第5応力緩和傾斜部336d1と外周側の側壁335bの境界部分P4での熱膨張の方向の変化を図7(b)と比べて小さくすることができる。このため、第3応力緩和傾斜部336c1と内周側の側壁335aの境界部分P3と、第5応力緩和傾斜部336d1と外周側の側壁335bの境界部分P4での熱応力の集中を第1の実施形態に比較してより抑制することができる。
なお、上記第2の実施形態においては、2段の第3応力緩和傾斜部336c1及び第4応力緩和傾斜部336c2を内周側に形成し、2段の第5応力緩和傾斜部336d1及び第6応力緩和傾斜部336d2を外周側に形成した場合について説明した。本発明は、上記構成に限定されるものではなく、3段以上の応力緩和傾斜部336を形成するようにしてもよい。また、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、1段の応力緩和傾斜部336を内周側に形成し、2段の第5応力緩和傾斜部336d1及び第6応力緩和傾斜部336d2を外周側に形成して、外周側だけ2段の応力緩和傾斜部336にしてもよい。
また、第3応力緩和傾斜部336c1および第4応力緩和傾斜部336c2と、第5応力緩和傾斜部336d1及び第6応力緩和傾斜部336d2は、面取りによって直線的な傾斜面を形成するものに限定されず、面取りによって湾曲面を形成することができる。
また、上記各実施形態では、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の端面形状は、円周方向に沿う円弧状に形成する場合に限らず、円周方向の両端部を半円形状とすることができる。また、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の個数は8個に限定されるものではなく、絶縁部材33の機械的強度を確保できれば、任意の個数とすることができる。また、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の個数は、複数に限定されるものではなく、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332を1個の穴として円周方向に連続する形状に形成する場合でもよい。
また、上記各実施形態では、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を壁部333に対して対称形状に形成しているので、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332のそれぞれの底部周辺に応力緩和傾斜部336を形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を壁部333に対して非対称形状に形成した場合には、第1軸方向穴331または第2軸方向穴332のいずれか一方の、熱応力の集中度合いの強い方の底部周辺に応力緩和傾斜部を形成してもよい。
さらに、上記各実施形態では、外周側鉄心32の外周面に永久磁石31を配置した表面磁石形の回転子3に本発明を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、外周側鉄心32の外周面に対する弦位置に軸方向に延長するスロットを形成し、このスロット内に永久磁石を配置した埋込磁石形の回転子にも本発明を適用することができる。
1…永久磁石電動機
2…固定子
21…固定子鉄心
22…インシュレータ
23…巻線
3…回転子
31…永久磁石
311…永久磁石片
32…外周側鉄心
321…内周面
33…絶縁部材
33a…一端面
33b…他端面
331…第1軸方向穴
332…第2軸方向穴
333…壁部
334…隔壁
335a,335b…側壁
335c…底部
335d,335e…傾斜部
336a…第1応力緩和傾斜部
336b…第2応力緩和傾斜部
336c1…第3応力緩和傾斜部
336c2…第4応力緩和傾斜部
336d1…第5応力緩和傾斜部
336d2…第6応力緩和傾斜部
34…内周側鉄心
341…外周面
343…貫通穴
35…シャフト
41…第1軸受
42…第2軸受
51…第1ブラケット
511…ブラケット本体
512…第1軸受収容部
52…第2ブラケット
521…第2軸受収容部
522…フランジ部
O…中心軸

Claims (5)

  1. モータ外郭に固定された固定子と前記固定子の内側に配置された回転子を備え、
    前記回転子は、永久磁石を配置した環状の外周側鉄心と、前記外周側鉄心の内径側に位置する環状の内周側鉄心と、前記外周側鉄心と前記内周側鉄心の間に位置する絶縁部材と、前記内周側鉄心を支持し、前記モータ外郭に軸受によって回転自在に支持されたシャフトを備え、
    前記絶縁部材は、軸方向の一端面に開口する第1軸方向穴と、軸方向の他端面に開口する第2軸方向穴と、前記第1軸方向穴と前記第2軸方向穴の間に形成される壁部を有し、前記壁部の一端側に前記第1軸方向穴の底部が形成され、前記壁部の他端側に前記第2軸方向穴の底部が形成され、
    前記第1軸方向穴および前記第2軸方向穴の少なくとも一方の、内周側の側壁と前記底部の境界部分の周辺に熱応力を緩和するための第1応力緩和傾斜部を形成し、外周側の側壁と前記底部の境界部分の周辺に熱応力を緩和するための第2応力緩和傾斜部を形成し、前記第2応力緩和傾斜部の軸方向長さを、前記第1応力緩和傾斜部の軸方向長さよりも長くしたことを特徴とする永久磁石電動機。
  2. モータ外郭に固定された固定子と前記固定子の内側に配置された回転子を備え、
    前記回転子は、永久磁石を配置した環状の外周側鉄心と、前記外周側鉄心の内径側に位置する環状の内周側鉄心と、前記外周側鉄心と前記内周側鉄心の間に位置する絶縁部材と、前記内周側鉄心を支持し、前記モータ外郭に軸受によって回転自在に支持されたシャフトを備え、
    前記絶縁部材は、軸方向の一端面に開口する第1軸方向穴と、軸方向の他端面に開口する第2軸方向穴と、前記第1軸方向穴と前記第2軸方向穴の間に形成される壁部を有し、前記壁部の一端側に前記第1軸方向穴の底部が形成され、前記壁部の他端側に前記第2軸方向穴の底部が形成され、
    前記第1軸方向穴および前記第2軸方向穴の少なくとも一方の、内周側の側壁と前記底部の境界部分の周辺には、熱応力を緩和することができる前記底部からの軸方向長さに相当する前記第1軸方向穴および前記第2軸方向穴の少なくとも一方の内周側の側壁の端部から軸方向に対して第1傾斜角で傾斜する第3応力緩和傾斜部が形成され、前記第3応力緩和傾斜部と前記底部の間に第2傾斜角で傾斜する第4応力緩和傾斜部が形成され、
    前記第1軸方向穴および前記第2軸方向穴の少なくとも一方の、外周側の側壁と前記底部の境界部分の周辺には、熱応力を緩和することができる前記底部からの軸方向長さに相当する前記第1軸方向穴および前記第2軸方向穴の少なくとも一方の内周側の側壁の端部から軸方向に対して第3傾斜角で傾斜する第5応力緩和傾斜部が形成され、前記第5応力緩和傾斜部と前記底部の間に第4傾斜角で傾斜する第6応力緩和傾斜部が形成され、
    前記第5応力緩和傾斜部及び前記第6応力緩和傾斜部の熱応力の緩和に必要な軸方向長さを、前記第3応力緩和傾斜部および前記第4応力緩和傾斜部の熱応力の緩和に必要な軸方向長さよりも長くしたことを特徴とする永久磁石電動機。
  3. 前記第4応力緩和傾斜部の軸方向に対する第2傾斜角は、前記第3応力緩和傾斜部の軸方向に対する第1傾斜角より大きく設定され、前記第6応力緩和傾斜部の軸方向に対する第4傾斜角は、前記第5応力緩和傾斜部の軸方向に対する第3傾斜角より大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の永久磁石電動機。
  4. 前記第1軸方向穴および前記第2軸方向穴の少なくとも一方に、3段以上の応力緩和傾斜部を形成したことを特徴とする請求項2または3に記載の永久磁石電動機。
  5. 前記第1軸方向穴と前記第2軸方向穴は、円周方向に複数設けられ、複数の前記第1軸方向穴のそれぞれの間、および、複数の前記第2軸方向穴のそれぞれの間に隔壁が形成され、前記第1軸方向穴と前記第2軸方向穴の端面形状が円周方向に沿う円弧状に形成されることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の永久磁石電動機。
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