以下、本発明の液圧回転機の実施の形態について図面を用いて説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の液圧回転機の第1の実施の形態に係る斜軸式油圧ポンプ・モータの全体構成を図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明の液圧回転機の第1の実施の形態に係る斜軸式油圧ポンプ・モータを示す断面図、図2は図1に示す斜軸式油圧ポンプ・モータをII−II矢視から見た断面図である。
図1及び図2において、斜軸式油圧ポンプ・モータ1は、上流側に接続された油圧機器(図示せず)からの作動油を吸い込み、下流側に接続された油圧機器(図示せず)に作動油を送り出すものである。斜軸式油圧ポンプ・モータ1は、回転軸2と、回転軸2を回転可能に支持する軸受ユニット3と、回転軸2に連結され作動油の給排(吸入及び排出)を行う作動機構部4と、回転軸2,軸受ユニット3及び作動機構部4を収容するケーシング5とを備えている。
回転軸2は、原動機又は負荷(図示せず)に機械的に接続され、第1軸線Aを中心に回転する入出力軸である。回転軸2は、例えば、一端側がケーシング5の外部へ突出する軸本体部11と、軸本体部11の他端側に一体的に設けられ軸本体部11よりも外径の大きなドライブディスク12とで構成されており、導電性を有する材料により形成されている。ドライブディスク12には、作動機構部4が傾転可能に連結されている。
軸受ユニット3は、例えば、回転軸2の軸本体部11とケーシング5との間において同軸上に並列された第1の軸受14、第2の軸受15、第3の軸受16を備えている。各軸受14、15、16は、環状の内輪18及び外輪19と、内輪18と外輪19との間に組み込まれた複数の転動体20と、複数の転動体20を周方向に保持する保持器21とを備えており、導電性を有する材料により形成されている。内輪18は、回転軸2の軸本体部11の外周に圧入されて回転軸2に対して回転不能に固定されている。外輪19は、ケーシング5の内周面に圧入されてケーシング5に対して回転不能に固定されている。
各軸受14、15、16は、例えば、円すいころ軸受で構成されている。3つの軸受14、15、16のうち、作動機構部4に最も近くに配置された第1の軸受14及び第1の軸受14に隣接する第2の軸受15は、外輪19の背面(アキシャル荷重を支持する側の側面)が作動機構部4の反対側(図1及び図2中、左側)を向くように配置されている。一方、作動機構部4から最も遠くに配置された第3の軸受16は、外輪19の背面が作動機構部4側(図1及び図2中、右側)を向くように配置されている。つまり、第1及び第2の軸受14、15と第3の軸受16とは、背面合わせになるように配置されている。第1及び第2の軸受14、15は、例えば、第3の軸受16よりも負荷能力が高いものが採用されている。
隣接する第1の軸受14と第2の軸受15との間には、軸方向の隙間調整のための内輪間座24及び外輪間座25が配置されており、第1環状空間32が形成されている。隣接する第2の軸受15と第3の軸受16との間には、軸方向の隙間調整のための外輪間座26が配置されており、第2環状空間33が形成されている。内輪間座24、外輪間座25、外輪間座26はそれぞれ、例えば、導電性を有する材料により形成されている。
斜軸式油圧ポンプ・モータ1の作動機構部4は、センタシャフト42及び複数のピストン43を介して回転軸2のドライブディスク12に連結されて回転軸2と共に回転するように設けられたシリンダブロック41と、ケーシング5とシリンダブロック41との間に設けられた弁板44とを備えている。
シリンダブロック41は、回転軸2の第1軸線Aに対して傾斜する第2軸線Bを中心に回転可能に構成されている。シリンダブロック41は、例えば、導電性を有する材料により円柱状に形成されており、中央部に設けられたセンタ穴47及びセンタ穴47の外周側における周方向に離隔して設けられた複数のシリンダ穴48を有している。センタ穴47は、中心線としての第2軸線B(軸方向)に沿って延在している。各シリンダ穴48は、シリンダブロック41の軸方向に延在している。センタ穴47及び複数のシリンダ穴48は、シリンダブロック41の回転軸2側(図1及び図2の左側)の端面に開口している。シリンダブロック41は、その弁板44側(図1及び図2の右側)の端面に、凹球面状に形成され回転の際に弁板44に摺動する摺動面41aを有している。各シリンダ穴48と摺動面41aとの間には、摺動面41aに開口するシリンダポート49がそれぞれ設けられている。
シリンダブロック41のセンタ穴47には、センタシャフト42が嵌合されている。センタシャフト42は、回転軸2とシリンダブロック41との中心位置を合わせる(センタリングを行う)ものであると共に、回転軸2のドライブディスク12と弁板44との間でシリンダブロック41を傾転自在に支持するものである。センタシャフト42は、シリンダブロック41の回転軸2側の端面から突出する一端部がドライブディスク12の回転中心位置に揺動可能に連結され、シリンダブロック41の摺動面41aから突出する他端部が弁板44の後述の貫通孔51に挿嵌されている。センタ穴47内には、ばね45が配置されている。ばね45は、シリンダブロック41を弁板44に向けて常時付勢するものである。これにより、シリンダブロック41は、その摺動面41aを弁板44に密着させた状態で弁板44に対して回転する構成となっている。
シリンダブロック41の各シリンダ穴48には、ピストン43が摺動可能に挿嵌されている。各ピストン43は、シリンダ穴48から突出する一端部が回転軸2のドライブディスク12に揺動可能に連結されている。各ピストン43は、回転軸2に対して傾転したシリンダブロック41の回転に伴いシリンダ穴48内を往復動することで、作動油の吸込及び排出を行うものである。
弁板44は、その一方側端面がシリンダブロック41の凹球面状の摺動面41aに対面して摺接する凸球面状の切換面44aとなるように構成されている。また、弁板44は、その他方側端面がケーシング5の内面に対面して摺接する凸円弧状の摺接面44bとなるように構成されている。弁板44は、その摺接面44bがケーシング5の内面に摺動することで、シリンダブロック41と共に回転軸2に対して傾転する。弁板44は、導電性を有する材料により形成されている。
弁板44の中央部には、板厚方向に貫通した(切換面44a及び摺接面44bに開口する)貫通孔51が設けられている。貫通孔51には、センタシャフト42の他端部が挿嵌されている。また、弁板44には、円弧状又は眉形状の一対の給排ポート(吸入ポート及び排出ポート)52が周方向に設けられている。一対の給排ポート52は、シリンダブロック41の回転により各シリンダ穴48(シリンダポート49)と間欠的に連通するように構成されている。
ケーシング5は、一方側が開口する有底筒状のケーシング本体55と、ケーシング本体55の開口部を閉塞するヘッドケーシング56とで構成されている。
ケーシング本体55は、回転軸2及び軸受ユニット3を収容する底部側(図1及び図2の左側)の第1収容空間60と、作動機構部4を収容する開口部側(図1及び図2の右側)の第2収容空間61とを有している。ケーシング本体55は、作動機構部4が回転軸2に対して傾転した状態で収容可能となるように第2収容空間61側の一部分が屈曲している。ケーシング本体55の底部には、回転軸2の原動機又は負荷側の端部が挿通される軸挿通孔62が設けられている。軸挿通孔62には、回転軸2と軸挿通孔62との間隙をシールするシール部材57が取り付けられている。
ヘッドケーシング56の内面は、弁板44の凸円弧状の摺接面44bに対面して摺接する凹円弧状の摺接面56aを有している。ヘッドケーシング56には、外部配管と接続可能な一対の給排通路(吸入通路及び排出通路)64が形成されている。給排通路64は、弁板44の傾転位置にかかわらず弁板44の給排ポート52と常時連通するように構成されている。
ヘッドケーシング56には、弁板44をシリンダブロック41と共に傾転させる傾転機構7が設けられている。傾転機構7は、ヘッドケーシング56における摺接面56aよりも奥部に設けられた傾転用シリンダ穴66と、傾転用シリンダ穴66内に摺動可能に配置されたサーボピストン67と、サーボピストン67に固着された揺動ピン68と、傾転用シリンダ穴66の両端にそれぞれ設けられた油通孔69とを備えている。傾転用シリンダ穴66は、弁板44の傾転方向に直線状に延在している。揺動ピン68は、その先端部が弁板44の貫通孔51に揺動可能に挿嵌されている。油通孔69は、サーボピストン67を動作させるための油を傾転用シリンダ穴66内に供給するためのものである。傾転機構7では、油通孔69を介して傾転用シリンダ穴66に圧油を供給することによりサーボピストン67が摺動変位し、揺動ピン68を介して弁板44及びシリンダブロック41を傾転させる。
本実施の形態に係る斜軸式油圧ポンプ・モータ1は、軸受ユニット3及び作動機構部4の摺動部を潤滑する共通の潤滑油としての作動油がケーシング5内で循環するように構成されている。回転軸2、軸受ユニット3、作動機構部4、ケーシング5の各部は作動油が流通する経路(油路)を有しており、各部の経路(油路)が連通することで全体として作動油の循環経路70が構成されている。
具体的には、回転軸2には、循環経路70の一部としての第1通油孔71が設けられている。第1通油孔71は、一方側がドライブディスク12に開口すると共に、他方側が軸本体部11の外周面に開口している。より詳細には、第1通油孔71は、回転軸2の第1軸線Aに沿って延在し、ドライブディスク12おけるセンタシャフト42との連結部に開口する軸方向油孔71aと、軸方向油孔71aの端部から回転軸2の径方向に延在し、第2の軸受15と第3の軸受16の間に形成された第2環状空間33に開口する径方向油孔71bとで構成されている。
軸受ユニット3では、各軸受14、15、16の内輪18、外輪19、転動体20、保持器21の間隙が循環経路70の一部を構成している。また、各軸受14、15、16間に形成された第1環状空間32及び第2環状空間33が循環経路70の一部を構成している。
作動機構部4のセンタシャフト42には、循環経路70の一部としての第2通油孔72が設けられている。第2通油孔72は、センタシャフト42の第2軸線Bに沿って延在して両側が開口し、回転軸2の第1通油孔71及び弁板44の貫通孔51に連通している。弁板44の貫通孔51は、傾転機構7の揺動ピン68との嵌合部の他に、循環経路70の一部として構成されている。
ケーシング本体55の第1収容空間60における第3の軸受16よりも底部(端部)側には、軸本体部11の外周面の外側に端部空間60aが形成されており、端部空間60aは循環経路70の一部を構成している。また、ケーシング本体55の第2収容空間61は、作動油によって満たされており、循環経路70の一部を構成している。
ケーシング本体55の内周面における軸受ユニット3と嵌合する部分には、循環経路70の一部としての第1油溝73が設けられている。第1油溝73は、軸受ユニット3の軸方向に延在し、第1収容空間60の端部空間60aと第2収容空間61とを連通している。第1油溝73は、例えば、互いが180°反対側に位置するように2本設けられている。第1油溝73は、軸受ユニット3の第3の軸受16を潤滑した作動油を第2収容空間61へ導くものである。
ヘッドケーシング56の摺接面56aには、循環経路70の一部として第2油溝74が設けられている。第2油溝74は、ケーシング5の第2収容空間61と弁板44の貫通孔51とを連通している。
本実施の形態においては、回転軸2の第1通油孔71、第2の軸受15と第3の軸受16間の第2環状空間33、第2の軸受15、第2の軸受15と第1の軸受14間の第1環状空間32、第1の軸受14、ケーシング5内の第2収容空間61、ヘッドケーシング56の第2油溝74、弁板44の貫通孔51、センタシャフト42の第2通油孔72により、1つの循環経路が形成されている。また、回転軸2の第1通油孔71、第2環状空間33、第3の軸受16、第1収容空間60の端部空間60a、ケーシング本体55の第1油溝73、ケーシング5内の第2収容空間61、ヘッドケーシング56の第2油溝74、弁板44の貫通孔51、センタシャフト42の第2通油孔72により、分岐した循環経路が形成されている。このような循環経路70では、回転軸2の回転に伴い生じる遠心力を駆動源として、作動油が流通する。
ところで、各軸受14、15、16には大きな荷重が作用するので、軸受14、15、16から摩耗粉(金属粉)などの異物が発生することがある。発生した異物は、軸受14、15、16の潤滑油としての作動油と共に、第1の軸受14の作動機構部4側の開口部や第1油溝73の開口部を介して第2収容空間61内へ流出する。
また、斜軸式油圧ポンプ・モータ1の上流側の外部機器からの作動油中に異物が含まれている場合もある。この場合、異物を含んだ作動油が、弁板44とヘッドケーシング56との隙間やシリンダブロック41のシリンダ穴48とピストン43との隙間等を介して第2収容空間61内へ漏れ出ることも考えられる。
第2収容空間61内の異物は、作動機構部4のセンタシャフト42やピストン43と回転軸2との連結部、センタシャフト42やピストン43とシリンダブロック41との嵌合部等へ侵入する虞がある。さらに、第2収容空間61内の異物は、ケーシング5の第2油溝74、弁板44の給排ポート52の一方(吸入ポート)、シリンダ穴48、弁板44の給排ポート52の他方(排出ポート)を順に介して、斜軸式油圧ポンプ・モータ1の下流側の外部機器へ侵入する虞もある。斜軸式油圧ポンプ・モータ1の作動機構部4や外部機器に異物が侵入すると、異物の噛み込みによる作動機構部4や外部機器の動作不良や破損へ繋がる。
そこで、本実施の形態に係る斜軸式油圧ポンプ・モータ1は、作動油中に含まれる異物の有無を検知して作動油の状態を監視する後述の状態監視装置8(後述の図3参照)を備えている。状態監視装置8の構成の詳細は後述するが、図1に示すように、状態監視装置8の構成の一部であるセンサプラグ81がケーシング本体55に設けた取付孔63に設置されている。
次に、本発明の液圧回転機の第1の実施の形態における作動油の状態監視装置の全体構成を図3を用いて説明する。図3は図1に示す斜軸式油圧ポンプ・モータにおける作動油の状態監視装置を示す構成図である。
図3において、作動油の状態監視装置8は、例えば、ケーシング本体55に取り付けられるセンサプラグ81と、センサプラグ81の先端部に離隔するように取り付けられ、一対の電極を構成すると共に金属粉等の異物を吸着する一対の永久磁石82と、一対の永久磁石(電極)82にそれぞれ電気的に接続された配線83と、ケーシング5の外側に位置し、配線83を介して一対の永久磁石(電極)82と電気的に接続される制御装置84とを備えている。一対の永久磁石82が配線83を介して制御装置84に電気的に接続されることで、一対の永久磁石82への異物の付着に伴い電気的出力が変化するセンサ回路が構成されている。
電極を構成する永久磁石82は、例えば、電気を導通する素材で被覆されている。配線83は、例えば、差込み接続型のコネクタにより2つに分割されている。具体的には、配線83は、一端側が永久磁石82に接続され他端側にコネクタ雌部材87aを有する内部配線87と、一端側が制御装置84に接続され他端側にコネクタ雄部材88aを有する外部配線88とで構成されている。内部配線87のコネクタ雌部材87aに外部配線88のコネクタ雄部材88aが差し込まれることで、一対の永久磁石82が電気的に制御装置84に接続される。センサプラグ81、一対の永久磁石82、及び内部配線87は、センサ回路の一部としての一体部品90を構成している。
制御装置84は、センサ回路の電源として機能する装置であると共に、センサ回路の電気的出力の変化を検知することで、作動油の状態を監視する装置である。制御装置84は、モニタ85に接続されており、作動油中に異物を検出した場合にモニタ85に対して異物検出の警告を表示するように指令するように構成されている。
次に、本発明の液圧回転機の第1の実施の形態の一部を構成するセンサプラグ及びその取付構造を図4及び図5を用いて説明する。図4は図1の符号Xで示す斜軸式油圧ポンプ・モータの一部を構成するセンサ回路の一部及びその周辺構造を拡大した状態で示す断面図、図5は図4に示す斜軸式油圧ポンプ・モータの一部を構成するセンサ回路の点検時の移動を示す説明図である。
図4及び図5において、センサプラグ81は、センサ回路を構成する永久磁石82及び内部配線87を保持する保持部材として機能するものである。また、センサプラグ81は、ポンプ稼動時に永久磁石82を循環経路70内に配置させる一方、センサ回路の点検時にケーシング5の内面に循環経路70を挟んで対向している導電性の構成部品に永久磁石82を接触させるためのものである。本実施の形態におけるセンサプラグ81は、一対の永久磁石82が循環経路70の第1油溝73内に位置する第1位置(図4参照)とケーシング5内の第1の軸受14の外輪19の外径面に接触する第2位置(図5参照)との間で移動可能なように、ケーシング本体55に対して変位可能に構成されている。具体的には、ケーシング本体55及びセンサプラグ81を以下のように構成している。
ケーシング本体55の周壁部には、センサプラグ81を取り付けるための取付孔63が周壁部を貫通するように設けられている。取付孔63は、例えば、ケーシング本体55の第1油溝73に開口し、第1の軸受14の外輪19の外径面に向かうように設けられている。取付孔63は、例えば、段付きの孔であり、ケーシング本体55の内周側の小径部63aと、ケーシング本体55の外周側の大径部63bとで構成されている。小径部63aの形成面には、後述のOリング96を配置する環状溝部63cが設けられている。大径部63bの形成面には、センサプラグ81の後述の雄ねじ部92aが螺合する雌ねじ部(図示せず)が設けられている。
センサプラグ81は、一端側(先端部)に一対の永久磁石82が取り付けられる軸状の本体部92と、本体部92の他端側に一体に設けられた頭部93とで構成されている。センサプラグ81は、一端側から他端側に貫通する中空部94を有している。本体部92はその外周部に雄ねじ部92aを有しており、雄ねじ部92aは取付孔63の大径部63bの雌ねじ部に螺合するように構成されている。センサプラグ81は、取付孔63の雌ねじ部に対する雄ねじ部92aのねじ込み量に応じて、取付孔63の延在方向(貫通方向)に変位可能な構成となっている。すなわち、一対の永久磁石82は、センサプラグ81の変位に伴い上記の第1位置と第2位置との間で移動可能である。
本体部92の外周面には、Oリング96が取り付けられている。Oリング96は、センサプラグ81と取付孔63との隙間をシールするものである。本体部92の雄ねじ部92aには、ナット97が取り付けられている。ナット97は、ケーシング本体55の外周面に接触するように締め付けられることで、センサプラグ81の雄ねじ部92aと取付孔63の雌ねじ部の結合が緩まないようにするものである。すなわち、ナット97は、センサプラグ81を取付孔の延在方向の任意の位置で固定する機能を有している。
一対の永久磁石82に接続された内部配線87は、センサプラグ81の中空部94を介してケーシング5の外部へ引き出されている。内部配線87のコネクタ雌部87aは、センサプラグ81の頭部93に埋め込まれている。頭部に埋め込まれたコネクタ雌部87aは、センサプラグ81の中空部94からの作動油の漏れを封止するシール部としても機能する。
次に、作動油の状態監視装置の一部を構成する制御装置の機能及び制御手順の一例を図3、図6、図7を用いて説明する。図6は図3に示す作動油の状態監視装置が検知するセンサ回路の出力電圧の一例を示す図、図7は図3に示す作動油の状態監視装置の一部を構成する制御装置の制御手順の一例を示す制御フロー図である。図6中、横軸Tは時間を、縦軸Vsはセンサ回路の出力電圧を示している。
図3において、制御装置84は、電気的出力検出部101、記憶部102、判定部103、制御信号出力部104を備えている。電気的出力検出部101は、一対の永久磁石82及び配線83を含むセンサ回路の電気的出力、例えば、出力電圧Vsを検知するものである。記憶部102には、図6に示すように、電気的出力検出部101が検知するセンサ回路の出力電圧Vsと比較するための閾値Vaが予め記憶されている。閾値Vaは、実験等により設定されている。判定部103は、電気的出力検出部101が検知したセンサ回路の出力電圧Vsと記憶部102に予め記憶されている閾値Vaとを比較判定することで、作動油中の異物の検知の有無を判定するものである。一対の電極(永久磁石)82間に異物が吸着されると、センサ回路が電気的に短絡し、センサ回路の出力電圧Vsが、図6の実線Sに示すように、略0となる。判定部103は、出力電圧Vsが閾値Vaよりも小さい場合には、作動油中に異物を検出したと判定する。それ以外の場合には、作動油は清浄な状態であると判定する。制御信号出力部104は、判定部103により作動油中に異物を検出したと判定された場合に、異物検出の警告を表示する指令信号をモニタ85へ出力するものである。
制御装置84は、図7に示すように、斜軸式油圧ポンプ・モータ1の駆動装置のスイッチのオンにより、制御を開始する(スタート)。まず、電気的出力検出部101がセンサ回路の出力電圧Vsを検知する(ステップS10)。次に、判定部103が、電気的出力検出部101の検知した出力電圧Vsに基づき、作動油中の異物の検出の有無を判定する(ステップS20)。具体的には、センサ回路の出力電圧Vsが記憶部102に予め記憶されている閾値Vaよりも小さいか否かを判定する。
ステップS20において、出力電圧Vsが閾値Va以上の場合(NOの場合)には、制御装置84は、作動油は清浄な状態であると判定し、ステップS10に戻る。制御装置84は、ステップS20において出力電圧Vsが閾値Vaよりも小さくなるまで(YESと判定されるまで)、上述のステップS10及びS20を順に繰り返す。
一方、ステップ20において、電気的出力検出部101の検知した出力電圧Vsが閾値Vaよりも小さい場合(YESの場合)には、制御装置84は、作動油中に異物を検出したと判定し、異物検出の警告を表示する指令信号をモニタ85へ出力する(ステップS30)。制御装置84からの指令信号を受け取ったモニタ85は、異物検出の警告を画面上に表示する。
次に、本発明の液圧回転機の第1の実施の形態の動作を図1、図3〜図7を用いて説明する。
図1に示す斜軸式油圧ポンプ・モータ1の回転軸2が回転することで、作動油が循環経路70を循環する。具体的には、回転軸2の回転に起因した遠心力により、回転軸2の第1通油孔71の径方向油孔71b内の作動油が軸受15、16間の第2環状空間33内へ流出する。
第2環状空間33内へ流出した作動油の一部は、第2の軸受15の摺動部を潤滑し、軸受14、15間の第1環状空間32を介して第1の軸受14の摺動部を潤滑する。第2の軸受15及び第1の軸受14の摺動部を潤滑した作動油は、第1の軸受14の作動機構部4側の開口部から流出する。
一方、第2環状空間33内へ流出した作動油の残りの部分は、第3の軸受16の摺動部を潤滑した後、第1収容空間60の端部空間60aを介してケーシング5の第1油溝73を流通する。第1油溝73を流通する作動油は、図4に示す永久磁石82の脇を流れ、第2収容空間61内へ流出する。
図1に示す第1の軸受14の開口部及び第1油溝73から第2収容空間61内へ流出した作動油は、軸方向油孔71a内の作動油が径方向油孔71bに吸い込まれることで、ヘッドケーシング56の第2油溝74、弁板44の貫通孔51、センタシャフト42の第2通油孔72を順に介して軸方向油孔71a内へ吸い込まれる。このように、作動油は、循環経路70を循環して各軸受14、15、16及び作動機構部4のセンタシャフト42やピストン43の摺動部を潤滑する。
ポンプ・モータ稼働中、図3に示す状態監視装置8の制御装置84は、センサ回路の出力電圧Vsを検知し(図7に示すステップS10)、出力電圧Vsが閾値Vaよりも小さいか否かを判定する(図7に示すステップS20)。一対の電極としての永久磁石82が異物を吸着していない場合には、永久磁石82を電極とするセンサ回路は電気的に短絡していなので、図6の実線Nのように、閾値Va以上の出力電圧Vsが検知される。したがって、制御装置84は、作動油が清浄な状態である(NO)と判定し、異物の検出の有無の判定を繰返し実行する(図7に示すステップS10及びS20)。
図1に示す第1〜第3の軸受14、15、16のいずれかから異物(金属粉等)が発生すると、軸受14、15、16を潤滑する作動油の流れと共に異物が循環経路70内を流通する。また、油圧回路を構成する外部機器に異物が発生し、斜軸式油圧ポンプ・モータ1が吸い込む作動油内に異物が含まれていることがある。吸い込んだ作動油が異物と共にケーシング5内の第2収容空間61内に漏出すると、異物が循環経路70内を流通する。
本実施の形態においては、図4に示すケーシング本体55の第1油溝73内に位置する永久磁石82によって異物が吸着される。永久磁石82間に亘って異物が吸着されると、センサ回路が短絡した状態となり、図6の実線Sのように、出力電圧Vsがほぼ0に低下する。この場合、図3に示す制御装置84は、センサ回路の出力電圧Vsが閾値Vaよりも小さい(YES)と判定し(図7に示すステップ20)、異物検知の警告の表示を指令する指令信号をモニタ85へ出力する(図7に示すステップS30)。このように、状態監視装置8は、センサ回路の出力電圧Vsを検知することで作動油の状態を監視し、循環経路70を流通する作動油中に異物を検知した場合、モニタ85に異物検知の警告を表示させる。したがって、斜軸式油圧ポンプ・モータ1の作動機構部4の異物の噛み込みによる動作不良や故障、破損を抑制することができる。
また、本実施の形態は、配線83を、センサプラグ81の中空部94を介してケーシング5の外部へ引き出し、外部の制御装置84に電気的に接続するように構成されている。したがって、配線83は作動油の流れにほとんど曝されることなくセンサプラグ81により保護されているので、配線83の断線を抑制することができる。
ところで、状態監視装置8のセンサ回路を定期的に点検してセンサ回路が正常に作動していることを確認する必要がある。本実施の形態においては、図4に示すように、センサプラグ81のケーシング本体55の取付孔63に対するねじ込み量を調整することで、ポンプ・モータ稼働中に、一対の永久磁石82が第1油溝73内に位置するようにしている。それに対して、センサ回路の点検時には、センサプラグ81の雄ねじ部92aに締結されているナット97を緩め、センサプラグ81を取付孔63に対して更にねじ込んでケーシング本体55の内周側に変位させることで、図5に示すように、一対の永久磁石82を第1の軸受14の外輪19の外径面に接触させる。
センサ回路が正常に作動している場合には、一対の永久磁石82と導電性の第1の軸受14との接触によりセンサ回路が電気的に導通した状態となり、センサ回路の出力電圧Vsが変化する。一方、センサ回路に断線等の故障が発生している場合には、一対の永久磁石82と導電性の第1の軸受14とが接触していても、センサ回路は電気的に導通した状態にならないので、センサ回路の出力電圧Vsが変化しない。したがって、一対の永久磁石82を導電性の第1の軸受14に接触させてセンサ回路の出力電圧Vsの変化の有無を判定することで、センサ回路が正常に作動しているか否かを判定することができる。
このように、センサプラグ81の取付孔63に対するねじ込み量を増加させ、センサプラグ81をケーシング本体55の内周側に変位させることで、センサ回路の点検を行うことができる。したがって、センサ回路の点検時に、斜軸式油圧ポンプ・モータ1を接続している油圧回路の遮断や斜軸式油圧ポンプ・モータ1の分解を行う必要がない。当然、斜軸式油圧ポンプ・モータ1の再組立や油圧回路の再接続等の必要もない。
上述したように、本発明の液圧回転機の第1の実施の形態によれば、センサプラグ(保持部材)81に取り付けた一対の永久磁石(電極)82が第1油溝(作動油の経路)73内に位置する第1位置とケーシング5内の第1の軸受14に接触する第2位置との間で移動可能なように、センサプラグ81(保持部材)がケーシング5に対して変位可能に取り付けられているので、センサプラグ(保持部材)81をケーシング5に対して変位させて一対の永久磁石(電極)82を第1の軸受14に接触させ、センサ回路の出力電圧(電気的出力)Vsの変化を見ることにより、センサ回路の点検が可能である。したがって、斜軸式油圧ポンプ・モータ(液圧回転機)1を分解することなく、ケーシング5内を流れる作動油中の異物の有無を検知するセンサ回路を簡便に点検することができる。
また、本実施の形態においては、センサプラグ81に取り付けた一対の永久磁石82を第1の軸受14の外輪19に接触する第2位置へ移動可能なように、センサプラグ81をケーシング5に対して変位可能に取り付けている。したがって、センサ回路の点検後に、センサプラグ81をポンプ・モータ稼動時の位置に戻すことを忘れたままで斜軸式油圧ポンプ・モータ1を稼働させてしまっても、第1の軸受14の外輪19がケーシング5に取り付けたセンサプラグ81に対して相対運動することがないので、センサ回路を破損させることがない。
さらに、本実施の形態によれば、軸受ユニット3を潤滑した後の作動油が流通する第1油溝73内に一対の永久磁石82を配置するように構成したので、軸受ユニット3から発生した異物を効果的に検知することができる。
また、本実施の形態によれば、雌ねじ部を設けた取付孔63に対して雄ねじ部92aを設けたセンサプラグ81のねじ込み量を調整することで、一対の永久磁石82を第1位置と第2位置との間で移動させるように構成したので、簡素な機構によって一対の永久磁石82の移動が可能である。
[第1の実施の形態の変形例]
次に、本発明の液圧回転機の第1の実施の形態の変形例を図8を用いて説明する。図8は本発明の液圧回転機の第1の実施の形態の変形例に係る斜軸式油圧ポンプ・モータを示す断面図である。なお、図8おいて、図1乃至図7に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図8に示す本発明の液圧回転機の第1の実施の形態の変形例が第1の実施の形態(図1参照)と相違する点は、センサプラグ81のケーシング5に対する取付位置が異なることである。第1の実施の形態のセンサプラグ81は、ケーシング本体55の第1油溝73に開口する取付孔63に取り付けられており、一対の永久磁石82が第1油溝73内に位置する第1位置(図4参照)とケーシング5内の第1の軸受14の外輪19に接触する第2位置(図5参照)との間で移動可能なように、ケーシング本体55に対して変位可能に構成されている。それに対して、第1の実施の形態の変形例のセンサプラグ81は、ケーシング本体55の第2収容空間61に開口する取付孔63Aに取り付けられており、一対の永久磁石82が循環経路70の第2収容空間61内に位置する第1位置とケーシング5内の弁板44の外周部に接触する第2位置との間で移動可能なように、ケーシング本体55に対して変位可能に構成されている。取付孔63Aは、ケーシング本体55の開口部の近傍で、かつ、ケーシング本体55の底部側の周壁部に対して屈曲する周壁部に設けられている。それ以外の構成は第1の実施の形態の構成と同様である。
本変形例においては、ポンプ・モータ稼働中に、一対の永久磁石82をケーシング本体55の第2収容空間61内に配置している。したがって、第2収容空間61内に流れている作動油中の異物が永久磁石82によって吸着される。永久磁石82間に亘って異物が吸着されると、第1の実施の形態と同様に、状態監視装置8の制御装置84が異物検知の警告の表示を指令する指令信号をモニタ85へ出力する(図3参照)。したがって、斜軸式油圧ポンプ・モータ1Aの作動機構部4の異物の噛み込みによる動作不良や故障、破損を抑制することができる。
また、本変形例においては、センサプラグ81を取付孔63Aに対してねじ込んでケーシング本体55の内部側へ移動させ、一対の永久磁石82を導電性の弁板44の外周部に接触させることで、状態監視装置8のセンサ回路を点検することができる。
上述したように、本発明の液圧回転機の第1の実施の形態の変形例によれば、第1の実施の形態の場合と同様に、斜軸式油圧ポンプ・モータ1Aが接続された油圧回路の遮断や斜軸式油圧ポンプ・モータ1Aの分解等を行うことなく、ケーシング5内を流れる作動油中の異物の有無を検知するセンサ回路を簡便に点検することができる。
また、本変形例においては、センサプラグ81に取り付けた一対の永久磁石82を弁板44の外周部に接触する第2位置へ移動可能なように、センサプラグ81をケーシング本体55に対して変位可能に取り付けている。したがって、センサ回路の点検後に、センサプラグ81をポンプ・モータ稼動時の位置に戻すことを忘れたままで斜軸式油圧ポンプ・モータ1Aを稼働させてしまっても、ケーシング5に固定された弁板44がケーシング5に取り付けたセンサプラグ81に対して相対運動することがないので、センサ回路を破損させることがない。
さらに、本変形例によれば、ケーシング本体55の第2収容空間61内に一対の永久磁石82を配置するように構成したので、軸受ユニット3から発生した異物だけでなく、油圧回路の外部機器から斜軸式油圧ポンプ・モータ1Aのケーシング5内に侵入した異物を検知することも可能である。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の液圧回転機の第2の実施の形態を図9を用いて説明する。図9は本発明の液圧回転機の第2の実施の形態に係る斜板式油圧ポンプ・モータを示す断面図である。なお、図9おいて、図1乃至図8に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図9に示す本発明の液圧回転機の第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1の実施の形態が斜軸式の油圧ポンプ・モータであるのに対して、斜板式の油圧ポンプ・モータであることである。斜板式油圧ポンプ・モータ111は、回転軸112と、回転軸112を回転可能に支持する軸受ユニット113と、回転軸112に連結され作動油の給排(吸入及び排出)を行う作動機構部114と、回転軸112,軸受ユニット113及び作動機構部114を収容するケーシング115とを備えている。
回転軸112は、一方側(図9の左側)の端部がケーシング115の外部へ突出して原動機又は負荷(図示せず)と機械的に接続され、軸線Aを中心に回転する入出力軸である。
軸受ユニット113は、例えば、回転軸112の一方側に配置された第1の軸受124と、回転軸112の他方側(図9の右側)に配置された第2の軸受125とで構成されている。各軸受124、125は、環状の内輪128及び外輪129と、内輪128と外輪129との間に組み込まれた複数の転動体130とを備えている。第1の軸受124及び第2の軸受125は、例えば、それぞれ玉軸受及び円筒ころ軸受で構成されている。
斜板式油圧ポンプ・モータ111の作動機構部114は、回転軸112と一体的に回転可能に結合され、複数のシリンダ穴141aが周方向に離隔して設けられたシリンダブロック141と、各シリンダ穴141aに摺動可能に挿嵌された複数のピストン142と、各シリンダ穴141aから突出するピストン142の一端部にそれぞれ揺動可能に設けられた複数のシュー143と、複数のシュー143が摺動する摺動面144aを有し、シリンダブロック141の回転運動をピストン142の往復運動に変換する斜板144と、シリンダブロック141とケーシング115との間に設けられた弁板145とを備えている。
シリンダブロック141は、導電性を有する材料により円柱状に形成されており、弁板145側(図9の右側)の端面が弁板145に対面して摺動するように構成されている。シリンダブロック141の中央部には、軸方向に貫通する軸穴141cが設けられている、シリンダブロック141は、回転軸112が軸穴141cに挿通された状態で連結されている。シリンダブロック141の各シリンダ穴141aは、シリンダブロック141の斜板144側(図9の左側)の端面に開口している。各シリンダ穴141aと弁板145側の端面との間には、弁板145側の端面に開口するシリンダポート141bがそれぞれ設けられている。
複数のシュー143は、環状のリテーナ146によって斜板144に対して保持されている。リテーナ146は、斜板144の摺動面144aに向けて複数のシュー143を押圧し、斜板144の摺動面144a上で各シュー143が環状軌跡を描くように摺動変位するのを補償するものである。
斜板144は、導電性を有する材料により形成されており、摺動面144aの反対側に凸湾曲状に突出した脚部148を有している。斜板144は、後述の傾転機構のクレイドル部材161によって傾転可能に支持されている。斜板144の中央部には、回転軸112が隙間をもって挿通される貫通孔(図示せず)が設けられている。
弁板145は、後述のケーシング本体151に対して固定されている。弁板145は、導電性を有する材料により形成されており、シリンダブロック141側の端面がシリンダブロック141に対面して摺接するように構成されている。弁板145の中央部には、回転軸112が隙間をもって挿通される貫通孔145aが設けられている。弁板145には、円弧状又は眉形状の一対の給排ポート(吸入ポート及び排出ポート)145bが周方向に設けられている。一対の給排ポート145bは、シリンダブロック141の回転により各シリンダ穴141a(シリンダポート141b)と間欠的に連通するように構成されている。
ケーシング115は、一方側が開口する有底筒状のケーシング本体151と、ケーシング本体151の開口を閉塞するフロントケーシング152とで構成されている。ケーシング115は、回転軸112、第1の軸受124、第2の軸受125、作動機構部114等を収容する収容空間155を有している。
ケーシング本体151の底部には、外部配管と接続可能な一対の給排通路(吸入通路及び排出通路)151aが形成されている。給排通路151aは、弁板145の給排ポート145bと常時連通するように構成されている。
フロントケーシング152には、回転軸112の一方側の端部が挿通される軸挿通孔152aが設けられている。軸挿通孔152aには、回転軸112と軸挿通孔152aとの間隙をシールするシール部材153が取り付けられている。
また、斜板式油圧ポンプ・モータ111は、回転軸112の軸線Aに対する斜板144の傾転角を可変に保持してピストン142の押し退け容積を調整可能にする傾転機構を備えている。傾転機構は、斜板144を傾転可能に支持するクレイドル部材161と、斜板144を傾転駆動する傾転アクチュエータ162とを備えている。
クレイドル部材161は、ケーシング115の収容空間155内のフロントケーシング152側に配置され、斜板144を挟んでシリンダブロック141の反対側に位置している。クレイドル部材161は、凹曲面を有する斜板受け部161aを備えている。斜板受け部161aは、斜板144の脚部148の凸湾曲面に摺接するように構成されており、斜板144を傾転(摺動)可能に案内するものである。クレイドル部材161の中央部には、回転軸112が隙間をもって挿通される貫通孔(図示せず)が設けられている。
傾転アクチュエータ162は、シリンダブロック141の径方向外側に位置してケーシング本体151に形成された一対の傾転用シリンダ穴163と、各傾転用シリンダ穴163内に摺動可能に挿嵌された一対のサーボピストン164とを含んで構成されている。各サーボピストン164は、傾転用シリンダ穴163から突出する一端部が斜板144に接するように構成されている。傾転アクチュエータ162は、一方側のサーボピストン164の傾転用シリンダ穴163からの突出量及び他方側のサーボピストン164の傾転用シリンダ穴163からの突出量に応じて、回転軸112の軸線Aに対する斜板144の傾転角が決定されるようになっている。
本実施の形態に係る斜板式油圧ポンプ・モータ111は、軸受ユニット113、作動機構部114、斜板144の傾転機構の摺動部を潤滑する共通の潤滑油としての作動油が流通する経路(油路)をケーシング115内に有している。
具体的には、作動機構部114のピストン142は、軸方向一端側から他端側に貫通した給油孔171を有している。各シュー143は、ピストン142との連結部側から斜板144との摺接部側に貫通した油孔172を有している。給油孔171及び油孔172は、シリンダ穴141a内に供給された作動油の一部を潤滑油としてシュー143と斜板144との摺動部(摺動面144a)へ供給する経路(油路)を構成している。
ケーシング115の収容空間155は、シリンダブロック141のシリンダ穴141aとピストンと142の間隙及びシリンダブロック141と弁板145との間隙を介して漏れ出た作動油や給油孔171及び油孔172を介して斜板144の摺動面144aへ供給された作動油によって満たされており、第1の軸受124及び第2の軸受125へ供給する作動油の経路(油路)を構成している。ケーシング本体151には、収容空間155と低圧の外部タンク(図示せず)とを接続するドレインライン(図示せず)が接続される。
斜板式油圧ポンプ・モータ111では、高圧の作動油の一部が作動機構部114の各部間の間隙や経路(油路)を介してケーシング115の収容空間155内に流入し、軸受ユニット113、作動機構部114、斜板144の傾転機構の摺動部を潤滑する。収容空間155内の作動油は、ドレインラインを介して収容空間155よりも低圧の外部タンクへ流出する。
本実施の形態に係る斜板式油圧ポンプ・モータ111においても、作動油中に含まれる異物の噛み込みによる作動機構部114や外部機器の動作不良や破損を抑制する必要がある。斜板式油圧ポンプ・モータ111は、第1の実施の形態及びその変形例と同様に、作動油中に含まれる異物の有無を検知して作動油の状態を監視する状態監視装置8(図9では、状態監視装置8の一部を構成する一体部品90のみを図示)を備えている。
具体的には、ケーシング本体151の周壁部には、センサプラグ81を取り付けるための取付孔63Bが周壁部を貫通するように設けられている。取付孔63Bは、例えば、ケーシング本体151の収容空間155に開口し、シリンダブロック141の外周面に向かうように設けられている。取付孔63Bの構造は、第1の実施の形態及びその変形例の取付孔63、63Aと同様である。取付孔63Bには、第1の実施の形態及びその変形例の場合と同様に、センサプラグ81が取り付けられている。センサプラグ81は、一対の永久磁石82が作動油の経路としてのケーシング本体151の収容空間155内に位置する第1位置とケーシング115内のシリンダブロック141の外周面に接触する第2位置との間で移動可能なようにケーシング本体151に対して変位可能に取り付けられている。
本実施の形態においては、ポンプ・モータ稼働中に、一対の永久磁石82をケーシング115の収容空間155内に配置している。したがって、収容空間155内に流れている作動油中の異物が永久磁石82によって吸着される。永久磁石82間に亘って異物が吸着されると、第1の実施の形態及びその変形例と同様に、状態監視装置8の制御装置84が異物検知の警告の表示を指令する指令信号をモニタ85へ出力する(図3参照)。したがって、斜板式油圧ポンプ・モータ111の作動機構部114の異物の噛み込みによる動作不良や故障、破損を抑制することができる。
また、本実施の形態においては、センサプラグ81を取付孔63Bに対してねじ込んでケーシング本体151の内部側へ移動させ、一対の永久磁石82を導電性のシリンダブロック141の外周面に接触させることで、状態監視装置8のセンサ回路を点検することができる。
上述したように、本発明の液圧回転機の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態及びその変形例と同様に、斜板式油圧ポンプ・モータ111が接続されている油圧回路の遮断や斜板式油圧ポンプ・モータ111の分解等を行うことなく、ケーシング115内を流れる作動油中の異物の有無を検知するセンサ回路を簡便に点検することができる。
また、本実施の形態によれば、ケーシング115の収容空間155内に一対の永久磁石82を配置するように構成したので、軸受ユニット3から発生した異物及び油圧回路の外部機器から斜板式油圧ポンプ・モータ111のケーシング115内に侵入した異物を検知することが可能である。
[その他の実施の形態]
なお、上述した本発明の液圧回転機の第1の実施の形態及びその変形例においては、傾転機構7を有する可変容量型の斜軸式油圧ポンプ・モータ1、1Aを示したが、本発明を傾転機構7のない固定容量型の斜軸式油圧ポンプ・モータに適用することも可能である。
また、上述した本発明の液圧回転機の第2の実施の形態においては、傾転機構を有する可変容量型の斜板式油圧ポンプ・モータ111を示したが、本発明を傾転機構のない固定容量型の斜板式油圧ポンプ・モータに適用することも可能である。
また、本発明は本実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
例えば、上述した第1の実施の形態においては、一対の永久磁石82が第1油溝73内に位置する第1位置(図4参照)と軸受ユニット3の第1の軸受14の外輪19に接触する第2位置(図5参照)との間で移動可能なように、センサプラグ81をケーシング本体55の取付孔63に対して変位可能に取り付ける例を示した。しかし、一対の永久磁石82が軸受ユニット3の第2の軸受15又は第3の軸受16の外輪19に接触する第2位置へ移動可能なように、センサプラグ81をケーシング本体55の取付孔に対して変位可能に取り付ける構成も可能である。この場合、取付孔を、第2の軸受15又は第3の軸受16の外輪19に向かうようにケーシング本体55に設ける。また、一対の永久磁石82が軸受ユニット3の外輪間座25又は外輪間座26に接触する第2位置へ移動可能なように、センサプラグ81をケーシング本体55に対して変位可能に取り付ける構成も可能である。この場合、取付孔を、外輪間座25又は外輪間座26に向かうようにケーシング本体55に設ける。
また、上述した第1の実施の形態の変形例においては、一対の永久磁石82が弁板44の外周部に接触する第2位置へ変位可能なように、センサプラグ81をケーシング本体55の取付孔63Aに対して変位可能に取り付ける例を示した。しかし、一対の永久磁石82がシリンダブロック41の外周面に接触する第2位置へ移動可能なように、センサプラグ81をケーシング本体55の取付孔に対して変位可能に取り付ける構成も可能である。この場合、取付孔を、シリンダブロック41の外周面に向かうようにケーシング本体55に設ける。また、一対の永久磁石82が回転軸2のドライブディスク12の外周面に接触する第2位置へ移動可能なように、センサプラグ81をケーシング本体55の取付孔63Aに対して変位可能に取り付ける構成も可能である。この場合、取付孔を、ドライブディスク12の外周面に向かうようにケーシング本体55に設ける。
また、上述した第2の実施の形態においては、一対の永久磁石82がシリンダブロック141の外周面に接触する第2位置へ移動可能なように、センサプラグ81をケーシング本体151の取付孔63Bに対して変位可能に取り付ける例を示した。しかし、一対の永久磁石82が弁板145の外周部に接触する第2位置へ移動可能なように、センサプラグ81をケーシング本体151の取付孔に対して変位可能に取り付ける構成も可能である。この場合、取付孔を、弁板145の外周部に向かうようにケーシング本体151に設ける。また、一対の永久磁石82が斜板144に接触する第2位置へ移動可能なように、センサプラグ81をケーシング本体151の取付孔に対して変位可能に取り付ける構成も可能である。この場合、取付孔を、斜板144に向かうようにケーシング本体151に設ける。
また、上述した実施の形態においては、センサプラグ81と取付孔63、63A、63Bとの間隙を封止するOリング96を取付孔63、63A、63Bの形成面に設けた環状溝部63cに配置した例を示した。しかし、センサプラグ81の本体部92の外周面に環状溝部を設け、当該環状溝部にOリング96を配置する構成も可能である。
また、上述した実施の形態においては、センサ回路の一対の電極及び異物の吸着部として、被膜した永久磁石82を用いた例を示したが、センサ回路の一対の電極と異物の吸着部とを分離する構成も可能である。
また、上述した第1の実施の形態及びその変形例においては、軸受ユニット3を3つの軸受14、15、16で構成した例を示したが、軸受の数は作動条件により適宜に設定することが可能である。また、軸受14、15、16を円すいころ軸受により構成した例を示したが、任意の種類の軸受で構成することも可能である。例えば、転がり軸受の玉軸受や円筒ころ軸受、針状ころ軸受等を用いることが可能である。