JP2019170264A - 新規刺激伝導系細胞様細胞 - Google Patents

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一郎 久留
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Abstract

【課題】根本的な治療法がなかった房室ブロックや心室内伝導障害を修正するための心筋細胞を得る。【解決手段】HCN4およびMlc2v二重陽性である細胞がプルキンジェ(Purkinje)繊維細胞様細胞およびその製造方法、該細胞を含む移植片およびその製造方法、ならびに該細胞を用いる刺激伝導系に影響を及ぼす薬剤の検出方法。【選択図】なし

Description

本発明は、新規な新規刺激伝導系細胞様細胞に関する。詳細には、本発明は、HCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ(Purkinje)繊維細胞様細胞に関する。
徐脈性不整脈は加齢とともに増加し、心不全やTorso de Pointes型の不整脈から失神や突然死に繋がる。徐脈性不整脈の中でも房室ブロックや脚ブロックは刺激伝導系に途絶により生じるが、徐脈のみならず右室と左室の収縮の非同期に伴い心機能の低下を来たす。これらの治療に対しては機械式ペースメーカ移植が適応となるが(非特許文献1等参照)、特に右室と左室の収縮の非同期に対してはdual chamber pacingによる心再同期療法が用いられる。しかし、心再同期療法の効果は刺激伝導系の障害の程度に依存するために、脚ブロックや心室内伝導障害を修正する新たな治療が必要となる。また、抗癌剤(パクリタキセル等)は刺激伝導系を障害し心不全を起こすため、事前に刺激伝導系に対する心毒性評価が必要である。
奥村謙,他:不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版).循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010 年度合同研究班報告).日本循環器学会,他編.
本出願は未だ根本的な治療法の無い房室ブロックや心室内伝導障害を修正できる新たな刺激伝導系細胞が必要とされている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、幹細胞由来のHCN4およびMlc2v二重陽性である細胞がプルキンジェ繊維細胞様細胞であることを見出し、本発明を完成させるに至った。HCN4は洞結節細胞のマーカーであり、Mlc2vは心室筋マーカーであるために、これら二つのマーカーを持つ細胞は、洞結節と心室筋の両方の性質を有する細胞ということとなる。理論上は作業心筋とペースメーカ細胞の中間体細胞が存在するとは考えられず、本発明での知見は意外なものであった。
すなわち、本発明は以下のものを提供する:
(1)HCN4およびMlc2v二重陽性である、プルキンジェ繊維細胞様細胞。
(2)幹細胞由来である(1)記載の細胞。
(3)iPS細胞またはES細胞由来である(2)記載の細胞。
(4)下記工程:
(a)HCN4遺伝子を導入した幹細胞を心筋細胞に分化させ、
(b)工程(a)で得られた分化細胞のなかからHCN4およびMlc2v二重陽性細胞を採取する
を含む、プルキンジェ繊維細胞様細胞の製造方法。
(5)幹細胞がiPS細胞またはES細胞である(4)記載の方法。
(6)幹細胞が、1の標識遺伝子が作動可能に連結されたHCN4遺伝子および別の標識遺伝子が作動可能に連結されたMlc2v遺伝子を含むものである、(5)または(6)記載の方法。
(7)HCN4およびMlc2v二重陽性細胞の採取がフローサイトメトリーにより行われる、(4)〜(6)のいずれか記載の方法。
(8)1の標識遺伝子が作動可能に連結されたHCN4遺伝子および別の標識遺伝子が作動可能に連結されたMlc2v遺伝子を含む幹細胞。
(9)HCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ繊維細胞様細胞を含む、房室ブロックおよび/または心室内伝導障害を治療するための移植片。
(10)HCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ繊維細胞様細胞を移植に適した形状に成型することを含む、房室ブロックおよび/または心室内伝導障害を治療するための移植片の製造方法。
(11)HCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ繊維細胞様細胞に試験薬剤を添加し、試験薬剤添加後の細胞の特性を調べることを含む、刺激伝導系に影響を及ぼす薬剤の検出方法。
本発明のHCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ繊維細胞様細胞(以下、「本発明のプルキンジェ繊維細胞様細胞」または「本発明の細胞」と略称することがある)を移植することにより、根本的な治療法がなかった房室ブロックや心室内伝導障害を修正することができる。さらに、本発明の細胞を用いて、刺激伝導系を障害する心毒性を評価することができるので、本発明の細胞は創薬や安全性試験にも利用できる。
図1は、HCN4−BACベクターの改変および幹細胞への導入を模式的に示す。 図2は、幹細胞のMlc2v遺伝子座へのmcherryの導入を模式的に示す。 図3は、pCAG−CreによるpPGK−neo−polyAカセットの除去を模式的に示す。 図4は、ヒトES細胞およびiPS細胞から心筋細胞への分化誘導法を模式的に示す。 図5は、CFP(HCN4)とmCherry(MLC2v)の心筋分化過程における経時的発現を示す。 図6は、フローサイトメトリーを用いた本発明の細胞の選択的分取の結果を示す。フラクション1はHCN4およびMlc2vともに陰性の群、フラクション2はHCN4単一陽性の群、フラクション3はHCN4およびMlc2vともに陽性の群、フラクション4はMlc2v単一陽性の群を示す。 図7は、HCN4単一陽性細胞(上)と本発明の細胞(下)の活動電位持続時間を調べた結果を示すグラフである。グラフの横軸は時間(1目盛りは20msec)を、縦軸は膜電位(1目盛りは3.25mV)を示す。 図8は、iCell CM(ヒトiPS細胞由来の心筋細胞)(●)、ヒトiPS細胞由来のHCN4単一陽性細胞(洞結節細胞)(▲)およびiPS細胞由来の本発明の細胞(■)のNa電流特性を示すグラフである。 図9は、iCell CM(ヒトiPS細胞由来の心筋細胞)(●)、ヒトiPS細胞由来のHCN4単一陽性細胞(洞結節細胞)(▲)およびiPS細胞由来の本発明の細胞(■)のCa電流特性を示すグラフである。 図10は、iCell CM(ヒトiPS細胞由来の心筋細胞)(●)、ヒトiPS細胞由来のHCN4単一陽性細胞(洞結節細胞)(▲)およびiPS細胞由来の本発明の細胞(■)のhERG電流特性を示すグラフである。
本発明は、1の態様において、洞結節細胞のマーカーおよび心室筋細胞のマーカーを一緒に発現するプルキンジェ繊維細胞様細胞を提供する。この態様の一具体例において、本発明は、HCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ繊維細胞様細胞を提供する。
HCN4は洞結節細胞のマーカーであり、Mlc2vは心室筋細胞のマーカーである。本発明者らは、幹細胞からこれら2つのマーカーを一緒に発現するプルキンジェ繊維細胞様細胞の製造に初めて成功した。
刺激伝導系は、洞結節に生じた電気的興奮を心房から心室に伝える筋線維束である。刺激伝導系は、洞房結節、房室結節、ヒス束およびプルキンジェ線維を含む。刺激伝導系細胞は刺激伝導系を構成する細胞である。刺激伝導系細胞様細胞は刺激伝導系細胞に類似した性質を有する細胞をいう。
プルキンジェ繊維は左脚と右脚の先にある分枝した繊維状の部位である。プルキンジェ繊維細胞はプルキンジェ繊維を構成する細胞であり、その伝導速度は約2〜約4m/秒と極めて早い。本明細書において、プルキンジェ繊維細胞様細胞はプルキンジェ繊維細胞に類似した性質を有する細胞をいう。本発明のプルキンジェ繊維細胞様細胞は、伝導速度が約2〜約4m/秒であることによって特徴づけられてもよい。また、プルキンジェ繊維細胞様細胞は、ナトリウムチャンネル密度が高いこと、あるいは活動電位持続時間が長いことによって特徴づけられてもよい。本発明のプルキンジェ繊維細胞様細胞は、活動電位持続時間が心筋型細胞のそれよりも長く、約400msecまたはそれ以上であると定義してもよい。
本発明のプルキンジェ繊維細胞様細胞は幹細胞由来であってもよい。幹細胞は自己複製能と多分化能を持つ細胞と定義される。幹細胞は公知であり、様々な種類のものがある。本発明にて用いる好ましい幹細胞としては、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、あるいは始原生殖細胞由来万能細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明は、さらなる態様において下記方法を提供する。
下記工程:
(a)幹細胞を心筋細胞に分化させ、
(b)工程(a)で得られた分化細胞のなかから洞結節細胞のマーカーおよび心室筋細胞のマーカーに関して二重陽性である細胞を採取する
を含む、プルキンジェ繊維細胞様細胞の製造方法。
この態様の一具体例において、本発明は、下記工程:
(a)幹細胞を心筋細胞に分化させ、
(b)工程(a)で得られた分化細胞のなかからHCN4およびMlc2v二重陽性細胞を採取する
を含む、プルキンジェ繊維細胞様細胞の製造方法。
上記方法において、幹細胞としてHCN4遺伝子を外部から導入したものを用いることが好ましい。したがって、本発明は下記方法を提供する。
下記工程:
(a)HCN4遺伝子を導入した幹細胞を心筋細胞に分化させ、
(b)工程(a)で得られた分化細胞のなかからHCN4およびMlc2v二重陽性細胞を採取する
を含む、プルキンジェ繊維細胞様細胞の製造方法。
本発明の方法の工程(a)において、HCN4遺伝子を導入した幹細胞を心筋細胞に分化させる。この工程で用いる幹細胞は、いずれの方法でHCN4遺伝子が導入されたものであってもよい。HCN4遺伝子を幹細胞に導入する方法は当業者によく知られており、CaCl法、リポフェクタミン法、ヌクレオフェクター法、電気せん孔法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、レトロウイルスベクターを用いる方法、アデノウイルスベクターを用いる方法、HACベクターを用いる方法などが例示されるが、これらの方法に限定されない。
選別可能な標識をコードする遺伝子(標識遺伝子)がHCN4遺伝子に作動可能に連結されていることが好ましい。HCN4遺伝子への標識遺伝子の連結方法は公知である。標識を付すことによって、HCN4遺伝子を発現している細胞を容易に選別・取得することができる。標識は様々なものが公知であり、外部から検出あるいは結合が可能なものが好ましく、GFP、RFP、mcherryなどの蛍光タンパク質、抗体の結合部位、薬剤耐性などが例示されるが、これらに限定されない。作動可能に連結とは、目的遺伝子の発現に伴って標識遺伝子も発現するように、これらの遺伝子が連結されていることをいう。これらの遺伝子は直接連結されていてもよく、1個以上の塩基を含む配列を介して連結されていてもよい。
幹細胞を心筋細胞へと分化誘導させるための手段・方法は当業者が適宜選択して採用することができ、そのための培地成分、培養条件も公知のものを採用、あるいは適宜改変することができる。 iPS細胞を心筋細胞に分化させる方法としては、例えばMiki K. et al., Cell Stem Cell. 2015 Jun 4;16(6):699-711に記載の方法、Yamauchi et al, Genes Cells. 2010 Dec; 15(12): 1216-27に記載の方法が挙げられるが、これらに限定されない。幹細胞を心筋細胞に分化させるための市販キットを用いてもよい。
本発明の方法の工程(b)において、工程(a)で得られた分化細胞のなかからHCN4およびMlc2v二重陽性細胞を採取する。目的細胞の採取を効率良く行うために、工程(a)において、1の標識遺伝子が作動可能に連結されたHCN4遺伝子および別の標識遺伝子(すなわちHCN4遺伝子に連結されているのとは異なる標識遺伝子)が作動可能に連結されたMlc2v遺伝子を含む幹細胞を心筋細胞に分化させることが好ましい。Mlc2v遺伝子への標識遺伝子の連結方法は公知である。例えば、ゲノム編集を用いて幹細胞中のMlc2v遺伝子座に標識遺伝子を導入することにより連結を行ってもよい。
HCN4およびMlc2v二重陽性細胞は、公知の様々な方法を用いて採取することができる。好ましくは、セルソーターを用いるフローサイトメトリーによって細胞を採取する。フローサイトメトリーを行う際に、HCN4遺伝子およびMlc2v遺伝子に付した標識を利用することができる。
本発明の上記方法によりHCN4およびMlc2v二重陽性細胞を採取した後、必要数の細胞を得るために細胞を培養してもよい。
本発明は、もう1つの態様において、1の標識遺伝子が作動可能に連結されたHCN4遺伝子および別の標識遺伝子が作動可能に連結されたMlc2v遺伝子を含む幹細胞を提供する。このような幹細胞を心筋細胞に分化させた場合、本発明の細胞を効率良く採取することができる。幹細胞としてはiPS細胞またはES細胞が好ましい。このような幹細胞は、(1)1の標識遺伝子が作動可能に連結されたHCN4遺伝子を幹細胞に導入すること、および(2)幹細胞中のMlc2v遺伝子座に別の標識遺伝子を導入することによって得てもよい。なお、工程(1)、(2)のどちらを先に行ってもよい。
本発明は、さらにもう1つの態様において、本発明の細胞を含む、房室ブロックおよび/または心室内伝導障害を治療するための移植片を提供する。本発明の移植片を用いて、根本的な治療法がなかった房室ブロックや心室内伝導障害を修正することができる。
本発明は、さらにもう1つの態様において、本発明の細胞を移植に適した形状に成型することを含む、房室ブロックおよび/または心室内伝導障害を治療するための移植片の製造方法を提供する。移植に適した形状は、移植部位の形や疾患の種類によって異なるが、一般的にはシート状または細胞塊であり、好ましくはシート状である。心筋細胞シートの作製方法も公知である。例えばUpCell(登録商標)を用いて心筋細胞を培養することにより心筋シートを得てもよい。
本発明は、さらにもう1つの態様において、本発明の細胞に試験薬剤を添加し、試験薬剤添加後の細胞の特性を調べることを含む、刺激伝導系に影響を及ぼす薬剤の検出方法を提供する。調べる細胞の特性は、電気的特性、生物学的特性、科学的特性、形態などが挙げられるが、これらに限らない。伝導速度、活動電位持続時間、Naチャンネル密度などの電気的特性を調べることが好ましい。通常は、試験薬剤添加後の細胞の特性を、試験薬剤を添加しない細胞の特性と比較する。本発明の方法を用いて、創薬や安全性試験における刺激伝導系を障害する心毒性を評価してもよい。
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
(1)細胞株の作製
ヒトES細胞(KhES1株、KhES3株)あるいはヒトiPS細胞(409B2株)を用いて、HCN4イオンチャネルとMlc2vミオシン軽鎖(MYL2)の発現をそれぞれ別々の蛍光タンパク質で可視化できる細胞株の樹立を行った。
(i)HCN4の可視化:HCN4遺伝子を含むBAC(Bacterial Artificial Chromosome)ベクター(RP−1105A6)を用いて、BACベクター上のHCN4遺伝子のエクソン1の一部分をEGFP(Enhanced Green Fluorescent protein)緑色蛍光タンパク質あるいはECFP(Enhanced Cyan Fluorescent protein)青色蛍光タンパク質で置き換えた改変BACベクター(HCN4−EGFP−BAC、HCN4−ECFP−BAC)を作製した(図1)。作製したこれら改変BACベクターをヒトES細胞あるいはヒトiPS細胞にエレクトロポーレーション法によって、ヒトES細胞の場合には、HCN4−ECFP−BACベクターを、ヒトiPS細胞の場合にはHCN4−EGFP−BACベクターを遺伝子導入した。複数得られた導入細胞株をすべて心筋へと分化誘導し、拍動する心筋でのみEGFPあるいはECFPが強く発現する細胞株を選択することによって、HCN4の発現をEGFPで可視化できるヒトiPS 細胞株とECFPでHCN4の発現を可視化できるヒトES細胞株を樹立した。なお、ゲノム上の内在HCN4遺伝子への標識遺伝子(例えば蛍光タンパク質をコードする遺伝子)の導入によってもHCN4の発現を可視化できる。
(ii)Mlc2vの可視化:上記のHCN4を可視化できるヒトES細胞株あるいはヒトiPS 細胞株に対して、CRISPR/Cas9ゲノム編集法によって、内在のMLC2v遺伝子のエクソン1に、mCherry赤色蛍光タンパク質をノックインした2重改変ヒトES細胞株あるいは2重改変ヒトiPS 細胞株を樹立した。図2に示したノックインベクターを用いた。
(iii)薬剤選択カセットの除去:改変ヒトES/iPS細胞株の作製のために、遺伝子導入株の選択のためのネオマイシン耐性遺伝子カセットが組み込まれたベクターを用いている。これらは、蛍光タンパク質がノックインされた近傍の遺伝子(HCN4、Mlc2v)の発現に影響与える可能性がある。そこで、CRIPR/Cas9法によってMlc2v遺伝子座にmCherryをノックインした後、Cre組換え酵素によって(図3−a)、HCN4−EG(C)FP−BACベクターを導入した後、Flpe組換え酵素処理によって(図3−b)、ゲノムあるいはBACベクター上からネオマイシン体制遺伝子カッセトを除去した。最終的に作製した二重改変細胞株は、ネオマイシン耐性カセットを含んではいない。
(2)心筋への分化誘導
改変ヒトES細胞株あるいはヒトiPS細胞株からの心筋への分化誘導は、Yamauchiらの方法を最適化し行った(図4:Yamauchi et al, Genes Cells. 2010 Dec; 15(12): 1216-27改変)。この方法は、単層培養とSphere(細胞凝集塊)形成の2ステップから成り立っている。改変ヒトES細胞株に由来する刺激伝導系細胞作製のため、ステップ1において、二つのパラメーターを最適化した。単層培養の日数を5日から4日へ、CHIR99021の濃度を6mMから 3mMへと変更した。
ヒトES細胞の場合には、分化誘導後約1ケ月で、ECFPとmCherryの二重陽性細胞株が生じてきた(図5)。これらの二重陽性細胞をセルソーターで選択的に分取すると、それらの細胞はHCN4とMlc2vが発現しており、刺激伝導系細胞と同等の電気生理学的特性を示した。また、二重陽性細胞は、その後数か月にわたって検出することができ、刺激伝導系細胞と同等の細胞を選択的に分取することができた。ヒトiPS細胞株の場合には、二重陽性細胞が出現する日時が少し遅れ、約45日目前後から検出することができた。
(3)セルソーターによる刺激伝導系細胞の分取
前述の改変ヒトiPS細胞を心筋分化誘導後2か月の時点で、細胞を酵素処理により単一細胞に分離し、セルソーターを用いて、HCN4の遺伝子発現をGFPの蛍光で、Mlc2vの遺伝子発現をmcherryの蛍光で識別し、HCN4−GFP/Mlc2v−mcherry二重陽性細胞(本発明の細胞)を選別採取した。
図1に示すように、心筋分化誘導後2か月の時点で、本発明の細胞塊は緑色のHCN4−GFPシグナルと赤色のMlc2v−mcherryシグナルを発現していた。細胞塊を酵素処理により単一細胞に分離し、セルソーターを用いて、HCN4の遺伝子発現をGFPの蛍光で、Mlc2vの遺伝子発現をmcherryの蛍光で識別し、本発明の細胞(図1のフローサイトメーター上の3の領域)を選別採取した。
(4)電気生理学的解析
本発明の細胞をセルソーターで分取後に円形のカバーグラス上で1日培養し、カバーグラス上に接着させた。既報のパッチクランプ法により活動電位とイオンチャネル活性を測定した。細胞内液として、130mMグルタミン酸カリウム、1mM MgCl、15mM KCl、5mM NaOH、5mM HEPES、および5mM Mg−ATP(KOHにてpH 7.3に合わせた)の組成の液を使用した。細胞外液として、140mM NaCl、5.4mM KCl、1.8mM CaCl、0.5mM MgCl、0.33mM NaHPO、5mM HEPES、および5mMグルコース(NaOHにてpH 7.4mに合わせた)の組成を使用した。
(i)本発明の細胞の活動電位特性
各細胞の自動能性活動電位波形を図2示す。HCN4−GFP単独陽性細胞の自動能活動電位は洞結節様であったが(上段)、本発明の細胞は活動電位持続時間が長く、プルキンジェ線維様の活動電位を示した(下段)。
(ii)本発明の細胞のNa電流特性
各細胞のNa電流特性を示す電流−電圧関係を図3に示す。HCN4−GFP単独陽性細胞(iPS細胞由来の洞結節細胞)やiCell CM(iPS細胞由来の心室筋細胞)と比較して、本発明の細胞のNaチャネル密度が高いことが示され、この特性は刺激伝導系細胞であるプルキンジェ線維細胞の特性に類似していた。
(iii)本発明の細胞のCa電流ならびにhERG電流特性
各細胞のCa電流特性を示す電流−電圧関係を図4に、各細胞のhERG電流特性を示す電流−電圧関係を図5に示す。HCN4−GFP単独陽性細胞(iPS細胞由来の洞結節細胞)やiCell CM(iPS細胞由来の心室筋細胞)の特性と、本発明の細胞の特性に大きな差はなかった。以上の結果も、本発明の細胞の特性が刺激伝導系細胞であるプルキンジェ線維細胞の特性に類似していることを示すものである。
本発明の細胞は、心疾患の治療のための移植用細胞および移植片の製造において有用である。さらに本発明の細胞は、創薬や安全性試験などにおいても有用である。

Claims (11)

  1. HCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ(Purkinje)繊維細胞様細胞。
  2. 幹細胞由来である請求項1記載の細胞。
  3. iPS細胞またはES細胞由来である請求項2記載の細胞。
  4. 下記工程:
    (a)HCN4遺伝子を導入した幹細胞を心筋細胞に分化させ、
    (b)工程(a)で得られた分化細胞のなかからHCN4およびMlc2v二重陽性細胞を採取する
    を含む、プルキンジェ繊維細胞様細胞の製造方法。
  5. 幹細胞がiPS細胞またはES細胞である請求項4記載の方法。
  6. 幹細胞が、1の標識遺伝子が作動可能に連結されたHCN4遺伝子および別の標識遺伝子が作動可能に連結されたMlc2v遺伝子を含むものである、請求項4または5記載の方法。
  7. HCN4およびMlc2v二重陽性細胞の採取がフローサイトメトリーにより行われる、請求項4〜6のいずれか1項記載の方法。
  8. 1の標識遺伝子が作動可能に連結されたHCN4遺伝子および別の標識遺伝子が作動可能に連結されたMlc2v遺伝子を含む幹細胞。
  9. HCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ繊維細胞様細胞を含む、房室ブロックおよび/または心室内伝導障害を治療するための移植片。
  10. HCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ繊維細胞様細胞を移植に適した形状に成型することを含む、房室ブロックおよび/または心室内伝導障害を治療するための移植片の製造方法。
  11. HCN4およびMlc2v二重陽性であるプルキンジェ繊維細胞様細胞に試験薬剤を添加し、試験薬剤添加後の細胞の特性を調べることを含む、刺激伝導系に影響を及ぼす薬剤の検出方法。
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