JP2019174389A - 薄層クロマトグラフィー用プレート - Google Patents

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彰大 田谷
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英孝 河村
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Yasushi Yoshimasa
泰 吉正
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Abstract

【課題】 薄層クロマトグラフィーにおいて、展開液の展開前に付与した液体試料の量を正確に定量できるようにすること。【解決手段】 溶媒を含む試料の中から1つ以上の検体を分離する薄層クロマトグラフィー用のプレートであって、担体と、前記担体に担持された物質とを含み、前記物質は、前記プレートに付与された前記溶媒によって、前記担体中をRf値が0.4以上となるように展開する。【選択図】 図1

Description

本発明は薄層クロマトグラフィー用プレートに関する。
薄層クロマトグラフィー(以下TLCともいう)は、ガラスやアルミなどの支持体上にシリカゲルやアルミナなどの担体を薄く塗ったプレートに試料を塗布(スポット)し、溶媒で展開することで、混合物を分離する手法である。安価で迅速な分析が可能であることから、化学反応の追跡や簡易的な薬物検査などに広く用いられている。
TLCは単に目的成分の分離や検出をするだけではなく、分離後の試料のスポットから目的成分を定量することも可能である。特許文献1では展開後のスポットの形状を計測し、目的成分定量する手段が書かれている。
一方で、液体試料中の濃度を知りたい場合は、分離後の目的成分の量だけではなく、付与した液体試料の量が分かっていることが必要である。一般的には精密ピペットを用いて正確な量の液体試料を付与し、分離後の目的成分の量を付与した液体量で除算することで濃度を求める。したがって、正確な目的成分濃度を求めるためには付与した液体試料の量を正確に把握することが重要である。しかし、液体試料の量を正確に分取する装置は一般的に高価である。安価なTLCを用いた検査キットを作成しても高価な分取装置が必要か、または求める目的成分濃度の精度を諦めるしかなかった。
特開昭60−253849号公報
TLCを行う際に、付与した液体試料の量を正確に把握することを課題とする。
本発明に係る薄層クロマトグラフィー用プレートは、溶媒を含む試料の中から1つ以上の検体を分離する薄層クロマトグラフィー用プレートであって、前記溶媒によってRf値が0.4以上で展開する物質と、前記物質を担持する担体と、を含むことを特徴とする。
本発明に係るTLC用プレートによれば、展開前に付与した液体試料の量を定量することができ、展開後目的成分を定量した後に目的成分の液体試料中での濃度を求める事が出来る。
本発明の実施形態におけるTLC用プレートの一例 本発明の実施形態における境界線物質の塗布領域 本発明の実施例における液体試料の付与量と画素数の関係
以下、本発明の実施形態について説明するが本発明はこれらに限られない。
本実施形態は、溶媒を含む試料の中から1つ以上の検体を分離する薄層クロマトグラフィー用プレートであって、前記溶媒によってRf値が0.4以上で展開する物質と、前記物質を担持する担体と、を含むことを特徴とする。言い換えると、溶媒を含む試料の中から1つ以上の検体を分離する薄層クロマトグラフィー用のプレートであって、担体と、前記担体に担持された物質とを含む。そして、前記物質は、前記プレートに付与された前記溶媒によって、前記担体中をRf値が0.4以上となるように展開することを特徴とする。
薄層クロマトグラフィー用のプレートに、溶媒を含む試料(液体試料)を付与する方法としては、ピペットを用いてプレート上に滴下する方法、プレートの端部を液体試料に接触させ、液体試料を吸い上げる方法等がある。使用者になるべく簡便に液体試料を付与させる為には、ピペットやプレートで吸い上げる液体試料の量を正確にあらかじめ決めておくのではなく、吸い上げる液体試料の量にばらつきがあっても、液体試料の付与後に正確な付与量が測れた方が良い。液体試料が着色していれば、どの範囲に液体試料が付与されたかが分かる為、そこから液体試料の付与量を算出する事は可能である。しかし、液体試料の多くは無色であり検体濃度も微量であることが多く、液体試料を付与しても、溶媒が乾燥してしまうと、どの範囲に液体試料が付与されたかが分からなくなる。溶媒は時間とともに乾燥し、液体試料の境界部は不明瞭になっていくため、正確な境界部を求めることができない。
本実施形態では、試料がプレートに付与されることによって展開された後の、物質の担体上の位置に応じて、プレートに付与された試料を定量することが可能に構成されている。以下、具体的に説明する。本実施形態において、担体には、液体試料中の溶媒によって担体(プレート)中で展開する物質(以下、境界線物質)が担持されている。液体試料をプレートに付与すると液体試料の広がりとともに境界線物質も広がって行く。その結果、液体試料の境界部では境界線物質の濃度が高くなり、境界線を形成する。この境界線をカメラ等で撮影し、プレート上の境界線に包まれた領域、つまり液体試料が付与された領域の面積を算出することで、精度良く液体試料の付与量を計測する事が出来る。この境界線は液体試料の溶媒が蒸発しても変化しない為、液体試料付与からカメラ等による計測までの時間にばらつきがあっても計測精度には影響しない。
液体試料の付与量は、液体試料が付与された領域の面積と液体付与量の検量線を作成し、それを利用することで算出する事が可能である。
(薄層プレート)
本実施形態のTLC用プレートの一例について図1を用いて説明する。本実施形態に係るプレートは支持体101上に担体の層102を有する。支持体101の材質は、ガラス、プラスチック、アルミ等が用いられ、試料の種類、展開液の種類等により適宜選択できる。なお、支持体101がなく、担体の層102が、支持体101を兼ねる構成であってもよい。支持体101の寸法や形状については、取り扱いの簡便さからは試料が移動する方向の長さ3cm〜15cm、幅1cm〜5cmの方形が好ましい。担体としては、シリカゲル、アルミナ、セルロース、けいそう土などを用いることができる。また、オクタデシル基を修飾したシリカゲルのように、シリカゲル中のシラノール基に有機部位を化学結合した化学修飾型シリカゲルも用いることができる。化学修飾型シリカゲルは逆相、NH、CN、DIOLタイプなどが知られており、分析したい試料にあわせ、適宜選択すればよい。
さらに、本実施形態に係るプレートには担体の層102の中に境界線物質が含有されている。この物質は予め担体上に塗布しても良いし、担体の原料であるシリカゲル等と混合した上で支持体上に担体とともに塗布しても良い。担体上に境界線物質を塗布する方法としては、境界線物質を溶解させた溶媒にプレートごと浸漬する方法、境界線物質の溶液をスプレー等で塗布する方法等がある。
境界線物質201は薄層プレートの全体に分布していても良いし(図2(a))、一部分202に分布していても良い(図2(b))。図2(b)において、203は、境界線物質が設けられていない領域である。予め液体試料を塗布する場所と大まかな量が分かっていれば、図2(b)のように液体試料を塗布する場所近辺に境界線物質を分布させるだけでも良い。
(境界線物質)
境界線物質としては分離の目的物である検体と異なる物質であり、少なくとも液体試料中の溶媒によって展開(担体中を移動)できる物質であれば良く、それ以外は特に限定されない。境界線物質の液体試料中の溶媒に対するRf値は大きい方が境界線をよりはっきりと確認でき、液体試料の付与量計測の精度が高くなる。Rf値は0.4以上が好ましく、0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。さらに0.7以上であることが特に良い。本発明において、ある物質のRf値とは、当該物質を溶媒によって一方向に展開した際の、(展開前のスポットの中心から展開後のスポットの中心までの距離/展開前のスポットの中心から溶媒の先端までの距離)を意味する。このときのRf値は、担体として、シリカゲル、又はオクタデシル基を修飾したシリカゲルを用い、展開液としては水を用いた場合の値である。ここで、スポットとは、物質の領域のことである。
また、境界線物質の担体の質量に対する含有量、すなわち、担体の質量に対する、境界線物質の質量の割合が0.45wt%以上であることが好ましい。
物質のRf値は担体の種類や展開溶媒によって大きく変わる為、最適な境界線物質もそれらによって変化する。一般的には、未修飾のシリカゲル(シリカゲル)の担体で溶媒が水を80%以上含有する場合、水素結合受容体(フッ素、酸素、窒素などの陰性原子)が多い物質ほど展開液との相互作用が多くなりRf値が大きくなる。この場合、境界線物質として水素結合の受容体を5つ以上含む構造を用いる事が好ましく、キサンツレン酸、アデノシン、カフェインなどが例示される。展開液がアルコール系の場合は物質と担体との相互作用の方が強くなるため逆の傾向になる場合が多い。
一方で、オクタデシル基を修飾したシリカゲル担体では未修飾のシリカゲル担体とは逆の傾向になる場合が多い。溶媒が水を80%以上含む場合、境界線物質として水素結合の受容体を5つ以下含む構造であることが好ましく、具体例としてはキノリン酸、ウラシル、4−ピリドキシン酸、trans−ウロカニン酸などがある。 境界線物質には可視化のための手段が必要である。TLCプレートは一般的に蛍光物質を含んでいるものが多く、UV光を吸収する物質が付与されていると、UV光照射時にその部分が暗くなる。したがって、UV吸収を持つ材料は境界線物質として使用できる。また、染料等の可視光域で視認できる色素も境界線物質として使用できる。その他にも蛍光を発する材料や燐光を有する材料なども使用できる。
(試料)
対象物を含有する試料としては特に限定されないが、本手法を用いれば、無色の物質や希薄な物質であっても分析することができる。たとえば、尿や汗などであっても付与量の計測は可能である。
(展開溶媒)
展開溶媒は、通常用いられている極性溶媒及び/または非極性溶媒を単独または混合して用いることができる。分析したい試料に合わせ、適宜選択すればよい。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(境界線物質を含むTLCプレートの製作)
メルク社製のTLCプレートである、TLCシリカゲル60F254(担体厚さ250μm、担体:未修飾シリカゲル、支持体:ガラス、以下順相と表記)を用いた。また、メルク社製のTLCシリカゲル60RP−18F254s(担体厚さ250μm、担体:未修飾シリカゲル、支持体:ガラス、以下逆相と表記)を用いた。それぞれのプレートは2cm×5cmに切断した。
表1に示す組み合わせで、各プレートに境界線物質をスプレー塗布し、実施例1から14を作製した。境界線物質は全て10μg/mlの水溶液に調整し、1mlをアネスト岩田社製のエアーブラシHP−CHを用いて全体に満遍なく塗布した。比較例として境界線物質を付与しないもの(比較例1〜4)、液体試料の溶媒に対して展開しない物質を境界線物質としたもの(比較例5〜10)を用意した。表1における各Rf値は、境界線物質のRf値を表す。
Figure 2019174389
(液体試料の付与)
液体試料として、8オキソ2’デオキシグアノシンを10ng/ml含む水溶液を用意した。滴下方式の場合、50μlをニチリョー社製の精密ピペットNichipet premiumを用いて分取し、各プレート上に滴下した。吸い上げ方式の場合、50μlを前記精密ピペットで分取し、テフロン(登録商標)製の板上に滴下し、各プレートに液滴を接触させて吸い上げた。表1には液体試料を滴下させて付与した場合は「a」、吸い上げて付与した場合は「b」と記した。
(評価)
液体試料付与後、80℃のホットプレート上でTLCプレートを乾燥させた。乾燥させたTLCプレートに対して、254nmのUV光源(アズワン社製 ハンディUVランプ)を照射した。次に、デジタルカメラ(キヤノン製PowerShotG9X、シャッター速度1/8、ISO感度120、F値1.8、解像度5472×3648)で撮影した。その際にリファレンスとして境界線物質も液体資料も含まないTLCプレート(以下、リファレンス用プレート)を並べて撮影した。TLCプレートの液体試料が接していない領域の輝度を1、リファレンス用プレート上の輝度を0として、液体試料の境界部の輝度を算出した。この場合、輝度値が大きいほど暗い画像になる。TLCプレートは担体中に蛍光物質を有しており、UV光源で発光する。境界線物質は紫外線の吸収を持つため、何も塗布していないリファレンス用プレートと比べて境界線物質を塗布したプレートは若干暗くなる。さらに液体試料の境界部は境界線物質が集まる為より暗くなり、境界線を形成する。液体試料の境界部の輝度が3以上となる場合をAとし、輝度が2以上3未満となる場合をB、輝度が2未満の場合を許容できないレベルとしてCとした。評価結果を表1に示す。
(必要な境界線物質の量)
メルク社製のTLCプレートである、TLCシリカゲル60F254(担体厚さ250μm、担体:未修飾シリカゲル、支持体:ガラス)を2cm×5cmに切断した。その次に、キサンツレン酸水溶液10μg/mlの1mlをアネスト岩田社製のエアーブラシHP−CHを用いて全体に満遍なく塗布した。すぐに密閉できるポリ袋にTLCプレートを入れ、密閉したうえで質量を計測したところ、キサンツレン酸水溶液塗布前と比べて平均0.17g増加していた。一方、何も塗布していないTLCプレートのシリカゲルを剃刀で削り取り質量を計測したところ平均0.11gであった。キサンツレン酸水溶液の比重を1とすると、TLCプレート上のシリカゲルに対して重量で約1.5%のキサンツレン酸水溶液が含有していたことになる。
キサンツレン酸水溶液の濃度を10μg/mlから1μg/mlまで変化させて1mlをTLCプレートに塗布し、上記(評価)と同様の方法で輝度を評価した。結果を表2に示す。境界線物質として必要な量はTLCプレート上のシリカゲルの質量に対して0.45wt%以上である。
Figure 2019174389
(液体付与量の算出)
メルク社製のTLCプレートである、TLCシリカゲル60F254(担体厚さ500μm、担体:未修飾シリカゲル、支持体:ガラス)と実施例1で使用したキサンツレン酸を境界線物質として実施例1と同様の方法でTLCプレートに塗布した。液体試料として、8オキソ2’デオキシグアノシンを10ng/ml含む水溶液を用意し、100から200μlをニチリョー社製の精密ピペットNichipet premiumでテフロン製の板上に滴下した。その後TLCプレートに液滴を接触させて液体試料を吸い上げ、上記(評価)の手法と同様の方法でTLCプレートの乾燥、デジタルカメラによる撮影を行った。この際、デジタルカメラとTLCプレートの距離が常に一定になるように(撮影したTLCプレートの大きさが常に同じになるように)注意した。
写真の輝度情報から液体試料の付与領域(試料がプレートに付与されて展開された後の境界線物質の位置)を決め、その面積を写真の画素数で求めた。液体試料の付与量と求めた画素数の関係を図3に示す。今回の場合、液体試料の付与量と求めた画素数は線形の関係にあり、次の式で表すことができた。
液体試料の付与量(ml)=0.00531×求めた画素数・・・式(1)
上記式(1)を用いる事で、同じTLCプレートを用いるのであれば、液体試料の付与量が未知であっても、液体試料付与後の写真から液体試料の付与量を知ることが可能である。
101 支持体
102 担体
201 境界線物質を付与した領域
202 境界線物質を付与した領域
203 境界線物質を付与していない領域

Claims (12)

  1. 溶媒を含む試料の中から1つ以上の検体を分離する薄層クロマトグラフィー用のプレートであって、担体と、前記担体に担持された物質とを含み、前記物質は、前記溶媒によって、前記担体中をRf値が0.4以上となるように展開することを特徴とするプレート。
  2. 前記試料が前記プレートに付与されることによって展開された後の、前記物質の前記担体上の位置に応じて、前記プレートに付与された前記試料を定量することが可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレート。
  3. 前記担体の質量に対する、前記物質の質量の割合が0.45wt%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプレート。
  4. 前記物質のRf値が0.5以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプレート。
  5. 前記溶媒が水を80%以上含有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のプレート。
  6. 前記担体がシリカゲルを含み構成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のプレート。
  7. 前記物質が、水素結合の受容体を5つ以上含む構造を有することを特徴とする請求項6に記載のプレート。
  8. 前記物質がキサンツレン酸、アデノシン、カフェインの中のうち少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項7に記載のプレート。
  9. 前記担体がオクタデシル基を修飾したシリカゲルを含み構成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のプレート。
  10. 前記物質が、水素結合の受容体を5つ以下含む構造を有することを特徴とする請求項9に記載のプレート。
  11. 前記物質がキノリン酸、ウラシル、4−ピリドキシン酸、trans−ウロカニン酸のうち少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項10に記載のプレート。
  12. 前記検体が、8オキソ2’デオキシグアノシンであることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のプレート。
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