JP2019173343A - プレストレストコンクリート柱 - Google Patents

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【課題】緊張鉄筋として用いられるPC鋼棒において高い耐水素脆化性能を得ることが可能なプレストレストコンクリート柱を提供することを目的とする。【解決手段】本発明にかかるプレストレストコンクリート柱(単位柱120)の構成は、内部に緊張鉄筋124および非緊張鉄筋126が配置され設定荷重が2000kg以上となるように遠心成形されたプレストレストコンクリート柱であって、緊張鉄筋124は、焼入れ焼き戻し処理が施されていて、直径が10mm以上であり、引張強度が1420N/mm2以上であり、鉄筋表層から700μmまでの範囲が鋼材中央部の90%以下の硬度であることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、設定荷重が2000kg以上となるように遠心成形されたプレストレストコンクリート柱に関する。
電気事業者の発電所で発電された電気は、地上に建設された送電鉄塔等(以下、単に鉄塔と称する)に張架(支持)されている送電線を通じて長距離にわたって送電される(例えば特許文献1)。鉄塔の塔体は一般に鋼製部材によって構成され、その上部に取り付けられた腕金等の支持金物によって送電線が支持されている。
上述した鋼製部材からなる鉄塔は高い耐久性を有するが、耐久性を維持するためには定期的な保全や点検を行う必要がある。この保全や点検にまつわる作業は、労力およびコストにおいて非常に負担が大きい。このため近年では、鉄塔に替えて、点検や保全の負担が少ないコンクリート柱を採用した送電塔が検討されている。
コンクリート柱としては、プレストレストコンクリート柱(以下、コンクリート柱と称する)を用いることが考えられる(例えば特許文献2)。特許文献2のコンクリート柱は、遠心成型法で製造され、圧縮応力(プレストレス)が付与される緊張鋼材(緊張鉄筋とも称される)、および緊張鋼材に沿って配置される非緊張鋼材(非緊張鉄筋と称される)が配筋されている。
ここで、コンクリート柱の劣化の形態としては主に、内部の鉄筋が雨水の侵入などによりゆっくりと腐食減肉する延性破断と、腐食部を起点として応力が負荷された状態で生じる脆性破断がある。これらのうち、特に脆性破断は、高強度鋼特有の水素脆化破断であり保全の負荷が大きいため、抑制すべき腐食である。
そこで特許文献2では、非緊張鋼材として用いられるPC鋼棒に、一定厚さの軟化した腐食代を形成している。これにより、PC鋼棒の耐水素脆化性能が向上するため、非緊張鋼材の腐食劣化の進展や破断を抑制することが可能となる。
特開2012−251318号公報 特許第5614086号
ここで、上述したプレストレストコンクリート柱の内部に配筋される緊張鉄筋や非緊張鉄筋に用いられる鋼材としては、PC鋼線やPC鋼棒を例示することができる。PC鋼線は、直径が9mm以下の鋼材であり、金属を圧延しながら製造される。このため、直径方向での断面は年輪状の層が形成される。PC鋼棒は、直径が10mm以上の鋼材であり、鋼棒に焼入れ処理および焼き戻し処理を行うことにより製造される。
特許文献2では、コンクリート柱を架空電力線や柱上変圧器を支持する「電柱」に用いることを想定している。このため、コンクリート柱の支持重量はそれほど大きくはなく、直径が大きくないPC鋼線を緊張鉄筋に用いても十分な強度が得られる。しかしながら、送電塔が張架する送電線は重量が大きく、送電塔にかかる荷重は電柱にかかるそれよりもはるかに大きい。このため、コンクリート柱を「送電塔」に用いる場合、電柱に用いる場合よりも高い強度が必要となる。
コンクリート柱の強度を高めるためには、PC鋼線の本数を増やすことが考えられる。しかしながら、送電塔に必要な耐荷重に応じてPC鋼線の本数の増やすと、コンクリート柱の大径化、鉄筋籠製作時間の増加、狭い鉄筋間へのコンクリート流れ込み不良のリスク増加など、製造コストと品質管理上のリスクを招く可能性がある。
そこで、径が細いPC鋼線に代えて、径が太いPC鋼棒を緊張鉄筋に用いることが検討されている。しかし、PC鋼棒は、PC鋼線より剛性が高いという利点がある一方、一度亀裂が生じるとその亀裂が内部まで伸展しやすい。このため、緊張鉄筋としてPC鋼棒を用いる場合には、PC鋼棒の耐水素脆化性能を高める必要がある。
本発明は、このような課題に鑑み、緊張鉄筋として用いられるPC鋼棒において高い耐水素脆化性能を得ることが可能なプレストレストコンクリート柱を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるプレストレストコンクリート柱の代表的な構成は、内部に緊張鉄筋および非緊張鉄筋が配置され設定荷重が2000kg以上となるように遠心成形されたプレストレストコンクリート柱であって、緊張鉄筋は、焼入れ焼き戻し処理が施されていて、直径が10mm以上であり、引張強度が1420N/mm2以上であり、鉄筋表層から700μmまでの範囲が鋼材中央部の90%以下の硬度であることを特徴とする。
上記構成では、緊張鉄筋は直径10mm以上である。すなわち、緊張鉄筋にはPC鋼棒が用いられる。そして、上記構成によれば、緊張鉄筋として用いられるPC鋼棒において高い耐水素脆化性能を得ることができる。これにより、プレストレストコンクリート柱においてコンクリート部分にひび割れが生じることにより緊張鉄筋(PC鋼棒)の表層に腐食が生じた場合であっても、その腐食箇所を起点とする緊張鉄筋の破断を抑制することが可能となる。
上記緊張鉄筋は、Siの含有量が1.0%以上であり、(C+Si+Mn+Fe)以外の成分の含有量が0.1%未満であるとよい。かかる構成によれば、緊張鉄筋の耐水素脆化性能を更に高めることが可能となる。
上記緊張鉄筋に対するプレストレスが緊張鉄筋の引張強度の75%以下であるとよい。これにより、緊張鉄筋に過度なプレストレスがかかることを防ぎつつ、上述した効果を得ることが可能となる。
上記非緊張鉄筋は、引張強度が1420N/mm2以上であり、耐水素脆化性能を評価するFIP試験における破断時間が80時間以上であるとよい。これにより、非緊張鉄筋においても高い耐水素脆化性能を得ることができる。
本発明によれば、緊張鉄筋として用いられるPC鋼棒において高い耐水素脆化性能を得ることが可能なプレストレストコンクリート柱を提供することができる。
本実施形態にかかるプレストレストコンクリート柱を用いた送電塔を説明する図である。 本実施形態にかかるコンクリート柱を説明する図である。 PC鋼棒の破断試験結果を示す図である。 PC鋼棒の耐水素脆化試験結果を示す図である。 試験体A〜Fおよびそれを用いたコンクリート柱の試験結果を説明する図である。 PC鋼棒の耐水素脆化性能と軟化層との関係を説明する図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本実施形態にかかるプレストレストコンクリート柱を用いた送電塔100を説明する図である。図1に示すように、送電塔100は、複数のコンクリート支持柱(以下、支持柱110と称する)を備え、送電線(不図示)を把持する支持金物130を支持柱110において支持する。複数の支持柱110は、連結部材140によって連結されている。支持柱110は、単位コンクリート部材(以下、単位柱120と称する)を高さ方向に複数連結して構成され、かかる単位柱120に、本実施形態にかかるプレストレストコンクリート柱(以下、単にコンクリート柱と称する)が用いられる。
本実施形態のコンクリート柱は、遠心成形によって製造され、設定荷重が2000kg以上となるように設計される。これにより、コンクリート柱において送電線等の荷重に対する十分な強度を確保することができるため、上述した送電塔100を構成する部材として採用することが可能となる。
図2は、本実施形態にかかるコンクリート柱を説明する図である。なお、上記説明したように本実施形態では単位柱120にコンクリート柱を採用している。したがって、以下の説明では、コンクリート柱として図1に示した単位柱120を例示する。図2に示すように、本実施形態の単位柱120は、上下の縁にフランジ128が形成されている。これにより、上方および下方に配置される単位柱120のフランジ128同士をボルト等(不図示)によって接続することにより、複数の単位柱120を連結することができる。
図2に示すように、単位柱120は、円筒状のコンクリート122の内部に緊張鉄筋124および非緊張鉄筋126が配置されている。緊張鉄筋124は、支持柱110に圧縮応力(プレストレス)を付与する鉄筋である。非緊張鉄筋126は、緊張鉄筋124に沿って配置される鉄筋である。
本実施形態のように単位柱120を、予め遠心成形されたプレストレストコンクリート柱とすることにより、設置現場でのコンクリートを打設するRC構造に比して、長期耐久性および高い強度が得られる。なお、中性化に対する耐久性を高めるため、単位柱120のコンクリート122には、遠心成形によって水セメント比を40%以下としたものを使用することが好ましい。
本実施形態の単位柱120(コンクリート柱)では、緊張鉄筋124の直径は10mm以上である。このように緊張鉄筋124としてPC鋼棒を用いることにより、単位柱120において高い強度が得られる。一方、プレストレスが負荷されない非緊張鉄筋126には、緊張鉄筋124と同じ材料を用いてもよいが、表層軟化処理をしていない安価なPC鋼棒を用いることにより、単位柱120のコストの削減を図ることが可能となる。
本実施形態の特徴として、緊張鉄筋は、焼入れ焼き戻し処理が施されていて、1420N/mm2以上の引張強度を有する。また緊張鉄筋は、鉄筋表層から700μmまでの範囲が鋼材中央部の90%以下の硬度である。これにより、緊張鉄筋として用いられるPC鋼棒において高い耐水素脆化性能を得ることができる。したがって、プレストレストコンクリート柱においてコンクリート部分にひび割れが生じることにより緊張鉄筋(PC鋼棒)の表層に腐食が生じた場合であっても、その腐食箇所を起点とする緊張鉄筋の破断を抑制することが可能となる。
ここで、上述した緊張鉄筋の直径および鋼材引張強度についての閾値を設定するために行った検討内容について説明する。まず、発明者らが、設計荷重500kgおよび長さ15mの電柱で最大荷重となる地際部分の鉄筋の総断面積を調査したところ、その総断面積は約760〜800mm2であった。また電柱において使用されている鉄筋強度は「JIS G 3137 細径異形PC鋼棒」において最も強度が高いD種1号の引張強さ1420N/mm2以上の鉄筋であった。したがって、本実施形態においても1420N/mm2以上の引張強度を有する鉄筋を用いることにより、単位柱120(コンクリート柱)において高い強度が得られる。
次に、送電塔において、設計荷重3000kgおよび長さ30mの場合、地際部で必要な鉄筋の総断面積は9500〜10300mm2となる。すると、必要な鉄筋の総本数は9mmΦの鉄筋では150〜162本、10mmΦの鉄筋では122〜132本、11mmΦの鉄筋では98〜106本となる。
単位柱120を製造する際に、配筋されている鉄筋の間隔が狭すぎるとセメントが流れ込まず、空洞が生じてしまう。このため、適正な間隔を確保することが必要である。参考として、従来使用されてきた電柱の鉄筋の間隔は短いもので2cmであった。長さ30mの送電塔の地際の外径を柱体のテーパーを考慮して80cmとすると、1重の配筋では鉄筋間隔は1cm以下となる。2重に配筋した場合、9mmΦの鉄筋では間隔が2cm以下となるが、10mmΦの鉄筋では間隔が2.2mm以上となる。このことから、緊張鉄筋が直径10mm以上であることにより、鉄筋の間の間隔を良好に確保することが理解できる。
また緊張鉄筋は、Siの含有量が1.0%以上であり、(C+Si+Mn+Fe)以外の成分の含有量が0.1%未満であるとよい。これにより、上述した緊張鉄筋の耐水素脆化性能を更に高めることが可能となる。
更に、緊張鉄筋に対するプレストレスは、緊張鉄筋の引張強度の75%以下であるとよい。これにより、緊張鉄筋に過度なプレストレスがかかることを防ぎつつ、上述した効果を得ることができる。
一方、非緊張鉄筋は、引張強度が1420N/mm2以上であり、耐水素脆化性能を評価するFIP試験における破断時間が80時間以上であるとよい。これにより、非緊張鉄筋においても高い耐水素脆化性能を得ることが可能となる。
次に、上述した単位柱においてコンクリート122の内部120に配置される緊張鉄筋124および非緊張鉄筋126の材質について説明する。詳細には、まず緊張鉄筋124および非緊張鉄筋126の引張強度は、細径異形PC鋼棒(腐食防食学会規格 JIS G 3137(細径異形PC鋼棒))のD種1号相当の1420N/mm2以上とすることが好ましい。これにより、単位柱120の大径化を避けつつ、必要強度を十分に確保することができる。
図3は、PC鋼棒の破断試験結果を示す図であり、縦軸はPC鋼棒の破断時間であり、横軸はPC鋼棒への負荷荷重である。PC鋼棒の耐水素脆化試験はJSCE S 1201に示す手順で行った。実験条件は、50度の20%チオシアン酸アンモニウム水溶液中において表層軟化処理前のPC鋼棒に対して70%または80%の一定荷重を負荷し、200時間を試験時間の打切りとした。なお、試験体は、70%および80%の場合ともに6つであり、すべての試験体において強度は1420N/mm2以上である。
図3に示すように、耐水素脆弱化試験の結果、負荷荷重すなわちプリストレスが70%の場合には、6回すべてにおいて200時間を越えても破断が生じなかった。これに対し、負荷荷重が80%の場合、6回すべてにおいて200時間を越える前に破断が生じた。このことから、単位柱120の内部の緊張鉄筋124に対するプレストレスすなわち負荷荷重は、PC鋼棒すなわち緊張鉄筋124の引張強度の75%以下であるとよいことが理解できる。
図4は、PC鋼棒の耐水素脆化試験結果を示す図であり、縦軸はPC鋼棒の破断時間であり、横軸はPC鋼棒のSi濃度(Si含有量)である。実験条件については、水素脆化試験(JSCE S 2012−1)に基づいた。図4に示すPC鋼棒の各試験体の組成は以下の通りである。なお、すべての試験体において、Mnの含有率は0.7%である。
・試験体A:C 0.4%、Si 1.8%、(C+Si+Mn+Fe)以外<0.1%
・試験体B:C 0.3%、Si 1.8%、(C+Si+Mn+Fe)以外<0.1%
・試験体C:C 0.3%、Si 1.5%、(C+Si+Mn+Fe)以外<0.1%
・試験体D:C 0.2%、Si 1.1%、(C+Si+Mn+Fe)以外<0.1%
・試験体E:C 0.3%、Si 0.3%、(C+Si+Mn+Fe)以外<0.1%
・試験体F:C 0.3%、Si 0.2%、(C+Si+Mn+Fe)以外 0.8%
図4に示すように、Si濃度が1.0%以上の試験体A〜Dでは、試験体D以外が200時間を越えても破断が生じなかった。このことから、Si濃度を1.0%以上とすることが、PC鋼棒の耐水素脆化性能の向上に有効であることが理解できる。また試験体A〜DのSi濃度を参照すると、Si濃度が1.5%以上とすることにより、水素脆化に対する耐性をより高めることが可能であることがわかる。
図5は、試験体A〜Fおよびそれを用いたコンクリート柱の試験結果を説明する図である。図5中、評価1については、JSCE S 1201(FIP(Federation Internationale de la Precontrainte)試験)に則って行った表層軟化処理前のPC鋼棒の耐水素脆化特性の評価である。実験条件は、50度、20%チオシアン酸アンモニウム水溶液中で、引張強度の70%の一定荷重を負荷し200時間を試験時間の打切りとした。なお、非緊張鉄筋126への負荷荷重は、後述する軟化層が損傷した状態を考慮し、緊張鉄筋124と同等の荷重がかかった状態を想定した。
図5中、評価2はコンクリート柱を用いた苛酷暴露試験の評価である。実験条件は、試験体A〜Fからなる鋼棒にプレストレスを負荷し、コンクリート柱に対して常時0.2mm以上のひび幅が保持される設計荷重を負荷した。また総合評価では、暴露期間を5年間として定期的に漏洩磁束法で非破壊にて鉄筋の破断の有無を評価し、鋼棒の破断を生じたものを不合格(×)とし、鋼棒が破断しなかったものを合格(〇)とした。
図5に示すように、FIP試験(評価1)では、(C+Si+Mn+Fe)以外の成分の含有量が0.1%未満である試験体A、BおよびFにおいては、破断時間が200時間を越えている。一方、(C+Si+Mn+Fe)以外の成分の含有量が0.8%である試験体Eにおいては、破断時間が20時間である。
苛酷暴露試験(評価2)では、Siを1.8%含有する試験体AおよびBでは鉄筋の破断が生じていない。一方、Siの含有量が少ない試験体EおよびFでは破断が生じている。これらは、Siの含有量が多くなることで焼き戻し温度が高くなり、耐水素脆化特性が向上したものと考えられる。以上の結果からSiを1.8%含有し、且つ(C+Si+Mn+Fe)以外の物質の含有量が0.1%未満であるときに、試験体のPC鋼棒を用いたコンクリート柱の評価の両方において要求される耐水素脆化特性を満たすことが理解できる。
なお、試験体Fでは、FIP試験においては要求性能を満たしているものの、苛酷暴露試験では鉄筋の破断が生じている。このことから、(C+Si+Mn+Fe)以外の成分の含有量が多くなると、実環境において求められる性能を満たせなくなると考えられる。
図6は、PC鋼棒の耐水素脆化性能と軟化層との関係を説明する図である。本実施形態の特徴として、単位柱120(コンクリート柱)の内部の緊張鉄筋124(PC鋼棒)には、鉄筋表層から700μmまでの範囲において鋼材中央部の90%以下の硬度となる軟化層を形成される。軟化層を形成する処理方法としては、例えば特許文献(WO2009/123227号公報)に記載の表面軟質化処理方法を例示することができる。
上記特許文献の表面軟質化処理方法では、焼入れ工程後の焼戻し工程において、加熱手段として高周波誘導加熱を行う。高周波誘導加熱による焼戻しでは鋼材自体が発熱するが、この発熱部の深さは、焼戻加熱コイルのコイルターン数と周波数、入力電気エネルギー、加熱温度、加熱時間、放冷時間の組合せにより調節することができる。したがって、軟化層の硬度や厚さを一定範囲で制御しながら表面軟化層を形成することができる点が本実施形態に適している。ただし、これに限定するものではなく、他の公知の方法を適宜選択することも可能である。
図6において、軟化層の評価として実施した苛酷水素脆化試験は、20%チオシアン酸アンモニウム水溶液に酢酸−酢酸ナトリウムの緩衝溶液を加えた50℃の溶液中で評価を実施した。試験手順は上述したFIP試験と同手順であるが、苛酷水素脆化試験によればかかるFIP試験より高濃度の水素吸蔵が可能である。このため、100時間を試験時間の打切りとした。また軟化層の損傷を模擬した試験前の導入疵深さは送電塔保全に必要な腐食代を考慮し500μmとした。
苛酷水素脆化試験の破断時間は、90時間未満を不合格(×)として、90時間以上100時間未満を合格(〇)として、100時間以上を特に優秀(◎)とした。総合評価は、苛酷水素脆化試験と硬度試験のいずれかあるいは両方が×のものは不合格として×、苛酷水素脆化試験が◎の場合は特に優秀として◎、その他を合格として○とした。
苛酷水素脆化試験に供する試験体は、疵付け前の状態で断面の硬度分布を測定した。測定位置は、試験体の表層から100μmと700μmと中心部の3点の硬度を、マイクロビッカースHv0.5で計測した。試験体の中心部の平均硬度である中心硬度HV、表層から700μm付近の硬度HV700、300μm付近の硬度HV300としたとき、「(HV700/HV)×100」から求められる軟化率が90%以下、かつHV700>HV300を満たす場合は健全な軟化層が形成されていることから合格(○)として、いずれかが満たされない場合を不合格(×)とした。
図6に示すように、試験体A〜Dは、鉄筋の表面に形成された軟化層の硬度の軟化率が、鋼材中央部の硬度(ビッカース硬度 HV50)の85%〜89%である。試験体C´およびD´は、組成はそれぞれ試験体CおよびDと同じであるが、軟化層の硬度の軟化率を98%および93%に調整している。
試験体A〜Dのように、表面軟化層の軟化率が鋼材中央部の90%以下であると、苛酷水素試験において良好な結果が得られる。一方、組成が同一であっても、表面軟化層の軟化率が低い試験体C´およびD´では、苛酷水素試験において早期に破断が生じてしまう。このことから、腐食損傷に対して良好な耐水素脆化特性を維持するには軟化率が90%以下であることが必要であることが理解できる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、設定荷重が2000kg以上となるように遠心成形されたプレストレストコンクリート柱として利用することができる。
100…送電塔、102…モルタル、110…支持柱、120…単位柱、120a…単位柱、120b…単位柱、122…コンクリート、124…緊張鉄筋、126…非緊張鉄筋、128…フランジ、130…支持金物、140…連結部材

Claims (4)

  1. 内部に緊張鉄筋および非緊張鉄筋が配置され設定荷重が2000kg以上となるように遠心成形されたプレストレストコンクリート柱であって、
    前記緊張鉄筋は、焼入れ焼き戻し処理が施されていて、直径が10mm以上であり、引張強度が1420N/mm2以上であり、鉄筋表層から700μmまでの範囲が鋼材中央部の90%以下の硬度であることを特徴とするプレストレストコンクリート柱。
  2. 前記緊張鉄筋は、Siの含有量が1.0%以上であり、(C+Si+Mn+Fe)以外の成分の含有量が0.1%未満であることを特徴とする請求項1に記載のプレストレストコンクリート柱。
  3. 前記緊張鉄筋に対するプレストレスが該緊張鉄筋の引張強度の75%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプレストレストコンクリート柱。
  4. 前記非緊張鉄筋は、引張強度が1420N/mm2以上であり、耐水素脆化性能を評価するFIP試験における破断時間が80時間以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプレストレストコンクリート柱。
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