JP2019178413A - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コスト面で優れるインヒビターレス法であって、かつ、高い磁束密度を有する方向性電磁鋼板を製造することができる方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。【解決手段】所定の成分組成を有する鋼スラブに、スラブ加熱を施し、加熱された前記鋼スラブを熱間圧延して熱延鋼板とし、前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施し、前記熱延板焼鈍後の熱延鋼板に、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して冷延鋼板とし、前記冷延鋼板に、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、前記一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布し、前記冷延鋼板に二次再結晶を伴う純化焼鈍を施し、前記純化焼鈍後の冷延鋼板に平坦化焼鈍を施す、方向性電磁鋼板の製造方法であって、前記スラブ加熱においては、前記鋼スラブを1280℃以下のスラブ加熱温度T(℃)まで加熱し、前記スラブ加熱温度Tに均熱時間t(分)の間保持し、前記均熱時間tが下記(1)式で定義されるPt以下であり、前記最終冷延前焼鈍においては、前記鋼板を、1030〜1150℃の焼鈍温度まで加熱し、前記焼鈍温度に10〜180秒の保持時間の間保持し、冷却し、前記冷却の際に1030〜900℃の温度範囲に滞留する滞留時間が10秒以上であり、前記最終冷延における圧延温度が100〜300℃であり、前記一次再結晶焼鈍における500〜680℃の昇温区間における昇温速度が100〜400℃/sである、方向性電磁鋼板の製造方法。Pt=800[C]−5[Si]+T/25…(1)【選択図】 なし

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に、磁束密度が高く、変圧器の鉄心材料として好適に用いることができる方向性電磁鋼板を得ることができる方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料であり、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った集合組織を有している。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、二次再結晶を伴う純化焼鈍を行うことによって形成される。ここで、二次再結晶とは、いわゆるゴス(Goss)方位と称される{110}<001>方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる現象をいう。
上記二次再結晶を生じさせるための代表的な手法としては、インヒビターと呼ばれる析出物を利用する方法がある。この方法では、AlN、MnS、MnSeなどの析出物を鋼中に分散させることによって焼鈍工程中の結晶粒成長を制御し、最終的に、Goss方位を有する結晶粒を選択的に成長させる。
上記のインヒビターを用いる方法は、安定して二次再結晶粒を発達させることが可能であるため、方向性電磁鋼板の製造において広く用いられてきた。しかし、インヒビターを鋼中に微細分散させるためには、予め1300℃以上の高温でスラブ加熱を行い、インヒビター成分を一度固溶させることが必要である。また、二次再結晶後に鋼中に残留するインヒビター元素は方向性電磁鋼板の磁気特性を劣化させる原因となることから、純化焼鈍を1100℃以上の高温かつ制御された雰囲気中で行うことにより、地鉄中からインヒビター元素を除去する必要がある。
そこで、上記のようなインヒビターの使用に起因する問題を解決するために、インヒビターを使用せずに方向性電磁鋼板を製造する方法(インヒビターレス法)が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
インヒビターレス法は、より高純度化した鋼を使用し、集合組織を制御することによって二次再結晶を発現させる技術である。具体的には、一次再結晶時の結晶粒界が持つ粒界エネルギーの粒界方位差角依存性を顕在化させることにより、インヒビターを用いずとも、Goss方位を有する結晶粒を二次再結晶させることが可能となる。このような効果をテクスチャーインヒビション効果という。
特開2000−129356号公報 特開2001−040449号公報
インヒビターレス法では、インヒビターを鋼中に微細分散させる必要がないため、インヒビターを使用する場合に必須であった高温スラブ加熱を行う必要がない。そのため、インヒビターレス法は、製造コストの面のみならず、製造設備のメンテナンスの面でも大きなメリットを有している。
しかし、インヒビターレス法では、磁気特性が良好な方向性電磁鋼板を安定して製造することが難しいという問題があった。そのため、コスト面で優れるインヒビターレス法であって、かつ、さらに優れた磁気特性、具体的には、高い磁束密度を有する方向性電磁鋼板を製造することができる方向性電磁鋼板の製造方法が求められている。
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、コスト面で優れるインヒビターレス法であって、かつ、高い磁束密度を有する方向性電磁鋼板を製造することができる方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、方向性電磁鋼板を製造する際の、スラブ加熱条件と最終冷延の直前に行われる焼鈍の条件とを制御することにより、最終的に得られる方向性電磁鋼板の磁束密度を向上できることを見出した。
ここで、上記知見を得るに到った実験の一例について説明する。本実験では、インヒビターレス法に基づいて、異なる製造条件で複数の方向性電磁鋼板を作製し、得られた方向性電磁鋼板の磁気特性を評価した。具体的な手順を以下に説明する。なお、以下の実験では、冷間圧延を1回だけ行う1回法にて方向性電磁鋼板を製造した。
まず、真空溶解で溶鋼を調製し、鋼スラブとした。前記鋼スラブとしては、質量%で、
C :0.045%、
Si:3.4%、
Mn:0.06%、
Al:0.0060%、
N :0.0025%、
S :0.0010%、
Se:0.0010%を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを使用した。
前記鋼スラブを1250℃のスラブ加熱温度に加熱し、表1に示す均熱時間の間、前記スラブ加熱温度に保持した。次いで熱間圧延を行って厚さ2.0mmの熱延鋼板を得た。その後、前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施した。前記熱延板焼鈍においては、熱延鋼板を焼鈍温度:1050℃まで加熱し、前記焼鈍温度に30秒の保持時間の間保持し、次いで冷却した。前記冷却の際に、1030〜900℃の温度範囲に滞留する滞留時間は表1に示した通りとした。また、900℃から350℃の間の温度域における平均冷却速度は30℃/sとした。
次に、前記熱延板焼鈍後の熱延鋼板に冷間圧延を施して、最終板厚:0.23mmの冷延鋼板とした。前記冷間圧延における圧延温度は100℃とした。
次いで、得られた冷延鋼板に、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。前記一次再結晶焼鈍は、50%H−50%N、露点50℃の湿潤雰囲気下で実施し、500〜680℃の昇温区間における昇温速度を200℃/sとした。
前記一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板の表面に、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、その後、二次再結晶を伴う純化焼鈍を施した。前記純化焼鈍においては、1200℃で5時間、水素雰囲気下で保定した。
次いで、鋼板の形状を矯正するために、前記純化焼鈍後の冷延鋼板に830℃で30秒の平坦化焼鈍を施し、方向性電磁鋼板を得た。
得られた方向性電磁鋼板の磁気特性を評価するために、800A/mで励磁した時の磁束密度:B(T)を、JIS C2550で規定された方法で測定した。測定結果は表1に示した通りであった。
Figure 2019178413
表1の結果から分かるように、インヒビターレス法による方向性電磁鋼板の製造において、スラブ加熱工程における均熱時間t(分)が下記(1)式で定義されるPt以下であり、かつ、熱延板焼鈍の冷却過程において1030〜900℃の温度範囲に滞留する滞留時間が10秒以上である場合には、良好な磁気特性を得ることができている。
t=800[C]−5[Si]+T/25…(1)
ただし、(1)式における[C]は鋼スラブ中のC含有量(質量%)、[Si]は鋼スラブ中のSi含有量(質量%)である。
このように磁束密度が向上する理由は完全には明らかとはなっていないが、次のように考えられる。
従来の方向性電磁鋼板の製造においては、熱間圧延前のスラブ加熱における均熱時間は120分程度とすることが一般的であった。これに対して、上記実験のように、スラブ加熱における均熱時間を短くすると、スラブ加熱中におけるオーステナイト(γ)相の凝集が抑制され、γ相が分散した状態とすることができる。
また、熱延板焼鈍の冷却過程においては、1030〜900℃の温度範囲に滞留する滞留時間を長くすることにより、γ相を十分に収縮させることができる。
このように、スラブ加熱における均熱時間を短くしてγ相の凝集を抑えるとともに、熱延板焼鈍における前記滞留時間を短くしてγ相を微細化することにより、熱延板焼鈍後のミクロ組織を、前記γ相が変態して生じる無拡散変態相が微細に分散した状態とすることができる。
そのような熱延鋼板に冷間圧延を施すと、微細に分散した無拡散変態相が剪断変形の起点として作用するため、{411}方位粒の核生成サイトが増加する。{411}方位粒は、理想的なGoss方位の二次再結晶方位選択性を上げる作用を有しているため、{411}方位粒が増加した結果、最終的に得られる方向性電磁鋼板の磁気特性が向上したものと考えられる。
先に述べたように、インヒビターレス法においては集合組織を制御することによってGoss方位を有する結晶粒を二次再結晶させているため、インヒビターを利用する場合に比べて集合組織が磁気特性に及ぼす影響が格段に大きい。そのため、インヒビターを使用しない本発明の方法においては、上記のように製造条件を制御することによって高い磁気特性向上効果を得ることができる。
なお、上記の実験では、冷間圧延を1回だけ行う1回法を用いて方向性電磁鋼板を製造したため、冷間圧延に供される鋼板のミクロ組織は、当該冷間圧延の前に行われる熱延板焼鈍の条件の影響を受ける。しかし、冷間圧延を2回以上行う場合には、最後に行われる冷間圧延(最終冷延)の直前に行われる中間焼鈍の条件の影響を受ける。したがって、1回または2回以上の冷間圧延のうち最後に行われる冷間圧延を最終冷延、前記最終冷延の直前に行われる焼鈍を最終冷延前焼鈍と、それぞれ定義したとき、前記最終冷延前焼鈍の条件を制御することが重要である。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
1.質量%で、
C :0.020〜0.10%、
Si:2.0〜6.5%、
Mn:0.005〜1.00%、
Al:0.010%未満、
N :0.0050%未満
S :0.0050%未満、および
Se:0.0050%未満を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブに、スラブ加熱を施し、
加熱された前記鋼スラブを熱間圧延して熱延鋼板とし、
前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施し、
前記熱延板焼鈍後の熱延鋼板に、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して冷延鋼板とし、
前記冷延鋼板に、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、
前記一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布し、
前記冷延鋼板に二次再結晶を伴う純化焼鈍を施し、
前記純化焼鈍後の冷延鋼板に平坦化焼鈍を施す、方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記スラブ加熱においては、前記鋼スラブを1280℃以下のスラブ加熱温度T(℃)まで加熱し、前記スラブ加熱温度Tに均熱時間t(分)の間保持し、前記均熱時間tが下記(1)式で定義されるP以下であり、
前記1回または2回以上の冷間圧延のうち最後に行われる冷間圧延を最終冷延、前記最終冷延の直前に行われる焼鈍を最終冷延前焼鈍と、それぞれ定義したとき、
前記最終冷延前焼鈍においては、前記鋼板を、1030〜1150℃の焼鈍温度まで加熱し、前記焼鈍温度に10〜180秒の保持時間の間保持し、冷却し、前記冷却の際に1030〜900℃の温度範囲に滞留する滞留時間が10秒以上であり、
前記最終冷延における圧延温度が100〜300℃であり、
前記一次再結晶焼鈍における500〜680℃の昇温区間における昇温速度が100〜400℃/sである、方向性電磁鋼板の製造方法。
t=800[C]−5[Si]+T/25…(1)
ただし、(1)式における[C]は鋼スラブ中のC含有量(質量%)、[Si]は鋼スラブ中のSi含有量(質量%)である
2.前記最終冷延前焼鈍において、
900℃から350℃の間の温度域における平均冷却速度が20℃/s以上である、上記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記最終冷延前焼鈍において、
700℃から350℃の間の温度域における平均冷却速度が35℃/s以上である、上記2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記成分組成が、質量%で、
Cr:0.01〜0.50%、
Cu:0.01〜0.50%、
Ni:0.01〜0.50%、
Bi:0.005〜0.50%、
B :0.0002〜0.0025%、
Nb:0.0010〜0.0100%、
Sn:0.010〜0.400%、
Sb:0.010〜0.150%、
Mo:0.010〜0.200%、および
P :0.010〜0.150%からなる群より選択される1または2以上をさらに含む、上記1〜3のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、コスト面に優れるインヒビターレス法で、高い磁束密度を有する方向性電磁鋼板を製造することができる。
次に、本発明を実施する方法について具体的に説明する。
[鋼スラブ]
本発明においては、方向性電磁鋼板の製造に用いられる鋼スラブが、上記成分組成を有する必要がある。そこで、まず、本発明における成分組成の限定理由について説明する。なお、成分組成に関する「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
C:0.020〜0.10%
Cは、鋼板のミクロ組織を制御するために必要な元素である。C含有量が0.020%未満であると、スラブ加熱時にγ相が析出しないため、組織制御が困難となり、その結果、磁束密度が低下する。したがって、C含有量は0.020%、好ましくは0.025%以上とする。一方、最終的に得られる方向性電磁鋼板にCが残留すると、磁気時効による磁気特性低下の原因となるため、方向性電磁鋼板の製造においては脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を行ってC含有量が低減される。しかし、鋼スラブのC含有量が0.10%より高いと、脱炭焼鈍を行っても十分にC含有量を低下させることができない。そのため、鋼スラブのC含有量は0.10%以下、好ましくは0.050%以下とする。なお、最終的に得られる方向性電磁鋼板におけるC含有量は特に限定されないが、磁気時効を抑制するという観点からは0.005%以下とすることが好ましい。
Si:2.0〜6.5%
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を改善するために必要な元素である。前記効果を得るために、Si含有量を2.0%以上、好ましくは2.5%以上とする。一方、Si含有量が6.5%を超えると鋼の加工性が劣化し、圧延が困難となる。そのため、Si含有量は6.5%以下、好ましくは4.5%以下とする。
Mn:0.005〜1.00%
Mnは、良好な熱間加工性を得るために必要な元素である。前記効果を得るために、Mn含有量を0.005%以上、好ましくは0.03%以上とする。一方、Mn含有量が1.00%を超えると、最終的に得られる方向性電磁鋼板の磁束密度が低下する。そのため、Mn含有量は1.00%以下、好ましくは0.20%以下とする。
本発明は、インヒビターレス法による方向性電磁鋼板の製造に関するものである。したがって、インヒビター形成成分であるAl、N、S、およびSeの、鋼スラブにおける量を極力低減する必要がある。具体的には、上記各元素の含有量を以下の範囲とする。
Al含有量は0.010%未満、好ましくは0.007%未満とする。N含有量は0.0050%未満、好ましくは0.0040%未満とする。S含有量は0.0050%未満、好ましくは0.0030%未満とする。Se含有量は0.0050%未満、好ましくは0.0030%未満とする。
ただし、Alは酸素親和力が高いため、製鋼工程においてAlを微量添加することにより鋼中の溶存酸素量を低減し、その結果、特性劣化につながる酸化物系介在物を低減することができる。したがって、前記効果を得るために、上記含有量の範囲内でAlを添加することもできる。
本発明では、上記各元素を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを使用する。なお、本発明の一実施形態においては、上記各元素と残部のFeおよび不可避的不純物のみからなる成分組成を有する鋼スラブを使用することもできる。
また、上記成分組成は、上記各元素に加えて任意に、
Cr:0.01〜0.50%、
Cu:0.01〜0.50%、
Ni:0.01〜0.50%、
Bi:0.005〜0.50%、
B :0.0002〜0.0025%、
Nb:0.0010〜0.0100%、
Sn:0.010〜0.400%、
Sb:0.010〜0.150%、
Mo:0.010〜0.200%、および
P :0.010〜0.150%からなる群より選択される1または2以上をさらに含有することもできる。
上記各元素は方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させる作用を有しているが、含有量が上記下限値より低いと、十分な磁気特性向上効果を得ることができない。一方、含有量が上記上限値を超えると二次再結晶粒の発達が抑制されるため、かえって磁気特性が劣化する。
鋼スラブとしては、上記成分組成を有するものであれば、特に限定されることなく任意のものを用いることができる。前記鋼スラブの製造方法も特に限定されず、任意の方法で製造することができる。例えば、所定の成分組成に調整された溶鋼を用いて、造塊法または連続鋳造法によって鋼スラブを製造することができる。また、直接鋳造法を用いて、厚さが100mm以下であるような薄鋳片を製造し、これを鋼スラブとして用いることもできる。なお、上述した各元素は、途中工程で加えることは困難であることから、溶鋼の段階で添加する事が好ましい。
[加熱]
熱間圧延に先立って、上記鋼スラブにスラブ加熱を施す。前記スラブ加熱においては、前記鋼スラブを1280℃以下のスラブ加熱温度T(℃)まで加熱し、前記スラブ加熱温度Tに均熱時間t(分)の間保持する。
・スラブ加熱温度:1280℃以下
インヒビターを使用する従来の技術においては、インヒビター成分を固溶させるためにスラブ加熱温度を高くする必要があるが、本発明ではインヒビターを利用しないため、スラブ加熱温度を高くする必要がない。そこで、熱間圧延が問題なく行える程度として、スラブ加熱温度を1280℃以下とする。一方、スラブ加熱温度の下限は特に限定されないが、1150℃以上とすることが好ましい。
・均熱時間t:Pt以下
さらに、前記スラブ加熱における均熱時間t(分)を、下記(1)式で定義されるPt以下とする。
t=800[C]−5[Si]+T/25…(1)
ただし、(1)式における[C]は鋼スラブ中のC含有量(質量%)、[Si]は鋼スラブ中のSi含有量(質量%)である。
先に述べたように、本発明においてはスラブ加熱における均熱時間を短くすることによってγ相が分散したミクロ組織とし、その結果、Goss方位粒の選択的な成長に適した集合組織を得ることができる。しかし、γ相の量は、鋼スラブのC含有量およびSi含有量の影響を受け、具体的には、Cはγ相量を増加させ、Siはγ相量を減少させる。そして、γ相量が少ないほどγ相の分散が集合組織に及ぼす影響が大きくなるため、スラブ加熱のより短時間化が必要となる。そこで、均熱時間tを、均熱時間Tだけでなく、C含有量とSi含有量の影響を加味した上記P値以下とすることにより、γ相の分散状態を最適なものとし、最終的に得られる方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させることができる。
[熱間圧延]
次に、スラブ加熱温度まで加熱された鋼スラブを熱間圧延して、熱延鋼板とする。前記熱間圧延の条件は特に限定されず、任意の条件で行うことができる。
[熱延板焼鈍]
次いで、前記熱延鋼板に対して熱延板焼鈍を施す。なお、本発明においては、最終冷延前焼鈍の条件を後述するように制御する必要がある。次の冷間圧延工程において、冷間圧延を1回のみ行う1回法の場合には、前記熱延板焼鈍が最終冷延前焼鈍にあたるため、該熱延板焼鈍を特定の条件で実施する必要がある。一方、冷間圧延を2回以上行う場合には、該2回以上の冷間圧延のうち、最後に行われ冷間圧延が最終冷延となるため、該最終冷延前の中間焼鈍が最終冷延前焼鈍にあたる。したがって、その場合には、前記中間焼鈍を特定の条件で実施する必要があるが、熱延板焼鈍の条件は特に限定されず、任意の条件で行うことができる。なお、最終冷延前焼鈍の具体的な条件については後述する。
[冷間圧延]
次いで、上記熱延板焼鈍後の熱延鋼板に、冷間圧延を施して冷延鋼板とする。前記冷間圧延は、1回のみ行ってもよく(1回法)、2回以上行ってもよい。冷間圧延を2回以上行う場合には、各冷間圧延工程の間において、中間焼鈍を行う。例えば、冷間圧延を2回行う2回法の場合には、熱延板焼鈍、第1の冷間圧延、中間焼鈍、および第2の冷間圧延を、この順序で行えばよい。
なお、上述したように、冷間圧延を2回以上行う場合には、該2回以上の冷間圧延のうち最後に行われる冷間圧延の直前に行われる中間焼鈍が最終冷延前焼鈍にあたる。したがって、前記最終冷延前焼鈍は、後述する条件で行う必要がある。一方、前記最終冷延前焼鈍以外の中間焼鈍(例えば、冷間圧延を3回行う場合の、1回目の中間焼鈍)の条件は特に限定されず、任意の条件で行うことができる。
・最終冷延における圧延温度:100〜300℃
前記1回または2回以上の冷間圧延のうち最後に行われる冷間圧延(最終冷延)における圧延温度は、100℃〜300℃とする。これにより、再結晶集合組織を変化させて磁気特性を向上させることができる。なお、ここで最終冷延における圧延温度とは、最終冷延を構成する各パスの出側温度のうち、最も高い温度を指すものとする。
さらに、冷間圧延途中で100〜300℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことも、磁気特性をより向上させるためには有効である。300℃よりも高温では形状不良となり圧延が困難となる。
[一次再結晶焼鈍]
・昇温速度:100〜400℃/s
次に、得られた冷延鋼板に対して、脱炭を兼ねた一次再結晶焼鈍を施す。前記一次再結晶焼鈍においては、再結晶集合組織制御の観点から、500〜680℃の昇温区間における昇温速度を100〜400℃/sとする。前記昇温速度が100℃/s未満であると、{110}方位粒が減少し、磁気特性が低下する。一方、前記昇温速度が400℃/sを超えると、{411}方位粒が過剰となり、かえって磁気特性が低下する。前記昇温速度を350℃/s以下とすることがより好ましい。
なお、前記一次再結晶焼鈍における焼鈍温度は特に限定されないが、脱炭性を向上させるという観点からは、前記焼鈍温度を800℃以上、900℃以下とすることが好ましい。同様に、脱炭性を向上させるという観点からは、焼鈍雰囲気を湿潤雰囲気とすることが好ましい。
[焼鈍分離剤の塗布]
その後、一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布する。前記焼鈍分離剤としては、特に限定されず、任意の組成のものを用いることができる。例えば、鉄損を重視する場合には、フォルステライト形成成分であるMgOを含有する焼鈍分離剤を用いることが好ましい。MgOを含有する焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布した後、純化焼鈍を施すことにより、二次再結晶組織が発達するとともに、鋼板の表面にフォルステライト被膜が形成される。前記焼鈍分離剤としては、MgOを主体とする焼鈍分離剤を用いることが好ましい。
一方、打ち抜き加工性を重視する場合には、フォルステライトを形成する成分であるMgOを含有しない焼鈍分離剤を用いることが好ましい。MgOを含まない焼鈍分離剤を用いた場合、フォルステライト被膜が形成されず、その結果、打ち抜き加工性が向上する。MgOを含まない焼鈍分離剤としては、例えば、シリカおよびアルミナのいずれか一方または両方を含む焼鈍分離剤が挙げられる。これら焼鈍分離剤を塗布する際は水分を持ち込まない静電塗布を行うことなどが有効である。また耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を用いてもよい。
[純化焼鈍]
次いで、二次再結晶を伴う純化焼鈍を行う。前記純化焼鈍は、特に限定されることなく任意の条件で行うことができるが、二次再結晶発現のためには焼鈍温度を800℃以上とすることが好ましい。また、二次再結晶を確実に完了させるという観点からは、800℃以上の焼鈍温度(保持温度)で20時間以上保持することが好ましい。
なお、一般的には、純化焼鈍工程において、鋼板表面に存在する酸化物と焼鈍分離剤とが反応することによってフォルステライト被膜が形成されるが、例えば、打ち抜き性を重視するような場合にはフォルステライト被膜を形成させなくてもよい。フォルステライト被膜を形成しない場合には、純化焼鈍における保持温度を850〜950℃とすることが好ましい。そしてその場合、前記保持温度で保持するのみで純化焼鈍を終了することも可能である。一方、鉄損の向上やトランスの騒音低下のためにフォルステライト被膜を形成する場合には、1100〜1300℃まで昇温させることが好ましい。
上記純化焼鈍後は、鋼板表面に付着している焼鈍分離剤を除去することが好ましい。前記除去の方法は特に限定されないが、例えば、水洗、ブラッシング、および酸洗からなる群より選択される1または2以上を用いることができる。
[平坦化焼鈍]
次いで、純化焼鈍後の冷延鋼板に平坦化焼鈍を施す。前記平坦化焼鈍により、鋼板の形状を矯正し、鉄損を低減することができる。
[絶縁コーティング]
本発明においては必須ではないが、方向性電磁鋼板の表面に絶縁コーティングを形成することもできる。絶縁コーティングを設けることにより、方向性電磁鋼板を積層して使用する際の鉄損を低減することができる。前記絶縁コーティングは、例えば、平坦化焼鈍前または後に形成することができる。前記絶縁コーティングの材質は特に限定されず、絶縁性の任意の材質からなる被膜とすることができ、一般的には無機系コーティングが使用される。
また、前記絶縁コーティングを形成する方法は特に限定されないが、例えば、コーティング処理液を塗布する方法や、物理蒸着法、化学蒸着法などを用いることができる。コーティング処理液を塗布する方法を用いる場合、平坦化焼鈍前に塗布を行い、平坦化焼鈍を行うことによってコーティング処理液を焼付けることもできる。前記コーティング処理液の組成は特に限定されないが、例えば、リン酸塩およびシリカを含有する処理液などを用いることができる。
[磁区細分化処理]
鉄損をより低減するために、さらに磁区細分化処理を施すこともできる。前記磁区細分化処理の方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。磁区細分化処理方法としては、例えば、得られた方向性電磁鋼板の表面にレーザー、電子ビーム、プラズマなどを照射することによって熱歪みおよび衝撃歪みの少なくとも一方を導入する方法、製造工程の途中において、例えば、冷間圧延後、鋼板の表面に機械的加工やエッチングなどによって溝を形成する方法などが挙げられる。
[最終冷延前焼鈍の条件]
本発明においては、上述したような各工程を順次行うことにより方向性電磁鋼板を製造する。その際、最終冷延前焼鈍においては、前記鋼板を、1030〜1150℃の焼鈍温度まで加熱し、前記焼鈍温度に10〜180秒の保持時間の間保持し、冷却する。そして、前記冷却の際に1030〜900℃の温度範囲に滞留する滞留時間を10秒以上とする。以下、その理由について説明する。
なお、ここで、「最終冷延」とは、前記1回または2回以上の冷間圧延のうち最後に行われる冷間圧延を指すものとする。例えば、冷間圧延を1回のみ行う1回法の場合には、当該1回の冷間圧延が最終冷延である。冷間圧延を2回行う2回法の場合には、2回目の冷間圧延が最終冷延である。
また、ここで「最終冷延前焼鈍」とは、前記の通り定義される「最終冷延」の直前に行われる焼鈍を指すものとする。例えば、冷間圧延を1回のみ行う1回法の場合には、当該1回の冷間圧延の前に行われる熱延板焼鈍が最終冷延前焼鈍である。また、冷間圧延を2回行う2回法の場合には、1回目の冷間圧延と2回目の冷間圧延の間に行われる中間焼鈍が最終冷延前焼鈍である。
・焼鈍温度:1030〜1150℃
最終冷延前焼鈍における焼鈍温度(最高到達温度)は、熱間圧延によって形成された組織を完全に再結晶させるため、1030℃以上、好ましくは1040℃以上とする。一方、前記焼鈍温度が1150℃を超えると焼鈍後の結晶粒が粗大化し、その後の整粒の一次再結晶組織を実現する上で極めて不利となる。そのため、前記焼鈍温度は1150℃以下、好ましくは1100℃以下とする。
・保持時間:10〜180秒
上述したように、最終冷延前焼鈍では、熱間圧延によって形成された組織を完全に再結晶させる必要がある。最終冷延前焼鈍において前記焼鈍温度に保持される保持時間が10秒未満であると、未再結晶部が残存する可能性が高い。また、焼鈍温度が1030〜1150℃である場合には、該焼鈍温度に180秒間保持すれば、完全に再結晶が完了するため、それ以上の保持は不要である。そのため、前記保持時間を180秒以下とする。
・1030〜900℃の滞留時間:10秒以上
最終冷延前焼鈍の冷却過程において1030〜900℃の温度範囲に滞留する滞留時間を確保することにより、γ相を微細化し、最終的に得られる方向性電磁鋼板の磁束密度を向上させることができる。そのため、前記滞留時間を10秒以上とする。前記滞留時間は20秒以上とすることが好ましい。一方、前記滞留時間の上限は特に限定されない。しかし、前記滞留時間が180秒を超えると、γ相を微細化する効果が飽和することに加え、生産性が低下する。そのため、前記滞留時間は180秒以下とすることが好ましい。
最終冷延前焼鈍の冷却過程における、900℃から350℃までの冷却については特に限定されず、任意の速度で行うことができる。しかし、集合組織を制御し、磁気特性をさらに向上させるという観点からは、900℃から350℃の間の温度域における平均冷却速度を20℃/s以上とすることが好ましい。
さらに、上記温度域の中でも、700℃から350℃の温度域における平均冷却速度を35℃/s以上とすると、さらに磁束密度を向上させることができる。
350℃より下の温度域における冷却は、任意に行うことができる。例えば、室温まで放冷してもよい。
なお、冷間圧延を2回以上行う場合には、最終冷延前の中間焼鈍を上記条件で行えばよく、熱延板焼鈍は任意の条件で行うことができる。例えば、熱延板焼鈍は、均熱温度900〜1150℃、均熱時間10秒以上の条件で行うことができる。
次に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は、本発明の好適な一例を示すものであり、本発明は、該実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
以下に述べる手順で、1回法により方向性電磁鋼板を製造し、その磁気特性を評価した。
・スラブ加熱、熱間圧延
まず、表2、3に示した成分組成を有する鋼スラブを連続鋳造法により製造した。次いで、前記鋼スラブを、表4、5に示した条件で加熱した(スラブ加熱)。その後、加熱された鋼スラブに熱間圧延を施し、板厚2.3mmの熱延鋼板とした。
・熱延板焼鈍
次に、前記熱延鋼板に、焼鈍温度:1050℃、保持時間:40秒の条件で、熱延板焼鈍を施した。前記熱延板焼鈍における前記保持時間経過後の冷却条件は表4、5に示した通りとした。
・冷間圧延(1回法)
さらに、前記熱延板焼鈍後の熱延鋼板(熱延板)に1回の冷間圧延を施して、厚さ0.27mmの冷延鋼板とした。前記冷間圧延における圧延温度は表4、5に示した通りとした。なお、本実施例では、上述したように、冷間圧延を1回だけ行う1回法を採用しており、中間焼鈍は行われない。したがって、前記冷間圧延が最終冷延にあたり、前記熱延板焼鈍が最終冷延前焼鈍にあたる。
・一次再結晶焼鈍
前記冷延鋼板に、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。前記一次再結晶焼鈍は、850℃で70秒、52%H−48%N、露点60℃の湿潤雰囲気下で実施した。また、前記一次再結晶焼鈍の昇温過程における500〜680℃の温度域での昇温速度は表4、5に示した通りとした。
・焼鈍分離剤の塗布
前記一次再結晶焼鈍後、鋼板の表面に、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布した。
次いで、焼鈍分離剤が塗布された鋼板に、二次再結晶を伴う純化焼鈍を施した。前記純化焼鈍においては、前記鋼板を、1225℃で10時間、水素雰囲気下で保定した。
・平坦化焼鈍
その後、前記純化焼鈍後の冷延鋼板に、800℃で40秒の平坦化焼鈍を施し、方向性電磁鋼板を得た。
・磁束密度の測定
得られた方向性電磁鋼板のB8(800A/mで励磁した時の磁束密度)を、JIS C2550に記載の方法で測定した。得られたB8の値を表4、5に併記する。
表2〜5に示した結果から明らかなように、本発明の条件を満たす方向性電磁鋼板は、良好な磁気特性を有していた。
Figure 2019178413
Figure 2019178413
Figure 2019178413
Figure 2019178413
(実施例2)
以下に述べる手順で、2回法により方向性電磁鋼板を製造し、その磁気特性を評価した。
・スラブ加熱、熱間圧延
まず、表6、7に示した成分組成を有する鋼スラブを連続鋳造法により製造した。次いで、前記鋼スラブを、表8、9に示した条件で加熱した(スラブ加熱)。その後、加熱された鋼スラブに熱間圧延を施し、板厚2.5mmの熱延鋼板とした。
・熱延板焼鈍
次に、前記熱延鋼板に、焼鈍温度:1000℃、保持時間:40秒の条件で、熱延板焼鈍を施した。前記熱延板焼鈍における前記保持時間経過後の冷却条件は表8、9に示した通りとした。
・冷間圧延(2回法)
さらに、前記熱延板焼鈍後の熱延鋼板(熱延板)に、中間焼鈍を挟んだ2回の冷間圧延を施した。具体的には、まず第1回目の冷間圧延を行って鋼板の板厚を1.5mmとし、その後、焼鈍温度:1080℃、保持時間:30秒の条件で、中間焼鈍を行った。前記中間焼鈍の後、第2回目の冷間圧延を行って、板厚0.23mmの冷延鋼板を得た。本実施例では、上述したように、冷間圧延を2回行う1回法を採用した。したがって、前記第2回目の冷間圧延が最終冷延にあたり、前記中間焼鈍が最終冷延前焼鈍にあたる。前記第2回目の冷間圧延(最終冷延)における圧延温度は表8、9に示した通りとした。
・一次再結晶焼鈍
前記冷延鋼板に、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。前記一次再結晶焼鈍は、840℃で150秒、55%H−45%N、露点60℃の湿潤雰囲気下で実施した。また、前記一次再結晶焼鈍の昇温過程における500〜680℃の温度域での昇温速度は表8、9に示した通りとした。
・焼鈍分離剤の塗布
前記一次再結晶焼鈍後、鋼板の表面に、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布した。
次いで、焼鈍分離剤が塗布された鋼板に、二次再結晶を伴う純化焼鈍を施した。前記純化焼鈍においては、前記鋼板を、1200℃で10時間、水素雰囲気下で保定した。
・平坦化焼鈍
その後、前記純化焼鈍後の冷延鋼板に、830℃で40秒の平坦化焼鈍を施し、方向性電磁鋼板を得た。
・磁束密度の測定
得られた方向性電磁鋼板のB8(800A/mで励磁した時の磁束密度)を、JIS C2550に記載の方法で測定した。得られたB8の値を表8、9に併記する。
表6〜9に示した結果から明らかなように、本発明の条件を満たす方向性電磁鋼板は、良好な磁気特性を有していた。
また、上記実施例1、2の結果から、本発明で規定するように最終冷延および最終冷延前焼鈍の条件を制御することにより、冷間圧延の回数にかかわらず、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板が得られることが分かる。
Figure 2019178413
Figure 2019178413
Figure 2019178413
Figure 2019178413

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.020〜0.10%、
    Si:2.0〜6.5%、
    Mn:0.005〜1.00%、
    Al:0.010%未満、
    N :0.0050%未満
    S :0.0050%未満、および
    Se:0.0050%未満を含み、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブに、スラブ加熱を施し、
    加熱された前記鋼スラブを熱間圧延して熱延鋼板とし、
    前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施し、
    前記熱延板焼鈍後の熱延鋼板に、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して冷延鋼板とし、
    前記冷延鋼板に、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施し、
    前記一次再結晶焼鈍後の冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布し、
    前記冷延鋼板に二次再結晶を伴う純化焼鈍を施し、
    前記純化焼鈍後の冷延鋼板に平坦化焼鈍を施す、方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記スラブ加熱においては、前記鋼スラブを1280℃以下のスラブ加熱温度T(℃)まで加熱し、前記スラブ加熱温度Tに均熱時間t(分)の間保持し、前記均熱時間tが下記(1)式で定義されるPt以下であり、
    前記1回または2回以上の冷間圧延のうち最後に行われる冷間圧延を最終冷延、前記最終冷延の直前に行われる焼鈍を最終冷延前焼鈍と、それぞれ定義したとき、
    前記最終冷延前焼鈍においては、前記鋼板を、1030〜1150℃の焼鈍温度まで加熱し、前記焼鈍温度に10〜180秒の保持時間の間保持し、冷却し、前記冷却の際に1030〜900℃の温度範囲に滞留する滞留時間が10秒以上であり、
    前記最終冷延における圧延温度が100〜300℃であり、
    前記一次再結晶焼鈍における500〜680℃の昇温区間における昇温速度が100〜400℃/sである、方向性電磁鋼板の製造方法。
    t=800[C]−5[Si]+T/25…(1)
    ただし、(1)式における[C]は鋼スラブ中のC含有量(質量%)、[Si]は鋼スラブ中のSi含有量(質量%)である
  2. 前記最終冷延前焼鈍において、
    900℃から350℃の間の温度域における平均冷却速度が20℃/s以上である、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記最終冷延前焼鈍において、
    700℃から350℃の間の温度域における平均冷却速度が35℃/s以上である、請求項2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記成分組成が、質量%で、
    Cr:0.01〜0.50%、
    Cu:0.01〜0.50%、
    Ni:0.01〜0.50%、
    Bi:0.005〜0.50%、
    B :0.0002〜0.0025%、
    Nb:0.0010〜0.0100%、
    Sn:0.010〜0.400%、
    Sb:0.010〜0.150%、
    Mo:0.010〜0.200%、および
    P :0.010〜0.150%からなる群より選択される1または2以上をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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