JP2019178982A - 降下煤塵量推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】推定精度を犠牲にすることなく、任意点での降下煤塵の量を推定する。【解決手段】地上への降下煤塵量を推定する方法であって前進方向に開口する煤塵採取口から大気を吸引する吸引装置及び煤塵採取口から取り込んだ大気中の降下煤塵の煤塵量を計測する連続計測装置を備えた無人航空機を、飛行速度が[吸引装置の吸引流量]/[煤塵採取口の開口面積]となるように風向きと交差する水平飛行経路に沿って水平飛行させ、水平飛行経路を飛行中に連続計測装置で測定した煤塵量を、測定した時刻及び測定した位置に対応付けて記録する第一工程と、連続計測装置で測定した煤塵量、測定した時刻、及び測定した位置に基づいて水平飛行経路上に複数設定した計測点毎に降下煤塵濃度を算出する第二工程と、各計測点での降下煤塵濃度及び風向きを用いるとともに降下煤塵量予測モデルに基づいて各計測点より風下での地上における降下煤塵量を推定する第三工程を有する。【選択図】図8

Description

本開示は、降下煤塵量を推定する降下煤塵量推定方法に関するものである。
種々の生産活動および消費活動に伴って発生する降下煤塵は、重要な環境汚染項目のひとつとみなされており、その実態把握と対策が社会から求められている。降下煤塵は、例えば、農業活動や自動車の走行、あるいは、各種工業での生産時に発生する。近年では原子力発電所の事故に伴う発塵が注目されている。大気中の煤塵の実態把握のためには、大気中における煤塵の濃度分布を把握することが特に重要である。
大気中において自由落下し得る煤塵は、降下煤塵と呼ばれており、降下煤塵の直径は、概ね10μm以上とされている。
この降下煤塵の量を予測する方法としては、プルーム式が知られている(例えば、非特許文献5参照)。この方法では、発塵源での発塵を点とみなし、その発塵速度、発塵源高さ、風向風速、大気安定度等に基づいて、任意点での降下煤塵量を算出するものである。なお、降下煤塵量とは、単位面積の地表面に単位時間当たり沈着する降下煤塵の質量、即ち、地表面における降下煤塵の鉛直流束のことを示し、例えば、t/月kmの単位で表す。
また、流体の数値シミュレーションを用いて発塵源と評価点を含む大気領域内での流れ場を求め、この流れ場で発塵源からの発塵を模擬した粒子の移動をモデル化した粒子シミュレーションを行うことによって、降下煤塵量を予測する方法も知られている。
このような方法では、発塵源が一箇所であり、発塵速度を正確に把握する必要がある。このため、例えば地上の煤塵が風によって舞い舞い上がって降下する場合、発塵源は点でなく、発塵速度を把握することも容易ではないので、予測が困難となる。
また、発塵点での風速などの条件と任意点での降下煤塵量推移とを比較して、発塵点での条件が任意点での降下煤塵量に与える影響を定量化する方法も考えられる。このような方法は、発塵源が一箇所である必要があり、発塵源が複数存在する場合には、降下煤塵量を正確に評価することは困難である。
このように、発塵源での発塵が広く分散し変動する場合、発塵源近傍での降下煤塵の状態を知る必要があり、その装置として降下煤塵の沈着速度を計測する据置型の計測装置が知られている(例えば特許文献1〜4参照)。
これらの装置には、パーティクルカウンタを用いて数十秒周期での降下煤塵の捕集量を計測する例が記載されている。また、採取した大気中の煤塵を分級するためのバーチャルインパクタについての記載もあり、バーチャルインパクタの構造についても知られている(例えば、非特許文献1参照)。
航空機を用いた煤塵採取装置として、固定翼有人飛行機の機体に設けたガラス板に煤塵を付着させて捕集する方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。また、固定翼有人飛行機に搭載した捕集器のフィルタで煤塵を捕集する装置が知られている(例えば、非特許文献3参照)。また、固定翼有人飛行機内に搭載したハイボリュームサンプラに機体外から吸引した大気を供給して微粒子を捕集する装置が開示されている(例えば、非特許文献4参照)。
なお、本明細書において、単に「航空機」と記載した際には、有人の航空機を示す。
この他、測定対象は、直径10μm未満のエアロゾル(降下煤塵ではない)ではあるものの、無人航空機に大気の吸引装置および軽量の光散乱式煤塵濃度計(本来、作業環境のSPMやPM2.5を測定するためのもの等)を搭載して、上空でのエアロゾル濃度を測定する技術も報告されている。
特許第4795280号報 特許第4795295号報 特許第4870243号報 特許第4870244号報
JIS規格 Z7152:2013 土木学会論文集B2(海岸工学)VOL.65−B2,No1,2009,1166-1170. 小原えり 他:「高空における放射能塵の調査研究」,防衛装備庁技術シンポジウム2015. 定永靖宗 他:「東シナ海上空における窒素化合物の航空機観測」,エアロゾル研究, Vol.29(2014), No,S1, PP.117-124. 環境庁監修:「浮遊粒子状物質汚染予測マニュアル」第5章〜第6章,1997,東洋館出版社.
都市域における発塵源は、一般に複数存在し、かつ、各発塵源から飛散する降下煤塵のプルームが互いに重なりを持っていたりすることがある。この降下煤塵プルームの重なりの影響を除去して特定の発塵源の風下地点での降下煤塵量に与える影響を評価する手法は、従来存在しなかった。
本開示は、このような問題に鑑みなされたものであり、推定精度を犠牲にすることなく、任意点での降下煤塵の量を推定することができる降下煤塵量推定方法を提供することを目的とする。
従来の技術では、互いに重なりあう降下煤塵プルームの条件下において、特定の発塵源の下流での降下煤塵への影響を正確に評価することは、以下の理由で困難であることを、本発明者らは見出した。
都市域における発塵源は、複数のものが管理点での降下煤塵量に影響を与える。このため、地上据置型の降下煤塵計測装置を多数設置したとしても、これらの計測値から各発塵源からの降下煤塵量影響を切り分けるための推定モデルが必要であり、正確な推定モデル技術は未だ確立していない。このため、降下煤塵量影響の正確な予測は困難である。
上空での降下煤塵影響の測定値があれば、予測精度は向上し得る。しかし、前述した特許文献1〜4の据置型の装置では、測定精度が高く時間分解能も所要を満たしているものの、空間分布を求めるためには空間的に多数の装置を設置しなければならない。特に、数十m以上の高度にこれらの装置を多数配置するためにはその高さの架台を多数建設しなければならないので、経済的合理性を欠く。
ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)等のリモートセンシング技術を用いて空間上の煤塵分布を地上から測定する手段も考えられる。確かに、直径10μmを大きく下回る微小粒子であるエアロゾルの場合には、粒子の比表面積が大きいので照射レーザ光を多量に反射・散乱し、これを測定することによって空間での濃度分布に換算しうる。しかし、比表面積の著しく小さい降下煤塵の場合、通常の大気中濃度のレベルでは、レーザ光の反射・散乱光は、通常、センサの検出精度を下回るので、このような方法も困難である。
また、対象とする降下煤塵量の予測方法においては、測定値の高い時間・空間分解能が求められる。都市域における個々の煤塵発生源の大きさおよび継続時間は、火山等の自然由来の発塵源に比べて著しく小さいので、煤塵の空間濃度分布を測定するためには、高い時間および空間分解能で煤塵を計測できる装置が必要である。例えば、空間分解能には数〜数十m以下、時間分解能には数分程度以下が求められる。
また、個々の発塵源は数m〜数十mと比較的小さいものが多く、発塵源の数が多数分布するのが都市域での発塵の特徴である。また、大気中の降下煤塵濃度の計測を行い、これを発塵源からの発塵速度に関係づけただけでは、この発塵源の管理点での降下煤塵量への影響を予測することには不十分である。なぜならば、降下煤塵量の予測には発塵源高さの情報が必要だからである。
このために、降下煤塵濃度の高度方向の分布情報も必要である。従って、多数の発塵源の影響を把握するためには、少なくとも水平方向に数十〜数百mの範囲での煤塵濃度分布を測定する必要がある。また、都市域の発塵源の高さは数m〜100m程度であるので、この範囲での空間分布を測定する能力も必要である。
高い分解能で降下煤塵濃度を測定する方法として、単一の煤塵計測機を搭載した航空機を測定対象の空間内に飛行させ、時系列的に測定した煤塵濃度を飛行時に通過した空間上の点と照合して空間濃度分布に換算することが考えられる。
この方法の場合、例えば、数分程度の発塵源の現象を把握するためには、数分以内に対象空間を飛行させたうえで、この飛行時間を例えば、数十点の空間点に分割して各点での煤塵濃度を算出する。このため、計測機に求められる時間分解能は、数分の数十分の一、即ち、数秒〜数十秒程度の時間分解能が必要である。しかし、そのような装置は従来、存在しなかった。
例えば、前述した非特許文献2,3の技術では、有人固定翼機に煤塵捕集装置を搭載するので、1回の飛行で採取できる煤塵データは1種類しかないので、そもそも煤塵の空間分布を求めることは飛行間隔レベル(例えば、数十分)でしか行えない。このため、本願が対象とする計測時間分解能を満足できない。
また、仮に有人固定翼機に時間分解能の高い計測装置、例えば、特許文献4に記載の装置を搭載したとしても、有人固定翼飛行機の飛行速度は少なくとも30m/s以上でないと飛行を継続できないので、例えば、仮に時間分解能が1秒の計測機を用いたとしても空間分解能は30m以上となる。実際には、大気中の存在確率がエアロゾルに比べて著しく小さい降下煤塵を統計的に有意な個数を採取するためには、既存の計測装置を前提とする限り1秒周期のサンプリングでは著しく困難であるので、空間分解能は、実質的に100m以上となってしまい、所要を満足できない問題がある。
有人固定翼機の代わりに有人回転翼機を用いれば、より低速での飛行が可能である。しかし、有人であるためには、重量が少なくとも数百kg以上の機体が必要であり、その回転翼の大きさも直径5〜10mに近いものが必要である。このような比較的大きな回転翼機を低速飛行しながら数m〜数十mのスケールの発塵に突入させて煤塵の捕集を行うとすると、回転翼や機体そのものが大気の流れ場を少なくとも数十mのスケールで乱すため、捕集される煤塵の代表性が著しく損なわれる問題がある。即ち、所要の空間分解能を満足できない。
さらに、有人機の場合、その飛行は公的な航空管制の指揮下にあり、都市の上空での飛行、特に、高度500m未満での飛行は、法律上、大きく規制されるため、目的とする発塵源の近くを飛行させること自身がそもそも容易ではない。
そこで航空機を小型化するために小型無人航空機を用いることが考えられる。測定対象の発塵の大きさを考慮すると、小型無人機の大きさは、概ね直径1m程度以下であることが必要であり、無人機であっても航空法の規制をより厳しく受けて飛行場所の制約のより大きい25kg以上という条件に該当しないこと、即ち、離陸重量25kg未満であることが好ましい。既存の無人航空機を前提にした場合、上記の直径1m以下の無人航空機の離陸重量は、通常10kg以下である。
以下、本願で小型無人航空機とは、離陸重量が少なくとも25kg未満、好ましくは10kg未満の無人航空機のことを意味する。
UAVに求められる典型的な作業時間である10分以上の飛行を実施する場合に、例えば、離陸重量10kgの無人航空機の搭載可能重量(バッテリー重量を除く)は、2〜3kgが上限である。このように、小型無人航空機は、搭載可能重量が比較的小さいため、通常、数十〜数百kgに達する装置である特許文献1〜4の装置を小型無人機の搭載することはできない。
特許文献1〜4の装置を小型無人航空機に搭載可能な2〜3kg程度まで軽量化できない理由は、降下煤塵の空間存在確率がエアロゾルに比べて著しく小さいため、統計的に有意な個数の降下煤塵数を所定の時間、例えば、数秒の間に計測機に導入するように、大流量で大気を吸引しなければならないからである。特に、これらの装置では、構造上、配管系内で抵抗体である煤塵フィルタを介したうえでの吸引が必要なため、少なくとも数kPa程度の揚程が必要であり、吸引装置としてブロワ、または、圧縮機によって全量の吸引を行う必要がある。
大容量、かつ、大揚程のブロワ、または、圧縮機は、軽量化が困難なため、小型無人航空機に搭載できない。例えば、容量100L/minの遠心ブロワは、通常、5〜10kg以上の重量を必要とする。尚、非特許文献2、3でのように有人固定翼機を用いれば、ブロワを用いなくても飛行速度に基づく動圧によって受動的に降下煤塵を計測機内に導入できる可能性もある。
しかし、本願で想定する小型無人航空機の使用方法では、高々、数m/sの飛行速度しかないため、数千Paの動圧を得ることは不可能である。
小型無人航空機に搭載する煤塵計測装置が上記の従来技術のひとつでのように市販の作業環境測定用の光散乱式煤塵濃度計であるならば、計測機重量の点では実現可能である。しかし、降下煤塵は、前述のように比表面積がエアロゾルに比べて著しく小さいため、このような計測機で降下煤塵濃度を測定することはできない。また、市販の作業環境測定用の光散乱式煤塵喉濃度計でのように、単純に周囲の大気の吸引を行っても、大気中の降下煤塵を吸引大気とともに計測機に導入することはできない。これは、降下煤塵の慣性がエアロゾルに比べて極端に大きいため、降下煤塵周囲の大気が吸引されても、吸引大気に降下煤塵がほとんど追従しないからである。
このように従来技術を前提とした場合、都市域での降下煤塵の空間濃度分布を所要の分解能で測定することは著しく困難である。
また、仮に、上空での大気中での降下煤塵濃度が測定できたとしても、それだけでは降下煤塵量の影響を評価することはできない。なぜならば、この測定値が着目発塵源からの発塵速度とどのような関係にあるかは、先験的には不明であり、また、この関係を調査するとしてもどのように調査すればよいかの指針が存在しないからである。
本発明は、着目する比較的小型の特定発塵源からの発塵が下流任意の点(管理点含む)での降下煤塵量に与える影響を定量的に評価する手法を提供することを目的とする。
そこで、本願では以下のようにする。
態様1は、地上への降下煤塵量を推定する方法であって、前進方向に開口する煤塵採取口から大気を吸引する吸引装置及び煤塵採取口から取り込んだ大気中の降下煤塵の煤塵量を計測する連続計測装置を備えた無人航空機を、飛行速度が[吸引装置の吸引流量]/[煤塵採取口の開口面積]となるように風向きと交差する水平飛行経路に沿って水平飛行させるとともに、前記水平飛行経路を飛行中に前記連続計測装置で測定した煤塵量を、測定した時刻及び測定した位置に対応付けて記録する第一工程と、前記連続計測装置で測定した煤塵量、測定した時刻、及び測定した位置に基づいて、前記水平飛行経路上に複数設定した計測点毎に降下煤塵濃度を算出する第二工程と、各計測点での降下煤塵濃度及び風向風速の計測値を用いるとともに降下煤塵量予測モデルに基づいて各計測点より風下での地上における降下煤塵量を推定する第三工程と、を有する降下煤塵量推定方法である。
態様2は、前記水平飛行経路は、前記無人航空機の前進方向が互いに異なる往路及び復路を含む態様1に記載の降下煤塵量推定方法である。
態様3は、前記水平飛行経路を複数の異なる高度に設定し、鉛直方向に並ぶ各計測点と水平方向に並ぶ各計測点とを含む鉛直方向測定断面を想定するとともに、前記水平飛行経路の風上に存在する発塵源からの降下煤塵の拡散領域を示す降下煤塵プルームの鉛直断面の全域が前記鉛直方向測定断面内に含まれるように前記水平飛行経路を設定した態様1または2に記載の降下煤塵量推定方法である。
態様4は、前記降下煤塵量予測モデルが発塵速度を用いるものであり、前記水平飛行経路上での計測点における見かけ上の発塵速度を、[発塵速度]=[計測点での降下煤塵濃度算出値]×[計測点に対応する鉛直断面積]×[風速計測値]×cos[鉛直方向測定断面の法線と風ベクトルのなす角]なる式で算出する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の降下煤塵量推定方法である。
態様5は、前記降下煤塵量予測モデルがプルーム式である態様1から態様4のいずれかに記載の降下煤塵量推定方法である。
態様6は、前記煤塵採取口と前記連続計測装置との間に、前記煤塵採取口からの空気を降下煤塵濃度の高い高濃度空気及び降下煤塵濃度の低い低濃度空気に分離して流出するバーチャルインパクタを設け、該バーチャルインパクタから高濃度空気を流出する高濃度空気流出路に前記連続計測装置及び該連続計測装置での前記高濃度空気の通過を促進させるブロワ又は圧縮機からなる促進部を設けるとともに、前記バーチャルインパクタからの前記低濃度空気を流出する低濃度空気流出路にファンを設け、前記促進部及び前記ファンで前記吸引装置を構成した態様1から態様5のいずれかに記載の降下煤塵量推定方法である。
態様7は、前記連続計測装置がパーティクルカウンタである態様1から態様6のいずれかに記載の降下煤塵量推定方法である。
態様8は、評価対象とする発塵源の風上と風下とにおいて、態様1から態様7のいずれかに記載の降下煤塵量推定方法をそれぞれ適用し、風下で測定した風下降下煤塵量から風上で測定した風上降下煤塵量を減じて得た降下煤塵量を、評価対象とする発塵源による降下煤塵量とする降下煤塵量推定方法である。
本態様の第1の特徴は、精度の高い降下煤塵の濃度計測装置を搭載した無人航空機を着目する発塵源の風下に飛行させて、特定の瞬間におけるこの着目発塵源に由来する降下煤塵の略全て(例えば着目発塵源に由来する降下煤塵の90%以上)を把握可能な降下煤塵の空間分布を測定することによって、下流(風下)任意の地点でのこの発塵源の降下煤塵量への影響を予測することが可能なことである。
特定の瞬間におけるこの着目発塵源に由来する降下煤塵の略全てを把握可能な降下煤塵の空間分布を測定する具体的な方法として、この発塵源の風下において無人航空機を水平に飛行させながら降下煤塵濃度を測定し、かつ、この水平飛行の高度を複数変更した条件とすることで、この発塵源の風下に降下煤塵濃度分布の鉛直方向測定面を形成することである。さらに、測定時のこの発塵源から発塵したすべての降下煤塵の流れ(降下煤塵プルームと呼称)の鉛直断面(当該鉛直方向測定面を無限に延長した鉛直平面を想定)がこの鉛直方向測定断面(こちらは有限の大きさ)内にすべて包含され、かつ、降下煤塵のこの断面内に降下煤塵濃度の測定点が十分な数で存在するように降下煤塵濃度測定点を設定することにより、この降下煤塵断面内での降下煤塵濃度分布を予測することができる。
十分な測定点の数とは、後述のように、前提とする降下煤塵量の評価方法によって異なる値である。本態様では、降下煤塵プルーム断面内に十分な数の測定点が存在するように、飛行経路、飛行速度等を設定する。
本態様の第2の特徴は、このように把握された降下煤塵プルームの断面の濃度分布およびその測定時点での風向風速を前提として降下煤塵量の予測モデルを用いて、より下流での降下煤塵量分布を求めることができる。その手順として、まず、風下方向への降下煤塵プルームの水平流束を次の式で求めることができる。降下煤塵の水平流束とは、単位面積の鉛直面を単位時間に通過する降下煤塵の質量のことを示す。
[降下煤塵プルームの水平流束]=[降下煤塵濃度]×[風速]
さらに降下煤塵プルームの断面積を適切に与えることによって、降下煤塵プルーム中の降下煤塵がこの鉛直方向測定面を通過する通過流量を算出できる。
[降下煤塵プルームの通過流量]=[降下煤塵濃度]×[風速]×cos[鉛直方向測定面の法線と風ベクトルのなす角]×[降下煤塵プルームの断面積]
ここで、降下煤塵濃度と降下煤塵プルーム断面積は、降下煤塵プルーム断面積を各測定点で代表される複数の鉛直断面に分割して計算してもよい。上式での通過量は、あたかも降下煤塵プルームのこの断面において発塵源を配置した際の発塵速度(時間当たりに発生する降下煤塵質量)に対応し、もし、降下煤塵プルームのこの断面が着目発塵源と一対一に対応づくのであれば、より下流での降下煤塵量の評価の観点から、このように降下煤塵プルーム断面に仮想の発塵源を配置した場合の降下煤塵量影響は、着目発塵源から発塵する降下煤塵の降下煤塵量影響と一致する。
[着目発塵源での発塵速度] =[降下煤塵濃度]×[風速]×cos [鉛直方向測定面の法線と風ベクトルのなす角]×[降下煤塵プルームの断面積]
このことは、例えば、降下煤塵プルームの数値シミュレーションを行う手順を考えれば説明できる。一般に粒子シミュレーションでは、発塵源と評価点を含む大気の流れ場を数値解析で求め、この流れ場上に発塵を模擬した粒子(個々の降下煤塵に相当)をソフトウェア上で発生させてその落下位置を求める。そのうえで落下位置の確率分布が、降下煤塵量分布に対応づくものとして、降下煤塵量分布を算出する。
この粒子シミュレーションの際、粒子の発生点を着目発塵源の位置に設定することと、その粒子飛散経路上の任意の点に設定することは、同一の結果となる(発生点ごとにそこでの粒子速度を初速として適切に与えれば)。降下煤塵プルームの断面とは、この粒子飛散経路を特定の鉛直面(鉛直方向測定面)に限定し、かつ、この特定断面内を通過する粒子の水平流束分布に対応する粒子濃度分布を与えたものなので、粒子シミュレーションにおいて着目発塵源から発生してこの特定断面を通過する粒子の発生場所を、着目発塵源からこの特定断面通過場所に変更しても粒子落下地点分布(降下煤塵量分布)に影響しない。粒子シミュレーションにおけるこの特定断面での粒子の通過する平面上の密度分布が、この特定断面に仮想的に設定される発塵源での発塵速度(降下煤塵の水平流束)分布に対応する。
また、降下煤塵プルーム断面内に数多くの濃度測定点が存在する場合には、降下煤塵プルームを測定点ごとに分割し、それぞれの測定点ごとに仮想の発塵源を設定して下流評価点での降下煤塵量を算出し、全ての測定点での降下煤塵量を積算すれば、着目発塵源の評価点での降下煤塵量影響をより正確に評価できる。
[測定点における発塵速度]=[計測点での降下煤塵濃度]×[計測点が対応する鉛直断面積]×[風速]×cos[鉛直方向計測面の法線と風ベクトルのなす角]
本態様では、鉛直方向測定面に仮想の発塵源を設定し、ここにおける発塵速度を上式で与え、さらに、プルーム式等の降下煤塵予測モデルを用いることによって、着目発塵源の管理点での降下煤塵量影響を予測することができる。本態様では、地上に据え置き式の降下煤塵計測装置を配置した場合などのように着目発塵源下流の他の発塵源の影響を考慮する必要がないので(下流の発塵源の発塵は、風上に存在する、当該鉛直方向測定面での計測値に影響を一切与ええないので)、より正確に降下煤塵量を予測することができる。
本態様の第3の特徴は、無人航空機の前進方向に開口を有する煤塵採取口を設けた無人航空機を水平飛行させながら略等速吸引を行うことによって、降下煤塵の採取と降下煤塵の水平方向の分布の測定のための機体の移動を同時に行うことができることである。
この方法は、定点にホバリングさせて煤塵の採取を行う従来のSPMやPM2.5等の煤塵採取方法に比べて、煤塵の空間分布を測定するうえで、測定位置変更のための移動だけを目的とした飛行経路を必要としないので)、測定時間の無駄が少なく、効率的に測定を行うことができる。即ち、SPMやPM2.5等の煤塵採取方法では、定点でホバリングしながら煤塵採取を行い、その後、次の測定点まで飛行して移動することが一般的であるが、飛行中は、測定を行わないので、この移動時間が無駄になる。本発明では、常に移動しながら測定を行うので、飛行時間の無駄がより少ない。
本態様の第4の特徴は、煤塵採取時の水平飛行を同一の高さで機体の前進方向に絶対空間上で往復させることにより、降下煤塵濃度計測の精度を向上することがきることである。
屋外大気には風速が存在するので、無人航空機を一定速度で飛行させ、一定流量で吸引を行った場合、風速の飛行方向成分によって、向かい風、あるいは、追い風となるので、厳密な等速吸引条件での測定からは誤差を生じる。そこで、無人航空機を往復飛行させることで、往路と復路では風の影響が反対となり、等速吸引からの誤差は符号が逆転する。これを利用して、同じ空間上の計測点での往路と復路での降下煤塵計測値を平均化して当該計測点での降下煤塵濃度として算出することで、測地値を等速吸引時の条件に、より近づけることができる。
また、同一の飛行経路の多数の飛行で水平飛行を行って降下煤塵濃度の飛行間での平均値を求めることによって、計測点間距離よりも小さい降下煤塵プルームにおける降下煤塵濃度の平均値を精度よく求めることができる。このことを以下に模式的に説明する。
計測点間距離(=飛行速度・計測機の計測周期)よりも小さい降下煤塵プルームを上記の方法によって採取し、計測点での降下煤塵濃度を算出する場合の不確かさ(誤差)について検討する。今、計測点間距離Aよりも断面直径aの小さい降下煤塵プルーム(断面形状は円形とする)を無人航空機が直交して通過してこの計測点での降下煤塵濃度Cを測定(および算出)したものとする。この際、プルーム中心を小型無人航空機の通過する時刻は、当該計測周期の1/2の時点であるものとする。Cは、当該計測周期の累積降下煤塵計測値に比例する値として計算され、隣接する他の計測点では降下煤塵を検知できないので、Cの算出にあたってプルームの断面直径aの影響を反映することはできない。本発明では、Cを用いて、例えば、次の式で計測点における仮想の発塵速度Qを算出することによって風下での降下煤塵量を算出する。
=π/4・C・U・A
ここで、Uは、計測点における風速であり、簡単のために飛行高度の間隔をAとしている。この式は、降下煤塵プルームの直径がAである場合の降下煤塵濃度を想定している(この間の降下煤塵検出量の平均値をFとする)。しかし、a<Aの場合、当該測定周期での測定時間のうちa/Aの時間しか降下煤塵は検出されておらず、その代わりに検出時の降下煤塵の検出量(平均値をFとする)がFのA/aになる(即ち、F=F・A/a)。従って、もし、測定の空間分解能がaレベルまで小さくして測定できれば、本来、Qは、次の式となるべきである(Qpaは、本来のQ)。
pa=π/4・Cma・U・a
pa: 本来の発塵速度
ma: 本来の降下煤塵濃度平均
/Cmaは、F/F(=a/A)に等しいので、上式を次の式に変形できる。
pa=a/A・Q
従って、計測点間隔よりも断面直径の小さい降下煤塵プルームを検出した測定においては、発塵速度をA/a倍、過剰に見積もるという誤差を生じる。
そこで、本発明では、同一の飛行経路で複数の飛行を行い、その際、計測された降下煤塵濃度を平均化することでこのようなプルームでの降下煤塵濃度の測定精度を向上できる。即ち、計測点間隔よりも断面直径の小さい降下煤塵プルームを検出した測定において発塵速度をA/a倍、過剰に見積もるという誤差を生じるものの、計測点間隔よりも断面直径の小さい降下煤塵プルームを検出する確率は、小さいことを利用する。直径Aのプルームを上記のような飛行で検出する確率は、1(100%)である。一方、小型無人航空機の採取口直径がAに比べて十分に小さい場合(この前提は、本発明においては、ほぼ常に成立する)、直径aの降下煤塵プルームを飛行中に検出する確率は、a/Aである。従って、十分多数の飛行を行って特定測定点における降下煤塵濃度の平均をとった場合、その平均濃度を用いて算出される平均発塵速度では、検出時の誤差と検出確率が相殺して次のようになる。
pa,av=Qp,av
pa,av: Qpaの平均
p,av: Qの平均
結果として、計測点間隔よりも断面直径の小さい降下煤塵プルームを検出した際の発塵速度の誤差を除去することができ、より精度の高い測定が実施できる。
本態様の第5の特徴は、着目する発塵源の上流に他の発塵源が存在する場合に、上記の無人航空機による降下煤塵濃度分布測定およびこれから算出される降下煤塵量を着目発塵源の風上および風下でそれぞれにおいて求める(降下煤塵量(風上測定)および降下煤塵量(風下測定))ことにより、着目発塵源のみの降下煤塵量への影響を前記降下煤塵量(風下測定)−前記降下煤塵量(風上測定)の値として求めることができる。
これは、風下での測定点と風上での測定点間の距離を着目発塵源から評価点までの距離に比べて十分小さく(例:20%以下)設定することにより、風上測定点―風下測定点間での降下煤塵量の影響を十分に小さくする。その結果、風下測定面での降下煤塵通過量が風上測定面での降下煤塵通過量に着目発塵源から発塵した降下煤塵の風下測定面での通過量を重ね合わせたものに実質的に相当することを利用するものである。
本開示の降下煤塵量推定方法によれば、地上における降下煤塵量の推定精度を犠牲にすることなく、任意点での降下煤塵の量を推定することができる。
第一実施形態に係る降下煤塵量推定方法で使用する無人航空機の構造の模式図である。 第一実施形態の無人航空機の搭載機の構成を示すブロック図である。 第一実施形態における鉛直方向測定断面の一例を示す正面図である。 第一実施形態における鉛直方向測定断面の一例を示す側面図である。 第一実施形態における鉛直方向測定断面の一例を示す平面図である。 第一実施形態における無人航空機の飛行経路の一例を示す正面図である。 第一実施形態における無人航空機の飛行経路の一例を示す側面図である。 第一実施形態における空間上の計測点の一例の模式図である。 第一実施形態における降下煤塵量影響算出方法の一例を示す正面図である。 第一実施形態における降下煤塵量影響算出方法の一例を示す側面図である。 第一実施形態における降下煤塵量影響算出方法の一例を示す平面図である。 第二実施形態における鉛直方向測定断面の一例の正面図である。 第二実施形態における鉛直方向測定断面の一例の側面図である。 第二実施形態における鉛直方向測定断面の一例の平面図である。 実施1における降下煤塵濃度空間分布の測定結果の一例である。 実施1における降下煤塵量分布の算出結果の一例である。
<第一実施形態>
以下、第一実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態に係る降下煤塵量推定方法は、地上での降下煤塵量を推定する方法であり、降下煤塵は、大気中を自由落下し得る概ね10μm以上の直径の粗大な煤塵である。
本実施形態では、図1に示すように、無人航空機(UAV(Unmanned aerial vehicle)、即ち、通称、ドローン)10を用いて大気中の降下煤塵の調査を行う。無人航空機の中でも、日本の法令で定める規制がより緩やかなものである(より安全であるとみなされている)最大離陸重量(質量)が25kg未満のものを小型無人航空機と呼称する。初めに無人航空機について説明する。
(全体構成)
無人航空機10の無人航空機本体12の下部には、搭載機14が設けられている。
この無人航空機10は、操縦装置16で操作されるとともに運航監視装置18で運行状況が監視される。無人航空機10は、地上24の操縦装置16及び運航監視装置18と通信できるように構成されている。
(無人航空機本体)
無人航空機本体12は、無人航空機10が飛行するために必要な最低限の装置、制御機構、並びに、動力源および動力装置を備えている。無人航空機本体12としては、四ロータ以上のマルチコプタ、シングルロータ式のヘリコプタ、または、固定翼式の航空機を使用することができ、本実施形態では、四つのロータ20を有したマルチコプタが用いられる。
この無人航空機本体12は、市販のものであっても、自作したものであってもよい。無人航空機10の推進機構には、プロペラ方式、ファン方式、ジェット方式、ロケット方式、または、これらの任意の方式の組み合わせなどを用いることができる。
無人航空機本体12には、フライトコントローラ22が設けられている。このフライトコントローラ22は、図示しないGPS等の機体位置計測装置や、高度計や、方位計等のセンサを備えている。また、フライトコントローラ22は、地上24からの遠隔操作信号を無線で受信する受信機を備えており、操縦装置16や運航監視装置18との間でデータを遣り取りすることができる。
フライトコントローラ22は、プロセッサや計算機を備え、飛行を安定的に継続するための機体の推進機構や飛行方向調整装置等の操作対象の操作量をリアルタイムで計算して制御する。
このフライトコントローラ22は、飛行経路を内蔵の記憶装置に予め記憶し、この飛行経路に沿って自動で飛行するように操作対象を制御しても良い。また、このフライトコントローラ22は、操縦装置16や運航監視装置18からの遠隔操作信号を操作対象の操作量に変換し、操作対象を制御するラジオコントロールシステム型のコントローラであってもよい。
動力源および動力装置には、燃料タンクおよび内燃機関や、固体ロケット燃料用の容器を含む燃料タンクおよびロケットの噴射ノズルを含む外燃機関を用いることができる。また、動力源および動力装置には、燃料電子を含む電池および電気式モータや、ガス圧力容器およびガス駆動ポンプなどを用いることができる。
あるいは、電源または燃料タンクを地上に配置するとともに、無人航空機10との間に電線または燃料供給用のチューブを設け、無人航空機10の推進機構にエネルギを供給してもよい。
無人航空機10の代表寸法(例えば、最大幅)は、測定対象である周囲大気への悪影響を低減するために、2m以下であることが好ましく、1m以下であることがさらに好ましい。
無人航空機10の離陸重量(質量)は、日本の航空法による制約より少ない条件である、25kg未満(小型無人航空機)であることが運用上、好ましく、後述する搭載機14の実用的な重量(質量)(離陸重量(質量)に含まれる)を考慮すると、少なくとも1kg以上が必要である。また、離陸重量(質量)が10kg以下がより好ましい。上述した好ましい直径1m以下の無人航空機の離陸重量は、通常10kg以下となるためである。
(操縦および運航監視装置)
無人航空機本体12の飛行操作および監視、また無人航空機本体12に搭載される搭載機の操作および監視を地上24から行うことができる。
これらの操作および監視に用いる信号は、無線や有線で送られ、この信号を用いて地上24と無人航空機10との間で通信を行う。無線通信には、市販のラジオコントロール用の操作機や無線機能を用いることができ、操作および監視を行うためのソフトウェアを備えた操作・監視用の計算機などを用いることができる。
操作・監視用計算機には、無人航空機10の飛行経路を予め記憶しておくことができる。この場合、操作および監視に用いる信号を、飛行中または飛行前に無人航空機10のフライトコントローラ22に送信することで、予め設定された飛行経路に沿って無人航空機10が飛行するオートパイロットを行うことができる。
なお、このオートパロット機能をフライトコントローラ22のみで実施できる場合には、地上24における操縦装置16及び運航監視装置18は必ずしも必要ない。
(搭載機)
搭載機14は、無人航空機本体12に搭載される装置群であり、各装置が連携して空中での降下煤塵を捕集するとともに、特定の降下煤塵の濃度を選択的に計測する。
搭載機14は、図2に示すように、管路系装置28や、計測系装置30や、搭載機用動力源装置を含んで構成される。
管路系装置28は、降下煤塵を含んだ大気を煤塵検出部を構成するパーティクルカウンタ60に供給するための装置である。計測系装置30は、管路系装置28に供給された大気中の降下煤塵濃度を計測するための装置である。
搭載機用動力源装置は、管路系装置28および計測系装置30に動力を供給するための装置である。
(管路系装置)
管路系装置28の一例を、図2に従って説明する。管路系装置28は、煤塵採取口34を有する採取部36、バーチャルインパクタ38、パーティクルカウンタ60、フィルタ62、促進部40、及びファン42等の装置要素を備えている。
採取部36の煤塵採取口34から流入した大気は、バーチャルインパクタ38で降下煤塵濃度の高い高濃度空気44と降下煤塵濃度の低い低濃度空気46とに分離される。このバーチャルインパクタ38は、粒子の慣性力と遠心力を利用した慣性分級方式のバーチャルインパクタで構成される。
バーチャルインパクタ38からの高濃度空気44は、降下煤塵の量を連続的に測定する連続計測手段の一例であるパーティクルカウンタ60へ送られる。
このパーティクルカウンタ60は、バーチャルインパクタ38とフィルタ62との間に設けられ、高濃度空気流出路48を通過する高濃度空気44内の降下煤塵を計測する。パーティクルカウンタ60の計測値は、計測系装置30内の検出値処理部72で処理され、後述する計算機70へ送られる。パーティクルカウンタ60及び検出値処理部72によって降下煤塵濃度検出機74が構成される。
促進部40は、ブロワや圧縮機で構成され、パーティクルカウンタ60における高濃度空気44の通過を促進し、高濃度空気44を外部へ排出する。
また、バーチャルインパクタ38から低濃度空気46を流出する低濃度空気流出路50には、ファン42が設けられ、バーチャルインパクタ38から低濃度空気46の流出がファン42によって促され、外部へ排出される。
採取部36は、飛行に伴う煤塵採取口34からの大気の掃引を効率的に行うため、飛行時における前進方向Fに開口した筒体を用いることができる。煤塵採取口34の鉛直断面形状は、円、楕円、多角形等、大気の流入を大きく阻害しない形状であれば、どのようなものであってもよい。
煤塵採取口34の設置位置は、飛行時に無人航空機10の構造物の後流領域に入らない場所とする。このため、煤塵採取口34は、無人航空機10の前進方向Fに向けて機体から突出させることが好ましい。
これは管路系装置28において大気を等速吸引することを目指している。しかし、機体が無風の大気中を飛行する場合、機体の形状抵抗によって機体の前端から機体の代表長さの約0.1倍の範囲において、機体に対する大気の相対速度が低下する。これにより、実質的な飛行速度が低下し、等速吸引を行う際の吸引流量が減少するという問題が存在するからである。
したがって、機体の鉛直断面積が大きな部分の代表長さの0.1倍以上、煤塵採取口34を飛行の前進方向Fに突出させることが好ましい。機体の鉛直断面積が大きな部分としては、マルチコプターの場合、ロータ支柱を支える構造体、フライトコントローラ、各種センサ、バッテリ、搭載機等が集中する中心軸付近の領域が挙げられる。
なお、煤塵採取口34を無人航空機10の主要構造物から上方、または、下方に十分な距離を設けて配置してよい。
煤塵採取口34の開口面積は、大気が無風、または、飛行速度に比べて十分小さい場合を前提として、次式に示すようにすることが好ましい。なお、本実施形態の各式で用いる単位は、総て国際単位系 (SI)とする。
[開口面積]=([ファンの吸引流量]+[ブロワまたは圧縮機の吸引流量])/[飛行速度]
促進部40を構成するブロワまたは圧縮機の吸引流量は、パーティクルカウンタ60の流路の大きさによって飛行中に変動する。また、ファン42の吸引流量は、ブロワまたは圧縮機の吸引流量より十分に大きい([ファンの吸引流量] >> [ブロワまたは圧縮機の吸引流量])。このため、[開口面積]=[ファンの吸引流量]/[飛行速度]としてもよい。
バーチャルインパクタ38は、大気を流入する流入路の中心軸が鉛直方向に延在する。このため、煤塵採取口34から略水平方向に流入した大気を鉛直方向に方向転換する必要がある。このため、煤塵採取口34を有した採取部36は、例えば90度の曲り管を用いることができる。
採取部36の材質は、自身の構造を保ち得るものであれば、どのようなものでもよいが、少なくとも、計測対象である降下煤塵を含有する大気と接する部分は、降下煤塵の付着を避ける材料を用いることが好ましい。
例えば、採取部36をアルミニウムやチタン等の金属管で構成したり、採取部36の内面に金属箔や導電性塗料を塗布・貼付したりすることができる。なお、管路系装置28の他の部分に関しても、このような降下煤塵の付着の少ない材料を用いることが好ましい。
バーチャルインパクタ38は、煤塵採取口34から流入した降下煤塵を含む大気を、降下煤塵の濃度が高濃度である高濃度空気44と降下煤塵の濃度が低い低濃度空気46とに分離する分級装置である。このバーチャルインパクタ38は、分離した高濃度空気44を高濃度空気流出路48から流出するとともに、低濃度空気46を低濃度空気流出路50から流出する。
なお、本実施形態では、バーチャルインパクタ38を用いる場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、バーチャルインパクタ38の他にサイクロンセパレータ等を用いることができる。
バーチャルインパクタ38は、粒径の大きさに基づいて大気に含まれる粒子を分離する。このバーチャルインパクタ38は、内部の気流流速に応じて、粒径の大きな粒子を高濃度空気流出路48から流出し、粒径の小さな粒子を低濃度空気流出路50から流出する。
バーチャルインパクタ38内での最大の気流流速を、例えば12m/sに設定することで、粒子径(密度1000kg/m、球形)が14μmの粒子を、高濃度空気流出路48と低濃度空気流出路50とに、50%ずつ流出させることができる。
この場合、降下煤塵の定義である下限の粒径10μmの粒子であっても、約10%の粒子を高濃度空気流出路48から流出させることができる。このため、バーチャルインパクタ38を用いて計測する場合、粒径10μmと認識された粒子の濃度計測値に、補正係数、例えば「10」を乗ずる。これにより、高濃度空気44に含まれる粒径10μmの粒子の濃度をバーチャルインパクタ38で計測することができる。
降下煤塵が一様に分布する大気を前提とし、バーチャルインパクタ38内での最大の気流流速を例えば、12m/sとした場合、20μmを超える大径粒子の少なくとも80%以上を高濃度空気流出路48から流出させることができる。
また、バーチャルインパクタ38の構造上、低濃度空気46の吸引流量は高濃度空気44の吸引流量の4〜20倍程度の値である。したがって、高濃度空気44を流出する流出口では、おおよそ、3倍(70%の粒子が高濃度空気44へ、低濃度空気吸引流量/高濃度空気吸引流量=4)〜20倍(95%の粒子が高濃度空気44へ、低濃度空気吸引流量/高濃度空気吸引流量=10)以上の濃度に降下煤塵を濃縮できる。このような性能を有するバーチャルインパクタ38の圧力損失係数(バーチャルインパクタ38内での最高流速(通常、バーチャルインパクタ流入管出口での平均速度)を基準)は、0.5程度に設計することができる。
バーチャルインパクタ38の低濃度空気流出路50から流出した低濃度空気46は、ファンへ42送られる。ファン42は誘引式のものを用いる。ファン42の形式は、軸流ファン、シロッコファンなど様々なものを用いることができるが、大流量を小型の装置で実現するためには、軸流ファンが好ましい。装置を軽量化するために、軸流ファンは、単段なことがさらに好ましい。この軸流ファンには市販のものを用いることができる。
ファン42の流量は、所要の煤塵個数を測定周期の単位時間で吸引する必要があるので、100L/min以上の能力のあることが好ましい。また、上記の流速条件12m/s時の空気の動圧は、約90Paなので、ファン42の揚程は、原理的にこの値以上でなければならない。さらに、バーチャルインパクタ38での圧力損失(例えば、45Pa(圧力損失係数=0.5))、上記の煤塵採取口34での曲り管部での圧力損失、並びに、その他の管路での圧力損失を考慮すると、ファン42の揚程は、少なくとも200Pa以上あることが好ましい。
これらの流量・揚程条件を同時に満たし、かつ、小型の無人航空機10に搭載する部品として許容される重量(質量)(例えば、100g)を満たすため、軸流ファンの回転数は、10000rpm以上であることが好ましい。
ファン42として、10000rpm以上の軸流ファンを用いたとしても200Paを大きく超える圧力を得ることは簡単ではない。従って、低濃度空気流出路50とファン42の間の管路では圧力損失を極力低減する構造が必要である。
この低濃度空気流出路50には、フィルタ等の抵抗体を配置しないことが好ましい。フィルタを設置しないと、低濃度とはいえ降下煤塵の一部がファン42に到達する。測定場所が特に高濃度の発塵地域である場合には、ファン運転への煤塵による悪影響が考えられる。この場合には、市販の防塵ファンを用いればよい。
ファン42は、一般に回転羽根とケーシング間の隙間をブロワや圧縮機に比べてより大きく設定でき、煤塵の噛みこみトラブルに対して有利である。防塵ブロワや防塵圧縮機で防塵対策をする場合、効率の低いダイヤフラム式のものを採用するなど、装置の大型化・重量増が避けられない。これに対し、防塵ファンの場合、装置の重量増は比較的小さい。
したがって、ファン42を用いることが、軽量化のためにより有利である。また、管路の径も十分大きく(例:管路内流速が10m/s未満となるような管径)、かつ、曲り部も少なくする。ファン42の排気は、そのまま大気に放出してよい。
高濃度空気流出路48には、パーティクルカウンタ60の下流にフィルタ62が設けられている。
このフィルタ62は、ブロワまたは圧縮機からなる促進部40の手前で煤塵を除去し、煤塵の流入に起因したトラブルを未然に抑制する。また、このフィルタ62は、採取した降下煤塵を保持して無人航空機10内に留める。これにより、この採取された降下煤塵を回収し、各種の分析に用いることもできる。
このフィルタ62の目開きは、少なくとも降下煤塵の定義である、10μmの粒子をほぼ100%捕集できることが好ましい。また、ブロワまたは圧縮機で問題となる寸法の煤塵の大半を捕集できることが好ましい。例えば、3μm以上の粒子を捕集するタイプのフィルタを用いることができる。
フィルタ62の下流には、ブロワまたは圧縮機からなる促進部40が配置されている。ブロワまたは圧縮機の形式は、遠心式、斜流式、容積式等の各種の市販のものを用いることができる。ブロワまたは圧縮機の流量は、軽量化のため、例えば、10L/min以下のものを用いることができる。
これは、バーチャルインパクタ38によって低濃度空気46の流量が大幅に低減(降下煤塵が濃縮)されているため、煤塵採取口34から吸引された大量の大気のうちのごく一部をブロワまたは圧縮機で処理すればよいからである。
促進部40であるブロワまたは圧縮機の揚程は、主にパーティクルカウンタ60及びフィルタ62での圧力損失を補償できる能力が必要であり、公称10000Pa以上、かつ、本装置の運転条件での流量時に少なくとも1000Pa以上、好ましくは5000Pa以上であるものを用いることができる。このように高い揚程の装置であっても、処理流量が比較的小さいので、無人航空機10に搭載可能な軽量なブロワまたは圧縮機(例:200g)を用いることができる。ブロワまたは圧縮機の排気は、大気に放出する。
これら搭載機14を構成する各装置は、共通の基板上に固定したうえで、無人航空機本体12にボルト等で結合することができる。あるいは、これらの各装置を個別に無人航空機10のフレームなどに結合してもよい。
(計測系装置)
計測系装置30は、少なくとも、時刻計測手段64、無人航空機10の位置を計測する位置計測手段66、並びに、データ記録手段68を備えている。
時刻計測手段64としては、時計や、GPS等の現在時刻を含んだ信号の受信装置およびこの信号を解読して時刻に変換する装置の組み合わせや、計算機70の内部時刻等を用いることができる。
無人航空機10の位置計測手段66としては、例えばGPSや、ジャイロコンパス・加速度計・角加速度計等を組み合わせて用いた慣性式位置測定装置等を用いることができる。位置計測手段66をGPSで構成した場合、位置計測手段66はGPSアンテナ66Aを備える。
データ記録手段68としては、計算機70が備えるハードディスク等のストレージを用いることができる。また、無人航空機10からデータを無線で送信して地上24に設置したデータ記録装置に記録する場合、地上24に設置したデータ記録装置でデータ記録手段68を構成することができる。
また、時刻計測手段64や位置計測手段66が無人航空機本体12に存在する場合には、必ずしも搭載機14にこれらの装置を設ける必要はない。しかし、降下煤塵の空中濃度分布を高精度に求めるためには、降下煤塵の量の計測時刻と無人航空機10の位置測定時刻の対応を厳密に記録する必要がある。
この観点からは、同一の時計を用いて、降下煤塵量の計測時刻と位置情報の計測時刻とを記録することが有効である。例えば、降下煤塵の量の計測値および無人航空機10の位置の計測値のデータ送信を、搭載機14上の同一の計算機70に対して行い、受信時の計算機70の内部時刻を時刻計測手段64として用いる。これにより、それぞれの装置が持ち得る固有の計測時刻とは無関係に、降下煤塵の量の計測時刻と位置計測手段66の計測時刻を精度よく対応付けることができる。
(降下煤塵濃度計測機)
降下煤塵の量を計測する連続計測装置は、乾式の測定法であることが好適であり、ベータ線吸収式質量計、パーティクルカウンタ、TEOM原理を用いた質量計等の市販のものを用いることができる。
パーティクルカウンタ60は、採取された粒子に照射された光の散乱光強度を検出および計測することにより、通過した粒子の数および大きさをそれぞれ測定することができる。この情報をもとに、個々の粒子の体積を算出することができる。このため、これを単位時間ごとに集計することで、採取された粒子の総体積を降下煤塵として求めることができるとともに、採取された粒子の粒径分布を求めることができる。
降下煤塵の解析においては、落下速度に大きな影響を与える粒径の情報を得ることが特に有益である。このため、連続計測装置として粒径分布を求めることが可能なパーティクルカウンタ60を用いる。パーティクルカウンタ60での時間分解能は、飛行時の空間分解能を数十m以下に維持できるように1分以下であることが必要であり、10秒以下であることが好ましい。
ベータ線吸収式質量計は、質量を測定できる点で利点である。なお、PM2.5等の測定において一般的に用いられる各種計測機、例えば、連続式の光散乱式煤塵濃度計(労働環境測定において規格化されたもの等)では、本実施形態での測定対象である降下煤塵のように粒子の比表面積と大気中の粒子個数密度の小さな粒子を正確に測定することは、困難である。
(搭載機用動力源装置)
ファン42やブロワまたは圧縮機からなる促進部40の搭載機14の各装置の動力には電気を用いることができる。このための動力源としては、無人航空機本体12と搭載機14との間に電線を設け、無人航空機10の動力源から搭載機14に電力を供給してもよい。あるいは、搭載機14に電池を搭載してこれを動力源としてもよい。必要に応じて、動力源からの電気の電流や電圧を搭載機14の各装置にとって適切な値に変換・制御を行う電源装置、例えば、DC−DCコンバータを搭載機14に設けることができる。
なお、煩雑になるので本実施形態の図中には、動力源装置および動力配線の記載を省略しているが、電力を必要とする装置(ファン、ブロワ、センサ、計算機等)には、適宜、適切な電力が動力源装置から供給されるように設計する。
(飛行速度・飛行方向)
飛行中に測定を行う際には無人航空機10を、例えば、水平に飛行させる。本実施形態では、採取部36が略水平方向に設置され煤塵採取口34が略鉛直方向に開口する。
このため、水平でない飛行、すなわち鉛直方向速度成分を有する飛行の場合、鉛直方向の速度成分は、煤塵採取に寄与せず、無駄になる。限られた動力で長時間の飛行を目指す本実施形態では、無駄な速度成分は飛行時間を短縮する悪影響がある。特に、上下方向に高度を激しく変動させながら測定を行うことは、エネルギ消費が大きいので避けることが好ましい。
水平面内での飛行においても、極力、直線状にすることがエネルギ消費上、好ましい。ただし、水平面内で進行方向を変更することは、鉛直方向成分の飛行を行う場合に比べてエネルギ消費量の増加代がより小さい。このため、水平面内で障害物を避けるために進路を直線状から変更することは可能である。
測定場所を変更するために高度を変更する際には、水平飛行を行わず、鉛直方向に速やかに短時間で昇降することが総合的なエネルギ消費上、好ましい。この場合、昇降中には測定を行わない(測定を継続してもよいが、そのデータは、降下煤塵濃度測定値として採用しない)。
なお、水平方向に飛行するとは、飛行速度の水平方向成分が鉛直方向に比べて平均的に大きい(例えば、速度比が5:1以上)ことを意味し、鉛直方向成分が必ずしも「0」でなくてもよい。よって、飛行可能な時間が限られる場合、水平飛行速度成分に比べて微小、かつ一定の鉛直方向飛行速度成分を与えて、鉛直面内でジグザグに上昇または下降する飛行を行うことで、昇降のための専用の鉛直昇降飛行経路を省略してもよい。
水平飛行中の飛行速度は、降下煤塵の量の計測装置の計測周期と測定対象とする降下煤塵プルームの鉛直方向測定断面(後述)における断面内での所要の空間分解能(後述)を考慮して、以下の条件を満たすように設定する。
[飛行速度]<[降下煤塵プルームの鉛直断面での所要空間分解能]/[計測周期]
さらに、飛行速度の条件として、以下の条件を満たすように搭載機の吸引流量、または、煤塵採取口34の開口面積を設定する。
[飛行速度]=[搭載機の吸引流量(吸引装置の吸引流量)]/[煤塵採取口の開口面積]
この条件により、煤塵採取口34の開口面積は、大気が無風、または、飛行速度が周囲の風速に比べて十分大きい前提で、煤塵採取口34が大気の等速吸引を行うことができ、吸引大気中に含まれていた降下煤塵をそのまま煤塵採取口34に導入することができる。その結果、煤塵採取時の測定誤差を単純な吸引(例:SPM採取時)等の場合に比べて小さくすることができる。
煤塵採取口34からの吸引は、バーチャルインパクタ38に接続されるブロワ又は圧縮機からなる促進部40とファン42とで行われる。このため、煤塵採取口34からの吸引流量が促進部40の吸引流量とファン42の吸引流量の和となるようにする。[ファンの吸引流量] >> [ブロワの吸引流量]である場合には、搭載機14の吸引流量をファン42の吸引流量と同一としてもよい。
(降下煤塵の空中濃度分布)
水平飛行中、または、飛行中の全時間でパーティクルカウンタ60を通過した高濃度空気44に含まれる降下煤塵の量(以下、降下煤塵の時間当たり通過数および各降下煤塵の粒径に対応した粒径区分で代表することにする)を計測する。
パーティクルカウンタ60が例えば、一定時間周期(計測周期)ごとに、その周期内に通過した粒径区分ごとの降下煤塵通過数を計測して出力する場合、以下の手順で降下煤塵の濃度分布を求める。
第1の手順として、当該計測周期における検出降下煤塵の総体積を以下の式で求める。
[粒径区分ごとの検出降下煤塵の総体積]=4π/3×[当該粒径区分の代表粒子半径]×[当該粒径区分での検出粒子数]
[検出降下煤塵の総体積]=Σ全粒径区分[粒径区分ごとの検出降下煤塵の総体積]
ここで、当該粒径区分の代表粒子径には、例えば、粒径区分の境界粒径の上限と下限値の平均値等を用いることができる。あるいは、パーティクルカウンタ60が個々の降下煤塵の粒径値を区分に分けることなく測定する場合には、
[検出降下煤塵の総体積]=4π/3×Σ全粒子[個々の粒子の半径]
として求めてもよい。また、上記の式では降下煤塵粒子を球形と仮定したが、予め形状の測定値等との比較を行って、適宜、適切な形状に対応する体積計算式を球の体積算出式に置き換えてもよい。
また、追い風・向かい風の影響等によって、煤塵採取口34での吸引が厳密な等速吸引条件から若干の乖離がある場合等には、上記の検出降下煤塵の総体積に一律に補正係数を乗じてその値を調整してもよい。
第2の手順として、以下の式を用いて検出降下煤塵の総体積から大気中の降下煤塵濃度を算出する。
[降下煤塵の体積濃度]=[検出降下煤塵の総体積]/[煤塵採取口での吸引流量]×[計測周期]
もし、降下煤塵の典型的な密度が得られている場合には、降下煤塵の体積濃度を降下煤塵の質量濃度に変換することができる。
[降下煤塵の質量濃度]=[降下煤塵の典型的な密度]×[降下煤塵の体積濃度]
降下煤塵の典型的な密度としては、例えば、測定空域で得られる降下煤塵の主要な種類が予め予測できる場合には、その降下煤塵種の密度を用いればよい。
第3の手順として、特定の計測周期での無人航空機10の位置を位置計測手段66によって特定し、空間上の位置に上記第2の手順で求めた降下煤塵の濃度を対応付ける。
対応付けの方法には、例えば、時刻計測手段64によって計測された同一時刻に降下煤塵の量の計測値と無人航空機10の位置計測値を同時に記録し、同時刻に記録された計測値同士を対応付けることができる。複数の計測周期での降下煤塵濃度の算出値をそれぞれ空間上の位置と対応付けることによって降下煤塵濃度の空間分布が得られる。
例えば、当該周期での飛行の中点(当該周期開始から終了までの時間の50%の時間が当該周期開始から経過した時点、または、場所)に無人航空機10が到達したときの位置計測手段66による位置測定値を当該周期での空間上の位置と定義することができる。
(鉛直方向測定断面)
本実施形態では、図3から図5に示すように、上記の方法で求める降下煤塵濃度の計測点の分布が、少なくとも着目する着目発塵源100と降下煤塵の評価点102との間に設定される鉛直面をなすように飛行経路を設定する。この鉛直面を「鉛直方向測定断面104」と定義する。
鉛直方向測定断面104は、検討対象風向106(単に風向106ともいう)と平行にならないように(風向が鉛直方向測定断面104と交差するように)設定する。検討対象風向106は、評価対象として着目する着目発塵源100からの降下煤塵が評価点102に到達し得る風向である。この風向きは、地上に設置した風向風速計で測定することができる。
すなわち、検討対象風向106は、降下煤塵の水平方向拡散幅(一般的なプルーム式において定義される)が45°の場合、水平投影面において評価点102から着目発塵源100を結ぶベクトルと±1方位(16方位で定義。±22.5°に相当)の範囲に存在する風向を示す。
検討対象風向106であるときのみ着目発塵源100からの発塵は、評価点102での降下煤塵量に影響し得るので、この風向群(先の例では±1方位の範囲内の全ての風向)と少なくとも常に交差するように、鉛直方向測定断面104を設定すべきである。
また、降下煤塵の評価点102が複数存在し、着目発塵源100から水平面内で見て多数の方位にこれらの評価点102が分散する場合には、検討対象風向106を主風向(当該地域において発現頻度の高い風向)とし、鉛直方向測定断面104をこの検討対象風向106と交差するように設定してもよい。そもそも主風向から大きく乖離した風向(例:180°)の場合には、着目発塵源100が上記の評価点群の降下煤塵量に影響を与える頻度が小さいので、一般に、検討の重要性が低いからである。
鉛直方向測定断面104は、平面であることが好ましい。但し、飛行経路上に存在する障害物を迂回する等の理由で、互いに平行な複数の鉛直平面に分割することや、曲面としてもよい。曲面とした場合、測定を行う水平飛行中には(飛行経路は、水平面内で曲線となる)、検討対象風向106と常に交差するように鉛直方向測定断面104を設定する。
鉛直方向測定断面104は、飛行経路の端部を連結した範囲内に規定される面である。上記の条件を満たす鉛直方向測定断面104を形成するための飛行経路の一例を図6から図8示す。
地上24から離陸した無人航空機10は、図6及び図7に示すように、第1の高度112に水平方向Hに設定された水平飛行経路130上を飛行する。この際、同一の高さには、往路122及び復路124が設定され、同じ経路を往復する。水平飛行の方向は、この図では風向106にほぼ垂直に交差する。
往復飛行を行った後、水平飛行の端点において無人航空機10は、鉛直方向Vに上昇して第2の高度114に至る。第2の高度114においても第1の高度112でのものと同様の水平往復飛行を行う。この際の飛行方向は、第1の高度112での飛行方向に平行、かつ、第1の高度112での飛行経路の直上である。
これ以降、各高度116〜120において、往復飛行を行った後、所定の着陸地点126まで帰還して無人航空機10を着陸させて一回のフライトが完結する。水平飛行中は、常時、降下煤塵濃度計測および無人航空機10の位置計測を行い、上記の方法によって、図8に示すように、この水平飛行経路130上に複数の降下煤塵濃度の計測点128が設定され、これら計測点群によって鉛直方向測定断面104が形成される。
鉛直方向測定断面104を設定する場所は、着目発塵源100の風下、かつ、着目発塵源100近傍であることが好ましい。この場合、鉛直方向測定断面104は、測定時の風向106における着目発塵源100から発生する降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の全てを包含するように設定することが好ましい。
この降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の瞬時の位置と大きさを正確に求めるためには、例えば、本実施形態の方法を用いた空間上での降下煤塵濃度の計測を行う必要がある。特に、降下煤塵量影響を評価するために必要な情報である発塵速度を求めるためには、通常、このような測定が必須である。
しかし、鉛直方向測定断面104を十分、大きく設定する前提で、鉛直方向測定断面104が確実に降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132を包含するようにするために、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の位置の粗い予測を行う目的であれば、プルーム式等を用いて、比較的容易に降下煤塵プルーム100Aの位置を予測できる(但し、この予測では、位置の予測精度があまり高くなく、かつ、発塵速度を正確に把握することは困難なので、プルーム式のみを用いて評価点102での降下煤塵影響を精度よく求めることは難しい)。
具体的には、着目発塵源100からの発塵の上昇量をボサンケの式等を用いて求め、その結果得られた発塵高さを前提にプルーム式を適用して設定する鉛直方向測定断面104上での降下煤塵濃度分布を算出し、この濃度分布において、例えば、濃度中心から拡散幅の±2倍の範囲を降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132と定義することができる(風向106と鉛直方向測定断面104が直交する場合)。
拡散幅には、例えば、パスキル−ギフォードの式を用いることができ、この拡散幅は、濃度分布を正規分布と仮定した場合の標準偏差の値に相当する幅である。降下煤塵の粒子には重力による落下速度が存在するので、プルーム式にはこの落下速度を考慮した式を選択する。
鉛直方向測定断面104は、単に上記の降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の全てを包含するだけでなく、図8に示したように、鉛直断面132内にまんべんなく(例えば等間隔に)計測点128を配置すべきである。
これは、計測点128での降下煤塵濃度測定値をもとに、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132全体の降下煤塵通過速度を算出するためである。鉛直方向測定断面104が鉛直断面132の全てを包含し、この断面での降下煤塵の通過速度を把握するということは、着目発塵源100から発塵したすべての降下煤塵の発塵速度を把握することになる。
一回のフライトで着目発塵源100の発塵速度を把握する場合には、計測点128は、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132内に二つ以上配置する必要があり、三つ以上配置することが好ましい。
この条件から、計測点128の所要空間分解能(水平方向Hには、測定周期の間の飛行距離、鉛直方向Vには、水平飛行を行う高度間の高度差)は、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の最大幅(例えば、プルーム式における拡散幅の4倍)の1/2倍(必要条件)および最大幅の1/3(好ましい条件)となる。
鉛直方向測定断面104内の計測点128は、この所要空間分解能の条件を満たすように、飛行速度および飛行経路上での水平飛行を行う高度間の高度差を設定する。複数のフライトでの平均的な発塵速度を把握すればよい場合には、この複数のフライト内で合計一回以上、計測点128が降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132内に確率的に存在する必要がある。この場合、フライトの50%以上の確率で鉛直断面132内に計測点の存在することが好ましく、ほぼすべてのフライトで降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132内に計測点の存在することがより好ましい。
この場合の計測点128の所要空間分解能の条件は、主に高度差にかかわるものである。飛行高度が降下煤塵プルーム100Aの高度と一致していれば、水平飛行中には常時、降下煤塵濃度の計測を行っているので、なんらかの形で降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の降下煤塵濃度を計測することができる。このため、水平方向Hの空間分解能は、後述の降下煤塵量の評価の上で必要な値に適宜設定すればよい。
一方、鉛直方向Vの空間分解能に関しては、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の存在しない高度でいくら飛行を行っても降下煤塵プルーム100Aの断面情報を得ることができないので、確率的に降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の高度と一致するように飛行高度を設定する必要がある。従って、鉛直方向の所要空間分解能は、[降下煤塵プルームの鉛直断面の鉛直方向最大幅]×[フライト回数](必要条件)、[降下煤塵プルームの鉛直断面の鉛直方向最大幅]/50%(好ましい条件)、[降下煤塵プルームの鉛直断面の鉛直方向最大幅](より好ましい条件)とすればよい。
(降下煤塵プルームの鉛直断面での降下煤塵濃度)
鉛直方向測定断面104の計測点128が十分な空間分解能で配置されている場合や多数フライトでの平均的な降下煤塵量影響を評価すればよい場合、各計測点128での降下煤塵濃度を降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132での降下煤塵濃度に採用してよい。特に、鉛直方向測定断面104の風上に着目発塵源100以外の他の発塵源が存在しない場合、各計測点128において降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132内の計測点128では比較的高い濃度測定値となる。また、それ以外の計測点128では微小な降下煤塵濃度測定値となる。
このような分布の場合、特定の計測点128が降下煤塵プルーム100Aの内側に存在するか否かを厳密に判定する必要性は、本実施形態の目的上、存在しない。降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132外の微小な計測点128が風下の降下煤塵量に与える影響もまた微小であるので、この計測点128の降下煤塵量への影響を考慮するかどうかは着目発塵源100の降下煤塵影響の評価にほとんど影響しないからである。
このように、瞬時の降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の位置を特定しないことにより、発塵速度や風向の変動に伴って生じ得る瞬時の降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の位置を正確に予測するモデルを用いる必要がない。このため、そのようなモデルのモデル誤差の影響がない。前述のように複数のフライトでの平均的な降下煤塵量影響を求める場合には計測点128の空間分解能が低くてもよい。
この際、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132内に存在する計測点128は、個々のフライトでは少数、または、一点以下である。計測点128が降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132のどの位置に相当するものなのか判断できない。このため、このフライトのみで降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132全体の降下煤塵濃度を代表することは難しい。
しかし、フライトごとに降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の位置は自然に変化するので、定点の計測点128で測定される降下煤塵濃度は、鉛直断面132の位置の変化に対応して降下煤塵プルーム100A内の相対位置(中心、周辺)をまんべんなく移動し、十分に多数のフライトでの降下煤塵濃度を平均化すれば、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132を代表しうる降下煤塵濃度を得ることができる。
計測点128の空間分解能が比較的低く、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132内に計測点128が二、三点しか存在しない場合、一回のみのフライトで降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の代表的な降下煤塵濃度を求めるには、次のようにする。この場合、濃度の補正と中心位置の推定するモデルによって、以下の手順でこれらを予測することができる。
まず、予め定めた閾値以上の濃度測定値を示す計測点128のみを降下煤塵プルーム100A内に存在するものと判定する。判定された計測点128が三点以上の場合、各計測点128の位置と濃度測定値を用いて鉛直方向測定断面104内に濃度の一次モーメントを求め、一次モーメントの中心を鉛直断面132中心として算出する。次に、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132での降下煤塵濃度分布を上記の中心を有する二次元ガウス分布と仮定し、各計測点128での濃度測定分布から最小自乗法等を用いてフィッティングを行い、断面内の濃度分布を求める。
後述のプルーム式を用いた降下煤塵量影響評価時には、この二次元ガウス分布の中心濃度をプルーム中心濃度、二次元ガウス分布の標準偏差をプルーム拡散幅として用いればよい。鉛直断面132内に二点しか計測点128が存在しない場合には、プルーム中心濃度は、濃度測定値のうち大きい方とし、プルーム中心位置は、二つの計測点128を結ぶ直線上で濃度の一次モーメントを求めてモーメントの中心を採用することができる。
(降下煤塵量への影響評価)
図9から図11に示すように、降下煤塵量影響算出方法の一例を示す。
鉛直方向測定断面104上の各計測点128で、または、各計測点128での濃度測定値から求めた降下煤塵プルーム100A中心点において、以下の式を用いて濃度測定値に風速を乗じて降下煤塵の風ベクトル108の方向の(風ベクトル108:風向の反対方向。風向は、風上を指す)水平流束を求める。
[降下煤塵の水平流束]=[降下煤塵濃度]×[風速]
ここでの風向風速には、無人航空機10が風向風速計を搭載していれば、計測点128ごとにその測定値を用いればよい。あるいは、鉛直方向測定断面104の近傍で地上24から高度10m程度に固定設置された気象観測用風向風速計(例えば、気象台や測候所の公開データ等)での測定値を用いてもよい。これらの風向風速計の測定値は、時刻を無人航空機10での計測器と照合して、飛行中の空間位置との対応をとる。風向風速の時間変動が小さい場合には、厳密な時刻の照合は、必ずしも必要ない。
各計測点128を通過する降下煤塵流量の風ベクトル108の方向成分は、次の式になる。
[計測点を通過する降下煤塵流量の風ベクトルの方向成分]=[降下煤塵の水平流束]×[計測点に対応する鉛直断面積]×cos[計測点における鉛直方向測定断面の法線が風ベクトルとなす角]
このように算出された降下煤塵流量の風ベクトル108の方向成分は、図9から図11に示したように、あたかもこの計測点128に発塵源を配置した場合の発塵速度に相当するものである。前述のように、発塵源から発塵する降下煤塵プルーム100Aのうち評価点102まで到達し得る部分は、当該鉛直方向測定断面104のいずれかの計測点128に対応づく経路で下流に流れていく。従って、この経路上の計測点128(鉛直方向測定断面104上に存在)すべてに仮想の仮想発塵源100Kを配置し、計測点128ごとに降下煤塵通過量を仮想発塵源100Kでの発塵量とみなして降下煤塵の下流への移流拡散を解析することによって、着目発塵源100から下流への移流拡散を直接に解析するのと同じ結果が得られる。
個別の計測点128を仮想発塵源100Kとみなした場合の下流での降下煤塵量を推定する手法には、例えば、従来技術で述べたプルーム式(例:非特許文献5)を用いることができる。例えば、以下の式で仮想発塵源100Kの風下任意の地点における降下煤塵量を算出することができる。
このプルーム式は、発塵源での発塵を点とみなし、その発塵速度、発塵源高さ、風向風速、大気安定度等に基づいて、任意点での降下煤塵量を算出するものである。このプルーム式には、例えば、非特許文献5に開示される式をもとにした次の式を用いることができる。

C(x、y、z):座標点(x、y、z)における降下煤塵濃度(単位は、例えば、kg/m
:計測点における仮想の発塵速度(単位は、例えばkg/s)
U:風速
:降下煤塵の粒子落下速度
:計測点のz座標値
σ、σ:拡散パラメータ(拡散幅)
この式では、右手系のデカルト座標系であるx、y、zは、個々の計測点に対して設定され、xは風向(風下が正)、yは水平方向、zは鉛直方向(上が正)を示し、原点として、x方向およびy方向には計測点の位置、z方向には地表を用いる。拡散パラメータには各種のものが提案されており、例えば、Pasquill-Giffordの式を用いればよい。また、Qは、実際の発塵源から特定の計測点を通過して風下に飛散する降下煤塵量を算出する際に、仮に計測点を発塵源とみなして同様の降下煤塵量となるように設定した場合の仮想の発塵速度であり、計測点ごとに、例えば、次の式で与えればよい。
= C(x、y、z)・U・Δy・Δz
、y、z:計測点の座標値
Δy、Δz:y方向、z方向の計測点の代表幅
ここで、C(x、y、z)には空中で実測した降下煤塵濃度を用い、Δy、Δzには、例えば、計測点間の距離を用いることができる。
なお、この式では、非特許文献5に示されていた、プルームの地表反射項が省略されている。これは、降下煤塵のように粒径の大きな粒子では、沈着速度=粒子落下速度の条件が成立するので、地表近傍にありながら地表に沈着しなかった粒子を補正するための項である上記の反射項が不要だからである。
評価地点での降下煤塵量は、このプルーム式において、降下煤塵評価地点での地表面(高度0)での発塵点と評価地点に相当する水平座標点での各降下煤塵粒径区分ごとの降下煤塵濃度Ceを算出し、その粒径区分における代表粒径に相当する粒子落下速度udを仮定して、以下の式でもとめればよい。
降下煤塵量=Ce×ud
ここで、粒子落下速度には、代表粒径と代表密度を前提に、公知のストークス式等を用いて粒子の終末落下速度として算出すればよい。代表粒径には、粒径区分境界値の平均を用いてよい。評価点における代表的な降下煤塵種の比重を用いればよい。
また、市販の数値流体解析ソフトを用いて発塵源下流での流れ場を三次元的に解き、公知の粒子法モデルを用いてこの流れ場上に多数の降下煤塵を模擬した仮想の粒子を仮想の発塵源から放出してその軌跡を求める。そして、その落下地点の分布を降下煤塵量の分布として算出する手法を用いてもよい。
鉛直方向測定断面104上でのすべての計測点128に対して上記の降下煤塵量分布を算出し、同一地点上(例えば、管理地点)での各計測点128での降下煤塵量を積算した結果が鉛直方向測定断面104を通過した降下煤塵がその地点に与える降下煤塵影響として求められる。もし、鉛直方向測定断面104の風上に着目発塵源100以外の他の発塵源が存在しなければ、この降下煤塵量影響は、着目発塵源100がその地点に与えたものということになる。
(本実施形態の第1の特徴)
本実施形態では、精度の高い降下煤塵の濃度計測装置を搭載した小型の無人航空機10を着目発塵源100の風下に飛行させて、特定の瞬間における着目発塵源100に由来する降下煤塵の全てを把握可能とする降下煤塵の空間分布を測定する。これにより、下流(風下)任意の地点である評価点102での着目発塵源100の降下煤塵量への影響を予測することが可能である。
特定の瞬間における着目発塵源100に由来する降下煤塵の全てを把握可能とする降下煤塵の空間分布を測定する具体的な方法を次に示す。すなわち、着目発塵源100の風下において無人航空機10を水平に飛行させながら降下煤塵濃度を測定し、この水平飛行の高度を複数変更した条件とすることで、着目発塵源100の風下に降下煤塵濃度分布の鉛直方向測定断面104を形成することである。
さらに、測定時のこの着目発塵源100から発塵したすべての降下煤塵の流れの拡散領域(降下煤塵プルームと呼称)の鉛直断面132(当該鉛直方向測定断面104を無限に延長した鉛直平面を想定)がこの鉛直方向測定断面104(こちらは有限の大きさ)内にすべて包含され、かつ、降下煤塵プルーム100Aのこの断面内に降下煤塵濃度の計測点128が十分な数で存在するように降下煤塵濃度の計測点128を設定することにより、この降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132内での降下煤塵濃度分布を予測することができる。
ここで、十分な計測点128の数とは、後述のように、前提とする降下煤塵量の評価方法によって異なる値である。本実施形態では、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132内に十分な数の計測点128が存在するように、飛行経路、飛行速度等を設定する。
(本実施形態の第2の特徴)
本実施形態の第2の特徴は、このように把握された降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の濃度分布およびその測定時点での風向風速を前提として降下煤塵量の予測モデルを用いて、より下流での降下煤塵量分布を求めることができる。その手順として、まず、風下方向への降下煤塵プルーム100Aの水平流束を次の式で求めることができる。
[降下煤塵プルームの水平流束]=[降下煤塵濃度]×[風速]
さらに、降下煤塵プルーム100Aの断面積を適切に与えることによって、降下煤塵プルーム100A中の降下煤塵がこの鉛直方向測定断面104を通過する通過流量を算出できる。
[降下煤塵プルームの通過流量]=[降下煤塵濃度]×[風速]×cos[鉛直方向測定断面の法線と風ベクトルのなす角]×[降下煤塵プルームの断面積]
ここで、降下煤塵濃度と降下煤塵プルーム100Aの断面積は、降下煤塵プルーム100Aの断面積を各計測点128で代表される複数の鉛直断面132に分割して計算してもよい。
上式での通過量は、あたかも降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132において発塵源を配置した際の発塵速度に対応するものである。降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132が着目発塵源100と一対一に対応する場合、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132に仮想の発塵源を配置した場合の降下煤塵量影響は、着目発塵源100から発塵する降下煤塵の降下煤塵量影響と一致する。
[着目発塵源での発塵速度]=[降下煤塵濃度]×[風速]×cos [鉛直方向測定断面の法線と風ベクトルのなす角]×[降下煤塵プルームの断面積]
このことは、例えば、降下煤塵プルーム100Aの数値シミュレーションを行う手順を考えれば説明できる。一般に粒子シミュレーションでは、発塵源と評価点102を含む大気の流れ場を数値解析で求め、この流れ場上に発塵を模擬した粒子(個々の降下煤塵に相当)をソフトウェア上で発生させてその落下位置を求める。
そのうえで落下位置の確率分布が、降下煤塵量分布に対応づくものとして、降下煤塵量分布を算出する。この粒子シミュレーションの際、粒子の発生点を着目発塵源100の位置に設定することと、その粒子飛散経路上の任意の点に設定することは、同一の結果となる(発生点ごとにそこでの粒子速度を初速として適切に与えれば)。
降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132とは、この粒子飛散経路を特定の鉛直面(鉛直方向測定断面104)に限定し、かつ、この特定断面内を通過する粒子の水平流束分布に対応する粒子濃度分布を与えたものなので、粒子シミュレーションにおいて着目発塵源100から発生してこの特定断面を通過する粒子の発生場所を、着目発塵源100からこの特定断面通過場所に変更しても粒子落下地点分布(降下煤塵量分布)に影響しない。粒子シミュレーションにおけるこの特定断面での粒子の通過する平面上の密度分布が、この特定断面に仮想的に設定される発塵源での発塵速度(降下煤塵の水平流束)分布に対応する。
また、降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132内に数多くの濃度の計測点128が存在する場合には、降下煤塵プルーム100Aを計測点128ごとに分割し、それぞれの計測点128ごとに仮想の発塵源を設定して下流評価点での降下煤塵量を算出する。そして、全ての計測点128での降下煤塵量を積算すれば、着目発塵源100の評価点102での降下煤塵量影響をより正確に評価できる。
[計測点における発塵速度]=[計測点での降下煤塵濃度(算出値)]×[計測点が対応する鉛直断面積]×[風速(計測値)]×cos[鉛直方向測定面(鉛直方向測定断面)の法線と風ベクトルのなす角]
本実施形態では、鉛直方向測定断面104に仮想の発塵源を設定し、ここにおける発塵速度を上式で与え、さらに、プルーム式等の降下煤塵予測モデルを用いることによって、着目発塵源100の評価点102での降下煤塵量影響を予測することができる。本実施形態では、地上24に据え置き式の降下煤塵計測装置を配置した場合などのように着目発塵源100下流の他の発塵源の影響を考慮する必要がないので(下流の発塵源の発塵は、当該鉛直方向測定断面104での計測値に影響を一切与ええないので)、より正確に降下煤塵量を予測することができる。
(本実施形態の第3の特徴)
本実施形態の第3の特徴は、無人航空機10の前進方向Fに開口を有する煤塵採取口34を設けた無人航空機10を水平飛行させながら等速吸引を行う。これによって、降下煤塵の採取と降下煤塵の水平方向の分布の測定のための機体の移動を同時に行うことができることである。
この方法は、定点にホバリングさせて煤塵の採取を行う従来のSPM等の煤塵採取方法に比べて、煤塵の空間分布を測定するうえで、測定位置変更のための移動だけを目的とした飛行経路を必要としないので(従来法:定点でホバリング+煤塵採取→次の点まで飛行(この間、測定なし)の繰り返し)、測定時間の無駄が少なく、効率的に測定を行うことができる。
そして、この水平飛行の際、煤塵採取口の下流端から吸引を行い、その大気吸引流量を次式で示す。
[大気吸引流量]=[煤塵採取口の開口断面積]×[無人航空機の飛行速度]
これにより、前進方向Fの大気の風成分が十分に小さい場合でも、煤塵採取口34にて等速吸引もしくは等速吸引的な効果を発揮することができ、掃引大気中の降下煤塵のほぼ全量を、そのまま煤塵採取口34内に導入することができる。このため、大気のサンプリングに関する計測誤差を小さくすることができる。
すなわち、降下煤塵の鉛直流束(地表への沈着速度)を測定する従来の降下煤塵の計測方法では(前記した特許文献1、2)、煤塵採取口34は、大気に対して実質的な吸引を行わない。このため、大気中の降下煤塵濃度を直接に測定することはできない。また、沈着速度を大気中の濃度に換算することはできるが、粒子によって粒子落下速度が大きく異なるため、その精度は高くない。
また、煤塵採取口34に大気の風が自然に流入する構成の従来の降下煤塵の計測方法では(前記した特許文献3、4)、大気の積極的な吸引を行わない。このため、大気の風の風速が小さいときには降下煤塵を煤塵計測機に導入することができず、大気中の煤塵濃度を常に計測できるわけではない。
これらに対して、本実施形態では、無人航空機10の飛行によって大気を掃引する。このため、無風状態の大気であっても大気中の降下煤塵濃度を計測することができる。
また、航空機の機体外面に煤塵の沈着面を設けて煤塵を捕集する方法では(前記した非特許文献2)、機体周囲の降下煤塵濃度と沈着面への沈着速度の関係が明確ではないため、大気中の降下煤塵濃度を高精度で測定することはできない。
煤塵採取口34の下流側で吸引を行わない方法では(非特許文献3)、煤塵採取口34は、実質的に掃引領域で大気の多くを排除しながら前進するため、排除された大気に随伴して、掃引領域内の特に比較的小径の降下煤塵が煤塵採取口34に流入しにくくなる。このため、大気のサンプリングに関する計測誤差が大きいという問題がある。
また、市販の作業環境計測用の光散乱式煤塵濃度計を用いる場合、大気を単純に吸引する。このため、煤塵採取口34から流入する降下煤塵量は、大気中の降下煤塵濃度と定量的で固定的な関係を示さず、大気のサンプリングに関する計測誤差が大きいという問題がある。
このように、従来技術では、降下煤塵を高精度にサンプリングすることができなかったが、本実施形態では、降下煤塵を高精度にサンプリングすることができる。
(本実施形態の第4の特徴)
本実施形態の第4の特徴は、煤塵採取時の水平飛行を同一の高さで機体の前進方向Fに絶対空間上で往復させることにより、降下煤塵濃度計測の精度を向上することがきることである。屋外大気には風速が存在するので、小型の無人航空機10を一定速度で飛行させ、一定流量で吸引を行った場合、風速の飛行方向成分によって、向かい風、あるいは、追い風となるので、厳密な等速吸引条件での測定からは誤差を生じる。
そこで、無人航空機10を往復飛行させることで、往路122と復路124では風の影響が反対となり、等速吸引からの誤差は符号が逆転する。これを利用して、同じ空間上の計測点128での往路122と復路124での降下煤塵計測値を平均化して当該計測点128での降下煤塵濃度として算出することで、測定値を等速吸引時の条件に、より近づけることができる。
(本実施形態の第5の特徴)
本実施形態では、煤塵採取口34から吸引した大気を、煤塵濃縮器であるバーチャルインパクタ38で高濃度空気44と低濃度空気46に分離し、高濃度空気44をパーティクルカウンタ60へ供給するとともに、低濃度空気46をファン42で外部へ排出する。これにより、所要の大流量の大気を処理する降下煤塵計測装置を小型の無人航空機10に搭載可能なレベルまで小型軽量化することができる。
典型的な大気中の降下煤塵の個数濃度は、エアロゾルに比べて極端に小さい。このため、局所での降下煤塵濃度の計測値が統計的に有意であるためには、より大量の大気を計測装置内に導入して所要数の降下煤塵を採取する必要がある。統計的に有意な煤塵個数とは、一つの濃度測定値に対して、平均的に、少なくとも1個以上の降下煤塵が採取される必要がある。
すなわち、一定流量で大気のサンプリングを行って一定時間ごとに採取された降下煤塵数のデータそれぞれを降下煤塵濃度に換算する際、各サンプリングで検出される降下煤塵個数の期待値が1未満であると仮定する。この場合、特定のサンプリングで降下煤塵が1個検出され、別のサンプリングで1個も検出されない場合、次の問題が生じる。
降下煤塵が1個検出された場合と1個も検出されない場合とにおいて、対応する大気中の位置での降下煤塵濃度差によるものか、大気中の降下煤塵濃度は一様であるが大気中にランダムに存在する降下煤塵がたまたま検出されたのか判別できない。
また、濃度測定値の代表性の観点から、一つの濃度測定値に対して、平均的に少なくとも10個以上、好ましくは、30個以上の降下煤塵が採取されることが好ましい。これにより、サンプルした降下煤塵数の平均値と、大気サンプル箇所に対応する位置での真の降下煤塵数濃度平均値との差の期待値を十分小さくする。
粒子径が30μmの典型的な降下煤塵の場合、都市域での典型的な降下煤塵量である1t/kmの降下煤塵量の生じる場所での降下煤塵の大気中での数密度は、約1000個/mである。10個以上の降下煤塵を採取するためには、10L以上の大気を計測機に導入する必要があることになる。
数分〜数10分の飛行時間で数10〜100m程度の小規模な降下煤塵プルームを識別可能な空間分解能で計測をするため、10個以上の降下煤塵を10箇所/minの頻度(飛行速度5m/sの場合、30mの空間分解能に相当)で採取しようとする。この場合、計測機に導入すべき大気流量は、100L/min以上必要である。従って、大気の吸引流量は、100L/min以上であることが好ましい。
しかし、このような大流量の大気中の降下煤塵を直接、フィルタで捕集した場合、フィルタでの圧力損失が過大になってフィルタを破損する問題を生じる。また、フィルタの破損を回避するために、フィルタ面積を大きくするとフィルタ装置が巨大化して小型の無人航空機には搭載できなくなる。
また、パーティクルカウンタ60で100L/min以上の大気中の煤塵を直接検出しようとすると、大型のパーティクルカウンタ60が必要となり、小型の無人航空機10の許容重量(質量)を超えてしまう虞がある。市販のパーティクルカウンタ60の重量(質量)を考慮すると、小型の無人航空機10に搭載可能なものは、処理流量が数L/min以下のものに限られる。
そこで、本実施形態では、吸引した100L/minレベルの大気を、バーチャルインパクタ38で分離して濃縮し、数L/minレベルの高濃度空気44として、煤塵検出部を構成するパーティクルカウンタ60に供給することで、この問題を解決した。
(本実施形態の第6の特徴)
煤塵濃縮器であるバーチャルインパクタ38は小型軽量である。そして、このバーチャルインパクタ38の低濃度空気流出路50に吸引用のファン42を設け、吸引装置を小型の無人航空機10に搭載可能なレベルまで軽量化するとともに、所要の計測時間応答性(約数秒)を満足した。
まず、軽量化の効果について説明する。ファン42の特徴は、装置重量(質量)当たりの吸引流量がブロワや圧縮機に比べて一般に小さい。また、ファン42は、揚程の能力がブロワや圧縮機に比べて著しく小さい。
本実施形態では、ファン42として単段の軸流ファン、特に、10000rpm以上の回転数のものを用いることによって所要流量を満足するための羽根の直径を小さくでき、一層、軽量化できる。但し、小型で単段の軸流ファンでは、構造上、所要流量(100L/min)を実現可能な揚程である約100Paを大きく超えることは困難である。
従来の煤塵計測装置においては、大気の吸引を行う際に少なくとも1000Pa(1kP)以上の吸引装置が必要であった。例えば、小型の無人航空機10に搭載可能な小型フィルタ(例:直径100mm)を流路の途中に配置して粒子を捕集する方式の場合、100L/minの流量をフィルタに通過させれば、通常、数kPaの圧力損失が生じる。このため、これに対応する促進部40であるブロワまたは圧縮機を用いることが必要である。
また、バーチャルインパクタ38を用いる場合であっても、従来、吸引装置にはブロワまたは圧縮機のみが用いられてきた。
その理由は、第1に、従来の煤塵測定装置では低濃度側の流出口の下流に通常、フィルタを配置する構造であるため、低濃度空気流出路50でも数kPa以上の圧力損失が生じる。
第2に、低濃度空気流出路50にフィルタを配置しない場合であっても、従来の据え置き式煤塵測定装置においては、装置構造を簡略化するために、一般に低濃度空気流出路50の吸引装置を高濃度空気流出路48の吸引装置と共用し流量制御が行われていた。このため、高濃度空気流出路48における吸引装置の必要条件からブロワまたは圧縮機が用いられる。この場合、吸引装置の重量(質量)は増大するが、据え置き式の装置ではあまり問題視されてこなかった。
第3に、仮に、低濃度空気流出路50の吸引装置を高濃度空気流出路48の吸引装置と別に設け、低濃度空気流出路50にフィルタを設けないとしても、従来のバーチャルインパクタ38は低濃度側の吸引装置に500Pa以上の揚程が必要である。このため、単段の軸流ファンを適用することはできない。
一方、バーチャルインパクタ38には、次の欠点がある。第1に、粒子の分級装置として適用可能な流量範囲が比較的狭い(特に、大流量側の制約が大きい)。第2に、分級装置内での流路が他の方式よりも短いため、分級装置内でより強い慣性力を与える必要がある(即ち、同じ大きさの粒子を分級するためには分級装置内でより高速な気流を発生させることが必要である)。このため、工業的には、主として粒子の50%分離直径が5〜7μm以下の粒子(例えばSPM用やPM2.5用)の分級に適用されてきた。
これより大きな50%分離直径の場合、特に、20μm以上の場合、バーチャルインパクタ38と同様に乾式分級方式が可能なサイクロンセパレータ等の連続式分級装置が専ら適用されている。50%分離直径が5〜7μm以下の分級ではサイクロンセパレータでは効率的に分級できないので、バーチャルインパクタ38が適用され得る。
バーチャルインパクタ38では吸引粒子の慣性力を利用して粒子の分級を行うので、表面力に対して慣性力の影響が大きな流速を生じさせる必要がある。従来のバーチャルインパクタでは、いずれも5〜7μm以下の分級を行っていたので、20m/sを超える流速(約240Pa以上の動圧)を発生させる必要があった。このため、バーチャルインパクタ装置内の形状抵抗等によって一般に500Pa以上の圧力損失が発生することが避けられなかった。
本実施形態では、軽量化のために低濃度空気流出路50の吸引装置として、100Pa程度までの揚程しか期待できない軽量ファンを用いることが必要である。このため、数m/sの流速があれば本実施形態が対象とする分級性能である10μm超の粒子を分離可能なサイクロンセパレータを適用することが考えられる。
しかし、本発明者が実験したところサイクロンセパレータを用いる場合には吸引された降下煤塵が分級器内壁に付着して少なくともすぐには煤塵濃度計に粒子を供給できない粒子の割合の大きいことが判明した。この現象は、サイクロンセパレータ内での流速をファン42の限界能力である約12m/sにしても改善しなかった。
これは、サイクロンセパレータでの流路は広いので広範囲に降下煤塵が吸着するのに対し、サイクロンセパレータ内で高速化可能な領域はごく一部に限られ、一旦、壁面に付着した粒子は容易には再飛散できないからである。このことは、数秒〜数十秒程度の時間分解能での煤塵濃度計測が必要な本実施形態の所要性能からみて問題が生じ得る。
そこで、本発明者らは、フィルタ等の大きな通気抵抗を排除した配管系をバーチャルインパクタの38低濃度側流出口に接続し、限界流速である約12m/sといった従来のバーチャルインパクタ38の設定流速に比べて極端に小さい流速で降下煤塵の分級を行った。その結果、50%分離粒径として約14μmが得られ、かつ、10μmの粒子であっても約10%の粒子を高濃度側に分離できる(即ち分級効率が10%)ことが判明した。
本実施形態が対象とする降下煤塵の定義は、直径10μmを超える粒子であり、直径10μmの粒子の判別は、例えばパーティクルカウンタ60等の煤塵濃度計の検知しきい値を調整することで可能である。また、バーチャルインパクタ38の分級効率は、流速一定の条件で実験などによって予め求めることができる。従って、ある粒径での煤塵濃度計による煤塵濃度測定値が得られれば、この値にバーチャルインパクタ38の分級効率を補正することによって、直径10μm超の粒子の濃度値を正確に求めることができる。
次に、計測時間応答性の効果について説明する。本発明者らのバーチャルインパクタ38を用いた分級試験では、煤塵採取口34から流入した降下煤塵は少なくとも数秒以内、その大半は1秒以内に煤塵濃度計に到達することがわかった。
これは、バーチャルインパクタ38内での流路が短く、かつ、狭いため約12m/s程度の流れを分級装置内で生じさせれば、分級装置内の少なくとも高濃度側流路内においては、至る所でこの流速に近い比較的高速な流れ場となる。このため、高濃度側流路内の煤塵が流路壁に付着したとしても容易に再飛散するからと考えられる。
低濃度側流路では、構造上、流れが低速化するので、壁面に付着した粒子が直ちに再飛散するとは限らないが、本実施形態では低濃度側流路の煤塵の測定を行わないので問題ない。このように、本実施形態では所要の時間応答性で降下煤塵濃度を測定することができる。
これに対して、同様の条件でバーチャルインパクタ38の代わりにサイクロンセパレータを用いた場合、サイクロンセパレータ内に進入した降下煤塵粒子のうち、少なくとも30%以上の粒子が壁面に付着した。また、降下煤塵の供給を止めた後にも吸引を続けた際には、供給停止後5分間にわたってサイクロンセパレータ内に付着した粒子の再飛散が生じて煤塵濃度計に到達した。
このように、煤塵採取口34から流入した降下煤塵が煤塵濃度計に至るまでの時間は、サイクロンセパレータにおいては不定であるため、サイクロンセパレータを用いた場合の計測時間応答性は、定義できないことがわかった。
これらから、本実施形態にあっては、大流量の大気を処理可能であって計測時間応答性も高い管路系装置28を軽量とすることで、管路系装置28の小型の無人航空機10への搭載可能となり、降下煤塵の空間濃度分布を正確に測定することができる。
(本実施形態の第7の特徴)
本実施形態では、煤塵濃縮器を構成するバーチャルインパクタ38からの高濃度空気流出路48にパーティクルカウンタ60からなる連続計測手段を設けることで、降下煤塵の空中濃度をリアルタイムで測定することができる。
パーティクルカウンタ60自体は特定の粒径範囲の粒子について計測機を通過する時間当たり個数を計測するものであるが、粒子の代表径から粒子体積を算出し、これに時間当たり通過個数を乗じれば、実質的に降下煤塵の体積流量を測定したことになる。
また、大気の吸引流量は、ほぼファン42の吸引流量に等しく、この流量変化は小さいので、単位時間当たりの降下煤塵流量をファン42の吸引流量で除すれば、実質的に、吸引した大気中の降下煤塵濃度を計測することができる。
ここで、連続計測手段であるパーティクルカウンタ60は、高濃度空気流出路48に設けられており、パーティクルカウンタ60を通過する高濃度空気44は、降下煤塵濃度が著しく高い。このため、下流側の促進部40を構成するブロワや圧縮機が高濃度の煤塵によって作動不良を生じないように、パーティクルカウンタ60とブロワまたは圧縮機からなる促進部40の間に煤塵除去用のフィルタ62を設けることが望ましい。
通気抵抗体であるフィルタ62を用いることによる圧力損失に対応するため、高濃度空気流出路48には、揚程が少なくとも数kPa以上のブロワまたは圧縮機を設ける。この際、本実施形態では、バーチャルインパクタ38によって低濃度空気46が分離されており、フィルタ62の通過流量を低減することができる。このため、ブロワまたは圧縮機に小容量で軽量のものを用いることができる。
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態では、無人航空機(本実施形態では小型無人航空機(UAV、即ち、通称、ドローン)を使用)10を用いて空中の降下煤塵の煤塵量を測定するので、据置型の降下煤塵計測装置を高位置に設置する場合と比較して、低コスト化を図ることができる。また、レーザ光を用いて粒径の大きな降下煤塵を測定する場合や、飛行速度が速い航空機である有人固定翼機を用いる場合や、有人回転翼機を用いる場合と比較して空中の降下煤塵の煤塵量を精度よく測定することができる。
また、無人航空機10の飛行速度が[吸引装置の吸引流量]/[煤塵採取口の開口面積]となるように、無人航空機10を風向と交差する水平飛行経路130に沿って水平飛行させる。このため、無人航空機10と共に前進方向Fへ移動する煤塵採取口34からの大気を等速吸引に近づけることができる。これにより、煤塵量を精度よく測定することができる。
連続計測装置であるパーティクルカウンタ60で測定した煤塵量、測定した時刻、及び測定した位置に基づいて、水平飛行経路130上に複数設定した計測点128毎に降下煤塵濃度を算出するので、降下煤塵の分布を把握することができる。
そして、各計測点128での降下煤塵濃度及び風向きを用いるとともに降下煤塵量予測モデルに基づいて各計測点128より風下での地上における降下煤塵量を推定することができる。
したがって、地上24における降下煤塵量の推定精度を犠牲にすることなく、任意点での降下煤塵の量を推定することができる。
また、水平飛行経路130は、無人航空機10の前進方向Fが互いに異なる往路122及び復路124を含む。これにより、大気の吸込方向に起因した測定誤差を抑制することができる。
さらに、水平飛行経路130を複数の異なる高度に設定し、鉛直方向Vに並ぶ各計測点128と水平方向Hに並ぶ各計測点128とを通過する鉛直方向測定断面104を想定する。そして、水平飛行経路130の風上に存在する発塵源からの降下煤塵の流れの拡散領域を示す降下煤塵プルーム100Aの鉛直断面132の全域が鉛直方向測定断面104内に含まれるように水平飛行経路130を設定した。
ここで、全域とは、降下煤塵プルーム100Aを形成する降下煤塵の90%以上を含む領域とする。
これにより、降下煤塵プルーム100Aの分布を、広がりをもって測定することができる。
また、降下煤塵量予測モデルが発塵速度を用いるものであり、発塵速度を、[発塵速度]=[計測点での降下煤塵濃度算出値]×[計測点に対応する鉛直断面積]×[風速計測値]×cos[鉛直方向測定断面の法線と風ベクトルのなす角]なる式で算出する。
これにより、推定精度の向上が図られる。
さらに、公知のプルーム式を用いることで、降下煤塵量予測モデルとすることができる。
そして、煤塵採取口34と連続計測装置であるパーティクルカウンタ60との間に、煤塵採取口34からの空気を降下煤塵濃度の高い高濃度空気44及び降下煤塵濃度の低い低濃度空気46に分離して流出するバーチャルインパクタ38を設ける。これにより、高濃度空気44を吸引するブロワ又は圧縮機からなる促進部40の負担を軽減することができる。
これにより、重量(質量)が嵩み勝ちな促進部40を軽量化することができるので、積載重量(質量)が限られた小型の無人航空機10への搭載が容易となる。
そして、大気中の降下煤塵を計測する連続計測装置がパーティクルカウンタ60なので、フィルタ62で採取した降下煤塵を計測する場合と比較して、降下煤塵量のリアルタイム計測が可能となる。
<第二実施形態>
図13から図15は、第二実施形態を示す図であり、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分についてのみ説明する。
すなわち、本実施形態では、鉛直方向測定断面の風上WUに着目発塵源100以外に他の発塵源150が存在する。この場合、第一実施形態での降下煤塵量影響を算出すると、着目発塵源100のその降下煤塵量影響への寄与度は、必ずしも明確ではない。
そこで、本実施形態では、着目発塵源100を境として、風上WU側に風上鉛直方向測定断面104Aを設定するとともに、風下WD側に風下鉛直方向測定断面104Bを設定する。
これら二つ鉛直方向測定断面104A、104Bの間には、着目発塵源100以外の発塵源が存在しないことが好ましく、そのためには、それぞれの鉛直方向測定断面104A、104Bを着目発塵源100に十分近く配置すればよい。例えば、二つの鉛直方向測定断面104A、104Bを互いに平行に10m以上1000m以下の距離をなすように配置することができる。飛行ルート設定上の便宜等の理由があれば、二つの鉛直方向測定断面104A、104Bは、互いに平行でなくてもよい。
このような測定を行うことによって、着目発塵源100の風上に他の発塵源150が存在する場合であっても着目発塵源100が下流での降下煤塵量に与える影響を定量的に求めることができる。その手順は、次のとおりである。
まず、二つの鉛直方向測定断面104A、104B上でそれぞれ小型の無人航空機10を用い、風下での降下煤塵量計算を行う。それぞれの鉛直方向測定断面104A、104Bにおける無人航空機10の運用方法および風下での降下煤塵量計算方法は、第一実施形態のものと同一とする。
それぞれの鉛直方向測定断面104A、104Bでの飛行は、瞬時の降下煤塵量影響を評価する場合には、十分短い間隔(風向変動や発塵速度変動の時間スケールに比べて)で実施される必要がある。複数回の測定を実施して平均的な降下煤塵量影響を評価する場合には、二つの鉛直方向測定断面104A、104Bでの飛行は、時間間隔が上記のものより長くてもかまわない。
風下鉛直方向測定断面104Bの範囲(広さ)は、第一実施形態での方法と同一でもよい。また、着目発塵源100の風上に存在する他の発塵源150からの降下煤塵プルーム150Aのうち、風下の評価点102に影響を与え得る範囲の降下煤塵プルーム150A部分が風下鉛直方向測定断面104Bを通過するように風下鉛直方向測定断面104Bを設定することが好ましい。
風上の他の発塵源150からの降下煤塵プルーム150Aの特定部位が評価点102に降下煤塵を降下させ得るかどうかは、風向風速、粒子径、粒子比重、降下煤塵プルーム150Aの位置等のデータを入力したプルーム式等によって判定することができる。
この際、風上の他の発塵源150からの降下煤塵プルーム150Aの部位の高さが不明である場合には、測定時の代表風速および範囲を用いて、次の式から風下鉛直方向測定断面104Bの高さを定めてもよい。
[風下鉛直方向測定断面の高さ]=([降下煤塵の落下速度]×[評価点−風上発塵源間距離]/[風速]+2×[評価点における風上発塵源からの降下煤塵プルーム幅(鉛直方向)])
この式を用いれば、いかなる遠方の風上発塵源からの評価点102への影響を評価する際であっても、風下鉛直方向測定断面104Bの高さを有限にすることができる。降下煤塵の落下速度には検討対象とする降下煤塵の粒径および比重を用いてストークス式等を用いて算出することができる。風速には、測定時の代表風速を用いることができる。
評価点102における風上の他の発塵源150からの降下煤塵プルーム150Aの幅には、パスキル−ギフォード式等を用いて算出することができる。プルーム幅を二倍するのは、プルーム幅の定義が通常、濃度の標準偏差値を用いて表現されるからである。この例では中心から2σの濃度範囲を実質的にプルーム範囲として採用したことによるものであり、2.5σや3σをプルーム範囲に用いても一向にかまわない。
パーティクルカウンタ60を用いて降下煤塵の量を測定する本実施形態では、同時に粒子径も測定できるので、降下煤塵の量の測定値のうち検討対象の粒径範囲のみのデータを抽出して降下煤塵量の解析に用いればよい。
風上鉛直方向測定断面104Aの範囲は、風下鉛直方向測定断面104Bと同一、または、これ以下でよい。なぜならば、風下鉛直方向測定断面104Bは、風上の他の発塵源150から評価点102に到達しうる降下煤塵プルーム150A部分をすべて包含するように設定されている。かつ、風上鉛直方向測定断面104Aを通過した降下煤塵プルーム150Aは風下鉛直方向測定断面104Bに至るまでの間に必ず径が拡大するからである。
次に、着目発塵源100および二つの鉛直方向測定断面104A、104Bの下流での評価点102での二種類の降下煤塵量算出値(風上鉛直方向測定断面104Aでの算出値:風上降下煤塵量、風下鉛直方向測定断面104Bでの算出値:風下降下煤塵量)を用いて、着目発塵源100から当該評価点102への降下煤塵量影響を、次の式で求める。
[着目発塵源から当該地点への降下煤塵量影響]=[風下降下煤塵量]−[風上降下煤塵量]
もし、風上鉛直方向測定断面104Aと風下鉛直方向測定断面104Bの間に発塵源がなければ、風上降下煤塵量と風下降下煤塵量は、誤差(計測誤差、計算手法の誤差)の範囲内で一致するはずである。このとき、上式での着目発塵源100から当該評価点102への降下煤塵量影響も「0」になる。なぜならば、風上鉛直方向測定断面104Aを通過し、評価点102に降下する降下煤塵は、全て風下鉛直方向測定断面104Bを通過するように二つの鉛直方向測定断面104A、104Bが配置されているからである。
また、風下鉛直方向測定断面104Bは、着目発塵源100からの降下煤塵プルーム100Aをすべて包含するように設定されている。従って、風上鉛直方向測定断面104Aと風下鉛直方向測定断面104Bとの間に着目発塵源100しか存在せず、着目発塵源100からの発塵量が「0」でない場合、上式の値が着目発塵源100から評価点102に与える降下煤塵量になる。
本実施形態の方法によって、着目発塵源100の風上WUに他の発塵源150が存在する場合であっても、評価点102での降下煤塵量影響のうち、着目発塵源100の影響代を定量的に算出することができる。これにより、例えば、着目発塵源100を対策した際の評価点102に与える影響を予測することができる。
(本実施形の特徴)
本実施形態の特徴は、着目発塵源100の風上WUに他の発塵源150が存在する場合に、上記の無人航空機10による降下煤塵濃度分布測定およびこれから算出される降下煤塵量を着目発塵源100の風上WUおよび風下WDでそれぞれにおいて求める(降下煤塵量(風上測定)および降下煤塵量(風下測定))ことにより、着目発塵源100のみの降下煤塵量への影響を「降下煤塵量(風下測定)」−「降下煤塵量(風上測定)」の値として求めることができる。
これは、風下WDでの計測点128と風上WUでの計測点128間の距離を着目発塵源100から評価点102までの距離に比べて十分小さく(例:20%以下)設定することにより、風上計測点−風下計測点間での降下煤塵量の影響を十分に小さくする。その結果、風下鉛直方向測定断面104Bでの降下煤塵通過量が風上鉛直方向測定断面104Aでの降下煤塵通過量に着目発塵源100から発塵した降下煤塵の風下鉛直方向測定断面104Bでの通過量を重ね合わせたものに実質的に相当することを利用するものである。
(作用・効果)
本実施形態においても、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、本実施形態では、着目発塵源100の風上WUに他の発塵源150が存在する場合であっても、着目発塵源100に起因する評価点102での降下煤塵量を推定することができる。
これにより、例えば、着目発塵源100に施す対策によって評価点102での降下煤塵の減少量を予測することができ、効果的な対応策の検討が容易となる。
本実施例では、前述した無人航空機10を用いて、上空での降下煤塵のサンプリングを行った。装置条件は、以下のとおりである。
(無人航空機本体)
機体形式: マルチロータ式無人航空機(6ロータ)
寸法: 直径1m
機体重量(質量): 5kg
フライトコントローラ: PIXHAWK(登録商標)
操縦: 無線機を用いた手動操縦および自動操縦(オートパイロット機能)
(搭載機)
搭載機14は、第一実施形態で説明した構成である。
重量(質量): 2.5kg
寸法: 300mm×300mm×200mm
煤塵採取口: 無人航空機の前進方向Fに延在する直径20mmの円管
煤塵濃縮器: バーチャルインパクタ
流入流速: 12m/s
フィルタ: 直径25mmのメンブランフィルタ(捕集径5μm、市販品)
圧縮機: 市販品。4L/min(最大)、揚程40kPa(最大)。2L/minおよび10kPaの条件で運転した。
ファン: 市販品。軸流単段式。最大16000rpm。流量500L/min(最大)、揚程300Pa(最大)、100L/minおよび揚程150Paの条件で運転した。
パーティクルカウンタ: 10μm以上の粒子の総数と大きさの分布を常時測定し、10s周期で出力(市販品)
位置検出: GNSS受信機。1s周期で位置情報を出力(市販品)
計算機: マイクロコンピュータ(市販品)。時刻計測(内蔵時計を使用)、パーティクルカウンタ測定値、GNSS測定値を有線で受信し、内蔵ハードディスクに保存。
電池: リチウムポリマバッテリ(市販品)
電源装置: 各装置に必要な電圧を、市販の電圧変換器を用いて供給した。
(着目発塵源)
植生のない裸地、表面は、砂。幅150m×奥行100m
裸地表面での風によって降下煤塵が発塵する。
この着目発塵源100の風上方向に他の発塵源は存在しない。風下方向には同様の裸地が複数存在する。
(鉛直方向測定断面)
上記裸地の奥行方向風下側端に幅方向200m、高さ50mの鉛直方向測定断面を設定した。計測点は、15、25、35、45mの高度でそれぞれ幅方向に五等分し、その中点を計測点とした(4(高度)×5(幅方向)=20個の計測点)。
(測定方法)
オートパイロット機能を用いて、上記鉛直方向測定断面上に、上記計測点を形成できるように飛行経路を次のように設定した。
飛行経路: 離陸して15mまで上昇し、鉛直方向測定断面上に到達させた。以下、この面内で飛行を行った。まず、高度15mで幅方向に往復水平飛行した後、高度水平距離25mまで上昇し、以下、25m、35m、45mにそれぞれ飛行高度を変更した後、それぞれの高度で水平往復飛行を実施した。最後に離陸地点まで飛行して着陸した。
飛行速度: 鉛直方向測定断面内での水平飛行区間(片道)200mを五分割するため、10s周期で計測値を出力するパーティクルカウンタの出力周期を考慮して飛行速度は、前進方向に4m/sとした。
飛行中の無人航空機の向き: 鉛直方向測定断面内での水平飛行中には前進方向Fに機首(煤塵採取口34)を向けて飛行した。
飛行中は、時刻、位置、煤塵量を連続測定し、搭載機14のマイクロコンピュータ上に、マイクロコンピュータ上の時刻とともに各測定値をそれぞれ記録した。
飛行回数: 計50フライトを実施した。
(降下煤塵濃度の算出)
無人航空機10の着陸後にマイクロコンピュータ上のデータを取り出し、第一実施形態の方法に従ってデータを処理して空間位置上の降下煤塵濃度分布を、粒径区分ごとに算出した。このうち、鉛直方向測定断面104での水平飛行中のデータを最終的な降下煤塵濃度計測値として採用した(記録された位置情報から各測定データが鉛直方向測定断面104での水平飛行中のものであるかを判別した)。粒径30μmの区分での濃度分布の結果の一例を図16に示す。
第一実施形態の方法に従って、この着目発塵源100の風下方向(測定期間の主風向を基準としたもの)の降下煤塵量分布を算出した(パスキルギフォード式、ストークス式を用いたプルーム式を適用した)。50フライト分でこのようにして求めた降下煤塵量の分布の平均値を図17に示す。このように、従来は、評価が困難であった特定の地表面からの風による風下での降下煤塵量影響を、本実施例では定量的に評価することができた。
(着目発塵源)
実施例1での着目発塵源の主風向の風下方向200mに位置する他の裸地を本実施例での着目発塵源とした。
植生のない裸地、表面は、砂。幅150m×奥行100m
この着目発塵源と実施例1での着目発塵源との間には他の発塵源は存在しない。風下方向には同様の裸地が複数存在する。
(鉛直方向測定断面)
風上鉛直方向測定断面には実施例1での鉛直方向測定断面を用いた。風下鉛直方向測定断面は、本実施例での着目発塵源の風下端部に風上鉛直方向測定断面と同様のものを、風上鉛直方向測定断面と平行に設定した。鉛直方向測定断面の寸法および計測点配置は、実施例1と同様である。
(測定方法・降下煤塵量影響の算出)
風上鉛直方向測定断面での測定値および降下煤塵量影響は、実施例1でのものを流用した。
風下鉛直方向測定断面での測定は、風上鉛直方向測定断面での測定と並行して実施した。測定方法および降下煤塵量影響は、実施例1と同様の方法を用いた。
本実施例での着目発塵源による風下での降下煤塵量影響を、前述した式を用いて算出した。その結果の一例として、着目発塵源から風下約2kmに存在する評価点での本実施例での着目発塵源の影響代は、以下のとおりである。
風上鉛直方向測定断面の評価点に対する降下煤塵影響代:1.6 t/km
風下鉛直方向測定断面の評価点に対する降下煤塵影響代:1.9 t/km
本実施例での着目発塵源による評価点に対する降下煤塵影響代:0.3 t/km
このように、本実施例では、着目発塵源の風上、風下に他の発塵源が存在する場合であっても、着目発塵源の評価点に対する降下煤塵量影響を定量的に算出することができる。
10 無人航空機
14 搭載機
34 煤塵採取口
36 採取部
38 バーチャルインパクタ
40 促進部
42 ファン
44 高濃度空気
46 低濃度空気
48 高濃度空気流出路
50 低濃度空気流出路
60 パーティクルカウンタ
62 フィルタ
64 時刻計測手段
66 位置計測手段
68 データ記録手段
70 計算機
100 着目発塵源
100A 降下煤塵プルーム
100K 仮想発塵源
102 評価点
104 鉛直方向測定断面
104A 風上鉛直方向測定断面
104B 風下鉛直方向測定断面
106 検討対象風向
122 往路
124 復路
128 計測点
130 水平飛行経路
132 鉛直断面
140K 仮想発塵源
150 発塵源
150A 降下煤塵プルーム
F 前進方向
H 水平方向
V 鉛直方向
WD 風下
WU 風上

Claims (8)

  1. 地上への降下煤塵量を推定する方法であって、
    前進方向に開口する煤塵採取口から大気を吸引する吸引装置及び煤塵採取口から取り込んだ大気中の降下煤塵の煤塵量を計測する連続計測装置を備えた無人航空機を、飛行速度が[吸引装置の吸引流量]/[煤塵採取口の開口面積]となるように風向きと交差する水平飛行経路に沿って水平飛行させるとともに、前記水平飛行経路を飛行中に前記連続計測装置で測定した煤塵量を、測定した時刻及び測定した位置に対応付けて記録する第一工程と、
    前記連続計測装置で測定した煤塵量、測定した時刻、及び測定した位置に基づいて、前記水平飛行経路上に複数設定した計測点毎に降下煤塵濃度を算出する第二工程と、
    各計測点での降下煤塵濃度及び風向風速の計測値を用いるとともに降下煤塵量予測モデルに基づいて各計測点より風下での地上における降下煤塵量を推定する第三工程と、
    を有する降下煤塵量推定方法。
  2. 前記水平飛行経路は、前記無人航空機の前進方向が互いに異なる往路及び復路を含む請求項1に記載の降下煤塵量推定方法。
  3. 前記水平飛行経路を複数の異なる高度に設定し、鉛直方向に並ぶ各計測点と水平方向に並ぶ各計測点とを含む鉛直方向測定断面を想定するとともに、
    前記水平飛行経路の風上に存在する発塵源からの降下煤塵の拡散領域を示す降下煤塵プルームの鉛直断面の全域が前記鉛直方向測定断面内に含まれるように前記水平飛行経路を設定した請求項1または2に記載の降下煤塵量推定方法。
  4. 前記降下煤塵量予測モデルが発塵速度を用いるものであり、前記水平飛行経路上での計測点における見かけ上の発塵速度を、[発塵速度]=[計測点での降下煤塵濃度算出値]×[計測点に対応する鉛直断面積]×[風速計測値]×cos[鉛直方向測定断面の法線と風ベクトルのなす角]なる式で算出する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の降下煤塵量推定方法。
  5. 前記降下煤塵量予測モデルがプルーム式である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の降下煤塵量推定方法。
  6. 前記煤塵採取口と前記連続計測装置との間に、前記煤塵採取口からの空気を降下煤塵濃度の高い高濃度空気及び降下煤塵濃度の低い低濃度空気に分離して流出するバーチャルインパクタを設け、
    該バーチャルインパクタから高濃度空気を流出する高濃度空気流出路に前記連続計測装置及び該連続計測装置での前記高濃度空気の通過を促進させるブロワ又は圧縮機からなる促進部を設けるとともに、前記バーチャルインパクタからの前記低濃度空気を流出する低濃度空気流出路にファンを設け、前記促進部及び前記ファンで前記吸引装置を構成した請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の降下煤塵量推定方法。
  7. 前記連続計測装置がパーティクルカウンタである請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の降下煤塵量推定方法。
  8. 評価対象とする発塵源の風上と風下とにおいて、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の降下煤塵量推定方法をそれぞれ適用し、風下で測定した風下降下煤塵量から風上で測定した風上降下煤塵量を減じて得た降下煤塵量を、評価対象とする発塵源による降下煤塵量とする降下煤塵量推定方法。
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